説明

生物学的治療組成物およびその使用

本明細書において、M17およびその亜系菌株のような非病原性細菌株、およびメトロニダゾールのような嫌気性細菌用抗生物質の生物学的治療組成物が開示される。本明細書においてさらに開示されるのは、嫌気性細菌により引き起こされる障害を治療するためのM17またはその亜系菌株、および嫌気性細菌用抗生物質の使用であり、このような障害には、例えば、回腸嚢炎、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘液性大腸炎および下痢が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的治療組成物、より具体的には、非病原性細菌株と、抗生物質とを含む組成物、および、胃腸障害の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性細菌は、酸素の存在下で成長することができない細菌である。そのような細菌は、正常なバリア(例えば、皮膚、歯肉または腸壁など)が、手術、傷害または疾患のために損なわれるときには特に、酸素がほとんど存在しない深部の創傷部、深部の組織および体内器官に感染し得る。これらの感染は、膿瘍形成、悪臭がする膿および組織の破壊を特徴とする。正常な腸内微小細菌叢のうち、およそ99.9%が嫌気性である。これらには、バクテロイデス属、プレボテラ属、クロストリジウム属、ペプトストレプトコッカス属、エシェリキア属、プロテウス属およびシュードモナス属、ならびに、数がそれほど多くない他の種が含まれる。これらの正常な非病原性細菌叢は栄養分および腸の受容体部位について病原体と競合し、これにより、病原体が疾患を引き起こすことを妨げる。
【0003】
胃腸管は、微妙なバランスが、腸内微小細菌叢と、宿主との間に存在する複雑な生態系を表す。これらの微小細菌叢は主として通性嫌気性菌および偏性嫌気性菌から構成される。ヒトにおける腸内細菌集団のおよそ95%が偏性嫌気性菌から構成され、それらには、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属、ユーバクテリウム属、フゾバクテリウム属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属およびバクテロイデス属が含まれる。腸内集団のおよそ1%〜10%が通性嫌気性菌から構成され、これらには、ラクトバチルス属、大腸菌、クレブシエラ属、ストレプトコッカス属、黄色ブドウ球菌およびバチルス属が含まれる。好気性生物は、非常に少ない量で存在するシュードモナス属を除いて、健康な個体の腸管には存在しない。これらの細菌のほとんどが結腸に存在し、そこでは、細菌濃度が1011〜1012コロニー形成単位(CFU)/ミリリットルに及ぶ。
【0004】
腸内微小細菌叢は、免疫系の成熟化、正常な腸形態学の発達のために、また、長期にわたる免疫学的にバランスのとれた炎症性応答を維持するために重要である。微小細菌叢は腸粘膜のバリア機能を強化し、このことは、病原性微生物の接着およびアレルゲンの侵入を妨げることにおいて役に立っている。微小細菌叢を構成する一部の菌が、ビオチン、パントテン酸およびビタミンB12を含めて、いくつかのビタミンについての身体の要求に寄与し得る。腸の微生物フローラの変化、例えば、抗生物質の使用、疾患および加齢などに伴って生じ得る腸の微生物フローラの変化は、その有益な役割に負の効果を及ぼし得る。
【0005】
粘膜の免疫系と、腸内微小細菌叢との間における相互作用により、消化管関連リンパ系組織の炎症または活性化の生理学的に正常な状態が維持される。胃腸障害において、結腸の細菌フローラが腸の機能不全(例えば、炎症性腸疾患および過敏性腸症候群など)の開始および持続に関わる。変化した微小細菌叢を伴う他の腸疾患状態には、小腸の細菌過剰増殖、直腸結腸癌、ならびに、小児の下痢、旅行者下痢および抗生物質関連の下痢が含まれる。
【0006】
炎症性腸疾患、すなわち、IBDは、胃腸管の、関連するが異なる慢性的炎症性障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、不確定大腸炎、顕微鏡的大腸炎およびコラーゲン蓄積大腸炎など)を包含する総称用語であり、クローン病および潰瘍性大腸炎が最も一般的な疾患である。
【0007】
潰瘍性大腸炎は大腸(結腸)および直腸に限定され、腸壁の内層のみが関係する。
【0008】
クローン病は消化管の任意の部分(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、直腸および肛門など)を冒すことがあり、腸壁のすべての層が関係し得る。この疾患は、ほとんどの場合には小腸の下部部分または結腸において、しかし、時には直腸、胃、食道または口において、炎症とともに始まる。炎症が罹患領域の全体にわたって一様に生じる潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病は、健康な組織が間に存在しても、数カ所において同時に発症し得る。やがては、腸壁内に深く広がる大きい潰瘍が、炎症を起こした領域において発達し得る。様々な合併症、例えば、腸の閉塞;口または肛門を含めて、消化管の至る所での潰瘍;フィステル;裂肛;ならびに、下痢に起因する栄養失調、腹痛および腹部痙攣などが生じ得る。
【0009】
両方の疾患は、他のIBDと同様に、腹痛および腹部痙攣、下痢、直腸出血および/または腸出血、体重減少および発熱を特徴とする。これらの疾患の症状は通常、進行性であり、患者は典型的には、寛解期間、それに続く重篤な再発を繰り返し経験する。頻度はそれほど高くないが、同様に起こり得るIBD症状は、消化管の他の部分の粘膜炎症(例えば、十二指腸炎、空腸炎および直腸炎など)を反映する。
【0010】
ほとんどの患者について、IBDは、症状が数ヶ月から数年にわたって持続する慢性的状態である。IBDは若年成人において最も一般的であるが、どの年齢でも発生し得る。IBDは世界中で見出されるが、工業化国(例えば、米国、英国および北欧など)では最も一般的である。実際、IBDには、米国だけで、推定、200万人が罹患している。IBDは致死的な病気であると見なされないが、長期間にわたる疾患は、成長に効果を及ぼす重症の栄養失調を引き起こし得るか、あるいは、感染または腸閉塞を結果的には引き起こす膿瘍または腸の瘢痕組織の形成を引き起こし得る。長引くIBDはまた、結腸癌についての危険因子として知られている。
【0011】
IBDの診断は、臨床的症状、バリウム注腸の使用(これは、X線によって可視化される造影剤を注腸形態で直腸に導入することを伴う)、および/または、直接的な可視化(S状結腸鏡検査または結腸鏡検査)に基づいており、結腸鏡検査が最も正確な検査であり、この検査では、結腸全体を、薄い柔軟な照明付きチューブを付属カメラとともに使用して可視化することを伴う。結腸鏡検査のとき、生検サンプルもまた、潰瘍性大腸炎では存在しない肉芽腫の検出を主に伴う実験室分析のために採取することができる。S字結腸鏡検査は、S字結腸(結腸の下部部分)を調べるために、細長い柔軟な照明付きチューブの使用を伴う。他の診断方法には、小腸X線(これは、結腸鏡検査によって見ることができない小腸の様々な部分を、液体形態でのバリウムの経口投与、その後、X線可視化によって調べる)、コンピューター断層撮影法(CT)(腸全体および周りの組織を調べる)、および、カプセル内視鏡(画像をコンピューターに伝送するカメラを含有するカプセルを飲み込むことを伴い、その後、画像がダウンロードされ、モニターに表示され、クローン病の徴候について調べられる)が含まれる。クローン病の診断については、例えば、米国特許第6348452号および同第6297015号を参照。
【0012】
IBDの正確な原因は未だ理解されていない。一般に知られている仮説には、例えば、ウイルスまたは細菌によって引き起こされる免疫系の障害、ならびに、腸における炎症性応答の抑制されない活性化を永続させる前炎症性サイトカインの作用およびリンパ球サブセットの選択的活性化が含まれる。
【0013】
遺伝的要因もまた関与すると考えられる。これは、IBD疾患を有する人々の約20パーセントが、この疾患を同様に有する親、兄弟姉妹または子供を有することが示されているからである。NOD2/CARD15遺伝子における変異が、クローン病の人々において高頻度で生じる傾向があり、また、症状の早期発症、ならびに、この疾患についての手術後における再発の危険性が高いことに関連するようである。IBDが、都市部および工業国に生活する人々の間ではより高頻度で生じるので、脂肪が多い食事、または、手のこんだ食品を含めて、様々な環境的要因が役割を果たしている可能性があることもまた示唆されている。
【0014】
現在、IBDは治療法がない。IBDに苦しむ患者は一般には、炎症プロセスを軽減すること、および、患者に対する炎症プロセスの効果を軽減することに向けられる様々な治療により治療される。IBDの現在知られている治療法は、炎症性腸疾患の急性悪化の回数、頻度および重症度を低下させるために、また、二次的な合併症を防止することを意図されるが、最も良い場合でも、その結果は期待はずれである。IBDを治療するための現在知られている方法には、抗炎症薬、免疫抑制薬、抗生物質および手術が含まれる。
【0015】
IBDを治療するための最も一般に使用される薬剤は、サリチル酸などの抗炎症薬である。サリチル酸製剤は、この薬剤が長期間にわたって服用されるときには、軽度〜中程度の疾患を治療することにおいて効果的であり、また、疾患の急性憎悪の頻度もまた低下させることができる。サリチラート系化合物の例には、スルファサラジン、オルサラジンおよびメサラミンが含まれる。具体的には、生物活性な5−アミノサリチル酸(5−ASA)成分を有するスルファサラジンおよび関連薬物が、中程度のIBD症状を抑えるために、また、寛解を維持するために広く使用される。これらの薬剤のすべてが、治療的利益を最大にするために、高用量で経口投与により与えられる。しかしながら、これらの薬剤による治療には、典型的には、有害な副作用(例えば、悪心、めまい、血液化学における変化(貧血および白血球減少症を含む)、皮発および薬物依存性など)を伴う。
【0016】
コルチコステロイドは、サリチル酸と比較して、IBDの治療における、より強力で、より速効性の抗炎症薬であり、身体の至る所での炎症を軽減する。例えば、プレドニゾンが、IBDの重症症例を治療する際に一般に使用されるコルチコステロイドである。それにもかかわらず、潜在的に重篤な副作用により、コルチコステロイドの使用が、より重症の疾患を有する患者には制限される。コルチコステロイドの副作用には、顔面の腫脹、過度な顔の毛、寝汗、不眠症および多動が含まれる。様々なより重篤な副作用が、長期間使用されたときには通常、生じており、これらには、高血圧、2型糖尿病、骨粗鬆症、骨折、骨および皮膚が細く(薄く)なること、筋肉消耗、白内障、感染症に対する感受性の増大、精神障害、ならびに、希な発生ではあるが、股関節の破壊が含まれる。小児におけるステロイド剤の長期使用は発育阻害を引き起こし得る。より新しいタイプのコルチコステロイドであるブデソニドは、従来のステロイド剤よりも速く代謝され、副作用がより少ないが、下部小腸、および、大腸の最初の部分を伴うクローン病においてのみ効果的である。コルチコステロイドは長期間の使用には適していない。コルチコステロイドは、約3ヶ月〜4ヶ月にわたる短期間の症状改善のために使用することができる。コルチコステロイドはまた、寛解を誘導するための手段として、他の薬剤との併用で使用される。例えば、コルチコステロイドを免疫系抑制剤とともに使用することができる。これは、コルチコステロイドは寛解を誘導することができ、一方で、免疫系抑制剤は、寛解を維持することを助けることができるからである。
【0017】
IBD患者がサリチル酸またはコルチコステロイドに応答しない場合、免疫系を抑制する薬剤、すなわち、免疫抑制剤が使用される。これらの薬物もまた、炎症を軽減させるが、これは、炎症そのものを治療するのではなく、むしろ、免疫系を標的化することによってである。免疫抑制剤の例には、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、インフリキシマブ、メトトレキサート、シクロスポリンが含まれる。しかしながら、免疫抑制剤は患者を免疫低下状態にし、他の疾患に罹りやすくし得るので、IBDの治療におけるその使用は勧められない。さらには、血液中の腫瘍壊死因子を中和するインフリキシマブは、心不全、多発性硬化症または癌の患者には禁忌であり、感染(特に、結核)の危険性が増大することにも関連しており、また、血液障害および癌の危険性を増大させ得る。インフリキシマブは重篤なアレルギー性反応を一部の対象において引き起こし得る。メトトレキサートの短期間の副作用には、悪心、疲労および下痢、ならびに、時々ではあるが、アレルギー性肺炎が含まれる。長期間使用は、肝臓の瘢痕形成、および、時々ではあるが、癌を引き起こし得る。シクロスポリンは、重篤な副作用(例えば、腎臓および肝臓の損傷、高血圧、致死的な感染症、ならびに、リンパ腫の増大した危険性など)の可能性を有する。
【0018】
IBDの治療において有用である抗生物質には、メトロニダゾール、クラリスロマイシン、トブラマイシンおよびシプロフロキサシンが含まれる。
【0019】
メトロニダゾールは嫌気性細菌に対して活性であり、回腸および結腸のクローン病の治療において、また、腸の一部を手術により取り除いた後での再発を防止することを助けることにおいて有益であり得る。メトロニダゾールはまた、様々な胃腸感染症(例えば、クロストリジウム・ディフィシルの抗生物質関連下痢感染を含む)および小腸過剰増殖の治療において、適用外で(すなわち、承認されたFDA表示に記載されない適応症に)使用される。今日まで、メトロニダゾールは、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、または、回腸および結腸とは異なる器官のクローン病など)の治療では使用されていない。
【0020】
メトロニダゾールは細胞内および細胞外の両方で身体組織中に広く分布する。メトロニダゾールが、血清中における濃度に等しい濃度で唾液および母乳に見出される。メトロニダゾールはまた、胎盤を横断し、CSFに見出される。治療的レベルが、膿瘍、胆汁、CSF、精液および滑液において見出されている。メトロニダゾールの著しい血漿結合は認められていない(5%未満)。メトロニダゾールは、一部が酸酸化およびグルクロン酸抱合の両方によって肝臓において代謝される。単回静脈内注入後のメトロニダゾールの半減期が7.3±1.0時間として報告されている。
【0021】
クラリスロマイシンは、消化性潰瘍に関連するヘリコバクター(Helicobactor)属に対して活性である。トブラマイシンは潰瘍性大腸炎の重症患者において限定的に使用される。シプロフロキサシンは、活動性クローン病において、単独で、または、メトロニダゾールとの組み合わせで有用性を有する。
【0022】
数多くの他の抗生物質が、特定の問題(例えば、細菌集団における不均衡によって引き起こされる下痢の治療など)に対処するために処方され得る。しかしながら、抗生物質は、特に2週間を越える期間にわたって服用されるならば、ある種の形態の大腸炎を引き起こすことがある。非常に一般的ではあるが、抗生物質の長期間に及ぶ使用には、薬物自体の直接的な過敏的効果であり得る下痢(抗生物質関連下痢)が伴う。
【0023】
炎症性腸疾患の徴候または症状を緩和するために処方され得るさらなる薬剤には、止寫剤(例えば、食物繊維補助食品(例えば、オオバコ粉末またはメチルセルロースなど)などは、軽度〜中程度の下痢の徴候および症状を、食物繊維を便に加えることによって緩和することを助けることができ、また、ロペラミドが、より重症の下痢については効果的である場合がある);緩下薬(腫脹が腸を狭くさせ、これにより、便秘が引き起こされる場合において);鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェンなど)、鉄補助物(慢性的な腸出血のために発症し得る鉄欠乏性貧血に対抗するために)、および、ビタミンB−12注射剤(正常な吸収が、このビタミンを正常な場合には吸収する回腸末端の炎症のために低下するか、または、妨げられる場合において)が含まれる。
【0024】
より重症の場合には、または、薬物治療により、IBDの症状を緩和することができないときには、外科的手法が使用される。典型的な外科的手法には、結腸切除術、直腸結腸切除術および回腸造瘻術が含まれる(Cecil Textbook of Medicine(第19版、Wyngaarden他編、1992年)を参照)。これらの外科的治療は、患者の日常生活をしばしば大きく変化させる根治的手法である。
【0025】
結腸および直腸が切除されている一部の患者は、直腸の代わりに働くように小腸のループから作られるレザバーまたは嚢を有する。回腸嚢炎は、そのような外科的に作製された嚢の急性炎症であり、この急性炎症は、経過観察の質および継続期間に依存して、7〜50パーセントの患者で生じることが見出されている。
【0026】
回腸嚢炎の診断は、様々な判断基準を使用して定義されている。一部の研究者は、臨床的症状に基づく診断を好んでおり、一方で、内視鏡的特徴または組織学的特徴の使用を勧める研究者もいる。近年では、確定診断は、臨床的症状、炎症の内視鏡的特徴および炎症性浸潤の組織学的証拠からなる診断試験に基づかなければならないことが主張されている。内視鏡検査では、状態が、浮腫、粒度、粘液滲出物、接触性出血および潰瘍化を特徴とし、また、組織学的特徴は、慢性的な炎症性浸潤物、陰窩膿瘍および潰瘍化である。
【0027】
回腸嚢炎の臨床的症状には、下痢の突然の発生、腹部の痙攣および鼓脹、便意逼迫、テネスムスおよび失禁が含まれ、多くの場合には、食欲不振、全身的疲労/倦怠感、発熱、悪心、および、インフルエンザ様の病気を引き起こす全身症状が伴う。排便頻度が1日に30回を越えることがある。しばしば、下痢とともに、血液が存在し、時には膿が存在する。患者が大腸炎の腸管外の症状発現を以前に有したことがあるならば、これらの腸管外の症状発現が多くの場合、回腸嚢炎とともに再発するが、それらは時には、回腸嚢炎の発病のときに初めて現れることがある。場合により、回腸嚢炎はまた、関節痛および体重減少をもたらし得る。回腸嚢炎は、炎症性腸疾患の腸管外症状発現に類似する関節炎、皮膚病変および眼の問題を誘発することが報告されている(Schouten、1998)。
【0028】
回腸嚢炎についての内視鏡検査基準は、急性の非特異的炎症;粒度、浮腫、紅斑、脆さ、点状出血、分泌過多および多数の表在性びらん性欠損の広く知られている指標である。大部分の場合において、回腸嚢炎の内視鏡検査特徴は潰瘍性大腸炎の内視鏡検査特徴と似ている。組織学的研究では、リンパ球、プラズマ細胞、好酸球および組織球を含む、粘膜固有層における慢性的な炎症性浸潤物が大多数の患者において明らかにされている。
【0029】
細菌の過剰増殖に関する便スタチス(statis)は、回腸嚢炎の病理発生における大きな寄与因子であると見なされている。回腸レザバーには、正常な腸管回腸の細菌叢に数で勝る非常に多数の細菌がコロニー形成する。回腸嚢炎の徴候を有しない回腸レザバーでは、その微小細菌叢は大腸の細菌叢に非常に似ている。これは主に、嫌気性菌の数が大きいため、嫌気性菌対好気性菌の比率がより大きくなるからである。嚢が完全に空にならないこと(このことが回腸内容物のスタチスに関連する)により、嫌気性細菌の数が増大することが示唆されている。
【0030】
回腸嚢炎の原因は不明である。いくつかの理論が提案されており、これらには、嚢における過度な細菌(例えば、硫酸塩還元細菌など);慢性的虚血;短鎖脂肪酸の不足;スタチス;免疫学的再活性化;および、嚢における炎症性腸疾患の再発、ならびに、潰瘍性大腸炎の誤診が含まれる。回腸嚢炎を発症する可能性に影響を及ぼす、可能性のある要因には、硬化性胆管炎の存在;非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)の使用;プレドニゾンまたは免疫抑制剤の手術後投与;および患者の喫煙状態が含まれる。細菌酵素(例えば、グリコシダーゼなど)が保護粘膜を破壊し、これにより、毒性の細菌代謝産物および宿主由来のタンパク質分解酵素に対する透過性がより大きくなり、このことが粘膜の一体性に影響を及ぼし得ることが考慮される。結果として、様々な細菌抗原が粘膜バリアを横断し得る。細菌抗原のこの転位がおそらくは、回腸嚢炎を生じさせる炎症性事象のカスケードのきっかけとなる。
【0031】
様々な前炎症性サイトカイン(これらには、インターロイキン−1β、TNF−α、IL−8およびIL−12が含まれる)が嚢の炎症において重要な役割を果たすようである。サイトカイン/成長因子受容体のシグナル伝達では、転写因子の活性化がシグナル伝達経路の一部として伴う。転写事象の制御が遺伝子プロモーター領域における特定の部位において及ぼされる。前炎症性転写因子STAT1(シグナル伝達・転写活性化因子)の発現および活性化における著しい増大が、炎症を起こしていない嚢粘膜および正常な手術前の回腸の両方との比較で、回腸嚢炎患者から得られた生検物において報告されている。STATタンパク質は、サイトカイン受容体および増殖因子受容体の活性化に応答してリン酸化される潜在的な細胞質転写因子である。活性化はIFN−γを伴うことがある(Kuhbacher、2001)。活性化されたSTAT1タンパク質はその位置を核内に変え、特定遺伝子の遺伝子プロモーター領域における特異的なDNA配列に結合することによって転写を増大させることができる。
【0032】
回腸嚢炎が、潰瘍性大腸炎に関連する腸管外問題(例えば、関節炎、あるいは、肝臓、皮膚または眼の異常)を有する人々ではより一般に生じる。これらの知見は、回腸嚢炎が、嚢において生じる新しいタイプのIBDであり得ることを示唆する。回腸嚢炎を有する個体の大部分がクローン病を有しない。
【0033】
回腸嚢炎を有する個体は多くの場合、抗生物質(特に、メトロニダゾールまたはシプロフロキサシン)により軽快する。このことは、細菌がこの状態の発症における重要な要因であることを示唆する。嚢の細菌フローラの研究では、細菌総数における増大、および、嫌気性細菌と好気性細菌との比率における増大が示されている(Nasmyth、1989)。回腸嚢炎における抗生物質の有益な効果から、特定されていない便中の細菌産物がこの状態を引き起こすことが示唆される。1つの候補化合物が、組織傷害を実験モデルにおいて引き起こす硫化水素(ある種の便中細菌によって産生される毒性の強いガス)である。
【0034】
回腸嚢炎のための代替治療には、局所的メサラミン(坐薬または注腸剤として)、経口コルチコステロイドおよび局所的コルチコステロイド、ならびに、免疫抑制剤(例えば、インフリキシマブなど)が含まれる。
【0035】
プロバイオティックは、動物宿主およびヒト宿主に有益な効果を及ぼす生きている微生物として定義される一群の微生物である。有益な効果には、腸内微小細菌叢の微生物バランスの改善、または、常在微小細菌叢の性質を改善することが含まれる。プロバイオティックの有益な効果は、数における減少をもたらす、特定の生物群に対する直接的な拮抗的効果によって、または、それらの代謝に対する影響によって、または、免疫性を刺激することによって媒介され得る。提案された作用の根本となるこれらの機構は、部分的には、これらの生物学的療法剤が相互作用することが予想される胃腸の生態系が複雑であることの結果として、多くが不明のままである。プロバイオティックは、抗菌性化合物を産生することによって、あるいは、栄養分または接着部位に競合することによって、望ましくない生物の生存可能な数を抑制することができる。さらに、プロバイオティックは、酵素活性を増大または低下させることによって微生物の代謝を変化させることができ、あるいは、抗体レベルを増大させるか、または、マクロファージ活性を増大させることによって免疫系を刺激することができる。プロバイオティックは、抗菌活性、免疫調節活性、抗発癌活性、止寫活性、抗アレルゲン活性および抗酸化活性を有することができる。知られているプロバイオティック菌株には、例えば、ビフィドバクテリウム属、乳酸桿菌、ラクトコッカス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス属および大腸菌が含まれる。
【0036】
胃腸内微小細菌叢のバランスが有害な影響を受ける状態では、プロバイオティックは、胃腸内微小細菌叢を回復させること、および、個体宿主が正常に戻ることを可能にすることにおいて重要となる可能性があることがこの分野では広く知られている。プロバイオティック組成物を使用する様々なGI障害の治療が、例えば、国際特許出願公開WO95/16461および同WO97/35596に開示されている。
【0037】
細菌のエンドトキシンがIBD患者の血漿において検出されており、また、異常な微小細菌叢および/または腸粘膜の透過性亢進が内毒素血症の原因であることが推測されている(Caradonna、2000)。プロバイオティックは、一般的な病原体に対する「バリア」的効果を誘導することができ、その機構には、酸(乳酸、酢酸)の排出、栄養分および腸の受容体部位についての競合、免疫調節、ならびに、特異的な抗菌剤の形成が含まれることが考えられる。
【0038】
経口プロバイオティック治療が潰瘍性大腸炎のために提案されている。その効果は、腸細胞における短鎖脂肪酸の酸化、および、酪酸により、粘膜の回復を促進させる酵素(すなわち、トランスグルタミナーゼ)が誘導され得ることに起因すると考えられている。種々のプロバイオティックの相対的な有効性は、生存、接着およびコロニー形成を含むそれらの特性に基づき得る。例えば、プロバイオティック大腸菌Nissle 1917は、潰瘍性大腸炎の寛解を維持することにおいてメサラジンと同じくらい効果的であることが示されている(Kruis、2004)。
【0039】
様々な免疫調節作用、例えば、前炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α、IFN−γ)の低下、および、調節性サイトカイン(例えば、IL−10)の分泌増加などが、プロバイオティックについての作用機構の1つとして示唆されている(Bauerle、1994)。転写因子NF−κBは、その阻害タンパク質(IκB)から離れると、核の中に位置を変え、核において、免疫学的に関連したタンパク質(例えば、TNF−α、IL−1βおよびIL−6)をコードする遺伝子を活性化する(Bauerle、1994;Baldwin、1996;Tak、2001)。NF−κBは、腸の炎症の病理発生において重要な役割を果たすと考えられる。NF−κBの前炎症性役割を裏付ける証拠が腸管炎症の動物モデルおよびIBD患者の両方からもたらされる。従って、NF−κBの阻害がIBDについての重要な治療標的として提案されていることは驚くべきことではない(Jobin、2000a;Jobin、2000b;Lee、1998;Schottelius、1999)。近年、プロバイオティックがNF−κBのシグナル伝達系を阻害し得ることが報告された(Araki、2004;Osman、2004)。
【0040】
いくつかの異なるプロバイオティック剤により、有効性の証拠がデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発による大腸炎のモデルで明らかにされている(Araki、2004;Osman、2004)。DSS誘発大腸炎の病理発生は、DSSの直接的な細胞毒性的効果に関連づけられるような、上皮バリア機能における欠如を伴う(Egger、2000;Strober、2002)。エバンスブルー色素に対する透過性によって測定されるような上皮バリア機能における変化が、DSS誘発大腸炎の経時変化の期間中の早期に見出され得る(Kitajima、1999)。結腸の粘膜バリアにおけるこの変化は続いて、様々な炎症性細胞の流入、マクロファージの活性化および前炎症性サイトカインの産生を引き起こす(Egger、2000;Strober、2002)。加えて、NF−κBのp65サブユニットの核発現が、DSS誘発大腸炎の期間中にアップレギュレーションされることが以前に示されており、腸の炎症を促進させることにおいて非常に重要な役割を果たすと考えられる(Murano、2000;Spiik、2002)。
【0041】
公開番号第20020006432号の米国特許出願(Collins他)は、ヒトにおける経口消費の後で著しく免疫調節的であると言われる、切除および洗浄されたヒト胃腸管から単離されたビフィドバクテリウム属の菌株を教示する。この菌株は、望ましくない炎症活性(特に、胃腸の炎症活性、例えば、炎症性腸疾患または過敏性腸症候群など)の予防および/または治療において有用であることが教示される。
【0042】
近年、E.coliに由来する非病原性プロバイオティック微生物の1つの種が単独で、ヒトならびに様々な哺乳動物および鳥類の正常なGI細菌叢を回復させることができることが発見された。GI管におけるこの菌種の有益な生理学的活性および治療活性が米国特許第6500423号および国際特許出願公開WO02/43649に詳しく記載される(これらは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。これらの参考文献は、大腸菌株BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))(これは、市販されているプロバイオティックE.coli M17菌株の単離菌である)が、胃腸の感染症または障害を予防または治療することにおいて、正常な胃腸微小細菌叢を維持または回復することにおいて、下痢を予防または治療することにおいて、腸内の病原体(例えば、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌など)により引き起こされる胃腸の感染症を予防または治療することにおいて、胃腸のサルモネラ感染を予防または治療することにおいて、感染性下痢(例えば、C.difficile、サルモネラ属、特に赤痢菌属、カンピロバクター属、大腸菌、プロテウス属、シュードモナス属またはクロストリジウム属により引き起こされる感染性下痢)、または、抗生物質治療、放射線療法もしくは化学療法から生じる下痢を予防または治療することにおいて、および/あるいは、胃腸管の生理学的活性を正常化させることのために非常に効果的であることを教示する。さらには、米国特許第7018629号は、菌株BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))が、GI管における微生物バランスを変化させる一方で、IBD(例えば、クローン病など)およびその関連症状を治療するために、また、小腸および近位側腸の他の特発性炎症を治療するために非常に有効であることを教示する。
【0043】
しかしながら、一部の場合には、単独でのプロバイオティック微生物の使用は、胃腸の感染症または障害のすべての症例を治療するのに十分ではない。従って、様々な腸障害(例えば、IBDおよび回腸嚢炎など)の治療に使用される組成物の改善が必要であることが広く認識されており、従って、そのような組成物を有することは非常に好都合である。
【発明の概要】
【0044】
先行技術は、非病原性細菌株と、抗生物質とを含む組成物を教示も示唆もしていない。背景技術もまた、微生物感染、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)および回腸嚢炎(これらに限定されない)をはじめとする様々な胃腸障害を治療するためのそのような組成物を教示も示唆もしていない。
【0045】
本発明の1つの局面によれば、プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む生物学的治療組成物が提供される。
【0046】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、組成物における大腸菌株の濃度は1mlのキャリアあたり約5×10コロニー形成単位〜約5×10コロニー形成単位の範囲である。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、キャリアは0.6%生理的食塩水溶液を含む。代替として、キャリアは他の低浸透圧溶液を含み、この場合、そのような低浸透圧溶液は1つまたは複数の非常に水溶性の塩を含み、(NaClの代わりに、または、NaClに加えて)使用される。
【0048】
場合により、組成物はさらに、少なくとも1つの矯味矯臭剤を含む。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、組成物は、嫌気性細菌により引き起こされる状態の治療または予防における使用のために特定される。好ましくは、組成物は包装材に包まれ、嫌気性細菌により引き起こされる状態の治療または予防における使用のために、包装材の中または表面において、印刷で特定される。
【0050】
本発明の別の局面によれば、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療または予防する方法であって、プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量とをその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0051】
本発明のさらに別の局面によれば、プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量の、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量との組み合わせでの使用であって、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療するための薬剤を製造することにおける使用が提供される。
【0052】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、抗生物質は、プロバイオティック菌株を投与する前に、または、プロバイオティック菌株を投与するのと同時に、または、プロバイオティック菌株を投与することに続いて投与される。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、プロバイオティック菌株および抗生物質は、本明細書中に記載されるように生物学的治療組成物に同時に配合される。
【0054】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本発明の組成物、使用または方法において利用される大腸菌株は、M−17およびその任意の単離菌または変異菌(例えば、大腸菌株BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799)など)、ならびに、そのナリジクス酸耐性変異誘導体(例えば、ATCC寄託番号PTA−7295の大腸菌株(M17SNAR)など)のうちの少なくとも1つである。
【0055】
記載された好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、嫌気性細菌は硫酸塩還元細菌である。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗生物質は、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、イミペネム、ナリジクス酸およびクリンダマイシンからなる群から選択される。好ましくは、大腸菌株はM17であり、抗生物質はメトロニダゾールである。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、大腸菌株および抗生物質は相乗的に作用する。
【0058】
本明細書中に記載される組成物、使用または方法は場合によりさらに、組成剤に同時配合されるか、または、E.coli菌株および抗生物質と一緒に利用されるさらなる有効成分(例えば、抗炎症薬、止寫剤、緩下薬、鎮痛剤、鉄補給剤、プロバイオティックおよび免疫抑制剤など)を含む。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の組成物、使用または方法によって治療可能な状態は、腸の障害であり、例えば、回腸嚢炎、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘液性大腸炎および下痢などである。好ましくは、そのような状態は回腸嚢炎である。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、メトロニダゾールの医薬的に効果的な量は好ましくは、1日あたり前記対象の体重1kgについて約5〜約50mgの範囲である。
【0061】
オルサラジンの医薬的に効果的な量は、利用される場合には、好ましくは、1日あたり前記対象の体重1kgについて約10〜約50mgの範囲であり、より好ましくは、1日あたり体重1kgについて約15mgである。
【0062】
本発明は、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療および予防するための組成物および方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功しており、当該組成物はプロバイオティックE.coli菌株および嫌気性細菌用抗生物質を組み合わせる。そのような治療は、有効であり、安全であり、非侵襲性であり、また、副作用がないので、そのような障害を治療する現在の方法と比較して、非常に好都合である。
【0063】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似の又は均等の方法と材料は本発明を実施又は試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法及び実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0064】
用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が追加され得ることを示す。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0065】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0066】
用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0067】
本明細書中で使用される、用語「治療する」は、状態の進行を抑止するか、または、実質的に阻害するか、または、遅くするか、または、逆戻りさせるか、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善するか、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0068】
用語「治療効果的な量」または「医薬的に効果的な量」は、有効成分が示す治療効果をもたらす、有効成分または有効成分を含有する組成物の用量を意味する。
【0069】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、1つ以上の本明細書中に記載される有効成分の調製物を意味し、医薬組成物は、化合物またはその生理学的に許容され得る塩のいずれかの本明細書中に明示される有効成分を、伝統的な薬物、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤のような他の化学的成分とともに含む。
【0070】
本明細書中で使用される、用語「医薬的に許容され得る」は、動物(より具体的にはヒト)における使用について、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、あるいは、米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。本明細書中で、表現「生理学的に好適なキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は交換可能に使用され、著しい刺激を生物に対して生じさせず、かつ、投与されたコンジュゲートの生物学的な活性および性質を阻害しない承認されたキャリアまたは希釈剤を示す。
【0071】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0072】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0073】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0074】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IL−12レベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図2】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IFN−γレベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図3】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IL−1βレベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図4】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IL−6レベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図5】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IL−10レベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図6】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける結腸IL−4レベルに対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図7】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける腸透過性試験の結果を示す棒グラフである。
【図8】DSS処置マウスおよびコントロールマウス(M−17処置およびM−17非処置)についての疾患活性指標を示す棒グラフである。
【図9】コントロールの(生理的食塩水により処置された)動物における、疾患活性指標と、腸透過性との間における相関関係を示すプロットを示す。
【図10】DSS処置マウスおよびコントロールマウス(M−17処置およびM−17非処置)における正規化された結腸透過性の値を示す棒グラフである。
【図11】コントロールとして生理的食塩水/水により処置されたマウスに対して比較される、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスにおける全体的な結腸組織学試験に対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の結果を示す棒グラフである。
【図12】生理的食塩水/水により処置されたマウス(図12A)、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウス(図12B)、M−17により処置されたマウス(図12C)、および、M−17+メトロニダゾールにより処置されたマウス(図12D)の結腸組織学試験の写真結果を示す。
【図13】DSS処置マウスにおけるLMP2のアップレギュレーションに対するM−17の効果を明らかにするウエスタンブロット分析を示す。
【図14】DSS処置マウスにおけるLMP2のアップレギュレーションに対するM−17の効果を明らかにする結腸ウエスタンブロット分析を示す棒グラフである。
【図15】水が13日間与えられたマウス(図15A)、または、DSSが13日間与えられたマウス(図15B)におけるマウスの結腸p65発現に対するM−17の効果を明らかにするウエスタンブロット分析を示す。
【図16a】NF−κB受容体遺伝子アッセイにおけるM−17の効果の試験の結果を、様々な濃度のM−17において示す棒グラフである。
【図16b】NF−κB受容体遺伝子アッセイにおけるM−17の効果の試験の結果を、陰性(非TNF)コントロールに関して示す棒グラフである。
【図17】活性化マクロファージによるサイトカイン分泌の概略図を示す。
【図18】様々なE.coli菌株の存在下および非存在下での、LPSまたは生理的食塩水にさらされたマクロファージにおけるIL−1βレベルを示す棒ブラフである。
【図19】様々なE.coli菌株の存在下および非存在下での、LPSまたは生理的食塩水にさらされたマクロファージにおけるTNF−αレベルを示す棒ブラフである。
【図20】M−17の存在下および非存在下での、LPSまたは生理的食塩水にさらされたマクロファージにおけるIL−6レベルを示す棒ブラフである。
【図21a】TNF−αの分泌に対する、M−17、M−17馴化培地(CM)および熱殺傷M−17の効果を示す棒グラフである。
【図21b】IL−1βの分泌に対する、M−17、M−17馴化培地(CM)および熱殺傷M−17の効果を示す棒グラフである。
【図21c】IL−6の分泌に対する、M−17、M−17馴化培地(CM)および熱殺傷M−17の効果を示す棒グラフである。
【図22】LPSまたは生理的食塩水ビヒクルにさらされたマクロファージにおけるNF−κB p65に対するM−17の効果を、p65の結合を阻止する野生型オリゴヌクレオチドをコントロールとして使用して示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明は、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療または予防することにおいて効率的に使用することができる、プロバイオティック細菌株と、このプロバイオティック細菌株が耐性である抗生物質とを含有する新規な生物学的治療組成物に関する。具体的には、本発明は、プロバイオティック大腸菌株と、嫌気性細菌用抗生物質(例えば、メトロニダゾールなど)とを含む新規な生物学的治療組成物、および、胃腸障害(例えば、回腸嚢炎など)の治療におけるその使用に関する。
【0077】
本発明による生物学的治療組成物および方法の原理および作用は、図面および付随する説明を参照してより十分に理解することができる。
【0078】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0079】
本明細書中上記で議論されたように、正常な、健康な胃腸管には、微妙な関係が、主として嫌気性生物(通性嫌気性生物および偏性嫌気性生物の両方)を含む腸内微小細菌叢と、宿主との間に存在する。
【0080】
胃腸管の微小細菌叢のバランスが有害な影響を受ける状態のもとでは、GI管において通常見出されるプロバイオティック生物を導入することによる正常なミクロバランスの回復が有益な効果を有することが見出されている。
【0081】
本明細書中上記で議論されたように、E.coli細菌はヒトの胃腸管における通常のコロニストである。E.coliに由来する非病原性プロバイオティク微生物が、ヒトを含めて、多様な様々な哺乳動物の正常な胃腸細菌叢を回復することにおいて特に有用であることが見出されている。
【0082】
嫌気性細菌に対して効果的である様々な抗生物質が、胃腸管の嫌気性菌感染症を治療するために使用されている。これらには、例えば、メトロニダゾール、クリンダマイシン、トブラマイシンおよびシプロフロキサシンが含まれる。しかしながら、多くの嫌気性細菌用抗生物質(例えば、シプロフロキサシンなど)は、望ましくない細菌を死滅させることにおけるそれらの有益な効果に加えて、胃腸管に生まれながらに存在するプロバイオティック細菌、および、微生物の不均衡を回復させるために投与されるプロバイオティック細菌を含めて、様々なプロバイオティック細菌に対してもまた作用することが見出されている。従って、投与されたE.coli菌株の有益なプロバイオティック効果は、そのような菌株が嫌気性用抗生物質と一緒に投与されるときには失われ、これにより、いずれかの成分の単独での使用を上回る追加利点がほとんどもたらされないか、または、全くもたらされない。
【0083】
本発明を着想しているとき、本発明者らは、特定のプロバイオティック菌株と、この菌株が耐性である嫌気性細菌用抗生物質とを選択することによって、非常に効果的な新規な生物学的治療組成物が提供され得ることを仮定している。そのような組み合わせの使用は先行技術によって教示も示唆もされていない。
【0084】
プロバイオティック大腸菌株と、この大腸菌株が耐性である嫌気性細菌用抗生物質とを含む生物学的治療組成物が、嫌気性細菌により引き起こされる様々な状態の治療において、特に、胃腸管の様々な状態(例えば、回腸嚢炎など)の治療において特に効果的であることがさらに仮定された。
【0085】
微生物の抗生物質に対する耐性の発現は、抗生物質と、標的分子との間における相互作用の改変または除去、あるいは、この相互作用を防止するか、または解消するための、標的分子の変化または調節を伴い得る。細菌は、耐性を下記の3つの様式のいずれかで与える遺伝子を獲得する:自然発生的なDNA変異によって(これは、抗生物質−標的の相互作用を媒介する分子の転写低下をもたらし、それにより、抗生物質の細胞内における有効性を低下させる);形質転換によって(この場合、1つの細菌がDNAを別の細菌から取り込む);および、プラスミド伝達によって。胃腸管に存在する細菌ミクロコスムは、正常な腸内細菌叢がそのような耐性形質のためのレザバーとして作用することにより、抗生物質耐性遺伝子の伝達のための素晴らしい機会を提供する。生来的なE.coliは、抗生物質の圧力にさらされない場合、すべての抗生物質および他の抗菌剤に対して完全に感受性である傾向を有している。しかし、そのような物質にさらされると、耐性の発達が引き起こされる。プラスミド媒介による耐性と、染色体により決定される耐性との両方が記載されている。腸内細菌科の大腸菌、赤痢菌属、サルモネラ属および他の細菌における染色体の調節遺伝子座が、構造的に異なる様々な抗生物質(テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、ペニシリン系、ナリジクス酸、フルオロキノロン系など)および消毒薬(トリクロサン、第四級アンモニウム化合物)に対する感受性の内在的レベルを同時に制御する。
【0086】
本発明者らは、驚くべきことに、ある種のE.coliと、嫌気性細菌用抗生物質との組み合わせが相乗的な効果をもたらし、その結果、いずれかの成分の単独による治療に対して比較して著しく大きい有効性がもたらされることを見出している。
【0087】
従って、本発明の1つの局面によれば、プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む生物学的治療組成物が提供される。
【0088】
本明細書中で使用される用語「プロバイオティック」は、少なくとも1つの病原体の成長を阻害する性質を有する単離された細菌を表す。阻害は、この分野で知られている任意の方法によって試験することができ、例えば、固体培地でのインビトロ試験(この場合、候補の単離された細菌の培養上清が固体培地の表面に塗布されたとき、病原体の成長を阻害するそれらの性質について観察される)などによって試験することができる。典型的には、候補のプロバイオティック菌株の培養上清を含浸させたペーパーディスクが、病原体が播種された寒天平板の表面に置かれる。プロバイオティック細菌の上清は、ディスクの近くにおける病原体の阻害を示す透明な寒天の輪、または、低下した成長密度の輪を生じさせる。阻害についての他の様々な試験が利用可能であり、または、考案され得る。これらには、本明細書中に記載されるパネルと類似するプロバイオティック細菌のパネルをもたらし得る直接的な成長競合試験(インビトロまたはインビボ)が含まれる。
【0089】
本明細書中上記で議論されたように、ATCC寄託番号202226(DSM12799)によって同定される大腸菌株(これは、市販されているプロバイオティックE.coli M−17菌株の単離菌である)が、広範囲の様々な胃腸感染症または胃腸障害を予防または治療することにおいて、および、正常な胃腸微小細菌叢を維持または回復することにおいて、および/あるいは、胃腸管の生理学的活性を正常化することにおいて非常に効果的であることが以前に見出されている。この菌株によって治療可能な状態には、例えば、炎症性腸疾患(例えば、クローン病など)およびその関連症状、ならびに、小腸および近位側腸の特発性炎症が含まれる。従って、本発明の教示に従って使用される好ましいプロバイオティックE.coli菌株には、プロバイオティック活性を及ぼす非病原性E.coli菌株が含まれることが考慮される。現時点で最も好ましいプロバイオティックE.coli菌株は、その亜系を含めて、M−17菌株である。M−17菌株の例には、BU−239、BU−230−98、BU−230−01、BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))、および/または、E.coli M−17菌株のナリジクス酸耐性変異誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
そのようなM−17ナリジクス酸耐性菌株(例えば、ATCC寄託番号PTA−7295で寄託された菌株)は、本明細書中ではM17SNARとしてもまた示され、BU−230−98菌株をスクロースおよびナリジクス酸において成長させることによって得られる変異誘導体菌株である。多くの他のE.coli菌株とは異なって、M−17菌株はスクロース耐性であり、得られた菌株はまた、ナリジクス酸に対して耐性であり、従って、M17SNAR(スクロース・ナリジクス酸耐性)として示される。この菌株からのDNAが単離されており、ゲノムがミネソタ大学(Biomedical Genomics Center)で配列決定されている。M17SNAR菌株の様々な特徴および活性に関するさらなる情報が米国仮特許出願第60/801098号に開示される(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0091】
本明細書中で使用される用語「嫌気性細菌」は、成長のために酸素の存在を必要としない細菌を示す。これらには、偏性嫌気性菌、すなわち、酸素の非存在下でのみ生存することができる嫌気性菌、および、通性嫌気性菌、すなわち、酸素の存在下または非存在下で生存することができる嫌気性菌の両方が含まれる。
【0092】
好ましくは、本発明の抗生物質が効果的である細菌は硫酸塩還元細菌である。硫酸塩還元細菌は嫌気性の原核生物であり、これは正常な腸内微生物相のメンバーであり、哺乳動物の結腸において生じる最後の発酵プロセスに対する大きな効果を有する。これらの細菌によって使用される代謝経路は、硫酸塩イオン(SO−2)の、非常に反応性で、毒性の最終生成物である硫化物(S−2)への変換をもたらし、このとき、炭素源が、小さい有機分子(例えば、乳酸、ピルビン酸、酢酸、ならびに、例が少ないが、同様に、アルカンおよび芳香族化合物)の形態ではあるが、同時に酸化される。腸内の硫酸塩は、外因性供給源(すなわち、飲料水および食事成分における硫酸塩)または内因性供給源(例えば、硫酸化ムチン(スルホムチン)、硫酸抱合胆汁およびコンドロイチン硫酸など)のいずれかに由来し得る。
【0093】
硫化水素は結腸上皮細胞によるn−酪酸の酸化を選択的に障害する。結腸細胞における膜脂質生合成、イオン吸収、ムチン生合成および解毒のプロセスはn−酪酸の酸化に依存するので、低下したn−酪酸代謝は、上皮細胞バリアを損傷する可能性がある。上皮バリア機能の硫化物誘導による損傷は細菌抗原および食物抗原の転位置を促進し、これにより、通常の場合には良性の抗原に対する局所的な炎症性応答(IBDの組織病理学的特徴と一致する結果)をもたらす。HSに長期間さらされることによっても、腸における上皮再生の正常なサイクルが乱れるかもしれず、それにより、増殖性障害(例えば、結腸癌など)に罹りやすくなる。
【0094】
本発明の抗生物質は、組成物の大腸菌株が耐性である任意の嫌気性細菌用抗生物質であり得る(例えば、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、イミペネム、ナリジクス酸およびクリンダマイシンなど)。
【0095】
最も好ましくは、抗生物質は、下記の構造式を有するメトロニダゾール(1−(β−ヒドロキシエチル)−2−メチル−5−ニトロイミダゾール)である:

【0096】
メトロニダゾールは、DNA合成を阻害することによって作用する。メトロニダゾールは、殺アメーバ性、殺トリコモナス性および殺菌性である。この抗生物質は不活性な形態で投与され、拡散によって細胞内に入る。メトロニダゾールは腸内細菌(特に、嫌気性菌)によってニトロ基が還元される。反応性中間体がそれにより形成され、これが感受性細菌細胞における重要な部位に結合し、その後、DNAを破壊し、また、その生合成を阻害する。
【0097】
メトロニダゾール耐性は、ヒドロゲノソームに局在化する還元活性に関与するタンパク質の1つの低下した転写に起因すると考えられている。還元された基質が無酸素性細胞または低酸素性細胞に影響を及ぼし、これにより、DNAのらせん構造の喪失、鎖破断、および、細胞機能の障害が引き起こされる。
【0098】
メトロニダゾールの活性スペクトルには、嫌気性グラム陰性桿菌(これには、ほとんどのバクテロイデス属種、フゾバクテリウム属およびベイヨネラ(Veillonella)属が含まれる)、嫌気性グラム陽性球菌(これには、クロストリジウム属、ユーバクテリウム属、ペプトコッカス属およびペプトストレプトコッカス属が含まれる)が含まれる。メトロニダゾールはまた、H.pylori、G.vaginalis、ならびに、原生動物のE.histolytica、T.vaginalisおよびG.lambliaに対して活性である。メトロニダゾールは、主としてE.histolyticaの栄養体形態に対して作用し、被嚢形態に対しては限定された活性を有する。メトロニダゾールは真菌またはウイルスに対して活性を有しない。
【0099】
メトロニダゾールは現在、様々な嫌気性菌感染症(例えば、腹部感染症、皮膚および組織の感染症、骨および関節の感染症、婦人科学的感染症、ならびに、呼吸器感染症など)を、主として、嫌気性細菌の細胞を通常の場合には修復するDNA修復酵素の阻害によって治療するために適用される。メトロニダゾールは、クローン病に伴うフィステルを、フィステルに含有される便に存在する細菌を殺すことによって治癒することを助けることができる。メトロニダゾールはまた、癌のための放射線療法において使用され、これは、このDNA作用が嫌気性腫瘍組織を放射線に対して感受性にすることができ、これにより、少ない放射線量で効果を高めるからである。メトロニダゾールはまた、抗炎症性を大腸において有しており、非常に効果的な止寫薬である。
【0100】
選択された菌株を、その菌株が耐性である抗生物質と一緒に使用することにより、これらの成分のそれぞれが、治療されている状態に対する有益な効果を及ぼすことが可能になる。これは付加的な効果であり得、その結果、プロバイオティックの効果が抗生物質の効果に加えて及ぼされる。好ましくは、組成物の大腸菌株および抗生物質は相乗的効果をもたらす。
【0101】
本明細書中で使用される場合、2つ以上の個々の成分によってもたらされる効果に関する「相乗作用」または「相乗的効果」は、組み合わせで利用されたとき、これらの成分によってもたらされる全体的な効果が、それぞれの化合物が単独で作用する個々の効果の和よりも大きい現象を示す。
【0102】
下記の実施例の節の実施例3(表7)に示されるように、急性期DSS大腸炎モデルの測定されたパラメーターに対する、抗生物質メトロニダゾールおよびプロバイオティックM−17菌株を組み合わせた処置の効果(例えば、IL−12、IL−6、IL−1βおよびIFN−γの結腸レベル、ならびに、DAI、結腸長さ、結腸重量、MPO活性および結腸の組織学的スコアにおける変化など)は、単独でのいずれかの処置により観測される効果よりも大きかった。このことは、この組み合わせた処置の相乗的効果を示している。
【0103】
抗生物質に対するプロバイオティック菌株の耐性は、この分野で知られている任意の方法によって求めることができ、例えば、実施例6に関して下記の実施例の節に記載されるKirby−Bauerディスク拡散法などによって求めることができる。
【0104】
本明細書中で使用される「生物学的治療組成物」は、治療特性を有する微生物を含む調製物を示す。そのような微生物は好ましくは、無害で、多数の機能によって病原体に対して作用し(従って、耐性の発現を最小限に抑え)、また、宿主防御を、侵入している病原体を死滅させるために結集しなければならない。さらなる望ましい特性が作用の即時開始である。生物学的治療組成物における使用のために好適な微生物には、酵母および細菌の単離菌が含まれる。
【0105】
用語「医薬的に効果的な量」は、プロバイオティックE.coli菌株のそのような量、あるいは、治療または予防されている状態の症状の1つまたは複数を少なくともある程度、緩和または防止する抗生物質のそのような量を示す。
【0106】
メトロニダゾールは、ヒトにおける回腸嚢炎を治療することにおいて、1日あたり約1.2グラムの用量(Maddenら、1994)または1日あたり約20mg/kgの用量(Shenら、2001)で効果的であることが報告されている。これらは、マウスにおいて効果的であることが見出された、体重1kgあたりのmgで表される等価濃度のおよそ半分である。
【0107】
従って、本発明の実施形態の関連で使用される抗生物質の医薬的に効果的な量は、抗生物質がメトロニダゾールである場合には、好ましくは、1日量として、対象の体重1kgあたり約5mgから、対象の体重1kgあたり約50mgまでの範囲であり、より好ましくは、1日につき、対象の体重1kgあたり約10mgから、対象の体重1kgあたり約30mgまでの範囲であり、最も好ましくは、対象の体重1kgあたり約20mgである。従って、例えば、体重がおよそ70kgである成人には、好ましくは、約1.4グラムの抗生物質が毎日与えられる。これを1日1回投与とすることができ、あるいは、数回に分割投与することができる(例えば、約700ミリグラムを1日に2回、約450ミリグラムを1日に3回、または、約350ミリグラムを1日に4回など)。
【0108】
メトロニダゾールは経口投与または静脈内投与のいずれかで投与することができる。従って、例えば、この抗生物質は場合により、好ましくは約5ml/kgの体積で、注射または注入によって、例えば、静脈内点滴注入などによって投与することができる。従って、70kgの個体には、好ましくは、合計で約350mlのメトロニダゾール溶液が1日あたり与えられる。従って、例えば、注入用メトロニダゾールは場合により、700mgのメトロニダゾールが注射用水に溶解された、無菌で、非発熱性で、等浸透圧の緩衝化された溶液を含む、100mlの単回用量プラスチック容器での、すぐに使用できる形態で提供することができる。必要に応じて使用される賦形剤には、例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびクエン酸が含まれる。メトロニダゾールは場合により、750mg、450mgまたは350mgのメトロニダゾールに等しい無菌の非発熱性メトロニダゾールHClと、マンニトールとを含有する単回用量バイアルとして、凍結乾燥された形態で供給することができる。注入については、メトロニダゾールは、好ましくは、約5ml/分の速度で約20分の注入期間にわたって投与される。
【0109】
代替として、メトロニダゾールは、例えば、750mgのメトロニダゾールを含有する錠剤の形態で経口投与することができる。不活性成分には、例えば、セルロース、FD&C Blue No.2 Lake、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ステアリン酸および二酸化チタンが含まれる。
【0110】
本発明の組成物および方法はさらに、抗炎症薬(例えば、オルサラジンなど)を含むことができる。本明細書中上記の背景の節で議論されたように、様々な抗炎症薬(例えば、オルサラジンなど)が、様々なIBD(例えば、潰瘍性大腸炎など)の治療のために一般に使用される。従って、そのような抗炎症薬をさらに含む組成物の使用は潰瘍性大腸炎の治療において有用であり、一方で、潰瘍性大腸炎の合併症として生じる回腸嚢炎の発現をさらに防止する。
【0111】
オルサラジンを抗炎症薬として含む組成物および方法について、医薬的に効果的な量は、好ましくは、1日量として、対象の体重1kgあたり約10mgから、対象の体重1kgあたり約50mgまでの範囲であり、より好ましくは、1日につき、対象の体重1kgあたり約10mgから、対象の体重1kgあたり約35mgまでの範囲であり、最も好ましくは、対象の体重1kgあたり約15mgである。従って、例えば、体重がおよそ70kgである成人には、好ましくは、約1グラムのオルサラジンが毎日与えられる。これを1日1回の投与とすることができ、あるいは、数回に分割投与することができる(例えば、約250ミリグラムを1日に4回、1日に6回、1日に8回、1日に10回、または、1日に12回など)。オルサラジンの一般的な投薬量および単位用量物の参考が、例えば、Wolf and Lashner(2002)に見出され得る。
【0112】
オルサラジンは好ましくは、例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与される。従って、例えば、オルサラジンは場合により、例えば、1カプセルあたり250mgのオルサラジンナトリウムを含有するハードゼラチンカプセルの形態で経口投与することができる。カプセルはさらに、必要に応じて使用される賦形剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)を含むことができる。
【0113】
本発明の実施形態のプロバイオティック菌株の、コロニー形成単位での生菌数は、胃腸管に到達したとき、生物学的効果を及ぼすために十分でなければならない。従って、本発明の実施形態に従って組成物において利用されるキャリアは、好ましくは、微生物の生存能力を、室温において、および/または、冷凍されたときにおいて、長期間にわたって維持するように、また、生存可能な生物を胃腸管に送達することを可能にするように選択されなければならない。
【0114】
従って、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激作用を引き起こさず、投与された有効成分の生物学的活性および生物学的特性を無効にしないキャリアまたは希釈剤を示す。
【0115】
従って、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に加えられる不活性な物質を示す。
【0116】
本発明の実施形態の生物学的治療組成物は好ましくは液体配合物であり、しかしながら、凍結乾燥された配合物もまた使用することができる。凍結乾燥された配合物が使用される場合、好都合には、生物の生存能力を確保するために、好適なpHでの緩衝液において再構成が行われる。
【0117】
本発明の実施形態のプロバイオティック菌株を液体配合物で配合することは非常に好都合である。生物学的に活性な条件のもとにあるので、配合物は、生細菌のための支持媒体としてもまた役立つ。結果として、本発明の実施形態の液体配合物は、例えば、腸におけるバイオマス生成を全く必要としないので、経口投与後直ちに、治療的に活性である。
【0118】
プロバイオティックE.coli菌株の液体配合物は、本発明の実施形態によれば、典型的には、水溶液における細菌の懸濁物を含む。そのような水溶液は、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、典型的には、主として、蒸留水、等張性量での塩から構成され、また、他の成分をさらに含むことができる。より好ましくは、キャリアは0.6%生理的食塩水溶液である。
【0119】
E.coliの医薬的に効果的な量は、本発明の実施形態の組成物または方法によれば、好ましくは、投与あたり約10個〜約1012個の生細菌の間の範囲であり、より好ましくは、投与あたり約10個〜約1011個の生細菌の間の範囲であり、より好ましくは、投与あたり約10個〜約1011個の生細菌の間の範囲であり、最も好ましくは、投与あたり約5×10個の生細菌である。
【0120】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0121】
薬物の配合および投与のための技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0122】
本実施形態の生物学的治療組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来の手段によって製造することができる。
【0123】
従って、本実施形態に従って使用される生物学的治療組成物は、医薬品として使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。
【0124】
経口投与の場合、E.Coli株および抗生物質は、本明細書中に記載される医薬的に受容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、有効成分は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容され得るポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0125】
糖衣錠コアには、好適な被覆が施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、有効成分の量を明らかにするために、または有効成分の量の種々の組み合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠被覆に添加され得る。
【0126】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0127】
当然のことながら、本発明の実施形態の組成物は、腸溶性被覆された徐放性のカプセルまたは錠剤に被包化され得る。腸溶性被覆は、カプセル/錠剤が胃腸管を通過するとき、小腸に到達するときまで無傷のままであること(すなわち、溶解されないままであること)が可能になる。
【0128】
生きている細菌細胞をカプセル化する様々な方法がこの分野では広く知られている(例えば、General Mills Inc.の米国特許、例えば、米国特許第6723358号などを参照)。例えば、アルギン酸塩およびHi−Maize(商標)デンプンを用いてマイクロカプセル化し、その後、凍結乾燥することが、乳製品における細菌細胞の寿命期間を延ばすことにおいて成功したことが判明している[例えば、Kailasapathy et al,Curr Issues Intest Microbiol.、2002(Sep)、3(2):39〜48を参照]。代替として、生存可能なプロバイオティックをゴマ油エマルションに封入することもまた使用することができる[例えば、Hou et al,J.Dairy Sci.、86:424〜428を参照]。
【0129】
代替として、E.coli菌株を、好適なビヒクル(例えば、無菌で、パイロジェン非含有の水または生理的食塩水)により使用前に構成するための乾燥状態の粉末形態にすることができる。
【0130】
本発明の実施形態に関連して使用される液体配合物は好ましくは経口投与され、そのようなものとして、本発明の実施形態に関連して使用される液体配合物は好ましくは、1つまたは複数の矯味矯臭剤をさらに含む。
【0131】
矯味矯臭剤は、任意の知られている、食品用添加物、例えば、チョコレート・ファッジ香料(これは、Noville Essential Oil Col.(North Bergen、N.J.07047)から入手可能である)およびBase Strawberry(カタログ番号10333−33、v Givaudan Dubendorf Ltd.、Dubendorf、スイス CH−8600)など、ならびに、the Fragrance Instituteまたは他の規制当局により承認された他の矯味矯臭剤が可能である。矯味矯臭剤は場合により、甘味剤であることが可能であり、例えば、スクロース、コーンシロップ、サッカリンおよびアスパルテームなどが可能であり、しかし、これらに限定されない。
【0132】
プロバイオティックE.coli菌株と、抗生物質との液体配合物の代表的な一例は、0.6%の塩化ナトリウム(生理的食塩水)および0.1%の矯味矯臭剤(例えば、Base Strawberryなど)を含む蒸留水溶液におけるプロバイオティック菌株の懸濁物を含む。当然のことながら、塩化ナトリウムが、液体を細菌細胞に対して等張性の配合物で維持するために主として使用され、従って、塩化ナトリウムは等張性等価量の他の非常に水溶性の塩によって置き換えられ得る。
【0133】
本発明の液体配合物は場合により、塩と同様に、植物抽出物の1つまたは複数の揮発性分画物をさらに含むことができる。好ましい揮発性分画物は、本発明によれば、植物材料の水抽出物を最初に得ること、および、その後、植物抽出物を、大気圧よりも低い圧力で、38℃を越えない温度で水蒸気蒸留することによって調製される。そのような揮発性分画物およびその調製の詳細な記述が国際特許出願公開WO02/43649に見出される(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0134】
本発明の液体配合物における、本明細書中上記で記載されるように調製される植物抽出物の揮発性分画物の使用は、これらの揮発性分画物が、微生物の生存能力を、室温において、および/または、冷凍されたときにおいて、長期間にわたって維持することが知られているので特に好都合である。従って、プロバイオティックE.coli菌株および植物抽出物の揮発性分画物を含む液体配合物は標準的な条件のもとで長期間にわたって保存することができ、従って、長い貯蔵寿命を有する。揮発性分画物はさらに、矯味矯臭剤として役立ち得る。加えて、本明細書中に記載される揮発性分画物は、様々な消化管障害に関して、基本的に、治療活性を有することが国際特許出願公開WO02/43649において示される。
【0135】
本発明の実施形態の組成物は場合により、有益な治療的効果を有し得る1つまたは複数のさらなる有効成分(例えば、抗炎症薬、免疫調節剤、抗生物質、止寫薬、緩下剤、鎮痛剤、鉄補給剤、または、さらなるプロバイオティック菌株など)をさらに含むことができる。本発明の実施形態のこの関連において有益に使用することができる例示的な有効成分には、限定されないが、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド系抗炎症薬(例えば、コルチコステロイドなど)、止寫薬、緩下剤、鎮痛剤、鉄補給剤、さらなるプロバイオティック、および、免疫抑制医薬品が含まれるが、さらなるプロバイオティックおよび止寫薬が好ましい。
【0136】
好適な抗炎症剤の非限定的な例には、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、CP−14,304、サリチル酸系(例えば、スルファラジン、オルサラジン、メサラミン、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサール)、酢酸誘導体(例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラク)、フェナム酸系(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニク)、ピロゾール系(例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾン)が含まれる。
【0137】
好適なコルチコステロイドの例には、限定されないが、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルアンドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアンドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、および、これらの混合物が含まれる。
【0138】
好適なさらなるプロバイオティックの例には、限定されないが、ビフィドバクテリウム属(例えば、B.bifidum、B.longum、B.infantis、B.breve、B.adolescentisなど)、ラクトバチルス属(例えば、L.acidophilus、L.plantarum、L.casei、L.salivarius、L.brevis、L.fermentum、L.helveticus、L.delbruekiiなど)、ラクトコッカス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス・サーモフィルス、エンテロコッカス属、大腸菌、Pediococcus acidilactici、Propionibacterium freudenreichiiが含まれる。
【0139】
好適な止寫薬の例には、例えば、腸運動抑制剤(これは、便が腸を通過することを遅くする)(例えば、ロペラミド、塩酸ジフェノキシレート塩および塩酸ジフェノキシンなど)、吸着剤(例えば、アタパルジャイト、カルシウムポリカルボフィルなど)、および、抗分泌性薬剤(これは腸内への流体の分泌を低下させる)(例えば、次サリチル酸ビスマスなど)が含まれる。
【0140】
好適な緩下剤の例には、例えば、浸透圧性緩下剤(例えば、クエン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびリン酸ナトリウムなど)、膨張性緩下剤(例えば、オオバコの皮、メチルセルロースおよびポリカルボフィルなど)、潤滑性緩下剤(例えば、鉱油など)、便軟化剤(例えば、ドキュセートなど)、および、刺激性緩下剤(例えば、ビサコジル、センナおよびカサントラノールなど)が含まれる。
【0141】
好適な鎮痛剤の例には、例えば、非ステロイド系炎症薬(例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムおよびCP−14,304など;サリチル酸系、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサールなど;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラクなど;フェナム酸系、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸など;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニクなど;ピロゾール系、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンなど);または麻酔薬(例えば、モルフィン、コデイン、テバイン、ジアモルフィン、トラマドール、ブプレノルフィン、ペチジン、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフィン、ニコモルフィン、メタドン、酢酸レボメタジル塩酸塩、ペチジン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ケトベミドン、カルフェンタニル、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、ベジトラミド、ピリトラミド、ペントゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、デキソシン、エトルフィン、チリジン、トラマドール、ロペラミド、およびジフェノキシレートなど)が含まれる。
【0142】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0143】
本明細書に記載される生物学的治療組成物は、好ましくは、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得る包装材(例えば、FDA承認キットなど)で与えられる。包装材は、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイル(例えば、ブリスターパックなど)を含むことができる。
【0144】
生物学的治療組成物は、嫌気性細菌により引き起こされる状態の治療または予防における使用のために、包装材の表面または中において、印刷で特定される。包装材には、投与のための指示が付随し得る。包装材にはまた、薬剤の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式での通知が容器に付され得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態、または、ヒトもしくは動物への投与の、当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬および非処方薬についての米国食品医薬品局によって承認された表示であり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。
【0145】
本発明の実施形態の組成物は、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療および予防するために特に効果的である。実施例3に記載されるように、また、下記の表7において明らかにされるように、相乗的効果が、メトロニダゾールおよびM−17を組み合わせた投与により得られ、これは単独でのいずれかの処置の効果よりも著しく大きかった。
【0146】
従って、本発明の別の局面によれば、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療または予防する方法が提供される。この方法は、本明細書中に記載されるようなプロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、本明細書中に記載されるような、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量とをその必要性のある対象に投与することによって行われる。
【0147】
嫌気性細菌用抗生物質およびプロバイオティック菌株は、個々の配合物として、同時または連続的(この場合、抗生物質が、プロバイオティック大腸菌株の前に、または、プロバイオティック大腸菌株と同時に、または、プロバイオティック大腸菌株に続いて投与される)でのいずれかで投与することができる。
【0148】
場合により、また、好ましくは、嫌気性細菌用抗生物質はプロバイオティック菌株とともに、本明細書中に記載されるように、生物学的治療組成物の一部を形成する。
【0149】
本発明の組成物および方法によって治療可能である、嫌気性細菌により引き起こされる状態には、様々な腸障害が含まれ、例えば、回腸嚢炎、微生物感染、胃腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、顕微鏡的大腸炎およびコラーゲン蓄積大腸など)、大腸炎の他のタイプ(粘液性大腸炎、肉芽腫性大腸炎、虚血性大腸炎、放射線大腸炎または感染性大腸炎を含む)、下痢、便秘、結腸直腸癌、腹膜炎、腹腔内膿瘍、過敏性腸症候群、小腸細菌過剰増殖、十二指腸炎、空腸炎、直腸炎および肝膿瘍などが含まれる。
【0150】
本明細書中に示される組成物および方法は、結腸切除手術のときに遠位側小腸から作製されるレザバーにおける炎症である回腸嚢炎の治療において特に有用である。
【0151】
本明細書中上記の背景の節で詳しく記載されたように、回腸嚢炎の原因は不明である。しかし、腸において通常の場合に見出される細菌の低いレベル、および、硫酸塩還元細菌による嚢でのコロニー形成に関係づけられている。従って、回腸嚢炎および関連した状態を嫌気性細菌用抗生物質によって治療可能であり得る。
【0152】
矛盾する報告が、回腸嚢炎の治療におけるメトロニダゾールの有効性に関して発表されている。一部の患者がメトロニダゾールに応答しないという観察結果に基づいて、少なくとも2つの形態の回腸嚢炎、すなわち、抗生物質に対して応答する細菌学的な回腸嚢炎と、他の薬剤を必要とする抗生物質不応性形態とが存在することが示唆されている。
【0153】
メトロニダゾールの実際の作用機序は確定していない。メトロニダゾールが、抗菌的作用によるのではなく、むしろ、酸素ラジカルを除くことができるその能力によって、または、免疫抑制活性のために回腸嚢炎に効果を及ぼすことが示唆されている(Levin、1992)。
【0154】
すべての形態の回腸嚢炎を治療することにおけるメトロニダゾールおよびプロバイオティックの使用は以前には開示されていない。
【0155】
十分に確立された回腸嚢炎の動物モデルが現在は存在しない(Chen、2002)。従って、プロバイオティックは典型的には、IBDの動物モデルにおいて有効性について試験されている。実験的腸炎症のための動物モデルは自然発症モデルおよび誘導型モデルに分類することができ、それらのすべてが、急性炎症および慢性炎症の試験に使用される。最も広く使用されているモデルは、毒性化学物質(例えば、酢酸、ホルマリン、インドメタシン、トリニトロベンゼンスルホン酸など)または多糖(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム、カラギーナンなど)、あるいは、免疫複合体を投与することによって誘導される。毒性化学物質モデルでは、急性の結腸傷害が、結腸の上皮傷害、それに続いて、顆粒球および単球またはマクロファージの急速な流入(これらは急性の腸炎症の典型的特徴を規定する)を生じさせることができる物質の結腸内投与の後で誘導される。
【0156】
潰瘍性大腸炎(UC)および回腸嚢炎のための様々な治療の有効性を動物モデルにおいて評価するために、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデル(Okayasu、1990)が炎症性腸疾患のための動物モデルとして選択された。Sprague−Dawleyラットにおける実験的DSS大腸炎は、非常に再現的であること、また、ほとんどの特徴を、構造的観点および臨床的観点からだけではなく、超微細構造的観点からも、ヒトの潰瘍性大腸炎と共通して有することが示されている(Gaudio、1999)。齧歯類のDSS誘発大腸炎は、最初の急性結腸傷害、それに続く、飲料水でのDSSの投与を止めた後での遅い結腸再生および合併する慢性的結腸炎を特徴とする。このモデルの活性な形態は、非炎症性の上皮損傷が、おそらくは、結腸の上皮細胞に対するDSSの直接的な毒性的影響(仮定によりUCによってもまた共有される病原的特徴)の結果として先行する。
【0157】
急性大腸炎を発症したマウスは、下痢、肉眼的直腸出血および体重減少の徴候を示した。検死のときに、多数のびらんおよび炎症性変化(陰窩膿瘍を含む)が大腸の左側に見出された。急性期の細胞浸潤物が粘膜固有層に限定され、傷害が粘膜および粘膜固有層に限定される。
【0158】
慢性的大腸炎を発症したマウスは、びらん、結腸粘膜の顕著な再生(形成異常、大腸の短縮化、および、リンパ濾胞の高頻度形成を含む)の徴候を示した。腸内微小細菌叢のBacteroides distasonisおよびクロストリジウム属の集団が、急性および慢性潰瘍性大腸炎を有するマウスにおいて著しく増大した。形態学的試験では、投与されたDSSが結腸粘膜においてマクロファージによって部分的に貪食されたことが示唆された。従って、このモデルは、結腸の病変を予防または治療するための薬物の有効性を確認するのに適当であると考えられる。
【0159】
本発明者らによる予備的試験では、2%DSSをC57BL/6マウスに6日間投与することにより、著しい死亡率を伴うことなく、大腸炎が生じることが示唆された。いくつかのプロバイオティック剤により、いくらかの有効性がこのモデルにおいて以前に明らかにされている。これらには、腸間膜リンパ節への細菌の転位置および肝臓への腸内細菌科細菌の転位置の両方を、大腸炎コントロールと比較して、処置群において引き起こすことが示されたラクトバチルス属およびビフィドバクテリウム属が含まれる。正の相関関係が、結腸の炎症の重症度と、細菌の転位置の範囲との間において明らかにされている(Araki、2004;Osman、2004;Araki、2000)。感染性大腸炎および抗生物質関連下痢におけるプロバイオティックの有効性が、種々の臨床試験において、同様にまた、大腸炎をIL−10欠損マウスで防止することにおいて示されている。
【0160】
この急性DSS誘発大腸炎モデルを使用して、大腸菌株M−17の有効性および抗生物質メトロニダゾールの有効性、ならびに、メトロニダゾールおよびM−17の組み合わせの有効性が、下記の実施例の節において実施例1〜9に示されるように調べられた。
【0161】
これらの実施例では、M−17およびメトロニダゾールならびにそれらの組み合わせの効果が、臨床的マーカー(DAI)、形態学的マーカー(結腸長さおよびセグメントでの結腸重量)および生化学的マーカー(MPOおよび前炎症性サイトカイン)を含めて、急性DSS誘発大腸炎の様々なパラメーターに対して調べられた。
【0162】
疾患活性指標(DAI)の測定は、ヒトの潰瘍性大腸炎において認められる臨床症状に類似する包括的な機能的尺度を提供し、DAIにおける著しい低下が、治療成功の評価項目であると考えられる。DAIの測定では、体重における変化、便の硬さの変化、および、便潜血/肉眼的直腸出血を評価することが含まれる。4ポイントシステムが用いられた(本明細書中下記の表1を参照)。総結腸長さが結腸傷害の形態学的パラメーターとして使用される(Okayasu、1990;Gaudio、1999;Egger、2000)。結腸MPOが結腸内腔内への好中球流入の生化学的マーカーとして使用される(Fitzpatrick、2000)。
【0163】
マウスにおけるDSS誘発大腸炎に対するM−17の用量に関連した効果が、M−17の3つの異なる濃度を使用して最初に調べられた(下記の実施例の節における実施例1を参照)。
【0164】
試験の1〜7日目の期間中に、コントロール群と比較して、プロバイオティック処置マウスの平均DAIにおけるほんのわずかな増大、ならびに、平均体重におけるほんのわずかな低下が認められただけであった(本明細書中下記の表3および表4を参照)。これらのデータは、この用量範囲で投与されたとき、マウスがM−17に耐え得ることを明らかにする。
【0165】
本明細書中下記の表3に示されるように、DSS期(7〜13日目)の期間中に、DAIが生理的食塩水/DSSによる処置群において進行的に増大した。表3においてさらに示されるように、大腸炎誘発の後では、DAIにおける低下が、生理的食塩水のみを投与されている大腸炎誘発の動物と比較して、M−17により処置されたマウスにおいて示された。DAIにおける低下は、コントロール群と比較して、調べられた最大濃度(5×10CFU/ml)で最も大きかった。このことは、大腸炎に対するM−17の用量依存性効果を示している。
【0166】
同様に、表4に示されるように、大腸炎誘発後の百分率初期体重における低下が、5×10CFU/mlのM−17により処置された群において最も低かった。このことはさらに、大腸炎の治療におけるプロバイオティック細菌株の有益な効果を明らかにしている。
【0167】
さらには、本明細書中下記の表5に示されるように、DSS誘発の大腸炎には、結腸長さにおける低下、ならびに、結腸重量、MPO活性、IL−1βレベルおよび組織学における増大が付随する。大腸炎誘発後でのこれらのパラメーターにおける変化が5×10CFU/mlのM−17の投与によって低下した。
【0168】
次に、下記の実施例の節における実施例2を参照すると、大腸炎の治療におけるM−17の有効性が抗生物質メトロニダゾールの有効性に対して比較された。本明細書中下記の表6に示されるように、DSS期の後半部分(12日目および13日目)の期間中における平均DAIスコアが、ビヒクルを投与されたマウスと比較して、M−17、メトロニダゾール、または、これらの作用薬の組み合わせを投与されたマウスでは著しくより低かった。これに関して、プロバイオティックにより治療されたマウス、抗生物質により治療されたマウス、および、プロバイオティック+抗生物質により治療されたマウスでは、軟便および血便の発生が低下していた。プロバイオティック+抗生物質により治療されたマウスでは、そのような症状はわずかに40%の発生であり、一方で、この発生は、ビヒクル処置のコントロールでは100%であった。
【0169】
次に、下記の実施例の節における実施例3を参照すると、大腸炎の治療におけるM−17およびメトロニダゾールの組み合わせ効果が調べられた。結腸長さにおける低下は、DSS処置の動物において一貫して見出されることであり、これが、多くの場合、結腸傷害のマーカーとして使用される(Fitzpatrick、2000;Gaudio、1999)。表7に示されるように、プロバイオティック処置マウスおよび抗生物質処置マウスの平均結腸長さはすべてが、ビヒクル処置マウスの場合によりも長かった。全体としてみると、DAIおよび結腸長さのデータは、大腸炎の症状的パラメーターおよび全体的な形態学的パラメーターの両方が、抗生物質およびプロバイオティックの処置群において、両者が個々であっても、また、組み合わせで投与されたときにはなおその上に、著しく改善されたことを示唆する。実施例において表7にさらに示されるように、M−17またはメトロニダゾールのいずれかによる処置により、DSS処置マウスの結腸での前炎症性サイトカイン(IL−12、IL−6、IL−1β、IFN−γ)のアップレギュレーションが弱まった。結腸のサイトカインレベルにおけるこれらのプロバイオティック媒介による低下の多くでは、統計学的有意性(P<0.05)が、生理的食塩水により処置されたコントロール群と比較して得られた。全体的には、M−17の有効性プロフィルはメトロニダゾールの有効性プロフィルと概ね類似していた。前炎症性サイトカインレベルにおける低下は、M−17およびメトロニダゾールの組み合わされた処置の場合、より大きかった。これに関して、この組み合わせ治療療法はIFN−γの結腸レベルを完全に正常化した。
【0170】
IL−10の結腸レベルが、DSSが10日間にわたって与えられる、生理的食塩水により処置されたマウスでは低下した。IL−10のこの弱化は大腸炎の発症に寄与し得ることが示唆される。これは、IL−10が、広く知られている免疫調節サイトカインであるからである。プロバイオティックによる(単独または組み合わせでの)処置は、調節サイトカインIL−10の結腸レベルを正常化する傾向がなかった。
【0171】
低下したサイトカインレベルと併せて、大腸炎の他のパラメーター(結腸重量、MPO活性および結腸の組織学的スコア)が、M−17および/またはメトロニダゾールを投与されたマウス群において著しく改善された(P<0.05)。最も顕著な効果が、組み合わされた処置療法により再度認められた。
【0172】
腸透過性に対するM−17の効果が、下記の実施例の節における実施例4に記載されるように調べられた。生理的食塩水/水により処置されたコントロールマウスと比較して、生理的食塩水/DSSにより処置された動物における腸透過性の増大が以前に報告されている(Kitajima、1999)。類似した変化が、図7に示されるように、これらの試験において認められた。DAIの増大が、図8に示されるように、DSS処置マウスにおいて認められ、だが、その増大したDAIはM−17による処置によって大きく低下した。透過性におけるDSS誘導による増大には、生理的食塩水により処置された動物において、DAIの増大が伴った。図9に示されるように、著しい相関関係がこれら2つのパラメーターの間に存在した(r=0.696、p=0.037)。対照的に、著しい相関関係が、M−17処置マウスでは、腸透過性パラメーターと、DAIパラメーターとの間において存在しなかった(すなわち、r=−0.484)。
【0173】
実施例5では、低分子量ポリペプチド(LMP2)の発現に対するM−17の効果が調べられた。結腸のLMP2発現がDSS処置マウスの結腸においてアップレギュレーションされることが以前に示されている(Fitzpatrick、2004)。水により処置されたマウスにおけるLMP2発現と比較して、LMP2のこのアップレギュレーションが本試験において確認された(図13および14を参照)。M−17により処置された1匹の動物(図13において矢印により印が付けられるブロット)は結腸のLMP2レベルにおける明瞭な低下を示した。しかしながら、M−17による処置は、一般には試験群の結腸LMP2の発現に影響を及ぼさなかった。これは、残るM−17処置マウスは、弱くなった結腸LMP2発現の証拠を何ら示さなかったからである。デンシトメトリーデータ(図14)が、ウエスタンブロット手法の期間中における等しいタンパク質負荷をさらに確認するために、アクチンレベルに標準化された。
【0174】
下記の実施例の節における実施例6に示されるように、メトロニダゾールに対する大腸菌株BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))の感受性が調べられた。得られた結果は、この菌株がメトロニダゾールに対して耐性であることを明らかにする。
【0175】
上記の結果は、2%DSSをC57/BL6マウスに6日間にわたって投与したとき、平均DAIが増大することを明らかにする。DAIにおけるこのDSS誘導による増大は、M−17を13日間にわたって投与されているマウスにおいて一貫して低下した。この低下は、M−17およびメトロニダゾールを同時に投与したときにはより大きかった(例えば、本明細書中下記の表7を参照)。このことは、そのような組み合わせが大腸炎および関連した状態(例えば、回腸嚢炎など)の治療において非常に効果的であることを示している。これらの試験で使用されたM−17の濃度(5×10CFU/ml)において、プロバイオティックは単独で、大腸炎の症状を誘発しなかったことがさらに明らかにされた(本明細書中下記の表3および表6、ならびに、図8を参照)。
【0176】
実施例において示されるように、平均結腸長さが、M−17を13日間にわたって投与されているマウスではより長かった。これらのデータは、DSS大腸炎モデルにおけるこのプロバイオティックの有益な効果を示している。セグメントの結腸重量が、DSSを投与されているマウスでは増大する傾向があったこともまた示された。このことは、この大腸炎モデルに関して明白である粘膜下浮腫によって少なくとも部分的に説明することができる(Okayasu、1990;Gaudio、1999)。
【0177】
一部の試験では、結腸重量における増大が、プロバイオティック菌株を投与されたマウスにおいて部分的に正常化された。興味深いことに、M−17およびメトロニダゾールの両方を投与されているマウスでは、結腸重量におけるDSS誘導による変化が実質的に正常化された(表7を参照)。このことはさらに、そのような組み合わされた処置の高い有効性および相乗的効果を示している。
【0178】
結腸MPOの試験では、M−17の5×10CFU/mlの用量により、結腸のMPOが、行われた3つの試験のうちの2つである程度、弱められたことが示された(表5および表7を参照)。M−17およびメトロニダゾールの両方を投与されているマウスでは、平均MPOレベルが、プロバイオティックまたは抗生物質のいずれかを単独で投与されている動物と比較して、より顕著に低下した(表7を参照)。
【0179】
表7において最も明瞭に示されるように、M−17による処置は、DSS処置マウスの結腸での前炎症性サイトカイン(IL−12、IL−6、IL−1β、IFN−γ)のアップレギュレーションを弱めた。これらの前炎症性サイトカインはDSS誘発大腸炎の病因に寄与する(Egger、2000;Fitzpatrick、2000)。前炎症性サイトカインレベルのより大きい阻害がM−17をメトロニダゾールと組み合わせた処置により認められた。しかしながら、プロバイオティックによる(単独または組み合わせでの)処置は調節性サイトカインIL−10の結腸レベルを著しく調節しなかった(表7)。結腸IL−1βのレベルが、調べられたすべての実施例において、M−17を投与されているマウスで、ある程度、弱まった(表5〜表7を参照)。
【0180】
これらの前炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1βおよびIL−6)の産生はNF−κBの活性化に依存しているので、NF−κBのシグナル伝達系に対するM−17の効果もまた、このDSS誘発大腸炎モデルで調べられた。興味深いことに、DSS処置マウスに対するM−17の投与はNF−κBのp65サブユニットの弱くなった核発現をもたらした(図15を参照)。p65の核発現が、DSS誘発大腸炎の期間中にアップレギュレーションされることが以前に示されており、また、腸炎症を促進させることにおいて非常に重要な役割を果たすと考えられる(Murano、2000;Spiik、2002)。例えば、p65はSMAD7の転写を活性化し、このことは、腸炎症に対するTGF−βの阻害的効果を阻止し、それにより、IBDを促進させる(Monteleone、2001)。何らかの特定の理論によってとらわれることはないが、これらの結果は、DSS誘発大腸炎のパラメーター(前炎症性サイトカインレベルを含む)における低下が、M−17によるNF−κBシグナル伝達の阻害から生じているかもしれないことを示唆する。従って、得られたインビトロデータでは、M−17がNF−κBの核結合をマウスのマクロファージにおいて阻害したこと(図22を参照)、また、胚性腎臓細胞で行われたレポーター遺伝子アッセイにおいて阻害したこと(図16を参照)が示された。
【0181】
前炎症性サイトカインに対するE.coli菌株の効果をさらに調べるために、IL−1βおよびTNF−αのサイトカインレベルの弱化が、下記の実施例11に記載されるように、また、図7に概略的に表されるように、インビトロで調べられた。非常に多数の異なるE.coli菌株がLPS活性化マクロファージによるサイトカイン産生の弱化について調べられた。
【0182】
LPSは、グラム陰性細菌のLPSにより送達されるシグナルを伝達するヘテロマー受容体複合体の非常に重要な成分であるtoll様受容体4イソ型B(TLR4)に結合し、下流側のシグナル伝達を、NF−κB経路およびマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路を介して引き起こすと考えられる。これはサイトカインの分泌(IL−1、TNF、IL−6)をもたらす。
【0183】
図18に示されるように、ECOR−51を除くすべての菌株が、LPS誘導によるIL−1β分泌を阻害し、最も大きいレベルの阻害がM−17およびECOR−59によって示された。
【0184】
図19に示されるように、驚くべきことに、M−17が、LPS活性化マクロファージにより産生されるTNF−αのレベルを完全に阻害することにおいて、他に類を見ないほど効果的であることが見出された。これらの試験で試験されたすべての他の菌株は部分的な阻害を示しただけであった。
【0185】
本明細書中上記の背景の節で詳しく議論されたように、インターロイキン−1β、TNF−α、IL−8およびIL−12を含めて、様々な前炎症性サイトカインが、重要な役割を回腸嚢炎および潰瘍性大腸炎などの疾患において果たすようであるので、これらの結果から、M−17は、その有益な効果を、これらのサイトカインの分泌を阻害することにより及ぼすことが示唆される。
【0186】
実施例8に記載されるように、好気性細菌および通性細菌のフローラの調節がモニターされた。DSSの投与は、優勢な好気性のシュードモナス属集団を減少させた。このことは、この日和見感染性病原体が疾患の進行における直接的な役割をほとんど有しないことを示している。M−17が、通性的な腸内細菌叢の主要な成分であることは示されなかった。全体的には、M−17+メトロニダゾールにより処置されたマウスでは、検出可能な便中E.coliを有するマウスの全体的な割合における著しい変化が、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスと比較して、認められなかった。従って、M−17の主要な抗大腸炎作用は、腸内微小細菌叢の変化または内因性細菌の競合的排除に起因するのではなく、むしろ、免疫プロセスの調節に起因し得ることが示唆される。この示唆は、NF−κBおよび前炎症性サイトカインのレベルについて得られた結果と一致している。DSS誘発大腸炎のパラメーターに対するM−17をメトロニダゾールと組み合わせた効果はこれら2つの治療剤の別個の作用機構を示している。これに関して、メトロニダゾールによる大腸炎パラメーターの弱化は、嫌気性細菌(例えば、バクテロイデス属またはヘリコバクター属など)がマウスの大腸炎の病因に寄与し得ることを示している。
【0187】
まとめると、生きているM−17による2つの細胞株のインビトロ処置はNF−κBのシグナル伝達経路の阻害およびp65結合の阻害をもたらした。そのうえ、M−17プロバイオティックはマクロファージによる前炎症性サイトカインの分泌を弱めた。インビボ試験では、M−17が、マウスにおけるDSS誘発大腸炎の様々な組織学的パラメーター、生化学的パラメーター、形態学的パラメーターおよび症状パラメーターを効果的に改善したことが示されている。M−17+メトロニダゾールによる組み合わされた処置は、マウスにおけるDSS誘発大腸炎において、いずれかの単独よりも、一般に効果的であることが判明した。これらのデータから、M−17は、腸の炎症性疾患を治療するために臨床的に有用であることを証明し得ることが示唆される。
【0188】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0189】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なお、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0190】
材料および実験方法
化学物質:
デキストラン硫酸ナトリウム塩(DSS)(MW 36000〜50000)(ロット番号2387F、同5464Hおよび同7904H)をMP Biomedicals(Aurora、OH)から購入した。
【0191】
無菌の0.9%塩化ナトリウム注射用ボトル(ロット番号26−451−K)をHospira Inc.(Lake Forest、IL)から得た。無菌水注射用ボトル(ロット番号20−239−DKおよび同23−409−DK)をAbbot Laboratories(North Chicago、IL)から購入した。超純粋蒸留水(DNAse非含有、RNAse非含有、Lot#1271392)をGIBCO(Grand Island、NY)から得た。
【0192】
3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン{TMB}、N,N−ジメチルホルムアミド{DMF}、過酸化水素およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物{HTAB}をSigma Chemical Company(Saint Louis、Mo)から購入した。
【0193】
ホルムアミドおよびエバンスブルーをSigmaから購入した。
【0194】
RC−DC Protein AssayをBio−Rad(Hercules、CA)から購入した。
【0195】
ルミノール試薬(Western Lightning)をPerkin−Elmer Life Sciences Inc.(Boston、MA)から購入した。
【0196】
低分子量ポリペプチド−2(LMP2)に対するウサギポリクローナル抗体をResearch Diagnostics Inc.(Flanders、NJ)から購入した。
【0197】
マウスサイトカインELISAキット(IL−1β、IL−6、IL−10、IL−4)をPierce Endogen Inc.(Rockford、IL)から得た。IL−12のマウスELISAキットをBiosource International(Camarillo、CA)から購入した。マウスのMIP−2ELISAキットをR&D Systems(Minneapolis、MN)から得た。
【0198】
動物:
オスのC57 BL/6マウスをThe Jackson Laboratory(Bar Harbor、Maine)から得た。すべてのマウスを8〜10週齢で得た。マウスを、明期が午前7時〜午後7時の間である12時間の明暗サイクルを有する、Penn State College of Medicine(Hershey、PA)の動物試験施設において1匹ずつのケージに収容した。
【0199】
マウスには、下記で記載されるように、標準的なペレット化餌が随意に与えられ、また、ろ過された水が与えられた。
【0200】
プロバイオティック菌株の調製、メトロニダゾールおよび投薬手順:
E.coli菌株M−17が、0.6%生理的食塩水における約1×1011CFU/mlのプロバイオティック懸濁物として、BioBalance Corporationによって提供された。
【0201】
0.6%生理的食塩水溶液を、無菌の0.9%生理的食塩水を無菌水により希釈することによって調製した。続いて、生理的食塩水の1×1011CFU/ml溶液を、典型的には、0.6%生理的食塩水で20倍希釈して、5×10CFU/mlのE.coli菌株M−17濃度を得た。
【0202】
メトロニダゾール(SigmUltra、カタログ番号M1547)を0.6%生理的食塩水に懸濁し、その後、溶解するまでおよそ2分間、熱水により加熱した。
【0203】
マウスには、13日の期間にわたって1日に1回、20ゲージの、長さ1インチのニードル(Popper&Sons、New Hyde Park、NY)による経口胃的胃管栄養法によって投薬された。投薬は、メトロニダゾールの40mg/kgの用量、または、5×10CFU/mlのプロバイオティック溶液のいずれかを含んだ。0.6%生理的食塩水溶液をコントロールとして投与した。
【0204】
疾患活性指標(DAI)を、便の硬さおよび便における潜血および体重減少を、表1に示されるような標準化された重症度スケール(Murphy、1993)で評価することによって毎日または1日おきのいずれかで求めた。

【0205】
疾患活性指標(DAI)の計算:体重減少、便の硬さおよび潜血/出血についての個々のスコアを求め、そのマウスについての平均DAIを求めるために3で除算する。例えば、動物が初期体重の12%を失い[スコア=3]、下痢の証拠[スコア=4]および肉眼的直腸出血の証拠[スコア=4]を有したならば、平均DAIは、3+4+4=11/3=3.7となる。
【0206】
実施例3では、体重減少がDSS処置マウスにおいてほとんど明白でなかった。従って、修正されたDAI計算を使用した。修正DAIは表1のDAIと同様に計算され、しかし、便の硬さおよび潜血の成分のみがこの決定のために使用された。
【0207】
飲料水およびDSS溶液の調製:
水道水を0.22ミクロンのフィルターシステム(Millipore Corporation、Billerica、MA)によりろ過して、内因性微生物を除いた。2%DSS(w/v)を、ろ過水に溶解することによって調製した。
【0208】
DSS誘発による大腸炎:
E.coli菌株M−17の効果を調べるために、C57BL/6マウスには最初に、DSSを含有しないろ過水が試験の0〜7日目にわたって与えられた。この最初の7日の期間中に、マウスには、0.6%生理的食塩水、M−17(5×10CFU/ml)、メトロニダゾール(40mg/kg)、または、M−17(5×10CFU/ml)およびメトロニダゾール(40mg/kg)の両方が1日1回、投薬された。その後、大腸炎を、マウスに、ろ過水に溶解された2%DSS(w/v)の溶液を試験の7日目〜13日目にわたって与えることによって誘発した。1つのマウス群は、DSSを含まない水を投与された。水の消費および体重を試験の始めから終わりまで記録した。
【0209】
この期間中に、DAIを、上記で記載されたように求めた。
【0210】
結腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の測定:
試験の13日目に、動物を、二酸化炭素にさらすことによって安楽死させた。結腸を素早く取り出し、総結腸長さを0.1cm単位に丸めて求めた。典型的には、遠位側結腸の2.5cmのセグメントをその後の組織学的評価(下記参照)のために10%緩衝化ホルマリンにおいて固定処理した。結腸の隣接する2.5cmのセグメントを重量測定し、その後、液体窒素において凍結した。結腸のこのセグメントを、結腸MPO、ならびに、結腸サイトカインレベルを評価するために使用した。
【0211】
結腸の2.5cmのセグメントを、Fisher Scientific(Pittsburgh、PA)から得られる手持ち型組織ホモジナイザー(TissueMister)を使用して、0.5mlの分子生物学規格の蒸留水において約30秒間ホモジネートした。その後、ホモジネートを、4℃で15分間、10000RPMで遠心分離した。ペレットを結腸MPOの測定のためにヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(HTAB)緩衝液(pH6.0)に再懸濁した。MPOをテトラメチルベンジジン(TMB)法によってアッセイした(Fitzpatrick、2000)。
【0212】
結腸サイトカインレベルの測定:
結腸ホモジネート(上記参照)に由来する上清画分を適切な試験管に小分けし、−70℃で凍結した。後で、その上清を、市販されているマウスELISAキットを使用して関連した前炎症性サイトカイン[例えば、IFN−γ、IL−1β、TNF−α、IL−12]を測定するために使用した(Fitzpatrick、2000)。データは典型的には、2.5cmの結腸あたりのpgとして表された。
【0213】
タンパク質測定:
実施例5では、結腸全体がまた、結腸のLMP2レベルの測定のために使用された。結腸を溶解緩衝液において1:8(重量対体積)の比率でホモジネートした。Bio−Rad法によって求められた、結腸の全細胞抽出物(20μg)をLMP2についてのウエスタンブロット試験において使用した。
【0214】
結腸の組織学的損傷の評価:
遠位側結腸試料が、Penn State University College of MedicineにおけるHistologyコア施設によって、標準的な方法によって処理され、パラフィンに包埋された。顕微鏡スライドをコード化した。遠位側結腸に由来するコード化されたヘマトキシリン・エオシンH&Eスライド(マウスあたり1枚のスライド)を使用して、結腸の組織学スコアをスライド上の6つの異なる領域から求めた(Williams、2001;Krieglstein、2001)。0〜40ポイントのスコア化システムが下記の表2に示される。平均総組織学スコア値をそれぞれのマウスについて計算した。

【0215】
総組織学スコアを、3つの異なる組織学的特徴のそれぞれについての障害パーセントに障害面積を乗じることによって求めた。このスコア化システムを使用する場合、最小スコア=0であり、最大スコア=40である。障害パーセントを、Olympus CH光学顕微鏡に取り付けられた25mmの接眼鏡グリッドにより求めた。組織学的評価を400倍の倍率で行った。
【0216】
結腸透過性の測定:
腸透過性に対するM−17の効果をエバンスブルー(EB)色素法によって評価した(Kitajima、1999)。簡単に記載すると、急性DSS大腸炎パラダイムの13日目に、マウスをナトリウムペントバルビタールにより麻酔した。結腸を洗浄して、便内容物を除き、1.5%(w/v)のEB0.2mlを結腸の結紮したセグメントの中に注入した。マウスを手術から回復させ、その後、2時間後に安楽死させた。結腸を取り出し、重量測定し、その後、ホルムアミド中でインキュベートした。続いて、腸壁を透過しているEBの量を、ホルムアミドにおけるEBの標準曲線に基づいて計算した。
【0217】
低分子量ポリペプチド−2(LMP2)についてのウエスタンブロット試験:
結腸LMP2を、以前に記載されるように測定した(Fitzpatrick、2004)。ウエスタンブロットを、標準的な技術を使用して行った。簡単に記載すると、4〜15%のTris−HClレディーゲル(Bio−Rad)をこのプロトコルのために使用した。ゲルを100ボルトで約1時間泳動した。その後、ゲルをPROTRAN(登録商標)ニトロセルロース膜(Whatman/Schleicher&Schuell、Florham Park、NJ)に転写した。続いて、ブロットを、5%のblotto(脱脂乾燥乳)を含有するPBS−Tweenによりブロッキング処理した。その後、ブロットを一次抗体(LMP2に対するウサギポリクローナル抗体)においてインキュベートし、PBS−Tweenで洗浄し、適切な二次抗体にさらした。さらなる一連の洗浄の後、等量の酸化剤およびルミノール試薬(Western Lightning)を1分間加えた。続いて、ブロットを乾燥し、Kodak Scientific Imaging XB−1フィルムに感光させた。相対的デンシトメトリー分析をQuantiScan(登録商標)ソフトウエアプログラムによりLMP2バンドに対して行った。最終的な群比較を、LMP2のバンド密度をβ−アクチンのウエスタンブロットから得られるバンド密度に対して標準化した後で行った。
【0218】
便サンプルの微生物学的分析
便ペレットのコード化されたサンプルを、トリプシン大豆寒天、脳心臓浸出液寒天、エオシン・メチレンブルー(EMB)寒天およびサルモネラ・シゲラ寒天において37℃で培養して、処置マウスおよび非処置マウスの好気性細菌叢および通性的細菌叢を評価した。希釈されたサンプルを分注し、培養物を48時間インキュベーションした。培養物をコロニー数および識別のための特徴(例えば、培地におけるE.coliの金属的緑色光沢など)についてスコア化した。
【0219】
核因子κB(NF−κB)受容体遺伝子アッセイ
NF−kBレポーターが安定な細胞株をPanomics(Redwood City、CA)から得た。この細胞株は、6コピーのNF−κB応答エレメントによって調節される組み込まれたルシフェラーゼレポーター構築物を有するヒト293T胚性腎臓細胞に由来する。これらの試験のために、細胞を24ウエル培養プレートに置床し、コンフルエンスに成長させた。その後、培地を除き、血清非含有培地により16時間置き換え、その後、TNF−αを細胞に加えた。具体的には、NF−κBシグナル伝達経路を、細胞を100ng/mlのTNF−αにより処理することによって活性化した。典型的には、細胞を、TNF−α処理の直前に、ビヒクル(0.6%生理的食塩水)または1×10CFU/mlの濃度でのM−17プロバイオティックにより処理した。すべての処理を三連で行った。6時間後、細胞を洗浄し、溶解した。その後、ルシフェラーゼの量を、Promega Corporation(Madison、WI)から得られるアッセイキット、および、ルミネセンスモードでのPerkin Elmer HTS7000+Bioassayプレートリーダーを使用して定量した。
【0220】
RAW264.7マクロファージ細胞株におけるM−17の効果
RAW264.7マウスマクロファージ細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。RAW264.7細胞を、10%FBS(ウシ胎児血清)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で成長させた。リポ多糖(LPS)刺激試験を2×10/mlの細胞密度で行った。M−17を、LPS(5μg/ml)の直前に、1×10CFU/mlの濃度でマクロファージ細胞培養系に加えた。NF−κB p65の測定のために、核抽出物をLPS刺激の直後(0時間)または3時間後のいずれかで細胞から得た。核抽出物のタンパク質測定をBio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories)により行った。p65分析のために、10μgのタンパク質をサンプルあたり利用した。p65の核結合を製造者の説明書に従ってTransAM(商標)NF−κB p65アッセイキットにより測定した。
【0221】
サイトカイン分泌実験のために、LPS暴露の0時間後または4時間後に、培養培地を、サイトカイン(TNF−α、IL−1βおよびIL−6)を製造者の説明書に従ってELISA(Pierce−endogen)により測定するために集めた。プロバイオティックの馴化培養培地(CM)を、M−17をマクロファージ培養培地に5分間または2時間加えることによって調製した。その後、培地を集め、10000RPMで10分間遠心分離した。次いで、CMをサイトカイン分泌実験における使用の前に0.22ミクロンのフィルターに通した。M−17を加熱により殺すために(HK)、プロバイオティックを100℃で20分間煮沸した、その後、加熱により殺されたM−17を10000RPMで遠心分離した。細胞ペレットをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。その後、ペレットを、1×10CFU/mlの最終的濃度を達成するために、十分な量の生理的食塩水に再懸濁した。HKおよびCMを、上記で記載されたように、RAW264.7細胞株を用いたサイトカイン分泌試験において使用した。CMを10%(v/v)の最終的濃度で使用した。一部の実験では、本発明者らはまた、メトロニダゾール(50μg/ml)がサイトカインの分泌を阻害し得るかどうかを評価した。
【0222】
マウス結腸サンプルにおけるNF−κB p65サブユニットのウエスタンブロット分析:
14匹のマウスを、ビヒクル/水(n=2)、M−17/水(n=3)、ビヒクル/DSS(n=5)またはM−17(n=4)で、上記で記載されるように処置した。マウスを試験の13日目に安楽死させ、結腸サンプルを液体窒素で急速冷凍した。核抽出物を結腸ホモジネートから調製した。これらの結腸抽出物のタンパク質測定を、Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories)を使用して行った。ウエスタンブロット分析のために、結腸サンプルあたり30マイクログラムのタンパク質を使用した。ウエスタンブロットを、標準的な技術を使用して行った。簡単に記載すると、4〜15%のTris−HClレディーゲル(Bio−Rad)をこのプロトコルのために使用した。ゲルを100ボルトで約1時間泳動した。その後、ゲルをPROTRAN(登録商標)ニトロセルロースメンブラン(Schleicher&Schuell Biosceince Inc)に転写した。続いて、ブロットを、5%のblotto(脱脂乾燥乳)を含有するPBS−Tweenによりブロッキング処理した。次いで、ブロットを一次抗体(p65に対するウサギポリクローナル抗体)においてインキュベートし、PBS−Tweenで洗浄し、その後、適切な二次抗体(ヤギ抗ウサギ)にさらした。さらに一連の洗浄の後、等量の酸化剤およびルミノール試薬(Western Lightning、Perkin−Elmer Life Sciences Inc)を1分間加えた。続いて、ブロットを乾燥し、Kodak Scientific Imaging XB−1フィルムに感光させた。NF−κB p65は、内部分子量標準物(Bio−Rad)により求められたとき、65キロダルトンのタンパク質として発現した。結腸LMP2発現のレベルを評価するために、デンシトメトリー分析をQuantiScanソフトウエアプログラムにより行った。核のp65発現のデータは、ビヒクル/水により処置されたマウスにおいて見出される平均レベルに対して標準化された。核のp65発現のデータは、これらのデータに対して比較される増大倍数として報告される。
【0223】
統計学的分析:
すべてのデータは、GraphPad Prism(登録商標)(San Diego、CA)コンピューターソフトウエアプログラムを使用して計算された。値は、平均±SEMとして表される。データは、GraphPad Prismによって求められたとき、正規分布した。多数の群を一元配置ANOVAによって分析し、個々の群比較をニューマン・クールズ多重比較検定によって分析した。一部のデータについては、2つの処置群の間における違いを確認するために、スチューデントt検定を利用した(GraphPad Prism)。線形回帰分析もまた、Graph−Pad Prismによって行った。p<0.05の違いを、これらすべての統計学的分析について有意であると見なした。
【0224】
インビボ試験
(実施例1)
マウスにおける急性DSS誘発大腸炎に対するM−17の用量依存性効果
M−17の3つの濃度をC57/BL6マウスに投与した:低(5×10CFU/ml)、中(5×10CFU/ml)および高(5×10CFU/ml)。コントロールのマウスは0.6%生理的食塩水を投与された。結果が下記の表3〜5に示される。DSS誘発の大腸炎に対するM−17の効果を、大腸炎のDAI(表3)、百分率初期体重(表4)および他のパラメーター(表5)に関して測定した。
【0225】
表3に示されるように、プレDSS期の期間中(すなわち、0日目、2日目、4日目および6日目)に、著しい違いが、異なる処置群のDAIにおいて認められなかった。大腸炎が誘発されたとき、DAIが増大した。生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスでは、平均DAI値における明瞭な増大が試験の12日目および13日目に認められた(表3)。
【0226】
表3においてさらに示されるように、5×10CFU/mlおよび5×10CFU/mlのM−17はともに、DSS処置マウスにおいてビヒクルと比較して、平均DAIスコアを著しく低下させた(それぞれ、34.8%(P<0.05)および43.5%(P<0.05))。従って、5×10CFU/ml濃度のM−17の5mg/kgがさらなる試験における使用のために選択された。

【0227】
体重減少(これは1%超として定義される)が、生理的食塩水により処置されたマウスの約13%において認められた。同様に、M−17により処置された動物に関しては、マウスの約20%が体重減少した。対照的に、体重減少が、メトロニダゾールにより処置されたマウスの50%において認められ、また、M−17+メトロニダゾールにより処置されたマウスの90%において認められた。試験のDSS期(7〜13日目)の期間中に、体重減少が、生理的食塩水/水により処置されたマウスでは明白ではなかった。いくらかの体重減少(これは1%超として定義される)がそれ以外の処置群の3つにおいて認められた。具体的には、体重減少が、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスの22%において、M−17/DSSにより処置されたマウスの10%において、メトロニダゾール/DSSにより処置されたマウスの30%において生じた。興味深いことに、体重減少がM−17+メトロニダゾールの群では明白ではなかった。

【0228】
試験のプレDSS期の期間中には、水の消費におけるほんのわずかな違いが処置群の間で認められただけであった。従って、試験のこの段階の期間中において、すべてのマウスが、抗生物質およびプロバイオティックによる処置療法に比較的良好に耐えた。水の消費は、7日目〜12日目まで、すべての処置群において概ね類似していた。しかしながら、試験の13日目では、生理的食塩水/DSSによる処置群における水の消費が他の処置群の場合よりも著しく低下した。
【0229】
大腸炎の他のパラメーター(例えば、結腸長さ、MPO、IL−1β)が、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスと比較して、単独または組み合わせのいずれかでのM17またはメトロニダゾールによる処置によって改善された(表5)。プロバイオティック処置群およびメトロニダゾール処置群におけるすべての結腸長さは、ビヒクル/DSSによる処置群の結腸長さよりも著しく長かった。
【0230】
興味深いことに、DSS処置マウスにもまた、5×10CFU/mlのM−17が与えられたとき、平均結腸IL−1βレベルにおける明瞭な低下が認められた。

【0231】
(実施例2)
DSS誘発大腸炎における、M−17、メトロニダゾールおよびM−17+メトロニダゾールの比較効果
5×10CFU/mlのM−17または40mg/kgのメトロニダゾール(Metro)をC57/BL6マウスに投与した。
【0232】
DSSを投与する前(試験の7日目)において、DAIスコアにおける著しい違いが処置群の間になかった(表6)。同様に、試験のプレDSS期の期間中には、水の消費におけるほんのわずかな違いがすべての処置群の間で認められただけであった。従って、試験の6日目が終わるまで、すべてのマウスが抗生物質およびプロバイオティックによる処置療法に比較的良好に耐え、また、大きい顕在的な効果は何ら明白でなかった。
【0233】
2%DSSを、それ以外の点では非処置(ビヒクル/DSS)のC57/BL6マウスに投与することにより、DSSを受けなかったビヒクル処置マウス(ビヒクル/水)と比較して、DAIスコアにおける著しい増大が12日目および13日目に生じた(表6)。しかしながら、ビヒクル処置マウスに見出されたDAIの増大は、M−17、メトロニダゾールおよびM−17+メトロニダゾールにより処置されたマウスではそれほど顕著ではなかった。13日目では、M−17を同様に投与されたDSS処置群(M−17/DSS)は、ビヒクルを同様に投与されたDSS処置マウスと比較されたとき、平均DAIスコアが68.4%小さかった(p<0.01)。メトロニダゾールを投与されたDSS処置マウス(Metro/DSS)もまた、DAIスコアが著しく低下し(p<0.01)、しかし、その低下はそれほど大きくなかった(47.4%)。M−17およびメトロニダゾールの両方を投与されたDSS処置マウス(M−17+Metro/DSS)は、平均DAIスコアでのより大きい低下(78.9%、P<0.01)において反映されたDAIスコアが著しく低下した。13日目と同様に、M−17、メトロニダゾールおよびM−17+メトロニダゾールによる処置は、12日目でのビヒクル/DSSによる処置と比較して、DAIが著しく低下(P<0.01)した(表6)。
【0234】
水消費の値は、7日目から12日目まで、処置群のすべてにおいて一般に類似していた。しかしながら、試験の13日目では、ビヒクル/DSSによる処置群における水の消費(2.0±0.2ml/日)はその他の処置群のすべてにおける場合よりも著しく少なかった(P<0.05)。水の消費は3.5±3ml/日〜4.5±0.3ml/日の間の範囲であった。
【0235】
M−17による(単独、または、メトロニダゾールとの組み合わせでの)マウスの処置は、ビヒクル/DSSにより処置されたマウスに見出される短縮化と比較して、結腸長さの短縮化がより少なかった。13日目では、結腸長さの値(cm)は、7.1±0.2(ビヒクル/水)、6.4±0.1(ビヒクル/DSS)、7.2±0.1(EC−M−17/DSS)、6.8±0.2(メトロニダゾール/DSS)および7.3±0.1(EC−M−17+メトロニダゾール/DSS)であった。プロバイオティック処置群およびメトロニダゾール処置群における結腸長さの値のすべてが、ビヒクル/DSSによる処置群に見出される値よりも著しく長かった(P<0.05)。

【0236】
(実施例3)
DSS誘発大腸炎に対するM−17およびメトロニダゾールによる処置の組み合わさった効果
DSS誘発大腸炎に対するM−17およびメトロニダゾールの別々および組み合わせでの効果を調べた。結果が図1〜6に示され、また、下記の表7に示される。表7に示されるように、これらの処置のどちらも単独では、DAI、結腸長さ、結腸重量、MPO活性および結腸の組織学スコアにおける変化と同様に、IL−12、IL−6、IL−1βおよびIFN−γの結腸レベルを低下させた。IL−10またはIL−4のレベルにおける低下は認められなかった。大腸炎のパラメーターにおけるより大きい低下が、M−17およびメトロニダゾールの組み合わされた処置により認められた。このことは、この組み合わされた処置の相乗的効果を示している。
【0237】
図1に示されるように、2%DSSの投与は平均結腸IL−12レベルにおける約2.6倍の増大を引き起こした。試験の13日目では、M−17、メトロニダゾールまたはそれらの組み合わせにより処置されたマウスは、生理的食塩水により処置されたマウスと比較して、結腸IL−12のレベルが著しく低下した。M−17およびメトロニダゾールの両方により処置されたマウスでは、結腸IL−12レベルにおける50%を越える低下が認められた。
【0238】
同様に、DSS処置後、結腸IFN−γにおける約3.5倍の増大が、図2において明らかにされるように見られた。M−17、メトロニダゾールまたはそれらの組み合わせにより処置されたマウスは、結腸IFN−γのレベルが著しく低下した(P<0.05、生理的食塩水/DSSに対して)。プロバイオティックおよび抗生物質の両方により処置されたマウスでは、IFN−γのレベルは、生理的食塩水/水により処置された動物において見られるレベルとほぼ同じであった。
【0239】
DSSの摂取は、図3に示されるように、平均結腸IL−1βレベルにおける50%を越える増大をもたらした。M−17、メトロニダゾールまたはそれらの組み合わせにより処置されたマウスは、生理的食塩水により処置されたマウスと比較して、結腸IL−1βレベルがより低かった。M−17およびメトロニダゾールの両方により処置されたマウスでは、結腸IL−1βにおける67%(P<0.05)の低下が見られた。
【0240】
結腸IL−6における非常に大きい(200倍を超える)増大が、図4において明らかにされるように、DSSにより処置されたマウスにおいて見られた。M−17により処置された動物は結腸のIL−6含有量における全体的な低下を示した。しかしながら、高いIL−6含有量が1匹のプロバイオティック処置マウスの結腸において見られた。しかし、これは、本試験で得られた大きい標準誤差が原因であった。従って、統計学的有意性が得られなかった。メトロニダゾール、または、メトロニダゾールおよびM−17の両方により処置された動物は、生理的食塩水により処置されたマウスと比較して、結腸IL−6のレベルが著しく低下した。M−17およびメトロニダゾールの両方により処置された動物は結腸のIL−6含有量における78%の低下を示した。
【0241】
図5に示されるように、結腸IL−10が、生理的食塩水により処置されたマウスと比較して、DSSを投与されている、生理的食塩水により処置されたマウスでは弱くなった。しかしながら、プロバイオティックおよび抗生物質による処置療法が、IL−10のレベルを、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスに見出されるレベルを越えて増大させたという証拠はなかった。
【0242】
同様に、図6に示されるように、結腸IL−4が、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスでは弱くなった。しかし、プロバイオティックおよび抗生物質による処置療法が、IL−4のレベルを、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスに見出されるレベルを越えて増大させたという証拠はなかった。

【0243】
(実施例4)
腸透過性および組織学に対するM−17の効果
腸透過性における変化、および、DAIにおける増大に対するそれらの関係性を、M−17を投与されているDSS処置マウスにおいて調べた。図7に示されるように、生理的食塩水およびDSSを投与されているマウスは結腸MPO活性における著しい増大を示した。これらのデータは、これらの動物における結腸の好中球流入の増大を示している(Fitzpatrickら、2000;Fitzpatrickら、2002)。M−17、メトロニダゾールまたはそれらの組み合わせにより処置されたマウスは低下したレベルのMPOを示した。組み合わせ処置療法は結腸MPOを約55%(P<0.05)低下させた。興味深いことに、組み合わされた処置療法はまた、単独でのM−17による処置と比較されたとき、結腸MPOを38.2%(P<0.05)著しく低下させた。図8に示されるように、DAIにおける増大がDSS処置マウスにおいて認められた。しかしこの増大はM−17による処置によって低下した。DAIにおける増大が、DSSの非存在下では、M−17単独では明らかにされなかった。
【0244】
図9は、大腸炎のDSS誘発の後、M−17による処置を伴わない、生理的食塩水により処置されたマウスにおいて、腸透過性における増大と、DAIにおける増大との間における相関関係を示す。
【0245】
図7とは対照的に、図10は、正規化された腸透過性の値が、M−17/DSSおよびM−17/水により処置されたマウスでは実質的に同一であったことを示す。従って、M−17処置マウスでは、有意な相関関係が、腸透過性パラメーターと、DAIパラメーターとの間に認められなかった。
【0246】
図11および図12に示されるように、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスは、試験の始めから終わりまで水を投与されているマウスよりも大きい組織学的損傷を示した。プロバイオティック、抗生物質またはそれらの組み合わせによるマウスの処置は、全体的な結腸組織学スコアにおける著しい低下をもたらした(図11)。
【0247】
本試験から得られる代表的な写真が図12A〜図12Dに示される。図12Aは、生理的食塩水/水により処置されたコントロール動物から得られた組織学的結果を示す。図12Bに示されるように、DSSの投与は、陰窩損傷(黒矢印によって示される)、粘膜固有層における炎症性細胞(白矢印)の著しい数、同様にまた、粘膜下における炎症性細胞(灰色矢印)の著しい数をもたらした。この代表的な、生理的食塩水/DSSにより処置されたマウスでは、炎症性細胞が内腔表面においても見られた。図12Cに示されるように、代表的なM−17処置マウスでは、いくらかの表面上皮細胞損傷(黒矢印)、ならびに、粘膜固有層における軽微な炎症性細胞の流入(白矢印)、および、粘膜下における軽微な炎症性細胞の流入(灰色矢印)の証拠もまた見られた。メトロニダゾールとの組み合わせでM−17により処置された動物では(図12D)、陰窩構造が保存されたが、粘膜固有層におけるほんの軽微な炎症性細胞の浸潤(白矢印)があった。この動物における結腸組織学のパターンは、図12Aの、生理的食塩水/水により処置されたマウスに見出されるパターンと概ね一般に類似した。
【0248】
(実施例5)
LMP2発現に対するM−17の効果
LMP2のアップレギュレーションが、結腸のLMP2発現のウエスタンブロット試験によって示されるように、また、図13および図14においてさらに示されるように、水により処置された群と比較して、DSSにより処置されたマウスにおいて認められた。M−17による処置は、1匹のマウス(これは、全体としてその群を代表していると見なすことができない)を除いて、結腸のLMP2発現に影響を及ぼさなかった。
【0249】
(実施例6)
メトロニダゾールに対するE.coli ATCC202226の感受性
Kirby−Bauerディスク拡散法を使用して、メトロニダゾールに対するE.coli ATCC202226の相対的感受性を求めた(Bauer、1966)。E.coli ATCC202226の5個のコロニーを、無菌の接種ループを使用してトリプチカーゼ大豆寒天(TSA)から選択し、トリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)に懸濁した。TSB培養物を37℃/200rpmで6時間成長させた。この培養物をTSBで希釈して、0.5のMcFarland濁度標準に一致させ、その後、無菌の綿棒を飽和させ、培養物をMueller−Hinton寒天平板の表面に画線した。平板の表面を乾燥させた後、50μgのメトロニダゾールのペーパーディスク(Oxoid)を菌叢の上に置いた。平板を一晩インキュベートし、阻害域を記録した。
【0250】
阻害域がメトロニダゾールディスクの周りに認められなかった。このことは、E.coli ATCC202226が、この抗生物質に対する高レベルの耐性を有することを示している。
【0251】
(実施例7)
M−17およびメトロニダゾールの生物学的治療組成物の作用機序に対する洞察
IBDのための治療におけるプロバイオティックについては5つの主要な作用機構が存在することが以前から示唆されている:免疫調節作用、強化された腸バリア一体性、抗菌活性、免疫応答の刺激、および、細菌接着/転位の競合的排除(Fedorak、2004)。これに関して、M−17は、マウスの大腸炎に併せて増大する前炎症性サイトカインのレベルを低下させることができるので、M−17は免疫調節作用を有するようである。このプロバイオティック作用薬は、抗原提示およびNF−κBシグナル伝達において役割を果たすと考えられるプロテアソームサブユニットである結腸LMP2の発現を一貫して調節しなかった(図14)。
【0252】
図7および図10に示されるデータは、腸バリアの一体性を強化することにおけるM−17についての直接的な役割を裏付けていない。実際、腸の透過性が、プロバイオティック/水により処置されたマウスにおいて高まった。しかしながら、正規化された腸透過性の値は、M−17/水の群と比較して、M−17/DSSの群では事実上同一であった(すなわち、変化しなかった)(図10)。これらの結果は、プロバイオティックが、DSSの投与に関連した透過性における二次的な増大を防止し得ることを示唆する。これに関して、前炎症性サイトカインは、腸バリアの透過性を乱すことが知られている(Ma、2004;Sappington、2003)。M−17は、DSS投与の期間中に生じる炎症性サイトカインの産生を弱めることによって、透過性における二次的な増大を防止することができる(表7を参照)。
【0253】
これらの試験からの全体的な結論は、5×10CFU/mlおよび5mg/kgのE.coli菌株M−17の経口用量により、主な有害副作用がC57/BL−6マウスにおいて引き起こされなかったことである。5×10CFU/mlの経口用量において、M−17はC57/BL−6マウスにおけるDSS誘発大腸炎の様々なパラメーターを弱めた。これらのパラメーターには、臨床的マーカー(疾患活性指標)、形態学的マーカー(結腸長さ、セグメントでの結腸重量)、および、生化学的マーカー(結腸ミエロペルオキシダーゼおよび前炎症性サイトカインのレベル)が含まれる。M−17は、急性DSS誘発大腸炎のパラメーターを低下させることについて、メトロニダゾールと類似する有効性プロフィルを有するようであった。EC−M−17およびメトロニダゾールの組み合わせられた投与は、C57/BL−6マウスにおける大腸炎のパラメーターを低下させることにおいて非常に効果的であった。
【0254】
(実施例8)
便の微生物学上のM−17の効果
便サンプルは、乳酸菌の一般的な範疇に属するグラム陽性細菌(ラクトバチルス属、ロイコノストック属、エンテロコッカス属、スタフィロコッカス属およびストレプトコッカス属)を主として含有することが見出された。グラム陽性細菌は数でグラム陰性細菌よりも約100倍多かった。全サンプルにおけるグラム陰性細菌の数は便ペレットの1グラム湿重量あたり約2×10CFU〜約1×10CFUの範囲であった。だが、非処置(生理的食塩水/水)のマウスから得られた便ペレットにおけるグラム陰性細菌の数は、すべての他の群のグラム陰性細菌の数よりも、有意なほどではないが、わずかに少なかった。非処置マウスの支配的なグラム陰性細菌叢は、好気性のシュードモナス属からなり、大腸菌およびエンテロバクター属を時々伴った。
【0255】
DSSが投与されたマウスは、エンテロバクター属グラム陰性細菌の割合における増大と、大腸菌の割合における低下とを示した。逆説的ではあるが、M−17プロバイオティックおよびDSSにより処置されたマウスから得られた便サンプルはE.coliのコロニーを事実上示さなかった。メトロニダゾール単独およびDSSにより処置されたマウスの細菌叢は、生理的食塩水およびDSSにより処置されたマウスから得られたサンプルの細菌叢と本質的に同じであった。メトロニダゾール、M−17およびDSSにより処置されたマウスの好気性細菌叢は、特定されていない通性的なグラム陰性細菌が便サンプルの9個中3個(33%)において見出されたという点で、M−17により処置されていない動物の細菌叢と異なった。
【0256】
メトロニダゾールは、エクスビボで50μg/mlで投与されたとき、好気性および通性のグラム陽性細菌叢およびグラム陰性細菌叢の個々の単離菌を阻害しなかった。
【0257】
(実施例9)
結腸のNF−κB p65に対するM−17の効果
DSS大腸炎モデルにおけるNF−κB p65サブユニットの発現を調べた。マウス結腸の核抽出物から得られる代表的なウエスタンブロットが図15に示される。認められ得るように、p65が比較的ほとんど発現していないことが、13日間の期間にわたって水を投与されている動物の結腸において見出された。対照的に、より顕著なp65発現が、2%生理的食塩水/DSSを投与されている動物において見出された。しかしながら、p65の発現は、プロバイオティックM−17/DSSによる処置群に由来するマウスではそれほど明白ではなかった。相対的デンシトメトリー分析(これにより、データが、生理的食塩水/水により処置されたマウスに見出される平均p65値に対して正規化された)では、p65の発現が、生理的食塩水/DSSにより処置された動物において高まったという証拠、および、M−17による13日間のマウスの処置はp65の平均発現を低下させたという証拠が得られた。
【0258】
インビトロ試験
(実施例10)
NF−κB受容体遺伝子アッセイにおけるM−17の効果
最初の用量応答試験では、M−17が、NF−κBにより駆動されるルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイシステムのTNF−α誘導による活性化を用量依存的様式で弱めたことが示された(図16A)。5×10CFU/mlにおいて、NF−κBシグナル伝達のいくらかの阻害(29%、P<0.05)が明白であった。より顕著な阻害(89%、P<0.001)が、5×10CFU/mlの用量のM−17(96%、P<0.001)と同様に、5×10CFU/mlの用量のM−17により見られた。5×10CFU/mlはまた、インビボ大腸炎モデルで利用されたM−17の濃度である。追跡試験において(図16B)、1×10CFU/mlのM−17が投与された。DSS誘発の大腸炎を用いたインビボ試験で使用された濃度の1/50であるこの比較的低い濃度でさえ、NF−κBのTNF−α誘導による活性化がプロバイオティックによって著しく低下した(65%、P<0.05)。この濃度において、M−17は、MTSミトコンドリア代謝アッセイ(Promega)によって求められたとき、ヒト胚性腎臓293T細胞の生存能力に対する効果を何ら有していなかった。
【0259】
(実施例11)
マクロファージ活性化に対するE.coli菌株の効果
マクロファージ活性化に対するプロバイオティックE.coli菌株の効果を、図17に概略的に示されるように、マウスのマクロファージ細胞株RAW264.7を使用してインビトロで調べた。
【0260】
RAW264.7をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得て、10%FBS(ウシ胎児血清)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で成長させた。
【0261】
ナイーブなマクロファージを200万個/mlの密度で利用した。ECOR−29、ECOR−49、ECOR−51、ECOR−59、ECOR−61、ECOR−62またはM−17のE.coli菌株を約1×10CFU/mlの濃度でマクロファージ細胞培養系に加えた。その直後、リポ多糖(LPS)を5μg/mlで加えた。コントロール群を上記E.coli菌株の存在下および非存在下で生理的食塩水にさらし、また、E.coli菌株に単独でさらした。
【0262】
培養培地のサンプルを直ちに、また、4時間後に集め、サイトカイン(IL−1β、IL−6およびTNF)のレベルを、適切なELISAキット(Pierce−Endogen)をキットにおける説明書に従って使用してアッセイした。
【0263】
図18に示されるように、生理的食塩水単独またはLPSのいずれかの存在下でのマクロファージ細胞株RAW264.7によるIL−1β分泌がE.coli菌株ECOR−51の存在下で著しく増大し、一方で、他の菌株は分泌レベルに対する効果は少なかった。LPSによる処置はIL−1β分泌における著しい増大をもたらしたが、この増大は、ECOR−51を除いて、試験されたすべてのE.coli菌株の存在によって弱められた。弱化の最も大きいレベルが菌株ECOR−59およびM−17により示された。
【0264】
図19に示されるように、生理的食塩水の存在下でのTNF−α分泌が、M−17を除いて、調べられたすべてのE.coli菌株の存在下で大きく増大した。LPSは単独ではTNFレベルにおける非常に大きい増大をもたらしたが、この増大は、試験されたすべての菌株によって、ある程度弱められたが、最も大きい弱化がM−17の存在下で生じた。
【0265】
図20に示されるように、IL−6のレベルが、LPSによる刺激の後の4時間で得られた培養サンプルにおいて大きく増大し、一方で、生理的食塩水または単独でのM−17により処置されたコントロールサンプルは著しい増大を示さなかった。LPS刺激による増大は、M−17を加えることによってほぼ完全に阻止された。
【0266】
図18〜20に示されるように、このマクロファージ細胞株におけるサイトカイン分泌はベースラインにおいて本質的にはほぼゼロであった。4時間後、M−17は、アッセイされた3つのサイトカインの分泌をほんの少し刺激しただけであり、これに対して、LPSによる処置は前炎症性サイトカインの分泌における実質的な増大をもたらした(図18〜20)。M−17は、ビヒクルにさらされただけのLPS処理の細胞と比較したとき、TNF−α、IL−1βおよびIL−6のLPS誘導による分泌を著しく阻害した(90%超、P<0.05)。これらのサイトカインの濃度は、単独でのM−17処置により認められる濃度と事実上同じであった。比較により、メトロニダゾール(50μg/ml)は、RAW264.7細胞培養物にさらされたとき、LPS刺激によるサイトカイン分泌を低下させなかった(データは示されず)。熱殺傷M−17またはM−17馴化培地はいずれも、LPS処理されたマクロファージにおけるサイトカイン分泌を効果的に低下させなかった(図21)。1×10CFU/mlにおいて、M−17は、トリパンブルー排除法によって求められたようなマクロファージの生存能力に効果を及ぼさなかった。
【0267】
(実施例12)
マクロファージにおけるp65の核結合に対するM−17の効果
3時間の暴露の後で、単独でのM−17(LPSを伴わない)は、ビヒクルと比較したとき、p65の核結合をほんの少し増大させただけであった。しかしながら、p65の結合におけるLPS誘導による増大が1×10CFU/mlのM−17により著しく阻害された(78%、P<0.05)(図22)。アッセイ特異性の確認が、p65の結合が野生型オリゴヌクレオチドコントロールにより完全に阻害されることによって明らかにされた。
【0268】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0269】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0270】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む生物学的治療組成物。
【請求項2】
前記大腸菌株は、M−17、その単離菌およびその変異菌からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記大腸菌株M−17単離菌または変異菌は、大腸菌株BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))、M−17のナリジクス酸耐性株および大腸菌株(ATCC寄託番号PTA−7295(M17SNAR))からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗生物質は、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、イミペネム、ナリジクス酸およびクリンダマイシンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗生物質はメトロニダゾールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
さらなる有効成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記さらなる有効成分は少なくとも1つのプロバイオティック菌株である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記大腸菌株の濃度は前記キャリアの1mlあたり約5×10コロニー形成単位〜約5×10コロニー形成単位の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記キャリアは0.6%生理的食塩水溶液を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの矯味矯臭剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
嫌気性細菌により引き起こされる状態の治療または予防における使用のために特定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
包装材に包まれ、前記状態の治療または予防における使用のために、前記包装材の中または表面において、印刷で特定される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記大腸菌株および前記抗生物質は相乗的に作用する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記嫌気性細菌は硫酸塩還元細菌である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記状態は腸の障害である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記腸の障害は、回腸嚢炎、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘液性大腸炎および下痢からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
回腸嚢炎の治療または予防における使用のために特定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、マイクロカプセル、粉剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記プロバイオティック大腸菌株は乾燥形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療または予防する方法であって、プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量とを治療または予防の必要性のある対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記抗生物質は、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、イミペネム、ナリジクス酸およびクリンダマイシンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗生物質はメトロニダゾールであり、前記メトロニダゾールの前記医薬的に効果的な量は、前記対象の体重1kgについて約20mgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗生物質は、前記プロバイオティック大腸菌株を投与する前に、前記プロバイオティック大腸菌株を投与するのと同時に、または、前記プロバイオティック大腸菌株を投与することに続いて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記抗生物質および前記プロバイオティック大腸菌株は、医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む生物学的治療組成物の一部を共に形成する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記対象にさらなる有効成分の医薬的に効果的な量を投与することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記さらなる有効成分は少なくとも1つのプロバイオティック菌株を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物中の前記大腸菌株の濃度は前記キャリアの1mlあたり約5×10コロニー形成単位〜約5×10コロニー形成単位の範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記キャリアは0.6%生理的食塩水溶液を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は少なくとも1つの矯味矯臭剤をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記大腸菌株および前記抗生物質は相乗的に作用する、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記嫌気性細菌は硫酸塩還元細菌である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記状態は腸の障害である、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記腸の障害は、回腸嚢炎、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘液性大腸炎および下痢からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記状態は回腸嚢炎である、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記状態は潰瘍性大腸炎および回腸嚢炎の組み合わせである、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記生物学的治療組成物は、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、マイクロカプセル、粉剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物からなる群から選択される形態を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
プロバイオティック大腸菌株の医薬的に効果的な量と、前記大腸菌株が耐性である少なくとも1つの嫌気性細菌用抗生物質の医薬的に効果的な量との組み合わせでの使用であって、嫌気性細菌により引き起こされる状態を治療するための薬剤を製造することにおける、使用。
【請求項38】
前記抗生物質は、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、イミペネム、ナリジクス酸およびクリンダマイシンからなる群から選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記抗生物質はメトロニダゾールであり、前記メトロニダゾールの前記医薬的に効果的な量は、前記対象の体重1kgについて約20mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記抗生物質は、前記プロバイオティック大腸菌株を投与する前に、前記プロバイオティック大腸菌株を投与するのと同時に、または、前記プロバイオティック大腸菌株を投与することに続いて投与される、請求項37に記載の使用。
【請求項41】
前記抗生物質および前記プロバイオティック大腸菌株は、医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む生物学的治療組成物の一部を共に形成する、請求項37に記載の使用。
【請求項42】
前記抗生物質および前記プロバイオティック大腸菌株は、さらなる有効成分の医薬的に効果的な量との組み合わせで利用される、請求項37に記載の使用。
【請求項43】
前記さらなる有効成分は少なくとも1つのプロバイオティック菌株を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記組成物中の前記大腸菌株の濃度は前記キャリアの1mlあたり約5×10コロニー形成単位〜約5×10コロニー形成単位の範囲である、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
前記キャリアは0.6%生理的食塩水溶液を含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記組成物は少なくとも1つの矯味矯臭剤をさらに含む、請求項41に記載の使用。
【請求項47】
前記大腸菌株および前記抗生物質は相乗的に作用する、請求項37に記載の使用。
【請求項48】
前記嫌気性細菌は硫酸塩還元細菌である、請求項37に記載の使用。
【請求項49】
前記状態は腸の障害である、請求項37に記載の使用。
【請求項50】
前記腸の障害は、回腸嚢炎、微生物感染、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘液性大腸炎および下痢からなる群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記状態は回腸嚢炎である、請求項37に記載の使用。
【請求項52】
前記状態は潰瘍性大腸炎および回腸嚢炎の組み合わせである、請求項37に記載の使用。
【請求項53】
前記生物学的治療組成物は、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、マイクロカプセル、粉剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物からなる群から選択される形態を有する、請求項41に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−537547(P2009−537547A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511071(P2009−511071)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/011859
【国際公開番号】WO2007/136719
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508342275)バイオバランス エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】