説明

画像信号処理装置

【課題】 撮像した画像の黒レベルを適切に調整する。
【解決手段】 画像信号処理装置はデジタル信号処理回路12を有する。デジタル信号処理回路12を撮像素子30とシステムコントローラ13に接続する。撮像素子30は撮像画素信号、黒色信号、およびダミー信号を生成する。システムコントローラ13は露光時間を設定する。デジタル信号処理回路12は、画素信号、黒色信号、およびダミー信号を受け取る。デジタル信号処理回路12は露光時間を認識する。デジタル信号処理回路12は渡航時間と所定の切替時間を比較する。露光時間が切替時間より長いときは黒色信号を用いて撮像画素信号の黒レベル調整を行う。露光時間が切替時間より短いときはダミー信号を用いて撮像画素信号の黒レベル調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段において生成した画像信号を適切な基準信号を用いて黒レベルの調整を行う画像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体像を忠実に再現するために、CCDやCMOSなどの撮像素子によって生成される画像信号の黒レベルを調整することが知られている。すなわち、受光により生成した画素信号から、黒色を撮影したときの画素信号に相当する画素信号の差分をとることにより黒レベルの調整が行われる。
【0003】
黒色を撮影したときの画素信号に相当する画素信号を生成する方法は従来公知である。例えば、遮光したフォトダイオードによって黒に相当する画素信号が生成可能である。しかし、完全な遮光は難しいため光が光電変換手段に漏れることがあった。
【0004】
また、黒色を撮影したときの画素信号に相当する画素信号を電気的に生成することも提案されている。例えば、CCD撮像素子の転送CCDに空送りの転送パルスを流し、光電変換手段で生成した信号電荷を有さない状態での画素信号がダミー信号として生成される(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、このように電気的に生成したダミー信号には、暗電流などのようにフォトダイオードにおいて発生するノイズが含まれないため、このようなノイズが多く発生する場合に、適切な黒レベル調整が出来なかった。
【特許文献1】特開平6−53452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明では、画像信号の黒レベルを適切に調整する画像信号処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像信号処理装置は、被写体を撮像して画像信号を生成する撮像手段への露光時間を認識する第1の認識手段と、露光時間が予め定められた切替時間を超えている場合は撮像手段に設けられる受光面が遮光されたブラック画素からの信号出力に基づいて生成される黒色信号を画像信号の黒色の基準とし露光時間が切替時間を下回る場合は露光時間が実質的にゼロであるときの画像信号に相当するダミー信号を画像信号の黒色の基準として画像信号の黒レベルを調整する調整手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
なお、撮像手段に撮像される被写体画像のISO感度設定を認識する第2の認識手段を備え、調整手段はISO感度設定が高感度になるほど切替時間を短く設定することが好ましい。または、画像信号を増幅させるためのゲインを認識する第2の認識手段を備え、調整手段はゲインが大きくなるほど切替時間を短く設定することが好ましい。
【0009】
なお、撮像手段は、入射光の受光量に応じた電荷を生成する複数の第1の光電変換部と、第1の光電変換部と同一の特性を有しブラック画素を形成するする第2の光電変換部と、電荷に基づいて画素信号を生成する第1の信号生成部とを有し、画像信号は複数の第1の光電変換手段のそれぞれが生成する電荷に基づいて生成される撮像画素信号によって形成されることが好ましい。
【0010】
また、撮像手段は、第1の光電変換部または第2の光電変換部が生成する電荷を第1の信号生成部に送る電荷転送部を備え、ダミー信号は電荷転送部の空送り時に信号生成部により生成されることが好ましい。または、撮像手段は、第1の信号生成部が受取る電荷をリセットさせ第1の信号生成部の入力端の電気信号を駆動電源に基づく第1の基準信号に変化させる第1のリセット部と、第1のリセット手段と同一の特性であり第1の基準信号と実質的に同一の第2の基準信号を出力端から出力する第2のリセット部と、第1の信号生成部と同一の特性であり第2のリセット手段から出力される第2の基準信号に基づいてダミー信号を生成する第2の信号生成部とを備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明の撮像装置は、入射光の受光量に応じた電荷を生成する複数の第1の光電変換部と、受光面が遮光される第1の光電変換手段と同一の特性を有する第2の光電変換部と、電荷に基づいて画素信号を生成する第1の信号生成部とを備え、入射光を受光させる時間である露光時間が実質的にゼロであるときの画素信号に相当するダミー信号を生成する撮像手段と、露光時間を認識する第1の認識手段と、露光時間が予め定められた切替時間を超えている場合は第2の光電変換手段が生成する信号電荷に基づいて生成される画素信号である黒色信号を第1の光電変換手段が生成する信号電荷に基づいて生成される画素信号である撮像画素信号の黒色の基準とし、露光時間が切替時間を下回る場合はダミー信号を撮像画素信号の黒色の基準として撮像画素信号の黒レベルを調整する信号処理手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像素子によって撮像される画像の黒レベルを適切に調整することが可能で、画質の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した画像信号処理装置を有するデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
デジタルカメラ10は、撮影光学系11、例えばCCDなどの撮像素子30、デジタル信号処理回路12、システムコントローラ13、モニタ14等によって構成される。
【0015】
撮影光学系11と撮像素子30とは、光学的に接続される。被写体の光学像が撮影光学系11を透過して撮像素子30の受光面に入射される。撮像素子30において、被写体像に相当する画像信号が生成される。
【0016】
撮像素子30は、A/Dコンバータ15を介してデジタル信号処理回路12に接続される。撮像素子30において生成した画像信号は、A/Dコンバータ15によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0017】
デジタル信号に変換された画像信号はデジタル信号処理回路12に送られ、信号処理用のメモリであるDRAM16に格納される。DRAM16に格納された画像信号に対して、デジタル信号処理回路12によって、後述する黒レベル調整処理を含む所定の信号処理が行われる。
【0018】
デジタル信号処理回路12は、システムコントローラ13を介してモニタ14に接続される。所定の信号処理を施した画像信号はモニタ14に送られ、モニタ14には画像信号に相当する画像が表示される。
【0019】
また、システムコントローラ13にはメモリコネクタ18が接続される。メモリコネクタ18には着脱式メモリ(図示せず)が着脱自在であり、所定の信号処理を施した画像信号は着脱式メモリに格納可能である。
【0020】
システムコントローラ13は、レリーズボタン(図示せず)や電源スイッチ(図示せず)、モード切替スイッチ(図示せず)、シャッタ調整ダイヤル(図示せず)、ISO感度設定ダイヤル(図示せず)などによって構成される操作部19に接続される。操作部19への入力に基づいて、システムコントローラ13によって、デジタルカメラ10の所定の動作が実行される。
【0021】
たとえば、モード切替スイッチの入力により自動露出モードが選択されると、システムコントローラ13によりシャッタおよび絞り(図示せず)が制御される。すなわち、測光センサ20により検出される周囲光量に基づいて、シャッタスピードおよび絞りの開口度が算出される。さらに算出されたシャッタスピードに基づいて電子シャッタまたはシャッタ(図示せず)が駆動される。また算出された開口度に基づいて絞りが駆動される。
【0022】
なお、シャッタ調整ダイヤルへの入力により、シャッタスピードの手動設定も可能である。シャッタ調整ダイヤルへのシャッタスピードの入力に基づいて、システムコントローラ13にシャッタスピードが設定され、電子シャッタまたはシャッタが駆動される。
【0023】
なお、システムコントローラ13によって、デジタルカメラ10の全体の動作が制御される。例えば、撮像素子30を駆動する撮像素子駆動回路21もシステムコントローラ13によって制御される。また、システムコントローラ13が行なうデジタルカメラの制御のために必要なデータがROM17に格納される。
【0024】
次に、撮像素子30の構造および撮像素子30から出力される信号について図2を用いて説明する。図2は撮像素子30の概略構成を示す回路図である。撮像素子30は、画素31、垂直CCD32、水平CCD33(電荷転送部)、フローティングディフュージョン(FD)34、リセットトランジスタ35、増幅トランジスタ36、相関二重サンプリング・サンプルホールド(CDS/SH)回路37、および出力部38によって構成される。なお、本実施形態において画素31は、光電変換を行なうフォトダイオード(PD)である。
【0025】
撮像素子30の受光面は、撮像領域IAと黒色領域BAとに分けられる。撮像領域IAまたは黒色領域BAには、複数の画素31がマトリック状に配置される。撮像領域IA内に配置された画素31では、入射光の受光量に応じた信号電荷が生成され、蓄積される。黒色領域BA内に配置された画素31(ブラック画素)は遮光されており、暗電流などのノイズとなる電荷が生成され、蓄積される。
【0026】
垂直方向(図2における上下方向)に並ぶ複数の画素31は垂直CCD32に接続される。また、垂直CCD32の一端は、水平CCD33に接続される。水平CCD33の出力端は、FD34に接続される。
【0027】
各画素31において生成される信号電荷は、垂直CCD32によって水平CCD33に転送される。水平CCD33に転送された信号電荷は、FD34に転送される。垂直CCD32および水平CCD33に信号電荷を転送させるための、垂直転送パルスおよび水平転送パルスは、撮像素子駆動回路21から、それぞれ垂直CCD32および水平CCD33に入力される。
【0028】
FD34はキャパシタであり、転送される信号電荷が蓄積される。また、蓄積した信号電荷に応じてFD34の電位が変わる。また、FD34はリセットトランジスタ35に接続される。
【0029】
リセットトランジスタ35は、リセット信号に応じてFD34に蓄積された信号電荷を所定の電圧の電圧源Vddに掃出させる。信号電荷を掃出させることにより、FD34をリセットさせ、また、FD34の電位をVddの電位からリセットトランジスタの閾値電圧分を引いた電位にリセットさせる。
【0030】
また、FD34は増幅トランジスタ36の副電極に接続される。増幅トランジスタ36の主電極は、CDS/SH回路37を介して出力部38に接続される。増幅トランジスタ36の主電極からは、FD34の電位に応じた信号電位が画素信号として出力される。すなわち、FD34と増幅トランジスタ36とによって、信号電荷から画素信号が生成される。
【0031】
CDS/SH回路37によって、画素信号の相関二重サンプリングが行なわれる。すなわち、FD34をリセットしたときの信号電位と、信号電荷をFD34に蓄積したときの信号電位との差分が撮像素子30から出力される画素信号としてサンプルホールドされる。相関二重サンプリングされた画素信号は、出力部38を介して撮像素子30の外部に出力される。
【0032】
なお、撮像領域IA内の複数の画素31の信号電荷に基づいて生成した複数の画素信号が、被写体の光学像を受光して生成した撮像画素信号として出力される。また、黒色領域BA内の画素31の信号電荷に基づいて生成した黒色信号が、画像信号の黒レベルを調整するための画素信号として出力される。
【0033】
なお、水平CCD33における信号電荷の転送に必要なパルス以上の水平転送パルスが、水平CCD33に入力される。この余分なパルスにより、空送りが発生し、空送りのときの水平CCD33の信号出力に基づく画素信号がダミー信号として生成される。
【0034】
すなわち、この余分なパルスによって水平CCD33に形成される電位の井戸には、画素31で生成された信号電荷は転送されない。この電位の井戸の電荷がFD34によって検出される。FD34、リセットトランジスタ35、および増幅トランジスタ36によって、この電位の井戸から検出した電荷に基づいてダミー信号が生成される。
【0035】
なお、リセットトランジスタ35をリセットさせるためのリセット信号およびCDS/SH回路37に画素信号を相関二重サンプリングさせるためのSH信号は撮像素子駆動回路21から所定のタイミングで出力される。
【0036】
次に、本実施形態で行なわれる黒レベル調整処理について説明する。撮像素子30から出力される撮像画素信号、黒色信号、およびダミー信号はA/Dコンバータ15でデジタル信号に変換され、デジタル信号処理回路12に入力される。
【0037】
撮像画素信号の黒レベル調整は、デジタル信号処理回路12が撮像画素信号と黒色信号または撮像画素信号とダミー信号との差分に相当する信号を生成することにより、実行される。なお、黒色信号とダミー信号のいずれを用いて撮像画素信号の黒レベル調整を行うかについての判別信号が、システムコントローラ13からデジタル信号処理回路12に入力される。
【0038】
判別信号は、システムコントローラ13において生成される。判別信号は、撮像画像信号および黒色信号を生成したときのシャッタスピード、すなわち撮像素子30に被写体の光学像を露光させた露光時間に基づいて生成される。また、判別信号は、黒色信号とダミー信号のいずれかを選択するために定められる切替時間に基づいて生成される。
【0039】
前述のように露光時間は、システムコントローラ13において算出または設定される。また、切替時間はROM17に記憶されており、ROM17からシステムコントローラ13に読込まれる。
【0040】
露光時間が切替時間より長いときは、黒色信号を選択させる判別信号が生成される。一方、露光時間が切替時間より短いときは、ダミー信号を選択させる判別信号が生成される。
【0041】
なお、複数の異なる切替時間がROM17には記憶されている。それぞれの切替時間は、設定される被写体画像のISO感度に対応している。ISO感度設定ダイヤルの入力により設定されるISO感度に応じて、対応する切替時間がシステムコントローラ13に選択され、読込まれる。
【0042】
なお、ISO感度が高感度であるほど切替時間は短くなるように設定される。逆にISO感度が低感度であるほど切替時間は長くなるように設定される。
【0043】
図3に、本実施形態におけるISO感度と対応する切替時間との関係を示す。本実施形態では、ISO感度とは反比例の関係にあるように切替時間が設定される。すなわち、ISO感度が50、100、200、400と増加するにつれて、切替時間は2、1、0.5、0.25に減少するように設定される。
【0044】
黒色信号またはダミー信号のいずれかに基づいて、1フレームを構成するすべての撮像画素信号の黒レベル調整が行われる。なお、黒レベル調整の行われた撮像画素信号は、前述のISO感度に応じてゲイン調整処理が行われ、その他の所定の信号処理が行われる
【0045】
次に、システムコントローラ13およびデジタル信号処理回路12によって行われる黒レベル調整処理を含む画像信号の処理について、図4を用いて説明する。図4は、1フレームの画像信号の生成および信号処理の動作を示すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS100で、レリーズスイッチがON入力されているかの判断を行う。OFFの場合は、ONになるまでステップS100を繰返す。ONである場合はステップS101に進む。
【0047】
ステップS101では、ISO感度の設定を確認する。ISO感度設定ダイヤルによって設定されたISO感度を確認し、確認したISO感度に応じた切替時間を黒レベル調整のために選択する。また、確認したISO感度に応じたゲインを増幅処理のために選択する。
【0048】
次のステップS102において、測光センサ20によって周囲光量を測光し、測光した周囲光量に基づいて絞りの開口度およびシャッタスピードを求める。次にステップS103に進み、ステップS102で求めた絞りの開口度に応じて絞りを駆動する。
【0049】
次にステップS104に進み、撮像素子30によって被写体像を撮像させる。なお、ステップS102において求めたシャッタスピードとなるようにシャッタまたは電子シャッタを駆動する。またはシャッタスピードが入力されている場合は、入力されたシャッタスピードとなるようにシャッタまたは電子シャッタを駆動する。
【0050】
撮像動作を実行するとステップS105に進み、撮像素子30から出力される撮像画素信号、黒色信号、およびダミー信号をDRAM16に格納する。格納後ステップS106に進む。
【0051】
ステップS106において、システムコントローラ13からデジタル信号処理回路12に露光時間が読込まれ、ステップS101において選択された切替時間と、露光時間との比較が行なわれる。露光時間が切替時間より長い場合は、ステップS107に進む。
【0052】
ステップS107では、DRAM16に格納された撮像画素信号に対して黒色信号を用いて黒レベル調整を行う。すなわち、撮像画素信号と黒色信号との差分を生成し、黒レベル調整を施した撮像画素信号としてDRAM16に格納する。
【0053】
一方、ステップS106において、露光時間が切替時間より短い場合は、ステップ108に進み、ダミー信号を用いて黒レベル調整を行う。すなわち、撮像画素信号とダミー信号との差分を生成し、黒レベル調整を施した撮像画素信号としてDRAM16に格納する。
【0054】
ステップS107またはステップS108の終了後、ステップS109に進む。ステップS109では、ステップS101において選択されたゲインによって撮像画素信号の増幅処理を行う。
【0055】
増幅処理の終了後、ステップS110において、その他の所定の信号処理を施して、ステップS111に進む。ステップS111では、信号処理を施した撮像画素信号を画像信号として、着脱式メモリまたは内蔵メモリ(図示せず)に格納する。着脱式メモリまたは内蔵メモリに画像信号を格納後に本処理は終了する。
【0056】
以上のように、本実施形態の画像信号処理装置によれば、画像信号の黒レベル調整が最適に行われるため、撮像した画像の画質が向上する。
【0057】
露光時間が長い場合は暗電流が大きくなるので、露光時間が長い場合、暗電流も含む黒色信号を用いることによって画像信号の黒レベルは最適に調整される。なお、露光時間が長いときは被写体の反射光は暗いことが一般的であるため、黒色領域の画素31に光が漏れる問題は生じにくい。一方、露光時間が短い場合は、撮像画素信号における暗電流の影響は小さいので、光の漏れ込みの影響を受けないダミー信号を用いることによって画像信号の黒レベルは最適に調整される。
【0058】
なお、設定するISO感度に応じて切替時間を設定することにより、画像信号の黒レベルは最適に調整される。ISO感度が高感度である場合は暗電流の影響が大きくなるので、切替時間が一定であると暗電流の影響が無視できない場合であってもダミー信号が用いられることがある。そこで、高感度になるほど切替時間を短くし、低感度になるほど切替時間を長くすることによって、黒レベル調整のための黒色信号とダミー信号との選択が適切に行なわれる。
【0059】
なお、本実施形態においてISO感度の設定に応じて切替時間を変更させる構成であるが、同じ露光時間における暗電流の影響を増大させる因子に対応させて切替時間を変更させる構成であってもよい。
【0060】
例えば、画像信号のゲインを直接、調整できるカメラである場合は、入力されて認識されるゲインに応じて切替時間を変更させればよい。ゲインが大きくなるほど暗電流の影響が大きくなるので、切替時間を短く変更させることにより本実施形態と同じ効果が得られる。
【0061】
なお、本実施形態の画像信号処理装置は、CCDから出力される信号の処理を行っているが、撮像画素信号、黒色信号、および露光時間が実質的にゼロであるときの画素信号に相当するダミー信号を生成するいかなる撮像素子に対して用いることが可能である。
【0062】
例えば、以下に説明するCMOS撮像素子に対しても用いることが可能である。図5を用いて、撮像画素信号、黒色信号、およびダミー信号を生成可能なXYアドレス方式であるCMOS撮像素子の構造について説明する。図5は、撮像画素信号、黒色信号、ダミー信号の生成が可能なCMOS撮像素子30’の概略構成を示す回路図である。
【0063】
CMOS撮像素子30’は、撮像部39’、CDS/SH回路37’、列選択トランジスタ40’、および出力部38’によって構成される。撮像部39’において撮像画素信号、黒色信号、およびダミー信号が生成される。
【0064】
撮像画素信号および黒色信号がCDS/SH回路37’によって相関二重サンプリングされる。列選択トランジスタ40’により選択されて、ダミー信号または相関二重サンプリングされた撮像画素信号あるいは黒色信号が出力部38’を介して出力される。
【0065】
撮像部39’の受光面には、撮像領域IA’、黒色領域BA’、ダミー領域DA’が設けられる。撮像領域IA’、黒色領域BA’、およびダミー領域DA’にはそれぞれ撮像画素31’i、黒色画素31’b、ダミー画素31’dが設けられる。
【0066】
撮像画素31’iの構成について図6を用いて説明する。図6は、撮像画素31’iの回路図である。撮像画素31’iは、フォトダイオード(PD)41’、フローティングディフュージョン(FD)34’、転送トランジスタ42’、リセットトランジスタ35’(第1のリセット部)、増幅トランジスタ36’、および行選択トランジスタ43’によって構成される。
【0067】
PD41’では受光量に応じた信号電荷が生成される。また、PD41’には、生成された信号電荷が蓄積される。PD41’に蓄積された信号電荷は、転送トランジスタ42’によって、FD34’に転送される。
【0068】
FD34’は、PD41’から転送される信号電荷を受取ることが可能なキャパシタであり、受取った信号電荷に応じた電位に変わる。また、FD34’は、リセットトランジスタ35’に接続される。
【0069】
リセットトランジスタ35’は、リセット信号ΦRに応じてFD34’に蓄積された信号電荷を所定の電圧の電圧源Vddに掃出させる。信号電荷を掃出させることにより、FD34’をリセットさせ、また、FD34’の電位をVddの電位に応じた電位にリセットさせる。
【0070】
また、FD34’は増幅トランジスタ36’の副電極に接続される。増幅トランジスタ36’の主電極は、行選択トランジスタ43’を介してCDS/SH回路37’に接続される。増幅トランジスタ36’の主電極からは、FD34’の電位に応じた信号電位が画素信号として出力可能になる。行選択トランジスタ43’により画素信号をCDS/SH回路37’に出力するタイミングが制御される。
【0071】
CDS/SH回路37’によって、画素信号の相関二重サンプリングが行なわれる。すなわち、FD34’をリセットしたときの信号電位と信号電荷をFD34’に蓄積したときの信号電位との差分が撮像素子30’から出力される画素信号としてサンプルホールドされる。
【0072】
CDS/SH回路37’の出力端は列選択トランジスタ40’および水平出力線44’を介して出力部38’に接続される。CDS/SH回路37’によってサンプルホールドされた画素信号を出力部38’に出力するタイミングは、列選択トランジスタ40’によって制御される。
【0073】
なお、転送トランジスタ42’に信号電荷の転送を行なわせるための転送信号ΦT、リセットトランジスタ35’にFD34’のリセットを行なわせるリセット信号ΦR、行選択トランジスタ43’に画素信号を出力可能にする行選択信号ΦSC、CDS/SH回路37’に画素信号の相関二重サンプリングさせるためのSH信号ΦSH、および列選択トランジスタ40’に画素信号を出力させるための列選択信号ΦSRは、撮像素子駆動回路21により所定のタイミングで出力される。
【0074】
黒色画素31’bの構成は、PD41’が遮光されている以外の構成および画素信号の生成のための動作は撮像画素の構成と同じである。
【0075】
次に、ダミー画素31’dの構成について図7を用いて説明する。図7は、ダミー画素31’dの回路図である。ダミー画素31’dは、FD34’、リセットトランジスタ35’(第2のリセット部)、増幅トランジスタ36’、及び行選択トランジスタ43’によって構成される。
【0076】
増幅トランジスタ36’の主電極は、電源線Vddとダミー画素出力線45’とに接続される。増幅トランジスタ36’とダミー画素出力線45’との間が、行選択トランジスタ43’と定電流源Issとを介して接地される。リセットトランジスタ35’の主電極は、電源線VddとFD34’に接続され、FD34’は増幅トランジスタ36’の副電極に接続される。
【0077】
リセットトランジスタ35’の副電極と行選択トランジスタ43’の副電極とが、電源線Vddに接続される。すなわち、ダミー画素31’dは、PDと転送トランジスタが省かれ、リセットトランジスタ35’の副電極と行選択トランジスタ43’の副電極とが電源線Vddに接続される点で撮像画素31’iと異なっている。
【0078】
ダミー画素出力線45’は、列選択トランジスタ40’および水平出力線44’を介して出力部38’に接続される。ダミー画素31’dから出力されるダミー信号を出力部38’に出力するタイミングは、列選択トランジスタ40’によって制御される。
【0079】
なお、撮像部39’の製造プロセスにおいて撮像画素31’i、黒色画素31’b、ダミー画素31’dは同時に形成される。ダミー画素31’dを構成するFD34’、リセットトランジスタ35’、増幅トランジスタ36’、及び行選択トランジスタ43’の特性は、撮像画素31’i或いは黒色画素31’bを構成するFD34’、リセットトランジスタ35’、増幅トランジスタ36’、及び行選択トランジスタ43’の特性と同じである。
【0080】
以上のようなダミー画素31’dの構成により、ダミー画素出力線45’の電位は、電源線Vddおよびリセットトランジスタ35’の特性に応じた電位(第2の基準信号)となる。この電位は、撮像画素31’iまたは黒色画素31’bにおいて、FD34’をリセットさせたときの信号電位(第1の基準信号)と略等しく、Vddの電位からリセットトランジスタ35’の閾値電圧分を引いた電位である。つまり、ダミー画素出力線45’の電位は、露光時間がゼロであるときの画素信号の信号電位と同じである。
【0081】
以上のように、ダミー画素により露光時間が実質的にゼロであるときの画素信号に相当するダミー信号を生成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態を適用した画像信号処理装置を有するデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】撮像素子の概略構成を示す回路図である。
【図3】ISO感度と対応付けられた切替時間との関係を示す図である。
【図4】1フレームの画像信号の生成および信号処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】CMOS撮像素子の概略構成を示す回路図である。
【図6】CMOS撮像素子における撮像画素の回路図である。
【図7】CMOS撮像素子におけるダミー画素の回路図である。
【符号の説明】
【0083】
10 デジタルカメラ
12 デジタル信号処理回路
13 システムコントローラ
15 A/Dコンバータ
16 DRAM
17 ROM
19 操作部
30、30’ 撮像素子
31’i 撮像画素
31’b 黒色画素
31’d ダミー画素
33 水平CCD
34、34’ フローティングディフュージョン(FD)
35、35’ リセットトランジスタ
36、36’ 増幅トランジスタ
37、37’ 相関二重サンプリング・サンプルホールド(CDS/SH)回路
38、38’ 出力部
41’ フォトダイオード(PD)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像信号を生成する撮像手段への露光時間を認識する第1の認識手段と、
前記露光時間が予め定められた切替時間を超えている場合は、前記撮像手段に設けられる受光面が遮光されたブラック画素からの信号出力に基づいて生成される黒色信号を前記画像信号の黒色の基準とし、前記露光時間が前記切替時間を下回る場合は、前記露光時間が実質的にゼロであるときの前記画像信号に相当するダミー信号を前記画像信号の黒色の基準として前記画像信号の黒レベルを調整する調整手段とを備える
ことを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
前記撮像手段に撮像される被写体画像のISO感度設定を認識する第2の認識手段を備え、前記調整手段は前記ISO感度設定が高感度になるほど前記切替時間を短く設定することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項3】
前記画像信号を増幅させるためのゲインを認識する第2の認識手段を備え、前記調整手段は前記ゲインが大きくなるほど前記切替時間を短く設定することを特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、入射光の受光量に応じた電荷を生成する複数の第1の光電変換部と、前記第1の光電変換部と同一の特性を有し、前記ブラック画素を形成するする第2の光電変換部と、前記電荷に基づいて画素信号を生成する第1の信号生成部とを有し、
前記画像信号は、複数の前記第1の光電変換手段のそれぞれが生成する電荷に基づいて生成される撮像画素信号によって形成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像信号処理装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記第1の光電変換部または前記第2の光電変換部が生成する電荷を前記第1の信号生成部に送る電荷転送部を備え、前記ダミー信号は前記電荷転送部の空送り時に前記信号生成部により生成されることを特徴とする請求項4に記載の画像信号処理装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、
前記第1の信号生成部が受取る電荷をリセットさせ、前記第1の信号生成部の入力端の電気信号を駆動電源に基づく第1の基準信号に変化させる第1のリセット部と、
前記第1のリセット手段と同一の特性であり、前記第1の基準信号と実質的に同一の第2の基準信号を出力端から出力する第2のリセット部と、
前記第1の信号生成部と同一の特性であり、前記第2のリセット手段から出力される前記第2の基準信号に基づいて前記ダミー信号を生成する第2の信号生成部とを備える
ことを特徴とする請求項4に記載の画像信号処理装置。
【請求項7】
入射光の受光量に応じた電荷を生成する複数の第1の光電変換部と、受光面が遮光される前記第1の光電変換手段と同一の特性を有する第2の光電変換部と、前記電荷に基づいて画素信号を生成する第1の信号生成部とを備え、前記入射光を受光させる時間である露光時間が実質的にゼロであるときの前記画素信号に相当するダミー信号を生成する撮像手段と、
前記露光時間を認識する第1の認識手段と、
前記露光時間が予め定められた切替時間を超えている場合は、前記第2の光電変換手段が生成する前記信号電荷に基づいて生成される前記画素信号である黒色信号を、前記第1の光電変換手段が生成する前記信号電荷に基づいて生成される前記画素信号である撮像画素信号の黒色の基準とし、前記露光時間が前記切替時間を下回る場合は前記ダミー信号を前記撮像画素信号の黒色の基準として前記撮像画素信号の黒レベルを調整する信号処理手段とを備える
ことを特徴とする撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−352758(P2006−352758A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179257(P2005−179257)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】