説明

生体適合性骨インプラント組成物及び骨欠損の修復のための方法

骨欠損又は創傷における使用のための成形可能である骨インプラントは、複数の生体適合性顆粒及び生体適合性ポリマーを含み、これらは一緒になってインプラント材料を形成する。前記ポリマーを可塑剤で軟化させて、前記インプラント材料を成形可能又は流動可能にする。前記可塑剤は、前記インプラント材料を硬化させるために放散させるか又は抽出されてよい。前記インプラント材料をin situ又はex situで付形してよい。in situで形成したインプラントを前記骨欠損又は創傷により付形する。前記インプラントは体液との接触を介して硬質になり、前記体液は前記可塑剤をインプラント材料から抽出する。ex situ、例えば型中で形成した骨インプラントを例えば、型により付形し、次いで前記インプラント材料を硬化剤、例えば水と接触させることにより硬化させ、前記硬化剤は前記インプラント材料から可塑剤を抽出する。この付形した、硬化したインプラントは相応する大きさ及び形状の骨欠損中に配置してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景技術
1.技術分野
本発明は、生きている生物中の欠損、例えば骨欠損及び抜糸創を治療するための生体適合性インプラントに関する。より詳細には、本発明は成形可能である生体適合性インプラントに関する。
【0002】
2.関連技術
骨置換材料、特に整形外科、外傷学、頭蓋、口腔、及び顔面の外科手術、及び歯科矯正学の領域における骨置換材料の重要性は増加し続けている。骨インプラントのための適用の重要な領域は、例えば、粉砕骨折に関連した大きな骨欠損の閉鎖と同様に、小さな骨断片の取り付け、骨嚢腫から及び骨腫瘍の除去後に生じる骨欠損の充填、慢性骨髄炎により引き起こされる空隙の充填、歯槽及び顎骨の材料損失に関連した適用、及び担体材料としての使用、例えば抗生物質、細胞分裂抑制剤、及び骨形成性材料のための担体材料としての使用を含む。
【0003】
大抵の場合は、骨欠損は骨増強材料の挿入により処置されてよい。治癒はこのインプラントが、この周囲の骨壁に密閉して接触している場合に促進される。従って、骨インプラントを特定の形状に形成することが可能であることが有利である。例えば、抜歯される場合に、この空隙を充填するために使用される骨インプラントは有利には、この歯根をほぼ複製するものである。不適当に付形された骨インプラントは、問題、例えば軟部組織の内成長及び前記インプラントと存在する骨との間での不十分な付着性といった問題を生じる可能性がある。加えて、不適当な形状は、合併症又は患者の不快を生じる可能性がある。
【0004】
骨インプラントの適当な付形はしばしば困難である。いくつかの場合において、この修復部位は体内の深部であり、そして軟部組織及び体液により変換される。その他の場合において、例えば抜歯の場合において、この抜歯根は型を製造するために使用されてよい。しかしながら、抜歯創の修復の場合であっても、この根が細片へと破壊され、成形のために使用可能でない場合が存在する。その他の状況において、この骨インプラントを、これを損傷部位に配置した後に成形しなくてはならない。大抵の存在する骨インプラント材料はしかしながら、このインプラントのin vivoでの成形を防げる工程、例えば加熱工程必要とする。
【0005】
存在するインプラントの1つの種類は、骨欠損の充填及び処置のためにリン酸カルシウム又はガラス生体材料粒子を使用する。これらの顆粒状の種類のインプラントは、生分解性であり、かつ骨伝導性である。存在する顆粒状の骨インプラントが骨組織の内成長を促進できる一方で、これらのインプラントの形成及び保持は複雑である可能性がある。いくつかの場合において、この粒子を埋没部位に維持するために膜が必要である。
【0006】
インプラント系のその他の種類は、注入可能材料、例えばポリマー溶液又はマイクロ粒子の分散体を使用する。この注入可能系は、取り扱い及び成形性を向上させる。しかしながら注入可能系は典型的には非生分解性であり、かつこのインプラントを通じた新規の骨形成を妨げる(即ち、これらは低い骨伝導性を有する)。例えば、既知の注入可能材料、例えばポリメチルメタクリラート(PMMA)は非生分解性であり、かつ前記骨欠損中での天然の骨の形成を阻害する。リン酸カルシウムセメントは生分解性であってよいが、しばしば緻密又は中実か又は小さい密閉孔含有性のインプラントの形成を生じ、これは骨伝導性を阻害する。
【0007】
前記注入可能ポリマーインプラントを改良する最近の骨インプラントの1つは、固体のポリマー材料を使用し、これを有機溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に浸し、このインプラントを軟化させる。前記インプラントは次いで、所望の形状へとin situで成形されてよい。このインプラントはしかしながらやはり、中実かつ非多孔質であり、又は小さい孔を含有してよい。前記インプラントを取り囲むこの天然の骨は、前記インプラントが分解しない限りは、前記インプラント中に統合することも、前記インプラントを再生骨組織と置換することもできない。骨誘導性及び/又は骨伝導性のインプラントとは異なり、これらのインプラントは、より天然の条件へ前記創傷又は欠損を復元するために制限された使用を有しない(即ち、これらは前記欠損を治癒するよりもむしろ充填する)。
【0008】
骨インプラントを改良するためのその他の試みにおいて、類似の欠損又は型を摘出した骨の細片、例えば抜歯根から製造する。前記型を次いで多孔質かつ生分解性の複製を製造するために使用してよい。類似の欠損の使用の1つの欠点は、これは、型を製造するために歯根又は骨のその他の細片の統合を必要とすることである。加えて、前記インプラント製造方法はしばしば小さい加熱装置又はCO2オートクレーブを必要とし、このためにこの方法の費用及び複雑さは増加する。型中でのインプラントの付形が所望される場合でさえも、再生性骨インプラントの付形のための前記の方法を、前記インプラントがより適時に付形されることができるように簡素化することが必要である。
【0009】
従って、生分解性インプラントであって、容易かつ素早くin situ又はex situにおいて所望の形状に付形され、かつ骨組織の内成長及び再生を促進することが可能である生分解性インプラントが必要とされている。
【0010】
本発明の要約
本発明の例示的な実施態様は、公知技術における前述の課題を、所望の形状へとin situ又はex situで容易に成形される、骨伝導性及び/又は骨誘導性の生分解性インプラント組成物を提供することにより解決する。例示的な実施態様において、前記の成形可能であるインプラント組成物は所望の形状に形成されると、このインプラント組成物は容易に、そして所望であれば素早く、堅固なインプラントを形成すべく硬化する。一実施態様においては、本発明によるインプラント組成物は、開放系多孔質の足場材料又は複合基材を成形し、これは骨組織の内成長及び/又は再生を可能にする。本発明のその他の実施態様においては、液状インプラントを成形するために十分な量において溶媒が含まれていて、前記液状インプラントは埋没部位中に流し込み又は注入されてよい。
【0011】
例示的な実施態様においては、本発明による成形可能なインプラント組成物は、生体適合性ポリマーと混合した複数の生体適合性粒子及び前記ポリマーのための可塑剤を含む。前記生体適合性ポリマー及び前記生体適合性粒子は、生きている生物の骨欠損における使用のためのインプラント材料を形成する顆粒を形成する。前記可塑剤は、インプラント材料が成形可能であるように少なくとも一部の前記生体適合性ポリマーをコンディショニングするために十分な量において含有されている(即ち、これは可塑的に変形可能である)。前記インプラント材料は骨欠損中に挿入され、ここで前記インプラント材料は前記欠損の形状をとるように変形されてよい。前記の成形可能であるインプラント組成物は、任意の特定の形状を有するために、in situ又はex situにおいて変形、成形、及び/又は彫刻されてよい。
【0012】
本発明の一実施態様において、前記可塑剤は、硬化剤と協働できるよう選択されている。前記硬化剤が前記骨インプラント組成物に適用されると、前記可塑剤の効果が中和され、この骨インプラント組成物は硬化し、これにより適した構造的支持を提供する。例示的な一実施態様において、前記可塑剤は水溶液、例えば体液中に部分的に溶解可能であり、従って前記体液は、少なくとも一部の前記可塑剤を前記インプラント組成物から抽出することにより硬化剤として作用する。
【0013】
本発明による骨インプラント組成物を選択的に成形及び硬化するための能力は、外科医に、より容易にかつより素早く骨欠損を修復するための選択肢を提供する。前記インプラント材料又は組成物はin situで付形されてよいので、外科医は素早くかつ正確に、最初に型を形成する必要なしに空隙を充填する。本発明の一実施態様において、この軟化した骨インプラント材料は成形可能であり、しかしながら液体のように流動するほどに軟質ではない(即ち、これは液状ではないが可塑的に変形可能である)。変形可能であるインプラントの利点は、この堅固さが、前記硬化剤がこれを固化する前に前記インプラントに所望の形状を維持させることである。変形可能である間でさえも所望の形状を維持する能力は、前記インプラント組成物を迅速に硬化させる幾つかの必要性を緩和し、かつ本発明のインプラント組成物をin situで使用することを可能にし、ここではより小さい容積の体液が存在し、かつここでは液体、例えば水を用いた洗浄は可能でない。
【0014】
本発明のその他の実施態様において、液状溶媒は前記生分解性ポリマーを液化させるために十分な量で添加される。この実施態様において、前記インプラント組成物は流動可能であり、かつ埋没部位又は型の形状をとることができる。本発明のこの実施態様は、前記インプラントの所望の形状が回旋状でありかつ/又は医師が形成することが困難である場合に有利であってよい。インプラントを流動状にすることにより、前記インプラント材料はより容易に前記埋没部位又は型の形状をとることができる。
【0015】
前記の成形可能であるインプラント組成物は、ex situで型を用いて付形されてもよい。本発明の成形可能であるインプラント組成物は、前記型の形状へと容易に変形し、次いで硬化剤を用いて素早く硬化されてよい。型中での前記インプラント組成物の付形及び硬化は本発明による方法によれば、外科手術の間の貴重な時間を節約し、これにより費用及び危険を減少できる。加えて、医師は手術の間にインプラントの成形及びin situの配置の必要を決断してよい。例えば抜歯の間に歯根が部分的に破壊され、これによりインプラントをin situに配置する必要性が、前記インプラントの有利な成形方法が型をex situで使用することであっても生じる。本発明のインプラントは医師に特定の状況のために最適の方法を選択する能力を提供する。
【0016】
本発明の別の実施態様において、複数の粒子が骨様(又は骨適合性)セラミックス、例えばリン酸カルシウム又はその他のカルシウムベースの鉱物から形成される。本発明によりリン酸カルシウムセラミックスを使用して製造されたインプラントは、特質、例えば(i)存在する骨組織との直接的な接着及び結合を発達させる能力、(ii)細胞機能及び発現を促進する能力、(iii)足場材料又は鋳型材料を新規の骨の形成のために提供する能力、及び(iv)骨形成を促進かつ生体活性材料のための担体として作用する能力を示す。
【0017】
本発明の前述した特徴、そしてその他の特徴は、以下の詳細な説明及び添付した特許請求の範囲からより完全に明白になるものである。
【0018】
図面の簡単な説明
前述した、及びその他の、本発明の利点及び特徴を更に明確にするために、本発明のより特定の説明がこの詳細な実施態様の参照により提供されるものであり、前記実施態様は以下の添付した図面において描写されている。前記図面が本発明の典型的な実施態様を描写するのみであり、従ってこの範囲を制限するとは考慮されるべきでないことを認識されたい。本発明は付加的な特異性及び詳細さでもって以下の付属する図面の使用を介して描写かつ説明されるものである:
図1Aは、本発明による、歯根のように付形された例示的に変形可能であるインプラント組成物を描写する;
図1Bは、図1Aの成形可能であるインプラント組成物の横断面図である;
図2Aは、例示的に予備形成された本発明による骨インプラント組成物を描写する;
図2Bは、可塑剤液体中に浸漬されることにより軟化した図2Aの骨インプラント組成物を描写する;
図2Cは、骨欠損中に挿入されている図2Bの軟化したインプラント組成物を描写する;
図2Dは、骨欠損の形状にin situで成形される図2B及び2Cの軟化したインプラント組成物を描写する;
図3Aは、型中に挿入されている図2Bの軟化したインプラント組成物を描写する本発明の例示的な方法である;
図3Bは、型中で付形される図3Aのインプラント組成物、そして硬化剤をここに添加することを描写する;
図3Cは、硬化した状態にある成形された図3Bのインプラント組成物を描写する;
図3Dは、実質的に同じ形状を有する骨欠損中に挿入された、図3Cの硬化したインプラント組成物を描写する;
図4Aは、本発明の一実施態様による複数の顆粒を描写する;
図4Bは、図4Aの顆粒に添加される可塑剤を描写する;
図4Cは、図4Bの可塑化された顆粒の軟化を描写する;
図4Dは、図4Cの軟化した顆粒を用いる骨中への骨インプラントの付形を描写する;
図5Aは、型中で付形されたインプラント材料を製造するための図4Cの軟化した顆粒を用いる本発明の方法の例示的な一実施態様である;
図5Bは、硬化剤を用いる、図5Aの付形されたインプラント材料の硬化を描写する;
図5Cは、硬化した状態にある図5Bのインプラント組成物を描写する;そして
図5Dは、骨欠損中に挿入された図5Cの硬化したインプラント組成物を描写する。
【0019】
例示的な実施態様の詳細な説明
本発明の実施態様は、骨欠損又は創傷を修復するための成形可能である骨インプラント組成物を含む。前記の成形可能であるインプラント組成物は、複数の粒子状顆粒から形成される。生体適合性ポリマーを前記顆粒上に配置又は被覆する。前記粒子及びポリマーを集成(pack)又はアグロメレーションし、インプラント材料を形成させ、前記ポリマーを可塑剤を用いて軟化させ、前記インプラント材料を成形可能又は流動可能にする。前記インプラント材料を付形又は彫刻し、特定の骨欠損又は構造的空隙を充填する骨インプラントを形成させる。前記骨インプラントを次いで、硬化させるか又は硬化を引き起こさせる。以下においてより詳細に説明するように、(i)前記ポリマーの軟化、(ii)前記インプラント材料の形成、及び(iii)前記インプラント材料の付形の順番及び時期は、本発明の様々な実施態様により変更される。
【0020】
図1A及び1Bを参照すると、本発明は成形可能である骨インプラント組成物10を骨欠損又は創傷の修復のために含む。例示的な一実施態様において、前記の成形可能であるインプラント組成物10は、複数の粒子12を含む。前記粒子は生体適合性ポリマー14で被覆されていて(図1B)、インプラント材料16を形成するために一緒に集成されている。前記インプラント材料16は更に、含有されているか、又は前記生体適合性ポリマーの少なくとも一部と混合されている可塑剤を含む。前記可塑剤は前記生体適合性ポリマー14を軟化させ、これにより前記の成形可能であるインプラント組成物10は所望の形状に成形される。描写したように、前記の成形可能であるインプラント組成物10は、前記の成形可能であるインプラントの型中での配置から、又はこの抜歯部位へのインプラントの挿入から、根の形状を有する。前記インプラント組成物は任意の骨欠損の形状をとりうることを認識されたい。前記の成形可能であるインプラント材料は有利には、「可塑的に変形可能」である(即ち、更なる付形力の適用なしに硬化に先立って成形されたいかなる形状をも維持する)。
【0021】
例示的な一実施態様において、前記の成形可能であるインプラント組成物10は、複合基材を形成するインプラント材料16を有する。インプラント材料16はマクロ孔を有し、これは前記の生体適合性粒子12及び生体適合性ポリマー14の基材にくまなく形成される。前記インプラント材料16はまた、生体適合性ポリマー14又は粒子12中に形成されたミクロ孔を有してもよい。一実施態様において、成形可能であるインプラント10は、この上に形成された膜18を有し、これは軟部組織の内成長を妨げる。
【0022】
I.骨インプラント組成物の成分
本発明によるインプラントの様々な成分を以下に記載する。本明細書において使用されたこの見出しは、本開示をより容易に理解するために意図されたものであって、いかなる意味合いにおいても制限するものと認識されるべきでない。
【0023】
a.粒子
例示的な一実施態様において、本発明は生体適合性粒子を含み、これは構造的支持又は生理学的な利点を前記インプラント材料に提供する硬質物質である。前記粒子は合成の、天然の、ポリマーの、又は非ポリマーの材料から製造されていてよい。一実施態様において、前記粒子はまた生分解性であり、従って前記インプラントは時間が経つと分解及び/又は天然の骨組織と置換する。
【0024】
本発明の生体適合性粒子は、合成の生体適合性材料、例えば生体ポリマー、生体ガラス、生体セラミックス、より有利には硫酸カルシウム、酸化ケイ素、リン酸カルシウム、例えばリン酸一カルシウム一水和物、リン酸一カルシウム無水物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム無水物、リン酸四カルシウム、オルトリン酸カルシウムリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)、アパタイト、例えばヒドロキシアパタイト(HA)、又はポリマー、例えばポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコライド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン、又はそのコポリマー、ターポリマー又はこれらのポリマーのブレンド、又はこれらの生体適合性で生分解性の材料の組合せ物から製造されることができる。
【0025】
以下の材料はまた、本発明において構造的成分として使用されてもよく、合成材料であると考慮されてもよい。キチン及びキトサン、これらは海洋非脊椎動物の組織に由来してよい;ヒアルロン酸、多糖、これらは鶏冠から又は微生物発酵により得られてよい;ポリ(アミノ酸)及びポリペプチド、これらはバイオテクノロジー方法により製造されてよい;任意の多糖類、これらは植物から、非脊椎動物から、又はバイオテクノロジー方法により得られてよい(例えばアルギナート)。
【0026】
リン酸カルシウムセラミックスは生体適合性であり、様々な生体医用適用において使用されてよい。HA及びβ−TCA生体セラミックスは、特に使用可能である材料であり、というのもこれらは骨の鉱物成分と同様のイオン特性を有するからである。加えて、これらの吸収動態学は、特定の療法の必要性に適合するように制御されてよい。更に、β−TCPは生分解性であるので、in vivoで吸収され、かつ新規の骨成長とともに置換されてよい。
【0027】
本発明の粒子は天然の材料、例えば破砕した骨の粒子又は、例えばヒト、ブタ、又はウシの骨から形成された粒子から製造されてもよい。このベース粒子は選択的に、部分的に又は完全に鉱物除去されてよく、又はこの有機成分は部分的に又は完全に除去されてよい。
【0028】
例示的な一実施態様において、生体適合性及び/又は生分解性の粒子は、相当直径、約100μm〜約4000μm、より有利には約500μm〜約1500μmを有する粒子が選択される。この選択された相当直径の粒子は、容易に取り扱いされ、かつすぐに更に処理される。
【0029】
相当直径との用語は、前記の合成の生体適合性及び生分解性粒子が、不規則的な形状であってよいことを示唆するが、規則的な形状の粒子、例えば球状粒子の使用は有利であってよい。いくつかの適用において、球状粒子はより良好な取り扱い、及び空洞の既知の体積を充填するためのこの量のより容易な決定を可能にする。更に、球状又はその他の規則的に成形した及び/又は大きさにした粒子は、この隣接する粒子間での更に均一な孔構造又は足場材料を形成する。にもかかわらず、その他の適用において不規則に成形した粒子又はロッド、チップ、及びこの類似物のように付形した粒子であっても有利であってよい。更に、幾つかの適用において、前記粒子の大きさは、前記粒子が微小球又は粉体を形成するように十分に細かいことが望ましい。
【0030】
本発明の他の実施態様において、前記粒子は多孔質又は中空である。中空及び/又は多孔質の粒子の使用は埋没材料の量を減少させ、そしてより良好なin situでの統合(in situ integration)を可能とする。更なるその他の実施態様において、前記粒子は中空粒子の顆粒壁中に巨視的な開口部を含む。前記粒子壁中の開口部は、組織の前記骨インプラントの基材中への内成長を促進する。
【0031】
b.粒子の形成
例示的な実施例において、本発明の粒子はリン酸カルシウムセラミックス、例えばβ−TCPから製造される。β−TCPから製造される粒子は、前述したように、これらは生分解性でありかつ天然の骨組織の内成長及び再生を促進できるので有利である。
【0032】
β−TCPの粒子の形成のために、70gのβ−TCP粉末(purum p.a.>96%、Fluka、CH)を1gのデキストリン(Relatin Dextrin K51)と乳鉢中で混合した。20mlの脱イオン水をこの粉末混合物に連続的に撹拌しながら緩慢に添加する。この生じたペーストを多口ノズル(φ:800μm)(Cyclo, Typ XYCG, Probst Technik, CH)を通じて押出し、約3分間ペレットマルメライザー(Probst Technick, CH)中で球状化して、平均直径約350μm〜1000μmを有する粒子を得た。この得られたβ−TCP粒子を次いでか焼した。高剪断力ミキサ及び流動層造粒などの他の方法を使用して、丸形粒子を製造してもよい。
【0033】
開口部を粒子壁中に有する中空粒子は前記生体適合性材料のスラリー、水、及び接着剤から製造されてよい。そのスラリー滴を加熱平板に落とす。スラリー滴中の水が沸騰し、その液滴から瞬間的に蒸発して、滴壁中に蒸発窪み(evaporation crater)が残る。その液滴が冷却されると、粒子壁中に開口部を有する中空粒子が形成される。
【0034】
代替的な一実施態様において、前記粒子を生分解性ポリマー、例えばポリ−ラクチド−コ−グリコライド(PLGA)から製造してよい。PLGAの粒子を調製するために、ポリマー及び酢酸エチル(6.25%w/w)の溶液を準備する。この溶液を撹拌したPVA溶液(0.4%w/w)中に滴加導入し、結果、エマルジョンが形成する。前記エマルジョンを800mlの水中に流し込み、そして約5時間の間撹拌する。この生じる溶液を濾別し、この生じる粒子を真空下で約12時間乾燥させる。この方法により製造された粒子は約40μm〜約100μmの範囲の大きさを有する。この場合に、前記ポリマー粒子を顆粒として使用してよく、又は異なるポリマーで被覆して以下に記載するように被覆された粒子の顆粒を形成してよい。
【0035】
c.生体適合性ポリマー
本発明の骨インプラント組成物はまた、インプラント材料を形成するための前記顆粒に配置された生体適合性ポリマーをも含む。一実施態様において、前記顆粒の一部又は全部は、前記生体適合性ポリマーで被覆されている。例示的な一実施例において、前記生体適合性ポリマーはまた、生分解性でもあり、従って、前記インプラントが新規に形成された生組織により置換されるにつれ体内への吸収が促進される。
【0036】
本発明において使用される、適した生体適合性ポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコライド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン又はそのコポリマー、ターポリマー又はこれらのポリマーのブレンドを含む。前記ポリマーはまた、生分解性であるように選択されてもよい。
【0037】
以下に説明するように、可塑剤を前記生体適合性ポリマーに添加して、前記ポリマーをコンディショニングし、そして前記骨インプラントを成形可能にする、一実施態様において、前記生体適合性ポリマー及び前記可塑剤を、ポリマー−溶液系中で作用するように選択する。前記生体適合性ポリマーは、特定の可塑剤中で部分的に溶解又は軟化される場合に所望の柔軟性及び粘着性を有するように選択される。前記可塑剤を除去する際に(例えば、蒸発又は体内への拡散により)、前記生体適合性ポリマーは堅固な骨インプラントを形成すべく硬化する。前記ポリマー及び可塑剤を、軟化及び硬化させた際にインプラントに特定の剛性を付与するために選択する。
【0038】
容易に可塑的に付形する及び/又は成形するために、前記骨インプラントを前記ポリマーのガラス転移温度(Tg)より高い温度に曝露する必要がある。その他の実施態様において、前記骨インプラントを、前記調製をTgより高く実施する条件では可塑剤なしで付形及び/又は成形してよい。体温(37℃)よりも高いTgを有するポリマーの場合には、この骨インプラントは、37℃よりも高い温度で付形された場合に、この温度が減少するにつれて硬化する。従ってこの実施態様において、前記インプラントをTgより高く加熱し、人又は型への埋没のために前記インプラントを更なるいかなる可塑剤もなしで成形可能にしてよい。更なるその他の実施態様において、前記の作業温度は可塑剤の添加により有利に減少されてよい。前記可塑剤は液体又はガス、例えばCO2であってよい。
【0039】
d.被覆された粒子の顆粒の製造
例示的な実施例において、前記顆粒は前記粒子上に被覆された生体適合性ポリマーを有する。本発明が、本明細書において被覆された粒子の顆粒を参照して説明される一方で、この分野の当業者は、粒子をポリマーと混合するためにその他の形態が存在することを理解するものである。
【0040】
合成の生体適合性で生分解性の粒子は、所望の生体適合性ポリマーを用いて、噴霧被覆、有利には流動層装置中で噴霧被覆又は浸漬被覆されてよい。この両方の方法は、有利な特性を有する生体適合性で生分解性の顆粒を生じる。
【0041】
流動層装置における噴霧被覆法は、実質的に同一にポリマー被覆された生体適合性で生分解性の多数の顆粒を非常に迅速にかつ経済的に製造することを可能にする。流動層方法を用いて、被覆層の厚さの容易な制御、及び、互いに区別される複数の被覆層を有する生体適合性で生分解性の顆粒の製造が可能となる。流動層装置での被覆は均一かつ連続的な被覆をもたらし、これにより顆粒又はそれから製造されるインプラントの細菌による汚染に対するバリヤ性が与えられる。その被覆法の間に、顆粒は互いに付着せず、従って不均一性の高いサイズ分布と被覆厚さをもたらしうる不所望な凝集体の形成が避けられる。
【0042】
添加剤、例えば可塑剤又は生物学的に有効な物質の前記被覆中への組込みは、前記流動層装置により容易に制御される。こうして、各顆粒に同量の生物学的に有効な物質が加えられる。前記被覆の厚さもまた容易に制御される。従って、導入された生物学的に有効な物質の放出でさえ予想でき、そして良好に制御される。
【0043】
合成の生体適合性で生分解性の顆粒の被覆は種々の平均厚さの1層又は複層の層から構成されよい。少なくとも最も外部の被覆層は生分解性材料から製造される。本発明の実施態様は、特定の目的のために幾つかの被覆を有する生体適合性で生分解性の顆粒を提供することができる。最も外部の生分解性の被覆は、一定の所望の分解性の遅延に応じて選択することができる。こうして、下にある被覆層は一定の所望の時間が経過した後に露出されるに過ぎない。例えば、これにより生体活性物質の遅延性輸送が可能となる。このように、合成の生体適合性で生分解性の顆粒を、生分解性で特定の効果を表す種々の被覆で被覆してよい。
【0044】
生体適合性と生分解性について公知のポリ−ラクチド−コ−グリコライド(PLGA)を参照して本発明を例として説明する。このために、ジクロロメタン(CH2Cl2)中のPLGA溶液をまず製造する。前記ポリマーの濃度は1mlのCH2Cl2中で約0.1〜0.2gのPLGAである。β−TCP粒子をPLGA溶液中に浸漬させる。得られる混合物を常に撹拌させると、溶剤が蒸発して、薄いポリマー被膜がβ−TCP顆粒の表面上に堆積する。凝集した顆粒を次いで研究用ミキサを用いて分離し、そして篩別してよい。溶剤の抽出を真空下(100ミリバール)に36時間にわたって最終的に実施する。生物学的に有効な物質による被覆は、別個の被覆として又はポリマー被覆物中に混合又は溶解されて適用されてもよい。
【0045】
β−TCP粒子の非常に均一な被覆が得られる遙かに経済的な被覆法は流動層装置中での噴霧被覆法である。前記被覆法はこの分野の当業者に公知であり、均一な被覆のために所望の結果を達成することが証明されている。
【0046】
前記生体適合性ポリマー被覆は有利には、約1μm〜約300μm、有利には約5μm〜約30μmの厚さを有する。前記顆粒の被覆厚さはまた、前記インプラント材料の合計の質量の約4%〜約20%の被覆材料の重量分率で表されてもよく、前記インプラント材料は添加剤、例えば可塑剤又は生物学的に有効な物質で負荷されていてよい。この分野の当業者は、様々な被覆溶液の選択及びこの被覆時間の変更により、様々な厚さを有する被覆の様々な層が前記顆粒に適用されることを理解するものである。
【0047】
被覆された粒子から製造されるインプラントの機械的安定性は前記ポリマー被覆の厚さと均一性に依存する。不十分な被覆厚さにより前記顆粒は互いに接着しなくなる可能性がある。その一方で、余りに多い被覆は前記インプラントの近傍においてその崩壊の際にこのpHの減少を引き起こす可能性がある。前記被覆の厚さが有害作用を前記インプラントの性能に有するかは、前記インプラントの特定の使用に依存する。
【0048】
e.生体適合性可塑剤
可塑剤を、生体適合性ポリマーをコンディショニングするために選択する。前記可塑剤は軟化剤又は溶解のための溶媒として作用し、又はさもなければ前記生体適合性ポリマーを成形可能及び/又は付着性及び/又は流動可能にする。典型的には、前記可塑剤を、前記ポリマーを軟化させるが前記ポリマーを液化させない量で添加する。しかしながら、本発明の別の実施態様において、流動可能組成物が所望されてよい;その場合には、前記ポリマーを液化させるために十分な液体溶媒を前記生体適合性ポリマーに添加する。
【0049】
前記可塑剤は有利には、生体適合性であるか又は非常に低い毒性を有するので、ひとたび前記インプラントが患者に配置されると前記可塑剤は安全に前記骨インプラント中で存在する。適した可塑剤は、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトン、乳酸エチル、酢酸エチル、ギ酸エチル(ethyl formiate)、アセチルトリブチルシトラート、トリエチルシトラート、テトラヒドロフラン、トルエン、アルコール、及び二酸化炭素を含むがこれらに限定されない。この分野の当業者は、本発明の可塑剤が、本発明の生体適合性ポリマーをコンディショニングする多くのその他の溶媒の1つであってよいことを理解するものである。
【0050】
例示的な一実施態様において、前記可塑剤は、混和性から分散性まで及ぶ、水性媒体中で溶解性を有する溶媒である。従って、前記可塑剤は、水性媒体中又は体液、例えば組織液、例えば血清、リンパ、脳脊髄液、及び唾液中に拡散可能である。前記可塑剤が前記インプラント材料外へと拡散する際には、前記骨インプラントは硬化する。このようにして体液は硬化剤として、前記骨インプラントをin situで固化させるために使用されてよい。
【0051】
前記骨インプラントはまた、前記ポリマーから可塑剤を抜出することによりex situで硬化されてもよい。一実施態様において、前記可塑剤を部分的に水中に溶解性であるように選択する。前記インプラントをex situで付形して、例えば型中で付形して、水を前記インプラントに配置し、これにより前記可塑剤の抽出及び前記骨インプラントの硬化をさせる。又は、前記可塑剤を蒸発により除去してよい(例えば、加熱及び/又は真空の適用により)。
【0052】
前記生分解性ポリマーの溶解性又は混和性は特定の可塑剤において、因子、例えば結晶性、親水性、水素結合能、及び分子量により変更する可能性がある。結果として、前記生体適合性ポリマーの分子量及び濃度を、前記可塑剤の溶解性を調節するために適合してよい。前記したように、成形可能であるインプラントを形成するために、前記ポリマー−可塑剤系を、前記可塑剤がポリマーを軟化させるが前記ポリマーを液化させないように設計し、これにより接着性のしなやかな材料を作製する。
【0053】
一実施態様において、前記ポリマー−溶媒系を、前記生体適合性ポリマーのTgを、室温を下回る温度に減少させるべく設計する。例えば、アセトン、NMP、又はアルコールをPLGAに、このPLGAのTgが約50〜55℃から室温未満に減少するまで添加する。同様に、PLA及びPLGA、これは約43及び34℃のTgを有するが、それぞれ可塑剤により室温未満に低下させてよい。
【0054】
別の実施態様において、前記ポリマー−可塑剤系を、室温又は作業温度を上回る温度への加熱を必要とするように設計してよい。前記可塑剤及びポリマーは、このTgを、室温を上回るが加熱温度の閾値を下回る温度に低下させるように選択される。このようにして前記インプラントの成形性を特定の所望の温度範囲で付与してよい。例えば前記ポリマーを、体温を上回るが、成形可能になるまでのインプラントの加熱が、前記インプラントを生きている人間に配置するには熱すぎる程までにしない十分低い温度で成形可能にしてよい。
【0055】
前記ポリマーのTgの調節により(前記可塑剤でもって又は前記ポリマーの組成物の変更により)、所望の温度で成形可能であるインプラントを作製してよい。加熱が必要とされる場合であっても、前記インプラントのTgを、熱不安定性の因子、例えばタンパク質が前記インプラント中にこの因子の損傷又は不活化なしに含有されてよい程に十分低くしてよい。
【0056】
本発明の更なる別の実施態様において、液状溶媒を前記ポリマーに、前記生分解性ポリマーを液化させるために十分な量で添加する。有利な実施態様において、前記液状溶媒はn−メチル−2−ピロリドンであり、これ創傷部位から体液により容易に抽出される。加えて、n−メチル−2−ピロリドンはヒトで有利に使用され、というのもこれはヒトにおける使用に関して規則上の承認を有するからである。
【0057】
f.複合基材
本発明の一実施態様によれば、前記骨インプラントはマクロ孔及び/又はミクロ孔を有し、これは開放系多孔質の足場材料又は複合基材を形成する。用語「開放系多孔質の足場材料」又は「複合基材」とは、中実又は多孔質の顆粒から構成される顆粒領域とその顆粒領域の隣接する顆粒間の空間又は間隙から構成される開放系多孔質領域とが規定されるように結合又は接合された顆粒の構造的基材を示す。開放系多孔質領域は、少なくとも最初は空気又はガスで満たされているか、又は少なくとも部分的に液体、固体粒子、ゲルなどで満たされていてよい。
【0058】
前記足場材料又は複合基材は、顆粒状生体材料、例えばポリマー顆粒及び/又は被覆された粒子の顆粒を一緒に融合させることにより得られてよい。前記生体適合性ポリマーのインプラントの足場材料又は複合基材は、約0〜約10μmの平均直径を有するミクロ孔を有する顆粒からなっていてよい。前記顆粒の融合により、前記ミクロ多孔質性は維持されるか及び/又は前記顆粒の間のマクロ孔は、約10μm〜約2000μm、有利には100μm〜約500μmの平均直径を有して形成される。
【0059】
足場材料を構成する粒子間のマクロ孔は、単純には空気又はガスで満たされた空所であってよいと解されるべきである。また本発明の範囲内では、空所の幾つか又は全てが少なくとも部分的に液体、ゲル又は固体(例えば複数の粒子、例えば微粉末)で満たされている。その液体、ゲル又は固体には、1種以上の活性剤が含まれていてよい。また本発明の範囲内では、(例えば空所の幾つか又は全てを満たし、中実基材を生成するように中実顆粒間に十分なポリマーを用いることによって)存在するのであっても殆どマクロ孔を含まない付形された複合材から構成されるインプラントが製造される。
【0060】
前記複合基材の孔は充填されてよく、例えば抗生物質、成長因子、及び同様の生物学的に有効である物質でもって充填されてよい。このように、生体適合性で生分解性のインプラントは、空洞又は抜歯創に埋没される場合には、空洞を満たすだけでなく、生物学的に有効な物質の制御放出も可能にする。例えば、前記孔内の物質は細菌成長が妨げられ、骨形成が加速し、又はこの骨の創傷での疼痛が減少されるように選択されてよい。
【0061】
合成の顆粒とその被覆のための生体適合性で生分解性の材料の特定の選択によって、骨芽細胞様の細胞の成長及び増殖は、インプラントの分解の間に持続でき、最終的には新生骨組織によって置き換えられる。該インプラントは、一定の場合には、治癒されるべき骨欠損を取り囲む骨組織の侵食を防ぐこともできる。
【0062】
幾つかの場合には、未被覆顆粒及び被覆顆粒の両者を含有する、生体適合性で生分解性の足場材料又は複合基材を提供することが好ましい場合がある。前記の被覆及び未被覆の顆粒は完全に混合され、これらは一緒になって融合し、かつまだなお必要とされる安定性を有する。生体適合性で生分解性のインプラントの製造のために被覆された顆粒と未被覆の顆粒との混合物を提供することによって、分解せねばならない被覆材料の量は更に減らすことができる。
【0063】
g.膜
本発明の骨インプラントはまた、外側表面に膜を含んでもよく、これは軟部組織の内成長及び/又は汚染を防止する。生体適合性の膜は、生分解性のポリマー皮膜、ポリマーテキスタイル、ポリマーフリース又は内部連結された融合ポリマー粒子層又はその組合せであり、該膜はインプラントに固着され、こうして軟部組織及び上皮細胞に対する少なくとも1層の不透性層を形成する。
【0064】
本発明の一実施態様では、その膜は、ポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコライド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン又はそのコポリマー、ターポリマー又はこれらのポリマーのブレンドを含む群から選択される合成の生体適合性で生分解性のポリマーから製造される。
【0065】
前記膜はまた、顆粒又は被覆された粒子の顆粒の融合により形成されてもよい。この目的のために使用される顆粒は有利には、約500μmよりも小さいサイズ、より有利には約1μm〜200μmを有する。
【0066】
前記膜の作製のためのポリマーペレットの融合は、前記膜中に1μm〜500μm、有利には5μm〜50μmの範囲にあるサイズを有する孔を形成を生じてよい。前記孔のサイズは、前記ポリマー粒子のサイズに依存する。この粒子のサイズは、膜は多孔質であってよいように選択されていて、これにより液体を輸送させるが、インプラント内部への軟部組織及び/又は上皮細胞の内成長に対してバリヤを形成する。多孔性は、インプラントの血管新生を促進し、そうして埋没部位の治癒を促進することができる。
【0067】
II.骨インプラントの形成
前記したように、前記骨インプラントの形成は、(i)成形可能である(即ち、可塑的に変形可能である)インプラント材料を形成するための前記ポリマーの軟化、及び(ii)前記の成形可能であるインプラント材料の所望の形状への付形(ex situ又はin situ)を含む。本発明の様々な実施態様において、前記工程は様々な順序で及び/又は同時に実施される。明記されていない限りは、用語「未付形」とは、患者の中でその最終形状に達するためにかなりの量の成形を必要とするインプラント材料を意味する。用語「付形」とは、患者の中でインプラントとして機能するために成形をほとんど又は全く必要としない十分に付形されたインプラントを意味する。
【0068】
図2A〜2Dは、本発明の例示的な一実施態様を描写し、ここでは未付形のインプラント材料20を形成させ、次いで軟化させる。図2Aにおいては、被覆された粒子の顆粒21を集成して、未付形インプラント材料20を形成する。この実施態様においては、被覆された粒子の顆粒21を乾燥させ、次いで未付形の形状にアグロメレートさせる。インプラント材料20はほとんど又は全く可塑剤を有しないので、これは硬質である。未付形インプラント材料20は、このインプラントの状態に影響を及ぼすことなく容易に貯蔵又は輸送できる。
【0069】
図2Bに示したように、インプラント材料20を使用するために、インプラント材料20を液状可塑剤22中に浸す。インプラント材料20の生体適合性ポリマー及び可塑剤22は、前記生体適合性ポリマーが可塑剤22を吸収するように選択される。未付形のインプラント材料20を可塑剤22中で、インプラント材料20が、十分に成形可能であるが成形可能でない石鹸質(soapy)液体を生じる程には完全に溶解又は軟化されない程に十分な可塑剤を吸収するまで放置する。
【0070】
可塑剤22は有利には生体適合性であり、従って著しい合併症なしに人中に配置されてよい。一実施態様において、可塑剤22はNMP、アセトン、又はアルコール、例えばエタノールから選択される。可塑剤22はインプラント材料20を製造するために使用した化学薬品の1つと同じであってもよく、又は異なる溶媒又は軟化剤であってよい。
【0071】
別の実施態様において、未付形インプラント材料20を容器中に配置し、ガス状の可塑剤に曝露する(提示せず)。インプラント材料20は前記ガス状の可塑剤を吸収し、成形可能になる。
【0072】
図2Cに示したように、軟化したインプラント材料20aは十分に成形可能であるので、骨24の骨欠損26中に入れ込んでよい。軟化したインプラント材料20aが骨欠損26中に入れ込められると、これは変形し、かつ骨欠損26の形状をとり、その一方で骨24及び隣接する組織にほとんど又は全く損傷を与えない。
【0073】
図2Dは付形されたインプラント材料20bを示し、これは欠損26の形状に成形されている。インプラント材料20bは骨24中にあるので、骨24の中の及び/又はこれを取り囲む体液は液体中でインプラント材料20bと接触する。可塑剤22は骨24の体液中で少なくとも部分的に溶解性であり、従ってインプラント材料20bから引き出され、これにより前記骨インプラントを硬化させる。このポリマー結合剤(bonder)はその一方で、有利には、体液で湿潤又は水和した場合に、前記の付形したインプラント材料20bを硬化よりもむしろ更なる軟化から妨げるために水中で十分に非溶解性である。
【0074】
図3A〜3Dは軟化した未付形インプラント材料20aから付形したインプラントを形成するための選択的な方法を描写する。初めに硬質かつ未付形であるインプラント材料20を可塑剤22の使用下で図2Bを参照して説明したようにコンディショニングし、軟化した(又は成形可能である)インプラント材料20aを生じる。成形可能であるインプラント材料20aを次いで型28中に入れ込み、付形したインプラント材料20bを形成する。型28は任意の所望の型空洞(例えば抜歯根の形状、円柱状、又はその他の規則的又は不規則的な形状)を有してよい。
【0075】
図3Bに示したように、硬化剤30を、型28中の付形したインプラント材料20bにシリンジ32を用いて添加する。硬化剤30は液体であり、前記可塑剤22を抽出又は中和するために選択されている(図2B)。一実施態様において硬化剤30は、可塑剤22が溶解性である物質である。このようにして、硬化剤30は可塑剤22を付形したインプラント材料20bから取り出し、これにより硬化されたインプラント組成物20cを、図3Cに示したように形成する。例示的な実施態様においては、硬化剤30は水である。最後に、図3Dにおいて、硬化したインプラント材料20cを型28から取り出し、骨24内の欠損26a中に配置する。
【0076】
型28は通常は、充填されるべき骨欠損と同様の形状を有するように形成される。典型的には、前記欠損の負の印象が容易に生じる場合に型の使用は不利である。例えば、歯根が骨から抜き出される場合には、前記根は抜歯部位の型を製造するために使用されてよい。その他の例においては、置換骨又は骨の部分を彫刻し、次いで型を製造するために使用してよい。
【0077】
図4は、本発明の方法のその他の例示的な実施態様を描写する。図4Aは容器36中の乾燥した被覆された粒子の顆粒34を示す。一実施態様において、顆粒34を流動層装置を用いて前記したように調製し、乾燥させる。顆粒34は乾燥しているので、これらはアグロメレートしてインプラント材料を形成することはない。乾燥顆粒34は、特に貯蔵及び輸送のために便利である。
【0078】
図4B及び4Cに示したように、顆粒34をインプラント中で使用すべく、可塑剤22を顆粒34に、シリンジ38を用いて添加し、次いでスパチュラ40を用いて撹拌し、インプラント顆粒34aの未付形の成形可能材料を形成する。
【0079】
図4Dは、成形可能であるインプラント材料34aからの付形したインプラント材料34bの形成を描写する。成形可能であるインプラント顆粒34aを骨44の骨欠損42中にスパチュラ40を用いて配置する。成形可能である顆粒34bは一緒になって接着し、付形したインプラント材料34bを形成し、これは骨欠損42の形状に一致する。一実施態様において、骨44中の及び/又はこれを取り囲む体液は付形したインプラント材料34bと接触し、可塑剤22をここから抽出し、これにより付形したインプラント材料34bを硬化させる。
【0080】
同様の一実施態様において、容器36はトレーでなくシリンジである。この実施態様において、前記顆粒及び溶媒を前記シリンジ中で混合し、未付形のインプラント材料を形成させる。この軟化したインプラント材料を次いで、直接的に骨欠損中にシリンジを用いて注入してよく、スパチュラ40を使用する必要はない。一実施態様において、前記顆粒及び/又は可塑剤を前記シリンジ中に予備充填してよく、この結果前記インプラントは医師による使用の準備が整う。又は、前記顆粒及び/又は前記溶媒をシリンジ中で使用直前に混合してよい。
【0081】
代替的な一実施態様において、図4Cを参照して説明した、成形可能であるインプラント顆粒34aを型中で、付形したインプラントを製造すべく使用してよい。図5Aに示すように、成形可能である顆粒34aを型46中にスパチュラ40を用いて配置する。成形可能である顆粒34aは型40の形状に合致し、付形したインプラント材料34bを形成する。
【0082】
図5Bは硬化剤30を描写し、これは前記の付形したインプラント材料34bにシリンジ32を用いて添加される。硬化剤30は図5cに描写したように、可塑剤22を抽出し、前記の付形したインプラント材料34bを硬化させ、かつ硬化したインプラント材料34cを形成する。一実施態様において、硬化剤30は水であり、かつ可塑剤22は少なくとも部分的に硬化剤30に溶解性である。最後に、図5C及び5Dに示したように、硬化したインプラント材料34cを型46から抜き出し、かつ骨44の骨欠損42中に配置する。
【0083】
その他の実施態様において、図4及び5を参照して説明される方法は、乾燥していない、被覆された粒子の顆粒を用いて実施されてよい。この実施態様において、前記の被覆された粒子の顆粒は既に可塑剤を含有し、従って成形可能である。使用に適した被覆された粒子の顆粒はこの実施態様において、流動層装置を用いて製造されてよい。この実施態様において、可塑剤を使用して前記流動層装置中で被覆された粒子の顆粒を製造する。しかしながら、前記顆粒を乾燥させる代わりに、前記の成形可能である顆粒を使用して付形したインプラント材料を形成する。前記顆粒は決して乾燥せず、また従って最初から成形可能であるので、付加的な可塑剤を添加する必要はない。又は、付加的な可塑剤を添加し、かつ/又は本来の可塑剤の一部を除去して、所望のレオロジーを有する成形可能である材料を製造してよい。前記インプラント材料を、直接的に骨欠損中に成形可能である顆粒を配置するか、又は最初に型中にこれらを配置することにより付形してよい。
【0084】
更なるその他の本発明の実施態様において、前記のインプラントは少なくとも部分的に骨欠損内で形成される。この実施態様において、ポリマー被覆された粒子の顆粒を前記骨欠損中に、前記可塑剤を用いて軟化させる前に配置する。ポリマー被覆された粒子の顆粒の所望の量による前記骨欠損又は空隙の充填後に、前記可塑剤を前記空隙中に注入する。前記可塑剤は前記ポリマーの少なくとも一部を軟化させ、これにより前記顆粒を相互に接着させ、インプラント材料を形成させる。
【0085】
前記したそれぞれの方法において、前記インプラント材料を最終的に生きている生物中に挿入する。前記インプラントは、体組織内へのインプラントの挿入のために任意の公知技術により患者に適用されてよい。典型的には前記骨インプラントを、患者に形成した、皮下、骨格筋中の切開部位中に、又はインプラントの挿入のための腹腔鏡装置を通じて内部臓器又は組織中に挿入する。前記切開を、例えば焼灼術又は縫合により閉鎖する。前記インプラントが生分解性である場合には、前記インプラントを体がこれを分解するまでin situに残存させる。一般的に、異物材料の体内への埋没のための医療技術が当業者に公知であり、かつ係る医師のこの知見及び判断により施行される。
【0086】
本発明は更に以下の例において例示され、この例は説明のために提供するものであって本発明をいかなる様式においても制限する目的のものではない。
【0087】
実施例1:
β−TCP粒子をPLGA層で流動層装置中で被覆し、かつ乾燥させた。被覆したβ−TCP粒子を次いでNMPの蒸気に約100℃でかつ5分間曝露した。NMP分子をPLGA被覆中に吸収させ、この際このPLGAを部分的に溶解させ、かつ前記の被覆された粒子の顆粒を成形可能及びわずかに接着性にした。歯根の形状を有する型を、約0.5gの接着性の、成形可能である顆粒で充填した。この型を次いで水浴中に約5分間浸漬した。このインプラント材料は十分に硬化し、従って前記型から抜き出すことができ、かつこの抜歯根部位中に前記インプラントを実質的に変形することなしに埋没できた。
【0088】
実施例2:
β−TCP粒子を流動層技術を用いてPLGA層で被覆した。10滴の(又は5滴のアセトン)NMPを含有する可塑剤を0.5gの被覆したβ−TCP粒子に添加し、かつペトリ皿中でスパチュラを用いて前記可塑剤が分散するまで均質に混合した。前記可塑剤の吸収により顆粒はわずかに接着性になった。前記顆粒を次いで歯根欠損モデル中にスパチュラを用いて配置し、この欠損を完全に充填した。前記顆粒を100mlの脱イオン水で洗い流し、体液との接触を模擬した。この水処理は前記NMP(又はアセトン)を抽出し、これにより前記インプラントの固化を誘発した。
【0089】
実施例3:
直径500μm〜100μmを有するβ−TCP粒子をPLGAで、6質量%のこのポリマーのアセトン溶液において流動層技術を用いて被覆した。この被覆工程の最後に乾燥工程を実施しなかった。流動層中での空気の流れが停止すると、この顆粒は接触すると一緒になって接着し始めた。前記顆粒はγ線殺菌後に、骨格筋欠損を直接的に充填するための使用準備が整っていた。前記骨格筋の中及び周囲の体液は前記アセトンを抽出し、機械的に安定なインプラントを提供する。
【0090】
実施例4:
PLGAで被覆したβ−TCP粒子を円柱状の型中に流し込んだ。約70℃での短期間の加熱後に、前記顆粒は一緒になって接着し、機械的に安定な未付形のインプラント材料を形成した。このインプラント材料を試験し、著しい変形なしに30Nの鉛直荷重に耐えた。
【0091】
この未付形のインプラント材料を次いで沸騰するアセトンに2分間曝露した。前記の30Nの鉛直荷重をすぐさま前記インプラント材料に適用し、かつ約40%の鉛直変形を観察した。
【0092】
最後に、第1のインプラント材料と同一である第2のインプラント材料を2分間沸騰するアセトンで処理した。前記インプラント材料を次いで水中で15時間浸漬し、この吸収されたアセトンをこのポリマー層外に拡散させた。30Nの鉛直荷重を前記インプラント材料に適用し、約7%の変形を観察した。
【0093】
本発明は、その他の特定の形態においてもその趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなしに具現化されてよい。説明した実施態様はいかなる観点においても説明するものであって制限するものとして見なしてはならない。本発明の範囲は従って、前述の詳細な説明よりはむしろ添付した特許請求の範囲によって説明される。この特許請求の範囲の均等物の意味合い及び範囲内にあるいかなる変更も本発明の範囲内に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】図1Aは、本発明による、歯根のように付形された例示的に変形可能であるインプラント組成物を描写する。
【図1B】図1Bは、図1Aの成形可能であるインプラント組成物の横断面図である。
【図2A】図2Aは、例示的に予備形成された本発明による骨インプラント組成物を描写する。
【図2B】図2Bは、可塑剤液体中に浸漬されることにより軟化した図2Aの骨インプラント組成物を描写する。
【図2C】図2Cは、骨欠損中に挿入されている図2Bの軟化したインプラント組成物を描写する。
【図2D】図2Dは、骨欠損の形状にin situで成形される図2B及び2Cの軟化したインプラント組成物を描写する。
【図3A】図3Aは、型中に挿入されている図2Bの軟化したインプラント組成物を描写する本発明の例示的な方法である。
【図3B】図3Bは、型中で付形される図3Aのインプラント組成物、そして硬化剤をここに添加することを描写する。
【図3C】図3Cは、硬化した状態にある成形された図3Bのインプラント組成物を描写する。
【図3D】図3Dは、実質的に同じ形状を有する骨欠損中に挿入された、図3Cの硬化したインプラント組成物を描写する。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施態様による複数の顆粒を描写する。
【図4B】図4Bは、図4Aの顆粒に添加される可塑剤を描写する。
【図4C】図4Cは、図4Bの可塑化された顆粒の軟化を描写する。
【図4D】図4Dは、図4Cの軟化した顆粒を用いる骨中への骨インプラントの付形を描写する。
【図5A】図5Aは、型中で付形されたインプラント材料を製造するための図4Cの軟化した顆粒を用いる本発明の方法の例示的な一実施態様である。
【図5B】図5Bは、硬化剤を用いる、図5Aの付形されたインプラント材料の硬化を描写する。
【図5C】図5Cは、硬化した状態にある図5Bのインプラント組成物を描写する。
【図5D】図5Dは、骨欠損中に挿入された図5Cの硬化したインプラント組成物を描写する。
【符号の説明】
【0095】
10 成形可能であるインプラント材料、 12 生体適合性粒子、 14 生体適合性ポリマー、 16 インプラント材料、 18 膜、 20 未付形のインプラント材料、 20a 軟化したインプラント材料、 20b 付形したインプラント材料、 21 被覆した粒子の顆粒、 22 可塑剤、 24 骨、 26 欠損、 28 型、 30 鉱化剤、 32 シリンジ、 34 顆粒、 34a 成形可能である顆粒、 34b 付形したインプラント材料、 34c 硬化したインプラント材料、 36 容器、 38 シリンジ、 40 スパチュラ、 42 骨欠損、 44 骨、 46 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている生物中の骨欠損の修復における使用のためのインプラント組成物であって、複数の生体適合性顆粒及び可塑剤を含有し、前記生体適合性顆粒の少なくとも一部が生体適合性ポリマー材料を含有し、前記生体適合顆粒は一団となってインプラント材料を形成し、かつ前記インプラント材料中の可塑剤は、少なくとも一部の前記生体適合性ポリマーをコンディショニングするために十分な量であり、従って前記インプラント材料が最初は所望の形状へと可塑的に変形可能であるか又は流動可能であり、次いで少なくとも一部の前記可塑剤の前記インプラント材料からの除去により硬化可能である、生きている生物中の骨欠損の修復における使用のためのインプラント組成物。
【請求項2】
前記生体適合性顆粒が更に、複数の生体適合性粒子を含有し、前記生体適合性ポリマー材料が少なくとも一部の前記生体適合性粒子上に被覆されていて、従って前記インプラント材料が前記生体適合性粒子及び前記生体適合性ポリマーを含有する、請求項1記載のインプラント組成物。
【請求項3】
前記生体適合性顆粒が実質的に前記生体適合性ポリマー材料からなる、請求項1記載のインプラント組成物。
【請求項4】
前記生体適合性顆粒が、生体適合性セラミックス、生体適合性ガラス、生体適合性ポリマー、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されている材料を含有する、請求項1又は2記載のインプラント組成物。
【請求項5】
前記生体適合性顆粒が、酸化ケイ素、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されている材料を含有する、請求項1又は2記載のインプラント組成物。
【請求項6】
前記生体適合性顆粒が、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸一カルシウム無水物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム無水物、リン酸四カルシウム、オルトリン酸カルシウムリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、アパタイト、生体ガラス、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されている材料を含有する、請求項1又は2記載のインプラント組成物。
【請求項7】
前記生体適合性顆粒が生分解性である、請求項1から6までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項8】
前記生体適合性ポリマー材料が生分解性である、請求項1から7までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマー材料が、ポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコライド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン、そのコポリマー、そのターポリマーからなるグループから選択されている少なくとも一種を含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項10】
前記生体適合性ポリマー材料がポリ(ラクチド−コ−グリコライド)を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項11】
前記可塑剤は、n−メチル−2−ピロリドン、アセトン、乳酸エチル、酢酸エチル、ギ酸エチル、アセチルトリブチルシトラート、トリエチルシトラート、乳酸、クエン酸、テトラヒドロフラン、トルエン、アルコール、及び二酸化炭素からなるグループから選択されている少なくとも一種を含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項12】
更に生物学的に有効な物質を含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項13】
前記可塑剤は、硬化剤と接触した際に前記インプラント材料から抽出可能である、請求項1から12までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項14】
前記硬化剤が水又は体液を含む、請求項13記載のインプラント組成物。
【請求項15】
前記インプラント材料が実質的に中実の複合基材を構成する、請求項1から14までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項16】
前記インプラント材料が多孔質の足場材料を構成する、請求項1から14までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項17】
更に、前記インプラント材料の表面上に膜を含む、請求項1から16までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項18】
前記インプラント組成物が、前記組成物を骨欠損中に注入することが可能であるシリンジ中に予備充填されている、請求項1から17までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項19】
前記可塑剤を、前記インプラント材料がパテ状のコンシステンシーを有する量で添加する、請求項1から18までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項20】
前記可塑剤が、少なくとも一部の前記生体適合性ポリマー材料を液化させる量で添加された液体溶媒を含有する、請求項1から18までのいずれか1項記載のインプラント組成物。
【請求項21】
生きている生物の骨における欠損又は創傷の修復における使用のためのインプラント組成物の製造方法であって、複数の生体適合性顆粒及び可塑剤を一緒にし、その際前記生体適合性顆粒の少なくとも一部が生体適合性ポリマー材料を含有し、かつ前記可塑剤に少なくとも一部の前記生体適合性ポリマーをコンディショニングさせて、最初は所望の形状へと可塑的に変形可能であるか又は流動可能であり、次いで少なくとも一部の前記可塑剤の前記インプラント組成物からの除去により硬化可能であるインプラント組成物を製造することを含む、生きている生物中の骨における欠損又は創傷の修復における使用のためのインプラント組成物の製造方法。
【請求項22】
前記生体適合性顆粒が更に、複数の生体適合性粒子を含有し、その際複数の生体適合性顆粒及び可塑剤を一緒にすることは更には、前記生体適合性顆粒の、前記可塑剤でコンディショニングした前記生体適合性ポリマーでの被覆を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
更に、前記インプラント組成物の、骨インプラントの所望の形状への付形を含む、請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
前記インプラント組成物を、前記骨インプラントの所望の形状へと、骨欠損中に配置することにより付形する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記インプラント組成物を、前記骨インプラントの所望の形状へと、型中に配置することにより付形する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法であって、更に、付形したインプラント組成物を形成するために前記型を前記インプラント組成物で充填し、硬化した骨インプラントへと硬化させるために硬化性物質を前記の付形したインプラント組成物に適用し、かつ前記の硬化した骨インプラントを前記型から除去することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
更に、硬化した骨インプラントを骨欠損中へ挿入することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
更に、硬化させるために、少なくとも一部の前記可塑剤を前記インプラント組成物から硬化性物質を用いて抽出することを含む、請求項21から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記硬化性物質が水を含み、これにより前記インプラント組成物からの前記可塑剤の抽出による硬化が生じる、請求項26又は28記載の方法。
【請求項30】
前記可塑剤による少なくとも一部の前記生体適合性ポリマーのコンディショニングが、前記インプラント材料の液状可塑剤中への浸漬を含む、請求項21から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記可塑剤による少なくとも一部の前記生体適合性ポリマーのコンディショニングが、前記インプラント材料のガス状可塑剤中への浸漬を含む、請求項21から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記インプラント組成物をシリンジ中に配置する、請求項21から31までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
更に、前記インプラント組成物をシリンジを用いて骨欠損中へ注入することを含む、請求項21から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
更に、前記インプラント組成物を、体液と前記可塑剤との接触による、前記可塑剤の前記インプラント組成物からの抽出の結果として硬化させることを含む、請求項24又は33記載の方法。
【請求項35】
更に、可塑的に変形可能な成形可能であるインプラント材料を製造するために、前記生体適合性ポリマー材料に所望のガラス転移温度を付与すべく前記可塑剤を選択すること、及び前記生体適合性ポリマー材料のガラス転移温度よりも高い温度に前記インプラント組成物を加熱することを含む、請求項21から34までのいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
更に、前記生体適合性顆粒を一緒に接着させるために、前記の成形可能であるインプラントをこのガラス転移温度未満に冷却することを含む、請求項35記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate


【公表番号】特表2007−536038(P2007−536038A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512041(P2007−512041)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004938
【国際公開番号】WO2005/107826
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(504343166)ディグレイダブル ソリューションズ アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Degradable Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Wagistrasse 23, CH−8952 Schlieren, Germany
【Fターム(参考)】