説明

生物学的に活性のあるポリペプチドのデリバリー

【課題】生物学的に活性のあるポリペプチドおよび/または抗原のデリバリー方法、さらにはデリバリー手段およびこのようなデリバリー手段からなる薬剤配合物の提供。
【解決手段】体内、特に粘膜に生物学的に活性のあるポリペプチドを提供する際の、非侵襲性の細菌、一般的にはラクトコッカス属(Lactococcus) 等のグラム陽性細菌の使用。また、抗原に対して生じる免疫応答が促進される手段によるアジュバント効果の提供。および、上記用途に関する核酸構築物および宿主生物体も提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでの生物学的に活性のあるポリペプチドのデリバリーに関するものである。特に、本発明は、体内、特に粘膜に生物学的に活性のあるポリペプチドを提供する際の、非侵襲性の細菌、一般的にはラクトコッカス属(Lactococcus) 等のグラム陽性細菌の使用に関するものである。一概念によると、本発明は、抗原に対して生じる免疫応答が促進される手段によるアジュバント効果の提供に関するものである。上記用途に関する核酸構築物および宿主生物体もまた提供される。
【0002】
限られた数のアジュバントが(完全フロイントアジュバント等のほとんどの活性物質の毒性または病原性により)ヒト用のワクチンに使用することが認められているにすぎず、過去20年以上の間のB細胞及びT細胞の増殖、分化及び活性化に必要な数多くのポリペプチドの発見により、上記因子(サイトカイン)を用いてワクチンに対する応答を増大し、及び目的とする経路により特定のワクチンに対する免疫応答を指示する可能性に対して注意が引かれた。上記アプローチに対する必要性は、近年の免疫学的発見により細胞が仲介する及び抗体が仲介する免疫応答がかなり相互に排他的な応答であることが強調されたため、ますます顕著にさえなった。抗体の形成またはTエフェクター細胞及びマクロファージが活性化されるかどうかは、サイトカインの特定のアレイが所定の抗原、病原体またはワクチンによって誘発されることによって決定される。特定の抗原または侵入する病原体に対する応答に伴われる、ヘルパーT細胞のタイプであるTH1、またはTH2の機能的な活性が最も重要である。
【0003】
病原性物質に対する保護免疫性は一般的に抗体形成(死んだ、死にかけているまたは生産的細胞から組織の体液中に放出された後の細胞外の病原体、可溶性毒素または細胞内病原体)のまたは細胞が仲介する応答(細胞内病原体)のいずれかの結果として生じるため、原則としては、ワクチンに対する免疫応答が抗体の形成またはT細胞及びマクロファージの活性化のいずれかを管理できることが非常に好ましい。ワクチン接種の保護作用ができるだけ長期間維持するためには、免疫応答の最大反応、期間及び記憶成分を促進できることもまた重要である。
【0004】
上記理由により、多くの研究者らは、ワクチンのアジュバントとしてタンパク質にシグナルを送る(signalling)サイトカインネットワークの一以上のものを利用する可能性に注目した。このアプローチは、ヘルパーT細胞の−及び故にそのサイトカインの産生量の損失が特定のワクチンに応答できるある型の遺伝性のまたは後天性の免疫欠損に罹っている患者の欠損と関連すると考えられる際にはより重要でさえあるかもしれない。
【0005】
かなりの注意が上記を目的としたサイトカインの使用に払われてきたにもかかわらず、限られた数の成功しかアジュバントとしてサイトカインを使用する場合には報告されなかった。ワクチン養生に含ませるのが適当な方法によってアジュバントとしてのサイトカインを投与するのはかなり難しかった。このような難しさは、アジュバントとしてIL−2を使用する研究を参照することにより例示される。
【0006】
IL−2は、その主要な源はTヘルパー1細胞であると考えられるが、その主要な活性はT細胞の増殖、他のサイトカインの合成、B細胞の成長及び免疫委グロブリンの合成等の広範な免疫応答に関わりがあると信じられているため、可能性のあるアジュバントとして特に注目を集めた。したがって、IL−2はT細胞の成長因子として最初に記載されたT細胞由来のサイトカインである。IL−2はT細胞、B細胞、NK細胞、単球、マクロファージ及び稀突起膠細胞の成長及び分化を刺激することが知られている。通常、多くの研究者らによって報告された、IL−2の部分に関するアジュバント活性は、サイトカインを複数回注射してまたはリポソーム若しくは油状のエマルジョン中に導入して使用することに依存することが分かった。このような必要性を排除するために、他の研究者らは、組換細菌及びウィルスベクターにおいてIL−2とワクチン抗原とを一緒に発現させた、またはIL−2:抗原融合タンパク質を操作した;後者は融合パートナーの抗原性部分の免疫原性を顕著に向上することがクレームされる。
【0007】
ワクチンの他の望ましい特性としては、可能な限り無毒である、最小限の可能性の投与回数の投与後に効果的に作用する、および皮下用針の必要性を排除し、さらに全身性の免疫応答に加えて局所的な粘膜での免疫応答を活性化させるために粘膜表面を介して(例えば、経口で、鼻腔内に、または膣内に)投与するのに適する必要性が挙げられる。生きた、弱毒化病原体を増殖し続けることが可能であることによって、異種抗原のデリバリー用の物質としてのウィルスや細菌の組換ワクチン株(ポックスウィルスの、またはサルモネラ菌や結核菌のワクチン株など)の使用に関する多くの研究がされた。
【0008】
我々は、以前、非病原性、非集落形成(non-colonising)、非侵襲性食品グレードの細菌ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)における異種抗原の発現を目的としたシステムを開発した(UK特許GB−2278358B号を参照)。我々は、以前、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)はインビトロで培養されると生物学的に活性のあるマウスのIL−2を産生、分泌できることを示した(シュタイドラー(Steidler)ら、アプライド アンド エンバーロメンタル ミクロバイオロジー(Applied and Environmental Microbiology) 、1995年4月、61巻、No.4、頁1627〜1629)。しかしながら、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)は非侵襲性である−共生細菌ではなくまた一般的に動物の粘膜表面の集落形成にも関連しないという事実により、この細菌が良好にインビボにおけるアジュバントとしてのサイトカインの形成を必要とするワクチン接種ストラテジーに使用できることは自明ではなかった。我々は、以前(GB−2278358B号)、異種抗原がラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)の細胞質内に蓄積される際に十分抗原性を有しうることを示した(これから、細胞が食細胞によって消化されるのでインビボで漏れると推測される)。
【0009】
適当な遺伝的な要素の操作によって、我々は、抗原性ポリペプチド(本明細書では、破傷風毒素フラグメントC−TTFCを使用して例示される)及び生物学的に活性のあるサイトカインポリペプチド(本明細書では、インターロイキン2及びインターロイキン4を使用して例示される)のラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)における同時発現(co-expression)用の核酸構築物(本明細書において、人工的なオペロン−同等に(coordinately) 転写されるマルチ遺伝子(multigene)単位)を提供した。
【0010】
IL−6サイトカインは、他の研究者らによって、インビボ及びインビトロでのマウスの抗原に特異的な抗体の応答を増大できることが示され、我々もまた、ラクトコッカス ラクチス(L. lactis)におけるIL−6の発現単位を調製できた。IL−6は、宿主防御において中心的な役割を果たす多面的な活性を有することが知られるリンパ系細胞及び非リンパ系細胞の双方によって分泌される多機能サイトカインである。IL−6は、ターゲット細胞によって、成長誘導、成長阻害及び分化誘導活性を発揮できる。これらの活性としては、T細胞及びマクロファージの分化および/または活性化、B細胞の成長促進(インビトロにおけるB細胞腫瘍系の成長促進として観察される)、B細胞における最終分化(免疫グロブリンの分泌)、及び肝臓急性期タンパク質応答(hepatic acute-phase protein response) の−全身に作用する−誘発が挙げられる。IgA−始動B細胞(IgA-committed B cell) における高速度のIgAの分泌を誘導することが、粘膜免疫処置IL−6を目的とした際に最も重要であることが示された。
【0011】
本発明を例示すると、IL−2及びIL−6同時発現(co-expression)用のオペロンが、TTFC遺伝子及びインターロイキン遺伝子の転写が従来定義された活性のラクトコッカスのプローモーター要素(いわゆる、P1)の活性によって制御されるような構成発現ベクター(pTREX1、pEX1としても知られている)中に別々に構築された。この構築物は、人工オペロンから転写されたmRNAの翻訳後に、TTFC抗原が細胞内に蓄積されるように調製された。
【0012】
これらの細菌の調製物をマウスの鼻腔内に投与すると、インターロイキン−2またはインターロイキン−6のいずれかを発現するように操作された細菌はTTFC単独を発現した構築物に比べて約10倍以上の抗TTFC抗体を誘発した。したがって、これらのインターロイキンは実験システムでは明瞭なアジュバント活性を有していた。
【0013】
ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)が十分な活性のサイトカインがアジュバント効果を得るために提供されるようにインビボにおけるサイトカインのデリバリーに適当な賦形剤であることは、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)が異種抗原をデリバリーできるまたはIL−2をインビトロで産生できることからは自明ではなかった。ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)は非侵襲性でかつ非集落形成であり、このことは上記細菌を、例えば、粘膜表面を介して、抗原を免疫システムにデリバリーするのに使用すると、上記細菌は粘膜のリンパ組織付近の粘膜分泌物の内容物をサンプルする(sample)M(またはミクロフォールド(microfold) )細胞による食作用の結果リンパ組織に入ると最も考えられることを意味する。微粒子抗原(例えば、ポリL−ラクチド微粒子中に導入される破傷風毒素)はこのようにして受動的にリンパ組織に入るが、リステリア(Listeria)、サルモネラ(Salmonella)や赤痢菌(Shigella)の種等の病原性細菌(または弱毒化ワクチン)は、M細胞を介してさらに侵入するに加えて、粘膜の上皮細胞への吸収を刺激することによって細胞及び組織を侵襲できる。アジュバントとしてのサイトカインの活性が従来複数回の注射または徐放性のデリバリーを必要とすることが分かった(ヒース(Heath) 及びプレイフェアー(Playfair)(1992年)、ワクチン(Vaccine) 、7:427〜434)ので、およびサイトカインはラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)細胞が無損傷であり続けるまたは生存し続ける間に食細胞内でのタンパク質分解による消化から保護されるのみなので、サイトカインを発現するラクトコッカス細胞が本明細書中に示されるように顕著なアジュバント活性を示すことは予期せぬことである。これは、細菌粒子の死や溶解が抗原の放出を好むがサイトカインの非常に一時的な産生に比べるとより阻害すると理解される際には、たぶん理解されうる。にもかかわらず、我々の知見は、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)によるIL−2またはIL−6の発現は顕著なアジュバント効果を有することを示すものである。エックスプレッサー(expressor) たる細菌を粘膜経路ではなく非経口経路によって投与されたとしても、同様の考察が適用される。
【0014】
したがって、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)は侵襲性ではない−共生細菌ではなくまたその栄養をインビボで利用できるとは考えられないアミノ酸及びペプチドの供給に依存する−ので、ラクトコッカス ラクチス(L. lactis)のサイトカイン分泌株が抗体の産生を増大できるという示唆は驚くべきものである。これらの結果は、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)の組換株がインビボで生物学的に活性のある分子を合成しデリバリーするのに使用できることを初めて示すものである。IL−6はIgA−始動B細胞(IgA-committed B cell)における高速度のIgAの分泌を誘導できるサイトカインであることが示されたので、これらの結果から粘膜さらには全身の免疫応答を増大できる可能性が示唆されることは特に有益である。
【0015】
ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)が生物学的に活性のある投与量の2種の異なる組換サイトカインのいずれかをデリバリーするのに十分な時間粘膜上で生物学的な活性を維持でき、それにより異種抗原に対する免疫応答を増大できるという知見は、アジュバント活性単独以外を目的としたポリペプチドのデリバリーに対して広範な利用可能性を示すものである。
【0016】
ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)がポリペプチドを産生、分泌できることは、これらの細菌をマイクロモル、ナノモルまたはピコモル濃度で活性があることが知られるポリペプチドのインビボでの産生及びデリバリーに利用できることを示すものである。上記ポリペプチドの正確な投与量、さらには細菌細胞を同時に導入することの必要性はヒトに適用する際に比べて獣医への適用ではあまり重要ではないので、組換ポリペプチドをデリバリーする上記方法は獣医の用途で特に有用であると考えられる。しかしながら、ヒト用の薬剤においてでも、サイトカインの産出が無理に有害でない細菌細胞の沈着部位に行われ得、初期の免疫応答期間中に抗原に接近して使用できるという事実は、生物学的に活性のあるポリペプチドが有害な全身の副作用を防ぐために最も良い位置に局在化する−アジュバント活性などの−状況で好ましく使用される。
【0017】
したがって、本発明は以下を提供するものである:
(i) 被検者(subject) に一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を投与することからなる一以上のポリペプチドのデリバリー方法;
(ii) 被検者(subject) に一以上の抗原を発現する非侵襲性または非病原性細菌を投与することからなる一以上の抗原のデリバリー方法;および
(iii)被検者に一以上の抗原及び一以上の異種の生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を投与することからなる一以上の抗原および/または一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドのデリバリー方法。
【0018】
生物学的に活性のあるポリペプチドは、細菌と同種であってもまたは異種であってもよく、真核生物源若しくは原核生物源、またはそのウィルス由来であってもよい。
【0019】
本発明の他の概念によると、(i)一以上の異種の生物学的に活性のあるポリペプチドおよび/または(ii)一以上の抗原を発現する非侵襲性または非病原性細菌を提供するものである。
【0020】
「生物学的に活性のある」は、生物学的な機能を行えることを意味し、さらに、ポリペプチドに関しては、ポリペプチドが天然の立体配置と同じまたはこれにかなり類似する安定した立体配座(「おりたたみ形(folded form) 態」)を採用することを意味する。例えば、適当にたたまれた単位、α−ヘリックス、β−シート、ドメイン、ジスルフィド架橋などの形成で、正しくまたは実質的に正しくおりたたまれる際には、ポリペプチドはその天然の機能を行う能力を有する。通常、ポリペプチドにおける機能の単位はドメインである。
【0021】
免疫応答の誘発を伴うまたは伴わない、抗体または他のレセプターによる単なる結合能は受動的であり、「生物学的な活性」を構成しない。抗原は、抗体との結合能を有するが必ずしも生物学的に活性を有するとは限らない。
【0022】
「異種の」ポリペプチドは、このポリペプチドに関する核酸をコード化する、細菌、またはその子孫にとって天然ではない、すなわち、天然の若しくは細菌への導入前の細菌によっては発現しないものである。
【0023】
本発明による細菌は、通常、グラム陽性であり、原則的には、無毒な細菌であり、例えば、リステリア イノキュア(Listeria innocua)、スタフィロコッカス キシローサス(Staphylococcus xylosus) またはラクトコッカス種(Lactococcus) が挙げられる。ラクトコッカスLactococcus) 、特にラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)が、本発明の好ましい態様を示す。このような細菌は非集落形成性である。
【0024】
当業者は、本発明の方法は一定の範囲の生物学的に活性のあるポリペプチドをデリバリーするのに使用することができると考えられる。適当なポリペプチドの例としては、局所的にまたは全身に機能できるものが挙げられ、例えば、局所的な若しくは全身の代謝に作用する内分泌活性を発揮できるポリペプチドであるおよび/または生物学的に活性のあるポリペプチドは免疫造血システムに属する細胞の活性を調節できるものであるおよび/または一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドは体内の様々な正常な若しくは腫瘍細胞の生育可能性(viability) 、成長及び分化に作用できるあるいは損傷や感染に対する急性期の炎症反応の免疫調節若しくは誘導に作用できるものであるおよび/または一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドはターゲット細胞レセプターに作用するケモカイン(chemokines)によって介される細胞及び組織の感染に対する耐性を促進できるあるいは誘導できる、または上皮細胞を増殖できるまたは傷の治癒を促進できるものであるおよび/または一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドは体内の細胞による物質の発現または産生を調節する。
【0025】
このようなポリペプチドの特定の例示としては、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、副甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン、バソアクティブ・インテスティナル・ポリペプチド、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、GM−CSF、M−CSF、SCF、IFN−γ、EPO、G−CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、IFNα/β等の逆平行4αらせん束(antiparallel 4α helical bundle) 構造をとる構造群1サイトカイン(structural group 1 cytokine) 、サイトカインのTNF群、例えば、TNFα、TNFβ、CD40、CD27またはFASリガンド、サイトカインのIL−1群、繊維芽細胞成長因子群、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング成長因子β及び神経成長因子などの、細胞表面と結合することが多く、対称ホモトリマー(symetric homotrimer)を形成し、そのサブユニットは特定のウィルスコートタンパク質について記載されるβ−ゼリーロールの立体配座を採用する構造群2サイトカイン(structural group 2 cytokine) 、例えば、サイトカインの表皮成長因子、保存システイン残基(C−CまたはC−X−Cケモカイン(chemokine) サブグループ)付近に集まるアミノ酸配列を有することを特徴とするケモカイン(chemokine) またはインシュリン関連サイトカインなどの、短鎖α/β分子からなり、それぞれが細胞外領域に少なくとも一のEGFドメインを含む大きな膜内外前駆体分子として産生される構造群3サイトカイン(structural group 3 cytokine) 、異なるドメインから構成されるヘレグリン(heregulin) またはニューレグリン(neuregulin)、例えば、EGF、免疫グロブリン様及びクリングルドメインなどの、モザイク構造を有する構造群4サイトカイン(structural group 4 cytokine) が挙げられる。
【0026】
または、生物学的に活性のあるポリペプチドは、上記で定義された生物学的に活性のあるポリペプチドに対するレセプターまたはアンタゴニストであってもよい。
【0027】
細菌は、それに含まれる核酸から生物学的に活性のあるポリペプチドおよび抗原を発現する。核酸は、生物学的に活性のあるポリペプチドをコード化する核酸及び抗原をコード化する核酸が細菌での発現に適当な調節配列で制御される一以上の核酸構築物からなってもよい。
【0028】
細菌への導入用の核酸からなる適当なベクターは、プロモーター配列、ターミネーターフラグメント、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び他の適当な配列などの、適当な調節配列を含めて、選択または構築できる。ベクターは、適当な、プラスミド、ウィルス、例えば、ファージ、またはファージミド(phagemid)であってもよい。さらに詳細には、例えば、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning: a Laboratory Manual):第2版、サムブルック(Sambrook)ら、1989年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press) を参照。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現における、核酸の操作、さらにはタンパク質の分析に関する多くの既知の技術及びプロトコルが、モレキュラー バイオロジー(Molecular Biology) におけるショート プロトコルズ(Short Protocols) 、第2版、アウスベル(Ausubel) ら著、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons) 、1992年に詳細に記載される。サムブルック(Sambrook)らおよびアウスベル(Ausubel) らによるこれらの開示は参考のために本明細書中に引用される。
【0029】
好ましい実施態様によると、生物学的に活性のあるポリペプチド及び抗原に関するコーディング配列は、オペロン、即ち、マルチシストロン発現用の核酸構築物中に含まれる。オペロンでは、プロモーターからの転写によって、それぞれがそれ自体上流に適当な位置のリボソーム結合部位を有する、一以上のコーディング配列からなるmRNAが得られる。したがって、一以上のポリペプチドが単一のmRNAから翻訳できる。オペロンを使用することによって、生物学的に活性のあるポリペプチド及び抗原の発現を協調させる(co-ordinate)ことが可能である。
【0030】
他の実施態様によると、生物学的に活性のあるポリペプチド及び抗原に関するコーディング配列は、同じ核酸ベクターの一部であっても、または別のベクターであってもよく、それぞれが別のプロモーターの調節制御を受ける。プロモーターは同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0031】
オペロンとしてまたはオペロンとしてでなく、各コーディング配列が非侵襲性細菌(開示したとおり−特に、非共生および/または非集落形成細菌、例えば、ラクトコッカス属(Lactococcus) )での発現用のプロモーターの制御を受ける生物学的に活性のあるポリペプチドに関するコーディング配列及び抗原に関するコーディング配列からなる核酸構築物またはベクターは、本発明のさらなる概念によって提供される。
【0032】
本発明により使用されるプロモーターは細菌中で構成的に発現されることが好ましい。構成プロモーターの使用により、発現を行うための誘導物質または他の調節シグナルを供給する必要がなくなる。好ましくは、プロモーターは、細菌宿主細胞が生存し続ける、即ち、たとえ成長は維持されなくとも代謝活性は維持するレベルでの発現を管理する。さらに、好ましくは、このような発現は低レベルである。例えば、発現産物が細胞内に蓄積する場合には、発現レベルによって、細胞タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%以下、例えば、約1〜3%の発現産物の蓄積が起こる。プロモーターは、使用される細菌、即ち、天然に細菌に発見されるものと同種であってもよい。例えば、ラクトコッカスのプロモーターをラクトコッカス属に使用してもよい。ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)(または他のラクトコッカス属(Lactococcus) )で好ましく使用されるプロモーターは、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)の染色体由来の「P1」(ウォーターフィールド エヌアール(Watermfield N.R.);レ ペイジ アールダブリューエフ(Le Page, R.W.F.) ;ウィルソン ピーダブリュー(Wilson P.W.)及びウェルズ ジェーエム(Wells J.M.)、ジーン(Gene)(印刷中))であり、その配列を下記に示す(配列番号1):
GATTAAGTCA TCTTACCTCT TTTATTAGTT
TTTTCTTATA ATCTAATGAT AACATTTTTA
TAATTAATCT ATAAACCATA TCCCTCTTTG
GAATCAAAAT TTATTATCTA CTCCTTTGTA
GATATGTTAT AATACAAGTA TC
【0033】
核酸構築物は分泌シグナル配列を有していてもよい。したがって、好ましい実施態様によると、生物学的に活性を有するポリペプチドをコード化する核酸は、(シグナル配列をコード化する核酸配列を該ポリペプチドをコード化する核酸配列に適当にカップリングすることによって)生物学的に活性を有するポリペプチドの分泌を目的として提供してもよい。このような核酸を有する(harbour) 細菌のポリペプチドの分泌能は、生物体の生育可能性を維持する培養条件下でインビトロで試験される。
【0034】
適当な分泌シグナル配列としては、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium) 及びラクトバチルス属(Lactobacillus) 等のグラム陽性生物体において活性を有するものがある。このような配列としては、グラム陽性及びグラム陰性宿主の双方において機能することが知られている(「ジーン エックスプレッション ユージング バチルス(Gene Expression Using Bacillus)」、ラポポート(Rapoport)(1990年)、キャレント オピニオン イン バイオテクノロジー(Current Opinionn in Biotechnology) 、1:21〜27を参照)、バチルス アミロリクェファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)のα−アミラーゼ分泌リーダーまたはスタフィロコッカス(Staphylococcus)のある株によって分泌されるスタフィロキナーゼ(Staphylokinase)酵素の分泌リーダー、または多くの他のバチルス属の酵素またはS−層タンパク質(S-layer protein) (ハーウッド(Harwood) 及びカッティング(Cutting)、「モレキュラー バイオロジカル メソッズ フォー バチルス(Molecular Biological Methods for Bacillus) 」、ジョン ウィリー アンド コーポレイション(John Wiley & Co.)、1990年を参照)由来のリーダー配列が挙げられる。ラクトコッカス属(Lactococcus) に関しては、Usp45と称されるタンパク質のリーダー配列が好ましい(配列番号2):
ATG AAA AAA AAG ATT ATC TCA GCT
Met Lys Lys Lys Ile Ile Ser Ala

ATT TTA ATG TCT ACA GTG ATA CTT
Ile Leu Met Ser Thr Val Ile Leu


TCT GCT GCA GCC CCG TTG TCA GGT
Ser Ala Ala Ala Pro Leu Ser Gly

GTT TAC GCT
Val Tyr Ala
【0035】
しかしながら、抗原が細胞内に蓄積することが好ましい。上述したように、好ましくは、蓄積のレベルは、細菌が生存し続けさせる、即ち、代謝活性を維持させるものでなければならず、細胞タンパク質の約10%未満、好ましくは細胞タンパク質の約5%以下である。
【0036】
抗原は、原則的には、抗体等の、免疫システムのレセプターが結合できるペプチドまたはポリペプチドである。好ましい実施態様によると、抗原は、毒素の細菌トキソイド形態またはその抗原性断片である。コーディング配列においてG/Cに比べてA/Tを使用する傾向がある(60% A/T)、ラクトコッカス属(Lactococcus) での発現に良く適合するためには、抗原はそのコーディング配列がA/Tリッチな(G/Cに比べてA/T含量がより高い)ものである。例えば、抗原はトキソイド(若しくはその抗原性断片)、またはクロストリジウム(Clostridium)またはニューモコッカス(Pneumococcus)または他のストレプトコッカス(Streptococcus) 種由来の他の免疫原性成分であってもよい。例えば、クロストリジウムのコーディング配列は、プラスモジウム(Plasmodium)属に属する重要なヒトのマラリア寄生虫由来の遺伝子と同様、70%を超えるA/T塩基対含量を有することが多い。
【0037】
本明細書中に記載されるように、抗原、即ち、抗原性ペプチドまたはポリペプチドに対する免疫応答を促進するのに使用される際には、生物学的に活性のあるポリペプチドはサイトカイン活性を有することが好ましい。サイトカインは、「ザ サイトカイン ファクツ ブック(The Cytokine Facts Book) 」、キャラード(Callard) 及びギアリング(Gearing) )1994年)、アカデミック プレス(Academic Press)に記載される。サイトカイン活性を有する好ましいポリペプチドは、インターロイキン−2(IL−2)及びインターロイキン−6(IL−6)等のインターロイキン類である。多くのサイトカインはジスルフィド架橋を含み、すべてが天然にサイトカインを産生する細胞から分泌される。細菌細胞の細胞質の減少特性はジスルフィド架橋の形成を防止すると予想される。天然に分泌され、特に天然にジスルフィド架橋を含むポリペプチドが細菌細胞に維持されると生物学的に活性を有することは自明ではない。
【0038】
したがって、一実施態様によると、生物学的に活性のあるポリペプチドは天然にそれを産生する細胞から分泌されるものである。
【0039】
本発明により抗原に対する免疫応答を促進するのにサイトカインを使用することは、低い免疫原性の抗原に対して特に適切である。さらに、免疫原の粘膜への使用は、通常、IgAの応答を誘発する。ワクチンの良好な(保護レベルの)粘膜免疫応答の誘発能は、sIgA抗体が感染に対する粘膜の保護において重要な役割を果たすことが知られているので、非常に望ましい態様である。例えば、コレラ菌の表面に結合するsIgAは実験上ではマウスでコレラを予防できることが示された。HIV−1を効率的に中和するsIgAは、ウィルスが体に接近した直後に終生の感染が確立されるため、このウィルスによる感染に対する保護において重要な役割を果たす。したがって、粘膜のsIgAの応答を高い信頼性で長期間誘導する方法は、ヒトのウィルス及び細菌性の病原体の大部分が粘膜表面で集落形成をすることによって感染を開始するため、それ以後非常に探索される。
【0040】
したがって、それに対する促進されるIgA応答が有益である寄生虫由来の低い免疫原性の抗原が本発明において特に好ましく使用され、例えば、シストソーマ マンソニ(Schistosoma mansoni) のP28免疫原(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)が挙げられる。
【0041】
本発明による細菌を得るために、核酸を細菌宿主細胞に導入する。したがって、本発明のさらなる概念によると、非侵襲性細菌、好ましくはグラム陽性細菌、最も好ましくは非共生、非集落形成細菌(ラクトコッカス属(Lactococcus) など)中に上記核酸を導入することからなる方法が提供される。上記導入には、公知の技術が使用される。細菌細胞に関しては、適当な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション及びバクテリオファージを用いたトランスフェクションが挙げられる。
【0042】
上記導入の後、例えば、宿主細胞を遺伝子の発現条件下で培養することによって、核酸からの発現が起こるまたは発現を起こさせる。生物学的に活性のあるポリペプチド及び抗原が発現する条件下での培養で細胞を生育させることによって、確実に、細菌はコード化する核酸を含みコード化される物質を産生することができる。
【0043】
さらなる概念によると、本発明は、細菌に対して異種の生物学的に活性のあるポリペプチドの発現を目的とする核酸を含む非侵襲性細菌を患者に投与することからなる、インビボでの生物学的に活性のある量のポリペプチドのデリバリー方法を提供するものである。上述したように、好ましい細菌としては、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属(Lactococcus) が挙げられ、好ましい投与経路は粘膜への塗布によるものである。
【0044】
このような細菌において生物学的に活性のある形態の異種のポリペプチドを発現することが可能であることはすでに示されているが、これは細菌の生存及び成長に最適な培養条件下でインビトロでなされたにすぎなかった。インビボでは、例えば、粘膜においては、細菌はその成長または生育を支持するとは考えられない環境にある。したがって、このような細菌が、ポリペプチドの生物学的活性が検出可能な生物学的な効果を生じさせるのに十分である投与量(dose)(量)でポリペプチドをデリバリーできることは驚くべきことである。
【0045】
好ましい実施態様によると、生物学的に活性のあるポリペプチドはサイトカイン活性を有し、細菌は抗原をも発現してもよい。IL−2やIL−6等のインターロイキンが好ましくデリバリーされる。
【0046】
本発明の方法および本明細書中に記載される非侵襲性または非病原性細菌の使用により、当業者が操作できる広範な治療方法、例えば、被検者の免疫応答が提供されると考えられる。したがって、本発明は、様々な他の概念において、以下を提供するものである:
(i) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、細胞または組織の生存、成長、分化、エフェクター機能または感染に対する感受性の調節方法;
(ii) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、粘膜表面または付近若しくは離れた組織に集落形成する腫瘍細胞または感染に対する免疫応答の促進(boost) 方法;
(iii) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、病原性感染物質に対する免疫応答のタイプ(抗体対細胞の仲介)の調節方法;
(iv) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、炎症または腫瘍細胞による正常組織の浸潤の調節方法;
(v) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、腫瘍細胞の成長速度、侵襲速度または生存の制御方法;
(vi) 本明細書に定義される非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、腫瘍細胞のアポプトシスの誘導方法;
(vii) 生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、免疫応答のダウンレギュレーション方法;および
(viii)生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、アレルギー性自己免疫(allergic autoimmune) または他の免疫調節異常による病気の状態(immune dysregulative disease state)の処置方法。
【0047】
または、サイトカイン及び抗原双方を細菌によって発現させる際には、本発明の一概念は、サイトカイン活性を有するポリペプチド及び抗原の発現を目的とする核酸を含む非侵襲性細菌を患者に投与することからなる、抗原に対する免疫応答の促進方法を提供する。
【0048】
抗体の応答などの、免疫応答の促進によって、病原性環境において抗原による後のチャレンジに対して患者を保護するレベルの免疫応答が得られることが好ましい。例えば、抗原が細菌トキソイドまたは毒素フラグメントである際には、本発明による細菌の投与に対する抗体応答レベルは、例えば、毒素を産生する細菌による感染時に、細菌毒素によるチャレンジの病原性結果に対して患者をその後保護するものである。
【0049】
粘膜表面への塗布による細菌の投与は、全身の応答に加えて、粘膜での免疫応答(例えば、IgA応答)を向上させることによって本明細書において有益である。
【0050】
細菌は、栄養培地、すなわち細菌中で代謝活性を(少なくともインビトロで)維持する物質を含有する培地に適用されてもよい。このような物質は、細菌が成長しなくとも生育可能性を維持する。このような物質は、グルコース、アミノ酸などのエネルギー源を含む。
【0051】
細菌が投与される個体は、ヒトまたは動物、すなわち非ヒト哺乳動物である。投与は、鼻腔が簡便であるが、経口、膣または肛門からでもよい。粘膜による投与が好ましくない場合には、細菌は、当業者に可能な範囲内での他の好適な手段によって、例えば非経口ルート(静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)で投与されてもよい。
【0052】
治療の場合には、すなわち個体へのポリペプチドのデリバリーの生物学的な効果が個体に対して有益な場合には、投与は「治療上の有効量」で好ましく、これは患者にとって十分有益である。かかる利益は、少なくとも一つの症状を少なくとも一つ改善することであろう。予防の場合には、例えば、免疫応答を促進することによって、後の病原体のチャレンジの個体における有害な影響を低減させる量で充分であろう。実際の投与量、投与速度および投与時間は、投与の目的、例えば、チャレンジの性質や重篤度の観点で求められた生物学的な効果によって異なり、定常的に最適化される。予防接種等に関する処置の処方、例えば投与量の決定などは、一般医や他の医師の責任の範囲内である。
【0053】
細菌を含む組成物は、単独でまたはその他の治療法と組み合わせて、同時若しくは順次、本発明に従って投与される。
【0054】
また、本発明は、上記のような細菌を含む薬剤組成物を提供するものである。このような薬剤組成物は、一実施態様によると、粘膜への塗布に適当であることが好ましい。
【0055】
本発明による、および本発明による使用を目的とする薬剤組成物は、細菌に加えて、製薬上許容される賦形剤、坦体、バッファー、安定化剤または当業者に公知のその他の物質を含んでいてもよい。このような物質は、無毒性でなければならず、また活性成分の有効性を干渉するものであってはならない。坦体またはその他の物質の正確な性質は投与経路に依存する。静脈内、皮膚若しくは皮下注射、または苦痛部位における注射では、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性および安定性を有する非経口で許容される水溶液が使用されてもよい。当該分野におけるものは、好適な溶液を充分に調製できる。保存剤、安定化剤、バッファー、抗酸化薬および/またはその他の添加剤は、必要により、含まれてもよい。上記のように、本発明による投与を目的とする細菌を含む薬剤は、一以上の栄養物質、例えばグルコース、アミノ酸などのエネルギー源を含んでいてもよい。
【0056】
その他の態様によると、本発明は、上記細菌を患者への投与が適当である坦体媒体と配合することからなる薬剤の製造方法を提供するものである。一実施態様によると、上記薬剤は患者の粘膜への塗布に好適である。
【0057】
また、本発明は、異種の生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性細菌、および薬剤に使用される、すなわち予防(予防接種)を含む外科または治療によるヒトまたは動物を処置する方法に使用される抗原を提供するものである。上述のように、細菌はグラム陽性であり、非共生および/または非集落形成であることが好ましく、好適な実施例にはラクトコッカス属(Lactococcus) が挙げられる。上記方法は、例えば、患者における免疫応答を促進するために、患者の粘膜に投与することからなることが好ましい。
【0058】
本発明の他の概念は、患者への投与を目的とする、組成物、すなわち薬剤組成物または薬剤の製造における上記細菌の使用を提供するものである。このような投与は、患者の粘膜にすることが好ましく、例えば細菌によって発現される抗原に対する、このような投与により患者における免疫応答が促進されるであろう。
【0059】
本発明の各概念の実施態様は、本明細書の開示から明らかであり、当業者は修飾がされてもよいことを認識できるであろう。別の態様および実施態様は明らかになるであろう。実験的な実証(これに制限されるものではないが)により、抗原に対する免疫応答の保護レベルを達成する際の本発明の実施態様の使用を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
本明細書で述べられている全ての文献は参考のために引用される。
【0061】
実施例1
TTFCおよびmIL2またはmIL6のいずれか一方を同時発現させるために、我々は、調査される二つのシストロンを誘導するオペロンの構築を目的として選んだ。我々は、構成性発現用のベクターを使用した。一般的に、我々は、シャイン・ダルガルノ(SD)配列直前にXbaI部位および停止コドン直後にSpeI部位をシストロンに隣接させようとした。このようにして、XbaI及びSpeIは同じ付着端を生ずるため、多シストロンは容易に交換でき、望ましい配列で様々な組み合わせができる。我々は、既に、T7 プロモーター−T7遺伝子10リボソーム結合部位によってmIL2およびmIL6を発現させることができたので、g10リボソーム結合部位中に存在するXbaIを選んで使用した。この配列のため、SD配列がうまく位置することを知った。我々は、インターロイキンの前にTTFCシストロンを選んでおいた。
【0062】
プラスミド類の構築
プラスミドの構築を図1に示す。mIL2およびmIL6を有するプラスミドについて特定部位の突然変異誘発を行い、停止コドンの直後にさらにSpeI部位を生じさせた。得られるプラスミドは、それぞれ、pL2MIL2AおよびpL2MIL6Aと称された。USP45分泌リーダーおよびTTFCの融合を含むプラスミドを、必要な各種のTTFC配列のPCR増幅用の鋳型として使用した。
【0063】
細胞内TTFCの産生を誘導するオペロンでは、遺伝子をブラントエンドのSpeI/BamHIフラグメントとして増幅し、SphIで切断され、ブラントエンド化され、さらにBamHIで再切断されたベクターpTREX1中にクローン化した。得られるプラスミドはpT1TTと称される。このプラスミドから、3’末端の150bpの、SpeI TTFCフラグメントを単離して、pL2MIL2AおよびpL2MIL6AのXbaI部位中にクローンした。得られるプラスミドはp3TTIL2およびp3TTIL6と称された。我々は、TTFCの3’末端に存在するKpnI制限部位を用いてTTFCを再構築し、さらにp3TTIL2およびp3TTIL6のKpnI−SpeIフラグメントをpT1TTの適当なKpnI−PvuIIおよびSpeI−PvuIIフラグメントと連結することによって、目的とするオペロンを得た。得られるプラスミドは、pTT12およびpTT16と称された。
【0064】
タンパク質の発現
タンパク質の発現を抗体の検出によって検定した。上記を目的として、研究される種々の菌株のコロニーはニトロセルロース膜上にスポットし(spot)、適当な抗生物質を含むGM17(ディフコ(difco) 製)固体寒天プレート上においた。これらのプレートを一晩インキュベートし、2.5%スキンミルク粉末を含有するPBS中で遮断した。フィルターをウサギ抗TTFCまたはウサギ抗MIL2で暴露した。実験では、TTFC遺伝子を保持する全ての構築物中でTTFCの明確な発現が示された。さらに、pTTI2およびpTTAI2では、IL2およびTTFCの同時発現が検出された。TTFC単位及びmil6間の連結部はTTFC及びmil2間の連結部と同じなので、IL6は同様にTTFCと共に同時に発現したと推測される。
【0065】
免疫処置用細胞の調製
免疫処置用の細菌株を、エリスロマイシンを5μg/mlで含有する新鮮なGM17培地15mlに対して1mlの一晩培養物(overnight culture) の割合で希釈された新鮮な一晩培養物から生育させ、30℃で成長させた。細胞を0.5〜1.0の間の600nmにおける光学密度で収穫した。細胞を0.5%カザミノ酸、0.2M重炭酸ナトリウム、0.5%グルコースのオリジナル培地の1/10(容量)で洗浄した後、1/200(容積)のオリジナルの培地中に再縣濁し、細菌細胞濃度を測定した。次に、細胞を、1回の免疫処置当たりの細胞数が所定の数になるように上記溶液中に希釈した。
【0066】
免疫処置
マウスは「メトファン(metofane)」を吸入させて、軽く麻酔をかけた。0.5%カゼイン加水分解産物、0.2M重炭酸ナトリウム及び0.5%グルコースにおける、細菌縣濁液10μlを、自動ピペッターを用いて、順次、外鼻腔に塗布した。動物は、十分に麻酔からさめるまで、呼吸困難性をよく観察した。
【0067】
結果
結果を表1および図4に示す。インターロイキン−2またはインターロイキン−6を発現できる細菌は、TTFC単独を発現する細菌に比べて10倍以上の抗TTFC抗体を誘導した。
【0068】
抗体力価が閾値を越えるやいなや保護効果が達成されることは、細菌毒素では通例である。pEX−TTFC/IL−2及びpEX−TTFC/IL−6を含有する細菌を接種したマウス中で検出された抗体力価のレベルは、破傷風毒素のチャレンジに対する後の保護に関する閾値を大きく越えた(図4を参照のこと、予防接種してから35日の力価)。
【0069】
実験実証の要約
抗原性ポリペプチド(破傷風毒素フラグメントC−TTFC)および生物学的に活性のあるポリペプチド(インターロイキン2;インターロイキン−6)の同時発現用の人工オペロンを、TTFC遺伝子およびインターロイキン遺伝子の転写が予め規定された活性のラクトコッカスのプロモーター要素の活性によって制御できるように、構成発現ベクター(pTREX1)中に別々に構築した。これらの構築物は、人工オペロンから転写されたmRNAの翻訳後、TTFC抗原が細胞内に蓄積するように調製された。分泌シグナル配列を、インターロイキンに操作により連結した。これらの細菌の調製剤をマウスの鼻腔内に投与すると、インターロイキン−2またはインターロイキン−6を発に比べて、約10倍以上の抗TTFC抗体を誘発した。したがって、これらのインターロイキンはいずれかも、実験系において明確なアジュバント活性を有した。
【0070】
ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)は、(ひよこの群に住み、多くの哺乳動物の腸管に存在する、乳酸桿菌の関連種とな異なり)共生細菌ではなく、インビボでは利用するとは考えられないアミノ酸やペプチドの提供にその栄養に関して依存するので、ラクトコッカス ラクチス(L. lactis) のサイトカインを発現する菌株が抗体産生を増大できることが示されたことは驚くべきことである。これらの結果は、最初に、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)などの非集落形成、非侵襲性細菌の組換株がインビボで生物学的に活性のある分子を合成、デリバリーするのに使用できることを示すものである。
【0071】
表1(裏ページ)
表において、「TT/9」は1×109 個の細菌投与量でTTFCを発現する細菌の接種を、「TT/8」は1×108 個の細菌投与量での接種などを示すのに使用される。「TT IL−2/9」および「TT IL−6/9」は、1×109 個の細菌投与量で、TTFC及びIL−2、ならびにTTFC及びIL−6を、それぞれ、発現する細菌による接種を示し、「TT IL−2/8」は1×108 個の細菌投与量での接種などを示すものである。記載される数値は個々のマウスに関するELISA力価である。
【0072】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、プラスミド構築の流れの概略図を示すものである。得られるプラスミドpTTI2は、TTFCおよびIL−2の発現に使用され、得られるプラスミドpTTI6は、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)などの有機物中でTTFCおよびIL−6を発現するために使用される。
【図2a】図2aは、抗原(例えば、TTFC)及び生物学的に活性のあるポリペプチド(例えば、IL−2またはIL−6などのサイトカイン)に関するコーディング配列を含むオペロン構築物などの、遺伝子が複数のクローニング部位(MCS)に挿入される、ベクターpEX1(pTREX1と称される)を示すものである。
【図2b】図2bは、遺伝子MCS(多クローニング部位)に挿入された際に遺伝子(マルチ−(ジ−)シストロンコーディング配列を含む)の発現を目的として操作により(operably)位置されるP1プロモター、シャイン・ダルガルノ配列(SD)および転写終結区配列を示すpEX1(pTREX1)領域の拡大図を示すものである。
【図3】図3は、発現目的で使用されるオペロンにおけるTTFCとインターロイキンシストロン間の結合を示すものである。
【図4】図4は、破傷風毒素フラグメントC(TTFC)およびマウスのサイトカイン、IL−2またはIL−6を発現する組換ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)で鼻腔内にワクチン注射された6匹のマウス群のTTFCに特異的な血清IgG力価を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドのデリバリー方法。
【請求項2】
一以上の抗原を発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、一以上の抗原のデリバリー方法。
【請求項3】
一以上の抗原及び一以上の異種の生物学的に活性のあるポリペプチド双方を発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、一以上の抗原および/または一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドのデリバリー方法。
【請求項4】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが細菌にとって異種である、請求の範囲第1項から第3項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一の異種ポリペプチドが真核生物またはそのウィルス由来である、請求の範囲第4項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一の異種ポリペプチドが原核生物若しくはそのウィルス由来または細菌種と同種のウィルス由来である、請求の範囲第4項に記載の方法。
【請求項7】
該細菌がグラム陽性細菌である、請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該グラム陽性細菌がリステリア イノキュア(Listeria innocua)、スタフィロコッカス キシローサス(Staphylococcus xylosus) 、スタフィロコッカス カルノサス(Staphylococcus carnosus) 、ストレプトコッカス ゴルドニ(Streptococcus gordoni)、ラクトコッカス種またはラクトバチルス種である、請求の範囲第7項に記載の方法。
【請求項9】
該グラム陽性細菌がラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)である、請求の範囲第8項に記載の方法。
【請求項10】
該細菌がグラム陽性細菌の弱毒化株である、請求の範囲第7項に記載の方法。
【請求項11】
該細菌がリステリア モノサイトジーンズ(Listeria monocytogenes)である、請求の範囲第10該項に記載の方法。
【請求項12】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが局所的にまたは全身に機能できるもの、例えば、局所的な若しくは全身の代謝に作用する内分泌活性を発揮できるポリペプチドである、請求の範囲第5項から第11項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが免疫造血システムに属する細胞の活性を調節できるものである、請求の範囲第5項から第11項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが体内の様々な正常な若しくは腫瘍細胞の生育可能性、成長及び分化に作用できるあるいは損傷や感染に対する急性期の炎症反応の免疫調節若しくは誘導に作用できるものである、請求の範囲第5項から第11項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドがターゲット細胞レセプターに作用するケモカインによって介される細胞及び組織の感染に対する耐性を促進できるあるいは誘導できる、または上皮細胞を増殖できるまたは傷の治癒を促進できるものである、請求の範囲第5項から第11項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが体内の細胞による物質の発現または産生を調節するものである、請求の範囲第5項から第11項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドがインシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、副甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモンまたはバソアクティブ・インテスティナル・ポリペプチドである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドがIL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、GM−CSF、M−CSF、SCF、IFN−γ、EPO、G−CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRLまたはIFNα/β等の、逆平行4αらせん束構造をとる構造群1サイトカインである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドがサイトカインのTNF群、例えば、TNFα、TNFβ、CD40、CD27またはFASリガンド、サイトカインのIL−1群、繊維芽細胞成長因子群、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング成長因子β及び神経成長因子などの、細胞表面と結合することが多く、対称ホモトリマーを形成し、そのサブユニットは特定のウィルスコートタンパク質について記載されるβ−ゼリーロールの立体配座を採用する構造群2サイトカインである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが、例えば、サイトカインの表皮成長因子、保存システイン残基(C−CまたはC−X−Cケモカインサブグループ)付近に集まるアミノ酸配列を有することを特徴とするケモカインまたはインシュリン関連サイトカインなどの、短鎖α/β分子からなり、それぞれが細胞外領域に少なくとも一のEGFドメインを含む大きな膜内外前駆体分子として産生される構造群3サイトカインである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが異なるドメインから構成されるヘレグリンまたはニューレグリン、例えば、EGF、免疫グロブリン様及びクリングルドメインなどの、モザイク構造を有する構造群4サイトカインである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
該一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドが請求の範囲第10項から第19項のいずれかに記載の生物学的に活性のあるポリペプチドに対するレセプターまたはアンタゴニストである、請求の範囲第12項から第16項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、細胞または組織の生存、成長、分化、エフェクター機能または感染に対する感受性の調節方法。
【請求項24】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、粘膜表面または付近若しくは離れた組織に集落形成する腫瘍細胞または感染に対する免疫応答の促進方法。
【請求項25】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、病原性感染物質に対する免疫応答のタイプ(抗体対細胞の仲介)の調節方法。
【請求項26】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、炎症または腫瘍細胞による正常組織の浸潤の調節方法。
【請求項27】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、腫瘍細胞の成長速度、侵襲速度または生存の制御方法。
【請求項28】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、腫瘍細胞のアポプトシスの誘導方法。
【請求項29】
請求の範囲第12項から第22項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第23項から第28項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、免疫応答のダウンレギュレーション方法。
【請求項31】
生物学的に活性のあるポリペプチドを発現する非侵襲性または非病原性細菌を被検者に投与することからなる、アレルギー性自己免疫または他の免疫調節異常による病気の状態の処置方法。
【請求項32】
請求の範囲第7項から第22項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第30項または第31項に記載の方法。
【請求項33】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌、および必要であれば一以上の製薬上許容できる賦形剤、アジュバント、担体などからなる薬剤配合物。
【請求項34】
ワクチン配合物である、請求の範囲第33項に記載の薬剤配合物。
【請求項35】
請求の範囲第12項から第22項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第33項または第34項に記載の薬剤配合物。
【請求項36】
請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌を一以上の製薬上許容できる担体と混合する段階からなる、請求の範囲第33項から第35項のいずれかに記載の薬剤配合物の製造方法。
【請求項37】
各コーディング配列は非侵襲性または非病原性細菌での発現を目的とするプロモーターの制御下にある、一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドに関する一以上のコーディング配列及び一以上の抗原に関する一以上のコーディング配列からなる核酸。
【請求項38】
請求の範囲第7項から第22項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第37項に記載の核酸。
【請求項39】
一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドをコード化する核酸および/または一以上の抗原をコード化する核酸が適当な調節配列の制御下にある一以上の核酸構築物からなる請求の範囲第37項または第38項に記載の核酸。
【請求項40】
該適当な調節配列がプロモーター配列、ターミネーターフラグメント、エンハンサー配列及びマーカー遺伝子から選ばれる、請求の範囲第39項に記載の核酸。
【請求項41】
該一以上の核酸構築物がポリシストロンRNA転写物を生じることが可能な人工的なオペロンを有する、請求の範囲第39項または第40項に記載の核酸。
【請求項42】
該プロモーターがラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)で使用されるラクトコッカスのプロモーターである、請求の範囲第37項から第41項のいずれかに記載の核酸。
【請求項43】
一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドに関するコーディング配列の上流に、分泌シグナル配列をさらに含む、請求の範囲第37項から第42項のいずれかに記載の核酸。
【請求項44】
該分泌シグナル配列がバチルス アミロリクェファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens) のα−アミラーゼ分泌リーダー、スタフィロキナーゼ(Staphylokinase)酵素の分泌リーダー、他のバチルス属の酵素またはS−層タンパク質に関するリーダー配列またはラクトコッカス属(Lactococcus) のタンパク質であるUsp45のリーダー配列である、請求の範囲第43項のいずれかに記載の核酸。
【請求項45】
該抗原が保護免疫応答を誘発できる、請求の範囲第37項から第44項のいずれかに記載の核酸。
【請求項46】
該抗原は保護免疫応答が請求の範囲第12項から第22項のいずれかに記載の一以上の同時に発現した生物学的に活性のあるポリペプチドの存在下で加速され、増幅されまたはより長期間続くものである、請求の範囲第37項から第44項のいずれかに記載の核酸。
【請求項47】
非侵襲性または非病原性細菌、例えば、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)の形質転換における請求の範囲第37項から第46項のいずれかに記載の核酸の使用。
【請求項48】
非侵襲性または非病原性細菌宿主細胞中に請求の範囲第37項から第46項のいずれかに記載の核酸を導入する段階からなる、請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の細菌の生産方法。
【請求項49】
(i)一以上の異種の生物学的に活性のあるポリペプチドおよび(ii)一以上の抗原を発現する非侵襲性または非病原性細菌。
【請求項50】
請求の範囲第7項から第22項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第49項に記載の非侵襲性または非病原性細菌。
【請求項51】
請求の範囲第37項から第46項のいずれかに記載の核酸を含む請求の範囲第49項または第50項に記載の非侵襲性または非病原性細菌。
【請求項52】
薬剤に使用される請求の範囲第49項から第51項のいずれかに記載の非侵襲性または非病原性細菌。
【請求項53】
一以上の生物学的に活性のあるポリペプチドおよび/または一以上の抗原のデリバリーを目的とした薬剤の製造における請求の範囲第1項から第11項のいずれかに記載の非侵襲性若しくは非病原性細菌または請求の範囲第37項から第46項のいずれかに記載の核酸を含む非侵襲性若しくは非病原性細菌の使用。
【請求項54】
請求の範囲第23項から第32項に記載の一以上の態様によって修飾される請求の範囲第53項に記載の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−67708(P2008−67708A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−251332(P2007−251332)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【分割の表示】特願平9−515633の分割
【原出願日】平成8年10月21日(1996.10.21)
【出願人】(507055501)アクトジェニックス・エヌブイ (11)
【氏名又は名称原語表記】Actogenix NV
【Fターム(参考)】