説明

生分解性ポリマー領域を有する医療デバイス

本発明の一態様により、1つまたは複数の生分解性領域を含む、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスが提供される。これらの生分解性ポリマー領域は、1つまたは複数のポリマーを含有し、少なくともその1つが、(a)37°Cを下回るガラス転移温度を示す1つまたは複数の非結晶性ポリマーブロック、および(b)37°Cを超えるガラス転移温度を示す1つまたは複数の非結晶性ポリマーブロックを含む生分解性コポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療デバイスに関し、より詳細には、生分解性ポリマー領域を含む植え込み可能または挿入可能な医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
体内へ植え込むまたは挿入するための多くのポリマーベースの医療デバイスが、開発されている。例えば、近年では、Boston Scientific社(TAXUS)、Johnson & Johnson(CYPHER)、およびその他から商業的に入手可能な薬剤溶離冠状動脈ステントが、血管開通を維持するのに標準的な治療となっている。これらの既存の製品は、制御された速度および全投与量で、抗増殖剤を解放する生体安定性ポリマーコーティングを備えた金属製のバルーン拡張型ステントに基づいている。
【0003】
薬剤溶離ポリマーコーティング用の生体安定性ポリマーの具体例は、例えば、Pinchuk等の米国特許第6,545,097号に記載される、ポリスチレンーポリイソブチレンーポリスチレントリブロックコポリマー(SIBSコポリマー)などの、ポリイソブチレンおよびポリスチレンのブロックコポリマーを含み、これは、その優れた弾性、強度、および生体適合性を含めた多様な理由のために、植え込み可能および挿入可能な医療デバイスにおいて有益であることが証明されている。Pinchuk等に記載されるように、SIBSコポリマー系からのパクリタキセルなどの治療剤の放出プロフィール特性は、これらのコポリマーが、生体内の部位に治療剤を提供するための有効な薬剤送達系であることを証明する。
【0004】
一方、生分解性ポリマーは、それらが経時的に代謝されることから、生体安定性ポリマーに関連し得るいずれの長期間の影響(例えば、異物作用など)も減少または消滅させる利点を提供することができる。
【0005】
生分解性ポリマーコーティングを含む、金属冠状動脈ステントのポリマーコーティングは、ひび割れたり、元に戻せない程変形することなく、ステントの配置/拡張時に受ける変形歪力に耐えることができなければならない。これは、典型的にはエラストマーである、破損するまでの変形歪力値が高い材料を必要とするが、これはさらに、生体内で37°Cでの高圧(例えば、9気圧より大きい)でのバルーン拡張に関連する応力に耐えるための適切な膜強度および結合性を有する。
【0006】
残念なことに、植え込み可能および挿入可能な医療デバイスで使用する多くの生分解性ポリマーは、(a)37°Cを超えるガラス転移温度(Tg)を有する単一相の系を形成し、したがって硬質であり実質的に非弾性であり、ステント拡張に関連するものなど高い変形歪力を受ける際、重大なひび割れおよび/または変形につながるか、または(b)弾性であるが、低い降伏強度を有する37°Cを下回るTgを有する単一相の系を形成するか、のいずれかである。
【0007】
多相の系を形成し、37°Cを超えるTg(一般に、「ハードブロック」と称される)および37°Cを下回るTg(一般に、「ソフトブロック」と称される)を共に示すポリマーブロックを有するブロックコポリマーが知られており、これは弾性かつ強靭である傾向があり、これにより上記の単一相の系の欠点を克服する。しかしながら、既存の生分解性ブロックコポリマー、例えば、ポリ(ブチルテレフタレート)をベースとするブロックコポリマーは、1つまたは複数の結晶性ハードブロックを含み、後の段階の分解時に結晶分裂片につながり、これは、血管インプラントにおいて強力かつマイナスの反応となることが示されている。
【0008】
上記のおよび他の欠点は、本発明によって対処される。
【特許文献1】米国特許第6,545,097号
【発明の開示】
【0009】
本発明の一態様により、1つまたは複数の生分解性ポリマー領域を含む、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスが提供される。これらの生分解性ポリマー領域は、1つまたは複数のポリマーを含み、少なくともその1つが、(a)37°Cを下回るTgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロック、および(b)37°Cを超えるTgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロックを含む生分解性コポリマーである。
【0010】
本発明の利点は、生分解性であり、強靭かつ弾性の医療デバイス(またはその一部)を提供することができることである。
【0011】
本発明の別の利点は、生分解性であるが、後の段階のポリマー分解時に、結晶分裂片を生じない、医療デバイス(またはその一部)を提供することができることである。
【0012】
本発明のこれらのおよび他の態様、実施形態および利点は、以下の詳細な記載および特許請求の範囲を吟味すれば、当業者にはすぐに明白になるであろう。
〔詳細な記載〕
【0013】
本発明の一態様によると、1つまたは複数の生分解性ポリマー領域から成る、またはこれを含む、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスが提供される。これらの生分解性ポリマー領域は、1つまたは複数のポリマーを含み、少なくともその1つが、(a)37°Cを下回るTgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロック、および(b)37°Cを超えるTgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロックを含む生分解性コポリマーである。
【0014】
いくつかの実施形態において、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスは、生分解性ポリマー領域上、その中またはその下に配置され得る任意選択の治療剤を含む。医療デバイスの植え込みまたは挿入後、少なくとも1つの治療剤が生体内で放出されてよい。
【0015】
本発明と併せて使用する生分解性ポリマー領域は、例えば、デバイス(ステント、グラフト、組織工学スカフォルド、尿道バルキングビーズなど)全体に対応することができる。
【0016】
一方、それらは、例えば、医療デバイスの一部のみに対応することもできる。
【0017】
例えば、生分解性ポリマー領域は、医療デバイス内に組み込まれる1つまたは複数の繊維の形態であってよい。
【0018】
他の実施例において、生分解性ポリマー領域は、下層医療デバイス基板全体、またはその一部のみの上に形成される1つまたは複数の生分解性ポリマー層の形態であってよく、それらはまた、事前に形成され下層医療デバイス基板に装着された1つまたは複数の生分解性ポリマー層の形態などであってよい。本明細書で使用されるように、所与の材料の「層」は、その長さおよび幅の両方と比較して厚みが小さい、その材料の領域である。本明細書で使用されるように、層は平坦である必要はなく、例えば、下層基板の輪郭をたどる。層は、非連続的(例えば、パターン形成される)であってよい。用語「膜」、「層」および「コーティング」は、本明細書で互換可能に使用されてよい。
【0019】
本発明による生分解性ポリマー層は、多様な場所および多様な形状で下層基板上に設けることができる。下層医療デバイス基板として使用する物質は、セラミック、金属およびポリマー基質を含む。
【0020】
例えば、ステントなどの管状デバイス(例えば、レーザまたは機械的切断管、1つまたは複数の組まれた、織られた、または編まれたフィラメントなどを有することができる)の場合、生分解性ポリマー層は、管腔面上、非管腔面上、管腔面と非管腔面の間の側面上などに設けることができる。さらに、治療剤を含まない、同一の治療剤を含む、または異なる治療剤を含む複数の生分解性ポリマー層を設けることができる。したがって、例えば、同一の治療剤を、同一のまたは異なる速度で、医療デバイスの異なる場所から放出することが可能である。また、医療デバイスの異なる場所から異なる治療剤を放出することが可能である。例えば、第1治療剤(例えば、抗血栓剤)を含む第1領域をその内側、すなわち管腔面に有し、および第2治療剤(例えば、抗増殖剤)を含む第2領域をその外側、すなわち非管腔面に有する管状医療デバイス(例えば、血管ステント)を実現することが可能である。
【0021】
本発明が適用可能な医療デバイスの例は、例えば、中でも、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルなどの腎臓または血管カテーテル、および種々の中心静脈カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)、ステント(冠状動脈血管ステント、末梢血管ステント、脳性、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸管および食道ステントを含む)、ステントグラフト、血管グラフト、血管アクセスポート、大脳動脈瑠フィラーコイルを含めた塞栓形成デバイス(例えばGuglilmi着脱式コイルおよび金属コイル)、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカおよびペースメーカリード、左心室補助心臓およびポンプ、完全人工心臓、心臓弁、血管弁、吻合クリップおよびリング、組織バルキングデバイス、および軟骨、骨、皮膚および他の生体内組織再生用の組織工学スカフォルドなどの多様な植え込み可能または挿入可能な医療デバイスを含める。
【0022】
本発明の医療デバイスは、全身治療に使用される、および哺乳類のいずれかの組織または器官の局所治療に使用される植え込み可能および挿入可能な医療デバイスを含める。非制限的な例は、腫瘍;心臓、冠状動脈および末梢血管系(全体的に「血管構造」と称される)を含めた器官、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立線、膣、子宮および卵巣を含めた尿生殖器系、目、肺、気管、食道、腸管、胃、脳、肝臓およびすい臓、骨格筋、平滑筋、胸部、皮膚組織、軟骨、歯および骨を含める。
【0023】
本明細書で使用されるように「治療」は、疾病または病状の予防、疾病または病状に関連する症状の緩和または排除、あるいは疾病または病状の実質的なまたは完全な排除を指す。好ましい被験体(「患者」とも称される)は、脊椎動物被験体であり、より好ましくは哺乳類被験体であり、より好ましくはヒト被験体である。
【0024】
本明細書で使用されるように「ポリマー領域」は、1つまたは複数のポリマー、例えば、50重量パーセント以上、75重量パーセント以上、90重量パーセント以上、またはさらに95重量パーセント以上のポリマーを含有する領域である。
【0025】
生分解性ポリマー領域は、植え込みまたは挿入後、例えば、一定期間の日数、週、月、またはさらに年数にわたって、生体内で分解または溶解するものである。
【0026】
本明細書で使用されるように「ポリマー」は、通常モノマーと称される1つまたは複数の構成単位の複数の(典型的には5、10、100、1000またはそれ以上)コピーを含む分子である。本明細書で使用されるように「ホモポリマー」は、単一の構成単位の複数のコピーを含む。「コポリマー」は、少なくとも2つの異なる構成単位の複数のコピーを含むポリマーである。
【0027】
先に示したように、本発明の生分解性ポリマー領域は、1つまたは複数のポリマーを含み、少なくともその1つが、(a)高Tgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロック、および(b)低Tgを示す1つまたは複数の非結晶ポリマーブロックを含む生分解性ブロックコポリマーである。
【0028】
本明細書で使用されるように、ポリマー「ブロック」は、例えば、10、25、50、100、250、500、1000またはさらにそれ以上の単位の構成単位の群に対応するポリマーの一部である。ブロックは、分岐または非分岐であってよい。ブロックは、単一のタイプの構成単位(本明細書では「ホモポリマーブロック」とも称される)、または、例えば、ランダム、統計学的、グラジエント、および反復的(例えば、交互の)配置で設けられてよい複数のタイプの構成単位(本明細書では「コポリマーブロック」とも称される)を含むことができる。「鎖」は、構成単位の線形(非分岐)の群(すなわち線形ブロック)である。
【0029】
本明細書で定義されるように、「高Tg」を示すブロックは、37°Cを超える(例えば、40°Cから50°Cまで、75°Cまで、100°Cまで、125°Cまで)Tgを示すものであり、「低Tg」を示すブロックは、37°Cを下回る(例えば、−50°Cから−25°Cまで、0°Cまで、25°Cまで、35°Cまで)Tgを示すものである。
【0030】
生分解性コポリマー内のポリマーブロックのガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)または当分野で既知の他の手段によって容易に測定することができる。
【0031】
ポリマーブロックが非結晶性であっても、またはそうでなくとも、当分野で知られるように、DSCまたはX線回析を使用して、測定することができる。
【0032】
非結晶性高Tg生分解性ポリマーブロックの具体例は、(a)アモルファスポリ(d、l−ラクチド)ブロックなど1つまたは複数のポリ(ヒドロキシ酸)を含む好適なアモルファスホモポリマーブロックまたはコポリマーブロック、および(b)米国、ニュージャージー州、ニューブルンスウィック、TyRx Pharma社より入手可能な2,2−チロシンポリアリレートなど、好適なアモルファスチロシンベースポリアリレートブロックを含む。
【0033】
非結晶性低Tg生分解性ポリマーブロックの具体例は、(a)ポリ(イプシロン−カプロラクトン)ブロックなどアモルファスポリカプロラクトンブロックを含む、1つまたは複数のポリ(ヒドロキシ酸)を有する、好適なアモルファスホモポリマーブロックまたはコポリマーブロック、(b)ポリ(1,4ジオキサン−2−オン)ブロックとしても知られるポリ(p−ジオキサノン)ブロックなど1つまたは複数のポリ(エステル−エーテル)を有する好適なアモルファスホモポリマーブロックまたはコポリマーブロック、および(c)ポリ(エチレングリコール)ブロックなど1つまたは複数のアルキレンオキシドを有する好適なアモルファスホモポリマーブロックまたはコポリマーブロックを含める。
【0034】
本発明の生分解性ポリマー領域内で使用する生分解性ブロックコポリマーは、例えば、環状、線形および分岐構造から選択され得るいくつかの構造をとることができる。分岐構造は、星形構造(例えば3つ以上の鎖が、単一の分岐位置から発生する)、櫛形構造(例えば、1つの主鎖および複数の側鎖を有する構造)デンドリティック構造(例えば、樹枝状およびハイパーブランチポリマー)などを含む。
【0035】
線形、非結晶性高Tg生分解性ポリマーブロック「H」、および線形、非結晶性低Tg生分解性ポリマーブロック「L」を含むコポリマーに関するいくつかの例を以下に記載する。上記に記載するように、これらのブロックは、ホモポリマーブロックまたはコポリマーブロック(例えば、ランダム、周期的反復などの構成単位を含むコポリマーブロック)であってよい。例は、以下の構造を有する生分解性ブロックコポリマーを含む:(a)HLまたはLH、nは整数であり、例えばHL(ジブロック)、HLHまたはLHL(トリブロックコポリマー)、HLまたはLH(3本のアームの星形コポリマー)など。他の例は、(HL)、L(HL)、(LH)またはH(LH)など交互の構造を含める。例えば、トリブロックコポリマーLHLとして一般に指定されるLH−X−HLに関して、ブロックコポリマーの記載において小規模X(例えば、シード分子、結合基など)の存在を無視することが一般的であることに留意されたい。
【0036】
例示の実施形態は、HLHトリブロックコポリマーを利用し、ここでは、「H」ブロックは、約65°CのTgを有するアモルファスポリ(d,l−ラクチド)を有し、「L」ブロックは、約−10°Cから0°CのTgを有するポリジオキサノンを有する。Hブロックの数平均分子量(Mn)は、それぞれ約5000から25000ダルトンの範囲であってよく、ソフトブロックのMnは、約1000から25000ダルトンの範囲であってよい。
【0037】
別の例示の実施形態は、HLHトリブロックコポリマーを利用し、ここでは、「H」ブロックは、約65°CのTgを有するアモルファスポリ(d,l−ラクチド)を有し、「L」ブロックは、約−20°CのTgを有するポリエチレングリコールを有する。HブロックのMnは、それぞれ約5000から20000ダルトンの範囲であってよく、LブロックのMnは、約1000から2000ダルトンの範囲であってよい。約2000ダルトンを超えるポリ(エチレングリコール)ブロックの長さで、処理中の結晶化が生じる可能性があり、これは本発明とは相反する。
【0038】
第3の例示の実施形態は、HLHトリブロックコポリマーを利用し、ここでは、「H」ブロックは、約65°CのTgを有するアモルファスポリ(d,l−ラクチド)を有し、「L」ブロックは、約−50°CのTgを有するポリカプロラクトンを有する。ポリマーの結晶化を防ぐために熱的クエンチ処理が利用され、および/または2000ダルトン未満までポリカプロラクトンブロックの長さを制限する。
【0039】
上記のものなどトリブロックコポリマーは、リングオープン重合技法など、生分解性ポリマー分野で教示されるものなどの重合法を使用して、重合されてよい。あるいは、トリブロックを形成するための適切なカップリング反応を使用して、モノ−エンド−官能性ポリ(d,l−ラクチド)が、ジ−エンド−官能性ポリジオキサノン、ポリ(エチレングリコール)またはポリカプロラクトンと共有結合されてよい。
【0040】
他の例は、主鎖として、1つの、線形、非結晶性高Tg生分解性ポリマーブロックと、側鎖として(すなわち、ブロックコポリマーが櫛形構造を有する)、多くの線形、非結晶性低Tg生分解性ポリマーブロックを含有するまたはその逆のコポリマーを含める。
【0041】
本発明の医療デバイス中に1つまたは複数の治療剤が含まれる場合、例えば、治療剤を生分解性ポリマー領域の表面に設けることによって、治療剤を生分解性ポリマー領域の中に設けることによって(この場合、ポリマー領域は「キャリア領域」と称されてよい)、治療剤を生分解性ポリマー領域の下に設けることによって(この場合、ポリマー領域は「バリア領域」と称されてよい)など、いくつかの方法で治療剤を組み込むことができる。
【0042】
例えば、いくつかの実施形態において、生分解性キャリア領域は、医療デバイス全体を構成してよい。他の実施形態において、例えば、層の形態で医療デバイスの基板全体、またはその一部の上に配置されるなど、デバイスの一部のみに対応する生分解性キャリア領域が設けられてよい。いくつかの実施形態において、治療剤の供給源を囲繞する生分解性バリア領域が設けられてよい。他の実施形態において、生分解性バリア領域は、治療剤の供給源の上に設けられてよく、さらにこれは、医療デバイス基板全体または一部の上に配置される。
【0043】
本発明の医療デバイスと併用して広範な治療剤装填量を使用することができ、治療に効果的な量は、当業者によって容易に決定され、最終的には、例えば処置されるべき病状、患者の年齢、性別および状態、治療剤の性質、医療デバイスの性質、生分解性ポリマー領域の性質などによる。
【0044】
キャリア領域およびバリア領域からの治療剤放出は、領域内での拡散による放出、領域の生分解による放出などを含めた多様な現象から起こり得る。例えば、基本的に治療剤の全てが、ポリマー領域の生分解に先立つ拡散によって放出され得る、(例えば、ポリマー領域内の相当量の剤の拡散による)、基本的に治療剤の全てが、ポリマー領域が分解する際放出され得る(例えば、ポリマー領域内の最小限の量の剤の拡散による)、またはこの2つの組み合わせ(例えば、ポリマー分解と共にのみ放出されるように、一部の剤はデバイスから拡散し、一部の剤は、ポリマー領域内またはその下で捕捉される)がある。
【0045】
本発明の生分解性ポリマー領域に関連する放出プロフィールは、組成、分子量および/または生分解性ポリマー領域を形成するポリマーブロックの構造の変更を含めた、いくつかの方法で改変されてよい。
【0046】
本発明の生分解性ポリマー領域に関連する放出プロフィールはまた、生分解性ポリマー領域のサイズを変更する(例えば、層が採用される場合、層の表面領域および/または厚みを変えることによって)、生分解性ポリマー領域の数を変更する、生分解性ポリマー領域を互いに積み重ねるなどによって改変されてよい。
【0047】
放出プロフィールを改変するために、例えば、他の多くの可能性の中でも、(a)バリア層をキャリア層の上に配置することができる、(b)同一のまたは異なる内容物(例えば、異なるポリマーおよび/または治療剤内容物)のいずれかの複数のキャリア層を、バリア層が介入して、またはバリア層が介入することなく、互いの頂部に重ねることができる、および(c)異なる組成の複数のキャリア層を、互いに対して水平に配置することができるなど、複数の生分解性ポリマー領域を採用することができる。
【0048】
治療剤は、本発明の医療デバイス内で、単一でまたは組み合わせて使用されてよい。「薬剤」、「治療剤」、「薬学的活性剤」、「薬学的活性物質」および他の関連用語は、本明細書において互換可能に使用されてよい。これらの用語は、遺伝子治療剤、非遺伝子治療剤および細胞を含む。
【0049】
本発明と併せて使用するための例示的な非遺伝子治療剤には、(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミンなどの抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害剤などの抗悪性腫瘍剤/抗増殖剤/抗縮瞳剤(anti-miotic agents)、(d)リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔剤、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、マダニ抗血小板ペプチド(tick antiplatelet peptides)などの抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、翻訳促進因子などの血管細胞成長促進因子、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とから成る二機能性分子、抗体と細胞毒素とから成る二機能性分子などの血管細胞成長阻害剤、(h)プロテインキナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントインなどの抗菌剤、(m)細胞毒性剤、細胞静止剤(cytostatic agents)、および細胞増殖作用因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性血管作動性機構に干渉する剤、(p)モノクローナル抗体など白血球動員の阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含めたHSP90タンパク質の阻害剤(すなわち、分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパクであり、細胞の成長および生存に関与する他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性および機能に必要とされる熱ショックタンパク質)、(t)ベータ遮断薬、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン(phospholanban)阻害剤、(w)Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)アミノキノリン、例えばレシキモドおよびイミキモドなどイミダゾキノリンを含む免疫反応改変剤、(y)ヒト・アポリオタンパク(例えば、Al、AII、AIII、AIV、AVなど)を含む。
【0050】
好ましい非遺伝的治療剤は、中でも、パクリタキセル(例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子、例えばABRAXANEなどタンパク質結合パクリタキセル粒子など、その微粒子形態を含めた)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、Resten−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータ遮断剤、bARKct阻害剤、フォスフォランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒト・アポリオプロテイン(例えばAI−AV)、成長因子(例えばVEGF−2)ならびに上記の誘導体を含む。
【0051】
本発明と併せて使用するための例示の遺伝的治療剤は、アンチセンスDNAおよびRNA、ならびに様々なタンパク質をコードするDNA(ならびに、タンパク質それ自体)を含む:(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥のあるまたは欠損した内因性分子を置換するtRNAまたはrRNA、(c)酸性および塩基性の線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂促進成長因子、上皮成長因子、形質転換成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子ならびにインスリン様成長因子などの成長因子を含めた血管新生および他の因子、(d)CD阻害剤を含めた細胞周期阻害剤、および(e)チミジンキナーゼ(「TK」)、および細胞増殖の干渉に有用な他の剤。また、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、およびBMP−16を含めた骨形成タンパク質(「BMP」)のファミリーをコードするDNAも対象となる。現在のところ好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはその組合せとして、単独でまたは他の分子と一緒に提供することができる。あるいはまたは付加的に、BMPの上流または下流の効果を誘導することができる分子を提供することもできる。そのような分子には、任意の「ヘッジホッグ」タンパク質、またはそれらをコードするDNAを含む。
【0052】
遺伝子治療薬剤を送達するベクターには、アデノウイルス、guttedアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(Semliki Forest、Sindbisなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、自己複製能を有するウイルス(例えば、ONYX−015)やハイブリッドベクターなどのウイルスベクター;ならびに人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えば、ポリエーテル−PEIおよびポリ酸化エチレン−PEI)、中性ポリマーPVP、SP1017(SUPRATEK)、カチオン性脂質などの脂質、リポソーム、リポプレックス(lipoplex)、ナノ粒子や微小粒子などの非ウイルスベクターがあり、タンパク質導入ドメイン(PTD)などの標的配列を有するもの、および有さないものを含む。
【0053】
本発明と併せて使用する細胞は、全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉、造血、神経)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞またはマクロファージを含めたヒト由来の細胞(自己または同種異系)、あるいは動物、細菌または菌類源由来の細胞(異種)を含め、所望であれば、対象とするタンパク質を送達するようにそれを遺伝子操作することができる。
【0054】
上記に列挙したものを除外する必要はないが、多くの治療剤は、例えば再狭窄を標的とする剤として、血管治療計画のための候補として特定されている。そのような剤は、本発明を実施するのに有用であり、以下の1つまたは複数を含む:(a)ジルチアゼムやクレンチアゼムなどのベンゾチアザピン(benzothiazapines)、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルダピン(nicardapine)などのジヒドロピリジン、およびベラパミルなどのフェニルアルキルアミンを含めたCaチャネル遮断剤、(b)ケタンセリンやナフチドロフリルなどの5−HT拮抗剤、ならびにフルオキセチンなどの5−HT取込み阻害剤を含めたセロトニン経路調節剤、(c)シロスタゾールやジピリダモールなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンなどのアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類似体を含めた環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンやブナゾシンなどのα拮抗剤、プロプラノロールなどのβ拮抗剤、およびラベタロールやカルベジロールなどのα/β拮抗剤を含めたカテコールアミン調節剤、(e)エンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルなどの有機硝酸エステル/亜硝酸エステル、ニトロプルシドナトリウムなどの無機ニトロソ化合物、モルシドミンやリンシドミンなどのシドノンイミン、ジアゼニウムジオラート(diazenium diolates)やアルカンジアミンのNO付加体などのノノエート(nonoates)、低分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、およびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、および天然ポリマー/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含めたS−ニトロソ化合物、ならびにC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物、およびL−アルギニンを含めた酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、(h)サララシンやロサルチン(losartin)などのATII−受容体拮抗剤、(i)アルブミンやポリエチレンオキシドなどの血小板粘着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、およびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、ならびにアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)、チロフィバンなどのGP IIb/IIIa阻害剤を含めた血小板凝集阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストランおよびβ−シクロデキストリンテトラデカサルフェート(β−cyclodextrin tetradecasulfate)などのヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)、アルガトロバンなどのトロンビン阻害剤、アンチスタチン(antistatin)やTAP(マダニ抗凝固ペプチド:tick anticoagulant peptide)などのFXa阻害剤、ワルファリンなどのビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインCを含めた凝固経路調節剤、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾンなどのシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)、ヒドロコルチゾンなどの天然および合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアイレチン酸(nordihydroguairetic acid)やコーヒー酸などのリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−セレクチンおよびP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1およびICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1やPGI2などのプロスタグランジン、およびシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロストなどのプロスタサイクリン類似体を含めたプロスタグランジンおよびそれらの類似体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化抑制剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油およびω−3脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランス−レチノイン酸、SOD模倣体などのフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体やキメラ融合タンパク質などのFGF経路剤、トラピジルなどのPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンやオクレオチド(ocreotide)などのソマトスタチン類似体を含むIGF経路剤、ポリアニオン性剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF−β抗体などのTGF−ベータ経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤およびキメラ融合タンパク質などのEGF経路剤、サリドマイドやそれらの類似体などのTNF−α経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルなどのトロンボキサンA2(TXA2)経路調節剤、ならびにチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体などのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む様々な成長因子に影響を及ぼす剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタットなどのMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBなどの細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6−メルカプトプリンまたはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)、メトトレキセートなどの抗代謝剤、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、EpoD、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドールおよびスラミンを含めた抗増殖/抗悪性腫瘍剤、(aa)ハロフジノンまたは他のキナゾリノン誘導体およびトラニラストなどのマトリックス付着/形成経路阻害剤、(bb)VEGFおよびRGDペプチドなどの内皮化促進因子、および(cc)ペントキシフィリンなどの血液レオロジー調節因子。
【0055】
本発明を実施するのに有用な他の付加的治療剤はまた、参照によりその全開示が組み込まれる、NeoRx社に譲渡された米国特許第5,733,925号に開示される。
【0056】
本発明の医療デバイスを形成するために、種々の技術を利用することができる。
【0057】
例えば、生分解性ポリマー領域を形成するポリマーが、熱可塑特性を有する実施形態において、多様な形状の生分解性ポリマー領域を形成するために、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、スピニング、真空形成およびカレンダリング、ならびにシート、繊維、ロッド、管および多様な長さの他の断面形状への押出し成形を含めた、種々の標準的熱可塑処理を使用することができる。これらのおよび他の熱可塑処理技術を使用して、製品全体またはその一部を作成することができる。
【0058】
他の実施形態において、多様な形状の生分解性ポリマー領域を形成するために、溶剤による技法が使用される。これらの技法を使用して、最適な溶剤およびポリマーを含有する溶液を提供することによって、生分解性ポリマー領域を形成することができる。最終的に選択された溶剤は、一般に生分解性ポリマー領域を形成するポリマーを溶解する能力、ならびに乾燥率、表面張力など他の要因に基づいて選択された、1つまたは複数の溶剤種を含有する。一般に、どれが、最良の特性を有する生分解性ポリマー領域を形成するかを見るために、いくつかの溶剤がテストされる。溶剤技法は、これに限定するものではないが、溶剤キャスト法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、溶剤噴霧法、ディッピング法、空気懸濁を含む機械懸濁によるコーティングを含めた技法、インクジェット法、静電法およびこれらの工程の組み合わせを含む。
【0059】
本発明の種々の実施形態において、所望の領域を形成するために、溶液(溶剤による処理が採用される場合)または溶融物(熱可塑処理が採用される場合)が基板に塗布される。例えば、基板は、層が適用される医療製品の表面全体またはその一部に対応することができる。基板はまた、例えば、凝固後領域がそこから除去される鋳型などテンプレートであってよい。他の実施形態において、例えば、押出しまたは共押出し法は、基板の助けなしで、1つまたは複数のポリマー領域を形成することができる。
【0060】
薬剤および/または他の任意選択の剤が処理条件下で安定である限り、それらは、キャリア領域を形成するために、溶液または溶融物の中に提供されてよい。あるいは、薬剤および/または他の任意選択の剤は、場合により、生分解性ポリマー領域の形成後導入されてよい。例えば、いくつかの実施形態において、薬剤および/または他の任意選択の剤は、溶媒中で溶解または分散されてよく、結果として生じる溶液が、先に形成された(例えば、ディッピング、噴霧など上記に記載の1つまたは複数の塗布技法を使用して)生分解性ポリマー領域に接触する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において(例えば、生分解性ポリマー領域がバリア領域として作用する場合)、生分解性ポリマー領域は、治療剤含有領域の上に形成される。これらの実施形態において、例えば生分解性ポリマー領域を、例えば、上記に記載の溶剤技法または熱可塑技法の1つを使用して形成されたものなど、治療剤含有領域の上に形成することができる。あるいは、先に形成された生分解性ポリマー領域を、治療剤含有領域の上に付着させてもよい。
【0062】
本明細書において、種々の実施形態が具体的に示され記載されるが、本発明の修正形態および変形形態は、上記の教義に包含され、本発明の精神および目的とする範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内にあることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマー領域を有する植え込み可能または挿入可能な医療デバイスであって、前記生分解性ポリマー領域が、(a)37°Cを下回るガラス転移温度を示す非結晶性ポリマーブロック、および(b)37°Cを超えるガラス転移温度を示す非結晶性ポリマーブロックを有する生分解性コポリマーを含む、植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項2】
前記医療デバイスが、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、ガイドワイヤ、バルーン、大静脈フィルタ、大脳動脈瑠フィラーコイル、心筋プラグ、心臓弁、血管弁および組織工学スカフォルドから選択される、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項3】
前記生分解性ポリマーが、37°Cを下回るガラス転移温度を示す複数の前記非結晶性ポリマーブロックを含む、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項4】
前記生分解性ポリマーが、37°Cを超えるガラス転移温度を示す複数の前記非結晶性ポリマーブロックを含む、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項5】
前記生分解性コポリマーが、50°Cから100°Cのガラス転移温度を示す非結晶性ポリマーブロックを含む、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項6】
前記生分解性コポリマーが、−50°Cから0°Cのガラス転移温度を示す非結晶性ポリマーブロックを含む、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項7】
前記生分解性コポリマーが、(a)37°Cを下回るガラス転移温度を示す単一の非結晶性ポリマーブロック、および(b)37°Cを超えるガラス転移温度を示す2つの非結晶性ポリマーブロックを含むトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項8】
37°Cを下回るガラス転移温度を示す前記非結晶性ポリマーブロックが、ポリジオキサノンブロックである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項9】
37°Cを下回るガラス転移温度を示す前記非結晶性ポリマーブロックが、ポリエチレングリコールブロックである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項10】
37°Cを下回るガラス転移温度を示す前記非結晶性ポリマーブロックが、ポリカプロラクトンブロックである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項11】
37°Cを超えるガラス転移温度を示す前記非結晶性ポリマーブロックが、ポリ(d,lラクチド)ブロックである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項12】
複数の前記生分解性ポリマー領域を有する、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項13】
記生分解性ポリマー領域が、繊維の形態である、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項14】
前記生分解性ポリマー領域が、医療デバイス基板の上に配置される生分解性ポリマー層の形態である、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項15】
前記生分解性ポリマー領域の下、またはその中に配置された治療剤をさらに有する、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項16】
前記生分解性ポリマー領域が、生分解性ポリマー層の形態であり、前記ポリマー層が、治療剤を有する領域の上に配置される、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項17】
前記生分解性ポリマー領域が、生分解性ポリマー層の形態であり、前記ポリマー層が治療剤を有する、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項18】
前記生分解性ポリマー領域が、溶剤および前記生分解性コポリマーを含む溶液からの溶剤の蒸発または分散によって形成される、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項19】
前記生分解性ポリマー領域が、前記生分解性コポリマーを含む冷却溶融物によって形成される、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。
【請求項20】
37°Cを超えるガラス転移温度を示す前記非結晶性ポリマーブロックが、2,2チロシンポリアリレートブロックである、請求項1に記載の植え込み可能または挿入可能な医療デバイス。

【公表番号】特表2009−530023(P2009−530023A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501433(P2009−501433)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/005654
【国際公開番号】WO2007/111808
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】