説明

生産設備および生産システム

【課題】生産ラインの構築および構成変更時のプログラム作成および修正の必要がなく、柔軟に切り離しおよび組み替えが可能な生産設備および生産システムを提供する。
【解決手段】生産設備1と生産設備1aの間でワークを授受する際に、ワーク搬送の協調に必要な情報およびワークに対する作業の動作制御に必要な情報を連携情報として生産設備1と生産設備1aとの間で授受する。作業制御手段4は他の生産設備1aから移動してきたワークに対する自生産設備1の作業を、同じく他の生産設備1aから取得した連携情報を用いて制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物品に対して所定作業を行う生産設備、および生産設備を複数組み合わせた生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工、組立などを行う生産設備において多機能化および効率化が従来から行われている。
例えば、特許文献1に係るロボット加工ラインシステムでは、加工機械と複数のロボットとを組み合わせた加工セルを複数配列すると共に、製品移動の指示を標準化したプログラムをロボットにインストールするサーバを備える。これにより個々のロボットにティーチングする負荷が大幅に減少するので、加工準備を効率的に行うことが可能である。
特許文献1の場合、ロボット同士の配置関係が正三角形のみであり、しかもロボットへのティーチングはプログラムをサーバからダウンロードする方法であることから、ロボットを採用する上で選択幅が狭く、制限のある加工ラインとなってしまう。また、加工ラインを変更する際にはサーバのプログラムを修正し、個々のロボットにティーチングし直す必要があった。
【0003】
また、特許文献2に係る製品組立システムは、製品属性データが付与された搬送容器と、製品(プリント基板)を載せた搬送容器を流す循環型コンベアなどの搬送設備と、製品属性データを読み取り製品を加工および組立する組立設備群と、搬送容器の競合を回避するための同期化設備とを備える。そしてライン全体を統括的に制御する集中コントローラが、各設備の動作を管理および制御する。
特許文献2の場合、各設備の管理・制御に用いる集中コントローラ用のプログラムの再利用が考慮されていないことから、ライン変更の際にはプログラム修正の負荷が大きい。
【0004】
また、特許文献3に係るセルシステムでは、コンベアなどの搬送設備に並列して組立設備群を設置すると共に、製品を一時的に仕舞いこむリフトなどの作業ステーションを各組立設備と搬送設備の間に設置する。これにより、作業ステーションが製品を搬送設備から取り上げて一時的に保持できるので、組立設備の作業時間(タクト)が異なっても搬送設備上での製品の流れが滞りなく進むことになる。
特許文献3の場合、組立をスムーズに行うためには作業ステーションを多数設置しなければならないことに起因するコストおよび工数負荷を避けることができない。また、プリント基板などの小型製品に比べ、大型製品には対応が難しいと考えられる。さらに、ライン変更の際には集中コントローラ用のプログラム修正の負荷が大きい。
【0005】
また、特許文献4に係る生産セルは、加工、組立など異なる単機能作業を行う装置群からなる複数作業が可能な作業設備と搬送作業を行うロボットとをセットにした生産セルを複数並べると共に、作業コマンドの並びである作業単位指示をすべての生産セルに送出する情報処理装置を備え、作業単位指示を実行可能にある生産セルが当該指示に応答して作業を実施する。各生産セルのロボットに事前にティーチングしておくと共に、作業設備に各作業単位指示に応じた動作プログラムを事前に格納しておき、作業単位指示を変更することにより多品種少量生産が実施可能となる。
特許文献4の場合、集中コントローラとして機能する情報処理装置が各生産セルにアクセスして作業単位指示が実行可能か否か問い合わせる必要があると共に、作業内容の変更および作業順番の変更がある都度、人手をかけて作業単位指示を編集および加工しなければならず、上記特許文献1−3と同様に集中コントローラ用のプログラム修正が必要であった。また、作業単位指示は生産セルの複数作業内容を含むので、生産セル毎に専用にせざるをえず一般化した作業単位指示として使いまわしすることは実質難しい。また、製品の移動順番、タイミングなど生産セル間の連携は考慮されていないので、連携実現するためには別の機構を組み込む必要がある。さらに、各生産セルは専用生産ではあるがある程度汎用加工を目指したものなので、コンベアなどの搬送装置に代えて、ある程度無駄な機能を持った装置であるロボットを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4507767号公報
【特許文献2】特開平8−279692号公報
【特許文献3】特開平11−49349号公報
【特許文献4】特開2004−185228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1〜4のうち、特許文献4が最もフレキシブルな生産システムと思われるが、集中コントローラを用いて各設備を統括的に制御する構成であり、生産システムの変更時には他の特許文献と同様に集中コントローラ用プログラムを修正する工数負荷が依然として高いという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、生産システム全体を統括的に制御する集中コントローラとそのプログラムを不要とすることにより、生産ラインの構築および構成変更時のプログラム作成および修正を不要にし、柔軟に切り離しおよび組み替えが可能な生産設備、および生産設備を複数組み合わせてなる生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1に係る生産設備は、他の生産設備との間で対象物品を授受する場合、当該対象物品の常置を表し作業の実行に用いるための連携情報を前記他の生産設備との間で授受する連携情報交換手段と、連携情報交換手段が取得した連携情報を用いて作業動作を制御する作業制御手段とを備えるものである。
【0010】
この発明の請求項2に係る生産設備は、自生産設備との間で対象物品の授受を行う他の生産設備の接続を検出する接続検出手段を備え、連携情報交換手段は、接続検出手段が検出した生産設備との間で連携情報を授受するものである。
【0011】
この発明の請求項3に係る生産設備は、連携情報が対象物品の有無を表す情報であり、作業制御手段は、後工程の生産設備から取得した連携情報が当該後工程の生産設備に対象物品が無いことを表す情報の場合に自生産設備の作業を実行開始するものである。
【0012】
この発明の請求項4に係る生産設備は、連携情報が対象物品の有無を表す情報であり、作業制御手段は、前工程の生産設備から取得した連携情報が当該前工程の生産設備に対象物品が有ることを表す情報の場合に自生産設備の作業を実行開始するものである。
【0013】
この発明の請求項5に係る生産設備は、連携情報が自生産設備または他の生産設備の位置を基準にした対象物品の搬送位置を表す情報であり、作業制御手段は、連携情報が表す搬送位置に基づいて搬送作業を制御するものである。
【0014】
この発明の請求項6に係る生産設備は、連携情報交換手段が、自生産設備および他の生産設備にそれぞれ接続した連携情報保持手段を介して連携情報を授受するものである。
【0015】
この発明の請求項7に係る生産システムは、上記生産設備を複数組み合わせてなるものである。
【0016】
この発明の請求項8に係る生産システムは、生産設備間で授受する連携情報を保持する連携情報保持手段を備え、生産設備は、連携情報保持手段を介して他の生産設備との間で連携情報を授受するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1によれば、自生産設備と他の生産設備との間で対象物品と共に連携情報を授受し、連携情報を用いて作業動作を制御するようにしたので、生産システム全体を統括的に制御する集中コントローラとそのプログラムを不要にできる。このため、生産ラインの構築および構成変更時のプログラム作成および修正の必要がなくなり、他の生産設備との間の切り離しおよび組み替えを柔軟に行うことのできる生産設備を提供することができる。
【0018】
この発明の請求項2によれば、自生産設備との間で対象物品の授受を行う他の生産設備の接続を検出するようにしたので、生産ラインの構築、生産設備の切り離しまたは組み替えを行った場合に新たな接続を自動的に検出して連携情報の授受を行うことができ、柔軟性を向上できる。
【0019】
この発明の請求項3および請求項4によれば、対象物品の有無を表す連携情報を用いて作業を実行開始するようにしたので、対象物品の搬送タイミングおよび動作タイミングを生産設備間で調整して連携できるようになり、生産ラインの構築および構成変更時に生産設備のプログラム作成および修正の必要がなく、再利用可能になる。
【0020】
この発明の請求項5によれば、対象物品の搬送位置を表す連携情報を用いて搬送作業を制御するようにしたので、対象物品の位置を生産設備間で調整して連携できるようになり、生産ラインの構築および構成変更時に生産設備のプログラム作成および修正の必要がなく、再利用可能になる。
【0021】
この発明の請求項6によれば、連携情報保持手段を介して連携情報を授受するようにしたので、生産設備由来の不具合によって連携情報が消失する可能性を軽減できると共に、データ活用のための情報収集が容易となる。
【0022】
この発明の請求項7によれば、上記のような生産設備を複数組み合わせて生産システムを構築するようにしたので、集中コントローラとそのプログラムを不要にでき、生産設備間の切り離しおよび組み替えを柔軟に行うことのできる生産システムを提供することができる。また、生産システム同士の連携も容易にできる。
【0023】
この発明の請求項8によれば、連携情報保持手段を介して連携情報を授受するようにしたので、生産設備由来の不具合によって連携情報が消失する可能性を軽減できると共に、データ活用のための情報収集が容易な生産システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係る生産設備の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る生産システムの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る生産設備の接続検出手段の構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る生産設備の連携情報保持手段の構成例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る生産設備の変形例を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る生産システムのワーク搬送タイミング制御方法を説明する図であり、プル制御の例を示す。
【図7】実施の形態1に係る生産システムのワーク搬送タイミング制御方法を説明する図であり、プッシュ制御の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る生産設備1の構成を示すブロック図である。生産設備1は、部品または部品を加工・組立した製品(以下、これらの対象物品をワークと称する)に対して所定作業を実行する装置であって、他の生産設備1aとの間の製造ライン接続を検出する接続検出手段2と、ワークの状態等を表す情報であって作業実行に用いるための連携情報を他の生産設備1aとの間で授受する連携情報交換手段3と、連携情報を用いて作業動作を制御する作業制御手段4とを備える。また、生産設備1の連携情報交換手段3は、記憶装置5が備える連携情報保持手段6にアクセス可能であり、この連携情報保持手段6が保持する連携情報を読み書きすることによって設備装置1aとの間で連携情報を授受する。
【0026】
なお、図1では生産設備1に接続する他の生産設備として1つの生産設備1aを図示しているが、複数の生産設備と接続可能である。また、これら生産設備1,1aは同一の構成であるが、説明上呼び分けるために他の生産設備1aの各手段の符号に「a」を付す。
【0027】
図2は、生産システム(セル)の一例を示す図であり、複数の生産設備が隣接して配置されている。生産設備としては、ワークを供給する部品供給装置10、ワークの搬送を行うコンベア、ワークの搬送および組立などを行うロボット11、ワークを加工する半田コテなどの専用作業装置12などがある。図示例の生産システムでは、部品供給装置10とロボット11、およびロボット11と専用作業装置12が接続され、製造ラインになっている。そして、部品供給装置10が隣接するロボット11へワークを供給する作業を行い、ロボット11が隣接する専用作業装置12にワークを搬送する作業を行い、専用作業装置12は隣接するロボット11から搬送されたワークの半田付け作業を行う。このとき、生産設備間でのワークの流れに沿って、当該生産設備間で連携情報が授受され、連携情報を用いて各生産設備の作業が実行されることになる。
【0028】
次に、生産設備1の詳細を説明する。
接続検出手段2は、製造ラインでワーク授受を行う対象となる生産設備1aとの間の接続を検出し、個体識別および位置特定を行う。
例えば、生産設備1aに個体識別ID(バーコード、マーク、模様など)を持たせると共に、接続検出手段2をセンサおよび画像処理などで構成し、隣接する生産設備1aの個体識別IDを検出し、接続を判断する。
また例えば、接続検出手段2を近接センサ、レーザ変位計、画像処理カメラ等のセンサで構成し、隣接する生産設備1aの相対位置を検出し、生産設備1aの位置および距離などの検出情報に基づいて接続を判定すると共に個体識別を行う。
また例えば、接続検出手段2を記憶装置で構成し、生産システムを構築する際にハウジング1に接続させる他の生産設備1aの識別情報および位置情報などを予め設定しておいてもよい。
【0029】
また例えば、接続検出手段2を物理的な通信端子で構成し、どの方向に設けた通信端子に他の生産設備1aが接続されたかによって生産設備1aの位置を判定すると共に、通信によって個体識別を行う。接続検出手段2を通信端子で構成した場合の接続検出方法を図3に示す。同一構成の生産設備1,1a,1b,1cは、通信端子の接続が容易になるように外観形状、作業台の高さなどを統一しておく。図3(a)に示すように、生産設備1には、ワークの搬送を行う方向の側面に他の生産設備1a,1b,1cと組み合うような凸部20,21および凹部22を設ける。そして、これら凸部20,21と凹部22にそれぞれ通信端子を配置する。同様に、生産設備1a,1b,1cにも凹部23,24、凸部25を設け、それぞれ通信端子を配置する。通信の種類としては、Ethernet(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、近距離無線通信などを用いる。
【0030】
生産システム構築時には、図3(b)に示すように生産設備1の凸部20と生産設備1aの凹部23の通信端子同士を接続し、生産設備1,1aの接続検出手段2,6a(不図示)間で通信することにより、生産設備1はどの通信端子に接続されたかによって相手の生産設備1aの相対位置を判定し、また通信路を使って互いの設備情報などを交換することでどのような種類の設備が接続されたか個体認識する。生産設備1は同様に、凸部21と凹部24の通信端子同士を接続し、凹部22と凸部25の通信端子同士を接続して、各生産設備1b,1cの相対位置および種類を検出する。
【0031】
連携情報交換手段3は、記憶装置5との間で通信を行う通信インタフェースであり、接続検出手段2が検出した生産設備1aとの間で協調したワーク搬送に必要な状態などを表す属性情報、および当該ワークに付随した作業実行のために必要な制御情報などを含めた連携情報を、連携情報保持手段6を経由して当該生産設備1aとの間で授受する。この連携情報交換手段3は、具体的には、自生産設備1から隣接する生産設備1aへ移動するワークに付随する連携情報と自生産設備1の個体識別の情報とを連携情報保持手段6に書き込んで隣接する生産設備1aが取得できるようにする。反対に、隣接する生産設備1aから自生産設備1へワークが移動するとき、自生産設備1の連携情報交換手段3は、他の生産設備1aにより連携情報保持手段6へ書き込まれた連携情報を読み出す。
【0032】
なお、連携情報の形式を予め規格化しておくことで汎用的な通信プログラムを用意できるので、連携情報交換手段3の通信インタフェースも予め定義できる。また、通信インタフェースを予め定義しておくので、同種の通信インタフェースを実装した他の生産設備1aとの間で接続して通信が可能である。さらに、同種の通信インタフェースを実装した他の生産システムの生産設備との間で接続して通信が可能である。
【0033】
記憶装置5は、通信機能および外部から内容を変更できる機能を有する記憶装置であり、例えばコンピュータで構成する。
あるいは、記憶装置5をIC(Integrated Circuit)で構成して、ワークに貼り付けるなどし、ワークと共に生産設備間を移動するようにしてもよい。
【0034】
図4に、生産システムが2つ以上の生産設備を組み合わせた場合の構成例を示す。図4の例では、生産設備1から生産設備1dまでの間をワークが移動していく。そのため、ワークの移動がある2つの生産設備間で1つの連携情報保持手段を設ける。ワークに付随する連携情報は、記憶装置5の連携情報保持手段6を介して生産設備1,1a間で授受され、連携情報保持手段6aを介して生産設備1a,1b間で授受され、記憶装置5aの連携情報保持手段6bを介して生産設備1b,1c間で授受され、連携情報保持手段6cを介して生産設備1c,1d間で授受される。なお、例えば生産設備1,1a間で授受される連携情報と生産設備1a,1b間で授受される連携情報が同じ種類の情報であってもよいし、別の種類の情報であってもよい。また、連携情報が2つの生産設備間だけでなく複数の生産設備間で授受されてもよく、例えば生産設備1から生産設備1aへ流された連携情報がさらに生産設備1b,1c,1dへ流れていくように構成してもよい。
【0035】
また、図4では連携情報保持手段6,6aを1つの記憶装置5、連携情報保持手段6b,6cを1つの記憶装置5aというように分散させたが、構成は任意でよく、例えば1つの記憶装置5に1つの連携情報保持手段6を設けてもよいし、あるいは1つの記憶装置5に連携情報保持手段6,6a,6b,6c全てを設けてもよい。
【0036】
図1および図4のように構成すれば、連携情報が生産設備1とは異なる記憶装置5上に保持されるので、生産設備1に由来する不具合によって連携情報が消失する可能性を低減できる。また、データ保存、統計データなどデータ活用のための情報収集が容易となる。
【0037】
なお、生産設備1と連携情報保持手段6とを別々に構成するのではなく、生産設備1内に連携情報保持手段6を設けてもよい。図5に一例を示す。
図5の例では、生産設備1の連携情報交換手段3が連携情報保持手段6を備え、他の生産設備1aの連携情報交換手段3aも独自に連携情報保持手段6aを備える。連携情報の交換の際には直接、生産設備1,1aの連携情報交換手段3,3a同士が通信する。即ち、連携情報交換手段3は、他の生産設備1aの連携情報交換手段3aとの間で連携情報をやり取りするための通信インタフェースである。上述のように、連携情報の形式を予め規格化しておくことで汎用的な通信プログラムを用意できるので、連携情報交換手段3の通信インタフェースも予め定義できる。また、通信インタフェースを予め定義しておくので、同種の通信インタフェースを実装した他の生産設備1aとの間で接続して通信が可能である。
【0038】
図5のように構成すれば、通信が局所的となるので、通信相手の特定が容易である。また、図1および図4の構成に比べて通信配線が短くなる。また、通信配線あたりの通信データ量も少ない。
ここで、通信データ量について簡単に説明する。Ethernet(登録商標)などのLAN(Local Area Network)のようなバス方式の通信路の場合、複数の通信は時分割で行われ、発信側から通信路上の全てのノードにデータが送信されることになる。但し、データには宛先が付与されているので、受信側では宛先が自身のアドレスと異なる場合は読み捨てる。
本実施の形態1において、例えば図4に示す構成のようにバス方式とした場合には、1つの連携情報保持手段6(記憶装置5)を生産設備1,1a,1b(それぞれ順番に連結されているとする)で共有すると、生産設備1から生産設備1aに送信されたデータは、直接接続されていない生産設備1bでも受信することになる。この間、生産設備1bが通信を希望しても待機することになる。そのため、構成する生産設備の数が少なく通信データ量も少ないうちは問題ないが、生産設備の数が増えたり、通信データ量が増えたりすると、通信の衝突および待機の機会が増え、通信の遅延につながる。
これに対し、図5に示す構成のようにローカル通信方式とした場合には、直接接続されている生産設備1,1aの間だけで通信路を構成することになるので、他の生産設備の通信が発生せず、通信配線あたりの通信データ量が少なくなるメリットがある。また、必然的に通信の衝突および待機も少なくなるので、通信遅延が起こりにくくなるメリットもある。
【0039】
作業制御手段4は、自生産設備1の作業を制御するPLC(Programmable Logic Controller)、ロボットコントローラなどである。この作業制御手段4は、連携情報交換手段3が取得した連携情報を参照して動作開始、停止、動作方法などを判断し、予め与えられた動作プログラムに従って作業を実行する。また、詳細は後述するが、作業制御手段4は必要に応じて連携情報を作成したり作業を実行した結果に基づいて連携情報を更新したりして、連携情報交換手段3へ出力する。
【0040】
次に、生産システムの動作を説明する。
ここでは一例として、ワーク搬送タイミング制御方法を説明する。
図6は、生産システムによるワーク搬送タイミング制御方法を説明する図であり、プル制御の例を示す。3つの生産設備1,1a,1bの順にワークが搬送されることとし、各生産設備間でワーク有無フラグ(連携情報)が授受される。1つのワークに対して1つのワーク有無フラグを用い、白丸(図中の○)はワークが無い状態、黒丸(図中の●)はワークが有る状態を表す。
【0041】
ここでは、部品供給装置で構成される生産設備1が生産設備1aに2つのワークを供給し、ロボットで構成される生産設備1aがその2つのワークを組み立てて1つのワークにして生産設備1bに搬送し、専用作業装置で構成される生産設備1bがその1つのワークを加工する。プル制御では、後工程の生産設備との間でワーク有無フラグが「無(○)」の状態になったことをきっかけに作業を開始する。
【0042】
図6(a)の定常状態において、プル制御では予め各生産設備にワークがあり、連携情報保持手段6,6aにワーク有りのフラグが設定されている。まず、生産設備1bがワークを使用して加工を行う。このとき、生産設備1bの連携情報交換手段(不図示)が連携情報保持手段6aのワーク有無フラグを「無(○)」に設定し、図6(b)の状態に遷移する。
【0043】
図6(b)の状態において、生産設備1aの連携情報交換手段(不図示)が、連携情報保持手段6aのワーク有無フラグが「無(○)」になったことを検出し、2つのワークを組み立てて1つのワークを製造し生産設備1bへ供給する。このとき、生産設備1aの連携情報交換手段は使用した2つのワークに対応するワーク有無フラグを「無(○)」に設定すると共に製造したワークに対応するワーク有無フラグを「有(●)」に設定し、図6(c)の状態に遷移する。
【0044】
図6(c)の状態において、生産設備1の連携情報交換手段(不図示)が、連携情報保持手段6の2つのワーク有無フラグがそれぞれ「無(○)」になったことを検出し、2つのワークを生産設備1aに供給する。このとき、生産設備1の連携情報交換手段は供給した2つのワークに対応するワーク有無フラグを「有(●)」に設定し、図6(d)の状態に遷移する。
【0045】
図7は、生産システムによるワーク搬送タイミング制御方法を説明する図であり、プッシュ制御の例を示す。プッシュ制御では、前工程の生産設備との間でワーク有無フラグが「有(●)」の状態になったことをきっかけに作業を開始する。
【0046】
図7(a)の定常状態において、プッシュ制御では各生産設備にワークはなく、連携情報保持手段6,6aにワーク無しのフラグ(図中の○)が設定されている。まず、生産設備1が2つのワークを生産設備1aに供給する。このとき、生産設備1の連携情報交換手段(不図示)が、連携情報保持手段6の2つのワーク有無フラグを「有(●)」に設定し、図7(b)の状態に遷移する。
【0047】
図7(b)の状態において、生産設備1aの連携情報交換手段(不図示)が、連携情報保持手段6のワーク有無フラグが「有(●)」になったことを検出し、生産設備1から供給された2つのワークを組み立てて1つのワークを製造し生産設備1bへ供給する。このとき、生産設備1aの連携情報交換手段は使用した2つのワークに対応するワーク有無フラグを「無(○)」に設定すると共に製造した1つのワークに対応するワーク有無フラグを「有(●)」に設定し、図7(c)の状態に遷移する。
【0048】
図7(c)の状態において、生産設備1bの連携情報交換手段(不図示)が、連携情報保持手段6aのワーク有無フラグが「有(●)」になったことを検出し、生産設備1aから供給されたワークを使用して加工を行う。このとき、生産設備1bの連携情報交換手段は使用したワークに対応するワーク有無フラグを「無(○)」に設定し、図7(d)の状態に遷移する。
【0049】
生産設備1,1a,1bは、図6のプル制御、図7のプッシュ制御いずれの方法においても、連携情報保持手段6,6aのワーク有無フラグが「有」のときにワークを取り出すことができ、「無」のときにワークを搬送することができる。逆に「有」のときに搬送してはならず、「無」のときには取り出せない。このため、フラグの状態に応じて授受のいずれか一方の動作しか行えないようになっている。よって、ワーク有無フラグが生産設備間の搬送制御においてインタロックの機能を担っている。
【0050】
このように、ワーク有無フラグを生産設備間で授受することによって各生産設備の動作タイミングおよびワークの搬送タイミングが制御できるので、従来のように集中コントローラに予め各生産設備の動作タイミングおよび搬送タイミングを設定する必要がない。また、集中コントローラを用いると生産システムの作業内容および順番等が変わる度に集中コントローラ側の設定を変更する必要があったが、本実施の形態1では集中コントローラ自体を不要にできる。
また本実施の形態1では、生産システムの生産設備構成を変更する場合にも、接続検出手段2が変更後に接続された(または削除された)隣接の生産設備を検出して連携情報交換のための接続関係を定義し直すので、手動での定義変更などは必要ない。また、この連携情報を規格化しておき、部品供給装置、ロボット、専用作業装置などの生産設備の種類によらず標準化しておくことにより、異なる種類の生産設備間の連携情報授受、異なる種類の生産設備への組み換えなどが容易になり、適用範囲が広がる。
さらに、生産システムに新たな生産システムを接続する場合についても、前工程の生産システムの最後の生産設備と後工程の生産システムの最初の生産設備とが接続検出手段2によって互いの接続を検出し、連携情報交換手段3による連携情報の授受によって協調することで連携できる。
【0051】
連携情報は、ワーク有無の状態を表すワーク有無フラグ以外の情報であってもよい。以下に、連携情報として属性情報および制御情報の例を示す。
ワークに関する属性情報として、生産システム構築時に外部から生産設備1に設定された情報に基づくワークの絶対位置情報、または、隣接する生産設備1aとの相対位置情報から算出したワークの相対位置情報などがある。このような位置情報は、接続検出手段2で検出した生産設備1aの位置情報を用いて、作業制御手段4が算出する等すればよい。また、例えば作業制御手段4は、他の生産設備1aから取得した連携情報に含まれる生産設備1aのワーク加工位置へワークを搬送するなど、他の生産設備1aと協調した作業を行うことができる。
また例えば、属性情報としてワークの種類、形状、寸法、重量などの情報がある。
【0052】
また、ワークに対する作業の制御情報として、組立および加工などの工程の進捗度、または、組立および加工などの優先度または順番の指定などがある。例えば作業制御手段4が、前工程の生産設備から取得した連携情報に含まれる進捗度を示す数値をインクリメントして、ワーク情報交換手段3を通じて後工程の生産設備に渡す等すればよい。
【0053】
また例えば、制御情報としてワークの搬送方法の指定がある。ハンドによる把持および吸着ノズルによる吸着など、搬送方法の動作プログラムは予め作業制御手段4に設定するが、どの方法で搬送するかの選択は制御情報で指定する。例えば生産設備1がワークを搬送する際、そのワークを製造した他の生産設備1aから取得した制御情報に従って把持か吸着か搬送方法を選択して搬送するなど、柔軟な搬送制御が可能になる。
【0054】
また例えば、制御情報として搬送経路(2点間の直線補間、円弧補間、パスポイントなどの情報)、許容動作範囲(外部の搬送ロボットが侵入可能な領域(面積、奥行、高さ、角度)、パスポイントなどの情報)、搬送の速度または加速度などがある。
また例えば、制御情報として搬送前の作業の情報(ワーク取り出し時にねじる、折る、引っ張る、高精度の位置合わせを行うなど)、または搬送後の作業の情報(ワーク配置時にねじる、曲げる、押し込む、所定時間押さえる、高精度の位置合わせを行うなど)がある。
このような連携情報は、例えば作業制御手段4が予め与えられている設定値および動作プログラムに基づいて作成すればよい。また、作業制御手段4は他の生産設備1aから取得した連携情報に基づいて他の生産設備1aと協調した搬送動作を行うことができる。
【0055】
これら属性情報および制御情報を連携情報に含めて授受することにより、生産設備1,1a間でワークの搬送位置および搬送経路などを伝え合って調整することができる。よって、生産設備1と他の生産設備1aとで協調可能となる。そのため、生産システムの生産設備構成を変更する場合に、生産設備1の動作プログラム自体の新規作成および修正が不要となり、動作プログラムを再利用できる。
【0056】
以上より、実施の形態1に係る生産設備1は、他の生産設備1aとの間でワークを授受する場合、当該ワークの状態を表し搬送、加工、組立などの作業実行に用いる連携情報を他の生産設備1aとの間で授受する連携情報交換手段3と、連携情報交換手段3が取得した連携情報を用いて搬送、加工、組立などの作業動作を制御する作業制御手段4とを備えるように構成した。このため、多品種少量生産などを目的として製造ラインを構築または変更する場合、生産設備の組み換え、増加および削減だけで対応できる。この結果、従来の生産システムのような、各生産設備を統括的に制御する集中コントローラおよびそのプログラムを不要にできると共に、生産設備の動作プログラムを再利用できるようになるので、他の生産設備との間の切り離しおよび組み替えを柔軟に行うことのできる生産設備を提供することができる。
さらに、この生産設備1を複数組み合わせて生産システムを構築すれば、集中管理に基づいた従来の生産システムと比べ柔軟性を備え多品種少量生産の適用範囲を広げることができる。そして、生産システム同士の連携も容易にでき、生産システムの再利用も可能になる。
【0057】
また、実施の形態1によれば、生産設備1は、自生産設備1との間でワークの授受を行う他の生産設備1aの接続を検出する接続検出手段2を備え、連携情報交換手段3は接続検出手段2が検出した生産設備1aとの間で連携情報を授受する構成にしたので、製造ラインの構築、生産設備の切り離しまたは組み替えを行った場合に新たな接続を自動的に検出して連携情報の授受を行うことができ、柔軟性を向上できる。
【0058】
また、実施の形態1によれば、連携情報にワークの有無を表すワーク有無フラグを含めるように構成し、作業制御手段4はワーク有無フラグに応じてプル制御またはプッシュ制御により自生産設備1の搬送、組立、加工などの作業を実行開始するようにしたので、ワークの搬送タイミングおよび動作タイミングを生産設備間で調整して連携できるようになり、製造ラインの構築および構成変更時に生産設備の動作プログラム作成および修正の必要がなく、再利用可能になる。
【0059】
また、実施の形態1によれば、連携情報にワークの搬送位置を表す制御情報を含めるように構成し、作業制御手段4は連携情報が表す搬送位置を用いて自生産設備1の搬送作業を制御するようにしたので、ワークの搬送動作などを生産設備間で調整して連携できるようになり、生産ラインの構築および構成変更時に生産設備の動作プログラム作成および修正の必要がなく、再利用可能になる。
【0060】
また、実施の形態1によれば、生産設備1,1aのワーク情報交換手段3,3aが、自生産設備1および他の生産設備1aにそれぞれ接続した連携情報保持手段6を介して連携情報を授受するように構成した。このため、生産設備由来の不具合によって連携情報が消失する可能性を軽減できると共に、データ活用のための情報収集が容易な生産システムを提供できる。
あるいは、ワーク情報交換手段3,3a同士が直接、連携情報を交換する構成にしてもよい。この構成の場合には、上記構成に比べて通信が局所的になるので通信相手の特定が容易になる。また、通信配線を短くでき、通信データ量も少なくできる。
【0061】
なお、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1,1a,1b,1c,1d 生産設備
2,2a 接続検出手段
3,3a 連携情報交換手段
4,4a 作業制御手段
5,5a 記憶装置
6,6a,6b 連携情報保持手段
10 部品供給装置
11 ロボット
12 専用作業装置
20,21,25 凸部
22,23,24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物品に対して所定作業を実行する生産設備であって、
他の生産設備との間で対象物品を授受する場合、当該対象物品の状態を表し作業の実行に用いるための連携情報を前記他の生産設備との間で授受する連携情報交換手段と、
前記連携情報交換手段が取得した連携情報を用いて作業動作を制御する作業制御手段とを備える生産設備。
【請求項2】
自生産設備との間で対象物品の授受を行う他の生産設備の接続を検出する接続検出手段を備え、
連携情報交換手段は、前記接続検出手段が検出した生産設備との間で連携情報を授受することを特徴とする請求項1記載の生産設備。
【請求項3】
連携情報は、対象物品の有無を表す情報であり、
作業制御手段は、後工程の生産設備から取得した連携情報が当該後工程の生産設備に対象物品が無いことを表す情報の場合に自生産設備の作業を実行開始することを特徴とする請求項1または請求項2記載の生産設備。
【請求項4】
連携情報は、対象物品の有無を表す情報であり、
作業制御手段は、前工程の生産設備から取得した連携情報が当該前工程の生産設備に対象物品が有ることを表す情報の場合に自生産設備の作業を実行開始することを特徴とする請求項1または請求項2記載の生産設備。
【請求項5】
連携情報は、自生産設備または他の生産設備の位置を基準にした対象物品の搬送位置を表す情報であり、
作業制御手段は、連携情報が表す搬送位置に基づいて搬送作業を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の生産設備。
【請求項6】
連携情報交換手段は、自生産設備および他の生産設備にそれぞれ接続した連携情報保持手段を介して連携情報を授受することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の生産設備。
【請求項7】
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の生産設備を複数組み合わせてなる生産システム。
【請求項8】
生産システムは、生産設備間で授受する連携情報を保持する連携情報保持手段を備え、
前記生産設備は、前記連携情報保持手段を介して他の生産設備との間で連携情報を授受することを特徴とする請求項7記載の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−150646(P2012−150646A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8735(P2011−8735)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】