説明

用紙パッケージ

【課題】積層された状態の用紙の外側をパッケージ材で覆っておき、用紙をプリンタで用いるときには開封して使う構成において、パッケージ材に設けた突起を当該パッケージ材に設けた切込みに容易に差し込める構成を提供する。
【解決手段】用紙パッケージ9のパッケージ材8は、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、用紙はその内部に収納される。そして、該パッケージ材8から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材8とともに前記プリンタにセットできるように構成してある。前記パッケージ材8には線状の第一の切込み31aを設けて、当該パッケージ材8に設けられた突起38を前記第一の切込み31aに差込可能に構成している。また、前記パッケージ材8の前記第一の切込み31aよりも前記突起38の差込方向手前側に位置する部分B2を分割するように、前記第一の切込み31aに接続する第二の切込み31bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ねられた状態の用紙の外側をパッケージ材で保護するとともに、該パッケージ材とともにプリンタにセットできる、用紙パッケージの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、積層された状態の用紙の外側をパッケージ材で覆っておき、用紙をプリンタで用いるときには開封して使う構成が知られている。この構成は、複数枚の用紙をパッケージ単位でまとめて取り扱うことができるため使い勝手が向上されるとともに、内部の用紙を覆って保護できるために、特に光や熱に弱い感熱紙を用紙として採用する場合に有用である。
この用紙パッケージは、開封時にパッケージ材の一部を切り離し或いは折り返すことで用紙の一部を露出させ、この状態でパッケージ材とともにプリンタにセットして用いることとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術の用紙パッケージは、比較的大型(B5サイズ以上の用紙サイズ対応)のプリンタに対応するものであって、単なる段ボール箱で構成されていたが、近年のパーソナルコンピュータの小型化や携帯情報端末(PDA)の普及に伴い、プリンタも、ハンディサイズの小型プリンタの需要が高まってきた。
そして、この種の小型プリンタに用いる小さなサイズの用紙のハンドリング性を向上すべく、用紙を収容するためのパッケージ材をシート状の部材(例えば、厚紙材)で形成し、これを箱状に組み立てる構成の用紙パッケージを用いることが考えられる。
そして、この種の小型プリンタ用の用紙パッケージにおいては、シート状の部材は突起や切込みを有する形状に予め形成しておき、これを箱状に組み立てる際は、前記突起を前記切込みに単に差し込んで固定するようにすると、接着剤や粘着テープなどを使用する場合等に比してコスト的にも有利である。
【0004】
ところが、上記構成の小型プリンタ用の用紙パッケージにおいては、突起を差し込む際に切込みがなかなか開かない場合があって、差込む作業が面倒で煩雑なものとなっていたのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材には線状の第一の切込みを設けて、当該パッケージ材に設けられた突起を前記第一の切込みに差込可能に構成し、かつ、前記パッケージ材の前記第一の切込みよりも前記突起の差込方向手前側に位置する部分を分割するように、前記第一の切込みに接続する第二の切込みが形成されているものである。
【0007】
請求項2においては、前記パッケージ材の、前記第一の切込みよりも突起差込方向奥側に位置する部分と、前記第一の切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分とは、当該第一の切込み部分で互いに接するように構成されているものである。
【0008】
請求項3においては、前記用紙は感熱紙であり、前記パッケージ材の、当該感熱紙の感熱面を覆う部位に、前記第一の切込みおよび前記第二の切込みが形成されているものである。
【0009】
請求項4においては、前記パッケージ材の前記切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分は、前記第二の切込みによって分割された部分同士が、当該第二の切込み部分で互いに接するように構成されているものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0011】
〔プリンタの構成〕
まず、サーマル記録装置としてのプリンタ1の概略構造を、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1はプリンタの斜視図、図2は側面断面図である。図3は用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図である。図4は用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図である。
【0012】
プリンタ1は図1に示すように、平面視で長方形状(A6〜A7サイズ程度の用紙を収容可能な大きさ)とされ、かつ、厚みが略2cmあるいはそれ以下となる、コンパクトな構成とされている。
プリンタ1の本体ケース2は、枠体3の下面を下カバー4で覆うとともに、上面の一部を上カバー5で覆って形成されている。
【0013】
枠体3の上面側のうち前記上カバー5で覆われた箇所を除いた残りの部分には、図2に示すように用紙収容部(給紙部)6が形成される。この用紙収容部6には、A6〜A7サイズのカットシート状の感熱紙(被印刷媒体。以下「用紙」と称する)7をパッケージ材8の内部に複数枚収納した用紙パッケージ9を、図3に示すように収容可能としている。
前記用紙収容部6の上方は蓋体10にて覆われ、この蓋体10は図2に示すように回動自在とされる。本体ケース2側には図示しないロック機構が設けられており、前述のように用紙収容部6に用紙パッケージ9をセットした状態で、図3に示すように蓋体10を閉じてロックできるようになっている。
【0014】
用紙収容部6の一側の端部には、用紙分離部11としてのピックアップローラ12および分離ブロック13等が配置されている。また、上カバー5の下方には、後に詳述する印刷機構部14としてのサーマルヘッド15、プラテンローラ16、ペーパーガイド17が配置される。
【0015】
用紙分離部11を説明する。
図4に示すように、前記用紙収容部6の、前記印刷機構部14に近い側の端部には、ピックアップローラ12と分離ブロック13とが設けられている。前記蓋体10の用紙収容部6側を向く内面には、押圧板(ピックアップ押圧手段)18が回動自在に支持されている。
この押圧板18と蓋体10との間には付勢バネ19が介在され、押圧板18に対し、該押圧板18を下方へ回動させる向きの付勢力を常時作用させている。
【0016】
用紙パッケージ9は、印字面を下側へ向けながら積層された状態で内部に収納されている用紙7のうち、最も下側に位置する用紙7の下面をパッケージ材8から一部露出させた状態で、用紙収容部6にセットされる。そして、前記蓋体10を閉じてロックした際には、前述の付勢バネ19により下方へ付勢される押圧板18がパッケージ材8を介して、用紙7の用紙搬送方向先頭側の領域を押圧する。この結果、用紙7の前記露出した部分はピックアップローラ12に接触して、適宜の力で圧接される。
【0017】
前記ピックアップローラ12に近接させて分離ブロック13が設けられ、この分離ブロック13は、ピックアップローラ12の用紙送り出し方向に対して傾斜した分離案内面13aを備えている。
【0018】
この構成でピックアップローラ12が回転駆動することにより、該ピックアップローラ12に接触する最下層の用紙7に搬送力が加えられる。そして、前記分離ブロック13の分離案内面13aの分離作用とあいまって、最下層に位置する一枚の用紙7のみが分離されて送り出される。
【0019】
印刷機構部14を説明する。
分離ブロック13に隣接してプラテンローラ16が回転自在に設けられ、その外周面に近接させてペーパーガイド17が配置される。
図4の拡大図に示すように、このペーパーガイド17には、前記プラテンローラ16の外周面に沿うように、凹湾曲状の摺接面17aが形成されている。該ペーパーガイド17と本体ケース2との間には押圧コイルバネ20が設けられており、前記摺接面17aをプラテンローラ16の外周面に向けて付勢するようになっている。
【0020】
この構成において、前述の用紙分離部11で分離された用紙7は、ピックアップローラ12により搬送されて、分離ブロック13の下端と、用紙の向きをプラテンローラ16側へ向けるためのガイド板21の間を通過する。
用紙7はこのガイド板21により案内され、プラテンローラ16の下面側から、該プラテンローラ16とペーパーガイド17との間に送られる。そして用紙7は、プラテンローラ16の外周面とペーパーガイド17の摺接面17aとの間で保持されつつ、プラテンローラ16の回転駆動により横向き「U」字状に反転されながら搬送され、印字面を上側に向けながらプラテンローラ16の上面側に至る。
【0021】
プラテンローラ16の上面側に位置する前記サーマルヘッド15は、発熱体部15aを有している。該サーマルヘッド15は回動軸15bまわりに回動可能に設けられて、前記発熱体部15aがプラテンローラ16の上面に接離可能とされている。
なお、このようにサーマルヘッド15を回動自在に構成したのは、前記プラテンローラ16とペーパーガイド17との間で用紙7が詰まった場合におけるジャム紙除去作業において、サーマルヘッド15が作業の邪魔にならないようにするためである。
サーマルヘッド15には捩りコイルバネタイプのスプリング22の一端が係止されて、該サーマルヘッド15の発熱体部15aがプラテンローラ16上面に近接する方向の付勢力を常時加えている。
この構成で、前述のように印字面を上側に向けながらプラテンローラ16により送られてくる用紙の上面にサーマルヘッド15の発熱体部15aが接触し、この接触する箇所において用紙7に印字がなされる。
【0022】
サーマルヘッド15はラインヘッド型とされ、搬送されてくる感熱型の用紙7に対し、該用紙7の搬送方向に直交する方向に延びるライン毎に、任意の文字や画像を印刷することができる。一本のラインにつき印刷する際の印刷幅は、印刷対象の用紙7の幅に略等しく設定されている。
このようにサーマルヘッド15を印刷ヘッドとして用いるのは、被印刷媒体として感熱紙を用いることで、インクやインクリボンなどの消耗品が不要とできるほか、インクの供給のための機構などを省略でき、プリンタ1をコンパクトに構成できるからである。
感熱紙として、本実施形態では、サーマルヘッド15の加熱により発色する発色層を受像層としてその一側の面に形成した、いわゆる感熱発色タイプのものを使用している。ただし、それに限られるものではなく、例えば、加熱により穿孔される穿孔層を基材層上に積層して受像層としたもの(感熱穿孔タイプ)を用いても構わない。また、感熱紙のみならず、熱転写方式やそれ以外の用紙を用いることも可能である。
【0023】
前記分離ブロック13には、プラテンローラ16の用紙送り出し方向に対して傾斜した排紙ガイド面13bが形成されている。
この構成において、サーマルヘッド15の発熱体部15aにより印字がなされた後の用紙7は、この排紙ガイド面13bにより案内されて、図1の鎖線に示すように、本体ケース2の上カバー5と前記蓋体10とがなす隙間から、蓋体10の上側へ排紙される。
【0024】
〔用紙パッケージの構成〕
次に、本実施形態において、プリンタ1にセットされる用紙パッケージ9について説明する。
図5は用紙パッケージの斜視図、図6はパッケージ材の展開図である。用紙パッケージを製造する工程は、図7〜図11に順を追って示されている。
【0025】
用紙パッケージ9は図5に示すように、例えばA6〜A7サイズ程度の小サイズのカットシート状の感熱紙が、パッケージ材8の内部に、複数枚(例えば、50枚程度)積層されて収納される構成となっている。ユーザはこの図5の状態で販売されている用紙パッケージを購入し、後述する工程を行って内部の用紙を露出させてから、プリンタ1の用紙収容部6にパッケージ材8とともにセットするように構成されている。
【0026】
上記のパッケージ材8は、平板状の厚紙材(シート状部材)を折り曲げて箱状に組み立てたものである。厚紙材を折り曲げる前の状態が図6に示され、該厚紙材の形状は、用紙7とほぼ同一形状(長方形)とした底部40の周囲に、第一外装部41、第二外装部42、舌部43、蓋部44がそれぞれ一体的に形成されたものとなっている。なお、図6で細い鎖線で示されているのは折り目加工が施されている部分であって、当該折り目で厚紙材を折り曲げ易くして組立て時の便宜を図っている。
底部40にはプリンタセット用切込み31が、舌部43には蓋固定用切込み32・舌固定用切込み33が、第一外装部41には外装固定用切込み34がそれぞれ形成され、パッケージ材8の一部部分を差し込むことができるようになっている。詳細は後述する。
【0027】
〔用紙パッケージの製造工程〕
まず、用紙パッケージ9を製造する工程を以下に説明する。
図6の状態の厚紙材は、先ず図7に示すように、その舌部43が底部40の上側に位置するように180°折り曲げられる。次に図8に示すように、当該舌部43の上に重ねるようにして第一外装部41が折り曲げられ、その先端に設けられている差込部39が、舌部43に形成された舌固定用切込み33に差し込まれる。更に図9に示すように、該第一外装部41の上に重ねるようにして第二外装部42が折り曲げられ、その先端に設けられた差込部35が、第一外装部41に設けられた外装固定用切込み34に差し込まれる。
以上の結果、図10のような箱体が形作られる。図10に示すようにこの箱体は長方形状に構成され、かつ、その長手方向一側が開放されている。
【0028】
そして図10に示すように、重ねられた状態の用紙7が、前記厚紙材の底部40と舌部43との間に差し込むように、箱体の開放側から挿入される。
なお、用紙7を挿入する際には、用紙7の感熱面(印字面)が底部40側を向くように、予めその向きが定められる。これは、後に用紙パッケージ9をプリンタにセットし、当該用紙7がプリンタの印刷機構部14に送られるときに、前記サーマルヘッド15側に用紙7の感熱面が向くようにするためである。
【0029】
用紙7を挿入した後は図11に示すように、前記蓋部44を上方へ折り返して、その先端の突起38を、舌部43に形成されている該蓋固定用切込み32に差し込む。これにより、前記箱体の開放側が蓋部44により覆われた状態で固定される。
【0030】
以上により図5に示す用紙パッケージ9が完成するが、本実施形態においては、前述した用紙パッケージ9の製造作業はメーカ側で行い、プリンタ1を使用するユーザとしては、この図5の状態で販売されている用紙パッケージ9を購入し、当該用紙パッケージ9に対し以下に示す簡単な作業を施した上で、プリンタ1にセットして使用することになる。
【0031】
〔用紙パッケージのプリンタへのセット作業〕
次に、図5の状態の用紙パッケージ9をプリンタにセットするための作業の流れを、図12R>2以降を参照して説明する。図12〜図16には、当該作業の様子が順を追って示されている。
【0032】
最初に、ユーザは図5の状態の用紙パッケージ9の蓋部44の突起38を蓋固定用切込み32から抜き取って、図12に示すように蓋部44を開く。
その上で図13に示すように、第一外装部41・第二外装部42のそれぞれに形成されている切取部45に指を掛けて、当該切取部45を切り離す。この二つの切取部45は図6に示すように、パッケージ材8のいずれも外装部(41または42)から底部40に跨った部分に形成されている。なお、切取部45の切離し作業を容易とすべく、当該切取部45の輪郭に沿って、パッケージ材8にはミシン目加工46が施されている。
【0033】
この切取部45の切離し作業によって、前記底部40の一部を、図6に符号Aで示す折り目を境に、蓋部44とともに下方へ折り返すことができるようになる。
ユーザは蓋部44および底部40をこのように折り返した上で(図14)、その先端に形成されている突起38を、パッケージ材8の底部40に図6のように形成されているプリンタセット用切込み31に差し込む(図15)。
以上により、蓋部44が開いた状態で固定され、内部の用紙7の一部がパッケージ材8から露出される。
【0034】
次いで図16のように、この状態の用紙パッケージ9をプリンタ1の用紙収容部6にセットする。この結果、パッケージ材8内で積層されているうち最下層の用紙7の、パッケージ材8から露出されている部分が、ピックアップローラ12の上面に接触する。従って、この状態でピックアップローラ12を回転駆動させることにより、用紙7を繰り出して搬送できることになる。
【0035】
この後に蓋体10を閉じた状態が図3および図4に示され、このときは前記舌部43は、用紙7をピックアップローラ12に押し当てるための押圧板18と、用紙7との間に位置する。
【0036】
このようにして用紙7は用紙パッケージ9の形でプリンタ1にセットされ、用紙7が一枚ずつ繰り出されて無くなったときは、残ったパッケージ材8はプリンタ1から取り出されて廃棄されることになる。
この構成は、プリンタ1で多くの枚数を印刷したとしても、前記ピックアップローラ12や分離ブロック13の用紙分離性能が低下しない点で有用である。即ち、仮に用紙7が前記押圧板18に舌部43を介さず直接接触する構成とすると、プリンタ1の継続使用により押圧板18が摩耗して用紙7との間の摩擦力が低下し、分離作用が低下して用紙7を複数枚同時に送ってしまう現象(重送)が発生し易くなってしまう。この点本実施形態の構成では、用紙7が直接接触するのは舌部43であり、用紙7を所定の枚数使い切る毎に舌部43はパッケージ材8ごと新しいものに交換されることになるから、長年の使用により舌部43・用紙7間の摩擦力が低下してしまうことがなく、常に良好な分離作用が営まれて重送などの用紙搬送トラブルが防止される。
【0037】
〔用紙パッケージを交換する際の作業〕
なお、前記プリンタ1は目的に応じて、単なる感熱紙のほかにも、二枚の用紙を糊付けしてプリンタ1で二枚同時に印字可能とした複写紙や、感熱紙の裏面に粘着剤層を形成してセパレータと貼り合わせ、印字後にセパレータから剥がして貼り付け可能としたラベル紙など、様々な種類の用紙に印字できるようになっている。
従って、用紙パッケージ9の用紙7を全て使い切らないうちに、他の種類の用紙に交換したいような場合がある。本実施形態では一つのパッケージ材8の中には一種類のみの用紙を収納する構成となっているため、違う用紙7に交換したい場合は用紙パッケージ9ごと取り換える必要がある。
【0038】
このような場合は、ユーザはプリンタ1の前記蓋体10を開いて、用紙収容部6から用紙パッケージ9を取り外す。その後は図17に示すように、底部40の下側に折り返されていた蓋部44の先端の突起38をプリンタセット用切込み31から引き抜き、図17・図1818の矢印に示すように蓋部44を上方へ折り返す。そして、この突起38を蓋固定用切込み32へ差し込むことで、図18に示すように、蓋部44が閉じた状態(パッケージ材8の開放側が再び閉鎖された状態)で固定される。
この図18の状態で用紙7は保管されるが、再び使用するときは前述の作業とは逆に、蓋部44の先端の突起38を蓋固定用切込み32から引き抜き、蓋部44を下方へ折り返して該突起38をプリンタセット用切込み31へ差し込めば、プリンタ1にセットできる状態となる。
【0039】
〔プリンタセット用切込みの構成〕
次に、前記プリンタセット用切込み31の構成を説明する。
底面側を上に向けた状態の用紙パッケージ9の拡大斜視図が図19に示される。この図19R>9に示すように、プリンタセット用切込み31は、主要部分を緩やかな円弧状とした第一の切込み31aと、この第一の切込み31aの中央部に直角をなしながら接続する直線状の第二の切込み31bと、により構成され、略「T」字状あるいは「Y」字状に形成されている。第一の切込み31aも第二の切込み31bも、パッケージ材8の厚み方向に貫通するように設けられている。
第一の切込み31aはプリンタセット用切込み31の主要部分をなすものであって、前記突起38の差込方向(図19に白抜き矢印で示す)におよそ直交する方向に設けられている。そして、用紙パッケージ9をプリンタ1にセットする際には、前述のように折り返した蓋部44の突起38を当該第一の切込み31aに差し込むことで、用紙7の一部がパッケージ材8から露出した状態で固定できるようになっている。
【0040】
第一の切込み31aは幅のない切込みであって、この第一の切込み31aよりも突起38の差込方向奥側に位置する部分B1と、当該切込み31aよりも突起38の差込方向手前側に位置する部分B2とが、当該切込み31aの部分で互いに接するように構成している。
従って、前記突起38を差し込まない状態(即ち、用紙パッケージ9が未開封の新品である図5の状態、あるいは、用紙パッケージ9を中途まで使用した後保管している図18の状態)では、この第一の切込み31a部分がぴったりと閉じられるので、遮光性に優れ、当該第一の切込み31aから光が内部に射し込まないようになっている。
特に本実施形態では、この第一の切込み31aは、感熱紙である用紙7の感熱面を覆う部位(即ち、前記底部40)に設けられているので、第一の切込み31aがぴったりと閉じられることによって、感熱紙の感熱面が光に曝されて変質することが防止され、当該感熱面を確実に保護できることになる。
【0041】
前記第二の切込み31bは、パッケージ材8の前記底部40の、前記第一の切込み31aよりも前記突起38の差込方向手前側の部分B2を、等しく二つに分割するように設けられている。この結果、第一の切込み31aが広がり易くなり、突起38を前記第一の切込み31a(即ち、プリンタセット用切込み31)に差し込む作業が容易となっている。
【0042】
この効果を、具体的に図20を参照しながら説明する。図20(a)には、底面側を上に向けた状態で前記蓋部44の前記突起38を差し込もうとしている様子が斜視図と断面図の組で示され、この図20(a)の状態からユーザは、前記第一の切込み31aの突起差込方向手前側の部分B2を突起38で下側にやや押圧しながら、底部40上を滑らせるようにして突起38を第一の切込み31aに近づけて行く。
そうすると図20(b)に示すように、前述の第二の切込み31bで分割されている、第一の切込み31aより突起差込方向手前側の部分B2は、当該第二の切込み31bを境に割れるようにして下側に落ち込み、突起差込方向奥側の部分B1に対して容易に離間する。これは、第一の切込み31a部分が容易に広がり、相互に離間した前述の二つの部分B1・B2の間に容易に前記突起38を差し込めることを意味する。
【0043】
これに対する比較対照例として、図21に、第一の切込み31aのみで第二の切込み31bがない構成において突起38を挿入する場合を示す。
第一の切込み31aを挟んだ部分B1・B2は前述のように相互に接しているため、図21R>1(b)に示すように、突起差込方向手前側の部分B2を突起38で下方向に押したとしても、突起差込方向奥側の部分B1もそれにつられて下降してしまうことがある。この場合は、第一の切込み31aの部分がぴったりと閉じたままで、突起38の先端で第一の切込み31aをこじ開けるようにしない限りは、突起38を差し込むことができない。
この現象は特に、未使用の用紙パッケージ9を開封して最初に使用する場合に生じやすい。即ち、未使用状態の用紙パッケージ9はその容量一杯まで用紙7が積層されて収められているのが一般であり、この状態では用紙パッケージ9の底部40と用紙7との隙間dは小さいのが通常である。これは、突起38を差し込もうとして第一の切込み31aより突起差込方向手前側の部分B2を下側に押す際に、その押すストロークをあまり大きく確保できないことを意味する。従って、前述のように、第一の切込み31aが閉じたままで容易に広がらない現象が頻発することになる。
【0044】
この点、図20のように第二の切込み31bを有する本実施形態によれば、突起差込方向手前側の部分B2を押すストロークが小さい場合でも、容易に第一の切込み31aの部分を広げることができるので、突起38を容易かつスムーズに差し込むことができるのである。
【0045】
なお、前記突起38を第一の切込み31aに差し込んだときには図16に示すように、第一の切込み31aより突起差込方向奥側の部分B1は当該突起38と面状に接触して、突起38が不用意に抜けないように保持する摩擦力を発生させる役割を果たす。
従って、この突起差込方向奥側の部分B1においては、当該部分B1を分割するような切込みは設けないこととしている。これによって、突起差込方向奥側の部分B1の剛性が向上して容易に撓まないようになり、突起38が抜けないように保持する摩擦ホールド力が確保される。また、前記第一の切込み31aを、その中央部が突起差込方向手前側に膨らむ円弧状に形成しているのも、突起差込方向奥側の部分B1の面積を大きくして、突起38との接触面積を増やしてホールド力を増大させるためである。
【0046】
本実施形態では前記第二の切込み31bは、前述の突起差込方向手前側の部分B2を二等分する位置に、突起差込方向に平行な方向に設けられている。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、その位置・方向・形状は様々なバリエーションが考えられる。
また、本実施形態では前記第二の切込み31bは一本だけ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば二本設けて、前述の突起差込方向手前側の部分B1を三分割するようにしても良い。
【0047】
なお、本実施形態のパッケージ材8は図6に示すように、底部40に設けられる前記プリンタセット用切込み31のみならず、舌固定用切込み33、外装固定用切込み34についても全く同様に、突起としての前記差込部(39・35)を差込み可能な第一の切込みの中央部に、当該第一の切込みの突起(39・35)差込方向手前側の部分を分割するように設けた第二の切込みを接続させて設けた形状となっている。こうすることで、パッケージ材8を箱状に組み立てる際の差込部39・35の差込作業が容易となっている。
【0048】
本実施形態のプリンタセット用切込み31は、遮光性を確保して内部の感熱紙を保護する観点から、その第一の切込み31aを幅のない切込みとして、当該切込み31aの突起差込方向奥側部分B1と手前側の部分B2とが第一の切込み31a部分で接する構成としている。
しかしながら本発明の技術的範囲はこれに限られるものではなく、第一の切込み31aを適宜の幅を有する形状(例えば、図6等に示す前述の蓋固定用切込み32のような形状)としても、第二の切込み31bを前述のように設けることによって、第一の切込み31aが広がりやすくなる効果は十分奏される。
同様に、本実施形態では第二の切込み31bをも幅のない切込みとしており、前述の突起差込方向手前側の部分B2は、当該第二の切込み31bによって分割された部分同士が当該切込み31bの部分で互いに接するようにして、遮光性を確保している。しかしながらこの構成に限定されるものでもなく、第二の切込み31bが適宜の幅を有するように構成されていても良い。
【0049】
なお、前記パッケージ材8の前記底部40に設けるプリンタセット用切込み31は、当該底部40が感熱紙(用紙7)の感熱面を覆う部位に相当するものであり、更には用紙パッケージ9の未使用時・保管時などで該切込み31に突起38を長時間差し込まないでいる状況があり得るため、当該切込み31から光が射し込まないよう遮光性が強く要求されるという事情がある。一方、前記舌固定用切込み33や前記外装固定用切込み34は、感熱面を覆う部位に設けられている訳でもなく、またいったんパッケージ材8を箱状に組み立てた後は通常の使用をしている限りは切込み33・34から差込部39・35が抜かれることがないため、第一・第二の切込みともに適宜の幅を有するように形成してよい。
【0050】
本実施形態の用紙パッケージ9は感熱紙を収納したタイプのものであるが、本発明の技術的範囲はそれに限定されるものではない。例えば、前述したような複写紙やラベル紙を収納するタイプの用紙パッケージにも、本発明は同様に適用可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0052】
即ち、請求項1に示すように、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材には線状の第一の切込みを設けて、当該パッケージ材に設けられた突起を前記第一の切込みに差込可能に構成し、かつ、前記パッケージ材の前記第一の切込みよりも前記突起の差込方向手前側に位置する部分を分割するように、前記第一の切込みに接続する第二の切込みが形成されているので、
第一の切込みよりも突起差込方向手前側の部分に第二の切込みがあることで、第一の切込みが広がりやすくなる。従って、突起を第一の切込みに差し込む作業が容易となる。
【0053】
請求項2に示すように、前記パッケージ材の、前記第一の切込みよりも突起差込方向奥側に位置する部分と、前記第一の切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分とは、当該第一の切込み部分で互いに接するように構成されているので、
突起の差込みが容易である。即ち、一般には、第一の切込みの奥側と手前側が互いに接している(第一の切込み部分がぴったり閉じている)構成では、手前側の動きにつられて奥側の部分も動いてしまい、なかなか第一の切込みが開きにくく突起の差込みが難しい。しかし、本構成では第二の切込みがあることで、手前側が奥側に対して容易に離れ、結局、第一の切込みが請求項1の効果に示すように開きやすくなっているので、突起の差込みが容易になっている。
【0054】
請求項3に示すように、前記用紙は感熱紙であり、前記パッケージ材の、当該感熱紙の感熱面を覆う部位に、前記第一の切込みおよび前記第二の切込みが形成されているので、
パッケージ材の第一の切込みの部分がぴったりと閉じられるので、遮光性に優れ、感熱紙の感熱面が光に曝されて変質することが防止される。
【0055】
請求項4に示すように、前記パッケージ材の前記切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分は、前記第二の切込みによって分割された部分同士が、当該第二の切込み部分で互いに接するように構成されているので、
第二の切込みの部分もぴったりと閉じているので、遮光性が一層向上し、感熱紙の感熱面が光に曝されて変質することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】同じく側面断面図。
【図3】プリンタの用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図。
【図4】用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図。
【図5】用紙パッケージの斜視図。
【図6】パッケージ材の展開図。
【図7】パッケージ材の舌部を折り曲げる様子を示した図。
【図8】パッケージ材の第一外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図9】パッケージ材の第二外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図10】用紙をパッケージ材へ挿入する様子を示した図。
【図11】パッケージ材の蓋部を閉じる様子を示した図。
【図12】用紙パッケージをプリンタに使用するために、パッケージ材の蓋部を開く様子を示した図。
【図13】切取部を切り離す様子を示した図。
【図14】蓋部を下方へ折り曲げる様子を示した図。
【図15】蓋部を下面側で固定する様子を示した図。
【図16】用紙パッケージをプリンタにセットする様子を示した図。
【図17】プリンタから取り外した用紙パッケージにおいて、蓋部を上方へ折り返す様子を示した図。
【図18】蓋部を閉じる様子を示した図。
【図19】プリンタセット用切込みの構成を示す、底面を上側に向けた用紙パッケージの斜視図。
【図20】プリンタセット用切込みに突起が差し込まれる様子を示す図。
【図21】比較対照例において、プリンタセット用切込みに突起が差し込まれる様子を示す図。
【符号の説明】
1 プリンタ
7 用紙
8 パッケージ材
9 用紙パッケージ
31a 第一の切込み
31b 第二の切込み
38 突起
B1 突起差込方向奥側の部分
B2 突起差込方向手前側の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタの被印刷媒体としての用紙と、
シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、
を有し、
該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、
前記パッケージ材には線状の第一の切込みを設けて、当該パッケージ材に設けられた突起を前記第一の切込みに差込可能に構成し、
かつ、前記パッケージ材の前記第一の切込みよりも前記突起の差込方向手前側に位置する部分を分割するように、前記第一の切込みに接続する第二の切込みが形成されていることを特徴とする、
用紙パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙パッケージであって、
前記パッケージ材の、前記第一の切込みよりも突起差込方向奥側に位置する部分と、前記第一の切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分とは、当該第一の切込み部分で互いに接するように構成されていることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項3】
請求項2に記載の用紙パッケージであって、
前記用紙は感熱紙であり、
前記パッケージ材の、当該感熱紙の感熱面を覆う部位に、前記第一の切込み及び前記第二の切込みが形成されていることを特徴とする、
用紙パッケージ。
【請求項4】
請求項3に記載の用紙パッケージであって、
前記パッケージ材の前記切込みよりも突起差込方向手前側に位置する部分は、前記第二の切込みによって分割された部分同士が、当該第二の切込み部分で互いに接するように構成されていることを特徴とする、
用紙パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2004−59184(P2004−59184A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−217122(P2002−217122)
【出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】