説明

生地含浸用の水性ポリオレフィン分散物

本発明は、下記の工程によって形成される物品を提供する。繊維構造物に化合物を含浸させる工程であって、該化合物が水性分散物を含有し、該分散物が下記の物質を含有する工程、(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー;(b)少なくとも1つの高分子量安定剤;および(c)水;および、含浸繊維構造物から少なくとも一部の水を除去する工程。本発明は、剛化生地を形成する方法も提供する。該方法は、下記の工程を含みうる。化合物を形成する工程であって、該化合物が、下記の物質を有する水性分散物を含有する工程、(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー、(b)少なくとも1つの高分子量安定剤、および(c)水;生地に化合物を含浸させる工程;および、含浸生地から少なくとも一部の水を除去する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、充填剤を任意に含有する水性分散物および分散化合物に関する。本発明は、特に、靴工業に有用な分散物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年12月15日に出願された発明の名称「AQUEOUS POLYOLEFIN DISPERSIONS FOR TEXTILE IMPREGNATION」の米国特許出願第11/3300,993号の優先権を主張する通常出願であり、その開示は全て、以下に再現されるように、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
多くの靴は、補強材、例えば、先芯(先皮、先心とも呼ばれる)および腰裏(counters)を組み込んで、靴の有効寿命を通して靴の形を維持している。腰裏は、靴の後部における上部の外側とライニングとの間に挿入されるヘビーレザーまたは他の補強材料の要素(piece)である。腰裏の目的は、靴の後部を強化し、それがたるむのを防止し、その形が損なわれるのを防止することである。先芯は、靴のつま先の形を維持し、靴の中のつま先空間を維持し、着用者の足に適切な保護を与えるために使用される補強材である。
【0004】
補強材製造用のベースシートの製造に使用される方法は、フィルム法、含浸法、および焼結法である。使用するのが好ましい方法は、多くの場合、最終製品の所望の剛性に依存する。例えば、3種類の先芯が存在する。硬質、可撓性(flexible)、軟質。硬質つま先は、安全靴を包含する。可撓性つま先は、拇指の圧力によって曲がり、しかも半硬質壁を有する。軟質つま先は、つま先の形を維持するにすぎず、着用者に最大の快適性を与えることを目的としたつま先を包含する。フィルム法によって製造された材料は、含浸された材料と比較して、より高い弾性(resilient)であることが多いので、フィルム法が硬質安全靴に好ましい。
【0005】
フィルム法において、熱可塑性シートを、押出し、低重量生地(一般に20g/m2)に貼り合わせ、次に、ポリウレタンまたはポリアミド接着剤のホットメルトコーティングを行うことができる。生地(fabric)の機能は、押出シートと接着剤層の間の適合層を与えることである。例えば、米国特許第4814037号において、靴補強材を、多層同時押出プラスチックから形成している。
【0006】
焼結法において、熱可塑性粉末、例えばポリカプロラクトンまたはPVC−ポリカプロラクトン(例えば、TONE(商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能な線状ポリカプロラクトンポリエステル)を生地に適用し、オーブンで焼結する。例えば、ドイツ特許第2621195号は、プラスチックと充填剤との粉末混合物を、織物(textile fabrics)上に溶融させることによって製造される補強材を開示している。次に、接着剤を使用して、補強材を、靴の他の部分に結合させている。米国特許第4717496号において、補強組成物に使用されるポリエステルが、結合特性および接着特性の両方を有している。
【0007】
含浸法において、生地に、エマルジョンまたはポリマー溶液を含浸させる。含浸系は、水性または溶剤型であることができ、SBR、天然ポリクロロプレンラテックス、およびスチレンポリマーを包含する。靴製造中に使用される補強材、生地および任意の接着剤の適合性は、補強材および靴のレジリエンス(耐久性)、剛性および保形性に作用しうる。例えば、GB935001において、溶剤または100℃の温度への暴露後に剛化し(stiffens)、しかも軟化性を維持し、それによって材料を必要に応じて再付形しうるようにするPS、PVC、PVAまたはSBコポリマー樹脂を、繊維基材として形成された熱活性化靴補強材ブランクに、添加するか(loaded)または含浸させている。米国特許第4507357号は、補強組成物に、可塑剤およびアミノプラストをさらに添加する。これらの両特許において、製造中に靴の他の部分を損傷から保護するために、低温加工性が必要とされた。米国特許第6391380号は、ラテックス形成樹脂および粉末接着性ポリエステル樹脂を含有する補強材組成物を開示している。貯蔵および中温への暴露の間に軟化するのを防ぐために、米国特許第3961124号は、架橋性樹脂および過酸化物開始剤を有する補強組成物を使用し、靴製造中に補強材を熱硬化させている。
【0008】
前記方法の組合せも使用しうる。例えば、米国特許第3708332号において、生地に、ポリスチレンおよびスチレン−ブタジエンコポリマーを含有する混合物を含浸させ、ポリカプロラクトンでコーティングして、靴補強材シートを形成している。
【0009】
補強組成物および靴補強材に関連する他の特許は、特に、米国特許第3284872号、第3778251号および第3961124号、英国特許第GB2102851号、第2091768号、第2024279号、第1065418号、第1062498号および第1036790号、ならびにWO2003/000810号を包含する。
【0010】
前記のように、SBR、SB、ポリクロロプレン、またはポリクロロプレンと天然ラテックスとのブレンドを組み込んでいる含浸系が一般的である。これらの各系は、欠点、例えば、劣ったレジリエンス、弾性、コスト、硬化条件、およびアレルギー性、ならびに、恐らくは、靴構造物における他の成分との低い適合性を有する。これらの欠点を考慮して、従来のラテックス補強組成物の好適な置換物または代替物が必要とされている。
【発明の開示】
【0011】
1つの態様において、本発明は、繊維構造物に含浸させるのに好適な水性分散物として形成される、熱可塑性ポリオレフィンを含有する補強組成物に関する。他の態様において、そのような補強組成物を含浸させた繊維構造物は、靴補強材、例えば、先芯、腰裏などに使用するために、適切な剛性、弾性、レジリエンス、付着性および保形性を付与することができる。熱可塑性ポリオレフィン補強組成物の使用は、それが靴構造物の他の構成要素との向上した適合性もさらに付与するので有利である。
【0012】
本発明は、繊維構造物に、水性分散物を含有する化合物を含浸させ、後に、含浸繊維構造物から少なくとも一部の水を除去することによって形成される物品を提供する。水性分散物は、以下の物質を含有しうる。(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー;(b)少なくとも1つの高分子量安定剤;および、(c)水。
【0013】
本発明は、以下の工程を含む補強生地製品の製造法も提供する。化合物を形成する工程であって、該化合物が、エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマーを含有する水性分散物を含有する工程;次に、好適な生地に化合物を含浸させ、含浸生地構造物から少なくとも一部の水を除去することによって、含浸生地を剛化する工程。該方法は、以下の工程を含んでいてもよい。化合物を形成する工程であって、該化合物が、(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー、(b)少なくとも1つの高分子量安定剤、および(c)水を有する水性分散物を含有する工程;生地に化合物を含浸させる工程;および、含浸生地を剛化する工程。含浸工程および剛化工程は、当業者に公知の好適な方法によって行ってよい。
【0014】
本発明の他の態様および利点は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態は、基剤ポリマーおよび安定剤を含有する分散物を、繊維構造物に含浸させることによって製造される物品に関する。このように形成された組成物は、製靴業において特に有用である。本発明の実施形態は、靴補強材、例えば、先芯、腰裏などの製造に有用である。
【0016】
特定の実施形態において、充填剤を分散物に添加して、分散化合物を形成することができる。簡略明瞭にするために、分散物および分散化合物は、本明細書において一般に分散物と称す。
【0017】
本明細書において使用される「コポリマー」は、2またはそれ以上のコモノマーから形成されたポリマーを意味する。本明細書において使用される「インターポリマー」は、モノマー単位(2またはそれ以上)が、ポリマー分子において極めて均質に分布して、物質が化学組成において本質的に均質であるコポリマーを意味する。
【0018】
基剤ポリマー
【0019】
本発明の実施形態は、エチレン基剤ポリマー、プロピレン基剤ポリマー、およびプロピレン−エチレンコポリマーを、組成物の1成分として使用する。
【0020】
選択された実施形態において、1成分は、エチレン−α−オレフィンコポリマー、またはプロピレン−α−オレフィンコポリマーから形成される。特に、好ましい実施形態において、基剤ポリマーは、1またはそれ以上の非極性ポリオレフィンを含む。
【0021】
特定の実施形態において、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらのコポリマー、およびそれらのブレンド、ならびにエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーも使用しうる。いくつかの実施形態において、好ましいオレフィンポリマーは、下記のポリマーを包含する。Elstonの米国特許第3645992号に記載されている均質ポリマー;Andersonの米国特許第4076698号に記載されている高密度ポリエチレン(HDPE);不均質分岐線状低密度ポリエチレン(LLDPE);不均質分岐線状超低密度ポリエチレン(ULDPE);均質分岐線状エチレン/α−オレフィンコポリマー;均質分岐、実質的線状エチレン/α−オレフィンポリマー(これは、例えば、米国特許第5272236号および第5278272号に開示されている方法によって製造でき、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる);および、高圧ラジカル重合エチレンポリマーおよびコポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)またはエチレンビニルアセテートポリマー(EVA)。
【0022】
米国特許第6566446号、第6538070号、第6448341号、第6316549号、第6111023号、第5869575号、第5844045号または第5677383号(それぞれ、参照により、全体として本明細書に組み込まれる)に記載されているポリマー組成物も、いくつかの実施形態において好適である。当然、ポリマーのブレンドも使用することができる。いくつかの実施形態において、ブレンドは、2種類のチーグラー・ナッタポリマーを含有する。他の実施形態において、ブレンドは、チーグラー・ナッタおよびメタロセンポリマーのブレンドを包含しうる。さらに他の実施形態において、本発明に使用されるポリマーは、2種類の異なるメタロセンポリマーのブレンドである。他の実施形態において、単一部位触媒を使用しうる。
【0023】
いくつかの特定の実施形態において、ポリマーは、プロピレン基剤コポリマーまたはインターポリマーである。いくつかの実施形態において、プロピレン/エチレンコポリマーまたはインターポリマーは、実質的にアイソタクチックのプロピレン配列を有することを特徴とする。「実質的にアイソタクチックのプロピレン配列」という用語および類似用語は、配列が、13C NMRによって測定されるアイソタクチックトライアド(isotactic triad)(mm)約0.85より大きい、好ましくは約0.90より大きい、より好ましくは約0.92より大きい、最も好ましくは約0.93より大きいことを意味する。アイソタクチックトライアドは、当分野において周知であり、例えば、米国特許第5504172号およびWO00/01745に記載されており、それは、13C NMRスペクトルによって測定されるコポリマー分子鎖におけるトライアド単位に関するアイソタクチック配列を意味する。
【0024】
他の特定の実施形態において、基剤ポリマーは、エチレンビニルアセテート(EVA)基剤ポリマーであってよい。
【0025】
他の選択された実施形態において、オレフィンブロックコポリマー、例えばエチレンマルチブロックコポリマー、例えば、国際公開第WO2005/090427号および米国特許出願第11/376835号に記載されているポリマーを、基剤ポリマーとして使用しうる。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、下記のようなエチレン/α−オレフィンインターポリマーであってよい。
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、ここで、Tmおよびdの数値が以下の関係式に対応する。
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱ΔH(J/g)、およびデルタ量ΔT(最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃)を特徴とし、ここで、ΔTおよびΔHの数値が以下の関係を有する。
0より大きく、および130J/gまでのΔHに関して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHに関して、ΔT>48℃
ここで、CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を使用して測定され、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である;または
(c) エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定される300%歪および1サイクルにおける弾性回復率Re(%)を特徴とし、密度d(g/cm3)を有し、ここで、Reおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に有さない場合に、下記の関係式を満たす。
Re>1481−1629(d);または
(d) TREFを使用して分別した場合に、40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、該画分が、同じ温度範囲で溶離する比較可能なランダムエチレンインターポリマー画分より少なくとも5%高いモルコモノマー量(molar comonomer content)を有することを特徴とし、該比較可能なランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマーを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの10%以内の、メルトインデックス、密度およびモルコモノマー量(全ポリマーに基づく)を有する;または
(e) 25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)/G’(100℃)の比率が約1:1〜約9:1である。
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、下記であってもよい。
(a) TREFを使用して分別した場合に、40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、該画分が、少なくとも0.5〜約1までのブロックインデックスを有し、約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする;または
(b) 0より大きい、および約1.0までの平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有する。
【0026】
当業者は、上述した列記が好適なポリマーの非包括的列挙であることを認識する。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解される。
【0027】
安定剤
【0028】
本発明の実施形態は、安定な分散物またはエマルジョンの形成を促進する安定剤を使用する。選択された実施形態において、安定剤は、界面活性剤、ポリマー(上に詳述した基剤ポリマーと異なる)、またはそれらの混合物であってよい。特定の実施形態において、安定剤は、極性基をコモノマーまたはグラフトモノマーとして有する極性ポリマーである。好ましい実施形態において、安定剤は、極性基をコモノマーまたはグラフトモノマーとして有する1またはそれ以上の極性ポリオレフィンを含む。一般的なポリマーは、エチレン−アクリル酸(EAA)およびエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えば、商品名PRIMACOR(商標)、NUCREL(商標)およびESCOR(商標)として入手可能な、および米国特許第4599392号、第4988781号および第5938437号(それぞれ、参照により、全体として本明細書に組み込まれる)に記載されているポリマーを包含する。他のポリマーは、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、およびエチレンブチルアクリレート(EBA)を包含する。当業者は、他の多くの有用なポリマーも使用しうることを認識する。
【0029】
ポリマーの極性基が、性質上、酸性または塩基性である場合、安定化ポリマーは、中和剤で部分的にまたは完全に中和されて、対応する塩を形成しうる。例えば、EAAの場合、中和剤は塩基、例えば、水酸化アンモニウムまたは水酸化カリウムである。他の選択において、中和剤は、例えば任意のアミン、例えば、モノエタノールアミン、または2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)であってよい。当業者は、適切な中和剤の選択が、配合された特定の組成物に依存し、その選択が当業者の知識の範囲内であることを認識する。
【0030】
本発明の実施に有用な付加的界面活性剤は、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤を包含する。アニオン界面活性剤の例は、スルホネート、カルボキシレートおよびホスフェートである。カチオン界面活性剤の例は、第四級アミンである。ノニオン界面活性剤の例は、エチレンオキシドを含有するブロックコポリマー、およびシリコーン界面活性剤である。本発明の実施に有用な界面活性剤は、外部界面活性剤または内部界面活性剤であることができる。外部界面活性剤は、分散物製造の間にポリマーに化学的に反応しない界面活性剤である。本発明に有用な外部界面活性剤の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩、およびラウリルスルホン酸塩である。内部界面活性剤は、分散物製造の間に、ポリマーに化学的に反応する界面活性剤である。本発明に有用な内部界面活性剤の例は、2,2−ジメチロールプロピオン酸およびその塩である。
【0031】
充填剤
【0032】
本発明の実施形態は、充填剤を、組成物の一部として使用する。本発明の実施において、ポリオレフィン分散物における好適な充填剤荷重は、ポリオレフィン100部につき、約0〜約600部の充填剤であることができる。特定の実施態様において、分散物における充填剤荷重は、ポリオレフィンおよびポリマー安定剤の合計量100部につき、約0〜約200部の充填剤であることができる。充填剤材料は、従来の充填剤、例えば、ミルドグラス、カルシウムカーボネート、アルミニウムトリハイドレート、タルク、アンチモニートリオキシド、フライアッシュ、クレー(例えば、ベントナイトまたはカオリンクレー)、または他の公知の充填剤を包含しうる。
【0033】
配合物
【0034】
従って、好ましい配合物において、本発明による分散物は、少なくとも1つの非極性ポリオレフィンを含む基剤ポリマー、少なくとも1つの極性ポリオレフィンを含む安定剤、および任意に充填剤を含有しうる。基剤ポリマーおよび安定剤に関して、好ましい実施形態において、少なくとも1つの非極性ポリオレフィンが、組成物中の基剤ポリマーおよび安定剤の合計量の約30%〜99%(重量による)を含む。より好ましくは、少なくとも1つの非極性ポリオレフィンが、約50%〜約80%を含む。さらに好ましくは、1つまたはそれ以上の非極性ポリオレフィンが、約70%を含む。
【0035】
充填剤に関して、ポリマー(ここで、ポリマーは、安定剤と組み合わせた非極性ポリオレフィンを意味する)100部につき、約0部より大きく約1000部までの量が一般に使用される。選択された実施形態において、100部につき約50〜250部が使用される。選択された実施形態において、100部につき約10〜500部が使用される。さらに他の実施形態において、100部につき約20〜400部が使用される。他の実施形態において、100部につき約0〜約200部が使用される。
【0036】
これらの固体材料は、好ましくは、液体媒質(好ましい実施形態において、水である)に分散される。好ましい実施形態において、得られた分散物を中和してpH範囲約6〜約14にするために充分な塩基が添加される。好ましい実施形態において、pH約9〜約12を維持するために充分な塩基が添加される。分散物の水分は、好ましくは、固形分が約1%〜約74%(容量による)になるように調節される。他の実施形態において、固形分は約25%〜約74%(容量による)である。特に好ましい実施形態において、固形分範囲は、約30%〜約50%である(充填剤を含まず、重量による)。
【0037】
特定の実施形態において、化合物を含浸させた繊維構造物または生地は、生地100重量部につき約10〜約150部の範囲の、少なくとも1つのポリマーおよび高分子量安定剤の合計量を有しうる。他の実施形態において、化合物を含浸させた繊維構造物または生地は、生地100重量部につき約10〜約600部の範囲の、充填剤、少なくとも1つのポリマーおよび高分子量安定剤の合計量を有し;他の実施形態においては約10〜約300部の範囲である。
【0038】
本発明の実施形態に従って形成された分散物は、平均粒度約0.3〜約3.0ミクロンを有することを特徴とする。他の実施形態において、分散物は、平均粒度約0.5μm〜約2.7μmを有する。他の実施形態においては、約0.8μm〜約1.2μmを有する。「平均粒度」は、本発明において、容積平均粒度(volume-mean particle size)を意味する。粒度を測定するために、例えばレーザー回折法を使用しうる。本開示における粒度は、分散物中のポリマーの直径を意味する。球形でないポリマー粒子の場合は、粒子の直径は、粒子の短軸および長軸の平均である。粒度は、Beckman−Coulter LS230レーザー回折粒度分析器または他の好適な装置で測定することができる。
【0039】
例えば、本発明の配合物は、界面活性剤、起泡剤、分散剤、増粘剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、強化用繊維、酸化防止剤、中和剤、流動調節剤(rheology modifier)、防腐剤、殺生物剤、酸掃去剤、湿潤剤などを含有しうる。本発明の目的に任意であるが、他の成分が製造工程中または製造工程後の製品安定性に極めて有益になりうる。
【0040】
さらに、本発明の実施形態は、充填剤湿潤剤を任意に含有する。充填剤湿潤剤は、一般に、充填剤およびポリオレフィン分散物をより相溶性にするのを助けうる。有用な湿潤剤は、燐酸塩、例えば、ナトリウムヘキサメタホスフェートを包含する。充填剤湿潤剤は、充填剤100重量部につき少なくとも約0.5重量部の濃度において、本発明の組成物に含有させることができる。
【0041】
さらに、本発明の実施形態は、増粘剤を任意に含有しうる。増粘剤は、低粘度分散物の粘度を増加させるために、本発明に有用でありうる。本発明の実施において使用するのに好適な増粘剤は、当分野で公知の任意の増粘剤、例えば、ポリアクリレート型または会合(associate)ノニオン増粘剤、例えば改質セルロースエーテルであってよい。例えば、好適な増粘剤は、下記の増粘剤を含有する。ALCOGUM(商標)VEP−II(Alco Chemical Corporationの商品名)、RHEOVIS(商標)およびVISCALEX(商標)(Ciba Ceigyの商品名)、UCAR(登録商標)Tickener 146、またはETHOCEL(商標)またはMETHOCEl(商標)(Dow Chemical Companyの商品名)およびPARAGUM(商標)241(Para−Chem Southern, Inc.の商品名)、またはBERMACOL(商標)(Akzo Nobelの商標)またはAQUALON(商標)(Herculesの商標)またはACUSOL(登録商標)(Rohm and Haasの商標)。増粘剤は、所望の粘度の分散物を製造するのに必要な任意の量で使用することができる。
【0042】
従って、分散物の最終粘度は、調節可能である。前記の量の充填剤を含有する分散物への増粘剤の添加を、従来手段で行って、必要とされる粘度を得ることができる。このような分散物の粘度は、中度の増粘剤投与(100phrのポリマー分散物に基づいて4%まで、好ましくは3%未満)を用いて、+3000cP(ブルックフィールドスピンドル4、20rpm)に達することができる。記載した出発ポリマー分散物は、充填剤および添加剤との配合前に、20〜1000cPの初期粘度(室温において、スピンドルRV3を用いて50rpmで測定されるブルックフィールド粘度)を有する。さらにより好ましくは、分散物の初期粘度は、約100〜約600cPであってよい。
【0043】
さらに、本発明の実施形態は、充填剤をポリマー/安定剤に添加した場合の、それらの安定性を特徴とする。これに関して、安定性は、得られた水性ポリオレフィン分散物の粘度の安定性を意味する。安定性を試験するために、粘度をある期間にわたって測定する。好ましくは、20℃で測定される粘度は、周囲温度で保存した場合に、24時間にわたって元の粘度の±10%を維持すべきである。
【0044】
特定の実施形態において、基剤ポリマー、安定剤および充填剤を、水および中和剤、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、またはそれら2つの組合せと共に、押出器で溶融混練して、分散化合物を形成する。当業者は、他の多くの中和剤を使用しうることを認識する。いくつかの実施形態において、基剤ポリマーおよび安定剤をブレンドした後に、充填剤を添加しうる。他の好ましい実施形態において、分散物を形成した後に、充填剤を添加しうる。
【0045】
当分野において公知の任意の溶融混練手段を使用しうる。いくつかの実施形態において、ニーダー、BANBURY(登録商標)ミキサー、一軸スクリュー押出器または多軸スクリュー押出器を使用する。本発明による分散物を製造する方法は、特に限定されない。1つの好ましい方法は、例えば、米国特許第5756659号および米国特許第6455636号に従って、前記の成分を溶融混練することを含む方法である。
【0046】
図1は、本発明の実施形態に使用しうる押出装置を模式図的に示す。押出器20、特定の実施形態において二軸スクリュー押出器は、背圧調節器、メルトポンプまたはギヤポンプ30に連結されている。実施形態は、基剤リザーバ40および初期水リザーバ50も与え、それらはそれぞれポンプ(図示せず)を有する。所望量の基剤および初期水が、それぞれ、基剤リザーバ40および初期水リザーバ50から供給される。任意の好適なポンプを使用しうるが、いくつかの実施形態において、240バールの圧力において約150cc/分の流量を供給するポンプを使用して、基剤および初期水を押出器20に供給する。他の実施形態において、液体注入ポンプは、200バールにおいて300cc/分、または133バールにおいて600cc/分の流量を供給する。いくつかの実施形態において、基剤および初期水は予熱器で予熱される。
【0047】
ペレット、粉末またはフレークの形態の樹脂が、フィーダ80から、押出器20の導入口90に供給され、該押出器において、樹脂が溶融されるかまたは配合される。いくつかの実施形態において、分散剤を、樹脂を通っておよび樹脂と共に、樹脂に添加し、他の実施形態においては、分散剤を別に、二軸スクリュー押出器20に供給する。次に、樹脂メルトを、混合および輸送ゾーンから、押出器の乳化ゾーンに送り、該乳化ゾーンにおいて、リザーバ40および50からの初期量の水および基剤を、導入口55から添加する。いくつかの実施形態において、分散剤を、付加的にまたは排他的に、水の流れに添加しうる。いくつかの実施形態において、乳化混合物を、押出器20の希釈および冷却ゾーンにおいて、リザーバ60からの追加水導入95によって、さらに希釈する。一般に、分散物は、冷却ゾーンにおいて、少なくとも30wt%水に希釈される。さらに、希釈混合物を、所望の希釈レベルに達するまで、任意の回数で希釈しうる。いくつかの実施形態において、水を、二軸スクリュー押出器20に添加せずに、メルトが押出器から出た後に樹脂メルトを含有する流れに添加する。この方法において、押出器20における蒸気圧発生が除かれる。
【0048】
好都合には、特定の実態形態において押出器を使用することによって、基剤ポリマーおよび安定剤を、単一工程でブレンドして分散物を形成しうる。さらに、好都合には、1またはそれ以上の前記安定剤を使用することによって、分散物は、充填剤および他の添加剤に対して安定である。ポリオレフィン基剤ポリマーを含有する以前の配合物は、充填剤に対して不安定であった。
【0049】
好都合には、本明細書に開示する実施形態に従って形成されたポリオレフィン分散物は、フィルム、シート、生地または繊維に、分散物を適用するかまたは分散物を含浸させ、優れた付着特性を達成し、可撓性ラミネートを維持することを可能にする。特定の実施形態において、本発明者らは、本明細書に開示する分散物が、極性支持体に優れた付着性を有することも見出した。
【0050】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィン分散物または分散化合物を、当業者に公知の任意の適用法を用いて繊維構造物に適用しうる。他の実施形態において、繊維構造物に、ポリオレフィン分散物または分散化合物を含浸させうる。特定の実施形態において、繊維構造物は、生地、ジオテキスタイルおよび天然繊維を包含しうる。特定の実施形態において、繊維構造物は、綿、ウール、合成ウール、レーヨンを包含するセルロース系材料、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリプロピレン、ポリエステルの合成繊維、またはそれらの組合せであってよい。他の実施形態において、繊維構造物は、亜麻、麻、セルロース、パルプ、木材またはそれらの組合せであってよい。
【0051】
フォームを製造する場合、分散物を泡立たせるのが好ましいことが多い。本発明の実施において、ガスを起泡剤として使用するのが好ましい。好適な起泡剤の例は、ガスおよび/またはガス混合物、例えば、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどである。空気を起泡剤として使用するのが特に好ましい。起泡剤は、泡を形成するためにガスを液体に機械的導入することによって、一般に導入される。この方法は、機械的起泡として公知である。気泡ポリオレフィン裏材料の製造において、全ての成分を混合し、次に、装置、例えば、OAKES、MONDOまたはFIRESTONEフローサーを使用して、空気またはガスを混合物にブレンドするのが好ましい。
【0052】
安定な気泡を形成するのに有用な界面活性剤は、本明細書において、気泡安定剤と称される。気泡安定剤は、本発明の実施において有用である。当業者は、多くの気泡安定剤を使用しうることを認識する。気泡安定剤は、例えば、スルフェート、スクシンナメートおよびスルホスクシンナメートを包含しうる。
【0053】
図2に工程図形式で示されている本発明の1つの実施形態において、ポリオレフィン分散物が形成される(ST 100)。次に、分散物を泡立たせ(ST 110)、それは、例えば、空気との機械的混合によって行いうる。次に、生地、繊維、シートまたはフィルムを、泡に接触させる(ST 120)。例えば、泡を生地にコーティングするかまたは塗布するか、または生地を泡に浸すことができる。選択された実施形態において、ポリオレフィン分散物を、約65℃〜約125℃で適用する。他の実施形態において、ポリオレフィン分散物を約70℃〜約120℃で適用する。好ましい実施形態において、ポリオレフィン分散物を約85℃〜約95℃で適用する。
【0054】
支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、任意の従来乾燥法によって乾燥しうる。そのような従来乾燥法は、空気乾燥、熱対流炉乾燥、熱風乾燥、電子オーブン乾燥、および/または赤外炉乾燥を包含するが、それらに限定されない。支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、任意の温度で乾燥してよく;例えば、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度で乾燥してもよく;または、他の選択において、基剤ポリマーの融点未満の温度で乾燥してもよい。支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、約60°F(15.5℃)〜約700°F(371℃)の温度で乾燥してよい。約60°F(15.5℃)〜約700°F(371℃)の全ての各数値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され;例えば、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、約60°F(15.5℃)〜約500°F(260℃)の温度で乾燥してもよく、または他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、約60°F(15.5℃)〜約450°F(232.2℃)の温度で乾燥してもよい。支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約40分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度に上げてよい。約40分未満の全ての各数値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され;例えば、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約20分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度に上げてもよく、または他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約10分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度に上げてもよく、または他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約0.5〜600秒の時間にわたって、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度に上げてもよい。他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、40分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点未満の温度に上げてもよい。約40分未満の全ての各数値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され;例えば、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約20分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点未満の温度に上げてもよく、または他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約10分未満の時間にわたって、基剤ポリマーの融点未満の温度に上げてもよく、または他の選択において、支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物の温度を、約0.5〜600秒の時間にわたって、基剤ポリマーの融点未満の温度に上げてもよい。
【0055】
支持体、例えば前記の繊維構造物に、含浸させた分散物を、基剤ポリマーの融点またはそれ以上の温度で乾燥させることが重要であり、なぜなら、それは、不連続安定剤相がその中に分散された連続基剤ポリマー相を有するフィルムの形成を促進し、それによって、連続基剤ポリマー相が油およびグリース耐性を向上させ、かつ湿分および蒸気透過に対するバリヤーを与えるからである。
【0056】
含浸調節
【0057】
繊維構造物に化合物または分散化合物を含浸させる量または程度は、調節することができる。例えば、カレンダーの間で生地をプレスし、過剰材料を除去することによって、含浸を調節することができる。例えば、化合物の粘度、水性分散物中の組み合わされたポリマーおよび安定剤の濃度、化合物中の充填剤の濃度、または水性分散物の極性の1つまたはそれ以上を調節することによって、含浸を付加的に調節することができる。
【0058】
特定の実施形態において、含浸生地は、少なくとも1つのポリマーおよび高分子量安定剤の合計量を、含浸生地100重量部につき約15〜約75部の範囲で有することができる。所望の程度の含浸を維持するために、例えば、特定の実施形態において、ポリオレフィンを、水性分散物の約35〜約55wt%の範囲に調節することができる。他の実施形態において、ポリオレフィンを、水性分散物の約40〜約50vol%の範囲に調節することができる。他の実施形態において、化合物の粘度を、約20〜約3000cPの範囲に調節することができる。
【0059】
当業者は、望ましい程度または量の含浸が、繊維構造物の部分飽和から繊維構造物の完全飽和に亘りうることを認識する。所望の程度の含浸は、例えば、含浸される繊維の種類および含浸剤の種類を包含する可変要素に依存しうる。当業者は、含浸構造物の意図する最終特性が、特定の成分(例えば、繊維および分散物)および工程パラメータの選択に影響することも理解する。
【0060】
特定の実施形態において、ポリオレフィン分散物を含浸させた繊維構造物を、靴における補強材として使用することができる。例えば、繊維構造物を、含浸し、成形し、乾燥することができ、該成形は上部組み立て補強材、例えば腰裏または先心(先芯)を生じ、これを、靴に組み込んで、靴の各部分を所望形状に保持するのを助けることができる。
【実施例】
【0061】
ポリマー分散物。
2つのポリオレフィン分散物を、以下の実施例全体を通して使用し、該分散物は、基剤ポリマー/安定剤混合物を含んでいた。第一分散物は、VERSIFY(商標)DP4200/PRIMACOR(商標)5980I混合物を使用して形成し、第二分散物は、ENGAGE(商標)8200/PRIMACOR(商標)5980I混合物を使用して形成し、それらは、それぞれ、Dow Chemical Company(Midland, MI)から入手可能である。PRIMACOR(商標)5980Iは、エチレンアクリル酸コポリマーであり(20.5wt%アクリル酸;13.8のMFR、125℃で2.16kg重量を使用;0.958g/cc);VERSIFY(商標)DP4200は、プロピレン基剤エラストマーであり(9mol%エチレン;25 MFR、230℃で2.16kg重量を使用);ENGAGE(商標)8200は、エチレン基剤エラストマーである(エチレン−オクテンコポリマー;5 MI;0.870g/cc)。
【0062】
VERSIFY(商標)DP4200/PRIMACOR(商標)5980I分散物は、13.9 lb/時におけるDP4200ペレットおよび2.9 lb/時における5980Iペレットを押出機供給漏斗に同時供給することによって製造された。脱イオン水、および水酸化カリウムの25%(w/w)水溶液を、それぞれ、19および8.3cc/分でポンプ注入し、合わし、約160℃に加熱し、乳化ゾーンにおいて押出機バレルに注入し、そこで、バレルを約150℃で操作した。脱イオン水を90cc/分でポンプ注入し、約110℃に加熱し、希釈セクションにおいて押出機バレルに注入し、そこで、バレルを約80℃で操作した。生成物希釈を約300psigの圧力において調節した。得られたVERSIFY(商標)DP4200/PRIMACOR(商標)5980I分散物は、固形分51.6wt%、pH約10.0、Beckman Coulter LS 230によって測定される容積平均粒度約1.0ミクロン、および多分散度(容積平均粒度を数平均粒度で割ったものとして定義される)2未満を有していた。
【0063】
ENGAGE(商標)8200/PRIMACOR(商標)5980I分散物は、8200ペレットおよび5980Iペレットを70/30の比率で先ずプレブレンドすることによって製造した。そのブレンドを、周囲(ambient)ペレットとして、押出機供給漏斗に15 lb/時で供給した。脱イオン水、および水酸化カリウムの25%(w/w)水溶液を、それぞれ、14.6および15.3cc/分でポンプ注入し、合わし、約130℃に加熱し、乳化ゾーンにおいて押出機バレルに注入し、そこで、バレルを約130℃で操作した。脱イオン水を85cc/分でポンプ注入し、約75℃に加熱し、希釈セクションにおいて押出機バレルに注入し、そこで、バレルを約70℃で操作した。希釈生成物を、約300PSIGに設定した背圧調節器に通し、約70℃で工程から出し、収集した。得られたENGAGE(商標)8200/PRIMACOR(商標)5980I分散物は、固形分44.9wt%、pH10.2、Beckman Coulter LS 230によって測定される容積平均粒度約1ミクロン、および多分散度2未満を有していた。
【0064】
織物シート。生地含浸試験用に、2つの綿−ポリエステル生地がForestali Srl.によって供給された。生地「A」は、平方メートル当たりの重さ321.77g/m2を有し、生地「B」は228.85g/m2を有していた。
【0065】
分散配合物。前記のポリマー分散物を使用して、カルシウムカーボネート充填剤(Hydrocarb 90 GDスラリー;62.5wt%固形分;Omyaから入手可能)を含有する2つの分散化合物を形成した。評価した分散配合物を、下記の表1に示す。
【表1】

【0066】
ポリマー分散物および充填剤スラリーを、計量し、標準ペーパーラテックスHeidolphベンチスターラーで1000rpmにおいて10分間混合した。粘度をブルックフィールド粘度計(スピンドルR3、100RPMにて)で測定した。pHをKnick Portamess pHメーターで測定した。固形分をCEM Smart System 5で測定した。
【0067】
生地含浸。シートを、実験用含浸ユニット(Mathis Lab Padder、Werner Mathis AG, Textile machinery, Laboratory equipment, Zurichによって製造)で含浸した。含浸工程を、2段階で行った。先ず、生地シートを、前記の表1に記載した分散物に、室温で2分間浸漬した。次に、シートを、カレンダーロール間において室温でプレスして、過剰の液体を除去した。所望の平方メートル当たりの重量を、ロール間の圧力の調整によって調節した。次に、含浸シートを熱対流炉で130℃において7分間乾燥した。4つの試料が、このように含浸され、表2に示されている。
【表2】

【0068】
試料の試験結果。補強材の加工性および性能を試験した。加工性は、VICATおよび開放時間に関係している。性能特性は、SATRA TM83に従って測定し、硬度、面積保形性(area shape retention)およびレジリエンスを包含する。これらの特性を測定するために、図3、4および5に示す装置において、ドーム(dome)を90℃で熱成形した。
【0069】
図3に関して、クランプリング214、金属円筒216およびピストン218を含む成形用具212において、試験片210を固定した。次に、アセンブリをオーブンにおいて95℃で8.5分間加熱することによって、試験片210を熱活性化した。熱活性化アセンブリをオーブンから取り出し、図4に示すようにピストン218を引き出すことによって、試験片210を迅速にドーム形に成形した(約1分以内)。次に、成形試験片210を、少なくとも1.5時間にわたって、ファンの前で20℃および65%相対湿度の標準制御環境に置いた。
【0070】
成形ドームの圧縮強度と一般に呼ばれる硬度は、着用性能条件に対応するように、補強材強度の測度を与える。引張試験機において、レベル下降面(level lower surface)を有する円筒形プランジャを使用して、成形ドームの上部を、へこむ(collapses)まで定速で圧縮した。最大値を初期硬度として記録した。この操作を繰返し、9回の追加へこみ後に、第10回目のへこみの荷重を測定し、最終硬度として記録した。ドーム形試験片の圧縮強度は、SATRA TM83に従って測定された。硬度は、ファッションシューズの10Nから軍用履物の180Nに亘りうる。
【0071】
面積保形性を、SATRA TM83に従って測定した。ドーム形試験片を形成し、試験片の保形性を、ドームの高さの測定によって判定した。2回の測定を行った。第一へこみ後(ドームの初期圧縮)、および10回のへこみ後(最終保形性)。面積保形性は下記のように定義される。
ASR=100(H1/H2)2
ここで、図5に示されるように、H1は、関連成形用具(金型のドーム)の高さであり、H2は、第1または第10回目のへこみ後の成形ドームの内部高さである。補強剤が硬いほど、靴の変形を防ぐ保形性がより優れている。
【0072】
レジリエンスは、SATRA TM83に従って算出され、最終硬度(10回の荷重へこみ後)/初期硬度の比率として定義される。レジリエンスは、着用中の小さいおよび大きい変形に対する耐性の測度である。
【0073】
標準CRYSTAF法
【0074】
分岐分布は、PolymerChar, Valencia, Spainから商業的に入手可能なCRYSTAF 200ユニットを使用して、結晶化分析分別(CRYSTAF)によって測定される。試料を160℃の1,2,4−トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間溶解させ、95℃で45分間安定化させる。試料採取温度は、冷却速度0.2℃/分で95℃〜30℃に亘る。赤外線検出器を使用して、ポリマー溶液濃度を測定する。温度が低下する間にポリマーが結晶化すると共に、累積可溶濃度を測定する。累積特性の分析導関数(the analytical derivative of the cumulative profile)は、ポリマーの短鎖分岐分布を反映している。
【0075】
CRYSTAFピーク温度および面積は、SRYSTAF Software(バージョン2001.b、Polymerchar, Valencia, Spain)に含まれているピーク分析モジュールによって同定される。CRYSTAFピーク検出ルーチン(peak finding routine)は、dW/dT曲線における極大としてのピーク温度、および導関数曲線(derivative curve)における同定ピークの両側の最大正変曲(largest positive infections)の間の面積を同定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメータは、70℃の温度限界であり、平滑化パラメータは0.1の温度限界より以上、および0.3の温度限界未満である。
【0076】
曲げ/割線弾性率/貯蔵弾性率
【0077】
ASTM D 1928を使用して、試料を圧縮成形する。曲げおよび2%割線弾性率をASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率は、ASTM D 5026−01または同等の技術によって測定する。
【0078】
DSC標準法
【0079】
示差走査熱量測定の結果を、RCS冷却アクセサリーおよびオートサンプラーを備えたTAIモデルQ1000 DSCを使用して確認する。50mL/分の窒素パージガス流を使用する。試料を薄膜にプレスし、約175℃でのプレスにおいて溶融させ、次に、室温(25℃)に空冷する。次に、3〜10mgの材料を直径6mmの円板にカットし、正確に計量し、軽アルミニウムパン(約50mg)に入れ、次に、クリンプシャットする(crimped shut)。試料の熱挙動を、下記の温度プロフィールで調査する。試料を迅速に180℃に加熱し、3分間等温に維持して、あらゆる熱前歴を除去する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃に3分間維持する。次に、試料を、10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する。冷却および第二加熱曲線を記録する。
【0080】
DSC溶融ピークを、−30℃と溶融終了との間に引いた直線状基準線に対して、熱流量(W/g)における極大として測定する。直線状基準線を使用して、融解熱を、−30℃と溶融終了との間の溶融曲線下の面積として測定する。
【0081】
DSCの較正を下記のように行う。先ず、アルミニウムDSCパン中にどのような試料も含有せずに、−90℃からDSCをランさせることによって、基準線を得る。次に、7mgの新しいインジウム試料を下記のように分析する。試料を180℃に加熱し、試料を10℃/分の冷却速度で140℃に冷却し、次に、試料を140℃で1分間にわたって等温に維持し、次に、試料を10℃/分の加熱速度で140℃から180℃に加熱する。インジウム試料の融解熱および溶融開始を測定し、溶融の開始について156.6℃から0.5℃以内であり、融解について28.71J/gから0.5J/g以内であることを確認する。次に、脱イオン水を下記のように分析する。DSCパン中の少量の新しい試料を、10℃/分の冷却速度で25℃から−30℃に冷却する。試料を−30℃で2分間にわたって等温に維持し、10℃/分の加熱速度で30℃に加熱する。溶融の開始を測定し、0℃から0.5℃以内であることを確認する。
【0082】
GPC法
【0083】
ゲル透過クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220器具から成る。カラムおよびカルーセルコンパートメント(carousel compartments)を140℃で操作する。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを使用する。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンである。試料を、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50mLの溶媒中0.1gのポリマーの濃度で調製する。試料を、160℃で2時間ゆるやかに攪拌することによって調製する。使用した注入量は100μLであり、流速は1.0mL/分である。
【0084】
個々の分子量間に少なくとも10の間隔を有する6つの「カクテル」混合物において準備された、580〜8,400,000の分子量を有する21の狭い分子量分布ポリスチレン標準を用いて、GPCカラムセットの較正を行う。該標準は、Polymer Laboratories(Shropshire, UK)から購入される。ポリスチレン標準を、1,000,000またはそれ以上の分子量の場合は50mLの溶媒中0.025gで調製し、1,000,000未満の分子量の場合は50mLの溶媒中0.05gで調製する。ポリスチレン標準を、ゆるやかに攪拌しながら80℃で30分間溶解させる。狭標準混合物を、初めに、かつ最高分子量成分を減少させる順序で(in order of decreasing highest molecular weight component)流して、分解(degradation)を最小限にする。ポリスチレン標準ピーク分子量を、下記の式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym, Let., 6, 621(1968)に記載)を用いてポリエチレン分子量に変換する。
Mホ゜リエチレン=0.431(Mホ゜リスチレン)
【0085】
ポリエチレン当量分子量の算出を、Viscotek TriSECソフトウエア、バージョン3.0を使用して行う。
【0086】
密度
【0087】
密度測定用の試料を、ASTM D 1928に従って調製する。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、試料プレスの1時間以内に行う。
【0088】
ATREF
【0089】
分析的昇温溶離分別(ATREF)分析を、米国特許第4798081号、およびWilde, L.;Ryle, T.R.;Knobeloch, D.C.;Peat, I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455(1982)(それらは、参照により、全体として本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって行う。分析される組成物を、トリクロロベンゼンに溶解し、冷却速度0.1℃/分で温度を20℃にゆっくり下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含有するカラムにおいて結晶化させる。カラムに赤外線検出器を取り付ける。次に、溶離液(トリクロロベンゼン)の温度を1.5℃/分の速度で20℃〜120℃にゆっくり上げることによって、カラムから結晶化ポリマー試料を溶離することによって、ATREFクロマトグラム曲線を得る。
【0090】
13C NMR分析
【0091】
10mm NMR試験管において、約3gのテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を、0.4gの試料に添加することによって、試料を準備する。試験管およびその含有物を150℃に加熱することによって、試料を溶解し、均質化する。13C共鳴周波数100.5MHzに対応する、JEOL Eclipse(商標)400MHz分光器、またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光器を使用して、データを収集する。6秒パルス繰り返し遅延で4000トランジェント(transients)/データファイルを使用して、データを得る。定量分析のための最少信号対雑音を達成するために、複数データファイルを共に付加する。スペクトル幅は、23Kデータ点の最少ファイルサイズを有する25,000Hzである。試料を、10mm広帯域プローブにおいて130℃で分析する。Randallトライアド法(Randall, J.C.;JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317(1989);これは参照により全体として本明細書に組みれられる)を使用して、コモノマー組み込みを測定する。
【0092】
ブロックインデックス
【0093】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、平均ブロック指数、ABI、0より大および約1.0まで、ならびに分子量分布、Mw/Mn、約1.3より大によって特徴付けられる。平均ブロック指数、ABIは、増分5℃(他の温度増分、例えば、1℃、2℃、10℃も使用できる)での20℃から110℃への分取TREF(即ち、昇温溶離分別によるポリマーの分別)において得られる各ポリマー画分のブロック指数(「BI」)の重量平均である。
【0094】
ABI=Σ(wiBIi
【0095】
式中、BIiは、分取TREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーの第i画分(the ith fraction)のブロック指数であり、wiは、第i画分の重量パーセントである。同様に、平均値についてのセカンドモーメントの平方根(the square root of the second moment about the mean)(以下に、セカンドモーメント重量平均ブロック指数と称す)は下記のように定義できる。
【0096】
【数1】

【0097】
式中、Nは画分の数として定義され、BIiは0より大である。図9に関して、各ポリマー画分について、BIは下記の等式の1つによって定義される(両方とも同じBI値を与える)。
【0098】
【数2】

【0099】
式中、Txは、第i画分についてのATREF(即ち、分析TREF)溶離温度(好ましくはケルビンで表される)であり、Pxは、第i画分についてのエチレンモル分率であり、これは、下記のようにNMRまたはIRによって測定できる。PABは、全エチレン/α−オレフィンインターポリマー(分別前)のエチレンモル分率であり、これもNMRまたはIRによって測定できる。TAおよびPAは、純粋「硬質セグメント」(これはインターポリマーの結晶質セグメントを意味する)についてのATREF溶離温度およびエチレンモル分率である。近似値として、または「硬質セグメント」組成が未知のポリマーに関して、TAおよびPA値は、高密度ポリエチレンホモポリマーに関する数値に設定される。
【0100】
ABは、本発明のコポリマーと同じ組成(PABのエチレンモル分率を有する)および分子量のランダムコポリマーについてのATREF溶離温度である。TABは、下記の等式を用いて、エチレンのモル分率(NMRによって測定)から計算できる。
【0101】
Ln PAB=α/TAB+β
【0102】
式中、αおよびβは、多くの、広組成ランダムコポリマーの充分に特性決定された分取TREF画分および/または狭組成を有する充分に特性決定されたランダムエチレンコポリマーを使用する較正によって決定することができる2つの定数である。αおよびβは、機器ごとに変動しうることに留意すべきである。さらに、較正曲線を形成するために使用される分取TREF画分および/またはランダムコポリマーについて適切な分子量範囲およびコモノマー種類を使用して、関心対象のポリマー組成物を用いて適切な較正曲線を形成する必要がある。少しの分子量作用が存在する。較正曲線を同様の分子量範囲から得た場合、そのような作用は本質的に無視しうる。図8に示すいくつかの実施形態において、ランダムエチレンコポリマーおよび/またはランダムコポリマーの分取TREF画分は、下記の関係式を満たす。
【0103】
Ln P=−237.83/TATREF+0.639
【0104】
前記の較正等式は、狭組成ランダムコポリマーおよび/または広組成ランダムコポリマーの分取TREF画分に関して、エチレンのモル分率、Pを、分析TREF溶離温度、TATREFに関連付けている。TXOは、同じ組成物(即ち、同じコモノマー種類および含有量)および同じ分子量を有し、かつPXのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、測定されたPXモル分率を使用して、LnPX=α/TXO+βから算出できる。逆に言えば、PXOは、同じ組成物(即ち、同じコモノマー種類および含有量)および同じ分子量を有し、かつTXのATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル分率であり、これは、TXの測定値を使用して、LnPXO=α/TX+βから算出できる。
【0105】
各分取TREF画分のブロック指数(BI)が得られたら、全ポリマーについての重量平均ブロック指数、ABIを算出することができる。
【0106】
機械的特性−引張、ヒステリシスおよび引裂
【0107】
ASTM D 1708ミクロテンシル試験片を使用して、一軸引張における応力−歪挙動を測定する。試料を、Instronで500%min-1において21℃で引っ張る。引張強度および破断点伸びを、5つの試験片の平均で記録する。
【0108】
ASTM D 1708ミクロテンシル試験片を使用して、Instron(商標)計測器によって、100%および300%歪への繰返し荷重から、100%および300%ヒステリシスを測定する。試料を、21℃で3サイクルにわたって267%min-1において荷重および非荷重に付す。環境室を使用して、300%および80℃における繰返し試験を行う。80℃試験において、試験前に、試料を45分間にわたって試験温度で平衡させる。21℃、300%歪の繰返し試験において、第一非荷重サイクルからの150%歪における収縮応力を記録する。荷重がベースラインに戻った際の歪を使用して、第一非荷重サイクルから、全ての試験についてのパーセント回復を算出する。パーセント回復は、下記のように定義される。
【0109】
【数3】

【0110】
式中、εfは、繰返し荷重から受けた歪であり、εsは、第一非荷重サイクルの間に荷重がベースラインに戻った際の歪である。
【0111】
前記のように作製し試験した試料を、それぞれForestali Srlによって市販されている2つの市販の靴補強材、Elastoform 172/ON(一般に先心に使用されているラテックスを含浸させた起毛綿織物)およびFenise 130/NL(一般に腰裏に使用されているラテックスを含浸させた起毛綿織物)と比較した。圧縮力および保形性の測定の結果を表3に示す。
【表3】

【0112】
前記の結果は、本発明の靴補強材が、レジリエンス、保形性および硬度の望ましいバランスを与えることを示す。約5〜約32の種々の硬度範囲に亘って、ポリオレフィン含浸試料1〜4は、Fenise試料(レジリエンス約59および保形性85〜90を有する)より、高いレジリエンス(約65より大)および高い保形性(約90より大)を示した。ポリオレフィン含浸織物は、Elastoform比較試料と比較して、同様のおよびより高いレジリエンスおよび保形性も示した。
【0113】
VERSIFY(商標)ポリオレフィン分散物を含浸させた試料4は、Elastoform試料と比較して同様の硬度に関して、同様のレジリエンスおよびより優れた保形性を有する。ENGAGE(商標)8200分散物(試料Aによって表される)を含浸させた織物は、同様の硬度のElastoform銘柄と比較して、同様の保形性およびより優れたレジリエンスを有する。
【0114】
含浸調節。前記のように、含浸の量は、カレンダーの間で生地をプレスし、過剰の材料を除去することによって、調節できる。含浸は、例えば、化合物の粘度、水性分散物中の組み合わしたポリマーおよび安定剤の濃度、化合物中の充填剤の濃度、または水性分散物の極性の1つまたはそれ以上を調節することによって、さらに調節できる。
【0115】
含浸調節の例として、20wt%含浸を目標として、種々の分散物固形分濃度で得られた含浸の量を測定する実験を行い、その結果を表4に示す。使用した分散物は、初期固形分濃度41.4wt%を有するDP4200/PRIMACOR 5980I分散物であった。使用した生地試料は、Boeren Bond geophysical textile、およびDon & Low sr−PP fabricであった。
【0116】
生地を分散物に先ず浸漬することによって、含浸生地試料を得た。湿潤後、生地を分散物から出し、過剰の分散物を生地から滴り落とした。湿潤生地を鉛直に吊り下げ、オーブンで乾燥し、さらに、前記のように空気乾燥させた。試料7の場合は、中間のシートだけが浸漬された3シート複合材料を形成し、次に、シートの乾燥および団結を行った。
【表4】

【0117】
試料5〜7に使用した分散物の濃度/粘度は高すぎて、乾燥前にシートからふき取らずに有意に低い含浸パーセントに達することができなかった。分散物は粘性が高すぎて、20wt%含浸を有するシートを形成することができなかったが、分散物は極めてよく生地に付着していることが分かった。
【0118】
分散物を50%の水で希釈した後に、分散物は、よく付着し、より低い程度の生地含浸を生じたが、やはり20wt%の目標を超えなかった。75%水/25%原分散物にさらに希釈した場合に、溶液は極性が高くなりすぎると考えられ、分散物の流れが磁区に存在するのが観察され、生地表面に不均質湿潤を生じた。前記の実施例は、分散物の粘度または濃度を使用して、含浸の程度に影響を与えうることを示している。
【0119】
実験的観察。試料6は、団結後に高明澄度シートを生じた。これに対して、試料7、サンドイッチ複合材料は、団結後に高明澄度を有していなかった。さらに、団結の間に複合材料から水が沸き出るのが観察された。4分間の乾燥時間で充分であると考えられた。試料9の乾燥時間は長かったが、4分後にさらなる重量減少は観察されなかった。
【0120】
好都合にも、1またはそれ以上の本発明の実施形態は、意図する用途において優れた性能を有する組成物、方法および物品を提供する。1つの用途において、例えば、1またはそれ以上の本発明の実施形態を、靴における補強材、例えば、先心または腰裏として使用しうる。さらに、1またはそれ以上の本発明の実施形態は、向上した剛性、弾性、レジリエンス、付着性、保形性または適合性を有する補強組成物を含浸させた繊維構造物を提供する。
【0121】
本発明を、限定数の実施形態に関して記載したが、本開示から便益を得る当業者は、本明細書に開示されている本発明の範囲を逸脱せずに他の実施形態も考案しうることを理解する。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施形態による分散物を配合するのに使用しうる押出器を示す。
【図2】本発明の実施形態による方法を示す工程図を示す。
【図3】本発明の実施形態を試験するのに使用される形成工具器具の略図である。
【図4】本発明の実施形態から試験片を形成するために組み立てられ操作される、図3の形成工具器具の略図である。
【図5】図3の形成工具器具から得た測定値、および本発明の実施形態から形成された試験片を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造物に化合物を含浸させる工程であって、前記化合物が水性分散物を含み、前記水性分散物が下記の物質を含む工程、
(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー;
(b)少なくとも1つの高分子量安定剤;および、
(c)水;
前記含浸繊維構造物から少なくとも一部の水を除去する工程、
を含む方法によって形成される物品。
【請求項2】
前記エチレン基剤ポリマーが、エチレン−α−オレフィンインターポリマーである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記プロピレン基剤ポリマーが、プロピレン−α−オレフィンインターポリマーである、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記化合物が、少なくとも1つの充填剤をさらに含み、前記充填剤が、少なくとも1つのポリマーおよび高分子量安定剤の合計量100部につき、0部より大きく約200部までを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記水性分散物の約35〜約55vol%を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記水性分散物の約40〜約50vol%を含む、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記少なくとも1つの高分子量安定剤が、少なくとも1つの極性ポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記少なくとも1つの極性ポリマーが、極性ポリオレフィンを含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記極性ポリオレフィンが、部分的または完全に中和されたエチレン−酸コポリマーを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記極性ポリオレフィンが、エチレン−アクリル酸ポリマー、エチレン−メタクリル酸ポリマー、およびそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリマーおよび前記少なくとも1つの高分子量安定剤の合計量が、前記水性分散物の約5〜約70vol%を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記水性分散物が、pH約6〜約14を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記水性分散物が、pH約9〜約12を有する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記水性分散物が、平均粒度約0.3〜約3.0ミクロンを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記水性分散物が、平均粒度約0.5〜約2.7ミクロンを有する、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記繊維構造物が、織物、編物、不織布およびジオテキスタイルから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記繊維構造物が、亜麻、麻、セルロース、パルプおよび木材からなる群より選択される天然繊維を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記繊維構造物が、綿、ウール、合成ウール、セルロース系材料;ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリプロピレン、ポリエステルの合成繊維、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
湿潤剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、中和剤、増粘剤、流動調節剤(rheology modifier)、殺生物剤、殺真菌剤およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
請求項1に記載の物品から形成された靴補強材。
【請求項21】
含浸生地の形成法であって、下記の工程:
水性分散物を含む化合物を形成する工程であって、前記水性分散物が下記の物質を含む工程、
(a)エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマー;
(b)少なくとも1つの高分子量安定剤;および、
(c)水;
生地に化合物を含浸させる工程;
前記含浸生地から少なくとも一部の水を除去する工程
を有する形成法。
【請求項22】
前記含浸生地が、前記少なくとも1つのポリマーおよび前記高分子量安定剤の合計量を、前記生地100重量部につき約10〜約150部の範囲で有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記含浸生地が、前記少なくとも1つのポリマーおよび前記高分子量安定剤の合計量を、前記含浸生地100重量部につき約15〜約75部の範囲で有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物の粘度、前記水性分散物中の組み合わされたポリマーおよび安定剤の濃度、または前記水性分散物の極性の少なくとも1つを調節することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記水性分散物の約35〜約55重量%の範囲に調節される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記水性分散物の約40〜約50容量%の範囲に調節される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物の粘度が、約20〜約3000cPの範囲に調節される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記含浸生地を高温に暴露することによって一部の水を除去することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
温度が約70℃〜約120℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エチレン基剤ポリマーが、エチレン−α−オレフィンインターポリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記プロピレン基剤ポリマーが、プロピレン−α−オレフィンインターポリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、少なくとも1つの充填剤をさらに含み、前記充填剤が、前記少なくとも1つのポリマーおよび前記高分子量安定剤の合計量100部につき、0部より大きく約200部までを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が少なくとも1つの充填剤をさらに含み、前記含浸生地が、前記充填剤、前記少なくとも1つのポリマーおよび前記高分子量安定剤の合計量を、前記生地100重量部につき約10〜約300重量部の範囲で有する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの高分子量安定剤が、少なくとも1つの極性ポリマーを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記極性ポリマーが極性ポリオレフィンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
極性ポリオレフィンが、部分的または完全に中和されたエチレン−酸コポリマーを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記極性ポリオレフィンが、エチレン−アクリル酸ポリマー、エチレン−メタクリル酸ポリマーおよびそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのポリマーおよび前記少なくとも1つの高分子量安定剤の合計量が、前記水性分散物の約25〜約74vol%である、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記水性分散物が、pH約6〜約14を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記水性分散物が、pH約9〜約12を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記水性分散物が、平均粒度約0.3〜約3.0ミクロンを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記水性分散物が、平均粒度約0.5〜約2.7ミクロンを有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記繊維構造物が、織物、編物および不織布から選択される少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前記繊維構造物が、亜麻、麻、セルロース、パルプおよび木材からなる群より選択される天然繊維を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項45】
前記繊維構造物が、綿、ウール、合成ウール、セルロース系材料;ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリプロピレン、ポリエステルの合成繊維、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、湿潤剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、中和剤、増粘剤、流動調節剤、殺生物剤、殺真菌剤およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項47】
前記含浸生地を他の支持体に結合させるか、貼り合わせるかまたはコーティングすることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項48】
前記含浸生地の温度を、エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される前記ポリマーの融点またはそれ以上の範囲の温度に上げる、請求項21に記載の方法。
【請求項49】
支持体およびフィルムを含む物品であって、前記フィルムが連続基剤ポリマー相および該連続基剤ポリマー相に分散した不連続安定剤相を含み、ここで、前記連続基剤ポリマー相における基剤ポリマーが、エチレン基剤熱可塑性ポリマー、プロピレン基剤熱可塑性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される、前記物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520053(P2009−520053A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545645(P2008−545645)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046494
【国際公開番号】WO2007/078536
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】