説明

生体試料の採取、刺激、安定化及び分析のためのデバイス、システム及び方法

血液試料を含む生体試料の採取、刺激、安定化及び分析のためのデバイス、システム、方法及びキットが開示される。本発明の一実施形態は、内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離する隔壁をその内部に構成する内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部及び閉鎖部材を有する容器を含み、該第一のチャンバは生体試料を受け取るように該閉鎖部材と関連して配置され、少なくとも1つの壁部は弾性的に変形可能な材料で構成され、該第一のチャンバは少なくとも1つの刺激剤を含み、該第二のチャンバは少なくとも1つの安定化剤を含み、該第一及び第二のチャンバは該内部コンパートメントの流体一体性を開放或いは損ねることなく、ユーザによって流体連通され得る。

【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本出願は、その全体を参照して本明細書に組み込まれる、2007年11月28日に出願された米国仮出願第60/990,626号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の診断法は試料の撹乱されていない生物学的状態の測定に重点をおいてきた。近年、患者の材料を刺激物質、例えば、サイトカイン、免疫調節因子、既存の薬物及び新規薬物候補に晒し、次に、多くの細胞パラメータ、例えば、細胞内シグナル伝達及びゲノムワイドな転写において誘発された変化を測定することに関心が高まっている。刺激でもって患者試料を調べることにより、さもなければ目に見えない実質的な臨床的及び診断的価値を有する生物学的状態が明らかになることをいくつかの研究は示している(Irish,J.M.ら、Single cell profiling of potentiated phospho−protein networks in cancer cells.Cell(2004)118,217−28;Van Meter,M.E.ら、K−RasG12D expression induces hyperproliferation and aberrant signaling in primary hematopoietic stem/progenitor cells.Blood(2007)109,3945−52)。
【0003】
大きな障害は、ルーチンに採血する施設の大部分が十分に管理された刺激実験を行う能力を欠いていることである。具体的な問題には、刺激剤の準備、正確な量の刺激剤の血液試料への送達及び後のシグナル伝達状態若しくは転写物量の評価のための試料の安定化が含まれる。これらの多くの施設は従来の刺激実験を行うのに必要な設備を欠いている。現在、生の患者試料は対象とするアッセイを行うことができる実験室に輸送され、又は輸送前に凍結保存される。残念なことに、HIV又は他の感染病原体に対して陽性の血液試料を含むある種の試料を非固定/非安定化状態にて輸送することは望ましくなく、適切な凍結保存も多くの施設の能力を超えている。更に、凍結保存及び生の輸送は、細胞内シグナル伝達及び遺伝子転写の変化を誘発し、且つ自然の状況での血液細胞の生態を十分に反映しないことを示す結果を生じることが示されている。
【0004】
試料採取容器は血液及び他の体液を採取及び保管するために多年にわたって用いられている。典型的には、採取容器は弾性ストッパを有するガラス又はプラスチックである。チューブが真空排気されて一定量の血液をチューブに引き込む採血管が利用可能である。チューブは特定の検査のための血液試料を調製するためにその中に含まれる様々な添加剤を有し得る。一般的な添加剤は抗凝固剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、緩衝クエン酸又はヘパリンである。他のチューブは試料中の核酸を安定化する1つ以上の固定剤を含む。そのような物質は液体又は乾燥状態にて存在し得る。採血される大部分の場所において利用可能でない液体取扱いデバイスをユーザが用いない場合、これらの既存の試料採取容器は多段階の実験を実行することができない。刺激実験は慎重にタイミングを合わせねばならない最小2つの別個のステップを要する。第一のステップでは、試料は抗凝固剤で処理され、刺激剤に晒される。一定時間後、第二のステップは保管、輸送及び後の分析のために細胞のプロテオミクス及び又はゲノム特徴を凍結及び保存する安定化溶液を加えることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、刺激実験が高精度及び一貫性を有する後の分析のために、例えば、血液試料のような生体試料を採取及び刺激する手段を有することが望ましいであろう。本明細書ではこれら及び他の目的を果たすデバイス、システム、方法及びキットが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
血液試料を含む生体試料の採取、刺激、安定化及び分析のためのデバイス、システム、方法及びキットが本明細書で提供される。生体試料に対して行われる刺激実験から生理的及び臨床的に最も関連する結果を得るため、理想的には、生体試料は患者から得られた直後に制御用量の刺激剤で刺激され、一定の時間間隔の刺激後、結果として生じた細胞内シグナル伝達及び/又は遺伝子転写は1つ以上の安定化剤によって急速に凍結状態にされるべきである。
【0007】
生体試料を採取し、アッセイし、安定化するための装置が本明細書で提供される。一部の実施形態では、装置は、内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部及び閉鎖部材を有する容器を含み、少なくとも1つの壁部は弾性的に変形可能な材料で構成される。
【0008】
一態様では、内部コンパートメントは、内部コンパートメント内の第一及び第二のチャンバを画定し、流体分離する隔壁を内側に構成している。
【0009】
一態様では、第一のチャンバは生体試料を受け取るように閉鎖部材と関連して配置される。更なる態様では、第1のチャンバは少なくとも1つの刺激剤を含み得る。刺激剤又は本明細書で言及される刺激は、生体試料中の生物学的変化をもたらし、又は生物学的変化をもたらす可能性を有する、第一のチャンバに配置された任意の作用物質、例えば、生物学的物質を含み得る。
【0010】
別の態様では、第二のチャンバは少なくとも1つの安定化剤を含む。本明細書で言及される安定化剤は、状態を維持し、即ち、生体試料中の任意の生体分子の状態の更なる変化を抑制する任意の作用物質を含み得る。
【0011】
一態様では、第一及び第二のチャンバは、容器の内部コンパートメントを開放し、或いは内部コンパートメントの流体一体性を損ねることなく、容器の壁部を変形させることによって流体連通され得る。
【0012】
一部の実施形態では、隔壁は、第一及び第二のチャンバを流体連通させるため、その流体一体性が壁部の変形によって損なわれ得る材料で構成される。
【0013】
一部の実施形態では、隔壁が破断可能な接着剤によって支持リングに取り付けられたディスク部材を含むように、弾性的に変形可能な壁部は内部コンパートメントの内部に支持リングのような支持構造を更に含み、取り付けられたディスク部材は内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定及び流体分離し、ディスク部材は、第一及び第二のチャンバを流体連通させるために、ディスク部材が壁部及び支持リング若しくは構造の変形によってずれ得るように、壁部より実質的に弾性度が低い変形可能な材料で構成される。
【0014】
本明細書で更に提供されるのは、生体試料を採取し、アッセイし、安定化するためのシステムである。一態様では、システムは、上述の採取装置、加えて、本明細書でベースステーションとも称される自動装置を含み、その自動装置は採取装置を用いる一部の態様を自動化し、複数の生体試料を刺激し、安定化し、保管し、且つ各使用に関する情報を保管及び追跡することに並行して複数の採取装置の使用を容易にすることができる。一態様では、自動装置は採取装置を操作することができる操作手段を含む。第二の態様では、自動装置は採取装置の第一及び第二のチャンバを流体連通させることができる力付与手段を含む。第三の態様では、自動装置は採取装置の温度を調節することができる熱調節手段を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供されるシステムは自動装置の機能を制御するマイクロ電子素子を更に含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される自動装置は、操作手段、力付与手段及び熱調節手段の1つ以上と機能的伝達を行い、その作動を誘発するように構成された時間調整手段を更に含む。
【0015】
システムの一部の実施形態では、採取装置はその識別を可能にする独特のタグを更に含む。システムの別の態様では、自動装置は、各タグ付き採取装置をスキャンし、識別する手段、及び1つ以上の独特のタグ付き採取装置のアッセイ・パラメータ・データを保管することができるデータベースを更に含む。
【0016】
本明細書で更に提供されるのは、上述の装置を用いて生体試料を採取し、刺激し、安定化する方法である。更なる態様では、本明細書で開示される方法は上述の自動装置を提供するステップを含み、装置は生体試料を刺激し、安定化し、保管するステップを自動的に行う。本明細書で開示される方法の一部の実施形態は、プロテオミクス又はゲノム法によって試料を解析するステップを更に含む。
【0017】
本明細書で開示される方法に従って生体試料を採取し、アッセイし、安定化するためのキットも提供される。
【0018】
本発明のこれら及び他の目的、利点及び特徴は、以下により十分に説明されているように、本発明の詳細を読み取った時点で当業者には明らかになるであろう。
(参照による組込み)
【0019】
本明細書で述べられる文献、特許及び特許出願はすべて、それぞれの文献、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照して組み込まれるべく指示されている場合と同じ程度に参照して本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明の新規特徴は、特に添付の特許請求の範囲に示される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示実施形態を示す以下の詳細な説明及び添付図面を参照して得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】容器装置(Smart Tube)の一実施形態を示す側面図である。
【図1B】図1Aに示されるデバイスを示す側面断面図である。
【図1C】図1Aに示されるデバイスを示す底面図である。
【図1D】デバイスを示す分解図である。
【図1E】デバイスを示す分解斜視図である。
【図1F】その開口部が視認可能なアンプル保持インサートを示す拡大上面図である。
【図1G】その開口形状が視認可能なアンプル保持インサートを示す側面断面図である。
【図1H】インサートの頂部が視認可能なアンプル保持インサートを示す斜視図である。
【図1I】インサートの底部が視認可能なアンプル保持インサートを示す斜視図である。
【図2】装置のプロトタイプ構成を示す前面図(2A)、上面図(2B)及び前面断面図(2C)である。インチにてプロトタイプ容器の寸法が含まれる。
【図3A】可撓性及び弾性材料製のチューブを示す前面図である。
【図3B】試料採取チャンバ、2つのコンパートメントを隔てる硬質プラスチックディスク、及び破断性接着剤によってディスクが取り付けられる一体式支持リングを示すチューブの断面図である。
【図3C】楕円形硬質プラスチックディスクを示すチューブ設計の分解前面図である。
【図3D】楕円形硬質プラスチックディスクを示す新規チューブ設計の分解側面図である。
【図3E】楕円形硬質プラスチックディスクを示す新規チューブ設計の斜視図である。
【図3F】一体式支持リングを示す、ディスクが除去された断面の斜視図である。
【図3G】支持リングを示す、ディスクが除去された断面の斜視図である。
【図4A】装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図4B】2つの上部フレーム部材とともに上面、左面及び前面パネルが除去された図4Aの装置を示す斜視図である。
【図4C】装置の一実施形態を示す前面図である。
【図4D】装置の一実施形態を示す左側面図である。
【図4E】装置の一実施形態を示す上面図である。
【図4F】前面パネルが除去された装置の一実施形態を示す前面図である。
【図4G】左面及び前面パネルが除去された装置の一実施形態を示す左側面図である。
【図5A】開位置でのベースステーション自動装置のアーマチャを示す図である。
【図5B】閉位置でのベースステーションのアーマチャを示す図である。
【図6A】ベースステーション自動装置の側面図である。図6Bの断面が点線として示されている。
【図6B】図1Aの断面図である。断面はチューブブロック中のチューブを両断している。太線四角形は図6Cにおいて拡大された領域を示す。
【図6C】図6Bにおける太線によって指定された領域を示す拡大図であり、チューブブロック中の両断チューブを示す。軸回転を生じさせる5つのカップリングの1つとインターフェースするチューブも示されている。
【図7A】1つのチューブがその中にあるベースステーション自動装置のチューブブロック・サブアセンブリを示す上面図である。
【図7B】1つのチューブがその中にあるチューブブロック・サブアセンブリを示す前面図である。
【図7C】1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリを示す側面図である。
【図7D】1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリを示す分解斜視図である。
【図8A】1つのチューブを有するベースステーション自動装置のチューブブロック・サブアセンブリを示す分解上面図である。
【図8B】1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリを示す分解左面図である。
【図8C】1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリを示す分解底面図である。
【図9A】明確にするために他のコンポーネントが除去されたベースステーション自動装置のチューブブロック及び液体冷却システムを示す斜視図である。
【図9B】明確にするために他のコンポーネントが除去されたチューブブロック及び液体冷却システムを示す斜視図である。
【図10A】採取装置上の閉鎖部材を取り換えるのに適したフィルタキャップを示す側面図である。
【図10B】デバイス(Smart Tube)上のネジ山に係合するネジ山を示す、図10Aに示されるデバイスの側面断面図である。
【図10C】デバイスの頂部が視認可能な図10Aに示されるデバイスの斜視図である。
【図10D】図10Aに示されるデバイスの上面図である。
【図10E】図10Aに示されるデバイスの底面図である。
【図10F】デバイスの底部が視認可能な図10Aに示されるデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明が説明される前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、そのようなものとして当然ながら多様であり得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0023】
数値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値(文脈上で明確に別記しない限り、下限の単位の十分の一まで)も具体的に開示されることが理解される。記載範囲における記載値若しくは介在値と、その記載範囲における他の記載若しくは介在値との間の各小範囲も、本発明の範囲内に包含される。これらの小範囲の上限及び下限はその範囲で独立して含有又は除外され得、小範囲に一方の限度、両方の限度が含まれ、又はどちらの限度も含まれない場合の各範囲も本発明の範囲内に包含され、記載範囲における具体的に除外された限度を受ける。記載範囲が一方又は両方の限度を含む場合、一方又は両方のそれらの含有限度を除外する範囲も本発明に包含される。
【0024】
別記されない限り、本明細書で用いられる専門及び科学用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で述べられるものに類似し、又はこれと等価な任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験において用いられ得るが、可能性があって好ましいいくつかの方法及び材料がこれより説明される。本明細書で言及される文献はすべて、文献が関連して引用される方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照して本明細書に組み込まれる。本開示内容は不一致がある範囲内で組み込まれる文献の開示内容に優先することが理解される。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、文脈上で明確に別記しない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「(1つの)細胞」への言及は複数のそのような細胞を含み、「(the)化合物」への言及は当業者には公知の1つ以上の化合物及びその等価物への言及を含む、などである。
【0026】
本明細書で述べられる文献は本出願の出願日前のその開示内容のためのみに提供される。本明細書のいかなるものも、本発明が先願発明に基づいてそのような文献に先行する権利がないという了解であると解釈されてはならない。更に、提供される文献の年月日は独立して確認される必要があり得る実際の公開日と異なり得る。
【0027】
生体試料を採取し、アッセイし、安定化するための装置が本明細書で提供される。一部の実施形態では、装置は、内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部及び閉鎖部材を有する容器を含み、少なくとも1つの壁部は弾性的に変形可能な材料で構成される。言い換えると、内部コンパートメントは側壁部、底壁部及び閉鎖部材の接合によって形成される。一部の実施形態では、側壁部、底壁部及び閉鎖部材は、組み立てられて内部コンパートメントを形成する異なる構成要素でよく、或いは1つ以上の態様は、限定されるわけではないが成型プラスチック又は金属のような単体の材料から形成され得る。一部の実施形態では、閉鎖部材は内部コンパートメントの開口端を露出するように着脱可能且つ交換可能である。
【0028】
容器が弾性的に変形可能な材料から構成される少なくとも1つの壁部を有すると言及される場合、壁部の形状が、容器の表面に対する意図的な曲げ又は押圧のような十分な圧力によって変形され得、自然に実質的に同じ形状に戻るということである。
【0029】
一部の実施形態では、弾性的に変形可能な壁部は側壁部、底壁部の少なくとも1つである。他の実施形態では、弾性的に変形可能な壁部は閉鎖要素、即ち、プラグ、キャップ、又はストッパのような弾性的に変形可能な要素でよく、これは力によって変形されて隔壁を崩壊させ、第一及び第二のチャンバを流体連通させ得るのに十分に柔軟であるように構成され得る。装置の外部に表面を有する装置の如何なる要素も同様にこの目的を果たすために変形能を可能にするように構成され得る。
【0030】
他の実施形態では、変形可能な壁部又は要素は弾性的に変形可能でなくてよく、即ち、隔壁を崩壊させるために力を加えた後に元の形状を保持しなくてよい。そのような実施形態では、壁部又は要素の流体一体性はそれにもかかわらず維持される。
【0031】
本発明の一実施形態では、装置は、例えば、全血のような生物組織を採取し、1つ以上の刺激剤又は刺激で含有試料を刺激し、次に、保管及び後の分析のために試料を安定化することを容易にする。これは遠隔検査場所であっても高精度及び高濃度にて供給される刺激剤に対する血液細胞の分析を可能にし得る。血液はデバイスに加えられ得る。或いは、血液は、抗凝固剤及び血液細胞において反応を誘発するように設計された1つ以上の作用物質を含み得るデバイスに直接引き入れられ得る。作用物質は刺激剤でよい。一定時間後、デバイスは、リン酸化及び又は細胞タンパク質の他の翻訳後修飾及び又はmRNA転写物量を含む、刺激剤への暴露の結果として生じた変化を含む血液細胞の細胞内状態を安定化し得る安定化溶液を第二のチャンバ又はアンプルから放出することができる。
【0032】
デバイスの最終用途の1つは治療を向上させるためにヒト患者に対して診断検査を行うことであり得る(例えば、白血病患者を層別化する、狼瘡患者の処置を導く、など)。これらの検査を適切に実施するため、ユーザは、血液がデバイスに引き入れられ、又は手動で加えられてから経過した時間を注意深く記録し、適切な時間が経過した後にデバイスを作動させねばならない。適切な時間は当該検査の診断プロトコルによって規定される(例えば、白血病患者及び狼瘡患者にとって価値があることが見出されたアッセイの場合には15分)。多くの採血場所、例えば、病院及び診療所では、職員はデバイスを正確に時間調整して作動させることを困難にし得るワークフロー制約を有する。デバイスの診断的有用性に負の影響を及ぼし得る取扱いエラーを低減し、取扱いの容易性を高めるため、本明細書でベースステーションとも称される自動装置がデバイスの時間調整及び作動を自動化し、熱制御及び試料混合を提供するように用いられ得る。
【0033】
本発明の一実施形態は、マルチチャンバ採取デバイス内の生体試料を採取し、刺激し、安定化し、保管するための使い捨てデバイス又はチューブの実施形態である。本発明は、以下に更に詳細に述べられる、使い捨てデバイスの使用を自動化し得る装置を含むシステムを更に含む。装置は適切な時間調整、試料混合及び熱制御を更に確実にし得る。本発明の一実施形態では、採血装置自体が2つの別個のステップを実施することができる。第一のステップでは、血液はチューブの第一のチャンバ又は刺激チャンバに引き入れられ得、抗凝固剤及び/又は1つ以上の刺激剤に晒され得る。一態様では、第一のチャンバは生体試料を受け取るために閉鎖部材と関連して配置される。言い換えると、閉鎖部材の存在は装置の外部に対する第一のチャンバの流体一体性を可能にする。一部の実施形態では、閉鎖部材は、さもなければ材料が装置に導入され、又は装置から除去され得る第一のチャンバにおける外部への開口部を密閉する、例えば、キャップ、ストッパ若しくは貫通可能なセルフシールプラグのようなプラグ又は他の着脱可能且つ交換可能な要素である。
【0034】
更なる態様では、第一のチャンバは少なくとも1つの刺激剤を含む。刺激剤又は本明細書で言及される刺激は、生体試料の生物学的変化をもたらし、又は生物学的変化をもたらす可能性を有する、第一のチャンバに配置された任意の作用物質、例えば、生物学的作用物質を含み得る。一部の実施形態では、生物学的変化の機序は公知である。一部の実施形態では、生物学的変化の機序は不明である。一部の実施形態では、刺激剤は、例えば、生体試料中の細胞の表面上の受容体又は細胞内部における細胞内シグナル伝達分子のような特異的な結合パートナーを有すると思われ、又は特異的な結合パートナーを有することが公知の生物活性分子又は化合物であり、これに対する結合が細胞内に生物学的作用を生じさせる。一部の実施形態では、刺激剤との接触は細胞における遺伝子発現の変化を生じさせ得る。一部の実施形態では、刺激剤は類似体として作用することにより、即ち、細胞における受容体又は他の結合パートナーに対するリガンドを模倣することによって生物学的作用を生じさせ得る。一部の実施形態では、刺激剤への暴露は生体試料中の細胞における細胞内変化をもたらし、又は細胞内変化をもたらす可能性を有する。一部の実施形態では、刺激剤への暴露は生体試料中の細胞における細胞表面分子の変化をもたらし、又は細胞表面分子の変化をもたらす可能性を有する。一部の実施形態では、刺激剤への暴露は生体試料中の細胞の細胞内変化をもたらし、又は細胞内変化をもたらす可能性を有する。刺激剤には、限定されるわけではないが、低分子、抗体及びその断片、ポリペプチド、タンパク質、受容体リガンド、ポリヌクレオチド、有機化合物、リポ多糖類、サイトカイン、ステロイド、細胞、例えば、shRNA、siRNA、ウイルス又はリポソームにおける遺伝物質を含む遺伝因子、塩類を含む無機分子並びに当技術分野において公知の他の物質が含まれる。
【0035】
一部の実施形態では、刺激剤はアッセイ及び/又は操作に対する生体試料の機械的従順性を維持するために第一のチャンバに存在するある種の物質を除外し得る。そのような物質には、限定されるわけではないが、抗凝固剤、コラーゲン又は他の細胞外及び構造的支持物質を含む、細胞外マトリクスを消化し、変性させ、又は解離させる化合物又は酵素、並びにデオキシリボヌクレアーゼ又は生体試料中に見出され得る核酸を消化する他の酵素が含まれ得る。そのような物質が第一のチャンバに存在する実施形態では、刺激剤はそのような物質を除外し得、即ち、そのような物質以外のものであり、その代わりに生体試料の特異的な生物学的変化をもたらす追加の物質であり、そのような変化には、限定されるわけではないが、遺伝子発現の変化、細胞表面分子量の変化、生存能の変化、分子の細胞移入又は排出の変化などが含まれ得る。
【0036】
本明細書で言及される安定化剤は、状態を維持し、即ち、生体試料中の生体分子の状態の更なる変化を抑制する任意の作用物質を含み得る。そのような作用物質は、mRNA、tRNA、マイクロRNA、siRNA及びcRNAを含むDNA及びRNAを効果的に安定化することができる作用物質を含み得る。核酸を安定化及び保存し、且つ/或いは遺伝子誘導を阻止するのに好適な安定化剤の例には、カチオン性化合物、洗浄剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、キレート剤等及びその混合物が含まれる。細胞表面分子のような抗原を含むタンパク質の安定化剤は当技術分野において周知であり、限定されるわけではないが、細胞を死滅させるがそのタンパク質形態及び/又は核酸を長時間保存する化合物を含む。安定化剤は、例えば、パラホルムアルデヒドのような架橋固定剤又はエタノールのような沈殿剤を含み得る。安定化剤は細胞分子間に共有結合を生じさせることにより、又はある種の細胞内分子を沈殿させることにより、又は他の手段によって作用し得る。一部の実施形態では、安定化剤は細胞溶解バッファを含む。細胞透過バッファも当技術分野において周知であり、プローブ及び染色の膜通過を可能にするために細胞膜を透過する洗浄剤を含み得る。細胞溶解バッファに用いられる洗浄剤の例には、限定されるわけではないが、Tween、Triton X−100、サポニン、NP−40などが含まれる。細胞溶解及び透過剤の濃度は所与の最終用途のために調整される。低濃度にて存在する場合、細胞溶解又は透過は最適以下であり得る。高濃度では望ましくない細胞破壊が生じ得る。各々の場合に好ましい手段を決定するためにルーチンの経験的手法が行われ得る。
【0037】
一部の実施形態では、安定化剤は細胞プロセスを阻止しながら細胞表面抗原を維持する。安定化剤によって阻止を標的とする細胞プロセスには、例えば、細胞内シグナル伝達、タンパク質輸送、タンパク質修飾、タンパク質合成、タンパク質分解、核酸合成、核酸分解、エンドサイトーシス、分泌、リン酸化、脱リン酸化、ユビキチン化及びメチル化が含まれる。
【0038】
一態様では、第一及び第二のチャンバは、容器の内部コンパートメントを開放せずに壁部を変形させ、或いは内部コンパートメントの流体一体性を損ねることによって流体連通され得る。言い換えると、壁部を変形させるのに十分な圧力が手動又は他の機械的手段によって側壁部又は底壁部に加えられると、チャンバの内容物が混合できるように、隔壁によって以前には隔てられていた第一及び第二のチャンバは流体連通される。この第一及び第二のチャンバの流体連通は隔壁の流体一体性の崩壊の結果である。
【0039】
一部の実施形態では、隔壁は、第一及び第二のチャンバを流体連通させるため、その流体一体性がコンパートメント壁部の変形によって損なわれ得る材料で構成される。そのように崩壊される隔壁の能力は一部の実施形態では構成される材料に起因する。隔壁は、例えば、外部から加えられる圧力の結果として変形した壁部との十分に強力な接触によって全体又は一部が破断可能な材料で構成され得る。そのような材料の例には、限定されるわけではないが、プラスチック又はガラス、例えば、ホウケイ酸ガラスが含まれる。一部の実施形態では、装置は、これを通じて液体が内部コンパートメントに対して加えられ、又は除去され得ると同時に、内部コンパートメント内に損なわれた隔壁の断片を保持する、メッシュ又は開口部を更に含む。本明細書で用いられる開口部は、開口部を通じた流体フローが縁形状によって促進されると同時に開口部を通じた破砕又は破断隔壁の断片の通過が阻害されるように、網状縁部を有する開口部をいう。
【0040】
一部の実施形態では、側壁部又は底壁部の変形が第一及び第二のチャンバ間の流体連通を可能にする隔壁の物理的形態をもたらすように、隔壁は変形可能又は弾性的に変形可能である。一部の実施形態では、隔壁は吸収性である。更なる実施形態では、隔壁は一定の温度にてのみ吸収性である。例えば、そのように構成される隔壁は室温にて不溶性であるが、例えば、37℃、42℃又はそれ以上のような異なる温度に加熱されると可溶性になり得る。
【0041】
一部の実施形態では、弾性的に変形可能な壁部は内部コンパートメントの内部に支持リングを更に含み、隔壁は破断可能な接着剤によって支持リングに取り付けられたディスク部材を含み、取り付けられたディスク部材は内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定及び流体分離し、ディスク部材は、第一及び第二のチャンバを流体連通させるために、ディスク部材が壁部及び支持リングの変形によってずれ得るように、壁部より実質的に弾性度が低い変形可能な材料で構成される。一部の実施形態では、支持リングは壁部から突出し、壁部と同じ材料から構成されるように一体式支持リングである。ディスク部材が壁部より実質的に弾性度が低く変形可能であるという場合、手動又は機械的手段による壁部の変形が、接着剤に対する剪断力の結果としてディスクを支持リングに取り付けている接着剤の破断前にディスクを変形させないということである。一部の実施形態では、支持リングは装置の長軸に対して非垂直角度にある。一部の実施形態では、角度は側壁部の変形による破断可能な接着剤に対する剪断力を最大にする角度であり、例えば、約45度である。破断可能な接着剤とは、予め選択された剪断力の印加と同時に、その接着機能が喪失するように接着剤が亀裂し、破断し、或いは崩壊するように、公知の剪断強度を有する接着剤をいう。当業者はこの用途のために好適な接着剤を容易に特定することができる。
【0042】
更に他の実施形態では、ディスクは支持リングの非存在下で壁部に取り付けられ、隔壁として機能するために破断可能な接着剤に依存して固定を維持する。
【0043】
更なる実施形態では、ディスクの代わりに他の任意の固形形態、形状又は膜が内部コンパートメント内に挿置され得、第一及び第二のチャンバを流体分離及び画定するためにシールを形成する。次に、この固形形態は前述のように容器の壁部の変形によって除去され、破断され、又は崩壊し、第一及び第二のチャンバを流体連通させる。
【0044】
そのようなものとして、一定時間後、試料は装置の第二のチャンバ又はアンプルからの安定化溶液で混合されることによって第二のステップにおいて安定化され得る。試料の安定化は試料の保管及び後の分析を可能にし得る。これらの2つのステップはチューブ内で実施され得、ストッパが除去されたり、採血或いは対象とする試料を採取するのに必要な標準的な針及びチューブ以外の材料を用いることを必要としない(米国特許第2,460,64号)。これにより、装置(Smart Tube)は採血されるほぼ如何なる場所においても刺激実験が実施されることを可能にする。
【0045】
本発明の一態様は、患者から生体試料、特に全血を、抗凝固剤及び1つ以上の刺激剤を含むチャンバに採取するデバイスを提供することである。血液試料は全血でよい。一部の実施形態では、血液試料は血漿でよい。血液試料はチューブに導入され得る。或いは、血液はチューブに直接引き入れられ得る。加えて、チューブは大気圧より有意に低い圧力まで事前に真空排気され得、セルフシール・ゴム・ストッパを有する。標準的な採血チューブを用いて血液は患者から直接チューブに引き入れられ得、そこで抗凝固剤及び刺激剤と接触する。所望の時間に安定剤が試料中に放出され、対象とする分析物を保存できるように、この実施形態は安定剤を充填された破断可能なアンプルも有する。従って、この実施形態は血液採取、刺激、安定化及び保管ユニットである。
【0046】
刺激剤は試料に対する公知又は不明の生物学的作用を有する物質である。一定の時間間隔の後、デバイスはそこに含まれる患者試料の細胞内シグナル伝達及び又は転写プロファイルを保存するため、1つ以上の安定化添加剤を含む流体容積を前述のチャンバに導入することができる。時間間隔はユーザによって規定され得る。安定化剤は、リン酸化のようなタンパク質の翻訳後修飾を含む細胞内シグナル伝達及び又は遺伝子転写を効果的に阻止する濃度にて存在し得る。安定化剤は、対象とする分析物の分解及び又は対象とする分析物の検出を妨げ得る修飾も阻止することができる。対象とする分析物は、限定されるわけではないが、特定のアミノ酸に対するリン酸塩のようなある種の化学基の付加又は除去を含むタンパク質の翻訳後修飾を含む。対象とする分析物は、限定されるわけではないが、DNA配列、メッセンジャRNA配列及びメッセンジャRNA転写物の存在量も含む。試料中の赤血球を溶解し、又は赤血球のその後の溶解を促進するため、安定液に作用物質(単数又は複数)が加えられ得る。
【0047】
本発明の一部の実施形態では、採取チャンバは所定量の生体試料を取り込むために試料を充填する前に大気圧以下に真空排気され得る。所定量の生体試料は血液試料に特に重要であり得る。採取チャンバは試料の凝固を阻止するのに十分な量にて乾燥又は液体形態での抗凝固剤を有し得る。
【0048】
本発明の目的は、生体試料を採取し、刺激し、安定化する装置によって達成され得る。一部の実施形態では、装置はチューブである。チューブは、限定されるわけではないが、血液、滑液、髄液、脳脊髄液、羊水又は生検組織を含む生体試料又はサンプルを採取するように設計され得る。チューブの本体は内部容器を画定する側壁部、底壁部及び開口端部から構成される容器、並びに開口端部を閉鎖する閉鎖部材又はストッパから成り得る。容器は、限定されるわけではないが、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン又はその組合せを含む任意の好適な材料で作られ得る。内部容器は刺激チャンバであり得る。一部の実施形態では、閉鎖部材はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、又は他の任意の好適な材料又はその組合せで作られるネジ込みキャップでよい。
【0049】
一部の実施形態では、第二のチャンバ又はアンプルは容器の内側にある。一部の実施形態では、第二のチャンバは容器の壁部に隣接している。第二のチャンバは細胞タンパク質の翻訳後修飾を保存するように、生体試料を安定化及び保存するのに有効な量にて安定液を予め充填され得る。一部の実施形態では、安定液はリン酸化を保存し、且つ/或いはタンパク質の合成及び分解を停止することができる。生体試料が全血である場合、赤血球溶解が望ましい可能性があるが、安定液の調合の一部の実施形態では、安定液は、例えば、白血球のような他の血液細胞タイプの溶解を阻止することができる。安定液は採血後の一定時間まで試料から離れて保持され得、次にその時点で安定液は試料に導入され得る。次に、安定液は生体試料を安定化及び保存することができる。安定液が試料から離れて保持され得る時間はユーザによって規定され得る。
【0050】
一態様では、容器の内部コンパートメントは、内部コンパートメント内の第一及び第二のチャンバを画定し、流体分離する隔壁を内側に構成している。そのようなものとして、隔壁は、第一及び第二のチャンバを分離し、その内容物の混合を阻止する1つ以上の壁部を形成する。
【0051】
一部の実施形態では、隔壁は側壁部、底壁部及び/又は閉鎖部材と構造部材を共有し、即ち、隔壁は一部又は全体が内部コンパートメントを形成する1つ以上の他の部材と一体である。一部の実施形態では、隔壁は側壁部、底壁部又は閉鎖部材と構造部材を共有せず、即ち、第二のコンパートメントは隔壁によってのみ画定される。そのような実施形態では、隔壁の構造は本明細書でアンプルと称される。
【0052】
本発明の一部の実施形態では、安定液は、刺激チャンバ内に保持された、密閉された圧潰性アンプル又は他の適切な容器に含まれ得る。チューブの本体が手動で又は機械的に把持及び屈曲されることによって湾曲又は屈曲されると、安定液は試料中に放出され得る。チューブが屈曲又は作動されると、刺激チャンバ内の非可撓性アンプルは圧潰し得る。次に、安定化剤は試料中に放出され得る。
【0053】
一部の実施形態では、圧潰性アンプルは薄壁ガラス、プラスチック、繊維又は他の好適な材料又はその組合せで作られ得る。次に、チューブを振盪或いは攪拌し、又は振動させることによって安定液と試料との混合が行われ得る。一部の実施形態では、安定液はチューブの機械的回転によって試料と混合され得る。チューブはその長軸又は短軸に沿って回転し得る。一部の実施形態では、安定液と試料との混合は、装置の内側にあって外部磁場又は類似の力に作用される磁気撹拌棒又は他の好適なコンポーネントの運動によって生じ得る。一部の実施形態では、密閉メッシュシース又はバッグでアンプルを覆うことによってアンプル破片は患者試料と混合することを阻止される。メッシュシース又はバッグは、限定されるわけではないが、ポリプロピレン、ナイロン又はその組合せを含む任意好適な生体適合性材料から作られ得る。或いは、アンプルは、限定されるわけではないが、破断アンプルの破片が試料中に放出されることを阻止するシリコーンゴム、ポリプロピレン又はその組合せを含む任意の好適な生体適合性材料でコーティングされ得る。加えて、破片が破壊するサイズを調節することによって破片は試料と混合することを阻止され得る。一部の実施形態では、破片は試料の下流プロセッシングを妨げないように結合され得る。アンプル破片が血液中に放出されることを阻止し、又は試料の下流プロセッシングを妨げないように破片の形状を調節するため、アンプルはシリコーンゴム又は同様の化合物に包埋された糸又は繊維で覆われ、コーティングされ、若しくは表面処理され、又は繊維−樹脂混合物でコーティングされ得る。別の実施形態では、閉鎖部材は合成ゴム又は当技術分野において公知であるような同様の材料で作られるセルフシール・ストッパである。
【0054】
本発明の別の実施形態では、安定液は電気的、機械的又は化学的プロセスによって刺激チャンバに導入され得る。これらのプロセスには、限定されるわけではないが、アンプル又はディスクのような隔壁を圧潰し、破壊し、又は除去するためのチューブ本体の自動機械的屈曲が含まれる。次に、安定液は回転、振盪、振動などを含む自動機械的攪拌によって生体試料と混合され得る。
【0055】
本明細書で更に提供されるのは、生体試料を採取し、アッセイし、安定化するシステムである。一態様では、システムは上述の採取装置、加えて、本明細書でベースステーションとも称される自動装置を含み、その自動装置は採取装置を用いる一部の態様を自動化し、複数の生体試料を刺激し、安定化し、保管し、且つ各使用に関する情報を保管及び追跡することに並行して複数の採取装置の使用を容易にすることができる。
【0056】
第二の態様では、自動装置は採取装置の第一及び第二チャンバを流体連通させることができる力付与手段を含む。一部の実施形態では、力付与手段は隔壁を崩壊させるために採取装置の内部の弾性的に変形可能な壁部に圧力を加える。これは、上述のように隔壁を崩壊させるために容器を打撃し、屈曲させ、圧迫し、ねじることを含む任意の好都合な物理的作用によって達成され得る。
【0057】
第三の態様では、自動装置は採取装置の温度を調節することができる熱調節手段を含む。当技術分野において公知であるように、温度を調節するための任意の手法が用いられ得る。
【0058】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるシステムは自動装置の機能を制御するマイクロ電子素子を更に含む。マイクロ電子素子は、自動装置の要素に機能的に結合され、適切な命令セットを備えると、それらの要素の活動を統制及び調整することができる任意の好都合な計算要素を含む。当業者はマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、組込コントローラ、組込プロセッサなどが本明細書で開示されるシステムの本態様に用途を見出すであろうことを認識するであろう。
【0059】
一部の実施形態では、自動装置はシステムの状態をユーザに報告することができるユーザインターフェースを更に含む。ユーザインターフェースは発光ダイオード(LED)、LCD又は他の種類のディスプレイを含み得る。
【0060】
一部の実施形態では、本明細書で提供される自動装置は、操作手段、力付与手段及び熱調節手段の1つ以上と機能的伝達を行い、その1つ以上の作動を誘発するように構成された時間調整手段を更に含む。時間調整手段は更にマイクロ電子素子に機能的に接続され、自動装置の種々の要素の時宜を得た機能を促進するためにマイクロ電子素子に統制され得る。
【0061】
そのようなものとして、ベースステーションはチューブを取り扱う一部のステップを自動化することができる。ベースステーションは刺激の間に生理的温度(37℃)で試料含有チューブを保持することができる。次に、ベースステーションは内側のアンプルを破壊するためにチューブの側面に力を加えることができる。次に、装置は安定剤と試料を混合するためにチューブを回転させ、37℃で5〜10分間チューブをインキュベートし、次に、チューブの温度を一時的な保管温度(5〜8℃)まで低下させることができる。次に、チューブは長期の保管のために−80℃に移行され、又は輸送のためにドライアイスに晒される。一部の実施形態では、チューブは手動で移送され得る。
【0062】
システムの一部の実施形態では、採取装置はその識別を可能にする独特のタグを更に含む。各装置に独特のタグを付与する際に用いるシンボリックシステムには、当技術分野において公知の無線自動識別(RFID)タグ、一次元バーコード、マトリクス又は二次元バーコード、マイクロドット・パターンなどが含まれる。システムの別の態様では、自動装置は各タグ付き採取装置をスキャンし、識別する手段、及び1つ以上の独特のタグ付き採取装置のアッセイ・パラメータ・データを保管することができるデータベースを更に含む。一部の実施形態における自動装置はアッセイ・パラメータ・データをリモート位置に送信する手段を更に含む。一部の実施形態では、リモート位置はユーザに対するデータの保管、分析及び表示の1つ以上を行うことができる外部処理システムである。
【0063】
一部の実施形態では、チューブはベースステーションによって読み取られ得る組込無線自動識別(RFID)タグを有し得る。ベースステーションは更に各RFIDタグにリンクされた実験データのデータベースを維持することができる。一部の実施形態では、ベースステーションは、チューブがいつベースステーションに進入したのか、如何に忠実に実験が行われたのか(刺激の時間、全体にわたる熱プロファイル、混合効率の測定、不適切な実行を示し得る異常な電気現象がベースステーションの電子機器に検出されたのか)、チューブがいつベースステーションから除去されたのかを追跡することができる。一部の実施形態では、データベースは外部処理システムをベースステーションとインターフェースさせることによってアクセス可能である。刺激及び安定化の後、種々の異なる分析が試料に対して行われ得る。一部の実施形態において興味深いのは、米国出願公開第20070196870号、発明の名称「Methods and compositions for detecting receptor−ligand interactions in single cells」;第20070009923号、発明の名称「Use of Bayesian networks for modeling cell signaling systems」;第20060073474号、発明の名称「Methods and compositions for detecting the activation state of multiple proteins in single cells」;及び第20050112700号、発明の名称「Methods and compositions for risk stratification」に述べられている分析プロトコルである(これらの開示内容はその全体を参照して本明細書に組み込まれる)。或いは、データベースは、イーサネット又はリモートサーバへの他の接続を介してデータベースをネットワークにアップロードすることによってアクセス可能になる。
【0064】
(I.デバイス及び組成物)
本明細書で提供されるのは、採取の時点における患者試料、特に全血の刺激、その後の迅速に実施される第二のステップでの試料の安定化に好適なデバイスである。図1は試料採取チューブ又は容器、即ち、Smart Tubeの一実施形態の複数の図を示す。デバイスの本体106は柔軟で弾力性のある弾性的に変形可能な材料で作られ得る。多くのそのような材料及びそれらを加工する方法は当技術分野において公知であり、例えば、射出成形直鎖状低密度ポリエチレン及び他の同様に耐久性のある軟質プラスチック、繊維複合体、金属組成物などが含まれる。アンプルの薄壁圧潰性ガラス壁部105はアンプルを画定し、デバイスの柔軟壁部106に対する外力が圧潰性壁部105を粉砕するのに十分な力で圧潰性壁部105を圧迫するまでチャンバ102及び103を流体分離する。次に、アンプル103の内容物はチャンバ102に放出され得る。一部の実施形態では、ホールピペット又は類似の液体取扱いデバイスによって1ミリリットルの患者試料がチャンバ102に加えられ得、次に、チャンバ102はデバイス上のネジ山107とインターフェースをとるネジ込みキャップ101で密閉され得る。デバイスは自動装置の相補的なカップリング、例えば、ベースステーションと結合され得る円筒状領域108をもって設計される。Oリングが溝部104に嵌合され得、カップリングの内径よりわずかに径が大きくてよく、円筒状領域108がベースステーションのカップリングに挿入されると、わずかに変形する。デバイスは、ベースステーションのカップリングに存在する保持クリップがデバイスをカップリングに固定することを可能にする第二の溝部109も有し得る。104におけるOリングとカップリングとの間の静止摩擦係数はカップリングの回転を可能にし得、これにより、デバイスをその長軸に沿って回転させる(軸回転)。これはチャンバ102の内容物の混合を容易にし得る。デバイスのそれぞれ遠位端及び近位端におけるテーパ状の六角形面部110及び111は、自動装置の相補面部とインターフェースをとり、デバイスにより大きな回転トルクを与え、軸回転のより良い制御を確実にし得る。チャンバ102の頂部に組み込まれた、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)又は類似の材料で作られた柔軟なアンプル保持インサート112は、その内容物がデカントされる際に圧潰アンプルの大きな断片がデバイスから離れることを阻止する。このインサート112は偶発的又は意図的に無傷のアンプルが102から除去されることも阻止するが、インサートにおける下向きの柔軟なフランジは必要に応じて小ピペットが102に進入することを可能にする。デバイス101の底部におけるチャンバ113が図1Dに示されている。チャンバ113はデバイスの製造可能性を高めることができ、接着剤又は他の手段によって付加されるRFIDタグの配置のためにチャンバを提供する。一部の実施形態では、患者の静脈に既に挿入された別の中空針に可撓性チューブによって連結された使い捨て採血チューブに連結された中空針で閉鎖部材を穿孔することによって、生体試料は刺激チャンバ102に引き入れられ得る。上部チャンバは所定量の血液又は流体約1ml〜5mlが引き入れられることを誘発する圧力まで真空排気され得る。図1Eはデバイスの分解図を示す。チャンバ102は生体試料を受け取り、且つアンプルを保持することができる。
【0065】
試料安定化アンプル103は、チャンバ102に受け取られた、刺激を受けた生体試料を安定化する量にて安定化溶液を充填され得る。刺激剤はこのチャンバに受け取られた生体試料を刺激するのに有効な量にてチャンバ102に配置される。
【0066】
図2は装置の独創的なプロトタイプの構成の前面図(図2A)、上面図(図2B)及び前面断面図(図2C)を示す。容器の可撓体及び内部に含まれるアンプルが視認可能である。ミリメートルにてプロトタイプ容器の寸法が含まれる。
【0067】
図3はディスク隔壁スキームを有するチューブの別の実施形態である。図3Aは柔軟で弾力性のある低直鎖状低密度ポリエチレン(又は同様の材料)で作られるチューブの前面図を示す。図3Bは、試料採取チャンバ301;安定化溶液を含むチャンバ302;301を302から流体分離する硬質プラスチックディスク303;及び剥離性接着剤によって303が取り付けられるチューブの本体の一部として成形される支持リング304を示すチューブの断面図である。図3Cは301を302から流体分離する楕円形硬質プラスチックディスク305を示す新規チューブ設計の分解前面図である。図3Dは楕円形硬質プラスチックディスク305を示す新規チューブ設計の分解側面図である。図3Eは楕円形硬質プラスチックディスク306を示す新規チューブ設計の斜視図である。図3Fは支持リング307を示す断面の斜視図である。図3Gは支持リング307を示す断面の斜視図である。
【0068】
隔壁によって画定又は除外される第一のチャンバ、刺激チャンバの内側は、血液試料の凝固を阻止するのに十分な凍結乾燥ヘパリン硫酸を含み得る。当技術分野において公知のように、ヘパリンは事前にチューブに加えられ、乾燥され、又は凍結乾燥され得る。対象とする刺激剤も乾燥又は凍結乾燥形態にて上部チャンバに存在し得る。刺激剤は生体試料を採取する前にチューブに加えられ得、刺激剤は凍結乾燥され得る。広範な化合物が候補刺激剤であり、低分子及び生体高分子、例えば、サイトカイン、抗体及びステロイドが含まれる。刺激剤の一例は、100ナノグラムの組換えヒトインターフェロンアルファ、公知の医学的重要性を有する免疫調節サイトカインである。刺激剤として対象とする他の免疫調節サイトカインには、限定されるわけではないが、IL−I及びIL−2(Karupiahら(1990)J.Immunology 144:290−298,Weberら(1987)J.Exp.Med.166:1716−1733,Gansbacherら(1990)J.Exp.Med.172:1217−1224及び米国特許第4,738,927号);IL−3及びIL−4(Tepperら(1989)Cell 57:503−512,Golumbekら(1991)Science 254:713−716及び米国特許第5,017,691号);IL−5及びIL−6(Brakenhofら(1987)J.Immunol.139:4116−4121及び国際公開第WO90/06370号);IL−7(米国特許第4,965,195号);IL−8,IL−9,IL−10,IL−11,IL−12及びIL−13(Cytokine Bulletin、1994夏号);IL−14及びIL−15;アルファインターフェロン(Pinterら(1991)Drugs 42:749−765、米国特許第4,892,743号及び第4,966,843号、国際公開第WO85/02862号、Nagataら(1980)Nature 284:316−320,Famillettiら(1981)Methods in Enz.78:387−394,Twuら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2046−2050及びFaktorら(1990)Oncogene 5:867−872);ベータインターフェロン(Seifら(1991)J.Virol.65:664−671);ガンマインターフェロン(Radfordら(1991)The American Society of Hepatology 20082015,Watanabeら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9456−9460,Gansbacherら(1990)Cancer Research 50:7820−7825,Maioら(1989)Can.Immunol.Immunother.30:34−42並びに米国特許第4,762,791号及び第4,727,138号);G−CSF(米国特許第4,999,291号及び第4,810,643号);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)(国際公開第WO85/04188号)が含まれる。
【0069】
免疫調節化合物はToll様受容体(TLR)のアゴニストである化合物も含み得る。一般的に、「TLR」は任意の生物種の任意のToll様受容体をいう。複数のヒトTLRがPCT公開第WO98/50547号に開示されている。ヒトTLRのアゴニストもUlevich R,(2004)Nature Reviews:Immunology,4:512−520の表1;Akira及びTakeda(2004)Nature Reviews Immunology 4:499−511の表1;Medzhitov R,(2001)Nature Reviews Immunology 1:345−145;並びにPCT公開第WO03/031573号及び第WO03/103586号に述べられている。前開示内容は参照して本明細書に組み込まれる。
【0070】
インターフェロンアルファのような多くの乾燥又は凍結乾燥化合物は血中に極めて可溶性であり、デバイスの現構成で用いられる塊状物質は接触と同時に血液試料中に即座に溶解する。刺激物の乾燥並びに或いは血清アルブミン及び又はブドウ糖を含む患者試料中の可溶性を向上させるため、追加の成分が加えられ得る。刺激剤と安定化剤はデバイスにおいて異なる形態又は調合にて提供され得る。例示として、作用物質は従来の担体及び賦形剤(即ち、ビヒクル)と混合され、粉末、水性溶液、分散系、ビーズ分散系(例えば、ある種の刺激剤及び/又は抗凝固剤の可溶性及び分散の一貫性を高めるため、刺激剤及び/又は抗凝固剤のような作用物質がビーズ上に乾燥され、且つ/或いは可溶性ビーズマトリクス(高可溶性基質において乾燥される1ミクロン径又はより小さなビーズ)に含浸している場合)、ゲル、発泡体、錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形態にて用いられ得る。一般的に、流体又は液体組成物は、懸濁剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤又は着色剤とともに、好適な液状担体、例えば、水、エタノール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールのような非水性溶媒、油、水中の活性剤の懸濁液、分散液又は溶液からなる。或いは、液体製剤は再構成可能な粉末から調製され得る。例えば、活性化合物及び懸濁剤を含む粉末は水で再構成され、懸濁液又は分散液を形成することができる。従って、本発明の多種多様の好適な刺激及び安定化製剤がある。
【0071】
主題のデバイスにおいて、有効量の刺激剤が第一のチャンバに提供され、有効量の安定化剤が第二のチャンバに提供される。「有効量」とは、所望の有用性を提供するのに十分な量の化合物をいう。例えば、細胞内シグナル伝達又は遺伝子誘導では、刺激剤の有効量は対照と比べて有用な反応を誘発し、又は誘発するように調整された量である(例えば、リン酸化タンパク質含量の増減、特定のタンパク質の翻訳後修飾の増減、遺伝子に対するmRNAの増量など)。有効量の安定化剤はこのようにして、例えば、対照に対する試料中の所望の種の安定性を判定することによっても確認され得る。そのようなものとして、適切な有効量はルーチンの実験のみを用いて当業者によって決定され得る。
【0072】
次に、ユーザは抗凝固剤及び刺激剤と患者試料との適切な混合を確実にするために複数回チューブを反転させることができる。適切な混合を確実にするためにチューブを反転させることは既存の採血デバイスでは慣行である。15分又は他の所望の刺激時間後、一部の実施形態では、ユーザは両手にチューブを把持し、約45度屈曲させて安定液を含むアンプル103を破壊し、安定液を患者試料に放出する。チューブのポリエチレン体は破損せずに屈曲に耐えるほどに柔軟で耐久性があり得、Cyalume Lightsticks(商標)を含む内部アンプルの破壊を必要とする他の用途に用いられている。次に、ユーザはチューブを10回反転させ、安定液と患者試料との適切な混合を確実にすることができる。
【0073】
別の態様では、第二のチャンバは少なくとも1つの安定化剤を含む。本明細書で言及される安定化剤は、状態を維持し、即ち、生体試料中の任意の生体分子の状態の更なる変化を抑制する任意の作用物質を含み得る。そのような変化には、限定されるわけではないが、遺伝子発現;タンパク質発現;転写物存在量のような核酸存在量;核酸分解;タンパク質又はポリペプチド存在量/分解;例えば、ポリアデニル化及びメチル化のようなポリヌクレオチドに対する転写後修飾;スプライセオソームの核酸との関連;例えば、Jak−STAT経路シグナル伝達のような任意の細胞内シグナル伝達;核酸ヘアピンループ及び二次構造形成;限定されるわけではないが、リン酸化、メチル化、ユビキチン化、SUMO化、ヘム又は補欠分子族の配位のようなポリペプチドの翻訳後修飾;タンパク質構造;タンパク質結合状態並びに当技術分野において公知の他の変化が含まれ得る。核酸を安定化及び保存し、且つ/或いは遺伝子誘導を阻止するのに好適な安定化剤の例には、カチオン性化合物、洗浄剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、キレート剤及びその混合物が含まれる。好適なリボヌクレアーゼ阻害剤は胎盤性リボヌクレアーゼインヒビタタンパク質である。カオトロピック塩の例には、尿素、ホルムアルデヒド、グアニジウムイソチオシアネート、グアニジニウム塩酸塩、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール及びテトラフルオロアセテートが含まれる。安定化剤は生体試料を処理するための別の成分も含み得る。例えば、ウイルス及び細胞を透過処理又は溶解するために化学剤が含まれ得る。他の成分には、プロテイナーゼ、フェノール、フェノール/クロロホルム混合物、アルコール、アルデヒド、ケトン及び有機酸が含まれる。洗浄剤は陰イオン洗剤、陽イオン洗剤又は非イオン洗剤でよい。陰イオン洗剤は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムでよい。非イオン洗剤は、例えば、多価アルコールのエトキシレート化脂肪酸エステルのようなエチレンオキシド縮合生成物でよい。特に興味深い非イオン洗剤はSigma Chemical Co.による商標名TWEEN 20で市販されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートである。ミセル及び核酸との他の複合体を形成するため、洗浄剤は細胞を透過処理又は溶解するのに有効な量にて含まれ得る。
【0074】
本開示デバイス及び方法の一部の実施形態では、安定化バッファは固定剤及び/又は沈殿剤を含み得る。固定剤及び沈殿剤は当技術分野において周知であり、所望のアッセイに基づいて当業者によって容易に選択され得る。架橋固定剤には、限定されるわけではないが、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド及びジメチル−silserimidateが含まれる。沈殿剤には、エタノール、酢酸、メタノール、アセトン及びその組合せが含まれる。固定剤として氷酢酸も含まれ得る。通常、固定剤は、対象とする結合事象に依存し、細胞の核酸又はタンパク質のプローブに結合する能力を破壊しない濃度にて有用である。他の有用な固定剤は当業者には明らかである。一部の実施形態では、安定化バッファ中のホルムアルデヒドの濃度は、少なくとも約0.1%、時には約0.5%、時には約0.7%、しばしば約1%、しばしば約3%、しばしば約4%、5%と同程度、最大で10%ホルムアルデヒドである。
【0075】
マイクロアレイ、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の方法によるRNA転写物の存在量の後の分析のためのRNA安定化:試料中のすべての細胞を溶解する化学物質及び白血球を溶解せずに核酸を安定化する化学物質に分類され得る、多数の化学物質が利用可能である。第一の群の一例はTrizol並びにフェノール及び又は他の有機溶媒を含む他のバッファである。第二の化学物質の一例は、RNALater及び、極めて高い濃度の、塩化アンモニウムのようなハロゲン化物塩を含む塩を含むが、有機溶媒を含まない他のバッファである。これらのバッファ及び等価製剤は当業者によって認識される。
【0076】
細胞におけるプローブと核酸とのハイブリダイゼーションが所望される場合のアッセイでは、通常、アッセイ溶液はカオトロピック変性剤、バッファ、細孔形成剤、ハイブリッド安定化剤を含み得る。カオトロピック変性剤(Robinson,D.W.及びGrant,M.E.(1966)J.Biol.Chem.241:4030;Hamaguchi,K.及びGeiduscheck,E.P.(1962)J.Am.Chem.Soc.84:1329)には、ホルムアミド、尿素、チオシアネート、グアニジン、トリクロロ酢酸、テトラメチルアミン、過塩素酸及びヨウ化ナトリウムが含まれる。少なくとも7.0〜8.0のpHを維持する任意のバッファが用いられ得る。細孔形成剤は、例えば、Brij 35、Brij 58、ドデシル硫酸ナトリウム、CHAPS(商標)TRITON X−100(商標)などのような洗浄剤である。標的生体高分子の位置に依存し、細孔形成剤は血漿又は核膜又は細胞コンパートメント構造を通じたプローブの進入を容易にするように選択される。例えば、0.05%Brij 35又は0.1%TRITON X−100(商標)は細胞膜を通じたプローブの進入を可能にするが、核膜を通じたプローブの進入を可能にしない。或いは、デソキシコール酸ナトリウムはプローブが核膜を横断することを可能にする。従って、細胞質内生体高分子標的への結合を制限するため、核膜細孔形成剤は回避される。そのような選択的細胞内位置は、標的生体高分子が細胞質に位置する場合、相補的核配列又は抗原へのプローブ結合を排除することによってアッセイの特異性及び感度に寄与する。固定剤のような洗浄剤以外の作用物質もこの機能を果たし得る。
【0077】
一般的に、安定化剤は刺激/安定化後の処理試料のプロテオーム又はゲノム解析を行う選好に基づいて選択される。
【0078】
例えば、刺激アッセイを診断法として又は研究目的のために開発する関心は、タンパク質レベルでの試料の生物学(プロテオミクス:細胞内フローサイトメトリー、ウエスタンブロットなど)に重点を置くことを望むものと、核酸レベルでの試料の生物学(ゲノミクス:マイクロアレイ、PCRなど)に重点を置くことを望むものとに広範に分類される。本発明のデバイス及び方法は両方のニーズを満たすように適用され得る。具体的には、デバイス及び方法は、タンパク質及び細胞内シグナル伝達を安定化する安定化溶液或いは核酸種を安定化する安定化溶液のような、異なる安定化溶液を用い得る。プロテオミクス適用では、安定化剤はタンパク質及び細胞内シグナル伝達を安定化する安定化剤である。特に興味深いのは、赤血球を溶解するが白血球を溶解せず、細胞表面抗原を保存すると同時に、タンパク質合成、タンパク質分解、RNA合成、DNA合成、核酸分解、エンドサイトーシス、分泌、リン酸化、脱リン酸化、ユビキチン化、メチル化及びその組合せから選択される少なくとも1つの細胞プロセスを阻止する安定化剤である。
【0079】
一部の実施形態において興味深いのは、蛍光活性化細胞選別(FACS)又はフローサイトメトリーのような単一細胞選別を可能にするのに適した細胞表面を保存する安定化剤である。興味深いのは、試料の細胞内リン酸特異的抗体染色がフローサイトメトリー又はFACSによって解析される場合である。FACS技術は細胞の物理特性及び/又はその特定のタンパク質或いは糖タンパク質エピトープ及び代謝物の相対的発現レベルに基づき、単一細胞マルチパラメータ解析及び選別を容易にする。対象とするタンパク質上の独特のリン酸化エピトープ又は「ホスホエピトープ」に特異的な蛍光抗体の使用は、FACS解析の範囲を更に拡大した。「ホスホFACS」と称されるこの新規用途は細胞内リン酸化カスケードを示すための最適なツールとなった。そのようなものとして、血液又は末梢由来の細胞サブセットへのホスホFACSの適用は、頻回又は稀であろうとも、病理学的バイオマーカ及び治療法の革新の発見に役立つ。その単一細胞データを生成し、患者試料に存在する細胞の不均一混合物を還元する能力のため、ホスホFACS技術はシグナル伝達カスケードを測定する他の解析方法と比べて多くの利点を特徴付ける。
【0080】
更に、フローサイトメトリーに好適な上記の方法で処理される試料が、ウエスタンブロット、キャピラリー電気泳動、マイクロフルイディクス、質量分析(精製後)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)及びその組合せを含む、実質的にいかなるプロテオミクス技術によっても解析可能であることが見出されている。
【0081】
そのようなものとして、一部の実施形態では、安定液は、細胞溶解物よりも単一細胞懸濁液を必要とするリン酸特異的フローサイトメトリー又は他の方法による、タンパク質存在量及び又はタンパク質の翻訳後修飾のその後の分析のためのバッファでよい。全血を含む生体試料に対する安定液の1つの効果的な調合は、リン酸緩衝食塩水中のパラホルムアルデヒドの溶液である。約0.1%〜約4%の最終濃度になるパラホルムアルデヒドの血液試料への導入は、効果的にタンパク質分解を阻止し、リン酸化を含む細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質の翻訳後修飾を保存することができる。安定液に加えられ得る他の添加剤には、ジエチレングリコール、Triton X100及び又はサポニンが含まれる。全血中に得られる細胞、例えば、免疫細胞が刺激及びアッセイされる実施形態では、赤血球特異的溶解バッファを用いて試料中の赤血球を溶解することは興味深いといえる。これらの添加剤は細胞内タンパク質修飾状態及び又は細胞の溶解を安定化する能力を向上させることができる。単一細胞選別又はフローサイトメトリー解析が必要とされる刺激アッセイでは、安定化剤は0.1%〜10%パラホルムアルデヒドを含み得る。本発明者は、ジエチレングリコールの含有が細胞内タンパク質修飾状態及び/又は試料中の赤血球の溶解を安定化する能力を向上させることも見出した。一部の実施形態では、ジエチレングリコールは体積比で約0.001%まで低く、時には約1%、時には約3%、最大で約10%の最終濃度にて安定化剤中で有用である。安定化剤中の成分として更に興味深いのは極性非プロトン有機溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)である。一部の実施形態では、DMSOは体積比で約1%、最大で約10%の最終濃度にて安定化剤中で有用である。2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(DNBS)も約5〜50mM又は約20〜30%の濃度にて有用である。上述のように、洗浄剤TWEEN 20は標識プローブに対する細胞の透過処理のために他の洗浄剤とともに有用である。本発明者は、FACS解析を目的として、TWEEN 20の使用がサポニン又はTriton x100の使用より好ましいことを、ベンゼン環及びその非局在化電子系を含む後者の洗浄剤が解析中により高いバックグラウンド自己蛍光をもたらすという理由で見出した。
【0082】
単一細胞選別又はフローサイトメトリー解析に関する実施形態のための安定化剤の好ましい実施形態は、約0.001%〜10%ジエチレングリコールを含む約0.1%〜10%ホルムアルデヒド;約1%〜10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、5〜50mM 2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(DNBS)及び約0.001%〜1.0%Tween 20を含む約0.1%〜5%ホルムアルデヒド;約1%〜3%ジエチレングリコールを含む約1%〜3%ホルムアルデヒド;並びに6%〜7%DMSO、20%〜30%DNBS及び0.07%〜0.2%Tween 20を含む約0.7%〜1%ホルムアルデヒドの生体試料中の最終濃度を含む水性溶液を含む。
【0083】
以下のステップを用いてプロテオミクスに最適な安定液が調製され得る。安定液は再蒸留H2O(又はリン酸緩衝食塩水)を用いて調製され得る。安定液は生体試料中の最終濃度が3%ホルムアルデヒド及び3%ジエチレングリコールになるように供給され得る。アンプル内のこれらの試薬の濃度は最大3倍濃度でよい。試料中の核酸の合成及び分解を停止する安定液の別の調合が用いられ得る。本発明で用いられ得る他の安定液の調合が当技術分野において公知であり、その全体を参照して本明細書に組み込まれる米国出願2006/0105372A1、米国特許第6,204,375号及び米国特許第5,346,994号に開示されている調合が含まれる。
【0084】
一部の実施形態では、チューブの処理ステップはリン酸特異的フローサイトメトリーによる解析を含み得る。
【0085】
本明細書で述べられる本発明の一部の実施形態では、チューブのアンプルは再蒸留H2O(又はリン酸緩衝食塩水)中の約4.5%パラホルムアルデヒド、約4.5%ジエチレングリコールからなる約2ミリリットルの安定液の総容積を有し得る。この安定液はチューブ内の2ミリリットルの血液を効果的に安定化するために用いられ得る。安定液は、T細胞、B細胞、単球及び顆粒球を含む、健常ヒトドナーから採血された血液中の複数の白血球集団におけるシグナル伝達タンパク質のサイトカイン誘導翻訳後修飾を解析するためにも用いられ得る。
【0086】
加えて、ウエスタンブロット、抗体アレイ、タンパク質アレイ又は細胞溶解物を必要とする他の方法によるタンパク質存在量及び又はタンパク質の翻訳後修飾のその後の解析のために、バッファが安定液に加えられ得る。1つの適切な製剤は、当業者には公知の広範に作用するプロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を含むドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に通常用いられるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)細胞溶解バッファである。
【0087】
一部の実施形態では、安定液は、特に転写物存在量を定量する目的で、マイクロアレイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)リアルタイムPCR、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、cDNAマイクロアレイ、マクロアレイによるRNA転写物の存在量のその後の解析のためにRNA安定化を生じさせ得る。試料中のすべての細胞を溶解する化学物質及び白血球を溶解せずに核酸を安定化する化学物質に分類され得る複数の化学物質がある。核酸を安定化する化学物質の例には、限定されるわけではないが、Trizol並びに、フェノール及び/又は他の有機溶媒を含む他のバッファ、或いは極めて高い濃度の、塩化アンモニウムのようなハロゲン化物塩を含む塩を含むが、有機溶媒を含まないRNALaterのような他のバッファが含まれる。
【0088】
処理が完了した後、チューブは分析のために施設に輸送するためにドライアイスを充填された容器に移され得る。或いは、チューブはフリーザ、理想的には−80℃又はそれ以下に温度を維持するフリーザに保管され得る。−80℃での保管は1カ月以上タンパク質修飾及び又は遺伝子転写存在量を含む患者試料の臨床的に重要な特徴を保存するのに適切であり得るが、保管の効果は事前に判定されねばならない。
【0089】
(II.システム)
本明細書で更に提供されるのは、生体試料を採取し、アッセイし、安定化するシステムである。一態様では、システムは上述の採取装置、加えて、本明細書でベースステーションとも称される自動装置を含み、自動装置は採取装置を用いる一部の態様を自動化し、複数の生体試料を刺激し、安定化し、保管し、且つ各使用に関する情報を保管及び追跡することに並行して複数の採取装置の使用を容易にすることができる。
【0090】
図4Aはベースステーションの一実施形態を示す。図4Bは2つの上部フレーム部材とともに上面、左面及び前面パネルが除去された図4Aの装置の斜視図を示す。図4Cは装置の一実施形態の前面図を示す。図4Dは装置の一実施形態の左側面図を示す。図4Eは装置の一実施形態の上面図を示す。図4Fは前面パネルが除去された装置の一実施形態の前面図を示す。図4Gは左面及び前面パネルが除去された装置の一実施形態の左側面図を示す。
【0091】
デバイス401(チューブ)は温度制御されたアルミニウムブロック402における相補的穴部に挿入され得る。デバイス401はブロック402の後部から出ることができ、タイトフィットによりカップリング403に挿入することができる。カップリング403の軸回転は、チューブ401とカップリング403との相補的タイトフィットによってチューブの軸回転を生じさせることができる。歯車モータ404は、アラインメントプレート406によってブロック402における穴部と整列して保持されたギヤシステム5によってカップリング403を回転させることができる。適時に電動リニアアクチュエータ407は楔形アーマチャ408をブロック402に保持されたチューブ401に押し込むことができ、これにより、チューブ401の壁部を屈曲させ、チューブ401の内側の圧潰性アンプルを破壊する。アンプルが破壊された後、チューブ401がカップリング403によって自由に回転されるように、リニアアクチュエータ407はアーマチャ408を引き込むことができ、従って、アンプルから放出される安定液とチューブ内の試料物質との適切な混合を確実にする。
【0092】
ブロック402の温度は、極めて高い熱伝導性を有する熱エポキシによってブロック402の表面に取り付けられた2つのペルチェ409によって制御され得る。ブロック402に取り付けられていない側のペルチェ409は熱エポキシによって銅ヒートスプレッダ410に取り付けられ得る。銅ヒートスプレッダ409は熱エポキシによって2つのウォーターブロックに取り付けられ得る。ペルチェ409がブロック402を活動的に冷却している際、ペルチェ409は、ブロック402に取り付けられたペルチェ409の側からヒートスプレッダ410に取り付けられた側へフォノンを移動させることにより、ブロック402から熱を送り出している。このプロセスでは廃熱も生じる。この熱の総計はヒートスプレッダ410からチャンバ411に受動的に拡散し、冷却液ポンプ412によってチャンバ411を通じて送り込まれる水ベースの冷却液によって運搬され、そこからファン冷却ラジエータ413へ運搬される。冷却液はファン冷却ラジエータ413からメイン冷却液リザーバ414に戻ることができ、そこから冷却液ポンプ412によって汲み上げられて回路内に戻る。12ボルトのパワーサプライ415はベースステーションのすべてのコンポーネントに動力を与える。サイクルを開始するには、ユーザはSmart Tubeをチューブブロック402に配置し、開始ボタン416を押す。LCD画面417はユーザに状態情報を提供する。実行の終了にあたり、Smart Tubeは4〜8℃まで冷却され、ユーザが停止ボタン418を押し、チューブを−80℃の保管に移し、又は分析のためにドライアイスで実験室に輸送するまでその温度に保持される。
【0093】
容器及びその内容物を加熱し、且つ/或いは冷却し、従って、内部コンパートメントにおける反応混合物の温度を制御するため、任意の好都合な熱素子が用いられ得ることが当業者には理解されるであろう。一般的に、ブロックを加熱するのに好適な加熱素子には、伝熱性ヒータ、対流ヒータ又は輻射ヒータが含まれる。伝熱性ヒータの例には、ブロックに結合された抵抗又は誘導加熱素子、例えば、レジスタ又は熱電素子が含まれる。好適な対流ヒータには、強制空気ヒータ又は流体熱−ブロックを通過して流体を流すための交換装置が含まれる。好適な輻射ヒータには、赤外線又はマイクロウェーブヒータが含まれる。加熱素子は金属、タングステン、ポリシリコン又は材料に跨って電圧差が付与される際に加熱する他の材料を含み得る。同様に、ブロックを冷却するために様々な冷却素子が用いられ得る。例えば、ファン、ペルチェ素子、冷却素子又はブロックの表面を通過して冷却流体を流すためのジェットノズルのような様々な対流冷却素子が用いられ得る。或いは、様々な伝導冷却素子が用いられ得る。
【0094】
図5Aは開位置にある2つのチューブを保持して示されるベースステーションのアーマチャを示す。図5Bは閉位置にあるベースステーションのアーマチャを示す。アーマチャ501はベースステーションが作動されている大部分の時間、開位置にある。リニアアクチュエータ502が延長すると、アーマチャ501をデバイス503(チューブ)の柔軟な壁部に押し込み、壁部を屈曲させ、デバイスの内側の安定剤アンプルを破壊する。チューブにおける試料の混合はチューブの軸回転による。アーマチャは504において閉位置に、リニアアクチュエータは505において延長位置に示されている。
【0095】
図6は、チューブの遠位端と結合し、チューブに軸回転を伝達するチューブカップリングを含むベースステーションのブロックの断面を示す。図6Aでは図6Bの断面図の平面が点線601として示されている。太線四角形602は図6Cで拡大されている領域を示す。チューブブロックにおけるテーパ状穴部603はデバイス604に形状が相補的であり、その一例がチューブブロックに挿入されて示されている。デバイスの遠位端はデバイスをその長軸に沿って回転させるカップリング605の1つと結合する。チューブブロックにおけるスロット606は、チューブの長軸に垂直な方向にチューブの柔軟な壁部に力を加えるアーマチャにクリアランスを付与する。
【0096】
図7はチューブブロック・サブアセンブリの詳細な仕組みを示す。図7Aは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの上面図を示す。図7Bは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの前面図を示す。図7Cは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの左側面図を示す。701はチューブキャップである。702はSmart Tubeである。703はチューブブロックである。704は、Smart Tubeの底部と結合し、Smart Tubeの底部における六角形面部の相補的相互作用を通じて軸回転トルクを伝達する(ソケットレンチに類似するが、面部はテーパ状である)。705は、カップリングを回転させ、歯車モータ709によって生じる回転運動を変換する他の平歯車と噛み合うFairloc Hubを有する平歯車である。705は704のシャフトに対して平歯車をロックするシャフトカラーとして機能するFairloc Hubを有する。706は704及び705のサブアセンブリが回転し、シャフト・アラインメント・プレート707に支持されることを可能にするスラスト軸受である。708は704及び705のサブアセンブリが回転し、707に支持されることを可能にするスラスト軸受及びシャフトカラーである。シャフトカラーは704のシャフトにロックしてサブアセンブリをまとめて堅く保持し、一方、スラスト軸受706及び708はサブアセンブリが回転することを可能にする。一対のペルチェ710は熱ブロックに対して熱(フォノン)を送り込み、又は送り出すことによってチューブブロック703を熱制御する。ペルチェは銅ヒートスプレッダ711を介して一対のウォーターブロック712と熱伝達する。
【0097】
図8Aは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの分解上面図である。801はチューブキャップである。802はSmart Tubeである。803はチューブブロックである。804はSmart Tubeの底部と結合し、Smart Tubeの底部における六角形面部の相補的相互作用を通じて軸回転トルクを伝達する(ソケットレンチに類似するが、面部はテーパ状である)。805は、カップリングを回転させ、歯車モータ809によって生じる回転運動を変換する他の平歯車と噛み合うFairloc Hubを有する平歯車である。805は804のシャフトに対して平歯車をロックするシャフトカラーとして機能するFairloc Hubを有する。806は804及び805のサブアセンブリが回転し、シャフト・アラインメント・プレート807に支持されることを可能にするスラスト軸受である。808は804及び805のサブアセンブリが回転し、807に支持されることを可能にするスラスト軸受及びシャフトカラーである。シャフトカラーは804のシャフトにロックしてサブアセンブリをまとめて堅く保持し、一方、スラスト軸受806及び808はサブアセンブリが回転することを可能にする。一対のペルチェ810は熱ブロックに対して熱(フォノン)を送り込み、又は送り出すことによってチューブブロック803を熱制御する。ペルチェは銅ヒートスプレッダ811を介して一対のウォーターブロック812と熱伝達する。図8Bは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの分解左面図である。図8Cは1つのチューブを有するチューブブロック・サブアセンブリの分解底面図である。
【0098】
図9Aは明確にするために他のコンポーネントが除去されたチューブブロック及び液体冷却システムの斜視図である。水ベースの冷却液はポンプ903によって冷却液ホース902を介してリザーバ901から送り出される。次に、冷却液はホース904を介して冷却液の循環によってほぼ一定の温度に維持されたウォーターブロックに送り込まれる。冷却液は、冷却液をファン冷却ラジエータ(熱交換器としても公知)に運搬するホース906に統合するホース905によってウォーターブロックを脱する。冷却液ホース908はラジエータ907から冷却液をリザーバ901に戻すことによって冷却液回路を完了する。図9Bは明確にするために他のコンポーネントが除去されたチューブブロック及び液体冷却システムの斜視図である。
【0099】
(III.方法)
本明細書で開示される容器装置及び自動システムを用いる方法が提供される。これを用いて生体試料を採取し、刺激し、安定化する方法が開示される。一態様では、その方法は、内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部(少なくとも1つの壁部は弾性的に変形可能な材料で構成される)及び閉鎖部材を含む試料採取容器(内部コンパートメントは内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定し、流体分離する隔壁をそこに配置し、第一のチャンバは生体試料を受け取るように閉鎖部材と関連して配置される)、生体試料を刺激するのに効果的な量での第一のチャンバにおける少なくとも1つの刺激剤並びに生体試料を安定化するのに効果的な量での第二のチャンバにおける少なくとも1つの安定化剤を提供するステップと、患者から生体試料を採取し、生体試料を刺激剤に晒すために生体試料を第一のチャンバに導入するステップと、刺激を受けた生体試料を生成するために予め選択された時間、第一のチャンバにおける生体試料を刺激するステップと、隔壁を損傷させて第一及び第二のチャンバの内容物を混合することによって予め選択された時間後に刺激を受けた生体試料を安定化するステップとを含む。
【0100】
「予め選択された時間」とは、生体試料がデバイスの第一のチャンバに受け取られた後、その直後から最大1時間後又はそれ以上の時間後に第一のチャンバにおける生体試料及び刺激剤が第二のチャンバにおける安定化剤と混合されることをいう。一般的に、第一のチャンバにおける試料の刺激は、試料及び対象とする特定のアッセイに依存し、秒単位で約5分〜30分、通常、約10分〜約20分の範囲である。
【0101】
一部の実施形態では、生体試料は患者から採取され、直接試料採取容器の第一のチャンバに入れられる。更なる実施形態では、生体試料は患者から採取され、試料採取容器ではない容器に入れられ、その後、試料採取容器の第一のチャンバに導入される。
【0102】
提供されるデバイス、方法及びキットが有用性を見出す生体試料には、一例として全血が含まれる。
【0103】
しかし、本明細書で開示される方法が極めて広範な適用性を有することは当業者には明らかであろう。分子生物学分野における細胞及び組織の採取、保管、アッセイ及び培養のための複数の別個のコンパートメントを有する容器の使用は広範であり、それが適用される細胞の多様性において無限に近い。本明細書で開示されるデバイス、システム及び方法は、容器の一体性若しくは無菌性又はアッセイの迅速性を損ねることなく、プラスチック容器内の分離チャンバの内容物を単一のチャンバに移行可能にする方法を提供する。そのようなものとして、本発明の開示実施形態が、その後の処理及び分析のためにバイオアッセイの結果を保存するため、細胞又は組織が少なくとも刺激剤及び安定剤に連続的に晒される如何なる多段階アッセイを行うのにも有用であることを当業者は認識するであろう。そのようなものとして、任意の対象者又は患者由来の如何なる生体試料も本発明の方法に従って刺激及び安定化され得る。
【0104】
従って、提供される方法及びキットが有用性を見出す生体試料には、限定されるわけではないが、全血、滑液、脳脊髄液、羊水及び、例えば、脆弱な腫瘍由来の腫瘍細胞を含む生検組織が含まれ得る。生体試料は患者から得られる体液又は生検固形物でよい。一実施形態では、生体試料は全血である。他の生体試料には、細胞含有組成物、例えば、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血漿、血清、尿、骨髄穿刺液、組織、細胞及び他の体液が含まれる。更に興味深いのは固形組織試料、例えば、容易に解離される生体組織である。
【0105】
興味深いのは血液障害である。血液障害は血液細胞の形成異常変化に至り得る血液細胞の異常増殖及び種々の白血病のような血液悪性腫瘍を含む。血液障害の例には、限定されるわけではないが、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び鎌状赤血球貧血が含まれる。
【0106】
本明細書で開示される方法に従って細胞が得られ、分析され得る癌の他の例には、限定されるわけではないが、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞癌、潰瘍性及び乳頭タイプの扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、胆石、膵島腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、有毛細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸管神経節細胞腫、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍、ウイルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部異形成及び上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部組織肉腫、悪性カルチノイド、局所皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性肉腫及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多形神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌並びに他の癌腫及び肉腫が含まれる。
【0107】
患者から得られ得る如何なる組織も開示される方法に従って容易に刺激剤に暴露され、その後、安定化され得るため、そのような暴露から生じる如何なる細胞変化もその後に分析され得る。
【0108】
更なる態様では、本明細書で開示される方法は上述の自動装置を提供するステップを含み、その装置は、生体試料を刺激するために事前に選択された時間、試料採取容器及びその内容物を37℃に保持し、その長軸に沿って試料採取容器を回転させて容器内の刺激剤との混合を確実にし、次に、容器壁部を変形させて隔壁を損傷させ、その長軸に沿って試料採取容器を回転させて第一及び第二のチャンバの内容物を混合し、安定化の間に所定の温度にて所定の時間、試料採取容器をインキュベートし、試料採取容器及びその内容物の温度を−80℃〜10℃まで低下させる。一部の態様では、その方法は室温又は室温以下の保管温度にて試料を保管し、且つ/或いは輸送するステップを更に含む。
【0109】
患者試料は1つ以上のチューブに加えられ得る。患者試料はシステムのユーザによって手動で加えられ得る。一部の実施形態では、患者試料は自動的に加えられ得る。次に、チューブ(単数又は複数)は装置に挿入され得る。充填チューブはベースステーションの一部である熱制御されたアルミニウムブロックにおける相補的穴部又はドックに加えられ得る。穴部は生理的温度(約37℃)に予熱され得る。ベースステーションは、ベースステーションの機能を制御するマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラのようなマイクロ電子手段を有し得る。ベースステーションが作動されると、自動サイクルが開始する。或いは、ベースステーションはどの穴部又はドックが占有されているのかを検知することができ、次に、ベースステーションは自動的に開始することができる。チューブがドックに挿入されると、チューブの低い部分はドックにおける穴部を通過し、チューブの底部を保持するカップリングに進入し得る。カップリングの内径はチューブの底部の外径よりわずかに大きいが、チューブにおけるゴムOリングの外径より小さくてよい。チューブがカップリングに挿入されると、ゴムOリングはわずかに変形し、これにより、チューブとカップリングとのぴったりした嵌合を生じさせることができる。チューブはカップリングの回転によってその長軸に沿って断続的に回転され得る。この回転トルクはチューブのゴムOリングとカップリングとの間の静止摩擦係数によってチューブに伝達され得る。チューブの回転はチューブの内側の血液がチューブの内側の刺激剤と完全に混合し、全体にわたる均一な温度に達することを確実にする。チューブはカップリングにおける相補的面部と結合する六角形面部も有し、この結合はより大きなトルクがカップリングによってチューブに加えられることを可能にし、カップリングによるチューブの軸回転を確実にする。
【0110】
一定時間の後、ベースステーションはチューブを自動的に作動させることができる。その一定時間はベースステーションが作動される時間から計測され得、約15分でよい。チューブは、楔形揺動アーマチャをドックの柔軟な壁部内に駆動させる電気モータ駆動線形アクチュエータのステップによって作動され得る。駆動運動はチューブの内側のアンプルの圧潰を引き起こし得る。アーマチャがチューブを作動させた後、内容物は前述の軸回転によって混合され得る。安定剤が所定の時間、例えば、10分、血液に作用した後、ベースステーションは穴部又はドックの温度を試料の短時間保管に適切な温度まで下げることができる。一部の実施形態では、穴部又はドックは約8℃まで下げられる。次に、ベースステーションはチューブの処理が終了したことを信号で伝えることができる。一部の実施形態では、ベースステーションは処理が、限定されるわけではないが、発光ダイオード(LED)(又は同様の素子)の点灯、トーンの発射、又はその組合せを含む任意の知覚デバイスによって完了したことを信号で伝えることができる。
【0111】
処理が完了すると、作動チューブは輸送のためにフリーザ又はドライアイスのボックスに移される必要がある前に数時間、穴部又はドックに残留することができる。ドックの温度制御は、熱エポキシを介してチューブを保持するアルミニウム・チューブブロックに取り付けられ得るマイクロプロセッサ制御ペルチェによって制御され得る。ペルチェは追加の取付け部品の有無にかかわらず、アルミニウムブロックに取り付けられ得る。一部の実施形態では、ただ1つのペルチェが取り付けられる。一部の実施形態では、2つ以上のペルチェが取り付けられ得る。マイクロプロセッサはドック又は穴部の現温度を求めるため、限定されるわけではないが、サーミスタ、サーモカップル又は同様のデバイスを含むセンサを用いることができる。次に、マイクロプロセッサは現温度とその実験のステップに所望される温度との差を求めることができ、どれほどの電力をペルチェに供給すべきかを判定するために比例・積分・微分(PID)コントローラのようなフィードバック制御アルゴリズムを用いる。次に、マイクロプロセッサはペルチェに電力を供給するため、パルス幅変調(PWM)シグナルをHブリッジに送ることができる。ペルチェを貫通する電流の方向は、ペルチェがドック又は穴部を加熱又は冷却するのかを指示することができる。PWMシグナル幅(デューティサイクル)は平均電圧、従って、ペルチェに送られ得る効果的な電力を決定することができる。チューブブロックと接触しない側のペルチェはヒートスプレッダを介してウォーターブロック(又は空気ベースのヒートシンク)に取り付けられ得る。回路に液体が注入され得る。回路はウォーターブロック及びファン換気ラジエータユニット中に液体を運搬することができる。ウォーターブロック及び冷却回路はペルチェの一側を室温近傍に維持することができる。ペルチェの一側を室温近傍に維持することは、ペルチェが実験プロトコルによって必要とされるようにドックを効率的に加熱又は冷却することを可能にする。
【0112】
本明細書で開示される方法の一部の実施形態は、プロテオーム又はゲノム的方法によって試料を分析するステップを更に含む。そのようなプロテオーム又はゲノム的方法には、限定されるわけではないが、フローサイトメトリー、多標識飛行時間質量分析、タンパク質マイクロアレイ、PCR、リアルタイム定量PCR、核酸マイクロアレイ、RNAiアレイ、細胞アレイ、cDNAアレイ、ペプチド配列決定及び核酸配列決定が含まれる。
【0113】
(IV.キット)
本発明の方法に従って生体試料を採取し、アッセイし、安定化し、分析するためのキットも提供される。一態様では、そのようなキットは上述の採取チューブを含む。
【0114】
更なる実施形態では、生体試料を分析及び処理するためのキットが提供される。一部の実施形態では、キットは提供される容器装置の閉鎖部材を交換することができるフィルタキャップを含み、フィルタキャップは内部コンパートメントに対して液体が付加又は除去され得るメッシュを含むとともに内部コンパートメント内に損傷隔壁の断片を保持する。図10は、内容物がデカントされた際に容器の内側のアンプルの断片を保持するために用いられ得るフィルタキャップを示す。クロスハッチパターンはフィルタキャップに取り付けられたナイロンフィルタを示し、アンプル断片を除去するのはこのフィルタである。このメッシュの開口サイズは250ミクロン〜2000ミクロン、例えば、約500ミクロン〜約1000ミクロンの範囲内である。微細なメッシュは空気の進入を制限し、少量をデカントするには良くないため、良好な貫流を確実にするために粗いナイロンフィルタが用いられる。図1に示されるアンプル保持インサートは大きなアンプル断片を除去するのに効果的であり、一方、このフィルタキャップはほぼ如何なるサイズのアンプル断片でも除去するのに効果的である。インサート及びキャップは独立して又は組み合わせて用いられ得る。
【0115】
別の態様では、キットは低張溶解バッファ、高張溶解バッファ、透過バッファ及び染色バッファを更に含む。保管からの除去後、細胞は連続的な低張溶解バッファ及び、任意に高張溶解バッファによる処理によって浸透圧に晒され得る。キットの一部の実施形態では、低張溶解バッファ及び高張溶解バッファは洗浄剤を含む。好ましい実施形態では、洗浄剤はTween 20である。一般的に、全血が生体試料である場合に赤血球のような不要な細胞を溶解するため、安定化バッファに存在するパラホルムアルデヒドのような固定剤の量が多いほど、第一(低張)及び第二(高張)溶解ステップにおける洗浄剤の必要性が高くなる。対象とする細胞の透過処理後、細胞は、例えば、標識抗体によって対象とする抗原に対して染色され得る。本明細書で開示される試薬及びキットの使用は以下の例示実施例によって当業者には明らかにされる。
【0116】
特許請求されるデバイス、システム、方法及びキットが用途を見出し得る生体試料には、限定されるわけではないが、全血、滑液、脳脊髄液、羊水が含まれる。
(V.実施例)
【実施例1】
【0117】
(リン酸特異的フローサイトメトリーを用いた安定化生体試料の分析)
リン酸特異的フローサイトメトリーによる分析の1つのプロセスは以下のステップを含む。生体試料が血液である場合、残留赤血球を溶解する作用物質を含み得るddH2Oで生理的pHにて凍結試料を2回洗浄することができる。任意に、赤血球を溶解するために用いられ、赤血球を溶解するのに効果的であることが示されている洗浄剤である0.1%Triton X100又は0.1%サポニンをddH2Oに加えることができる。次に、リン酸緩衝食塩水で細胞を洗浄し、4℃に冷却された80%メタノール及び20%リン酸緩衝食塩水の2ミリリットルの溶液中にペレットを再懸濁させる。次に、メタノール固定された細胞懸濁液を−80℃にて保管することができる。処理を継続するには、リン酸緩衝食塩水中に溶解した0.5%ウシ血清アルブミンからなる染色媒体でメタノール固定された細胞懸濁液を2回洗浄し、次に、当技術分野において公知であるように、染色し、ホスホFACSによって解析する。
【実施例2】
【0118】
(Smart Tube内に凍結された試料を処理するためのSmart Tubeキットを用いた安定化生体試料の分析とリン酸特異的フローサイトメトリーによるその後の解析)
以下のプロトコルでは、リン酸特異的フローサイトメトリーによるその後の解析のためにSmart Tube内に凍結された試料を処理するための上述の容器装置及びキットを用いる。
【0119】
処理キットのコンポーネントは以下のものを含む。
i.フィルタキャップ(フィルタメッシュ開口部のサイズは500ミクロン〜2000ミクロン)
ii.溶解バッファ1:再蒸留H2O(ddH2O)中0.03%Tween 20
iii.溶解バッファ2:2倍リン酸緩衝食塩水(2X PBS)中0.03%Tween 20
iv.1リットルの2X PBS=NaCl 16g,KCl 0.4g,Na2HPO4 2.88g,KH2PO4 0.48g(pH7.4)
v.透過バッファ1:20%PBSを含む80%メタノール(使用前に氷上で予冷却)
vi.染色バッファ1:PBS中0.5%ウシ血清アルブミン
【0120】
(A.採取・刺激・安定化全血試料の解凍;赤血球の溶解)
37℃水浴にて10分間試料を解凍する。キャップを取り外し、2mlの溶解バッファ1を加え、キャップを再び取り付け、10秒間ボルテックスする。キャップをフィルタキャップに交換し、15ml円錐形チューブ内にデカントする。任意に、細胞集塊を除去するために細胞ストレーナが配置された50ml円錐形チューブに交換することができる。溶解バッファ1で円錐形チューブを充填し、37℃水浴(42℃は独特の利点を有する代替温度である)にて10分間インキュベートする。800xgで5分間遠心分離する。上清を廃棄する。結果として生じたペレットが白色である場合(未溶解赤血球がない)、次のセクション、リン酸特異的フローサイトメトリーによる解析のための染色に進む。結果として生じたペレットが赤色である場合(未溶解赤血球を有する)、ペレットを10mlの溶解バッファ2中に再懸濁させ、37℃水浴(42℃は独特の利点を有する代替温度である)にて10分間インキュベートする。800xgで5分間チューブを遠心分離し、デカントし、溶解バッファ1でペレットを洗浄する。結果として生じたペレットは完全な赤血球溶解に対応して白色であるはずである。リン酸特異的フローサイトメトリーによる解析のための染色に関するセクションに進む。
【0121】
(B.リン酸特異的フローサイトメトリーによる解析のための染色)
上記のペレットを含むチューブをボルテックスし、ペレットをほぐす。各チューブに1mlの透過バッファを加え、5秒間ボルテックスしてペレットをバッファ中に再懸濁させる。チューブを−80℃に移す。試料は更なる処理の前に少なくとも30日間−80℃で保管され得る。更なる処理のため、各チューブに少なくとも4mlの染色バッファを加え、4℃で5分間、800xgで遠心分離する。デカントし、4ml洗浄の染色バッファで更に2回ペレットを洗浄する。各ペレットを100ulの染色バッファ中に再懸濁させ、抗体染色のために100ulの細胞懸濁液を新たなFACSチューブ(又はプレート)に移す。各試料に抗体カクテルを加え、室温で30分間、暗室で染色する。通常、この用途のための抗体カクテルには、1つ以上の蛍光標識リン酸特異的抗体、例えば、STAT5(pY694)に特異的なクローン47(Becton Dickinson社カタログ番号612598)及び細胞型限定表面エピトープに特異的な1つ以上の蛍光標識リン酸特異的抗体、例えば、CD33に特異的なP67.6(Becton Dickinson社カタログ番号341640)が含まれる。染色バッファでチューブを充填し、800xgで遠心分離し、デカントする。用途に適切なフローサイトメトリー・プラットフォーム、例えば、Becton Dickinson社製のFACSCalibur又はLSRIIで解析する。推奨されるように1mlの患者血液がSmart Tubeに採取され、刺激される場合、試料は異なる染色カクテルでの解析のために少なくとも4つの異なるFACSチューブに分割され得ることに留意する。
【0122】
前述したことは単に本発明の原理を例示するものである。本明細書で明確に説明され、又は示されないが本発明の原理を具現化し、その精神及び範囲内に包含される種々の構成を当業者が工夫することができることが理解される。更に、本明細書で述べられるすべての実施例及び条件付き用語は、主に、本発明の原理及び本発明者によって当技術分野の促進に寄与する概念の理解を助けるものであり、そのような特定の記載実施例及び条件に限定されるものではないと理解される。更に、本発明の原理、態様及び実施形態を述べているすべての記載並びにその具体的な実施例は、その構造的及び機能的等価物を包含するものとする。加えて、そのような等価物は現在既知の等価物及び今後開発される等価物、即ち、構造にかかわらず同じ機能を果たす開発要素を含むものとする。従って、本発明の範囲は、本明細書で示され、説明される典型的な実施態様に限定されないものとする。むしろ、本発明の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって具現化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を採取し、アッセイし、安定化するための装置であって、
内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部及び閉鎖部材を有する容器を含み、前記内部コンパートメントが、前記内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離する隔壁を内部に構成し、前記第一のチャンバが、前記生体試料を受け取るように前記閉鎖部材と関連して配置され、
少なくとも1つの前記壁部が弾性的に変形可能な材料で構成され、
前記第一のチャンバが少なくとも1つの刺激剤を含み、
前記第二のチャンバが少なくとも1つの安定化剤を含み、
前記第一及び第二のチャンバが、前記内部コンパートメントの流体一体性を開放或いは損ねることなく、前記少なくとも1つの壁部を変形させることによって流体連通され得る、装置。
【請求項2】
前記隔壁が、前記第一及び第二のチャンバを流体連通させるために前記壁部の変形によってその流体一体性が損ねられ得る材料で構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記隔壁が、破断性及び吸収性のうち1つ以上の性質を有する材料で構成された、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
メッシュ及び開口部のうち1つを更に含み、これを通して前記内部コンパートメントに対して液体が付加又は除去され得ると同時に、前記内部コンパートメント内に損傷した前記隔壁の断片を保持する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記隔壁が前記第二のチャンバを画定するアンプルを形成する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記アンプルがホウケイ酸ガラスで構成された、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記壁部が前記内部コンパートメントの内部において支持リングを更に含み、
前記隔壁が、破断可能な接着剤によって前記支持リングに取り付けられたディスク部材を含み、前記取付けディスク部材が、前記内部コンパートメントにおける前記第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離し、
前記ディスク部材が、前記第一及び第二のチャンバを流体連通させるため、前記ディスク部材が前記壁部及び支持リングの変形によってずれるように、前記壁部より実質的に弾性度が低い変形可能な材料で構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記支持リングが一体式支持リングであり、前記装置の長軸に対して非垂直角度にある、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記角度が約45度である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第一のチャンバに存在する抗凝固剤を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記刺激剤が生物学的物質である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記刺激剤が抗体である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記刺激剤が低分子である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記刺激剤がサイトカインである、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記刺激剤が免疫調節サイトカインである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記刺激剤がToll様受容体リガンドである、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記安定化剤が固定剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記安定化剤が細胞溶解バッファを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記安定化剤が、細胞表面抗原を維持すると同時に、タンパク質合成、タンパク質分解、核酸合成、核酸分解、エンドサイトーシス、分泌、リン酸化、脱リン酸化、ユビキチン化及びメチル化からなる群より選択される少なくとも1つの細胞プロセスを阻止する、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記安定化剤が核酸を保存する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記安定化剤が、細胞溶解バッファ又は赤血球特異的細胞溶解バッファを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記安定化剤が固定剤及び赤血球細胞溶解バッファを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記安定化剤がタンパク質及び細胞内シグナル伝達を安定化する、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記安定化剤が、特に転写物存在量を定量する目的で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、cDNAマイクロアレイ、マクロアレイによるその後の解析のために核酸を保存する、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記安定化剤が、単一細胞選別及び又はフローサイトメトリー解析を可能にするために細胞表面を好適に保存する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記単一細胞選別が蛍光活性化細胞選別である、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記蛍光活性化細胞選別及び又はフローサイトメトリー解析が、リン酸特異的抗体を用いる、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記安定化剤が、約0.1%〜10%ホルムアルデヒド、0.001%〜10%ジエチレングリコールの前記生体試料中の最終濃度を含む水性溶液である、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記安定化剤が、約0.1%〜5%ホルムアルデヒド、1%〜10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、5〜50mM 2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(DNBS)、0.001%〜1.0%Tween 20洗浄剤の前記生体試料中の最終濃度を含む水性溶液である、請求項22に記載の装置。
【請求項30】
前記安定化剤が、1%〜3%ホルムアルデヒド及び1%〜3%ジエチレングリコールの前記生体試料中の最終濃度を含む水性溶液である、請求項22に記載の装置。
【請求項31】
前記安定化剤が、0.7%〜1%ホルムアルデヒド、6%〜7%DMSO、20%〜30%DNBS、0.07%〜0.2%Tween 20洗浄剤の前記生体試料中の最終濃度を含む水性溶液である、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記第一のチャンバが大気圧より低い内圧を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記内圧が、所定量の前記生体試料を前記第一のチャンバに引き込むように設定された、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記生体試料が、全血、滑液、脳脊髄液、羊水及び腫瘍細胞から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
生体試料を採取し、アッセイし、安定化するためのシステムであって、
a)請求項1に記載の採取装置と、
b)i)前記採取装置を動かし、回転させ、揺動させ、超音波振動させ、亜音速振動させることの1つ以上によって前記採取装置を操作することができる操作手段と、
ii)前記採取装置の前記第一及び第二のチャンバを流体連通させることができる力付与手段と、
iii)前記採取装置の温度を調節することができる熱調節手段とを含む自動装置と
を含む、システム。
【請求項36】
前記自動装置の機能を制御するマイクロ電子素子を更に含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
システムの状態をユーザに報告することができるユーザインターフェースを更に含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記操作手段、前記力付与手段及び前記熱調節手段の1つ以上と機能的に伝達し、前記操作手段、前記力付与手段及び前記熱調節手段の1つ以上の作動を誘発するように構成された時間調整手段を更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記採取装置が、その識別を可能にする独特のタグを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記独特のタグが、RFIDタグ、一次元バーコード、マトリクス・バーコード及びマイクロドット・パターンからなる群より選択される、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記自動装置が、1つ以上のタグ付き採取装置のアッセイ・パラメータ・データを含むデータを収集する、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記アッセイ・パラメータ・データをリモート位置に伝達する手段を更に含む、請求項41に記載の自動装置。
【請求項43】
前記リモート位置が、前記データの保存、前記データの解析及び前記データのユーザに対する表示のうち1つ以上を行うことができる外部処理システムである、請求項42に記載の自動装置。
【請求項44】
前記隔壁が、前記第一及び第二のチャンバを流体連通させるために前記壁部の変形によってその流体一体性が損なわれ得る材料で構成され、
前記力付与手段が、前記壁部を変形させることによって前記採取装置の前記第一及び第二のチャンバを流体連通させることができる、請求項35に記載のシステム。
【請求項45】
前記壁部が、前記内部コンパートメントの内部に支持リングを更に含み、
前記隔壁が、破断可能な接着剤によって前記支持リングに取り付けられたディスク部材を含み、前記取付けディスク部材が、前記内部コンパートメントにおける前記第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離し、
前記ディスク部材が、前記第一及び第二のチャンバを流体連通させるため、前記ディスク部材が前記壁部及び支持リングの変形によってずれるように、前記壁部より実質的に弾性度が低い変形可能な材料で構成された、請求項35に記載のシステム。
【請求項46】
生体試料を採取し、刺激し、安定化する方法であって、
内部コンパートメントを画定する弾性的に変形可能な材料で構成される壁部、底壁部及び閉鎖部材を含む試料採取容器(前記内部コンパートメントは前記内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離する隔壁を内部に配置し、前記第一のチャンバは前記生体試料を受け取るように前記閉鎖部材と関連して配置される)、生体試料を刺激するのに効果的な量での前記第一のチャンバにおける少なくとも1つの刺激剤、並びに前記生体試料を安定化するのに効果的な量での前記第二のチャンバにおける少なくとも1つの安定化剤を提供するステップと、
患者から生体試料を採取し、前記生体試料を前記刺激剤に晒すために前記生体試料を前記第一のチャンバに導入するステップと、
刺激を受けた生体試料を生成するために予め選択された時間、前記第一のチャンバにおける前記生体試料を刺激するステップと、
前記隔壁を損傷させて前記第一及び第二のチャンバの内容物を混合することによって、前記予め選択された時間後に前記刺激を受けた生体試料を安定化するステップと
を含む、方法。
【請求項47】
前記安定化剤が、細胞溶解バッファ又は赤血球特異的細胞溶解バッファを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記安定化剤が固定剤及び赤血球溶解バッファを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記安定化剤がタンパク質及び細胞内シグナル伝達を安定化する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記安定化生体試料がプロテオミクス技術によってその後に解析される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記プロテオミクス技術がウエスタンブロット技術である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記プロテオミクス技術がキャピラリー電気泳動技術である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記プロテオミクス技術がマイクロフルイディクス技術である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記安定化剤が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、cDNAマイクロアレイ及びマクロアレイ技術のうち1つ以上によるその後の解析のために核酸を保存する、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記技術が配列決定技術である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記安定化剤が、単一細胞選別及び/又はフローサイトメトリー解析を可能にするのに好適な細胞表面を保存する、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記単一細胞選別が蛍光活性化細胞選別である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記蛍光活性化細胞選別がリン酸特異的抗体を用いる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記フローサイトメトリー解析が誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記隔壁が、前記第一及び第二のチャンバを流体連通させるために前記壁部の変形によってその流体一体性が損ねられ得る材料で構成され、
前記隔壁の前記損傷が前記壁部を変形させることによって達成される、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
請求項35に記載の自動装置を提供するステップを更に含み、前記装置が、
前記刺激の間に前記試料採取容器及びその内容物を37℃に保持し、
前記壁部を変形させて前記隔壁を損傷させ、
前記試料採取容器をその長軸に沿って回転させて前記第一及び第二のチャンバの内容物を混合し、
前記安定化の間、所定の温度で所定の時間、前記試料採取容器をインキュベートし、
前記試料採取容器及びその内容物の温度を−80℃〜10℃まで下げる、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記生体試料が、前記患者から採取されて前記試料採取容器の前記第一のチャンバに直接入れられる、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記生体試料が、前記患者から前記試料採取容器ではない容器に採取され、その後、前記試料採取容器の前記第一のチャンバに導入される、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
全血試料を採取し、刺激し、安定化する方法であって、
内部コンパートメントを画定する側壁部、底壁部及び閉鎖部材を有する試料採取容器(前記内部コンパートメントは、(i)前記内部コンパートメントにおける第一及び第二のチャンバを画定し、且つ流体分離する隔壁(前記第一のチャンバは前記生体試料を受け取るように前記閉鎖部材と関連して配置され、前記第一のチャンバは大気圧より低い圧力を有する)と、(ii)全血試料を刺激するのに効果的な量での前記第一のチャンバ内に含まれる少なくとも1つの刺激剤及び前記全血試料を安定化するのに効果的な量での前記第二のチャンバ内に含まれる少なくとも1つの安定化剤とをその内部に配置する)(少なくとも1つの前記壁部は弾性的に変形可能な材料で構成される)を提供するステップと、
患者から全血試料を採取し、前記全血試料を前記刺激剤に即座に晒すために前記第一のチャンバに直接導入するステップと、
刺激を受けた全血試料を生成するために所望の時間、前記第一のチャンバにおける前記全血試料を刺激するステップと、
前記壁部を変形させることによって前記隔壁を損傷させ、前記第一及び第二のチャンバの内容物を混合することによって、前記所望の時間の直後に前記刺激を受けた全血試料を安定化するステップと
を含む、方法。
【請求項65】
前記刺激するステップが、所定の時間、所定の反応温度で前記試料を維持するステップを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項66】
前記方法が、前記試料を室温又は室温以下での保管温度で保管し、前記試料を室温又は室温以下での保管温度で輸送するステップのうち1つ以上を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、プロテオミクス又はゲノム法によって前記試料を解析するステップを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項68】
前記プロテオミクス又はゲノム法が、フローサイトメトリー、タンパク質マイクロアレイ、PCR、リアルタイム定量PCR、核酸マイクロアレイ、RNAiアレイ、細胞アレイ、cDNAマイクロアレイ、ペプチド配列決定及び核酸配列決定から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
生体試料の刺激プロファイルを分析する方法であって、刺激プロファイルのために生体試料を分析するステップを含み、前記生体試料が請求項46に記載の方法に従って調製される、方法。
【請求項70】
前記方法が、試料を室温〜100℃の温度まで加熱することによって試料を処理するステップを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項71】
前記方法が、試料を40℃〜50℃の温度まで加熱することによって試料を処理するステップを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項72】
生体試料を採取し、アッセイし、安定化するためのキットであって、請求項1に記載の装置を含むキット。
【請求項73】
生体試料を分析及び処理するためのキットであって、
請求項3に記載の装置の閉鎖部材を取り換えることができるフィルタキャップと(前記フィルタキャップは、これを通じて前記内部コンパートメントに対して液体が付加又は除去され得ると同時に、前記内部コンパートメント内に損傷した前記隔壁の断片を保持するメッシュ又は開口部を含む)、
低張溶解バッファと、
高張溶解バッファと、
透過バッファと、
染色バッファと
を含む、キット。
【請求項74】
前記メッシュにおける開口部が、サイズで約500ミクロン超であり、サイズで約2000ミクロン未満である、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
前記低張溶解バッファ及び前記高張溶解バッファのうち1つ以上が洗浄剤を含む、請求項73に記載のキット。
【請求項76】
前記洗浄剤がTween 20である、請求項75に記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【公表番号】特表2011−505011(P2011−505011A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536014(P2010−536014)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/013217
【国際公開番号】WO2009/073152
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(510147352)スマート チューブ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】