説明

生体認証画像を登録および認証する方法および装置

生体認証画像を登録する方法であって、a)あるユーザの複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する工程(310);b)捕捉フォルダ内の複数の画像のうちの1つを選択し、選択された画像を捕捉フォルダから登録フォルダへ移動させる工程(318);c)選択された画像を、捕捉フォルダ内の残りの画像の各々と比較する工程であって、それにより残りの画像の各々のための対応する類似性スコアを生成する工程(322);d)対応する類似性スコアのうちのいずれかが所定のスコア閾値と少なくとも等しいか否かを判定し、所定のスコア閾値に少なくとも等しい対応する類似性を有する前記画像の各々を捕捉フォルダから削除フォルダ(330)へ移動させる工程(326);およびe)捕捉フォルダに少なくとも1つの画像があるか否かを判定し、肯定の場合に、工程b)から工程d)までを繰り返す工程(334);から成る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的にはバイオメトリック認証に関し、詳細にはユーザが生体認証画像を登録し、その登録された画像に基づいてユーザが後に検証を行うための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体認証画像に基づく識別システムは刑事の用途および民事の用途のいずれにおいても現代社会に重大な役割を果たしている。例えば公安セクタの犯罪鑑識は現代の捜査の不可欠な部分である。同様に、クレジットカードや個人身分詐称を始めとする民事の用途では、例えば痕跡(print)識別はセキュリティプロセスの本質的な部分となっている。すべての生体認証(顔、指紋、虹彩など)の中でも、虹彩と網膜は高いセキュリティ用途に好ましい生体認証の指標である。しかしながら当該分野では歴史上の理由および既に証明されている実績から、指紋に基づく検証システムが非常に一般的であり、顔画像照合が識別に使用されている2番めに大きな生体認証の指標である。
【0003】
指紋、掌紋、または顔画像の識別を可能にする自動の生体認証画像に基づく識別作業は通常2つの段階から成る。第1の段階は、レジスタ(register)または登録(enrollment)段階であり、第2の段階は識別、認証または検証段階である。登録段階では、登録者の個人情報および生体認証画像(例えば指紋、掌紋、顔画像など)がシステムに登録される。生体認証画像は適切なセンサを用いて捕捉され、生体認証画像の特徴、例えば指紋の場合はマニューシャ(minutia、指紋識別の特徴点のこと)が、一般に抽出される。個人情報および抽出された特徴、中でも画像は、その後、通常ファイル記録を作成するために使用され、ファイル記録は登録者の後の識別のために使用されるデータベースに保存される。
【0004】
識別/検証段階では、生体認証画像は個人から捕捉されてもよいし、または遺留痕跡が取得されてもよい。特徴は一般に画像から抽出され、個人情報と共に、一般に調査記録と称されるものへと作り変えられる。次に、調査記録は識別システムのデータベース中の登録(すなわちファイル)記録と比較される。この照合プロセスの結果、照合されたスコアのリストが通常作成され、記録の候補が、その照合スコアに従ってソートされる。照合スコアは、識別された調査記録と、ファイル記録との特徴の類似性の測定値である。通常、スコアが高ければ高いほど、ファイルと調査記録はより類似していると判定される。したがって、一番上の候補は最も近い一致を有する。
【0005】
近年のセンサ技術の進歩で、登録段階および識別/検証段階の両方で生体認証画像を捕捉するのに使用されるセンサはずっとコンパクトになった。このサイズの減小は、形を変えると、センサの製造にかかるコストの減少になっている。例えば、いくつかの製造業者は現在、例えばセルラ電話のような携帯型の無線装置の上に、小さな非光学指紋センサ、すなわち固体センサを配置することができる。この例では、そのようなセンサの捕捉エリアは、捕捉される必要のある指の面積全体の大きさよりも通常小さいため、そのような小面積のセンサによって取得された指紋を認識するのが困難となり得る。固体指紋センサの典型的な捕捉面積は300x300ピクセルにすぎないが、捕捉されている指の面積は平均で3倍の大きさがあり得る。
【0006】
上記の小さなセンサを使用する際の指紋識別に関するこのような制約は、同じ指から異なる時に(例えば登録段階中と検証段階中に)得られた2つの痕跡が非常に少量の指紋重複面積しか有しないことから生じる。すなわち、登録段階では、通常ただ1つのファイル痕跡画像しか登録されず(それは捕捉されている実際の指紋の一部分を表すにすぎない)、この画像の特徴が後の調査痕跡との比較のために抽出され、保存される。マニューシャに基づく照合アルゴリズムが使用される場合、調査痕跡とファイル痕跡の間の重複部分が小さい場合には、一致するマニューシャの数が同様に制限され、照合の精度に損失を引き起こすであろう。
【0007】
精度の損失は、無許可の人が許可されたユーザとして誤認されたり、または許可された人がアプリケーションの使用を阻止されたりすることにつながる可能性がある。いずれの場合も、ユーザは重大な迷惑を被る。捕捉される必要のある手のひらの面積よりも小さい面積を有するセンサを用いた掌紋識別も、指紋識別に関して上述したのと同様の制約を抱えている。
【0008】
上記の小さなセンサによる識別の問題にはいくつかの公知の解決策がある。しかしながら、これらの解決策はいずれもそれ自体の制限がある。例えば、センサのサイズは増大させることが可能ではあるが、これによって通常はセンサがより高価となり、そのためセンサを収容する製品のコストが増大する。さらに、製品サイズを小さくするために、いくつかの用途ではセンサのサイズを増大させることは可能でない場合もある。別の解決策はユーザの画像が登録されている間に目に見えるガイダンスを提供すべく画像表示装置を使用することである。しかしながら、この解決策は、装置上にそのような表示装置を収容するいくつかの用途では、例えば装置のサイズの制約により実際的ではない場合がある。さらに別の解決策は、検証段階中にユーザの指紋を捕捉している間に、異なる位置に指を入れてくれるようにユーザに依頼することである。この解決策は検証プロセスの間にユーザにとってはるかに多くの時間がかかるため、現実の用途では実際的ではない場合がある。
【0009】
上記の小さなセンサによる識別の問題のさらに別の解決策を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。この場合、登録者のファイル記録の一部として1つの痕跡画像が捕捉され格納される代わりに、モザイク指紋画像が作成され、ファイル記録の形にされる。これを遂行するために、指紋画像は、該画像が所定の品質閾値より大きいということが判定される(214)までは、センサを使用して捕捉される(210)。 該画像の品質閾値を超過した場合、画像はファイル画像として登録される(216)。次に、登録された画像の数が、所望のすなわち所定の登録画像数に等しいか否かが判定される(236)。否定の場合、所望の登録画像数に達するまで工程210〜216が繰り返される。次に、すべての登録画像からモザイク画像が作成される(240)。このモザイク画像の特徴が抽出され(220)、モザイク画像および対応する照合用の特徴がファイル記録として格納される(224)。
【0010】
この方法は、方法に関連するいくつかの問題があるため、現実の用途に容易に応用することができない。例えば、モザイク画像のアセンブリプロセスはそれ自体が照合プロセスであり、これにはいかなる誤差もなく複数の捕捉画像の隆線と対応する隆線とを、谷線と対応する谷線とをつなげる必要がある。しかしながら、画像歪みおよび雑音、ならびに画像捕捉における他の不確実要素のため、これは一般に達成可能でない。相応して、作成されたモザイク画像は、一般に、個別の捕捉画像間の境界では滑らかに遷移しないだろう。モザイク画像の生成に関するそのような制約は、検証段階中にマニューシャが誤って検知されることにつながり、これにより照合精度は低くなる。
【0011】
上述したように、顔画像照合は識別に使用されている2番めに大きな生体認証である。それは例えば、ビデオ監視の識別、進入制御、および犯罪捜査のデータベースからのIDの検索で実施される。この種の識別の利点は、取得プロセスが立ち入ったものでなく、個人に協力を要求しないとことである。しかしながら一般に、顔画像の表情または捕捉された画角が、登録された1または複数の画像とは異なる場合があるという制約があり、これは照合精度の損失を生じさせる。登録段階中に、顔の異なる角度から、異なる複数の顔の表情で複数の異なる画像を捕捉すれば精度の問題が解決される場合もある。しかしながら、システムの格納容量の制約により、および追加の登録画像に関連する照合時間を許容可能なレベルに維持したいという希望により、捕捉可能な顔画像の数には実際的な制約がある。
【0012】
したがって、捕捉される生体認証の面積よりも小さい面積を有するセンサを識別システムが備えている場合に、生体認証に使用される許容できる数の生体認証画像、例えば指紋、顔の画像および掌紋画像を決定および格納するための方法および装置が必要とされている。そのような方法によって、検証プロセスの間の正しい識別の機会が増加すると共に、誤った識別の機会が減少することは一層望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここで、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しながらあくまで例として説明する。
本発明は多くの異なる形式の実施形態を許容し、それらは図面に示され、詳細な特定の実施形態に関して以下に説明されているが、本開示は本発明の原理の例として考慮されるべきであって、本発明を図示され説明された特定の実施形態に限定することを意図していないことを理解されたい。さらに、本明細書でしようされている用語や言葉は限定的なものとみなされるべきではなく、むしろ説明的なものである。説明を簡略かつ明確にするために、図面中の要素は必ずしも正しい縮尺に描かれていないことも理解されよう。たとえば、要素のいくつかの寸法は、互いに対して誇張して描かれている。さらに、適切であると考えられる場合、参照数字は対応する要素を示すために図面において繰り返している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による生体認証識別システム10の略ブロック図を示す。システム10は、上記に説明したようなセルラ電話に組み込み可能であるか、または掌紋識別や顔画像識別システムを始めとする生体認証識別用に使用される他のアプリケーションに組み込み可能な指紋識別システム中に、例えば備えられ得る。システム10は理想的には入力・登録ステーション140、データ格納・検索装置100、1または複数の照合プロセッサ120、および検証ステーション150を備えている。
【0015】
入力・登録ステーション140は、指紋を始めとする生体認証画像を捕捉すると共に、任意選択で、後の比較のためにその画像に関連する照合のための特徴(照合特徴)を抽出するために使用される。入力・登録ステーション140では、捕捉された画像と抽出された特徴からファイル記録も生成され得る。入力・登録ステーション140は、本発明の実施形態に従って以下に説明する登録機能を行なうようにも構成されている。従って、入力・登録ステーション140は画像を捕捉するために、先に説明したセンサ面積が捕捉される総面積よりも小さい小さなセンサによるセンサに結合され得る。センサは例えば光学センサまたは固体センサであってよい。入力・登録ステーション140はその残りの機能を行なうため、プロセッサ装置にさらに結合されるか、プロセッサ装置を組み込んでいる。
【0016】
データ格納・検索装置100は、照合特徴を含むファイル記録を格納および検索し、本発明を実行するのに有用な他のデータも格納および検索し得る。
照合プロセッサ120は、生体認証画像の抽出された照合特徴を使用して類似性を決定してもよいし、または画像レベルで比較を行うように構成されてもよい。そのような1つの照合プロセッサは、2つの指紋画像または掌紋画像のマニューシャ(minutia)を比較する従来のマニューシャ照合装置であってよい。顔画像の照合の場合、照合装置のプロセスは、主要構成部分の分析照合、Eigen-face顔照合(固有顔による照合)、局所特徴の分析照合または他の照合アルゴリズムから成り得る。
【0017】
最後に、検証ステーション150は、本発明の実施形態による方法を使用して照合結果を検証するために使用される。従って、検証ステーション150は、指紋を始めとする生体認証画像を捕捉し、かつ1または複数のファイル記録中の照合特徴との比較のために任意選択でその画像の関連する照合特徴を抽出するために使用される。検証ステーション150では、捕捉された画像と抽出された特徴から調査記録も生成され得る。したがって、検証ステーション150も調査画像を捕捉するためにセンサに結合されてよく、また、その残りの機能を行なうため、プロセッサ装置に結合されるか、プロセッサ装置を組み込み得る。
【0018】
入力・登録ステーション140および検証ステーション150はシステム10内の別々のボックスとして示されているが、これらの2つのステーションが別の実施形態では1つのステーションに組み合わされていてもよいことが当業者には理解される。さらに、システム10が所与の個人に対する1つの調査記録を、別の人に対する複数のファイル記録と比較するために使用される場合、システム10は分散型照合コントローラ(図示しない)を任意選択で備えていてもよく、これはより複雑で時間のかかる照合プロセスを効率的に調整するように構成されたプロセッサを含み得る。
【0019】
図3は、本発明の実施形態による生体認証画像の登録方法のフローチャートを例証する。この方法は、システム10の1または複数のプロセッサで実施され、1セットの画像(および対応する特徴)が登録者から捕捉されることを可能にし、一定時間経過後に登録者が効率的かつ正確に識別されることを促進する。本方法は、例示のし易さのため指紋識別に関して説明するが、例えば掌紋や顔画像登録のような他のタイプの生体認証画像登録に対しても本方法が同様に実施され得ることが理解される。
【0020】
図3に示した方法によれば、登録者の指をセンサの上に配置し、その指をセンサ上の異なる位置へと動かすことにより、複数の指紋画像が捕捉され、登録される(310)。指がセンサに触れている間、センサは継続的に指紋のスナップショット画像を捕捉する。通常、捕捉された画像は、指紋の種々の重複部分を表わすだろう。N個の画像が捕捉フォルダに登録および格納され(310)、Nは、格納量要件(すなわちNが小さい程少ない格納量が必要とされる)と、システム10に望まれる精度の程度(すなわちNが大きい程より大きな精度が実現可能となる)のバランスをとったものの関数として予め決定され得るものと仮定する。同様のやり方で、複数の掌紋画像または顔画像が捕捉フォルダに捕捉され得る。先に説明したように、顔の異なる角度と顔の異なる表情から画像が捕捉され得る。この捕捉フォルダは、例えばデータ格納・検索装置100のような、入力・登録ステーション140に結合された格納装置に格納され得る。
【0021】
照合のために使用されるこれらのN個の画像の特徴、例えば指紋の場合マニューシャ(minutia)は、通常は抽出される必要なく、捕捉フォルダ(314)に格納される。画像が特徴レベルではなく画像レベルで比較される場合、特徴の抽出は不要である。その後、捕捉フォルダ内の痕跡画像全体から1つの痕跡画像が調査痕跡画像として選択され、登録フォルダ、例えばデータ格納・検索装置100に格納され、痕跡画像の残りは1セットの背景ファイル痕跡画像として捕捉フォルダに残る(318)。その後、調査痕跡画像の特徴が照合プロセッサ120を使用して残りの背景ファイル痕跡画像の各々の特徴と比較され、比較ごとに対して照合スコア(本明細書では類似性スコアとも称される)が生成される(322)。
【0022】
所定の閾値Te よりも大きいかまたはそれに等しいことが判定された(326)背景ファイル痕跡画像は、それらの対応する照合特徴と共に捕捉フォルダから除去され、一時削除フォルダ、例えばデータ格納・検索装置100に格納される(330)。すべての痕跡画像が捕捉フォルダから除去されている、すなわち一時削除フォルダまたは登録フォルダへ移動されていることが判定されると(334)、図3の方法は終了する。登録フォルダは完成し、登録フォルダに格納された画像は検証段階中に調査痕跡との比較のために後に使用される。そうでない場合、方法は肯定318に戻り、捕捉フォルダ内のもう1つの画像を選択し、その照合特徴と共に登録フォルダ内に配置する。
【0023】
図3で見ることができるように、閾値Teは登録フォルダに格納される痕跡画像の数を制御する。従って、工程326の目的は、調査画像として選択された画像との類似点があまりにも大きい画像をTeの関数として登録フォルダから除去することである。これは登録フォルダ内の画像の余剰の発生率を減少させるために行われ、これにより登録フォルダに必要とされる格納量が減少する。図6を参照して示されるように、Teの値は、主として使用される照合装置の少なくとも1つの特性の関数である。しかしながら、照合されたスコアのスケールは異なるため、捕捉されている画像のサイズに対するセンサのサイズもTeの値に影響を及ぼす。
【0024】
例えば指紋照合装置のような生体認証照合装置の正確さを評価するためには、同じ指の多くの指紋対から生成されたスコア(すなわち対になった痕跡に対する分布曲線620)と異なる指の多くの指紋対から生成されたスコア(すなわち対になっていない痕跡に対する分布曲線610)を集めなければならない。典型的な商用の適用例では、Teの値は、図6に示すように一致スコアと不一致スコアの分布曲線が交差する点として、すなわち統計上の等しい誤り率(EER)の点として、選択される。この閾値では、誤り一致率(FMR)は誤り不一致率(FNMR)と等しい。FMRは、入力が別の人に由来するものである場合に、ある人が、本人であると主張した人であるとシステムが判定した確率である。FNMRは、入力が同じ人に由来するものである場合に、ある人が、本人であると主張した人ではないとシステムが判定した確率である。
【0025】
閾値Teは、最終的な登録リストに望まれる格納量要件の設計基準または痕跡数に基づいて、EERよりも大きいかまたはEERよりも小さい値を有するようにも選択され得る。設計基準がより小さな格納量要件を指示する場合、すなわち最終登録記録中により少ない痕跡があることを指示する場合、より低いTe閾値が選択されるべきである。逆に、設計基準がより大きな格納量要件を指示する場合、すなわち最終登録記録中により多くの痕跡があることを指示する場合、より大きなTe閾値が選択されるべきである。さらに図6に示すように、最小閾値T1は0 FNMRの点であり、最大閾値T2は0 FMRの点である。従って、TeがT1とT2の境界の外で選択される場合、それは他方のタイプの誤りを減少させずに一方のタイプの誤りを増加させ、その逆も起こることになり、これは不都合である。したがってTeは理想的にはT1とT2の間で設定されるべきである。図6に示した閾値T1、T2およびTeは指紋識別に関連して説明した。しかしながら、これらの閾値が例えば掌紋や顔画像に使用される照合装置にも同様に決定され得ることが当業者には容易に理解される。
【0026】
図4および5は本発明の実施形態による生体認証画像の登録方法のフローチャートを示す。本法は図3の方法に似ているため、例示のし易さのために指紋識別に関して説明するが、例えば掌紋や顔画像登録のような他のタイプの生体認証画像登録に対しても本方法が同様に実施され得ることが理解される。この実施形態では、理想的に、一定の品質を有する画像のみを登録段階中に捕捉フォルダに捕捉し、格納する。
【0027】
図4の登録方法によれば、指のある面積の指紋画像がセンサを使用して捕捉され(410)、照合特徴が任意選択で抽出される(414)。通常、登録者にとって過度に不便にならないように、登録者から捕捉される画像の数にはその品質に関係なく最大限度が設定される。しかしながらこの要件は必須ではない。次に、捕捉された画像の品質が所定の品質の閾値より大きいかまたはそれに等しいか否かが判定される(418)。肯定の場合、画像およびその対応する照合特徴は登録フォルダ(422)に格納され、否定の場合、画像およびその対応する照合特徴は一時フォルダ(434)に格納される。
【0028】
指紋画像の捕捉に関して、捕捉フォルダ用の画像を選択するために工程418で使用される品質閾値は、識別システム10の設計中にオフラインのデータベースから、拒否された痕跡(すなわち品質の悪い痕跡)と許可された痕跡(すなわち妥当に品質の良い痕跡)との間の有効陸線流れ方向分布に基づいて経験的に決定される。掌紋識別システムの場合、品質閾値は指紋識別システムにおけるのと同様の方法で決定される。顔照合の場合、すべての捕捉画像がシステムに登録され、かつ登録プロセスが最終的な登録画像を選択するよう、品質閾値は緩和され得る。
【0029】
画像が捕捉フォルダに格納されるごとに、捕捉フォルダが所望の画像数、例えば所定の画像数を含むか否かが判定される(426)。捕捉フォルダが所望の画像数を含む場合、捕捉フォルダは完成し、捕捉フォルダ内の画像から登録フォルダを構築するために図5の工程442〜458が行なわれる。図5の工程442〜458は図3の工程318〜334と同一である。したがって、簡潔さのため、工程442〜458の詳細な説明は繰り返さない。次に、捕捉フォルダが所望の画像数を含んでいない場合、捕捉試行の最大値に達したか否かがさらに判定される(436)。この最大値に達した場合、捕捉フォルダ内の画像の所望数に達するまで、画像およびそれらの対応する照合特徴が一時フォルダから選択され、捕捉フォルダに格納される(438)。その後、捕捉フォルダ内の画像から登録フォルダを構築するために工程442〜458が行なわれる。代わりに、捕捉試行の最大値に達していない場合、プロセスは工程410に戻り、その指の別の画像、理想的にはその指の異なる領域が捕捉される。
【0030】
画像が一時フォルダに格納されるごとに、捕捉試行の最大値に達したか否かが判定される(436)。この最大値に達した場合、捕捉フォルダ内の画像の所望数に達するまで、画像およびそれらの対応する照合特徴が一時フォルダから選択され、捕捉フォルダに格納される(438)。その後、捕捉フォルダ内の画像から登録フォルダを構築するために工程442〜458が行なわれる。代わりに、捕捉試行の最大値に達していない場合、プロセスは工程410に戻り、その指の別の画像、理想的には指の異なる領域が捕捉される。
【0031】
図7は、本発明の実施形態による生体認証画像の検証方法のフローチャートを示す。この方法は、検証ステーション150(図1)で行なわれてもよいし、システム10内の1または複数のプロセッサを使用して実施されてもよい。さらに、本方法は、指紋、掌紋および顔画像認証を始めとする種々のタイプの生体認証に使用され得る。例えばシステムへのアクセスを許可すべく、ユーザを検証するには、ユーザの登録フォルダが彼女の対応する所定の検証閾値と共に検索されなければならない(710)。複数ユーザのための登録フォルダを格納するシステムにおいて、この情報の検索はユーザの個人情報、例えばユーザ名や何らかの種類の適切な識別番号を、システムに入力することにより引き起こされ得る。しかし、検証されるべきユーザが一人であるシステム、例えばセルラ電話では、センサ(714)の上の調査画像を単に捕捉するだけで適切な登録フォルダの検索を引き起こすことが可能である。
【0032】
一旦調査画像が捕捉されると、比較が特徴レベルで行われる場合、調査画像から特徴が抽出される(718)。次に、調査画像の特徴が登録フォルダ内の各画像の特徴に対して照合され、対応する照合スコアが生成される(722)。任意の照合スコアが検証閾値よりも大きいかそれと等しいことが判定されると(726)、アクセスが許可される(735)。すべての照合スコアが検証閾値よりも小さいことが判定されると(726)、アクセスは拒否される(730)。任意選択で、検証試行数が許容最大値よりも小さいこと、すなわち何らかの所定の試行数未満であることが判定された場合(734)、別の調査画像を捕捉することによりプロセスは繰り返される(714)。そうではなく、最大試行数に達している場合、プロセスは終了し、システムへのユーザのアクセスは拒否される。複数の試行があることで、十分な品質の少なくとも1つの調査画像の捕捉による、ユーザ検証が可能となる。試行数を最大数までに制御することで、検証段階中のユーザにとっての不都合が最小限にされる。
【0033】
本発明の1つの利点は、マルチユーザシステムにおいて、1つの検証閾値がすべてのユーザのために使用されるわけではないということである。本発明では、検証閾値が各ユーザに対して個別に決定される。図8はユーザがシステムへのアクセスを許可されるか否かを判定するために使用される所与のユーザ検証閾値を決定する方法のフローチャートを示す。図3(および図5)に示された登録方法でそのユーザのために生成された削除フォルダを、本実施形態に利用する。
【0034】
削除フォルダから1つの画像が選択され、ユーザの登録フォルダ内の最終的に登録された画像のM個の各々に対して照合される。照合は、例えば照合プロセッサ120(例えば特徴照合装置)を用いて、削除フォルダから選択された画像の特徴を、登録フォルダの各画像の照合特徴と比較し、M個の照合スコアを生成することにより行われる(810)。これらのM個の照合スコアのうち、最も高いスコアであるSi が選択される(814)。最も高いSiスコアの選択により、削除された画像に対応する最小限の照合スコアが促進され、ユーザのものではない調査画像は、たとえ画像がユーザの生体認証画像のそれといくらかの類似点を有し得る場合であっても、検証閾値を超えないだろう。工程810,814は、削除フォルダ内の各画像の特徴が登録フォルダ内の各画像の特徴と比較されたことが判定され(818)、それによってN−M個 Siの最も高い照合スコアを生成するまで繰り返される。N−M個のSiスコアの合計数のうち最低スコアが選択され(822)、これは任意の削除された画像と照合する調査画像が検証閾値を超えるだろうことを保証するのを支援する(826)。その後、検証閾値Th はこの選択された最低Si照合スコア(826)に設定され得る。
【0035】
代わりに、検証閾値Thは以下のアルゴリズムに従って決定されてもよい(826)。最低Si照合スコアが第1の所定の最小閾値T1よりも大きくて、第2の所定の最大閾値T2よりも小さい場合、最低Si照合スコアが検証閾値Th として使用される。最低Si照合スコアがT1よりも小さい場合、ThはT1に設定される。他のすべての場合、ThはT2に設定される。このようなアルゴリズムは、対になっている画像と対になっていない画像(それぞれ例えば図6の分布曲線620および610)の照合装置とその対応する関連データベースとに基づいて境界線を超えていないことを保証するのを支援する。
【0036】
指紋が照合される場合、T1とT2の閾値は使用される照合装置の一致痕跡スコアおよび不一致痕跡スコアの統計分布に基づいて予め計算される。詳細には、T1およびT2は図6に示されているように選択され、T1はゼロ FNMRの点であり、T2はゼロ FMRの点である。計算された検証閾値Th は例えば対応する個人のIDの下で格納され得、検証段階で一致が見いだされたか否かを判定するために使用される。さらに、先に述べたように、閾値Th、T1およびT2は、例えば掌紋識別システムや顔画像識別システムのような他の生体認証識別システムの用途でも同様に決定される。
【0037】
図7のフローチャートに示された検証プロセスを再び参照すると、アクセスが否定された画像に対して、さらなる処理が行なわれる場合がある。例えば、アクセスが否定された画像およびそれらの対応する照合特徴は、例えば個人情報泥棒が起こったか否か、または画像の所有者が犯罪調査と結びつけられ得るか否かを決定するために、調査記録に格納され、犯罪データベース内のファイル記録と比較され得る。さらに、アクセスが否定された1または複数の画像が、あるユーザに対する一致であることが知られている場合、画像はそのユーザの登録フォルダに追加され、これらの追加画像に基づいて新しい検証閾値が計算され得る。
【0038】
生体認証画像登録および検証である本発明は、先行技術に対するいくつかの利点を実現している。これらの利点のうちの特定のものを以下のように列挙するが、これらは唯一の利点とみなされるべきではなく、また本発明を如何様にも限定するものとみなされるべきではない。例えば本発明では、検証段階中の後の照合精度を増強するために、1つの画像またはモザイク画像の代わりに複数の画像が登録段階で登録される。さらに、本発明は必要な格納量を最小限に維持しつつ、生体認証システムの最適な精度および速度を達成すべく、登録されるべき画像セットまたは特徴セットの数を決定する体系的な方法を提供する。
【0039】
本発明は本発明による特定の実施形態と関連して説明されるが、当業者によって更なる利点及び改良が容易に想定される。従って、本発明はより広い態様において、図示及び説明した特定の詳細、代替的な装置及び具体的な例に限定されない。上記の説明に照らせば種々の変更、改良及び改変が当業者にとって明らかである。従って、本発明は、上記の説明により制限されないが、本発明の精神及び範囲に従うそれらの変更、改良及び改変をすべて包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による生体認証識別システムの略ブロック図。
【図2】指紋登録のための従来技術の方法のフローチャート。
【図3】本発明の実施形態による生体認証画像の登録方法のフローチャート。
【図4】本発明の実施形態による生体認証画像の登録方法のフローチャート。
【図5】本発明の実施形態による生体認証画像の登録方法のフローチャート。
【図6】本発明の実施形態による指紋登録および検証の制御に使用される閾値を決定するための、一致痕跡スコアおよび不一致痕跡スコアの分布曲線。
【図7】本発明の実施形態による生体認証画像の検証方法のフローチャート。
【図8】図7に例証された検証方法に使用される閾値を決定する方法のフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体認証画像を登録する方法であって、
a)あるユーザの複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する工程;
b)前記捕捉フォルダ内の複数の画像のうちの1つを選択し、該選択された画像を捕捉フォルダから取り出して登録フォルダへ移動させる工程;
c)前記選択された画像を、前記捕捉フォルダ内の残りの画像の各々と比較する工程であって、それにより残りの画像の各々のための対応する類似性スコアを生成する工程;
d)対応する類似性スコアのうちのいずれかが所定のスコア閾値と少なくとも等しいか否かを判定し、所定のスコア閾値に少なくとも等しい対応する類似性を有する前記画像の各々を捕捉フォルダから取り出して削除フォルダへ移動させる工程;および
e)前記捕捉フォルダに少なくとも1つの画像があるか否かを判定し、肯定の場合に、工程b)から工程d)までを繰り返す工程;
から成る方法。
【請求項2】
前記選択された画像は照合プロセッサを使用して前記捕捉フォルダ内の残りの画像の各々と比較される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スコア閾値は前記照合プロセッサの少なくとも1つの特性の関数であり、前記スコア閾値が、前記照合プロセッサの最小閾値に少なくとも等しく、前記照合プロセッサの最大閾値よりは大きくないように選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最小閾値は対になった画像の分布曲線上のゼロ誤り不一致率(FNMR)の点であり;
前記最大閾値は対になっていない画像の分布曲線上のゼロ誤り一致率(FMR)の点であり;
前記スコア閾値は前記ゼロFMRの点と前記ゼロFNMRの点との間の等しい誤り率の点である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の画像は所定の品質閾値の関数として前記捕捉フォルダに捕捉される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する工程は、
i)画像を捕捉する工程;
ii)前記捕捉された画像の品質が前記所定の品質閾値と少なくとも等しいか否か判定する工程;および
iii)前記品質が前記所定の品質閾値と少なくとも等しい場合に、捕捉された画像を前記捕捉フォルダ内に登録する工程;
から成る請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定数の画像が前記捕捉フォルダに捕捉され、前記複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する前記工程は、さらに
iv)前記品質が前記所定の品質閾値よりも小さい場合に、捕捉された画像を一時フォルダに入れる工程;および
v)所定の最大数の捕捉試行に達したか否かを判定すると共に、前記捕捉フォルダが前記所定の数の画像を含むか否かを判定する工程であって、
捕捉フォルダが前記所定の数の画像を含んでおらず、前記所定の最大数の捕捉試行に達していない場合に、工程i)に戻る工程;ならびに
前記所定の最大数の捕捉試行に達している場合に、前記捕捉フォルダが前記所定の数の画像を含むまで前記一時フォルダから画像を選択し、それを前記捕捉フォルダに入れる工程;
から成る工程;
を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
削除フォルダ内の1または複数の画像を登録フォルダ内の複数の画像と比較することに基づいてユーザの検証閾値を決定する方法であって、該削除フォルダと該登録フォルダは請求項1に記載の通りに生成されたものであり、前記方法は、
a)前記削除フォルダから1つの画像の選択する工程;
b)前記選択された画像を前記登録フォルダ内の各画像と比較し、該比較の各々に対して対応する類似性スコアを生成する工程;
c)前記対応する類似性スコアから最も高い類似性スコアを選択する工程;
d)前記削除フォルダ内の各画像が前記登録フォルダ内の各画像と比較されるまで、工程a)、b)およびc)を繰り返す工程;
e)工程c)で選択されたすべての最も高い類似性スコアのうち、最低スコアを選択する工程;および
f)前記最低スコアの関数として前記ユーザの検証閾値を決定する工程;
から成る方法。
【請求項9】
生体認証画像を登録する方法であって、
a)あるユーザの複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する工程;
b)前記捕捉フォルダ内の画像の各々から対応する照合特徴を抽出し、該対応する照合特徴を前記画像と共に前記捕捉フォルダに格納する工程;
c)前記捕捉フォルダ内の複数の画像のうちの1つを選択し、該選択された画像およびその対応する照合特徴を捕捉フォルダから取り出して登録フォルダへ移動させる工程;
d)前記選択された画像の照合特徴を、前記捕捉フォルダ内の残りの画像の各々の照合特徴と比較する工程であって、それにより残りの画像の各々のための対応する類似性スコアを生成する工程;
e)対応する類似性スコアのうちのいずれかが所定のスコア閾値と少なくとも等しいか否かを判定し、各前記画像と、所定のスコア閾値に少なくとも等しい対応する照合特徴を有するその対応する照合特徴とを、捕捉フォルダから取り出して削除フォルダへ移動する工程; および
f)前記捕捉フォルダに少なくとも1つの画像があるか否かを判定し、肯定の場合に、工程b)から工程d)までを繰り返す工程;
から成る方法。
【請求項10】
生体認証画像登録および検証のためのシステムであって、
a)あるユーザの複数の画像を捕捉フォルダに捕捉する手段;
b)前記捕捉フォルダ内の複数の画像のうちの1つを選択し、該選択された画像を捕捉フォルダから取り出して登録フォルダへ移動させる手段;
c)前記選択された画像を、前記捕捉フォルダ内の残りの画像の各々と比較し、それにより残りの画像の各々のための対応する類似性スコアを生成する手段;
d)対応する類似性スコアのうちのいずれかが所定のスコア閾値と少なくとも等しいか否かを判定し、所定のスコア閾値に少なくとも等しい対応する類似性を有する前記画像の各々を捕捉フォルダから取り出して削除フォルダへ移動させる手段;
e)前記捕捉フォルダに少なくとも1つの画像があるか否かを判定し、肯定の場合に、工程b)から工程d)までを繰り返す手段;
f)前記削除フォルダ内の各画像と前記登録フォルダ内の各画像との比較に基づいて前記ユーザのための検証閾値を決定する手段;
g)前記ユーザから調査画像として使用される少なくとも1つの画像を捕捉する手段;
h)前記少なくとも1つの調査画像を前記登録フォルダ内の各画像と比較し、前記登録フォルダ内の各画像に対する対応する類似性スコアを生成する手段;および
i)工程h)で生成された少なくとも1つの対応する類似性スコアが前記ユーザ検証閾値と少なくとも等しいか否かを判定し、肯定である場合に、システムへのユーザのアクセスを許可する手段;
から成るシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521577(P2007−521577A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544091(P2006−544091)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041759
【国際公開番号】WO2005/059824
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】