説明

生体用粘着ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料

【課題】視覚的な違和感を生じさせない程度の透明性を有し、使用時に破断や支持体とゲル層との剥離が生じることがなく、取扱いが容易で、皮膚の動きに対する追従性及び生体への安全性に優れた生体用粘着シートを提供する。
【解決手段】(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層と、(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層とを備えることを特徴とする。ここで、親水性高分子としては、多糖類が、アニオン性基を有する高分子としてはゼラチンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等の分野に用いられる、多層構造を有する生体用粘着シート、及び、それを用いたシート状の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
生体用粘着ゲルシートは、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、経皮吸収成分や、消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などに使用されている。従来、生体用粘着シートとしては、取り扱いの容易さや皮膚表面への閉塞効果等の観点から、不織布、織布、プラスチックフィルム等のシート状の素材を支持基材として、この支持基材上に、各種の有効成分を含有させた親水性の粘着ゲルを付着させたものが使用されている。しかしながら、粘着ゲルやそこに含まれる有効成分の裏抜けを防ぐために、基材に用いられる不織布や織布等として開孔率がほとんどなく不透明なものが使用されており、皮膚表面に貼り付けた際の視覚的な違和感が大きいため、生体用粘着シートの使用態様に大きな制約があった。
さらに、不織布や織布等を基材に用いた場合、使用する繊維のねじれや角質化、短繊維化にともない、素材によっては、皮膚に刺激感を与えるという問題があった。
【0003】
一方、支持基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、生体用粘着シート全体を透明にすることができるため、使用時に目立つことがなく、視覚的な違和感を与えることのない粘着シートを提供することができるが、親水性の粘着ゲルとプラスチックフィルムとの接着性が乏しく、双方が容易に剥離するため、使用に際して不具合が生じる。さらに、プラスチックフィルムが柔軟性に欠けるため、生体用粘着シートが皮膚表面の動きに対して十分に追従できず、皮膚表面から剥離し易くなる、使用時に皮膚に違和感を伴う、などの問題があった。
【0004】
透明或いは半透明で使用時に視覚的違和感が少なく、皮膚に対する親和性に優れた生体用シートを得る目的で、ゼラチンを多価金属イオン化合物、またはアルデヒド類と反応させて得られるゲルを支持基材として用い、ポリアクリル酸系ポリマーを多価金属イオン化合物と反応させて得られる含水ゲルを粘着層として用いたシート状パック剤または貼付剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。上記公報に開示のパック剤等を用いれば、皮膚表面に貼り付けた際に視覚的な違和感が生じることがなく、皮膚表面の動きに対する追従性が良好となる。しかしながら、支持基材の物性に起因して、十分な厚みを有しない場合には、強度が低く、例えば、厚さ1mmのシートでは、容易に破断するという欠点があった。他方、シートの厚さを3mm程度とすることによりシート強度は向上するが、支持基材が厚く、形状追従性が低下するために、使用時に皮膚から剥がれ易くなるという問題点があり、使用性と実用上の強度維持の両立が困難であった。
【0005】
他の技術として、ゲル組成の異なる合成高分子ゲルからなる積層シートが提案されており(例えば、特許文献2参照)、これにより視覚的な違和感なく、強度に優れたシートを得ることができる。しかしながら、当該シートは小さな応力で容易に変形するために取扱いにくいという欠点があった。
【0006】
さらに、海藻から抽出された多糖類を乾燥して得られるシートが開示されており(例えば、特許文献3参照)、安全性が高く、皮膚への密着感の高いシートを得ることができる。しかしながら、化粧用シートとして使用する際には保水感が不十分であり、また含水により強度が低下するという欠点があった。
【特許文献1】特開平3−86806号公報
【特許文献2】特開2000−212074号公報
【特許文献3】特開平8−40882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の目的は、視覚的な違和感を生じさせない程度の透明性を有し、使用時に破断や支持体とゲル層との剥離が生じることがなく、取扱いが容易で、皮膚の動きに対する追従性及び生体への安全性に優れた生体用粘着シート、及び、それを用いた使用性と皮膚に対する追従性に優れた化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、親水性高分子からなるフィルム層にアニオン性基を有する高分子由来のハイドロゲルを厚み方向に積層することで、上記課題を解決しうる多層ゲル構造の生体用粘着シートを得ることができ、また、この生体用粘着ゲルシートは、保湿性の付与や、有効成分を皮膚から浸透させるためのシート状化粧料として有用である、という新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> (a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層と、(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層とを備える生体用粘着ゲルシート。
<2> 前記親水性高分子が、多糖類であることを特徴とする<1>に記載の生体用粘着ゲルシート。
<3> 前記多糖類が、β−(1→4)−グリコシド結合を有する多糖類であることを特徴とする<2>に記載の生体用粘着ゲルシート。
<4> 前記アニオン性基を有する高分子が、ゼラチンであることを特徴とする<1>乃至<3>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
<5> 前記(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層が、さらに水溶性多価金属化合物を含むことを特徴とする<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
<6> 前記生体用粘着ゲルシート全体の厚みに対する、前記(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層の厚みの割合が0.1〜10%であることを特徴とする<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
<7> 露光波長600nmにおける透過度が90%以上であることを特徴とする<1>乃至<6>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
<8> 引張強度が0.1MPa以上であることを特徴とする<1>乃至<7>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
<9> <1>乃至<8>のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシートを用いたシート状化粧料。
【0010】
本発明において「生体用粘着ゲルシート」とは、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、経皮吸収成分や消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などを包含するものであり、有効成分や水分の保持及び皮膚への浸透などを目的として、皮膚に直接貼り付けて使用される粘着シートをいう。この粘着ゲルシートは、肌に貼付して水分や有効成分を皮膚に与えるためのパック剤などの化粧料として有用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、視覚的な違和感を生じさせない程度の透明性を有し、使用時に破断や支持体とゲル層との剥離が生じることがなく、取扱いが容易で、皮膚の動きに対する追従性及び生体への安全性に優れた生体用粘着シート及びそれを用いた使用性に優れたシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の生体用粘着ゲルシートは、少なくとも(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層〔以下、適宜、(a)フィルム層或いは(a)層と称する〕、(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層〔以下、適宜、(b)ハイドロゲル層又は(b)層と称する〕とを備える積層体である。
粘着ゲルシートにおける(a)フィルム層は、本発明の粘着ゲルシートの支持基材としての機能を有し、その表面に液状成分を含む(b)ハイドロゲル層が積層されてなり、(b)層の表面を皮膚に密着させて使用する。(b)ハイドロゲル層は(a)フィルム層上に一層のみ設けられていてもよく、目的に応じて、複数層設けられていてもよい。
(b)ハイドロゲル層を複数設ける場合には、互いに組成の異なるもの、例えば、液状成分の保持量やゲル層を形成する高分子化合物が異なるものを複数積層してもよく、同じ組成のハイドロゲル層であって、互いに異なる有効成分を含むものを複数積層して用いてもよい。
粘着ゲルシートの(b)ハイドロゲル層最表面は、保護シートで被覆されていてもよい。
【0013】
以下、本発明の粘着ゲルシートにおける構成成分について順次説明する。
〔(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層〕
まず、本発明において特徴的な構成成分である、親水性高分子を含有する水不溶性フィルム層について説明する。
この(a)フィルム層は、親水性高分子により形成される被膜自体が水不溶性の場合には、後述する親水性高分子のみにより形成されてもよいが、一般的には、親水性高分子に水不溶化処理を行って形成される。
なお、本発明において「水不溶性」とは、フィルム層を25℃の水に浸漬した際の溶解度が0.1%未満であることを指す。
【0014】
(親水性高分子)
本発明において(a)層の形成に用いられる親水性高分子としては、親水性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、カルバモイル基、アミノ基、アンモニオ基、エチレンオキシ基など)を有する合成高分子または天然高分子いずれも使用することができる。これらは単独でも、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に好適な、親水性基を有する合成高分子としては、例えば、ビニルアルコール(共)重合体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共)重合体、アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、イタコン酸(共)重合体、p−ビニル安息香酸(共)重合体、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(共)重合体、スチレンスルホン酸(共)重合体、アクリルアミド(共)重合体、アクリロイルモルホリン(共)重合体、N−ビニルピロリドン(共)重合体、ビニルアミン(共)重合体、N,N−字メチルジアリルアンモニウムクロリド(共)重合体、2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロリド(共)重合体、ポリエチレングリコールメタクリレート(共)重合体、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
なお、本発明においては、特定の構造単位を含む単独重合体、共重合体の双方或いはいずれかを示す場合、「(共)重合体」と記載することがある。
【0015】
親水性基を有する天然高分子としては、中性多糖類(例えば、セルロース、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、プルラン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、キシラン、アラビナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなど)、アニオン性多糖類(ペクチン酸、アルギン酸、アガロース、寒天、カラギーナン、フコイダン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースなど)、カチオン性多糖類(キチン、キトサン、カチオン化セルロースなど)、タンパク(ゼラチン、カゼイン、エラスチンなど)が挙げられる。
【0016】
これらのうち本発明においては、粘着ゲルシートとして、柔軟で、水分と接触しても膨潤せず良好な強度を保持させるという観点からは、多糖類が好ましく、なかでも、多点水素結合を形成しやすい中性多糖類もしくはカチオン性多糖類を用いることが好ましい。特に好ましいものとしては、β−(1→4)グリコシド結合を有する多糖類が挙げられ、セルロース、キチン、キトサン、β−(1→4)−グルコマンナン、β−(1→4)−ガラクトマンナンが特に好ましい。
本発明で(a)層の形成に用いられる親水性高分子の分子量は、シート強度保持の観点から、重量平均分子量で5000〜5000000程度であることが好ましく、10000〜1000000であることがより好ましい。
前記(a)フィルム層に占める親水性高分子の割合は、20〜100質量%が好ましく、30〜95質量%がより好ましく、45〜95質量%であることが特に好ましい。親水性高分子の比率が20質量%より小さいと、得られる粘着ゲルシートの強度が不十分となることがある。
【0017】
(親水性高分子の水不溶化処理)
本発明の(a)フィルム層を形成するための水不溶化処理は、使用する親水性高分子に応じた公知の方法を適宜選択して適用すればよい。
親水性高分子の不溶化処理工程としては、例えば、親水性高分子の水溶液または水分散液を塗布、乾燥して被膜を形成した後に不溶化処理を行う方法、あるいは、親水性高分子の水溶液または水分散液に不溶化成分を添加してゲル状とし、該ゲルにより形成された層を乾燥する方法、などが挙げられる。
ここで適用しうる不溶化処理とは、例えば、架橋剤を添加して架橋反応を生起させる処理、酸またはアルカリ処理、イオン交換処理、あるいは脱保護反応(例えば、エステルのけん化処理)等が挙げられる。
本発明における好ましい(a)フィルム層としては、(1)キトサン有機酸塩のキャスト膜をアルカリ処理した膜、(2)キトサン有機酸塩とアニオン性界面活性剤との塩交換で得られるゲルを乾燥してなる膜、(3)キトサン−アニオン性高分子とのポリイオンコンプレックスゲルを乾燥してなる膜、(4)コンニャクグルコマンナンのアルカリ処理したゲルを乾燥してなる膜、(5)セルロースキサントゲン酸ナトリウムの希酸処理により得られるセルロースフィルム、などが挙げられる。
【0018】
不溶化処理剤の添加量は、親水性高分子の種類、必要とするフィルム層強度により適宜決定されるが、不溶化処理剤を用いる場合、一般的には、0.1〜50質量%の範囲である。
(a)フィルム層には、前記親水性高分子、必要に応じて添加される不溶化処理剤の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を含むことができる。
添加剤としては、オリゴ糖、アルコール類、アミノ酸、有機酸およびその塩、油脂などが挙げられ、好ましい含有量は、0.1〜10質量%の範囲である。
【0019】
本発明において、前記(a)フィルム層の厚さは100μm以下であることを要する。(a)層の厚さは、効果の観点からは強度を保持しうる限りにおいて薄い方が好ましいが、(a)層を構成する材料の強度や取り扱い性を考慮すれば、5μm以上であることが好ましく、5〜80μmがより好ましく、10〜60μmであることがさらに好ましい。
フィルム層の厚さが100μmより大きくなると、粘着ゲルシートの柔軟性が低下し、貼付時の皮膚への追従性が低下することがある。
また、前記フィルム層の厚さ比は粘着ゲルシートの厚み全体に対して0.1〜10%であることが好ましく、0.5〜8%であることがより好ましく、1〜6%であることが特に好ましい。(a)フィルム層の厚み〔(a)〕が、ゲルシート〔(a)+(b)〕の厚みに対して、0.1%〜10%の範囲において、実用上十分な粘着ゲルシートの強度と、柔軟性、それに起因する粘着時の皮膚への追従性が優れたものとなる。このように、粘着ゲルシートの厚みにおいては、支持基材となる(a)フィルム層の占める割合が少ないことが、効果の観点から好ましいといえる。
【0020】
〔(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層〕
本発明の(b)ハイドロゲル層は、アニオン性基を有する高分子化合物を主成分として構成される含水ゲルからなる層であることが好ましい。即ち、(b)層は、アニオン性基を有する高分子化合物、及び、所望により添加される架橋成分により形成された高分子化合物のネットワーク中に、水を主成分とする液状成分が保持されてなる含水ゲルからなる層であることが好ましい。
【0021】
(アニオン性基を有する高分子)
(b)ハイドロゲル層の形成に有用なアニオン性基を有する高分子としては、カルボキシ基を有する高分子(例えば、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン等)、スルホ基を有する高分子(例えば、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、フコイダン、コンドロイチン硫酸等)、およびホスホ基を有する高分子(例えばテイコ酸、DNA、RNA等)が挙げられる。
さらには従来、化粧品、医薬品、医薬部外品、衛生材料、雑貨等の分野で経皮用途として使用されている合成高分子を使用しても良い。該合成高分子としては、(メタ)アクリル酸の単独重合体もしくは共重合体、安息香酸ビニルの単独もしくは共重合体、マレイン酸共重合体、イタコン酸共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体等が挙げられる。
【0022】
これらのなかでも、液状成分の保持性、材料の入手容易性及び取り扱い性、さらには、
使用時の保湿性向上の観点から、ゼラチン、ヒアルロン酸、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸(共)重合体がより好ましく、ゼラチン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。
アニオン性基を有する高分子は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
本発明で(b)層の形成に用いられるアニオン性基を親水性高分子の分子量は、ゲル構構造の安定性の観点から、重量平均分子量で10000〜5000000程度であることが好ましく、100000〜1000000の範囲にあることがより好ましい。
【0023】
(b)ハイドロゲル層に含まれるアニオン性高分子の割合は0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。アニオン性高分子の割合が15質量%より大きくなると、表面の粘性が向上するために生体への付着時に粘着感が強くなり、不快感を与えることがある。
【0024】
(架橋剤)
本発明に係る(b)ハイドロゲル層は、液状成分の安定的な保持の観点から、高分子化合物中に架橋剤により架橋構造が形成されたゲルからなることが好ましい。
架橋構造の形成に使用しうる架橋剤としては、架橋剤として知られる公知の化合物を挙げることができ、これらより適宜選択して用いることができるが、特に、水溶性多価金属化合物が保水性の観点から好ましい。
【0025】
水溶性多価金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、チタンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
より具体的には、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、チタンラクテート等が挙げられる。
【0026】
前記水溶性多価金属塩化合物としては、特に、水溶性のアルミニウム化合物、ジルコニウム化合物及びチタン化合物より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウム化合物がより好ましく、経時安定性の観点から、ポリ塩化アルミニウム、乳酸アルミニウムが特に好ましい。
【0027】
前記架橋剤として好適なポリ塩化アルミニウム化合物とは、アコ錯体の重縮合により形成される水溶性多核金属錯体であり、主成分が下記の(式1)、(式2)又は(式3)で示され、例えば〔Al(OH)153+、〔Al(OH)204+、〔Al13(OH)345+、〔Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムを指す。
〔Al(OH)Cl6−n (式1)
〔Al(OH)AlCl (式2)
Al(OH)Cl(3n−m) (式3)
前記(式1)〜(式3)中、nは、1〜5の整数を表し、mは0<m<3nの関係を満たす整数である。
前記水溶性多価金属塩化合物に代表される架橋剤は、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらのポリ塩化アルミニウム化合物は、大明化学工業より塩基性塩化アルミニウム(アルファイン83)の名で、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0029】
(b)ハイドロゲル層に含まれる架橋剤の量としては、前記アニオン性高分子に対して20質量%以下であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1.5〜10質量%が特に好ましい。架橋剤の添加量を上記範囲とすることで、適切なゲル形成速度により、均一な架橋構造を、液状成分の保持に有用な架橋密度で形成することが可能となる。
【0030】
本発明に係る(b)ハイドロゲル層に占める水(液状成分)の割合は、1〜99質量%であるのが好ましく、5〜95質量%であるのがさらに好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましい。
(b)ハイドロゲル層に含まれる液状成分の割合が1〜99質量%の範囲において、ゲル中に配合される薬効成分等の各種添加剤等を容易に溶解、分散することができ、実用上十分なゲル層の強度が得られ、且つ、ゲル層内に配合される溶媒や薬効成分等の添加剤を安定に保つことができる。
【0031】
〔その他の成分〕
(b)ハイドロゲル層には、アニオン性基を有する高分子化合物、所望により併用される架橋剤の他、目的に応じて他の公知の添加剤を適宜含むことができる。
〔溶媒〕
ハイドロゲル層には、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水と相分離を起こさないものであればいずれも用いることができ、かかる溶媒としては、例えば、モノアルコール類(例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等)、多価アルコール(例えば、グリセリン等)等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
〔添加剤〕
本発明の粘着ゲルシートを構成する(b)ハイドロゲル層には、網目構造を形成しうるアニオン性基を有する高分子と、少なくとも水を含む液状成分に加え、生体用粘着シートの使用目的に応じて、各種の添加剤(有効成分)を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば美容、美顔および皮膚の治療等を目的とする薬効成分のほか、保湿剤、増粘剤、香料、着色料、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、pH調整剤、キレート剤、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0033】
保湿剤としては例えば、糖類(グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ソホロース、マルトトリオ―ス、ラフィノース、スタキオース等)、糖アルコール(トレイロール、エリスリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イノシトール等)、アミノ酸類、α−ヒドロキシ酸塩(例えば乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グルコン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウムなど)、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
保湿剤のハイドロゲル中における配合量は0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0034】
薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等で使用されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、
【0035】
シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等、植物由来成分、海藻由来成分などの天然成分を挙げることができる。
【0036】
また、スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,C,D,E、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、ビタミンCエステル等のビタミン類;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;トコフェノール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸等の細胞賦活剤;γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、イオウ、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸、グルタチオン等の美白剤;
【0037】
セファランチン、カンゾウ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、1−メントール、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ−アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウミ、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油などが挙げられる。
また、経皮吸収により生体内へ投与することが可能であれば、鎮痛剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗菌性物質、等の薬効成分を添加することも可能である。
【0038】
これら有効成分、薬効成分の配合量は、その素材により有効量が異なるため一概には規定できないが、一般に生体用粘着ゲルシートの総量に対して0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明の粘着ゲルシートは、前述の如く複数の(b)ハイドロゲル層を有するものであってもよく、これら有効成分としての添加剤は、粘着ゲルシートの使用目的、用途に応じて、当該粘着シートを構成する特定の1層もしくは2層以上の(b)ハイドロゲル層のみに添加されてもよく、複数の(b)ハイドロゲル層の全てに添加してもよい。例えば、薬効成分を即効的に経皮吸収させることを目的とする場合には、皮膚に最も近い(b)ハイドロゲル層に集中して薬効成分を添加すればよい。また、薬効成分を急速に経皮吸収させるのではなく、ある程度の遅効性あるいは持続性を出すには、表層、即ち、皮膚に最も近いハイドロゲル層には極微量の薬効成分を添加し、より(a)フィルム層に近いハイドロゲル層にも適量の薬効成分を添加し、皮膚への到達速度や到達量を調整すればよい。
【0039】
〔生体用粘着ゲルシートの物性〕
本発明の粘着ゲルシートは破断強度、特に引張強度が0.1MPa以上であることが好ましい。ここで粘着ゲルシートの破断強度は、(a)フィルム層表面に(b)ハイドロゲル層を有する積層体としての破断強度を指す。
本発明における引張強度とは、厚さ1mm、幅2cm、長さ4cmの粘着シートをクリープメータ(RE2−3305B(株)山電)にて速度0.1mm/secで引き伸ばした際の破断強度を示し、この測定法において、引張強度が0.1MPa以上であることが使用時の取り扱い性の観点から好ましい。引張強度向上にはゲルシートの厚みを厚くすることが有用であるが、強度と肌への密着性や柔軟性を両立させるという観点からは、引っ張り強度は0.1MPa以上20MPa以下であることが好ましい。
破断強度がこの範囲において、優れた使用性と実用上十分な強度が得られる。すなわち、使用時に粘着ゲルシートが破れることなく、また、装着時に指へのまとわりつきにより貼付が困難になる、シートが硬くなりすぎ、皮膚への追従性が不十分になる、などの不都合が防止される。
【0040】
本発明の粘着ゲルシートは透明性が高いことが、皮膚へ添付した際の外観的な違和感を軽減する観点から好ましい。本発明における透明性は、分光光度計を用いた600nmの露光波長における透過度により評価した値を目安に評価することができる。好ましい透明性とは、上記評価法により測定した透過度が90%以上であることが好ましく、98%以上であることが特に好ましい。ここで、透過度が90%未満であると貼付時に皮膚の状態を確認することが困難となる。しかしながら、外観が考慮されない使用部位に適用する場合などは、必ずしも透明でなる必要はない。
【0041】
本発明の粘着ゲルシートの形状としては特に制限はないが、テープ状でロール状に巻いた形状で提供されてもよく、一枚一枚独立した個別のシートであってもよい。個別のシートの場合、その形状は任意であり、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、三角形、あるいはこれらが組み合わされた形状等が挙げられ、また、適用部位に沿った形状、使用部位により最も適切に貼り付けることができる形状を適宜設計してもよい。また、粘着シートの中心部や周辺部に位置合わせ等の目的で凸部や凹部を設けたり、使用部位の形状に応じて切り込みやくり抜き部分等を設けて粘着シートの取り扱い性を向上させてもよい。
これらの粘着ゲルシートは、使用時まで表面を保護するために(b)ハイドロゲル層が保護シートで被覆されていてもよく、また、水分や有効成分が経時的に減少することを防止するため、非通気性のシートからなる包装材料内に1つずつ密閉されていてもよい。
【0042】
本発明の生体用粘着ゲルシートの適用部位としては、顔(唇、頬部、目元部、目の上下部、鼻部、額部、顔全体)、腕部、脚部、胸部、腹部、背部、首部等が挙げられる。
生体用粘着シートは前記した形状のみならず、面積、厚み、(b)ハイドロゲル層最表面の粘着特性等を、適用部位に応じて適宜調整すればよい。
例えば、適用部位が顔全体である粘着用シートを形成する場合には目、口の位置に相当する部分をくり抜き、鼻の位置に相当する部分に切り込みを入れた形状とし、さらに貼付け面積が大きいことから、粘着層の粘着力を上昇させるか、厚さを薄めにする等の調整を行うのが好ましい。また、顔用の形状を2分割し、額や目、鼻の周りに適用する上部と、口の周りからあご部に適用する下部とに分けてもよい。
このような顔に貼付して肌に潤いや薬効成分を与えるシート状化粧料として、本発明の粘着ゲルシートは特に有用である。
【0043】
本発明の生体粘着用ゲルシートは、上記構成としたため、透明性、取り扱い性、皮膚の動きに対する追従性及び生体への安全性に優れている。また、液状成分を大量に安定に保持するハイドロゲル層を生体表面に接着させることで、高い保湿効果を与えるのみならず、有効成分の担持体としても有用であり、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」、「%」は、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
〔実施例1〕
〔(a)水不溶性フィルム層の調製(U−1)〕
キトサン(ダイキトサン100D:大日精化工業(株)製)0.5gを1質量%の酢酸水溶液49.5gに徐々に添加して40℃で3時間攪拌してキトサン酢酸塩水溶液を得た。
この溶液18gを、95×60mmサイズのスチロール角型ケースに入れ、80℃で2時間乾燥させる。乾燥したキトサンゲル膜を、10質量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液に60分間浸漬し、流水下で10分洗浄後、風乾して、厚さ30μmのキトサンフィルム(U−1)を得た。このキトサンフィルム(U−1)を(a)フィルム層とする。
【0045】
〔(b)ハイドロゲル層(T−1)の調製〕
水18g、1,3−ブタンジオール12gを混合する。次に、PSKゼラチン(ニッピゼラチン工業(株))の10%水溶液30gを混合し、前記キトサンフィルム(U−1)〔(a)フィルム層〕の表面に、塗布厚1mmとなるように、ドクターブレードを用いて展延する。これを室温で2時間放置することでゲル化を完了させて(b)ハイドロゲル層を形成し、(a)フィルム層(U−1)表面に(b)ハイドロゲル層(T−1)を積層してなる実施例1の生体用粘着ゲルシートを得た。(a)フィルム層のゲルシートに対する厚みの割合[(a)/〔(a)+(b)〕]は、3%であった。
【0046】
〔実施例2〕
実施例1のハイドロゲル層(T−1)の調製において、さらにポリ塩化アルミニウム(アルファイン83;大明化学(株)製)0.75gを添加混合する以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着ゲルシートを得た。
〔実施例3〕
実施例1で調整したハイドロゲル層(T−1)に代えて、下記のように調製した(b)ハイドロゲル層(T−2)を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着ゲルシートを得た。
〔(b)ハイドロゲル層(T−2)の調整〕
水18g、1,3−ブタンジオール12g、ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83;大明化学(株)製)0.25gを混合する。次に、キサンタンガム(三晶(株))の5%水溶液30gを混合し、実施例1と同様の(a)キトサンフィルム(U−1)表面に1mm厚となる様、ドクターブレードを用いて展延する。これを室温で2時間放置することでゲル化を完了させ(b)ハイドロゲル層(T−2)を形成した。
【0047】
〔実施例4〕
実施例1の(a)水不溶性フィルム層(U−1)を、以下のように調製した(a)水不溶性フィルム層(U−2)に変更した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例4の粘着ゲルシートを得た。
〔(a)水不溶性フィルム層の調製(U−2)〕
β−(1→4)−グルコマンナン(レオレックスRS:清水化学(株)製)0.5gを水溶液49.5gに徐々に添加して40℃で3時間攪拌してグルコマンナンゾルを得た。
この溶液18gを、95×60mmサイズのスチロール角型ケースに入れ、さらに0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液1.8gを加え混合した後、80℃で2時間乾燥させる。これを流水で洗浄した後、風乾させて厚さ30μmのグルコマンナンフィルムを得て、(a)フィルム層(U−2)とした。
【0048】
〔比較例1〕
ポリアクリル酸ナトリウム5g、1,3−ブタンジオール10gを水35gに溶解させた後、塩化カルシウム0.5gを加え、厚さ0.8mmとなるように均一に展延し、ポリアクリル酸ゲル状層を形成した。
次に、ゼラチン15g、1,3−ブタンジオール15gを水18.5gに溶解させた後、グルタルアルデヒド1.5gを加えて混練する。この溶液を上記のポリアクリル酸ゲル状層表面に、厚さ0.2mmとなるように均一に展延した後、50℃で60分かけて硬化させてハイドロゲル層を形成し、1mm厚の比較例1の粘着ゲルシートを得た。
〔比較例2〕
ポリアクリル酸ナトリウム5g、1,3−ブタンジオール10gを水35gに溶解させた後、合成ケイ酸アルミニウム0.5gを加え、厚さ0.8mmとなるように均一に展延してポリアクリル酸ゲル状層を形成した。
次に、ポリアクリル酸2.0g、ポリアクリル酸ナトリウム6.0g、1,3−ブタンジオール5gを水33gに溶解させた後、合成ケイ酸アルミニウム4.0gを加えて混練する。この溶液を上記のポリアクリル酸ゲル状層表面に厚さ0.2mmとなるように均一に展延した後、50℃で60分かけて硬化させてハイドロゲル層を形成し、1mm厚の比較例2の粘着ゲルシートを得た。
【0049】
〔比較例3〕
海藻由来多糖類(寒天)2gを熱水98gに溶解させ、1mm厚に均一に展延し、これを50℃で8時間かけて乾燥し、シート状成型物を得た。これを、1,3−ブタンジオールの20%水溶液に1時間浸漬させることで比較例3の粘着ゲルシートを得た。
〔比較例4〕
実施例1において、(a)キトサンフィルム層(U−1)に代えて、基材としてポリプロピレン製不織布を用いた以外はすべて実施例1と同様にして(b)ハイドロゲル層(T−1)を形成し、比較例4の粘着ゲルシートを得た。
〔比較例5〕
実施例1におけるキトサンフィルム層(U−1)の調製において、キトサン溶液の添加量18gを72gに変更した以外はすべて実施例1と同様にして、(b)ハイドロゲル層(T−1)を形成し、厚さ120μmのキトサンフィルム層を(a)フィルム層とする比較例5の粘着ゲルシートを得た。(a)フィルム層のゲルシートに対する厚みの割合[(a)/〔(a)+(b)〕]は、12%であった。
【0050】
(生体用粘着ゲルシートの評価)
上記実施例および比較例で得られた粘着ゲルシートについて、以下の方法及び基準で評価を行い、その結果を下記表1に示した。
(1)透明性
粘着ゲルシートについて、分光光度計を用いて600nmの波長における透過度を測定した。透過度が98%以上をA、90%以上〜98%未満をB、80%以上〜90%未満をC、80%未満をDとして評価した。
(2)操作性
粘着ゲルシートをモニターに実際に使用させ、顔に貼り付けてもらい、その際の操作性について以下の基準で評価した。なお、(2)〜(4)の官能評価の結果は、10人のモニターの平均値で示した。
顔に貼り付けた際に指にまとわりつかず、容易に貼付することが出来た場合をA、指にまとわりついて貼付に時間がかかった場合をB、容易に破断して貼付が困難であった場合をCとして評価した。
【0051】
(3)密着感
(2)の操作により顔に貼り付けた粘着シートが、顔の表面に沿って密着する場合をA、部分的に浮きが生じた場合をB、各部にシワができて、浮きが多数発生した場合をCとして評価した。
(4)付着性
(2)の操作により顔に張り付けた粘着シートが、30分以上安定に付着している場合をA、10〜30分付着している場合をB、10分以内に剥がれ落ちる場合をCとして評価した。
(5)引張強度
上記実施例および比較例で得られた粘着ゲルシートを幅2cm、長さ4cmに成型しサンプルとする。この粘着シートサンプルを、クリープメータ(RE2−3305B(株)山電)にて速度0.1mm/secでの引張強度を測定した。破断強度が0.1MPa以上である場合をA、0.05Mpa以上0.1MPa未満の場合をB、0.05MPa未満の場合をCとして評価した。
各評価結果について、表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果から、本発明の粘着ゲルシートは透明性に優れ、皮膚への貼付においても皮膚への追従性に優れるだけでなく、皮膚への付着感が良好であり、操作性、使用性に優れていることが分かった。
一方、親水性高分子から形成される水不溶性フィルム層であって厚みが本発明の範囲外である比較例1及び2のゲルシートは操作性や強度に劣り、海藻由来多糖シートを用いた比較例3は、密着感、付着感及び強度に劣っていた。また、不織布を基材として用いた比較例4は透明性を有さず、密着感にも劣るものであり、キトサンシートを基材として用いた比較例5では、密着性に劣り、自重により付着安定性も低下しており、いずれも、透明性と操作性や密着感とを両立させることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層と、(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層とを備える生体用粘着ゲルシート。
【請求項2】
前記親水性高分子が、多糖類であることを特徴とする請求項1に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項3】
前記親水性高分子が、β−(1→4)−グリコシド結合を有する多糖類であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項4】
前記アニオン性基を有する高分子が、ゼラチンであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項5】
前記(b)アニオン性基を有する高分子を含有するハイドロゲル層が、さらに水溶性多価金属化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項6】
前記生体用粘着ゲルシート全体の厚みに対する、前記(a)親水性高分子から形成される厚さ100μm以下の水不溶性フィルム層の厚みの割合が0.1〜10%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項7】
露光波長600nmにおける透過度が90%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項8】
引張強度が0.1MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシート。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体用粘着ゲルシートを用いたシート状化粧料。

【公開番号】特開2008−137970(P2008−137970A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327240(P2006−327240)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】