説明

生体試料を顕微鏡構成内で位置決めするための方法

本発明は、少なくとも1つの好ましくは生体試料(2)を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための方法及び装置に関する。方法及び装置は、検出用対物レンズ(13)の光軸に対する試料(2)の向きを複数回変えたときに、各検出方向から試料(2)に向かってほぼ遮蔽されない視野が確保されるように試料(2)を保持する。種々の変形形態において、試料(2)は、接着力によって支持装置の外面または内面に保持される。または、試料(2)は、流体媒体によって支持装置の外面または内面に保持される。または、試料(2)は、毛細管作用によって流体媒体用の毛細管の開口に保持される。または、透明ゲル(1)からなるゲル体に少なくとも1つの試料(2)が埋め込まれ、回転可能な保持装置(3)によってゲル体が試料空間内に固定され、保持装置(3)が回転されることによって所定の回転角だけ検出方向が変えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの好ましくは生体試料を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための方法に関する。さらに、本発明の対象は、この方法を実施するための装置である。
【背景技術】
【0002】
本発明による試料保持具は、特に、SPIM(単平面照明顕微鏡法、選択的平面照明顕微鏡法とも呼ばれる)に関連して使用することができる。共焦点レーザ走査顕微鏡法では、試料が複数の異なる深さの面内で点ごとに走査され、そこから試料の3次元の画像情報が取得されるのに対し、SPIM技術は、広視野顕微鏡に基づき、試料の様々な面を通る光学断面に基づいて試料の3次元画像表現を可能にする。
【0003】
ここで、SPIM技術の利点は、とりわけ、画像取得が行われる速度がより高いこと、生体試料の褪色がより少ないこと、および試料内への焦点の浸透深さがより深いことである。
【0004】
SPIM技術は、例えば、非特許文献1,2および特許文献1,2に記載されている。
これらの刊行物から、とりわけ、様々な視線方向からの3次元画像データの取得に関して、試料の最適な向き調整を可能にする試料ホルダが知られている。さらに、試料は、円柱体に成形されたゲルの中に埋め込まれ、このゲル円柱体が、浸漬媒体、例えば水を充填された試料室内に入れられる。このとき、ゲルの屈折率は、周囲を取り巻く浸漬媒体の屈折率と実質的に異なっていてはならない。
【0005】
ここで、試料から出た検出光を収集する検出用対物レンズの光軸は、ゲル円柱体の回転軸に実質的に垂直に向きを調整される。
その際、画像情報から高品質の3D像を算出することができるように、検出方向の頻繁な変化にもかかわらず、試料から取得される画像情報が重畳するように試料を試料空間内で位置決めするのは難しいことが多い。さらに、特に注目すべき試料部分を最適に視野内へ動かすことができるように試料を位置決めすべきである。さらに、試料をできるだけ長く生きた状態で観察することができ、可能なら、検出後にもさらなる用途のために生きた状態を保つことができることが望ましい。
【0006】
さらに、多数の同様の試料を、時間単位当たり高い処理量で順次に検出することが求められることもよくある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10257423A1号
【特許文献2】WO2004/0530558A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Stelzer et al.,Optics Letter 31,1477(2006)
【非特許文献2】Stelzer et al.,Science 305,1007(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のことから、本発明の目的は、より高い効率で、少なくとも1つの好ましくは生体試料を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めすることができるようにする方法および装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、検出用対物レンズの光軸に対する試料の向きを複数回変え、試料の向きを変えたときに、各検出方向から試料または試料の一部分に向かってほぼ妨げられない視野が確保されるように試料を保持することによって解決される。その様々な変形形態において、
試料を、接着力によって支持装置の外面または内面に保持する、
試料を、流体媒体によって支持装置の外面または内面に保持する、
試料を、毛細管作用によって流体媒体用の毛細管の開口に保持する、または、
透明ゲルからなるゲル体の中に少なくとも1つの試料を埋め込み、回転可能な保持装置によってゲル体を試料空間内に固定し、保持装置を回転させることによって所定の回転角だけ検出方向を変える。
【0011】
最後に挙げた事例では、試料を入れるための凹部を設けたゲル体にゲルを予め成形し、その後、試料を凹部に入れて該凹部の内部で位置決めすることが好ましい。
ゲル体に中空円錐形の凹部を設けることが特に好ましい。試料は、中空円錐体の頂点に位置決めされ、試料の生存に悪影響を及ぼさない小さい力の作用によって試料が中空円錐体の頂点に保持される。
【0012】
例えば、試料を含むゲル体は、保持装置が回転するときにも重力の作用によって試料が中空円錐体の頂点に保持されるように保持装置に固定される。これは、ゲル体の対応する位置調整によって達成される。
【0013】
この変形形態は、凹部内にある試料が比較的自由に動くことができ、試料の環境面でさらに成長することができるという利点を有するだけでなく、観察または検出の終了後に試料を再びゲル体から取り出すことができ、それによりさらなる検査に使用することもできる。
【0014】
代替方法として、本発明による1つの方法は、試料を入れた後に凹部を覆う、または試料を入れた後に凹部に透明な媒体を注入し、この媒体によって試料を凹部内で所定位置に、好ましくは中空円錐体の頂点に保持することである。
【0015】
このために、初めは流体であるが、ある時間の経過後に所定の温度の下で硬化する媒体を使用することが特に有利であり、それにより、硬化後に試料が凹部の内部で所定位置に固定される。
【0016】
複数の試料を検出する際により高い処理量を達成するために、本発明によれば、まず、ゲルをゲル体に予め成形し、予め成形されたゲル体に、試料の数に対応する数の凹部を設け、その後、各凹部にそれぞれ1つの試料を入れて各凹部の内部で位置決めし、場合によっては固定するようになされる。
【0017】
任意選択で、試料を、順次にまたは同時に凹部に入れ、試料を入れた後、凹部を蓋で閉じることができる。
さらなる特定の1つの形態では、まず、試料を入れるべき凹部の領域内でゲル体を加熱し、次いで試料を入れ、その後、初めは流体であるが、後で硬化する媒体を凹部に入れ、その後、前もって試料が装填され且つ硬化性の媒体が充填されたこの凹部の領域内でゲル体を冷却することによって硬化を加速する、すなわち硬化工程の期間を所定の時間だけ短縮するようになされる。
【0018】
この場合、第1の凹部の領域内でゲル体を所定の周期で加熱し、次いで試料を第1の凹部に入れ、硬化性の媒体を第1の凹部に注入すると同時に第2の凹部の領域内でゲルを加熱し、その後、第1の凹部の領域内でゲルを冷却すると同時に試料を第2の凹部に入れ、硬化性の媒体を注入し、第3の凹部の領域内でゲルを予熱し、その後、第2の凹部の領域内でゲルを冷却すると同時に試料を第3の凹部に入れ、硬化性の媒体を注入し、第4の凹部の領域内でゲルを予熱し、各凹部に1つの試料が含まれ固定されるまで以下同様に続けると有利である。
【0019】
試料を凹部に入れることに関して、複数の試料を試料リザーバ内に保存し、試料リザーバから試料を個別に取り出し、凹部に入れ、試料の個別化および凹部への送入が自動的に行われるようにすることが好ましい。
【0020】
試料リザーバから装填位置への試料の搬送、および凹部への送入は、カニューレを通して行うと有利である。また、試料を、カニューレを通して、支持装置の外面もしくは内面における、または毛細管の開口における所定位置に導くと有利である。
【0021】
複数の試料をゲル体の中に入れる方法の代わりに、各試料を個別に、割り当てられた凹部に埋め込み、それぞれ1つの試料を含むゲル体を、個別にまたは順次に試料空間内に搬送し、それぞれ封じ込められた試料の検出が終了した後、再び試料空間から搬出するようにすることができる。
【0022】
本発明によれば、第1の部分量のゲルを、長手方向に沿って分割されたカニューレの第1の半体内に置き、次いで、この第1の部分量の上に試料を載せ、その後、試料の上に第2の部分量のゲルを載せ、分割されたカニューレの第2の半体を、圧力をかけながら載せる。その結果、この両方の半体の間に中空の円筒形ができ、ゲルが、カニューレの内径に相当する外径を有するとともに、その中に試料が封じ込められたゲル体として成形される。これによって、ゲルからなるゲル体の中に試料を埋め込むことができる。
【0023】
当然ながら、カニューレが、長手方向ではなく別の様式で分割される場合や、またはカニューレではなく、同様に成形された物体を利用する場合にも、同じ目的が達成される。
次いで、埋め込まれた試料の位置をゲル体の内部で位置合わせすることが望まれる場合、封じ込められた試料を含むがまだ硬化していない状態のゲルからなるゲル体を監視ステーション内に入れ、監視ステーションによってゲル体の中での試料の位置を評価し、この評価の結果に応じて、重力の作用により試料がゲル体の中で所望の位置に沈下するように重力に対してゲル体の向きを調整する。
【0024】
この場合、監視ステーションは、使用者が目で監視できるように、またはセンサおよび評価回路によって光電子的に監視できるように設計することができる。
また、より大きな寸法の生体物質または他の物質から抽出される試料も検出することができるように、本発明では、物質に向いて鋭利に研がれたカニューレの端部を物質中に押し込み、次いで、カニューレの内部を移動できるように案内されるとともに摺動棒と接続されたスタンプによって、物質からカニューレを引き抜くときに部分量をカニューレ(35)内に留め、その後、その部分量を含むカニューレを試料空間内に入れ、そこで、摺動棒およびスタンプによって、部分量の一部分だけをカニューレから押し出し、押し出された部分は試料として検出され、残りの部分はカニューレによって保持される。
【0025】
試料が埋め込まれるゲルとして、また硬化性の媒体として、例えばアガロースゲルが考慮される。
本発明の目的は、さらに、以下の様々な変形形態に記載される装置によって解決される。
【0026】
すなわち、少なくとも1つの生体試料を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための装置の第1の変形形態は、
各ゲル体にそれぞれ1つの試料が封じ込められる、同じ形状および大きさを有するゲル体のリザーバと、
試料空間内にあるゲル体の保持装置と、
ゲル体リザーバからゲル体を個別に取り出し、ゲル体を保持装置に貯蔵するための取出しおよび貯蔵装置と、
保持装置からゲル体を取り出し、搬出するための取出しおよび搬出装置と、
を備える。
【0027】
任意選択で、この装置は、さらに、画像評価装置と、画像評価の結果に応じて制御可能な分類装置とを備えることもでき、この分類装置によって、ゲル体は、保持装置から取り出された後に、様々な貯蔵ホルダに分けて入れられる。
【0028】
また、少なくとも1つの生体試料を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための本発明による装置の第2の変形形態は、
複数の試料が封じ込められる1つのゲル体と、
ゲル体を受け取る前送り装置とを備え、前送り装置の作動により、ゲル体が移動して、封じ込められた試料が順次に試料空間に通され、各試料から3次元像が取得される。
【0029】
この第2の変形形態では、任意選択でさらに、画像評価装置と、前送り装置用のモータ駆動装置と、画像評価装置および駆動装置と接続された制御回路とを備えることができ、制御回路は、3次元像が完全に生成された後に、駆動装置に対して制御命令が生成され、駆動装置が前送り移動を開始し、それにより試料空間内で試料を取り替えるように設計される。
【0030】
本発明による装置の第3の変形形態では、
それぞれ1つの試料を入れるための凹部を複数の位置に有するゲル体と、
試料リザーバから個々の試料を取り出すため、および試料を装填位置に搬送するための供給装置と、
ゲル体を受け取る前送り装置とを備え、前送り装置の作動により、凹部が順次に装填位置に導かれ、装填位置で凹部にそれぞれ1つの試料が入れられるように、ゲル体が移動される。
【0031】
この第3の変形形態では、さらに、硬化性の媒体を供給し、試料を入れた後に媒体を凹部に注入するための供給装置を備えることができる。
これに関連して、ゲル体と熱的に接続された加熱ステーションおよび/または冷却ステーションが存在してもよく、加熱ステーションおよび/または冷却ステーションは、媒体を注入する前に少なくとも特定の凹部の領域内でゲル体を加熱し、および/または媒体を注入した後に少なくとも特定の凹部の領域内でゲルを冷却する。
【0032】
ここで、装填過程にわたって一様な前送り速度が実現されるように、試料を装填するための期間と、媒体を注入するための期間と、硬化性の媒体の特性を考慮しながら加熱または冷却するための期間が互いに調節されると特に有利である。
【0033】
また、特に、本発明による装置の第2および第3の変形形態が、試料を受け入れるための凹部をゲル体内で削り出すための切削装置を備えていてもよい。
この切削装置は、例えば、ゲルの円錐形部分または円柱形部分をゲル体からくり抜くための回転刃を備えることができる。
【0034】
また、この切削装置には、削り出された凹部内にただ1つの試料を供給するためのカニューレが割り当てられると有利である。凹部の削り出しと、同じ位置への試料の送入により、予め成形されたゲル体への試料の装填を時間を節約して行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】透明なゲルの中への試料の埋込みの1つの例と、支持装置の外面または内面での試料の保持に関する複数の例を示す図。
【図2】毛細管作用による試料の保持の1つの例を示す図。
【図3】試料を入れるための凹部を設けた、予め成形されたゲル体の1つの例を示す図。
【図4】試料を入れるための複数の凹部を設けた、予め成形されたゲル体の1つの例を示す図。
【図5】試料を入れた後に凹部を閉じるための機構を備える、試料を入れるための複数の凹部を設けた、予め成形されたゲル体の1つの例を示す図。
【図6】個々の試料用の供給装置および加熱・冷却ステーションに接続された、試料を入れるための複数の凹部を設けた、予め成形されたゲル体の1つの例を示す図。
【図7】各ゲル体の中に1つの試料が封じ込められる、試料空間に個別のゲル体を供給するための供給装置の1つの例を示す図。
【図8】注入作用によって試料を個別化および供給する装置の第1の例を示す図。
【図9】注入作用によって試料を個別化および供給する装置の第2の例を示す図。
【図10】ゲル体の中に試料を埋め込むための方法および関連の装置の1つの例を示す図。
【図11】図10によるゲル体の内部で試料の規定の位置決めを行うための方法および関連の装置の1つの例を示す図。
【図12】検査対象の物質から、検出に用いる特定の試料を抽出するための方法の1つの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、様々な例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。図1は、好ましくは、特に選択的平面照明顕微鏡法(SPIM)に従って試料の3次元像を取得するために、顕微鏡構成の試料空間内に生体試料を、生きた状態で位置決めするための様々な例示的実施形態を示す。
【0037】
図1aにおいて、直径dの円柱体に成形されたゲル1の中に、試料2、例えばゼブラフィッシュ胚が埋め込まれる。ゲル1からなる円柱体は、顕微鏡構成の試料空間内にある試料ホルダ3に装着される。試料空間とは、本発明の文脈では、顕微鏡対物レンズ(本発明に関連して検出用対物レンズとも呼ぶ)の検出領域内の1つの領域を表す。
【0038】
図1aに基づいて説明する、透明なゲル1の中に単一の試料2を埋め込む方法は、従来技術に属する。この方法では、試料2の自由な動きおよび試料2の成長の可能性が制限されるので、試料2の寿命がかなり限られるという欠点がある。さらに、顕微鏡検査後にも試料2を生きた状態に保ち、試料2をさらなる観察に使用できるようにすることが望まれることも多い。これは、上記の方法では成しえない。それに加えて、さらなる欠点は、ゲルが、環境、例えば周囲を取り巻く浸液とは異なる屈折率を有し、したがって、そのとき達成される画像品質に関して、試料の像が望みに適っていないことである。
【0039】
これらの欠点をほぼなくす本発明による装置が、図1bに示されている。ここでは、例として3つの試料2、例えばやはりゼブラフィッシュ胚が、支持装置としての役割をする棒4に接着力によって付けられる。棒4も同様に透明な材料、例えば硬化したゲルからなり、試料2と共に浸液中、例えば水中にある。
【0040】
ここでは、試料2の数(3つ)は、単に例として選択されている。
利点は、各試料2が自由に動くことができ、また各試料2の成長が制限されないことである。また、試料を簡単に棒4から再び取り外すことができることにより、観察が終わった後、生きた状態を容易に保つことができる。
【0041】
図1cは、接着力によって試料2が内壁に留められた中空体5を示す。ここでは、自由に動くことができ、かつ成長が制限されないという利点に加えて、試料2が浸液に触れないという利点がある。この場合にも、観察が終了した後または顕微鏡撮像が終了した後、試料2を生きた状態で容易に保つことができる。
【0042】
図1aおよび図1bと同様に、この中空体5も試料ホルダ3に位置決めされる。中空体5の囲壁は、浸液の屈折性にできるだけ近い屈折性を有する透明な材料、例えばやはり硬化したゲルからなる。
【0043】
図1dには、やはり中空体6が示されているが、この中空体6は、試料ホルダ3側の端部でも、試料ホルダ3とは反対側の端部でも開いており、試料ホルダ3から矢印方向Sに流体または気体媒体が通り抜ける。
【0044】
流体媒体は、試料2を、フィルタ7に達するまで運ぶ。フィルタ7は、流体媒体を通すが、試料2は通さない。試料2を生きた状態に保つことおよび試料2をさらに使用することに関して、図1bおよび図1cによる実施形態の場合とほぼ同じ利点が得られる。
【0045】
図1eは、図1dによる方法を逆にしたものを示す。相違点は、ここでは、試料2が中空体8の外にあり、流体または気体媒体の流れが、逆向きに、フィルタ9を通り中空体8を通過して試料ホルダ3に至るように向けられることだけである。流体媒体により、試料2がフィルタ9に保持される。
【0046】
図2は、毛細管作用による試料2の保持の1例を示す。その原理を、図2aに基づいて示す。ここでは、流体媒体が充填された毛細管10が、試料ホルダ3に位置決めされる。単一の試料2が、毛細管の開口に保持されている。
【0047】
図2bは、本発明による装置のそのような実施形態の利点を示す。ここでは、試料保持具3が、毛細管10および試料2と共に位置決め装置11に固定され、位置決め装置11は、試料2の向きに関して好ましくは6自由度で動くことができる。それにより、試料2を、光シート12および検出用対物レンズ13に対して様々な向きに保つことができる。
【0048】
図3は、やはりゲル1による試料2の保持および位置決めの1つの例を示し、ゲル1は、やはり直径dの円柱体に成形され、試料ホルダ3に固定されている。しかし、このゲル円柱体からゲル1の一部分が抜き取られており、それにより中空円錐形の凹部14ができている。
【0049】
その際、中空円錐体の頂点は回転軸15上にあり、試料ホルダ3は、回転軸15周りを回転可能に支持される。凹部14に試料2が入れられ、重力に対してゲル円柱体の向きが適宜調整されると、試料2は、中空円錐体の頂点に沈下し、したがって回転軸15に心合わせされた位置に来る。
【0050】
したがって、試料ホルダ3の回転によって、ゲル円柱体および試料2が回転し、それにより、回転によって角度範囲0°〜360°で変えることができる視角で、方向Dからの検出が可能になる。
【0051】
この場合も、観察が終了した後または検出が終わった後に試料2をゲル円柱体から取り出すことができ、さらなる用途に使用できるという利点がある。
図4には、透明なゲル1から予め成形されたゲル体が示されており、このゲル体は、それぞれ1つの試料2を入れるための、中空円錐形の複数の凹部14を有する。このように構成された本発明による装置は、凹部14に入れられた試料2が重力の作用によって中空円錐体の頂点に沈下し、観察中または画像情報の取得中にもそこに留まるように位置決めすることができる。
【0052】
これに関して、この装置が前送り装置(図示せず)と接続されると有利であり、この前送り装置は、例えば使用者または制御回路が発する制御命令により、方向Vへ前送り移動させる。
【0053】
この前送り移動により、それぞれ1つの試料2が占めた凹部14が、順次に検出用対物レンズの光軸上に進められる。
図4aでの選択状態では、検出用対物レンズの光軸が、したがって検出方向も、紙面に垂直に向けられている。紙面に垂直な検出方向は、図3と同様にここでも符号Dで示される。
【0054】
ここで、図3に基づいて既に説明したように、保持装置3を旋回装置に取り付けることができ、旋回装置は、紙面内にある回転軸15周りでの試料2の回転を可能にする。このとき、回転軸15は、検出方向Dを直角に横切る。しかし、ここで、ゲル1内に含まれる残りの試料によって一部で影ができるので、検出方向の設定が制限される。
【0055】
例えば図4bによる装置は、この欠点に対処するものである。ここでは、同様にゲル体に予め成形されたゲル1の中に複数の試料2が埋め込まれ、埋め込まれたすべての試料2が回転軸15上に位置する。
【0056】
この場合も図4aの場合と同様に、検出方向Dは、回転軸15と直角を成し、紙面に垂直に向けられている。
しかし、ここでは、試料2は、重力によって凹部14の中空円錐体の頂点に保持されない。この場合であっても、中空円錐体の頂点での試料2の位置決めを保証するために、凹部14は、既に硬化しているゲルからなる予め成形された栓16で閉じられ、あるいは、初めは流体であり、後で硬化するゲル17を充填される。
【0057】
ゲル17の充填は、図4aに示されるゲル体の向きに行われ、初めに、試料2が、重力の作用により中空円錐体の頂点に落ちる。すべての凹部14に硬化したゲルが設けられ、それにより試料2が中空円錐体の頂点に固定された後に、ゲル体が図4bに示される姿勢にされる。
【0058】
試料2を含む凹部を順次に検出方向に位置決めするために、ここでも同様に前送り装置(図示せず)が提供され、この前送り装置が、ゲル体を方向Vに押し進める。
図5は、いくつかの凹部14を設けたゲル体の装填装置の変形形態を示す。ここでは、初めに、ゲル1が、装填用の開口19を有する管18によって取り囲まれる。このとき、装填用開口19の数は、凹部14の数に対応する。
【0059】
ゲル体は、管18の内部で移動可能であり、それにより、装填用開口19に対する凹部14の位置を変えることができる。図5aでは、装填用開口19が凹部14の上に位置決めされ、それにより、初めに、すべての装填用開口19を通してそれぞれ1つの試料2を入れることができ、次いで、意図されており必要である範囲で、硬化性のゲルを注入することができる。
【0060】
試料2および硬化性のゲルが凹部14内に装填された後、ゲル体がスタンプ20によって管18の内部で方向Vに移動されて、図5bによる配置になり、ここでは、装填用開口19が凹部14に対してずれており、したがって凹部14は閉じられている。
【0061】
装填後、ゲル体は、管18から抜き取られ、図4に基づいて説明したように取り扱われ、あるいはゲル体は、管18内に位置したままであり、管18が、ゲル体および試料2と共に保持装置(図5には図示せず)に取り付けられ、それにより、ここにも同様に示される回転軸15周りでの回転を行うことができる。
【0062】
ただし、これは、管18が、ゲル1および試料空間内に存在する浸液と実質的に同じ屈折率を有する透明な材料から作製されていることを前提とする。図4に基づいて既に説明したように、試料2は、検出のために、検出用対物レンズの光軸上に順次に進められる。
【0063】
図6に基づいて説明する装填装置のさらなる変形形態では、ゲル1がやはり管18の中にあり、しかしここでは、装填用の開口19は1つだけである。装填用開口19は、やはり、それぞれ1つの試料2を凹部14の1つに供給するためのものである。ここでも同様にスタンプ20が提供され、このスタンプ20は、手動または自動で生成される制御命令に従って、ゲル1を方向Vに所定の値だけ押し進める。
【0064】
図5による図とは異なり、ここでは、さらに加熱ステーション21および冷却ステーション22が存在する。加熱ステーション21および冷却ステーション22は、管18の周りを囲う。装填用の開口19は、加熱ステーション21と冷却ステーション22との間にある。
【0065】
この装填装置は、以下のように作動する。装填用の開口19を通して試料2が凹部14に入れられる間、ゲル1は、加熱ステーション21によって取り囲まれた凹部14の領域内で予熱される。それと同時に、ゲル1は、冷却ステーション22によって周りを囲われた凹部14の領域内で冷却される。
【0066】
試料2が、加熱ステーション21と冷却ステーション22との間で装填用の開口19を通して凹部14に入れられた後、ゲル1は、2つの凹部14の間の距離に相当する量だけスタンプ20によって押し進められ、それにより、ここで、今装填された凹部14が、冷却ステーション22の領域内に来て冷却され、これまで加熱ステーション21の領域内で予熱されていた凹部14が、加熱ステーション21と冷却ステーション22との間の装填用開口19の下に来て、その次の凹部14が、加熱ステーション21の領域内に移動してここで予熱される。
【0067】
任意選択で、この装填装置は、試料2の直後に硬化性のゲルも装填用の開口19を通して注入されるように作動することもできる。このようにすると、それぞれ、予熱され、加熱ステーション21から出て、装填用開口19の下に押し進められた凹部14が、硬化性のゲルを受け入れることができるようになり、それによりゲルは、中空円錐形の凹部14内で初めに低い粘稠度で保たれ、凹部14を完全に満たし、凹部14内に含まれている試料2をその定位置に固定することができる。充填された凹部14を冷却ステーション22の領域内に移動させた後、冷却により硬化が加速される。
【0068】
この装填装置が制御回路と接続されると有利であり、この制御回路により、2つの凹部14間の距離だけゲル1が方向Vに移動されるその時々の時間間隔が、試料2の装填のための時間間隔、および注入されたゲルの硬化に合わせて調節される。さらに、加熱温度および冷却温度の高さを適宜規定することによって、予熱および冷却のための工程時間がこの時間間隔に合わせて調節される。
【0069】
図7は、本発明による装置の1つの実施形態を示し、この実施形態では、円柱体に成形されたゲル1によって、それぞれただ1つの試料2が取り囲まれ、多数のそのようなゲル体が、図7に示されるゲル体リザーバ23内にある。この装置が作動するとき、ゲル体は、ゲル体リザーバ23から個別に取り出され、管路24を通して、試料空間25内に送られ、試料空間25内で、試料2が光軸上に、すなわち検出用対物レンズの検出方向に位置するように保持装置3上で位置決めされる。
【0070】
観察または検出が終わった後、当該のゲル体は、やはり管路24を通して試料空間25から搬出される。
この工程が自動的に行われることで、試料2の高い処理量を達成することもできる。
【0071】
図8は、注入作用を利用することによって試料2を個別化して供給する装置の第1の例を示す。ここでは、例えば、管18を通して方向Vに押し進められるゲル1の吸引作用により、試料2が供給カニューレ25から出て運ばれる。
【0072】
図9は、注入作用を使用するための装置のさらなる実施形態を示し、ここでは、ゲル1ではなく、流体26、特別な場合には浸液が吸引作用をもたらす。
ゲル1の中に試料2を埋め込むための有利な方法および関連の装置を図10に示す。
【0073】
ここでは、初めに、長手方向に沿って分割されたカニューレの第1の半体に相当する下側部品27内に、硬化はするが初めはまだ軟らかい比較的少量のゲル1が入れられ、位置合わせツール39によって、このゲル量の上に試料2が載せられる(図10a参照)。
【0074】
その後、図10bに示されるように、試料2は、まだ軟らかいさらなる量のゲル1で覆われ、ゲル1の両方の部分がつながって試料2を封じ込める。次に、一端にスタンプ29が固定された押し棒28が、ゲル1と、ゲル1とは反対側の下側部品27の端部との間にスタンプ29が来るように、下側部品27内に置かれる。
【0075】
次いで、長手方向に沿って分割されたカニューレの第2の半体に相当する上側部品30が、適切な圧力の作用により下側部品27の上に載せられ、これら両方の部品の間に中空の円筒形が生じる結果、ゲル1は、カニューレの内径に相当する外径を有するゲル体に成形される。
【0076】
このとき、試料2は、ゲル1によって完全に取り囲まれている。次いで、押し棒28を方向Vに押し進めることにより、ゲル体は、スタンプ29によって押し出され、例えば図7に基づいて説明した本発明による装置の変形形態に関連してさらなる用途に使用できる。
【0077】
しかし、試料2を中心合わせする、すなわちそのようにして作製されたゲル体の長手軸上に位置決めすることも保証するために、図11によれば、ゲル体の中での試料2の位置を確認し、場合によっては修正する、それも、そのような修正がもはやできなくなる程にゲル1が硬化してしまう前に修正するための方法および装置が提案される。
【0078】
これに関連して、試料2が取り囲まれているゲル体を、押し棒28またはスタンプ29によってカニューレ31内に押し進めるようになされており、カニューレ31は、その長手軸周りで回転するように支持され、回転運動を発生させるために回転駆動装置32と結合される。
【0079】
このカニューレ31内で、試料2を含むゲル体は、監視ステーション33に達するまで押し進められ、監視ステーション33は、使用者が目で監視できるように構成され、または以下に例として示すように、光電子手段を使用して、例えばライトボックスの形態で構成することができる。その場合、ライトボックスの光源と検出器は、カニューレ31の両側に対置され、カニューレ31は、少なくともこの監視ステーション33の領域内で、光源から発する光が透過できる外壁を有する。
【0080】
ここで、この装置は、ゲル体が押し進められる間に初めはカニューレ31が回転されないように作動される。次いで、試料2がライトボックスの領域内に来たとき、ライトボックスによって、試料2が長手軸上に位置決めされているかどうか監視される。試料が長手軸よりも下にある場合、試料2が長手軸、すなわち回転軸よりも上に来るまで、カニューレ31がゲル体と共に回転される。ゲル1はまだ硬化していないので、試料2は、重力の作用により沈下し、その際に回転軸または長手軸に近づき、その一方で、ゲル1の硬化工程は続く。
【0081】
試料2が回転軸上の所望の位置に留まる程にはゲル1の硬化が進まず、試料2が再び回転軸よりも下に沈下する場合、カニューレ31が180°回転され、それにより、試料2が、ここで再び回転軸よりも上に来て、回転軸に向かって再び沈下し、この方法工程は、最終的に、硬化しきったゲル1の中で試料2が回転軸上に固定されるまで繰り返される。その後、試料は、押し棒28またはスタンプ29によって押し出され、図7に基づいて説明した装置での用途に使用できる。
【0082】
以上、本発明による方法および関連の装置を、例えばゼブラフィッシュ胚など比較的小さい寸法を有する試料2に基づいてここまで説明してきたが、より大きな寸法を有する生体物質または別の物質から抽出された試料を検査するのに適した方法および装置も本発明の概念に含まれる。
【0083】
これに関連する方法と、関連の装置を図12に示す。
生体物質34、例えば脳組織から部分量として試料40を抽出するために、物質34に向いた端部36を鋭利に研がれたカニューレ35が、方向Vで物質34に挿入される(図12a参照)。その際、試料40は、物質34から切り取られ、カニューレ35によって取り囲まれ、カニューレ35を方向Vに引き抜くことによって物質34から抽出される(図12bおよび図12c参照)。引抜きは、場合によっては、カニューレ35の内部に案内された図10および図11で既に示したスタンプ29を有する押し棒28の支援によって、それを用いてカニューレ35内で低圧を発生させ、それにより、物質34からカニューレ35を抜き取るときに試料40をカニューレ内に保持する、またカニューレ内に留めておくことによって行うことができる。
【0084】
図12dに基づいて示されるように、ここで試料40を含むカニューレ35は、試料40の検出のために顕微鏡構成の試料空間内に入れられ、試料40の一部分が検出用対物レンズ37の検出領域内に来るが、残りの部分はまだカニューレ35の内部に保持されている状態になるまで、押し棒28またはスタンプ29によって試料40がカニューレ35から押し出される。
【0085】
特定の1つの実施形態では、カニューレ35が、さらに回転軸38周りで回転可能に支持される場合、この回転軸38を中心としてカニューレ35を回転させることにより、様々な検出方向に調節可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 ゲル
2 試料
3 試料ホルダ
4 棒
5、6 中空体
7 フィルタ
8 中空体
9 フィルタ
10 毛細管
11 位置決め装置
12 光シート
13 検出用対物レンズ
14 凹部
15 回転軸
16 栓
17 ゲル
18 管
19 装入開口
20 スタンプ
21 加熱ステーション
22 冷却ステーション
23 ゲル体リザーバ
24 管路
25 試料空間
26 流体
27 下側部品
28 押し棒
29 スタンプ
30 上側部品
31 カニューレ
32 回転駆動装置
33 監視ステーション
34 物質
35 カニューレ
36 端部
37 検出用対物レンズ
38 回転軸
39 位置合わせツール
40 試料
d 直径
s、D、V 方向
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】

【図1e)】

【図2a)】

【図2b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの試料(2)を顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための方法であって、
検出用対物レンズの光軸に対する試料(2)の向きを複数回変え、
前記向きを変えたときに生じる各検出方向から、前記試料(2)の画像情報を取得し、
前記取得の際に、各検出方向から前記試料(2)または前記試料の一部分に向かってほぼ遮蔽されない視野が保証されるように前記試料(2)を保持する、
方法。
【請求項2】
前記試料(2)が接着力によって支持装置の外面または内面に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は流体媒体が前記試料に及ぼす動圧によって支持装置の外面または内面に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料(2)が毛細管作用によって流体媒体用の毛細管の開口に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
透明なゲル(1)の中に前記試料(2)を埋め込み、
前記ゲル(1)をゲル体に成形し、
前記検出用対物レンズの光軸に垂直な回転軸(15)周りに回転可能な保持装置(3)によって前記ゲル体を試料空間(25)内に固定し、
前記保持装置(3)を回転させることにより前記検出方向を変える、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料(2)を入れるための凹部(14)を備えたゲル体に前記ゲル(1)を予め成形した後に前記試料(2)を前記凹部(14)に入れて前記凹部(14)の内部で位置決めすることによって、前記試料(2)を前記ゲル(1)の中で所定位置に位置決めする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲル体に中空円錐形の凹部(14)を設け、
前記試料(2)を前記中空円錐体に入れ、
前記試料(2)の生存に悪影響を及ぼさない小さい力の作用の下で前記試料(2)を前記中空円錐体の頂点に保持する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記保持装置(3)が回転するときにも重力の作用によって前記試料(2)が前記中空円錐体の頂点に保持されるように前記ゲル体を前記保持装置(3)に固定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試料(2)を前記凹部(14)に入れた後に前記凹部に透明な媒体を注入し、
前記注入された媒体によって前記試料(2)を前記中空円錐体の頂点に保持する、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
初めは流体であるが時間の経過によって所定の温度の下で硬化する媒体を前記凹部(14)に入れ、
硬化した前記媒体によって前記試料(2)が前記凹部(14)の内部で所定位置に固定される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料(2)を1つずつ入れるための凹部(14)を備えるゲル体に前記ゲル(1)を予め成形した後に各試料(2)をそれぞれの凹部(14)に入れて各凹部(14)内部で位置決めすることによって、複数の試料(2)を前記ゲル(1)の中で位置決めする、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各試料(2)を順次にまたは同時に前記凹部(14)に入れて前記凹部(14)内部で位置決めする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料(2)を入れた後、前記凹部(14)を個別の蓋または全体を覆う蓋によって閉じる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
試料(2)を入れるべき凹部(14)の領域内でまず前記ゲル体を加熱し、
次いで前記試料(2)を入れ、
その後、初めは流体であるが時間の経過によって所定の温度の下で硬化する媒体を前記凹部(14)に入れ、
その後、前記時間を短縮するべく前記凹部(14)の領域内で前記ゲル体を冷却する、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
第1の凹部(14)の領域内で前記ゲル体を所定の周期で加熱し、
次いで、前記試料(2)を前記第1の凹部(14)に入れて当該第1の凹部(14)の内部で位置決めし、
その後、前記硬化性の媒体を前記第1の凹部(14)に注入し、これと同時に第2の凹部(14)の領域内で前記ゲル(1)を加熱し、
その後、前記第1の凹部(14)の領域内で前記ゲル(1)を冷却し、これと同時に試料(2)を前記第2の凹部(14)に入れて当該第2の凹部(14)の内部で位置決めし、前記硬化性の媒体を注入し、第3の凹部(14)の領域内で前記ゲル(1)を予熱し、
その後、前記第2の凹部(14)の領域内で前記ゲル(1)を冷却し、これと同時に試料(2)を前記第3の凹部(14)に入れて位置決めし、前記硬化性の媒体を注入し、第4の凹部(14)の領域内で前記ゲル(1)を予熱し、
各凹部(14)に1つの試料(2)が含まれ、位置決めされ、硬化した前記媒体によって固定されるまで以下同様に続ける、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の試料(2)を試料リザーバ内に保存し、前記試料リザーバから前記試料(2)を個別に取り出し、各試料(2)を、割り当てられた凹部(14)に入れ、前記試料(2)の個別化および前記凹部(14)内への導入が自動的に行われる、請求項6乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
まず前記試料(2)を個別化し、
次いで、前記試料(2)を同じ形状および寸法の個別のゲル体に個別に埋め込み、
続いて、それぞれ1つの試料(2)を含む前記ゲル体を前記試料空間(25)内に順次に搬送し、
試料(2)の検出が終了した後、再び前記試料空間(25)から搬出される、
請求項5乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記試料(2)が個別にカニューレを通して、支持装置の外面または内面における所定位置か、毛細管の開口における所定位置か、またはゲル体の中における所定位置に導かれる、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ゲル(1)からなるゲル体の中に試料(2)を埋め込むための方法であって、
第1の部分量のゲル(1)を、長手方向に沿って分割されたカニューレの第1の半体内に置き、
次いで、前記第1の部分量の上に試料(2)を載せ、
その後、前記試料(2)の上に第2の部分量の前記ゲル(1)を載せ、
前記分割されたカニューレの第2の半体を圧力をかけながら載せ、
前記両方の半体の間に中空の円筒形が生じる結果、前記ゲル(1)が前記カニューレの内径に相当する外径を有するとともに、その中に前記試料(2)が封じ込められたゲル体として成形される、方法。
【請求項20】
硬化性のゲル(1)からなるゲル体に埋め込まれた試料(2)の位置をゲル体の内部の中心に合わせるための方法であって、
埋め込まれた試料(2)を含むがまだ硬化していない状態のゲル(1)からなるゲル体を、監視ステーション(33)内に入れ、
前記監視ステーション(33)によって、前記ゲル体の中での前記試料(2)の位置を評価し、
前記評価の結果に応じて、重力の作用の下で前記試料(2)が前記ゲル体の中で所望の位置に沈下するように重力に対して前記ゲル体の向きを調整する、方法。
【請求項21】
生体物質(34)から抽出された部分量を試料(40)として顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための方法であって、
生体物質(34)に向いて鋭利に研がれたカニューレ(35)の端部(36)を前記生体物質(34)に押し入れ、
前記カニューレ(35)の内部に移動可能に案内され、押し棒(28)と接続されたスタンプ(29)によって、前記生体物質(34)から前記カニューレを引き抜くときに前記部分量を前記カニューレ(35)内に保持し、
前記部分量を含む前記カニューレ(35)を前記試料空間内に入れ、
前記押し棒(28)および前記スタンプ(29)によって、前記部分量の一部分だけを前記カニューレ(35)から押し出し、
前記押し出された部分が試料(40)として検出され、残りの部分が前記カニューレ(35)によって保持される、方法。
【請求項22】
ゲル(1)として、また硬化性の媒体として、アガロースゲルが使用される、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの生体試料(2)を、前記試料(2)を検出するために顕微鏡構成の試料空間(25)内で位置決めするための装置であって、
それぞれ1つの試料(2)が封じ込められる同じ形状および大きさのゲル体のリザーバ(23)と、
顕微鏡構成の試料空間(25)内にある、それぞれ1つの前記ゲル体用の保持装置(23)と、
前記ゲル体リザーバ(23)から個々のゲル体を取り出し、前記ゲル体を前記保持装置(3)に貯蔵するための取出しおよび貯蔵装置と、
前記保持装置(3)から前記ゲル体を取り出し、搬出するための取出しおよび搬出装置と、
を備える装置。
【請求項24】
画像評価装置と、
画像評価の結果に応じて制御可能な分類装置とを備え、前記分類装置によって、前記個々のゲル体が、前記保持装置(3)から取り出された後に、様々な貯蔵ホルダに分けて入れられる、
請求項23に記載の装置。
【請求項25】
少なくとも1つの生体試料(2)を、前記試料(2)を検出するために顕微鏡構成の試料空間(25)内で位置決めするための装置であって、
複数の試料(2)が封じ込められる1つのゲル体と、
前記ゲル体を受け取る前送り装置とを備え、前記前送り装置の作動により、前記ゲル体が移動されて、前記封じ込められた試料(2)が順次に前記試料空間(25)に通され、前記試料空間(25)に通されるときに各試料(2)から3次元像が取得される、装置。
【請求項26】
画像評価装置と、
前送り装置用のモータ駆動装置と、
前記画像評価装置および前記駆動装置と接続された制御回路とを備え、
前記制御回路が、
前記画像評価の終了後に、前記駆動装置に対して制御命令が生成され、前記制御命令に従って前記駆動装置が前送り移動を行うことで前記試料空間(25)内の前記試料(2)が取り替えられるように設計されている、
請求項25に記載の装置。
【請求項27】
少なくとも1つの生体試料(2)を、前記試料(2)を検出するために顕微鏡構成の試料空間(25)内で位置決めするための装置であって、
それぞれ1つの試料(2)を入れるための凹部(14)を複数の位置に有するゲル体と、
試料リザーバから個々の試料(2)を取り出し、前記試料を前記凹部(14)に装填するための取出しおよび装入装置と、
前記ゲル体を受け取る前送り装置とを備え、前記前送り装置の作動により前記ゲル体が移動されて、前記凹部(14)が順次に装填位置(19)に導かれ、前記装填位置(19)で前記凹部(14)にそれぞれ1つの試料(2)が入れられる、装置。
【請求項28】
初めは流体であるが後で硬化する媒体を凹部(14)の形状および大きさに対応する量だけ供給し、前記試料(2)を入れた直後に前記媒体を前記凹部(14)それぞれに注入するための供給装置を備える請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記ゲル体と熱的に接続された加熱ステーション(21)および/または冷却ステーション(22)を備え、前記加熱ステーション(21)および/または冷却ステーション(22)が、前記凹部(14)の1つに前記媒体を注入する前に少なくとも当該凹部(14)の領域内でゲル(1)を加熱し、および/または前記凹部(14)の1つに前記媒体を注入した後に少なくとも当該凹部(14)の領域内でゲル(1)を冷却する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前送り速度と、加熱および/または冷却温度とが前記媒体の硬化に必要な時間に合わせて調節される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
試料を受け入れるための凹部(14)を前記ゲル体中で削り出すための切削装置が装備される、請求項23乃至30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記切削装置が、前記ゲル(1)の円錐形部分または円柱形部分を前記ゲル体から削り出すための回転刃を備える、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記切削装置に、前記削り出された凹部(14)内に単一の試料(2)を供給するためのカニューレが割り当てられる、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
ゲル(1)からなるゲル体に試料(2)を埋め込むための装置であって、
ゲル(1)および試料(2)を受け入れるための、長手方向に沿って2つの半体に分割されたカニューレと、
前記カニューレ(35)の内部で移動可能に案内され、前記試料(2)を取り囲む1つのゲル体として成形されるゲル(1)を押し出すための押し棒(28)と接続されたスタンプ(29)と
を備える、装置。
【請求項35】
硬化性のゲル(1)からなるゲル体に埋め込まれた試料(2)の位置を前記ゲル体の内部で中心に位置合わせするための装置であって、
回転駆動装置(32)と接続され、埋め込められた試料(2)を含むがまだ硬化されていないゲル(1)からなる前記ゲル体の中に押し入れられるカニューレ(31)と、
前記カニューレ(31)の周りを囲み、前記ゲル体の内部での前記試料(2)の位置を評価する監視ステーション(33)と、
前記回転駆動装置(32)を制御する制御回路であって、前記評価の結果に応じて、重力の作用により前記試料(2)が前記ゲル体の中で所望の位置に沈下するように重力に対して前記ゲル体の向きを調整する前記制御回路と
を備える装置。
【請求項36】
生体物質(34)から抽出された部分量を試料(40)として顕微鏡構成の試料空間内で位置決めするための装置であって、
生体物質(34)に向かって鋭利に研がれた端部(36)を有するカニューレ(35)と、
前記カニューレ(35)の内部で移動可能に案内される棒(28)と接続されたスタンプ(29)と、
を備える装置。

【図3】
image rotate

【図4a)】
image rotate

【図4b)】
image rotate

【図5a)】
image rotate

【図5b)】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a)】
image rotate

【図10b)】
image rotate

【図10c)】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12a)】
image rotate

【図12b)】
image rotate

【図12c)】
image rotate

【図12d)】
image rotate


【公表番号】特表2010−541023(P2010−541023A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528288(P2010−528288)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007785
【国際公開番号】WO2009/049740
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロイメージング ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss MicroImaging GmbH
【Fターム(参考)】