説明

生物学的流体フィルタ

複数の繊維状多孔質ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、このエレメントが少なくとも約36.8cm水柱のP8値を有する、生物学的流体を処理するための生物学的流体フィルタが開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
[0001]本特許出願は、参照によって組み込まれる2002年10月25日出願の米国特許仮出願第60/421066号の恩典を主張するものである。
【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は、生物学的流体(biological fluid)を処理するためのフィルタ、好ましくは全血、血液成分などの生物学的流体をろ過するための白血球除去フィルタに関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003]血液は、赤血球、血小板、血漿および各種白血球を含むいくつかの成分を含む。さまざまに使用するため、具体的には輸血製剤として使用するために、血液成分を分離し、さらに処理することができる。実例として、赤血球(一般に赤血球濃厚液として濃縮される)、血漿および血小板(一般に濃厚血小板として濃縮される)を、患者に別個に投与することができる。いくつかの成分、例えば血漿および/または血小板は投与前にプールすることができ、血漿は、さまざまに使用される濃縮された成分を得るために、さらに処理する、例えば分別することができる。
【0004】
[0004]いくつかの処理プロトコルは、赤血球、血小板および/または血漿から白血球を除去するためのろ過を含む。しかし、いくつかのフィルタは、所望のレベルまで白血球を除去することができず、かつ/あるいは、所望の収量の1種または数種の他の成分を得ることができず、かつ/あるいは、ろ過する流体の温度および/または保存期間によって異なる結果を与える。いくつかのフィルタは、望ましくないほどに大きなホールドアップ体積を有し、または処理時間を増大させる。
【0005】
[0005]本発明は、従来技術のこれらの欠点のうちの少なくともいくつかを改善する。本発明のこれらの利点および他の利点は、以下に記載する説明から明白となろう。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本発明の一実施形態では、複数の繊維状ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、このエレメントが少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有し、好ましくはこのエレメントが、約2マイクロメートルから約6マイクロメートルの範囲の細孔径を有する生物学的流体フィルタが提供される。
【0007】
[0007]他の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの第1の白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1の白血球除去フィルタエレメントが、第2の白血球除去フィルタエレメントとは異なる坪量を有し、それぞれのフィルタエレメントが約42g/ft(約452g/m)以下の坪量を有し、少なくとも一方のエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する生物学的流体フィルタを提供する。
【0008】
[0008]本発明の他の実施形態に基づく生物学的流体フィルタは、2つの第1の白血球除去エレメントおよび第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第2のフィルタエレメントが、2つの第1の白血球除去フィルタエレメントの間に、2つの第1の白血球除去フィルタエレメントに隣接して配置され、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第2のフィルタエレメントが、隣接する第1のフィルタエレメントよりも高い坪量および/または低いP8値を有する。より好ましい実施形態ではさらに、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、第2のフィルタエレメントが、隣接する第1のフィルタエレメントとは異なる。
【0009】
[0009]他の実施形態では、第1の白血球除去フィルタエレメントおよび2つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第1のフィルタエレメントが、2つの第2の白血球除去フィルタエレメントの間に、2つの第2の白血球除去フィルタエレメントに隣接して配置され、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1のフィルタエレメントが、隣接する第2のフィルタエレメントよりも低い坪量および/または高いP8値を有する生物学的流体フィルタが提供される。より好ましい実施形態ではさらに、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、第1のフィルタエレメントが、隣接する第2のフィルタエレメントとは異なる。
【0010】
[0010]好ましい実施形態では、複数の繊維状ろ材層、よりいっそう好ましくはさらに複数の白血球除去フィルタエレメントが、互いから容易に分離可能である。
【0011】
[0011]さらに、これらのフィルタを含むフィルタ装置、これらのフィルタおよびフィルタ装置を含むシステム、ならびにこれらのフィルタ、フィルタ装置およびシステムを使用して生物学的流体、好ましくは全血の白血球を除去する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【0012】
[0017]一実施形態では、複数の繊維状ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、このエレメントが少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する白血球除去フィルタが提供される。白血球除去フィルタエレメントは、約2マイクロメートルから約6マイクロメートルの範囲の細孔径を有することが好ましい。
【0013】
[0018]他の実施形態では、白血球除去フィルタが、複数の繊維状ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、このエレメントが、約15から約18インチ水柱(約38.1から約45.7cm水柱)の範囲のP8値、約2マイクロメートルから約6マイクロメートルの範囲の細孔径、および約15から約30g/ft(約161から約323g/m)の範囲の坪量を有する。
【0014】
[0019]他の実施形態によれば白血球除去フィルタエレメントが提供される。このエレメントは少なくとも3つの層を含む多孔質繊維状ろ材を含み、これらの層はそれぞれ約2.2から約3.1g/ft(約23.7から約33.3g/m)の範囲の坪量を有し、繊維は約3.5マイクロメートル以下の平均繊維径を有し、エレメントは少なくとも約75ダイン/cm(0.75エルグ/mm)の臨界濡れ表面張力を有する。
【0015】
[0020]本発明の好ましい実施形態では生物学的流体フィルタが提供される。一実施形態では、このフィルタが、少なくとも1つの第1の多孔質白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1のフィルタエレメントが、第2のフィルタエレメントとは異なる坪量および第2のフィルタエレメントよりも高いP8値を有し、少なくとも一方のエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(36.8cm水柱)のP8値を有する。
【0016】
[0021]より好ましい一実施形態では、生物学的流体フィルタが、隣接する複数の多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、それぞれのエレメントが複数の繊維状ろ材層を含み、隣接するフィルタエレメントの対ごとに、それらのエレメントが、坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して異なる。より好ましくは、隣接するフィルタエレメントの対ごとに、それらのエレメントが、P8値および坪量のうちの少なくとも1つに関して互いに異なる。例えば例示的な一実施形態では本発明が、少なくとも1つの第1の白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1の白血球除去フィルタエレメントが、第2の白血球除去フィルタエレメントとは異なる坪量を有し、それぞれのフィルタエレメントが約42g/ft(約452g/m)以下の坪量を有し、少なくとも一方のエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する生物学的流体フィルタを提供する。
【0017】
[0022]一実施形態では、生物学的流体フィルタが、少なくとも3つの隣接する多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、隣接する白血球除去フィルタエレメント間に配置された白血球除去エレメントが、隣接する上流側および下流側の白血球除去フィルタエレメントよりも低いP8値、高い坪量、高い平均空隙容積、大きな細孔径および大きな平均繊維直径のうちの少なくとも1つを有する。
【0018】
[0023]本発明の他の実施形態では、生物学的流体フィルタが、少なくとも3つの隣接する多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、それぞれのエレメントが複数の繊維状ろ材層を含み、隣接する白血球除去フィルタエレメント間に配置された白血球除去エレメントが、隣接する上流側および下流側の白血球除去フィルタエレメントよりも高いP8値、低い坪量、低い平均空隙容積、小さい細孔径および小さい平均繊維直径のうちの少なくとも1つを有する。
【0019】
[0024]本発明の他の実施形態に基づく生物学的流体フィルタは、2つの第1の白血球除去エレメントおよび第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第2のフィルタエレメントが、2つの第1の白血球除去フィルタエレメントの間に、2つの第1の白血球除去フィルタエレメントに隣接して配置され、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第2のフィルタエレメントが、隣接するそれぞれの第1のフィルタエレメントよりも高い坪量および/または低いP8値を有する。より好ましい実施形態ではさらに、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、第2のフィルタエレメントが、隣接する第1のフィルタエレメントとは異なる。
【0020】
[0025]他の実施形態では生物学的流体フィルタが、第1の白血球除去フィルタエレメントおよび2つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含み、第1のフィルタエレメントが、2つの第2の白血球除去フィルタエレメントの間に、2つの第2の白血球除去フィルタエレメントに隣接して配置され、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1のフィルタエレメントが、隣接するそれぞれの第2のフィルタエレメントよりも低い坪量および/または高いP8値を有する。より好ましい実施形態ではさらに、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、第1のフィルタエレメントが、隣接する第2のフィルタエレメントとは異なる。
【0021】
[0026]好ましい実施形態では、複数の繊維状ろ材層が互いから容易に分離可能であり、よりいっそう好ましい実施形態ではさらに、複数の白血球除去エレメントが互いから容易に分離可能である。
【0022】
[0027]本発明の他の実施形態によれば、白血球除去装置を提供するため、入口および出口を有し、入口と出口の間に流体流路を提供するハウジングの中に、上記の生物学的流体フィルタが、流体流路を横切って配置される。
【0023】
[0028]本発明の他の実施形態によれば、白血球除去装置を提供するため、入口および出口を有し、入口と出口の間に流体流路を提供する柔軟な容器の中に、上記の生物学的流体フィルタが、流体流路を横切って配置される。
【0024】
[0029]他の実施形態では、白血球除去装置を提供するため、入口および出口を有し、入口と出口の間に第1および第2の流体流路を画定するハウジングの中に、2つの上記生物学的流体フィルタが、一方が第1の流体流路を横切って、もう一方が第2の流体流路を横切って配置される。一実施形態では、一方のフィルタの第1の表面がもう一方のフィルタの第1の表面と向かい合い、一方のフィルタの第1の表面の少なくとも一部分がもう一方のフィルタの第1の表面から離隔されており、より好ましくは、この装置が、第1のフィルタと第2のフィルタの間の固体仕切りを実質上欠いている。例えば、一般に変化する寸法を有するフィルタ間の空間(例えばテーパの付いた直径断面領域)は、第1のフィルタを一方の境界とし、第2のフィルタをもう一方の境界とする。
【0025】
[0030]本発明の実施形態は、白血球が除去された血液成分、特に赤血球および血小板の収量が高いことが望ましい、赤血球、血小板、血漿および白血球を含む生物学的流体、例えば全血をろ過するのに特に適している。
【0026】
[0031]本発明の一実施形態に基づく生物学的流体の一処理方法は、複数の繊維状ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含む生物学的流体フィルタに、白血球を含む生物学的流体を通して、生物学的流体から白血球を除去することを含み、このエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8を有する。より好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の多孔質白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、第1のフィルタエレメントが、第2のフィルタエレメントとは異なる坪量および第2のフィルタエレメントよりも高いP8値を有し、少なくとも一方のエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する生物学的流体フィルタに、白血球を含む生物学的流体を通して、生物学的流体から白血球を除去する。好ましい一実施形態では、フィルタに通す生物学的流体は全血である。
【0027】
[0032]所望ならば、ろ過する生物学的流体をろ過前に保存しておくことができる。生物学的流体は一般に採集から約24時間以内にろ過され、一部の実施形態では採集から約8時間以内にろ過される。
【0028】
[0033]本発明の他の実施形態によれば、上記の生物学的流体フィルタ、より好ましくは白血球除去装置と、フィルタまたはフィルタを含む装置と流体連通した血液バッグなどの少なくとも1つの柔軟な容器とを含む、生物学的流体処理システムが提供される。このシステムの代表的な実施形態では、システムが、白血球除去装置の出口の下流側に、柔軟な血液バッグを含む生物学的流体受取り容器を含む。より好ましい実施形態ではこのシステムが、少なくとも2つの柔軟な血液バッグを含むクロースドシステムを含む。
【0029】
[0034]次に、本発明の各構成要素を詳細に説明する。説明の中では同じ構成要素が同じ参照符号を有する。
【0030】
[0035]本発明の好ましい実施形態によれば、フィルタは、少なくとも3つのフィルタエレメント(例えば図1〜3に示したフィルタエレメント)を含み、それぞれのエレメントは、2層以上の繊維層(より好ましくはこれらの繊維層は容易に分離可能である。すなわち互いにぴったりとは結合されていない)を含み、隣接する3つのエレメントごとに、中間のエレメントが、坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、隣接する上流側および下流側のエレメントとは異なる。よりいっそう好ましくは、中間エレメントが、坪量およびP8値のうちの少なくとも1つに関して、隣接する上流側および下流側のエレメントとは異なる。
【0031】
[0036]中間エレメントに隣接する上流側エレメントと下流側エレメントは、同じかまたは異なる坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および/または層数を有することができ、その特徴または特徴の組合せは、中間エレメントの特徴または特徴の組合せとは異なる。
【0032】
[0037]図1〜3を参照してこれを説明する。図はそれぞれ、少なくとも3つのエレメントを含むフィルタの概略図を示しており、それぞれのエレメントは複数の層を含んでいる。図1は、2つのフィルタエレメント1(2つの第1のフィルタエレメント)の間に配置されたフィルタエレメント2(第2のフィルタエレメント)を示している。図2は、2つのフィルタエレメント2の間に配置されたフィルタエレメント1を示している。4つのフィルタエレメントを示す図3は、2つのフィルタエレメント1の間に配置されたフィルタエレメント2、および2つのフィルタエレメント2の間に配置されたフィルタエレメント1を示している。
【0033】
[0038](図1および3に示すように)2つのフィルタエレメント1の間にフィルタエレメント2が配置された実施形態では、坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、フィルタエレメント2が隣接するエレメント1とは異なる。2つのフィルタエレメント1は、同じかまたは異なる坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および/または層数を有することができ、その特徴または特徴の組合せは、間に配置されたフィルタエレメント2の特徴または特徴の組合せとは異なる。例えば、フィルタエレメント2は、約12インチ水柱(約30.5cm水柱)のP8値を有することができ、フィルタエレメント1はともに、約15インチ水柱(約38.1cm水柱)のP8値を有することができ、またはエレメント1はそれぞれに異なるP8値を有することができ、例えば、一方のエレメント1は約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有することができ、もう一方のエレメント1は約15インチ水柱(約38.1cm水柱)のP8値を有することができる。あるいは、またはこれに加えて、フィルタエレメント2は、例えば、約32から約35g/ft(約344から約376g/m)の範囲の坪量を有することができ、フィルタエレメント1はともに、約22から約28g/ft(約237から約301g/m)の範囲の坪量を有することができ、またはフィルタエレメント1は異なる坪量、例えば、約23から約25g/ft(約247から約269g/m)の範囲の坪量、および約26から約28g/ft(約280から約301g/m)の範囲の坪量を有することができる。
【0034】
[0039]同様に、(図2および3に示すように)2つのフィルタエレメント2間にフィルタエレメント1が配置された実施形態では、坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および層数のうちの少なくとも1つに関して、フィルタエレメント1が、隣接するエレメント2とは異なる。2つのフィルタエレメント2は、同じかまたは異なる坪量、P8値、細孔構造、平均繊維径、平均空隙容積および/または層数を有することができ、その特徴または特徴の組合せは、間に配置されたフィルタエレメント1の特徴または特徴の組合せとは異なる。例えば、フィルタエレメント1は、約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有することができ、フィルタエレメント2はともに、約12インチ水柱(約30.5cm水柱)のP8値を有することができ、またはエレメント2はそれぞれに異なるP8値を有することができ、例えば、一方のエレメント2は約11.5インチ水柱(約29.2cm水柱)のP8値を有することができ、もう一方のエレメント2は約13インチ水柱(約33cm水柱)のP8値を有することができる。あるいは、またはこれに加えて、フィルタエレメント1は、例えば、約23から約27g/ft(約247から約290g/m)の範囲の坪量を有することができ、フィルタエレメント2はともに、約31から約39g/ft(約333から約419g/m)の範囲の坪量を有することができ、またはフィルタエレメント2は異なる坪量、例えば約32から約35g/ft(約344から約376g/m)の範囲の坪量、および約37から約39g/ft(約398から約419g/m)の範囲の坪量を有することができる。
【0035】
[0040]フィルタは、任意の数の第1および/または第2のエレメントを有することができ、どちらのエレメントが最も上流側のエレメントでも、または最も下流側のエレメントでもよい。フィルタは、交互および非交互フィルタエレメントを含むことができる。
【0036】
[0041]より好ましい一実施形態では、フィルタが、複数の交互に並んだ複数の第1および第2のエレメント、例えば第1のエレメント、第2のエレメント、第1のエレメント、第2のエレメント(例えば図3参照)を含み、第1のエレメントが、第2のエレメントのP8値および/または坪量よりも大きなP8値および/または低い坪量を有する。
【0037】
[0042]特定の機構には限定されないが、この交互配置は、さまざまな血液成分に対して複数の流路を提供し、血液成分のより効率的な相互分離(白血球の保持)、および所望の成分のより効率的な通過を可能にすると考えられる。さらに、またはあるいは、その機構は理解されておらず、かつそれによって限定されないが、この交互配置は、血小板の活性化を低減させ(したがってろ過された最適な品質の血小板の収量を増大させ)、その一方で、白血球の活性化を増大させ、かつ/または少なくとも1つの白血球サブセットの活性化を増大させる(したがって、活性化された白血球はフィルタエレメントによってよりいっそう効率的に吸着されるため、より大きな割合の白血球が保持される)と考えられる。
【0038】
[0043]先に述べたとおり、好ましい一実施形態ではそれぞれのエレメントが、互いから容易に分離可能な複数の繊維層を含む。本発明によれば層は互いから容易に分離可能であり、例えば加熱、カレンダ加工および/または接着剤によって、例えば層の主要な表面が互いに結合されておらず、または互いにぴったりとは結合されていない。一般に、例えば、隣接する層の接触面は互いに熱または接着剤によって結合されておらず、これらの層はカレンダ加工されていない。実例として、隣接する層の接触面の表面積の少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約95%、よりいっそう好ましくは少なくとも約98%が互いに結合されていない。例えば互いに接触した隣接する層の主表面の外縁または外周どうしを圧着させることができるが、これらの層は容易に分離することができる。よりいっそう好ましい実施形態では、フィルタエレメントも互いから容易に分離可能である。特定の機構には結び付けられないが、結合されていない層(およびエレメント)の使用は、意外にもフィルタのホールドアップ体積を過度に増大させることなく、生物学的流体の成分をより広いフィルタ表面にさらすと考えられる。
【0039】
[0044]生物学的流体を処理する本発明に基づく方法の好ましい実施形態によれば、赤血球および/または血小板を含む生物学的流体、より好ましくは赤血球および血小板を含む生物学的流体、よりいっそう好ましくは全血を、先に説明した生物学的流体フィルタに通して、白血球が除去された生物学的流体を得る。
【0040】
[0045]より好ましい実施形態では、ろ過され、白血球が除去された生物学的流体がクロースドシステムで得られる。よりいっそう好ましくは、白血球が除去された生物学的流体をさらに、一般に遠心分離を含む追加の処理にかけて、例えば白血球が除去された生物学的流体のさまざまな成分を分離し、例えば白血球が除去された赤血球濃厚液(PRC)、白血球が除去された濃厚血小板(PC)および/または白血球が除去された血漿を得る。
【0041】
[0046]本発明のいくつかの実施形態は、白血球が除去され、単位生物学的流体あたり5×10個未満の残留白血球を有する生物学的流体(例えばPRC、PCおよび血漿のうちの少なくとも1つ)を提供し、一実施形態では、単位生物学的流体あたりの残留白血球数を1×10個未満にすることができる。
【0042】
[0047]本発明の好ましい実施形態は、白血球が除去され(白血球数が低減され)、単位血液成分あたり5×10個未満の残留白血球を有するPRC、PCおよび血漿を提供し、全PC単位の少なくとも75%が、1単位あたり少なくとも5.5×1010個の血小板を有する。より好ましい実施形態では、全PC単位の少なくとも90%が、1単位あたり少なくとも5.5×1010個の血小板を有し、1単位あたり5×10個未満の残留白血球を有する。
【0043】
[0048]本発明のいくつかの実施形態は、白血球数が低減され、単位血液成分あたり1×10個未満の残留白血球を有するPRC、PCおよび血漿を提供し、全PC単位の少なくとも75%が、1単位あたり少なくとも6×1010個の血小板を有する。
【0044】
[0049]本発明の実施形態によれば、これらの結果は、例えば室温でのPRP処理、「バフィコート」処理および冷却板(cooling plate)の使用に基づいて、保存血および新鮮血を使用して得ることができる。
【0045】
[0050]本発明によれば以下の定義が使用される。
【0046】
[0051]生物学的流体。生物学的流体は、生物に関連した処理されたまたは無処理の流体、具体的には血液を含み、これには、全血、温血または冷血、保存血または新鮮血;食塩水、栄養溶液および/または抗凝固剤溶液を含む少なくとも1種の生理溶液で希釈した血液などの処理された血液;濃厚血小板(PC)、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿(PPP)、無血小板血漿、血漿、新鮮凍結血漿(FFP)、血漿から得た成分、赤血球濃厚液(PRC)、移行帯物質、バフィコート(BC)などの血液成分;血液または血液成分から得た血液製剤、あるいは骨髄から得た血液製剤;幹細胞;血漿から分離し、生理流体または凍結防止流体に再懸濁させた赤血球;血漿から分離し、生理流体または凍結防止流体に再懸濁させた血小板、が含まれる。本発明に従って処理する前に、生物学的流体を予め処理して白血球の一部を除去しておくことができる。本明細書で使用するとき、血液製剤または生物学的流体は、上に記載した成分、および他の手段で得られた同様の特性を有する同様の血液製剤または生物学的流体のことを言う。
【0047】
[0052]1「単位」は、1人の供血者から得た生物学的流体の量、または1単位の全血から得た生物学的流体の量である。1回の供血の間に採取される量を指すこともある。一般に1単位の量は変化し、患者ごとに、および供血のたびに異なる。数単位分の血液成分、具体的には数単位分の血小板およびバフィコートをプールする、すなわち混合することができ、これは一般に4単位以上を混合することによって実施される。本発明のいくつかの実施形態によれば、2単位以上を別々に生物学的流体フィルタに通すことができる。
【0048】
[0053]本明細書で使用する用語「クロースド」は、生物学的流体、例えば供血された血液、血液試料および/または血液成分の採集および処理(ならびに所望ならば操作、例えば部分の分離、成分への分離、ろ過、貯蔵および保存)を、システムの完全性を犠牲にする必要なしに可能にするシステムについて言う。クロースドシステムは新たに製作し、または「無菌ドッキング(sterile docking)」装置として知られる装置を使用したシステム構成要素の接続によって得ることができる。例示的な無菌ドッキング装置は、米国特許第4507119号、4737214号および4913756号に記載されている。
【0049】
[0054]本発明によれば、圧力降下を測定する特定の方法が使用され、この方法は、繊維状ろ材試料の重量と空隙容積の両方を正規化して、異なる試料間の意味のある比較を可能にする。この方法は、フィルタ層およびフィルタエレメントの特性を指示するために使用されるP8と呼ばれる値を与える。その結果、特定の応用に対してフィルタエレメント(したがってフィルタ)を、明確に定義された方法で最適化することができる。
【0050】
[0055]P8値は、標準化された面積および容積を有する調整可能な試験ジグアセンブリに接続された試験装置(例えば例示的なジグアセンブリおよび例示的な試験装置が図5に概略的に示されている)を使用して決定される。図示の試験装置500は、クリーンアップフィルタ502、オン/オフ弁503、圧力調節器504、少なくとも1つの圧力計505、流量計506、流量制御(ニードル)弁507、および圧力測定装置508(例えば電子式圧力センサ)を含む。試験する繊維試料を含むジグアセンブリ400に、試験装置500を通してタンク501から圧縮空気を送る。
【0051】
[0056]図示のジグアセンブリ400は、計器401(図にはディジタル計器として示されている)、調整ねじ402、上部アセンブリ403、下部アセンブリ404、および支持スクリーン405を含む。その特性を評価する繊維試料を支持スクリーン405間に置き、ジグアセンブリを調整する。
【0052】
[0057]一例として、調整可能ジグアセンブリの初期ギャップを0.080インチ(P8の「8」)にセットする。直径3.059インチのジグアセンブリでは、ジグの空間の容積が以下のように与えられる。
【0053】
[0058](3.059インチ)×(π/4)×(0.080インチ)×(16.4cm/in)=9.64cc
【0054】
[0059]ジグアセンブリの中の繊維の体積を正規化するため、ジグの空間の容積に試験試料の固体割合(solids fracion:SF)を掛ける。平均空隙容積84.7%の試験試料では、SFは(100%−84.7%)、すなわち15.3%である。SF(0.153)にジグアセンブリ容積(9.64cc)を掛けると、ジグアセンブリの空間の容積を満たすのに必要な繊維の体積(cc)が得られ、この例では1.475cc(=0.153×9.64cc)の繊維が必要である。
【0055】
[0060]したがって、密度1.356g/ccのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂でできた試料では、密度(1.356g/cc)に、ジグアセンブリの空間を満たすのに必要な繊維の体積(1.475cc)を掛けることによって、試料の標的重量、この場合には2グラムが得られる。
【0056】
[0061]PBT繊維でできたろ材の層をカットし、これらの層を積み重ねて、重量が標的重量2グラムにできるだけ近づくようにする。実例を挙げると、ジグアセンブリの面積は約1/20平方フィート(0.051ft)なので、ろ材試料の坪量(g/ft)に1/20を掛けると1層あたりの重量(グラム)が得られる。例えば、坪量2.9g/ftのフィルタ層では、この坪量に1/20ftを掛けることによって0.145グラム/層が得られる。標的重量2グラムに1/0.145グラム/層を掛けると13.79層となる。
【0057】
[0062]この例では、層数13.79が整数ではなく、そのためより都合のよい層数を選択することができる。ジグ開口の厚さ(t)(最初は0.080インチにセット)を、使用する実際の重量に合うように下式に従って増減することができるので、このようにしても、同時に意味のある結果を得ることができる。
【0058】
[0063]t=(実際の重量(グラム)/2グラム)×0.080インチ
【0059】
[0064]その結果に応じて、所望の数の層をジグアセンブリの中に配し、メーカの指示に従って(例えば実施例1の記載に従って)圧縮空気を試験装置に通し、デルタPを測定する。
【0060】
[0065]P8値を得るためには下式を使用する(この例では標的重量が2グラムである)。
【0061】
[0066]P8=(標的重量/実際の円盤の重量)×(測定されたデルタP)
【0062】
[0067](例示的な樹脂を挙げた)下表に示すように、さまざまな材料、例えばポリマーを試験するための標的重量を計算することができる。生物学的流体とともに使用するのに適した、当技術分野で知られている他の材料を選択することができる。圧力降下を測定してP8値を提供するこの方法は容易にスケーリングが可能なので、任意の材料に対してこの標的重量を所与の範囲に収めることができることを当業者は理解されたい。実例として、PBTに対する標的重量を例えば約1から約2.5グラムとすることができる。
【0063】
[0068]
【表1】

【0064】
[0069]本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの白血球除去フィルタエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値、より好ましくは少なくとも約15インチ水柱(約38.1cm水柱)のP8値を有する。
【0065】
[0070]少なくとも2つの白血球除去フィルタエレメントを有する生物学的流体フィルタが提供され、それぞれのフィルタエレメントが複数の繊維状ろ材層を有する本発明のより好ましい実施形態では、少なくとも1つの白血球除去フィルタエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値(よりいっそう好ましくは少なくとも約15インチ水柱(約38.1cm水柱)、例えば約15インチ水柱(約38.1cm水柱)から約18インチ水柱(約45.7cm水柱)までの範囲のP8値)を有し、少なくとも1つの他の白血球除去フィルタエレメントが、約13.5インチ水柱(約34.3cm水柱)以下のP8値(よりいっそう好ましくは約13インチ水柱(約33cm水柱)以下、例えば約11インチ水柱(約27.9cm水柱)から約13インチ水柱(約33cm水柱)までの範囲のP8値)を有する。
【0066】
[0071]本発明の好ましいエレメントによれば、白血球除去フィルタエレメントがそれぞれ、約42g/ft(約452g/m)以下、より好ましくは約40g/ft(約430g/m)以下の坪量を有する。一般に、白血球除去エレメントはそれぞれ少なくとも約8g/ft(約86g/m)の坪量を有する。
【0067】
[0072]少なくとも1つの第1の白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含む生物学的流体フィルタが提供される本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の白血球除去フィルタエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値、および少なくとも約15g/ft(約161g/m)の坪量、例えば約20から約27g/ft(約215から約290g/m)の範囲、あるいは例えば約22から約25g/ft(約237から約269g/m)、または約26g/ftから約27g/ft(約280から約290g/m)の範囲の坪量を有し、少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントが、約13インチ水柱(約33cm水柱)以下のP8値、および約30から約39g/ft(約323から約419g/m)の範囲の坪量、あるいは例えば約31から約35g/ft(約333から約376g/m)、または約37g/ftから約39g/ft(約398から約419g/m)の範囲の坪量を有する。
【0068】
[0073]複数の繊維層を有する本発明に基づく白血球除去フィルタエレメントはそれぞれ、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、よりいっそう好ましくは少なくとも5つ、いくつかの実施形態では少なくとも6つの繊維状ろ材層を含むことが好ましい。一般に、第1の白血球除去フィルタエレメントは、第2の白血球除去フィルタエレメントよりも多くの層を有する。
【0069】
[0074]少なくとも1つの第1の白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントを含むいくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の白血球除去エレメントが少なくとも4層の繊維状ろ材層を含み、それぞれの層が約2.2g/ftから約3.1g/ft(約23.7から約33.3g/m)の範囲の坪量を有し、少なくとも1つの第2の白血球除去フィルタエレメントが少なくとも4層の繊維状ろ材層を含み、それぞれの層が約4.8g/ftから約5.8g/ft(約51.6から約62.4g/m)の範囲の坪量を有する。
【0070】
[0075]フィルタおよびフィルタエレメントは、流体をエレメントに通したときに関心の1種または数種の成分が通過できる適当な任意の細孔構造、例えば細孔サイズ(これは例えばバブルポイントによって、または例えば米国特許第4340479号に記載のKによって明らかにされる)、細孔等級(pore rating)、または細孔径(これは例えば、例えば米国特許第4925572号および5229012号に記載された修正OSU F2試験を使用して特徴づけられる)を有することができる。白血球は主として吸着によって除去されると考えられるが、ろ過によっても除去される。細孔構造は、少なくともあるレベルの白血球が除去され、一方で所望の成分、例えば赤血球、血小板および血漿のうちの少なくとも1つが通過するように選択することができる。使用する細孔構造は、ろ過する生物学的流体の組成およびろ過された生物学的流体の所望の流出レベルによって決まる。
【0071】
[0076]処理する生物学的流体が赤血球、血小板および血漿、例えば全血を含む好ましい実施形態では、それぞれのフィルタエレメントが、(修正OSU F2試験によって特徴づけられた)約2から約9マイクロメートル、より好ましくは約2から約6マイクロメートル、よりいっそう好ましくは約3から約5マイクロメートルの範囲の細孔径を有する。処理する生物学的流体が赤血球、血小板および血漿を含む好ましい実施形態では、フィルタ(すなわち複数のフィルタエレメントを含むフィルタ)が、約1から約5マイクロメートル、より好ましくは約2から約4マイクロメートルの範囲の細孔径を有する。
【0072】
[0077]フィルタエレメントは所望の臨界濡れ表面張力(CWST。例えば米国特許第4925572号および4880548号に定義されている)を有することができる。CWSTは当技術分野で知られているとおりに選択することができ、例えば米国特許第5152905号、5443743号、5472621号および6074869号に追加的に開示されているとおりに選択することができる。フィルタエレメントは互いに同じCWSTまたは異なるCWSTを有することができ、複数のエレメントを有するフィルタは、同じCWSTおよび/または異なるCWSTを有する複数のエレメントを有することができる。一般に、少なくとも1つのフィルタエレメント、好ましくはそれぞれフィルタエレメントが、約75ダイン/cm(約0.75エルグ/mm)を超えるCWST、より一般的には約82ダイン/cm(約0.82エルグ/mm)を超えるCWSTを有し、約86ダイン/cm(約0.86エルグ/mm)以上のCWSTを有することもできる。
【0073】
[0078]それぞれのエレメントが、約80ダイン/cmから約115ダイン/cm(約0.80エルグ/mmから約1.62エルグ/mm)の範囲のCWST、例えば約82から約100ダイン/cm(約0.82から約1.00エルグ/mm)の範囲のCWSTを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、それぞれのエレメントが、約85から約95ダイン/cm(約0.85から約0.95エルグ/mm)の範囲のCWSTを有する。
【0074】
[0079]エレメントの表面特性を、(例えばCWSTに影響を及ぼし、かつ/あるいは表面電荷、例えば正または負電荷を含め、かつ/あるいは表面の極性または親水性を変更するために、)湿式または乾式酸化によって、あるいは表面をポリマーでコーティングしまたは表面にポリマーを付着させることによって、あるいはグラフト反応によって修飾することができる。修飾には例えば、放射線照射、極性または荷電モノマー、荷電ポリマーを用いた表面のコーティングおよび/または硬化、ならびに表面に官能基を結合させるための化学修飾の実施が含まれる。グラフト反応は、ガスプラズマ、熱、バンデルグラフジェネレータ(Van der Graff generator)、紫外光、電子ビームなどのエネルギー源、または他のさまざまな形態の放射への暴露によって、あるいはプラズマ処理を使用した表面エッチングまたは付着によって、活性化させることができる。
【0075】
[0080]一実施形態では、少なくとも1つの白血球除去フィルタエレメントが、高密度のヒドロキシル基を含めるため、より好ましくは高密度のヒドロキシル基に加えてアニオン基、例えばカルボキシル基を含めるために処理された(例えば表面修飾された)繊維状ろ材を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のフィルタエレメントが、このように処理された繊維状ろ材を含む。
【0076】
[0081]例えば第1および/または第2のエレメントはヒドロキシル化された表面を有することができ、一実施形態では第1および/または第2のエレメントが、ヒドロキシル基を含むグラフトされたコーティング、例えばヒドロキシアクリレートポリマーなどのヒドロキシル化されたポリマーを含むグラフトされたコーティングを有する。ヒドロキシル化されたポリマーを含むいくつかの実施形態では、ポリマーがさらにカルボキシル基を含み、例えばヒドロキシル基を含むモノマーとカルボキシル基を含むモノマーとを含むコポリマー、例えばヒドロキシアルキルアクリレートとアクリル酸のコポリマーを含む。
【0077】
[0082]例示的な一技法では、エチレンまたはアクリル部分と、親水基の中から選択することができる第2の基(例えば−COOHまたは−OH)とをそれぞれが含むさまざまなモノマーのうちの少なくとも1つのモノマーが、例えば放射線グラフトで使用される。ろ材のグラフトはさらに、ヒドロキシル基と結合したアクリル部分などのエチレン不飽和基を含む化合物、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、アクリル酸などのモノマーによって実施することができる。このエチレン不飽和基を含む化合物を、メタクリル酸(MAA)などの第2のモノマーと組み合わせることができる。一実施形態では、末端にヒドロキシル基を持つモノマーおよび末端にカルボキシル基を持つモノマーを含む混合物を使用して、繊維状ろ材を表面修飾する。
【0078】
[0083]例示的な化合物および基、例えばヒドロキシル基およびカルボキシル基、ならびに例示的なろ材処理プロトコルには、米国特許第5152905号、4880548号および4925572号、ならびに国際公開WO91/04088に開示されているものなどが含まれる。
【0079】
[0084]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエレメント、一般的には第1および第2の両方のフィルタエレメントが、生理的pH(例えば約7から約7.4)で負のゼータ電位を有する。例えば、第1および/または第2のフィルタエレメントは、生理的pHで約−3ミリボルト(mv)のゼータ電位を有することができ、またはこのゼータ電位をより負のゼータ電位にすること、例えば約−5mvから約−25mvの範囲のゼータ電位にすることができる。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のフィルタエレメントが、生理的pHで約−8mvから約−20mvの範囲のゼータ電位を有する。両方のエレメントが生理的pHで負のゼータ電位を有するいくつかの実施形態では、一方のエレメントが、もう一方のエレメントのゼータ電位よりも負のゼータ電位を有することができる。
【0080】
[0085]一般に、本発明に基づく白血球除去フィルタエレメントはそれぞれ、ガス吸着(Brunauer−Emmett−Teller(BET)測定法)によって決定される、少なくとも約0.8m/g、より好ましくは少なくとも約0.9m/g、よりいっそう好ましくは少なくとも約0.95m/gの平均繊維表面積を有する。
【0081】
[0086]白血球除去エレメントの繊維の平均繊維径(例えば平均繊維表面積から計算される)は約5マイクロメートル以下、より好ましくは約4マイクロメートル以下、よりいっそう好ましくは約3.5マイクロメートル以下であることが好ましい。よりいっそう好ましくは、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する白血球フィルタエレメントが、3マイクロメートル未満の平均繊維径、例えば約1.5マイクロメートルから3マイクロメートル未満の範囲の平均繊維径を有する繊維を有し、約13.5インチ水柱(約34.3cm水柱)以下のP8値を有する白血球フィルタエレメントが、3マイクロメートル以上の平均繊維径、例えば3から5マイクロメートルの範囲の平均繊維径を有する繊維を有する。
【0082】
[0087]一般に、白血球除去フィルタエレメントはそれぞれ少なくとも約75%の平均空隙容積を有し、いくつかの実施形態では、エレメントがそれぞれ少なくとも約85%の平均空隙容積を有する。
【0083】
[0088]合成ポリマー材料を含むさまざまな材料を使用して、本発明に基づくフィルタエレメントの繊維状多孔質ろ材を生産することができる。適当な合成ポリマー材料には例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6T、ナイロン612、ナイロン11およびナイロン6コポリマーが含まれ、ポリエステル、例えばPBTおよびPETがより好ましい。一般に繊維状多孔質ろ材はメルト−ブローン繊維(melt−blown fiber)から調製される。例えば米国特許第4880548号、4925572号、5152905号および6074869号には、メルト−ブローン繊維から調製された多孔質フィルタエレメントが開示されている。
【0084】
[0089]フィルタ装置を提供するために、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、入口と出口の間に少なくとも1つの流体流路を画定するハウジングの中に、複数のフィルタエレメントを含むフィルタが、流体流路を横切って配置される。フィルタ装置は滅菌可能であることが好ましい。少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を提供する適当な形状の任意のハウジングを使用することができる。
【0085】
[0090]適当なハウジングには、米国特許第4880548号、425572号および5600731号に開示されているハウジングなどが含まれる。
【0086】
[0091]例えばハウジングが第1の流体流路および第2の流体流路を画定し、ハウジングが第1の流体流路を横切る第1の生物学的流体フィルタおよび第2の流体流路を横切る第2の生物学的流体フィルタを含むいくつかの実施形態では、適当なハウジングに例えば、米国特許第6231770号に開示されているハウジングが含まれる(この文献は、適当な2つのフィルタ構成、およびハウジング内でのフィルタのシーリングについても開示している)。一般に、一方のフィルタの第1の表面がもう一方のフィルタの第1の表面と向かい合い、一方のフィルタの第1の表面の少なくとも一部分がもう一方のフィルタの第1の表面から離隔されており、より好ましくは、この装置が、第1のフィルタと第2のフィルタの間の固体仕切りを実質上欠いている。例えば、一般に変化する寸法を有するフィルタ間の空間(例えばテーパの付いた直径断面領域)は、第1のフィルタを一方の境界とし、第2のフィルタをもう一方の境界とする。しかし他の実施形態ではフィルタ装置が、第1のフィルタと第2のフィルタの間に固体仕切りを含む。
【0087】
[0092]さまざまな形状の装置ハウジングが本発明での使用に適している。ハウジングの形状は例えば、全体に円形、楕円形、三角形、長方形または正方形とすることができる。例えばフィルタ装置が1つまたは複数の血液バッグを含むシステムの一部であり、このシステムが遠心処理されるいくつかの実施形態では、全体に円形または楕円形の平らな形状が好ましい。例えば、円形または楕円形の平らな装置は複数の血液バッグを有する遠心カップにはめやすく、かつ/あるいは、円形または楕円形の形状は、遠心分離中に血液バッグと接触し血液バッグを損傷する可能性がある角を減らしまたは排除する。
【0088】
[0093]ハウジングは、不浸透性の熱可塑性材料を含む、処理中の生物学的流体に適合する適当な堅い不浸透性の材料から製造することができる。例えばハウジングは、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂などのポリマー、より好ましくは透明なまたは半透明のポリマーとすることができる。このようなハウジングは容易かつ経済的に製造され、ハウジングを通過する生物学的流体を観察することを可能にする。
【0089】
[0094]流体と接触するハウジングの表面は、処理された表面または無処理の表面とすることができる。例えば、プライミングを良好にするために、流体と接触するハウジングの表面を親液性にすることができる。ハウジングの表面を処理する方法には例えば放射線グラフト、ガスプラズマ処理などが含まれる。
【0090】
[0095]他の実施形態では、フィルタ装置を提供するために、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、入口と出口の間に少なくとも1つの流体流路を画定する柔軟なハウジング、例えば柔軟な容器の中に、複数のフィルタエレメントを含むフィルタが、流体流路を横切って配置される。適当な柔軟な容器は、例えば血液バッグの形成に使用されるフィルムと同一のまたは同様のフィルムなどのポリマー材料、例えば軟質ポリ塩化ビニル、超高分子量軟質PVC樹脂、エチレンブチルアクリレートコポリマー(EBAC)樹脂、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMAC)樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)から製造することができる。
【0091】
[0096]本発明に基づくフィルタ装置は一般に、生物学的流体処理システム、例えば複数の導管および容器、好ましくは血液バッグ(例えば採集バッグおよび/またはサテライトバッグ)などの柔軟な容器、を含むシステムに含まれる。好ましい一実施形態では、本発明に基づくシステムがクロースドシステムを含む。当技術分野では適当な多種多様な容器および導管が知られている。例えば、血液採集バッグおよびサテライトバッグ、ならびに導管は軟質ポリ塩化ビニルから作ることができる。バッグおよび/または導管は、例えばエチレンブチルアクリレートコポリマー(EBAC)樹脂、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMAC)樹脂、超高分子量軟質PVC樹脂およびエチレンビニルアセテート(EVA)から作ることもできる。バッグおよび/または導管は、例えばポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステルおよびポリカーボネートから形成することもできる。
【0092】
[0097]一実施形態では、フィルタ装置が、供血中にろ過を実施する生物処理システム、例えば供血中に供血者から採取した血液に抗凝固剤を混合し、この混合物をフィルタに通して血液バッグなどの容器に回収するシステムに含まれる。
【0093】
[0098]生物学的流体を処理する本発明に基づく方法の実施形態によれば、生物学的流体、一般に赤血球および/または血小板を含む生物学的流体、好ましくは赤血球および血小板を含む生物学的流体、よりいっそう好ましくは全血を生物学的流体フィルタに通して、白血球が除去された生物学的流体を得る。より好ましい実施形態では、ろ過され、白血球が除去された生物学的流体がクロースドシステムで得られる。
【0094】
[0099]本発明の実施形態によれば、白血球が除去された生物学的流体をさらに、一般に遠心分離を含む追加の処理にかけて、例えば白血球が除去された生物学的流体のさまざまな成分を分離し、保存に適した例えば白血球が除去された赤血球濃厚液(PRC)、白血球が除去された濃厚血小板(PC)および/または白血球が除去された血漿を得ることができる。
【0095】
[0100]いくつかの実施形態では、最初のろ過の後に白血球除去フィルタ装置の中に残った生物学的流体の部分をその後に回収する。例えば、1つまたは複数の吸気口および/または排気口を利用して装置をベントし、追加の流体を回収することができる。あるいは、またはこれに加えて、生物学的流体と両立する流体をフィルタ装置に導入して、所望の成分(例えば血小板)を解放し、フィルタ装置から所望の生物学的流体の一部をフラッシングし、かつ/または所望の位置、例えばフィルタ装置の下流側の受取り容器の中へ移す。両立する流体には例えば食塩水、抗凝固剤溶液(例えばCPDおよびCP2D)などがある。流体は、例えば重力、ポンプの使用、および(米国特許第5690815号に開示されているエクスプレッサ(expressor)を含む)エクスプレッサの使用、のうちの少なくとも1つの方法によって、フィルタ装置に導入することができる。ポンプまたはエクスプレッサはフィルタの上流または下流に配置することができる。
【0096】
[0101]一実施形態では、以後「フラッシング流体」と呼ぶこの流体を、本発明に基づくフィルタとともに、アフェレーシスシステム(Baxter Fenwall Amicus(登録商標) Separator、Baxter Fenwall CS 3000 plus、Gambro BCT OrbiSacシステム、およびHaemonetics Corp.社のMCS(登録商標)+などが含まれる)の中で利用して、所望の生物学的流体の一部をフィルタからフラッシングし、かつ/または別の場所へ移す。
【0097】
[0102]他の実施形態では、無菌空気を含む容器または容器の1区画の中にフラッシング流体を入れ、このシステムを、フラッシング流体がフィルタ装置に導かれてホールドアップされたろ過された生物学的流体の体積を置き換え、フラッシング流体に続いて無菌空気が濡れたフィルタと接触するように構成する。この空気は濡れたフィルタを通過しないため、流れは止まる。より好ましい実施形態では、フラッシング流体の体積がフィルタ装置のホールドアップ体積よりも小さく、したがってフラッシング流体が下流の受取り容器に集められることがない。
【0098】
[0103]いくつかの実施形態では、フラッシング流体を自動化されたプロトコルで利用して、所望の生物学的流体を回収することができる。
【0099】
[0104]図4に、フィルタ装置内の流体をフラッシングし、または別の場所に移すシステムの一実施形態を示す。このシステムの例示的な変形システム(図示せず)では、フラッシング流体を入れるための区画を採集バッグが含み、またはサテライトバッグの1つを、フラッシング流体を追加するためと、分離された生物学的流体成分、例えば白血球が除去された血漿を収容するための両方に使用する。
【実施例】
【0100】
[0105]以下の実施例によって本発明をさらに説明する。当然ながら、これらの実施例を本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0101】
(実施例1)
[0106]この実施例は、本発明の実施形態に基づくフィルタが全血の白血球を効率的に除去し、望ましい収量の血小板、赤血球および血漿を与えることを例証する。
【0102】
[0107]複数のフィルタを用意し、これをハウジングの中に配置してフィルタ装置を形成する。フィルタはそれぞれ、2つの第1の多孔質フィルタエレメントおよび2つの第2の多孔質フィルタエレメントを含む。
【0103】
[0108]先に説明した式および手順に従い、図5に概略的に示した試験装置500およびジグアセンブリ400を使用して、後に示すフィルタエレメントのP8値を求める。圧縮空気タンク501を試験装置に取り付ける。この試験装置は、クリーンアップフィルタ502、オン/オフ弁503、圧力調節器504、少なくとも1つの圧力計505、流量計506、流量制御(ニードル)弁507および電子式圧力センサ508を含む。圧縮空気を、試験するフィルタエレメントを含むジグアセンブリ400に通し、デルタPを測定する。
【0104】
[0109]圧縮空気(約100psig)を、クリーンアップフィルタ、弁(弁がオン位置にあるとき)、圧力調節器、流量計、流量制御弁およびジグアセンブリに通す。(調節器の下流にある)流量計の適当な較正のためメーカの指示に従って調節器を44psigにセットする。流量計の下流にあるニードル弁を調整して、フィルタ面速を28ft/分/ftとする。先に述べたとおり、ジグアセンブリの面積は1/20平方フィートなので、ニードル弁を調整して、流量を、28ft/分/ftの1/20である1.4標準立方フィート毎分(SCFM)とする。1.4SCFMで差圧は測定し、P8値を計算する。
【0105】
[0110]第1および第2のエレメントは、メルト−ブローンポリブチレンテレフタレート(PET)繊維から製作する。米国特許第4880548号の記載のとおりにこの繊維を表面修飾して、91ダイン/cm(0.91エルグ/mm)のCWSTを有する第1および第2のエレメントを得る。
【0106】
[0111]第1のエレメントはそれぞれ9層の繊維状PBTろ材層を有し、この繊維は2.7マイクロメートルの平均繊維径を有する。これらの繊維層は互いから容易に分離可能であり(例えばこれらの層は、カレンダ加工されておらず、接着剤で接着されておらず、または層を互いに結合するための高温にさらされていない)、1層あたり2.7g/ftの坪量を有する。それぞれの第1のエレメントの厚さは55.9ミル(約1420マイクロメートル)、平均空隙容積は85.3%、細孔径(修正OSU F2試験によって決定)は3.8マイクロメートル、繊維表面積(BET測定法によって決定)は1.2m/gである。P8値は16インチ水柱である。
【0107】
[0112]第2のエレメントはそれぞれ6層の繊維状PBTろ材層を有し、この繊維は3マイクロメートルの平均繊維径を有する。これらの繊維層は(第1のエレメントに関して説明したように)互いから容易に分離可能であり、1層あたり5.2g/ftの坪量を有する。それぞれの第2のエレメントの厚さは86.9ミル(約2207マイクロメートル)、平均空隙容積は87.7%、細孔径(修正OSU F2試験によって決定)は4.2マイクロメートル、繊維表面積(BET測定法によって決定)は0.95m/gである。P8値は12インチ水柱である。
【0108】
[0113]これらのエレメントを、図3に概略的に示した交互配置に配置する。最も上流のエレメント(すなわち血液が最初に接触するエレメント)を第1のエレメントとし、続いて第2のエレメント、第1のエレメントを配置し、最も下流のエレメント(血液が接触する最後のエレメント)を第2のエレメントとして、フィルタを形成する。これらのエレメントは互いから容易に分離可能である。フィルタの厚さは281.6ミル(約7153マイクロメートル)である。
【0109】
[0114]フィルタをそれぞれ、ハウジングの中に、入口と出口の間の流体流路を横切って配置し、ヘッド高30インチ(76.2cm)の採集バッグに入れられた抗凝固剤を添加した単位量の全血(約450cc+クエン酸リン酸ダブルデキストロース(Citrate Phosphate Double Dextrose:CP2D)抗凝固剤63ml)を室温でろ過する。
【0110】
[0115]下流の受取りバッグに受け取られたこのろ過(白血球除去)された単位を、標準北米血液銀行手順に従って遠心処理し、分離して、赤血球濃厚液(PRC)、血漿および濃厚血小板(PC)を得る。これらの3つのそれぞれの成分の中に残留した白血球(WBC)の濃度をフローサイトメトリによって求め、以下のパラメータを測定する:血小板の活性化、血小板の変形度(ESC)、血小板の低張性ショック反応(HSR)、赤血球の溶血反応、赤血球の変形能、血漿のヘモグロビン含量。さらに、PC単位ごとに血小板数を求める。
【0111】
[0116]白血球が除去されたこれらの血液成分は1単位あたり5.0×10個未満の残留白血球を有し、全PC単位の75%超が、1単位あたり少なくとも5.5×1010個の血小板を有する。測定されたパラメータは正常である。
【0112】
[0117]この実施例は、単一の白血球除去フィルタによって全血の白血球を効率的に除去し、北米血液処理標準を満たしこれを上回る、白血球が除去され処理された血漿、PCおよびPRCを得ることができることを示している。
【0113】
(実施例2)
[0118]この実施例は、ろ過後にフィルタハウジングの中に残っているろ過された血液の部分を、フラッシング溶液および空気を使用して回収できることを例証する。
【0114】
[0119]実施例1で説明したフィルタ装置を用意し、図4に示したシステムの中に配置する。システム100は、複数の柔軟な血液バッグ、すなわち採集バッグ10、受取りバッグ11、サテライトバッグ13、15および17、ならびにフラッシング容器5を含む。このシステムはさらにフィルタ装置50を含み、導管4、6、8、12a〜12c、14、16および18がシステムの構成要素間の流体連通を提供する。このシステムはさらに、導管4、6および8に関連したクランプを含む。
【0115】
[0120]フィルタ装置50は約50mlのホールドアップ体積を有する。フラッシング容器5は、クエン酸リン酸デキストロース(CPD)抗凝固剤溶液20ml、および無菌空気30mlを含む。採集バッグ(全血1単位を含む)と装置のフィルタハウジングの間の導管4は5インチであり、フラッシング容器とフィルタハウジングの間の導管8の長さは8インチである。
【0116】
[0121]フィルタハウジングと受取りバッグ11(ろ過された血液を収容する)の間の導管6の全長は42インチである。この導管は当初、フィルタハウジングと受取りバッグの間の距離が6インチになるようにコイル状に巻かれている。
【0117】
[0122]採集バッグ10に入れられた抗凝固剤が添加された単位量の全血(約450cc+CPD抗凝固剤63ml)をろ過する。採集バッグの頂部(バッグの高さは約8.5インチ)と受取りバックの頂部の間の距離は約17インチである(上流側導管は5インチ、コイル状に巻かれた下流側導管は6インチ)。
【0118】
[0123]ろ過が完了し、採集バッグ10が空になった後、下流側導管6をほどき、完全に伸ばして吊り下げる。フィルタ装置50と採集バッグ10の間の上流側導管4をクランプで閉じる。フラッシング容器5とフィルタ装置50の間の導管8のクランプを開く。
【0119】
[0124]フラッシング溶液によって装置の約30mlの全血を置き換える。フラッシング容器からの空気がハウジングの中のフィルタの上流側表面と接触すると、装置からの流れは止まる。フラッシング容器の中の抗凝固剤の体積はフィルタ装置のホールドアップ体積よりも小さいので、抗凝固剤は受取り容器まで達しない。
【0120】
[0125]白血球が除去されたこの全血を遠心分離し、さらに処理して、別々のサテライト容器の中にPCおよび血漿を得る。赤血球追加溶液(赤血球アディティブソリューション)SAGMをサテライト容器の1つから受取り容器へ送り、そこで白血球が除去された赤血球と混合する。
【0121】
[0126]白血球が除去されたこれらの血液成分は1単位あたり1.0×10個未満の残留白血球を有し、全PC単位の75%超が、1単位あたり少なくとも6×1010個の血小板を有する。測定されたパラメータは正常である。
【0122】
[0127]この実施例は、単一の白血球除去フィルタによって全血の白血球を効率的に除去し、北米および欧州血液処理標準を満たしこれを上回る、白血球が除去され処理された血漿、PCおよびPRCを得ることができることを示している。
【0123】
[0128]この実施例は、単一の白血球除去フィルタによって全血の白血球を効率的に除去し、追加の全血を回収し、北米および欧州血液処理標準を満たしこれを上回る、白血球が除去され処理された血漿、PCおよびPRCを得ることができることを示している。
【0124】
(実施例3)
[0129]この実施例は、本発明の他の実施形態に基づくフィルタが全血の白血球を効率的に除去し、望ましい収量の血小板、赤血球および血漿を与えることを例証する。
【0125】
[0130]複数のフィルタを用意し、これをハウジングの中に配置してフィルタ装置を形成する。フィルタはそれぞれ、実施例1で概略的に説明した2つの第1の多孔質フィルタエレメントおよび2つの第2の多孔質フィルタエレメントを含むが、第1のエレメントがそれぞれ(実施例1で説明した9層ではなく)8層の繊維状PBTろ材層を有する点が実施例1とは異なる。第1のエレメントの厚さは48.8ミル(約1239マイクロメートル)である。第2のエレメントはそれぞれ6層の繊維状PBTろ材層を有する。
【0126】
[0131]CWST、坪量、空隙容積、細孔径、P8値および交互配置は実施例1と同じである。
【0127】
[0132]フィルタをそれぞれハウジングの中に配置し、ヘッド高30インチ(76.2cm)の採集バッグに入れられた抗凝固剤を添加した単位量の全血(約500cc+クエン酸リン酸ダブルデキストロース(CP2D)抗凝固剤70ml)を室温でろ過する。
【0128】
[0133]下流の受取りバッグに受け取られたこのろ過(白血球除去)された単位を、標準北米血液銀行手順に従って遠心処理し、分離して、赤血球濃厚液(PRC)、血漿および濃厚血小板(PC)を得る。これらの3つのそれぞれの成分の中に残留した白血球(WBC)の濃度をフローサイトメトリによって求め、以下のパラメータを測定する:血小板の活性化、血小板の変形度(ESC)、血小板の低張性ショック反応(HSR)、赤血球の溶血反応、赤血球の変形能、血漿のヘモグロビン含量。さらに、PC単位ごとに血小板数を求める。
【0129】
[0134]白血球が除去されたこれらの血液成分は1単位あたり5.0×10個未満の残留白血球を有し、全PC単位の90%超が、1単位あたり少なくとも5.5×1010個の血小板を有する。測定されたパラメータは正常である。
【0130】
[0135]この実施例は、単一の白血球除去フィルタによって全血の白血球を効率的に除去し、北米血液処理標準を満たしこれを上回る、白血球が除去され処理された血漿、PCおよびPRCを得ることができることを示している。
【0131】
[0136]出版物、特許出願および特許を含む、本明細書に引用された全ての参照文献は、それぞれの参照文献が、参照によって本明細書に組み込まれるものと個別的かつ具体的に指示されており、かつその全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0132】
[0137]本発明を説明する文脈(特に前記請求項の文脈)における用語「a」、「an」および「the」、ならびに同種の指示物の使用は、本明細書に特に明記されていない限り、または文脈によってはっきりと否定されない限り、単数と複数の両方をカバーするものと解釈しなければならない。本明細書に特に明記されていない限り、本明細書における値の範囲の列挙は単に、その範囲に含まれるそれぞれの別個の値を個別に言及する方法の省略法にすぎず、それぞれの別個の値は、その値が本明細書に個別に列挙されているのと全く同じように、本明細書に組み込まれる。本明細書に特に明記されていない限り、または文脈によってはっきりと否定されない限り、本明細書に記載の方法は全て適当な任意の順序で実行することができる。本明細書に挙げる全ての例、または例示のための言い回し(例えば「〜など」)の使用は単に、本発明をより明らかにするためのものであって、特に明記されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。請求項に記載されていない要素を指示する本明細書の中の語を、本発明の実施にとって必須のものと解釈してはならない。
【0133】
[0138]本明細書には、本発明の発明者が知る発明実施の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を記載した。当然ながら、以上の説明を読んだ当業者には、これらの好ましい実施形態の変形形態が明白であろう。本発明の発明者は、当業者がこのような変形形態を適当に使用することを期待し、本明細書に特に記載した以外の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって本発明は、適用可能な法律が許す、添付の請求項に記載された内容の全ての変更および等価物を含む。さらに、本明細書に特に明記されていない限り、または文脈によってはっきりと否定されない限り、本発明は、その可能な全ての変形形態における、以上に記載した要素の任意の組合せを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】[0012]図1は、2つの第1の白血球除去フィルタエレメント間に第2の白血球除去フィルタエレメントが配置された交互白血球除去フィルタエレメントを示す、本発明に基づくフィルタの一実施形態の概略図である。
【図2】[0013]図2は、2つの第2の白血球除去フィルタエレメント間に第1の白血球除去フィルタエレメントが配置された交互白血球除去フィルタエレメントを示す、本発明に基づくフィルタの他の実施形態の概略図である。
【図3】[0014]図3は、交互に並んだ第1および第2の白血球除去フィルタエレメントを示す、本発明に基づくフィルタの一実施形態の概略図である。
【図4】[0015]図4は、ろ過された生物学的流体の追加の部分を装置から回収することができる、本発明に基づく白血球フィルタ装置を含む生物学的流体処理システムの一実施形態の概略図である。
【図5】[0016]図5は、P8値の計算に使用する一システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の多孔質白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、前記第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、
前記第1の多孔質白血球除去フィルタエレメントが、前記第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントとは異なる坪量を有し、それぞれの多孔質白血球除去フィルタエレメントが約42g/ft(約452g/m)以下の坪量を有し、
少なくとも一方の多孔質白血球除去エレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する、
生物学的流体フィルタ。
【請求項2】
少なくとも1つの第1の多孔質白血球除去フィルタエレメントおよび少なくとも1つの第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、前記第1および第2のフィルタエレメントがそれぞれ複数の繊維状ろ材層を含み、
前記第1のフィルタエレメントが、前記第2のフィルタエレメントとは異なる坪量および前記第2のフィルタエレメントよりも高いP8値を有し、
少なくとも一方のエレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する、
生物学的流体フィルタ。
【請求項3】
前記第1の多孔質フィルタエレメントが、少なくとも約15インチ水柱(約38.1cm水柱)のP8値を有し、前記第2の多孔質フィルタエレメントが、約13.5インチ水柱(約34.3cm水柱)以下のP8値を有する、請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1および第2の多孔質白血球除去フィルタエレメントがそれぞれ、少なくとも約75ダイン/cm(0.75エルグ/mm)の臨界濡れ表面張力を有する、請求項2または3に記載のフィルタ。
【請求項5】
複数の繊維状多孔質ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含み、前記エレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する生物学的流体フィルタ。
【請求項6】
前記白血球除去フィルタエレメントが、約2マイクロメートルから約6マイクロメートルの範囲の細孔径を有する、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記白血球除去フィルタエレメントが、少なくとも約15インチ水柱(約38.1cm水柱)のP8値を有する、請求項5または6に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記白血球除去フィルタエレメントが、約15から約18インチ水柱(約38.1から約45.7cm水柱)の範囲のP8、および約15から約30g/ft(約161から約323g/m)の範囲の坪量を有する、請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記白血球除去フィルタエレメントが、少なくとも約75ダイン/cm(0.75エルグ/mm)の臨界濡れ表面張力を有する、請求項8に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記複数の繊維状ろ材層がそれぞれ上流側表面および下流側表面を有し、フィルタが、接触表面を有する隣接層を含み、前記隣接層の前記接触表面が、熱または接着剤によって互いに結合されていない、請求項1、2および5のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項11】
それぞれの白血球除去エレメントが、少なくとも約85ダイン/cm(0.85エルグ/mm)の臨界濡れ表面張力を有する、請求項10に記載のフィルタ。
【請求項12】
複数の繊維状ろ材層を含む少なくとも1つの多孔質白血球除去フィルタエレメントを含む生物学的流体フィルタに、白血球を含む生物学的流体を通して、前記生物学的流体から白血球を除去することを含み、前記エレメントが、少なくとも約14.5インチ水柱(約36.8cm水柱)のP8値を有する生物学的流体の処理方法。
【請求項13】
前記白血球除去フィルタエレメントが少なくとも約15インチ水柱のP8を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記白血球を含む生物学的流体が、採集から約24時間以内にろ過される、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
クローズドシステムを維持している間に前記生物学的流体がろ過される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
白血球を含む生物学的流体を、請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタに通して、白血球が除去された生物学的流体を得ることを含む、生物学的流体の処理方法。
【請求項17】
前記白血球が除去された生物学的流体が、生物学的流体1単位あたり5×10個未満の残留白血球を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
入口および出口を有し、前記入口と前記出口の間に第1の流体流路および第2の流体流路を画定するハウジングと、
前記ハウジングの中に配置された、請求項1、2、5および8のいずれか一項に記載の2つの生物学的流体フィルタと
を含み、
前記第1の生物学的流体フィルタが前記第1の流体流路を横切り、前記第2の生物学的流体フィルタが前記第2の流体流路を横切る
生物学的流体フィルタ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503670(P2006−503670A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548445(P2004−548445)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/033700
【国際公開番号】WO2004/039474
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(596064112)ポール コーポレイション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】