説明

生体適合性親水性組成物

脂肪族ポリエステル、アニオン性界面活性剤を含み、及びいくつかの実施形態ではキャリアも含む、持続性の親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年6月12日に出願された米国特許仮出願第61/061,088号の利益を請求するものであり、この仮出願は参考として本明細書に組み込まれる。
【0002】
熱可塑性ポリマーは、吹込及びキャスティングされたフィルム、押し出されたシート、フォーム、繊維、及びこれらから製造された製品、織布及び編織物、並びに不織布繊維性ウェブを含む、様々な製品を作るために広範に利用される。従来的に、これらの物品の多くが、ポリオレフィンなどの石油系熱可塑性物質から製造されてきた。
【0003】
これらの石油系ポリマーを、再生可能な資源に由来のポリマー、すなわち、植物系材料に由来するポリマーと置換することに対する関心が高まっている。理想的な再生可能な資源に由来のポリマーは、「二酸化炭素中立」であり、これは植物系材料を生成する際に消費される二酸化炭素が、製品が製造及び廃棄される際に生じる量と同じであることを意味する。生分解性物質は、堆肥化を導く条件に曝されたとき、分解されるのに適切な特性を有する。生分解性であると考えられる物質の例としては、脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ラクチドとグリコリドとのコポリマー、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリ(コハク酸ブチレン)、ポリヒドロキシブチレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0004】
脂肪族ポリエステルの分解は、加水分解、エステル交換、及び鎖の切断などを含む複数のメカニズムを通して生じる可能性がある。国際公開特許第94/07941号(Gruberら)に記載されているように、このようなポリマーの処理中の不安定性は、高温で生じ得る。
【0005】
マイクロファイバーなどの脂肪族ポリエステルの処理については、米国特許番号第6,645,618号に記載されている。米国特許番号第6,111,160号(Gruberら)は、溶融吹込及びスパンボンドプロセスを介して不織布物品を形成するための、溶融安定性ポリラクチドの使用を開示している。
【0006】
これらの製品で使用される多くの熱可塑性ポリマー、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、本質的に疎水性である。すなわち、織布、編み織物、又は不織布、例えば、スパンボンド布地として、これらは水を吸収しない。その疎水性特性が、その用途を制限するか、又はそれから製造される成形された物品の表面を改質するためにいくらかの労力を必要とする熱可塑性ポリマーの用途が多く存在する。例えば、ポリ乳酸は、おむつ、女性用ケア製品、及び個人用失禁製品(米国特許番号第5,910,368号)などの吸収性物品の構成に利用される、不織布ウェブの製造において使用されることが報告されている。これらの材料は、シリコーンコポリオール界面活性剤の処置後局所適用の使用によって、親水性にされた。このような界面活性剤は熱的に安定でなく、押出生成機内で分解してホルムアルデヒドを生じ得る。
【0007】
特許番号第7,623,339号は、脂肪酸モノグリセリドとエンハンサとの混合物を用いて抗菌性及び親水性にされるポリオレフィン樹脂を開示する。
【0008】
親水性表面を提供するためのコーティング方法は既知であるが、またいくつかの制限も有する。まず、コーティングの調製に必要とされる追加工程は、費用と時間がかかる。コーティングに使用される溶媒の多くは、引火性の液体であるか、又は曝露限度を有し、これは特別な製造設備を必要とする。界面活性剤の量もまた、コーティング溶媒中の界面活性剤の溶解度及びコーティングの厚さによって制限され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熱可塑性ポリマーの後処理は、少なくとも他の2つの理由のために望ましくない場合がある。まず、界面活性剤の塗布及び乾燥の追加の加工工程を必要とするために、これはより高価になり得る。次に、PHAは、ポリエステルであり、従って加水分解する傾向がある。PHAポリマーの、界面活性剤塗布溶液中に存在し得る水への曝露を制限することが望ましい。更に、濡れたウェブの、高温における後続の乾燥工程は、非常に望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、持続的な親水性、好ましくは生体適合性の組成物を製造するための組成物、物品及び方法を目的とする。本発明の組成物は、溶融加工可能であってよく、種々の食品安全、医学及び浄水用途における有用性を有する。
【0011】
代表的な脂肪族熱可塑性ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらのブレンド、及びこれらのコポリマーである。ブレンドは、芳香族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、例えば、参考として本明細書に組み込まれる米国特許番号第7,241,838号に記載のもの、セルロースエステル、セルロースエーテル、熱可塑性デンプン、エチレンビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールなどを含む、様々な他のポリマーを使用して製造され得る。脂肪族ポリエステルでない熱可塑性ポリマーを含むブレンドされた組成物では、脂肪族ポリエステルは、典型的には合計熱可塑性ポリマーの60重量%超、好ましくは合計熱可塑性ポリマーの70重量%超、及び最も好ましくは熱可塑性ポリマーの約75重量%超の濃度で存在する。
【0012】
本発明の物品は、上記組成物から製造される、成型ポリマー物品、ポリマーシート、ポリマー繊維、織布ウェブ、不織布ウェブ、多孔質膜、ポリマーフォーム、加えて、層状組成物、例えば、熱又は接着積層体、及びこれらの組み合わせを含む。本開示の有用な物品の例は、本発明の組成物を含むフィルム、フォーム、及び/又は織布、若しくは不織布から製造される創傷接触材料、並びに外科用ドレープ、又は外科用ガウン、加えて本発明の組成物から製造される個人用衛生物品、例えば、おむつ、女性用衛生パッドなどである。
【0013】
本開示の方法は、本明細書において記載される脂肪族熱可塑性ポリエステル及び界面活性剤を提供する工程と、これらの材料を十分に混合して生体適合性の、持続性の親水性組成物を生成する工程とを含む。
【0014】
1つの態様では、ポリマー組成物は、ポリマーを押出成形できるように、溶融加工可能である。
【0015】
別の態様では、ポリマーは溶媒に可溶性又は分散性であり、組成物は溶媒流延、溶剤紡糸されてフィルム、繊維、又はフォームを形成してもよい。
【0016】
脂肪族ポリエステル及び界面活性剤の溶融加工可能な組成物は持続性の親水性を呈する。場合によっては、界面活性剤は界面活性剤キャリア中に、又はこれと共に溶解され得る。界面活性剤キャリア及び/又は界面活性剤は、熱可塑性脂肪族ポリエステルのための可塑剤であり得る。可塑化脂肪族ポリエステルは、一般に、低溶融加工温度を有し、より可撓性のある生産材料を得ることができる。
【0017】
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0018】
「生分解性」という用語は、細菌、真菌及び藻類などの天然微生物の作用並びに/又は加水分解、エステル交換、紫外線若しくは可視光線(光分解性)及び酵素機構への曝露などの天然環境因子又はこれらの組み合わせにより分解可能であることを意味する。
【0019】
「生体適合性」という用語は、生体組織内で、毒性、有害性又は免疫応答を発生させないことにより、生物学的に適合性があることを意味する。生体適合性物質はまた、生化学的及び/又は加水分解プロセスにより分解し、生体組織に吸収され得る。用いる試験方法としては、組成物を、皮膚、創傷、並びに、食道又は尿道のような開口部に含まれる粘膜組織などの組織と接触させる用途のためのASTM F719、及び組成物を組織内に注入する用途のためのASTM F763が挙げられる。
【0020】
用語「持続性の親水性」とは、典型的には繊維、又は布地の形態にある組成物が、23℃で少なくとも30日、及び好ましくは23℃で少なくとも40日経ったときに、吸水性を維持することを意味する。
【0021】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5)が含まれる。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、二つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0023】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている量又は成分、及び性質の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本発明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の性質に応じて変化する場合がある近似値である。最低限でも、及び、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、少なくとも各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、そして通常の四捨五入方法を適用することによって解釈されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリ乳酸)などの脂肪族ポリエステル熱可塑性樹脂に、安定的な持続性の親水性を付与するために、ポリエチレングリコールなどの界面活性剤キャリアと任意に混合された、溶解添加剤アニオン性界面活性剤(melt additive anionic surfactants)の使用を開示する。本発明は、外科手術で使用される、親水性吸収性ポリ乳酸不織布/フィルム積層体ドレープ、加えてパーソナルケア吸収材、例えば、女性用衛生パッド、おむつ、失禁パッドなどを製造するために特に有用である。
【0025】
親水性の有無は、様々な方法で測定され得る。例えば、疎水性であるか、又はその親水性を喪失した多孔質不織布ウェブと水が接触する際、水はウェブを通じて流れず、又は望ましくないほど緩慢に流れる。重要なことに、本発明の繊維及びウェブは安定的な親水性(吸水性)を呈する。すなわち、これらは、ポリ/Tyvekパウチなどの、清浄であるが多孔質のエンクロージャ内で、23℃以下で30日超、及び好ましくは40日超エージングさせた後にも親水性を維持する。
【0026】
本発明の好ましい材料は水で湿り、したがって72ダイン/cm(純水の表面張力)超の見掛けの表面エネルギーを有する。本発明の最も好ましい材料は瞬間的に水を吸収し、5℃、23℃、及び45℃で10日間エージングさせた後に、吸水性を維持する。本発明のより好ましい材料は瞬間的に水を吸収し、5℃、23℃、及び45℃で20日間エージングさせた後に、吸水性を維持する。本発明の更により好ましい材料は瞬間的に水を吸収し、5℃、23℃、及び45℃で30日間エージングさせた後に、吸水性を維持する。
【0027】
最も好ましい組成物は、実施例に記載される方法に従って試験した際に、45℃で10日間超、より好ましくは30日間超、及び最も好ましくは40日間超経過した後に親水性(吸水性)を維持する。好ましい布地は、瞬間的に湿潤可能であり、吸収性であり、かつ非常に高い初速度で水を吸収することができる。
【0028】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなど、及びアルキル、アルカリール、アルケニル、若しくはアラルキルスルフェート;アルキル、アルカリール、アルケニル、若しくはアラルキルスルホネート;アルキル、アルカリール、アルケニル、若しくはアラルキルカルボキシレート;又は、アルキル、アルカリール、アルケニル、又はアラルキルホスフェート界面活性剤の群から選択される1つ以上の界面活性剤を含む、持続性の親水性熱可塑性組成物を提供する。組成物は、任意により、加工を補助する、及び/又は親水性特性を向上させ得る界面活性剤キャリアを含み得る。界面活性剤及び任意の界面活性剤キャリアのブレンドが、繊維の表面に持続性の親水性を付与するために十分な量で溶融押出繊維中に存在する。
【0029】
好ましくは、界面活性剤は、使用される濃度で、押出成形温度において、キャリアに溶解可能である。例えば、押出成形温度(例えば、150℃〜190℃)まで加熱された際に、1cmの通路長さのガラスバイアル瓶中で、界面活性剤及びキャリアが視覚的に透明な溶液を形成することから溶解度が評価され得る。好ましくは、界面活性剤は、150℃においてキャリア中に溶解可能である。より好ましくは、界面活性剤は、100℃未満においてキャリアに溶解可能であり、その結果これは、より容易にポリマー溶解物中に組み込むことができる。より好ましくは、界面活性剤は、25℃でキャリアに溶解可能であり、そのため溶液をポリマー溶解物中にポンプ移送する際に加熱が不要である。
【0030】
好ましくは、界面活性剤は、過剰にキャリアが存在しなくても(これは熱可塑性樹脂を可塑化させ得る)界面活性剤の追加が可能であるように、キャリアに、10重量%超、より好ましくは20重量%超、及び最も好ましくは30重量%超、溶解可能である。典型的には、界面活性剤は、組成物の合計重量に基づき、少なくとも0.25重量%、好ましくは、少なくとも0.50重量%、より好ましくは少なくとも0.75重量%の合計量で存在する。高度に親水性のウェブ、又は複数回にわたる水性流体との接触に耐え得るウェブが所望されるいくつかの実施形態では、界面活性剤組成物が、分解性脂肪族ポリエステルポリマー組成物の2重量%超、3重量%超、又は更に5重量%超を構成する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は典型的には、分解性脂肪族ポリエステルポリマー組成物の0.25重量%〜8重量%で存在する。
【0031】
界面活性剤及び任意のキャリアは、押出成形を促進し、脂肪族ポリエステルの加水分解を防ぐために、比較的水を含まないものであるべきである。好ましくは界面活性剤及び任意のキャリア(単独、又は混合)は、カールフィッシャー滴定によって決定した際に、5重量%未満の水、より好ましくは2重量%未満の水、更により好ましくは1重量%未満の水、及び最も好ましくは0.5重量%未満の水を含む。
【0032】
別の態様では、本発明は持続性の親水性フィルム、並びに上記繊維から構成される持続性の親水性布地及びウェブを提供する。本発明はまた、医療用ドレープ、創傷ドレッシング、医療用ガウン、エプロン、濾材、工業用拭き取り用品、並びにパーソナルケア及びホームケア用品、例えば、おむつ、顔用ティッシュ、顔用拭き取り用品、ウェットタオル、ドライタオル、使い捨て吸収性物品、及び衣類、例えば、幼児用おむつ、又はトレーニングパンツ、成人用失禁製品、女性用衛生製品、例えば、生理用ナプキン、及びパンティライナーなどを含む、持続性親水性布地及びウェブから製造される有用な物品を提供する。本発明はまた、透明脂肪族ポリエステルを使用する際に有用な曇り止めフィルムを提供する。これらの曇り止めフィルムは保護めがねなどとして、食品包装において使用され得る。
【0033】
更に別の態様では、本発明は、水性媒体不透過性裏張りシートを含む、多層水性液体吸収性物品を提供する。例えば、重要なことに、いくつかの外科用ドレープは、トップシート内に吸収されている液体がこれを通じて皮膚の表面に伝わり、そこで皮膚上に存在するバクテリアによって汚染されることを防止するために液体不透過性である。他の実施形態では、構造体は、例えば使い捨ておむつ、拭き取り用品若しくはタオル、生理用ナプキン及び失禁パッドを構成するのに有用な、上記のウェブ又はその間に並置された布地から作製された水性媒体透過性トップシート及び水性液体吸収性(すなわち、親水性)層を更に含んでもよい。
【0034】
本発明の組成物は、「比較的均質」である。すなわち、組成物は、良く混合して溶融押出成形することによって生成することができ、押出成形時に、全体の濃度が比較的均質になる。しかしながら、時間と共に、及び/又は熱処理により界面活性剤が移動して、ある点、例えば繊維表面において濃度がより高くなるか、又はより低くなり得ることが認識される。
【0035】
別の態様では、熱可塑性フィルム形成脂肪族ポリエステルの混合、又はブレンドからの持続性の親水性繊維を調製する方法、及び少なくとも1つの界面活性剤が提供される。ブレンドの溶解物が、例えば、押出成形、又は鋳造によって加工、又は成形され、繊維内に溶解、又は分散し、繊維表面に存在してその表面を持続性の親水性にする界面活性剤を有する繊維を生成する。いくつかの界面活性剤は感熱性を示すため、押出成形機内の加工温度は、好ましくは約300℃未満、より好ましくは約250℃未満、及び更に好ましくは200℃未満に維持され、界面活性剤は特定の加工技術によってもたらされるこのような温度に曝露される。持続性の親水性は、繊維仕上げ後作業、例えば、追加的な界面活性剤の適用を必要とせずに達成されるが、これは、繊維が押し出される際に持続性の親水性である一方で、押出成形の後にウェブを加熱することが、界面活性剤で表面を被服し親水性の向上させる助けとなり得るためである。これは熱可塑性樹脂のガラス転移温度の温度以上で行われ、典型的には120℃未満、及び更に100℃未満である。
【0036】
本明細書において記載される、繊維組成物への親水性の付与は、少なくとも1つの溶解添加剤界面活性剤を使用して行われる。好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキル、アルケニル、アルカリール、若しくはアラルキルスルフェート、アルキル、アルケニル、アルカリール、若しくはアラルキルスルホネート、アルキル、アルケニル、アルカリール、若しくはアラルキルホスフェート、アルキル、アルケニル、アルカリール、若しくはアラルキルカルボキシレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル及びアルケニル基は、直鎖、又は分枝鎖であり得る。これらの界面活性剤は、当該技術分野において既知であるように改質され得る。例えば、本明細書で使用する際、「アルキルカルボキシレート」はアルキル基及びカルボキシレート基を有する界面活性剤であるが、これはまた、例えば、架橋部分、例えば、ポリアルキレンオキシド基を含んでもよく、例えば、イソデセス−7カルボキン酸ナトリウム塩は、10個の炭素(C10)アルキル基、7モルのエチレンオキシド、及び末端がカルボキシレートである分枝鎖、を有する、アルキルカルボキシレートである。
【0037】
本発明の界面活性剤は、濃縮(マスターバッチ)組成物内の樹脂と従来的に混合することができ、これは次に、ホッパー、又は実質的に均一な混合物になるようにブレンドが達成される限りにおいては押出成形機に沿ったいずれか別の場所で、未加工の熱可塑性ポリマーと混合することができる。あるいは、界面活性剤は、例えば、容積移送式ポンプ、又は減量フィーダーを使用して、(事前混合させることなく)押出成形機中に直接加えてもよい。これは、界面活性剤がポリアルキレンオキシド、又はポリオールなどの界面活性剤キャリア中に溶解、又は分散する場合に、最も便利に行われる。
【0038】
一定の種類の炭化水素、シリコーン、及びフッ素化物界面活性剤は、それぞれポリオレフィンに親水性を付与するために有用であるものとして記載されている。これらの界面活性剤は典型的には熱可塑性樹脂と、2つの方法(1)局所的適用、例えば、界面活性剤を、水溶液から、押し出された不織布ウェブ、若しくは繊維へと噴霧、若しくはパディング、若しくはフォーミングし、続いて乾燥させること、又は(2)ウェブの押出成形の前に界面活性剤をポリオレフィン溶解物中に組み込むことの一方により、接触する。後者の方法が遥かに好ましいが、繊維、又はフィルムの表面を、物品を親水性にするのに十分な量で自然に被覆する界面活性剤を見出すことは困難である。上述のように、界面活性剤の局所的適用によって親水性にしたウェブは、多くの欠点を被る。一部のものはまた、水性媒体との一度の接触の後に親水性が低減したことが報告されている。親水性を付与するための界面活性剤の局所的適用の追加的な不利益としては、界面活性剤自体による皮膚の炎症、不均一な表面、及びバルク親水性、並びに界面活性剤の適用における追加的な加工工程の必要性から生じる追加的な費用が挙げられる。1つ以上の界面活性剤を溶解添加剤として熱可塑性ポリマーに組み込むことは、局所適用に伴う問題を緩和し、加えてこれが組み込まれる布地、又は不織布により柔軟な「手触り」を提供し得る。上述の問題は、物品の表面を十分な量で確実に被覆して親水性を付与し、次に表面において適切に位置し続けて持続性の親水性を確実にする界面活性剤を見出すことである。
【0039】
本明細書において記載される繊維は、水との度重なる接触(水で満たされ、脱水され、乾燥する)の後にも親水性及び吸水性を維持する。本発明の好ましい組成物は、少なくとも1つの脂肪族ポリエステル樹脂(好ましくはポリ乳酸)、少なくとも1つのアルキルスルフェート、アルキレンスルフェート、又はアラルキル、若しくはアルカリールスルフェート、カルボキシレート、又はホスフェート界面活性剤を、典型的には0.25重量%〜8重量%の量で、かつ任意により1重量%〜8重量%の濃度の不揮発性キャリアを含む、比較的均質な組成物を含み、以下でより詳細に記載される。
【0040】
編み織物、織布及び不織布として生成される、本発明の好ましい多孔質布地構成体は、実施例に開示される見掛けの表面エネルギー試験によって試験した際に、60ダイン/cm超、及び好ましくは70ダイン/cm超の見掛けの表面エネルギーを有する。水で湿った、本発明の好ましい多孔質布地材料はしたがって、72ダイン/cm(純水の表面張力)超の見掛けの表面エネルギーを有する。本発明の最も好ましい材料は瞬間的に水を吸収し、5℃、23℃、及び45℃で10日間エージングさせた後に、吸水性を維持する。「瞬間的な」吸収とは、布地上に静かに配置された25μLの水滴が、布地の表面上に分離した液滴を形成せず、細孔内に吸収されることを意味する。
【0041】
本発明の好ましいフィルム構成体は、水性流体によって湿潤可能であり、米国特許番号第5,268,733号に半角技術として記載されるTantec接触角計器(Shaumburg,IL)を使用して測定した際に、脱イオン水と40°未満、好ましくは30°未満、及び最も好ましくは20°未満の接触角を有する。
【0042】
本発明はまた、アニオン性界面活性剤及び任意に界面活性剤キャリアを含む、比較的均質な親水性脂肪族ポリエステル組成物を、これらを溶融加工においてブレンドし、フィルム、繊維、又はフォームを形成することによって製造する方法を開示する。
【0043】
本発明はまた、アニオン性界面活性剤及び任意に界面活性剤キャリアを含む、比較的均質な親水性脂肪族ポリエステル組成物を、これらをブレンドして濃縮物を形成し、溶融加工において濃縮物と追加的な脂肪族ポリエステルをブレンドし、フィルム、繊維、又はフォームを形成することによって製造する方法を開示する。
【0044】
本発明はまた、アニオン性界面活性剤及び任意に界面活性剤キャリアを含む、比較的均質な親水性脂肪族ポリエステル組成物を、これらを溶融加工においてブレンドし、フィルム、繊維、又はフォームを形成し、フィルム、繊維、又はフォームを50℃超の温度まで後加熱することによって製造する方法を開示する。
【0045】
本発明はまた、アニオン性界面活性剤及び任意に界面活性剤キャリアを含む、比較的均質な親水性脂肪族ポリエステル組成物を、これらをブレンドして濃縮物を形成し、溶融加工において濃縮物と追加的な脂肪族ポリエステルをブレンドし、フィルム、繊維、又はフォームを形成し、フィルム、繊維、又はフォームを50℃超の温度まで後加熱することによって製造する方法を開示する。
【0046】
ポリエステル類
本発明で有用な脂肪族ポリエステルには、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のホモ及びコポリマー、並びに、1つ以上のポリオールと1つ以上のポリカルボン酸との反応生成物から誘導されるこれらの脂肪族ポリエステルのホモ及びコポリマーが挙げられ、これらは典型的には、1つ以上のアルカンジオールと1つ以上のアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から形成される。ポリエステルは、更に、分枝鎖、星型及びグラフトホモ及びコポリマーを形成するために、多官能性ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール及びこれらの組み合わせから誘導してもよい。ポリヒドロキシアルカノエートは一般的に、ヒドロキシ酸モノマー単位、又はその誘導体から形成される。これらには例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。脂肪族ポリエステルと1つ以上の追加の半結晶質又は非晶質ポリマーとの混和性及び不混和性ブレンドを使用してもよい。
【0047】
脂肪族ポリエステルの有用な1つのクラスは、ヒドロキシ酸の縮合若しくは開環重合によって誘導されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)又はその誘導体である。好適なポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、下式により表すことができる:
H(O−R−C(O)−)OH
式中、Rは、所望によりカテナリー(炭素鎖内で炭素原子に結合している)酸素原子に置換されている、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり;nはエステルがポリマーであるような数であり、好ましくは、脂肪族ポリエステルの分子量が少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるような数である。高分子量ポリマーは、一般に、溶融加工されたポリマー及び溶媒流延ポリマーの両方で、より良好な機械的特性を有するフィルム及び繊維を生じるが、過剰な粘度は典型的には望ましくない。多くの実施形態において界面活性剤キャリア及び/又は界面活性剤成分が、ポリエステル成分を可塑化し、高分子量ポリマーの溶融加工及び溶媒流延を可能にすることは、本発明の重要な利点である。それゆえに、脂肪族ポリエステルの分子量は、典型的には1,000,000ダルトン未満、好ましくは500,000ダルトン未満、最も好ましくは300,000ダルトン未満である。Rは、1つ以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでもよい。一般に、ヒドロキシ酸のR基は、ペンダントヒドロキシル基が一級又は二級ヒドロキシル基であるようなものである。
【0048】
有用なポリ(ヒドロキシアルカノエート)としては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)(ポリラクチドとして知られる)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(4−ヒドロペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びポリグリコール酸(すなわち、ポリグリコリド)のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。上記ヒドロキシ酸の2つ以上のコポリマー、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクテート−コ−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(グリコリド−コ−p−ジオキサノン)及びポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を用いてもよい。また、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の2つ以上のブレンド、並びに1つ以上の半結晶質又は非晶質ポリマー及び/又はコポリマーとのブレンドも使用することができる。
【0049】
脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のブロックコポリマーであってよい。本発明の組成物で有用な脂肪族ポリエステルとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、星型分枝ランダムコポリマー、星型分枝ブロックコポリマー、樹状コポリマー、超分枝コポリマー、グラフトコポリマー及びこれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0050】
脂肪族ポリエステル類の別の有用な分類には、1つ以上のアルカンジオール類と1つ以上のアルカンジカルボン酸類(若しくはアシル誘導体類)との反応生成物に由来する脂肪族ポリエステル類が包含される。かかるポリエステル類は、次の一般式を有する:
【0051】
【化1】

【0052】
式中、R’及びR”はそれぞれ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり;mは、エステルがポリマーであるような数であり、脂肪族ポリエステルの分子量が好ましくは少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるが、1,000,000ダルトン未満、好ましくは500,000ダルトン未満、最も好ましくは300,000ダルトン未満であるような数である。nはそれぞれ独立して0又は1である。R’及びR”は、1個以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでよい。
【0053】
脂肪族ポリエステルの例としては、(a)以下の二塩基酸(又はその誘導体):コハク酸、アジピン酸、1,12ジカルボキシドデカン、フマル酸、グルタル酸(glutartic acid)、ジグリコール酸、及びマレイン酸のうち1つ以上と(b)以下のジオール:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、5〜12個の炭素原子を有する1,2アルカンジオール、ジエチレングリコール、300ダルトン〜10,000ダルトン、好ましくは400ダルトン〜8,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール、300ダルトン〜4000ダルトンの分子量を有するプロピレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシドから誘導されるブロック、又はランダムコポリマー、ジプロピレングリコール、及びポリプロピレングリコールのうち1つ以上と(c)所望により、少量、つまり0.5〜7.0モル%の、グリセロール、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールのような2個を超える官能基を有するポリオール、から誘導されるホモ及びコポリマーが挙げられる。
【0054】
このようなポリマーとしては、ポリブチレンスクシネートホモポリマー、ポリブチレンアジペートホモポリマー、ポリブチレンアジペート−スクシネートコポリマー、ポリエチレンスクシネート−アジペートコポリマー、ポリエチレングリコールスクシネートホモポリマー、及びポリエチレンアジペートホモポリマーが挙げられる。
【0055】
市販の脂肪族ポリエステルには、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ブチレンスクシネート)及びポリ(ブチレンアジペート)が挙げられる。
【0056】
有用な脂肪族ポリエステルには、半結晶質ポリ乳酸から誘導されるものが挙げられる。ポリ(乳酸)すなわちポリラクチドは、その主要分解産物として乳酸を有しており、これは、一般に自然界に見られ、非毒性であり、食品、製薬、及び医療業界で広く使用されている。ポリマーは、乳酸二量体であるラクチドの開環重合によって調製され得る。乳酸は、光学的に活性であり、二量体には4種類の異なった形態:L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)及びL,L−ラクチドとD,D−ラクチドとのラセミ混合物が存在する。純粋化合物又はブレンドとしてこれらのラクチドを重合することによって、異なる立体化学及び異なる物理的特性(結晶化度を含む)を有するポリ(ラクチド)ポリマーを得ることができる。L,L又はD,D−ラクチドからは半結晶質ポリ(ラクチド)が生じるが、D,L−ラクチドから誘導されるポリ(ラクチド)は非晶質である。
【0057】
ポリラクチドは、好ましくは、ポリマーの固有結晶化度を最大にする高いエナンチオマー比を有する。ポリ(乳酸)の結晶化度の程度は、ポリマー主鎖の規則性及び他のポリマー鎖と結晶化する能力に基づく。比較的少量の1つの鏡像異性体(D−など)が反対の鏡像異性体(L−など)と共重合する場合、ポリマー鎖は、不規則な形状となり、結晶化度が低下する。これらの理由から、結晶化が好ましいとき、結晶化度を最大にするために、少なくとも85%が1つの異性体、少なくとも90%が1つの異性体、又は少なくとも95%が1つの異性体であるポリ(乳酸)を有することが望ましい。
【0058】
D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとの、およそ等モルのブレンドもまた有用である。このブレンドは、D−ポリラクチド及びL−ポリラクチドのいずれもが単独で有する融点(〜190℃)よりも高い融点(〜210℃)を有する独特の結晶構造を形成し、改善された熱的安定性を有する。H.Tsujiら、Polymer,40(1999)6699〜6708を参照。
【0059】
また、ポリ(乳酸)と他の脂肪族ポリエステルとの、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーを使用してもよい。有用なコモノマーには、グリコリド、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、及びα−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0060】
また、ポリ(乳酸)と、1つ以上の他の脂肪族ポリエステル、又は1つ以上の他のポリマーとのブレンドを使用してもよい。有用なブレンドの例には、ポリ(乳酸)及びポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリスクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトン並びにポリグリコリドが挙げられる。
【0061】
ポリ(ラクチド)は、米国特許番号第6,111,060号(Gruberら)、同第5,997,568号(Liu)、同第4,744,365号(Kaplanら)、同第5,475,063号(Kaplanら)、同第6,143,863号(Gruberら)、同第6,093,792号(Grossら)、同第6,075,118号(Wangら)、同第5,952,433号(Wangら)、国際公開特許第98/24951号(Tsaisら)、同第00/12606号(Tsaisら)、同第84/04311号(Lin)、米国特許番号第6,117,928号(Hiltunenら)、同第5,883,199号(McCarthyら)、国際公開特許第99/50345号(Kolstadら)、同第99/06456号(Wangら)、同第94/07949号(Gruberら)、同第96/22330号(Randallら)、及び同第98/50611号(Ryanら)に記載されているようにして調製されてよく、各開示は、参考として本明細書に組み込まれる。J.W.Leenslag,et al.,J.Appl.Polymer Science,vol.29(1984),pp 2829〜2842及びH.R.Kricheldorf,Chemosphere,vol.43,(2001)49〜54もまた参照される。
【0062】
ポリマーの分子量は、ポリマーが溶融体又は溶媒からの流延体のように加工され得るように選択すべきである。ポリラクチドについては、例えば、分子量は、約10,000〜1,000,000ダルトンであり得、好ましくは約30,000〜300,000ダルトンである。「溶融加工可能」とは、脂肪族ポリエステルが、流体であるか、又は、物品(例えば、フィルム)を加工するのに用いられる温度でポンプ移送することができ、若しくは押し出すことができ、その温度で物理的特性が目的とする用途には使用できない程乏しくなるまでは分解しない若しくはゲル化しないことを意味する。したがって、本発明に記載される物質の多くから、押出成形、流延、及び熱加圧などによりフィルムを製造することができる。それらから、スパンボンド、ブローンマイクロファイバー、及び溶融紡糸などのような溶融加工を用いて不織布を製造することができる。特定の実施形態はまた、射出成形することもできる。一般に、ポリマーの重量平均分子量(M)は、数平均分子量(M)に対する粘度の対数−対数プロットにより決定するとき、絡み合い分子量を上回る。絡み合い分子量より大きいと、プロットの勾配は約3.4であるが、より低分子量のポリマーの勾配は1である。
【0063】
組成物の脂肪族ポリエステル成分は、持続性の親水性組成物の合計重量に基づき、典型的には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、及び最も好ましくは少なくとも75重量%で含まれる。
【0064】
界面活性剤
本発明の組成物は、表面の湿潤を助け、及び/又は微生物と接触して死滅させるのを補助するために、1つ以上の界面活性剤を含む。本明細書で使用するとき、「界面活性剤」という用語は、水の表面張力及び/又は水と不混和性液体との間の界面張力を減少させることが可能な両親媒性物質(共有結合している極性及び無極性領域の両方を有する分子)を意味する。この用語は、石鹸、洗剤、乳化剤、及び界面活性剤などを含むことを意味する。
【0065】
生分解性が重要である用途では、生分解性界面活性剤を組み込むことが望ましい場合があり、これは典型的に、加水分解的に又は酵素的に切断され得るエステル及び/又はアミド基を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の組成物において有用な界面活性剤は、アルキル、アルケニル、アルカリール及びアラルキルスルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤である。アルキルアルコキシル化カルボキシレート、アルキルアルコキシル化スルフェート、アルキルアルコキシル化スルホネート、及びアルキルアルコキシル化ホスフェート、並びにこれらの混合物がこれらの分類に含まれる。好ましいアルコキシレートは、疎水性物質1モル当たり、0〜100モルのエチレン及びプロピレンオキシドを有する、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを使用して製造される。いくつかのより好ましい実施形態では、本発明の組成物において有用な界面活性剤は、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、カルボキシレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一態様では、界面活性剤は、(C8〜C22)アルキルスルフェート塩(例えば、ナトリウム塩)、ジ(C8〜C13アルキル)スルホスクシネート塩、C8〜C22アルキルサルコシネート塩、C8〜C22アルキルラクチレート塩、及びこれらの組み合わせから選択される。様々な界面活性剤の組み合わせもまた使用され得る。
【0066】
本発明において有用なアニオン性界面活性剤は、以下でより詳細に記載され、以下の構造を有する界面活性剤を含む。
【0067】
R−(O)SO及びR−CO
式中、
R=C8〜C30のアルキル、若しくはアルキレン(分枝鎖又は直鎖)、又はC12〜C30のアラルキルであり、任意により0〜100アルキレンオキシド基、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド基、乳酸オリゴマー、及び/若しくはグリコール酸、又はこれらの組み合わせと置換され得る。
【0068】
X=は0又は1である。
【0069】
M=アルカリ金属塩、好ましくは、Li+、K+、若しくはNa+、又は三級、及び四級アミンを含むアミン塩である。
【0070】
例としては、C8〜C18アルカンスルホネート、C8〜C18二級アルカンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、例えば、ドデシルベンゼンスルホネート、C8〜C18アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、例えば、トリデセスナトリウム−4スルフェート、ラウレスナトリウム4スルフェート、ラウレスナトリウム8スルフェート(例えば、Stepan Company,Northfield ILから入手可能であるものなど)、ジオクチルスルホスクシネートとしても既知のドクサートナトリウム、ナトリウム塩、ラウロイルラクチレート(lauroyl lacylate)、及びステアロイルラクチレート(例えば、PATIONICという商標名のRITA Corporation,Crystal Lake,Ilなど)などが挙げられる。
【0071】
以下の構造を有する界面活性剤がまた有用であり得る。
【0072】
(R−O)P(O)O、又はR−OP(O)(O
式中の、R及びMは上記に定義される通りである。例としては、ステアリルホスフェート(Specialty Industrial Products,Inc.,Spartanburg,SCからSippostat 0018として入手可能)、Cetheth−10 PPG−5ホスフェート(Croda USA,Edison NJから入手可能なCrodaphos SG)、ラウレス−4ホスフェート、及びジラウレス−4ホスフェートが挙げられる。
【0073】
代表的なアニオン性界面活性剤としては、サルコシネート、グルタメート、アルキルスルフェート、アルキルエーテル硫酸ナトリウム(sodium alkyleth sulfates)又はカリウム、アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス−n−硫酸アンモニウム、ラウレス−n−硫酸、イセチオネート、グリセリルエーテルスルホネート、スルホスクシネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェート、アルキルホスホネート及びアラルキルホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアニオン性界面活性剤は、金属又は有機アンモニウム対イオンを有し得る。いくつかの有用なアニオン性界面活性剤は、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンエーテルスルフェート、アルキルスルホアセテート、二級アルカンスルホネート、及び二級アルキルスルフェートなどのようなスルホネート及びスルフェートからなる群から選択される。これらの多くは、下式により表すことができる:
26−(OCHCHn6(OCH(CH)CHp2−(Ph)−(OCHCHm3−(O)−SO
及び、
26−CH[SO−M]−R27
式中、a及びb=0又は1であり、n6、p2、及びm3=0〜100(好ましくは0〜20)であり、R26は下記に定義の通りであるが、ただしR26又はR27の少なくとも1つは、少なくともC8であり、R27は(C1〜C12)アルキル基(飽和直鎖、分枝鎖又は環状基)であり、所望により、N、O若しくはS原子又はヒドロキシル、カルボキシル、アミド若しくはアミン基によって置換されていてよく、Ph=フェニルであり、Mは、H、Na、K、Li、アンモニウム又は、トリエタノールアミン若しくは第四級アンモニウム基などのプロトン化第三級アミンのようなカチオン性対イオンである。
【0074】
上記式中、エチレンオキシド基(即ち、「n6」及び「m3」基)及びプロピレンオキシド基(即ち、「p2」基)は、逆の順番並びに無作為、順次又はブロック配列で生じる場合がある。R26は、R28−C(O)N(CH)CHCH−並びに−OC(O)−CH−のようなエステル基(式中、R28は(C8〜C22)アルキル基(分枝鎖、直鎖又は環状基)である)のようなアルキルアミド基であってよい。例としては、ラウリルエーテルスルフェート(例えば、Stepan Company,Northfield,ILから入手可能なPOLYSTEP B12(n=3〜4であり、M=ナトリウムである)及びB22(n=12であり、M=アンモニウムである)、並びに、メチルタウリン酸ナトリウム(Nikko Chemicals Co.,Tokyo,Japanから商品名NIKKOL CMT30として入手可能)などのようなアルキルエーテルスルホネート;ナトリウム(C14〜C17)二級アルカンスルホネート(α−オレフィンスルホネート)(例えば、Clariant Corp.,Charlotte,NCから入手可能なHostapur SAS)を含む二級アルカンスルホネート;メチル−2−スルホアルキルエステル、例えば、メチル−2−スルホ(C12〜C16)エステルナトリウム及び2−スルホ(C12〜C16)脂肪酸二ナトリウム(Stepan Company,Northfield,ILから商品名ALPHASTEP PC−48で入手可能);ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名LANTHANOL LAL,Stepan Company,Northfield,ILから)及びラウレススルホコハク酸二ナトリウム(STEPANMILD SL3,Stepan Company,Northfield,ILから)として入手可能なアルキルスルホアセテート及びアルキルスルホスクシネート;アルキルスルフェート、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan Company,Northfield,ILから商標名STEPANOL AMとして入手可能);ジアルキルスルホスクシネート、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(Cytec Industries,Woodland Park,NJからAerosol OTとして入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
好適なアニオン性界面活性剤としてはまた、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アラルキルホスフェート及びアラルキルエーテルホスフェートのようなホスフェートが挙げられる。多くは、下式により表すことができる:
[R26−(Ph)−O(CHCHO)n6(CHCH(CH)O)p2q2−P(O)[O
により表すことができ、式中、Ph、R26、a、n6、p2、及びMは、上記に定義され、rは0〜2であり、q2=1〜3であるが、ただし、q2=1のとき、r=2であり、q2=2のとき、r=1であり、q2=3のとき、r=0である。上記のように、エチレンオキシド基(即ち、「n6」基)及びプロピレンオキシド基(即ち、「p2」基)は、逆の順番並びに無作為、順次、又はブロック配列で生じる場合がある。例としては、一般にトリラウレス−4−ホスフェートと称される、モノ−、ジ−及びトリ−(アルキルテトラグリコールエーテル)−o−リン酸エステルの混合物(Clariant Corp.から商品名HOSTAPHAT 340KLとして入手可能)、加えてPPG−5セテス10ホスフェート(Croda Inc.,Parsipanny,NJから商品名CRODAPHOS SGとして入手可能)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
1つ以上の界面活性剤を、所望の結果を生じるために好適な濃度で、本明細書に記載の組成物中及び/又は上に使用してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中で使用するとき、それらは、組成物の合計重量を基準として、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも2.0重量%の合計量で存在する。高度に親水性のウェブ、又は複数回にわたる水性流体との接触に耐え得るウェブが所望されるいくつかの実施形態では、界面活性剤組成物が、分解性脂肪族ポリエステルポリマー組成物の2重量%超、3重量%超、又は更に5重量%超を構成する。
【0077】
他の実施形態では、界面活性剤は、すぐに使用できる状態の組成物の合計重量を基準として、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下又は8重量%以下の合計量で存在する。
【0078】
好ましい界面活性剤は、200℃未満、好ましくは190℃未満、より好ましくは180℃未満、及び更に好ましくは170℃未満の融点を有する。
【0079】
溶融加工の場合、好ましい界面活性剤は揮発性が低く、加工条件下で有意に分解しない。好ましい界面活性剤は、10重量%未満の水、好ましくは5重量%未満の水、及びより好ましくは2重量%未満の水、及び更により好ましくは1重量%未満の水を含有する(カールフィッシャー分析により測定される)。湿分含量は、組成物中の脂肪族ポリエステル、又は他の加水分解に反応しやすい化合物の加水分解を防ぐために低く維持され、これは、押し出されたフィルム、又は繊維に透明性を提供することを助ける。
【0080】
不揮発性キャリアに事前に溶解させた界面活性剤を使用することが特に便利であることが見出された。重要なことに、キャリアは典型的には熱的に安定であり、150℃、180℃、200℃、更に250℃もの高さであり得る加工温度において化学分解に抵抗することができる。好ましい実施形態では、界面活性剤のキャリアは、23℃において液体である。好ましいキャリアとしては、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー、熱的に安定な多価アルコール、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。ポリアルキレンオキシドは、開始ポリオールによって直鎖、又は分枝鎖であり得る。例えば、エチレングリコールを使用して開始されるポリエチレングリコールは直鎖になるが、グリセリン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールで開始されるものは、分枝鎖になる。
【0081】
好ましいキャリアにはまた、多価アルコールの低分子量エステル、例えば、トリアセチン、グリセリルカプリレート/カプレート、アセチルトリブチルシトレートなどが挙げられる。
【0082】
可溶液体キャリアはまた、別の方法として不揮発性有機溶媒から選択されてもよい。本発明の目的のために、有機溶媒は、混合及び溶解プロセス全体を通じて溶媒の80%超が組成物中に留まる場合、不揮発性であるとみなされる。これらの液体が溶融加工可能な組成物中に留まるため、これらは可塑剤として機能し、一般的に組成物のガラス転移温度を低下させる。
【0083】
キャリアは、実質的に不揮発性であるため、大部分が組成物中に留まり、有機可塑剤として機能し得る。本明細書において使用する際、可塑剤とは、ポリマー組成物に加えられた際にガラス転移温度の低下を生じる、1000ダルトン未満の分子量を有する化合物である。可能な界面活性剤キャリアとしては、1つ以上のヒドロキシル基を含有する化合物、特にグリコール、例えばグリセリン;1,2ペンタンジオール;2,4ジエチル−1,5ペンタンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール;加えて単官能性化合物、例えば3−メトキシ−メチルブタノール(「MMB」)が挙げられる。不揮発性有機可塑剤の追加的な例としては、ポリエトキシ化フェノールを含むポリエーテル、例えばPycal 94(フェノキシポリエチレングリコール);アルキル、アリール、及びアラルキルエーテルグリコール(例えばDow Chemical Company,Midland Michによって商品名Dowanol(商標)として市販されているもの、(プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol DPnB)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPH)プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol PM)が挙げられるがこれらに限定されない);ポリエトキシ化アルキルフェノール、例えばTriton X35及びTrion X102(Dow Chemical Company,Midland Michから入手可能);一置換若しくは多置換ポリエチレングリコール、例えばPEG 400ジエチルヘキサノエート(CP Hall Companyから入手可能なTegMer 809)、PEG 400モノラウレート(CP Hall Companyから入手可能なCHP−30N)、及びPEG 400モノオレエート(CP Hall Companyから入手可能なCPH−41N);高級アルキル置換N−アルキルピロリドンを含むアミド、例えばN−オクチルピロリドン;N−ブチルベンゼンスルホンアミド(CP Hall Companyから入手可能)などのスルホンアミド;トリグリセリド;クエン酸エステル;酒石酸のエステル;安息香酸エステル(商品名BenzoflexとしてVelsicol Chemical Corp.,Rosemont Illから入手可能なものなど)(ジプロピレングリコールジベンゾエート(Benzoflex 50)、及びジエチレングリコールジベンゾエートを含む);2,2,4トリメチル1,3ペンタンジオールの安息香酸ジエステル(Benzoflex 354)、エチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエートなど;10,000ダルトン未満、好ましくは約5000ダルトン未満、より好ましくは約2500ダルトン未満の分子量を有する、ポリエチレングリコール及びエチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用する際、用語ポリエチレングリコールは、エチレンオキシド、又は2−ハロエタノールと反応した26のアルコール基を有するグリコールを指す。
【0084】
好ましいポリエチレングリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、スクロースなどから形成される。最も好ましいポリエチレングリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンから形成される。ポリアルキレングリコール、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はC2 C4アルキレンオキシド基のランダム、若しくはブロックコポリマーがまた、キャリアとして選択され得る。ポリエチレングリコール及びその誘導体がここでは好ましい。キャリアがポリマーと相溶性を有することが重要である。例えば、酸性官能基を有するポリマーとブレンドされた際に、2個未満の求核基、例えば、ヒドロキシル基を有する、不揮発性、非重合性可塑剤を使用することがここでは好ましいが、これは2つを超える求核基を有する化合物は、高い押出成形温度において押出成形機内の組成物の架橋を生じ得るためである。重要なことに、不揮発性キャリアは、好ましくは、押出成形機内において、脂肪族ポリエステルポリマー組成物を有する比較的均質な溶液を形成し、冷却の際に比較的均質な状態に留まり、その結果押し出された組成物は、界面活性剤の濃度において比較的均一である。
【0085】
任意成分
他の任意の成分が、本明細書において所望されるように、組成物内に含まれ得る。
【0086】
組成物に抗菌作用を付与するために、抗菌成分が加えられてもよい。抗菌成分は、少なくとも部分的な抗菌作用を提供する組成物の成分であり、すなわち、これは少なくとも1つの微生物に対して少なくともいくらかの抗菌作用を有する。それは、好ましくは、組成物から浸出し、細菌を死滅させるのに十分多い量で存在する。それはまた、生分解性であってもよく、及び/又は、植物若しくは植物生成物のような再生可能な資源から製造されてもよく若しくは誘導されてもよい。生分解性抗菌成分は、加水分解的に又は酵素的に分解することができるエステル又はアミド結合のような、少なくとも1個の官能性結合を含んでよい。
【0087】
本発明における使用に好適な抗菌成分の例としては、出願人の同時係属出願、米国特許出願公開番号第2008−0142023(A1)号に記載されるものが挙げられ、これは参照としてその全体を本明細書に組み込まれる。
【0088】
特定の抗菌成分は非荷電であり、少なくとも7個の炭素原子を含有するアルキル又はアルケニル炭化水素鎖を有する。溶融加工の場合、好ましい抗菌成分は揮発性が低く、加工条件下で分解しない。好ましい抗菌成分は、2重量%未満、より好ましくは0.10重量%未満の水を含有する(カール・フィッシャー分析により測定)。含水量は、脂肪族ポリエステルの加水分解を防ぎ、押出成形フィルムに透明性を付与するために、低く維持される。水分レベルは、例えば50℃〜60℃を超える高温で乾燥させた溶媒流延フィルムと同様に制御すべきである。
【0089】
使用するとき、抗菌成分含量は(すぐ使用できる状態で)、典型的には、少なくとも1重量%、2重量%、5重量%、10重量%であり、場合により15重量%を超える。特定の実施形態、低強度が望ましい用途においては、抗菌成分は組成物の20重量%超、25重量%超、又は更には30重量%超を構成する。
【0090】
特定の抗菌成分は両親媒性物質であり、界面活性であり得る。例えば、いくつかの抗菌アルキルモノグリセリドは界面活性である。抗菌成分を含む本発明のいくつかの実施形態では、抗菌成分は界面活性成分とは異なるものであると認識される。
【0091】
組成物は更に有機及び無機充填剤を含んでもよい。移植可能な用途の場合、生分解性、吸収性又は生体内分解性の無機充填剤が特に魅力的である場合がある。これらの物質は、ポリマー組成物の分解速度の制御を補助することができる。例えば、多くのカルシウム塩及びリン酸塩が好適であり得る。代表的な生体適合性、吸収性充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸カルシウムカリウム、リン酸四カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸カルシウムアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、フッ化カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。特に好適な充填剤は、三塩基性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)である。
【0092】
可塑剤は、脂肪族ポリエステル熱可塑性樹脂と共に使用されてもよく、例えば、グリコール、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエトキシレート化フェノール、モノ、又は多置換ポリエチレングリコール、高級アルキル置換N−アルキルピロリドン、スルホンアミド、トリグリセリド、シトレートエステル、酒石酸のエステル、ベンゾエートエステル、ポリエチレングリコール、並びに10,000ダルトン未満、好ましくは約5000ダルトン未満、より好ましくは約2500ダルトン未満の分子量を有するエチレンオキシドプロピレンオキシドランダム、及びブロックコポリマー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。上述のように、界面活性剤キャリアはまた、可塑剤として機能することもでき、任意成分として加えられる可塑剤とは異なるものであり得る。
【0093】
他の追加的な成分としては、酸化防止剤、着色剤、例えば、染料、及び/又は色素、静電気防止剤、蛍光増白剤、悪臭抑制剤、香料、及び芳香剤、創傷治癒、又は他の皮膚活性を促進するための活性成分、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0094】
用途及び製造方法
本発明の組成物を含む物品は、ポリマー樹脂からポリマーシートなどの製品を製造するために、当該技術分野において既知である方法により製造してもよい。多くの用途では、このような物品は、2時間浸漬し、乾燥させた後、物理的一体性(例えば、引っ張り強度)が実質的に低下することなく、23℃で水中に定置することができる。典型的には、これらの物品は水をほとんど含まず、又は全く含まない。押出成形、射出成形又は溶媒流延後、物品中の水分含量は、典型的には、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.2重量%未満である。ポリマーシートは、押出成形プロセスにより、本明細書に記載される樹脂組成物から形成され得、例えば、医療用ドレープ及び衣類、個人ケア用品、並びに食品包装などの用途において有用な親水性ポリマーシートを生じる。
【0095】
本組成物から製造され得る物品としては、外科用ドレープ、手技用ドレープ、プラスチック特殊ドレープ、切開用ドレープ、バリアドレープ、バリアガウン、SMSガウンなどといった医療用ドレープ及びガウン、創傷ドレッシング、創傷吸収体、及び創傷接触層、手術中に血液及び体液を吸収するのに使用する外科用スポンジ、外科用インプラント、加えて、管状押出成形製品、例えば、血管カテーテル、尿カテーテル、気管内チューブ、シャント、創傷ドレイン、及び他の医療用装置を挙げることができる。
【0096】
重要なことに、本明細書に記載される組成物の好ましい親水性添加剤界面活性剤は、布地、及びそれにより製造されるフィルムの、接着剤による、熱による、及び/又は超音波による結合を可能にする。物品は、溶媒、熱、又は超音波で共に溶接され、加えて他の適合する物品に溶接される。組成物は、他の物質と併用して、鞘/芯物質、積層体、2つ以上の物質の化合物構造、又は種々の医療用装置上へのコーティングに有用な構成体を形成することができる。
【0097】
本明細書に記載の組成物は、その独自の湿潤特性により、手術用ドレープ及びガウンに使用するのに特に好適である。例えば、ポリ乳酸/界面活性剤組成物は、本明細書において所望される持続性の親水性を有する。本発明の組成物を含む不織布ウェブ及びシートは、良好な引っ張り強度を有し、ヒートシールされて特殊なドレープの製作を可能にする強固な結合を形成することができ、使い捨て製品において重要であり得る再生可能な資源から製造することができ、不織布の場合に高い表面エネルギー(不織布に関しての見掛けの表面エネルギー試験と水の吸収とを使用して測定される)を有して湿潤性及び流体吸収性を可能にすることができ、米国特許番号第5,268,733号に記載の半角技術及びTantec接触角計器、モデルCAM−micro(Schamberg,IL.)を用いて、平坦なフィルム上で蒸留水を用いて接触角を測定したとき、フィルムの接触角が多くの場合50°未満、好ましくは30°未満、最も好ましくは20°未満である。フィルム以外の物質の接触角を測定するために、正確に同じ組成のフィルムを溶媒流延により製造すべきである。
【0098】
このような不織布、フィルム、及び管状材料は、ガンマ線、又は電子ビームにより、物理的強度を有意に損なうことなく殺菌することができるものと考えられる。物理的強度の大きさは、厚さ0.03mm(1ミル)のフィルムのついては、コバルトガンマ線源からの2.5Mradのガンマ線に曝露し、23℃〜25℃で7日間エージングした後、20%超、及び好ましくは10%超低下しないような引っ張り強度であり得る。
【0099】
本発明の組成物の親水性特性は、吸収性を改善することにより、創傷用及び外科用ドレッシングなどの物品を改善し得る。本組成物を創傷包帯裏材フィルムで用いる場合、フィルムは、感圧性接着剤(PSA)、例えば、アクリル及びブロックコポリマー接着剤、ヒドロゲル接着剤、ヒドロコロイド接着剤及び発泡接着剤などが挙げられるが、これらに限定されない、様々な接着剤で部分的に(例えば、領域又はパターン)コーティングするか、又は完全にコーティングしてもよい。
【0100】
PSAは、水分の蒸発を可能にするために比較的高い湿気透過速度を有することができる。好適な感圧性接着剤としては、アクリレート系のもの、ポリウレタン、KRATON、及び他のブロックコポリマー、シリコーン、ゴム系接着剤、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。好ましいPSAは、皮膚に適用される医療用接着剤であり、例えば、参考として本明細書に組み込まれる米国再発行特許第24,906号に記載されるアクリレートコポリマー、特に、97:3イソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマーである。また好ましくは、参考として本明細書に組み込まれる米国特許番号第4,737,410号(実施例31)に記載されているような70:15:15イソオクチルアクリレート−エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーである。他の有用な接着剤は、その開示が参考として本明細書に組み込まれる米国特許番号第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。米国特許番号第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されているように、薬剤又は抗菌剤が接着剤に包含されることも想到される。
【0101】
本発明の組成物から、全体的に又は部分的に製造することができる他の医療用装置としては、縫合糸、縫合締結具、手術用メッシュ、三角布、整形外科用ピン(骨充填物増強材料を含む)、接着バリア、ステント、誘導組織修復/再生装置、関節軟骨修復装置、神経ガイド、腱修復装置、心房中隔欠損修復装置、心膜パッチ、増量剤及び充填剤、静脈弁、骨髄骨格、半月板再生装置、靱帯及び腱移植、眼球細胞移植片、脊椎固定ケージ、皮膚代替物、硬膜代替物、骨移植片代替物、骨ドエル(dowel)及び止血鉗子が挙げられる。
【0102】
本発明の組成物は、消費者衛生製品、例えば、成人用失禁製品、幼児用おむつ、女性用衛生製品、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる、出願人の同時係属出願、米国特許出願公開番号第2008−0200890(A1)に記載されるその他のもの、においても有用であり得る。
【0103】
本発明の組成物を製造する1つの方法では、溶融形態の脂肪族ポリエステルを、界面活性剤に対して十分な量で混合し、本明細書において記載される親水性特性を有するポリマー組成物を生じさせる。
【0104】
ポリマー組成物を溶融加工するための様々な装置及び技術が、当該技術分野において既知である。このような装置及び技術は、例えば、米国特許第3,565,985号(Schrenkら)、同第5,427,842号(Blandら)、同第5,589,122号、及び同第5,599,602号(Leonard)、並びに同第5,660,922号(Henidgeら)に開示されている。溶融加工装置の例としては、本発明の組成物を溶融加工するための押出成形機(単軸及び二軸)、バンバリーミキサー、及びブラベンダー押出成形機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
組成物の成分を、押出成形機内で混合し、押出成形機を通して運搬し、好ましくは溶解物中でポリマー分解又は副反応の生じない、ポリマー組成物を得ることができる。可能性のある分解反応には、エステル交換、加水分解、鎖の切断及びラジカル鎖分解が挙げられ、加工条件はこのような反応を最低限に抑えるべきである。加工温度は、脂肪族ポリエステルと界面活性剤を混合し、フィルムとして組成物を押出成形することを可能にするのに十分である。本明細書に記載される組成物で製造されるフィルムは、例えば、透明(曇りのない)であり、表面上に油性残留物がない(ポリマーマトリクスからの成分の相分離を示す可能性がある)といった、食品包装のような用途に望ましい特性を有する。
【0106】
組成物は、フィルムへと溶媒流延され得る。本組成物の成分は、典型的には溶解し又は少なくとも部分的に溶媒和し、好適な溶媒に完全に混合され、この溶媒は続いて表面上で流延して蒸発させられ、親水性の持続性樹脂組成物を含む固体を残す。
【0107】
以下の実施例によって、本発明は更に明確にされるが、これらの実施例は代表的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0108】
試験方法
見掛けの表面エネルギー
表面エネルギーを測定する方法は、以下に記載した変更を用いたAATCC試験法118−1983である。この変更試験法により測定した表面エネルギーは、以後「見掛け」表面エネルギーと呼ぶ。AATCC試験法118−1983は、一連の選択された炭化水素組成物による濡れに対する布地の耐性を評価することにより、布地の表面エネルギーを決定する。しかしながら、AATCC 118−1983で説明されている炭化水素類は、25℃で約19.8ダイン〜27.3ダイン/センチメートルの表面エネルギーの測定値を提供するにすぎない。この範囲は、布地耐性試験にメタノールと水の様々な混合物を使用することにより広げられる。組成物とその代表的な表面張力は、以下の通りである。
【0109】
【表1】

【0110】
試験手順は次の通りである。被覆材料の見本が、平滑で水平な表面上に平坦に定置される。AATCC 118−1983の方法を使用するが、ただし最も番号の小さい試験液で開始し、5滴の液体を、布地表面上、樹脂を浸透させたシートに面する側の、様々な位置に定置する。5滴のうち3滴が、60秒以内に布地に吸い上げられたら、次に高い表面エネルギーの液体が使用される。少なくとも3滴が布地表面上に残った場合、見掛け表面張力は、残りの2つの液体の範囲のものとして記録される。
【実施例】
【0111】
【表2】

【0112】
実施例C1〜C3、1、及び2
表1に掲載される組成物は、実験的なスパンボンド製造ラインで押し出された。スパンボンド不織布は一般的に、米国特許番号第6,916,752号に記載されるスパンボンド不織布のための装置及び加工技術を使用して製造された。
【0113】
不織布スパンボンドPLAサンプルは、異なる濃度の界面活性剤で製造された。いかなる界面活性剤をも有さない不織布スパンボンドPLAサンプルもまた使用された。これは、異なるサンプルの湿潤性、エージング安定性、及び一般的な機械的特性を評価し、比較する目的で行われた。
【0114】
最初の工程は、湿潤剤をより高い濃度のマスターバッチに混合することであった。これは、標準的なペレット化ダイを適合させた、25mm Berstorff UTX2軸押出機を使用して行われた。ストランドは、3.7m(12フィート)の水浴を通じ、ペレット化プラーに移された。
【0115】
4つのマスターバッチが製造された:1)95%PLA 6202D及び5% PEG 400
2)95% PLA 6202D及び5% PEG/DOSS
3)90% PLA 6202D及び10% Brij700
4)90% PLA 6202D及び10% Pationic 138C
PLAがK−tron Feederを使用して供給された。他の添加剤は全てグリッドメルター(grid melter)を使用して供給され、領域4に供給された。供給速度は以下の通りである。
【0116】
【表3】

【0117】
領域温度は以下の通りである。
【0118】
【表4】

【0119】
ストランドが水浴及びペレタイザーを通過した後、これらは、余分な水を逃すために底部に穴を有する18.9L(5ガロン)のペール缶ライナー内に回収された。ライナーは、18.9L(5ガロン)ペール缶内に配置し、低部から約4インチ高くした。一度サンプルが、「ドリップドライ」されると、バッチは多数の蒸発皿に分配し、バッチオーブン内で65℃で12〜24時間にわたって結晶化させた。
【0120】
マスターバッチ及び未加工のPLAを、再循環乾燥器内で、60℃で、最短6時間にわたって乾燥させた。ウェブは、60g/sq/mで製造した。融点は約190〜210℃であった。Pationic 138Cでマスターバッチ4を作製した際、劇的な粘度の低下が生じ、よって温度を160℃に落とさなくてはならなかった。ウェブは、ウェブを軽く結合するために、90〜100℃の温度で、スクリーンサポート上で、スルーエア接合機を通過させた。
【0121】
スパンボンド不織布の実施例が、純粋な6202 DPLAとブレンドされた上記のマスターバッチを使用して調製された。全ての材料は使用に先立って乾燥させた。スパンボンド不織布は、50mm(2.0インチ)の単軸スクリュー押出成形機を使用した、Davis−Standard BLUE RIBBON(DS−20(登録商標))押出成形機(Davis Standard Corporation,Pawcatuck,CT)を使用し、多数のダイ開口部を含む押出ヘッドにポンプを通じて供給して、得られた。
【0122】
ダイヘッドは、合計512個のオリフィス孔を有し、脂肪族ポリエステルポリマー溶融押出量は0.50g/孔/分(15.35kg/hr)であった。ダイは、200mm(7.875インチ)の横方向長さを有した。孔直径は0.040インチ(0.889mm)であり、L/D比は6であった。純粋なPLAの、ダイでの溶融押出成形温度は215℃で一定であったが、界面活性剤添加剤を有するPLAの溶融押出成形温度は、添加剤の種類及び量に依存した。対照(純水な脂肪族ポリエステル、PLA)と同様のウェブを製造するために、温度が調節された。ウェブ形成及び結合プロセスの典型的な記載は、米国特許番号第2008/0038976(A1)により例示され、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
【表5】

【0124】
結果は、未加工のPLA(比較例2)は親水性であり、見掛けの表面エネルギーは、室温(23〜25℃)及び周囲湿度におけるエージングを通じて36ダイン/cmであることを示している。PEG 400(MP<23℃)、又は界面活性剤Brij 700(MP=51〜54℃)の追加は、親水性を改善しなかった(各比較例1及び3)。アニオン性界面活性剤ドクサートナトリウム(DOSS,MP=153〜157℃)及びラウロイルラクチレート(Pationic 138C,MP=50〜55℃)(実施例1及び2)は、親水性の劇的な改善を生じ、これは時間が経っても安定であった。使用するDOSSは、PEG 400キャリアに溶解させ(50% PEG400/50% DOSS溶液、MP<23℃)、透明な溶液を形成したが、これは加工を単純化し、優れた親水性に寄与した可能性がある。
【0125】
実施例C4〜C5、及び3〜5
Brabender Hot Melt Mixer Model No.DR−2051を使用して、PLA 4032でサンプルを調製した。Brabenderは200℃に設定し、その温度に到達させた。パドル速度は0.70に設定した。PLA 4032を天秤上で事前に秤量し、Brabenderに加えた。完成した混合物の合計質量は、60gであった。PLA 4032をBrabender内で、均一な溶融混合物が製造されるまで混合し、同時に特定の質量の添加剤を少しずつ加えた。混合時間は典型的には10〜20分であった。Braebenderチャンバは、使用するごとにUnipurgeパージ樹脂(Dow Chemical,Midland,MI)でパージした。
【0126】
溶融混合物をBrabenderから引き出し、液圧プレスを使用して加圧し、均一なシートにした。サンプルは、195℃の温度、かつ9071.8kg(20,000lbs)の圧力で60秒にわたり、2つのライナーの間で加圧した。ライナーはシリコーンでコーティングしたクラフト紙剥離ライナーであった。フィルムは、50〜125マイクロメートル厚さであった。
【0127】
様々な界面活性剤を有するPLA 4032の配合物が、接触角測定値と共に、以下で表2に示される。
【0128】
【表6】

【0129】
未加工のPLAは、比較的疎水性であった。Montanov 202の追加は親水性フィルムを生じなかった。加熱後も接触角は依然として50℃を超えていた。Pationic(アルキルカルボキシレート)は、高度に親水性のフィルムを生じ、72℃への加熱によって結果は変化しなかった。2つのスルホネート界面活性剤は異なる挙動を示した。イセチオネート界面活性剤は、最初に比較的疎水性であるフィルムを生じたが、加熱後に接触角は37℃に低下した。C14〜C17アルキルスルホネート(Hostapur SAS)は、親水性フィルムを生成したが、72℃での24時間にわたるエージングは、接触角を29℃に増加させた。本発明の組成物は、気体を透過させた際に防曇性を示した。
【0130】
実施例6〜8
以下のサンプルは、上記の実施例C4〜C5、及び実施例3〜5に記載される手順に従って製造及び試験された。
【0131】
【表7】

【0132】
これらの結果は、アルコキシル化ホスフェート界面活性剤、Crodaphos SGが、親水性を有意に改善したことを示す。比較すると、Citroflex可塑剤を有し、界面活性剤を有さないPLAの接触角は、依然として非常に疎水性であり、60℃を超える接触角を有した(データは示されない)。酸性型のCrodaphos SGの追加(実施例6)は、接触角を27°未満に低減させた。より多くのCrodaphos SG(実施例7)の追加は、接触角を更に低減し、トリエタノールアミンとの中和はホスフェート塩を生成して接触角をより更に低減した(実施例8)
特定の代表的な実施形態及び詳細を、本発明を説明する目的で論じてきたが、以下の特許請求の範囲に示される、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明で種々の修正を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
200℃未満の融点を有する1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤とを含む、持続性の親水性組成物であって、
前記界面活性剤が前記ポリエステルに組み込まれる、持続性の親水性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤とのブレンドを含む、持続性の親水性組成物であって、
前記界面活性剤が前記ポリエステルに組み込まれ、前記組成物が45℃で10日超経過後にも親水性を維持する、持続性の親水性組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤とのブレンドを含む、持続性の親水性組成物であって、
前記組成物が、45℃で10日超経過後にも親水性を維持する、持続性の親水性組成物。
【請求項4】
界面活性剤キャリアを更に含む、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性脂肪族ポリエステルが、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリブチレンスクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらのブレンド、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1、2、3、又は4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性脂肪族ポリエステルとは異なる熱可塑性ポリマーを更に含む、請求項1、2、3、又は4に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性脂肪族ポリエステルが、前記組成物中に存在する前記熱可塑性ポリマーの60重量%を超える量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アニオン性界面活性剤が、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルカリール、及びアラルキルスルホネート;アルキル、アルケニル、アルカリール、及びアラルキルスルフェート;アルキル、アルケニル、アルカリール、及びアラルキルホスホネート;アルキル、アルケニル、アルカリール、及びアラルキルホスフェート;アルキル、アルケニル、アルカリール、及びアラルキルカルボキシレート;アルキルアルコキシル化カルボキシレート;アルキルアルコキシル化スルフェート;アルキルアルコキシル化スルホネート;アルキルアルコキシル化ホスフェート、並びにこれらの組み合わせかななる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アニオン性界面活性剤が、(C〜C22)アルキルスルフェート塩、ジ(C〜C18)スルホスクシネート塩、C〜C22アルキルサルコシネート塩、C〜C22アルキルラクチレート塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アニオン性界面活性剤が、前記組成物の8重量%以下の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アニオン性界面活性剤が、前記組成物の1重量%超の量で存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤キャリアが、23℃で液体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アニオン性界面活性剤が、190℃未満の融点を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記アニオン性界面活性剤が、180℃未満の融点を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アニオン性界面活性剤が、170℃未満の融点を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤キャリアが、ポリアルキレングリコール、多価アルコール、グリセリントリグリセリド(glycerin triglcyerides)、クエン酸エステル、脂肪族ジエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記アニオン性界面活性剤が、5重量%未満の水を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤キャリアが、5重量%未満の水を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記アニオン性界面活性剤とは異なり、かつ前記界面活性剤キャリアとも異なる可塑剤を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記脂肪族ポリエステルが半結晶性である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記アニオン性界面活性剤が、前記脂肪族ポリエステルの3重量%超の量で存在する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
抗菌性成分を更に含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記抗菌性成分が、前記脂肪族ポリエステルの20重量%超の量で存在する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が生体適合性である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が溶融加工可能である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
成形ポリマー物品、ポリマーシート、ポリマー繊維、織布ウェブ、不織布ウェブ、多孔質膜、ポリマーフォーム、加えて層状組成物、例えば、熱積層体又は接着積層体、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項27】
前記不織布が、スパンボンドウェブ、ブローンマイクロファイバーウェブ、又は水流交絡ウェブからなる群から選択される、請求項16に記載の物品。
【請求項28】
請求項1、2、3、又は4に記載の組成物を含む外科用ドレープ。
【請求項29】
請求項1、2、3、又は4に記載の組成物を含む外科用ガウン。
【請求項30】
請求項1、2、3、又は4に記載の組成物を含む創傷接触材料。
【請求項31】
請求項1、2、3、又は4に記載の組成物を含むおむつ、又は女性用衛生パッドなどの個人衛生物品。
【請求項32】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルを提供する工程と、
200℃未満の融点を有する1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤を提供する工程と、
溶融形態の前記脂肪族ポリエステルを、前記界面活性剤とブレンドする工程とを含む、持続性の親水性組成物の製造方法。
【請求項33】
界面活性剤キャリアを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アニオン性界面活性剤とブレンドした前記脂肪族ポリエステルを押し出す工程を更に含む、請求項32、又は33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記脂肪族ポリエステルと前記アニオン性界面活性剤とをブレンドする工程が、前記脂肪族ポリエステル及び前記アニオン性界面活性剤を押し出す工程を含む、請求項32、33、又は34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
追加的な脂肪族ポリエステルを加える後続の工程を更に含む、請求項32、33、34、又は35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
押し出された組成物を後加熱する工程を更に含む、請求項32、33、34、又は35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルを提供する工程であって、当該ポリマーが溶媒に可溶性又は分散性である工程と、
1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤を提供する工程と、
任意により界面活性剤キャリアを提供する工程と、
前記脂肪族ポリエステルに前記界面活性剤、及び任意に前記界面活性剤キャリアを組み込む工程と、
前記組成物をフィルム又はフォームに溶媒流延する工程とを含む、持続性の親水性組成物の製造方法。
【請求項39】
少なくとも1つの熱可塑性脂肪族ポリエステルを提供する工程であって、当該ポリマーが溶媒に可溶性又は分散性である工程と、
1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリールアニオン性界面活性剤を提供する工程と、
任意の界面活性剤キャリアを提供する工程と、
前記脂肪族ポリエステルに前記界面活性剤、及び任意に前記界面活性剤キャリアを組み込む工程と、
前記組成物を溶剤紡糸して1つ以上の繊維を形成する工程とを含む、持続性の親水性組成物の製造方法。

【公表番号】特表2011−524202(P2011−524202A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513692(P2011−513692)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/047057
【国際公開番号】WO2009/152345
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】