説明

田植機

【課題】変速ペダルの踏み込み操作により加減速する際に、変速ペダルの踏み込み量に対応して緩急をつけた加減速が可能となり、変速フィーリングの向上に貢献可能な田植機を提供する。
【解決手段】田植機1は、エンジン14と、モータ71と、モータ用ポテンショメータ71aと、変速ペダル67と、ペダル用ポテンショメータ67aと、を備え、ペダル用ポテンショメータ67aが出力するペダル信号に基づいてモータ71の目標駆動量を算出して、モータ用ポテンショメータ71aの検出値が前記目標駆動量になるようにモータ71を駆動して、車速をモータ71の目標駆動量に対応した大きさに変更する田植機1であって、変速ペダル67の操作範囲を複数の変速領域に分割して、前記複数の変速領域毎に、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機に関して、変速操作具(変速ペダル)を操作して加減速を行う技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一般的な田植機は、車速の変更(増減速制御)を行うためのアクチュエータを有している。前記田植機は、変速ペダルが踏み込み操作されるとき、変速ペダルの踏み込み量に基づいて前記アクチュエータの目標駆動量を算出して、前記アクチュエータの駆動量が目標駆動量になるように前記アクチュエータを駆動して、車速を前記アクチュエータの目標駆動量に対応した大きさに変更して、加減速を行う。
しかし、一般的な田植機は、前記変速ペダルが踏み込み操作されるとき、前記アクチュエータの駆動量を常に一定に増減する。すなわち一般的な田植機においては、変速ペダルの踏み込み量の変化に対する前記アクチュエータの目標駆動量の変化の割合が常に一定値(同じ値)になるように構成されている。これにより、作業者が変速ペダルの踏み込み操作により田植機を加減速する際に、きめ細かい増減速制御が行えず、変速フィーリングが低下する点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−236714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、変速ペダルの踏み込み操作により加減速する際に、変速ペダルの踏み込み量に対応して緩急をつけた加減速が可能となり、変速フィーリングの向上に貢献可能な田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の田植機は、
エンジンと、
前記エンジンの回転数の変更を行うためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を検出するアクチュエータ駆動量検出装置と、
前記アクチュエータを操作するための変速ペダルと、
前記変速ペダルの踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル操作量検出装置と、を備え、
前記ペダル操作量検出装置が出力するペダル信号に基づいて前記アクチュエータの目標駆動量を算出して、前記アクチュエータ駆動量検出装置の検出値が前記目標駆動量になるように前記アクチュエータを駆動して、車速を前記アクチュエータの目標駆動量に対応した大きさに変更する、
田植機であって、
前記変速ペダルの操作範囲を複数の変速領域に分割して、
前記複数の変速領域毎に、前記変速ペダルの踏み込み量の変化に対する前記アクチュエータの目標駆動量の変化の割合を設定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の田植機においては、
前記変速ペダルが、前記複数の変速領域のうちの、一の変速領域から他の変速領域に一気に踏み込み操作されるときには、前記変速ペダルの踏み込み量の変化に対する前記アクチュエータの目標駆動量の変化の割合を一定値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、変速ペダルの踏み込み操作により加減速する際に、変速ペダルの踏み込み量に対応して緩急をつけた加減速が可能となり、変速フィーリングの向上に貢献可能である。
【0011】
請求項2においては、田植機1はスムーズに加速することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図である。
【図2】図1に示す田植機を上方から見たときの概略図である。
【図3】図1に示す田植機において、前車輪および後車輪への動力伝達構造を示す図である。
【図4】図1に示す田植機において、植付部への動力伝達構造を示す図である。
【図5】図1に示す田植機のダッシュボード周辺を示す図である。
【図6】図1に示す田植機の制御装置を示すブロック図である。
【図7】(a)はマップを示す図であり、(b)は前記マップにおいてモータ追従時の移動範囲を示す図である。
【図8】変速ペダルの回動角と、ペダル用ポテンショメータの検出軸の回動角と、モータ用ポテンショメータの回動角と、エンジンの回転数と、田植機の車速と、の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0014】
図1および図2に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0015】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。ミッションケース20が車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の後方に配置される。図3に示すように、ミッションケース20の内部には、油圧−機械式無段変速機(HMT:HydroMechanicalTransmission)21、主変速機構22、クラッチ23、および制動装置24が搭載される。
【0016】
HMT21は、エンジン14からの動力を無段階に変速可能な油圧式無段変速機(HST:HydroStaticTransmission)21aと、エンジン14からの動力とHST21aからの動力とを合成することが可能な遊星歯車機構21bと、を組み合わせたものである。
【0017】
主変速機構22は、歯合するギアの組み合わせを変更することにより、HMT21からの動力を複数段に変速可能なものである。
【0018】
クラッチ23は、切断または接続されることにより、HMT21から主変速機構22への動力の伝達の可否を切り換えるものである。
また、制動装置24は、主変速機構22の出力軸の回動を制動することができるものである。
【0019】
図1および図3に示すように、フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0020】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20に伝達され、ミッションケース20の内部にあるHMT21および主変速機構22を介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0021】
図1および図2に示すように、走行部10において、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部60が設けられる。運転操作部60の前部には、ダッシュボード61が配置される。ダッシュボード61の左右中央部には操向ハンドル64が配置され、さらにダッシュボード61には主変速レバー65、キースイッチ66(図5参照)などが配置される。運転操作部60の後部には、運転席62が操向ハンドル64の後方に位置するように配置される。
【0022】
また、運転操作部60の操向ハンドル64や運転席62の周りには、変速ペダル67、ブレーキペダル68(図5参照)、一部を乗降用ステップとする車体カバー63、その他のレバーやスイッチ等の操作具が配置される。これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。なお、操作具の詳細な構成については後述する。
【0023】
走行部10において、予備苗載台17が車体フレーム11の前部の左右両側から立設された各取付フレーム16に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台17に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0024】
図1、図2、および図4に示すように、植付部40においては、植付ミッションケース50が植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸51が当該植付ミッションケース50から左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸51から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0025】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、すなわち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0026】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下の図示せぬガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、横送り機構52により左右往復横送り可能とされる。
【0027】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0028】
条数に合わせた苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構53により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0029】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0030】
同時に、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して横送り機構52および縦送り機構53に伝達されて、苗載台41が横送り機構52により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが苗載台41の左右往復横送りに応じて縦送り機構53により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0031】
図1および図2に示すように、植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0032】
また、前述の昇降機構30が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、すなわち昇降可能とされる。
【0033】
ここで、エンジン14からロータリケース44、横送り機構52および縦送り機構53に動力を伝達するための動力伝達機構は、図4に示す植付クラッチ55を含み、植付クラッチ55の断接に応じて、エンジン14の動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0034】
次に、本実施形態に係る田植機1の制御に関する構成について説明する。
【0035】
図2、図5、および図6に示す変速ペダル67は田植機1の車速(走行速度)を変更するための操作具であり、より詳細には、エンジン14の回転数、およびHMT21の変速比を変更するための操作具である。変速ペダル67はダッシュボード61の右下方に配置される。
【0036】
図6に示すペダル用ポテンショメータ(ペダル操作量検出装置)67aは変速ペダル67の踏み込み量(回動角)を検出するためのものである。ペダル用ポテンショメータ67aはリンク機構を介して変速ペダル67に連結され、当該変速ペダル67の踏み込み量を検出することができる。より詳細には、変速ペダル67の踏み込み量(回動角)に応じてペダル用ポテンショメータ67aの検出軸が回動され、当該回動角を変速ペダル67の踏み込み量として検出することができる。
変速ペダル67が踏み込み操作されたとき、ペダル用ポテンショメータ67aが変速ペダル67の踏み込み量を示すペダル信号を出力する。
【0037】
図5および図6に示す最高速設定ダイヤル69は田植機1の最高速度を変更するための操作具である。最高速設定ダイヤル69はダッシュボード61の略中央部(操向ハンドル64の前方)に配置される。
【0038】
図2、図5、および図6に示す主変速レバー65は主変速機構22の変速段(変速比)を変更するための操作具である。主変速レバー65はダッシュボード61の左端部(操向ハンドル64の左方)に配置される。主変速レバー65はリンク機構を介してミッションケース20内の主変速機構22に連結される。
主変速レバー65は、路上走行位置、植付位置、苗継ぎ位置、後進位置または中立位置に変更可能である。
主変速レバー65が路上走行位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が高速に変更される。この場合、田植機1は高速で走行することができる。
主変速レバー65が植付位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が低速に変更される。この場合、田植機1は、主変速機構22の変速段が高速である場合に比べて低速で走行することができる。
主変速レバー65が苗継ぎ位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。またこの場合、後述する苗継ぎ位置検出スイッチ65aにより主変速レバー65が苗継ぎ位置に切り換えられたことを検出し、後述する制御装置100によりエンジン14の回転数を変更する等の所定の制御を行うことができる。
主変速レバー65が後進位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が逆転に変更される。この場合、田植機1は後進することができる。
主変速レバー65が中立位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。
【0039】
図6に示す苗継ぎ位置検出スイッチ65aは主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを検出するためのものである。苗継ぎ位置検出スイッチ65aとしてはマイクロスイッチが用いられる。苗継ぎ位置検出スイッチ65aは主変速レバー65の苗継ぎ位置近傍に配置される。苗継ぎ位置検出スイッチ65aは苗継ぎ位置に変更された主変速レバー65と接触することで、当該主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを検出することができる。
主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されたとき、苗継ぎ位置検出スイッチ65aは、当該主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを示す苗継ぎ位置信号を出力する。
【0040】
図2、図5、および図6に示すキースイッチ66はエンジン14を始動または停止させるための操作具である。キースイッチ66はダッシュボード61の右後端部(操向ハンドル64の右後方)に配置される。
キースイッチ66が始動操作されるとき(OFFからONに切り換えられるとき)、エンジン14が始動する。また、このときキースイッチ66は、始動操作が行われたことを示す始動信号を出力する。
キースイッチ66がONの状態のとき、エンジン14が駆動し続ける。
キースイッチ66が停止操作されるとき(ONからOFFに切り換えられるとき)、エンジン14が停止する。また、このときキースイッチ66は、停止操作が行われたことを示す停止信号を出力する。
キースイッチ66がOFFの状態のとき、エンジン14は停止し続ける。
【0041】
図5および図6に示す速度固定レバー70は田植機1の車速を固定(設定した車速を維持)し、または当該速度の固定を解除するための操作具である。速度固定レバー70は操向ハンドル64の軸に取り付けられ、右方に向けて延設される。
速度固定レバー70は、速度固定位置、速度固定解除位置または中立位置に回動可能である。速度固定位置は、速度固定レバー70を後方に回動させた際の位置である。速度固定解除位置は、速度固定レバー70を前方に回動させた際の位置である。中立位置は、速度固定位置と速度固定解除位置の略中間の位置である。速度固定レバー70は、速度固定位置または速度固定解除位置のいずれかに操作された場合であっても、再び中立位置に復帰するように常時付勢されている。
【0042】
図6に示す速度固定スイッチ70aは速度固定レバー70が速度固定位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定スイッチ70aとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定スイッチ70aは速度固定位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が速度固定位置に操作されたことを検出することができる。
【0043】
速度固定解除スイッチ70bは速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定解除スイッチ70bとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定解除スイッチ70bは速度固定解除位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作されたことを検出することができる。
【0044】
図3および図6に示すブレーキペダル68は田植機1を制動するための操作具である。ブレーキペダル68はダッシュボード61の右下方であって、変速ペダル67の左方に配置される。ブレーキペダル68はリンク機構を介して制動装置24に連結される。ブレーキペダル68が踏み込み操作された場合、制動装置24が作動し、田植機1の前車輪12および後車輪13の回動が制動される。
【0045】
図6に示すブレーキ操作検出スイッチ68aはブレーキペダル68が操作されたことを検出するためのものである。ブレーキ操作検出スイッチ68aとしてはマイクロスイッチが用いられる。ブレーキ操作検出スイッチ68aは踏み込み操作されたブレーキペダル68と接触することで、当該ブレーキペダル68が踏み込み操作されたことを検出することができる。
【0046】
図6に示す苗台端検出スイッチ49aは苗載台41が所定の位置(左右方向の終端位置)に到達したことを検出するものである。苗台端検出スイッチ49aとしてはマイクロスイッチが用いられる。苗台端検出スイッチ49aは、植付フレーム49に配置されて、苗載台41に設けられた押圧部と接触することで、当該苗載台41が所定の位置に到達したことを検出することができる。
【0047】
図4に示すモータ(アクチュエータ)71はエンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ21cの断接の切り換え、および制動装置21dの動作の切り換えを行うためのアクチュエータである。モータ71はリンク機構を介してエンジン14、HMT21(詳細にはHST21a)、クラッチ21c、および制動装置21dに連結される。
【0048】
より詳細には、モータ71の出力軸はリンク機構を介してエンジン14の調速装置14aに連結される。モータ71により調速装置14aが駆動され、エンジン14の回転数を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してHST21aの可動斜板に連結される。モータ71により当該可動斜板の傾斜角度が変更され、HST21aの変速比を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してクラッチ21cに連結される。モータ71によりクラッチ21cが切断または接続される。
モータ71の出力軸はリンク機構を介して制動装置21dに連結される。モータ71により制動装置21dが作動されると、前車輪12および後車輪13へと出力される動力を制動することができる。
【0049】
モータ用ポテンショメータ71aはモータ71の出力軸の駆動量(回動角)を検出するためのものである。モータ用ポテンショメータ71aはリンク機構を介してモータ71に連結され、当該モータ71の出力軸の回動角を検出することができる。より詳細には、モータ71の出力軸の駆動量(回動角)に応じてモータ用ポテンショメータ71aの検出軸が回動され、当該回動角をモータ71の出力軸の駆動量として検出することができる。
【0050】
セルモータ72はエンジン14を始動させるためのアクチュエータである。
【0051】
図2、図5、および図6に示すメータパネル73は田植機1の作動やエンジンや異常警報等に関する種々の情報を表示するためのものである。メータパネル73はダッシュボード61の左右略中央であって、操向ハンドル64の前方に配置される。
【0052】
制御装置100は検知信号を入力し、入力した検出信号およびプログラムに基づいて、モータ71、セルモータ72、およびメータパネル73等に制御信号を送信するものである。制御装置100は具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0053】
制御装置100はペダル用ポテンショメータ67aに接続され、ペダル用ポテンショメータ67aによる変速ペダル67の踏み込み量を示す検出信号(ペダル信号)を取得することができる。
制御装置100は最高速設定ダイヤル69に接続され、最高速設定ダイヤル69の操作位置に関する検出信号を取得することができる。
制御装置100は苗継ぎ位置検出スイッチ65aに接続され、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから主変速レバー65が苗継ぎ位置にある旨の検出信号(上記苗継ぎ位置検出信号)を取得することができる。
制御装置100はキースイッチ66に接続され、キースイッチ66により始動操作が行われた旨の検出信号(始動信号)、および停止操作が行われた旨の検出信号(停止信号)を取得することができる。
制御装置100は速度固定スイッチ70aに接続され、速度固定スイッチ70aによる速度固定レバー70が速度固定位置に操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100は速度固定解除スイッチ70bに接続され、速度固定解除スイッチ70bによる速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100はブレーキ操作検出スイッチ68aに接続され、ブレーキ操作検出スイッチ68aによるブレーキペダル68が踏み込み操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100は苗台端検出スイッチ49aに接続され、苗台端検出スイッチ49aによる苗載台41が所定の位置に到達した旨の検出信号を取得することができる。
【0054】
制御装置100はモータ71に接続され、モータ71に制御信号を送信し、当該モータ71を駆動することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aに接続され、モータ用ポテンショメータ71aによるモータ71の回動角の検出信号を取得することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aによる検出信号が所望の回動角(目標駆動量)になるまでモータ71に制御信号を送信することにより、当該モータ71を所望の回動角まで駆動することができる。
【0055】
制御装置100はセルモータ72に接続され、セルモータ72に制御信号を送信し、当該セルモータ72を駆動することができる。
制御装置100はメータパネル73に接続され、エンジンや作業機の動作状況や異常等を検知したときにその情報を表示することができる。
【0056】
また、制御装置100には、変速ペダル67の踏み込み量と、モータ71の目標駆動量との関係(より詳細には、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βと、モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γとの関係)を示すマップが記憶される。
【0057】
図7(a)および図7(b)は、前記マップを示している。図7(a)および図7(b)中の横軸はペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βを、縦軸はモータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γを、それぞれ示している。
【0058】
なお、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸は、回動角β1〜βmaxの範囲で回動するように構成されていることとする。
回動角β1は、変速ペダル67が踏み込み操作されていないときの、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角である。
回動角βmaxは、変速ペダル67が限界まで踏み込まれたときの、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角である。
【0059】
前記マップの横軸の回動角βにおいては、β1からβmaxまでの領域は、さらに遊び領域(β1以上β2未満)、接続領域(β2)、変速領域(β2より大きくβ3未満)、および最高速保持領域(β3以上βmax以下)に分割される。
【0060】
前記マップの遊び領域(β1以上β2未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは一定値(γ1)に保持される。
前記マップの接続領域(β2)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは一定値(γ2)に保持される。
前記マップの変速領域(β2より大きくβ3未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの増加に伴って、回動角β2に対応するγ2から、回動角β3に対応するγmaxまで増加する。
前記マップの最高速保持領域(β3以上βmax以下)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは一定値(γmax)に保持される。
【0061】
前記マップの変速領域(β2より大きくβ3未満)において、β2からβ3までの領域は、さらに複数の変速領域に分割される。すなわち、前記変速領域は、第一変速領域(β2より大きくβ21未満)、第二変速領域(β21以上β22未満)、第三変速領域(β22以上β23未満)、および第四変速領域(β23以上β3未満)に分割される。ただし、本実施形態では四つの変速領域に分割しているが、その分割数は限定するものではない。また、分割する幅(境界角度と境界角度の間の角度の大きさ)も限定するものではない。
【0062】
前記マップの第一変速領域(β2より大きくβ21未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの増加に比例して、回動角β2に対応するγ2から、回動角β21に対応するγ21まで増加する。
なお、上記第一変速領域に関して、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合(回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合)(X1)は、一定値(γ21−γ2)/(β21−β2)、となる。
【0063】
前記マップの第二変速領域(β21以上β22未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの増加に比例して、回動角β21に対応するγ21から、回動角β22に対応するγ22まで増加する。
なお、上記第二変速領域に関して、回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合(X2)は、一定値(γ22−γ21)/(β22−β21)、となる。
【0064】
前記マップの第三変速領域(β22以上β23未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの増加に比例して、回動角β22に対応するγ22から、回動角β23に対応するγ23まで増加する。
なお、上記第三変速領域に関して、回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合(X3)は、一定値(γ23−γ22)/(β23−β22)、となる。
【0065】
前記マップの第四変速領域(β23以上β3未満)においては、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γは、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの増加に比例して、回動角β23に対応するγ23から、回動角β3に対応するγmaxまで増加する。
なお、上記第四変速領域に関して、回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合(X4)は、一定値(γmax−γ23)/(β3−β23)、となる。
【0066】
上記第一変速領域〜第四変速領域に関して、上記(X1)〜(X4)は、それぞれ異なっている。すなわち、前記マップにおいては、上記第一変速領域〜第四変速領域の変速領域毎に、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合が、それぞれ(X1)〜(X4)に設定されている。
上記(X1)〜(X4)の大小関係について、本実施形態では、(X2)<(X1)<(X3)<(X4)、となるように構成されている。
【0067】
上述の如く構成された田植機1において、制御装置100はキースイッチ66が始動操作された旨の検出信号(始動信号)を取得した場合、セルモータ72を駆動して、エンジン14を始動させる。また、制御装置100はキースイッチ66が停止操作された旨の検出信号(停止信号)を取得した場合、モータ71を駆動して、調速装置14aによる燃料の供給を遮断し(本実施形態ではディーゼルエンジン、ガソリンエンジンの場合は点火装置を停止させる)、エンジン14を停止させる。
【0068】
また、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量を示す上記ペダル信号を取得した場合、前記マップにおいて、取得した上記ペダル信号(ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角β)と対応するモータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γ)を算出する。
そして、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角が前記目標駆動量になるようにモータ71を駆動する。
制御装置100は、モータ71を駆動することにより、エンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ21cの断接の切り換え、および制動装置21dの動作の切り換えを行う。
エンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更等が行われることにより、田植機1の車速が変化して加減速が行われる。
【0069】
以下では、変速ペダル67の踏み込み量とモータ71の目標駆動量との関係(i)〜(v)について説明する。
【0070】
(i)図7(a)に示すように、変速ペダル67が第一変速領域(β2より大きくβ21未満)内で踏み込み操作され、変速ペダル67の踏み込み量(ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β)がβ2からβ21まで増加するとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して、回動角β2に対応するγ2から、回動角β21に対応するγ21まで増加する。
【0071】
(ii)図7(a)に示すように、変速ペダル67が第二変速領域(β21以上β22未満)内で踏み込み操作され、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ21からβ22まで増加するとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して、回動角β21に対応するγ21から、回動角β22に対応するγ22まで増加する。
【0072】
(iii)図7(a)に示すように、変速ペダル67が第三変速領域(β22以上β23未満)内で踏み込み操作され、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ22からβ23まで増加するとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して、回動角β22に対応するγ22から、回動角β23に対応するγ23まで増加する。
【0073】
(iv)図7(a)に示すように、変速ペダル67が第四変速領域(β23以上β3未満)内で踏み込み操作され、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ23からβ3まで増加するとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して、回動角β23に対応するγ23から、回動角β3に対応するγmaxまで増加する。
【0074】
(v)また、変速ペダル67が、第一変速領域〜第四変速領域のうちの、一の変速領域から他の変速領域に一気に踏み込み操作されるとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して増加する。すなわち、変速ペダル67が、第一変速領域〜第四変速領域のうちの、一の変速領域から他の変速領域に一気に踏み込み操作されるとき、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合を一定値に設定する。
例えば、図7(b)の矢印Aに示すように、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βが第三変速領域内の回動角βaから第四変速領域内の回動角βbまで一気に増加するとき、モータ71の目標駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ)が、回動角βの増加に比例して、回動角βaに対応するγaから、回動角βbに対応するγbまで増加する。
したがって、図7(b)に示すように、前記マップの変速領域(β2より大きくβ3未満)においては、領域Zがモータ71追従時の移動範囲に構成される。
【0075】
以下では、変速ペダル67が踏み込み操作された場合における田植機1の基本的な動作について、図7(b)および図8を用いて説明する。
なお、説明の便宜上、主変速レバー65は植付位置に操作されていることとする。
また、田植機1の変速ペダル67が、以下の(1)〜(5)の順序で踏み込み操作されることとする。
また、図7(b)の矢印Bに示すように、変速ペダル67に関しては、第一変速領域から第四変速領域に一気に踏み込み操作され、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ2からβ3まで一気に増加するように操作されることとする(上記(v)参照)。
【0076】
(1)図8に示すように、変速ペダル67が踏み込み操作されていない場合の当該変速ペダル67の回動角αをα1(度)とする。この場合のペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βをβ1(度)とする。この場合、制御装置100は、図7(b)に示すマップにおいて、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β1と対応するモータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γ1(度)を目標駆動量として算出する。そして、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71を駆動する。
【0077】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71が駆動された場合、リンク機構を介してクラッチ21cが切断される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達されることがなく、田植機1の車速Vは0(m/秒)となる。
また、この場合、リンク機構を介して制動装置21dが作動する。これによって、前車輪12および後車輪13が制動され、田植機1が不意に前進または後進するのを防止することができる。
【0078】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71が駆動された場合、リンク機構を介してエンジン14の回転数NはN1(rpm)に設定される(図8参照)。
また、この場合、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が最大となるように設定される。これによって、エンジン14からの動力とHST21aからの動力が遊星歯車機構21bによって互いに打ち消すように合成され、主変速機構22へ動力が伝達されることがない。
【0079】
(2)変速ペダル67が踏み込み操作されて、回動角αが徐々に増加すると、当該回動角αの増加に伴ってペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βも増加する。
【0080】
変速ペダル67の回動角αがα1からα2(α2未満)まで増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ1からβ2(β2未満)まで増加する。この間、制御装置100は、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの値にかかわらずモータ用ポテンショメータ71aの回動角γをγ1のまま保持するために、モータ71を駆動しない(図7(b)参照)。
【0081】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、クラッチ23は切断された状態に維持される。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、制動装置24が作動した状態に維持される。
【0082】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、エンジン14の回転数NはN1のまま維持される(図8参照)。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、HST21aの可動斜板の傾斜角度が最大のまま維持される。
【0083】
したがって、変速ペダル67が踏み込み操作されてペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ1からβ2(β2未満)に増加した場合であっても、エンジン14の回転数NはN1のまま一定であり、かつ田植機1の車速Vは0のまま維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作に対して田植機1が走行しない領域(いわゆる「遊び」)が設けられる。
【0084】
(3)変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2になるとき、すなわちペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ2になるとき、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γが、回動角γ1から、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β2に対応する回動角γ2まで増加するように、モータ71を駆動する(図7(b)参照)。
【0085】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1からγ2まで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からN2まで増加する(図8参照)。
【0086】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2になると(γ2を超えると)、クラッチ23は接続される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達可能となる。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2になると、制動装置24が解除される。これによって、前車輪12および後車輪13の制動が解除され、田植機1が前進または後進可能となる。
【0087】
(4)図7(b)の矢印Bに示すように、変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2からα3まで一気に増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ2からβ3まで一気に増加する。制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γが、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β2に対応する回動角γ2からペダル用ポテンショメータ67aの回動角β3に対応する回動角γmaxまで増加するように、モータ71を駆動する。また、このとき、図7(b)の矢印Bに示すように、制御装置100は、回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合が一定値(γmax−γ2)/(β3−β2)、になるように、モータ71を駆動する。すなわち、このとき、制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合を一定値(γmax−γ2)/(β3−β2)、に設定する。
【0088】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2からγmaxまで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からNmaxまで増加する(図8参照)。
【0089】
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2からγmaxまで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が減少するように駆動される。これによってエンジン14の動力はHMT21を介して前車輪12および後車輪13に伝達され、田植機1が走行開始する。
そして、田植機1は加速して、その車速Vが、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ2に対応する0から、回動角γmaxに対応するVmaxまで増加する。このとき、図7(b)の矢印Bに示すように、制御装置100は、回動角βの変化に対する回動角γの変化の割合が一定値(γmax−γ2)/(β3−β2)、になるようにモータ71を駆動する。これにより、田植機1はスムーズに加速することが可能となる。
【0090】
(5)変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα3からαmaxまで増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ3からβmaxまで増加する。この間、制御装置100は、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの値にかかわらずモータ用ポテンショメータ71aの回動角γをγmaxのまま保持するために、モータ71を駆動しない(図7(b)参照)。
したがって、エンジン14の回転数NはNmaxのまま、田植機1の車速VはVmaxのまま、それぞれ維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作に対して田植機1が加減速しない領域(いわゆる「余裕代」)が設けられる(図8参照)。
【0091】
上述の如く、本実施形態に係る田植機1は、変速ペダル67を踏み込み操作することで、田植機1の車速Vを増加(加速)させることができる。また、上述の説明とは逆に、踏み込み操作された変速ペダル67を元の位置に向かって戻すことで、田植機1の車速Vを減少(減速)させることができる。
【0092】
以下では、変速ペダル67の操作に関して、第一変速領域内で踏み込み操作された場合、第二変速領域内で踏み込み操作されされた場合、第三変速領域内で踏み込み操作された場合、ならびに第四変速領域内で踏み込み操作された場合、の田植機1の加速度を比較する(図7(a)参照)。
【0093】
上記したように前記マップにおいては、上記第一変速領域〜第四変速領域に関して、変速領域毎に、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合(X1)〜(X4)が異なっている。これにより、田植機1の加速度が、変速領域毎に異なる。
【0094】
また、本実施形態では、上記したように(X1)〜(X4)の大小関係について、(X2)<(X1)<(X3)<(X4)、となるように構成されている。
これにより、田植機1の加速度に関して、変速ペダル67が第四変速領域(β23以上β3未満)内で踏み込み操作されるときが一番大きく(上記(iv)参照)、変速ペダル67が第三変速領域(β22以上β23未満)内で踏み込み操作されるときが二番目に大きく(上記(iv)参照)、変速ペダル67が第一変速領域(β2より大きくβ21未満)内で踏み込み操作されるときが三番目に大きく(上記(i)参照)、変速ペダル67が第二変速領域(β21以上β22未満)内で踏み込み操作されるときが四番目に大きい(上記(ii)参照)。
【0095】
このように、田植機1は、変速ペダル67の踏み込み操作により加減速する際に、低速域においては変化割合(変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合)を小さく構成する。これにより、低速域においては例えば植え付け作業時における走行速度(車速)の微調整が容易に行える。また、高速域においては変化割合を低速域での場合よりも大きく構成する。これにより、高速域においては走行速度を速くする場合に田植機1が機敏に反応することになる。こうして、田植機1は、変速ペダル67の踏み込み操作により加減速する際に、低速域や高速域等で変速ペダル67の踏み込み量に対応して緩急をつけた加減速が可能となり、変速フィーリングの向上に貢献可能である。
また、田植機1は、上記変速領域を複数の変速領域に分割して、分割した変速領域毎に変化割合を設定する。これにより、植付条件や圃場条件や作業者の好み等に応じて変化割合を変更する場合、上記変化割合を全体的に変更する必要がなく、該当する変速領域においての変化割合を所望の値に変更すればよい。これにより変化割合の変更を容易に行うことができる。また、各変速領域では変化割合がそれぞれ一定(X1)〜(X4)であるため、速度固定レバー70により速度固定を行う場合に走行速度を所望の速さに近づけることが容易に行え、所望の走行速度での速度固定がし易くなる。
【0096】
以上のように、田植機1は、
エンジン14と、
エンジン14の回転数の変更を行うためのモータ71と、
モータ71の駆動量を検出するモータ用ポテンショメータ71aと、
モータ71を操作するための変速ペダル67と、
変速ペダル67の踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル用ポテンショメータ67aと、を備え、
ペダル用ポテンショメータ67aが出力するペダル信号に基づいてモータ71の目標駆動量を算出して、モータ用ポテンショメータ71aの検出値が前記目標駆動量になるようにモータ71を駆動して、車速をモータ71の目標駆動量に対応した大きさに変更する、
田植機1であって、
変速ペダル67の操作範囲を第一変速領域〜第四変速領域に分割して、
第一変速領域〜第四変速領域毎に、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合(X1)〜(X4)を設定することを特徴とする。
【0097】
これにより、田植機1は、変速ペダル67の踏み込み操作により加減速する際に、低速域や高速域等で変速ペダル67の踏み込み量に対応して緩急をつけた加減速が可能となり、変速フィーリングの向上に貢献可能である。
【0098】
また、田植機1においては、
変速ペダル67が、第一変速領域〜第四変速領域のうちの、一の変速領域から他の変速領域に一気に踏み込み操作されるときには、変速ペダル67の踏み込み量の変化に対するモータ71の目標駆動量の変化の割合を一定値に設定することを特徴とする。
【0099】
これにより、田植機1はスムーズに加速することが可能となる。
【符号の説明】
【0100】
1 田植機
14 エンジン
21 HMT
21a HST
67 変速ペダル
67a ペダル用ポテンショメータ
71 モータ
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの回転数の変更を行うためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を検出するアクチュエータ駆動量検出装置と、
前記アクチュエータを操作するための変速ペダルと、
前記変速ペダルの踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル操作量検出装置と、を備え、
前記ペダル操作量検出装置が出力するペダル信号に基づいて前記アクチュエータの目標駆動量を算出して、前記アクチュエータ駆動量検出装置の検出値が前記目標駆動量になるように前記アクチュエータを駆動して、車速を前記アクチュエータの目標駆動量に対応した大きさに変更する、
田植機であって、
前記変速ペダルの操作範囲を複数の変速領域に分割して、
前記複数の変速領域毎に、前記変速ペダルの踏み込み量の変化に対する前記アクチュエータの目標駆動量の変化の割合を設定することを特徴とする、
田植機。
【請求項2】
前記変速ペダルが、前記複数の変速領域のうちの、一の変速領域から他の変速領域に一気に踏み込み操作されるときには、前記変速ペダルの踏み込み量の変化に対する前記アクチュエータの目標駆動量の変化の割合を一定値に設定することを特徴とする、
請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−82777(P2012−82777A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231017(P2010−231017)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】