説明

生体適合性ポリマーおよび使用方法

組成物およびポリマーを製造するための方法が開示される。組成物は、生物学的に適合性および生分解性があるポリマーマトリクスを含むフィルムおよび造形品を含む、新規プラスチックを含む。このようなプラスチックは、天然源に由来するポリマーを含みうる。さらに、このようなプラスチックは、創傷修復、インプラント、ステント、薬物カプセル化および薬物送達、ならびに他の用途に対する生体系において有用である。開示された方法は、各種添加剤、たとえば生物活性タンパク質、糖、脂質などが、続く処理中の生物活性の損失なしにポリマーマトリクス内に包含されうるような緩和な製造プロセスを含む。加えて、このようなプラスチックの力学的特性、たとえば弾性、柔軟性、および多孔性を制御するための製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フィブリンエラストマーは、負傷した軍人のための医療計画を開発するために米国防省支援研究プログラムの一貫として1940年代に発明された。フィブリンエラストマーは、ハーバード大学でEdwin Cohnが率いたヒト血漿プログラムから発展した。そのとき、Woods HoleにいたJonh Ferryは、フィブリンエラストマーの開発に関与していたグループを率いた。本研究の結果として、エラストマーシート形状のフィブリンが開発され、神経外科用途、火傷治療、および末梢神経再生で首尾よく使用された。たとえば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照。硬質フィブリンプラスチックは、骨表面置換用インプラントに作製され、早くも1940年代には臨床での成功を見出していた。たとえばすべて参照により本明細書に組み入れられている、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、および特許文献9を参照。ハンガリー政府の支援を受けた研究は、1950年代から1970年代初めにかけて同様の製品の開発につながった。硬質プラスチックフィブリンの1つの形状(BERIPLAST(商標))により、骨表面置換の整形外科用途で臨床有効性を有することが証明された。たとえば、非特許文献5を参照。
【0002】
フィブリン製品の有効性にもかかわらず、血漿から精製されたヒトフィブリノゲンによる疾病伝播に関する懸念が残っていた。しかしながら、70年代後期の間およびその後、フィブリンは組織接着剤および密封剤として開発され、本用途は精製ヒトフィブリノゲンを必要としたが、これらの製品の安全性を確保するために新たな技法が開発された。結果として、フィブリノゲンは欧州で20年以上にわたって(米国では1998年から)臨床業務で使用されており、疾患伝播の報告はない。近年、組換えヒトフィブリノゲンおよびトロンビンの開発ならびに精製サケフィブリノゲンおよびトロンビンが、安全性および市場での入手性の両方の懸念へのさらなる取り組みを助けてきた。たとえば非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;特許文献10;特許文献11;特許文献12;特許文献13;特許文献14;および特許文献15を参照。
【0003】
当分野でのこのような進歩にもかかわらず、タンパク質バイオポリマー、たとえばフィブリンエラストマーの使用への関心は時間と共に著しく低下してきた。1960年代および1970年代に導入されたシリコーンゴムシートは、シリコーン固有の問題、たとえば生体適合性および耐久性にもかかわらず、病院では、フィブリンエラストマーシートに取って代わられた。現在の合成生吸収性プラスチック、たとえばポリウレタン、ポリ乳酸(PLA)、乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびポリカプロラクトンに関する欠点もある。これらのポリマーは加水分解によって、バルク分解を介して、または表面侵食を通じて体内で分解し、そのすべては周囲の生物環境と無関係に作用する。これらのポリマーが細胞侵入に応答して分解できず、宿主組織の内殖を促進できないことは、生吸収性インプラントの重大な制限のままである。対照的に、タンパク質バイオポリマーは細胞タンパク質分解プロセスに応答して分解するので、分解は宿主組織の成長および治癒に合せて発生する。それゆえ、生物学的に適合性のあるポリマー材料の開発はなお、臨床上、関連性がある。
【0004】
現在まで、これに限定されるわけではないがフィブリン、エラスチンなどを含むバイオポリマーのために先に開発された方法および組成物は、現代の臨床用途には十分適応していない。たとえば、あるタンパク質系バイオポリマーのために開発された最初の製造方法は、高温(たとえば100℃〜170℃)および圧力、または強力な溶媒を必要とした。このような処理は、製造プロセスの結果としての分解、希釈、および変性のために、製造プロセスにおける多くの薬物およびタンパク質の使用を不可能にする。加えて、高温または高圧が使用されるときでさえ、報告された方法を使用して製造品の複雑な形状を形成することと、その物理的特徴、たとえば弾性および多孔性を制御することとが困難である。現在まで、既知の処理技法の欠点、たとえば高温および高圧ならびに/またはプラスチックの所望の物理的特徴を維持することの困難さを回避しながら、バイオポリマーを製造する問題は解決されていない。
【0005】
それゆえ、生物学的応答調節物質および薬物などの感熱性材料をエラストマー性および/または柔軟性材料に包含させる方法が要求される。加えて、局所細胞環境に応答する能力を有する組成物が要求される。材料中でこのような分子の空間パターンを作る方法も要求される。さらに、特にバイオポリマーに関して、たとえば密度、多孔性、および力学的特性を含む製造品の特性を制御するために使用されうる製造方法が要求される。最後に、異方性特性を備えた生体適合性材料を製造する方法が、このような異方性特性を付与するための押し出しまたは有向歪みおよび/または印刷技術に関して要求される。
【特許文献1】米国特許第1,786,488号明細書
【特許文献2】米国特許第2,385,802号明細書
【特許文献3】米国特許第2,385,803号明細書
【特許文献4】米国特許第2,492,458号明細書
【特許文献5】米国特許第2,533,004号明細書
【特許文献6】米国特許第2,576,006号明細書
【特許文献7】米国特許第3,523,807号明細書
【特許文献8】米国特許第4,548,736号明細書
【特許文献9】米国特許第6,074,663号明細書
【特許文献10】米国特許第5,527,692号明細書
【特許文献11】米国特許第5,502,034号明細書
【特許文献12】米国特許第5,476,777号明細書
【特許文献13】米国特許第6,037,457号明細書
【特許文献14】米国特許第6,083,902号明細書
【特許文献15】米国特許第6,740,736号明細書
【非特許文献1】Ferry,J.D.ら、Clin.Invest.(1944)23:566−572
【非特許文献2】Bailey,O.T.ら、J.Clin.Invest.(1944);23:597−600
【非特許文献3】Cronkiteら、JAMA(1944)124:976−8
【非特許文献4】Ferry J.D.ら、Am.Chem Soc.J.(1947)69:400−409
【非特許文献5】Gerendas,M.,Fibrinogenの13章,Laki,K.,Ed.,Marcel Dekker,New York,pp.(1968)277−316
【非特許文献6】Butler S.P.ら、Transgenic Res.(2004)13:437−450
【非特許文献7】Prunkard D.ら、Nat.Biotechnol.(19964:867−871)
【非特許文献8】Butler S.P.ら、Thromb.Haemost (1997)78:537−542
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単な概要
本明細書で開示する構築物は、宿主組織のタンパク質分解プロセスに応答して分解されうる生体適合性材料を構成する。フィブリノゲンなどの未変性細胞外マトリクス(ECM)分子の構造エラストマーおよび/または柔軟性フィルム、グラフト、ならびに組織再生用途のための足場などのバイオポリマーへの処理は、整形外科、神経外科、および顎顔面外科手術、補綴組織界面、ならびに他の臨床分野にもただちに利用されうる。本明細書では、バイオポリマーを含む新規組成物を含む、製造方法が開示される。ある実施形態において、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、標識化合物、微粒子(たとえばリン酸カルシウム、およびバイオガラス)および他の臨床関連材料の本明細書で開示する材料への包含が実行されうる。他の実施形態において、成長因子、ホルモン、および他の構成要素の空間パターンは、生体力学特性および生体吸収率を変化させるために使用されうる。
【0007】
さらなる実施形態は、組成物およびポリマー材料の処理を含む方法、ならびに、たとえば生体系におけるこのような材料の利用および使用も含む。ポリマー材料としては、たとえば、ポリサッカライド(たとえばキトサン)およびグリコサミノグリカン(たとえばヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、およびヘパリン)などのポリマー糖、ならびにフィブリン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、およびゼラチンなどのポリマータンパク質を含む、生体適合性であるポリマー材料が挙げられる。ある実施形態では、ポリマーは、ポリマーマトリクス上またはポリマーマトリクス中に配置される生物関連の追加の分子をさらに含みうる。興味のある分子としては、これに限定されるわけではないが、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、標識化合物などが挙げられる。なお他の実施形態において、ポリマー材料はプラスチックであり、ある実施形態においては変形可能である。このようなプラスチックは、使用目的に応じて硬質または軟質プラスチックでありうる。これらのポリマーは、使用目的に応じて所望の形状への成形、機械加工、形成、鋳造、押し出しなどが行われうる。ポリマーは、植え込みおよび再吸収できる生体適合性足場用のマトリクスを形成するために使用されうる。ある実施形態において、構造物の表面は、たとえば細胞の付着および移動を促進するために微粉砕、機械加工、粗面化、穿孔などを含むいずれかの方式でさらに処理されうる。他の実施形態において、細胞はたとえば足場上または足場中へ播種されうる。さらに、このような材料の多孔性は、たとえば溶媒和および昇華などの手段によって除去されるまでポリマーマトリクスに介在されうるポロゲンの導入を含む、いくつもの方法によって変更されうる。たとえばハイドロゲルを含むポリマーの水和は、これに限定されるわけではないが、蒸発、浸透、または他のいずれかの方法による水の除去を含む、いずれかの方法で調整されうる。このような手順は、目的用途に適した時間、温度、および/または圧力で実行されうる。それゆえ、ある実施形態において、低温製造プロセスが示される。
【0008】
タンパク質系バイオポリマーおよびプラスチックに関する組成物および方法が提供される。ある実施形態において、バイオポリマーを含む製造品であって、脱水される製造品が提供される。
【0009】
ある実施形態において、タンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびその組合せなどの脱水バイオポリマーを含む製造品が提供される。
【0010】
ある実施形態において、バイオポリマーを含む製造品が提供され、製造品は真空によって脱水される;製造品はフィルムを形成する;製造品は弾性である;製造品は柔軟である;製造品はジスルフィド結合を含む;製造品はイソペプチド結合を含む;製造品はモノアルデヒドまたはポリアルデヒド架橋アミンを含む;製造品はピラン架橋アミンを含む;または、製造品は、架橋剤、たとえばイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、NHSカルボン酸エステル、およびその組合せにより架橋される。
【0011】
ある実施形態において、脱水バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、および標識化合物などの化合物を含み、ここでトレーサは量子ドットであり、生物学的応答調節物質は骨形成タンパク質である。
【0012】
ある実施形態において、バイオポリマーフィルムを含み、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、もしくは標識化合物がフィルムの表面上に被着した、または生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、もしくは標識化合物がフィルムのポリマーマトリクス中に包含された製造品が提供される。ある実施形態において、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、および硫酸カルシウムなどの微粒子をさらに含むバイオポリマーフィルムを含む製造品が提供される。
【0013】
ある実施形態において、バイオポリマーフィルムを含み、フィルムが積層構造物を形成し、積層構造物がシートの積み重ね、管状ロール、またはその組合せから形成される製造品が提供される。ある実施形態において、本明細書で開示される構造物には細胞、たとえば幹細胞が播種される。
【0014】
ある実施形態において、バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は圧縮されている。
【0015】
ある実施形態において、圧縮バイオポリマーを含む製造品が提供され、該バイオポリマーはたとえば、タンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびその組合せである。
【0016】
ある実施形態において、圧縮バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品はポリマーマトリクスを形成するのに十分な圧力および温度にて、十分な時間圧縮され、該製造品は押し出し金型、圧縮鋳型、または射出鋳型内で形成される。
【0017】
ある実施形態において、圧縮バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は充填剤または可塑剤を含み、該可塑剤はたとえばフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびその組合せである。
【0018】

ある実施形態において、圧縮バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は、イリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、NHSカルボン酸エステル、およびその組合せなどの架橋剤によって架橋される。
【0019】
ある実施形態において、バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は孔を含む。
【0020】
ある実施形態において、バイオポリマーを含む製造品が提供され、該製造品は、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、および標識化合物などの化合物を含む。
【0021】
ある実施形態において、ハイドロゲルを供給する工程と;脱水フィルムを形成するための温度および圧力、ならびに時間でハイロドゲルを真空乾燥させる工程とを含む、ポリマーフィルムを製造する方法が提供され、該温度は80℃未満であり、該圧力は20ミリバール未満であり、該ハイドロゲルはタンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびその組合せなどのポリマーから形成される。
【0022】
ある実施形態において、脱水フィルムを形成するための温度および圧力、ならびに時間でハイロドゲルを真空乾燥させる工程を含む、ポリマーフィルムを製造する方法が提供され、該ハイドロゲルは、フタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびその組合せなどの可塑剤を含む。
【0023】
ある実施形態において、脱水フィルムを形成するための時間および圧力、ならびに時間でハイロドゲルを真空乾燥させる工程を含む、ポリマーフィルムを製造する方法が提供され、該ハイドロゲルは、イリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびその組合せなどの架橋剤により架橋され;該ハイドロゲルは、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびその組合せなどの化合物を含み;ならびに/またはハイドロゲルは、充填剤を含む。
【0024】
ある実施形態において、バイオポリマーに化合物を混合して混合物を生成する工程と、バイオポリマーマトリクスを形成するための圧力および温度で混合物を圧縮する工程とを含む、プラスチックを製造する方法が提供される。
【0025】
ある実施形態において、バイオポリマーに化合物を混合して混合物を生成する工程と;バイオポリマーマトリクスを形成するための圧力および温度で混合物を圧縮する工程とを含む、プラスチックを製造する方法が提供され、該温度は80℃未満であり、該圧力は6000ポンド未満であり、該混合物は押し出し金型、圧縮鋳型、または射出鋳型内で形成される。
【0026】
ある実施形態において、バイオポリマーに化合物を混合する工程と、バイオポリマーマトリクスを形成するための圧力および温度で混合物を圧縮する工程とを含む、プラスチックを製造する方法が提供され、該バイオポリマーマトリクスは、タンパク質、ポリサッカライド、フィブリン、フィブリノゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、細胞外マトリクス構成要素、エラスチン、およびその組合せなどのポリマーから形成され;該バイオポリマーマトリクスは、可塑剤もしくは充填剤またはその組合せを含み、該可塑剤はたとえば、フタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびその組合せである。
【0027】
ある実施形態において、バイオポリマーに化合物を混合して混合物を生成する工程と;バイオポリマーマトリクスを形成するための圧力および温度で混合物を圧縮する工程とを含む、プラスチックを製造する方法が提供され、該バイオポリマーマトリクスは、イリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびその組合せなどの架橋剤により架橋され;該化合物はたとえば、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびその組合せである。
【0028】
ある実施形態において、バイオポリマーにポロゲンを混合する工程と;ポロゲンを含むバイオポリマーマトリクスを形成する工程と;バイオポリマーマトリクスからポロゲンを除去する工程とを含む、多孔性プラスチックを製造する方法が提供され、該バイオポリマーマトリクスは、タンパク質、ポリサッカライド、フィブリン、フィブリノゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、細胞外マトリクス構成要素、エラスチン、およびその組合せなどのポリマーから形成され;該バイオポリマーマトリクスは、充填剤を含み;または、該バイオポリマーは可塑剤を含み、該可塑剤はたとえば、フタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびその組合せである。
【0029】
ある実施形態において、バイオポリマーにポロゲンを混合する工程と;ポロゲンを含むバイオポリマーマトリクスを形成する工程と;バイオポリマーマトリクスからポロゲンを除去する工程とを含む、多孔性プラスチックを製造する方法が提供され、該バイオポリマーマトリクスは、イリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびその組合せなどの架橋剤により架橋され;該バイオポリマーマトリクスは、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびその組合せなどの化合物を含む。
【0030】
ある実施形態において、バイオポリマーにポロゲンを混合する工程と;ポロゲンを含むバイオポリマーマトリクスを形成する工程と;バイオポリマーマトリクスからポロゲンを除去する工程とを含む、多孔性プラスチックを製造する方法が提供され、該ポロゲンは溶媒和ポロゲンであり;該ポロゲンは有機相に溶解性であり;該ポロゲンはたとえば、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリカプロラクトンであり;該ポロゲンは水相に溶解性であり;該ポロゲンは、塩化ナトリウムであり;該ポロゲンは、昇華ポロゲンであり;または該ポロゲンはたとえば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、およびトリフルオロ酢酸ピリジニウムである。
【0031】
ある実施形態において、溶媒により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供し、混合物を形成するする工程と;固体架橋剤を含む混合物からポリマーマトリクスを形成する工程と;構造物に架橋剤を活性化する溶媒を接触させる工程とを含む、ポリマーを架橋する方法が提供され、該架橋剤はピラン部分を含み、該架橋剤はイリドイド誘導体であり、または該架橋剤はゲニピンである。
【0032】
ある実施形態において、溶媒により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供し、混合物を形成する工程と;固体架橋剤を含む混合物からポリマーマトリクスを形成する工程とを含む、ポリマーを架橋する方法が提供され、該ポリマーは、タンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびその組合せなどのバイオポリマーであり;該混合物は、フタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、およびポリマー可塑剤などの可塑剤を含む。
【0033】
ある実施形態において、溶媒により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供し、混合物を形成する工程と;固体架橋剤を含む混合物からポリマーマトリクスを形成する工程とを含む、ポリマーを架橋する方法が提供され、該混合物はポロゲンを含み、該ポロゲンは溶媒和ポロゲンまたは昇華ポロゲンである。
【0034】
ある実施形態において、溶媒により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供し、混合物を形成する工程と;固体架橋剤を含む混合物からポリマーマトリクスを形成する工程とを含む、ポリマーを架橋する方法が提供され、該混合物は、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびその組合せなどの化合物をさらに含む
ある実施形態において、水により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供する工程であって、固体ポリマーが遊離ヒドロキシル基を含有する、工程と;架橋が起こるのに十分な時間、混合物をインキュベートする工程とを含む、ポリマーを架橋する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
詳細な説明
本発明のある記述は、明確にする目的で他の要素を削除すると同時に、本発明の明瞭な理解に関連する要素および制限のみを例証するために簡略化されていることが理解されるものとする。当業者は、本発明の本記述を考慮して、本発明を実施するために他の要素および/または制限が所望でありうることを認識するであろう。しかしながら、このような他の要素および/または制限は、本発明の本記述を考慮して当業者によってただちに確認でき、本発明の完全な理解には必要でないため、このような要素および制限の議論は本明細書では提供されない。このようなものとして、本明細書で述べる説明は本発明にとって単なる例示であり、請求項の範囲を制限するものではないことが理解されるものとする。
【0036】
本明細書の例以外で、または別途明示的に規定されない限り、明細書の次の部分および添付請求項において、数値範囲、量、値、およびパーセンテージ、たとえば材料の量、元素含有量、反応の時間および温度、量の比、およびその他などは、「約」という用語が値、量、または範囲と共に明示的に出現しなくても、「約」という語が前置されているかのように解釈されうる。したがって反対に指摘されない限り、次の明細書および請求項で示される数値パラメータは、本発明によって得ようとされる所望の特性に応じて変化しうる概数である。最低限でも、そして請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてでなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、そして普通の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0037】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータが概数であるのもかかわらず、具体的な実施例で示される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、その基礎を成す各試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる誤差を本質的に含有する。さらに、数値範囲が本明細書に示されるとき、これらの範囲は引用された範囲の終点を含む(すなわち終点が使用されうる)。また本明細書で引用するいずれの数値範囲もその中に包含されるすべての下位範囲を含むものとすることが理解されるはずである。たとえば「1〜10」の範囲は、引用された最小値1と、引用された最大値10との間の(そしてそれらを含む)、すなわち1と等しい、または1を超える最小値および10と等しい、または10未満の最大値を有する、すべての下位範囲を含むものとされる。
【0038】
本発明内のある組成物は一般に、医療および生物システムでの使用のためのバイオポリマーの形で記載される。しかしながら、本発明は、本明細書に明確におよび明示的に記載されていない形で具体化され、本明細書に明確におよび明示的に記載されていない最終用途に利用されうることが理解されるであろう。たとえば当業者は、プラスチックを含む組成物および方法が多くの産業、および医療分野でも用途を有することを認識するであろう。
【0039】
本明細書で引用したすべての特許、公報、または他の開示資料は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。全体または一部が参照により本明細書に組み入れられている、いずれの特許、公報、または他の開示資料も、組み入れられた資料が既存の定義、記載、または本開示で示された他の開示資料と矛盾しない程度にのみまで本明細書に組み入れられる。このようなものとして、そして必要な程度まで、本明細書で明示的に示す開示は、参照により本明細書に組み入れられたいずれの矛盾する資料にも優先する。参照により本明細書に組み入れられると言われるが、既存の定義、記載、または本開示で示された他の開示資料と矛盾するいずれの資料、またはその一部も、その組み入れられた資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない程度のみまで組み入れられるであろう。
【0040】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、冠詞の文法的対象の1個または1個超(すなわち少なくとも1個)を指すために本明細書で使用される。一例として、「a component(1つの成分)」は、1つ以上の成分を意味し、それゆえ、おそらく1つを超える成分が考慮され、利用または使用されうる。
【0041】
本明細書で開示するように、一連の生体力学特性を示す改良された構造特性を備えた新しいポリマーおよびその製造方法が示される。本発明の組成物および方法の利点としては、これに限定されるわけではないが、材料と宿主との生体適合性;材料が組織再生と併せて分解する能力;本明細書で開示する材料への成長因子の結合、それにより治療結果を生じるのに必要な投薬量を最小限に抑えるのを助けること;材料の力学的特性(たとえば弾性、ゴム状から硬質にまでわたる)を容易に操作する能力;市販用途のための材料を容易に貯蔵する能力;材料が使用される時および場所(たとえば手術室、戦場)などにて材料を容易に成形する能力;構造物が植え込み部位における組織脱出に抵抗する能力;および他の材料を基材に包含させることによって、植え込み材料に対する生理学的応答を調節する能力が挙げられる。本発明の組成物および方法としては、これに限定されるわけではないが、バイオポリマーを作るタンパク質の使用が挙げられる。実際に、そのすべてが参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,653,291号、第6,485,723号、第6,379,710号、第6,375,989号、第6,331,319号、第6,241,981号、第6,187,039号、第6,099,567号、第5,997,575号、第5,955,110号、第5,885,619号、第5,755,791号、第5,753,267号、第5,711,969号、第5,695,998号、第5,645,860号、第5,573,784号、第5,554,389号、第5,445,833号、第5,372,821号、第5,352,463号、第5,281,422号、第4,956,178号および第4,902,508号に開示されているようなプロセスなどのプロセスによって得られた他の天然型材料、たとえばキトサンなどのポリサッカライドまたはヒアルロン酸などのグルコサミノグリカン、ならびに線維性タンパク質などの細胞外マトリクス構成要素、個別に、または組合されて、本明細書で開示するエラストマー性および/または柔軟性材料を生成する。
【0042】
「ポリマー」という用語は本明細書で使用するように、これに限定されるわけではないが、ゲルおよびプラスチックを含む分子を含む、反復構造ユニットを有する天然および合成分子を指す。「マトリクス」という用語は、結合したサブユニットのネットワークを指す。「ポリマーマトリクス」という用語は、結合したポリマーサブユニットのネットワークを指し、それゆえ、ポリマー表面に対向する内部空間、またはそれから形成された構造物を含む。
【0043】
「生体適合性の」という用語は、インプラントまたはコーティングに激しい永続するまたは高まる生体応答の刺激が存在しないことを指し、外科手術または異物の生物内への植え込みに通例伴う軽い一過性の炎症とは区別される。
【0044】
生体適合性の非生分解性ポリマーの例としては、これに限定されるわけではないが、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、たとえばナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびポリブタジエン−ポリイソプレンコポリマー、ネオプレンおよびニトリルゴム、ポリイソブチレン、オレフィン性ゴム、たとえばエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、およびポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、フルオロエラストマーおよびフルオロシリコーンゴム、酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニルアセテートコポリマー、アクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、たとえばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレンジメタクリレートおよびヒドロキシメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリルブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、フルオロポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニル、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルのホモポリマーおよびコポリマー、酢酸セルロース、アクリロニトリルブタジエンスチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリメチルスチレン、ならびに当業者に既知の他の同様の化合物が挙げられる。本開示により有用である他の生体適合性の非分解性ポリマーとしては、DNAと相互作用しうる生体適合性金属イオンまたはイオン性コーティングを含むポリマーが挙げられる。例示的な実施形態において、たとえば炎症を阻害する、DNAを結合する、ならびに感染および血栓症を抑制するために、金および銀イオンが使用されうる。
【0045】
生体適合性の生分解性ポリマーの例としては、これに限定されるわけではないが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、およびそのコポリマー、ポリエステル、たとえばポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、たとえばn−ブチルシアノアクリレートおよびイソプロピルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアルキレンオキシド、アルギナート、アガロース、デキストリン、デキストラン、ならびにポリ無水物が挙げられる。
【0046】
「バイオポリマー」という用語は、生物中に天然に見出されうるポリマーを含む生体適合性ポリマー、ならびにこのようなポリマーの化学的および物理的改変物も指し、これに限定されるわけではないが、タンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ラミニン、フィブロネクチン、細胞外マトリクス構成要素、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、アルブミン、アルギナート、キトサン、セルロース、トロンビン、ヘパリン、ポリサッカライド、合成ポリアミノ酸、プロラミン、その組合せ、および他のこのような分子が挙げられる。生体適合性ポリマーとしては、これに限定されるわけではないが、必ずではないが、生分解性でありうるバイオポリマーが挙げられる。本明細書で使用するように、「未変性の」という用語は、ポリマーなどの物質について述べるときに、天然に見出される物質、たとえばフィブリン、エラスチンなどと化学的に同一である物質の精製形状を指す。
【0047】
「混合物」という用語は、基材および1つ以上の追加材料の混合物を指す。例示的な実施形態において、混合物の基材はポリマー、たとえばバイオポリマーであり、追加材料は充填剤、微粒子、ポロゲン、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、その組合せ、および同様の材料である。ある実施形態において、混合物はスラリーでありうる。「スラリー」という用語は、これに限定されるわけではないが、本明細書で開示され、当分野で既知である可塑剤などの可塑剤、および他のこのような薬剤を含む、液体中に懸濁された混合物を指す。
【0048】
「生分解性の」および「生侵食性の」という用語は、物質、たとえばインプラントまたはコーティングの、生体組織中に通常存在する条件下で代謝または排出されうる構成部分への分解を指す。例示的な実施形態において、生分解または生侵食の速度および/または程度は、予測可能な方法で制御されうる。
【0049】
「生物学的応答調節物質」という用語は、宿主生物中に導入されたときに生物反応を誘発できる、いずれかのタンパク質、糖タンパク質、糖、ポリサッカライド、脂質、DNA、RNA、アパタマー、ペプチド、ホルモン、ビタミンおよび他のこのような物質を指し、これに限定されるわけではないが、サイトカイン、成長因子、タンパク質、ホルモン、遺伝子、または遺伝子修飾生物、たとえばウィルスおよび細菌などを含む。生物学的応答調節物質の具体的な例としては、これに限定されるわけではないが、インターロイキン(IL)、たとえばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、そのアイソフォームおよびその他;インターフェロン、たとえばα、ベータ、ガンマおよびその他;成長因子、たとえば血小板由来成長因子(PDGF)、FGF−1およびFGF−2を含む酸性および塩基性線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子ベータ(TGF−ベータ、たとえばTGF−ベータ−1およびTGF−ベータ−2)、インスリン様成長因子(IGF、たとえばIGF−IおよびIGF−IIを含む)、表皮成長因子(EGF、たとえばEGFおよびヘパリン結合EGF)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、腫瘍壊死因子−ベータ(TNF−β)、血管内皮成長因子(VEGF)、そのアイソフォームおよびその他;抗体;これに限定されるわけではないが、BMP−2、BMP−4、およびBMP−7を含む骨形成タンパク質(BMP)、メタロプロテアーゼまたはプロメタロプロテアーゼおよびそのインヒビター、アンギオテンシン変換酵素インヒビター;アニソイル化プラスミノゲンアクチベータ(TPA)およびアニソイル化プラスミノゲン−ストレプトキナーゼアクチベータ複合体(APSAC)およびそのインヒビターを含む、プラスミノゲンおよび組織プラスミノゲンアクチベータ(TPA);遺伝子発現および機能を修飾するための、その各種の形のRNAおよびDNA;成長因子;サイトカイン、あるいは他のタンパク質系ホルモン、ステロイド系ホルモン、その改変ホルモンなどが挙げられる。
【0050】
「抗原」という用語は、これに限定されるわけではないが、免疫記憶応答、T細胞応答、B細胞応答、アレルギー、ワクチン応答、炎症、免疫寛容などを含む、免疫応答を誘発できるいずれかの分子を指す。「抗原化合物」という用語は、抗原を含むいずれかの生物または物質を指し、これに限定されるわけではないが、免疫応答を誘発できるウィルス全体、細菌、組織、および誘導体、改変物、およびその生成物を含む。抗原の具体的な例としては、これに限定されるわけではないが、タンパク質、抗原、ポリサッカライド抗原、ハプテン、腫瘍抗原、血液抗原などが挙げられる。
【0051】
「薬物」という用語は、これに限定されるわけではないが、疾患の診断、治癒、緩和、処置、または予防に使用する目的の物質を含む、薬剤として、または薬剤の調製に使用される物質を指す。たとえば薬物としては、これに限定されるわけではないが、小型有機分子、複合有機分子、無機元素および分子などが挙げられうる。本明細書で使用するように、「薬物」という用語はたとえば、殺真菌薬、抗生剤および他の分子を含む。
【0052】
「トレーサ」という用語は、生物または構築物中に導入され、検出されうるいずれかの分子を指す。たとえばトレーサとしては、これに限定されるわけではないが、放射性化合物、造影剤、発光分子、量子ドット、蛍光分子、染料、バイオマーカ、造影目的の分子トレーサ(蛍光マーカ、放射性マーカ、CT、マイクロCT、MRI用造影剤または生体イメージングの形、および免疫特異性マーカを含む)およびその他が挙げられる。本明細書で使用するように「標識化合物」は、それ(またはその代謝産物、たとえば分解生成物)がいずれかの手段によって検出できるように改変されたいずれかの物質を指す。標識化合物は、興味のある分子へのトレーサの結合(たとえば共有または非共有)を含む、いずれかの方法で標識されうる。
【0053】
「ホルモン」という用語は、生体における生理学的事象を調節する生化学メッセンジャーとして作用する、いずれかの分子を指す。ホルモンの具体的な例としては、これに限定されるわけではないが、ステロイドホルモン、たとえばエストロゲン、プレグネノロン、アルドステロン、エストラジオール、コルチゾール、テストステロン、プロゲステロンなど;ペプチドホルモン、たとえば黄体形成ホルモン(LH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、およびアンギオテンシンII/III;これに限定されるわけではないが、グルココルチコイド、たとえばプレドニゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンなど、ミネラルコルチコイド、たとえばフルドロコルチゾン、ビタミンD誘導体、たとえばジヒドロタキステロール、合成アンドロゲン、たとえばオキサンドロロン、デカドラボリンなど、合成エストロゲン、たとえばジエチルスチルベストロール(DES)を含む合成ステロイド;合成プロゲスチン、たとえばノルエチンドロンおよびメドロキシプロゲステロンアセテート;などが挙げられる。本明細書では「ホルモン」という用語は、「生物学的応答調節物質」という用語に含まれるものとする。
【0054】
「充填剤」という用語は、本明細書で開示する組成物に追加の構造的または力学的特性を与えるためにポリマー中に包含されるいずれかの物質を指し、これに限定されるわけではないが、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトなどを含む本明細書で開示される微粒子、賦形剤(たとえばバルキング剤として作用する不活性化合物、たとえばカルボキシメチルセルロース)、たとえば不活性または生物活性でありうる合成および/または天然型物質、たとえばポリサッカライドおよびタンパク質(たとえば線維状または球状タンパク質)を、これに限定されるわけではないが、含む。
【0055】
本明細書で使用するように、「感熱性」という用語は、80℃を超えて加熱されたときに不活性となるいずれかの化合物を指す。それゆえ、「感熱性」という用語は、溶融、分解、変性などを含むいずれかの手段によって、80℃を超える温度にて生物活性を失ういずれかの化合物、たとえば生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、標識化合物を含む。
【0056】
「バイオインク」という用語は、足場の構造の一部として沈着に適している、液体、固体または半固体にかかわらず、いずれかの物質を含むものとし、たとえば生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、その組合せ、および他のこのような物質を含む。生体適合性または生分解性であるいずれの材料も、本開示によるバイオインクとしての使用に適している。
【0057】
「足場」という用語は、たとえば微細構造(たとえば孔径および/または存在量)の側面を模倣することによって、または少なくとも1つの適切な細胞タイプの接着および/または成長を補助する能力を模倣することによって、生物構造を模倣するように設計されている本質的にいずれかの材料の集合を含む。「生物模倣型細胞外マトリクス」(bECM)という用語は、細胞外マトリクス構成要素より成る構造物、たとえば足場を指す。
【0058】
「共沈着の」という用途は、同じ位置、たとえば足場への2つ以上の物質、通常はバイオインクの配置について説明する。物質は同時に、または非同時的に(たとえば連続的に)共沈着されうる。
【0059】
「濃度勾配」は、1つ以上の物質の濃度および/またはアクセス性がそれに従って変化しうる1つ以上の次元(空間または時間にかかわらず)である。該用語は、濃度が全体で均一である勾配(すなわち水平勾配)、および濃度が変化する勾配を含むものとする。濃度勾配は、線形勾配(すなわち連続した割合で上昇または下降する勾配)および非線形勾配の両方含む。「空間濃度勾配」は、濃度が1つ以上の空間次元に沿って変化しうる濃度勾配である。「時間濃度勾配」は、濃度が時間に対して変化しうる濃度勾配である。「3次元濃度勾配」は、1つ以上の物質の濃度が各次元に沿って独立して変化しうる、3つの直交空間次元のセットである。
【0060】
「架橋」は、2つの実体、通例はポリマーサブユニットの間の共有結合の形成である。「架橋剤」は、2つの実体を架橋できるいずれかの薬剤を指す。架橋剤は物理的または化学的でありうる。化学架橋剤としては、これに限定されるわけではないが、イリドイド誘導体(たとえばゲニピン)、ジイミデート、ジオン(たとえば2,5−ヘキサンジオン)、カルボジイミド(たとえば1−エチル−[3−(ジメチルアミノプロピル)]カルボジイミド)(省略形EDC)、アクリルアミド(たとえばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖(たとえばリボースおよびフルクトース)、タンパク質(たとえば、トランスグルタミナーゼ第XIII因子などの酵素)、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド(たとえばグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびホルムアルデヒド亜硫酸ナトリウム)、ジブロモ2官能性NHSエステル(たとえば1〜20個の介在炭素を含むジカルボン酸のジNHSエステル)、カルボニルジイミド;グリオキシル;および同様の架橋剤が挙げられる。化学架橋剤は固体(たとえば粉末)または液体でありうる。固体架橋剤の例としては、これに限定されるわけではないが、ゲニピン、ジブロモ2官能性NHSエステル、およびホルムアルデヒド亜硫酸ナトリウムが挙げられる。液体架橋剤の例としては、これに限定されるわけではないが、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。物理架橋剤としては、たとえば電磁放射線、たとえば紫外光、熱、マイクロ波などが挙げられる。本明細書で使用するように、「架橋アミン」は、窒素を含む2つのポリマー間のいずれかの架橋結合、たとえばアルデヒド架橋の生成物(すなわちイミンまたはエネアミン)、あるいはエステル架橋の生成物、あるいはアミド、あるいは他のいずれかの同様の結合を指す。架橋は、構造物の形成前または形成後に発生しうる。
【0061】
「ゲル化」という用語は、ポリマーが粘度を上昇させて、流体状態から半固体材料、すなわちゲルに転換するときにポリマーが受ける相転移を指す。本転移点において、ポリマーマトリクスの分子量(重量平均)は、新生ゲルを通じての本質的に連続性のマトリクスの形成のために「無限」となる。重合は、追加のポリマーのゲルマトリクスへの包含によって、ゲル化点を超えて継続しうる。本明細書で使用するように、「ゲル」は、半固体ゲル状態と、ゲル化温度より上に存在する高粘度状態の両方を含みうる。
【0062】
「ゲル化温度」という用語は、ポリマーが逆熱ゲル化を受ける温度、すなわちポリマーが水に溶解性である温度よりも低く、粘度を上昇させるまたは半固体ゲルを形成するためにポリマーが相転移を受ける温度よりも高い温度を指す。ゲル化はポリマーの化学組成の変化を一切含まないので、ゲルはゲル化温度よりも冷却されたときに自発的により低い粘度流体に戻りうる。ゲル化温度は、ゲル−溶液(またはゲル−ゾル)転移温度とも呼ばれうる。
【0063】
「ハイドロゲル」は、ポリマー(天然または合成)が溶液分子、通例は水を捕捉する3次元開格子構造になってゲルを形成するときに形成された物質として定義される。ポリマーは、たとえば凝集、凝固、疎水性相互作用、架橋、塩橋などによってハイドロゲルを形成しうる。細胞が播種される足場の一部としてハイドロゲルが使用される場合、ハイドロゲルは細胞にとって非毒性であるべきである。「脱水された」という用語は、構造物、たとえばフィルム、またはハイドロゲルのどちらを指すかにかかわらず、いずれかのプロセスによってそれから水が除去されたいずれかの物質を含み、本明細書で記載されるものなどの、部分脱水ハイドロゲルを含む。
【0064】
「ハイドロゲル溶液」は、適切な条件、たとえば温度、塩濃度、pH、プロテアーゼの存在、結合パートナーの存在などにさらされた場合にハイドロゲルまたはハイドロゲルの一部となる物質を構成する、溶質および溶媒である。ハイドロゲル溶液中の「溶液」という用語は、真溶液、および懸濁物、たとえばコロイド懸濁物、および1つの成分が真に可溶化されていない他の流体材料を含むものとする。
【0065】
「力学的特性」は、物質が外力の印加にどのように応答するかについてある説明を与える、本質的にいかなる特性も指す。例示的な力学的特性としては、引張強度、圧縮強度、曲げ強度、衝撃強度、伸長、係数、靭性が挙げられ、ゴムと同様の力学的特性(たとえばゴム状)などを有する。力学的特性としては、たとえば柔軟性(すなわち「柔軟な」はポリマーが破断せずに湾曲または変形する能力である)、弾性(すなわち「エラストマー性の」は、ポリマーが変形後に元の形状を回復する能力である)および他のこのような特性が挙げられる。フィルムはたとえば、弾性および柔軟性の両方、柔軟性ではないが弾性、または弾性ではないが柔軟性でありうる。フィルムが弾性でも柔軟性でもない場合、それは本明細書では「剛性」と呼ばれる。
【0066】
「フィルム」は薄いシートを指す。それゆえ、フィルムは、厚さ1μmまでの、厚さ100μmまでの、厚さ10μmまでの、厚さ1μmまでの、厚さ100μmまでの、厚さ10nmまでの、厚さ1nmまでの、またはその間のいずれかの範囲のシートでありうる。フィルムは調合および形状に応じて、多くの力学的特性、たとえば弾性、非弾性、柔軟性、剛性などを有するであろう。
【0067】
「微粒子」は、ポリマーマトリクス中に包含されうる十分に小さいサイズの固体を指す。微粒子としては、これに限定されるわけではないが、結晶、ポリマー、粉末、セラミック、無機物、金属塩、アパタイト(たとえばヒドロキシアパタイト)およびリン酸三カルシウムを含むリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ならびに整形外科および他の関連用途での骨誘導能を促進するための包含用に選択された無機質の組合せ、ガラス、バイオガラス、ポロゲンなども挙げられる。
【0068】
「ポロゲン」という用語は、ポリマーマトリクス中へ包含されたいずれかの微粒子を指し、該微粒子はポロゲンの液相または気相中への溶解または昇華を含むいずれかの手段によって除去されうる。ポロゲンは、水相、有機相への溶解、または気体中への昇華が可能である。ポロゲンは、カプセル化された気体(すなわちCO、N、Oなど)または分解時に気体を放出できる物質、たとえば酸との接触時にCOを放出する重炭酸ナトリウムも含みうる。
【0069】
「粉末」または「粉末化」という用語は、小型固体粒子を指す。粉末は本明細書で使用するように、30メッシュ(すなわち595ミクロン)未満の平均直径を有する粒子を含みうる。本発明のある実施形態において、粒子の平均直径は、35メッシュ(すなわち500ミクロン)未満、40メッシュ(すなわち400ミクロン)未満、45メッシュ(すなわち354ミクロン)未満、50メッシュ(すなわち297ミクロン)未満、60メッシュ(すなわち250メッシュ)未満、70メッシュ(すなわち210ミクロン)未満、80メッシュ(すなわち177ミクロン)未満、100メッシュ(すなわち149ミクロン)未満、120メッシュ(すなわち125ミクロン)未満、140メッシュ(すなわち105ミクロン)未満、170メッシュ(すなわち88ミクロン)未満、200メッシュ(すなわち74ミクロン)未満、230メッシュ(すなわち62ミクロン)未満、270メッシュ(すなわち53ミクロン)未満、325メッシュ(すなわち44ミクロン)未満、400メッシュ(すなわち37ミクロン)未満である。本明細書で記載する粒子の直径の範囲は、本発明で用途を見出している(たとえばある実施形態で使用されるように、100〜300ミクロン)。たとえばある実施形態において、粒子は10〜800ミクロンのサイズ範囲を有する。たとえばある実施形態において、粒子は30〜400ミクロンのサイズ範囲を有する。なお他の実施形態において、粒子は40〜390ミクロン、50〜380ミクロン、60〜370ミクロン、70〜360ミクロン、80〜350ミクロン、90〜340ミクロン、100〜330ミクロン、110〜320ミクロン、120〜310ミクロン、130〜300ミクロン、140〜290ミクロン、150〜280ミクロン、160〜270ミクロン、170〜260ミクロン、180〜250ミクロン、190〜240ミクロン、200〜230ミクロンなどでありうる。
【0070】
粉末は、微粉砕、粉砕、スプレー乾燥などを含む、当分野で既知の、または本明細書で開示されるいずれかの手段によって形成されうる。
【0071】
「プラスチック」という用語は、ポリマーを含み、3次元構築物および2次元構築物、たとえばフィルム、シート、積層体、フィラメントおよび同様の構造物へ作製されうる、いずれかの物質、たとえば有機、合成、および/または処理材料を指す。たとえば米国特許第6,143,293号を参照。本明細書で使用するように、「硬質プラスチック」という用語は、十分な変形に応答して破断する傾向があり、それゆえ、狭い塑性および/または弾性変形範囲を有するプラスチックを指す。これに対して「軟質プラスチック」という用語は、応力下で破断せずに、ただちに変形し、それゆえ、広い塑性および/または弾性変形範囲を有するプラスチックを指す。例示的な実施形態において、構造物は相互に積み重ねることができる。このような積み重ねがフィルムまたはシートであるとき、構造物は積層化される。本明細書で使用するように、「積層化された」という用語は、層を有する構造物を指す。
【0072】
「最小侵襲手術」、すなわち「MIS」という用語は、処置に関連する身体的外傷の量を減少させるために特別に開発された外科用および診断用器具を使用する、患者の体の1つ以上の領域の治療、診断および/または検査のための外科処置を指す。一般にMISは、生来のまたは外科的に形成された小径の開口を介して体内のその使用位置まで通過されうる器具を包含するので、患者に課されるストレスが大幅に少なく、たとえば全身麻酔を用いずに、検査および小規模の外科的介入が可能である。MISは、可視化方法、たとえば光ファイバまたは顕微鏡手段を使用して達成されうる。MISの例としては、たとえば、関節鏡視下手術、腹腔鏡下手術、内視鏡下手術、胸部手術、神経手術、膀胱手術、消化管手術などが挙げられる。
【0073】
「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのどちらかのヌクレオチドのポリマー形あるいはヌクレオチドのどちらかの種類の改変形を指す。該用語はまた、同等物としてヌクレオチド類似物質から作製されたRNAまたはDNAのどちらかの類似物質を、そして記載される実施形態に適用できるように、単鎖(たとえばセンスまたはアンチセンス)および2本鎖ポリヌクレチオチドを含むと理解されるべきである。
【0074】
「重合する」という用語は、複数のサブユニットの凝集体を形成することを意味し、ここで凝集体のサブユニットの正確な数は凝集体自体の特性によって正確に制御されない。たとえば「重合する」は、一貫して6量体として設計される6量体酵素複合体の形成を指さない。しかしながら、たとえばフィブリンまたはアクチンの6量体の形成は重合である。ポリマーは一般に細長いが、球状凝集体を含むいずれの形状でもよい。本明細書で使用するように、重合は、たとえばイソペプチド結合と呼ばれるポリマーの同様のサブユニット間でのペプチド結合の形成(たとえばタンパク質中のリジンおよび/または1級アミンによるアミド結合およびシッフ塩基形成)、ジスルフィド結合形成、またはポリマーサブユニットが結合されうるいずれかの他の機構を含む、いずれかの手段によって発生しうる。
【0075】
「ポリペプチド」という用語、ならびに本明細書で互換的に使用される「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指す。
【0076】
「対象」は、通常は脊椎動物、そして最も通例は哺乳類、たとえばヒトまたは非ヒト哺乳類であるが、本質的にいずれかの生物である。
【0077】
「治療的有効量」という用語は、このような治療が必要な対象に投与するとき、治療を実施するのに十分である修飾薬、薬物または他の分子の量を指す。治療的有効量は、治療される対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与方法などに応じて変化し、それは当業者によってただちに決定されうる。
【0078】
本明細書で使用するように、「組織」という用語は、特定の機能の実行において一体化した同様に特殊化された細胞の凝集体を指す。組織は、結合組織(たとえば硬質形、たとえば骨様組織または骨)、ならびに他の筋肉または骨格組織を含む、硬組織および軟組織の両方を含む、あらゆる種類の生体組織を含むものとする。
【0079】
「ベクター」という用語は、核酸であって、それが結合されている別の核酸を運搬することができる核酸を指す。本明細書で使用されうるベクターの1つの種類は、エピソーム、すなわち染色体外複製が可能である核酸である。他のベクターとしては、自己複製およびそれらが結合する核酸の発現が可能であるベクターが挙げられる。ベクターが動作可能に結合する遺伝子の発現を指示できるベクターは本明細書では、「発現ベクター」と呼ばれる。一般に組換えDNA技法で有用な発現ベクターは、そのベクター形では染色体に結合されない円形2本鎖DNA分子を指す、プラスミドの形であることが多い。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に使用され、プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形である。しかしながら、本開示は、同等の機能を果たし、本明細書にて当分野で続いて既知となる、発現ベクターのこのような他の形を含むものとする。
【0080】
本明細書で開示する組成物は、ハイドロゲルを形成するために水または他の分子を捕捉する3次元開格子構造へと(たとえば凝集、凝固、疎水性相互作用、または架橋によって)ゲル化、または重合、または固化されうる天然または合成有機ポリマーを含みうる。構造物は単一のポリマーおよび2つ以上のポリマーを含みうる。加えて、2つ以上のポリマーは、ポリマー混合物を形成するために共沈着または混合されうる。使用されるポリマーは、生体適合性、生分解性、および/または生侵食性でありうるバイオポリマーであり、細胞に対して接着性基質として作用しうる。例示的な実施形態において、本明細書で開示するポリマーは、複合体形状に加工しやすく、インビボ条件下で所望の形状を維持するのに適切な剛性および力学的強度を有する。
【0081】
ある実施形態において、本明細書で開示する構造物は、大半の水を除去されて、次に可塑剤(たとえばグリコール)によって処理されたプラスチックから形成される。最終構造物へのプラスチック前駆物質は、たとえば本明細書に開示され、当分野で既知である方法などによる、たとえばインクジェット印刷による固体自由形状製造、押し出し、または鋳造などを含む各種の方法によって作製されうる。プラスチック前駆物質を金型で押し出すことによって構造物を形成することも可能である。金型は制限なく、多くの形状を有しうるので、押し出しプラスチックはチューブ、フィラメント、ロッド、またはシート様に成形される。押し出しは比較的低圧および低温にて達成されうる。ある加工条件下では、プラスチックは押し出しプロセスによって部分的にまたは完全に脱水されうる。十分な脱水の後に、浸透膜および/または凍結乾燥の使用を伴って、または伴わずに、押し出し材料は可塑化され、場合により架橋されうる。押し出しは多くの例で、プラスチック内での構成分子の整列、すなわち異方性を生じ、そしてある特性、たとえば靭性を最終エラストマー性および/または柔軟性材料に与えることが予想される。所望ならば、そしてパターン形成が重要でないならば、成長因子、薬物、抗原、トレーサ、または他のこのような分子を加工前にバルクプラスチック材料、たとえば混合物またはスラリーに添加することができる。
【0082】
ある実施形態において、本発明の組成物は、ハイドロゲルから液体を押し出すために圧力を使用することによって、またはハイドロゲルから液体を除去するための濃度勾配および半透性浸透膜の使用によってのどちらかで生成されうる。いったん水がハイドロゲルから本質的に除去されると、水は可塑剤によって置換されうる。(ある実施形態において、1つ以上の浸透膜の使用などにより、同時にハイドロゲルから水を除去して、ハイドロゲルに可塑剤を添加することができる)。構造物を形成するために他のプロセスが使用されうる。一実施形態において、スラリーは薄い場合により加熱されたスリットを通じて押し出されうる押し出しはさらに、押し出し方向に沿った分子の配列によって改善された生体力学特性を付与しうる。
【0083】
ある実施形態において、ハイドロゲルの含水量は、真空乾燥によって、すなわちハイドロゲルを脱水するように真空および/または温度を制御することによって制御されうる。このような真空処理技法は特に、大規模処理に有用である。なお他の実施形態において、ハイドロゲルの含水量は標準気圧下で水を蒸発させることによって制御される。蒸発プロセスはいずれの温度でも実施されうる。ある他の実施形態において、水を蒸発させるために使用される温度は、ポリマーマトリクスに包含された分子が変性する温度よりも低い。これは、ポリマーマトリクスに存在する包含物の臨界未満圧および/または温度と呼ばれる。このような処理技法は、包含された物質の生物活性の損失なしに、本明細書で開示するポリマーマトリクスを含む、いずれの種類のプラスチックのポリマーマトリクスも物質を装填され、次に構造物、たとえばフィルムに形成されるようにする。たとえばゲルは、感熱性化学薬品および温度の分解または変性を防止する各種の温度にて、たとえば75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、または室温の温度にて、それゆえ70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、25℃未満、または室温未満、またはそれ未満の範囲内で脱水されうる。室温未満またはなお4℃未満さえの温度の使用、たとえばハイドロゲルの凍結乾燥なども可能である。乾燥プロセスの間に圧力も調節されうる。圧力は、真空源に連結されたゲル乾燥機の使用を含む、いずれかの手段によって標準気圧以下に低下させられうる。真空圧力は、100ミリバール未満、50ミリバール未満、25ミリバール未満、20ミリバール未満、15ミリバール未満、10ミリバール未満、5ミリバール未満、1ミリバール未満でありうるか、またはなお低い。当業者は、圧力を低下させることおよび/または温度を上昇させることによって乾燥時間が減少されうることを認識するであろう。それゆえ、乾燥は、いずれの期間にわたっても、たとえば1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間またはそれ以上にわたって行われうる。その上、乾燥時間はゲルが一部水和されたままにするために変更されうる。すなわち、そこではゲル中の捕捉水のすべてが除去されているわけではない。
【0084】
ある実施形態において、ゲルは実質的に平面上で乾燥可能であり、それゆえ、実質的に平面のフィルムが作製される。乾燥プロセス中の実質的に平面のフィルムの湾曲または変形を防止するために、ゲルはフレーム内に配置されうる、および/または形状を保持する材料のシート、たとえばプラスチックシート間で圧縮されうる。なお他の実施形態において、ゲルは形成型の上で乾燥され、それゆえ、型から取り外しされうる形成されたフィルムが作製される。なお他の実施形態において、ゲルは構造物または表面上で直接乾燥されて、取り外しできず、それにより構造物または表面上にフィルムコーティングが作製される。
【0085】
ある実施形態において、処理工程は、成分材料、たとえばフィブリンのフィラメントを整列させることによって材料の次の生体力学特性を改変するために、引張荷重条件下で実施されうる。たとえばハイドロゲルの長方形切片を対向する側面で締め付けて、凍結乾燥させると、マイクロおよびナノスケールでのフィルムの成分の配向が生じうる。可塑剤を得られた材料に添加したとき、材料の成分の配向は、血管、腱および靭帯組織を含む軟組織修復のための移植片代用物としての利用のために、改善された力学的特性を示しうる。線維の配向および/または絡まりが材料の柔軟性を維持しながら本発明の組成物の所望の強度を提供しうるので、線維状材料、たとえばフィブリンは形成生体適合性構造物としての使用に特に良好に適していることが認識されるであろう。
【0086】
ある実施形態において、たとえば1つ以上の物質の持続放出用に設計されたカプセルによって、時間濃度勾配が作成されうる。他の実施形態において、時間濃度勾配は、足場の空間パターン形成または構造設計によって作成されうる。たとえば時間濃度勾配は、1つ以上の物質をパターン内の足場に(たとえば直接、または中間体を介してのどちらかで吸収または化学架橋によって)固定することによって作成されうる。この方法では、物質との相互作用のタイミングは、細胞が足場に固定された物質と直接接触するのにかかる時間に基づいて制御されるであろう。別の例では、時間濃度勾配は、1つ以上の物質を遠隔位置にまたは足場内に包含することによって、固定された多孔性を有する足場内で作成されうる。この方法では、物質との相互作用は、細胞が足場に侵入して、足場内の遠隔位置に到達するのにかかる期間中に遅延されるであろう。あるいは、時間勾配は、足場内への細胞侵入の速度を制御するために、可変多孔性を使用して足場内に作成されうる。細胞がより高い多孔性環境に遭遇すると、侵入速度は低下され、それゆえ、より高い多孔性を有する範囲に位置する1つ以上の物質との相互作用を遅延させる。なお別の実施形態において、時間勾配は生分解性または生吸収性足場を使用して作成されうる。時間が経つにつれて足場が分解すると、足場の多孔性が低下し、それゆえ、より迅速な速度での細胞侵入を可能にする。あるいは足場の分解は、足場内の前にアクセスできなかった範囲を露出させうる。
【0087】
開示により、固体自由形状製造(SFF)プロセスおよび装置は、増加性物質沈着および薄い断面層の融着によって形状を蓄積する積層製造プロセスで使用される。ある実施形態において、構造物はエキソビボで生成され、次に患者に投与される(たとえば創傷、骨折などの宿主生物に外科的に植え込みまたは付着される)。なお他の実施形態において、本明細書で開示した製造品は、使用するためのキットをさらに構成し、このようなキットの使用目的のための包装および指示をさらに含みうる。
【0088】
ある実施形態において、構造物は、宿主生物中への短期、長期または永久植え込みのために設計される生体適合性材料から製造されうる。たとえば移植片は、損傷組織を修復または置換するために使用されうるか、あるいは疾患または損傷臓器(たとえば肝臓、骨、心臓など)を置換するために人工臓器が使用されうる。あるいは、構造物は、一時的構造を形成するために生分解性材料から製造されうる。たとえば骨折は、宿主の細胞による生体再構築と同時に発生する制御された生分解を受ける生分解性構造によって、一時的に修復されうる。
【0089】
ある実施形態において、構造物の3次元構造はSFFを使用して直接製造されうる。たとえば磁気共鳴画像法(MRI)またはコンピュータ化体軸断層撮影法(CAT)を使用して、修復または置換すべきインビボでの構造物の3次元形状が決定されうる。次にコンピュータ支援設計(CAD)またはコンピュータ支援製造(CAM)を使用して、本明細書に記載されるようなSFFを使用する3次元製造を促進する。あるいは本明細書で開示される方法および装置を使用して非特異的3次元構造物(たとえばブロックまたは立方体)が生成でき、3次元構造物は次に所望の形状に切断または成形される(たとえばレーザ、ソー、ブレードなどを使用して)。
【0090】
加えて、本明細書に開示される方法および装置を使用して、構造物が天然型組織の解剖学的および生力学的特徴、または生物学的に影響を及ぼされる技術設計を有するように、特異的な微小構造組織を有する構造物が生成されうる。微小構造組織は、挿入された材料(たとえば生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、または標識化合物)の空間濃度、構造物の多孔性度、および/または改善された細胞侵入、血管新生、および栄養拡散のための3次元構造物を通過するチャネルを含む。
【0091】
ある実施形態において、水がいったんハイドロゲルから除去されると、得られた材料に可塑剤が添加されうる(そしてある他の実施形態において、水および可塑剤の添加が同時に発生しうる)。ある実施形態において、可塑剤の添加は脱水された材料を可塑剤浴に浸漬することによって達成されうる。本目的に使用されうる生体適合性可塑剤としては、これに限定されるわけではないが、ポリアルコール、たとえばグリセロールならびに水およびグリセロールの混合物、ならびに当分野で既知であり、本明細書で開示される他の可塑剤が挙げられる。
【0092】
他の実施形態において、材料の強度および靭性は、中間工程としての、または材料をその最終配置に形成した後のどちらかでの、架橋によって向上されうる。当分野で既知の、または本明細書で開示されるいずれの架橋剤も使用されうる。
【0093】
ある他の実施形態において、材料が主に単一の前駆物質材料(たとえばフィブリンまたはキトサン)より構成される場合でも、改善された特性は、明確で独自の最終材料を生成するために、他の成分、たとえばフィブロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ホルモン、生物学的応答調節物質、充填剤、トレーサ、薬物および/または微粒子、たとえばリン酸カルシウム(たとえばヒドロキシアパタイト)などを包含することによって得られる。このような調合は、エラストマー性および/または柔軟性材料へ添加される材料に応じて、材料の物理的特性、力学的特性、および生物学的特性(すなわち分解速度、細胞付着、創傷部位への利用)を変化させるのに有用でありうる。上記のように追加の生物活性材料は、パターン形成が必要ない場合には、ポリマー材料にバルクで添加されうる。しかしながら、パターン形成が所望である場合は、3次元空間パターン、たとえば勾配を含む複合体構築物は、ホルモンまたは他の生物活性材料のパターンを製造済みの材料上に生成するために、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2003年3月18日に出願された米国特許第10/391,458号および2004年10月15日に出願された米国仮特許第60/619,192号に開示されているバイオプリンティング技術の使用によって、あるいは生物活性剤が材料内に包含されるように材料に直接印刷することによって、生成されうる。このような印刷プロセスは単独で使用されうるか、あるいはさらなる処理工程、たとえばこのような印刷済みエラストマー性および/または柔軟性材料の巻き付け、折り畳み、または積み重ねを利用してはるかに複雑な構築物が製造されうる。
【0094】
生分解のさらなる制御を与えるために生体適合性ポリマーの中または表面に包含されうる材料には、薬物、トレーサ、ホルモン、抗原、生物学的応答調節物質など、たとえばプロテアーゼインヒビターがある。バイオポリマー源に応じて、内在性因子が材料中にすでに存在しうることに注目する。しかしながら、このような例では、外来性物質をバイオポリマーに添加することによって、さらなる利点が得られる。例示的な手法としては、プロテアーゼインヒビターの添加、そしてある他の実施形態では、バイオポリマーマトリクス内へのインヒビターの固定化が挙げられる。インヒビターの非固定化形は、機能的ではあるが、ハイドロゲルの脱水中におよび/またはいったん組織植え込み部位に適用されると抽出を受けやすい。基本的な未変性の結合(すなわちプラスミノゲンアクチベータインヒビター)によるインヒビターの固定化または固相インヒビター(すなわちアプロチニン)を設計することは、インヒビターの保持を改善するために使用されうる方法である。このような方法は本発明で開示され、当分野で既知である。
【0095】
ある実施形態において、トレーサ、および/または標識化合物がポリマーマトリクス中に包含されうる。ある実施形態において、トレーサおよび/または標識は蛍光分子、たとえばフルオロフォアまたは量子ドットである。このような化合物が使用される場合、標識またはトレーサの運動が検知され、たとえばレーザまたは標識化合物の構造物からの分解、拡散などが証明される。一実施形態において、蛍光化合物は、これに限定されるわけではないが、小型分子フルオロフォア、たとえばフルオレセイン(たとえばフルオレセインイソチオシアナート((FITC))、パシフィックブルー、カスケードブルー、シアニン染料(たとえばCy3、Cy5、Cy5.5、およびCy7)、アレクサ染料など;大型蛍光タンパク質、たとえばフィコビリタンパク質、R−フィコエリトリン(R−PE)、緑色蛍光タンパク質、およびアロフィコシアニン(APC);タンデム染料(すなわちフィコビリタンパク質に共有結合された小型分子フルオロフォア、たとえばPE−TR、PE−Cy5、PE−Cy5.5、PE−Cy7、APC−Cy7、PerCPなど);およびこのような染料に化学的に結合した物質を含む蛍光化合物である。別の実施形態において、量子ドットは植え込まれた構造物の生分解のトレーサとして使用されうる。量子ドットは、量子ドットの水溶解度を向上させる無機「シェル」によってカプセル化されたナノ結晶半導体材料である。エネルギー源、たとえばレーザなどによって励起されたときに、量子ドットは蛍光を放つ。量子ドットはフルオロフォアであるが、伝統的なフルオロフォア、たとえば有機蛍光染料および天然蛍光タンパク質とは異なる。それらは、半導体材料(しばしばセレンまたはテルルと混合されたカドミウム)の数百〜数千個の原子を含有するナノメートルスケールの原子クラスタであり、材料の光学特性を改善するために追加の半導体シェル(たとえば硫化亜鉛)によってコーティングされている。伝統的なフルオロフォアとは異なり、π→π電子遷移はなく、それゆえ量子ドットをいずれのスペクトルにわたっても蛍光を発するように「同調」させることができ、多色検知研究用の複数のレーザの必要がなくなる。加えて、量子ドットは長期にわたって明るく蛍光を発し、それらはタイムゲート研究のために有用となっている。ある実施形態において、量子ドットはタンパク質に結合し、在来の染料結合系においてと同様であるが、改善された性能特徴を備えた検出を可能にする。本発明の組成物中または組成物上でのフルオロフォアの包含は、外科手術を必要とせずに、リアルタイムでインビボでの植え込み構造物の監視を可能にする。蛍光を検知する方法および各種の光検知機器は当分野で既知である。
【0096】
本明細書に開示されるようにフィルムに印刷された材料(たとえばフィブリンフィルムに印刷された骨形成タンパク質)は、印刷された材料上で少なくとも1週間は持続しうる。図4を参照。ある実施形態において、生体適合性および制限された血管新生は、標準ニワトリCAMアッセイを使用して証明されうる(たとえばRibatti,D.ら、Int.J.Dev.Biol.,40,1189−1197.(1996)Ribatti,Dら、Pathol Res Pract,192:1068−1076(1996),およびRibatti,D.ら、Anat Rec,264:317−324(2001)を参照、そのすべては参照により本明細書に組み入れられている)。
【0097】
ある実施形態において、ポリマーフィルムの複数の層が相互の上に積み重ねされる。このような構造物において、生物活性材料の勾配および/または孔は、それぞれ生物活性材料の所望量を各層表面の中または上に含むフィルムの層を生成して、次に各種の層を要望通りに積み重ねることによって生成されうる。このような構造物は、参照により本明細書に組み入れられている、2000年12月26日に発行された米国特許第6,165,486号に開示された方法で生成されうる。このような配置は、たとえば頭蓋空隙を充填するための構造物を生成するときに特に有用である。
【0098】
ある実施形態において、ポリマーフィルムはシート、チューブ、ロッド、またはフィラメントに形成される。このような構造物は、たとえば腱、骨、または靭帯の代替物として特に有用であり、長骨および非長骨修復への用途を有する。成長因子またはタンパク同化ホルモンおよび/または薬物をさらに包含することは、組織修復に関連付けられた生物応答を改善しうる。チューブベース構造物も、たとえば血管移植片および神経ガイドに用途を見出す。加えて、フィルムは、組織を保護して、組織接着を防止するバリアとしての用途を見出す。本明細書で開示する組成物、たとえばフィブリン系エラストマー性フィルムは、組織および創傷修復の促進に著しい利点をもたらす。
【0099】
構造物、たとえば管状構造物を形成する方法は、図2に示すように、次に鋳型内へ鋳造されるハイドロゲルを生成することを含む。次にハイドロゲルから水が除去されて(たとえば管状構造物が鋳型から除去された後、または鋳型の表面として浸透膜を使用することによって)、可塑剤によって置換されうる。代わりの実施形態において、本発明で開示されるシートは組成物のシート、中空管状構造物を生成するためにたとえばマンドレルに巻き付けられる。他の実施形態において、ハイドロゲル前駆物質は管状配置に押し出されうる。
【0100】
なお他の実施形態において、円筒状非中空断面を有することが所望される場合、本明細書で開示するように実質的に平面の組成物をそれ自体に巻き付けることができ、この場合にはマンドレルは不要である。ある他の実施形態において、円筒形がいったん得られたら、エラストマーは管形状を維持するために架橋および/またはステープル止めされ、融着温度まで加熱されるか、あるいはそうでなければ管状配置内に保持される。
【0101】
他の実施形態において、構造物、たとえば本明細書で開示されるような構造物の完全性は、生体適合性メッシュ、たとえばチタン、NYLON(商標)、またはDACRON(商標)を含めることによって向上させることができる。メッシュは、実質的に平面状の材料の層に、それを管状構造物に巻き付ける前に、またはそれが管状構造物の外層を形成しうる前に添加されうる。代わりの実施形態において、本明細書で開示された材料は、生体適合性メッシュ材料上に印刷、鋳造、または押し出されうる。当業者は、メッシュ材料の使用が管形状または円筒形状以外の配置の構造完全性を向上させるために使用されうることを認識している。
【0102】
ある実施形態において、構造物はイオン性ハイドロゲル、たとえばイオン性ポリサッカライド、たとえばアルギナートまたはキトサンから形成されうる。イオン性ハイドロゲルは、アルギン酸のアニオン性塩、すなわち海藻から単離された炭水化物ポリマーをイオン、たとえばカルシウムカチオンによって架橋することによって生成されうる。ハイドロゲルの強度は、カルシウムイオンまたはアルギナートのどちらかの濃度上昇と共に向上する。たとえば米国特許第4,352,883号は、ハイドロゲルマトリクスを形成するための、水中、室温での2価カチオンによるアルギナートのイオン性架橋について記載している。一般にこれらのポリマーは、水溶液、たとえば水、または帯電側鎖基、またはその1価イオン性塩を有するアルコール水溶液に少なくとも部分的に溶解性である。カチオンと反応しうる酸性側鎖基を有するポリマーの多くの例、たとえばポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、およびポリ(メタクリル酸)がある。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、およびハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基が挙げられる。アニオンと反応しうる塩基性側鎖基を有するポリマーの例としては、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、およびポリ(ビニルイミダゾール)が挙げられる。
【0103】
ポリホスファゼンは、交互の単結合および二重結合によって隔離された窒素およびリン原子より成る主鎖を有するポリマーである。各リン原子は2本の側鎖に共有結合している。使用されうるポリホスファゼンは、酸性であり、2価または3価カチオンと塩橋を形成しうる多数の側鎖を有する。酸性側鎖の例としては、カルボン酸基およびスルホン酸基が挙げられる。
【0104】
生侵食性ポリホスファゼンは、少なくとも2つの異なる種類の側鎖、多価カチオンと塩橋を形成できる酸性側鎖と、インビボ条件下で加水分解する側鎖、たとえばイミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロール、およびグルコシル基を有する。生侵食性または生分解性ポリマー、すなわち所望の用途(通例はインビボでの治療)で許容される期間内に溶解または分解するポリマーは、いったん約25℃〜約38℃の温度を有するpH6〜8の生理的溶液に曝露されたら、約5年未満で、または約1年未満で分解するであろう。側鎖の加水分解は、ポリマーの侵食を生じる。加水分解側鎖の例としては、側鎖がアミノ結合を通じてリン原子に結合されている非置換および置換イミダゾールおよびアミノ酸エステルが挙げられる。
【0105】
各種の種類のポリホスファゼンの合成および分析方法は、米国特許第4,440,921号、第4,495,174号、および第4,880,622号に記載されている。上記の他のポリマーの合成方法は、当分野で既知である。たとえばConcise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,E.Goethals,編集(Pergamen Press,Elmsford,N.Y.1980)を参照。多くのポリマー、たとえばポリ(アクリル酸)、アルギナート、およびPLURONICS(商標)は市販されている。
【0106】
ある実施形態において、バイオポリマーマトリクスは、混合物として固体成分を調製することと、次にポリマーマトリクスの形成を誘発するために該混合物に圧力をかけることとによって製造されうる。たとえば一実施形態において、バイオポリマー、たとえばタンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、および同様のこのようなポリマーは粉末化され(たとえば微粉砕、粉砕、スプレー乾燥など)、次に圧縮される。他の実施形態において、粉末は物質、たとえば可塑剤、架橋剤、充填剤、微粒子、ポロゲン、生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、または標識化合物、その組合せなどと圧縮前に混合される。ある実施形態において、混合物は、生物学的応答調節物質などの感熱性化合物が変性しない、または生物活性を失わない温度にて圧縮される。たとえば一実施形態において、感熱性タンパク質は、タンパク質の変性温度または融点より低い温度にて圧縮可能であり、それゆえ圧縮後にポリマーマトリクスにおける生物活性が維持される。圧縮されたバイオポリマーは、3次元構造物および2次元構造物、たとえばシート、ロッド、およびフィラメントを含むいずれの形状にも作製されうる。バイオポリマー構造物は、各種の手法(たとえば鋳造、冷間圧縮、射出成形、金型押し出しなど)を使用して調製可能であり、ここで印加された圧力の量はバイオポリマー構造物の厚さおよび密度を制御する。
【0107】
ある実施形態において、構造物、たとえばバイオプラスチックペレットは、固化されたバイオポリマーを150ミクロン以下(たとえば少なくとも100メッシュ標準ふるい)の粒径の粉末に粉砕することによってバイオポリマーから形成される。ある他の実施形態において、可塑剤はバイオポリマーにたとえば、12.5重量%、19重量%、21重量%、25重量%、35重量%および50重量%可塑剤で添加される。なお他の実施形態において、粉末(および混合物中のいずれかの追加成分)は、たとえばグリセリンと混合され、均質になるまで混合される。他のある実施形態において、本明細書で開示されるバイオポリマー組成物が次に圧縮される。当業者は、圧縮がたとえばペレットプレスの使用を含むいずれの手段によっても達成されうることを認識するであろう。圧縮はいずれの適切な圧力でも、たとえば1000ポンド、2000ポンド、3000ポンド、4000ポンド、5000ポンド、6000ポンド、7000ポンド、8000ポンドの圧力で行われうる。当業者は、このような圧力がPSI、トル、バールまたは他のいずれかの適切な測定尺度への相互変換を含むいずれの方法でも報告されうる。ある他の実施形態において、離型剤、たとえばレシチンを使用して、圧縮されたバイオポリマーのプレスまたは型からの除去を促進する。ある他の実施形態において、バイオポリマーは、バイオポリマーマトリクスを形成するために適切な温度(たとえば60℃、66℃、70℃、80℃)および適切な圧力(たとえば5000ポンド〜7000ポンド)にて、適切な時間(たとえば1、5、10、20、30、40、50、60分以上)にわたって圧縮される。ある他の実施形態において、型圧は最大化され、約20分間にわたって一定(たとえば約7000ポンドの圧力にて)のままである。なお他の実施形態において、型温度は、約80℃の初期値から約27℃(室温)の最終安定値に達するまで低下する。
【0108】
上で議論したように、バイオポリマー混合物は、ポリマー粉末と混合された追加成分、たとえばポロゲンを含みうる。このようなポロゲンは、バイオポリマー粉末内に均一に、または不均一に分散されうる。ポロゲンの不均一分散を使用して、構造物の生分解性、力学的特性などを調節するために最終形成構造物内での孔勾配および/または分布を導入することができる。加えて、他の成分は、このような方法で均一または不均一に包含されて、たとえばポリマーマトリクス内に物質の生化学勾配を導入しうる。
【0109】
ある実施形態において、帯電側鎖を含む水溶性ポリマーは、ポリマーを対立する電荷の多価イオン、ポリマーが酸性側鎖基を有する場合には多価カチオン、またはポリマーが塩基性側鎖を含有する場合には多価アニオンのどちらかを含有する水溶液と反応させることによって架橋されうる。ハイドロゲルを形成するために、酸性側鎖基を有するポリマーを架橋するためのカチオンとしては、2価および3価カチオン、たとえば銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、およびストロンチウムが挙げられる。これらのカチオンの塩の水溶液は、軟質の高度に膨潤したハイドロゲルおよび膜を形成するためにポリマーに添加されうる。ハイドロゲルを形成するためのポリマーを架橋するためのアニオンは、低分子量ジカルボン酸イオン、テレフタレートイオン、硫酸イオン、および炭酸イオンなどの2価および3価アニオンを含む。これらのアニオンの塩の水溶液は、カチオンに関して記載されたように、軟質の高度に膨潤したハイドロゲルおよび膜を形成するためにポリマーに添加されうる。
【0110】
また各種のポリカチオンを使用して複合体化させ、それによりポリマーを半透過性表面膜内へ安定化させることができる。ポリカチオンの例としては、ポリ−L−リジンはもちろんのこと、天然ポリカチオン、たとえばポリサッカライド、キトサンが挙げられる。
【0111】
ある実施形態において、ポリマー、たとえば当分野で既知であり、本明細書で開示されるポリマーは、化学架橋剤を使用して架橋されうる。なお他の実施形態において、化学架橋剤は固体である。ある他の実施形態において、固体架橋剤は水の存在下で活性となる。それゆえある実施形態において、固体架橋剤は乾燥ポリマーと混合されうるか、そうでない場合は脱水ポリマーマトリクス(たとえばフィブリン、ゼラチンなど)に包含されうる。いずれの作用の機構または理論によって縛られることなく、驚くべきことに、たとえばポリマーが残留水および/またはアミノ基を含有する場合には、固体架橋剤は水和の前ですら活性でありうることが発見されている。それゆえ固体架橋剤が使用される場合、固体架橋剤は水和の前に、または別の方法では水への露出前に活性でありうる。たとえば一実施形態において、固体架橋剤のゲニピンはポリマー混合物中に包含され、次にポリマー中にすでに存在する、および/または次に形成されるポリマーマトリクスが水浴中に配置されたときに吸収されている、どちらかの水によって活性化される。水は、すでにマトリクスに存在している(たとえば圧縮のために)か、または迅速にポリマーマトリクス(たとえばバイオポリマーマトリクス)中に拡散するかのどちらかであるために、架橋はゲル全体で迅速および均一に発生する。本方法は、液体架橋剤でしばしば見られる問題であって、該架橋剤がゲル内に拡散するにつれて架橋して硬い外側シェルを生成し、同時にゲルの内側部分は、架橋剤の低速の拡散のために架橋剤に露出されていないために水で膨潤していないという問題を防止する。このような不均一性は、構造内で圧力を生じ、場合によりひび割れおよび変形をもたらしうる。
【0112】
それゆえある実施形態において、ゲニピンなどの固体架橋剤が使用されうる。ゲニピン(シクロペンタ(c)ピラン−4−カルボン酸、1,4a−α,5,7a−α−テトラヒドロ−1−ヒドロキシ−7−(ヒドロキシメチル)−,メチルエステル)は、ゲニポシドのピラン加水分解生成物であり、アミンとの架橋を形成しうる。ゲニピンは非毒性架橋剤であり、グルタルアルデヒドなどの多くの他の架橋剤が細胞に対して毒性であることが示されているため、多くの生物医学用途での使用に良好に適している。加えて、ゲニピン結合は青色および蛍光性に変わり、それゆえリアルタイムでの架橋の程度および位置の目視監視が可能となる。ある他の実施形態において、固体架橋剤はたとえば、ホルムアルデヒド亜硫酸水素ナトリウムである。ある実施形態において、カルボン酸のNHSエステルは、固体架橋剤として使用される。
【0113】
当業者は、ポリマーマトリクス内での分子の保持は、マトリクスが選択的に透過性である、すなわちマトリクスがより大きな分子でなく、より小さな分子の拡散を可能にする場合に向上されうることを認識している。たとえば抗体および30,000Dを超える分子量を有する他のタンパク質のマトリクスへの通過を防止するが、細胞成長および代謝に必須の栄養素の通過を可能にするために、マクロマー/ポリマーの有用な浸透率はたとえば10,000D〜30,000Dの範囲内にある。より小さいマクロマーは、より低い分子量のカットオフを有する、より高密度のポリマーマトリクスを生じる。
【0114】
生侵食性または生分解性ポリマーから生成された足場の侵食速度もポリマーの分子量に関連付けられる。より高い分子量の(たとえば平均分子量90,000以上の)ポリマーは、その構造完全性を長期間にわたって維持する足場を生成するのに対して、より低い分子量の(たとえば平均分子量30,000以下の)ポリマーは、はるかに迅速に侵食する足場を生成する。
【0115】
ある実施形態において、骨誘導成長を促進するために機械加工、微粉砕、粉砕などによって、さらなる特徴、たとえば粗面化したスポット、孔、穴などが足場に導入されうる。細胞はただちに移動してこのような粗面化された表面に付着する。
【0116】
本発明の組成物への孔の導入は、本明細書で開示する組成物の浸透率、分解率、および力学的特性を調節するためにも使用されうる。たとえば孔は力学的または化学的にポリマーマトリクス内へ導入される。ある実施形態において、孔は、フィルムに穴を機械加工(たとえばパンチング)することによって力学的に導入され、フィルムは次に本明細書に記載されるように積み重ねされるか、または巻き付けられる。ある他の実施形態において、孔は、ポロゲンをポリマー中に包含させて、続いていったんポリマーマトリクスが形成されたらポロゲンを除去することによって化学的に導入される。ある実施形態において、ポロゲンは水性または有機溶媒に溶解性である。溶解性ポロゲンを含むポリマーマトリクスが溶媒と接触して配置されるとき、ポロゲンはポリマーから放散されて、孔を残す。ある実施形態において、NaCl粒子はポロゲンとして溶媒としての水と共に使用されうる。他の実施形態において、ポロゲンが有機相に溶解性である場合、ポリウレタン、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸コポリマー、またはポリカプロラクトンは有機溶媒、たとえばクロロホルムなどと併せて使用されうる。有機溶解性ポロゲンをポリマーマトリクス中で使用することが、有機溶媒中に配置されたときにこれらがポリマーマトリクスから放散されないから、ポリマーマトリクスが追加の水溶性物質、たとえば生物学的応答調節物質などを含む場合に好都合であろう。ある実施形態において、残留NaClがある実施形態において浸出後にポリマーマトリクス中に残存することが観察されているので、有機相系が水相系よりも効率的に作用しうる。
【0117】
なお他の実施形態において、ポロゲンは昇華ポロゲンでありうる。昇華ポロゲンは、適切な温度および圧力下で気相中に直接昇華して、それゆえ、溶媒浸出の必要が全くなくなる。ある実施形態において、昇華ポロゲンはたとえば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、またはトリフルオロ酢酸ピリジニウムでありうる。当業者は、物質が昇華する温度および圧力が相図から三重点として既知であることを認識する。それゆえ、昇華を使用して孔を導入するために、温度および圧力はポロゲンのこの三重点よりも低くなければならない。このようなものとして、三重点が既知であるか、または決定されうる、実質的にいずれの物質も本発明の方法および組成物における昇華ポロゲンとして使用されうる。追加の実施形態において、昇華ポロゲンは生体適合性であり、いずれかの残留ポロゲンがポリマーマトリクス中に残存している場合に、植え込みまたは使用時に生物に対して毒性でないことを意味する。なお他の実施形態において、昇華ポロゲンは、ポリマーマトリクスに含まれるいずれかの追加の物質、たとえば感熱性タンパク質または薬物が昇華プロセス中に変性または分解されない十分に緩和な条件(たとえば低い温度および圧力)下で;たとえば80℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、または室温で除去される。ある実施形態において、昇華ポロゲンは、減圧、たとえば真空を使用して、除去される。真空圧力は、100ミリバール未満、50ミリバール未満、25ミリバール未満、20ミリバール未満、15ミリバール未満、10ミリバール未満、5ミリバール未満、1ミリバール未満でありうるか、またはより低い。なお他の実施形態において、昇華ポロゲンは、たとえば上で議論したように真空下でゲルを乾燥させて、それゆえ水およびポロゲンを本明細書で開示した乾燥温度および圧力にて除去することによって、水と共に除去される。
【0118】
導入の方法にもかかわらず、孔は閉鎖(すなわち他の孔または表面との連続空間を形成しない孔)または相互連結されうる(すなわち他の孔または表面との連続空間を形成する孔)。ある実施形態において、本発明の組成物は相互連結孔を含む。このような相互連結孔は、ポロゲン残留物がポリマーマトリクス内に捕捉されにくく、それゆえ構築物がより生体適合性になりやすいので、生物用途には好都合である。
【0119】
他の実施形態において、本明細書で開示した組成物は、温度依存性または感熱性ハイドロゲルでありうる。これらのハイドロゲルは、いわゆる「逆ゲル化」特性を有する必要がある、すなわちそれらは室温以下では液体であり、より高い温度、たとえば体温まで加温されたときにゲルである。それゆえ、これらのハイドロゲルは、室温以下では液体として容易に利用でき、体温まで加温されたときに半固体ゲルを自動的に形成する。このような温度依存性ハイドロゲルは、PLURONICS(商標)(BASF−Wyandotte)、たとえばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンF−108、F−68、およびF−127、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびN−イソプロピルアクリルアミドコポリマーである。
【0120】
当業者は、ポリマーがその物理的特性、たとえば多孔性、分解率、転移温度、および剛性度に影響を及ぼすように操作されうることを認識する。たとえば塩の存在下および非存在下での低分子量サッカライドの添加は、代表的な感熱性ポリマーの下部臨界溶解温度(LCST)に影響を及ぼす。加えてこれらのゲルが5〜25%(W/V)の範囲の濃度で分散により4℃にて調製されるとき、粘度およびゲル−ゾル(ゲル−溶解)転移温度が影響を及ぼされ、ゲル−ゾル転移温度は濃度と逆に関連付けられる。これらのゲルは、細胞を生存させ、栄養供給できる拡散特徴を有する。たとえば米国特許第4,188,373号は、熱ゲル化水性系を提供するために水性組成物中でPLURONIC(商標)ポリオールを使用することについて記載している。米国特許第4,474,751号、第4,474,752号、第4,474,753号、および第4,478,822号は、熱硬化性ポリオキシアルキレンゲルを利用する薬物送達システムについて記載している;これらのシステムでは、ゲル転移温度および/またはゲルの剛性の両方が、pHおよび/またはイオン強度の調整、ならびにポリマーの濃度によっても調節されうる。
【0121】
なお他の実施形態において、本明細書で開示する構成は、pH依存性ハイドロゲルである。これらのハイドロゲルは特定のpH値より下または上で液体であり、特定のpH、たとえば人体内の細胞外流体の正常なpH範囲である7.35〜7.45に露出させたときにゲルである。それゆえこれらのハイドロゲルは、体内で液体として容易に利用可能であり、体のpHに露出されたときに自動的に半固体ゲルを形成しうる。このようなpH依存性ハイドロゲルの例は、TETRONICS(商標)(BASF−Wyandotte)、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマー、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート−g−エチレングリコール)、およびポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)である。このようなコポリマーは、その物理的特性に影響を及ぼす標準技法によって操作されうる。
【0122】
ある実施形態において、本明細書で開示される構造物は、たとえば可視光または紫外光のどちらかによって固化された光固化プラスチックを含みうる。ある実施形態において、たとえば米国特許第5,410,016号に記載されているように、ハイドロゲルは、水溶性領域、生分解性領域、および少なくとも2つの重合性領域を含むマクロマーより成っている。たとえばハイドロゲルは、コアと、コアの各端の伸長と、各伸長のエンドキャップとを含む、生分解性重合性マクロマーから開始しうる。コアは親水性ポリマーであり、伸長は生分解性ポリマーであり、エンドキャップは可視または紫外光、たとえば長波長紫外光への露光時にマクロマーを架橋できるオリゴマーである。
【0123】
このような光固化ポリマーの例としては、ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、アクリレート末端基を有するポリエチレングリコールポリ乳酸コポリマー、両端にてアクリレートによってキャップされた10,000Dポリエチレングリコール−グリコリドコポリマーが挙げられる。PLURONIC(商標)ハイドロゲルと同様に、これらのハイドロゲルを含むコポリマーは、その物理的特性、たとえば分解率、結晶性の相違、および剛性度を調節するために、当業者に既知の技法によって操作されうる。
【0124】
他の実施形態において、構造物、たとえば本明細書で開示される構造物は、生侵食性または生分解性合成ポリマーでありうる。適切なポリマーとしては、たとえば生侵食性ポリマー、たとえばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド−co−グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレートおよび分解性ポリウレタン、および非侵食性ポリマー、たとえばポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテートポリマー、および他のアシル置換セルロースアセテート、およびその誘導体、非侵食性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオリド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、テフロン(商標)、およびナイロンが挙げられる。例示的な実施形態において、構造物は生分解性であるPLA/PGAコポリマーを含む。
【0125】
本明細書では、所望の位置に植え込まれうる足場を作製および使用するのに有用なシステム、組成物、および方法が開示される。本明細書で開示される足場は、その必要があるいずれかの哺乳類の足場を作製するのに使用されうる。興味のある哺乳類としては、ヒト、イヌ、ウシ、ブタ、ネコ、ヒツジ、ウマなど、好ましくはヒトが挙げられる。
【0126】
本明細書で開示される方法、組成物、および装置を使用して、異種移植片、同種移植片、人工臓器、または他の細胞移植治療として利用されうる各種の足場が作製されうる。足場を使用して、宿主と関連付けられたいずれかの損傷組織が修復および/または置換されうる。本明細書で開示される足場は、他の用途にも、たとえば糖尿病、甲状腺機能障害、成長ホルモン欠損症、先天性副腎過形成、およびパーキンソン病などの状態に罹患している欠陥のある個体のための、ホルモン生成または組織生成インプラントにも適しうる。同様に本明細書で開示される装置および方法は、たとえば生物活性および遺伝子治療生成物を供給する植え込み型送達システムを含む治療用途に適切な足場を生成するのに有用でありうる。たとえば本明細書で開示される足場は、糖尿病治療用のインスリンを分泌する細胞の源、変性コリン作動性ニューロンの欠損を防止するためのヒト神経成長因子を分泌する細胞、心筋再生のための衛星細胞、ハンチントン舞踏病のための線条体脳組織、肝細胞、骨髄細胞、ドーパミンが豊富な脳細胞、およびパーキンソン病のための細胞、アルツハイマー病のためのコリン作用性が高い神経系細胞、中枢神経系に鎮痛剤を送達するための副腎クロム親和細胞、皮膚移植片のための培養上皮、および筋萎縮性側索硬化症のための繊毛様神経栄養因子を放出する細胞などを供給するための、中枢神経系の治療に有用でありうる。例示的な実施形態において、本明細書で開示される足場を使用して損傷部位への血管形成を誘発することによって、骨損傷を修復し、その治癒を誘発することができる。
【0127】
他の例示的な実施形態において、本明細書で開示される方法、組成物、および装置を使用して、空間および/または時間組織化治療を宿主の所望の位置に供給できる3次元足場を生成できる。このような実施形態において、足場は、宿主内で予測可能な組織化された方法で作用する、治療および/または診断剤、たとえば生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、または標識化合物の3次元パターンを含有する。たとえば足場は、構造物にわたって変化する1つ上の成長因子の勾配、たとえば構造物の中心から周囲へ低下する濃度勾配、構造物の片側から反対側への勾配などを無数の各種の考えられる配置で有しうる。空間勾配に加えて、上記の時間放出機構を使用して時間勾配も操作されうる。このような空間および/または時間勾配を使用して、1つ以上の治療因子の組織化された用量がその必要がある生物に供給されうる。たとえばこのような空間および時間治療を使用して、宿主の所望の位置に組織化された新血管新生を誘発することができる。創傷治癒の間、血管新生因子が損傷部位にて生成されて、損傷部位から離れて低下する濃度勾配を生じる。しかしながら、血管新生を誘発する伝統的な手法は、通例は非組織化された血管形成すなわち血管腫をもたらす血管新生因子の均一な適用を含む。本明細書で開示される足場は、宿主の所望の位置における組織化され方向付けられた新血管新生の形成をもたらす天然型創傷治癒応答信号を模倣する、3次元空間および/または時間配置での血管新生因子の濃度勾配を供給するように操作されうる。
【0128】
別の実施形態において、足場は1つ以上の細胞種に対して特異性である接着分子の3次元パターンを含有しうる。たとえば接着分子の3次元パターンは、特定の細胞種を所望の3次元アーキテクチャで足場に誘引および接着させるように構成されうる。これらの足場を使用して、規定された位置において細胞付着/組織形成の所望の配置を誘起することができる。足場は永久または長期インプラントであり、宿主の本来の細胞が足場を置換するときに時間が経つにつれて分解しうる。例示的な実施形態において、異なる細胞結合特異性を有する2個以上の接着分子は、2つ以上の所望の細胞種を特異的な3次元パターンに固定するために足場上でパターン化される。本例示的実施例を実行するにあたって、各種の技法を使用して、足場への2つ以上の細胞種の選択的細胞接着を促進することができる。たとえば接着タンパク質、たとえばコラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、IV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、およびグリコサミノグリカンを含む他の基底タンパク質、たとえば硫酸ヘパリン、RGDペプチド、ICAM、E−カドヘリン、および細胞表面タンパク質(たとえばインテグリン、ICAM、セレクチン、またはE−カドヘリン)を結合する抗体。局在化タンパク質吸着、オルガノシラン表面修飾、アルカンチオール自己組織化単層表面修飾、3次元基質を生成するための湿潤および乾燥エッチング、高周波修飾、およびイオン注入などの方法も想定される(Lornら、1993,J.Neurosci.Methods 50:385−397;Brittlandら、1992, Biotechnology Progress 8:155−160;Singhviら、1994, Science 264:696−698;Singhviら、1994,Biotechnology and Bioengineering 43:764−771;Ranieriら、1994,Intl.J.Devel.Neurosci.12(8):725−735;Bellamkondaら、1994,Biotechnology and Bioengineering 43:543−554;およびValentiniら、1993,J.Biomaterials Science Polymer Edition 5(1/2):13−36)。
【0129】
なお他の実施形態において、本明細書で開示される治療用バイオインクは、1つ以上の細胞種の3次元細胞アーキテクチャを直接播種するために使用されうる細胞でありうる。これらの手法の組合せ、たとえば細胞および成長因子の3次元パターンも想定される。他の実施形態において、細胞を使用して、器具の大きいまたは小さい表面積、創傷ドレッシングまたは体の範囲をコーティングすることができる。このようなコーティングは、器具に直接施用され、そして所望の位置に施用されうる。各種の実施形態において、細胞は個別にまたは集団の分割量として施用されうる。本明細書で開示されるいずれの構造物も、幹細胞を含む治療用途の細胞を播種されうる。
【0130】
ある実施形態において、本明細書に記載した装置、方法、および組成物を使用して、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を生成することができる。IPNは、それぞれ架橋3次元ネットワークである2つ以上のポリマー成分の混合または合金である。個々のポリマー成分ネットワークは、IPN内の他のポリマーネットワークと多かれ少なかれ物理的に絡み合っているが、共有結合はしていない。IPNの特徴は、IPNが通常は両立しない2つのポリマーそれぞれによる好都合な特性の組合せを可能にすることである。たとえば疎水性−親水性系では、可撓性および構造完全性は疎水性ポリマーによって付与され、潤滑性は親水性ポリマーによって付与される。IPNは、ポリマーのそれぞれがネットワークを通じて連続マトリクスを形成する両連続系でありうる。
【0131】
別の実施形態において、本明細書で開示される装置、方法、組成物および生成物は、低侵襲外科技法と組合せて使用されうる。たとえば足場はインサイチューで生成されうるか、または事前に製造されて、患者内へ低侵襲技法を使用して所望の位置に植え込まれうる。ある実施形態において、低侵襲外科技法を使用して、焦点範囲に組織シーラントを供給すること、および/またはたとえば細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、成長因子、薬物などを含む治療剤の短期および/または長期投与を供給することができる。例示的な一実施形態において、低侵襲技法を使用して、可動関節および半関節における硝子軟骨および/または線維軟骨を修復する足場を供給することができる。別の例示的な実施形態において、血管の内側または外側の選択された部位に足場を製造または送達するための血管形成処置に際して、吸収性血管創傷ドレッシングが送達されうる。血管創傷ドレッシングは、管状、柔軟性、自己拡張型、薄型、生体適合性、血液適合性、および/または生吸収性でありうる。ある実施形態において、このような創傷ドレッシングは、血管形成後の血管再閉鎖のリスクを防止または実質的に低減しうる。他の実施形態において、血管創傷ドレッシングは、たとえば抗血小板剤、たとえばアスピリンなど、抗血液凝固剤、たとえばクマジン、抗生剤、抗血栓沈着剤、たとえばヘパリン、硫酸コンドロイチン、ヒアルロン酸などを含むポリアニオン性ポリサッカライド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミノゲンアクチベータなど、創傷治癒剤、たとえば形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)など、糖タンパク質、たとえばラミニン、フィブロネクチンなど、多様な種類のコラーゲンを含む、血管創傷の治療のための治療剤を用いて製造されうる。
【0132】
別の実施形態において、本明細書で開示される装置、方法、組成物および生成物は、生吸収性ドレッシングまたはバンドエイドを生成するために使用されうる。創傷ドレッシングは、創傷治癒ドレッシング、組織シーラント(すなわち組織または臓器からの、組織または臓器内への流体または気体、血液、尿、空気などの暴露を防止するために組織または臓器を密封すること)、および/または細胞成長足場として使用されうる。各種の実施形態において、創傷ドレッシングは、損傷組織を保護し、湿潤環境を維持して、水透過性であり、施用が容易であり、頻繁な交換が不要であり、非毒性であり、非抗原性であり、微生物制御を維持して、および/または創傷部位に有効な治癒剤を送達することができる。
【0133】
本明細書に記載された装置、方法、および組成物に基づいて使用される生吸収性シーラントおよび接着剤の例としては、たとえばFocalによって生産されたFOCALSEAL(商標);Adventis−Beringによって生産されたBERIPLAST(商標);ConvaTec(Bristol−Meyers−Squibb)によって生産されたVIVOSTAT(商標);Baxterによって生産されたSEALAGEN(商標); CyoLifeによって生産されたFIBRX(商標);Baxterによって生産されたTISSEEL(商標)およびTISSUCOL(商標);Omrix Biopharmによって生産されたQULXIL(商標);Cohesion(Collagen)によって生産されたPEG−コラーゲン結合;Davis & Geekによって生産されたHYSTOACRYL BLUE(商標);Closure Medical(TriPoint Medical)によって生産されたNEXACRYL、NEXABOND、NEXABOND S/C(商標)、およびTRAUMASEAL(商標);Dermabond(Ethicon)によって生産されたOCTYL CNA(商標);Medi−West Pharmaによって生産されたTISSUEGLU(商標);および3Mによって生産されたVETBOND(商標)が挙げられる。
【0134】
創傷ドレッシングは、整形外科用途、たとえば骨粗鬆症および他の骨疾患のための骨充填/癒合、関節炎および他の関節疾患のための軟骨修復、腱修復と併せて;神経修復、臓器修復、皮膚修復、血管修復、筋肉修復、および眼科用途を含む軟組織修復のために使用されうる。例示的な実施形態において、創傷ドレッシングは、表面、たとえば気道の表面、髄膜、体の滑膜腔、腹膜、心膜、腱および関節の滑液、腎被膜および他の漿膜、真皮および表皮、吻合部位、縫合糸、ステープル、穿刺、切開、裂傷、または組織並置、尿管または尿道、腸、食道、膝蓋骨、腱または靭帯、骨または軟骨、胃、胆管、膀胱、動脈および静脈を治療するために使用されうる。
【0135】
例示的な実施形態において、創傷ドレッシングは、組織のコーティングまたは密封を必要とするいずれかの病状に関連して使用されうる。たとえば肺組織は、術後の空気漏れに対して密封されうる;血液、血清、尿、脳脊髄液、空気、粘液、涙液、腸内容物、または他の体液が停止または最小化されうる;骨盤および腹部、心膜、脊髄および硬膜、腱および腱鞘の術後接着を含む、術後接着を防止するためにバリアが施用されうる。創傷ドレッシングは、切開、擦過、火傷、炎症、および体の外面にコーティングの施用を必要とする他の状態の修復および治癒において、露出した皮膚を治療するためにも有用である。創傷ドレッシングは、他の体表面、たとえば血管を含む中空臓器の内側または外側にコーティングを施用するためにも有用である。血管または他の通路の再狭窄も治療されうる。
【0136】
創傷ドレッシングのための使用範囲としては、心臓血管手術用途、血管縫合線からの出血の防止;血管移植片付着の補助;多孔性血管移植片の事前凝固の促進;びまん性拡散性非特異性出血の止血;特にバイパス手術における冠動脈の吻合;心臓弁置換の補助;中隔欠損を補正するためのパッチの密封;胸骨切開術後の出血;および動脈閉塞;気管支胸膜皮膚瘻の密封、縦隔出血の低減、食道吻合の密封、および肺ステープルまたは縫合線の密封を含む胸部手術用途;硬膜修復、微小血管手術、および末梢神経修復を含む神経外科用途;腸吻合、肝臓切除、胆管修復、膵臓手術、リンパ節切除、漿液腫の低減および血腫形成、内視鏡誘発出血、外套針切開の閉塞および密封、ならびに特に緊急処置における一般外傷の修復を含む一般外科用途;皮膚移植片、火傷、痂皮の挫滅組織切除、および眼瞼形成術(まぶた修復)を含む形成外科用途;鼻タンポン、耳小骨連鎖再建、声帯再建および鼻修復を含む耳鼻咽喉科学(ENT)用途;角膜裂傷または潰瘍、および網膜剥離を含む眼科用途;腱修復、欠損の充填を含む骨修復、および半月板修復を含む整形外科用途;筋切開の治療、癒着切離後の修復、および接着の防止を含む婦人科/産科用途;損傷管の密封および修復、ならびに腎部分切除術後の治療および潜在的な使用を含む泌尿器科用途;歯周病の治療および抜歯後の修復を含む口腔外科用途;腹腔鏡検査または他の内視鏡処置のために作られた切開の、ならびに外科目的および他の用途で作られた開口の修復;疾患状態の治療、たとえば血友病患者のびまん性出血の止血;ならびに治癒中の摩擦による損傷を防止するための組織の隔離も挙げられる。いずれの場合においても、適切な治療剤が創傷ドレッシングに含まれうる。
【0137】
ある実施形態において、創傷ドレッシングは、たとえば抗感染薬、たとえば抗生剤、抗真菌剤、または抗ウィルス剤、抗炎症剤、細胞成長および/または分化を刺激するマイトジェン、損傷部位への細胞移動を刺激する薬剤、成長因子、骨、軟骨、皮膚、および肝臓組織をそれぞれ復元または置換するための細胞、たとえば骨芽細胞、軟骨細胞、ケラチノサイト、および肝細胞を含む創傷部位での治療剤の送達を供給する治療用バイオインクを用いて製造されうる。あるいは治療剤を製造後に創傷ドレッシングに、治療剤をドレッシングに浸漬、噴霧、塗装、またはそうでなければ施用することによって添加することができる。
【0138】
各種の実施形態において、創傷ドレッシングは所望の位置にて直接製造されうるか、または事前に製造されて、創傷に施用されうる。創傷ドレッシングは、創傷部位を被覆するために組織に接着されうる平面フィルムの形でありうるか、または3次元構造物、たとえばプラグまたはクサビの形でありうる。ある実施形態において、たとえば金属などの別の材料の内側、周囲、付近に配置して組織の接着および内殖を促進するための、人工組織インタフェースが操作されうる。事前に製造された創傷ドレッシングは、各種の創傷への施用に適した標準配置で供給され、そのまま施用されうるか、あるいは特定の創傷への施用前に切断、造形、またはそうでなければ成形されうる。あるいは事前に製造された創傷ドレッシングは、特定の創傷または創傷タイプに合せた配置で生成されうる。一実施形態において、創傷ドレッシングは、創傷へすぐに施用できる湿潤材料として供給される。別の実施形態において、創傷ドレッシングは、創傷への施用時または施用前に再水和されうる乾燥材料として供給される。
【0139】
別の実施形態において、本明細書で開示される装置、方法、組成物、および生成物は、体内でまたは体液に接触して使用される器具、たとえば医療器具、外科用器械、診断用器械、薬物送達器具、および人工インプラントなどのコーティングを製造するために使用されうる。コーティングは、このような物体上で直接製造されうるか、またはシート、フィルム、ブロック、プラグ、または他の構造物で事前に製造され、器具に施用/接着されうる。このようなコーティングは、組織工学足場として、拡散膜として、インプラントを組織に接着させる方法として、治療剤の送達方法として、および/またはインプラントに対する宿主からの免疫応答を防止または抑制することによってインプラント安定性を延長する方法として有用でありうる。各種の実施形態において、コーティングは植え込み型器具、たとえばペースメーカー、除細動器、ステント、整形外科用インプラント、泌尿器科用インプラント、歯科用インプラント、胸部インプラント、組織増大、心臓弁、人工角膜、骨補強、および顎顔面再建;器具、たとえば経皮カテーテル(たとえば中心静脈カテーテル)、経皮カニューレ(たとえば補助人工心臓)、カテーテル、導尿カテーテル、経皮電気ワイヤ、オストミー器具、電極(表面および植え込み)、および支持材料、たとえば開口を密封または再建するために使用されるメッシュ;および他の組織−非組織インタフェースに施用されうる。
【0140】
例示的な実施形態において、本発明の組成物は血流を封鎖するために浸出創傷内に配置されうる。このような創傷プラグまたは血液凝固用途はたとえば、戦場での用途に特に有用である。
【0141】
ある実施形態において、創傷ドレッシングは治療剤の所望の位置への送達を供給するために製造されうる。治療剤は、医療処置の付属物として(たとえば抗生剤)、または処置の主目的として(たとえば局所送達される遺伝子)コーティング内に含まれうる。受動機能材料、たとえばヒアルロン酸はもちろんのこと、活性剤、たとえば成長ホルモンを含む、各種の治療剤が使用されうる。たとえば細胞、タンパク質(酵素、成長因子、ホルモン、および抗体を含む)、ペプチド、有機合成分子、無機化合物、天然抽出物、核酸(遺伝子、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、および三重鎖形成剤を含む)、脂質およびステロイド、炭水化物(ヘパリンを含む)、糖タンパク質、およびその組合せを含む、多種多様の治療剤が使用されうる。包含される薬剤、たとえば血管作用薬、神経活性剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞毒性剤、抗生剤、抗ウィルス剤は各種の生物活性を有し、またはたとえばアンチセンス核酸、抗原、抗体、抗体断片、またはレセプターは特異的結合活性を有しうる。
【0142】
例示的な他の実施形態において、本明細書で開示される方法、組成物、および装置は、抗生剤、抗ウィルス剤、ステロイド性および非ステロイド性の両方の抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、チャネルブロッカを含む鎮痙、細胞成長インヒビターおよび抗接着性分子を含む細胞−細胞外マトリクス相互作用の調節剤、酵素および酵素インヒビター、抗凝固剤および/または抗血栓剤、成長因子、DNA、RNA、DNA、RNAまたはタンパク質合成のインヒビター、細胞移動、増殖および/または成長を調節する化合物、血管拡張剤、ならびに組織への損傷を治療するために一般に使用される他の薬物を含む治療剤を送達する3次元カプセル剤、錠剤、構造物、およびマトリクスを生成するために使用されうる。これらの化合物の具体例としては、アンギオテンシン変換酵素インヒビター、プロスタサイクリン、ヘパリン、サリチラート、ニトレート、カルシウムチャネル遮断薬、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ(TPA)およびアニソイル化プラスミノゲンアクチベータ(TPA)およびアニソイル化プラスミノゲン−ストレプトキナーゼアクチベータ複合体(APSAC)、コルヒチンおよびアルキル化剤、ならびにアパタマーが挙げられる。細胞相互作用の調節剤の具体例としては、インターロイキン、血小板由来成長因子、酸性および塩基性線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子ベータ(TGF−ベータ)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子、およびそれに対する抗体が挙げられる。核酸の具体例としては、遺伝子およびcDNAコードタンパク質、発現ベクター、アンチセンスおよび他のオリゴヌクレオチド、たとえば遺伝子発現を調節または防止するために使用されうるリボザイムが挙げられる。他の生物活性剤の具体例としては、修飾細胞外マトリクス成分またはそのレセプター、ならびに脂質およびコレステロール封鎖剤が挙げられる。
【0143】
さらなる実施形態において、本発明の組成物および方法と併せて使用されうる治療剤としては、タンパク質、たとえばサイトカイン、インターフェロンおよびインターロイキンを含む生物学的応答調節物質、タンパク質、ならびにコロニー刺激因子が挙げられる。炎症を阻害するためにセレクチンのレセプターに結合することが示されているシアル化ルイス抗原を含む炭水化物。成長因子、サイトカイン、インターフェロン、インターロイキン、タンパク質、コロニー刺激因子、ジベレリン、オーキシン、およびビタミンを含むとして;ペプチド断片または上の他の活性断片をさらに含むとして;形質転換または一時的発現のどちらかにより、標的細胞においてこのような因子を合成可能であるベクター、すなわち核酸構築物をさらに含むとして;天然シグナル分子、アンチセンスおよび三重鎖核酸を含む、組織においてこのような因子の合成を刺激または抑制する因子などをさらに含むとして、幅広く解釈される、細胞または組織の成長因子である、「送達可能成長因子等価物(deliverable growth factor equivalent)」(DGFE)が使用されうる。例示的なDGFEは、VEGF、ECGF、bFGF、BMP、ならびにそれらをコードするPDGF3およびDNAである。例示的な血餅溶解剤は、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、およびヘパリンである。
【0144】
他の実施形態において、たとえば接着の防止において有用である、抗酸化活性を有する(すなわち活性酸素の形成を破壊または防止する)薬物が使用されうる。例としては、スーパーオキシドジスムターゼが挙げられ、または他のタンパク質薬物としては、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、および一般的なオキシダーゼまたは酸化酵素、たとえばチトクロームP450、グルタチオンペルオキシダーゼ、および他の未変性または変性ヘモタンパク質が挙げられる。
【0145】
なお他の実施形態において、哺乳類ストレス応答タンパク質または熱ショックタンパク質、たとえば熱ショックタンパク質70(hsp70)およびhsp90、またはストレス応答タンパク質または熱ショックタンパク質発現を阻害または低下するように作用する刺激、たとえばフラボノイドも使用されうる。
【0146】
上記のように、本発明の過活動膀胱のための製薬組成物または治療剤は、調製物が各活性成分、化合物(I)またはその製薬的に許容される塩および抗コリン剤を含有するように調合される限り、単一の調製物または調製物の組合せで使用、投与または生成されうる。好ましくは、過活動膀胱のための製薬組成物または治療剤は、経口投薬に適した単位投薬形、たとえば錠剤またはカプセル剤を有するか、あるいは非経口投与に適した単位投薬形、たとえば注射剤を有する。調製物が調製物の組合せとして使用または投与されるときに、それらは共に、または間隔を置いて別個に使用または投与されうる。
【0147】
ある実施形態において、本発明の組成物は、治療剤または診断剤の経口または非経口送達に適した錠剤、カプセル剤、または生分解性インプラントを形成するポリマーマトリクスを含む。このような組成物は、カプセル剤またはマトリクスの分解が局所的な細胞または生理学的環境、たとえば温度、pH、炎症および/または壊死の部位に応答する場合に特に有用である。それゆえある実施形態において、本発明の組成物は、治療剤または診断剤に加えて、希釈剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、バインダ、界面活性剤、水、生理的食塩水、植物油、可溶化剤、等張化剤、保存料、抗酸化剤などを含みうる。錠剤およびカプセル剤はたとえば、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの崩壊剤、ステアリル酸マグネシウムなどの潤滑剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどのバインダ、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、およびグリセリンなどの可塑剤を含みうる。
【0148】
本明細書で開示される構造物は、力学的特性、たとえばインストロン試験機を使用する引張強度に関して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分子量、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度、および赤外(IR)分光法による結合構造について、エームズ検定およびインビトロでの催奇形性アッセイを含む初期スクリーニング試験による毒物学、ならびに免疫原性、炎症、放出、および分解研究のための動物での植え込み研究に関して特徴付けられうる。
【0149】
例示的な実施形態において、本明細書で開示されるプロセスおよび組成物を使用して、血管新生を制御するための組織操作構築物をインサイチューまたは生体外で製造することができる。プロセスは、組換えヒト線維芽細胞成長因子−2(FGF−2)を含むフィブリンのバイオミメティック細胞外マトリクス(bECM)を製造するために使用されうる。
【0150】
一般にFGF−2を含むbECMを使用して、制御された血管新生を誘発することができる。特に血管新生を目標とするFGF−2の勾配を用いた、または用いないフィブリンベースbECM設計は、骨組織工学で使用されうる。血管新生は、骨形成および組織操作骨移植片包含の成功のための前提条件である。各種の組織をも目標とする広範囲のバイオポリマー材料および成分が利用されうる。
【0151】
操作された組織構築物における血管新生に対処する複数の方法がある。ほとんどの場合、成長因子(GF)、たとえば骨形成タンパク質、細胞または両方のbECM送達は、細胞付着のための構造支持体、キュー、および表面を供給する。例としては、ECおよび他の細胞、たとえば幹細胞とのbECMの播種および培養、肝細胞および他の細胞種とのチャネルのネットワークを有する構造化bECMのインビトロでの播種および培養、インビトロで培養され、得られた層が3次元構造物に折り畳まれる、微細加工分岐チャネル内へのECおよび他の細胞のインビトロでの播種;VEGFをコードする組換えレトロウィルスを移入された細胞とのbECMの播種;ならびに捕捉、吸収、マイクロキャリアまたは共有結合によるマトリクスへの固定化によるbECMへのVEGF−A 165またはFGF−2の包含が挙げられる。例示的な実施形態において、足場を形成するプロセスは、フィブリンbECMをFGF−2と共に包含することを含む。本プロセスは、制御された予測可能な血管形成応答を与える。
【0152】
細胞、GF、およびECMは基本的な組織ブロックである。恒常性および創傷修復におけるこれらのブロックそれぞれの機能上の役割は、組織工学設計を誘導する。血管新生は、恒常性および創傷修復において再三発生するテーマである。血管新生が創傷修復に対して有する強力な役割の結果として、本明細書で開示される装置、組成物、および方法は、組織操作療法を提供する。血管新生を伴わないと、数立方ミリメートルを超える体積の組織は、栄養素および酸素の拡散によって生存できない。
【0153】
血管新生は、特定の空間および時間制御の下で起こる。VEGFおよび血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)のbECMからの時間放出が新血管形成を効果的に向上させることが示唆されてきた。VEGFが化学誘引、有糸分裂誘発、および内皮細胞の分化を促進することと、PDGFが新血管形成のための平滑筋細胞の発生を強化することが考えられている。
【0154】
本明細書で開示される方法および装置を使用して、血管新生因子を送達して、それゆえ創傷修復を補助するための複数の生物学的基準を満たすbECMが構築されうる。血管新生因子は、bECMによる制御および予測可能な方法によって、空間的に局在、保護、および送達されうる。
【0155】
VEGF、FGF−2およびPDGFなどの血管新生因子は通例、溶解形で内在的に送達される。その上、因子を「ウォッシュアウト」および希釈する創傷植え込み部位における拡散および対流は回避されるべきである。投与された用量を増加させることは、このような効果を緩和できるが、潜在的な全身性副作用のために問題をはらんでいる。したがって因子は、薬物動態が十分に予測可能な血管形成と、それに続く組織修復となるように、bECM内に係留または捕捉すべきである。
【0156】
血管新生の速度および量に加えて、新生血管ネットワークの品質およびトポロジーが重要である。送達された血管新生分子およびECは、血管腫および他の異常な血管構造を含む血管病理の病原体として関与している。本明細書で開示される方法、組成物および装置によって発生されたbECM/FGF−2は、正常な血管形成のための組織化された機能性プラットフォームを供給する。本明細書で開示される勾配、孔、および構造形を使用して、FGF−2は、bECM全体に包含可能であり、FGF−2の放出はたとえば空間濃度勾配によって調節されうるか、および/または細胞内殖および生分解中に放出されうる。したがって新血管形成が方向付けおよび組織化される。
【0157】
例示的な実施形態において、本明細書で開示される方法、組成物および装置は骨組織工学で使用されうる。血管新生および骨形成は関連しているので、レシピエント部位の血管分布と骨移植片の生存能との間には強力な相関がある。VEGFに関するノックアウトマウスによる最近の研究は、血管新生と骨との間の相互関係を強調している。骨移植片治癒の初期段階は、フィブリン血餅内の血管新生を指示する走化性およびケモキネシスシグナル(たとえばVEGF、PDGF、FGF−2)を含む。その上、血管新生および骨形成に必要とされるGFの空間および時間パターンも、有糸分裂誘発、細胞形状、運動分化、タンパク質分泌、およびアポトーシスを調節するために必要とされる。
【0158】
骨再生中の比較的予測可能で組織化された一連の細胞および分子事象は、骨組織工学のためにbECM内に血管新生因子の制御された空間勾配を生成するための機構を与える。たとえば骨折が生じたときに、部位の局所性の血管が破壊され、創傷およびすぐ周囲の範囲が無血管性となり、局在する低酸素症およびアシドーシスを引き起こす。常在する内皮細胞(EC)が低酸素およびアシドーシス環境に応答して、VEGFおよびFGFを分泌する。これらの血管新生因子の局在する空間濃度勾配がフィブリン血餅全体に生成されて、骨形成に先立って組織化された新生血管応答がもたらされる。したがってFGF−2を含むbECMは、創傷部位にて根本的な生物応答を提供するであろう。
【0159】
各種の実施形態において、フィブリン系bECMは、たとえばFGF−2およびPDGFを含む2個以上の血管新生分子を含みうる。FGF−2およびPDGFを含むこのようなbECMは、たとえば臨界サイズ欠陥(CSD)の治癒を再生するのに有用である。ある実施形態において、頭蓋冠CSDの組織操作設計は、構造物の底部から上部にかけて上昇する勾配を有する。このような構造物がCSD欠陥内に配置されたとき、勾配はより高い成長因子濃度を有する領域へ向かう上方向への細胞の移動を促進する。細胞の時間移動も、底部から上部への多孔性勾配(たとえば上部は底部より多孔性が低い)を低下させることを使用して制御されうる。細胞が足場のより高い密度/より低い多孔性範囲に遭遇すると、その移動は遅くなるであろう。ある例において、ある方向への細胞移動を防止するために、足場の1つ以上の範囲における濃厚または非孔性層を有することが所望でありうる。このような層は、規定の形状または軸に沿った組織の形成のためのガイドとして作用する。
【0160】
他の実施形態において、頭蓋冠CSDの組織操作設計は、bECMの中心でより高く、制御された新血管形成を誘導する化学誘引物質および細胞分裂促進効果を最適化するために中心から周囲に向かって低下する濃度を有する、固定化FGF−2の勾配を有する。bECMの中心におけるPDGFは、新血管を安定化させるために平滑筋細胞の補充を促進する。それゆえ時間制御は、PDGFおよびFGF−2の空間配置によって達成されうる。さらにフィブリン多孔性の空間的変化も時間パターンを調節する。フィブリン微小構造は、3次元マトリクスの屈曲度を決定し、屈曲度の操作はbECMの力学的特性、侵入細胞の移動速度、タンパク質分解、および成長因子の有効性に影響を及ぼす。フィブリンコンプライアンスの上昇は、インビトロでのEC分化を促進する。
【0161】
勾配設計の濃度範囲、方向、および形状は、創傷の生物学的特性によって決定されうる。CSD研究は、末梢骨の骨形成原細胞、硬膜、および皮下細胞源の著しい定量的相違について報告している。
【0162】
原型的な血管新生誘発剤は、VEGFおよびFGFファミリである。VEGFは、血管新生、および血管拡張調節、血管透過性、および脈管形成のための強力な調節剤である。形質転換成長因子−ベータ(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、PDGF、およびインスリン様成長は、追加の血管新生誘発族である。例示的な実施形態において、FGF−2は血管新生性および骨形成性であるので使用されうる。
【0163】
9つの構成要素を超える成長ファミリであるFGFは、胚発生、血管新生、再生、および創傷治癒に関与する分裂促進ポリペプチドである。各種の実施形態において、酸性および塩基性FGF、FGF−1、およびFGF−2が血管新生および骨形成のための治療用途に使用される。その上、これらのアイソフォームは、細胞内カルシウム−一酸化窒素ループによっておそらく媒介される血管拡張効果を促進する。この有益な血行力学効果はもちろんのこと、FGFの血管新生能力も、組織操作療法の血管新生因子としての熱意に値する。ある実施形態において、FGF−2は、骨形成および骨折治癒に対するFGF−2のプラスの影響のために使用されうる。
【0164】
分解性ポリマーミクロスフェアによる生物因子のマイクロカプセル化は、組織工学において一般的な手法である。したがってある実施形態において、マイクロカプセル化を使用して、時間に対して拡散性分子の放出を制御して、細胞応答を調節するために一時的な拡散勾配を生成することができる。他の実施形態において、FGF−2は、組織トランスグルタミナーゼ(tTG)によって固定化されうる。FGF−2のbECMへの特異的結合(すなわち固相中のFGF−2)は、空間パターンの維持を供給する。多くのGFは、特異的結合パターンを通じて未変性ECMでの常在を維持している。本明細書で開示する方法は、バルク製造技法はもちろんのこと、空間パターン化の方法も提供する。結合相互作用は、GF有効性を決定し、レセプター結合に影響を及ぼし、したがって細胞応答に著しく影響を及ぼす。
【0165】
例示的な実施形態において、ハイドロゲルを前駆物質として使用して、構造足場を形成することができる。適切なハイドロゲルとしては、架橋、pH、イオン濃度を調節する第2成分の補助によって、あるいは光重合、または体との接触による温度上昇によって、沈着およびゲル化されうる、たとえばフィブリン、キトサン、コラーゲン、アルギナート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびヒアルロナートが挙げられる。例示的な実施形態において、フィブリンが使用されうる。創傷治癒の間、フィブリンは創傷治癒および血管新生のための基礎となる基層を供給する。フィブリンは、循環血漿フィブリノゲンが創傷に局在化するときに発生し、一連の凝固事象の後にトロンビンによって最終的にタンパク質分解により開裂されて、不溶性フィブリンネットワーク中へ自己組織化する。このゲル化事象の後、相互連結フィブリン線維は、トランスグルタミナーゼ第XIII因子(FXIII)によって触媒された原線維間架橋によって安定化される。血漿および血小板脱顆粒から、一連のGF、細胞付着分子、プロテアーゼ、および血液細胞成分はフィブリンマトリクス内に固定化および捕捉されるようになる。フィブリン特性は、分解率および多孔性について制御されうる。加えて、フィブリンbECMは、臨床的な多用性を拡張するために、GF、骨誘導性バイオセラミック、およびプラスミドによって修飾されうる。フィブリンはFGF−2に高い親和性で結合することが既知である。フィブリンは、臨床用途において優れた生体適合性を証明した。他の実施形態において、他のハイドロゲルまたはこれらのハイドロゲルの成分が使用されうる。
【0166】
フィブリンポリマーのゲル化速度、構造、および材料特性は、フィブリノゲンおよびトロンビンの相対濃度、pH、イオン強度、およびフィブリン重合中に存在する他の生物物理学的パラメータによって決定される。たとえばフィブリノゲン濃度は、またフィブリンをプラスミンタンパク質分解から保護して、それゆえbECM分解を調節する、FXIIIによるフィブリンゲルの架橋と同様に、フィブリンゲル強度に直接影響を及ぼす。フィブリンゲルの得られた3次元微小構造特性は、EC移動、増殖、および血管形態形成において決定的な役割を果たす。通例、移動のFGF−2およびVEGF刺激は、より剛性の、またはより多孔性の低いフィブリンゲルによって強化されるのに対して、毛細血管形態形成は、より剛性の低い、またはより多孔性のゲルによって強化される。
【0167】
例示的な実施形態において、フィブリノゲン、トロンビン、FGF−2、組織トランスグルタミナーゼ(tTG)、および希釈緩衝液を合せて、バイオポリマーマトリクスを形成する。ある実施形態において、pHおよびイオン強度は、150mM NaClおよび5mM CaClを含有する100mM Tris緩衝液、pH7.0において一定に維持される。他の実施形態において、バイオポリマーマトリクスはその最も単純な形でフィブリノゲンおよびトロンビンより成る。これらの2つの成分は、未変性血栓形成および市販のフィブリン接着剤の両方のベースを形成する。TG架橋フィブリン原線維の添加を使用して、フィブリンポリマーを安定化させて、それにより力学的特性を改善することができる。TGは、ポリペプチド鎖間のγ−グルタミル−ε−リジン架橋の形成によって、タンパク質の翻訳後修飾を触媒するCa2+依存性酵素である。血漿FXIIIは、トロンビンによって活性化され、主にフィブリン原線維の共有架橋に関連付けられる。FXIIIによってより強力な血餅が生成される。tTGは、細胞および組織に広範囲に分布されており、タンパク質分解活性化を必要としない。TGは、α2−抗プラスミンのフィブリン原線維への架橋によって、そしてフィブリン−α−および/またはγ−鎖の架橋によって、耐線維分解性を与える。TGは、フィブリノゲン/フィブリン、フィブロネクチン、プラスミノゲン、アクチベータインヒビター−2、α2−抗プラスミン、IGF結合タンパク質−1、オステオネクチン、β−カゼイン、コラーゲン、ラミニン、およびビトロネクチンを含む広範囲の基質タンパク質を含む。TG間には、差別的な基質特異性がある。tTGは、トロンビン活性化を必要とせず、ただちに利用可能であり、骨形成の因子であるために好ましい。
【0168】
ヒトプラスミノゲンを含まないフィブリノゲンおよびヒトトロンビンはEnzyme Systems Research Laboratories(South Bend, Ind.)から、tTGはSigma(St Louis,Mo.)から、そしてヒト組換えFGF−2はReproTech,Inc.(Rocky Hill,NJ.)から購入できる。このような材料は、GMP施設およびFDA承認供給元からも入手できる。ある実施形態において、フィブリノゲンは、4〜75mg/mlの範囲の濃度で調製されうる。4mg/mlは未変性フィブリン血餅の濃度であり、最大130mg/mlが市販のフィブリン接着剤調合物、たとえばTISSEEL(商標)が使用される。1〜50NIH単位/mlのトロンビン濃度は、ゲル化時間、フィブリン原線維直径および多孔性を調節するために試験されうる。ある実施形態において、バイオポリマーは、1〜12ng/mlのFGF−2濃度より成りうる。
【0169】
温度は、バイオポリマー成分の安定性およびフィブリンゲル化の速度に重要な役割を果たす。ある実施形態において、バイオポリマー形成は、23℃にて生じうる。タンパク質ベース組成物は、生存能を維持するために使用前には−70℃で貯蔵されるか、または凍結乾燥されうる。
【0170】
成長因子を含むバイオポリマーを検証する。バイオポリマーは、当分野で既知であり、本明細書に記載される方法を使用して形成されうる。たとえばFGF−2を含むフィブリンマトリクスでは、システムは免疫組織化学的染色ならびにSEMおよび/または蛍光顕微鏡法を使用して検証されうる。FGF−2の持続性は、バイオポリマーマトリクス中に包含された蛍光標識FGF−2および125I標識FGF−2標識を使用して検証されうる。
【0171】
蛍光共焦点レーザ顕微鏡法では、フィブリノゲンバイオポリマーは、Cy5に結合されて、未標識フィブリノゲンと混合されうる(未標識フィブリノゲンに対して5%体積/体積)。同様にFGF−2は、Cy3に結合されて、未標識FGF−2と混合されうる(未標識FGF−2に対して5%体積/体積)。続いての共焦点顕微鏡法は、5mW Ar 488/514nmおよび5mW He/Ne 633nmレーザを装備したZeiss共焦点LSMl0顕微鏡を使用して実施できる。Zeiss Plan−Neofluar 20x0.5 NA水浸対物レンズを使用して、1μmまたはそれ以上の増分で切片を造影できる。画像はZeiss LSMソフトウェアを使用して処理されうる。
【0172】
FGF−2の持続性は、0.02%アジ化ナトリウムを含有する過剰のリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中に、23℃にて各種の時間(0、0.5、1、4、8、24、72時間)にわたり、時間0を対照として使用して、構築物をただちに固定または配置することによって測定されうる。他の実験では、放射性標識125I−FGF−2が使用されうる。
【0173】
FGF−2生物活性の決定のため、FGF−2を含むバイオポリマーをH−チミジンアッセイのために24ウェル組織培養プレートに配置できる。ヒト臍帯EC(HUVEC)をClonetics(BioWhittaker,Inc.,Walkersville,Md.)から購入して、供給者の指示に従って維持しうる。細胞を次に70%コンフルエントまで培養して、バイオポリマー上に無血清培地中で20,000細胞/ウェルにて播種しうる。48時間の培養の後、0.5μCiH−チミジンをウェルに添加しうる。一晩の培養の後、バイオポリマーをトリプシン処理してバイオポリマーマトリクスを溶解させ、細胞をPBSで洗浄しうる。続いて、成長中の細胞へのH−チミジンの包含は、当分野で既知の標準プロトコルによって決定されうる。
【0174】
代表的な解析は、有意水準p<0.05を用いて、複数回の分散分析(ANOVA)および複数の比較解析のためのTukeyの事後検定を使用して実施されうる。
【0175】
フィブリンマトリクスの堅さはフィブリノゲン濃度と共に低下するので、より低いフィブリノゲン濃度ではスランピングが生じうる。pHおよびイオン濃度の変更は、フィブリノゲン濃度を維持しながら力学的特性を変化させる1つの方法である。あるいは、表面に接着されたプラスチックリングを使用して、バイオポリマーの側方支持も供給されうる。リング寸法はバイオポリマー構築物と同じであるべきである。
【0176】
構造物の微小構造(多孔性、原線維直径)は、走査電子顕微鏡法(SEM)および蛍光共焦点顕微鏡法を使用して特徴付けられうる。治療因子のパターンおよび濃度は、直接蛍光標識および免疫蛍光法を使用して蛍光顕微鏡法によって決定されうる。
【0177】
FGF−2がバイオポリマーマトリクスに架橋される実施形態において、FGF−2のtTG架橋が使用されうる。フィブリノゲン/フィブリン、フィブロネクチン、プラスミノゲン、アクチベータインヒビター−2、α2−抗プラスミン、IGF結合タンパク質−1、オステオネクチン、β−カゼイン、コラーゲン、ラミニン、およびビトロネクチンを含む、FXIIIおよびtTGのための広範囲の基質タンパク質が同定されている。基質特異性の相違を説明するために、異なるTGまたはFXIIIが使用されうる。あるいはFGF−2は、調合前にフィブリノゲンの希釈溶液に架橋されうる。
【0178】
FGF−2は、Pierce(Rockford,Ill.)からのBS(水溶性ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート)を使用して標準反応によってフィブリノゲンを特異的に結合する。この架橋剤は、IGF−Tを金属表面に固定化するために使用でき、生体適合性である。bECMがより高いFGF−2濃度を必要とする場合、オリゴグルタミン部分はBSを介してFGF−2に結合されうる。さらに結合領域の正確な性質は、その反応性を最大化するために調整されうる;たとえば鎖長および組成が改変されうる。グルタミンと促進アミノ酸の両方が豊富である各種のオリゴペプチドが合成されうる。TG基質配列を使用してヘパリンをフィブリノゲンまたは融合ペプチドに架橋することが利用されうる。操作ペプチド、融合タンパク質、および他のこのような分子は、治療剤、たとえば薬物、成長因子などのマトリクス成分への付着を、融合タンパク質(すなわちプロテアーゼ開裂部位を含まないTG基質成分との成長因子)または操作ペプチド(たとえばヘパリン結合ドメインを含有するタンパク質の一般的なバインダとして作用するためにヘパリンを固定化するのに使用されるTG基質配列との、ヘパリン結合ドメイン配列)のどちらかとして直接、促進するためにも使用されうる。
【0179】
製造の後、構造物は、50μg/ml BSA(インスリンRIAグレード、Sigma,St.Louis,Mo.)および1μg/mlアプロチニンを含有する23℃の無血清培地中に構築物を直接配置することによって、インビトロでまたはCAMモデルによってアッセイされうる。これらのサンプルは、FGF−2などの未結合成長因子を除去するために、培地交換によってインキュベートされうる。23℃での温度維持およびプロテアーゼインヒビター、たとえばアプロチニンの添加は、バイオポリマー構造物の安定化を補助する。
【0180】
組織操作構築物の有効性は、当分野ではインビボでの評価の前にインビトロで評価されることが多い。インビトロでの結果は、インビボでの結果に直接移すことができない。しかしながら、インビボでの実験と比較して、インビトロでの実験は、費用削減、実験回転率の向上、および関連付けられた変数のより選択的な制御と結び付けられる。これらの考慮事項は、組織工学設計プロセスでのインビトロでの実験を支持する。
【0181】
動物モデルの科学的に許容される代替手段は、絨毛尿膜(CAM)モデルである。CAMは、発生中のニワトリ卵の胚と卵殻との間に位置する血管胚体外膜である。血管新生およびCAMは、創傷修復および血管発生のための治療をスクリーニングするインビボでの生物学的アッセイにおいて重要となっている。CAMを使用して、フィブリン/FGF−2設計に応答する血管新生が評価されるであろう。構築物のCAMへの固定を確認するために、切断器具を使用して卵の水平中心に直径17mmの穴を開ける。光学的に透明なプラスチック挿入物(15mm OD×10mm ID)を使用して、集中処置用途および続いてのインサイチュー評価のための窓が作製されうる。挿入物よりも小さいサイズのサンプル構築物を配置すると、方向付けられた血管内殖のインサイチュー観察を可能にする観察窓内に、構築物を包囲する境界領域が与えられる。
【0182】
CAMアッセイは、受精したホワイトレグホンの卵を37.8℃、相対湿度60%で孵化させることより成る。第3日に、切断器具の中水平向きを使用して卵を開く。切断前に卵の太いほうの端からアルブミン0.5mlの除去によって、胚を切断部位から落とし、胚を振動および外科的外傷から保護する。穴の上に配置した多孔性医療用テープは蒸発による損失を最小限に抑え、汚染を防止する。第8日に、穴を通じて窓挿入物を配置して、CAM上に直接静止させた。
【0183】
第10日に構築物をCAM内に配置できる。インサイチュー造影により、第1日〜第8日の画像処理のためのデジタル記録が作製できる。CAM挿入物中に配置された構築物はこの時点で回収され、血管新生の組織学的分析用に調製されうる。胚、膜、および構築物は、卵内にてブアン固定液で固定されうる。窓/CAM範囲は次に除去され、水和されて、パラフィンに埋め込まれる。CAM表面に水平な面で連続切片が作製されうる。切片は0.5%トルイジンブルーを使用して染色されうる。血管新生は、Zeiss造影ソフトウェアを用いた画像解析システムと連動したZeiss Axiophot顕微鏡を用いて評価されうる。定量的データは、有意水準p<0.05で、複数回の分散分析(ANOVA)および複数の比較解析のためのTukeyの事後検定によって解析されうる。
【0184】
次の実施例は、本明細書で記載される特定の実施形態に限定されることなく、本発明をさらに例証するものである。
【実施例】
【0185】
実施例1
フィブリン処理
1mLバッチ用のフィブリン調合物は、40mg/mL AventisまたはdiaPharmaフィブリノゲン250μL(それぞれZBL Behring,King of Prussia,PA;またはdiaPharma,West Chester,OHより市販)、滅菌水230μL、1M NaCl 300μL(Sigma,St.Louis, MO)、200mMビシン、pH8.0 200μL(Sigma)、100U/mL 第XIII因子10μL(ZBL Behring,King of Prussia,PA)、および10mg/mL骨形成タンパク質2(BMP−2)10μL(R&D Systems,Minneapolis,MN)を含む溶液を混合することによって調製した。フィブリノゲン調合物を続いて37℃にて30分間インキュベートして、成長因子を溶液中のフィブリノゲンと結合させた。
【0186】
1mLバッチ用のトロンビン調合物は、100U/mLトロンビン100μL(Enzyme Research Labs,South Bend,IN)および500mM CaCl 10μL(Sigma)を含む別の溶液を混合することによって調製した。
【0187】
フィブリンゲルは、トロンビン溶液15μLを1.5mL微量遠心管に添加し、フィブリノゲン溶液350μLを微量遠心管に添加し、混合溶液をゲル型にすぐに移すことによって調製した。次にゲル溶液をゲル型内で20〜30分間固化させて、完全にゲル化させた。ゲル溶液が完全に固化した20〜30分後に、型を分解して、生じたフィブリンフィルムを取り外した。
【0188】
ゲル型は4個の部品:底部ピース、0.75mm上部ピース、1.5mm上部ピース、および標準バインダクリップより組み立てられる。「底部ピース」は、2.5cm×2.5cm×0.63cmテフロン(商標)セグメントを含みうる;「0.75mm上部ピース」は、12.5mm×12.5mm正方形セグメントが中央から切り取られて取り外された、2.5cm×2.5cm×0.075cmテフロン(商標)正方形セグメントを含む;そして「1.5mm上部ピースは、12.5mm×12.5mm正方形セグメントが中央から切り取られて取り外された、2.5cm×2.5cm×0.15cmテフロン(商標)正方形セグメントを含む。ゲル型は、1.5mm上部ピース1個を下部ピースの上に配置することと、0.75mm上部ピース1個を該1.5mm上部ピース1個の上にセグメントの端を揃えて配置することとによって組み立てた。セグメントはバインダクリップによって共に締め付けた。ゲル型アセンブリを、ウェットティッシュ(Kimberly−Clark,Roswell,GAより市販)と共に、加湿チャンバを作るための閉じられた蓋を備えた100mmペトリ皿内に配置した。
【0189】
フィブリンゲル構造物(すなわちフィブリン原線維形成)は、pH、NaCl濃度、CaCl濃度、およびフィブリノゲン濃度に大きく依存することが見出された。したがって初期ゲル調合物のこれらの濃度および体積の変更は、最終フィルムに異なる特性を付与した。したがって当業者は、なお本発明の範囲および精神内にありながら、その特定のゲル用途に適切である構造物および特徴を備えたフィルムを調製するために、初期ゲル調合物を変更することができる。
【0190】
実施例2
フィブリンゲルの真空脱水
ゲル型から取り外したときに、水を除去してフィブリンゲルフィルムの厚さを2.25mmから約100μmに縮小させるために、完全水和フィブリンゲルを凍結乾燥させた。凍結乾燥はゲル乾燥機(BioRad,Hercules,CAより市販)で実施した。ゲル乾燥機の蓋を開いて、シリコンゴムガスケットを引き剥がした。Spectrapor 1透析チューブ(6−8k MWCO,Spectrum Laboratories,Rancho Dominguez,CA)をPBSに浸漬して、片側に沿って切り、チューブをシート状に広げた。開いたチューブは、それを3cm×3cm片に切断された。得られた透析「シート」をゲル乾燥機上に配置した。フィブリンゲルを透析シートの中心に配置した。中心に20mm×20mmの正方形切欠きのある2.5cm×2.5cm×3cmテフロン(商標)セグメントをゲル周囲に配置した。2.5cm×2.5cm×0.075cmテフロン(登録商標)セグメントを2.5cm×2.5cm×3cmテフロン(商標)セグメントの上に配置した。シリコンゴムガスケットを慎重に再度位置決めして、ゲル乾燥機の蓋を閉じた。凍結乾燥機ユニット(Labconco,Kansas City,MO)を作動させて、減圧および温度に到達させた。凍結乾燥機ユニットを次にゲル乾燥機に連結した。2つのどちらかの方法の1つを使用して、ゲルをフィルムまで乾燥させた:(1)ゲル乾燥機を50℃にて2〜2.5時間運転した、または(2)ゲルを室温にて8〜10時間運転した。
【0191】
フィブリンフィルムが付着した透析シートを慎重に取り出し、10単位/mLペニシリンGナトリウム、10μg/mL硫酸ストレプトマイシン溶液(Invitrogen,Carlsbad,CA)、および10μM D−Phe−Pro−Axg−クロロメチルケトン(PPACK)トロンビンインヒビター(BIOMOL International, Plymouth Meeting,MA)と共に3mL PBSを含有する6ウェル型マイクロウェルプレートにただちに配置した。凍結乾燥フィルムを4℃にて24時間静置した。24時間おきに緩衝液を新しい滅菌PBSと交換したが、最大で合計2回のみの緩衝液交換であった。さらなる処理または分析が実施されるまで、フィルムを4℃で貯蔵した。
【0192】
凍結乾燥プロセスは、外観が透明から半透明であり、図1Bに示すようなエラストマー特性を有するフィルムを生成した。
【0193】
実施例3
フィブリンゲルの浸透圧脱水
実施例2で開示した方法の代わりの方法も使用して、ゲル化およびゲル型からの取り出し時にフィブリンゲルを処理した。本方法では、浸透圧脱水プロセスを使用した(Muller and Ferry,米国特許第4,548,736号の方法に基づく)。フィブリンゲルは実施例1の方法と同じに調製した。フィブリンゲルを60mmペトリ皿内のカバースリップ上に配置した。35%高分子量ポリビニルアルコール溶液約500μLを、PBSに浸漬したSPECTRAPOR−1(商標)(6〜8,000MWCO)透析膜チューブの約3インチのセグメントの内側に添加した。チューブの端はクランプ固定した。チューブを、ポリビニルアルコール溶液がゲル全体の上に直接静止し、ゲル全体と完全に接触するようにしてゲルの上に配置し、ゲルから水が均等に拡散して、浸透勾配にそってチューブ内に侵入するようにした。ペトリ皿に蓋をかぶせて、それを室温で24時間インキュベートした。得られたフィブリンフィルムを皿から取り出し、50%グリセロール溶液に室温にて24時間浸漬して、続いてPBS溶液中で4℃にて貯蔵した。
【0194】
本方法は、均等な浸透圧の場合による不足のために、より長い処理時間およびフィルム厚の場合による不均等性を伴っていた。しかしながら本方法は、フィルムの比較的軽度の処理に関して、そしてフィルムが完全に干からびることがないために好都合であった。
【0195】
実施例1および実施例2または3のどちらかに記載された方法によって製造されたフィブリンフィルムは、外観が透明から半透明であり、エラストマー特性を保持していた。
【0196】
実施例4
フィブリンフィルム生体適合性アッセイ
実施例1および2、ならびに実施例1および3に記載した方法に従って製造したフィブリンフィルムを12日齢ニワトリ胚に配置して、ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイを使用して生体適合性を試験した。試験したフィルムは、不適合性のいかなる客観的な徴候も示さなかった。フィブリンフィルム下のCAM血管は、蛍光量子ドット(QD)の生体内注射によって視覚化した。フィルム配置の2日後、胚に655nm発光量子ドットを注射して、血管蛍光は1.6倍対物(1倍ズーム)、Retiga Exi CCDカメラ、および(Ex:Em)450spuv:655/20フィルタセットを用いたM2BIOステレオスコープで撮影した。フィルムは、下にある血管上で観察可能な病的影響を誘発しなかった。
【0197】
実施例5
フィブリンフィルム生体適合性アッセイ
フィブリンゲルは、10mg/mL diaPharmaフィブリノゲン(diaPharma,West Chester,OHより市販)、300mM NaCl、40mMビシンpH8.0によって、そしてさらに10ng/mL線維芽細胞成長因子2(FGF−2)を含めて調製して、実施例1、ならびに実施例2または3のどちらかに記載したようにフィルムへ加工した。これらのフィルムを10日齢ニワトリCAM上に配置した。24時間後、フィルム下の血管周囲に出血が見られた。理論に縛られることなく、観察された出血は、凍結乾燥時に観察されたゲル厚の約20分の1への縮小の結果としての、FGF−2の非常に高い濃度のためである可能性が高かった。フィルム中の最終FGF−2濃度は、約200ng/Lと概算された。これは、フィブリン円板下でCAM血管出血を引き起こすことが報告された、フィブリン円板中の血管内皮成長因子(VEGF165)の同量である(Wong C.ら、Thromb.Haemost.89:573−582(2003))。より低濃度のFGF−2は出血を引き起こさないはずである。
【0198】
実施例6
2次元インクジェット組織印刷システムおよびフィブリンフィルム上でのBMP−2層化
フィブリンフィルムは、11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL 第XIII因子、300mM NaCl、および40mM ビシン、pH8.0によって調製した。2次元インクジェット組織印刷システムを使用して、Cy3標識BMP−2の4つの正方形パターンをフィルムの上に図4に示すような格子パターンで印刷した。フィルムをPBSに浸漬して、4℃にて貯蔵した。培地を毎日交換して、フィルムはCy3蛍光について1週間の期間にわたって、1.6倍対物(1倍ズーム)、Retiga Exi CCDカメラ、および標準Cy3フィルタセットを備えたM2BIO実体顕微鏡を使用して撮影した。フィルムは、評価の7日間にわたって蛍光のわずかな消失を示し、フィルム内への安定したBMP−2の包含が示された。
【0199】
実施例7
フィブリンフィルムの走査電子顕微鏡法(SEM)
フィブリンゲルは、11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL 第XIII因子、300mM NaCl、および40mM ビシン、pH8.0)によって調製して、フィルムに加工した。これらのフィルムを4分の1に切断して、走査電子顕微鏡法(SEM)用に処理した。試験片をPBS中の1%グルタルアルデヒドおよび3%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。次にPBSでの3回の洗浄後、試験片をPBSで緩衝させた1% OsOで1時間固定させた。ddHOによる3回の5分間の洗浄によってOsOを除去して、エタノールの上昇系列(50%、70%、80%、90%、および100%で3回交換)による脱水を続けた。サンプルを各エタノール洗浄液中で10分間保持して、次に100%エタノール中で一晩保持した。試験片をPelco CPD2臨界点乾燥機(Clovis,CA)でCOを使用して、1200psiおよび42℃にて乾燥させた。乾燥させた試験片は、両面テープを使用してSEMスタブに取り付け、Pelco SC−6スパッタコーターを使用して金でコーティングした。Hitachi 2460N Scanning Electron Microscope(Pleasanton,CA)を使用して、試験片を検査した。Quartz PCI画像ソフトウェア(Vancouver,BC,Canada)を使用して、デジタル画像を得た。
【0200】
図5は、フィルム表面および断面のSEM画像を示す。表面図は、高密度の線維様充填のやや平滑な表面を示す(図5B)。一部の表面のひび割れおよびしわは、固定および臨界点乾燥工程で誘発される(図5A、5C)。断面図は、これを確認している。フィブリン原線維が見え、フィルム処理が未変性のフィブリン構造物を破壊しないことを示す(図5D〜F)。原線維の高密度は、実施例2または3それぞれの凍結乾燥または浸透圧脱水処理の結果としての、フィブリンハイドロゲルの厚さの20分の1の縮小の結果であった。
【0201】
実施例8
フィブリンフィルムの透過型電子顕微鏡法(TEM)
フィブリンゲルは、11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL 第XIII因子、300mM NaCl、および40mM ビシン、pH8.0)によって調製して、フィルムに加工した。これらのフィルムを4分の1に切断して、透過型電子顕微鏡法(TEM)用に処理した。試験片をPBS中の1%グルタルアルデヒドおよび3%パラホルムアルデヒドで一晩固定させた。PBSでの3回の洗浄後、試験片をPBSで緩衝させた1% OsOで1時間固定させた。オスミウム固定の後、ddHOを3回交換して切片を洗浄し、エタノールの上昇系列(50%、70%、80%、90%、および100%)によって脱水した。プロピレンオキシドを移行溶媒として使用して、試験片にLR White(London Resin Company,Reading,Berkshire,England)を浸透させた。LR Whiteを60℃にて48時間重合した。薄い(100nm)切片を、ダイヤモンドナイフを使用してReichert−Jung Ultracut Eウルトラミクロトーム(Leica,Wetzlar,Germany)上で切断し、銅格子上に配置して、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛によって染色した。50kVで動作するHitachi H−7100透過型電子顕微鏡(Pleasanton,CA)で格子を観察した。AMT Advantage 10 CCDカメラシステム(Advanced Microscopy Techniques Corporation,Danvers,MA)およびNIH画像ソフトウェア(Bethesda,MD)を使用して、デジタル画像を得た。
【0202】
図6は、フィブリンフィルムのTEM顕微鏡写真を示す。フィブリンはランダムで均質のように見える。孔径は非常に小さくナノメートル範囲であり、フィルム内の高いフィブリン密度の結果として予想される。
【0203】
実施例9
リン酸三カルシウムをさらに含むフィブリンフィルム調合物
フィブリンゲルフィルムは、実施例1および2に記載された方法によって調製され、リン酸三カルシウム(フィブリン溶液400uL当たりTCP粉末0.4mg)の添加をさらに含んでいた。フィルムは処理特性に関して定性的に評価され、良好に処理されることが見出された。[発明者:観察または試験された特性について記載してください]TCPを含む薄膜は、骨組織工学用途への可能性を有する。
【0204】
実施例10
フィブリンフィルム上へのMD−63骨肉腫細胞の播種
フィブリンゲルフィルムは実施例2に記載した方法によって、11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL第XIII因子、300mM NaCl、および40mMビシン、pH8.0によって調製し、フィルムに加工した。血清を添加した変法イーグル試薬F−12(MEM F−12)中のMG−63骨肉腫細胞はこれらのフィルム上で接着または延展しなかった。細胞はフィルムに結合したが、丸まったままであった。理論に縛られることなく、水和前にゲル中に残存していたトロンビンが濃縮されて、フィルムがいったんインビトロ条件下に配置されるとタンパク質分解活性を通じて細胞付着を実際に阻害した。
【0205】
実施例11
フィブリンフィルム中への細胞外マトリクスの包含
ゲルは実施例1および2に記載された方法に従って11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL第XIII因子、300mM NaCl、および40mMビシン、pH8.0によって調製し、さらに凍結乾燥および粉末化細胞外マトリクス(ECM)調製物を含んでいた。たとえばGilbert TWら、Biomaterials 26:1431−5(2005)を参照。肝臓由来ECM粉末または膀胱ECMを含有するゲル(フィブリノゲン溶液400μL当たり粉末15〜20μL)のフィルムへの加工が成功した。MG−63骨肉種細胞はこれらのフィルムに付着しなかった。
【0206】
実施例12
フィルム処置および細胞播種
ゲルは実施例1および2に記載した方法によって、11mg/mL diaPharmaフィブリノゲン、1U/mL第XIII因子、300mM NaCl、および40mMビシン、pH8.0によって調製し、フィルムに加工した。フィルムは続いて次の方法の1つで処理した:(1)26μM PPACKトロンビンインヒビターまたは(2)26μM PPACKを含有する20%ホルムアミド溶液。これらのフィルムを次にPBSまたは1mg/mLフィブリノゲンに浸漬して、続いて1U/mLトロンビンに浸漬し、フィルム表面に追加のフィブリン層を形成した。MG−63骨肉種細胞を、血清を添加したMEM−F12培地を含有する6ウェルマイクロプレート内のこれらのフィルムの上に配置した。結果は次の通りであった:
1.PPACKのみ−ごくわずかな細胞がフィルム上に延展した。大半は付着したが、なお丸まっていた。
2.ホルムアミド/PPACK−播種細胞の大部分は付着して、フィルム上に延展した。
3.PPACKおよびフィブリノゲン/トロンビン−播種細胞の大部分は付着して、フィルム上に延展した。
4.ホルムアミド/PPACKおよびフィブリノゲン/トロンビン−播種細胞の大部分は付着して、フィルム上に延展した。
【0207】
実施例13
フィブリノゲン供給源試験
フィブリンゲルは実施例1および2に記載した方法に従って、10mg/mL Aventisフィブリノゲン、1U/mL第XIII因子、300mM NaCl、および40mMビシン、pH8.0によって調製し、フィルムに加工した。次にフィルムをPBSのみまたは23μM PPACK、10単位/mLペニシリンGナトリウム、および10μg/mLストレプトマイシンを含有するPBSのどちらかによって後処理した。フィルムは、PBSまたは1mg/mLフィブリノゲンのどちらかと、続いて1U/mLトロンビンでさらに後処理した。MG−63細胞を、血清および抗生剤を添加したMEM−F12を含有する6ウェルマイクロプレート内のフィルム上に配置した。セルは両方のフィルムのセットに付着および延展した。実施例10および12の結果と組合せたこれらの結果により、Aventisフィブリノゲンはフィブリノゲンのより良好な供給源であることが判定され、ホルムアミドはこれらの実験で任意の後処理であることが判定された。
【0208】
実施例14
播種フィブリンフィルム上での細胞分化
フィブリンゲルは、10mg/mL Aventisフィブリノゲン、1U/mL第XIII因子、300mM NaCl、および40mMビシン、pH8.0、および2.5ng/mL BMP−2によって調製した。ゲルを実施例1および2に記載された方法に従ってフィルムに加工した。最終BMP−2濃度は約50ng/mLで概算された。フィルムはBMP−2なしでも作製した。フィルムを6ウェルマイクロプレート内に配置した。AUウェルは、血清および抗生剤ならびにアプロチニンを1μg/mLで添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)3mLを含有していた。ウェルは次のように占有された:
ウェル1(負の対照):C2C12マウス筋芽細胞のみ
ウェル2(正の対照):培地に50ng/mL BMP−2が添加されたC2C12マウス筋芽細胞
ウェル3:BMP−2を含有しないフィブリンフィルム上のC2C12マウス筋芽細胞
ウェル4:BMP−2を含有するフィブリンフィルム上のC2C12マウス筋芽細胞
3日後、アルカリホスファターゼ(ALP)活性を、製造者のプロトコルに従って比色染色キット(Sigma)によって評価した。正のALP活性は、青色に戦勝された細胞を生じた。ウェル2および4の細胞は青色に染色されたのに対して、ウェル1および3の細胞は染色をほとんど〜全く示さなかった。これらの結果は、アルカリホスファターゼ活性によって測定されるように、フィルム加工後にBMP−2が活性を保持したことと、BMP−2を含むフィルムがC2C12マウス筋芽細胞の骨芽細胞系統への分化を補助することを示す。
【0209】
実施例15
タンパク質ベースゴム様〜硬質プラスチック調合物
市販のプレス装置を使用して、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲンおよび細胞外マトリクスプラスチックを高さ約0.5cm×直径1.3cmの円板(以下「ペレット」)の形に製造した。ある実験において、続いてペレットを真空下で凍結乾燥させた。ゼラチンプラスチックは粉末化ゼラチン、グリセリン、可塑剤を含み、そしてある実験においては、FGF−2、BMP−2、量子ドット、NaCl、ポリ乳酸、ヒドロキシアパタイト、酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび/またはピリジニウムTFAをさらに含んでいた。フィブリンプラスチックは重合フィブリン(粉末を形成するために粉砕)、グリセリン、可塑剤、そしてある実験においては、FGF−2、BMP−2、量子ドットをさらに含んでいた。フィブリノゲンプラスチックは、粉末化フィブリノゲン、グリセリン、可塑剤、そしてある実験においては、FGF−2、BMP−2、量子ドット、NaCl、ポリ乳酸、ヒドロキシアパタイト、水、または酢酸アンモニウムをさらに含んでいた。ECMプラスチックは粉末化膀胱(UB)由来ECM、そしてある実験においては、FGF−2、BMP−2、量子ドットはもちろんのこと、さらなる実験では水もさらに含んでいた。特定の調合物を十分にまとまった均質ペレットに形成して、さらなる後処理および試験に使用した。
【0210】
実施例16
可塑剤としてのグリセリンによるゼラチンプラスチック−低温圧縮ペレット加工
ゼラチンペレットは、濃度が0%、12.5%、19%、21%、25%、36%、40%および50%の可塑剤添加物としてのグリセリンとの圧縮によって調製した。約40%のパーセンテージが特に有用な力学的特性を与えた。プラスチックペレットは、固化ゼラチンを150ミクロン以下の粒径の粉末(100メッシュ標準ふるいを通過する粉末)に粉砕することによって形成した。粉砕ゼラチン粉末のサンプルはグリセリン可塑剤と、場合により実施例15に記載した物質と、得られるプラスチックの所望の濃度を達成するのに適切な量で混合した。すべての調製物において、50mL三角プラスチック製遠心管内でゼラチン粉末およびいずれの追加の成分もグリセリンと混合して、混合物を確実に適正に均質するために5〜10分間にわたって3回、手動で徹底的に混合して、少なくとも2時間放置してインキュベートした。次に均質混合物を標準ペレットプレス装置に装填した。プレス型は混合物装填の前に、内面を潤滑してプレスされたペレットが望ましくない固着なしに型から容易に除去されるようにするために、レシチン離型剤で2回コーティングした。プレス型に満杯の約3/4までグリセリン湿潤ゼラチン粉末を装填した。次にプレスを50℃〜125℃の温度および5000ポンド〜7000ポンドの範囲の圧力に設定して、プレスを20〜60分間動作させ、ここで特定の動作パラメータは得られるプラスチックの所望の特性に基づいて設定した。プレスの動作パラメータプロフィールは、代表的なペレット形成のための20および60分動作それぞれについてであった。型圧を最大化して、約7000ポンドの圧力にて20分間一定に維持して、型温度は一般に約80℃の初期値から、約40分から60分のプロセスで約27℃(室温)の最終定常値に達するまで低下させた。60分間のペレット形成プロセス後、得られたプラスチックペレットを型から取り外し、余分なプラスチックを切り取り、4℃にて乾燥状態で貯蔵した。ゼラチンプラスチック調合物を十分にまとまった均質ペレットに形成して、さらなる後処理および試験に使用した。圧縮プラスチックの硬度は、圧縮前に粉砕した粉末に添加した可塑剤の量の関数であった。可塑剤パーセントを上昇させると、さらなるゴム様プラスチックが生じた。
【0211】
実施例17
ゼラチンプラスチックにおけるポロゲンとしての塩化ナトリウム
固体塩化ナトリウム(NaCl)を実施例16で記載したように調製したゼラチンプラスチック中でポロゲンとして評価した。固体NaCl結晶を圧縮処理前にゼラチン粉末に添加するか、あるいはプレス型内のゼラチンペレットの上または底のどちらかに導入して、プラスチック中に物理的にプレスした。埋め込まれたNaClは、プレス済みのペレットを水中に配置して、固体NaClを溶液中に溶解させ、プラスチックに穴を残して浸出させることによって除去した。上部プレスまたは底部プレスNaCl埋め込みポロゲンのどちらも孔すら生じなかった。事前混合NaClによって形成されたプラスチックは、開放孔構造を示さなかった。
【0212】
実施例18
ゼラチンプラスチック架橋を伴うポロゲンとしてのNaCl
固体NaClを実施例17に記載したようにゼラチンプラスチック中に導入した。プレスした円板を2.5%または5%グルタルアルデヒド溶液のどちらかによって同時に架橋およびNaCl浸出させた。ゼラチン円板はペレットの中心で顕著な膨潤を、ペレットの円形表面にわたってひび割れを、GA反応による顕著な褐色変色を示した。SEM画像法は、固体NaClのいずれも架橋マトリクスから浸出しなかったことを確認した。
【0213】
実施例19
ゼラチンプラスチックにおけるポロゲンとしてのポリ乳酸(PLA)
粉砕ポリ乳酸(PLA)(100〜150ミクロン径の粒子)をゼラチンプラスチック調合物中に導入して、実施例16に記載されたように材料を処理した。プラスチックペレットをクロロホルム(CHCl)に浸漬して、ゼラチンマトリクス内に捕捉された固体PLAを溶液に溶解させて、開放孔を残して材料から浸出させた。図9は、物理的に捕捉されたPLAの浸出によるゼラチンマトリクス中の孔の形成を示す顕微鏡写真である。
【0214】
実施例20
ゼラチンプラスチック押し出し加工
ゼラチン(19%体積:体積)を実施例16に記載したように調製および加工した。透明プラスチックペレットを押し出しによってさらに加工した。ゼラチンプラスチックを60℃〜117℃にわたる一連の温度(すなわち60℃、70℃、78℃、80℃、90℃、100℃、110℃、および117℃)にて押し出した。従来のプラスチックプレス工程にかかわらず、押し出されたゲルプラスチックは気泡を形成し、押し出し後に膨張した。押し出されたゼラチンプラスチックの冷間回転はひび割れを生じた。
【0215】
実施例21
ゼラチンプラスチック中へのヒドロキシアパタイトの包含
ヒドロキシアパタイト(HA)をゼラチンプラスチック調合物に導入して、材料を実施例16に記載されたように加工した。得られたゼラチン円板は、マトリクス全体に均質に分散された5%HAを含んでいた。
【0216】
実施例22
ゼラチンプラスチックの機械加工性
実施例16に記載された方法に従って調製されたゼラチンプラスチックは、グリセリン可塑剤の各種の濃度によって示された機械加工性を有する。プラスチックの相対硬度は、機械加工技法へのその適合性を決定した。プラスチックは一般に、機械加工後の約215ミクロン正方形の精密な形成、図10および図11によって示されるように、優れた機械加工性を示す。より高濃度のグリセリン可塑剤から生じたより軟質のプラスチックは、定性的により粗く機械加工された表面、図10を形成したが、これに対してより低濃度のグリセリン可塑剤から生じたより硬質のプラスチックは、より整った機械加工表面、図11を形成した。
【0217】
実施例23
ゼラチンプラスチックのシートへのプレス
実施例16に記載した方法によって調製したゼラチンプラスチックは、薄いシートをプレスする点で優れた成形性を有する。ゼラチンプラスチックから形成されたシートは薄く、部分的に透明であり、可撓性で、靭性である。一般に得られたプラスチック形状は、それが形成された特定の型の関数であった。シートは、特別に構築された長方形形状型によってプレスされたゼラチン粉末および23%(体積:体積)グリセリンを含んでいた。
【0218】
実施例24
グリセリン可塑剤を用いたフィブリンおよびフィブリノゲン・プレス・プラスチック
実施例1に記載されているが、ブタフィブリンを使用したフィブリン調合物を粉末化して、グリセリンおよびまたは水可塑剤の添加によってさらに修飾して、実施例16に記載するようにプラスチック円板に加工した(すなわち80℃、87℃および121℃の温度にて圧縮されたフィブリノゲン;および79℃および101℃の温度にて圧縮されたフィブリン)。非重合フィブリノゲンをグリセリンおよび水と混合して、実施例16に記載するようにプラスチック円板に加工した。水を含む12.5%(体積:体積)グリセリン可塑剤および非重合フィブリノゲンの使用は、試験したすべての温度にて軟質の柔軟性プラスチックを生じた。しかしながら、フィブリノゲン基材は121℃まで加熱したときに熱分解したが、それとは対照的に、ゼラチン基材はその温度に接近するときに溶融する傾向があった。グリセリンのみを21重量%で使用して作製したフィブリンプラスチックは硬質で半透明であった。
【0219】
実施例25
ECMベースプレスプラスチック製造
粉末膀胱細胞外マトリクス(UB ECM)を実施例16に記載するようにプラスチックペレットへとプレスした。詳細には、第1ペレットはグリセリンなしで作製して、102℃にて処理した。第2ペレットは21%グリセリンを用いて作製して、77℃にて処理した。第2ペレットは21%グリセリンを用いて作製して、100℃にて処理した。
【0220】
実施例26
成長因子包含および量子ドットによる分布視覚化
タンパク質粉末のプラスチックへの圧縮プレスのためのより低い温度(60℃)の使用は、初期圧縮プロセス中の成長因子および類似の生物製剤のプラスチック中への包含を可能にした。実験はBMP−2およびFGF−2の包含によって実行した。BMP−2および量子ドット(800nm発光、8μM)をそのタンパク質粉末への添加前に、グリセリンと事前混合した。対象として、タンパク質粉末およびグリセリン可塑剤のみを用いてプラスチックを形成した。追加のプラスチックは、量子ドットおよびBMP−2を用いて形成した(すなわち77℃で処理された、25%グリセロールを含むゼラチン、または78℃で処理された、36%グリセロールを含むフィブリン、または78℃で処理された、36%グリセロールを含む、B−ECM)。25%グリセロールを含むゼラチンは66℃にてプレスして、36%グリセロールを含むフィブリンは66℃にてプレスして、43%グリセロールを含むECMは76℃にてプレスした。
【0221】
量子ドット添加はプラスチック中の量子ドットの分布の視覚化を可能にして、プラスチック内での成長因子の分布を示すために使用された。図12は、蛍光下でモニタリングされた量子ドットを含むプラスチックの代表的なサンプルを示す。Aと表示されたサンプルは、量子ドットを含まない対照群であった。BおよびCと表示されたサンプルは量子ドットおよびBMP−2を含有し、Dと表示されたサンプルは、示されたプラスチックからのサンプルCによる断面ペレットシートであった。Eと表示されたサンプルは、ゼラチンプラスチックのカットフィルムの可視顕微鏡写真である。蛍光は、調査したすべての調合物および処理パラメータについてプラスチック全体で観察され、このことは量子ドットおよびBMP−2の均質な分布を示した。
【0222】
実施例27
インビボでの分解を監視するためのECMプラスチックへの量子ドットの包含
非侵襲性蛍光によってペレット分解を監視するために、フィブリン系プラスチックは実施例16に記載の方法に従って調製され、さらにカルボキシルコート(8.0μM)800nm量子ドットを含んでいた。量子ドットの添加は、たとえば患者に植え込まれているときには皮膚を通じて、プラスチックのインビボでの分解の非侵襲性監視を可能にする。プラスチックの分解は、植え込み部位の蛍光の消失によって評価する。インビトロでの結果は、実施例4に記載した方法と同様に実施されたニワトリCAMモデルにおける広範囲の血管新生の誘発によって証明されるように、プラスチック中に包含されたBMP−2の生物活性の保持を示した。図13は、3種類のタンパク質系プラスチックそれぞれでの血管新生の代表的な蛍光画像を示す。
【0223】
実施例28
ポロゲンとしてのアンモニウム化合物
各種のアンモニウム化合物は室温および大気圧にて固体であり、減圧にて気相への昇華を受けることが既知である。その上、これらのアンモニウム塩は当分野で生体適合性であることが既知である。市販の化合物はそれゆえ、その昇華能力について試験した。これらのデータに基づいて、ゼラチンプラスチックは実施例16に記載された方法に従って処理され、酢酸アンモニウムを含んでいた。酢酸アンモニウムは実施例16に記載したようにプラスチックマトリクスに物理的に包含させて、ペレットへ形成した。次にペレットを真空に暴露して酢酸アンモニウムを昇華させて、それによりプラスチックマトリクスに開放孔が残った。孔形成は、真空処理の間に残った質量のパーセントとして定量した、図14。アンモニウム塩微粒子の凍結乾燥は、ゼラチンプラスチック中の相互連結多孔性の広範囲にわたるネットワークの生成をもたらした。図15は、昇華後のゼラチンプラスチックの得られた微小孔性のSEM画像を示す。相互連結孔はただちに識別可能であり、プラスチックペレット全体に広がっている。酢酸アンモニウムは最も迅速な昇華および最も効率的な孔の形成を与えることがさらに発見された。
【0224】
実施例29
プラスチックの分解試験
プラスチック分解試験は、実施例16に記載した方法に従って処理した非架橋材料ならびにグルタルアルデヒドおよびゲニピンを用いた架橋によってさらに処理した同じプラスチックに対して実施した。分解試験は、3つの溶液中のゼラチン、フィブリン、およびECM系プラスチックペレットに対して実施した:PBSのみ(φ)、0.6%ゲニピンPBS溶液(GP)、および0.6%グルタルアルデヒドPBS溶液(GA)。溶液を調製して、溶液ごとに3本の15ml試験管、合計で9本の試験管に移した。サンプルを3つのセット、すなわちゼラチン{φ,GP,GA}、フィブリン{φ,GP,GA}、ECM{φ,GP,GA}に分けた。適切なプラスチックペレットを各皿に配置して、23℃にて21.5時間にわたって揺動して架橋させた。ゲニピン含有サンプルの3つすべてがわずか50分後にすべて青色に変化したことが観察された。21.5時間後、溶液をウェルから真空吸引して、サンプルをPBSで3回洗浄した。各プラスチックペレットは最初の面積および最初の質量を測定した。プラスチックサンプルを次に新しいウェルに移し、0.1%Naアジド、および1%ストレプトマイシン/ペニシリンを含有するDMEM−F12溶液に浸漬して、実験用フィルムで密封して、37℃および5% COにてインキュベートした。
【0225】
プラスチックペレットの面積は、測定値がmm×mmでただちに得られるようにミリメートル目盛りの付いた相互に垂直の定規を内側の端に配置して、定規をテープで固定することによって測定した。焦点が両方の軸のできるだけ多くを含むように、目盛りを顕微鏡レンズの下に配置した。目盛りを顕微鏡のステージに固定した。面積を測定しているときに、ペレットをできるだけ多く溶液中に残し、好ましくはウェル中に浸漬させた。このことは溶液による回折をすべての測定値で確実に一致させた。ペレットを、その端の2つが上記の軸と同一平面上になるように整列させた。必要ならばペレットを一軸移動させて側面を測定し、次に反対の端を別に測定した。試験の間に、ペレットを操作するための器具としてピペット先端を使用した。顕微鏡の対物レンズを通じてペレットおよび目盛りを参照して、ペレットのサイズを目に見える目盛りから読み取った。
【0226】
プラスチックペレットの質量は、適切な精度(少なくとも0.02mgの精度)の標準実験用天秤を使用して測定した。ペレットを溶液から取り出し、2回拭き取って過剰な溶液を除去した。質量を天秤で測定して、チップをただちにウェルに戻した。面積および質量測定の間に新しい培地溶液を各ウェルに添加して、同時にペレットをウェルから出した。
【0227】
測定値を24時間ごとに45日まで記録して、ペレットを密閉マルチウェル皿内で37℃および5% COにてインキュベートした。
【0228】
実施例30
外部架橋によるプラスチック分解試験
実施例28に記載されたプラスチック分解試験方法を実施した。図16、図17、および図18はこれらのデータをグラフで示す。非架橋ゼラチンプラスチックは面積(図16A)および質量(図16B)の両方によって測定されたように約6倍に膨潤し、その後、サンプルを迅速に溶解させて、インキュベーション開始の24時間後までに本質的に消えた。グルタルアルデヒド(GA)架橋またはゲニピン(GP)架橋のどちらかの架橋サンプルは約2倍に膨潤して、次に45日間の試験期間を通じて面積および質量の両方を維持した。グルタルアルデヒドおよびゲニピンは、同様の架橋化学的性質を有するが、ゲニピンははるかに低い生物毒性を有すると報告された植物系分子である。
【0229】
同様の分離実験は、非架橋および架橋サンプルの両方を使用して、フィブリンおよび膀胱ECM(UBECM)の両方にも実施した。架橋はゼラチンベースプラスチックでは上記のように実施した。非架橋フィブリンは、面積(図17)または質量(図18)手段のどちらかによって約140%まで膨潤し、これに対してGAまたはGP架橋フィブリンは著しい膨潤を示さなかった。架橋フィブリンサンプルでは、質量の約20%の損失が観察された。非架橋フィブリンサンプルは、面積に基づいて分解しなかったが、45日までに約50%の質量が失われた。架橋フィブリンサンプルでは、面積または質量のどちらにも著しい変化はなかった。非架橋UBECMは面積判定(図17)によって約200%まで、質量判定(図18)によって約180%まで膨潤した。GAまたはGPのどちらも架橋UBECMの膨潤は、面積および質量判定それぞれによって約150%および130%まで減少した。いったん膨潤が起こると、非架橋または架橋UBECMのどちらについても、45日の期間を通じて面積または質量のどちらも変化がなかった。非架橋フィブリンおよびUBECMは、非架橋ゼラチンよりもはるかに安定である。
【0230】
プラスチック形成中の架橋の誘発は、分解の制御を維持しながら膨潤を制御した。図16で観察されるように、事前に形成されたプラスチックの架橋中にゼラチンの著しい膨潤が発生した。ゼラチンプラスチックのペレット全体が架橋剤によって処理されたとき、ペレットのひび割れをもたらす膨潤が生じた。理論に縛られずに、これはおそらく架橋剤のペレット中への拡散速度によるものと思われた。架橋反応はペレットの外側からその中心に向かって発生するので、架橋剤のペレット中への拡散は制限された値となり、ペレット表面にゼラチンの架橋「剛性シェル」を生じさせた。膨潤は円板の内側で継続して、最終的にペレットをひび割れさせる十分な力を印加した。
【0231】
実施例31
内部架橋によるプラスチック分解試験
圧縮前のGPとタンパク質粉末との混合は圧縮されたプラスチック全体でのGPの均一分布を生じることが提唱された。理論に縛られることなく、いったん水溶液中に配置されると、GPは水がプラスチック中に迅速に拡散されるときに架橋を開始することが提唱された。この提唱を評価するために、圧縮前に粉砕ゼラチン粉末にGPを2%(重量/重量)混合した。GP−ゼラチン粉末には40%グリセリンを可塑剤として混合して、5000ポンドの圧力で圧縮した。圧縮の温度および圧力条件下での粉末中および/またはグリセロール中の微量の水が明らかに、圧縮中の架橋を引き起こした。サンプルは実施例29に記載されているように、インビトロでの血清分解条件下に置いた。質量および面積の変化を図19に示す。
【0232】
非架橋ゼラチンサンプルは、実施例30に示した実験と同様に膨潤した。しかしながら、外部架橋ゼラチンサンプルでの約200%の膨潤と比較して、内部架橋GPゼラチンによって膨潤は起こらなかった。外部架橋GPゼラチンサンプルと同様に、内部架橋GPゼラチンは分解しなかった。これは内部GP架橋タンパク質を使用した、分解の制御だけでなく、形状保持も可能にする著しい進歩を示す。
【0233】
実施例32
内部架橋によるプラスチック分解試験
実施例31でゼラチンについて記載した方法でフィブリン系プラスチックに内部GP架橋を適用した。図20は、質量の変化を示し、内部GP架橋フィブリンが時間と共に膨潤、分解せず、それがインプラントなどの生物医学用途に特に有用になることを証明した。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】図1Aは、生物活性材料、この場合は成長因子によってパターン化された薄型平面構造物を示す。図1Bは、円筒の軸に近づくにつれ、半径方向に上昇する成長因子の勾配でロッド形態へ巻かれた後の同じ平面構造物を示す。
【図2】本開示に従って作製された材料の管状構造物を鋳造するのに使用されうる管状鋳型を示す。
【図3】押し出し機に挿入または押し出し機内で形成され、次に、ハイドロゲルが下部の金型を通じて押し出し機から出るように、ピストンを下方に押込むことによって押し出される、ハイドロゲルを示す。
【図4】cy3標識骨形成タンパク質−2がインプリントされたフィブリンエラストマーを示す。細胞培養条件での7日後に、4つの濃度が示されている。
【図5】6枚のSEM画像を示し、3枚はフィブリンフィルム表面(図5A〜C)であり、3枚はフィブリンフィルムの断面(図5D〜F)である。フィルム表面はフィブリン原線維の存在を示し(図5A〜C)、それは断面画像で確認される(図5D)。断面も高密度のフィブリンを示す(図5E〜F)。
【図6】フィブリンフィルムのTEM画像を示す。画像中に明瞭なパターンがないのは、フィブリン原線維のフィルム内へのランダムな充填を証明している。
【図7】圧縮プレスでのゼラチンプラスチックペレット形成での20分間の操作サイクルの時間−圧力および時間−温度プロフィールを示す。時間に対する表示した圧力および温度データは、20分間のペレット圧縮システムの代表である。
【図8】圧縮プレスでのゼラチンプラスチックペレット形成での60分間の操作サイクルの時間−圧力および時間−温度プロフィールを示す。表示した時間に対する圧力および温度データは、60分間のペレット圧縮システムの代表である。
【図9】ゼラチンマトリクスからのポリ乳酸ポロゲンのクロロホルム浸出による、ゼラチンプラスチックのマトリクスに形成された孔のSEM画像を示す。
【図10】30倍の倍率(図10A)および60倍の倍率(図10B)での、グリセリン可塑剤を有する圧縮後ゼラチンプラスチックの機械加工表面のSEM画像を示す。
【図11A】33倍の倍率(図11A)、50倍の倍率(図11B)および100倍の倍率(図11C)での、グリセリン可塑剤を有さない圧縮後ゼラチンプラスチックの機械加工表面のSEM画像を示す。
【図11B】33倍の倍率(図11A)、50倍の倍率(図11B)および100倍の倍率(図11C)での、グリセリン可塑剤を有さない圧縮後ゼラチンプラスチックの機械加工表面のSEM画像を示す。
【図11C】33倍の倍率(図11A)、50倍の倍率(図11B)および100倍の倍率(図11C)での、グリセリン可塑剤を有さない圧縮後ゼラチンプラスチックの機械加工表面のSEM画像を示す。
【図12】蛍光下で見られる、量子ドットおよび骨形成タンパク質(BMP−2)を包含するプラスチックを示す。Aと示されたサンプルは、量子ドットを含まない対照群である。BおよびCと示されたサンプルは、量子ドットおよびBMP−2を含有する。Dと示されたサンプルは、Cと示されたプラスチックから切り取られた断面シートである。Eと示されたサンプルは、単に蛍光なしで描出された、Dで示したのと同じゼラチンサンプルである。
【図13】ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイでの、量子ドットおよびBMP−2を包含する3種類のタンパク質系プラスチックそれぞれの血管新生の代表的な蛍光画像を示す。
【図14】ゼラチンマトリクスに包含され、真空条件下での昇華を受けた、アンモニウム塩ポロゲンを含むゼラチンプラスチックの真空曝露中の時間依存性の残存した質量パーセントを示す。
【図15】酢酸アンモニウムがマトリクス中に包含され、真空下での昇華によって除去された、ゼラチンプラスチック中に形成された多孔性マトリクスのSEM画像である。昇華後のゼラチンプラスチックの得られた連続的で広範囲の微小孔性は、ただちに識別できる。
【図16】37℃の血清含有培地中でのゼラチンプラスチックサンプル上でのインビトロでの分解実験による結果を示すグラフのセットである。分解は、残存する面積平均パーセント(図16A)および質量平均パーセント(図16B)として定量された。サンプルは架橋されなかったか、あるいは0.6%グルタルアルデヒド(GA)または0.6%ゲニピン(GP)により架橋されたかのどちらかであった。記号は、3通りの決定での平均±SDを示す。
【図17】残存するサンプルの面積平均パーセントとして示される、37℃における血清含有培地中のフィブリンおよび膀胱ECM(UBECM)プラスチックサンプル上でのインビトロでの分解実験による結果を示すグラフである。サンプルは架橋されなかったか、あるいは0.6%グルタルアルデヒド(GA)または0.6%ゲニピン(GP)により架橋されたかのどちらかであった。記号は、3通りの決定での平均±SDを示す。
【図18】残存するサンプルの質量平均パーセントとして示される、37℃における血清含有培地中のフィブリンおよび膀胱ECM(UBECM)プラスチックサンプル上でのインビトロでの分解実験による結果を示すグラフである。サンプルは架橋されなかったか、あるいは0.6%グルタルアルデヒド(GA)または0.6%ゲニピン(GP)により架橋されたかのどちらかであった。記号は、3通りの決定での平均±SDを示す。
【図19】37℃の血清含有培地中のゼラチンプラスチックサンプル上でのインビトロでの分解実験による結果を示すグラフのセットであり、ゼラチンプラスチックはプラスチック形成中にゲニピン(2%w/w)で架橋された。図19Aのグラフは、残存するサンプルの面積平均パーセントを示し、図19Bのグラフは、残存するサンプルの質量平均パーセントを示す。記号は、3通りの決定での平均±SDを示す。
【図20】37℃の血清含有培地中のフィブリンプラスチックサンプル上でのインビトロでの分解実験による結果を示すグラフのセットであり、フィブリンプラスチックはプラスチック形成中にゲニピン(2%w/w)で架橋された。図20Aのグラフは、残存するサンプルの面積平均パーセントを示し、図20Bのグラフは、残存するサンプルの質量平均パーセントを示す。記号は、3通りの決定での平均±SDを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオポリマーを含む製造品であって、脱水されている製造品。
【請求項2】
前記バイオポリマーがタンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の製造品。
【請求項3】
前記製造品が真空によって脱水されている、請求項1に記載の製造品。
【請求項4】
前記製造品がフィルムを形成する、請求項3に記載の製造品。
【請求項5】
前記製造品が弾性である、請求項4に記載の製造品。
【請求項6】
前記製造品が柔軟である、請求項4に記載の製造品。
【請求項7】
前記製造品がジスルフィド結合を含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項8】
前記製造品がイソペプチド結合を含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項9】
前記製造品がモノアルデヒドまたはポリアルデヒド架橋アミンを含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項10】
前記製造品がピラン架橋アミンを含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項11】
前記製造品がイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、ジカルボン酸のNHSエステル、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびそれらの組合せから成る群より選択される架橋剤により架橋される、請求項3に記載の製造品。
【請求項12】
前記製造品が生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、および標識化合物から成る群より選択される化合物を含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項13】
前記トレーサが量子ドットである、請求項12に記載の製造品。
【請求項14】
前記生物学的応答調節物質が骨形成タンパク質である、請求項12に記載の製造品。
【請求項15】
生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、または標識化合物の群より選択される感熱性化合物が、前記フィルムの表面に被着される、請求項4に記載の製造品。
【請求項16】
生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、または標識化合物が、前記フィルムのポリマーマトリクス中に包含される、請求項4に記載の製造品。
【請求項17】
前記製造品が微粒子を含む、請求項4に記載の製造品。
【請求項18】
前記微粒子がヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、および硫酸カルシウムから成る群より選択される、請求項17に記載の製造品。
【請求項19】
前記製造品が充填剤を含む、請求項3に記載の製造品。
【請求項20】
前記製造品が積層構造物を形成する、請求項4に記載の製造品。
【請求項21】
前記積層構造物がシートの積み重ね、管状ロール、またはそれらの組合せから形成される、請求項20に記載の製造品。
【請求項22】
バイオポリマーを含む製造品であって、圧縮されている製造品。
【請求項23】
前記バイオポリマーがタンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項22に記載の製造品。
【請求項24】
製造品がポリマーマトリクスを形成するのに十分な圧力および温度および時間で圧縮される、請求項22に記載の製造品。
【請求項25】
前記製造品が押し出し金型、圧縮鋳型、または射出鋳型で形成される、請求項24に記載の製造品。
【請求項26】
前記製造品が充填剤を含む、請求項22に記載の製造品。
【請求項27】
前記製造品が可塑剤を含む、請求項22に記載の製造品。
【請求項28】
前記可塑剤がフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項27に記載の製造品。
【請求項29】
前記製造品がイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、ジカルボン酸のNHSエステル、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびそれらの組合せから成る群より選択される架橋剤により架橋される、請求項22に記載の製造品。
【請求項30】
前記製造品が孔を含む、請求項22に記載の製造品。
【請求項31】
前記製造品が生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、および標識化合物から成る群より選択される化合物を含む、請求項22に記載の製造品。
【請求項32】
ハイドロゲルを供給する工程と;
脱水フィルムを形成するための温度および時間でハイドロゲルを真空乾燥させる工程と;
を含む、ポリマーフィルムを製造する方法。
【請求項33】
前記温度が80℃未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記圧力が20ミリバール未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ハイドロゲルが、タンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびそれらの組合せから成る群より選択されるポリマーから形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ハイドロゲルが可塑剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記可塑剤がフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ハイドロゲルがイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、ジカルボン酸のNHSエステル、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびそれらの組合せから成る群より選択される架橋剤により架橋される、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記ハイドロゲルが生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびそれらの組合せから成る群より選択される化合物を含む、請求項32に記載の製造品。
【請求項40】
前記ハイドロゲルが充填剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
バイオポリマーに化合物を混合し、混合物を生成する工程と;
バイオポリマーマトリクスを形成する圧力および温度にて該混合物を圧縮する工程と;
を含む、プラスチックを製造する方法。
【請求項42】
前記温度が80℃未満である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記圧力が6000ポンド未満である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記混合物が押し出し金型、圧縮鋳型、または射出鋳型で形成される、請求項41に記載の製造品。
【請求項45】
前記バイオポリマーマトリクスが、タンパク質、ポリサッカライド、フィブリン、フィブリノゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、細胞外マトリクス構成要素、エラスチン、およびそれらの組合せから成る群より選択されるポリマーから形成される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記バイオポリマーが粉末である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記混合物を圧縮する前に該混合物に充填剤を添加する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記バイオポリマーマトリクスが可塑剤を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記可塑剤がフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記バイオポリマーマトリクスがイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、ジカルボン酸のNHSエステル、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびそれらの組合せから成る群より選択される架橋剤により架橋される、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物が生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
バイオポリマーにポロゲンを混合する工程と;
該ポロゲンを含むバイオポリマーマトリクスを形成する工程と;
該バイオポリマーマトリクスからポロゲンを除去する工程と;を含む、多孔性プラスチックを製造する方法。
【請求項53】
前記バイオポリマーマトリクスが、タンパク質、ポリサッカライド、フィブリン、フィブリノゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、細胞外マトリクス構成要素、エラスチン、およびそれらの組合せから成る群より選択されるポリマーから形成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記バイオポリマーマトリクスが充填剤を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記バイオポリマーマトリクスが可塑剤を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記可塑剤がフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、水、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、ポリマー可塑剤、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記バイオポリマーマトリクスがイリドイド誘導体、ゲニピン、ジイミデート、ジオン、ジカルボン酸のNHSエステル、カルボジイミド、アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、糖、リボース、第XIII因子、フルクトース、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2,5−ヘキサンジオン、ジメチルスベルイミデート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびそれらの組合せから成る群より選択される架橋剤により架橋される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記バイオポリマーマトリクスが生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびそれらの組合せから成る群より選択される化合物を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記ポロゲンが溶媒和ポロゲンである、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記ポロゲンが有機相に溶解性である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ポロゲンがポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリカプロラクトンから選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポロゲンが水相に溶解性である、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記ポロゲンが塩化ナトリウムである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ポロゲンが昇華ポロゲンである、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
前記ポロゲンが酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、およびトリフルオロ酢酸ピリジニウムから成る群より選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
溶媒により活性化させることができる固体架橋剤と混合された固体ポリマー粉末を提供し、混合物を形成する工程と;
該固体架橋剤を含む該混合物からポリマーマトリクスを形成する工程と;
を含む、ポリマーを架橋する方法。
【請求項67】
構造物に前記架橋剤を活性化する溶媒を接触させる工程をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記架橋剤がピラン部分を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記架橋剤がイリドイド誘導体である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記架橋剤がゲニピンである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリマーがバイオポリマーである、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
前記バイオポリマーがタンパク質、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、細胞外マトリクス構成要素、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記混合物が可塑剤を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記可塑剤がフタレート可塑剤、アジペート可塑剤、トリメリテート可塑剤、マレエート可塑剤、セバケート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、エポキシ化植物油、スルホンアミド可塑剤、ホスフェート可塑剤、ポリアルコール、グリコール、グリセリン、グリセロール、ポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、およびポリマー可塑剤から成る群より選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記混合物がポロゲンを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項76】
前記ポロゲンが溶媒和ポロゲンである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記ポロゲンが昇華ポロゲンである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記混合物が生物学的応答調節物質、抗原、薬物、ホルモン、トレーサ、RNA、DNA、標識化合物、およびそれらの組合せから成る群より選択される化合物をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項79】
前記混合物が充填剤を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項80】
水により活性化させることができる固体架橋剤と混合された、アミノ基を含有する固体ポリマー粉末を提供する工程と;
該混合物を架橋が起こるのに十分な時間インキュベートする工程と;
を含む、ポリマーを架橋する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−502364(P2009−502364A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524266(P2008−524266)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029754
【国際公開番号】WO2007/126411
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】