説明

画像データの出力画像調整

【課題】画像データに施された恣意的な画像処理の出力傾向を損なうことなく画像データの画質を自動調整する。
【解決手段】CPUは、画像データGFに撮影情報PI(Exif IFD)が含まれている場合には、露出補正量(露光量)EVを考慮した修正明度補正量tCurve_Yを算出する。具体的には、修正明度補正量tCurve_Yは、オリジナル明度補正量tCurve_Yorgに対して2|EV|分の1を乗じることにより算出される。したがって、露出補正量が大きくなるにつれて等比級数的に小さくなる。CPUは、得られた修正明度補正量tCurve_Yをトーンカーブに適用し、明度を含む画質調整を実行する。すなわち、修正明度補正量tCurve_Yを用いてトーンカーブの特性を修正し、修正後のトーンカーブを画像データGDに適用して画像データの画質を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの明度を調整する画像調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタルスチルカメラ(DSC)、ディジタルビデオカメラ(DVC)、スキャナ等によって生成された画像データの画質は、パーソナルコンピュータ上で画像レタッチアプリケーションを用いることによって任意に調整することができる。画像レタッチアプリケーションには、一般的に、画像データの画質(特性)を自動的に調整する画像調整機能が備えられており、この画像調整機能を利用すれば、出力装置から出力する画像データの画質を容易に標準的な画質へと調整することができる。画像データの出力装置としては、例えば、CRT、LCD、プリンタ、プロジェクタ、テレビ受像器などが知られている。
【0003】
また、出力装置の1つであるプリンタの動作を制御するプリンタドライバにも、画像データの画質(特性)を自動的に調整する機能が備えられており、このようなプリンタドライバを利用しても、印刷される画像データの画質を容易に標準的な画質へと調整することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−243463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、これら画像レタッチアプリケーション等によって提供される画質自動調整機能では、標準的な画像データの画質を基準とする画質補正が実行される。これに対して、画像処理の対象となる画像データは様々な条件下で生成され得るため、標準的な画像データを想定した基準値を用いて一律に画質自動調整機能によって画像データの画質(特性)を補正しても、上手く画質を補正できないことがある。
【0006】
また、DSC等の画像データ生成装置の中には、画像データ生成時に画像データの画質を任意に調整できるものもあり、ユーザは意図的に所定の画質を有する画像データを生成することができる。このような画像データに対して、画質自動調整機能を実行すると、画像データが有する意図的な画像特性までもが一律に基準値に基づいて調整されてしまい、ユーザの意図を反映した出力画像を得ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、画像データに施された恣意的な画像処理の出力傾向を損なうことなく画像データの画質を自動調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定する補正量決定ユニットと、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さくする補正量修正ユニットと、前記修正された明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整する画質調整ユニットとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置によれば、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて画像データの明度補正量を決定し、決定された明度補正量を露出補正量が大きくなるにつれて小さく修正し、修正された明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整するので、恣意的に設定された明度に関する出力条件を損なうことなく画像データの画質を自動調整することができる。したがって、画質が自動的に調整される場合であっても、明るい出力結果が意図されている場合には、明るい出力結果を得ることができ、暗い出力結果が意図されている場合には、暗い出力結果を得ることができる。
【0010】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記補正量修正ユニットは、所定の露出補正量未満の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度と、前記所定の露出補正量以上の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせても良い。あるいは、前記補正量修正ユニットは、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量の低減の割合を減少させても良い。かかる構成を備えることにより、露出補正量が大きくなってもハイライトやシャドー部の階調を維持することが可能となり、結果として白飛びや黒つぶれの発生を防止することができる。
【0011】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記明度補正量は、等比級数的に小さくされても良い。かかる場合には、画質が自動的に調整される場合であっても、明るい出力結果が意図されている場合には、より正確に明るい出力結果を得ることができ、暗い出力結果が意図されている場合には、より正確に暗い出力結果を得ることができる。例えば、前記補正量修正ユニットは、前記明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除することによって、前記明度補正量を修正しても良い。かかる場合には、露出補正量が大きくなるにつれて明度補正量を等比級数的に小さくすることができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置はさらに、前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得する明度特性値取得ユニットを備え、前記補正量決定ユニットは、前記明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減させるように前記明度補正量を決定しても良い。かかる場合には、個々の画像データの特性を踏まえて、より適切に画像データの明度に関する特性を補正することができる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置はさらに、前記画像データに対する明度補正の傾向を入力するための入力ユニットを備え、前記補正量決定ユニットは、前記入力された明度補正の傾向に基づいて、前記画像データの明度補正量を決定しても良い。かかる場合には、入力された明度補正の傾向に基づいて、より適切に画像データの明度に関する特性を補正することができる。
【0014】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置はさらに、前記明度調整された画像データを用いて画像を出力する画像出力ユニットを備えても良い。かかる場合には、明度に関する特性が補正された画像を出力することができる。
【0015】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記補正量修正ユニットは、コントラスト補正前後の輝度差を考慮して前記明度補正量を修正し、前記画像データと前記露出補正量とは、同一のファイル内に格納されていても良い。かかる場合には、コントラスト補正による明度への影響を補償することができる。また、画像データに対する露出補正量の対応付けを容易にすることができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、画像データと、その画像データに対して実行された露出補正の情報とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得する明度特性値取得ユニットと、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減する画質調整ユニットと、前記露出補正の情報に基づいて、前記画像データに対して実行された露出補正の度合いが大きくなるにつれて前記偏差の低減の程度を小さくする偏差低減量調整ユニットとを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置によれば、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値と取得した明度特性値との偏差を低減する際に、露出補正の情報に基づいて、画像データに対して実行された露出補正の度合いが大きくなるにつれて偏差の低減の程度を小さくするので、恣意的に設定された明度に関する出力条件を損なうことなく画像データの画質を自動調整することができる。したがって、画質が自動的に調整される場合であっても、明るい出力結果が意図されている場合には、意図に沿って明るい出力結果を得ることができ、暗い出力結果が意図されている場合には、意図に沿って暗い出力結果を得ることができる。なお、偏差の低減の程度は等比級数的に小さくされても良い。かかる場合には、明るい出力結果が意図されている場合には、より正確に意図に沿って明るい出力結果を得ることができ、暗い出力結果が意図されている場合には、より正確に意図に沿って暗い出力結果を得ることができる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、この他にも方法、プログラムとしても実現されると共に、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0019】
本発明の第3の態様は、画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いた画像データに対する画像処理方法を提供する。本発明の第3の態様に係る画像処理方法は、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定し、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さく修正し、前記修正した明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整することを特徴とする。
【0020】
本発明の第3の態様に係る画像処理方法によれば、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第3の態様に係る画像処理方法は、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0021】
本発明の第4の態様には、画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体を提供する。本発明の第4の態様に係るコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録された画像処理プログラムは、明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定する機能と、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さく補正する機能と、前記修正した明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整する機能とをコンピュータによって実現させることを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の態様に係る画像処理プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体によれば、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第4の態様に係る画像処理プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0023】
本発明の第5の態様は、撮影時における撮影条件を示す撮影情報が関連付けられた画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第5の態様に係る画像処理装置は、取得した画像データを解析して、前記画像データの画質の特性を示す画質特性値を取得する画質特性値取得ユニットと、前記取得した画像データに関連付けられている前記撮影情報から、撮影意図を示す撮影情報を検索する検索ユニットと、予め定められた画質調整の基準となる画質調整基準値と前記取得した画質特性値との偏差を低減して前記画像データの画質を調整する画質調整ユニットと、前記撮影意図を示す撮影情報を検出することができた場合には、前記検索した撮影意図を示す撮影情報を用いて、前記偏差の低減の程度を調整する偏差低減量調整ユニットとを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置によれば、撮影時の撮影条件を示す撮影情報の内、撮影意図を示す撮影情報を用いて、画質調整処理時における偏差の低減の程度を調整することができるので、撮影意図を反映した画質調整処理を実行することができる。
【0025】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置において、前記撮影意図を示す撮影情報を検出することができなかった場合には、前記偏差の低減の程度は前記撮影意図を示す撮影情報によっては調整されなくても良い。かかる場合には、撮影意図を示す撮影情報を用いることなく画質調整処理を実行することができる。
【0026】
本発明の第5の態様は、この他にも方法、プログラムを記録した記録媒体の態様にて実現される得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る画像処理装置について図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0028】
A.画像処理システムの構成:
本実施例に係る画像処理装置を適用可能な画像処理システムの構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は本実施例に係る画像処理装置を適用可能な画像処理システムの一例を示す説明図である。図2は本実施例に係る画像処理装置の処理対象となる画像データを生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。図3は本実施例に係る画像処理装置として機能するカラープリンタの概略構成を示すブロック図である。
【0029】
画像処理システム10は、画像データを生成する入力装置としてのディジタルスチルカメラ12、ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置としてのパーソナルコンピュータPC、画像を出力する出力装置としてのカラープリンタ20を備えている。出力装置としては、プリンタ20の他に、CRTディスプレイ、LCDディスプレイ等のモニタ14、プロジェクタ等が用いられ得るが、以下の説明では、カラープリンタ20を出力装置として用いるものとする。
【0030】
ディジタルスチルカメラ12は、光の情報をディジタルデバイス(CCDや光電子倍増管)に結像させることにより電気的に画像を取得するカメラであり、図2に示すように光情報を収集するためのCCD等を備える光学回路121、光学回路121を制御して画像を取得するための画像取得回路122、取得したディジタル画像を加工処理するための画像処理回路123、各データを一時的に記憶するメモリを備えると共に各回路を制御する制御回路124を備えている。ディジタルスチルカメラ12は、取得した画像をディジタルデータとしてメモリカードMCを始めとする記憶装置に保存する。ディジタルスチルカメラ12における画像データの保存形式としては、JPEG形式が一般的であるが、この他にもRAW形式、TIFF形式、GIF形式、BMP形式等の保存形式が用いられ得る。
【0031】
ディジタルスチルカメラ12は、撮影モード、露出補正量(露出補正値)、光源等を設定するための選択・決定ボタン126、撮影画像をプレビューしたり、選択・決定ボタン126を用いて露出補正量等を設定するための液晶ディスプレイ127を備えている。ディジタルスチルカメラ12では、適正露出が自動的に設定されるため、ディジタルスチルカメラ12において設定される露出補正量は、適正露出に対するプラス補正量、あるいはマイナス補正量として設定される。露出補正量は、露光量EVで表され、露出の補正がない場合には、EV=±0に設定され、適正露出に対して露出を明るく補正したい場合には、+0.1EV、+2.0EVのようにプラス側に露出補正量が設定され、適正露出に対して露出を暗く補正したい場合には、−0.1EV、−2.0EVのようにマイナス側に露出補正量が設定される。
【0032】
本画像データ出力システム10に用いられるディジタルスチルカメラ12は、画像データGDに加えて画像データの撮影情報PIを画像ファイルGFとしてメモリカードMCに格納する。すなわち、撮影情報PIは、撮影時に画像データGDと共に自動的に画像ファイルGFとしてメモリカードMCに自動的に格納される。たとえば、ユーザによって、露光補正量、光源等の撮影パラメータが任意の値に設定されている場合には、設定された露光補正量に従い生成された画像データGD、および設定されたパラメータの値が記述された撮影情報PIを含む画像ファイルGFがメモリカードMCに格納される。
【0033】
ディジタルスチルカメラ12において生成された画像ファイルGFは、例えば、ケーブルCV、コンピュータPCを介して、あるいは、ケーブルCVを介してカラープリンタ20に送出される。あるいは、ディジタルスチルカメラ12にて画像ファイルGFが格納されたメモリカードMCが、メモリカード・スロットに装着されたコンピュータPCを介して、あるいは、メモリカードMCをプリンタ20に対して直接、接続することによって画像ファイルがカラープリンタ20に送出される。なお、本実施例では、カラープリンタ20がスタンドアローンにて画像処理および出力(印刷)処理を実行する場合について説明する。
【0034】
図3に示すカラープリンタ20は、カラー画像の出力が可能なプリンタであり、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の色インクを印刷媒体上に噴射してドットパターンを形成することによって画像を形成するインクジェット方式のプリンタである。あるいは、カラートナーを印刷媒体上に転写・定着させて画像を形成する電子写真方式のプリンタである。色インクには、上記4色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)、ライトマゼンタ(薄いマゼンタ、LM)、ダークイエロ(暗いイエロ、DY)を用いても良い。
【0035】
カラープリンタ20は、印刷ヘッドまたは回転ドラム等を含み印刷媒体に対する印刷処理を実行する印刷部21と、メモリカードMCを収容するスロット22と、カラープリンタ20の各部の動作を制御する制御回路23を備えている。制御回路23は、各種演算処理を実行する演算処理装置(CPU)231、CPU231にて実行されるプログラム等を不揮発的に格納するリードオンリメモリ(ROM)232、CPU231における演算処理結果、および取得したデータを一時的に格納するランダムアクセスメモリ(RAM)233を備えている。制御回路23は、メモリカードMCから読み出した撮影情報PIを解析し、解析した撮影情報PIに基づいて図示しない紙送りモータ、キャリッジモータ、印字ヘッド等の動きを制御する。
【0036】
B.画像ファイルの構成:
本実施例に係る画像ファイルGFは、例えば、ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(Exif)に従ったファイル構造を有することができる。Exifファイルの仕様は、電子情報技術産業協会(JEITA)によって定められており、画像データとして圧縮タイプのJPEGデータを格納するJPEG−Exifファイル、非圧縮タイプのTIFFデータを格納するTIFF−Exifファイルが存在する。以下の説明では、圧縮ファイル、すなわち、JPEG−Exifファイルを用いて説明する。
【0037】
図4を参照して本実施例にて用いられ得るExifフォーマットにしたがう画像ファイルの概略構成について説明する。図4はExifフォーマットにしたがう画像ファイルGFの概略的な内部構造を示す説明図である。なお、本実施例中におけるファイルの構造、データの構造、格納領域といった用語は、ファイルまたはデータ等が記憶装置内に格納された状態におけるファイルまたはデータのイメージを意味するものである。
【0038】
画像ファイルGFは、圧縮データの先頭を示すSOIマーカセグメント101、Exifの付属情報を格納するAPP1マーカセグメント102、Exif拡張データを格納するAPP2マーカセグメント103、量子化テーブルを定義するDQTマーカセグメント104、ハフマンテーブルを定義するDHTマーカセグメント105、リスタートマーカの挿入間隔を定義するDRIマーカセグメント106、フレームに関する各種パラメータを示すSOFマーカセグメント107、スキャンに関する各種パラメータを示すSOSマーカセグメント108、および圧縮データの終了を示すEOIマーカセグメント109を含んでいる。圧縮画像データGDは、SOSマーカセグメント108とEOIマーカセグメント109の間の画像データ格納領域110に格納される。なお、各マーカセグメントの記録順序は、SOIマーカセグメントの直後にAPP1、APP2マーカセグメントが記録され、EOIマーカセグメントの直前に画像データをはさんでSOSマーカセグメントが記録される他は任意である。
【0039】
APP1マーカセグメント102は、APP1マーカ1021、Exif識別コード1022、付属情報1023、およびサムネイル画像1024から構成されている。付属情報は、ファイルヘッダ(TIFFヘッダ)を含むTIFFの構造を取り、Exif−JPEGでは、圧縮画像データに関する付属情報を格納する0th IFD、撮影情報PIを始めとするExif固有の付属情報を格納するExif IFD、サムネイル画像に関する付属情報を格納する1st IFDを含んでいる。Exif IFDは、0th IFDに格納されているTIFFヘッダからのオフセットでポイントされる。IFDでは、各情報を特定するためにタグが用いられており、各情報はタグ名によって呼ばれることがある。
【0040】
撮影情報PIは、ディジタルスチルカメラ12等の画像データ生成装置において画像データが生成されたとき(撮影されたとき)の画質に関連する情報(画質生成情報)であり、撮影に伴い自動的に記録される露出時間、ISO感度、絞り、シャッタースピード、焦点距離に関するパラメータ、およびユーザによって任意に設定される露出補正量、光源、撮影モード等に関するパラメータを含み得る。
【0041】
Exif IFDに格納される詳細な付属情報について図5を参照して説明する。図5は本実施例に用いられ得る画像ファイルGFのExif IFDに格納される詳細な付属情報の一例を示す説明図である。
【0042】
Exif IFDには、Exifのバージョン情報、色空間情報、画像データの生成日時、撮影条件の各タグが格納されている。撮影条件(撮影情報IP)に関するタグには、露出時間、レンズF値、露出制御モード、ISO感度、露出補正量、光源、ホワイトバランス、フラッシュ、焦点距離等の各パラメータ値が既定のオフセットに従って格納されている。画像処理装置(出力装置)側では、所望のタグ情報(パラメータ)に対応するオフセットを指定することにより所望の撮影情報PIを取得することができる。
C.カラープリンタ20における画像処理:
【0043】
以下、図6〜図8を参照してカラープリンタ20にて実行される画像処理について説明する。図6は本実施例に係る画像処理装置(カラープリンタ20)における画像処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図7は本実施例に係る画像処理装置(カラープリンタ20)における基準値を用いた画質調整処理(自動画質調整処理)の処理ルーチンを示すフローチャートである。図8は従来手法による明度補正量と本実施例に係る手法による明度補正量とを対比して示す説明図である。
【0044】
カラープリンタ20の制御回路23(CPU231)は、スロット22にメモリカードMCが差し込まれると、メモリカードMCから画像ファイルGFを読み出し、読み出した画像ファイルGFをRAM233に一時的に格納する(ステップS100)。CPU231は読み出した画像ファイルGFに含まれる画像データGDを伸張し、伸張した画像データGDに対してマトリクスSを用いたマトリクス演算を実行してYCbCr→RGB色変換処理を実行する(ステップS110)。
【0045】
上述の通り、本実施例における画像ファイルGFは、JPEGファイル形式の画像データを画像データGDとして格納しており、JPEGファイル形式の画像データはYCbCrデータを圧縮したデータである。また、現在のパーソナルコンピュータPC、プリンタにおける画像処理では一般的にRGBデータが用いられている。したがって、JPEGファイル形式の画像データの伸張(デコード)、YCbCrデータのRGBデータへの色変換処理が必要となる。なお、マトリクスSは、JPEGファイルについての仕様を規定するJFIFフォーマットにおいて、YCbCrデータをRGBデータへと変換する際に一般的に用いられるマトリクスであり、当業者にとって周知のマトリクスであるから詳細な説明は省略する。
【0046】
CPU231は、変換により得られたRGBデータに対して、基準値を用いた画質調整処理を実行する(ステップS120)。基準値を用いた画質調整処理とは、一般的に、自動画質調整処理と呼ばれる画像処理であり、外部からの入力に依存することなく、予めROM232に格納されている、好ましい標準的なパラメータの値(基準値)を用いて画質を調整する処理である。かかる画質調整において用いられるパラメータは、例えば、明度、シャープネス等といった画質に関するパラメータであり、これらパラメータについての標準的なパラメータの値を用いて補正すべき補正量を求め、求めた補正量を適用して画質が調整される。なお、詳細については図7を用いて後述する。
【0047】
CPU231は、自動画質調整処理が施された画像データ(RGBデータ)をCMYKデータに変換する色変換処理を実行する(ステップS130)。すなわち、画像データの表色系をカラープリンタ20が印刷処理を実行する際に用いる表色系であるCMYK表色系に変換する。具体的には、ROM232に格納されているRGB表色系とCMYK表色系とを対応付けたルックアップデーブルを用いて実行される。
【0048】
CPU231は、以上の画像処理を終えると、得られた画像データを用いて印刷出力処理を実行し(ステップS140)、本処理ルーチンを終了する。印刷出力処理では、CPU231は、ハーフトーン処理、解像度変換処理を実行して、処理済みのデータをラスタデータとして印刷部21に送出する。
【0049】
図7を参照して自動画質調整処理について詳述する。CPU231は、画像データの解析を実行する(ステップS200)。すなわち、本実施例における自動画質調整処理では、画像データGDを画素単位にて解析して画像データGDの特性を示す各種の特性パラメータ値、例えば、輝度最小値、輝度最大値、明度代表値といった画像統計値を取得する。この時点では画像データGDはRGBデータであるからY=0.30R+0.59G+0.11Bの式を用いて輝度最小値Yminおよび輝度最大値Ymax等が取得される。
CPU231は、輝度最小値Yminおよび輝度最大値Ymaxを用いてレベル補正(コントラスト補正)を実行する(ステップS210)。具体的には、原画像データGDのRGB成分をR,G,B、補正後のRGB成介をR’,G’,B’とすると、(R’,G’,B’)=255*(R,G,B)(Ymax−Ymin)−Yminの式を用いて各画素に対して補正が実行される。CPU231は、原画像データ(レベル補正前の画像データ)の128ポイントにおける輝度値と補正後画像データの128ポイントにおける輝度値Ymodとの輝度差ΔY=Ymod−Yorgを算出する(ステップS220)。なお、128ポイントとは、横軸に画像データの入力値(原画像データ)、縦軸に画像データの出力値(補正後画像データ)を取る、トーンカーブにおける横軸(入力値)ポイントの1つである。なお、本実施例では、RGBデータへの変換後にレベル補正を実行しているが、YCbCrデータの段階にて、輝度成分Yを用いてこれら処理を実行してもよい。
【0050】
CPU231は、以下の式1を用いてオリジナルの明度補正量(露出補正量を考慮しない明度補正量)tCurve_Yorgを算出する(ステップS230)。
【0051】
【数1】

【0052】
例えば、明度基準値Bref=128、サンプリング(解析)により得られた明度代表値Bsmp=56の場合には、tCurve_Yorg=16となる(図8参照)。明度基準値Brefは、例えば、0〜255の値を取り得る8ビットの情報であり、本実施例では、128に設定されている。
【0053】
CPU231は、画像データGFに撮影情報PI(Exif IFD)が含まれているか否かを判定し(ステップS240)、撮影情報PIが含まれていると判定した場合には(ステップS240:Yes)、露出補正量(露光量)EVを考慮した修正明度補正量tCurve_Yを算出する(ステップS250)。修正明度補正量tCurve_Yは、以下の式2を用いて算出される。
【0054】
【数2】

【0055】
ここで、輝度差ΔYは、コントラスト(レベル)補正に起因する画像データGDの明度への影響を補償するための補正項である。なお、輝度差ΔYと露出補正量EVの符号が異なる場合には、輝度差ΔY=0として修正明度補正量tCurve_Yが算出される。かかる場合には、露出に関する撮影者の意図と自動補正の方向とが相反しているので、撮影者の意図を優先するためにコントラスト補正に起因する補償値を適用しない。
【0056】
CPU231は、得られた修正明度補正量tCurve_Yをトーンカーブに適用し、明度を含む画質調整を実行して(ステップS260)本処理ルーチンを終了する。すなわち、修正明度補正量tCurve_Yを用いてトーンカーブの特性を修正し、修正後のトーンカーブを用いて画素毎に画像データGDのR,G,Bの各成分の出力値(出力レベル)を補正(変更)する。
【0057】
CPU231は、撮影情報PIが含まれていないと判定した場合には(ステップS240:No)、露出補正量(露光量)EVを考慮することができないので、オリジナルの明度補正量tCurve_Yorgをトーンカーブに適用して明度を含む画質調整を実行し(ステップS270)、本処理ルーチンを終了する。
【0058】
修正明度補正量tCurve_Yまたはオリジナルの明度補正量tCurve_Yorgを用いたトーンカーブの特性の修正は、例えば、図9に示すように実行される。図9は明度補正におけるトーンカーブの修正の一例を示す説明図である。露出補正量EVが正の値の場合、すなわち撮影者が明度を明るくする補正を欲している場合には、例えば、入力レベルの1/4のポイントにて明度補正量に応じて出力レベルOL1,OL2を持ち上げる。一方、露出補正量が負の値の場合、すなわち撮影者が明度を暗くする補正を欲している場合には、例えば、入力レベルの3/4のポイントにて補正レベルに応じて出力レベルOL3を下げる。補正レベルに対応する点を除く値は、スプライン曲線にて補間される。
【0059】
本実施例に係るカラープリンタ20により得られる明度補正量と、従来手法による明度補正量とを比較すると図8に示すようになる。ここで、従来手法による明度補正とは、上記式1において、露出補正量EVに応じて明度基準値Brefを変更して明度補正量を求める手法である。例えば、明度基準値Brefの標準値が128の場合、この標準値に対して、0.1EV=2(明度修正値)とする換算式を用いて算出した値を、明度標準値128に対して加算することによって明度基準値Brefを修正する。すなわち、Bref=標準値+(2*露出補正量EV/0.1)となり、露出補正量EVが正の場合には明度修正値が標準値に加算され、露出補正量EVが負の場合には明度修正値が標準値から減算される。
【0060】
例えば、明度代表値Bsmp=56、露出補正量EV=−1.0の場合には、明度基準値Brefが128から108に修正され、修正された明度基準値を用いて算出された明度補正量は14となる。また、明度代表値Bsmp=56、露出補正量EV=−2.0の場合には、明度基準値Brefが128から88に修正され、修正された明度基準値を用いて算出された明度補正量は11となる。
【0061】
一方、本実施例に係るカラープリンタ20によれば、輝度差ΔY=+5、明度代表値Bsmp=56、露出補正量EV=−1.0の場合には、それぞれの値を式2に適用すると、修正明度補正量=8となる。また、輝度差ΔY=+5、明度代表値Bsmp=56、露出補正量EV=−2.0の場合には、それぞれの値を式2に適用すると、修正明度補正量tCurve_Y=4となる。
【0062】
したがって、本実施例に係るカラープリンタ20(画像処理装置)によれば、画像ファイルGF内に含まれる撮影情報PIを反映して画像データGDの明度を自動調整することができる。したがって、ユーザによって恣意的に画像の出力傾向が設定されている場合には、自動画質調整処理による画質調整が抑制されるため、ユーザの意図を反映した自動画質調整処理を実行することができる。
【0063】
特に、本実施例におけるカラープリンタ20によれば、露出補正量EVを考慮しない明度補正量を2|EV|分の1することによって明度補正量を補正するので、従来手法によって明度を補正する場合と比較して、より撮影者の意図に従った明度補正を実行することができる。すなわち、露出補正量の絶対値が大きくなるにつれて修正明度補正量tCurve_Yを等比級数的(指数関数的)に大幅に小さくすることができる。したがって、出力結果を明るくしたい、または暗くしたいとする撮影者の意図をより正確に画像データの出力結果に反映させることができる。
【0064】
さらに、本実施例におけるカラープリンタ20によれば、コントラスト補正(レベル補正)の前後における輝度差ΔYを考慮して明度補正量を補正(修正)するので、コントラスト補正に起因する明度への影響を補償することができる。したがって、コントラスト補正が実行された場合であっても、撮影者の意図に合った明度補正を実行することができる。
【0065】
また、画像ファイルGFに含まれている撮影情報PIを用いて自動的に画質を調整することができるので、フォトレタッチアプリケーションまたはプリンタドライバ上で画質調整を行うことなく、手軽にユーザの撮影意図を反映した、高品質の印刷結果を得ることができる。
・その他の実施例:
【0066】
上記実施例における画像処理では、YCbCr−RGB色変換処理の後、基準値を用いた画質調整処理を実行しているが、図10に示すように更なる画像処理を加えても良い。図10は他の実施例において付加される画像処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、YCbCr−RGB色変換処理(ステップS110)以前のステップ、基準値を用いた画質調整処理(ステップS120)以降のステップについては説明済みであるからその説明を省略する。
【0067】
CPU231は、続く色変換処理に先立って、画像データを線形化するために、RGBデータに変換された画像データに対してガンマ補正を実行する(ステップS111)。ガンマ補正において用いられるガンマの値は、ディジタルスチルカメラ固有のガンマ値であり、撮影情報PIのパラメータに基づいて取得されても良く、あるいは、撮影情報PIとは別に、画像データGDに関連付けられる画像処理情報として提供されても良い。
【0068】
CPU231は、マトリクスを用いて、RGBデータをwRGBデータに変換する色変換処理を実行する(ステップS112)。ここで、wRGB色空間は、一般的に用いられているsRGB色空間よりも、少なくともその一部において、好ましくは、sRGB色空間を包含する広い領域を備える色空間である。このような広域RGB色空間を用いることにより、YCbCrデータから変換されたRGBデータの値を失うことなく、後段の自動画質調整処理へとつなげることができる。このとき用いられるマトリクスは、RGBデータをXYZデータへ変換するマトリクス、例えば、マトリクスM、wRGBデータをXYZデータへ変換するマトリクス、例えば、マトリクスNの合成マトリクスN−1Mであり、あるいは、マトリクスMおよびマトリクスN−1である。
【0069】
CPU231は、wRGBデータへと変換された画像データに対して逆ガンマ補正を実行する(ステップS113)。この逆ガンマ補正に用いられるガンマ値はカラープリンタ20固有のガンマ値であり、例えば、ROM232に予め格納されている。かかる逆ガンマ補正を実行することによって、カラープリンタ20のガンマ特性を考慮した画像データGDを生成することができる。
【0070】
CPU231は、既述の自動画質調整処理(ステップS120)以降を順次実行する。本実施例によれば、YCbCrデータから変換されたRGBデータの値を失うことなく自動画質調整処理を実行することができるので、より適切な画質調整処理を実行することができる。
【0071】
上記実施例では、自動的に単一の基準値に基づいて明度の画質調整処理を実行する例について説明しているが、カラープリンタ20の操作パネル上に明度補正の傾向、例えば、明るめ、暗め、を選択する画質自動調整ボタンを供え、かかる画質自動調整ボタンによって選択された明度補正の傾向に応じて明度基準値Bref、明度補正量を変更するようにしても良い。
【0072】
上記実施例では、自動的に画質調整処理を実行する例について説明しているが、カラープリンタ20の操作パネル上に画質自動調整ボタンを供え、かかる画質自動調整ボタンによって選択された画質自動調整が選択されている場合にだけ、上記実施例の画質自動調整処理を実行するようにしても良い。
【0073】
上記実施例では、パーソナルコンピュータPCを介することなく、カラープリンタ20において全ての画像処理を実行し、生成された画像データGDに従って、ドットパターンが印刷媒体上に形成されるが、画像処理の全て、または、一部をコンピュータ上で実行するようにしても良い。この場合には、コンピュータのハードディスク等にインストールされている、レタッチアプリケーション、プリンタドライバといった画像データ処理アプリケーションに図6〜8を参照して説明した画像処理機能を持たせることによって実現される。ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像ファイルGFは、ケーブルを介して、あるいは、メモリカードMCを介してコンピュータに対して提供される。コンピュータ上では、ユーザの操作によってアプリケーションが起動され、画像ファイルGFの読み込み、撮影情報PIの解析、画像データGDの変換、調整が実行される。あるいは、メモリカードMCの差込を検知することによって、またあるいは、ケーブルの差込を検知することによって、アプリケーションが自動的に起動し、画像ファイルGFの読み込み、撮影情報PIの解析、画像データGDの変換、調整が自動的になされても良い。
【0074】
さらに、パーソナルコンピュータPCで実行される画像処理の全て、または、一部をディジタルスチルカメラ12において実行しても良い。この場合には、ディジタルスチルカメラ12のROM等に格納されている、レタッチアプリケーション、プリンタドライバといった画像データ処理アプリケーションに図6〜8を参照して説明した画像処理機能を持たせることによって実現される。ディジタルスチルカメラ12にて生成された印刷制御コマンドと印刷用画像データとを含む印刷用データは、ケーブルを介して、あるいは、メモリカードMCを介してプリンタ20に提供される。印刷用データを受けたプリンタ20は、印刷用画像データに従って、ドットパターンを印刷媒体上に形成して画像を出力する。なお、ディジタルスチルカメラ12は、印刷用画像データ(画像処理済み画像データ)をパーソナルコンピュータPCまたはプリンタ20に提供しても良い。かかる場合には、パーソナルコンピュータPCまたはプリンタ20において印刷用画像データに対して印刷制御コマンドが与えられる。
【0075】
また、上記実施例では、露出補正量を考慮した明度の補正に焦点を当てて画質の自動調整を説明したが、この他にも、例えば、シャドウ・コントラストポイント、コントラスト、カラーバランス、彩度、およびシャープネスといった画像データGDの特性パラメータ値に対して、撮影情報PIを反映した画質の自動調整が実行され得る。
【0076】
さらに、画質自動調整を実行する特性パラメータ値を選択できるようにしても良い。例えば、カラープリンタ20にパラメータの選択ボタン、あるいは、被写体に応じて所定のパラメータの組み合わせた撮影モードパラメータの選択ボタンを供え、これら選択ボタンによって画質自動調整を実行するパラメータを選択しても良い。また、画質自動調整がパーソナルコンピュータ上で実行される場合には、プリンタドライバまたはレタッチアプリケーションのユーザーインタフェース上にて画質自動調整を実行するパラメータが選択されても良い。
【0077】
上記実施例では、露出補正量が大きくなるにつれて明度補正量を等比級数的に小さくしているが、所定の露出補正量未満の露出補正量に対する明度補正量の変化の程度と、所定の露出補正量以上の露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせても良い。あるいは、露出補正量が大きくなるにつれて明度補正量の低減の割合を減少させても良い。かかる場合にも、露出補正量が大きくなってもハイライトやシャドー部の階調を維持することが可能となり、結果として白飛びや黒つぶれの発生を防止することができる。
【0078】
上記実施例では、共に出力装置としてカラープリンタ20を用いているが、出力装置にはCRT、LCD、プロジェクタ等の表示装置を用いることもできる。かかる場合には、出力装置としての表示装置によって、例えば、図6〜8を参照して説明した画像処理を実行する画像処理プログラム(ディスプレイドライバ)が実行される。あるいは、CRT等がコンピュータの表示装置として機能する場合には、コンピュータ側にて画像処理プログラムが実行される。ただし、最終的に出力される画像データは、CMYK色空間ではなくRGB色空間を有している。
【0079】
かかる場合には、カラープリンタ20を介した印刷結果に画像データ生成時の情報を反映できたのと同様にして、CRT等の表示装置における表示結果に画像データ生成時の撮影情報PIを反映することができる。したがって、ディジタルスチルカメラ12によって生成された画像データGDをより正確に表示させることができる。
【0080】
上記実施例では、画像ファイルGFの具体例としてExif形式のファイルを例にとって説明したが、本発明に係る画像ファイルの形式はこれに限られない。すなわち、画像データGDと、画像データGDに関連付けられた露出補正に関する情報とを含む画像ファイルであれば良い。さらに、露出補正に関する情報は、画像データの撮影情報PI、あるいは、より積極的に画像処理装置を制御するための画像処理制御情報であっても良い。なお、上記実施例において用いた図8に示す、撮影情報PIとして格納されるパラメータは例示に過ぎず、Exifの規格に従うパラメータが種々格納され得る。
【0081】
上記実施例において用いたディジタルスチルカメラ12、カラープリンタ20はあくまで例示であり、その構成は各実施例の記載内容に限定されるものではない。ディジタルスチルカメラ12にあっては、上記実施例に係る画像ファイルGFを生成できる機能を少なくとも備えていればよい。また、カラープリンタ20にあっては、少なくとも、本実施例に係る画像ファイルGFの撮影情報PIを解析し、特に明度に関してユーザの意図を反映して画質を自動調整し、画像を出力(印刷)できればよい。
【0082】
上記実施例では、画像データGDと撮影情報PIとが同一の画像ファイルGFに含まれる場合を例にとって説明したが、画像データGDと撮影情報PIとは、必ずしも同一のファイル内に格納される必要はない。すなわち、画像データGDと撮影情報PI(画像処理制御情報)とが関連付けられていれば良く、例えば、画像データGDと撮影情報PI(画像処理制御情報)とを関連付ける関連付けデータを生成し、1または複数の画像データGDと撮影情報PIとをそれぞれ独立したファイルに格納し、画像データGDを処理する際に関連付けられた撮影情報PIを参照しても良い。かかる場合には、撮影情報PIを利用する画像処理の時点では、画像データおよび撮影情報PIとが一体不可分の関係にあり、実質的に同一のファイルに格納されている場合と同様に機能するからである。さらに、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM等の光ディスクメディアに格納されている動画像ファイルも含まれる。
【0083】
以上、いくつかの実施例に基づき本発明に係る画像処理装置を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施例に係る画像処理装置を適用可能な画像処理システムの一例を示す説明図である。
【図2】本実施例に係る画像処理装置の処理対象となる画像データを生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本実施例に係る画像処理装置として機能するカラープリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図4】Exifフォーマットにしたがう画像ファイルGFの概略的な内部構造を示す説明図である。
【図5】本実施例に用いられ得る画像ファイルGFのExif IFDに格納される詳細な付属情報の一例を示す説明図である。
【図6】本実施例に係るカラープリンタ20における画像処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】本実施例に係る画像処理装置(カラープリンタ20)における基準値を用いた自動画質調整処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】従来手法による明度補正量と本実施例に係る手法による明度補正量とを対比して示す説明図である。
【図9】明度補正におけるトーンカーブの修正の一例を示す説明図である。
【図10】他の実施例において付加される画像処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理装置であって、
明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定する補正量決定ユニットと、
前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さくする補正量修正ユニットと、
前記修正された明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整する画質調整ユニットとを備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、所定の露出補正量未満の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度と、前記所定の露出補正量以上の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせる画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量の低減の割合を減少させる画像処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を等比級数的に小さくする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、前記明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除する画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置はさらに、
前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得する明度特性値取得ユニットを備え、
前記補正量決定ユニットは、前記明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減させるように前記明度補正量を決定する画像処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の画像処理装置はさらに、
前記画像データに対する明度補正の傾向を入力するための入力ユニットを備え、
前記補正量決定ユニットは、前記入力された明度補正の傾向に基づいて、前記画像データの明度補正量を決定する画像処理装置。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載の画像処理装置はさらに、
前記明度調整された画像データを用いて画像を出力する画像出力ユニットを備える画像処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、コントラスト補正前後の輝度差を考慮して前記明度補正量を修正し、
前記画像データと前記露出補正量とは、同一のファイル内に格納されている画像処理装置。
【請求項10】
画像データと、その画像データに対して実行された露出補正の情報とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得する明度特性値取得ユニットと、
明度に関する画質調整の基準となる明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減する画質調整ユニットと、
前記露出補正の情報に基づいて、前記画像データに対して実行された露出補正の度合いが大きくなるにつれて前記偏差の低減の程度を小さくする偏差低減量調整ユニットとを備える画像処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、所定の露出補正量未満の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度と、前記所定の露出補正量以上の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせる画像処理装置。
【請求項12】
請求項10に記載の画像処理装置において、
前記補正量修正ユニットは、前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量の低減の割合を減少させる画像処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理装置において、
前記偏差の低減の程度は、前記偏差低減量調整ユニットによって、等比級数的に小さくされる画像処理装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記画像データと前記露出補正の情報とは、同一のファイル内に格納されている画像処理装置。
【請求項15】
画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いた画像データに対する画像処理方法であって、
明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定し、
前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さく修正し、
前記修正した明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整する画像処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記明度補正量の修正においては、所定の露出補正量未満の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度と、前記所定の露出補正量以上の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせる画像処理方法。
【請求項17】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記明度補正量は、前記露出補正量が大きくなるにつれて低減の割合が減少される画像処理方法。
【請求項18】
請求項17に記載の画像処理方法において、
前記明度補正量は、等比級数的に小さく修正される、画像処理方法。
【請求項19】
請求項15に記載の画像処理方法はさらに、
前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得し、
前記明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減するように前記明度補正量を決定し、
前記決定した明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除する画像処理方法。
【請求項20】
請求項15に記載の画像処理方法はさらに、
前記画像データに対する明度補正の傾向を受け取り、
前記受け取った明度補正の傾向に基づいて、前記画像データの明度補正量を決定し、
前記決定した明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除する画像処理方法。
【請求項21】
画像データと、その画像データに対する露出補正量とを用いて画像データに対する画像処理を実行する画像処理プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であって、前記画像処理プログラムは、
明度に関する画質調整の基準となる明度基準値を用いて前記画像データの明度補正量を決定する機能と、
前記露出補正量が大きくなるにつれて前記明度補正量を小さく補正する機能と、
前記修正した明度補正量を適用して前記画像データの明度を調整する機能とをコンピュータによって実行させるコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体において、
前記明度補正量を補正する機能は、所定の露出補正量未満の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度と、前記所定の露出補正量以上の前記露出補正量に対する前記明度補正量の変化の程度とを異ならせる機能であるコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項23】
請求項21に記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体において、
前記明度補正量は、前記露出補正量が大きくなるにつれて低減の割合が減少されるコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項24】
請求項23に記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体において、
前記明度補正量は、等比級数的に小さくされる、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項25】
請求項21に記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体はさらに、
前記画像データを解析して、前記画像データの明度に関する特性を示す明度特性値を取得する機能をコンピュータによって実現させ、
前記補正量を決定する機能は、前記明度基準値と前記取得した明度特性値との偏差を低減させるように前記明度補正量を決定し、
前記明度補正量を補正する機能は、前記決定した明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除するコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項26】
請求項21に記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体はさらに、
前記画像データに対する明度補正の傾向を入力するための機能をコンピュータによって実現させ、
前記補正量を決定する機能は、前記入力された明度補正の傾向に基づいて、前記画像データの明度補正量を決定し、
前記明度補正量を補正する機能は、前記決定した明度補正量を、前記露出補正量をパラメータとする指数関数によって除するコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項27】
請求項21ないし26のいずれかに記載のコンピュータが読み取り可能な記録媒体はさらに、
明度を調整した前記画像データを出力装置に対して出力する機能をコンピュータによって実現させるコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項28】
撮影時における撮影条件を示す撮影情報が関連付けられた画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置であって、
取得した画像データを解析して、前記画像データの画質の特性を示す画質特性値を取得する画質特性値取得ユニットと、
前記取得した画像データに関連付けられている前記撮影情報から、撮影意図を示す撮影情報を検索する検索ユニットと、
予め定められた画質調整の基準となる画質調整基準値と前記取得した画質特性値との偏差を低減して前記画像データの画質を調整する画質調整ユニットと、
前記撮影意図を示す撮影情報を検出することができた場合には、前記検索した撮影意図を示す撮影情報を用いて、前記偏差の低減の程度を調整する偏差低減量調整ユニットとを備える画像処理装置。
【請求項29】
請求項28に記載の画像処理装置において、
前記撮影意図を示す撮影情報を検出することができなかった場合には、前記偏差の低減の程度は前記撮影意図を示す撮影情報によっては調整されない画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−295542(P2007−295542A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69716(P2007−69716)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願2004−521201(P2004−521201)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】