説明

生物的排水処理方法

【課題】 生物的排水処理における微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であり、さらに、活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)にも適用可能である、生物的排水処理方法を提供する。
【解決手段】 微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別する。微生物反応槽に取り付けた色計測機器により、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色の変化をモニタリングし、微生物を含む汚泥の色が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色と相違するときに、微生物反応槽の安定運転回復のための制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物的排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生物的排水処理方法において、安定した処理を行なうためには、被処理水の水質の把握を行なって、運転管理が行なわれるが、被処理水の水質測定法として、各種センサー類が開発されており、水質のそれぞれの項目については連続的に自動的にモニタリングできるようになってきている。
【0003】
一方、センサー類がない水質項目については分析を行ない、安定した処理が行なわれているか、どうかを調査する必要があり、時間と手間がかかるという問題があった。
【0004】
また、例えば活性汚泥法による生物的排水処理方法では、処理水の水質を測定することと併せて活性汚泥の状態を観察することによって、汚泥中の微生物相の活性が安定しているか、どうかの目安としている。
【0005】
活性汚泥の状態を把握する手法として、活性汚泥を顕微鏡観察することによる汚泥中の微生物相の把握、活性汚泥の沈降性を観察することなどがあり、これには多くの知識と経験が必要であった。
【0006】
また、最近の技術において、処理水槽中の活性汚泥濃度を高濃度に保ち、固液分離を膜分離で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)が知られているが、その場合、従来より蓄積されてきた活性汚泥中の微生物相に関する知見や対策は、適用できないという問題があった。
【0007】
また、生物的排水処理方法において、被処理水の水質以外にも活性汚泥の状態を把握することが必要である。生物的排水処理において、例えばバルキングが生じれば、沈殿槽において固液分離性に障害をもたらし、水質が悪化するため、これを事前に防止する必要がある。そのために、従来、活性汚泥中の微生物相を光学顕微鏡で観察し、微生物相を把握することによって、運転条件を変更するなどの対策を行ない、バルキングなどトラブルの防止を行なっている。
【0008】
しかし、かゝる従来法では、観察のための技術、微生物相の識別、出現する微生物相に対する対策等の知識、経験が必要であるという問題があった。
【0009】
ここで、生物的排水処理方法に関わる従来の特許文献には、つぎのようなものがある。
【特許文献1】特開2002−1380号公報 特許文献1は、生物的排水処理方法における活性汚泥の沈降性に関わるもので、有機性排水を活性汚泥法を用いて処理する方法において、フェノール類および有機酸から選ばれる少なくとも一種を含む化合物の曝気槽における濃度を特定の値となるように保持することにより、放流水の水質を良好に保ち、汚泥の発生量を大きく抑制し、さらに汚泥の沈降性を向上させることが記載されている。
【特許文献2】特開2000−246281号公報 特許文献2には、生物的排水処理方法において、活性汚泥処理における曝気槽の微生物相の状態が悪化して、BOD及びCOD成分の除去率の低下を起こしてきた活性汚泥処理装置の曝気槽に、好気性菌を主体としこれに通性嫌気性菌及び若干の嫌気性菌を共存させた生物共生菌を投入して攪拌曝気し、上記曝気槽の微生物相の再生と微生物相の体力の増強とを図る活性汚泥処理の微生物相の再生、及び体力増強方法が開示されている。
【特許文献3】特開2004−276017号公報 特許文献3には、活性汚泥処理法を利用した有機性廃水の処理システムであって、有機性廃水が導入される曝気槽、当該曝気槽から排出された処理液を固液分離する沈殿槽、当該沈殿槽から排出された汚泥の一部を当該曝気槽に送給するための返送経路、および有機性廃水に含まれる汚泥の沈降を促す有機系調節剤を当該曝気槽または当該有機性廃水に送給する貯留槽を含む、有機性廃水の処理システムが開示されている。この特許文献3では、有機性廃水が導入された曝気槽に低濃度の有機系調節剤を添加することで、汚泥容量指標(SVI)、浮遊性物質(SS)濃度、および全有機物(TOC)濃度を低下させて、活性汚泥処理法による有機性廃水の処理における沈殿槽での有機性廃水の固液分離での分離効率を改善するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のいずれの特許文献にも、生物的排水処理方法において、微生物の活性度を、微生物を含む活性汚泥の色の違いにより判別して、微生物の活性度を改善することについては、何も記載されていない。
【0011】
また、特許文献1に記載されているように、従来の沈殿槽を用いた処理においては、活性汚泥の沈降性は、処理水質向上のために重要であったが、近年開発された特許文献3に記載されているような固液分離を膜分離で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)では、高濃度に保持した活性汚泥により生物処理を行ない、膜分離装置によって固液分離するため、活性汚泥の沈降性については問題は生じず、活性汚泥の微生物相の管理として従来より提案されていた沈降性、微生物相と水質の関連などの考えが適用できないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、生物的排水処理における微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であり、さらに、活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)にも適用可能である、生物的排水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色をモニタリングすることにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することができ、これによって、非常に簡単に、しかも確実に微生物の活性度を把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽に色計測機器を取り付け、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を測定して数値化することを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽に取り付けた色計測機器により、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色の変化をモニタリングすることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別し、微生物を含む汚泥の色が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色と相違するときに、微生物反応槽の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用した活性汚泥法であり、微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の後流側に配置された沈殿槽から微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を制御するものであることを特徴としている。
【0020】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させることを特徴としている。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用しかつ活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)であり、高濃度の微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴としている。
【0022】
請求項9の発明は、請求項8に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の引き抜き汚泥量を制御するものであることを特徴としている。
【0023】
請求項10の発明は、請求項8または9に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させることを特徴としている。
【0024】
請求項11の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、嫌気性微生物を利用した嫌気性アンモニア酸化法(ANAMMOX法)であり、原水中のアンモニアは硝化菌が馴養された担体を投入した前処理槽においてpH、DO、温度をコントロールすることによってアンモニア性窒素:亜硝酸性窒素が約1:1になるように前処理し、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)に色計測機器を取り付けて、ANAMMOX微生物の色の変化を色計測機器でモニタリングするとともに、微生物を含む汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴としている。
【0025】
請求項12の発明は、請求項11に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御が、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度を制御するものであることを特徴としている。
【0026】
請求項13の発明は、請求項11または12に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の汚泥の色の変化を色測定機器を用いてモニタリングし、微生物反応槽内のANAMMOX微生物を含む汚泥の色がL表色系で、L:50〜60、a:60〜70、b:65〜68の範囲にあるときを基準値とし、この基準値の範囲を超えたとき、上記前処理槽における前処理を最適化することを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明は、微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別するもので、本発明によれば、生物的排水処理における微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽に色計測機器を取り付け、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を測定して数値化するもので、本発明によれば、生物的排水処理における微生物の活性度を、微生物反応槽に取り付けた色計測機器による汚泥の色の測定値に基づいて微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽に取り付けた色計測機器により、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色の変化をモニタリングするもので、本発明によれば、微生物反応槽に取り付けた色計測機器により微生物を含む汚泥の色の測定を連続して行ない、汚泥の色の変化をモニタリングすることにより、微生物を含む汚泥の色の違いから微生物の活性度を連続的に把握することができて、生物的排水処理槽(微生物反応槽)の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0030】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別し、微生物を含む汚泥の色が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色と相違するときに、微生物反応槽の安定運転回復のための制御を行なうもので、本発明によれば、生物的排水処理における微生物の活性度を、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用した活性汚泥法であり、微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうもので、本発明によれば、生物的排水処理における微生物の活性度を、微生物を含む活性汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復を速やかに行なうことができるという効果を奏する。
【0032】
請求項6の発明は、請求項5に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の後流側に配置された沈殿槽から微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を制御するものであるもので、本発明によれば、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復を速やかに行なうことができて、生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0033】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させるもので、本発明によれば、生物的排水処理における微生物の活性度を、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0034】
請求項8の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用しかつ活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)であり、高濃度の微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうもので、本発明によれば、膜分離活性汚泥法(MBR)であっても、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、非常に簡単に、しかも確実に把握することができて、膜分離活性汚泥法(MBR)における生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0035】
請求項9の発明は、請求項8に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の引き抜き汚泥量を制御するもので、本発明によれば、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復を速やかに行なうことができて、膜分離活性汚泥法(MBR)における生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0036】
請求項10の発明は、請求項8または9に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させるもので、本発明によれば、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復を速やかに行なうことができて、膜分離活性汚泥法(MBR)における生物的排水処理槽の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0037】
請求項11の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法であって、生物的排水処理方法が、嫌気性微生物を利用した嫌気性アンモニア酸化法(ANAMMOX法)であり、原水中のアンモニアは硝化菌が馴養された担体を投入した前処理槽においてpH、DO、温度をコントロールすることによってアンモニア性窒素:亜硝酸性窒素が約1:1になるように前処理し、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)に色計測機器を取り付けて、ANAMMOX微生物の色の変化を色計測機器でモニタリングするとともに、微生物を含む汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御を行なうもので、本発明によれば、近年、新しい窒素の除去方法として注目されているANAMMOX処理方法において、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することにより、ANAMMOX微生物の活性を把握し、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度を制御することが可能で、微生物反応槽の安定運転回復を速やかに行なうことができるという効果を奏する。
【0038】
請求項12の発明は、請求項11に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御が、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度を制御するもので、本発明によれば、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復を速やかに行なうことができて、生物的排水処理槽(ANAMMOX反応槽:微生物反応槽)の安定的運転が可能であるという効果を奏する。
【0039】
請求項13の発明は、請求項11または12に記載の生物的排水処理方法であって、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の汚泥の色の変化を色測定機器を用いてモニタリングし、微生物反応槽内のANAMMOX微生物を含む汚泥の色がL表色系で、L:50〜60、a:60〜70、b:65〜68の範囲にあるときを基準値とし、この基準値の範囲を超えたとき、上記前処理槽における前処理を最適化するもので、本発明によれば、新しい窒素の除去方法として注目されているANAMMOX処理方法において、ANAMMOX微生物に特徴のある赤色の色相の変化を色差計で測定することにより、ANAMMOX微生物の活性を把握し、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度を制御することが可能で、微生物反応槽の安定運転回復を速やかに行なうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
図1は、本発明による生物的排水処理方法を、好気性微生物を利用した活性汚泥法に適用した第1実施形態に用いる装置のフローシートである。
【0042】
同図を参照すると、本発明の生物的排水処理方法により、下水やし尿のような有機物と窒素を含む排水(原水)を処理するにあたり、まず、初沈槽(1)で排水中の懸濁物を除去し、ついで、懸濁物除去後の処理水を微生物反応槽(曝気槽)(2)に導入する。微生物反応槽(2)には、例えば下水処理場由来の好気性微生物を含む活性汚泥などを投入しておく。
【0043】
微生物反応槽(2)の底部には、エアポンプ(6)の作動によって空気が供給される散気管(曝気手段)(7)が備えられている。また、微生物反応槽(2)の頂部に、反応槽(2)内の上部に吊り下げ状に保持されたDO(溶存酸素量)検出センサ(8a)を有するDO調整装置(8)と、同様に、反応槽(2)内の上部に吊り下げ状に保持されたBOD(生物化学的酸素要求量)濃度検出センサ(9a)を有するBOD濃度測定装置(9)とが備えられている。この微生物反応槽(2)では、原水中の有機物が好気性微生物による酸化反応により分解される。
【0044】
そして、本発明では、微生物反応槽(2)中の活性汚泥の一部を、反応槽(2)下部に接続された取出し管(11)により取り出して色測定機器(10)に導き、活性汚泥の状態を色測定機器(10)によってモニタリングし、微生物反応槽(2)における微生物を含む汚泥の色を識別して、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別する。モニタリング後の微生物を含む汚泥は、色測定機器(10)に接続された返送管(12)によって微生物反応槽(2)に戻す。
【0045】
具体的には、微生物反応槽(2)に取り付けた色計測機器(10)によって微生物反応槽(2)における微生物を含む汚泥の色を測定して数値化する。そして、色計測機器(10)により、微生物反応槽(2)における微生物を含む汚泥の色の変化をモニタリングして、微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別し、微生物を含む汚泥の色が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色と相違するときに、微生物反応槽(2)の安定運転回復のための制御を行なう。この場合、微生物反応槽(曝気槽)(2)の安定運転回復のための制御が、返送汚泥量を制御するものであるのが、好ましい。
【0046】
反応後の処理水は、微生物反応槽(2)の上端部に接続された処理水排出管(14)から排出されて、沈殿槽(3)に導入され、そこで固液分離される。沈殿槽(3)の底部には処理水・汚泥一部返送管(13)が接続されていて、沈殿槽(3)の底部に沈澱した汚泥の一部を処理水と共に、ポンプ(図示略)の作動により返送管(13)を経て微生物反応槽(2)に返送する。浄化された処理水は、沈殿槽(3)の上部に接続された排出管(15)より排出される。
【0047】
本発明においては、上記のDO検出センサ(8a)により微生物反応槽(2)中の被処理水のDO(溶存酸素量)を測定するとともに、BOD濃度検出センサ(9a)により微生物反応槽(2)中の被処理水のBOD(生物化学的酸素要求量)濃度を測定する。
【0048】
微生物反応槽(2)中の好気性微生物を含む活性汚泥の色は、処理場の水質や条件によって違い、処理場独自の色を示し、おおよそ茶色から灰色を呈する。基準となる活性汚泥の色を色計測機器(色差計)(10)により数値として把握する。
【0049】
ここで、本発明においては、微生物反応槽(曝気槽)(2)の好気性微生物を含む活性汚泥の色の変化を色測定機器(10)によりモニタリングし、具体的には、微生物反応槽(2)のDO(溶存酸素)が、2〜3mg/LになるようにDO調整装置(DO計)(8)およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質が、BOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(2)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(2)の安定運転回復のための制御手段として、返送汚泥量をふやすものである。
【0050】
こうして、本発明によれば、微生物反応槽(2)の好気性微生物を含む活性汚泥の状態を色の変化で管理することにより、活性汚泥の活性の変化、流入水の異常に即座に対応することができる。
【0051】
本発明の生物的排水処理方法によれば、微生物反応槽(2)における微生物を含む汚泥の色をモニタリングすることにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することができ、これによって、非常に簡単に、しかも確実に微生物の活性度を把握することができて、微生物反応槽(2)の安定的運転が可能である。
【0052】
なお、本発明の生物的排水処理方法を、好気性微生物を利用しかつ活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)に適用した場合にも、同様に、高濃度の微生物反応槽(曝気槽)(2)に色計測機器(10)を取り付けて、好気性微生物を含む活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、好気性微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(2)の安定運転回復のための制御を行なう。
【0053】
このとき、上記の場合と同様に、微生物反応槽(曝気槽)(2)の活性汚泥の色の変化を色測定機器(10)によりモニタリングし、具体的には、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が、2〜3mg/LになるようにDO計(8)およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質が、BOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(2)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(2)の安定運転回復のための制御を行なうものである。
【0054】
なお、このときの微生物反応槽(曝気槽)(2)の安定運転回復のための制御は、微生物反応槽(曝気槽)(2)の引き抜き汚泥量を制御するものであるのが、好ましい。
【0055】
つぎに、本発明の方法は、上記の活性汚泥法だけでなく、特殊な菌相を利用した処理においてもこの手法は用いることができる。
【0056】
例えば近年、新しい窒素の除去方法として注目されている、嫌気性微生物を利用した嫌気性アンモニア酸化法(ANAMMOX法)にも適用されるものである。
【0057】
排水(原水)中にアンモニア性窒素または亜硝酸性窒素、あるいはその両方を含む排水処理方法において、アンモニア性窒素を電子供与体、亜硝酸性窒素を電子受容体として窒素ガスに脱窒する生物反応は、ANAMMOX法(嫌気性アンモニア酸化法)として注目されている。
【0058】
ANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応について以下の式に示す。
【0059】
ANAMMOX脱窒反応式
a一1:Nitrosomonas(アンモニア酸化細菌)による生物酸化反応
NH+1.5O→NO十HO+2H
c−1:ANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応
NH+NO→N↑十2H
ANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応は、従来法の従属栄養性微生物を用いた脱窒方法と比較すると、脱窒速度がはやく、高濃度排水に適用が可能である。ANAMMOX微生物自体は有機物の処理能力を持たないため、原水中の有機物はANAMMOX反応槽以外で分解する必要がある。
【0060】
また、ANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合がほぼ1:1で進む反応であるため、原水中のアンモニア性窒素を亜硝酸化する必要がある。原水中に有機物とアンモニア性窒素または亜硝酸性窒素、あるいはその両方を含む排水を処理する場合、ANAMMOX反応槽に導入する前に、有機物分解およびアンモニア性窒素の亜硝酸化を適正に行なうことが、処理効率向上につながる。
【0061】
本発明による生物的排水処理方法は、このような有機物とアンモニア性窒素を含むあるいはアンモニア性窒素を含む排水(原水)を処理する場合にも適用されるものである。
【0062】
図3は、本発明による生物的排水処理方法を上記のANAMMOX法(嫌気性アンモニア酸化法)に適用した第2実施形態に用いる装置のフローシートである。
【0063】
同図を参照すると、本発明による生物的排水処理方法は、有機物とアンモニア性窒素を含むあるいはアンモニア性窒素を含む排水(原水)を処理する方法であって、前処理槽(21)において原水中の有機物を好気性微生物による酸化反応により分解するとともに、アンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化細菌による生物酸化反応により酸化して亜硝酸化する。前処理槽(21)には原水供給管(23)から原水を供給する。前処理槽(21)には、例えば下水処理場由来の活性汚泥などを投入しておく。前処理槽(21)の底部には、エアポンプ(24)の作動によって空気供給管から空気が供給される散気管(曝気手段)(25)が備えられるとともに、前処理槽(21)内でアンモニア性窒素から亜硝酸性圭素への亜硝酸化がスムーズに進行するように、前処理槽(21)の頂部に、DO(溶存酸素量)調整装置(図示略)およびpH調整装置(図示略)が設けられており、そのDO検出センサおよびpH検出センサが前処理槽(21)内に保持されている。
【0064】
そして、DO検出センサにより前処理槽(21)中の被処理水のDO(溶存酸素量)を計測するとともに、pH検出センサにより前処理槽(21)中の被処理水のpHを計測して、前処理槽(21)において原水中の有機物が好気性微生物による酸化反応により分解される好適な条件に調整するものである。
【0065】
こうして、前処理槽(21)において原水中の有機物を好気性微生物による酸化反応により分解するとともに、アンモニア性窒素の一部がアンモニア酸化細菌による生物酸化反応により酸化して亜硝酸化する。反応後の1次処理水は、前処理槽(21)の上部に接続された流送管(26)から排出される。
【0066】
前処理槽(21)の後流側には、通常、沈殿槽(図示略)を設置しておき、前処理槽(21)から排出された1次処理水を、沈殿槽において固液分離するのが、好ましい。
【0067】
ついで、前処理槽(21)からの1次処理水を流送管(26)を経て、嫌気的な攪拌手段(27)を有する混合槽としたANAMMOX反応槽(2次処理槽:微生物反応槽)(22)へと導入する。
【0068】
ANAMMOX反応槽(22)には、嫌気性アンモニア酸化の条件で長期間培養した汚泥を投入しておき、このANAMMOX反応槽(22)において、1次処理水中の亜硝酸性窒素とアンモニア性窒素の残部とから脱窒を行ない、下記のANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応により排水を浄化する。
【0069】
c−1:ANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応
NH+NO→N↑十2H
浄化された2次処理水は、排出管(28)より排出される。なお、場合によっては、浄化された2次処理水の一部を循環ポンプの作動により循環管を経てANAMMOX反応槽(22)に循環返送する。
【0070】
本発明の方法は、このANAMMOX処理法において、ANAMMOX微生物に特徴のある赤色の色相の変化を色差計で測定することにより、ANAMMOX微生物の活性を把握しようとするものである。
【0071】
ここで、ANAMMOX反応においては、原水中のアンモニアの約半分だけが亜硝酸まで酸化され、この亜硝酸と残りのアンモニアがほぼ同量、嫌気条件の脱窒反応槽へ供給され、自栄養性のANAMMOX菌により、アンモニアが水素供与体、亜硝酸が水素受容体となる脱窒反応が起こされ、両者が窒素ガスに転換されて除去される。このANAMMOX菌による脱窒反応の化学量論式は、下記式(1)で示されるように提案され、実験的にも確認されている。
【0072】
1.0NH+1.32NO+0.066HCO+0.13H
1.02N+0.26NO+0.066CH0.50.15+2.03HO・・・(1)
なお、原水中のアンモニアの一部を亜硝酸化して、上記反応式(1)の反応に最適なアンモニア/亜硝酸比で脱窒槽に供給するためには、好気的条件での前処理が必要であるが、この場合、硝化菌によるアンモニアの酸化を亜硝酸で止め、硝酸化させないシステムが必要である。
【0073】
原水中のアンモニアは、硝化菌が馴養された担体を投入した前処理槽(21)においてpH、DO、温度をコントロールすることによってアンモニア性窒素:亜硝酸性窒素が約1:1になるように前処理する。
【0074】
本発明では、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)(22)に色計測機器(30)を取り付ける。そして、微生物反応槽(22)中のANAMMOX菌を含む汚泥の一部を、微生物反応槽(22)下部に接続された取出し管(31)により取り出して色測定機器(30)に導き、ANAMMOX菌を含む汚泥の状態を色測定機器(30)によってモニタリングし、微生物反応槽(22)におけるANAMMOX菌を含む汚泥の色を識別して、ANAMMOX菌の活性度を、ANAMMOX菌を含む汚泥の色の違いで判別する。モニタリング後のANAMMOX菌を含む汚泥は、色測定機器(30)に接続された返送管(32)によって微生物反応槽(22)に戻す。
【0075】
こうして、微生物反応槽(22)におけるANAMMOX微生物の色の変化を色計測機器(30)でモニタリングするとともに、微生物を含む汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(22)の安定運転回復のための制御を行なう。
【0076】
ここで、微生物反応槽(22)の安定運転回復のための制御が、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度のバランスを保持するように、前処理槽(21)における前処理条件を制御するものであるのが、好ましい。
【0077】
具体的には、本発明による生物的排水処理方法は、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)(22)の汚泥の色の変化を色測定機器(30)を用いてモニタリングし、微生物反応槽(22)内のANAMMOX微生物を含む汚泥の色がL表色系で、L:50〜60、a:60〜70、b:65〜68の範囲にあるときを基準値とし、この基準値の範囲を超えたとき、上記前処理槽(21)における前処理を最適化するものである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
図1に示す装置を用いて本発明の生物的排水処理方法を実施した。被処理排水は、下水処理場の原水であり、まずこれを初沈槽(1)に導入し、そこで原水中の懸濁物を除去した。ついで、懸濁物除去後の処理水を曝気槽(微生物反応槽)(2)に導入した。曝気槽(2)には、下水処理場由来の活性汚泥を投入した。
【0080】
曝気槽(2)の底部に備えられた散気管(曝気手段)(7)に、エアポンプ(6)の作動によって空気が供給され、この曝気槽(2)では、原水中の有機物が好気性微生物による酸化反応により分解される。曝気槽(2)の頂部に、DO(溶存酸素量)検出センサ(8a)を具備するDO調整装置(8)と、BOD(生物化学的酸素要求量)濃度検出センサ(9a)を具備するBOD濃度測定装置(9)とが備えられている。この曝気槽(2)に備えられたDO検出センサ(8a)により曝気槽(2)中の被処理水のDO(溶存酸素量)を測定するとともに、BOD濃度検出センサ(9a)により曝気槽(2)中の被処理水のBOD(生物化学的酸素要求量)濃度を測定した。
【0081】
本発明では、曝気槽(2)中の活性汚泥の一部を、曝気槽(2)下部に接続された取出し管(11)により取り出して色測定機器(色差計)(10)に導き、活性汚泥の状態を色測定機器(10)によってモニタリングし、曝気槽(2)における微生物を含む汚泥の色を識別して、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別した。モニタリング後の微生物を含む汚泥は、色測定機器(10)に接続された返送管(12)によって曝気槽(2)に戻した。
【0082】
上記の排水処理を45日間実施し、曝気槽(2)中の活性汚泥の色を色測定機器(10)を用いてモニタリングした。曝気槽(2)中の被処理水のDO(溶存酸素量)は、2〜3mg/LになるようにDO調整装置(8)およびコントローラで曝気量を調整した。
【0083】
そして、曝気槽(2)中の処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下と安定した場合の色測定機器(色差計)(10)を用いた色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とした。この基準値より明度または彩度の値が±2以上変化したとき、返送汚泥量を増加させた。
【0084】
図2aに、このときのマンセル表色系で示した好気性微生物を含む活性汚泥の色の明度および彩度の値を、図2bに、処理水水質(BOD濃度)の値をそれぞれ示した。好気性微生物を含む活性汚泥の色が変化したときに、返送汚泥量を増加させる制御を行なうことによって、処理水質が向上し、安定した運転を行なうことができた。
【0085】
実施例2
図3に示す装置を用いて本発明の生物的排水処理方法を実施した。まず、有機物とアンモニア性窒素を含む排水(原水)として、グルコースおよび塩化アンモニウムで実験用排水(原水)を調整し、原水中のBOD20mg/L、およびアンモニア性窒素20mg/Lとした。
【0086】
前処理槽(21)には原水供給管(23)から上記の原水を供給する。前処理槽(21)には、下水処理場由来の活性汚泥を投入した。前処理槽(21)の底部には、エアポンプ(24)の作動によって空気供給管から空気が供給される散気管(曝気手段)(25)が備えられるとともに、前処理槽(21)の頂部に、DO(溶存酸素量)調整装置(図示略)およびpH調整装置(図示略)が設けられ、前処理槽(21)内でアンモニア性窒素から亜硝酸性圭素への亜硝酸化がスムーズに進行するように、前処理槽(21)の生物反応系のDOおよびpHを、DO調整装置およびpH調整装置によりそれぞれ調整した。
【0087】
この前処理槽(21)において、原水中の有機物を好気性微生物による酸化反応により分解するとともに、アンモニア性窒素の一部がアンモニア酸化細菌による生物酸化反応により酸化して亜硝酸化する。
【0088】
ついで、前処理槽(21)からの1次処理水を流送管(26)を経て、嫌気的な攪拌手段(27)を有する混合槽とした微生物反応槽(2次処理槽:微生物反応槽)(22)へと導入する。
【0089】
微生物反応槽(22)には、嫌気性アンモニア酸化の条件で長期間培養した汚泥を投入しておき、この微生物反応槽(22)において、1次処理水中の亜硝酸性窒素とアンモニア性窒素の残部とから脱窒を行ない、下記のANAMMOX(嫌気性アンモニア酸化)反応により排水を浄化する。浄化された2次処理水は、排出管(28)より排出される。
【0090】
本発明では、微生物反応槽(22)に色計測機器(30)を取り付ける。そして、微生物反応槽(22)中のANAMMOX菌を含む汚泥の一部を、微生物反応槽 (22)下部に接続された取出し管(31)により取り出して色測定機器(30)に導き、ANAMMOX菌を含む汚泥の状態を色測定機器(30)によってモニタリングし、微生物反応槽(22)におけるANAMMOX菌を含む汚泥の色を識別して、ANAMMOX菌の活性度を、ANAMMOX菌を含む汚泥の色の違いで判別する。モニタリング後のANAMMOX菌を含む汚泥は、色測定機器(30)に接続された返送管(32)によって微生物反応槽(22)に戻す。
【0091】
こうして、微生物反応槽(22)におけるANAMMOX微生物の色の変化を色計測機器(30)でモニタリングするとともに、ANAMMOX微生物を含む汚泥の色を数値化し、ANAMMOX微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(22)の安定運転回復のための制御を行なう。
【0092】
具体的には、微生物反応槽(22)内のANAMMOX菌を含む汚泥の色がL表色系で、L:50〜60、a:60〜70、b:65〜68の範囲にあるときを基準値とし、この基準値の範囲内にあるとき、2次処理水中にはアンモニアおよび亜硝酸性窒素は検出されなかったが、上記の基準値の範囲を超えると、2次処理水中にアンモニアあるいは亜硝酸性窒素が検出された。そして、上記の基準値の範囲を超えたとき、前処理槽(21)における前処理を最適化することにより、処理水中のアンモニアあるいは亜硝酸性窒素は低減した。
【0093】
このことから、ANAMMOX反応において、ANAMMOX菌を含む汚泥の色が著しく変化した場合、前処理の結果調整されるアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素のバランスが悪くなっていることがわかった。ANAMMOX菌を含む汚泥の色の変化が現れたときに、原水の変動、あるいは前処理の状態の悪化が考えられ、前処理の条件を改善することにより、微生物反応槽(22)の安定した運転を行なうことができた。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による生物的排水処理方法の第1実施形態に用いる装置のフローシートである。
【図2】図2aは、本発明の実施例1における排水処理方法において、曝気槽内の活性汚泥の色をマンセル表色系で示した場合の明度および彩度の値を示すグラフである。図2bは、同曝気槽内の処理水の水質(BOD濃度)の値を示すグラフである。
【図3】本発明による生物的排水処理方法の第2実施形態に用いる装置のフローシートである。
【符号の説明】
【0095】
1:初沈槽
2:曝気槽(微生物反応槽)
4:原水供給管
5:流送管
6:エアポンプ
7:散気管(曝気手段)
8:DO調整装置
8a:DO検出センサ
9:BOD濃度測定装置
9a:BOD濃度検出センサ
10:色測定機器(色差計)
11:取出し管
12:返送管
13:流送管
14:活性汚泥一部返送管
15:排出管
21:前処理槽
22:ANAMMOX反応槽(微生物反応槽)
23:原水供給管
24:エアポンプ
25:散気管(曝気手段)
26:流送管
27:攪拌器
28:排出管
30:色測定機器(色差計)
31:取出し管
32:返送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別することを特徴とする、生物的排水処理方法。
【請求項2】
微生物反応槽に色計測機器を取り付け、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色を測定して数値化することを特徴とする、請求項1に記載の生物的排水処理方法。
【請求項3】
微生物反応槽に取り付けた色計測機器により、微生物反応槽における微生物を含む汚泥の色の変化をモニタリングすることを特徴とする、請求項1または2に記載の生物的排水処理方法。
【請求項4】
微生物を利用する生物的排水処理方法において、微生物を含む汚泥の色を識別することにより、微生物反応槽における微生物の活性度を、微生物を含む汚泥の色の違いで判別し、微生物を含む汚泥の色が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色と相違するときに、微生物反応槽の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法。
【請求項5】
生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用した活性汚泥法であり、微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法。
【請求項6】
微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の後流側に配置された沈殿槽から微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を制御するものであることを特徴とする、請求項5に記載の生物的排水処理方法。
【請求項7】
微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させることを特徴とする、請求項5または6に記載の生物的排水処理方法。
【請求項8】
生物的排水処理方法が、好気性微生物を利用しかつ活性汚泥と処理済み水との固液分離を膜で行なう膜分離活性汚泥法(MBR)であり、高濃度の微生物反応槽(曝気槽)に色計測機器を取り付けて、活性汚泥の色の変化をモニタリングするとともに、活性汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法。
【請求項9】
微生物反応槽(曝気槽)の安定運転回復のための制御が、微生物反応槽(曝気槽)の引き抜き汚泥量を制御するものであることを特徴とする、請求項8に記載の生物的排水処理方法。
【請求項10】
微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の変化を色測定機器によりモニタリングし、微生物反応槽(曝気槽)のDO(溶存酸素)が2〜3mg/LになるようにDO計およびコントローラーで曝気量を調整し、処理水の水質がBOD(生物化学的酸素要求量)濃度10mg/L以下である安定運転時の色の値をマンセル表色系で示した2.5Y、3.1/2.8(色相、明度/彩度)を基準値とし、微生物反応槽(曝気槽)の活性汚泥の色の明度および彩度の値が、この基準値より±2以上変化したとき、微生物反応槽(曝気槽)への返送汚泥量を増加させることを特徴とする、請求項8または9に記載の生物的排水処理方法。
【請求項11】
生物的排水処理方法が、嫌気性微生物を利用した嫌気性アンモニア酸化法(ANAMMOX法)であり、原水中のアンモニアは硝化菌が馴養された担体を投入した前処理槽においてpH、DO、温度をコントロールすることによってアンモニア性窒素:亜硝酸性窒素が約1:1になるように前処理し、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)に色計測機器を取り付けて、ANAMMOX微生物の色の変化を色計測機器でモニタリングするとともに、微生物を含む汚泥の色を数値化し、微生物を含む汚泥の色の測定値が、予め設定した基準とする安定運転時の汚泥の色の数値範囲と相違するときに、微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御を行なうことを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の生物的排水処理方法。
【請求項12】
微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の安定運転回復のための制御が、基質となる原水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度を制御するものであることを特徴とする、請求項11に記載の生物的排水処理方法。
【請求項13】
微生物反応槽(ANAMMOX反応槽)の汚泥の色の変化を色測定機器を用いてモニタリングし、微生物反応槽内のANAMMOX汚泥の色がL表色系で、L:50〜60、a:60〜70、b:65〜68の範囲にあるときを基準値とし、この基準値の範囲を超えたとき、上記前処理槽における前処理を最適化することを特徴とする、請求項11または12に記載の生物的排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−190510(P2007−190510A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12149(P2006−12149)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】