説明

画像信号出力装置及び方法

【課題】 色空間規格が異なる複数の画像信号が混在する場合、モニタ側の色域の設定が切り替わることによる映像の色味の変化やトランジェントによる劣化等を防ぐ。
【解決手段】 第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とが時間的に切り替えられてビデオ・グラフィック・プロセッサ12に供給され、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12は、第1の色空間規格の画像信号に対して色域を第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換してHDMI Tx(トランスミッタ)14に送り、HDMI Tx14は、擬似広色域信号及び第2の色空間規格の画像信号と、第2の色空間規格に固定された色空間情報とを伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色空間規格が異なる複数の画像信号(映像信号)を処理して出力する画像信号出力装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、ディスプレイやHDTV(High Definition TeleVision)の放送では、sRGB(IEC(International Electrotechnical Commission)61966−2−1)やITU−R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector)BT.709で規格化された色空間が広く使われているが、近年、広色域パネルの出現により、受像機側でsRGBを超える広色域の色表現が可能となっている。
【0003】
すなわち、従来のCRT(陰極線管)を用いたディスプレイでは、例えばsRGBでカバーする色空間の内側にある色しか表示できず、自然界に存在する彩度の高い色は、ディスプレイを介して正しく見ることができなかった。しかしながら最近のディスプレイ技術によって、今までより広色域なディスプレイが出現してきており、代表的な広色域対応のディスプレイとしては、LED(発行ダイオード)のバックライトを使用した液晶テレビジョン受像機等が知られている。
【0004】
このような広色域ディスプレイに適した映像信号(画像信号)の規格として、今までの信号と互換性を保ちつつ広色域化した映像信号仕様が検討され、xvYCCが規格化された。このxvYCCは、国際電気標準会議(IEC)が国際標準(IEC 61966−2−4)として発行した規格であり、HDTV(High Definition TeleVision)で利用するITU−R BT.709の色域(sRGBと同等)との互換性を確保しながら、色空間を広げたものである。そして、このxvYCCによれば、現行の動画コンテンツの色空間規格「ITU−R BT.709」(静止画ではsRGBに相当)では表現できない色を表現することができる。
【0005】
このxvYCCのように広い色空間を用いた伝送の場合は、送り手と受け手の色空間は異なってくる場合があるので、送り手と受け手でxvYCC信号が伝送されていることを認識し正しい表示を行うことが必要になる。このために、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)を使って、映像信号とともに色空間情報を、ソース機器から受信することも可能となっており、HDMIバージョン1.3から、メタデータとxvYCC色空間の定義が追加された。
【0006】
すなわち、HDMI規格の属性データとしてのAVI(Auxiliary Video Information)InfoFrameには、今までは、SMPTE 170M/ITU601若しくは、ITU709の色空間しか定義されていなかったため、xvYCCなど新たな色空間用にフィールドが追加された。HDMIバージョン1.3に対応した機器間で、xvYCC信号を伝送する場合、これらの規格に対応することにより、受け手と送り手で正しい色域の表示(Gamut Mapping)が実現可能である。
【0007】
従来技術として、特許文献1には、色域が拡張された標準色空間を利用して所望の色再現を得ることを可能にする技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−180477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような広色域の映像信号の規格xvYCCで規定されている広色域信号を上記HDMI上に伝送する場合、接続されるディスプレイ(受像機等の表示装置)がxvYCCに対応している場合は、HDMIのAVI InfoFrameに伝送する信号の色域識別フラグとメタデータを書くことがフォーマットで定められている。xvYCC対応ディスプレイは、この信号を判別して、自動的に表示面での色域設定を行うことにより最適な色再現が可能になる。すなわち、従来の色域の信号と広色域の信号が切り替わった場合、ディスプレイ側あるいはモニタ側では、上記AVI InfoFrameの情報を基に、色域の設定を切り替えることになるが、実際の信号の変化点とAVI InfoFrameの制御信号の切り替わり点を合わせることは非常に困難である。例え送り手側で変化点を合わせても受け手側でタイミングがずれることがあり、またその逆も想定される。実際の信号とモニタ側の色域の設定タイミングが異なると、そのトランジェントにより、一瞬望ましくない色の映像が表示されてしまうという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、色空間規格が異なる複数の画像信号(映像信号)が混在する場合、モニタ側の色域の設定が切り替わることによる映像の色味の変化やトランジェントによる劣化等を防ぐことができるような画像信号出力装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明は、第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを処理して出力する画像信号出力装置であって、上記第1の色空間規格の画像信号に対して色域を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換する色域変換処理手段と、上記色域変換処理手段からの擬似広色域信号を含む画像信号と色空間情報とを伝送する伝送手段と、上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号を伝送する場合に、上記第1の色空間規格の画像信号を上記色域変換処理手段により上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、擬似的に拡張された擬似広色域信号及び上記第2の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の色空間情報とを上記伝送手段により伝送するように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述の課題を解決するために、第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを処理して出力する画像信号出力方法であって、上記第1の色空間規格の画像信号に対して色域を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換する色域変換処理工程と、上記色域変換処理により上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張された擬似広色域信号を含む画像信号と色空間情報とを伝送する伝送工程とを有し、上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号を伝送する場合に、上記第1の色空間規格の画像信号を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、上記第2の色空間規格の色空間情報と共に伝送するように制御することを特徴とする。
【0013】
ここで、上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号は、上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが時間的に切り替えられたものであることが挙げられる。また、上記色域変換処理は、上記第1の色空間規格の画像信号の色信号成分について、信号レベルの所定の閾値以下の範囲とそれより上の範囲とでレベル変換ゲインを独立に制御することで色域に擬似的に上記第2の色空間規格の色域に拡張することが挙げられ、さらに、上記第1の色空間規格の画像信号の色信号成分について、信号レベルの所定の閾値以下の範囲の信号をそのまま用い、所定の閾値より上の範囲の信号を上記第2の色空間規格の色域に拡張するようにレベル変換することが好ましい。
【0014】
このような本発明では、第1の色空間規格の画像信号と第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号について、第1の色空間規格の画像信号を第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、色空間情報を第2の色空間規格のものに固定して、画像信号と共に伝送する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の色空間規格の画像信号と第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号について、第1の色空間規格の画像信号については第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、この擬似的に拡張された擬似広色域信号及び上記第2の色空間規格の画像信号と、第2の色空間規格の色空間情報に固定された色空間情報とを伝送することにより、伝送される色空間情報に基づくディスプレイ側(モニタ側)での色域の設定の切り替えが不要となり、映像の色味の変化やトランジェントによる劣化等を防ぐことができ、最適な色域を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る再生システムを示す図である。この再生システムは、画像信号出力装置としての記録再生装置1と、画像を表示する受像機2とが、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル3を介して接続されている。受像機2は、第1の色空間規格の画像データ及び第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像データを表示することが可能となっており、さらに、第1の色空間規格の画像データを第2の色空間規格の画像データに擬似的に色域を伸張して表示することも可能となっている。第1の色空間規格の例としては、sRGB(IEC61966−2−1)、ITU−R BT.709等が挙げられる。また、第2の色空間規格の例としては、xvYCC等が挙げられる。
【0018】
xvYCCは、国際電気標準会議(IEC)が国際標準(IEC 61966-2-4)として発行した規格であり、HDTV(High Definition TeleVision)で利用するITU−R BT.709の色域(sRGBと同等)との互換性を確保しながら、色空間を広げたものである。そして、このxvYCCによれば、現行の動画コンテンツの色空間規格「ITU−R BT.709」(静止画ではsRGBに相当)では表現できない色を表現することができる。
【0019】
図2は、xvYCCの色域を平面に投射した場合の模式図である。この図2において、色域aはsRGBの色域であり、色域bはxvYCCで拡張された色域である。図2に示すようにsRGBでは、R,G,Bそれぞれを0〜1で表現する色のみを利用してきたのに対し、xvYCCでは負の値や1を超える色も定義されている。したがって、例えば、受像機2がsRGBの色域aの映像コンテンツを色域bにまで伸張する処理(以下「色域伸張処理」という。)を行って、物体の素材感・立体感を忠実に再現すれば、ユーザは広色域のカラー画像を楽しむことができる。
【0020】
HDMIケーブル3の規格であるHDMIは、IEEE1394の上位互換とされており、物理層にはTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)、信号の暗号化にはHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)、機器間認証にはEDID(Extended Display Identification Data)、系全体の制御系接続にはCEC(Consumer Electronics Control)が採用されている。また、HDMIバージョン1.3には、メタデータとxvYCC色空間の定義が追加されている。したがって、例えば、受像機2が記録再生装置1から受信したメタデータと自身の色域情報(色空間情報)とに基づいて画像データを色域伸張処理すれば、より具体的には画像データに対し機器間の色空間の変換処理(Gamut Mapping Algorithm)をすれば、正しい色を再現することができる。
【0021】
図1に戻って、再生システムの構成について説明する。画像信号出力装置としての記録再生装置1は、MPEG(Moving Picture Expert Group)デコーダ11と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12と、ホストCPU(Central Processing Unit)13と、HDMI Tx(トランスミッタ)14と、HDMIコネクタ15とを備えている。
【0022】
MPEGデコーダ11は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264などのビデオストリームをデコードし、ベースバンド信号を生成する。
【0023】
ビデオ・グラフィック・プロセッサ12は、MPEGデコーダ11にて生成されたベースバンド信号を所望の画枠サイズへ変換処理したり、複数のベースバンド信号を合成処理したりする。
【0024】
ホストCPU13は、MPEGデコーダ11及びビデオ・グラフィック・プロセッサ12を制御する。例えば、MPEGデコーダ11に所望のビデオストリームのデコードを指示し、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12にデコードされたベースバンド信号を用いた合成画像の生成や、色域の擬似的な伸張処理等を指示する。また、処理された画像の色空間規格を決定し、その色空間情報をHDMI Tx14に送る。また、ホストCPU13は、HDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインにより受像機2と通信を行う。
【0025】
HDMI Tx14は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12にて信号処理された映像音声信号とともに、ホストCPU13から送られた色空間情報としての色空間規格を示す色域識別フラグ、色域の付随情報であるメタデータなどの属性データをTMDS信号に変換し、HDMIコネクタ15に出力する。この属性データは、HDMI規格で定義されているAVI(Auxiliary Video Information)InfoFrameを使って伝送することができる。
【0026】
HDMIコネクタ15は、HDMIケーブル3と接続され、HDMI Tx14にて変換されたTMDS信号を受像機2に伝送する。
【0027】
次に、受像機2の構成について説明する。受像機2は、HDMIコネクタ21と、HDMI Rx(レシーバ)22と、ホストCPU23と、EDIDROM(Extended Display Identification Data Read Only Memory)24と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25と、ディスプレイデバイス26とを備えている。
【0028】
HDMIコネクタ21は、HDMIケーブル3と接続され、TMDS信号を受信する。
【0029】
HDMI Rx22は、TMDS信号から映像音声信号と属性データとを取得し、映像信号をビデオ・グラフィック・プロセッサ25に送る。
【0030】
ホストCPU23は、属性データに基づいて、例えばビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸張処理のオン/オフを制御する。具体的には、例えば、属性データの色空間情報(色域識別フラグ)がITU−R BT.709の場合、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸張処理をオン状態にし、属性データの色空間情報がxvYCCの場合、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸張処理をオフ状態にする。
【0031】
EDIDROM24には、受像機2のディスプレイ情報が記憶されており、例えば、受像機2の対応解像度情報、色域の種別を示す色空間情報が書き込まれている。EDIDROM24に記憶されたディスプレイ情報は、HDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインを介して記録再生装置1に提供される。
【0032】
次に図3は、図1の画像信号出力装置としての記録再生装置1の構成を具体的に示すブロック図である。記録再生装置1は、ライン入力端子41と、アナログチューナ42と、ディスクドライブ43と、ハードディスクドライブ44と、IEEE1394端子45と、デジタルチューナ46と、ライン入力端子41又はアナログチューナ42からの入力信号のいずれか1つを選択するセレクタ47と、セレクタ47からの映像音声信号をデコードするビデオデコーダ48と、ビデオデコーダ48にてデコードされたベースバンド信号又はビデオ・グラフィック・プロセッサ54にて画像合成等の信号処理が施されたベースバンド信号のいずれか1つを選択するセレクタ49と、セレクタ49からのベースバンド信号をエンコードするMPEGエンコーダ50と、HDV(High-Definition Video)プロセッサ51と、ストリームプロセッサ52と、MPEGデコーダ53a,53bと、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54と、HDMI Tx55と、DAC56と、HDMIコネクタ57と、コンポーネント端子58と、コンポジット端子59と、ホストCPU60とを備えている。
【0033】
ここで、MPEGデコーダ53a,53b、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54、HDMI Tx55、HDMIコネクタ57、ホストCPU60は、それぞれ図1に示すMPEGデコーダ11、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12、HDMI Tx14、HDMIコネクタ15、ホストCPU13に対応するものである。
【0034】
続いて、記録再生装置1における記録動作について説明する。ライン入力端子41から入力される映像信号と、アナログチューナ42から出力される映像信号は、セレクタ47で所望の入力が選択された後、ビデオデコーダ48に入力される。ビデオデコーダ48は、例えば入力されたNTSC方式のアナログ映像信号をA/D変換した後、輝度信号とクロマ信号とに分離するとともにデコード処理を施す。デコードされたベースバンドビデオ信号は、セレクタ47、及びビデオ・グラフィック・プロセッサ54に入力される。セレクタ49で、ビデオデコーダ48からの出力と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54からの出力とのいずれかを選択した後、選択されたベースバンド信号がMPEGエンコーダ50に入力される。MPEGエンコーダ50は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264など所望のエンコードを行う。エンコードされたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52から、BD(Blu-ray Disc、商標)、DVD(Digital Versatile Disc)などのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などにストリームが送られ、所望のメディアに記録される。
【0035】
また、IEEE1394入力端子45から入力されたストリームは、HDVプロセッサ51を経てストリームプロセッサ52に入力され、デジタルチューナ46からのストリームもストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52に入力されたストリームは、BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などの所望のメディアに記録される。
【0036】
また、ストリームプロセッサ52に入力されたストリームは、ストリームプロセッサ52で所望のビデオストリームの抜き出しやパーズなどの処理を施し、MPEGデコーダ53でデコードした後、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54、セレクタ49を経由してMPEGエンコーダ50に入力される。MPEGエンコーダ50は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264など所望のエンコードを行い、エンコードされたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52から、BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などにストリームが送られ、所望のメディアに記録される。
【0037】
次に、記録再生装置1における再生動作について説明する。BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44で再生されたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52は、所望のビデオストリームの抜き出しやパーズを行った後、MPEGデコーダ53a、53bに送る。MPEGデコーダ53a、53bはストリームから画像データの色空間属性に関する情報(色空間情報)をパーズする。また、MPEGデコーダ53a、53bは、画像データをデコードする。MPEGデコーダ53a、53bでデコードされたベースバンドビデオ信号は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54に入力される。ビデオ・グラフィック・プロセッサ54では、例えば、所望の画枠サイズへの変換処理や種々のビデオ信号処理を施し、該映像信号にグラフィックス信号などを合成した後、HDMI Tx55に送られる。HDMI Tx55では、入力されたベースバンド信号をTMDS信号に変換して、制御信号とともにHDMIコネクタ57に出力する。また、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54の出力は、DAC56に入力され、D/A変換したアナログコンポーネント信号がコンポーネント端子58に出力されるとともに、D/A変換したアナログコンポジットビデオ信号(あるいはY/Cセパレートビデオ信号)もコンポジットビデオ端子(あるいはS端子)59に出力される。
【0038】
ここで、上記xvYCC規格のような広色域の画像信号の場合について説明すると、広色域映像信号とともに、色空間情報としての色域の種別を識別するための識別フラグ、及び色域の付随情報であるメタデータ等が記録されたBD、DVDなどのディスクは、ディスクドライブ43で再生される。
【0039】
再生された広色域映像信号、識別フラグ、メタデータ等を含んだストリームがストリームプロセッサ52に入力され、ストリームプロセッサ52では、ストリームのパーズを行い、識別フラグ、及びメタデータを抽出する。ホストCPU60は、該識別フラグ、及びメタデータを取得する。xvYCCを示す識別フラグ及びメタデータはエレメンタリーストリームの付加情報として記録してあるので、ビデオ信号との同期は常に保たれる。
【0040】
広色域映像信号を含んだストリームは、前述の再生系の説明の通り、MPEGデコーダ53a、53bでデコードされた後、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54を経てHDMI Tx55に送られる。
【0041】
また、ホストCPU60は、HDMIコネクタ57に接続されたHDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインにより受像機2と通信を行い、受像機2に内蔵するHDMI Rx(レシーバ)22、ホストCPU23を介して、EDID(Extended Display Identification Data)ROM24に書かれているディスプレイ情報を取得する。EDID ROM24には、受像機2の対応解像度情報などの他に、色域の種別を示す色空間情報(カラリメトリ情報)も書かれている。したがって、ホストCPU60は、ディスプレイ情報を取得することにより、接続している受像機2が広色域映像信号に対応しているか否かを判別することができる。そして、HDMIケーブル3によって接続された受像機2が広色域映像信号に対応している場合、ホストCPU60は、広色域映像信号を伝送する際、映像信号の属性としてディスクから取得した色空間情報である色域識別フラグ、及びメタデータをHDMI Tx55にセットすることができる。
【0042】
HDMI Tx55は、映像音声信号とともに色域識別フラグ、メタデータなどの属性データをTMDS信号に変換し、HDMIコネクタ57から出力する。色域の種別を示す識別フラグ、メタデータは、HDMI規格で定義されているAVI(Auxiliary Video Information)InfoFrame を使って伝送することができる。例えば、色空間情報としての色域識別フラグは、AVI InfoFrame パケット内のColorimetry やExtended Colorimetry で定義される。また、オーディオ信号の属性データは、Audio InfoFrame を用いることができる。コンポーネント端子58、コンポジットビデオ端子(あるいはS端子)59からは、色域識別フラグ、メタデータなどの属性データを伝送することはできないが、広色域のアナログコンポーネント信号、アナログコンポジットビデオ信号(あるいはY/Cセパレートビデオ信号)を出力することができる。
【0043】
次に、図3のビデオ・グラフィック・プロセッサ54について、図4を参照しながら説明する。図4は、画像を合成する際のビデオ・グラフィック・プロセッサ54の機能ブロック図を示す。
【0044】
図4において、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54は、メモリ301と、合成処理部302a〜302dと、グラフィックエンジン306と、JPEGエンジン307とを備えている。ここで、合成処理部302a〜302dは、出力フォーマット毎に用意されており、それぞれスケーラ308と、カラーエキスパンダ309と、ブレンダ310と、ビデオエンコーダ311とを備えている。
【0045】
ビデオデコーダ48の出力、及びMPEGデコーダ53a、53bの出力は、メモリ301のビデオ・プレーンに書き込まれる。また、グラフィックエンジン306は、メモリ301のグラフィックス・プレーンにグラフィックス・データを書き込む。JPEGエンジン307は、JPEGファイルをデコードして、メモリ301のビデオ・プレーンにJPEGデータを書き込む。メモリ301に書き込まれた画像データは、各プレーンから読み出され、スケーラ308で所望のサイズへのスケーリングなどが行われ、カラーエキスパンダ309を介してブレンダ310に送られる。カラーエキスパンダ309では、第1の色空間規格の画像信号に対して、色域を第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換する色域変換処理を行っており、具体的には、sRGBの色域を擬似的にxvYCCの色域にエキスパンド(色域伸張処理)して、ブレンダ310に送る。ブレンダ310は、各プレーンから読み出された画像の合成等を行う。ビデオエンコーダ311は、所望の出力仕様になるようにタイミング生成、同期信号の付加などを行う。合成処理部302b〜302dは、合成処理部302aと同様の回路構成から成り、出力の形態に応じた処理を行う。
【0046】
次に、カラーエキスパンダ309における、BT.601やBT.709(第1の色空間規格)の色域を擬似的にxvYCC(第2の色空間規格)の色域に変換するエキスパンド処理(色域伸張処理)の一例について説明する。
【0047】
BT.601やBT.709ではクロマ(Cr,Cb)信号のレベルの値は、16−240で規定されている。xvYCCでは、更に色域を拡張するために、1−254の値の信号レベルを扱うことができる。ここでは、従来のレベルの信号を擬似的に広色域に変化する一方法について図5を用いて説明する。
【0048】
図5は、上記クロマ信号であるCr信号とCb信号の伸張処理の際のレベル変換の一例を示す図である。すなわち、図5の(A)がCr信号、(B)がCb信号を示し、Cr信号及びCb信号のそれぞれについて、カラーエキスパンダ309の入力に対する出力を示している。カラーエキスパンダ309に入力されるCr信号は前述したように、BT.601やBT.709では、16−240のレベル範囲に規定される。これを擬似xvYCC信号に変換する場合、所定のレベル範囲、例えば36−220のレベル範囲の信号はそのまま(増幅率1として)通過させ、レベル範囲が16−36の信号と221−240の信号については、それぞれ線形処理にてレベル変換(1より大きな一定増幅率によるレベル伸張)を行い、16−36のレベル範囲は1−36に伸張し、221−240のレベル範囲は221−254に伸張するような変換を行う。この結果、原信号の比較的飽和度の高い色信号が更に伸張されることにより擬似xvYCC信号が生成される。Cb信号についても同様に伸張を行う。このような色域伸張処理が行われた擬似xvYCC信号に対しては、色空間情報として、xvYCCフラグ(第2の色空間規格の色空間情報)を用いることができ、xvYCC信号と擬似xvYCC信号とが混在しても、色空間情報にはxvYCCフラグを固定して出力し伝送することができる。
【0049】
図5では、Cr,Cb信号の伸張処理の一例について説明したが、RGB信号にて同様の色域伸張を行ってもよい。また、レベルの閾値を変えてもよく、閾値を境界として、閾値以下とそれより上の範囲とでレベル変換のゲイン(増幅率)を独立に制御するようにしてもよい。さらに、レベル変換を非線形処理することでも同様の効果は得られる。
【0050】
次に、図6、図7を用いて、カラーエキスパンダ309の制御動作及び入出力信号の一例について説明する。
【0051】
図6のホストCPU60は、現在出力している映像信号の色空間規格がxvYCCであるか否かを検出し、その結果を、カラーエキスパンドON/OFF信号としてカラーエキスパンダ309に送る。カラーエキスパンダ309は、このホストCPU60のカラーエキスパンドON/OFF信号により、伸張処理のON/OFFを行う。すなわち、図7の(A)に示すようなxvYCCと709/601信号が混在する映像信号が入力される場合に、709/601信号に対しては伸張処理がONされて、擬似xvYCC信号に変換されるため、図7の(B)に示すように、常に広色域の出力信号を得ることができ、映像信号と共に伝送する色空間情報は、図7の(C)に示すように、広色域を示す色域識別フラグ(xvYCC識別信号)に固定することができる。
【0052】
ここで、伸張処理される前の、xvYCCと709/601信号が混在する場合、従来においてはその信号に合わせてHDMITx116のAVIの色空間情報を変化させなければならないが、このように常時xvYCCもしくは擬似xvYCC信号を送ることにより、一定の色域識別フラグ(xvYCC識別信号)を送ることが可能となる。
【0053】
図1の受像機2側(モニタ側)では、一定の色域識別フラグ(xvYCC識別信号)が固定的に送られるため、従来のように、異なる色空間規格に応じた色域の設定の切り替えが不要となり、映像の色味の変化やトランジェントによる劣化等を防ぐことができる。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、色空間規格が異なる映像が混在する場合、通常の709/601信号を擬似xvYCC信号に変換することにより、従来において問題であった、受け手側と送り手側の切替タイミングにより望ましくない映像が表示されることを防ぐことが可能となる。なお、上述したように、送り側では、エレメンタリーストリーム上に付加された色空間情報としてのxvYCCフラグを検出するため、内部的にはxvYCC信号と擬似xvYCCとの切替タイミングを正確に制御可能である。
【0055】
また、コンポーネント信号等のアナログ伝送の場合、HDMIにて規定されているフラグを伝送できないため、送り側にて常時xvYCC信号(擬似xvYCC含む)を出力することにより最適な色域を得ることが可能である。
【0056】
上述した本発明の実施の形態においては、第1の色空間規格(例えばSMPTE 170M/ITU601若しくはITU709)の画像信号と、第2の色空間規格(例えばxvYCC)の画像信号とが時間的に切り替えられる場合について説明したが、これらの異なる色空間規格の複数の画像信号が同時に空間的に混在する場合についても、本発明を適用することができる。この場合は、第1の色空間規格の画像信号と第2の色空間規格の画像信号とを合成して一つの画像信号を生成する際に、第1の色空間規格の画像信号については第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した後に合成するようにし、色空間情報は第2の色空間規格のものに固定して出力し伝送すればよい。
【0057】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態となる画像信号出力装置を用いた再生システムを示す図である。
【図2】xvYCCの色域を平面に投射した場合の模式図である。
【図3】画像信号出力装置としての記録再生装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【図4】ビデオ・グラフィック・プロセッサの構成を示すブロック図である。
【図5】画像を合成する際のビデオ・グラフィック・プロセッサの機能ブロック図である。
【図6】カラーエキスパンダの制御を行うための構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】カラーエキスパンダの入出力信号及び出力信号に対する色空間情報の一例を説明するためのタイミングチャートである
【符号の説明】
【0059】
1 記録再生装置、 2 受像機、 3 HDMIケーブル、 11 MPEGデコーダ、 12 ビデオ・グラフィック・プロセッサ、 13 ホストCPU、 14 HDMI Tx(トランスミッタ)、 15 HDMIコネクタ、 21 HDMIコネクタ、 22 HDMI Rx(レシーバ)、 23 ホストCPU、 24 EDIDROM、 25 ビデオ・グラフィック・プロセッサ、 26 ディスプレイデバイス、 41 ライン入力端子、 42 アナログチューナ、 43 ディスクドライブ、 44 ハードディスクドライブ、 45 IEEE1394入力端子、 46 デジタルチューナ、 47 セレクタ、 48 ビデオデコーダ、 49 セレクタ、 50 エンコーダ、 51 HDVプロセッサ、 52 ストリームプロセッサ、 53 デコーダ、 54 ビデオ・グラフィック・プロセッサ、 60 ホストCPU、 309 カラーエキスパンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを処理して出力する画像信号出力装置であって、
上記第1の色空間規格の画像信号に対して色域を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換する色域変換処理手段と、
上記色域変換処理手段からの擬似広色域信号を含む画像信号と色空間情報とを伝送する伝送手段と、
上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号を伝送する場合に、上記第1の色空間規格の画像信号を上記色域変換処理手段により上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、擬似的に拡張された擬似広色域信号及び上記第2の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の色空間情報とを上記伝送手段により伝送するように制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像信号出力装置。
【請求項2】
上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号は、上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが時間的に切り替えられたものであることを特徴とする請求項1記載の画像信号出力装置。
【請求項3】
上記色域変換処理手段は、上記第1の色空間規格の画像信号の色信号成分について、信号レベルの所定の閾値以下の範囲とそれより上の範囲とでレベル変換ゲインを独立に制御することで色域に擬似的に上記第2の色空間規格の色域に拡張することを特徴とする請求項1記載の画像信号出力装置。
【請求項4】
上記色域変換処理手段は、上記第1の色空間規格の画像信号の色信号成分について、信号レベルの所定の閾値以下の範囲の信号をそのまま用い、所定の閾値より上の範囲の信号を上記第2の色空間規格の色域に拡張するようにレベル変換することを特徴とする請求項3記載の画像信号出力装置。
【請求項5】
上記伝送手段は、上記色空間情報として、上記第1の色空間規格又は上記第2の色空間規格のいずれかを示す識別フラグを伝送することを特徴とする請求項1記載の画像信号出力装置。
【請求項6】
第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを処理して出力する画像信号出力方法であって、
上記第1の色空間規格の画像信号に対して色域を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張した擬似広色域信号に変換する色域変換処理工程と、
上記色域変換処理により上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張された擬似広色域信号を含む画像信号と色空間情報とを伝送する伝送工程とを有し、
上記第1の色空間規格の画像信号と上記第2の色空間規格の画像信号とが混在する画像信号を伝送する場合に、上記第1の色空間規格の画像信号を上記第2の色空間規格の色域に擬似的に拡張し、上記第2の色空間規格の色空間情報と共に伝送するように制御すること
を特徴とする画像信号出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−38683(P2009−38683A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202380(P2007−202380)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】