説明

画像の、特徴点抽出方法、特徴点抽出プログラム、および特徴点抽出装置

【課題】画像から短時間で画像の特徴点を抽出することを目的とし、特に、磁気記録ヘッドのコアの画像等、輝度値の投影データが特徴的な画像から、短時間で正確に画像の特徴点を抽出することを目的とする。
【解決手段】画像を入力し、該入力画像の各画素の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を作成し、該投影データ曲線を部分ごとに直線近似し、該近似直線の交点を変曲点として抽出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の特徴点抽出方法、特徴点抽出プログラム、および特徴点抽出装置に関し、特に、解像度限界付近の微細構造等の、エッジが不鮮明な画像の特徴点抽出方法、特徴点抽出プログラム、および特徴点抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの記録密度は、磁気記録ヘッドのコアの大きさ、および形状に依存している。磁気ディスクの大容量化要求に伴い、記録密度を高めるため、磁気記録ヘッドが微細化し、コアの形状ばらつきが相対的に大きくなり、製造工程における形状の制御が重要となっている。
【0003】
製造工程における製品の良否判定、あるいはプロセスの管理の自動化に画像処理を応用した技術が開示されている。(特許文献1、非特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−249518号公報
【非特許文献1】川田 洋揮、他3名、「65nmプロセスノード対応の測定長SEM」、日立評論、2003年4月、vol.85 No.4、p.23−28 特許文献1には、部品等の対象物の画像を取り込む際の、周囲の照明状態、あるいは対象物の表面状態によって一部暗くなったり、欠けたりするようなことがあっても、その画像の特徴点をとらえて対象物を認識する技術が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、走査型電子顕微鏡から得られる微細パターン画像の測長技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に磁気記録ヘッドのコア例を示す。磁気記録ヘッドの主磁極1は漏斗状の形状を有し、磁気記録ヘッドの主磁極1、および、またはリターンヨーク2には図示しない磁気記録コイルが巻かれており、磁気記録コイルにより発生した磁力線を、磁気記録を行う主磁極先端部3に集中させて磁気記録媒体に記録している。
【0006】
この場合、主磁極1を形成するコアのネック4から100nm程度の主磁極先端部3までの長さ、ネックハイトNHが記録特性に大きく影響するため、ネックハイトNHを厳密に制御して加工することが重要となっている。
【0007】
図8の磁気記録ヘッドのコア(主磁極詳細)例に示すごとく、磁気記録ヘッドのコアを走査型電子顕微鏡等で観察してネックの位置のx座標x0を探索し、ネックハイトNH=xc−x0の位置となるxcで切断等の調整加工を行うが、走査型電子顕微鏡を高解像度に設定すると観察に長時間を要する。
【0008】
また、高解像度の画像はデータ量が多く、ネックの位置のx座標を探索するための画像処理にも長時間を要する。画像処理に要する時間を短縮するために、低解像度の画像を用いると、コアの形状が不鮮明になり、ネック位置の探索が困難になる。
【0009】
また、図9に示すごとく擬似的に境界線が現れ、これを本来の境界線と誤認識し、間違った位置をネックとして検出してしまう場合がある。
【0010】
特許文献1に記載の技術は、低解像度の不鮮明な画像に対する考慮はされていない。
【0011】
非特許文献1に記載の技術は、短時間で正確に位置を測定することは考慮されていない。
【0012】
本発明は、画像から短時間で画像の特徴点を抽出することを目的とし、特に、磁気記録ヘッドのコアの画像等、輝度値の投影データが特徴的な画像から、短時間で正確に画像の特徴点を抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の発明は、画像の特徴点抽出方法であって、画像を入力し、該入力画像の各画素の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を作成し、該投影データ曲線の変曲点を求め、該変曲点を特徴点として抽出することを特徴とする。
【0014】
第二の発明は、第一の発明に記載の画像の特徴点抽出方法であって、前記投影データ曲線を部分ごとに直線近似し、該近似直線の交点を変曲点として抽出することを特徴とする。
【0015】
第三の発明は、第一の発明に記載の画像の特徴点抽出方法であって、前記投影データ曲線を2階微分し、該2階微分値が所定の値以下で連続する範囲を直線として近似し、該近似直線の交点を変曲点として抽出することを特徴とする。
【0016】
第四の発明は、画像の特徴点抽出プログラムであって、画像を入力するステップと、該入力画像の各画素の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を作成するステップと、該投影データ曲線を部分ごとに直線近似するステップと、該近似直線の交点を特徴点として抽出するステップとを有することを特徴とする。
【0017】
第五の発明は、画像の特徴点抽出装置であって、画像を入力する手段と、該入力した画像の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を出力する投影データ作成手段と、該投影データ曲線を部分ごとに直線近似して出力する直線抽出手段と、該近似直線の交点を特徴点として抽出する交点抽出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、本来、2次元で行う画像処理に対して、短時間で実行可能な1次元処理、すなわち輝度値の投影データを求める前処理を行い、該投影データを分析することで、短時間で画像の特徴点を抽出することが可能となる。特に、磁気記録ヘッドのコアの画像等、輝度値の投影データが特徴的な画像から、短時間で正確に画像の特徴点を抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の原理を示す。図1(A)に示す入力画像の各画素の輝度値をY方向に積算して図1(B)に示す投影データ曲線P(x)を作成する。次に投影データ曲線P(x)の変曲点のx座標x0を求め、該変曲点を特徴点として抽出する。
【0020】
これにより、図11に示すネックのx座標x0を抽出し、もってネックハイトNHにより定められる切断点のxc座標を特定する。
【実施例1】
【0021】
図2に、実施例1の処理フロー、図3に実施例1の構成例、図4に実施例1の交点(特徴点)抽出例を示す。図4(A)の投影データ曲線に示すごとく、輝度値の揺らぎ等の影響で、通常、投影データ曲線P(x)はスムースではない。このため、投影データ曲線P(x)について、予めスムージングを行わないと、正確な変曲点が抽出出来ない。
【0022】
図2において、ステップS1で、画像を入力する。ステップS2で、入力した画像のY方向の各画素の輝度値を積算して、図4(A)に示す投影データ曲線P(x)を作成し、ステップS3で投影データ曲線P(x)に、例えば最小二乗法、あるいは所定区間毎の移動平均等によりスムージングを行い、図4(B)に示すスムージング結果Ps(x)を得る。
【0023】
ステップS4では、スムージング結果Ps(x)から直線抽出を行い、ステップS5で抽出した直線の交点のx座標を、特徴点x0として抽出する。直線抽出/交点検出結果を図4(C)に示す。
【実施例2】
【0024】
図5は、投影データ曲線の微分により直線抽出範囲を求めて直線近似を行う実施例2の概要を示し、図6は実施例2の処理フローを示す。実施例2において、画像入力(ステップS51)、投影データ作成(ステップS52)、およびスムージング(ステップS53)は、実施例1と同様である。
【0025】
ステップS54で、投影データのスムージング結果Ps(x)を微分し、Ps’(x)を求める。結果を図5(A)に示す。ここで、Ps’(x)がスムースでない場合は、再度、スムージングを行っても良い。
【0026】
ステップS55で、Ps’(x)をさらに微分し、Ps”(x)を求める。結果を図5(B)に示す。
【0027】
ステップS56では、|Ps”(x)|<Cの条件を連続して満たすxの範囲を直線として抽出する。ここで、Cは、投影データ曲線P(x)の所定の範囲が直線と見なせる、2階微分値の許容値である。図5(B)においては、x1からx2を直線L1として抽出し、x3からx4を直線L2として抽出する。
【0028】
ステップS57では、抽出した直線L1、およびL2の交点のx座標を、特徴点x0として抽出する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の原理
【図2】実施例1の処理フロー
【図3】実施例1の構成例
【図4】実施例1の交点(特徴点)抽出例
【図5】実施例2
【図6】実施例2の処理フロー
【図7】磁気記録ヘッドのコア例
【図8】磁気記録ヘッドのコア(主磁極詳細)例
【図9】擬似境界線によるネック誤検出例
【符号の説明】
【0030】
1 主磁極
2 リターンヨーク
3 主磁極先端部
4 ネック
30 特徴点抽出装置
31 画像入力手段
32 投影データ作成手段
33 スムージング手段
34 直線抽出手段
35 交点抽出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の特徴点抽出方法であって、
画像を入力し、
該入力画像の各画素の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を作成し、
該投影データ曲線の変曲点を求め、
該変曲点を特徴点として抽出することを特徴とする画像の特徴点抽出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像の特徴点抽出方法であって、
前記投影データ曲線を部分ごとに直線近似し、
該近似直線の交点を変曲点として抽出することを特徴とする画像の特徴点抽出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の画像の特徴点抽出方法であって、
前記投影データ曲線を2階微分し、
該2階微分値が所定の値以下で連続する範囲を直線として近似し、
該近似直線の交点を変曲点として抽出することを特徴とする画像の特徴点抽出方法。
【請求項4】
画像の特徴点抽出プログラムであって、
画像を入力するステップと、
該入力画像の各画素の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を作成するステップと、
該投影データ曲線を部分ごとに直線近似するステップと、
該近似直線の交点を特徴点として抽出するステップとを有することを特徴とする画像の特徴点抽出プログラム。
【請求項5】
画像の特徴点抽出装置であって、画像を入力する手段と、該入力した画像の輝度値を所定方向に積算して投影データ曲線を出力する投影データ作成手段と、該投影データ曲線を部分ごとに直線近似して出力する直線抽出手段と、該近似直線の交点を特徴点として抽出する交点抽出手段を有することを特徴とする画像の特徴点抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−84017(P2008−84017A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263382(P2006−263382)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】