説明

田植機

【課題】速度固定手段により固定した車速を、速度固定手段による車速固定の解除を行うことなく、増減調整可能な田植機を提供する。
【解決手段】田植機1は、エンジン14と、モータ71と、変速ペダル67と、最高速設定ダイヤル69と、速度固定レバー70と、を備え、速度固定レバー70が固定位置にあるときに、最高速設定ダイヤル69の回動操作によりモータ71を回動可能に構成することにより、車速を最高速設定ダイヤル69の回動角に応じて変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートクルーズ機能(速度固定手段)を有する田植機の技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
従来の田植機は、その車速を速度固定手段により一定値(固定車速)に固定した場合で、車速固定後に前記固定車速を変更する必要が生じたとき、一旦速度固定手段による車速固定の解除を行い、そして田植機の車速を、変速ペダルの踏み込み操作により所望の車速になるように増減調整した後に、再度速度固定手段により車速固定をやり直さなければならなかった。これにより煩雑な作業を要することとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、速度固定手段により固定した車速を、速度固定手段による車速固定の解除を行うことなく、増減調整可能な田植機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1に記載の田植機は、
エンジンの回転数、およびHSTの変速比のうちの少なくとも一方を変更して、車速を変更するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を変更するための操作具である変速手段と、
前記変速手段が最大操作量まで操作されたときの車速である最高速度を変更するための操作具である最高速設定手段と、
車速を前記変速手段の操作に関係なく一定値に固定する固定位置、および車速固定を解除する解除位置に切換可能な操作具である速度固定手段と、を備え、
前記速度固定手段が固定位置にあるときに、前記最高速設定手段の操作により前記アクチュエータを駆動可能に構成することにより、車速を前記最高速設定手段の操作量に応じて変更することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の田植機においては、
前記変速手段が最大操作量まで操作されたときの前記アクチュエータの駆動量である最大駆動量を、前記最高速設定手段の操作量に応じて変更することによって、前記最高速度を前記最高速設定手段の操作量に応じて変更し、
前記最高速設定手段の操作範囲内には、前記最高速設定手段が操作されたときに、前記アクチュエータの最大駆動量が変化せず、前記最高速度が変化しない疎植推奨速度域が含まれていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の田植機においては、
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記最高速設定手段による変更後の車速が所定の速度下限閾値未満の値になるときに、前記速度固定手段による車速固定を解除することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の田植機においては、
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記変速手段の操作量が、所定の固定解除下限値未満まで減少して、その後、前記固定解除下限値まで増加したときには、前記速度固定手段による車速固定を解除し、
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記変速手段の操作量が、所定の固定解除上限値まで増加したときには、前記速度固定手段による車速固定を解除し、
前記固定解除下限値は、前記速度固定手段が固定位置に切り換えられた時の前記変速手段の操作量である固定記憶位置よりも小さい値であり、
前記固定解除上限値は、前記固定記憶位置よりも大きい値であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の田植機においては、
前記速度固定手段が固定位置にあるときに、前記最高速設定手段の操作量に応じて前記固定解除下限値、および固定解除上限値を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の田植機においては、
前記速度固定手段が解除位置にある場合、前記アクチュエータの駆動量を、前記変速手段の操作量に応じて変更することによって、車速を前記変速手段の操作量に応じて変更し、
前記変速手段の操作範囲内において、その最大側には、前記変速手段が操作されたときに、前記アクチュエータの駆動量が変化せず、車速が前記最高速設定手段の操作量に対応した最高速度に維持される余裕代が含まれていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の田植機においては、
前記変速手段の操作範囲内において、その最小側には、前記変速手段が操作されたときに、前記アクチュエータの駆動量が変化せず、車速が0に維持される遊び代が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、速度固定手段により固定した車速を、速度固定手段が固定位置にある状態で、最高速設定手段の操作により増減調整可能である。
【0015】
請求項2においては、最高速設定手段を疎植推奨速度域内に操作して、田植機を、疎植推奨速度域と対応する最高速度で走行させる作業、すなわち疎植作業に適した車速で走行させる作業を円滑に行うことができる。
【0016】
請求項3においては、低速域で速度固定手段による車速固定が行われ、さらに前記最高速設定手段が低速側(車速が遅くなる側)に操作された場合に、田植機が走行停止した状態で速度固定手段による車速固定状態が維持されることを防ぐことが可能である。
【0017】
請求項4においては、前記変速手段の操作により車速固定を解除した時に、解除時の車速を遅くするか、または速くするかを選択可能となる。
【0018】
請求項5においては、前記変速手段の操作により速度固定手段による車速固定を解除したとき、田植機が急加速・急減速することを防ぐことが可能である。
【0019】
請求項6においては、前記変速手段が余裕代にある状態のとき、路面の状況等により前記変速手段の操作量が多少変化したぐらいでは車速の変更が行われないので、車速が敏感に反応することを防止可能である。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制可能である。
【0020】
請求項7においては、前記変速手段が遊び代にある状態のとき、前記変速手段が多少操作されたぐらいでは田植機が発進しないので、田植機の誤発進を防止することが可能である。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図である。
【図2】図1に示す田植機を上方から見たときの概略図である。
【図3】図1に示す田植機において、前車輪および後車輪への動力伝達構造を示す図。
【図4】図1に示す田植機において、植付部への動力伝達構造を示す図である。
【図5】(a)は図1に示す田植機のダッシュボード周辺を示す図であり、(b)は最高速設定ダイヤルの拡大図である。
【図6】図1に示す田植機の制御装置を示すブロック図である。
【図7】第一マップを示す図である。
【図8】第二マップを示す図である。
【図9】変速ペダルの回動角と、ペダル用ポテンショメータの検出軸の回動角と、モータ用ポテンショメータの検出軸の回動角と、エンジンの回転数と、田植機の車速と、の関係を示す図である。
【図10】第三マップを示す図である。
【図11】変速ペダルの踏み込み操作により車速固定の解除を行う場合において、(a)は変速ペダルの踏み込み量の基準となる固定解除下限値βx1を示す図であり、(b)は固定解除上限値βx2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(田植機の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0023】
図1および図2に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0024】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。ミッションケース20が車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の後方に配置される。図3に示すように、ミッションケース20の内部には、油圧−機械式無段変速機(HMT:HydroMechanicalTransmission)21、主変速機構22、クラッチ23、及び制動装置24が搭載される。
【0025】
HMT21は、エンジン14からの動力を無段階に変速可能な油圧式無段変速機(HST:HydroStaticTransmission)21aと、エンジン14からの動力とHST21aからの動力とを合成することが可能な遊星歯車機構21bと、を組み合わせたものである。
【0026】
主変速機構22は、歯合するギアの組み合わせを変更することにより、HMT21からの動力を複数段に変速可能なものである。
【0027】
クラッチ23は、切断又は接続されることにより、HMT21から主変速機構22への動力の伝達の可否を切り換えるものである。
また、制動装置24は、主変速機構22の出力軸の回動を制動することができるものである。
【0028】
図1および図3に示すように、フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0029】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20に伝達され、ミッションケース20の内部にあるHMT21及び主変速機構22を介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0030】
図1および図2に示すように、走行部10において、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部60が設けられる。運転操作部60の前部には、ダッシュボード61が配置される。ダッシュボード61の左右中央部には操向ハンドル64が配置され、さらにダッシュボード61には主変速レバー65、キースイッチ66(図5(a)参照)などが配置される。運転操作部60の後部には、運転席62が操向ハンドル64の後方に位置するように配置される。
【0031】
また、運転操作部60の操向ハンドル64や運転席62の周りには、変速ペダル67、ブレーキペダル68(図5(a)参照)、一部を乗降用ステップとする車体カバー63、その他のレバーやスイッチ等の操作具が配置される。これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。なお、操作具の詳細な構成については後述する。
【0032】
走行部10において、予備苗載台17が車体フレーム11の前部の左右両側から立設された各取付フレーム16に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台17に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0033】
図1、図2、及び図4に示すように、植付部40においては、植付ミッションケース50が植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸51が当該植付ミッションケース50から左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸51から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0034】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0035】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下の図示せぬガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、横送り機構52により左右往復横送り可能とされる。
【0036】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0037】
条数に合わせた苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構53により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0038】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0039】
同時に、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して横送り機構52および縦送り機構53に伝達されて、苗載台41が横送り機構52により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが苗載台41の左右往復横送りに応じて縦送り機構53により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0040】
図1および図2に示すように、植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0041】
また、前述の昇降機構30が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0042】
ここで、エンジン14からロータリケース44、横送り機構52および縦送り機構53に動力を伝達するための動力伝達機構は、図4に示す植付クラッチ55を含み、植付クラッチ55の断接に応じて、エンジン14の動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0043】
次に、本実施形態に係る田植機1の制御に関する構成について説明する。
【0044】
図2、図5(a)、および図6に示す変速ペダル67は田植機1の車速を変更するための操作具であり、より詳細には、エンジン14の回転数、及びHMT21の変速比を変更するための操作具である。変速ペダル67はダッシュボード61の右下方に配置される。
【0045】
図6に示すペダル用ポテンショメータ(ペダル操作量検出装置)67aは変速ペダル67の踏み込み量(回動角)を検出するためのものである。ペダル用ポテンショメータ67aはリンク機構を介して変速ペダル67に連結され、当該変速ペダル67の踏み込み量を検出することができる。より詳細には、変速ペダル67の踏み込み量(回動角)に応じてペダル用ポテンショメータ67aの検出軸が回動され、当該回動角を変速ペダル67の踏み込み量として検出することができる。
変速ペダル67が踏み込み操作されたとき、ペダル用ポテンショメータ67aが変速ペダル67の踏み込み量を示すペダル信号を出力する。
【0046】
図5(a)、図5(b)及び図6に示す最高速設定ダイヤル69は、変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときの車速である最高速度を変更するための操作具である。最高速設定ダイヤル69はダッシュボード61の略中央部(操向ハンドル64の前方)に配置される。
【0047】
図5(b)に示すように、最高速設定ダイヤル69は、所定範囲内(D0度以上D5度以下)で回動可能である。
このうち、(a)D0以上D1未満の領域を最低速度域Daとし、(b)D1以上D2未満の領域を第一可変域Dbとし、(c)D2以上D3未満の領域を疎植推奨速度域Dcとし、(d)D3以上D4未満の領域を第二可変域Ddとし、(e)D4以上D5以下の領域を最高速度域Deとする。
【0048】
最高速設定ダイヤル69が回動されることにより、田植機1の最高速度が、Vmax1〜Vmax3の範囲で変更される。
Vmax1〜Vmax3の大小関係については、Vmax1<Vmax2<Vmax3、になるように構成されている。
【0049】
(a)最高速設定ダイヤル69が上記最低速度域Da内で回動されるとき、田植機1の最高速度は、最高速設定ダイヤル69の回動角の値に関係なく、一定値Vmax1となる。
Vmax1は、圃場へ出入りする場合や、田植機1を格納する(トラックに積み降ろしする)場合等、田植機1を低速走行するときの車速である(例えば、Vmax1=0.30m/s)。
【0050】
(b)最高速設定ダイヤル69が上記第一可変域Db内で回動されるとき、田植機1の最高速度は、最高速設定ダイヤル69の回動角の値に対応して変更され、Vmax1〜Vmax2の範囲で変更される。
【0051】
(c)最高速設定ダイヤル69が上記疎植推奨速度域Dc内で回動されるとき、田植機1の最高速度は、最高速設定ダイヤル69の回動角の値に関係なく、一定値Vmax2となる。
Vmax2は、疎植作業を行う場合等、田植機1を中速走行するときの車速である(例えば、Vmax2=1.4m/s)。
【0052】
(d)最高速設定ダイヤル69が上記第二可変域Dd内で回動されるとき、田植機1の最高速度は、最高速設定ダイヤル69の回動角の値に対応して変更され、Vmax2〜Vmax3の範囲で変更される。
【0053】
(e)最高速設定ダイヤル69が上記最高速度域De内で回動されるとき、田植機1の最高速度は、最高速設定ダイヤル69の回動角の値に関係なく、一定値Vmax3となる。
Vmax3は、路上を走行する場合や、高速で植え付け作業を行う場合等、田植機1を高速走行するときの車速である(例えば、Vmax3=1.85m/s)。
【0054】
最高速設定ダイヤル69は回動されるとき、最高速設定ダイヤル69の回動角(操作量)を示すダイヤル信号を出力する。
【0055】
図2、図5(a)、および図6に示す主変速レバー65は主変速機構22の変速段(変速比)を変更するための操作具である。主変速レバー65はダッシュボード61の左端部(操向ハンドル64の左方)に配置される。主変速レバー65はリンク機構を介してミッションケース20内の主変速機構22に連結される。
主変速レバー65は、路上走行位置、植付位置、苗継ぎ位置、後進位置または中立位置に変更可能である。
主変速レバー65が路上走行位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が高速に変更される。この場合、田植機1は高速で走行することができる。
主変速レバー65が植付位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が低速に変更される。この場合、田植機1は、主変速機構22の変速段が高速である場合に比べて低速で走行することができる。
主変速レバー65が苗継ぎ位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。
主変速レバー65が後進位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が逆転に変更される。この場合、田植機1は後進することができる。
主変速レバー65が中立位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。
【0056】
また、主変速レバー65は、操作位置を検出する操作位置検出スイッチ65aを備える。
【0057】
図2、図5(a)、及び図6に示すキースイッチ66はエンジン14を始動または停止させるための操作具である。キースイッチ66はダッシュボード61の右後端部(操向ハンドル64の右後方)に配置される。
【0058】
図5(a)及び図6に示す速度固定レバー70は田植機1の車速固定、および車速固定の解除を行うための操作具である。速度固定レバー70は操向ハンドル64の軸に固定され、右方に向けて延設される。
速度固定レバー70は、固定位置、解除位置または中立位置に回動可能(切り換え可能)である。固定位置は、速度固定レバー70を後方に回動させた際の位置である。解除位置は、速度固定レバー70を前方に回動させた際の位置である。中立位置は、固定位置と解除位置の略中間の位置である。速度固定レバー70は、固定位置または解除位置のいずれかに操作された場合であっても、再び中立位置に復帰するように常時付勢されている。
田植機1の走行時に、速度固定レバー70が固定位置に切り換えられることにより、このときの田植機1の車速が固定される。
田植機1の車速が固定された状態から、速度固定レバー70が解除位置に切り換えられることにより、田植機1の車速固定が解除される。
また、田植機1の車速が固定された状態から、ブレーキペダル68が操作されたときも、田植機1の車速固定が解除される。
【0059】
なお、田植機1は、速度固定レバー70による車速固定(オートクルーズ)が行われた場合において、車速固定後、固定された車速を微調整して変更可能とするための構成を有している。このような構成についての詳細な説明は後述する。
【0060】
また、田植機1は、速度固定レバー70による車速固定が行われた場合において、速度固定レバー70を解除位置に操作したり、ブレーキペダル68を操作したりすることなく速度固定レバー70による車速固定を解除するための構成を有している。このような構成についての詳細な説明は後述する。
【0061】
図6に示す速度固定スイッチ70aは速度固定レバー70が固定位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定スイッチ70aとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定スイッチ70aは固定位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が固定位置に操作されたことを検出することができる。
【0062】
速度固定解除スイッチ70bは速度固定レバー70が解除位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定解除スイッチ70bとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定解除スイッチ70bは解除位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が解除位置に操作されたことを検出することができる。
【0063】
図5(a)及び図6に示すブレーキペダル68は田植機1を制動するための操作具である。ブレーキペダル68はダッシュボード61の右下方であって、変速ペダル67の左方に配置される。ブレーキペダル68はリンク機構を介して制動装置24に連結される。ブレーキペダル68が踏み込み操作された場合、制動装置24が作動し、田植機1の前車輪12および後車輪13の回動が制動される。なお、制動装置24は、坂道でも田植機1の停止状態を保持できる程度の制動力を発生可能である。
【0064】
図6に示すブレーキ操作検出スイッチ68aはブレーキペダル68が操作されたことを検出するためのものである。ブレーキ操作検出スイッチ68aとしてはマイクロスイッチが用いられる。ブレーキ操作検出スイッチ68aは踏み込み操作されたブレーキペダル68と接触することで、当該ブレーキペダル68が踏み込み操作されたことを検出することができる。
【0065】
図6に示す苗台端検出スイッチ49aは苗載台41が所定の位置(左右方向の終端位置)に到達したことを検出するものである。苗台端検出スイッチ49aとしてはマイクロスイッチが用いられる。苗台端検出スイッチ49aは、植付フレーム49に配置されて、苗載台41に設けられた押圧部と接触することで、当該苗載台41が所定の位置に到達したことを検出することができる。
【0066】
図6に示すモータ71は田植機1の車速を変更するためのアクチュエータである。
モータ71はエンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ23の断接の切り換え、および制動装置24の動作の切り換えを行う。モータ71はリンク機構を介してエンジン14、HMT21(詳細にはHST21a)、クラッチ23、および制動装置24に連結される。
【0067】
より詳細には、モータ71の出力軸はリンク機構を介してエンジン14の調速装置14aに連結される。モータ71により調速装置14aが駆動され、エンジン14の回転数を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してHST21aの可動斜板に連結される。モータ71により当該可動斜板の傾斜角度が変更され、HST21aの変速比を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してクラッチ23に連結される。モータ71によりクラッチ23が切断または接続される。
モータ71の出力軸はリンク機構を介して制動装置24に連結される。モータ71により制動装置24が作動されると、前車輪12及び後車輪13へと出力される動力を制動することができる。
【0068】
モータ用ポテンショメータ71aはモータ71の出力軸の回動角を検出するためのものである。モータ用ポテンショメータ71aはリンク機構を介してモータ71に連結され、当該モータ71の出力軸の回動角を検出することができる。より詳細には、モータ71の出力軸の回動角に応じてモータ用ポテンショメータ71aの検出軸が回動され、当該回動角をモータ71の出力軸の回動角として検出することができる。
【0069】
セルモータ72はエンジン14を始動させるためのアクチュエータである。
【0070】
図2、図5、及び図6に示すメータパネル73は田植機1の作動やエンジンや異常警報等に関する種々の情報を表示するためのものである。メータパネル73はダッシュボード61の左右略中央であって、操向ハンドル64の前方に配置される。
【0071】
図6に示す株間変速レバー74は、株間変速機構75(図4参照)の変速段を操作する操作具である。株間変速機構75は、車速に対する植付速度を変速して、苗の植付間隔を変更するものである。株間変速機構75は、植付周期中の植付速度に変化を生じさせる不等速変速が可能に構成される。疎植作業時には、株間変速レバー74を操作して、株間変速機構を不等速変速とすることで苗の引き摺りを防止することができる。
【0072】
図6に示す不等速変速操作検出スイッチ74aは、株間変速レバー74が不等速変速位置にあることを検出するためのものである。不等速変速位置とは、株間変速機構75が不等速変速となる株間変速レバー74の位置である。不等速変速操作検出スイッチ74aとしてはマイクロスイッチが用いられる。不等速変速操作検出スイッチ74aは不等速変速位置の近傍に配置される。不等速変速操作検出スイッチ74aは不等速変速位置に操作された株間変速レバー74と接触することで、当該株間変速レバー74が不等速変速位置にあることを検出することができる。
【0073】
制御装置100は検知信号を入力し、入力した検出信号およびプログラムに基づいて、モータ71、セルモータ72、及びメータパネル73等に制御信号を送信する。また、制御装置100は種々の信号に係る情報を記憶する。
制御装置100は具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0074】
制御装置100はペダル用ポテンショメータ67aに接続され、ペダル用ポテンショメータ67aによる変速ペダル67の踏み込み量を示す検出信号(ペダル信号)を取得することができる。
制御装置100は最高速設定ダイヤル69に接続され、最高速設定ダイヤル69の回動角(操作量)を示す検出信号(ダイヤル信号)を取得することができる。
制御装置100は操作位置検出スイッチ65aに接続され、操作位置検出スイッチ65aによる主変速レバー65の操作位置を示す検出信号を取得することができる。
制御装置100はキースイッチ66に接続され、キースイッチ66により始動操作が行われた旨の検出信号(始動信号)、および停止操作が行われた旨の検出信号(停止信号)を取得することができる。
制御装置100は速度固定スイッチ70aに接続され、速度固定スイッチ70aによる速度固定レバー70が固定位置に操作された旨の検出信号(固定信号)を取得することができる。
制御装置100は速度固定解除スイッチ70bに接続され、速度固定解除スイッチ70bによる速度固定レバー70が解除位置に操作された旨の検出信号(解除信号)を取得することができる。
制御装置100はブレーキ操作検出スイッチ68aに接続され、ブレーキ操作検出スイッチ68aによるブレーキペダル68が踏み込み操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100は苗台端検出スイッチ49aに接続され、苗台端検出スイッチ49aによる苗載台41が所定の位置に到達した旨の検出信号を取得することができる。
【0075】
制御装置100はモータ71に接続され、モータ71に制御信号を送信し、当該モータ71を回動することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aに接続され、モータ用ポテンショメータ71aによるモータ71の回動角の検出信号を取得することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aによる検出信号が所望の回動角になるまでモータ71に制御信号を送信することにより、当該モータ71を所望の回動角まで駆動することができる。
【0076】
制御装置100はセルモータ72に接続され、セルモータ72に制御信号を送信し、当該セルモータ72を駆動することができる。
制御装置100はメータパネル73に接続され、エンジンや作業機の動作状況や異常等を検知したときにその情報を表示することができる。
【0077】
制御装置100は、不等速変速操作検出スイッチ74aと接続され、不等速変速操作検出スイッチ74aによる株間変速レバー74が不等速変速位置に操作された旨の検出信号を取得することができる。
【0078】
また、制御装置100は、株間変速レバー74が不等速変速位置に操作された旨の検出信号を取得すると、車速が低速となるようにモータ71の駆動を制限する。つまり、制御装置100が不等速位置の検出信号を取得する場合と、取得しない場合と、を比較すると、変速ペダル67の踏み込み量が同じであるならば、不等速位置の検出信号を取得する場合の方がモータ71を低速側に回動させる。これにより、疎植作業時に、高速で作業することを抑制して、苗の引き摺りを確実に防止できる。
なお、本実施形態では、株間変速レバー74が不等速変速位置に操作されると、制御装置100がその位置を検出する構成とされるが、株間変速機構75が不等速とならず等速変速となる位置を検出する構成とすることも可能である。さらに、等速変速、不等速変速にかかわらず変速段毎に前記同様にマイクロスイッチ等を設けて、変速段毎にモータの駆動を制限することも可能である。これにより、株間変速機構75の変速段、つまり、株間にあった最適な速度で作業することができる。
【0079】
(第一マップ)
また、制御装置100には、変速ペダル67の踏み込み量βと、モータ71の回動角γとの関係(より詳細には、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βと、モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γとの関係)を示す第一マップが記憶される。
【0080】
図7は、前記第一マップを示している。図7中の横軸は変速ペダル67の踏み込み量βを、縦軸はモータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γを、それぞれ示している。
変速ペダル67が踏み込み操作された場合に、制御装置100は、第一マップにおいて変速ペダル67の踏み込み量βと対応するモータ71の回動角γを目標回動角として算出し、算出した目標回動角になるようにモータ71を回動する。これにより、田植機1の車速を、変速ペダル67の踏み込み量βに応じた大きさに変更する。
【0081】
変速ペダル67の踏み込み量βは、β1〜βmaxの範囲で変化するように構成されている。β1は、変速ペダル67が踏み込み操作されておらず、フリーの状態のときの変速ペダル67の踏み込み量である。βmaxは、変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときの変速ペダル67の踏み込み量である。
【0082】
前記第一マップの横軸のβにおいては、β1からβmaxまでの領域は、さらに遊び領域(β1以上β2未満)、接続領域(β2)、変速領域(β2より大きくβ3未満)、および最高速保持領域(β3以上βmax以下)に分割される。
【0083】
前記第一マップの遊び領域(β1以上β2未満)においては、モータ71の回動角γは一定値(γ1)に保持される。
前記第一マップの接続領域(β2)においては、モータ71の回動角γは一定値(γ2)に保持される。
前記第一マップにおける変速領域(β2より大きくβ3未満)においては、モータ71の回動角γは、変速ペダル67の踏み込み量βの増加に伴って、β2に対応するγ2から、β3に対応するγmaxまで増加する。
前記第一マップにおける最高速保持領域(β3以上βmax以下)においては、モータ71の回動角γは一定値(γmax)に保持される。
【0084】
また、制御装置100には、最高速設定ダイヤル69の回動角Dと、モータ71の補正割合PA(モータ71の修正目標回動角)と、の関係を示す第二マップが記憶される。
【0085】
(第二マップ)
図8は、前記第二マップを示している。図8中の横軸は最高速設定ダイヤル69の回動角Dを、縦軸はモータ71の目標回動角γmaxの補正割合PA(モータ71の修正目標回動角)を、それぞれ示している。
変速ペダル67の踏み込み量βが最高速保持領域(β3以上βmax以下)となる場合で、最高速設定ダイヤル69が回動されるとき、制御装置100は、第一マップに基づいて算出したモータ71の目標回動角γmaxを、第二マップに基づいて補正(修正)して、修正目標回動角を算出する。
そして、制御装置100は、修正目標回動角となるようにモータ71を回動することにより、田植機1の最高速度を、最高速設定ダイヤル69の回動角Dに応じた大きさに変更する。
なお、第二マップに基づいて修正目標回動角を算出するときの手順については、後述する(2−4)で詳細に説明することとし、以下では、第二マップについて説明する。
【0086】
前記第二マップの縦軸においては、モータ71の目標回動角γmaxの補正割合PAを示している。補正割合PAは、第一マップに基づいて算出したモータ71の目標回動角γmaxを、最高速設定ダイヤル69の回動角Dに応じて補正(修正)するときの割合を千分率で示したものである。
【0087】
前記第二マップの横軸の回動角Dにおいては、D0からD5までの領域は、さらに最低速度域Da(D0以上D1未満)、第一可変域Db(D1以上D2未満)、疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)、第二可変域Dd(D3以上D4未満)、および最高速度域De(D4以上D5以下)に分割される。
【0088】
前記第二マップにおける最低速度域Da(D0以上D1未満)においては、上記補正割合PAは一定値(VRS‰)、に保持される。
前記第二マップにおける第一可変域Db(D1以上D2未満)においては、上記補正割合PAは、(VRSM={(VRM−VRS)・(D−D1)/(D2−D1)}+VRS‰)、となり、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの増加に伴って、回動角D1に対応する(VRS‰)から、回動角D2に対応する(VRM‰)まで増加する。
前記第二マップにおける疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)においては、上記補正割合PAは一定値(VRM)‰、に保持される。
前記第二マップにおける第二可変域Dd(D3以上D4未満)においては、上記補正割合PAは、(VRSH={(1000−VRM)・(D−D3)/(D4−D3)}+VRM‰)、となり、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの増加に伴って、回動角D3に対応する(VRM‰)から、回動角D4に対応する(1000‰)まで増加する。
前記第二マップにおける最高速度域De(D4以上D5以下)においては、上記補正割合PAは一定値(1000‰)に保持される。
【0089】
なお、前記第二マップにおいて、第二可変域(D3以上D4未満)の傾きの方が、第一可変域(D1以上D2未満)の傾きよりも小さくなるように構成されている((1000−VRM)/(D4−D3)<(VRM−VRS)/(D2−D1))。
すなわち、第二可変域の方が、第一可変域よりも、最高速設定ダイヤル69の回動角に対する、補正割合PAの変化量が小さくなるように構成されている。
従って、最高速設定ダイヤル69を回動する際に、最高速設定ダイヤル69を第二可変域内で回動する方が、第一可変域内で回動するよりも、補正割合PAを微調整することが可能である。
【0090】
(田植機の基本動作)
上述の如く構成された田植機1において、制御装置100はキースイッチ66が始動操作された場合、セルモータ72を駆動して、エンジン14を始動させる。また、制御装置100はキースイッチ66が停止操作された場合、モータ71を回動して、調速装置14aによる燃料の供給を遮断し(本実施形態ではディーゼルエンジン、ガソリンエンジンの場合は点火装置を停止させる)、エンジン14を停止させる。
【0091】
また、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量を示す上記ペダル信号を取得した場合、取得した上記ペダル信号に基づいてモータ71の目標回動角を算出する。そして、制御装置100は、算出した目標回動角を、最高速設定ダイヤル69から取得する上記ダイヤル信号に基づいて修正(変更)することで、修正目標回動角を算出する。そして、制御装置100は、算出した修正目標回動角になるようにモータ71を回動することで、エンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ23の断接の切り換え、および制動装置24の動作の切り換えを行い、田植機1の車速を変更する。
【0092】
以下では、制御装置100が上記目標回動角および修正目標回動角を算出するときの構成について説明する。
【0093】
(目標回動角)
目標回動角は、変速ペダル67の踏み込み量(上記ペダル信号)に基づいて算出される。
目標回動角に関して、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量を示す上記ペダル信号を取得した場合、前記第一マップにおいて、取得したペダル信号(変速ペダル67の踏み込み量β)と対応するモータ71の回動角γを算出し、算出した回動角γを修正目標回動角γとする。
【0094】
目標回動角γに関しては、制御装置100の取得したペダル信号(変速ペダル67の踏み込み量β)の大きさに応じて、以下の(1−1)〜(1−4)に示す値になる。
【0095】
(1−1)図7に示すように、制御装置100の取得したペダル信号が、βa(β1以上β2未満)、になる場合(遊び領域)、目標回動角γは一定値(回動角γ1)となる。
【0096】
(1−2)制御装置100の取得したペダル信号が、β2になる場合(接続領域)、目標回動角γは一定値(回動角γ2)となる。
【0097】
(1−3)制御装置100の取得したペダル信号が、βb(β2より大きくβ3未満)、になる場合(変速領域)、目標回動角γは、前記第一マップにおいて、βbと対応するγb(γ2以上γmax未満)となる。従って、この場合の目標回動角γbは取得したペダル信号(回動角βb)の値に応じて変化する。
【0098】
(1−4)制御装置100の取得したペダル信号が、βc(β3以上βmax以下)、になる場合(最高速保持領域)、目標回動角γは一定値(回動角γmax)となる。
【0099】
(修正目標回動角)
修正目標回動角は、上記(1−1)〜(1−4)で算出した目標回動角γを、最高速設定ダイヤル69の回動角の値(上記ダイヤル信号)に基づいて修正(変更)することで、算出される。
修正目標回動角に関して、変速ペダル67の踏み込み量β、すなわち制御装置100の取得するペダル信号の大きさに応じて、以下の(2−1)〜(2−4)の示す値になる。
【0100】
(2−1)制御装置100の取得したペダル信号が、βa(β1以上β2未満)、になる場合(遊び領域)、制御装置100は、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値(ダイヤル信号)に関係なく、上記(1−1)にて算出した目標回動角γ1を、修正目標回動角とする。
【0101】
(2−2)制御装置100の取得したペダル信号が、β2になる場合(接続領域)、制御装置100は、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値(ダイヤル信号)に関係なく、上記(1−2)にて算出した目標回動角(回動角γ2)を、修正目標回動角とする。
【0102】
(2−3)制御装置100の取得したペダル信号が、βb(β2より大きくβ3未満)、になる場合(変速領域)、制御装置100は、上記(1−3)にて算出した目標回動角γbを、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値(ダイヤル信号)に基づいて適宜修正する。そして、制御装置100は、この修正した値を、修正目標回動角として算出する。
【0103】
(2−4)制御装置100の取得したペダル信号が、βc(β3以上βmax以下)、になる場合(最高速保持領域)、制御装置100は、上記(1−4)にて算出した目標回動角γmaxを、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値(ダイヤル信号)に基づいて修正する。そして、制御装置100は、この修正した値を、修正目標回動角として算出する。
本実施形態では、この場合の修正目標回動角は、図8に示す前記第二マップを用いて算出され、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの大きさに応じて以下の(2−4−1)〜(2−4−5)に示す値になる。
以下、図8を参照して詳細に説明する。
【0104】
(2−4−1)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(a)最低速度域Da(D0以上D1未満)のとき、このときの前記第二マップにおける補正割合PAは(VRS‰)になる。したがって、このときの修正目標回動角(γmax1)、すなわちモータ71の最大回動角は、以下の[数1]に示す値になり、一定値になる。なお、本実施形態では、補正割合PAが(0‰)となるときのモータ71の回動角γを、回動角γ2に設定している。
[数1]
γmax1={(γmax−γ2)×VRS/1000}+γ2
【0105】
(2−4−2)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(b)第一可変域Db(D1以上D2未満)のとき、このときの前記第二マップにおける補正割合PAは回動角Dの値に応じて(VRS‰〜VRM‰)の範囲内のいずれかの値になる。したがって、このときの修正目標回動角(γmax2)、すなわちモータ71の最大回動角は、以下の[数2]に示す値になり、回動角Dの値に対応して変化する。
[数2]
γmax2={(γmax−γ2)×VRSM/1000}+γ2
VRSM={(VRM−VRS)・(D−D1)/(D2−D1)}+VRS
【0106】
(2−4−3)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)のとき、このときの前記第二マップにおける補正割合PAは(VRM‰)になる。したがって、修正目標回動角(γmax3)、以下の[数3]に示す値になり、一定値になる。
[数3]
γmax3={(γmax−γ2)×VRM/1000}+γ2
【0107】
(2−4−4)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(d)第二可変域Dd(D3以上D4未満)のとき、このときの前記第二マップにおける補正割合PAは回動角Dの値に応じて(VRM‰〜1000‰)の範囲内のいずれかの値になる。したがって、このときの修正目標回動角(γmax4)、すなわちモータ71の最大回動角は、以下の[数4]に示す値になり、回動角Dの値に対応して変化する。
[数4]
γmax4={(γmax−γ2)×VRSH/1000}+γ2
VRSH={(1000−VRM)・(D−D3)/(D4−D3)}+VRM
【0108】
(2−4−5)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(e)最高速度域De(D4以上D5以下)のとき、このときの前記第二マップにおける補正割合PAは(1000‰)になる。したがって、このときの修正目標回動角、すなわちモータ71の最大回動角は、目標回動角γmaxと同じ値になる。
【0109】
(田植機の動作)
以下では、変速ペダル67が踏み込み操作された場合における田植機1の動作について説明する。
なお、田植機1の変速ペダル67が、以下の(3−1)〜(3−5)の順序で踏み込み操作されることとする。
また、説明の便宜上、主変速レバー65は植付位置に操作されているものとする。
また、最高速設定ダイヤル69が、(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)内に操作されているものとする。
【0110】
(3−1)図9に示すように、まず、変速ペダル67が踏み込み操作されていない場合において、この場合の当該変速ペダル67の回動角(ペダル回動角)αをα1(度)とする。この場合のペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角β(変速ペダル67の踏み込み量β)をβ1(度)とする。変速ペダル67の踏み込み量βがβ1以上β2未満のとき(遊び領域)、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角(モータ71の回動角)γ1(度)を修正目標回動角として算出する(上記(2−1)参照)。そして、制御装置100は、モータ71の回動角γが修正目標回動角γ1になるようにモータ71を回動する。
モータ71の回動角γがγ1になるようにモータ71が回動された場合、リンク機構を介してクラッチ23が切断される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達されることがなく、田植機1の車速Vは0(m/秒)となる。
また、この場合、リンク機構を介して制動装置24が作動する。これによって、前車輪12および後車輪13が制動され、田植機1が不意に前進または後進するのを防止することができる。
モータ71の回動角γがγ1になるようにモータ71が回動された場合、リンク機構を介してエンジン14の回転数NはN1(rpm)に設定される。
また、この場合、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が最大となるように設定される。これによって、エンジン14からの動力とHST21aからの動力が遊星歯車機構21bによって互いに打ち消すように合成され、主変速機構22へ動力が伝達されることがない。
【0111】
(3−2)変速ペダル67が踏み込み操作されて、ペダル回動角αが徐々に増加すると、当該ペダル回動角αの増加に伴って変速ペダル67の踏み込み量βも増加する。
ペダル回動角αがα1からα2(α2未満)まで増加すると、変速ペダル67の踏み込み量βはβ1からβ2(β2未満)まで増加する(遊び領域)。この間、制御装置100は、修正目標回動角をγ1とするため(上記(2−1)参照)、変速ペダル67の踏み込み量βの値に関係なくモータ71の回動角γをγ1のまま保持して、モータ71を回動しない。
モータ71の回動角γがγ1に保持されている場合、クラッチ23は切断された状態に維持される。
同様に、モータ71の回動角γがγ1に保持されている場合、制動装置24が作動した状態に維持される。
モータ71の回動角γがγ1に保持されている場合、エンジン14の回転数NはN1のまま維持される。
同様に、モータ71の回動角γがγ1に保持されている場合、HST21aの可動斜板の傾斜角度が最大のまま維持される。
従って、変速ペダル67が踏み込み操作されて変速ペダル67の踏み込み量βがβ1からβ2(β2未満)に増加した場合であっても、エンジン14の回転数NはN1のまま一定であり、かつ田植機1の車速Vは0のまま維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作操作に対して田植機1が走行しない領域(いわゆる「遊び代」)が設けられる。これは、変速ペダル67が多少踏み込まれたぐらいでは田植機1が発進しないようにして、田植機1の誤発進を防止するためである。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制するためである。
【0112】
(3−3)変速ペダル67が踏み込み操作されて、ペダル回動角αがα2になるとき、すなわち変速ペダル67の踏み込み量βがβ2になるとき(接続領域)、制御装置100は、γ2を、修正目標回動角として算出する(上記(2−2)参照)。そして、制御装置100は、モータ71の回動角γがγ2になるようにモータ71を回動する。
モータ71の回動角γがγ1からγ2まで増加するようにモータ71が回動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からN2まで増加する。
モータ71の回動角γがγ2になると(γ2を超えると)、クラッチ23は接続される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達可能となる。
同様に、モータ71の回動角γがγ2になると、制動装置24が解除される。これによって、前車輪12および後車輪13の制動が解除され、田植機1が前進又は後進可能となる。
【0113】
(3−4)変速ペダル67が踏み込み操作されて、ペダル回動角αがα2からα3まで増加すると、変速ペダル67の踏み込み量βはβ2からβ3まで増加する(変速領域)。このとき、制御装置100は、モータ71の回動角γが、変速ペダル67の踏み込み量β2に対応する修正目標回動角γ2(上記(2−2)参照)から、変速ペダル67の踏み込み量β3に対応する修正目標回動角γmax3(上記(2−4−3)参照)まで増加するように、モータ71を回動する。
モータ71の回動角γがγ2からγmax3まで増加するようにモータ71が回動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からNmax2まで増加する。
同様に、モータ71の回動角γがγ2からγmax3まで増加するようにモータ71が回動すると、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が減少するように駆動される。これによってエンジン14の動力はHMT21を介して前車輪12及び後車輪13に伝達されて、田植機1の車速Vは0から最高速度Vmax2まで増加する。
【0114】
(3−5)変速ペダル67が限界まで踏み込まれて、ペダル回動角αがα3からαmaxまで増加すると、変速ペダル67の踏み込み量βはβ3からβmaxまで増加する(最高速保持領域)。この間、制御装置100は、修正目標回動角をγmax3とするため(上記(2−4−3)参照)、変速ペダル67の踏み込み量βの値に関係なくモータ71の回動角γをγmax3のまま保持して、モータ71を回動しない。
従って、エンジン14の回転数Nは一定値(Nmax2)のまま、田植機1の車速V(最高速度)は一定値(Vmax2)のまま、それぞれ維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作に対して田植機1の車速Vが増加しない領域(いわゆる「余裕代」)が設けられる。これは、路面の状況等により変速ペダルの踏み込み量が多少変化したぐらいでは車速の変更が行われないようにして、車速が敏感に反応しないようにするためである。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制するためである。
このように、最高速設定ダイヤル69の回動角が(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)のとき、田植機1の最高速度が一定値(Vmax2)となる。
【0115】
上述の如く、本実施形態に係る田植機1は、変速ペダル67を踏み込み操作することで、田植機1の車速Vを増加(加速)させることができる。また、上述の説明とは逆に、踏み込み操作された変速ペダル67を元の位置に向かって戻すことで、田植機1の車速Vを減少(減速)させることができる。
【0116】
上記(3−3)〜(3−5)で示したように、田植機1の動作に関して、最高速設定ダイヤル69が、(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)内に操作されている場合において、変速ペダル67がβ2からβmaxまで踏み込まれるとき、モータ71の回動角γ、エンジン14の回転数N、田植機1の車速Vが、図9の実線で示すように変化する。
この場合において、変速ペダル67が限界(βmax)まで踏み込まれるとき、モータ71の回動角γは、γmax3となる(上記(2−4−3)参照)。
そして、エンジン14の回転数Nが、修正目標回動角γmax3と対応する、Nmax2となる。そして、田植機1の車速V(最高速度)が、エンジン14の回転数Nmax2と対応する、Vmax2となる。
【0117】
なお、田植機1の動作に関して、最高速設定ダイヤル69が、(a)最低速度域Da(D0以上D1未満)内に操作されている場合において、変速ペダル67がβ2からβmaxまで踏み込まれるとき、モータ71の回動角γ、エンジン14の回転数N、田植機1の車速Vが、図9の一点鎖線で示すように変化する。
この場合において、変速ペダル67が限界(βmax)まで踏み込まれるとき、モータ71の回動角γは、γmax1となる(上記(2−4−1)参照)。
そして、エンジン14の回転数Nが、修正目標回動角γmax1と対応する、Nmax1となる。そして、田植機1の車速V(最高速度)が、エンジン14の回転数Nmax1と対応する、Vmax1となる。
【0118】
また、田植機1の動作に関して、最高速設定ダイヤル69が、(e)最高速度域De(D4以上D5以下)内に操作されている場合において、変速ペダル67の踏み込み量βがβ2からβmaxまで増加するとき、モータ71の回動角γ、エンジン14の回転数N、田植機1の車速Vが、図9の二点鎖線で示すように変化する。
この場合において、変速ペダル67が限界(βmax)まで踏み込まれるとき、モータ71の回動角γは、γmaxとなる(上記(2−4−5)参照)。
そして、エンジン14の回転数Nが、修正目標回動角γmaxと対応する、Nmax3となる。そして、田植機1の車速V(最高速度)が、エンジン14の回転数Nmax3と対応する、Vmax3となる。
【0119】
また、田植機1の動作に関して、最高速設定ダイヤル69が、(b)第一可変域Db(D1以上D2未満)内に操作されている場合において、上記(3−5)に示すように変速ペダル67が限界まで踏み込まれるとき、修正目標回動角γmax2は、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値に対応して変化する(上記(2−4−2)参照)。
そして、エンジン14の回転数Nが最高速設定ダイヤル69の回動角D(修正目標回動角γmax2)の値に対応して変更され、これにより田植機1の最高速度がエンジン14の回転数Nの変更に対応して変更される。この場合、エンジン14の回転数NはNmax1〜Nmax2の範囲で変更され、田植機1の最高速度はVmax1〜Vmax2の範囲で変更される。
すなわち、最高速設定ダイヤル69の回動角が(b)第一可変域Db(D1以上D2未満)のとき、田植機1の最高速度が、最高速設定ダイヤル69に回動角の値に対応して、Vmax1〜Vmax2の範囲で変更される。
【0120】
また、田植機1の動作に関して、最高速設定ダイヤル69が、(d)第二可変域Dd(D3以上D4未満)内に操作されている場合において、上記(3−5)に示すように変速ペダル67が限界まで踏み込まれて、変速ペダル67の踏み込み量βがβ3からβmaxまで増加するとき、修正目標回動角γmax4は、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの値に対応して変化する(上記(2−4−4)参照)。
そして、エンジン14の回転数Nが最高速設定ダイヤル69の回動角D(修正目標回動角γmax4)の値に対応して変更され、これにより田植機1の最高速度がエンジン14の回転数Nの変更に対応して変更される。この場合、エンジン14の回転数NはNmax2〜Nmax3の範囲で変更され、田植機1の最高速度はVmax2〜Vmax3の範囲で変更される。
すなわち、最高速設定ダイヤル69の回動角が(d)第二可変域Dd(D3以上D4未満)のとき、田植機1の最高速度が、最高速設定ダイヤル69に回動角の値に対応して、Vmax2〜Vmax3の範囲で変更される。
【0121】
なお、エンジン14の回転数Nmax1〜Nmax3の大小関係については、Nmax1<Nmax2<Nmax3、になるように構成されている。
【0122】
(速度固定レバーによる車速固定)
以下では、速度固定レバー70により、田植機1の車速固定、および車速固定の解除が行われるときの手順について説明する。
【0123】
田植機1が走行している状態において、速度固定レバー70が固定位置に切り換えられるとき、このときの車速が固定(維持)される。
本実施形態では、作業者は、変速ペダル67の踏み込み量βが固定記憶位置βxとなるときに、速度固定レバー70により田植機1の車速固定を行ったこととする。このとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ(モータ71の回動角γ)が固定回動角γxであり、田植機1の車速が固定車速Vx3であったこととする。
速度固定レバー70が固定位置にあるとき、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量βに関係なく、モータ71の回動角γを一定値、詳細には速度固定レバー70が固定位置に切り換えられた時の値(固定回動角γx)に維持する。これにより、変速ペダル67の踏み込み量βに関係なく、田植機1の車速が固定車速Vx3に固定され、田植機1が固定車速Vx3で走行し続ける。
また、制御装置100は、変速ペダル67の固定記憶位置βxに係る情報、およびモータ71の固定回動角γxに係る情報を記憶する。
【0124】
そして、田植機1の車速が固定車速Vx3に固定された状態で、速度固定レバー70が解除位置に切り換えられるとき、すなわち制御装置100が速度固定解除スイッチ70bから上記解除信号を取得するとき、制御装置100は速度固定レバー70による車速固定を解除する。
速度固定レバー70が解除位置にあるとき、制御装置100は、田植機1の車速Vを変速ペダル67の踏み込み量βに応じて変更する(図9参照)。
【0125】
(最高速設定ダイヤルによる固定車速の調整)
以下では、田植機1の車速Vが速度固定レバー70により固定車速Vx3に固定された場合において、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、最高速設定ダイヤル69により固定車速Vx3を微調整して変更可能とするための構成について説明する。なお、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、最高速設定ダイヤル69が最高速度域De(D4以上D5以下)に回動されたこととする。
【0126】
田植機1の車速Vが速度固定レバー70により固定車速Vx3(モータ71の回動角:固定回動角γx)に固定された場合において、制御装置100は、最高速設定ダイヤル69の回動角(上記ダイヤル信号)に基づいてモータ71の固定回動角γxを変更(調整)することで調整目標回動角を算出し、そして、算出した調整目標回動角になるようにモータ71を回動することで、田植機1の固定車速Vx3を変更(微調整)する。
詳細には、固定車速Vx3は、以下の(4−1)〜(4−2)の手順で微調整される。
(4−1)速度固定レバー70により、モータ71の回動角が固定回動角γxに維持され、これにより田植機1の車速Vが固定車速Vx3に固定された場合において、制御装置100は、最高速設定ダイヤル69の回動角Dとモータ71の固定回動角γxの補正割合PB(調整目標回動角)との対応関係を示す第三マップを作成する。
図10は、前記第三マップを示している。図10中の横軸は最高速設定ダイヤル69の回動角Dを、縦軸はモータ71の固定回動角γxの補正割合PBを、それぞれ示している。
図9に示すように、前記第三マップの横軸は、図8に示す第二マップの横軸と同様の構成を有しており、その詳細な説明は省略する。
前記第三マップの縦軸においては、モータ71の固定回動角γxの補正割合PBを示している。補正割合PBは、固定回動角γxを、最高速設定ダイヤル69の回動角Dに応じて補正(修正)するときの割合を千分率で示したものである。
前記第三マップにおける最低速度域Da(D0以上D1未満)においては、上記補正割合PBは一定値(VRS‰)に保持される。
前記第三マップにおける第一可変域Db(D1以上D2未満)においては、上記補正割合PBは、(VRSM={(VRM−VRS)・(D−D1)/(D2−D1)}+VRS‰)、となり、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの増加に伴って、回動角D1に対応する(VRS‰)から、回動角D2に対応する(VRM‰)まで増加する。
前記第三マップにおける疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)においては、上記補正割合PBは一定値(VRM‰)に保持される。
前記第三マップにおける第二可変域Dd(D3以上D4未満)においては、上記補正割合PBは、(VRSH={(1000−VRM)・(D−D3)/(D4−D3)}+VRM‰)、となり、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの増加に伴って、回動角D3に対応する(VRM‰)から、回動角D4に対応する(1000‰)まで増加する。
前記第三マップにおける最高速度域De(D4以上D5以下)においては、上記補正割合PBは一定値(1000‰)に保持される。
【0127】
(4−2)制御装置100は、上記固定回動角γxを、最高速設定ダイヤル69から取得する上記ダイヤル信号(最高速設定ダイヤル69の回動角D)に基づいて、モータ71の固定回動角γxを調整(変更)することで、調整目標回動角を算出する。そして、制御装置100は、算出した調整目標回動角になるようにモータ71を回動することで、固定車速Vx3を変更(微調整)する。
本実施形態では、調整目標回動角は、前記第三マップを用いて算出され、最高速設定ダイヤル69の回動角Dの大きさに応じて、以下の(4−2−1)〜(4−2−5)の値になる。
(4−2−1)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(a)最低速度域Da(D0以上D1未満)のとき、このときの調整目標回動角(γx1)は、前記第三マップにおいて、最低速度域Daと対応する値(VRS‰)を用いて算出される。
調整目標回動角(γx1)は、一定値(γx・VRS/1000)、となる。
(4−2−2)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(b)第一可変域Db(D1以上D2未満)のとき、このときの調整目標回動角(γx2)は、前記第三マップにおいて、第一可変域Dbと対応する値(VRSM‰)を用いて算出される。
調整目標回動角(γx2)は、(γx・VRSM/1000)、となり、回動角Dの値に対応して変化する。
(4−2−3)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)のとき、このときの調整目標回動角(γx3)は、前記第三マップにおいて、疎植推奨速度域Dcと対応する値(VRM‰)を用いて算出される。
調整目標回動角(γx3)は、一定値(γx3=γx・VRM/1000)、となる。
(4−2−4)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(d)第二可変域Dd(D3以上D4未満)のとき、このときの調整目標回動角(γx4)は、前記第三マップにおいて、第二可変域Ddと対応する値(VRSH‰)を用いて算出される。
調整目標回動角(γx4)は、(γx・VRSH/1000)、となり、回動角Dの値に対応して変化する。
(4−2−5)最高速設定ダイヤル69の回動角Dが、(e)最高速度域De(D4以上D5以下)のとき、このときの調整目標回動角(γx5)は、前記第三マップにおいて、最高速度域Deと対応する値(1000‰)を用いて算出される。
調整目標回動角(γx5)は、一定値(γx5=γx・1000/1000=γx)、となり、調整目標回動角と固定回動角とが同じ値γxになる。
【0128】
従って、最高速設定ダイヤル69が、(e)最高速度域De(D4以上D5以下)から(a)最低速度域Da(D0以上D1未満)まで回動される場合において、(e)最高速度域De(D4以上D5以下)では、調整目標回動角が一定値(γx5=γx)となる。これにより、田植機1の車速が固定車速Vx3のまま変化しない。
同様の場合において、(d)第二可変域Dd(D3以上D4未満)では、調整目標回動角(γx4)が、最高速設定ダイヤル69の回動角D4に対応する(γx5=γx)から、回動角D3に対応する(γx3)まで減少する。これにより、田植機1の車速が、調整目標回動角(γx5=γx)に対応する固定車速Vx3から、調整目標回動角(γx3)に対応する(Vx2)まで減少する。
同様の場合において、(c)疎植推奨速度域Dc(D2以上D3未満)では、調整目標回動角が一定値(γx3)となる。これにより、田植機1の車速が、調整目標回動角(γx3)に対応する(Vx2)のまま変化しない。
同様の場合において、(b)第一可変域Db(D1以上D2未満)では、調整目標回動角(γx2)が、最高速設定ダイヤル69の回動角D2に対応する(γx3)から、回動角D1に対応する(γx1)まで減少する。これにより、田植機1の車速が、調整目標回動角(γx3)に対応する(Vx2)から、調整目標回動角(γx1)に対応する(Vx1)まで減少する。
同様の場合において、(a)最低速度域Da(D0以上D1未満)では、調整目標回動角が一定値(γx1)となる。これにより、田植機1の車速が、調整目標回動角(γx1)に対応する(Vx1)のまま変化しない。
【0129】
以上のように、田植機1は、速度固定レバー70により車速VをVx3に固定した後において、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、最高速設定ダイヤル69の回動操作により、固定車速Vx3を変更(調整)可能な構成を有する。
なお、制御装置100は、調整目標回動角を算出する際、速度固定レバー70による車速固定開始時のモータ71の回動角と、速度固定レバー70による車速固定開始時の最高速設定ダイヤル69の回動角Dと、が基準となるように構成して、(調整目標回動角)=(速度固定レバー70による車速固定開始時のモータ71の回動角)×(現在の最高速設定ダイヤル69の回動角D)/(速度固定レバー70による速度固定開始時の最高速設定ダイヤル69の回動角D)、とするように構成してもよい。
【0130】
なお、上記第三マップにおける補正割合PB(VRS‰)、(VRSM‰)、(VRM‰)、および(VRSH‰)は、前記第二マップにおける補正割合PA(VRS‰)、(VRSM‰)、(VRM‰)、および(VRSH‰)、とそれぞれ同じ値で構成されている。
これにより、田植機1においては、最高速設定ダイヤル69の回動操作により田植機1の最高速度を設定するときの操作感と、最高速設定ダイヤル69の回動操作により上記固定車速を調整するときの操作感とが、近似するように構成されている。
なお、図8の二点鎖線は、前記第三マップを仮に前記第二マップ上で表したときの状態を示している。
【0131】
以上のように、田植機1は、エンジン14の回転数およびHST21aの変速比を変更して、車速を変更するモータ71と、モータ71の回動角を変更するための操作具である変速ペダル67と、変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときの車速である最高速度を変更するための操作具である最高速設定ダイヤル69と、車速を変速ペダル67の踏み込み量に関係なく一定値に固定する固定位置、および車速固定を解除する解除位置に切換可能な操作具である速度固定レバー70と、を備え、速度固定レバー(速度固定装置)70が固定位置にあるときに、変速ペダル67の踏み込み操作(変速装置の操作)に関係なく、モータ(アクチュエータ)71の駆動量を、速度固定レバー70が固定位置に切り換えられた時の値に維持することによって車速を一定値に固定し、速度固定レバー70が解除位置にあるときに、車速を変速ペダル67の踏み込み量に応じて変更し、速度固定レバー70が固定位置にあるときに、最高速設定ダイヤル69の回動操作によりモータ71を回動可能に構成することにより、車速を最高速設定ダイヤル69の回動角に応じた大きさに変更する。
【0132】
なお、本実施形態では、モータ71がエンジン14の回転数およびHST21aの変速比を変更するように構成したが、これに限定されず、モータ71がエンジン14の回転数またはHST21aの変速比を変更するように構成してもよい。
【0133】
(車速固定の解除)
以下では、田植機1の車速Vが速度固定レバー70によりVx3に固定された場合において、速度固定レバー70の切り換え操作やブレーキペダル68の踏み込み操作以外の操作により車速固定を解除するための構成(i)〜(ii)について説明する。
【0134】
(i)車速固定の解除が、最高速設定ダイヤル69の回動操作により行われる構成について説明する。
制御装置100は、速度固定レバー70の操作により車速VがVx3に固定されたときに、前記第三マップにおいて、上記補正割合PBに関して、所定のダイヤル下限閾値VRX(VRS<VRX<VRM)を設定する。
図10に示すように、車速固定の解除は、最高速設定ダイヤル69が回動操作されて、最高速設定ダイヤル69の回動角Dが減少していく場合において、最高速設定ダイヤル69の回動角Dに対応する補正割合PBが、上記ダイヤル下限閾値VRX未満の値になるときに行われる。
すなわち、車速固定の解除は、最高速設定ダイヤル69が回動操作されて、これに伴い固定車速Vx3が低速側に変更される場合において、変更後の車速が、上記ダイヤル下限閾値VRXに対応する車速である速度下限閾値(Vx0)未満の値になるときに行われる(図10参照)。車速固定の解除が行われると、田植機1は、変速ペダル67の踏み込み操作により車速を制御可能な状態に戻る。なお、速度下限閾値(ダイヤル下限閾値)は、実験等により適宜決定される値である。また、車速が速度下限閾値未満の値になったか否かは、例えば、制御装置100がモータ71の回動角より判断する。
このように構成することで、低速域で速度固定レバー70による車速固定が行われ、さらに最高速設定ダイヤル69が低速側(車速が遅くなる側)に回動操作された場合に、モータ71の調整目標回動角がγ2以下となり、田植機1が走行停止した状態で速度固定レバー70による車速固定状態が維持されることを防ぐことが可能である。
【0135】
(ii)車速固定の解除が、変速ペダル67の踏み込み操作により行われる構成について二通り説明する。
(第一の構成)
上記したように、制御装置100には、固定車速Vx3に対応する変速ペダル67の固定記憶位置βxに係る情報が記憶されている。
制御装置100は、速度固定レバー70の操作により車速VがVx3に固定されているときに、前記第三マップにおいて、固定解除下限値βx1を設定する。固定解除下限値βx1は、図11(a)に示すように、変速ペダル67の踏み込み操作が解除されたときの変速ペダル67の踏み込み量β1よりも大きく、固定車速Vx3に対応する固定記憶位置βxよりも小さい値(β1<βx1<βx)であり、実験等により適宜決定される値である。
図11(a)に示すように、変速ペダル67の踏み込み操作による車速固定の解除は、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、変速ペダル67の踏み込み量βが、上記固定解除下限値βx1(β1<βx1<βx)未満まで減少して、その後、前記固定解除下限値βx1まで増加したときに行われる。
このように構成した場合、車速固定の解除時において、田植機1の車速Vが固定車速Vx3よりも遅くなる。
(第二の構成)
制御装置100は、速度固定レバー70の操作により車速VがVx3に固定されたときに、前記第三マップにおいて、固定解除上限値βx2を設定する。固定解除上限値βx2は、図11(b)に示すように、固定車速Vx3に対応する固定記憶位置βxよりも大きい値(βx<βx2)であり、実験等により適宜決定される値である。
図11(b)に示すように、変速ペダル67の踏み込み操作による車速固定の解除は、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、変速ペダル67の踏み込み量βが、固定解除上限値βx2(βx<βx2)まで増加したときに行われる。
このように構成した場合、車速固定の解除時において、田植機1の車速Vが固定車速Vx3よりも速くなる。
上記第一の構成による車速固定の解除は、変速ペダル67の踏み込み量βが、上記固定解除上限値βx2未満の状態で、上記固定解除下限値βx1未満まで減少して、そして固定解除下限値βx1まで増加したときに行われる(図11(a)参照)。
これに対し、上記第二の構成による車速固定の解除は、変速ペダル67の踏み込み量βが、上記固定解除下限値βx1以上の状態で、上記固定解除上限値βx2まで増加したときに行われる(図11(b)参照)。
これにより、変速ペダル67の踏み込み量を適宜調整することで、変速ペダル67の踏み込み操作による車速固定の解除時において、田植機1の車速Vを、固定車速Vx3よりも遅くするか(上記第一の構成参照)、または速くするか(上記第二の構成参照)、を選択可能となる。
【0136】
なお、上記(ii)に関して、速度固定レバー70の操作により車速VがVx3に固定されている状態で、最高速設定ダイヤル69の回動操作により固定車速Vx3を調整(変更)する場合、最高速設定ダイヤル69の回動角に応じて上記固定解除下限値βx1、および固定解除上限値βx2、が変化するように構成してもよい。
詳細には、最高速設定ダイヤル69が高速側(車速が速くなる側)に回動される場合、制御装置100は、上記固定解除下限値βx1、および固定解除上限値βx2g、をより大きい値に変更する。
また、最高速設定ダイヤル69が低速側(車速が遅くなる側)に回動される場合、制御装置100は、上記固定解除下限値βx1、および固定解除上限値βx2g、をより小さい値に変更する。
このように構成することで、上記(ii)に示すように変速ペダル67の踏み込み操作により車速固定を解除するとき、田植機1が急加速・急減速することを防ぐことが可能である。
【0137】
以上のように、田植機1は、
エンジン14の回転数、およびHST21aの変速比のうちの少なくとも一方を変更するモータ71と、
モータ71の回動角を変更するための操作具である変速ペダル67と、
変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときの車速である最高速度を変更するための操作具である最高速設定ダイヤル69と、
車速を変速ペダル67の踏み込み操作に関係なく一定値に固定する固定位置、および車速固定を解除する解除位置に切換可能な操作具である速度固定レバー70と、を備え、
速度固定レバー70が固定位置にあるときに、最高速設定ダイヤル69の回動操作によりモータ71を回動可能に構成することにより、車速(固定車速Vx3)を最高速設定ダイヤル69の操作量(回動量)に応じた大きさに変更する。
【0138】
これにより、速度固定レバー70により固定した車速を、速度固定レバー70が固定位置にある状態で、最高速設定ダイヤル69の回動操作により増減調整可能である。したがって、速度固定レバー70により固定した車速の増減調整を円滑に行うことが可能となる。
【0139】
また、田植機1においては、
変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときのモータ71の回動角である最大回動角を、最高速設定ダイヤル69の回動角に応じて変更することによって、前記最高速度を最高速設定ダイヤル69の回動角に応じて変更し、
最高速設定ダイヤル69の回動範囲内(D0度〜D5度)には、最高速設定ダイヤル69が回動されたときに、モータ71の最大回動角が変化せず、前記最高速度が変化しない疎植推奨速度域Dcが含まれている。
【0140】
これにより、最高速設定ダイヤル69を疎植推奨速度域Dc内に回動して、田植機1を、疎植推奨速度域と対応する最高速度で走行させる作業、すなわち疎植作業に適した車速で走行させる作業を円滑に行うことができる。
【0141】
また、田植機1においては、
速度固定レバー70が固定位置にある場合で、最高速設定ダイヤル69による変更後の車速が所定の速度下限閾値Vx0未満の値になるときに、速度固定レバー70による車速固定を解除する。
【0142】
これにより、低速域で速度固定レバー70による車速固定が行われ、さらに最高速設定ダイヤル69が低速側(車速が遅くなる側)に回動操作された場合に、モータ71の調整目標回動角がγ2以下となり、田植機1が走行停止した状態で速度固定レバー70による車速固定状態が維持されることを防ぐことが可能である。
【0143】
また、田植機1においては、
速度固定レバー70が固定位置にある場合で、変速ペダル67の踏み込み量が、所定の固定解除下限値βx1未満まで減少して、その後、前記固定解除下限値βx1まで増加したときには、速度固定レバー70による車速固定を解除し、
速度固定レバー70が固定位置にある場合で、前記変速ペダル67の踏み込み量が、所定の固定解除上限値βx2まで増加したときには、速度固定レバー70による車速固定を解除し、
前記固定解除下限値βx1は、速度固定レバー70が固定位置に切り換えられた時の変速ペダル67の踏み込み量である固定記憶位置βxよりも小さい値であり、
前記固定解除上限値βx2は、前記固定記憶位置βxよりも大きい値である。
【0144】
これにより、変速ペダル67の踏み込み操作により車速固定を解除した時に、解除時の車速を遅くするか、または速くするかを選択可能となる。
【0145】
また、田植機1においては、
速度固定レバー70が固定位置にあるときに、最高速設定ダイヤル69の操作量(回動量)に応じて前記固定解除下限値βx1、および固定解除上限値βx2を変更する。
【0146】
これにより、変速ペダル67の踏み込み操作により速度固定レバー70による車速固定を解除したときに、田植機1が急加速・急減速することを防ぐことが可能である。
【0147】
速度固定レバー70が解除位置にある場合、モータ71の回動量を、変速ペダル67の踏み込み量に応じて変更することによって、車速を変速ペダル67の踏み込み量に応じて変更し、
変速ペダル67の操作範囲内において、その最大側(β3〜βmax)には、変速ペダル67が踏み込み操作されたときに、モータ71の回動角が変化せず、車速が最高速設定ダイヤル69の回動角に対応した最高速度に維持される余裕代が含まれている。
【0148】
これにより、変速ペダル67が余裕代にある状態のとき、路面の状況等により変速ペダル67の踏み込み量が多少変化したぐらいでは車速の変更が行われないので、車速が敏感に反応することを防止可能である。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制可能である。
【0149】
変速ペダル67の操作範囲内において、その最小側(β1〜β2)には、変速ペダル67が踏み込み操作されたときに、モータ71の回動角が変化せず、車速が0に維持される遊び代が含まれている。
【0150】
これにより、変速ペダル67が遊び代にある状態のとき、変速ペダル67が多少踏み込まれたぐらいでは田植機1が発進しないので、田植機1の誤発進を防止することが可能である。また、製造誤差による品質のバラツキを抑制可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 田植機
14 エンジン
67 変速ペダル
67a ペダル用ポテンショメータ
69 最高速設定ダイヤル
70 速度固定レバー
71 モータ
71a モータ用ポテンショメータ
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転数、およびHSTの変速比のうちの少なくとも一方を変更して、車速を変更するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を変更するための操作具である変速手段と、
前記変速手段が最大操作量まで操作されたときの車速である最高速度を変更するための操作具である最高速設定手段と、
車速を前記変速手段の操作に関係なく一定値に固定する固定位置、および車速固定を解除する解除位置に切換可能な操作具である速度固定手段と、を備え、
前記速度固定手段が固定位置にあるときに、前記最高速設定手段の操作により前記アクチュエータを駆動可能に構成することにより、車速を前記最高速設定手段の操作量に応じて変更することを特徴とする、
田植機。
【請求項2】
前記変速手段が最大操作量まで操作されたときの前記アクチュエータの駆動量である最大駆動量を、前記最高速設定手段の操作量に応じて変更することによって、前記最高速度を前記最高速設定手段の操作量に応じて変更し、
前記最高速設定手段の操作範囲内には、前記最高速設定手段が操作されたときに、前記アクチュエータの最大駆動量が変化せず、前記最高速度が変化しない疎植推奨速度域が含まれていることを特徴とする、
請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記最高速設定手段による変更後の車速が所定の速度下限閾値未満の値になるときに、前記速度固定手段による車速固定を解除することを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記変速手段の操作量が、所定の固定解除下限値未満まで減少して、その後、前記固定解除下限値まで増加したときには、前記速度固定手段による車速固定を解除し、
前記速度固定手段が固定位置にある場合で、前記変速手段の操作量が、所定の固定解除上限値まで増加したときには、前記速度固定手段による車速固定を解除し、
前記固定解除下限値は、前記速度固定手段が固定位置に切り換えられた時の前記変速手段の操作量である固定記憶位置よりも小さい値であり、
前記固定解除上限値は、前記固定記憶位置よりも大きい値であることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の田植機。
【請求項5】
前記速度固定手段が固定位置にあるときに、前記最高速設定手段の操作量に応じて前記固定解除下限値、および固定解除上限値を変更することを特徴とする、
請求項4に記載の田植機。
【請求項6】
前記速度固定手段が解除位置にある場合、前記アクチュエータの駆動量を、前記変速手段の操作量に応じて変更することによって、車速を前記変速手段の操作量に応じて変更し、
前記変速手段の操作範囲内において、その最大側には、前記変速手段が操作されたときに、前記アクチュエータの駆動量が変化せず、車速が前記最高速設定手段の操作量に対応した最高速度に維持される余裕代が含まれていることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の田植機。
【請求項7】
前記変速手段の操作範囲内において、その最小側には、前記変速手段が操作されたときに、前記アクチュエータの駆動量が変化せず、車速が0に維持される遊び代が含まれていることを特徴とする、
請求項6に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−187030(P2012−187030A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52091(P2011−52091)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】