説明

生物学的に活性なナノ粒子治療用因子

ミクロン範囲およびサブミクロン範囲のサイズを有する生物学的に活性な薬剤の粒子を含有する組成物、ならびにこのような粒子を作製および使用する方法が本明細書中に記載される。好ましい実施形態において、この生物学的に活性な薬剤は、ペプチド、タンパク質、核酸分子、または親水性の合成分子である。粒子は、約100nm〜約2000nm、好ましくは、約200nm〜600nmの範囲の平均直径のサイズを有する。必要に応じて、この生物学的に活性な薬剤は、ポリマー性コーティングを含む。この粒子は、生物学的に活性な薬剤を水溶液に添加し、水と混和性である非溶媒と、水溶液とを混合し、そして、この非溶媒:水溶液の組み合わせから生物学的に活性な薬剤の粒子を沈殿させることによって形成される。非溶媒は、代表的には、C〜Cアルコールであり、好ましくは、C〜Cアルコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2003年9月30日に出願された、Jules S.Jacob、Yong S.Jong、Danielle T.Abramson、Edith Mathiowitz、Camilla A.Santos、Michael J.Bassett、およびStacia Furtadoによる、米国仮出願第60/507,413号(発明の名称「Nanoparticulate Therapeutic Biologically Active Agents」)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ナノ粒子およびマイクロ粒子(microparticle)の形状の生物学的に活性な因子に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
大きな生物学的に活性な因子(例えば、タンパク質、RNAおよびDNA)の薬物送達は、しばしば、粒子のサイズに起因して、非経口的な適用に制限される。より小さなサイズの生物学的に活性な因子(例えば、μmまたはμm未満の範囲)は、生物学的に活性な因子が非経口以外の方法を使用して送達されることを可能にする。
【0004】
タンパク質および薬物を微粉化して、マイクロカプセル化に適切な固形粒子(例えば、約10μm未満のサイズを有する粒子)を形成することは、ミリング、スプレー乾燥、スプレー凍結乾燥、および超臨界逆溶剤(supercritical anti−solvent)(SAS)沈殿技術を含む、種々のアプローチを使用して達成されてきた。タンパク質は一般に、水和状態よりも凍結(乾燥)状態の方がより安定であるが、凍結微粉化した(20μm未満の)タンパク質粒子を生成することはしばしば困難である。粒子サイズは、マトリクス型デバイスの薬物放出反応速度論に重要である。
【0005】
生物学的に活性な因子の粒子のサイズを減らすための種々のミリング技術が公知である(例えば、Backstromらに対する特許文献1;Platzらに対する特許文献2;Clarkらに対する特許文献3;およびRiegelmanらに対する特許文献4を参照のこと)。超臨界条件を採用する方法もまた周知である(例えば、Fischerらに対する特許文献5;Hannaらに対する特許文献6;Subramaniamらに対する特許文献7および特許文献8;ならびにSieversらに対する特許文献9を参照のこと)。
【0006】
スプレー乾燥法もまた、当該分野で周知である(例えば、Endらに対する特許文献10;Hanesらに対する特許文献11;Edwardsらに対する特許文献12;および非特許文献1を参照のこと)。生物学的に活性な因子の粒子のサイズを減らし得る沈殿技術もまた公知である(例えば、Duclosらに対する特許文献13;Berniniらに対する特許文献14;Spireasらに対する特許文献15;Frankらに対する特許文献16;およびBurkeに対する特許文献17を参照のこと)。超音波処理は、粒子を微粉化するために使用される別の技術である(例えば、Fongらに対する特許文献18および非特許文献2を参照のこと)。
【0007】
しかし、これらの方法のいくつかは、タンパク質のような特定の型の因子を微粉化するためには望ましくない。例えば、高温、または水性溶媒/有機溶媒の界面への曝露は、タンパク質の安定性に有害であり、変性を生じることが知られている。生物学的に活性な因子の、乾燥した微粉化粒子、および、生物学的に活性な因子の変性を実質的に回避するかまたは最小限にするような粒子を作製する方法を提供することが有利である。小さく、均一なサイズを有する乾燥した微粉化粒子を提供することもまた有利である。
【0008】
因子の粒子をカプセル化および微粉化するための方法は、Mathiowitzらに対する特許文献19、特許文献20および特許文献21、ならびに、非特許文献3に記載されている。特許および刊行物は、ミクロンおよびサブミクロンのポリマー性ミクロスフェアに薬物をカプセル化する方法を記載する。相反転ナノカプセル化(「PIN」)と呼ばれるこの方法において、ポリマーが溶媒中に溶解され、そして、カプセル化される薬物または他の物質が、このポリマー溶液中に溶解または懸濁される。得られた溶液または懸濁液は、ポリマーについて、そして、好ましくは薬物もしくは因子について非溶媒である溶液で迅速に希釈される。この非溶媒は、希釈後にポリマーについて非溶媒である単相溶液が形成されるように、溶媒と十分に混和性であるように選択される。2つの溶液の同時の混合は、迅速に、かつ、小さく特徴的な混合のスケールで生じる。結果として、ポリマーは、沈殿して、非常の小さな直径(代表的には、数十nm〜数百nmの範囲、または、いくつかの場合には、数μmまでの直径)を有する粒子を形成する。これらの粒子は、全体的にサイズが均一である。薬物または因子は、ナノスフェア内にカプセル化される。患者への投与、または他の適用の際に、この薬物または因子は、拡散、ポリマーの分解またはこれらの作用の組み合わせによって、ナノスフェアから放出される。
【0009】
いくつかの状況において、カプセル化しているポリマーの存在は、不必要であり得るか、または、薬物の送達を阻害さえし得る。低い水溶性を有する生物学的に活性な因子(例えば、タキサン類)を微粉化するための方法は、Spherics Incに対する特許文献22に記載されている。しかし、異なる方法も、他の生物学的に活性な因子(例えば、ペプチド、タンパク質、核酸分子および親水性合成分子)に有用であり得る。
【特許文献1】米国特許第5,952,008号明細書
【特許文献2】米国特許第5,354,562号明細書
【特許文献3】米国特許第5,747,002号明細書
【特許文献4】米国特許第4,151,273号明細書
【特許文献5】米国特許第5,043,280号明細書
【特許文献6】米国特許第5,851,453号明細書
【特許文献7】米国特許第5,833,891号明細書
【特許文献8】米国特許第5,874,029号明細書
【特許文献9】米国特許第5,639,441号明細書
【特許文献10】米国特許第5,700,471号明細書
【特許文献11】米国特許第5,855,913号明細書
【特許文献12】米国特許第5,874,064号明細書
【特許文献13】米国特許第5,776,495号明細書
【特許文献14】米国特許第4,332,721号明細書
【特許文献15】米国特許第5,800,834号明細書
【特許文献16】米国特許第5,780,062号明細書
【特許文献17】米国特許第5,817,343号明細書
【特許文献18】米国特許第4,384,975号明細書
【特許文献19】米国特許第6,677,869号明細書
【特許文献20】米国特許第6,235,224号明細書
【特許文献21】米国特許第6,143,211号明細書
【特許文献22】国際特許出願第PCT/US03/34575号
【非特許文献1】Kornblum,J Pharm.Sci.1969年、第58巻、第1号:p.125−27
【非特許文献2】Tracy,Biotechnol.Prog,1998年、第14巻:p.108−15
【非特許文献3】Mathiowitzら、Nature.1997年、第386巻:p.410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、生物学的に活性な因子の自然な構造または活性を保存する、ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの生物学的に活性な因子の粒子を製造するための方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0011】
ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの範囲の生物学的に活性な因子の粒子を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0012】
従来の投与経路(特に、経口経路を介するもの)によって投与される薬物の組成物において使用され得る、ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの範囲の生物学的に活性な因子の粒子を製造することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
ミクロン範囲およびサブミクロン範囲のサイズを有する生物学的に活性な因子の粒子を含有する組成物、および、このような粒子を作製および使用するための方法が、本明細書中に記載される。好ましい実施形態において、この生物学的に活性な因子は、ペプチド、タンパク質、核酸分子、または親水性の合成分子である。粒子は、平均直径が約100nm〜約2000nm(好ましくは約200nm〜600nm)の範囲のサイズを有する。必要に応じて、生物学的に活性な因子は、ポリマー性コーティングを含む。粒子は、生物学的に活性な因子を水溶液に加え、水と混和性の非溶媒をこの水溶液と混合し、そして、非溶媒:水溶液の組み合わせから生物学的に活性な因子の粒子を沈殿させることによって形成される。この非溶媒は、代表的には、C〜Cアルコールであり、好ましくは、C〜Cアルコールである。好ましい実施形態において、非溶媒は、第三級ブチルアルコールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(I.組成物)
組成物は、生物学的に活性な因子の小さな粒子を含有する。本明細書中で一般的に使用される場合、「生物学的に活性な因子」は、治療、診断、予防または免疫に使用される、ポリマー性分子(例えば、タンパク質、ペプチドおよび核酸(RNAおよびDNA)、ならびにその合成もしくは半合成のアナログ)が挙げられる。この粒子は、平均直径が、100nmと2000nmとの間である、ナノ粒子の集団である。この因子の粒子は、一般に安定であり、不可逆的に凝集しない。
【0015】
好ましい実施形態において、粒子は、サブミクロン範囲(例えば、200nm〜600nm)の直径を有する。薬物の粒子は、コーティングと共に、またはコーティングなしで、組成物内に存在し得る。
【0016】
必要に応じて、粒子は、1つ以上のポリマー内にカプセル化される。種々の賦形剤および添加物が存在し得、特に、粒子の凝集を防止するための添加物、および生物活性を保存するための添加物が存在し得る。
【0017】
(A.生物学的に活性な因子)
多くの異なる生物学的に活性な因子が、本明細書中に記載される方法により、小さな粒子に形成され得る。生物学的に活性な因子としては、合成および天然のタンパク質(酵素、ペプチド−ホルモン、レセプター、成長因子、抗体、シグナル伝達分子を含む)、ならびに合成および天然の核酸(RNA、DNA、アンチセンスRNA、三重鎖DNA、干渉RNA(inhibitory RNA)(RNAi)およびオリゴヌクレオチド)、ならびにこれらの生物学的に活性な部分が挙げられる。
【0018】
適切な生物学的に活性な因子は、小さなペプチドおよびポリペプチドにつき約1,000Daを超えるサイズ、より代表的には、タンパク質につき少なくとも約5,000Da、しばしば、10,000Da以上のサイズを有する。核酸は、より代表的には、塩基対または塩基(正確には「bp」)の点から記載される。代表的には、約10bpを超える長さの核酸が本発明の方法において使用される。より代表的には、探索または治療の用途のために有用な核酸の長さは、遺伝子およびベクターにつき約20bp(プローブ;干渉RNAなど)〜数万bpの範囲である。生物学的に活性な因子はまた、親水性分子であり得、好ましくは、低分子量を有する。
【0019】
生物学的に活性な因子を微粉化して小さな粒子を形成した後、これらは、復元可能な生物活性の有意かつ治療的に有用なレベルを保持する。サンプル中の生物学的に活性な因子の重量に基づいて、同じ重量の元の生物学的に活性な因子と比べて、好ましくは、この調製により、その元の生物活性の少なくとも50%を保持し、より好ましくは、この調製により、その元の生物活性の60%〜90%を保持する。最も好ましい実施形態において、この調製により、その元の生物活性の90%より多くを保持する。この生物活性は、ホルモン、酵素、結合、認識、刺激、阻害、形質転換もしくは組換え活性、遺伝子サイレンシング、遺伝子プロービング、遺伝子発現、またはリガンドもしくは補因子としての挙動を含む、任意の型の生物活性であり得る。
【0020】
生物活性を決定する方法は、特定の生物学的に活性な因子により変化し、生物学的に活性な因子の生物活性を記述する科学文献、またはその生物学的に活性な因子の治療用物質としての認可に関する文献に見られ得る。利用可能な場合、バイオアッセイ(すなわち、血中または他の組織内での物質のレベルの観察、または、生物学的に活性な因子の効果(例えば、インシュリンによる血糖の低下)の観察)が、好ましいアッセイ経路である。活性のある生物学的に活性な因子における変性が存在しないことを評価する方法としては、分子の凝集または分子構造の破損に対して感受性の分析方法が挙げられ得る。多くのこのような方法は、公知かつ適切である可能性があり、そして、このうちの最も一般的なものは、分子量により個々に篩い分けするクロマトグラフィー、および自然な状態、または、例えば、変性剤もしくはpHの変化によって特別に変性された状態のいずれかでの、ゲル電気泳動である。質量分析、超遠心分離法、光学共鳴分光法および磁気共鳴分光法、電子プローブ顕微鏡法および原子プローブ顕微鏡法、ならびに他の物理的方法がまた有用であり得る。
【0021】
(粒子の大きさ)
調製された粒子は、100nm〜2000nmの範囲の平均直径を有する。本明細書中で一般に使用される場合、「平均直径」とは、容量平均の直径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)分析を使用して決定され得る。代表的に、粒子は、直径約1μm未満であり、しばしば、約20nm〜約600nmの範囲である。粒子の分散は、比較的狭く、通常は、単分散であることはない。代表的に、90%を超える粒子、好ましくは95%より多くの粒子、より好ましくは99%より多くの粒子が、1μm未満の直径を有する。
【0022】
(C.ポリマー)
粒子は、まず最初にポリマーコーティングを有さない状態で提供され得るが、ポリマーの分画が、安定化剤または他の添加物として組成物中に含められ得る。しかし、いくつかの用途は、適切な部位への薬物の送達を達成するために粒子がコーティングを含むことを必要とし得る。
【0023】
非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーを使用して、生物学的に活性な因子をカプセル化し得る。好ましい実施形態において、粒子は、生分解性ポリマー内にカプセル化される。非腐食性ポリマーが、経口投与のために使用され得る。一般に、合成ポリマーが好ましいが、天然のポリマー(特に、加水分解により分解するいくつかの天然の生体高分子(例えば、ポリヒドロキシブチラート))が使用され得、同等かもしくはなお良い特性を有し得る。コーティングは、粒子の形成の間に形成され得るか、または、同じ方法もしくは他の方法による後の操作において適用され得る。
【0024】
代表的な合成ポリマーは以下である:ポリ(ヒドロキシ酸)(例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸))、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリ(エチレンオキシド))、ポリアルキレンテレフタラート(例えば、ポリ(エチレンテレフタラート))、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物(例えば、ポリ(塩化ビニル))、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリスチレン、ポリウレタン、ならびにこれらのコポリマー、誘導体化セルロース(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートフタラート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、およびセルロース硫酸ナトリウム塩(合わせて、本明細書中で「合成セルロース」と呼ばれる))、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらのコポリマーもしくは誘導体のポリマー(エステル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)(合わせて、本明細書中で「ポリアクリル酸」と呼ばれる)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ならびにこれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる)。本明細書中で使用される場合、「誘導体」としては、置換、化学基の付加、および当業者により慣用的になされる他の修飾を有するポリマーが挙げられる。
【0025】
好ましい生分解性ポリマーの例としては、ヒドロキシ酸のポリマー(たとえば、乳酸およびグリコール酸)、PEG、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)とのコポリマー、ならびにそのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0026】
好ましい天然のポリマーの例としては、タンパク質(例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンおよびプロラミン(例えば、ゼイン))および多糖類(例えば、アルギン酸、セルロース誘導体)およびポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリヒドロキシブチラート)が挙げられる。基材のインビボ安定性は、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合されたポリラクチド−co−グリコリドのようなポリマーの使用による製造の間に調整され得る。PEGが外側表面に露出される場合、PEGの親水性に起因して、これらの物質が循環する時間が増加し得る。
【0027】
好ましい生分解性ポリマーの例としては、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0028】
消化管のような粘膜表面の標的化において使用するための、特に関心のある生体接着性(bioadhesive)ポリマーとしては、ポリ無水物、ならびにアクリル酸のポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸、ならびにこれらの低級アルキルエステル(例えば、ポリアクリル酸、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート))が挙げられる。
【0029】
(D.キャリア、賦形剤および安定化剤)
組成物は、微粉化された薬物粒子と混合された、生理学的または薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤を含み得る。用語「薬学的に受容可能」とは、活性成分の生物活性の有効性と干渉しない無毒性の物質を意味する。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適切な、1つ以上の適合性の、固形または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化物質を意味する。用語「キャリア」は、適用を促進するために活性成分と合わされる、天然または合成の、有機または無機の成分を指す。
【0030】
(II.ミクロン粒子およびサブミクロンの粒子を作製するための方法)
生体材料は、微粉化されて、任意の種々の経路(とりわけ、経口送達または吸入を含む)を介する送達に適切な固形粒子を形成する。このような用途に好ましい粒子サイズ(直径)は、約10μm未満であり、好ましくは、1μm未満である。微粉化の方法は、生物学的に活性な因子の水溶液の、水に混和性の選択された非溶媒への混合またはスプレーを含み、この非溶媒は、代表的には、C〜C脂肪族アルコール、またはこのようなアルコールの混合物である。この方法の利点の1つは、薬物のマイクロ粒子が、あらゆるポリマーコーティングなしで形成され得るという点である。このことは、種々の送達系に組み込むのに適切にしている。
【0031】
まず、生物学的に活性な因子が水溶液中に溶解され、この水溶液は、必要に応じて、1種以上の安定化剤、界面活性剤および/または他の賦形剤を含む。この工程において、水溶液は、必要に応じて、生物学的に活性な因子の沈殿を除いて準備された状態にされる。例えば、生物学的に活性な因子の溶液は、沈殿の開始が溶液中で乳白色として眼に見えるようになるまで、試薬で滴定され得る。この時点で、溶液は、透明さを回復するように、拮抗試薬で逆滴定(back−titrate)される。しかし、いくつかのタンパク質および多くのペプチドおよび核酸を含む他の生物学的に活性な因子は、この調整を必要としない。
【0032】
次に、1つの実施形態において、必要に応じて安定化剤および/または界面活性剤または他の賦形剤を含む生物学的に活性な因子の水溶液は、水に可溶性の液体非溶媒にスプレーされる。水が、非溶媒内へのスプレーの滴から抽出されると生物学的に活性な因子の粒子が形成される。あるいは、別の実施形態において、生物学的に活性な因子の水溶液は、過剰な非溶媒(例えば、少なくとも5倍過剰な容量、または10倍もしくは15倍〜50倍過剰な容量のようなより高い希釈率)と単に混合される。
【0033】
非溶媒の好ましい量は、確実に所望のサイズのマイクロ粒子を形成する最少量であり;この量は、生物学的に活性な因子と非溶媒との特定の組み合わせの各々についての実験により容易に決定される。水溶液および非溶媒は混和性であるので、液滴を分離する表面張力は存在しない。せいぜい、穏やかな撹拌が溶液を混合するのに必要とされる。スプレーまたは混合のいずれかの方法について得られた粒子は、しばしば、1μm未満、代表的には、約200nm〜600nmの範囲の平均直径を有する。これらの粒子の調製における第一の基準は、これらの因子についての生物活性の保存である。
【0034】
第3に、これらの方法により形成された粒子が回収され、そして、必要に応じて乾燥または真空乾燥される。使用される乾燥方法は従来のものであり、とりわけ、濾過、遠心分離、および凍結乾燥が挙げられる。
【0035】
(A.非溶媒)
有用な非溶媒の範囲は制限される。多くの有機溶媒が使用されるが、全体的な変性が観察され、そして、多くの生物学的に活性な因子が不可逆的な塊を形成する。このことは、アセトンまたは酢酸エチルのような完全に極性の有機溶媒でさえ見られる。非溶媒は、水と混和性でなくてはならない。微粉化プロセスに有用な非溶媒は、2%w/w〜100%w/wの範囲の水を吸収し得る。
【0036】
この方法の好ましい非溶媒は、低級アルコール(すなわち、C〜Cアルコール)である。最も好ましい非溶媒は、第三級ブチルアルコール(2−メチル−プロパン−2−オールとも識別され、本明細書中で、「t−ブタノール」または「tBA」とも呼ばれる)である。t−ブタノールが使用される場合、生物活性因子が保存され、小さな直径の粒子が形成される。他の適切な非溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、他のブタノール(例えば、1−ブタノールおよび2−ブタノール)、およびペンタノール(例えば、1−ペンタノール、2−ペンタノールおよび3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール(イソペンタノール)、および第三級アミルアルコール)が挙げられる。これらは一般に、C〜Cアルコールとして記載される。Cアルコールのいくつかもまた有用であり得る。Cアルコール、CアルコールおよびCアルコール(すなわち、メタノール、エタノールおよびプロパノール)は、代表的に小さな粒子を生成するが、しばしば、粒子の回収の間の粒子の凝集を防ぐために、安定化剤または脱凝集剤を必要とし得る。凝集の防止または凝固からの回復を前提とすると、Cアルコール、CアルコールおよびCアルコールが適切であり、そして、t−ブタノールで見られるものと類似する、第1の粒子サイズを有する。粒子サイズが正確でありかつ凝集が制御される場合、プロパノール、エタノールおよびメタノールが、この方法の費用を最小限にするために好ましい。
【0037】
ブタノール(tBA以外)およびペンタノールは、全ての用途において水と混和性ではないが、これらは全て、有意な量の水を吸収する。微粉化プロセスに有用な非溶媒は、2%w/w〜100%w/wの範囲の水を吸収し得る。20℃〜25℃の範囲の温度において、n−ブタノールは、約9%の水を吸収し、イソブタノールは約8%、1−ペンタノールは約2.5%、2−ペンタノールは約16%、3−ペンタノールは約5%、イソペンタノールは約2%を吸収し、そして、第三級ペンタノール(第三級アミルアルコール)は、約12%を吸収する(Merck Index,第11版からのデータ)。従って、水1mlあたりアルコール50mlの希釈率では、これらのアルコールの全てが水と混和性である。高温では、より多くの水が吸収され得る。より多く吸収するアルコールについては、より低い希釈率が可能である。
【0038】
アルコールの混合物がまた、あまり好ましくはないが、潜在的に有用である。いくつかの他の非溶媒液体がまた、非溶媒として、特に、低級アルコールと組合わせて使用され得る;これらの液体としては、特にグリコールが挙げられる。しかし、単一成分の液体が製造の節約には好ましく、アルコールが好ましい非溶媒である。
【0039】
(B.安定化剤)
タンパク質の安定性は多様であり、いくつかのタンパク質は、沈殿前に安定化されることによって恩恵を受けるようである。他のタンパク質および多くの核酸は、安定化を必要としない。必要とされる場合、水溶液中の生物学的に活性な因子は、溶液に安定化剤を添加することによって安定化される。適切な安定化剤としては、塩、緩衝液、糖、ポリオール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドンおよび水溶性ポリマーが挙げられる。この種類の安定化剤の機能は、沈殿の間の生物活性の保存である。安定化剤は、(本明細書中に記載される例のいくつかでは、Znイオンがそうであるように)沈殿した粒子に保持されても、非溶媒によってか、もしくは洗浄によって粒子から除去されてもよい。他の安定化剤は、保存の間の生物活性を保存し、沈殿の段階で、または、しばしば経済効果が大きいのは、沈殿の後期で添加され得る。広範な種々のこのような物質は、処方の分野で周知である。例えば、抗酸化物は、しばしば、貯蔵寿命を向上するために使用される。好ましい実施形態において、安定化剤は、マンニトールおよびスクロースである。
【0040】
(C.添加物)
沈殿因子がまた、この水溶液に添加され得る。生物学的に活性な因子は、1種以上の沈殿因子の追加によってわずかに不溶性にされ得る。次いで、生物学的に活性な因子を溶液内に戻すために、沈殿逆転因子(precipitation reversing agent)が追加され得る。適切な沈殿因子の例としては、塩、pH変化、温度変化、ポリオール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドンおよび水溶性ポリマーが挙げられる。逆転因子としては、沈殿方法に依存して、pH変化、希釈およびキレート化が挙げられる。沈殿因子は、安定化因子と同じであっても異なっていてもよい。使用される因子は、特定の生物学的に活性な因子に依存し、代表的には、経験的にか、または、その特定の生物学的に活性な因子の既知の特性から決定されなければならない。
【0041】
(D.カプセル化)
1つの実施形態において、微粉化プロセスの後に、さらなる処理が続き、この処理において、生物学的に活性な因子の微粉化粒子が、例えば、標準的なマイクロカプセル化技術およびナノカプセル化技術を使用して、1種以上のポリマー内にマイクロカプセル化される。アルコール内での沈殿により形成された、生物学的に活性な因子の微粉化粒子は、多くの標準的なカプセル化プロセスにおけるコア物質として機能し得る。コア物質は、代表的に、ポリマー性物質内にカプセル化される。一般的なマイクロカプセル化技術としては、界面重縮合、スプレー乾燥、ホットメルトマイクロカプセル化、および相分離技術(溶媒除去および溶媒のエバポレーション)が挙げられる。カプセル化技術の選択は、カプセル化される物質、およびそれを用いて達成される治療に依存する。潜在的に適切な技術としては以下が挙げられる:
1.界面重縮合
界面重縮合は、以下の様式で、コア物質をマイクロカプセル化するために使用され得る。1種のモノマーが、第1溶媒中に溶解され、そして、コア物質が、第1溶媒中に溶解または懸濁される。第2モノマーが、第1溶媒と不混和性の第2溶媒(代表的には水性)中に溶解される。第2溶液中での撹拌により第1溶液を懸濁することによって、エマルジョンが形成される。一旦エマルジョンが安定化されると、水相に開始剤が添加され、エマルジョンの各液滴の界面において界面重縮合が起こる。
【0042】
2.スプレー乾燥
スプレー乾燥は、代表的に、1μm〜10μmサイズのマイクロスフェアを調製するためのプロセスであり、このプロセスにおいて、カプセル化されるコア物質は、ポリマー溶液(代表的には水性)内に分散または溶解され、溶液または分散液は、圧縮ガスの流れにより駆動される微粉化ノズルを通して送り込まれ、そして、得られたエアロゾルが、空気の加熱サイクロン(heated cyclone)内で懸濁され、溶媒を微小液滴からエバポレートさせる。固化した粒子は、第2チャンバ内に入り、回収される。
【0043】
3.ホットメルトマイクロカプセル化
ホットメルトマイクロカプセル化は、コア物質が溶融したポリマーに添加される方法である。この混合物は、ポリマーの融点より約10℃上まで加熱された、ポリマーについての非溶媒(しばしば、油性)中で溶融した液滴として懸濁される。非溶媒浴がポリマーのガラス転移点の下まで迅速に冷却される間に、激しく撹拌することによってエマルジョンが維持され、溶融した液滴を固化させ、そして、コア物質を包ませる。この技術により生成されたマイクロスフェアは、代表的に、直径50μm〜2mmのサイズの範囲である。このプロセスは、一般に、完全に低い融点(例えば、生物学的に活性な因子の変性を防止するために、約150℃未満;好ましくは、ほとんどのタンパク質およびいくつかの核酸については、約80℃未満)を有し、かつ、室温より上のガラス転移温度を有するポリマー、および熱安定性のコア物質の使用を必要とする。
【0044】
4.溶媒のエバポレーションによるマイクロカプセル化
溶媒のエバポレーションによるマイクロカプセル化において、ポリマーは、代表的に、水不混和性の有機溶媒中に溶解され、そして、カプセル化される物質が、有機溶媒中の懸濁液または溶液として、ポリマー溶液に添加される。激しく撹拌した水のビーカー(しばしば、エマルジョンを安定化するための表面活性剤を含有する)に、この懸濁液または溶液を添加することによって、エマルジョンが形成される。有機溶媒は、撹拌を続ける間にエバポレートされる。エバポレーションは、ポリマーの沈殿を生じ、コア物質を含有する固形のマイクロカプセルを形成する。
【0045】
5.相分離によるマイクロカプセル化
相分離によるマイクロカプセル化は、代表的に、撹拌によりポリマー溶液内でカプセル化される物質を分散させることによって行なわれる。撹拌により物質の均一な懸濁を継続しながら、ポリマーについての非溶媒をこの溶液にゆっくりと追加し、ポリマーの溶解度を減少させる。ポリマーは、沈殿するか、または、溶媒および非溶媒へのポリマーの溶解度に依存して、ポリマーに富む相およびポリマーが乏しい相へと相分離するかのいずれかである。適切な条件下で、ポリマーに富む相内のポリマーは、連続相との界面に移動し、外側のポリマー殻で液滴内にコア物質をカプセル化する。
【0046】
このプロセスの1つの実施形態は、Ticeらに対する米国特許第5,407,609号に記載され、この文献は、伝えられるところでは、非常に迅速に進行する、相分離によるマイクロカプセル化を開示する。この方法において、ポリマーが溶媒中に溶解され、次いで、カプセル化される因子が、この溶媒内に溶解または分散される。次いで、混合物が、過剰の非溶媒と合わせられ、乳化および安定化され、それによって、このポリマー溶媒は、もはや連続相ではなくなる。積極的な乳化条件を適用して、ポリマー溶媒の微小液滴を生成する。次いで、安定なエマルジョンが、大量の非溶媒に導入されて、ポリマー溶媒を抽出し、マイクロ粒子を形成する。マイクロ粒子のサイズは、ポリマー溶媒の微小液滴のサイズにより決定される。
【0047】
6.相反転ナノカプセル化(PIN)
PINは、選択した「非溶媒」中の希釈ポリマー溶液の不混和性を利用する、ナノカプセル化技術であり、この非溶媒において、ポリマー溶媒は良好な混和性を有する。その結果、最初のポリマー溶液の濃度、ポリマーの分子量、適切な非溶媒対および溶媒と非溶媒との比の選択に依存して、狭いサイズ範囲内で、ナノスフェア(1μm未満)およびマイクロスフェア(1〜10μm)の自発的な形成を生じる(Mathiowitzらに対する米国特許第6,677,869号;同第6,235,224号;および同第6,143,211号を参照のこと)。カプセル化の効率は、代表的に75%〜90%であり、回収率は、70%〜90%であり、そして、生物活性は、一般に、感受性の生物因子について十分に維持される。
【0048】
特定の条件下でのポリマー溶液の「相反転」は、個別の(discreet)マイクロ粒子の自発的な形成をもたらし得る。「相反転ナノカプセル化」または「PIN」と呼ばれるこのプロセスは、本質的に一段階プロセスであり、ほぼ瞬時であり、かつ、溶媒の乳化を必要としないという点で、既存のカプセル化法とは異なる。適切な条件下で、低粘度のポリマー溶液は、適切な非溶媒に添加されたときに、細分化された球状のポリマー粒子へと強制的に相反転させられ得る。
【0049】
相反転の現象は、マクロ孔性およびマイクロ孔性のポリマー膜、ならびに中空繊維を生成するために適用され、この形成は、マイクロ相分離の機構に依存する。マイクロ相分離の有力な理論は、溶媒の除去から生じる最初の沈殿事象としての「第1の」粒子が直径約50nmの形状であるという考えに基づく。このプロセスが継続するにつれ、第1の粒子は、衝突および融合して、約200nmの寸法を有する「第2の」粒子を形成し、最終的には、他の粒子と結合して、ポリマーマトリクスを形成すると考えられる。代替的な理論である「核形成および成長(nucleation and growth)」は、(第1の粒子の合体とは対照的に)ポリマーがコアミセル構造の周りに沈殿するという概念に基づく。
【0050】
このプロセスは、融合することなく低いポリマー濃度で形成する小さな粒子の非常に均一なサイズ分布を生じ、核形成および成長の理論を支持する一方で、より大きな粒子および凝集さえも形成され得る、より高いポリマー濃度(例えば、10%w/vより大きい)での融合を排除しない。(溶媒は、より大きな粒子からよりゆっくりと抽出され、その結果、部分的に溶媒和されたスフェアのランダムな衝突により、融合、そして、最終的には、繊維網の形成を生じる)。ポリマー濃度、ポリマーの分子量、粘度、混和性および溶媒:非溶媒容量比を調節することによって、相反転を使用する膜の原繊維間の相互接続特性が回避され、その結果、マイクロ粒子が自発的に形成される。これらのパラメータは、相互に関係があり、1つのパラメータの調節は、もう1つのパラメータに許容される絶対値に影響を及ぼす。
【0051】
好ましい処理法において、混合物は、カプセル化される因子、ポリマー、およびポリマーについての溶媒から形成される。カプセル化される因子は、液体形状であっても固体形状であってもよい。これは、溶媒中に溶解されても、溶媒中に分散されてもよい。従って、この因子は、溶媒中に分散された微小液滴内に含まれても、溶媒中に固形マイクロ粒子として分散されてもよい。従って、相反転プロセスは、広範な種々の因子を、微粉化された固体形状でか、または、ポリマー溶液中の他に乳化された液体形状のいずれかで含めることによって、これらの因子をカプセル化するために使用され得る。
【0052】
マイクロ粒子内の因子についての装填範囲は、0.01〜80%(因子重量/ポリマー重量)の間である。ナノスフェアを用いて作業する場合、最適な範囲は、0.1%(w/w)〜5%(w/w)である。
【0053】
ポリマーについての数平均分子量の範囲は、約1kDaと150,000kDaの間であり、好ましくは、2kDaと50kDaの間である。ポリマー濃度は、代表的に、0.01%(w/v)と50%(w/v)との間である。しかし、主にポリマーの分子量と、得られるポリマー溶液の粘度に依存して、他の濃度範囲が適切であり得る。一般に、低分子量ポリマーは、高濃度のポリマーの使用を可能にする。好ましい濃度範囲は、約0.1%(w/v)と10%(w/v)との間であり、好ましくは、5%(w/v)より下である。1%(w/v)〜5%(w/v)の範囲のポリマー濃度が、特に有用である。
【0054】
ポリマー溶液の粘度は、好ましくは、3.5cP未満であり、より好ましくは、2cPであるが、ポリマーの分子量のような他のパラメータの調節に依存して、より高い粘度(例えば、4cP、または6cPでさえ)も可能である。ポリマー濃度、ポリマーの分子量および粘度は、相互に関係があること、そして、1つのパラメータを変えることにより他のパラメータに影響を及ぼす可能性があることが、当業者により理解される。
【0055】
非溶媒または抽出媒体は、溶媒中のその混和性に依存して選択される。従って、溶媒および非溶媒は、「対」として考えられる。溶解度パラメータ(δ(cal/cm1/2)は、溶媒/非溶媒対の適合性の有用な指標である。溶解度パラメータは、2つの溶媒の混和性の有効なプロテクターであり、一般に、より高い値が、より親水性の液体を示し、一方で、より低い値は、より疎水性の液体を表す(例えば、δi水=23.4(cal/cm1/2であり、一方で、δiヘキサン=7.3(cal/cm1/2である)。溶媒/非溶媒の対は、溶媒のδと非溶媒のδとの間の差の絶対値が、約6(cal/cm1/2未満のときに有用である。いずれの理論にも束縛されることは望まないが、この知見の解釈は、溶媒と非溶媒との混和性が、沈殿の核の形成に重要であり、この核が最終的には粒子の成長のための中心として機能するというものである。ポリマー溶液が、非溶媒において完全に不混和性である場合、溶媒の抽出は生じず、ナノ粒子は形成されない。中間の場合は、わずかに混和性の溶媒/非溶媒の対を含み、ここでは、溶媒除去の速度は、目立たない(discreet)マイクロ粒子を形成するのに十分迅速ではなく、粒子の合体の凝集を生じる。
【0056】
「親水性」の溶媒/非溶媒の対(例えば、非溶媒としてエタノールを含む塩化メチレン中に溶解させたポリマー)を使用して作製されたナノ粒子は、「疎水性」の溶媒/非溶媒の対(例えば、非溶媒としてヘキサンを含む塩化メチレン中に溶解させた同じポリマー)を使用したときに生成される400nm〜2,000nmの寸法のより大きな粒子と比較して、100nm〜500nmのサイズ範囲の粒子を生じた。
【0057】
同様に、溶媒:非溶媒の容量比は、マイクロ粒子が、粒子の凝集または融合なしで形成されるかどうかを決定する際に重要である。溶媒:非溶媒の容量比についての適切な作業範囲は、1:40〜1:1,000,000(v/v)である。好ましくは、溶媒:非溶媒の容量比についての作業範囲は、1:50〜1:200(v/v)である。約1:40未満の比は、粒子の合体を生じた。この結果は、不完全な溶媒の抽出、または、大量の非溶媒相への溶媒の拡散速度の低下に起因し得る。
【0058】
上に与えられた範囲は、絶対的なものではないが、その代わりに、相互に関係があるということが当業者により理解される。例えば、溶媒:非溶媒の最小の容量比は、1:40のオーダーであると考えられるが、ポリマー濃度が極端に低く、ポリマー溶液の粘度が極端に低く、そして、溶媒と非溶媒との混和性が高い場合、マイクロ粒子は、1:30のようなより低い比でも形成され得る可能性がある。従って、ポリマーは、有効量の溶媒に溶解され、生物学的に活性な因子、ポリマーおよびポリマー溶媒の混合物が、有効量の非溶媒に導入されて、マイクロ粒子の自発的かつ実質的に瞬時の形成を生じる、ポリマーの濃度、粘度および溶媒:非溶媒の容量比を生じる。
【0059】
50:50および75:25のモル比のポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)のようなポリエステル;ポリカプロラクトン;20:80および50:50のモル比のポリ(フマル酸−co−セバシン酸)すなわちP(FA:SA)のようなポリ無水物;20:80のモル比のポリ(カルボキシフェノキシプロパン−co−セバシン酸)またはP(CPP:SA)、およびポリスチレン(PS)を含む、種々のポリマーが使用され得る。これらのポリマーのポリ(オルト)エステル、ブレンド、およびコポリマー、ならびに、他の生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマー(例えば、エチレンビニルアセテートおよびポリアクリルアミド)がまた使用され得る。
【0060】
10nm〜10μmの範囲のサイズを有するナノスフェアおよびマイクロスフェアが、これらの方法により生成されている。1%(w/v)〜2%(w/v)の範囲の初期ポリマー濃度、および1cP〜2cPの溶液の粘度を、最適な1:100の容量比の「良好な」溶媒(例えば、塩化メチレン)および強力な非溶媒(例えば、石油エーテルまたはヘキサン)とともに使用すると、100nm〜500nmの範囲のサイズを有する粒子が生成される。同様の条件下で、2%(w/v)〜5%(w/v)の初期ポリマー濃度、および2cP〜3cPの溶液の粘度は、代表的に、500nm〜3,000nmのサイズを有する粒子を生成する。非常に低い分子量のポリマー(5kDa未満)を使用すると、最初の溶液の粘度は、10%(w/v)よりも高い初期ポリマー濃度の使用を可能にするのに十分低くあり得、この濃度は、一般に、1μm〜10μmの範囲のサイズを有するマイクロスフェアを生じる。一般に、15%(w/v)の濃度および約3.5cPよりも大きい溶液の粘度を用いると、個別の(discreet)マイクロスフェアは形成されないが、その代わりに、ミクロンの厚みの寸法で複雑な相互に接続された繊維網へと不可逆的に融合する可能性がある。
【0061】
これらのカプセル化法は、80%より高い生成収率、および、ナノサイズ〜マイクロサイズの粒子の100%と同じ高さのカプセル化効率を生じ得る。
【0062】
本明細書中に記載される方法はまた、均一なサイズ分布により特徴付けられる、マイクロ粒子およびナノ粒子を生成し得る。本明細書中に記載される方法は、例えば、サイズが比較的単分散である、nmサイズの粒子を生成し得る。十分に規定され、変動の少ないサイズを有するマイクロ粒子を生成することにより、生物学的に活性な因子の放出のために使用される場合のような、マイクロ粒子の特性が、良好に制御され得る。従って、この方法は、被験体への投与のための持続放出処方の調製における改善を可能にする。
【0063】
この方法はまた、マイクロスフェアのサイズを制御するために有用である。これは、カプセル化される物質が、まず、溶媒中に分散されなければならない場合、そして、カプセル化される物質を超音波処理することが望ましくない場合に特に有用である。カプセル化される物質と溶媒の(溶解されたポリマーとの)混合物は、液体窒素内で凍結され得、次いで、ポリマー内にカプセル化される物質を分散させるために凍結乾燥され得る。得られた混合物は、次いで、溶媒中に再溶解され得、次いで、この混合物を非溶媒に添加することによって分散され得る。この方法論は、DNAを分散させることに関して使用された(Brown University Research Foundationに対するWO01/51032を参照のこと)。
【0064】
多くの場合、この方法は、全体で5分未満で行なわれ得る。調製時間は、ポリマーの溶解度と選択される溶媒、因子が溶媒中に溶解されるのかまたは分散されるのか、などに依存して、1分〜数時間の間の時間がかかり得る。それにも関わらず、実際のカプセル化時間は、代表的に30秒未満である。
【0065】
マイクロカプセルの形成後、これらは、遠心分離、濾過、または他の標準的な技術により回収される。濾過および乾燥は、カプセル化された物質の質および非溶媒を乾燥させるための方法に依存して、数分〜1時間かかり得る。プロセスは、全体として、不連続なプロセスであっても、連続的なプロセスであってもよい。
【0066】
(III.ミクロン粒子およびサブミクロン粒子の使用)
生物学的に活性な因子の粒子は、疾患および障害の処置のために患者に送達され得る。1つの実施形態において、この粒子は、粘膜表面(例えば、鼻腔内、肺、膣または経口投与)への送達に適切である。別の実施形態において、この粒子は、非経口投与に適切である。この粒子は、その小さなサイズに起因して、非経口投与される場合、血管を詰まらせない。
【0067】
好ましい実施形態において、生物学的に活性な因子は、インシュリンである。最も好ましい実施形態において、インシュリン粒子は、生体接着性ポリマー(例えば、ポリ無水物)でコーティングされて、腸からの粒子の取り込みを改善する。
【0068】
さらに、この様式で形成されたタンパク質粒子および他の生物学的に活性な因子の粒子は、より大きなカプセル内で凝集体として使用され得る。小さな粒子サイズは、適切なコーティングと共に、腸を横断する送達を改善し、臨床的に有用なバイオアベイラビリティをもたらす。さらに、これらの小さな生物学的に活性な因子の粒子は、必要に応じて、免疫系の刺激薬およびアジュバントとの混合物中で、免疫のために使用され得る。これは、「パイエル板」、ならびに腸および他の粘膜における類似の器官を含み得る。核酸粒子は、細胞を形質転換するため、そして、核酸の他の細胞内用途に従事させるために使用され得、多種類の用途(例えば、プラスミドおよびRNAサイレンシング)が、当該分野で提案されている。一般に、生物学的に活性な因子の粒子は、特定の生物学的に活性な因子についての公知の治療的用途における使用に有利である。
【0069】
微粉化された薬物粒子は、全ての範囲の投与経路を使用して、患者に投与され得ることが当業者に周知である。一例として、微粉化された薬物粒子は、標準的な処方方法を使用して、直接圧縮用(direct compression)または湿式造粒打錠用(wet compression tableting)の賦形剤とブレンドされ得る。得られた顆粒状の塊が、次いで、鋳型または金型内で圧縮されて、錠剤を形成し、その後、経口投与経路により投与され得る。あるいは、微粉化された薬物顆粒は、押し出され、球状にされ(spheronize)、そして、カプセルおよびカプレットの内容物として経口投与され得る。錠剤、カプセルおよびカプレットは、送達系の溶解を変更するためにフィルムコーティングされ得るか(腸溶性コーティング)、または、胃腸管の異なる領域へとマイクロスフェアの送達を標的化し得る。さらに、微粉化された薬物は、水性流体または糖溶液(シロップ)または水アルコール溶液(エリキシル)または油内の懸濁液として経口投与され得る。好ましい実施形態において、粒子は、経口投与に適切である。
【0070】
微粉化された薬物は、頬、直腸もしくは膣の投与の目的で、ガムおよび粘性流体と共に混合され、局所適用され得る。微粉化された薬物はまた、経皮送達のために、表皮に局所投与する目的で、ゲルおよび軟膏とともに混合され得る。
【0071】
微粉化された薬物はまた、非粘性流体内に懸濁され得、そして、鼻腔膜(nasal membrane)へのこの投薬形態の投与のために噴霧または霧状にされ得る。微粉化された薬物はまた、等張流体中の滅菌懸濁液として、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、くも膜下腔内経路、硝子体内経路、または皮内経路により非経口送達され得る。
【0072】
最後に、微粉化された薬物は、吸入送達の目的で、定量吸入器内のドライパウダーとして噴霧および送達され得る。吸入による投与について、本発明に従って使用するための化合物は、簡便に、適切な噴霧剤(例えば、空気、二酸化炭素、または他の適切な気体)を使用して、加圧型パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー提示の形状で送達され得る。加圧型エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において使用するためのカプセルおよびカートリッジは、マイクロ粒子、および必要に応じて、適切な基材(例えば、ラクトースまたはデンプン)を含有して処方され得る。当業者は、過度の実験に頼ることなく、エアロゾルを生成するための種々のパラメータおよび条件を容易に決定し得る。いくつかの型の定量吸入器が、通常、吸入による投与のために使用される。これらの型のデバイスとしては、定量噴霧式吸入器(MDI)、呼気作動型MDI(breath−actuated MDI)、ドライパウダー式吸入器(dry powder inhaler)(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサ/保持チャンバ、およびネブライザーが挙げられる。エアロゾル送達系を調製するための技術は、当業者に周知である。一般に、このような系は、マイクロ粒子内で因子の生物学的特性を有意に損ねない成分を利用すべきである(例えば、SciarraおよびCutie、「Aerosols」Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、第1694頁−第1712頁(1990)を参照のこと)。
【0073】
微粉化された薬物粒子は、全身に送達されることが望ましい場合、注射による(例えば、大量注射または連続注入による)非経口投与のために処方され得る。注射のための処方は、単位投薬形態(例えば、アンプルまたは複数用量の容器)にて、保存剤が添加された状態で提示され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、そして、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方用の薬剤を含有し得る。
【0074】
本明細書中に記載される方法および組成物は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解される。
【実施例】
【0075】
実施例1〜10は、異なる微粉化されたインシュリン処方物、およびこれらの処方物を作製するための方法を記載する。全体の収量は、通常、沈殿内の非インシュリン物質の存在について補正されない。以下の実施例5において、回収された重量の約30%はインシュリンでなく、緩衝液、塩などであった。
【0076】
(実施例1.超音波ノズルによる、第三級ブタノール(tBA)インシュリン粒子の調製)
0.25グラムの亜鉛インシュリン(Gibcoカタログ番号18125−039,Lot 1108537)を25mlの0.01N HClに溶解した。0.80mlの10%(w/v)硫酸亜鉛溶液を、振盪しながらゆっくりと添加して、この溶液からインシュリンをわずかに沈殿させた。3.0mlの0.01N HClを添加して逆滴定し、インシュリンを再溶解させた。合計容量は、28.8mlであった(「平衡化亜鉛インシュリン溶液」)。
【0077】
23.8mlの平衡化亜鉛インシュリン溶液を、20mlのガラスシリンジに引き込み、この溶液を、超音波ノズル(Sonotek,カタログ番号12354)に、シリンジポンプ(Harvard Apparatusシリンジポンプ、モデル55−4140)を使用して、0.6ml/分の速度で移した。この超音波ノズルを、600mlのガラスビーカー内で、表面から1cm、tBA(JT Baker Lot t15B09)の500mL浴の中心から1cmに設定した。ノズルの出力は2.5Wであった。この浴を400rpmで撹拌し、温度を29℃に維持した。40分後、tBA中に懸濁された粒子を、2×250mlの琥珀色のポリエチレン(PE)ボトルにデカントし、液体窒素に5分間浸すことによって急速冷凍し、5日間凍結乾燥した。
【0078】
tBAインシュリン粒子の全体の収量は、出発重量の70%であった。この粒子は、微細な白色粉末の形状であり、約0.1グラム/mlのかさ密度を有した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、約300〜600nmの範囲の直径を有する、別個の粒子を示した。
【0079】
(実施例2.コアセルベーションによるtBAインシュリン粒子の調製)
0.25グラムの亜鉛インシュリン(Gibco カタログ番号18125−039,Lot 1108537)を、25mlの0.01N HClに溶解した。0.80mlの10%(w/v)硫酸亜鉛溶液を振盪しながらゆっくりと添加して、この溶液からインシュリンをわずかに沈殿させた。3.0mlの0.01N HClを添加して逆滴定し、インシュリンを再溶解させた。平衡化亜鉛インシュリン溶液の合計容量は、28.8mlであった
5.0mlの平衡化亜鉛インシュリン溶液を、125mlのWheatonガラスボトルに移し、29℃に維持した100mlのtBA(JT Baker Lot t15B09)を、10秒間にわたってゆっくりと添加した。この混合物に蓋をして、1回反転させることによって混合した。この内容物を4×50mlのコニカル遠心管に移し、IEC遠心機(IECモデルCL2)において20分間6Krpmで遠心分離した。この上清の流体を捨て、そして、ペレットを、液体窒素に5分間浸すことによって急速冷凍し、5日間凍結乾燥した。
【0080】
tBAインシュリン粒子の全体の収量は、出発重量の100%であった。この粒子は、白色粉末の形状であり、約1グラム/mlのかさ密度を有した。SEM分析は、300〜600nmの寸法の、別個の粒子を示した。
【0081】
(実施例3.沈殿によるtBAインシュリン粒子の調製)
0.25グラムの亜鉛インシュリン(Gibcoカタログ番号18125−039,Lot 1108537)を25mlの0.01N HClに溶解した。0.80mlの10%(w/v)硫酸亜鉛溶液を、振盪しながらゆっくりと添加して、この溶液からインシュリンをわずかに沈殿させた。3.0mlの0.01N HClを添加して逆滴定し、インシュリンを再溶解させた。平衡化亜鉛インシュリン溶液の合計容量は、28.8mlであった。
【0082】
28.8mlの平衡化溶液を、3.5LのS/S圧力ポット内で29℃に維持した720mlのtBA(平衡化溶液の25倍の容量)に迅速に分配した。このポットを密閉し、10秒間旋回させて混合した。内容物を、9cm S/Sフィルタホルダ中0.22μm Teflon(登録商標)フィルタ(Osmonics F02LP0925)を用いて、20psiの窒素陽圧下にて濾過した。保持物を、スパチュラでこすることによってフィルタから回収し、きれいな風袋を量ったシンチレーションバイアルに移し、液体窒素に5分間浸すことによって急速冷凍した。tBA粒子を、2日間凍結乾燥した。
【0083】
tBAインシュリン粒子の全体的な収率は80%であった。この粒子は、白色粉末の形状であり、約1グラム/mlのかさ密度を有した。SEM分析は、300〜600nmの寸法の、別個の粒子を示した。
【0084】
(考察)
実施例1、2および3は、tBAを使用してインシュリンを微粉化する3つの異なる方法を記載する。これらの方法の全ては、小さく(300〜600nm)微細なインシュリン粒子を形成するのに効果的であった。
【0085】
(実施例4.沈殿によるtBAインシュリン粒子の調製)
5グラムの亜鉛インシュリン(Spectrum Lot RI0049)を、500mlの0.01N HClに溶解した。32.0mlの10%硫酸亜鉛溶液を、振盪しながらゆっくりと添加して、この溶液からインシュリンをわずかに沈殿させた。120.0mlの0.01N HClを添加して逆滴定し、インシュリンを再溶解させた。平衡化亜鉛インシュリン溶液の合計容量は、652mlであった。
【0086】
652mlの平衡化溶液を28℃の水浴に10分間入れ、次いで、3.5LのS/S圧力ポット内で28℃に維持した9780mlのtBA(平衡化溶液の15倍の容量)に注いだ。この圧力ポット、フィルタホルダおよびチュービングを、28℃の水浴に浸した。この混合物をスパチュラで10秒間撹拌し、そして、このポットを密閉し、10秒間旋回させて混合した。内容物を、9cm S/Sフィルタホルダ中0.22μm Teflon(登録商標)フィルタ(Millipore FGLP0925)を用いて、20psiの窒素陽圧下にて濾過した。保持物を、スパチュラでこすることによってフィルタから回収し、きれいな風袋を量ったシンチレーションバイアルに移し、液体窒素に5分間浸すことによって急速冷凍した。tBA粒子を、3日間凍結乾燥した。
【0087】
tBAインシュリン粒子の全体的な収率は、塩などについての補正なしで、開始重量の約102%であった。この粒子は、白色粉末の形状であり、約1グラム/mlのかさ密度を有した。この保持物の一部を、新しいtBA中に再懸濁し、瞬間冷凍し、そして、1日凍結乾燥した。この物質の見かけ上のかさ密度は、約0.1グラム/mlであった。
【0088】
(実施例5.沈殿によるtBAインシュリン粒子の調製)
8グラムの亜鉛インシュリン(Spectrum Lot RI0049)を、800mlの0.01N HClに溶解した。51.2mlの10%硫酸亜鉛溶液を、振盪しながらゆっくりと添加して、この溶液からインシュリンをわずかに沈殿させた。160.0mlの0.01N HClを添加して逆滴定し、インシュリンを再溶解させた。平衡化亜鉛インシュリン溶液の合計容量は、1011mlであった。
【0089】
1011mlの平衡化溶液を28℃の水浴に10分間入れ、次いで、20LのS/S圧力ポット内で28℃に維持した15168mlのtBA(平衡化溶液の15倍の容量)に注いだ。この圧力ポット、フィルタホルダおよびチュービングを、28℃の水浴に浸した。この混合物をスパチュラで10秒間撹拌し、そして、こポットを密閉し、10秒間旋回させて混合した。内容物を、9cm S/Sフィルタホルダ中0.22μm Teflon(登録商標)フィルタ(Millipore FGLP0950)を用いて、20psiの窒素陽圧下にて濾過した。保持物を、スパチュラでこすることによってフィルタから回収し、きれいな風袋を量ったプラスチックジャーに移し、新しいtBA中に再懸濁させ、液体窒素に5分間浸すことによって瞬間冷凍した。tBA粒子を、6日間凍結乾燥した。tBAインシュリン粒子の全体的な収率は、100%を超えた。この粒子は、微細な白色粉末の形状であり、約0.1グラム/mlのかさ密度を有した。
【0090】
(実施例6.tBAインシュリン粉末の組成物)
実施例5に記載した処方物を、HPLCによりインシュリン含量について、Karl Fischer滴定により含水量について、EDTA滴定により亜鉛含量について、ガスクロマトグラフィーにより残留tBA含量について、そして、LC/MS/MSにより硫酸塩含量について分析した。インシュリンの量は69%w/wであり;水の量は11%w/wであり;tBAの量は1%w/wであり;そして亜鉛および硫黄の量は、それぞれ10%w/wであった。インシュリンのサイズ排除および逆相HPLCは、インシュリン二量体が全インシュリンの4%w/wであり、脱アミド(脱アミド化された)インシュリンが、全インシュリンの2%w/wであった。
【0091】
(実施例7.インビボにおけるtBAインシュリンの生物活性)
実施例1に記載したように調製したtBAインシュリン処方物を、断食させたラットへの腹腔内(IP)注射により生物活性について試験した。用量は、1.5 IU/kgであった。6時間にわたるグルコース低下曲線(絶対値)の曲線下面積(AUC)を、同じ時間にわたる、0 IU/kg、0.75 IU/kg、1 IU/kg、1.5 IU/kg、3 IU/kg、および5 IU/kgのウシ亜鉛インシュリンのIP注射によるAUCと比較した。これらの結果に基づいて、tBA処方物の生物活性を、ウシ亜鉛インシュリンの80%よりも大きく見積もった。
【0092】
(実施例8.Eudragit S100/FASA中のtBAインシュリンの相反転ナノカプセル化)
実施例5に記載したように調製した19.2mgのtBAインシュリンを、35mlのアセトン:ジクロロメタン:イソプロパノール(4:2:1,v;v;v)中に301.9mgのEudragit S100(Rohm and Haas)および302.6mgのポリ(フマル酸−co−セバシン酸)(P(FA:SA) 20:80,Spherics Inc)を含有するポリマー溶液内で、浴内超音波処理(bath sonication)により分散させた。この混合物を、6mlのSPAN 85(Spectrum)を含有する3Lのペンタンに分散させ、そして、20psiの窒素陽圧下にて、9cm S/Sフィルタホルダ中0.22μm Teflon(登録商標)フィルタ(Millipore FGLP0950)を用いる濾過により回収した。収率は92.4%であった。この粒子を、Coulter Multisizer IIIを用いて、50mMクエン酸緩衝液(pH5.5)中でサイズ分布について分析した。粒子分布は、機器の検出限界よりも低かった(代表的には、粒子サイズは、1〜1.5ミクロン未満であった)。
【0093】
(実施例9.インビボにおけるEudragit S100/FASAナノ粒子中のtBAインシュリンの生物活性)
実施例8に記載したtBAインシュリンナノ粒子処方物を、断食させたラットへの1.5 IU/kgでの腹腔内(IP)注射により生物活性について試験した。6時間にわたるグルコース低下曲線(絶対値)のAUCを、同じ時間にわたる、0 IU/kg、0.75 IU/kg、1 IU/kg、1.5 IU/kg、3 IU/kg、および5 IU/kgのウシ亜鉛インシュリンのIP注射によるAUCと比較した。これらの結果に基づいて、tBA処方物のIP注射による生物活性を、ウシ亜鉛インシュリンの56%よりも大きく見積もった。tBAインシュリンナノ粒子処方物の生物活性は、実施例8の処方物と似ていたが、Eudragit S100を単独で用いると、ウシ亜鉛インシュリンの97%よりも高かった。従って、カプセル化されたインシュリンナノ粒子は、カプセル化されていないインシュリンナノ粒子よりも高いバイオアベイラビリティを有した(実施例7を参照のこと)。
【0094】
(実施例10.インビボにおけるP(FA:SA)ナノ粒子中のtBAインシュリンの経口による生物活性)
ポリ(フマル酸−co−セバシン酸)(P(FA:SA))中2%のtBAインシュリン処方物を、非溶媒としてペンタンを、そして、P(FA:SA)についての溶媒としてジクロロメタンを用いて、相反転ナノカプセル化により調製した。この処方物を、250 IU/kgの用量レベルで、絶食していない糖尿病ラットにおける経口生物活性について試験した。血漿インシュリンを、ELISAにより測定し、グルコースの低下を、グルコメーター(glucometer)により測定した。このモデルにおけるインシュリンの経口バイオアベイラビリティは、インシュリンの皮下注射と比較して、6.5%であった。
【0095】
別の研究において、カプセル化していないインシュリンのバイオアベイラビリティを試験した。カプセル化していないインシュリンは、1%未満のバイオアベイラビリティを生じ、これは、カプセル化されたインシュリンのバイオアベイラビリティよりもかなり低いものである。
【0096】
(実施例11.超音波ノズルによる、tBA成長ホルモン粒子の沈殿)
0.25mlのリン酸/スクロース溶液中5mgのヒト成長ホルモン(hGH Serono Lot PGRE9901)を、250μLの蒸留水で1:1に希釈し、これに、5μlの10%w/v Pluronic F127を添加した。
【0097】
この溶液を、超音波ノズル(Sonotek,カタログ番号12354)に、自然送りにより0.6ml/分の速度で移した。この超音波ノズルを、20mlのガラスバイアル内で、約30℃に維持した5mL容量のtBAの表面から1cm、中心から1cmに設定した。ノズルの出力は1.5Wであった。この懸濁液を液体窒素に5分間浸すことによって外殻を凍結(shell freeze)し、そして、2日間凍結乾燥した。SEM分析は、300〜600nmの寸法の、別個の粒子を示した。HPLC分析は、89%のhGHが、自然の状態であり、9%が凝集していたことを示した。
【0098】
(実施例12.tBA成長ホルモンナノ粒子における凝集の減少)
0.27mlのリン酸/スクロース溶液中に2.7mgのヒト成長ホルモン(hGH Serono Lot PGRE9901)を含有する3つのアリコートを調製し、各アリコートに、63μLの8%(w/v)マンニトールおよび25μLの2%(w/v)PLURONIC(登録商標)F127を添加した。アリコート#1には、何も加えなかった(コントロール)。1μLの10%w/vのZnSOをアリコート#2に加えた。10μLの10%w/vのZnSOをアリコート#3に加えた。各アリコートを、個別に、50mlコニカルプラスチック遠心管内で、25℃の別個の45ml容量のtBAに分散させた。tBA沈殿物を、IEC臨床用遠心管内で3KGにて10分間遠心分離し、上清の流体を捨てた。ペレットを、50μLの8%(w/v)マンニトールおよび20μLの2%(w/v)PLURONIC(登録商標)F127を含有する0.7mlのtBAに再懸濁した。この懸濁液を液体窒素に5分間浸すことによって外殻を凍結し、そして、1日間凍結乾燥した。HPLC分析は、アリコート#1中のコントロールサンプルは、90%が自然状態のhGHであり、10%が凝集しており;アリコート#2中の亜鉛により沈殿させたサンプルは、92%が自然状態のhGHであり、8%が凝集しており;アリコート#3中の亜鉛(アリコート#2に添加した亜鉛の量の10倍)により沈殿させたサンプルは、99%が自然状態のhGHであり、3%が凝集していた(実験誤差範囲内)ことを示した。従って、これらの結果は、亜鉛が、tBA微粉化プロセスの間の凝集に対してhGHを安定化したことを示している。
【0099】
(実施例13.tBA成長ホルモン粒子の沈殿と、PINによるPLGA中のカプセル化)
0.50mlのリン酸/スクロース溶液中の10mgのヒト成長ホルモン(hGH Serono Lot PGRE9901)を、500μLの蒸留水で1:1希釈し、これに、100μLの10%w/v PLURONIC(登録商標)F127を添加した。この溶液を、50mlのコニカルプラスチック遠心管中、30℃にて40mlのtBAに分散させ、10秒間ボルテックスした。この懸濁液を、IEC臨床用遠心管内で3KGにて10分間遠心分離し、上清の流体をデカントした。懸濁液のアリコートを風乾させ、SEMで試験した。tBA hGH粒子は、球状であり、200〜500nmの範囲のサイズであった。
【0100】
相反転ナノカプセル化(PIN)により微粉化したhGH粒子をカプセル化するために、ペレットを、0.5mlの上清流体中に再懸濁し、0.5mlの酢酸エチルを転移溶媒として添加した。混合物を10秒間ボルテックスし、ジクロロメタン中3.33mlの3% PLGA RG502H(50:50,Boehringer Ingelheim)に添加した。この懸濁液を10秒間ボルテックスし、200mlの石油エーテル中に分散させた。カプセル化したtBA−hGHを、濾過により回収し、風乾させ、次いで、18時間真空乾燥させて、残留溶媒を除去した。55.9mgのPIN粒子を回収した。
【0101】
(実施例14.異なるアルコールを用いたインシュリンの沈殿)
平衡化亜鉛インシュリン溶液を調製するために、0.3mlの10%w/v硫酸亜鉛溶液を、0.01N HCl中10mlの10mg/ml亜鉛インシュリン溶液に、添加し、微細なタンパク質沈殿物を生じた。1〜1.2mlの0.01N HClをこの混合物に添加して、「逆滴定」し、インシュリンを再溶解させた。
【0102】
平衡化亜鉛インシュリン溶液のアリコートを使用して、インシュリン沈殿に対する種々のアルコールの効果を試験した。試験したアルコールは以下の通りであった:エタノール、n−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールおよび第三級アミルアルコール。
【0103】
各サンプルについて、平衡化亜鉛インシュリン溶液の1mlのアリコートを、50mlのプラスチックコニカル遠心管の底にピペットで移した。各アルコールについて、40mlの試験されるアルコールを、亜鉛インシュリン溶液のアリコートに添加し、この混合物を、3回反転させることによって撹拌した。沈殿を、卓上遠心機において、30分間、3000rpmにて遠心分離することによって回収した。上清のアルコール溶液を吸引して、捨てた。インシュリン沈殿物を、液体窒素中で凍結し、2日間凍結乾燥した。タンパク質粒子の形態およびサイズを、走査型電子顕微鏡により評価した。結果を表1に列挙する。遠心分離したペレットのサイズの、定性的な評価に基づいて、回収したタンパク質沈殿物の収率を、定性的な視覚的なスケール1(最小)〜5(最大)でスコア付けした。
【0104】
【表1】

tBAは、このシリーズでは行なわなかったが、匹敵する値を実施例1〜5で得た。従って、tBAを用いて得た粒子は、300〜600nmの規則的な、球状の、凝集していない粒子であり、2〜3の範囲での収率であった。
【0105】
エタノールおよびn−プロパノールのサンプル中で得られた、凝集したプレートは、小さく滑らかな粒子の、おそらくは、粒子の回収の間に形成された凝集物であるようであった。
【0106】
結果は、得られた粒子のサイズ、形状および収率に起因して、t−ブタノールが、好ましい非溶媒であることを示す。しかし、最適化は、C〜Cアルコールからの等価な結果を生じ得る。
【0107】
(実施例15:hIL−12の微粉化)
組換え型ヒトインターロイキン−12(hIL−12)を、Genetics Instituteから入手し、tBAをEM Scienceから入手した。hIL−12(2.79mg/mlで500μl)を、tBA(5ml)に注入した。直ちに微細な沈殿物が形成した。この分散物を、液体窒素中で急速凍結(15分)し、この溶媒を、48時間かけて凍結乾燥することによって除去した。得られた粉末を、SEMにより可視化した。微粉化後の安定性を、製造業者の説明書に従って、10mM PBS中に再可溶化したhIL−12のSDS−PAGE(Invitrogen)およびBCA(Pierce)アッセイによりアッセイした。
【0108】
微粉化したhIL−12の形態をSEMにより決定した。粒子は、緩衝塩から生じた大きな(約2μm)結晶と、hIL−12に対応する小さな(1μm未満)粒子から構成された。
【0109】
SDS−PAGE(変性、非還元)分析を使用して、凍結乾燥ありおよびなしの、tBA処理したhIL−12粒子をコントロールストックと比較した。染色したゲルは、微粉化したhIL−12のいくつかが、不可逆的に変性しており、SDSの存在下でさえ、ゲルに入るには大きすぎる二量体、三量体および凝集物に凝集していたことを示した。凍結乾燥のプロセス自体は、不可逆的な凝集を起こさなかった。このことは、凍結乾燥のみの後、または微粉化の後の凍結乾燥の後に再溶解したhIL−12のタンパク質濃度の二塩化酢酸(BCA)分析により確認した。凍結乾燥のみを行なったタンパク質は、99%が可溶性であったが、微粉化したタンパク質は、71%が可溶性であった。従って、脱凝集剤は、tBAを使用してhIL−12を微粉化する際に、凝集を防止するために含めるべきである。
【0110】
(実施例16:リシントキソイドの微粉化)
リシントキソイド(RT)を、共同研究者から入手し、tBAをEM Scienceから購入した。RT(5mg/mlで100μl)を、tBA(1ml)中に注入した。直ちに、微細な粒子が形成した。この分散物を、液体窒素中で急速凍結(15分)し、この溶媒を、48時間かけて凍結乾燥することによって除去した。得られた粉末を、SEMにより可視化した。微粉化後の安定性を、製造業者の説明書に従って、10mM PBS中に再可溶化したRTのSDS−PAGE(INVITROGEN(登録商標))によりアッセイした。
【0111】
SEMは、リシントキソイドに対応する小さな粒子(1μm未満)と、緩衝塩に対応する大きな(約2μm)結晶を示した。SDS−PAGEは、出発時のRTと微粉化したRTの両方において凝集の密接に類似するパターンを示した;凝集の明らかな増加は、微粉化RTにおいては観察されなかった。
【0112】
(実施例17:RNAの微粉化)
酵母RNAを、AMBION(登録商標)から購入し、tBAを、EM Scienceから購入した。RNA(10mg/mlで100μl)を、tBA(1ml)中に注入した。直ちに、微細な粒子が形成した。この分散物を、液体窒素中で急速凍結(15分)し、この溶媒を、48時間かけて凍結乾燥することによって除去した。得られた粉末を、SEMにより可視化した。微粉化後の安定性を、製造業者の説明書に従って、10mM PBS中に再可溶化したRNAのアガロースゲル電気泳動によりアッセイした。
【0113】
SEMによる微粉化RNAの形態は、サブミクロンサイズの分布を有する粒子を示した。アガロースゲル電気泳動、その後のエチジウムブロマイド染色は、微粉化RNAとコントロールRNAとの間に、明らかな分子サイズの差を示さなかった。
【0114】
(実施例18:抗体のtBA微粉化)
ウサギγグロブリンを、Pierceから入手し、tBAを、EM Scienceから入手した。抗体(10.6mg/mlで100μl)を、tBA(1ml)中に注入した。直ちに、微細な粒子が形成した。この分散物を、液体窒素中で急速凍結(15分)し、この溶媒を、48時間かけて凍結乾燥することによって除去した。得られた粉末を、SEMにより可視化した。粒子は、直径0.5μm〜2μmのようであった。
【0115】
特に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、開示される発明の属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、デバイスおよび材料は、記載された通りである。本明細書中に引用される刊行物、およびこれらの刊行物に記載される材料は、特に参考として援用される。本明細書の内容は、本発明が、先行する発明によってこのような開示の日時を早める権利はないということを認めるものとして解釈されるべきものではない。
【0116】
当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、そして、これらを確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉化した生物学的に活性な因子を作製するための方法であって、該方法は、以下:
水溶液中に生物学的に活性な因子を溶解する工程、
非溶媒を該水溶液と混合する工程であって、該非溶媒は、2〜100%w/wの範囲で水を吸収するC〜Cアルコールまたはその混合物である、工程、および
該非溶媒:水溶液の組み合わせから、該生物学的に活性な因子の粒子を沈殿させて、約100〜2000nmの範囲の直径を有する粒子を生成する、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記水溶液がさらに、塩、緩衝液および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種以上の安定化剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定化剤が、ポリオール、ポリアルキレングリコールおよびポリビニルピロリドンからなる群より選択される水溶性ポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非溶媒が、脂肪族C〜Cアルコールまたはその混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非溶媒が、脂肪族C〜Cアルコールまたはその混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非溶媒が、第三級ブチルアルコールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的に活性な因子が、タンパク質、ペプチドおよび核酸分子からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的に活性な因子が、ホルモン、酵素およびRNA分子からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液がさらに、脱凝集因子を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的に活性な因子をポリマー中にカプセル化する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸、ならびにこれらの低級アルキルエステル、ポリビニルアルコールおよびコポリマー、ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法によって形成された、200nm〜600nmの平均直径を有する粒子の形状の、生物学的に活性な因子を含有する、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物を患者に投与する工程を包含する、疾患または障害を処置するための方法。
【請求項14】
前記粒子が、粘膜表面に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が、経口投与または吸入により投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的に活性な因子が、インシュリンおよびヒト成長ホルモンからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2007−507527(P2007−507527A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534125(P2006−534125)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032271
【国際公開番号】WO2005/032511
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504230372)スフェリックス, インコーポレイテッド (4)
【出願人】(398012649)ブラウン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】