産業用ロボット
【課題】搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供すること。
【解決手段】産業用ロボット1は、搬送対象物2が搭載されるハンド3と、搬送対象物2が搭載されたときのハンド3の撓みによる搬送対象物2の傾きを補正する傾き補正機構17とを備えている。傾き補正機構17は、駆動源となる傾き補正用モータと、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、偏心回転部材に下端側が取り付けられるリンク部材と、リンク部材の上端側が取り付けられる取付部材とを備えている。傾き補正機構17は、偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって、支点部36を回動中心として搬送対象物2の傾きを変化させる方向にハンド3を回動させている。
【解決手段】産業用ロボット1は、搬送対象物2が搭載されるハンド3と、搬送対象物2が搭載されたときのハンド3の撓みによる搬送対象物2の傾きを補正する傾き補正機構17とを備えている。傾き補正機構17は、駆動源となる傾き補正用モータと、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、偏心回転部材に下端側が取り付けられるリンク部材と、リンク部材の上端側が取り付けられる取付部材とを備えている。傾き補正機構17は、偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって、支点部36を回動中心として搬送対象物2の傾きを変化させる方向にハンド3を回動させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の搬送対象物(ワーク)を搬送する産業用ロボットが広く利用されている。この種の産業用ロボットとして、ワークが搭載されるハンドと2本のアームとを備える産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第1アームの先端側にハンドの基端側が連結され、第2アームの先端側に第1アームの基端側が連結されている。
【0003】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、ハンドにワークが搭載されたときのハンド、第1アームおよび第2アームに生じる撓みを補正するための撓み補正機構が、ハンドと第1アームとの連結部位に設けられている。この撓み補正機構は、第1アームに固定されるカムプレートと、ハンドに回転可能に取り付けられるカムフォロアとを備えている。この産業用ロボットでは、カムプレートの上面は、その高さ位置が円周方向に沿って変化するよう形成されており、第1アームおよび第2アームの伸縮動作に伴って、カムフォロアがカムプレートの上面を円周方向へ転がりながら移動することで、ハンド、第1アームおよび第2アームに生じる撓みが補正されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−136442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第1アームおよび第2アームの伸縮動作に伴って、カムフォロアがカムプレートの上面を円周方向へ転がりながら移動することで、ハンド等に生じる撓みが補正されているため、カムプレートの上面の形状で、ハンド等に生じる撓みの補正値が決まる。すなわち、この産業用ロボットでは、カムプレートを交換しなければ、ハンド等に生じる撓みの補正値は一定となる。そのため、ハンドに搭載されるワークの重量が変動すると、ハンド等に生じる撓みを適切に補正できない場合が生じる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、搬送対象物が搭載されたときのハンドの撓みによる搬送対象物の傾きを補正する傾き補正機構とを備え、傾き補正機構は、駆動源となる傾き補正用モータと、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、偏心回転部材に一端側が取り付けられるリンク部材と、リンク部材の他端側が取り付けられる取付部材と、偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって搬送対象物の傾きを変化させる方向にハンドを回動させるための回動中心となる支点部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用ロボットでは、傾き補正機構は、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって、搬送対象物の傾きを変化させる方向に支点部を回動中心としてハンドを回動させている。そのため、偏心回転部材の回転量(すなわち、傾き補正用モータの回転量)を制御して、取付部材の上下方向の移動量を制御することで、支点部を回動中心とするハンドの回動量を制御することができる。したがって、本発明では、搬送対象物の重量に応じて、傾き補正用モータの回転量を制御することで、支点部を回動中心とするハンドの回動量を制御して、搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能となる。すなわち、本発明では、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0009】
本発明において、偏心回転部材は、偏心軸であり、リンク部材の一端側は、偏心軸の外周側に軸受を介して回動可能に取り付けられ、リンク部材の他端側は、取付部材に軸受を介して回動可能に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、リンク部材の、偏心軸への取付部分および取付部材への取付部分での摺動抵抗を軽減することができ、リンク部材の両端側での塵埃の発生を抑制することができる。したがって、クリーンルーム等の清浄な環境で産業用ロボットを使用することが可能になる。また、軸受の両端側にシール部材を配置することで塵埃の飛散を防止することが可能になるため、塵埃の飛散防止構造を簡素化することができる。
【0010】
本発明において、たとえば、産業用ロボットは、ハンドの基端側を支持する第1支持部と、第1支持部を支持する第2支持部と、第2支持部を上下動させる昇降機構とを備えている。また、この場合には、第1支持部は、たとえば、ハンドを水平方向へ直線状に移動させるリニア駆動部、または、ハンドの基端側を回動可能に保持するとともに複数のアームを有し水平方向へ伸縮する多関節アーム部である。
【0011】
本発明において、傾き補正用モータおよび偏心回転部材は、第2支持部に取り付けられ、取付部材は、第1支持部に取り付けられ、支点部は、第1支持部と第2支持部との連結部に形成されていることが好ましい。このように構成すると、ハンドに搬送対象物が搭載されたときに第1支持部に撓みが生じたとしても、この第1支持部の撓みに起因する搬送対象物の傾きを傾き補正機構で補正することが可能になる。
【0012】
また、このように構成すると、第1支持部の傾きを補正することができるため、第1支持部に撓みが生じたとしても、昇降機構による第2支持部の昇降動作との組合せによってハンドの移動軌跡を微調整することが可能となる。また、傾き補正用モータおよび偏心回転部材が第1支持部に取り付けられ、取付部材がハンドに取り付けられるとともに、支点部が第1支持部とハンドとの連結部に形成される場合と比較して、傾き補正機構を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、傾き補正機構の剛性を高めることができる。
また、塵埃の発生箇所となりうる傾き補正機構とハンドとの距離を離すことが可能になるため、ハンドに搭載される搬送対象物の清浄度を確保しやすくなる。
【0013】
本発明において、取付部材は、ハンドの移動方向において、支点部に対して、ハンドの先端が支点部から最も遠ざかっているときのハンドと反対側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、先端が支点部から最も遠ざかっているときのハンドの先端側に産業用ロボットの重心が偏るのを防止することができ、産業用ロボットを安定させることができる。
【0014】
本発明において、産業用ロボットは、昇降機構を構成するとともに第2支持部を上下動させるための駆動源となる昇降用モータと傾き補正用モータとを制御する制御部を備え、制御部は、傾き補正用モータの回転量に応じて昇降用モータを駆動することが好ましい。このように構成すると、傾き補正機構での傾き補正によってハンドに搭載された搬送対象物の高さが変わる場合であっても、昇降機構によるハンドの昇降動作でハンドに搭載された搬送対象物の高さを調整することが可能になる。したがって、傾き補正機構で搬送対象物の傾きを補正しても、ハンドに搭載された搬送対象物の高さを一定に保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1を示す図である。図3は、図1のF−F方向から産業用ロボット1を示す図である。
【0018】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2を搬送するためのロボットである。本形態の搬送対象物2は、たとえば、露光装置で使用される高価なマスクである。したがって、以下では、搬送対象物2を「マスク2」と表記する。このロボット1は、図1〜図3に示すように、マスク2が搭載されるハンド3と、ハンド3の基端側を支持する第1支持部としてのリニア駆動部4と、リニア駆動部4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備えている。
【0019】
本体部5は、リニア駆動部4を支持するとともに上下動可能な第2支持部としての支持部材7と、支持部材7を上下方向に移動可能に支持するための柱状部材8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台9と、柱状部材8の下端が固定されるとともに基台9に対して旋回可能な旋回部材10とを備えている。
【0020】
ハンド3は、マスク2を搭載するための2本の爪部12を備えている。このハンド3は、リニア駆動部4に対して図1の左右方向に相対移動可能となるように、リニア駆動部4に保持されている。
【0021】
また、ロボット1は、支持部材7を上下動させる昇降機構16(図4参照)と、マスク2が搭載されたときのハンド3およびリニア駆動部4の撓みに起因するマスク2の傾きを補正するための傾き補正機構17とを備えている。以下、昇降機構16、リニア駆動部4および傾き補正機構17の構成、および、その周辺部分の構成を説明する。
【0022】
(昇降機構およびその周辺部分の構成)
図4は、図1に示す柱状部材8および昇降機構16の構成を説明するための図である。図5は、図4のG部の拡大図である。
【0023】
昇降機構16は、支持部材7を上下動させるための駆動源となる昇降用モータ20と、昇降用モータ20が連結されるボールネジ21とを備えている。ボールネジ21は、上下方向を長手方向として、柱状部材8に取り付けられている。具体的には、柱状部材8の上下両端側に固定される2個の軸受22にボールネジ21が回転可能に支持されている。
【0024】
また、昇降機構16は、ボールネジ21に螺合して上下動するナット部材23を備えている。ナット部材23は、支持部材7に固定されている。本形態では、ボールネジ21とナット部材23とによって、支持部材7が上下方向に移動する。さらに、昇降機構16は、支持部材7を停止させるための2個の昇降ブレーキ機構24を備えている。図5に示すように、昇降用モータ20の出力軸には、プーリ28が固定され、ボールネジ21の上端には、プーリ28よりも径の大きなプーリ29が固定されている。プーリ28、29には、ベルト30が架け渡されている。
【0025】
(リニア駆動部およびその周辺部分の構成)
図6(A)は、図1に示すリニア駆動部4の構成を上面から説明するための図であり、図6(B)は(A)のH−H方向からリニア駆動部4の構成を説明するための図である。図7は、図6のJ−J方向からリニア駆動部4の構成を説明するための図である。
【0026】
リニア駆動部4は、全体として細長い略直方体状に形成されており、その中心部分が、支持部材7に回動可能に支持されている。このリニア駆動部4は、ハンド3を図6の左右方向へ直線状に移動させるリニア駆動機構24を備えている。
【0027】
リニア駆動機構24は、リニア駆動用モータ25(図7参照)と、リニア駆動用モータ25が連結されるボールネジ26とを備えている。ボールネジ26は、図6の左右方向を長手方向として、リニア駆動部4のフレーム27に固定されている。具体的には、フレーム27の左右両端側に固定される2個の軸受28にボールネジ26が回転可能に支持されている。
【0028】
また、リニア駆動機構24は、ボールネジ26に螺合して水平方向に移動するナット部材29と、ナット部材29が固定される移動ベース30とを備えている。移動ベース30の上面には、ハンド3の基端側の底面が固定されている。本形態では、ボールネジ26とナット部材29とによって、移動ベース30に固定されたハンド3が水平方向に移動する。また、移動ベース30の底面には、ケーブルベア31の一端が固定されている。なお、リニア駆動機構24は、移動ベース30を停止させるためのブレーキ機構や移動ベース30を水平方向に案内するためのガイド機構を備えている。
【0029】
図7に示すように、リニア駆動用モータ25の出力軸には、プーリ32が固定されている。また、ボールネジ26の端部には、プーリ32よりも径の大きなプーリ33が固定されている。プーリ32、33には、ベルト34が架け渡されている。
【0030】
(傾き補正機構およびその周辺部分の構成)
図8は、図2のK部の拡大図である。図9は、図8のM−M断面の断面図である。図10は、図8のN−N断面の断面図である。図11は、図10のP−P方向からリンク部材40の構成を説明するための図である。図12は、図8に示す傾き補正機構17の作用を説明するための図である。
【0031】
傾き補正機構17は、リニア駆動部4と支持部材7との連結箇所に配置されている。この傾き補正機構17は、リニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成される支点部36を回動中心にして図8の反時計方向にハンド3およびリニア駆動部4を回動させることで、図8の左右方向に対するハンド3およびリニア駆動部4の傾きを調整して、ハンド3に搭載されているマスク2の傾きを補正する。
【0032】
図9、図10に示すように、傾き補正機構17は、駆動源となる傾き補正用モータ37と、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介して連結される偏心回転部材としての偏心軸(クランク軸)39と、偏心軸39に下端側が取り付けられたリンク部材40と、リンク部材40の上端側が取り付けられる取付部材41とを備えている。
【0033】
支持部36は、図8に示すように、支持部材7の下端側に固定される支点軸43と、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定される支点ブロック44とから構成されている。支点軸43は、図8の紙面手前側に突出するように支持部材7の下端側に固定されている。支点ブロック44には、支点軸43が挿通される軸受(図示省略)が配置される軸受配置孔44aが形成されている。軸受配置孔44aに配置された軸受には、支点軸43に対して支点ブロック44が回動可能となるように、支点軸43が挿入されている。
【0034】
傾き補正用モータ37および減速機38は、支持部材7の下端側に固定されている。また、傾き補正用モータ37および減速機38は、図8における支点部36の左方に配置されるとともに、リニア駆動部4の下方に配置されている。本形態の傾き補正用モータ37は、サーボモータ(パルスモータ)である。また、本形態の減速機38は、遊星減速機である。傾き補正用モータ37の出力軸37aは、減速機38の入力側に連結されている。
【0035】
偏心軸39は、図8の紙面垂直方向を軸方向として配置されている。この偏心軸39の一端(図9の上端)は、減速機38の出力側に連結されている。また、偏心軸39の他端側は、支持部材7を構成する軸支持部材45の内部に配置される軸受46に回転可能に支持されている。軸受46の両端側には、シール部材47が配置されている。偏心軸39の軸方向の中間部には、図9に示すように、偏心軸39の回転中心軸CL1から距離Xだけずれている軸CL2を中心とする円柱状の偏心部39aが形成されている。すなわち、偏心量がXである偏心部39aが偏心軸39の軸方向の中間部に形成されている。なお、図8等では、軸支持部材45等の図示を省略している。
【0036】
リンク部材40の下端側には、偏心軸39の偏心部39aが挿通される挿通孔が形成されており、リンク部材40の下端側は、軸受48を介して偏心部39aの外周側に回動可能に取り付けられている。軸受48の両端側には、シール部材49が配置されている。また、リンク部材40の上端側には、取付部材41を構成する後述の固定軸51が挿通される挿通孔が形成されており、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。
【0037】
取付部材41は、リンク部材40の上端側に挿通される固定軸51と、固定軸51の両端側を支持する軸支持部材52とを備えている。固定軸51は、その軸方向が偏心軸39の回転中心軸CL1と平行になるように配置されている。軸支持部材52は、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されている。具体的には、フレーム27の底面の、図8における支点部36よりも左側に軸支持部材52が固定されている。
【0038】
本形態では、図2におけるリニア駆動部4の右端側にハンド3が配置されているときに、ハンド3の先端が支点部36から最も遠ざかる。そのため、支点部36は、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と取付部材41との間に配置されている。すなわち、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。
【0039】
なお、本形態では、たとえば、ハンド3の先端が支点部36から最も遠ざかっているときに、昇降機構16によってハンド3が上昇してハンド3上にマスク2が搭載される。また、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときハンド3の基端と支点部36との距離は、支点部36と取付部材41との距離よりも長くなっている。
【0040】
以上のように構成された傾き補正機構17では、傾き補正用モータ37が回転すると、減速機38を介して出力軸37aに連結された偏心軸39が回転する。偏心軸39の回転に伴ってリンク部材40および取付部材41は、たとえば、図11の破線で示すように下降し、あるいは、図11の二点鎖線で示すように上昇する。
【0041】
リンク部材40および取付部材41が下降すると、たとえば、図12(A)に示すように、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動する。また、リンク部材40および取付部材41が上昇すると、たとえば、図12(B)に示すように、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が時計方向に回動する。このように、偏心軸39の回転に伴って上下動するリンク部材40および取付部材41によって、ハンド3およびリニア駆動部4は、ハンド3に搭載されたマスク2の傾きを変化させる方向に支点部36を回動中心として回動する。
【0042】
ハンド3にマスク2が搭載されると、マスク2の重みで、図2の右下がりでマスク2が傾くように(すなわち、マスク2の右端が下がるように)、ハンド3およびリニア駆動部4が撓む。したがって、本形態では、ハンド3にマスク2が搭載されると、マスク2が水平になるように、偏心軸39を駆動する傾き補正用モータ37が回転する。すなわち、ハンド3にマスク2が搭載されると、リンク部材40および取付部材41が下降して、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動するように、傾き補正用モータ37が回転する。
【0043】
(制御部の構成)
図13は、図1に示す産業用ロボット1の制御部60およびその関連部分のブロック図である。なお、図13では、昇降用モータ20および傾き補正用モータ37の制御に関連する制御部60の構成が図示されている。
【0044】
制御部60は、図13に示すように、昇降用モータ20および傾き補正用モータ37の制御に関連する構成として、昇降用モータ20を制御する昇降用モータ制御部61と、傾き補正用モータ37を制御する傾き補正用モータ制御部62とを備えている。
【0045】
上述のように、ハンド3にマスク2が搭載されると、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動するように、傾き補正用モータ37が回転する。この傾き補正用モータ37の回転量は、傾き補正用モータ制御部62によって制御される。具体的には、本形態の傾き補正用モータ37はサーボモータであるため、所定のパルス数の駆動信号が傾き補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37に入力され、この駆動信号に応じて傾き補正用モータ37が所定量回転する。なお、傾き補正用モータ制御部62から出力される駆動信号中のパルス数は、ハンド3に搭載されるマスク2の重量に応じて設定される。
【0046】
ここで、マスク2の傾きを補正するため、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動すると、ハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わる場合がある。ハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わると、マスク2が収納されている収納部とハンド3に搭載されたマスク2とが接触するおそれがある。
【0047】
そこで、本形態では、昇降用モータ制御部61が、傾き補正用モータ37の回転量に応じて昇降用モータ20を駆動して、ハンド3に搭載されたマスク2とマスク2の収納部との接触を防止している。具体的には、補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37へ駆動信号が送られると、補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37へ出力されたパルス数に関する情報が昇降用モータ制御部61に入力され、この情報に基づいて、昇降用モータ制御部61は昇降用モータ20を駆動して、ハンド3を上下動させる。
【0048】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、傾き補正機構17は、傾き補正用モータ37に連結される偏心軸39の回転に伴って上下動するリンク部材40および取付部材41によって、支点部36を回動中心としてマスク2の傾きを変化させる方向にハンド3を回動させている。そのため、傾き補正用モータ37の回転量を制御して、取付部材41の上下方向の移動量を制御することで、支点部36を回動中心とするハンド3の回動量を制御することができる。したがって、本形態では、マスク2の重量に応じて、傾き補正用モータ37の回転量を制御することで、支点部36を回動中心とするハンド3の回動量を制御することができる。その結果、本形態では、マスク2の重量が変動しても、ハンド3に搭載されるマスク2の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0049】
また、傾き補正機構17によるマスク2の傾き補正量は、偏心軸39の偏心量で決まるため、傾き補正用モータ37が誤動作しても、ハンド3およびマスク2が過度に傾くことはない。したがって、傾き補正用モータ37が誤動作したとしても、ハンド3からマスク2が落下するのを防止することが可能になる。
【0050】
本形態では、リンク部材40の下端側は、偏心軸39の偏心部39aの外周側に軸受48を介して回動可能に取り付けられ、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。そのため、リンク部材40の、偏心軸39への取付部分および取付部材41への取付部分での摺動抵抗を軽減することができ、リンク部材40の両端側での塵埃の発生を抑制することができる。したがって、クリーンルーム等の清浄な環境でロボット1を使用することが可能になる。
【0051】
本形態では、偏心軸39の他端側は、軸支持部材45の内部に配置される軸受46に回転可能に支持されている。また、リンク部材40の下端側は、偏心軸39の偏心部39aの外周側に軸受48を介して回動可能に取り付けられている。そのため、軸受46、48の両端側にシール部材47、49を配置するといった簡易な構成で、偏心軸39の他端側の支持部分やリンク部材40の偏心軸39への取付部分で塵埃が生じても、塵埃の飛散を防止することが可能になる。
【0052】
本形態では、傾き補正用モータ37および偏心軸39は、支持部材7に取り付けられ、取付部材41は、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されている。また、支点部36は、リニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成されている。そのため、ハンド3にマスク2が搭載されたときにリニア駆動部4に生じる撓みに起因してマスク2が傾いても、その傾きを傾き補正機構17で補正することができる。
【0053】
また、リニア駆動部4全体の傾きを補正することができるため、リニア駆動部4に撓みが生じたとしても、昇降機構16による支持部材7の昇降動作との組合せによって、ハンド3の移動軌跡の微調整が可能となる。すなわち、リニア駆動部4に撓みが生じたとしても、傾き補正機構17によってリニア駆動部4全体の傾きを補正することができるため、この補正動作と、支持部材7の昇降動作との組合せによって、リニア駆動部4に沿って直線状に移動するハンド3の移動軌跡を微調整することが可能になる。なお、リニア駆動部4に沿ってハンド3が移動している状態で傾き補正機構17および昇降機構16を作用させてハンド3の移動軌跡の微調整を行っても良いし、リニア駆動部4に対してハンド3が停止している状態で傾き補正機構17および昇降機構16を作用させてハンド3の移動軌跡の微調整を行っても良い。
【0054】
また、傾き補正用モータ37および偏心軸39がリニア駆動部4に取り付けられ、取付部材41がハンド3の底面に固定されるとともに、支点部36がリニア駆動部4とハンド3との連結部に形成される場合と比較して、傾き補正機構17を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、傾き補正機構17の剛性を高めることができる。また、塵埃の発生箇所となりうる傾き補正機構17とハンド3との距離を離すことができるため、ハンド3に搭載されるマスク2の清浄度を確保しやすくなる。
【0055】
本形態では、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。そのため、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3の先端側(図2の右側)にロボット1の重心が偏るのを防止することができ、ロボット1を安定させることができる。また、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときハンド3の基端と支点部36との距離は、支点部36と取付部材41との距離よりも長くなっているため、偏心軸39の偏心量Xを小さくしてもハンド3の搭載されるマスク2の傾き補正量を大きくすることが可能になる。
【0056】
本形態では、昇降用モータ制御部61が、傾き補正用モータ37の回転量に応じて昇降用モータ20を駆動している。そのため、上述のように、傾き補正機構17によるマスク2の傾き補正によってハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わる場合であっても、昇降機構16によるハンド3の昇降動作でマスク2の高さを調整して、ハンド3に搭載されたマスク2の高さを一定に保つことが可能になる。したがって、たとえば、ハンド3に搭載されたマスク2とマスク2の収納部との接触を防止することができる。
【0057】
なお、本形態では、支点部36の配置位置、取付部材41の配置位置および/またはリニア駆動機構24によるハンド3の移動量等を変更することで、マスク2の傾き補正量を変更することが可能である。また、本形態では、傾き補正用モータ37を連続回転させることで、支点部36を中心にしてマスク2を上下方向に揺動させることが可能である。本形態では、傾き補正用モータ37を一方向へ連続回転させれば、支点部36を中心にしてマスク2を上下方向に揺動させることが可能となるため、マスク2を上下方向に揺動させる場合であっても、傾き補正用モータ37の制御が容易になる。また、傾き補正用モータ37を連続回転させてもマスク2の揺動量は一定であるため、安全性を確保することが可能になる。さらに、本形態では、偏心軸39の偏心量Xを大きくして、ハンド3の回動量を大きくすることで、傾き補正機構17を用いて、マスク2の収納部からマスク2を取り上げること、および、マスク2の収納部にマスク2を載置することが可能になる。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0059】
上述した形態では、傾き補正用モータ37および偏心軸39は支持部材7に取り付けられ、取付部材41はリニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されるとともに、支点部36はリニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成されている。この他にもたとえば、傾き補正用モータ37および偏心軸39がリニア駆動部4に取り付けられ、取付部材41がハンド3の底面に固定されるとともに、支点部36がリニア駆動部4とハンド3との連結部に形成されても良い。
【0060】
上述した形態では、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。この他にもたとえば、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と同じ側に配置されても良い。すなわち、図8における支点部36の右方に、傾き補正用モータ37、偏心軸39、リンク部材40および取付部材41が配置されても良い。
【0061】
上述した形態では、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介して偏心軸(クランク軸)39が連結されている。この他にもたとえば、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介してカム板(偏心カム)が連結されても良い。
【0062】
上述した形態では、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。この他にもたとえば、軸受を介して軸支持部材52に回動可能に支持される回動軸がリンク部材40の上端側に固定されても良い。
【0063】
上述した形態では、ハンド3の基端側をリニア駆動部4が支持している。この他にもたとえば、複数のアームと関節部とを備え水平方向へ伸縮する多関節アーム部がハンド3の基端側を支持しても良い。すなわち、ハンド3の基端側を支持する第1支持部は、多関節アーム部であっても良い。この場合、多関節アーム部は、ハンド3の基端側を回動可能に保持する。
【0064】
上述した形態では、昇降機構16は、ボールネジ21とナット部材23とを備え、ボールネジ21とナット部材23とによって、支持部材7を上下方向に移動させている。この他にもたとえば、昇降機構16がラックとピニオンとを備え、このラックとピニオンとによって、支持部材7を上下方向に移動させても良い。たとえば、柱状部材8にラックが固定され、このラックに噛み合うピニオンとピニオンを駆動するモータとが支持部材7に取り付けられても良い。なお、ロボット1が大型のロボットである場合には、ラックに噛み合う複数のピニオンを支持部材7に取り付けるとともに、複数のピニオンのそれぞれに個別に連結される複数のモータを支持部材7に取り付けても良い。
【0065】
上述した形態では、傾き補正用モータ37は、サーボモータであるが、傾き補正用モータ37は、サーボモータには限定されず、たとえば、ステッピングモータでも良い。また、上述した形態では、ロボット1に搬送される搬送対象物はマスク2であるが、搬送対象物は、液晶ディスプレイ用ガラス基板や半導体ウェハ等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットを示す図である。
【図3】図1のF−F方向から産業用ロボットを示す図である。
【図4】図1に示す柱状部材および昇降機構の構成を説明するための図である。
【図5】図4のG部の拡大図である。
【図6】(A)は、図1に示すリニア駆動部の構成を上面から説明するための図であり、(B)は(A)のH−H方向からリニア駆動部の構成を説明するための図である。
【図7】図6のJ−J方向からリニア駆動部の構成を説明するための図である。
【図8】図2のK部の拡大図である。
【図9】図8のM−M断面の断面図である。
【図10】図8のN−N断面の断面図である。
【図11】図10のP−P方向からリンク部材の構成を説明するための図である。
【図12】図8に示す傾き補正機構の作用を説明するための図である。
【図13】図1に示す産業用ロボットの制御部およびその関連部分のブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 マスク(搬送対象物)
3 ハンド
4 リニア駆動部(第1支持部)
7 支持部材(第2支持部)
16 昇降機構
17 傾き補正機構
20 昇降用モータ
36 支点部
37 傾き補正用モータ
37a 出力軸
39 偏心軸(偏心回転部材)
40 リンク部材
41 取付部材
48 軸受
50 軸受
60 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の搬送対象物(ワーク)を搬送する産業用ロボットが広く利用されている。この種の産業用ロボットとして、ワークが搭載されるハンドと2本のアームとを備える産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第1アームの先端側にハンドの基端側が連結され、第2アームの先端側に第1アームの基端側が連結されている。
【0003】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、ハンドにワークが搭載されたときのハンド、第1アームおよび第2アームに生じる撓みを補正するための撓み補正機構が、ハンドと第1アームとの連結部位に設けられている。この撓み補正機構は、第1アームに固定されるカムプレートと、ハンドに回転可能に取り付けられるカムフォロアとを備えている。この産業用ロボットでは、カムプレートの上面は、その高さ位置が円周方向に沿って変化するよう形成されており、第1アームおよび第2アームの伸縮動作に伴って、カムフォロアがカムプレートの上面を円周方向へ転がりながら移動することで、ハンド、第1アームおよび第2アームに生じる撓みが補正されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−136442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、第1アームおよび第2アームの伸縮動作に伴って、カムフォロアがカムプレートの上面を円周方向へ転がりながら移動することで、ハンド等に生じる撓みが補正されているため、カムプレートの上面の形状で、ハンド等に生じる撓みの補正値が決まる。すなわち、この産業用ロボットでは、カムプレートを交換しなければ、ハンド等に生じる撓みの補正値は一定となる。そのため、ハンドに搭載されるワークの重量が変動すると、ハンド等に生じる撓みを適切に補正できない場合が生じる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、搬送対象物が搭載されたときのハンドの撓みによる搬送対象物の傾きを補正する傾き補正機構とを備え、傾き補正機構は、駆動源となる傾き補正用モータと、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、偏心回転部材に一端側が取り付けられるリンク部材と、リンク部材の他端側が取り付けられる取付部材と、偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって搬送対象物の傾きを変化させる方向にハンドを回動させるための回動中心となる支点部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用ロボットでは、傾き補正機構は、傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材の回転に伴ってリンク部材とともに上下動する取付部材によって、搬送対象物の傾きを変化させる方向に支点部を回動中心としてハンドを回動させている。そのため、偏心回転部材の回転量(すなわち、傾き補正用モータの回転量)を制御して、取付部材の上下方向の移動量を制御することで、支点部を回動中心とするハンドの回動量を制御することができる。したがって、本発明では、搬送対象物の重量に応じて、傾き補正用モータの回転量を制御することで、支点部を回動中心とするハンドの回動量を制御して、搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能となる。すなわち、本発明では、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0009】
本発明において、偏心回転部材は、偏心軸であり、リンク部材の一端側は、偏心軸の外周側に軸受を介して回動可能に取り付けられ、リンク部材の他端側は、取付部材に軸受を介して回動可能に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、リンク部材の、偏心軸への取付部分および取付部材への取付部分での摺動抵抗を軽減することができ、リンク部材の両端側での塵埃の発生を抑制することができる。したがって、クリーンルーム等の清浄な環境で産業用ロボットを使用することが可能になる。また、軸受の両端側にシール部材を配置することで塵埃の飛散を防止することが可能になるため、塵埃の飛散防止構造を簡素化することができる。
【0010】
本発明において、たとえば、産業用ロボットは、ハンドの基端側を支持する第1支持部と、第1支持部を支持する第2支持部と、第2支持部を上下動させる昇降機構とを備えている。また、この場合には、第1支持部は、たとえば、ハンドを水平方向へ直線状に移動させるリニア駆動部、または、ハンドの基端側を回動可能に保持するとともに複数のアームを有し水平方向へ伸縮する多関節アーム部である。
【0011】
本発明において、傾き補正用モータおよび偏心回転部材は、第2支持部に取り付けられ、取付部材は、第1支持部に取り付けられ、支点部は、第1支持部と第2支持部との連結部に形成されていることが好ましい。このように構成すると、ハンドに搬送対象物が搭載されたときに第1支持部に撓みが生じたとしても、この第1支持部の撓みに起因する搬送対象物の傾きを傾き補正機構で補正することが可能になる。
【0012】
また、このように構成すると、第1支持部の傾きを補正することができるため、第1支持部に撓みが生じたとしても、昇降機構による第2支持部の昇降動作との組合せによってハンドの移動軌跡を微調整することが可能となる。また、傾き補正用モータおよび偏心回転部材が第1支持部に取り付けられ、取付部材がハンドに取り付けられるとともに、支点部が第1支持部とハンドとの連結部に形成される場合と比較して、傾き補正機構を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、傾き補正機構の剛性を高めることができる。
また、塵埃の発生箇所となりうる傾き補正機構とハンドとの距離を離すことが可能になるため、ハンドに搭載される搬送対象物の清浄度を確保しやすくなる。
【0013】
本発明において、取付部材は、ハンドの移動方向において、支点部に対して、ハンドの先端が支点部から最も遠ざかっているときのハンドと反対側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、先端が支点部から最も遠ざかっているときのハンドの先端側に産業用ロボットの重心が偏るのを防止することができ、産業用ロボットを安定させることができる。
【0014】
本発明において、産業用ロボットは、昇降機構を構成するとともに第2支持部を上下動させるための駆動源となる昇降用モータと傾き補正用モータとを制御する制御部を備え、制御部は、傾き補正用モータの回転量に応じて昇降用モータを駆動することが好ましい。このように構成すると、傾き補正機構での傾き補正によってハンドに搭載された搬送対象物の高さが変わる場合であっても、昇降機構によるハンドの昇降動作でハンドに搭載された搬送対象物の高さを調整することが可能になる。したがって、傾き補正機構で搬送対象物の傾きを補正しても、ハンドに搭載された搬送対象物の高さを一定に保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、搬送対象物の重量が変動しても、ハンドに搭載される搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1を示す図である。図3は、図1のF−F方向から産業用ロボット1を示す図である。
【0018】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2を搬送するためのロボットである。本形態の搬送対象物2は、たとえば、露光装置で使用される高価なマスクである。したがって、以下では、搬送対象物2を「マスク2」と表記する。このロボット1は、図1〜図3に示すように、マスク2が搭載されるハンド3と、ハンド3の基端側を支持する第1支持部としてのリニア駆動部4と、リニア駆動部4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備えている。
【0019】
本体部5は、リニア駆動部4を支持するとともに上下動可能な第2支持部としての支持部材7と、支持部材7を上下方向に移動可能に支持するための柱状部材8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台9と、柱状部材8の下端が固定されるとともに基台9に対して旋回可能な旋回部材10とを備えている。
【0020】
ハンド3は、マスク2を搭載するための2本の爪部12を備えている。このハンド3は、リニア駆動部4に対して図1の左右方向に相対移動可能となるように、リニア駆動部4に保持されている。
【0021】
また、ロボット1は、支持部材7を上下動させる昇降機構16(図4参照)と、マスク2が搭載されたときのハンド3およびリニア駆動部4の撓みに起因するマスク2の傾きを補正するための傾き補正機構17とを備えている。以下、昇降機構16、リニア駆動部4および傾き補正機構17の構成、および、その周辺部分の構成を説明する。
【0022】
(昇降機構およびその周辺部分の構成)
図4は、図1に示す柱状部材8および昇降機構16の構成を説明するための図である。図5は、図4のG部の拡大図である。
【0023】
昇降機構16は、支持部材7を上下動させるための駆動源となる昇降用モータ20と、昇降用モータ20が連結されるボールネジ21とを備えている。ボールネジ21は、上下方向を長手方向として、柱状部材8に取り付けられている。具体的には、柱状部材8の上下両端側に固定される2個の軸受22にボールネジ21が回転可能に支持されている。
【0024】
また、昇降機構16は、ボールネジ21に螺合して上下動するナット部材23を備えている。ナット部材23は、支持部材7に固定されている。本形態では、ボールネジ21とナット部材23とによって、支持部材7が上下方向に移動する。さらに、昇降機構16は、支持部材7を停止させるための2個の昇降ブレーキ機構24を備えている。図5に示すように、昇降用モータ20の出力軸には、プーリ28が固定され、ボールネジ21の上端には、プーリ28よりも径の大きなプーリ29が固定されている。プーリ28、29には、ベルト30が架け渡されている。
【0025】
(リニア駆動部およびその周辺部分の構成)
図6(A)は、図1に示すリニア駆動部4の構成を上面から説明するための図であり、図6(B)は(A)のH−H方向からリニア駆動部4の構成を説明するための図である。図7は、図6のJ−J方向からリニア駆動部4の構成を説明するための図である。
【0026】
リニア駆動部4は、全体として細長い略直方体状に形成されており、その中心部分が、支持部材7に回動可能に支持されている。このリニア駆動部4は、ハンド3を図6の左右方向へ直線状に移動させるリニア駆動機構24を備えている。
【0027】
リニア駆動機構24は、リニア駆動用モータ25(図7参照)と、リニア駆動用モータ25が連結されるボールネジ26とを備えている。ボールネジ26は、図6の左右方向を長手方向として、リニア駆動部4のフレーム27に固定されている。具体的には、フレーム27の左右両端側に固定される2個の軸受28にボールネジ26が回転可能に支持されている。
【0028】
また、リニア駆動機構24は、ボールネジ26に螺合して水平方向に移動するナット部材29と、ナット部材29が固定される移動ベース30とを備えている。移動ベース30の上面には、ハンド3の基端側の底面が固定されている。本形態では、ボールネジ26とナット部材29とによって、移動ベース30に固定されたハンド3が水平方向に移動する。また、移動ベース30の底面には、ケーブルベア31の一端が固定されている。なお、リニア駆動機構24は、移動ベース30を停止させるためのブレーキ機構や移動ベース30を水平方向に案内するためのガイド機構を備えている。
【0029】
図7に示すように、リニア駆動用モータ25の出力軸には、プーリ32が固定されている。また、ボールネジ26の端部には、プーリ32よりも径の大きなプーリ33が固定されている。プーリ32、33には、ベルト34が架け渡されている。
【0030】
(傾き補正機構およびその周辺部分の構成)
図8は、図2のK部の拡大図である。図9は、図8のM−M断面の断面図である。図10は、図8のN−N断面の断面図である。図11は、図10のP−P方向からリンク部材40の構成を説明するための図である。図12は、図8に示す傾き補正機構17の作用を説明するための図である。
【0031】
傾き補正機構17は、リニア駆動部4と支持部材7との連結箇所に配置されている。この傾き補正機構17は、リニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成される支点部36を回動中心にして図8の反時計方向にハンド3およびリニア駆動部4を回動させることで、図8の左右方向に対するハンド3およびリニア駆動部4の傾きを調整して、ハンド3に搭載されているマスク2の傾きを補正する。
【0032】
図9、図10に示すように、傾き補正機構17は、駆動源となる傾き補正用モータ37と、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介して連結される偏心回転部材としての偏心軸(クランク軸)39と、偏心軸39に下端側が取り付けられたリンク部材40と、リンク部材40の上端側が取り付けられる取付部材41とを備えている。
【0033】
支持部36は、図8に示すように、支持部材7の下端側に固定される支点軸43と、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定される支点ブロック44とから構成されている。支点軸43は、図8の紙面手前側に突出するように支持部材7の下端側に固定されている。支点ブロック44には、支点軸43が挿通される軸受(図示省略)が配置される軸受配置孔44aが形成されている。軸受配置孔44aに配置された軸受には、支点軸43に対して支点ブロック44が回動可能となるように、支点軸43が挿入されている。
【0034】
傾き補正用モータ37および減速機38は、支持部材7の下端側に固定されている。また、傾き補正用モータ37および減速機38は、図8における支点部36の左方に配置されるとともに、リニア駆動部4の下方に配置されている。本形態の傾き補正用モータ37は、サーボモータ(パルスモータ)である。また、本形態の減速機38は、遊星減速機である。傾き補正用モータ37の出力軸37aは、減速機38の入力側に連結されている。
【0035】
偏心軸39は、図8の紙面垂直方向を軸方向として配置されている。この偏心軸39の一端(図9の上端)は、減速機38の出力側に連結されている。また、偏心軸39の他端側は、支持部材7を構成する軸支持部材45の内部に配置される軸受46に回転可能に支持されている。軸受46の両端側には、シール部材47が配置されている。偏心軸39の軸方向の中間部には、図9に示すように、偏心軸39の回転中心軸CL1から距離Xだけずれている軸CL2を中心とする円柱状の偏心部39aが形成されている。すなわち、偏心量がXである偏心部39aが偏心軸39の軸方向の中間部に形成されている。なお、図8等では、軸支持部材45等の図示を省略している。
【0036】
リンク部材40の下端側には、偏心軸39の偏心部39aが挿通される挿通孔が形成されており、リンク部材40の下端側は、軸受48を介して偏心部39aの外周側に回動可能に取り付けられている。軸受48の両端側には、シール部材49が配置されている。また、リンク部材40の上端側には、取付部材41を構成する後述の固定軸51が挿通される挿通孔が形成されており、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。
【0037】
取付部材41は、リンク部材40の上端側に挿通される固定軸51と、固定軸51の両端側を支持する軸支持部材52とを備えている。固定軸51は、その軸方向が偏心軸39の回転中心軸CL1と平行になるように配置されている。軸支持部材52は、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されている。具体的には、フレーム27の底面の、図8における支点部36よりも左側に軸支持部材52が固定されている。
【0038】
本形態では、図2におけるリニア駆動部4の右端側にハンド3が配置されているときに、ハンド3の先端が支点部36から最も遠ざかる。そのため、支点部36は、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と取付部材41との間に配置されている。すなわち、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。
【0039】
なお、本形態では、たとえば、ハンド3の先端が支点部36から最も遠ざかっているときに、昇降機構16によってハンド3が上昇してハンド3上にマスク2が搭載される。また、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときハンド3の基端と支点部36との距離は、支点部36と取付部材41との距離よりも長くなっている。
【0040】
以上のように構成された傾き補正機構17では、傾き補正用モータ37が回転すると、減速機38を介して出力軸37aに連結された偏心軸39が回転する。偏心軸39の回転に伴ってリンク部材40および取付部材41は、たとえば、図11の破線で示すように下降し、あるいは、図11の二点鎖線で示すように上昇する。
【0041】
リンク部材40および取付部材41が下降すると、たとえば、図12(A)に示すように、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動する。また、リンク部材40および取付部材41が上昇すると、たとえば、図12(B)に示すように、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が時計方向に回動する。このように、偏心軸39の回転に伴って上下動するリンク部材40および取付部材41によって、ハンド3およびリニア駆動部4は、ハンド3に搭載されたマスク2の傾きを変化させる方向に支点部36を回動中心として回動する。
【0042】
ハンド3にマスク2が搭載されると、マスク2の重みで、図2の右下がりでマスク2が傾くように(すなわち、マスク2の右端が下がるように)、ハンド3およびリニア駆動部4が撓む。したがって、本形態では、ハンド3にマスク2が搭載されると、マスク2が水平になるように、偏心軸39を駆動する傾き補正用モータ37が回転する。すなわち、ハンド3にマスク2が搭載されると、リンク部材40および取付部材41が下降して、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動するように、傾き補正用モータ37が回転する。
【0043】
(制御部の構成)
図13は、図1に示す産業用ロボット1の制御部60およびその関連部分のブロック図である。なお、図13では、昇降用モータ20および傾き補正用モータ37の制御に関連する制御部60の構成が図示されている。
【0044】
制御部60は、図13に示すように、昇降用モータ20および傾き補正用モータ37の制御に関連する構成として、昇降用モータ20を制御する昇降用モータ制御部61と、傾き補正用モータ37を制御する傾き補正用モータ制御部62とを備えている。
【0045】
上述のように、ハンド3にマスク2が搭載されると、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動するように、傾き補正用モータ37が回転する。この傾き補正用モータ37の回転量は、傾き補正用モータ制御部62によって制御される。具体的には、本形態の傾き補正用モータ37はサーボモータであるため、所定のパルス数の駆動信号が傾き補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37に入力され、この駆動信号に応じて傾き補正用モータ37が所定量回転する。なお、傾き補正用モータ制御部62から出力される駆動信号中のパルス数は、ハンド3に搭載されるマスク2の重量に応じて設定される。
【0046】
ここで、マスク2の傾きを補正するため、支点部36を回動中心としてハンド3およびリニア駆動部4が反時計方向に回動すると、ハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わる場合がある。ハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わると、マスク2が収納されている収納部とハンド3に搭載されたマスク2とが接触するおそれがある。
【0047】
そこで、本形態では、昇降用モータ制御部61が、傾き補正用モータ37の回転量に応じて昇降用モータ20を駆動して、ハンド3に搭載されたマスク2とマスク2の収納部との接触を防止している。具体的には、補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37へ駆動信号が送られると、補正用モータ制御部62から傾き補正用モータ37へ出力されたパルス数に関する情報が昇降用モータ制御部61に入力され、この情報に基づいて、昇降用モータ制御部61は昇降用モータ20を駆動して、ハンド3を上下動させる。
【0048】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、傾き補正機構17は、傾き補正用モータ37に連結される偏心軸39の回転に伴って上下動するリンク部材40および取付部材41によって、支点部36を回動中心としてマスク2の傾きを変化させる方向にハンド3を回動させている。そのため、傾き補正用モータ37の回転量を制御して、取付部材41の上下方向の移動量を制御することで、支点部36を回動中心とするハンド3の回動量を制御することができる。したがって、本形態では、マスク2の重量に応じて、傾き補正用モータ37の回転量を制御することで、支点部36を回動中心とするハンド3の回動量を制御することができる。その結果、本形態では、マスク2の重量が変動しても、ハンド3に搭載されるマスク2の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0049】
また、傾き補正機構17によるマスク2の傾き補正量は、偏心軸39の偏心量で決まるため、傾き補正用モータ37が誤動作しても、ハンド3およびマスク2が過度に傾くことはない。したがって、傾き補正用モータ37が誤動作したとしても、ハンド3からマスク2が落下するのを防止することが可能になる。
【0050】
本形態では、リンク部材40の下端側は、偏心軸39の偏心部39aの外周側に軸受48を介して回動可能に取り付けられ、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。そのため、リンク部材40の、偏心軸39への取付部分および取付部材41への取付部分での摺動抵抗を軽減することができ、リンク部材40の両端側での塵埃の発生を抑制することができる。したがって、クリーンルーム等の清浄な環境でロボット1を使用することが可能になる。
【0051】
本形態では、偏心軸39の他端側は、軸支持部材45の内部に配置される軸受46に回転可能に支持されている。また、リンク部材40の下端側は、偏心軸39の偏心部39aの外周側に軸受48を介して回動可能に取り付けられている。そのため、軸受46、48の両端側にシール部材47、49を配置するといった簡易な構成で、偏心軸39の他端側の支持部分やリンク部材40の偏心軸39への取付部分で塵埃が生じても、塵埃の飛散を防止することが可能になる。
【0052】
本形態では、傾き補正用モータ37および偏心軸39は、支持部材7に取り付けられ、取付部材41は、リニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されている。また、支点部36は、リニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成されている。そのため、ハンド3にマスク2が搭載されたときにリニア駆動部4に生じる撓みに起因してマスク2が傾いても、その傾きを傾き補正機構17で補正することができる。
【0053】
また、リニア駆動部4全体の傾きを補正することができるため、リニア駆動部4に撓みが生じたとしても、昇降機構16による支持部材7の昇降動作との組合せによって、ハンド3の移動軌跡の微調整が可能となる。すなわち、リニア駆動部4に撓みが生じたとしても、傾き補正機構17によってリニア駆動部4全体の傾きを補正することができるため、この補正動作と、支持部材7の昇降動作との組合せによって、リニア駆動部4に沿って直線状に移動するハンド3の移動軌跡を微調整することが可能になる。なお、リニア駆動部4に沿ってハンド3が移動している状態で傾き補正機構17および昇降機構16を作用させてハンド3の移動軌跡の微調整を行っても良いし、リニア駆動部4に対してハンド3が停止している状態で傾き補正機構17および昇降機構16を作用させてハンド3の移動軌跡の微調整を行っても良い。
【0054】
また、傾き補正用モータ37および偏心軸39がリニア駆動部4に取り付けられ、取付部材41がハンド3の底面に固定されるとともに、支点部36がリニア駆動部4とハンド3との連結部に形成される場合と比較して、傾き補正機構17を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、傾き補正機構17の剛性を高めることができる。また、塵埃の発生箇所となりうる傾き補正機構17とハンド3との距離を離すことができるため、ハンド3に搭載されるマスク2の清浄度を確保しやすくなる。
【0055】
本形態では、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。そのため、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3の先端側(図2の右側)にロボット1の重心が偏るのを防止することができ、ロボット1を安定させることができる。また、図2の左右方向において、先端が支点部36から最も遠ざかっているときハンド3の基端と支点部36との距離は、支点部36と取付部材41との距離よりも長くなっているため、偏心軸39の偏心量Xを小さくしてもハンド3の搭載されるマスク2の傾き補正量を大きくすることが可能になる。
【0056】
本形態では、昇降用モータ制御部61が、傾き補正用モータ37の回転量に応じて昇降用モータ20を駆動している。そのため、上述のように、傾き補正機構17によるマスク2の傾き補正によってハンド3に搭載されたマスク2の高さが変わる場合であっても、昇降機構16によるハンド3の昇降動作でマスク2の高さを調整して、ハンド3に搭載されたマスク2の高さを一定に保つことが可能になる。したがって、たとえば、ハンド3に搭載されたマスク2とマスク2の収納部との接触を防止することができる。
【0057】
なお、本形態では、支点部36の配置位置、取付部材41の配置位置および/またはリニア駆動機構24によるハンド3の移動量等を変更することで、マスク2の傾き補正量を変更することが可能である。また、本形態では、傾き補正用モータ37を連続回転させることで、支点部36を中心にしてマスク2を上下方向に揺動させることが可能である。本形態では、傾き補正用モータ37を一方向へ連続回転させれば、支点部36を中心にしてマスク2を上下方向に揺動させることが可能となるため、マスク2を上下方向に揺動させる場合であっても、傾き補正用モータ37の制御が容易になる。また、傾き補正用モータ37を連続回転させてもマスク2の揺動量は一定であるため、安全性を確保することが可能になる。さらに、本形態では、偏心軸39の偏心量Xを大きくして、ハンド3の回動量を大きくすることで、傾き補正機構17を用いて、マスク2の収納部からマスク2を取り上げること、および、マスク2の収納部にマスク2を載置することが可能になる。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0059】
上述した形態では、傾き補正用モータ37および偏心軸39は支持部材7に取り付けられ、取付部材41はリニア駆動部4のフレーム27の底面に固定されるとともに、支点部36はリニア駆動部4と支持部材7との連結部に形成されている。この他にもたとえば、傾き補正用モータ37および偏心軸39がリニア駆動部4に取り付けられ、取付部材41がハンド3の底面に固定されるとともに、支点部36がリニア駆動部4とハンド3との連結部に形成されても良い。
【0060】
上述した形態では、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と反対側に配置されている。この他にもたとえば、取付部材41は、ハンド3の移動方向において、支点部36に対して、先端が支点部36から最も遠ざかっているときのハンド3と同じ側に配置されても良い。すなわち、図8における支点部36の右方に、傾き補正用モータ37、偏心軸39、リンク部材40および取付部材41が配置されても良い。
【0061】
上述した形態では、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介して偏心軸(クランク軸)39が連結されている。この他にもたとえば、傾き補正用モータ37の出力軸37aに減速機38を介してカム板(偏心カム)が連結されても良い。
【0062】
上述した形態では、リンク部材40の上端側は、軸受50を介して固定軸51に回動可能に取り付けられている。この他にもたとえば、軸受を介して軸支持部材52に回動可能に支持される回動軸がリンク部材40の上端側に固定されても良い。
【0063】
上述した形態では、ハンド3の基端側をリニア駆動部4が支持している。この他にもたとえば、複数のアームと関節部とを備え水平方向へ伸縮する多関節アーム部がハンド3の基端側を支持しても良い。すなわち、ハンド3の基端側を支持する第1支持部は、多関節アーム部であっても良い。この場合、多関節アーム部は、ハンド3の基端側を回動可能に保持する。
【0064】
上述した形態では、昇降機構16は、ボールネジ21とナット部材23とを備え、ボールネジ21とナット部材23とによって、支持部材7を上下方向に移動させている。この他にもたとえば、昇降機構16がラックとピニオンとを備え、このラックとピニオンとによって、支持部材7を上下方向に移動させても良い。たとえば、柱状部材8にラックが固定され、このラックに噛み合うピニオンとピニオンを駆動するモータとが支持部材7に取り付けられても良い。なお、ロボット1が大型のロボットである場合には、ラックに噛み合う複数のピニオンを支持部材7に取り付けるとともに、複数のピニオンのそれぞれに個別に連結される複数のモータを支持部材7に取り付けても良い。
【0065】
上述した形態では、傾き補正用モータ37は、サーボモータであるが、傾き補正用モータ37は、サーボモータには限定されず、たとえば、ステッピングモータでも良い。また、上述した形態では、ロボット1に搬送される搬送対象物はマスク2であるが、搬送対象物は、液晶ディスプレイ用ガラス基板や半導体ウェハ等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットを示す図である。
【図3】図1のF−F方向から産業用ロボットを示す図である。
【図4】図1に示す柱状部材および昇降機構の構成を説明するための図である。
【図5】図4のG部の拡大図である。
【図6】(A)は、図1に示すリニア駆動部の構成を上面から説明するための図であり、(B)は(A)のH−H方向からリニア駆動部の構成を説明するための図である。
【図7】図6のJ−J方向からリニア駆動部の構成を説明するための図である。
【図8】図2のK部の拡大図である。
【図9】図8のM−M断面の断面図である。
【図10】図8のN−N断面の断面図である。
【図11】図10のP−P方向からリンク部材の構成を説明するための図である。
【図12】図8に示す傾き補正機構の作用を説明するための図である。
【図13】図1に示す産業用ロボットの制御部およびその関連部分のブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 マスク(搬送対象物)
3 ハンド
4 リニア駆動部(第1支持部)
7 支持部材(第2支持部)
16 昇降機構
17 傾き補正機構
20 昇降用モータ
36 支点部
37 傾き補正用モータ
37a 出力軸
39 偏心軸(偏心回転部材)
40 リンク部材
41 取付部材
48 軸受
50 軸受
60 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記搬送対象物が搭載されたときの前記ハンドの撓みによる前記搬送対象物の傾きを補正する傾き補正機構とを備え、
前記傾き補正機構は、駆動源となる傾き補正用モータと、前記傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、前記偏心回転部材に一端側が取り付けられるリンク部材と、前記リンク部材の他端側が取り付けられる取付部材と、前記偏心回転部材の回転に伴って前記リンク部材とともに上下動する前記取付部材によって前記搬送対象物の傾きを変化させる方向に前記ハンドを回動させるための回動中心となる支点部とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記偏心回転部材は、偏心軸であり、
前記リンク部材の一端側は、前記偏心軸の外周側に軸受を介して回動可能に取り付けられ、
前記リンク部材の他端側は、前記取付部材に軸受を介して回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ハンドの基端側を支持する第1支持部と、前記第1支持部を支持する第2支持部と、前記第2支持部を上下動させる昇降機構とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1支持部は、前記ハンドを水平方向へ直線状に移動させるリニア駆動部、または、前記ハンドの基端側を回動可能に保持するとともに複数のアームを有し水平方向へ伸縮する多関節アーム部であることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記傾き補正用モータおよび前記偏心回転部材は、前記第2支持部に取り付けられ、
前記取付部材は、前記第1支持部に取り付けられ、
前記支点部は、前記第1支持部と前記第2支持部との連結部に形成されていることを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記取付部材は、前記ハンドの移動方向において、前記支点部に対して、前記ハンドの先端が前記支点部から最も遠ざかっているときの前記ハンドと反対側に配置されていることを特徴とする請求項5記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記昇降機構を構成するとともに前記第2支持部を上下動させるための駆動源となる昇降用モータと前記傾き補正用モータとを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記傾き補正用モータの回転量に応じて前記昇降用モータを駆動することを特徴とする請求項3から6いずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項1】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記搬送対象物が搭載されたときの前記ハンドの撓みによる前記搬送対象物の傾きを補正する傾き補正機構とを備え、
前記傾き補正機構は、駆動源となる傾き補正用モータと、前記傾き補正用モータの出力軸に連結される偏心回転部材と、前記偏心回転部材に一端側が取り付けられるリンク部材と、前記リンク部材の他端側が取り付けられる取付部材と、前記偏心回転部材の回転に伴って前記リンク部材とともに上下動する前記取付部材によって前記搬送対象物の傾きを変化させる方向に前記ハンドを回動させるための回動中心となる支点部とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記偏心回転部材は、偏心軸であり、
前記リンク部材の一端側は、前記偏心軸の外周側に軸受を介して回動可能に取り付けられ、
前記リンク部材の他端側は、前記取付部材に軸受を介して回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ハンドの基端側を支持する第1支持部と、前記第1支持部を支持する第2支持部と、前記第2支持部を上下動させる昇降機構とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1支持部は、前記ハンドを水平方向へ直線状に移動させるリニア駆動部、または、前記ハンドの基端側を回動可能に保持するとともに複数のアームを有し水平方向へ伸縮する多関節アーム部であることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記傾き補正用モータおよび前記偏心回転部材は、前記第2支持部に取り付けられ、
前記取付部材は、前記第1支持部に取り付けられ、
前記支点部は、前記第1支持部と前記第2支持部との連結部に形成されていることを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記取付部材は、前記ハンドの移動方向において、前記支点部に対して、前記ハンドの先端が前記支点部から最も遠ざかっているときの前記ハンドと反対側に配置されていることを特徴とする請求項5記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記昇降機構を構成するとともに前記第2支持部を上下動させるための駆動源となる昇降用モータと前記傾き補正用モータとを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記傾き補正用モータの回転量に応じて前記昇降用モータを駆動することを特徴とする請求項3から6いずれかに記載の産業用ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−76066(P2010−76066A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249291(P2008−249291)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
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