説明

生分解性エラストマー及びその製造方法

【課題】高伸度かつ100%引張り応力が5MPa以下の低弾性率の生分解性エラストマーを複雑な工程によらず提供しようとする。
【解決手段】分子量550以上3000未満のポリカプロラクトンの両末端にポリ乳酸が結合されてなる重合物とポリ乳酸とがランダムにジイソシアネートを介して鎖拡張されてなり、乳酸モノマー単位とカプロラクトンモノマー単位とのモル比率が5:3〜1:3であり、破断伸度500%以上、100%引張り応力が0.1〜5MPaである生分解性エラストマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸とポリカプロラクトンの構造を主鎖に含む生分解性エラストマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸の脆弱な力学的特性をカバーして、実用に耐える力学的特性や成形性を有する生分解性ポリマーを得るため、乳酸を含む各種共重合ポリマーや変性ポリマーが開示されている。一例としては、ウレタン化変性やアルキルエステル化変性された改質高分子ポリ乳酸が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、L−乳酸又は/及びD−乳酸成分99. 5〜85重量%と、脂肪族ポリエステル0. 5〜15重量%とが共重合 されてなり、平均分子量が80000以上である生分解 性ポリエステル共重合体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、オキシ酸の重合体または共重合体からなる生分解性を有するポリマー10〜99重量%、及びエチレン含量20〜60モル%酢酸ビニル成分のケン化度90重量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物99〜1重量%からなる共重合が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの反応物に乳酸を反応させて共重合
ポリ乳酸を製造する共重合ポリ乳酸の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
さらに、ポリ乳酸セグメント(A)と、芳香族ポリエステルセグメント(B)およびポリアルキレンエーテルセグメント(C)が互いに結合されてなるブロック共重合物であり、かつそれらの重量比(A/B+C)が99/1〜50/50であることを特徴とするポリ乳酸共重合物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
また、ポリ乳酸とエポキシ化ジエン系ブロック共重合体からなる樹脂組成物、及び、ポリ乳酸とエポキシ化ジエン系ブロック共重合体とポリカプロラクトンからなる生分解性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
さらに、ポリ乳酸又は乳酸共重合体の重合において、重合反応の途中に重合系にポリビニルアルコールを混合し、反応させることが開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0009】
しかしこれら共重合ポリマーは低弾性率エラストマーの範疇に入る100%伸張時の引張り応力(以下100%引張り応力と称する)が5MPa以下のものを得ようとするものではない。
【0010】
また、両末端に水酸基を備えるポリ乳酸からなる第1ブロックと、上記ポリ乳酸よりも運動性の高いポリマーからなる第2ブロックとを有することによって、生分解性を損なうことなく、機械的特性がより改善されたランダムなブロック配列の新規マルチブロックコポリマーが開示されている(例えば、特許文献8参照)。このマルチブロックコポリマーについては第2ブロックとしてポリカプロラクトンを用い、鎖拡張剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを用い、弾性率1.2MPaのものが実施例のうちのひとつとして開示されている。しかし、このマルチブロックコポリマーは、両末端に水酸基を有するポリ乳酸をポリ乳酸成分の原料とするものであり、この原料を得るための副次的な工程とラクトンのような市中での入手が比較的困難で高価な出発材料を必要とし、かつ両末端に水酸基を有するポリ乳酸を得る工程が複雑である。さらに、鎖拡張が有機溶媒(ジクロロメタン)中で行われるので、溶媒の取扱いのための工程や操作を必要とし、製造に手間がかかる。とくに溶媒は漏洩や廃棄時に環境汚染の原因となるおそれがあるので、溶媒を使わない工程が望まれている。
【0011】
一方、分子量2000のポリカプロラクトンジオールの両側にラクチドを反応させてPLA−PCL−PLA(トリブロック体)を合成し、(PLA:ポリ乳酸(乳酸オリゴマーを含む)、PCL:ポリカプロラクトン)このトリブロック体をHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)で連結して鎖拡張して生分解性のポリマーを得ることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。この非特許文献1において得られたポリマーのモジュラスは40MPa以上であり、100%引張り応力が5MPa以下の低弾性率エラストマーではない。さらに、この方法においても溶媒(ジオキサン)中でトリブロック体の鎖拡張反応が行われるので溶媒の取扱いのための工程や操作を必要とし、製造に手間がかかる。
【特許文献1】特開平5−214230号公報
【特許文献2】特開平7−300520号公報
【特許文献3】特開平7−316367号公報
【特許文献4】特開平8−302003号公報
【特許文献5】特開平9−100345号公報
【特許文献6】特開2000−219803号公報
【特許文献7】特開2004−43727号公報
【特許文献8】特開2006−183042号公報
【非特許文献1】D.Cohn,et.al.Biomaterial 26,2297(2005)Designing biodegradeble multiblock PCL/PLA thermoplastic elastomers
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高伸度かつ100%引張り応力が5MPa以下の低弾性率の生分解性エラストマーを複雑な工程によらず提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨とするところは、エラストマーであって、分子量550以上3000未満のポリカプロラクトンの両末端にポリ乳酸が結合されてなる重合物とポリ乳酸とがランダムにジイソシアネートを介して鎖拡張されてなり、前記エラストマー中の乳酸モノマー単位とカプロラクトンモノマー単位とのモル比率が5:3〜1:3であり、破断伸度500%以上、100%引張り応力が0.1〜5MPaである生分解性エラストマーであることにある。
【0014】
前記ジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートであり得る。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、
ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物からなる被加熱物を準備するステップ、
該被加熱物をポリ乳酸が部分的に解重合する温度で加熱するステップ、
加熱された該被加熱物にジイソシアネートを加えて加熱して溶融状態に保って鎖拡張させるステップ
を含む生分解性エラストマーの製造方法であることにある。
【0016】
前記生分解性エラストマーの製造方法においては、前記混合物におけるポリ乳酸中の乳酸モノマー単位とポリカプロラクトンジオール中のカプロラクトンモノマー単位とのモル比率が5:3〜1:3であり得る。
【0017】
前記生分解性エラストマーの製造方法においては、前記ポリ乳酸の分子量が10000〜300000であり得る。
【0018】
前記鎖拡張させるステップにおいては、前記ポリカプロラクトンジオールと略等モルの前記ジイソシアネートが加えられ得る。
【0019】
前記生分解性エラストマーの製造方法においては、前記ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであり得る。
【0020】
さらに、本発明の要旨とするところは、前記生分解性エラストマーと可塑剤と含むエラストマー組成物であることにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、100%引張り応力が5MPa以下の低弾性率で、破断伸度が500%以上の生分解性エラストマーが提供される。
【0022】
本発明によると、ポリ乳酸とポリカプロラクトンを構成要素として含む生分解性エラストマーを複雑な工程によらず、かつ溶媒を用いることなく製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の態様を説明する。本発明の生分解性エラストマーは、
ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物からなる被加熱物を準備するステップ、
該被加熱物をポリ乳酸が部分的に解重合する温度で加熱する加熱ステップ、
加熱された該被加熱物にジイソシアネートを加えて加熱して溶融状態に保って鎖拡張させるステップ
を含む製造方法により製造される。
【0024】
かかる製造方法により得られた本発明の生分解性エラストマーは、破断伸度が500%以上の高伸度のエラストマーであり、100%引張り応力が0.1〜5MPaと軟質である。
【0025】
加熱ステップにおいて、ポリ乳酸が部分的に解重合して重合度が低下するとともに、ポリカプロラクトンジオールの両末端それぞれにポリ乳酸分子が結合して、PLA−PCL−PLA(PLA:ポリ乳酸(単位)、PCL:ポリカプロラクトン(単位))の構造のポリマー(以下トリブロックポリマー(TBP)と称する)が生成される。加熱ステップにおける被加熱物の加熱温度は、ポリ乳酸が解重合する温度であればよく、特に180〜200℃であることが好ましい。また、加熱は、加熱撹拌により均一で透明な溶融物が得られる状態になるまで行うことが好ましい。加熱後の被加熱物中には、TBPと重合度が低下したPLAとが混在することとなる。また、この状態においては、この溶融物の分子量分布は反応の統計的法則に従った統計的な整った分布となる。この状態に至る途中の時点においては、解重合して重合度が低下したポリ乳酸の分子量分布とポリカプロラクトンジオールの分子量分布と、ポリマー生成物の分子量分布とが重なって不均一な分子量分布となる。従って、加熱は、GPCで溶融物の分子量を測定することにより、統計的な整った分布が得られたと判断されるまで行うことが望ましい。
【0026】
鎖拡張させるステップにおいて、TBPとPLAとがジイソシアネートを介してランダムに連結されて共重合物。すなわち、本発明の生分解性エラストマーが得られる。鎖拡張させるステップにおいては、サンプルが融解し、十分な攪拌ができればよくサンプルの融点以上分解温度以下であればよく、60〜170℃で2〜10時間反応させることが好ましい。
【0027】
このように、本発明においては、一つの容器に順次原料を投入して順次加熱して反応させるという単純な工程により、高伸度、低弾性率の生分解性エラストマーが得られる。また、反応は単に原料あるいは中間原料を加熱する操作のみで行なうことができ、溶媒を使用しないので、溶媒の回収や漏洩防止の手間や設備が不要である。さらに、溶媒の漏洩や廃棄にともなう環境汚染の問題も生じない。
【0028】
ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物におけるカプロラクトン単位と、乳酸単位とのモル比率、すなわち、エラストマー中の乳酸モノマー単位とカプロラクトンモノマー単位とのモル比率は5:3〜1:3であることが高伸度のエラストマーを得るうえで好ましい。このモル比率がこの範囲をはずれると、破断伸度500%以上のエラストマーが得られない。さらに、このモル比率が5:3〜2:3であると破断伸度500%以上、かつ、100%引張り応力が0.3〜5MPaの高伸度、軟質のエラストマーが安定して得られる。
【0029】
ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物におけるポリ乳酸の分子量は、50000〜400000であるが好ましい。ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物におけるポリカプロラクトンジオールの分子量は、分子量550以上3000未満であることが高伸度、低弾性のエラストマーを得るうえで好ましい。
【0030】
鎖拡張させるステップにおいて用いるジイソシアネートの添加量は、ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物におけるポリカプロラクトンジオールと略等モルであることが好ましい。
【0031】
本発明において用いられるジイソシアネートの種類はとくに限定されなず、従来公知のものを使用することができ、例えば、メチレンビス(イソシアナート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、3‐メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2'−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンー4,4'−ジイソシアネート(MDI)、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート(MXDI)、p−キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3'−メチレンジトリレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(H12−MDI)、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート(H6−XDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトシクロブタン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン、1,2−、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−または1,3−ビス(2−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−または1,3−ビス(3−イソシアナトプロピ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−または1,3−ビス(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート(LDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1、4−シクロヘキシルジイソシアネート(CDI)、が挙げられる。なかでも脂肪族ジイソシアネートが高伸度のポリマーを得るうえで好ましい。この脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネートが鎖拡張反応が安定しさらに好ましい。
【0032】
[比較例1]
ポリカプロラクトンジオール(ダイセル社製、商品名:PLACCEL205、分子量(水酸基価により測定)530)61.3gをセパラブルフラスコに投入し、窒素気流雰囲気中で攪拌しながら一時間加熱して水分を取り除いた。次に、このポリカプロラクトンジオールにポリ乳酸(三井化学社製、商品名:レイシアH−100、分子量100000)38.7gを添加して、195℃に昇温し、目視により均一で透明な液状となるまで約4〜5時間攪拌・加熱した。その後一時間かけて160℃まで降温し、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリカプロラクトンジオールと等モル加え、この状態で4時間攪拌・加熱して反応させ、反応物をセパラブルフラスコから取出して反応を終え、生分解性ポリマーを得た。
【0033】
この目視により均一で透明な液状となるまで攪拌・加熱したものを一部取出して測定した融点は37℃であった。また、数平均分子量は1800、分子量多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5であった。
【0034】
得られた生分解性ポリマーの破断伸度は100%、100%引張り応力は、0.5MPaであった。
【0035】
[実施例1]
ポリカプロラクトンジオールとして、ダイセル社製、商品名:PLACCEL208、分子量(水酸基価により測定)820を用いた他は比較例1と同様にして生分解性エラストマーを得た。
【0036】
目視により均一で透明な液状となるまで攪拌・加熱したものを一部取出して測定した融点は37℃であった。また、多分散度は1.4であった。
【0037】
得られた生分解性エラストマーの破断伸度は500%以上、100%引張り応力は、0.7MPaであった。
【0038】
[実施例2]
ポリカプロラクトンジオールとしてダイセル社製、商品名:PLACCEL210、分子量(水酸基価により測定)980を用いた他は実施例1と同様にして生分解性エラストマーを得た。
【0039】
目視により均一で透明な液状となるまで攪拌・加熱したものを一部取出して測定した融点は44℃であった。また、数平均分子量は3000、分子量多分散度は1.5であった。
【0040】
得られた生分解性エラストマーの破断伸度は500%以上、100%引張り応力は、1.5MPaであった。
【0041】
[実施例3]
ポリカプロラクトンジオールとしてダイセル社製、商品名:PLACCEL220、分子量(水酸基価により測定)2000を用いた他は実施例1と同様にして生分解性エラストマーを得た。
【0042】
目視により均一で透明な液状となるまで攪拌・加熱したものを一部取出して測定した数平均分子量は6800、分子量多分散度は1.5であった。
【0043】
得られた生分解性エラストマーの破断伸度は500%以上、100%引張り応力は、4.5MPaであった。
【0044】
[実施例4]
ポリカプロラクトンジオールの投入量を44.2g、ポリ乳酸の投入量を55.8gとした他は実施例1と同様にして生分解性エラストマーを得た。
【0045】
得られた生分解性エラストマーの破断伸度は500%以上、100%引張り応力は、2.9MPaであった。
【0046】
[実施例5]
ポリカプロラクトンジオールの投入量を55.3g、ポリ乳酸の投入量を45.7gとした他は実施例1と同様にして生分解性エラストマーを得た。
【0047】
得られた生分解性エラストマーの破断伸度は500%以上、100%引張り応力は、1.1MPaであった。
【0048】
[比較例2]
分子量3000のポリカプロラクトンジオール(ダイセル社製、商品名:PLACCEL230)61.3gをセパラブルフラスコに投入し、窒素気流雰囲気中で攪拌しながら一時間加熱して水分を取り除いた。次に、このポリカプロラクトンジオールにポリ乳酸(三井化学社製、商品名:レイシアH−100、分子量100000)38.7gを添加して、195℃に昇温し、攪拌・加熱したが均一で透明な液状とならず、トリブロックポリマーが得られずに操作を中断した。
【0049】
[比較例3]
ポリカプロラクトンジオールの量を76g、ポリ乳酸の投入量を24gとした他は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0050】
得られた生分解性ポリマーの破断伸度は320%、100%引張り応力は、1.3MPaであった。
【0051】
[実施例6]
実施例1で得られたサンプル6g(100部)に可塑剤(DAIFATTY-101(大八化学工業社製)を0、10、20、30部それぞれ添加したサンプルをテフロン(商品名)製のシャーレに入れ160℃で1時間加熱し、ガラス棒で撹拌し、エラストマー組成物のサンプルを得た。得られたサンプルの100%引張り応力は1MPa、0.9MPa、0.8MPa、0.7MPaと可塑剤の添加に比例して変化した。
【0052】
実施例、比較例における分子量はGPCによる標準ポリスチレン値に換算した。測定器は、東ソー製HLC-8220GPCにTSKgelSuperHZ2000(排除限界分子量:1×104)とTSKgelSuperHZ4000(排除限界分子量:4×105)の2つのカラムを直列に用いて行った。溶離液にはクロロホルムを使用し、温度40℃、流速0.35ml/分、濃度2.5mg/mlの試料を用いた。
【0053】
実施例、比較例における破断伸度、100%引張り応力はTENSILON(ORIENTEC RTL-1350A)に100Nのロードセルを用いて測定を行った。試験片は2号1/2ダンベル片の金型の上に樹脂を置き、2枚のステンレス板で挟んでホットプレス機により180℃でプレスして作成した。チャック間距離40mm、標線間距離12mm、引張速度10mm/minとして、標線間の距離が24mmとなったときの応力を100%引張り応力、破断時の標線間距離Lmmのとき、(L-12)/12*100を破断伸度/%とした。
【0054】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーであって、分子量550以上3000未満のポリカプロラクトンの両末端にポリ乳酸が結合されてなる重合物とポリ乳酸とがランダムにジイソシアネートを介して鎖拡張されてなり、前記エラストマー中の乳酸モノマー単位とカプロラクトンモノマー単位とのモル比率が5:3〜1:3であり、破断伸度500%以上、100%引張り応力が0.1〜5MPaである生分解性エラストマー。
【請求項2】
前記ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1に記載の生分解性エラストマー。
【請求項3】
ポリカプロラクトンジオールとポリ乳酸との混合物からなる被加熱物を準備するステップ、
該被加熱物をポリ乳酸が部分的に解重合する温度で加熱するステップ、
加熱された該被加熱物にジイソシアネートを加えて加熱して溶融状態に保って鎖拡張させるステップ
を含む生分解性エラストマーの製造方法。
【請求項4】
前記混合物におけるポリ乳酸中の乳酸モノマー単位とポリカプロラクトンジオール中のカプロラクトンモノマー単位とのモル比率が5:3〜1:3である請求項3に記載の生分解性エラストマーの製造方法。
【請求項5】
前記ポリ乳酸の分子量が10000〜300000である請求項3または4に記載の生分解性エラストマーの製造方法。
【請求項6】
前記鎖拡張させるステップにおいて、前記ポリカプロラクトンジオールと略等モルの前記ジイソシアネートが加えられる請求項3から5のいずれかに記載の生分解性エラストマーの製造方法。
【請求項7】
前記ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートである請求項3から6のいずれかに記載の生分解性エラストマーの製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の生分解性エラストマーと可塑剤と含むエラストマー組成物。

【公開番号】特開2009−67923(P2009−67923A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239138(P2007−239138)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592032887)日光精器株式会社 (8)
【Fターム(参考)】