説明

生分解性ポリマーおよびその調製方法

本発明は、生分解性ポリマー、特にポリアクリル酸および/もしくはポリアスパラギン酸系生分解性ポリマーに関する。さらに、本発明は、本生分解性ポリマーの調製のための方法および、例えば、保護層または包装材料としてのその使用に関する。具体的には、本発明は、a)ポリアクリル酸および/もしくはポリアスパラギン酸、ナトリウムイオン、1以上のオリゴ糖、またはその誘導体、および水の酸性混合物を調製するステップ(この際得られる混合物のpHは5以下である)、b)前記酸性混合物の温度を、均質な懸濁液が得られるまで、80℃〜130℃の範囲内に維持するステップ、ならびにc)ポリビニルアルコール(PVA)および1以上のポリカルボン酸、またはその誘導体を、該生分解性ポリマーが形成されるまで、温度を80℃〜130℃の範囲に維持しながら、ステップ(b)の前記混合物に添加するステップを含む生分解性ポリマーを調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマー、特にポリアクリル酸および/もしくはポリアスパラギン酸系生分解性ポリマーに関する。さらに、本発明は、本生分解性ポリマーの調製方法および、例えば、保護層または包装材料としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、一般に現代社会において種々の技術分野で、例えば包装、医学用途、自動車産業、航空産業、および一般家庭用途などのために使用されている。しかし、ポリマーの増え続ける使用は、深刻な環境問題を伴う。
【0003】
一般に使用されるポリマー、例えばポリエチレンなどは、ほとんどの場合、石油に基づくか、またはそれに由来する。石油、または化石燃料に基づくポリマーの使用は、最終的に、例えば、フタル酸塩、リン酸塩、ならびに環境の発癌性汚染物質および燃焼時の高い二酸化炭素の排出をもたらす。したがって、ポリマーの再利用は上記の環境問題を防ぐための良い選択肢であるが、この選択肢は概して高密度ポリマーなどの限定されたクラスのポリマーにしか利用できない。
【0004】
上に示した環境問題を回避するためのもう一つの選択肢は、生分解性の、または堆肥化可能なポリマーである。一般に、生分解性の、または堆肥化可能なポリマーは、例えば、微生物によって、その基本的な構成成分に容易に分解されることのできるポリマーである。ほとんどの場合、これらの基本的な構成成分は、生物自体を分解するかまたはその他の生物を分解することによって、栄養素またはその他の添加剤として食物連鎖に再吸収される。
【0005】
少なくとも一部分、石油または化石燃料に基づくポリマーを生分解性ポリマーで置き換えることは、環境汚染の大幅な減少をもたらすことになる。
【0006】
現在、2つの主な種類の生分解性ポリマーまたはプラスチック:ヒドロ生分解性プラスチック(hydro−biodegradable plastics)(HBP)およびオキソ生分解性プラスチック(OBP)が使用可能である。両者は、まず、酸化による化学分解を受け、そしてオキソおよびヒドロ生分解性プラスチックの加水分解をそれぞれ受ける。これにより、それらの物理的崩壊およびそれらの分子量の大幅な減少がもたらされる。これらのより小さい、より低分子量の断片は、その次に生分解を受け入れやすい。
【0007】
HBPは、多少OBPよりも速く分解および生分解する傾向があるが、最終結果は同じであり、両方とも二酸化炭素、水およびバイオマスに変換される。OBPのほうが、一般にHBPよりも費用がかからず、より良好な物理的特性を有し、現行のプラスチック加工装置で加工しやすい。
【0008】
ポリエステルは、その加水分解する可能性のあるエステル結合に起因して、ヒドロ生分解性プラスチックとして主な役割を果たす。HBPは、トウモロコシ、小麦、サトウキビなどの再生可能資源、または非再生可能資源(石油系)、またはこれらの2種類のブレンドから作成することができる。一部のよく使用されるポリマーとしては、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PHBV(ポリヒドロキシブチレート−バリレート)、PLA(ポリ乳酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PVA(ポリビニルアルコール(polyvinyl aclcohol))およびPET(ポリエチレンテレフタラート)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生分解性ポリマーが利用できるにもかかわらず、当技術分野では、より高生分解性のポリマーおよび特に、生分解性特性に加えて、石油系ポリマーによってしばしばもたらされるその他の有益な特性、例えば強度、酸化安定性、熱安定性、透明性、またはさらに完全生分解性、すなわち、例えば、所望により、紫外光、酸素、温度および/または酸度などの物理的環境要因と組み合わせた、微生物によるポリマーの水、二酸化炭素およびバイオマスへの完全な変換なども提供する生分解性ポリマーに対する継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記を考慮して、本発明の目的は、その他の目的の中でも、完全ではないにせよ少なくとも部分的に上に示した問題を解決する有益な特性をもつ新規な生分解性ポリマーを提供することである。
【0011】
この目的は、その他の目的の中でも、新規な生分解性ポリマーおよびその調製のための方法を提供することにより、本発明によって達成される。本発明に従う生分解性ポリマーは、残留有毒成分のない実質的に完全な生分解性のほかに、さらなる有益かつ驚くべき特徴、例えば、特に、熱安定性、酸化に対する耐性、および/または高い機械抵抗または強度をさらに提供する。
【0012】
具体的には、上の目的は、その他の目的の中でも、本発明の第1の態様に従って、
a)ポリアクリル酸および/もしくはポリアスパラギン酸、ナトリウムイオン、1以上のオリゴ糖、またはその誘導体、および水の酸性混合物を調製すること(この際、得られる混合物のpHは5以下である)、
b)前記酸性混合物の温度を、均質な懸濁液が得られるまで80℃〜130℃の範囲内に維持すること、
c)ポリビニルアルコール(PVA)および1以上のポリカルボン酸、またはその誘導体を、該生分解性ポリマーが形成されるまで、温度を80℃〜130℃の範囲に維持しながら、ステップ(b)の前記混合物に添加すること
を含む、生分解性ポリマーを調製する方法によって達成される。
【0013】
ポリアクリル酸は、nが整数である、式(Cで表される反復構造単位を含む。ポリアスパラギン酸は、nが整数である、式(CNOで表される反復構造単位を含む。オリゴ糖は、反復する2〜10の糖構造単位、例えばグルコース、フルクトースガラクトース、キシロースおよびリボースなどを含む。糖類は、一般に炭水化物または糖と呼ばれる。一般的な糖類の誘導体は、例えば、糖アルコールである。
【0014】
本発明の酸性混合物中のナトリウムイオンは、一般に、ナトリウム塩、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムなど、好ましくは水酸化ナトリウムの形態で提供される。
【0015】
本発明の酸性混合物は、好ましくは脱イオン水または蒸留水である、水を含む。
【0016】
本発明の酸性混合物のpHは、pH5に等しいか、またはそれよりも低い、例えば5、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1などのpHである。
【0017】
本発明によれば、本発明の酸性混合物の温度は、均質な懸濁液が得られるまで、80℃〜130℃の範囲で維持される。本発明に従う均質な懸濁液を得ることは、裸眼で混合物が均一または均質に見えるかどうかを立証することにより、容易に視覚的に決定することができる。
【0018】
本発明によれば、本発明の酸性混合物の温度を80℃〜130℃の間、例えば85、90、95、100、105、110、115、120、または125℃など、好ましくは90℃〜115℃の間、より好ましくは100℃〜110℃の間の範囲に維持することが不可欠である。130℃よりも高い温度では、オリゴ糖は、カラメル化または分解などの望ましくない化学反応を示し、一方、80℃よりも低い温度では、不十分な、化学結合などの化学反応性が酸性混合物の構成物質間で観察されるか、または化学結合などの化学反応性は観察されない。同様の考慮点は、本発明のステップ(c)に示される範囲内に温度を維持することにあてはまる。
【0019】
ステップ(c)によれば、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリカルボン酸、またはその誘導体を、ステップ(b)の均質な混合物に添加する。ポリビニルアルコール(PVA)は、nが整数である式(CO)によって表される反復構成単位を有する。ポリカルボン酸は、少なくとも2つの−COOH基、例えば2、3、または4つのカルボン酸基を有する炭化水素である。
【0020】
本発明によれば、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリカルボン酸、またはその誘導体を、ステップ(b)の均質な混合物に添加した後、生分解性ポリマーが形成されるまで温度を上に示した範囲内に維持する。生分解性ポリマーの形成は、冷却すると固体構造を形成するゲル様構造の形成を立証することにより、容易に観察することができる。
【0021】
本発明によれば、本発明の方法の1以上のステップ、例えばステップ(a)、(b)、および/または(c)などは、好ましくは機械的攪拌などの継続的混合下で実行される。
【0022】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の酸性混合物は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で:
5%〜60%のポリアクリル酸および/またはポリアスパラギン酸、
3%以下のナトリウムイオン、および
2%〜30%の1以上のオリゴ糖、またはその誘導体
を含む。
【0023】
本発明の第1の態様のもう一つの好ましい実施形態によれば、ステップ(d)において、全生分解性ポリマーの重量百分率で:
0.1〜20%のポリビニルアルコール、および
0.1〜3%のポリカルボン酸、またはその誘導体
が添加される。
【0024】
本発明の第1の態様のさらにもう一つの好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の本発明の酸性混合物のpHは、1〜4.5、好ましくは3.5〜4、例えば4.4、4.3、4.2、4.1、4、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1などのpHである。本発明者らは、意外にも、所望により、上に示される温度範囲と組み合わせて、示される範囲のpH、特に3.5〜4の範囲内のpHを注意深く制御するかまたは維持することにより、最適な反応条件、または架橋条件がもたらされ、その結果優れた特徴をもつ生分解性ポリマーがもたらされることを見出した。
【0025】
本発明の第1の態様のさらにもう一つの好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の本発明の酸性混合物は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で:5%〜60%、好ましくは5〜55%のポリアクリル酸および/またはポリアスパラギン酸を含む。
【0026】
本発明の第1の態様のさらに好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の本発明の酸性混合物は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.05%〜2%のナトリウムイオン、例えば0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2.0%などを含む。本発明者らは、意外にも、所望により、上に示される温度およびpH範囲と組み合わせて、ナトリウムイオンの量を注意深く制御することにより、最適な反応条件、または架橋条件がもたらされ、その結果優れた特徴をもつ生分解性ポリマーがもたらされることを見出した。
【0027】
本発明の第1の態様のなおさらに好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の本発明の酸性混合物は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で2%〜25%、好ましくは2%〜20%の1以上のオリゴ糖、またはその誘導体を含む。このオリゴ糖は、2、3、4、5、6、7、8、9または10の糖単位を含むことができる。
【0028】
本発明のこの実施形態に従う好ましいオリゴ糖は、二糖および/または三糖類、好ましくはスクロース、マルトース、ラクトース、ニゲロトリオース、マルトトリオース(maltrotriose)、メレジトース、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールおよびラクチトールからなる群から選択されるものである。
【0029】
本発明の第1の態様のまた好ましい実施形態によれば、2以上または3以上などの本発明の1以上のポリカルボン酸は、好ましくはクエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、コハク酸、マレイン酸、シトロフォール(citrofol)a1およびシトロフォールb1、好ましくはクエン酸および/またはシトロフォールb1からなる群から選択されるジもしくはトリカルボン酸である。
【0030】
この好ましい実施形態によれば、1以上のポリカルボン酸は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.1%〜2.5%、好ましくは0.2%〜2%、より好ましくは0.3%〜1%、最も好ましくは0.5%の量で添加される。
【0031】
ポリカルボン酸は、置換されていなくてもよいし、任意の長さの任意の残りの(any rest)アルキル、アルセニル(alcenyl)、アルシニル(alcynyl)、アシル、アリールで置換されていてもよい。ポリカルボン酸の誘導体は、エステル類またはアミド類であり得る。シトロフォールa1およびb1は、それぞれ、クエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチルとしてIUPACに公知である。
【0032】
本発明によれば、ポリビニルアルコール(PVA)は、ステップ(b)の前記混合物に、生分解性ポリマーが形成されるまで、80℃〜130℃の範囲に温度を維持しながら添加される。好ましい実施形態によれば、ポリビニルアルコール(PVA)は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜15%、より好ましくは1%〜10%、最も好ましくは1%〜5%の量で添加される。
【0033】
本発明によれば、上に概説するように生分解性ポリマーを調製するための本発明の方法は、好ましくは、菜種油、オリーブ油、キャラウェー油、大豆油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、ピーナッツ油またはピーナッツバター、ココナッツバター、レモン油、ヒツジ脂、牛脂、および魚油からなる群から選択される1以上の植物油および/または動物油ならびに/あるいは植物性脂肪および/または動物性脂肪を含む酸性混合物を調製することを含む。
【0034】
この好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、1以上の植物油および/または動物油ならびに/あるいは植物性脂肪および/または動物性脂肪を、酸性混合物に、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で0.1%〜5%、好ましくは0.1%〜4%の量で添加することを含む。
【0035】
好ましくは、本発明に従う方法は、ステップ(d)において、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で0.5%〜20%の単糖および/または二糖および/または1以上の、例えば2以上、3以上、4以上、5以上などの1以上の疎水性シリカおよび/またはシリケート、好ましくはアエロジルR972および/またはケイ酸ナトリウムを、0.01%〜5%、好ましくは0.02%〜3%、より好ましくは0.05%〜1%の量で添加することをさらに含む。
【0036】
疎水性シリカは、表面に化学結合した疎水基を有するシリカである。疎水性シリカは、ヒュームドシリカおよび沈降シリカの両方から作成することができる。疎水基は、通常アルキル鎖またはポリジメチルシロキサン鎖である。ケイ酸ナトリウムは、例えば、NaSiO、NaSiO、NaSiであり得る。
【0037】
本発明に従う方法のさらにもう一つの好ましい実施形態によれば、本発明のステップ(a)および/またはステップ(d)は、生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.05%〜5%、好ましくは0.1%〜4%、より好ましくは0.2%〜3%の1以上の添加剤を総量かまたは別々の総量で添加することをさらに含む。本発明の1以上の添加剤は、好ましくは、グリセロール、グルコン酸、ジ−アセタール、硫酸ナトリウム、および殺生物剤からなる群から選択される。
【0038】
グリセロール、またはプロパン−1,2,3−トリオール、およびグルコン酸は、ポリオール類であり、2以上のアルコール(−OH)有機基をもつ炭化水素である。それぞれの式は、C(OH)およびC12である。その他のポリオール類も適し得る。
【0039】
本発明に従う殺生物剤は、通常選択できる方法で、生きている生物を死滅させることのできる化学物質である。殺生物剤は、薬、農業、林業において、そしてそれらが水道管および油送管の汚れを防ぐ産業において一般的に使用されている。殺生物剤として使用される一部の化合物はまた、その他の条件下で防汚剤または消毒剤としても用いられている。
【0040】
本発明によれば、適したさらなる添加剤は、固化防止剤、酸化防止剤、消泡剤、または着色剤である。
【0041】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、ステップ(c)で得た生分解性ポリマーを、押出、熱成形、射出成形、吹込成形、コーティング、スピニング、ローリング、圧縮成形、およびトランスファー成形からなる群から選択されるプロセスによって成形することを含むステップ(d)をさらに含む。
【0042】
押出は、固定された断面外形をもつ物体を作るために使用されるプロセスである。材料を押すかまたは引いて所望の断面をもつダイに通す。
【0043】
熱成形は、プラスチックシートを柔軟な成形温度に加熱し、型の中で特定の形状に形成し、バリ取りして使用可能な製品を作り出す製造プロセスである。このシート、またはより薄いゲージおよび特定の材料種を指す場合に「フィルム」は、オーブンで型の中または上に伸ばすことのできるほど十分に高い温度まで加熱され、完成形に冷却される。
【0044】
射出成形は、熱可塑性プラスチック材料および熱硬化性プラスチック材料の両方から部品を製造するための製造プロセスである。材料を加熱したバレルに供給し、混合し、金型キャビティに押し込み、そこで材料を冷却し固化させて金型キャビティの形状とする。射出成形は、車の最小構成部品から車体パネル全体まで、多様な部品を製造するために広く使用されている。
【0045】
吹込二次成形(blow forming)としても公知である吹込成形(blow molding)は、それによって中空のプラスチック部品を形成する製造プロセスである。それは、熱可塑性物質から中空の物体を生成するために使用されるプロセスである。最初に、少し管状の、熱いプラスチック樹脂のプレフォーム(またパリソン)を作り出す。次に、加圧ガス、通常空気を用いて熱いプレフォームを膨張させ、それを金型キャビティに押し付ける。プラスチックが冷却するまで圧力を保持する。この処置が、吹込成形品の別の一般的な特徴を特定する。部品寸法の詳細は、内側よりも外側でよりよく制御され、材料の肉厚によって内部の形状を変更することができる。プラスチックが冷却されて固化したら、型を開けて部品を取り出す。
【0046】
圧縮成形は、成形材料(一般に予熱したもの)を、まず加熱した開放金型キャビティに入れる成形の方法である。型を上型またはプラグ部材で閉じ、圧力を印加して材料を型の全域と接触させ、その間に成形材料が硬化するまで熱および圧力を維持する。
【0047】
トランスファー成形は、成形材料の量を測定し、成形が起こる前に挿入するプロセスである。成形材料を予熱し、ポットとして公知のチャンバに装填する。次に、プランジャーを用いて材料を、ポットから、スプルーとして公知のチャネルおよびランナーシステムを通って金型キャビティの中へと押し出す。型は材料が装入される時は閉じたままであり、部品をスプルーおよびランナーから放出するために開けられる。型壁は型材料の融点よりも高い温度まで加熱する、これにより、キャビティを通る材料の流れを速くする。
【0048】
本発明の第1の態様のさらにもう一つの好ましい実施形態によれば、ステップ(d)の前の本生分解性ポリマーは、別のポリマー、好ましくは生分解性ポリマーと混合される。本発明のこの態様により、本方法をリサイクル過程に応用することが可能となる。
【0049】
本発明によって得られる生分解性ポリマーは、生分解性のほかに優れた特性、例えば、数ある中でも、熱安定性、酸化に対する耐性、および/または高い機械抵抗または強度などを提供する。
【0050】
したがって、本発明は、第2の態様によれば、上に概説する方法によって得られる生分解性ポリマーに関する。
【0051】
本発明の生分解性ポリマーは、多数の用途に好適に使用することができる。
【0052】
したがって、本発明は、第3の態様によれば、該使用が、保護層としての表面コーティングのため、断熱のため、酸化防止のための遮蔽のため、包装材料の製造、食品容器の製造、および食品保護フィルムの製造のためからなる群から選択される、本生分解性ポリマーの使用に関する。
【0053】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の以下の実施例においてさらに概説および詳述される。本発明の範囲は添付される特許請求の範囲によってのみ決定されるので、これらの実施例は、決して本発明の範囲を制限するために提供されるものではない。実施例中、図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】3つの生分解性ポリマーバッチのTGAを表す図である。
【図2】3つの生分解性ポリマーバッチのDSCを表す図である。
【図3】生分解性ポリマーを支持体として用いる細菌研究を示す図である。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
本発明の生分解性ポリマーのサンプルを5つ調製した。これらのポリマーの構成成分を表1に示す。生分解性ポリマーは、通常の石油系ポリマーが使用されるあらゆる用途において、食品産業から医薬まで、プラスチック工具の製造のため、金属製装置、例えばステンレス鋼、チタン、アルミニウム製の器具などのコーティングのため、ならびにパッケージング産業において、例えば保護フィルムまたは食品用(または非食品用)パッケージングなどで好適に使用することができる。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例2)
上記生分解性ポリマーA〜Eの安定性を、分解および融点に関して熱的挙動を通じて調査した。本発明の生分解性ポリマーの一般的傾向を示す、代表的な熱重量分析(TGA)曲線および示差走査熱量測定(DSC)曲線を、図1および2に示す。
【0058】
図1は、3種類の異なる生分解性ポリマー(A、BおよびC)の熱重量分析を示す。試験したサンプルは、388℃の温度まで分解を示さない。分解は、388℃〜489℃の間に観察された。そのため、本発明の生分解性ポリマーは、分解することなく、高温に加熱され、耐えることができる。
【0059】
図2は、熱量測定を示し、吸熱融解過程が示される。融解温度は130.35℃と測定される。
【0060】
(実施例3)
酸化誘導時間(OIT)を、DSCで実施し、材料の安定化のレベルを測定させた。OITは、本発明に従う生分解性ポリマーで行った。試験したすべての生分解性ポリマー(A〜E)は、増加した酸素雰囲気中で150℃まで加熱され、改善された安定性を示した。
【0061】
(実施例4)
図3は、細菌増殖に使用した本発明に従う生分解性ポリマー、すなわちAの代表的な図を示す。この生分解性ポリマーは、抗菌性添加剤を含まなかった。細菌による生分解は容易に観察することができる。ポリマーB〜Eに関して同様の結果が得られた。
【0062】
本発明に従う生分解性ポリマーは、したがって細菌増殖または微生物培養に使用することができる。しかし、滅菌材料の製造のため、または医療目的のためには、抗菌性添加剤が存在することが望ましい。
【0063】
(実施例5)
弾性特性および耐破損性を、5つの生分解性ポリマーバッチ、すなわちA〜Eに関して、引張試験によって決定した。ヤング率Eおよび生分解性ポリマーサンプルの力に対する抵抗性は、市販のポリマーに匹敵するか、またはそれよりも良好である。
【0064】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリアクリル酸および/もしくはポリアスパラギン酸、ナトリウムイオン、1以上のオリゴ糖、またはその誘導体、および水の酸性混合物を調製するステップであって、得られる混合物のpHが5以下であるステップと、
b)前記酸性混合物の温度を、均質な懸濁液が得られるまで80℃〜130℃の範囲に維持するステップと、
c)ポリビニルアルコール(PVA)および1以上のポリカルボン酸、またはその誘導体を、該生分解性ポリマーが形成されるまで、温度を80℃〜130℃の範囲に維持しながら、ステップ(b)の前記混合物に添加するステップと
を含む生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項2】
ステップ(a)の前記酸性混合物が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で:
5%〜60%のポリアクリル酸および/またはポリアスパラギン酸と、
3%以下のナトリウムイオンと、
2%〜30%の1以上のオリゴ糖、またはその誘導体と
を含む請求項1に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項3】
ステップ(d)において、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で:
0.1〜20%のポリビニルアルコールと、
0.1〜3%のポリカルボン酸、またはその誘導体と
が添加される請求項1または2に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項4】
ステップ(a)の前記混合物のpHが、1〜4.5、より好ましくは3.5〜4の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項5】
ステップ(a)の前記酸性混合物が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で:5%〜60%、好ましくは5〜55%のポリアクリル酸および/またはポリアスパラギン酸を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項6】
前記ナトリウムイオンが、水酸化ナトリウムをステップ(a)の前記酸性混合物に添加することにより提供される請求項1〜5のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項7】
ステップ(a)の前記酸性混合物が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.05%〜2%のナトリウムイオンを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項8】
ステップ(a)の前記酸性混合物が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、2%〜25%、好ましくは2%〜20%の1以上のオリゴ糖、またはその誘導体を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項9】
前記1以上のオリゴ糖が二糖および/または三糖である請求項1〜9のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項10】
前記1以上のオリゴ糖、またはその誘導体が、スクロース、マルトース、ラクトース、ニゲロトリオース、マルトトリオース(maltrotriose)、メレジトース、糖アルコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールおよびラクチトールからなる群から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項11】
前記ポリカルボン酸が、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、コハク酸、マレイン酸、シトロフォールa1およびシトロフォールb1、好ましくはクエン酸および/またはシトロフォールb1からなる群から選択されるジもしくはトリカルボン酸である請求項1〜10のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項12】
ステップ(d)において、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.1%〜2.5%、好ましくは0.2%〜2%、より好ましくは0.3%〜1%、最も好ましくは0.5%のポリカルボン酸、またはその誘導体が添加される請求項1〜11のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項13】
ステップ(d)において、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜15%、より好ましくは1%〜10%、最も好ましくは1%〜5%のポリビニルアルコールが添加される請求項1〜13のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項14】
ステップ(b)の該温度が、85℃〜120℃、より好ましくは90℃〜115℃、最も好ましくは100℃〜110℃の範囲で維持される請求項1〜13のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項15】
ステップ(c)の該温度が、85℃〜120℃、より好ましくは90℃〜115℃、最も好ましくは100℃〜110℃の範囲で維持される請求項1〜14のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項16】
ステップ(a)の前記混合物が、菜種油、オリーブ油、キャラウェー油、大豆油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、ピーナッツ油またはピーナッツバター、ココナッツバター、レモン油、ヒツジ脂、牛脂、および魚油からなる群から選択される1以上の植物油および/または動物油ならびに/あるいは植物性脂肪および/または動物性脂肪をさらに含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項17】
ステップ(a)の前記酸性混合物が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.1%〜5%、好ましくは0.1%〜4%の1以上の植物油および/または脂肪を含む請求項16に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項18】
ステップ(d)において、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.5%〜20%の単糖および/または二糖がさらに添加される請求項1〜17のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項19】
ステップ(d)において、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.01%〜5%、好ましくは0.02%〜3%、より好ましくは0.05%〜1%の1以上の疎水性シリカおよび/またはケイ酸塩がさらに添加される請求項1〜18のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項20】
前記1以上の疎水性シリカが、アエロジルR972である請求項19に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項21】
1以上の疎水性ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウムである請求項19に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項22】
ステップ(a)および/またはステップ(d)が、前記生分解性ポリマーの総重量の重量百分率で、0.05%〜5%、好ましくは0.1%〜4%、より好ましくは0.2%〜3%の1以上の添加剤、好ましくはグリセロール、グルコン酸、ジ−アセタール、硫酸ナトリウム、および殺生物剤からなる群から選択される添加剤を添加することをさらに含む請求項1〜21のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項23】
ステップ(c)において得られる前記生分解性ポリマーを、押出、熱成形、射出成形、吹込成形、コーティング、スピニング、ローリング、圧縮成形、およびトランスファー成形からなる群から選択されるプロセスによって成形することを含むステップ(d)をさらに含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項24】
前記生分解性ポリマーが、ステップ(d)の前に、別のポリマー、好ましくは生分解性ポリマーと混合される請求項23に記載の生分解性ポリマーを調製する方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の方法によって得られる生分解性ポリマー。
【請求項26】
請求項25に記載の生分解性ポリマーの使用であって、該使用が、保護層としての表面コーティングのため、断熱のため、酸化防止のための遮蔽のため、包装材料の製造、食品容器の製造、および食品保護フィルムの製造のためからなる群から選択される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518976(P2013−518976A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552266(P2012−552266)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051663
【国際公開番号】WO2011/098122
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512207043)ニュートリポル・キャピタル・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ (1)
【Fターム(参考)】