説明

用紙積載装置

【課題】用紙積載台の昇降を補助する引張バネのバネ長さを短く設定する。
【解決手段】用紙Pを積載した用紙積載台11が昇降機構部20を介して昇降可能に画像形成装置1に設置された用紙積載装置10において、昇降機構部20は、画像形成装置1に上下方向に沿って取り付けられたラック21Rと、ラック21Rに噛合し、且つ、用紙積載台11に取り付けられた回転駆動源24により回転駆動されて用紙積載台11と一体にこの用紙積載台11をラック21Rに沿って昇降させるギア29aと、ギア29aの直径よりもプーリ外周部(29b3)が大径に形成されてギア29aと一体に同軸上で回転駆動され、且つ、プーリ外周部又はプーリ外周部の近傍に一端部を固着させたワイヤ30Rをギア29aの回転方向に巻回させたプーリ29bと、ワイヤ30Rの他端部が一端部に連結されて他端部が固定部36Rに掛止された引張バネ35Rとを備えた用紙積載装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を積載した用紙積載台が昇降機構部を介して昇降可能に画像形成装置に設置されている用紙積載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、用紙に画像や文字を印刷する印刷装置や、用紙に画像や文字を複写する複写機などの画像形成装置には、用紙を積載する用紙積載台を備えた用紙積載装置が設置されている。
【0003】
この種の用紙積載装置は各種の構造形態が適用されているが、一例として、孔版印刷機の一つの側面に、用紙を積載した給紙台が昇降機構部を介して上下方向に昇降可能に設置された画像形成装置用給紙装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された画像形成装置用給紙装置は、不図示の孔版印刷機の一つの側面に給紙ユニットが設置されており、且つ、この給紙ユニットの左右の側壁間に用紙を積載した給紙台が昇降機構部を介して用紙の積載量に応じて上下方向に昇降可能(上下動可能)に設けられている。
【0005】
具体的に説明すると、図6に示す如く、従来の画像形成装置用給紙装置100において、用紙Pを積載した給紙台101を昇降(上下動)させるための昇降機構部110では、給紙ユニット(図示せず)の左右の側壁111に略垂直方向に延びるガイド孔112が形成されていると共に、このガイド孔112の端縁に沿ってガイドレール113が形成されている。
【0006】
一方、複数枚の用紙Pを積載した給紙台101は、左右両側端にそれぞれブラケット102を介してローラ軸103が固定されており、このローラ軸103はガイドローラ104を回転可能に支持すると共に、外部の昇降部材114に連結している。そして、ガイドローラ104はガイド孔112内に上下方向移動可能に配置されると共にガイドレール113に当接している。
【0007】
また、昇降部材114には駆動チェーン115の一端部が連結されており、この駆動チェーン115は上方に延びて回転自在なターンスプロケット116に係合すると共に下方に折り返し、駆動モータ117のモータ軸117aに固着したピニオンギア118及びこのピニオンギア118に噛合したギア119により同軸上で一体的に回転駆動される下方の駆動スプロケット120に係合し、さらに上方に折り返して、駆動チェーン115の他端部が引張バネ121の一端部に連結している。更に、引張バネ121は上方に延びて、引張バネ121の他端部が側壁111に設けられたブラケット122に掛止されている。
【0008】
そして、上記の構成により、昇降機構部110の駆動モータ117を駆動してピニオンギア機構118,119を介して駆動スプロケット120を矢印B1方向に回転させることにより駆動チェーン115が矢印B2方向に移動し、駆動チェーン115に連結した昇降部材114を介して給紙台101が引張バネ121に補助されながら上昇するようになっている。一方、駆動スプロケット120を上記とは逆方向に回転させれば、昇降部材114を介して給紙台101が下降するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−89890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、一般的に、用紙Pを積載した用紙積載台を昇降機構部を介して昇降可能に画像形成装置に設置した場合に、用紙Pを満載したときの荷重を基準にして昇降機構部内に設けた駆動モータを選定すると、強力なトルクを発生できる駆動モータを必要とするが、特許文献1に開示された画像形成装置用給紙装置100内に設けた昇降機構部110では、重力方向と、給紙台重量及び用紙積載重量とを考慮して、給紙台101が上昇するときに駆動チェーン115を介して引張バネ121で補助し、この引張バネ121の付勢力により給紙台101が上昇するときの荷重と、給紙台101が下降するときの荷重とを平均化することにより、駆動モータ117の必要トルクを低減することが可能である。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された技術的思想では、駆動チェーン115の一端部を昇降部材114を介して給紙台101に連結し、且つ、駆動チェーン115の他端部を引張バネ121の一端部に連結しているので、給紙台101が昇降するときの移動量は駆動チェーン115に直接伝達されるために、引張バネ121の変位量(撓み量)は給紙台101の昇降時の移動量と同程度必要となり、自然長を含めた引張バネ121のバネ長さは給紙台101の昇降時の移動量よりも当然長くなっている。
【0012】
従って、多数枚の用紙を積載できる給紙台101の昇降時の移動量が大きい場合には、引張バネ121のバネ長さが給紙台101の昇降時の移動量よりも当然長くなり、引張バネ121の設置位置を設定するが困難になると共に、引張バネ121の設置位置によっては画像形成装置用給紙装置100又は不図示の孔版印刷機が大型化してしまうという問題が発生する。
【0013】
更に、特許文献1に開示された技術的思想では、給紙台101側と引張バネ121側とを連結する際に、駆動チェーン115やターンスプロケット116や駆動スプロケット120を用いているために、画像形成装置用給紙装置100が高価になってしまうという問題も生じている。
【0014】
そこで、用紙を積載した用紙積載台が昇降機構部を介して昇降可能に画像形成装置に設置された用紙積載装置において、用紙を満載した用紙積載台を昇降機構部を介して上昇させる際の駆動モータへの負荷を軽減させるように補助する引張バネのバネ長さを短く設定でき、且つ、引張バネを用紙積載装置又は画像形成装置内の空きスペースに効率良く設置できると共に、用紙積載装置内の昇降機構部を安価に構成できる用紙積載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、用紙を積載した用紙積載台が昇降機構部を介して昇降可能に画像形成装置に設置された用紙積載装置において、
前記昇降機構部は、
前記画像形成装置に上下方向に沿って取り付けられたラックと、
前記ラックに噛合し、且つ、前記用紙積載台に取り付けられた回転駆動源により回転駆動されて前記用紙積載台と一体にこの用紙積載台を前記ラックに沿って昇降させるギアと、
前記ギアの直径よりもプーリ外周部が大径に形成されて該ギアと一体に同軸上で回転駆動され、且つ、前記プーリ外周部又は該プーリ外周部の近傍に一端部を固着させたワイヤを前記ギアの回転方向に巻回させたプーリと、
前記ワイヤの他端部が一端部に連結されて他端部が固定部に掛止された引張バネと、
を備え、
前記ギアの回転に伴って前記プーリ外周部から引き出される前記ワイヤの引き出し量又は前記プーリ外周部に巻き取られる前記ワイヤの巻き取り量を、前記用紙積載台の昇降時の移動量よりも大きく設定して前記ワイヤに連結した前記引張バネを変位させることを特徴とする用紙積載装置である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記給紙台の昇降時の移動量をX、前記引張バネの変位量をYとしたときに、X/Y>1の関係が成立するように前記ギアの直径と前記プーリ外周部の直径とを設定することを特徴とする請求項1に記載の用紙積載装置である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記プーリ外周部に巻回された前記ワイヤの他端部側をワイヤ方向転換用プーリを介して前記用紙の搬送方向と直交する用紙幅方向に方向転換させて、前記ワイヤの他端部側を前記用紙幅方向に沿って設置した前記引張バネの一端部に連結させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙積載装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の用紙積載装置によると、用紙を積載した用紙積載台を昇降機構部を介して昇降させる際に、昇降機構部は、画像形成装置に上下方向に沿って取り付けられたラックと、用紙積載台に取り付けられ回転駆動源によりラックと噛合しながら回転駆動されるギアと、ギアと一体に同軸上で回転駆動され且つプーリ外周部又はプーリ外周部の近傍に一端部を固着させたワイヤをギアの回転方向に巻回させたプーリと、ワイヤの他端部が一端部に連結されて他端部が固定部に掛止された引張バネと、を備え、ギアの回転に伴ってプーリのプーリ外周部から引き出されるワイヤの引き出し量又はプーリ外周部に巻き取られるワイヤの巻き取り量を、用紙積載台の昇降時の移動量よりも大きく設定してワイヤに連結した引張バネを変位させているので、用紙積載台の昇降時に回転駆動源の回転負荷を引張バネで補助できると共に、引張バネのバネ長さを短く設定できるためにこの引張バネを用紙積載装置又は画像形成装置内の空きスペースに効率良く設置できるので、用紙積載装置又は画像形成装置の小型化に寄与できる。
【0019】
更に、先に背景技術で説明したような高価な駆動チェーンやターンスプロケットや駆動スプロケットを用いる必要がないために、用紙積載装置内に設けた昇降機構部を安価に構成することができる。
【0020】
また、請求項2記載の用紙積載装置によると、給紙台の昇降時の移動量をX、引張バネの変位量をYとしたときに、X/Y>1の関係が成立するようにギアの直径とプーリ外周部の直径とを設定することにより、引張バネの変位量Yは、用紙積載台の昇降時の移動量Xよりも小さく設定できるので、請求項1と同様に、引張バネのバネ長さを短く設定できるためにこの引張バネを用紙積載装置又は画像形成装置内の空きスペースに効率良く設置できる。
【0021】
また、請求項3記載の用紙積載装置によると、プーリ外周部に巻回されたワイヤの他端部側をワイヤ方向転換用プーリを介して用紙の搬送方向と直交する用紙幅方向に方向転換させて、ワイヤの他端部側を用紙幅方向に沿って設置した引張バネの一端部に連結させることで、用紙積載台上に積載される用紙の積載量が多量で用紙積載台の昇降時の移動量が大きい場合に、用紙積載台の移動を補助する引張バネのバネ長さが長くなっても、引張バネを画像形成装置内の空きスペースに用紙幅方向に沿って効率よく配置できるので、画像形成装置を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る用紙積載装置の全体構成を説明するために一部破断して示した上面図である。
【図2】本発明に係る用紙積載装置において、用紙積載台が下降位置に至っている状態を一部破断して示した側面図である。
【図3】本発明に係る用紙積載装置において、用紙積載台が上昇位置に至っている状態を一部破断して示した側面図である。
【図4】本発明に係る用紙積載装置において、左右一対のプーリ付きギアを拡大して示した斜視図である。
【図5】本発明に係る用紙積載装置において、用紙積載台の移動量と引張バネの変位量との関係を説明するために模式的に示した図である。
【図6】従来の画像形成装置用給紙装置を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る用紙積載装置の一実施例について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る用紙積載装置は、印刷装置や複写機などの画像形成装置に適用されており、用紙を積載した用紙積載台が昇降機構部を介して上下方向に昇降可能に画像形成装置に設置されている。
【0025】
この際、本発明に係る用紙積載装置は、未印刷又は未複写の用紙を積載してこの用紙を画像形成装置内に給紙する用紙給紙台を備えた用紙給紙装置や、画像形成装置内で処理された印刷済み又は複写済みの用紙を排紙しながら積載する用紙排紙台を備えた用紙排紙装置のいずれにも適用可能であるが、以下の実施例では用紙積載装置を用紙給紙装置に適用した場合について説明し、略同じ構成による用紙排紙装置についての説明を省略する。
【実施例】
【0026】
図1〜図3に示す如く、本発明に係る用紙積載装置(用紙給紙装置)10では、用紙Pを積載した用紙積載台(用紙給紙台)11が印刷装置や複写機などの画像形成装置1の一つの側面1aに昇降機構部20を介して用紙Pの積載量に応じて上下方向に昇降可能に設置されている。
【0027】
上記した用紙積載台11は、外形サイズの異なる1種類の用紙Pを例えば4000枚程度積載可能となるように剛性のある金属材又は樹脂材を用いて直方形状に形成されており、且つ、用紙積載台11の先端部11b側が画像形成装置1の一つの側面1aに形成した開口部1b内に進入した状態で設置されている。
【0028】
また、用紙積載台11の上面11aには、用紙Pの搬送方向と直交する用紙Pの幅方向をガイドする左右一対のガイドフェンス12L,12R(図1のみ図示)が不図示のガイドフェンス移動手段を介して左右に移動自在に間隔を離して設けられており、これによりA3サイズ,A4サイズ,封筒サイズなどの1種類の用紙Pが多数枚積載可能になっている。
【0029】
更に、用紙積載台11の上方部位には、給紙ローラ13と捌きローラ14とが左右一対のアーム15,15に軸支されており、両ローラ13,14は不図示のローラ回転駆動源によりそれぞれ反時計方向に回転可能になっている。
【0030】
そして、用紙Pの搬送方向の上流側に配置された給紙ローラ13は、用紙積載台11上に積層された最上層の用紙Pに回転しながら当接して、最上層の用紙Pを搬送方向下流側に向かって給紙している。
【0031】
一方、給紙ローラ13よりも下流側に配置された捌きローラ14には摩擦板16(図2,図3)が添接しており、給紙ローラ13より給紙された用紙Pは捌きローラ14と摩擦板16との間で挟持搬送されながら一枚ずつ分離されて重送が防止され、この後、画像形成装置1内に搬送されるようになっている。
【0032】
ここで、実施例の要部を構成し、且つ、用紙積載台11を昇降させるための昇降機構部20について説明する。
【0033】
上記した昇降機構部20では、用紙積載台11を上下方向に昇降させるために左右一対のラック部材21L,21Rが画像形成装置1の一つの側面1aに間隔を離して上下方向に向って左右平行に垂直に取り付けられており、且つ、左右一対のラック部材21L,21Rは長尺なラック歯21aが両者21L,21R間に設置した用紙積載台11の後方側に向かって左右対称に形成されている。
【0034】
一方、用紙積載台11の先端部11b側の左側面部11cに平板状のブラケット22が取り付けられ、且つ、用紙積載台11の先端部11b側の右側面部11dにL字状のモータブラケット23が取り付けられている。この際、L字状のモータブラケット23は、水平な上面23aが平坦面に形成され、垂直な側面23bが用紙積載台11の右側面部11dに固着されている。
【0035】
そして、右側のモータブラケット23に形成した上面23aには、回転駆動源となる駆動モータ24がモータ軸24aを下方に向けて垂直に取り付けられており、且つ、モータ軸24aにウォームギア25が固着されている。
【0036】
また、L字状のモータブラケット23の上面23aと直交する側面23bには、段付きシャフト26が用紙積載台11の右側面部11dの外側に向って横設されており、この段付きシャフト26に軸着させたアイドラーギア27がモータ軸24aに固着させたウォームギア25に噛合している。
【0037】
また、左側のブラケット22及び右側のモータブラケット23の側面23b上で左右一対のラック部材21L,21R側に向かう左右対称位置には、左右一対の段付きシャフト28L,28Rが用紙積載台11の左側面部11c及び右側面部11dの各外側に向って横設されており、これら左右一対の段付きシャフト28L,28Rに左右一対のプーリ付きギア29L,29Rが軸着されている。
【0038】
上記した左右一対のプーリ付きギア29L,29Rは、図4に拡大して示す如く、左右一対のラック部材21L,21Rの各ラック歯21aに噛合するギア部29aと、このギア部29aに同軸的に連接されて後述する左右一対のワイヤ30L,30Rをギア部29aの回転方向に巻回させるプーリ部29bと、左右一対の段付きシャフト28L,28Rに軸着される中心孔29cとが樹脂材などを用いて一体形成されている。
【0039】
尚、実施例では、左右一対のプーリ付きギア29L,29Rを一体形成しているが、これに限定されるものではなく、ギア(29a相当)とプーリ(29b相当)とを別体に形成して両者が同軸上で一体的に回転できる構造であれば良いものである。
【0040】
この際、右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aは、右側のラック部材21Rのラック歯21aに噛合していると共に、アイドラーギア27(図1〜図3)にも噛合してモータ軸24aに固着させたウォームギア25を介して駆動モータ24によって回転駆動されるようになっているが、左側のプーリ付きギア29Lのギア部29aは、左側のラック部材21Lのラック歯21aのみに噛合している。
【0041】
上記から、左右一対のラック部材21L,21Rを画像形成装置1の一つの側面1aの左右に取り付け、且つ、用紙積載台11の左右に取り付けた左右一対のプーリ付きギア29L,29Rの各ギア部29aを左右一対のラック部材21L,21Rの各ラック歯21aに噛合させることで、用紙積載台11を左右に傾くことなく略水平に昇降させることが可能になっていると共に、駆動モータ24を搭載した用紙積載台11の昇降動作は左右一対のラック部材21L,21Rに対して左右一対のプーリ付きギア29L,29Rを介して自走式となっている。
【0042】
また、左右一対のプーリ付きギア29L,29Rの各プーリ部29bは、ギア部29aより小径に形成されてこのギア部29aに連接する連接用ボス部29b1と、下フランジ部29b2と、ギア部29aより大径に形成されて左側のワイヤ30L又は右側のワイヤ30Rをギア部29aの回転方向に巻回させるプーリ外周部29b3と、上フランジ部29b4とからなり、左側のワイヤ30L又は右側のワイヤ30Rは各一端部をプーリ外周部29b3又はこのプーリ外周部29b3の近傍の下フランジ部29b2もしくは上フランジ部29b4に固着させて、左側のワイヤ30L又は右側のワイヤ30Rをプーリ外周部29b3よりも大径に形成された上下のフランジ部29b2,29b4により脱線しないようにガイドしながらプーリ外周部29b3に沿って巻回させている。
【0043】
再び図1〜図3に戻り、左右一対のラック部材21L,21Rの各外側面21bには、左右一対の段付きシャフト31L,31Rが外側に向って横設されており、これら左右一対の段付きシャフト31L,31Rに左右一対のワイヤ通過用プーリ32L,32Rが軸着されている。
【0044】
更に、画像形成装置1内の左右の側壁1c,1dの近傍に左右一対の段付きシャフト33L,33Rが設置されており、これら左右一対の段付きシャフト33L,33Rにワイヤ方向転換用プーリ34L,34Rが軸着されている。
【0045】
そして、左右一対のプーリ付きギア29L,29Rの各プーリ部29bのプーリ外周部29b3に巻回させた左右一対のワイヤ30L,30Rの各他端部側を左右一対のワイヤ通過用プーリ32L,32Rに沿って通過させた後に、画像形成装置1内に設置した左右一対のワイヤ方向転換用プーリ34L,34Rでワイヤ方向を用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向に方向転換させて、画像形成装置1内で用紙幅方向に沿って設けた左右一対の引張バネ35L,35Rの各一端部に連結させると共に、左右一対の引張バネ35L,35Rの各他端部を画像形成装置1内に設置した左右一対の固定部36L,36Rに掛止させている。
【0046】
この際、用紙積載台11上に積載される用紙Pの最大積載枚数は前述したように4000枚程度と多量であるので、用紙積載台11が昇降するときの移動量が440mm程度と大きくなり、これに伴って、用紙積載台11の昇降を補助する左右一対の引張バネ35L,35Rのバネ長さも長くなるので、左右一対の引張バネ35L,35Rを画像形成装置1内で用紙幅方向に沿って設ける場合に、図2,図3に示したように左右一対の引張バネ35L,35Rが互い干渉しないように両者35L,35Rの設置高さを変えている。従って、左右一対の引張バネ35L,35Rを画像形成装置1内の空きスペースに効率良く配置できる。
【0047】
尚、用紙積載台11上に積載される用紙Pの積載量が少ない用紙積載装置10では、用紙積載台11の昇降時の移動量が小さくなり、これに伴って、用紙積載台11の昇降を補助する左右一対の引張バネ35L,35Rのバネ長さも短くなるので、左右一対のワイヤ方向転換用プーリを設ける必要はなく、左右一対のワイヤ30L,30Rの各他端部側を左右一対のワイヤ通過用プーリ32L,32Rに沿って通過させた後に左右一対の引張バネ35L,35Rの各一端部に直接連結させても良く、この場合には左右一対の引張バネ35L,35Rを用紙積載装置10又は画像形成装置1内の空きスペースに設置すれば良いものであるので、用紙積載装置10又は画像形成装置1の小型化に寄与できる。
【0048】
次に、上記のように構成した用紙積載装置10の動作について、図2,図3,図5を用いて用紙積載台11の右側について説明し、駆動モータが取り付けられていない用紙積載台11の左側も右側と同期して同様に動作するので、左右の動作については必要に応じて述べる。
【0049】
まず、図2に示す如く、用紙積載装置10が初期状態であるとき、又は、用紙積載台11上に用紙Pが最大量積載されているときには、用紙積載台11が最も下方位置に下降している。
【0050】
そして、用紙Pを給紙する場合には、駆動モータ24を駆動して右側のラック部材21Rのラック歯21aに噛合している右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aを時計方向に回転させると、右側のプーリ付きギア29Rと一体に用紙積載台11が右側のラック部材21Rに沿って上昇するので、用紙積載台11上に積層した最上層の用紙Pが給紙ローラ13に当接する給紙位置まで用紙積載台11を上昇させている。
【0051】
一方、用紙Pの給紙が終了して用紙積載台11を初期位置まで下降させる場合には、上昇時とは逆に駆動モータ24を介して右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aを反時計方向に回転させれば良い。
【0052】
次に、図3に示す如く、用紙積載台11上に積層した用紙Pの積載量が少ない場合には、用紙Pの積載量に応じて用紙積載台11を上昇させれば良い。
【0053】
そして、図5に示す如く、用紙積載台11を上昇させるときに左側の説明を省略して右側についてのみ述べると、右側のラック部材21Rのラック歯21aに噛合している右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aを時計方向に回転させると、右側のプーリ付きギア29Rのプーリ部29bのプーリ外周部29b3に巻回している右側のワイヤ30Rの他端部側は引き出されるので、ワイヤ引き出し量に応じて右側の引張バネ35Rは縮む方向に変位する。
【0054】
一方、用紙積載台11を下降させるときに右側のラック部材21Rのラック歯21aに噛合している右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aを反時計方向に回転させると、右側のプーリ付きギア29Rのプーリ部29bのプーリ外周部29b3に巻回している右側のワイヤ30Rの他端部側は巻き取られるので、ワイヤ巻き取り量に応じて右側の引張バネ35Rは伸びる方向に変位する。
【0055】
ここで、右側のプーリ付きギア29Rのギア部29aの直径をD1(mm)、右側のプーリ付きギア29Rのプーリ部29bのプーリ外周部29b3の直径をD2(mm)、用紙積載台11の昇降時の移動量をX(mm)、移動量Xに応じて回転する右側のプーリ付きギア29Rの回転数をN(rpm)、用紙積載台11が上昇する時の右側のワイヤ30Rの引き出し量又は用紙積載台11が下降する時の右側のワイヤ30Rの巻き取り量をL(mm)、右側の引張バネ35Rの変位量(撓み量)をY(mm)とすると、右側の引張バネ35Rの変位量(撓み量)Yはワイヤ30Rの引き出し量又は巻き取り量Lから用紙積載台11の昇降時の移動量Xを引いた差分となるために、用紙積載台11の昇降時の移動量Xと右側の引張バネ35Rの変位量(撓み量)Yは上記したD1,D2に起因する。
【0056】
この際、上記したD1,D2の関係をD1<D2<2D1とすると、下記の式1〜式4が成立する。
【0057】
[数1]
X=π×D1×N ………式1
[数2]
L=π×D2×N ………式2
[数3]
Y=L−X=π×(D2−D1)×N ………式3
[数4]
X/Y≒D1/(D2−D1) ………式4
尚、式4において、略を示す「≒」の記号は、用紙積載台11の移動位置により、右側のプーリ付きギア29Rのプーリ部29bのプーリ外周部29b3と、右側のワイヤ通過用プーリ32Rとの間で右側のワイヤ30Rの他端部側に角度が付いてしまうために用いている。
【0058】
そして、式4において、D2=2×D1の場合にはX/Y≒1となり、先に背景技術で説明したと同様に、用紙積載台11の昇降時の移動量Xと左右一対の引張バネ35L,35Rの各変位量Yとが略同じになるので左右一対の引張バネ35L,35Rのバネ長さが長くなり不都合となる。
【0059】
そこで、この実施例では、式4において、D1<D2<2D1の条件を満足させることにより、下記の式5が成立する。
【0060】
[数5]
X/Y>1 ………式5
上記した式5から、左右一対の引張バネ35L,35Rの各変位量Yは、用紙積載台11の昇降時の移動量Xよりも小さく設定できるので、左右一対の引張バネ35L,35Rの各バネ長さを短く設定できるために、左右一対の引張バネ35L,35Rを用紙積載装置10又は画像形成装置1内の空きスペースに効率良く設置できるので、用紙積載装置10又は画像形成装置1を小型化することが可能となる。
【0061】
従って、左右一対のプーリ付きギア29L,29Rの各ギア部29aの回転に伴って各プーリ部29bのプーリ外周部29b3から引き出される左右一対のワイヤ30L,30Rの引き出し量L又は各プーリ部29bのプーリ外周部29b3に巻き取られる左右一対のワイヤ30L,30Rの巻き取り量Lを、用紙積載台11の昇降時の移動量Xよりも大きく設定して左右一対のワイヤ30L,30Rに連結した左右一対の引張バネ35L,35Rを変位させることで、用紙積載台11の昇降時に駆動モータ24の回転負荷を左右一対の引張バネ35L,35Rで確実に補助することができる。
【0062】
これにより、先に背景技術で図6を用いて説明したような高価な駆動チェーン115やターンスプロケット116や駆動スプロケット120を用いる必要がないために、用紙積載装置10内に設けた昇降機構部20を安価に構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…画像形成装置、1a…側面、1b…開口部、1c,1d…左右の側壁、
10…用紙積載装置、
11…用紙積載台、11a…上面、11b…先端部、11c…左側面部、
11d…右側面部、
12L,12R…左右一対のガイドフェンス、
13…給紙ローラ、14…捌きローラ、16…摩擦板、
20…昇降機構部、
21L,21R…左右一対のラック部材、21a…ラック歯、
22…平板状のブラケット、23…L字状のモータブラケット、
24…回転駆動源(駆動モータ)、24a…モータ軸、25…ウォームギア、
26…段付きシャフト、27…アイドラーギア、
28L,28R…左右一対の段付きシャフト、
29L,29R…左右一対のプーリ付きギア、29a…ギア部、29b…プーリ部、
29b1…連接用ボス部、29b2…下フランジ部、29b3…プーリ外周部、
29b4…下フランジ部、30L,30R…左右一対のワイヤ、
31L,31R…左右一対の段付きシャフト、
32L,32R…左右一対のワイヤ通過用プーリ、
33L,33R…左右一対の段付きシャフト、
34L,34R…左右一対のワイヤ方向転換用プーリ、
35L,35R…左右一対の引張バネ、36L,36R…左右一対の固定部、
D1…左右一対のプーリ付きギアのギア部の直径、
D2…左右一対のプーリ付きギアのプーリ部のプーリ外周部の直径、
P…用紙、X…用紙積載台の昇降時の移動量、Y…引張バネの変位量(撓み量)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載した用紙積載台が昇降機構部を介して昇降可能に画像形成装置に設置された用紙積載装置において、
前記昇降機構部は、
前記画像形成装置に上下方向に沿って取り付けられたラックと、
前記ラックに噛合し、且つ、前記用紙積載台に取り付けられた回転駆動源により回転駆動されて前記用紙積載台と一体にこの用紙積載台を前記ラックに沿って昇降させるギアと、
前記ギアの直径よりもプーリ外周部が大径に形成されて該ギアと一体に同軸上で回転駆動され、且つ、前記プーリ外周部又は該プーリ外周部の近傍に一端部を固着させたワイヤを前記ギアの回転方向に巻回させたプーリと、
前記ワイヤの他端部が一端部に連結されて他端部が固定部に掛止された引張バネと、
を備え、
前記ギアの回転に伴って前記プーリ外周部から引き出される前記ワイヤの引き出し量又は前記プーリ外周部に巻き取られる前記ワイヤの巻き取り量を、前記用紙積載台の昇降時の移動量よりも大きく設定して前記ワイヤに連結した前記引張バネを変位させることを特徴とする用紙積載装置。
【請求項2】
前記給紙台の昇降時の移動量をX、前記引張バネの変位量をYとしたときに、X/Y>1の関係が成立するように前記ギアの直径と前記プーリ外周部の直径とを設定することを特徴とする請求項1に記載の用紙積載装置。
【請求項3】
前記プーリ外周部に巻回された前記ワイヤの他端部側をワイヤ方向転換用プーリを介して前記用紙の搬送方向と直交する用紙幅方向に方向転換させて、前記ワイヤの他端部側を前記用紙幅方向に沿って設置した前記引張バネの一端部に連結させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙積載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49496(P2013−49496A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186881(P2011−186881)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】