説明

画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】 センサー出力とほぼ同じ状態の色成分を持つ画像を生成してホワイトバランスの調整を適切に行う。
【解決手段】 原画像データに現像処理を施した画像データに対して、現像処理用の色階調変換処理と逆の変換処理である第1色階調変換処理を施す第1色階調変換工程と、色階調変換前サンプル色群と、色階調変換前サンプル群に対して現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を施した色階調変換後サンプル色群とから、第1色階調変換工程で用いる第1色階調変換情報を生成する変換情報生成工程と、第1色階調変換工程後の画像データに、現像処理時のホワイトバランス補正を調整するホワイトバランス調整工程と、ホワイトバランス調整工程後の画像データに、第1色階調変換処理とは逆の変換処理である第2色階調変換処理を施す第2色階調変換工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RAW画像データに対して現像処理を施すことで得られた画像データに対して、ホワイトバランス調整を施す画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の視覚においては、異なる照明環境下であっても照明環境の効果を抑制して物体の色を識別する、所謂色順応という機能を有している。デジタルカメラにおいては、このような人間の視覚特性に対応するために、ホワイトバランス補正という機能を備えている。この機能は、撮影時の照明環境を自動的に設定、或いは推定した後、RAW画像データの各色成分の比率の調整計数(ホワイトバランス補正値)を決定し、この調整係数を用いた補正を行うことで照明環境の効果を抑制している。
【0003】
例えば撮影時の照明環境の設定や推定が不適切のまま、ホワイトバランス補正が行われた画像データや、RAW画像データに対して現像処理が行われた画像データに対して、取得時の現像処理を考慮せずに色成分の調整を行うと、画像の色が不自然となりやすい。そこで、現像処理として実行される階調変換処理に対して逆の変換処理を画像データに施すことで、センサー出力と同じ状態の色成分をもつ画像を生成し、複雑な色順応モデルに基づいてホワイトバランス補正をやり直すことが可能な画像処理方法や画像処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された発明では、ガンマ補正を行った後に色空間をRGB色空間からYCbCr色空間に変換し、Cb及びCrに所定の係数を乗算することによって彩度強調を行う階調変換処理が想定されている。また、階調変換処理に対する逆の変換処理として、彩度強調されたCbとCrとを所定の係数で割った後に、色空間をRBG色空間に変換し、階調変換とは逆の変換処理を行うことも想定されている。
【特許文献1】特開2001−128191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常のデジタルカメラにおいて取得された画像データに対してなされる階調変換処理においては、色空間を分割した複数の領域のそれぞれに対して、異なるパラメータに基づいて色変換を行う、輝度に応じて彩度を強調する、或いは彩度に対して非線形変換を適用する等、様々な処理を組み合わせている。このような複雑な階調変換に対して厳密な逆変換アルゴリズムを作成することは難しく、また、階調変換用のアルゴリズムはカメラの機種毎に異なることから、その作成には多大な開発コストが必要であり、また、仮に上述したアルゴリズムが作成できたとしても、その処理は複雑であり、多くの処理時間が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するために発明されたものであり、複雑で多様なカメラ内の色階調変換アルゴリズムに対応してその逆の階調変換処理を実現することにより、センサー出力とほぼ同じ状態の色成分を持つ画像を生成してホワイトバランスの調整を適切に行うことができるようにした画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【0007】
第1の発明の画像処理方法は、原画像データに現像処理を施した画像データに対して、前記現像処理用の色階調変換処理と逆の変換処理である第1色階調変換処理を施す第1色階調変換工程と、色階調変換前サンプル色群と、該色階調変換前サンプル群に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を施した色階調変換後サンプル色群とから、前記第1色階調変換工程で用いる第1色階調変換情報を生成する変換情報生成工程と、前記第1色階調変換工程後の画像データに、前記現像処理時のホワイトバランス補正を調整するホワイトバランス調整工程と、前記ホワイトバランス調整工程後の画像データに、前記第1色階調変換処理とは逆の変換処理である第2色階調変換処理を施す第2色階調変換工程と、を備えたことを特徴とする。なお、現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理とは、例えば現像処理用の色階調変換処理の処理結果とほぼ等しい処理結果が得られる色階調変換処理のことである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において前記第2色階調変換処理は、前記現像処理用の色階調変換処理を用いることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第1色階調変換情報は、前記第1色階調変換処理が行われた画像データと前記現像処理用の色階調変換処理前の画像データとがほぼ等しい画像データとなるように、前記第1色階調変換処理を特定する情報からなり、前記変換情報生成工程は、前記第1色階調変換情報を生成する他に、前記第2色階調変換処理を特定する第2色階調変換情報を生成し、前記第2色階調変換工程は、前記第2色階調変換情報を用いて前記第2色階調変換処理を実行することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群と前記色階調変換後サンプル色群との対応関係から、前記第1色階調変換処理で用いる色階調変換用のテーブルデータを前記第1色階調変換情報として生成することを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群から得られる無彩色のサンプル色群と、前記色階調変換後サンプル色群のうち、前記無彩色のサンプル色群に由来するサンプル色群との対応関係から階調変換情報を生成する階調変換情報生成工程を備えていることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第5の発明において、前記変換情報生成工程は、前記階調変換情報を用いた階調変換処理を前記色階調変換前サンプル色群に対して行うことで、階調変換後サンプル色群を生成する階調変換サンプル生成工程と、前記階調変換後サンプル色群と前記色階調変換後サンプル色群との対応関係に基づいた色変換情報を生成する色変換情報生成工程と、前記階調変換情報から、前記階調変換処理と逆の変換処理となる逆階調変換処理で用いる逆階調変換情報を生成する逆階調変換情報生成工程と、をさらに備え、前記変換情報生成工程は、前記逆階調変換情報と前記色変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第5の発明において、前記変換情報生成工程は、前記階調変換情報を用いた階調変換処理を前記色階調変換前サンプル色群に対して行うことで、階調変換後サンプル色群を生成する階調変換サンプル生成工程と、前記階調変換処理とは逆の変換処理となる逆階調変換処理に用いる逆階調変換情報を、前記階調変換情報に基づいて生成する逆階調変換情報生成工程と、前記階調変換後サンプル色群と前記色階調変換後サンプル群との対応関係から、色変換処理とは逆の変換処理となる逆色変換処理で用いる色変換用のテーブルデータを生成するテーブルデータ生成工程と、をさらに備え、前記変換情報生成処理は、前記色変換用のテーブルデータと前記逆階調変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第5の発明において、前記変換情報生成工程は、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群に対して、前記階調変換情報により階調変換処理を施す階調変換工程と、前記階調変換処理を行うことにより得られる階調変換後サンプル色群の各色成分を、前記色階調変換後サンプル色群の各色成分の線形和によって近似する逆色変換行列を生成する行列生成工程と、前記階調変換処理とは逆の変換処理となる逆階調変換処理を特定する逆階調変換情報を生成する逆階調変換情報生成工程と、をさらに備え、前記変換情報生成工程は、前記逆色変換行列と前記逆階調変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第8の発明において、前記変換情報生成工程は、前記逆色変換行列の逆行列を生成する逆行列生成工程を、さらに備え、前記変換情報生成工程は、前記階調変換情報と前記逆色変換行列の逆行列とを第2色階調変換情報として生成することを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第1〜第9の発明のいずれかにおいて、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群を生成する変換前サンプル生成工程を備えていることを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、第1〜第10の発明のいずれかにおいて、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換後サンプル色群を生成する変換後サンプル生成工程を備えており、前記変換後サンプル生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を施すことで前記色階調変換後サンプル色群を生成することを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、第1〜第10の発明のいずれかにおいて、前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群の色成分を、各画素の色成分として有する色階調変換前サンプル色画像を生成した後、該色階調変換前サンプル色画像に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を行うことで色階調変換後サンプル色画像を生成し、前記色階調変換後サンプル色画像の各画素の色成分を前記色階調変換後サンプル色群の各色成分として抽出することで、前記色階調変換後サンプル色群を生成することを特徴とする。
【0019】
第13の発明の画像処理装置は、第1の発明の画像処理方法を実施する機能を備えた画像処理装置において、撮像により取得された原画像データに、少なくともホワイトバランス補正処理と色階調変換処理とを含む現像処理を施すことにより鑑賞用の画像を生成する機能をさらに備え、前記現像処理に含まれる色階調変換処理を、請求項1に記載の前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理として用いることを特徴とする。
【0020】
第14の発明の画像処理プログラムは、第1の発明の画像処理方法を実施する機能を備えた画像処理プログラムにおいて、撮像により取得された原画像データに対して、少なくともホワイトバランス補正処理と色階調変換処理とを含む現像処理を施すことにより鑑賞用の画像を生成する機能をさらに備え、前記現像処理に含まれる色階調変換処理を、請求項1に記載の前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、画像データに対して施された階調変換処理と近似的な逆階調変換処理を施すことで、階調変換処理が実行される前の画像データと実質的に等しい画像データを容易に生成することで、ホワイトバランス補正が適切でない画像データに対するホワイトバランス調整を容易に、また適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の画像処理プログラムは、RAW画像データに対して現像処理を施し、また、RAW画像データ以外の画像データ(現像処理済みの画像データ)に対してホワイトバランス調整を施すことが可能なプログラムである。
【0023】
[第1の実施形態]
以下、本発明を適用した画像処理プログラムの一実施例(第1の実施形態)について説明する。
【0024】
図1は、画像処理プログラムを用いてRAW画像データRIを現像処理するときの機能ブロック図を示す。上述した画像処理プログラム10は、ホワイトバランス補正部15、Bayer補間部16、色階調変換部17、ノイズ除去部18及び輪郭強調部19としての機能を備えている。以下、ノイズ除去部18及び輪郭強調部19については、周知であることから、ここでは、その詳細を省略する。なお、図1においては、画像処理プログラム10を示す箇所に対して、便宜上二点鎖線を用いて示している。
【0025】
ホワイトバランス補正部15は、入力されるRAW画像データRIにおけるホワイトバランスを補正する処理(ホワイトバランス補正処理)を実行する。なお、RAW画像データRIは、R色成分、G色成分、B色成分の各色成分が周知のベイヤー配列により配列されたカラーフィルタを介して入射された被写体光を撮像素子にて光電変換した後、デジタル化処理が施された後の画像データである。なお、撮像素子によって光電変換することによって得られるデータは、各色成分の光量、或いは輝度値のみを表すデータであることから、RAW画像データRIは、グレースケール値を示すデータとなる。また、RAW画像データRIには、カメラの機種情報、撮像条件、階調モードの情報、色モードの情報などの付帯情報(メタデータ)が付帯されていることから、ホワイトバランス補正部15は、RAW画像データRIから付帯情報を参照して、RAW画像データRIに対してホワイトバランス補正を施す。
【0026】
Bayer補間部16は、ホワイトバランス補正が施されたRAW画像データに対して補間処理(Bayer補間処理)を行う。上述したように、RAW画像データRIは、カラーフィルタを透過した後の、各色成分のグレースケール値を示すデータである。RAW画像データRIに付帯されている付帯情報には、カラーフィルタにおける各色成分の配列を示す配列情報も含まれていることから、Bayer補間部16は、付帯情報から配列情報を読み出して、欠陥画素に対するカラー情報を補間して、ホワイトバランス補正処理されたグレースケールの画像データをカラー画像データに変換する。
【0027】
色階調変換部17は、カラー画像データに対して、階調変換処理、彩度強調処理などの色階調変換処理を実行する。階調変換処理は、RAW画像データRIに付帯された付帯情報から、階調モードの情報を読み出して、階調モードに合わせた色となるように、各画素のR色、G色、B色の各色成分の値(強さ)を調整する。彩度強調処理は、階調変換処理が施されたカラー画像データに対する彩度を強調する処理である。カラー画像データは、R成分、G成分及びB成分で示されることから、一旦、R成分、B成分及びG成分で示されるカラー画像データをY成分、Cb成分及びCr成分で示されるカラー画像データに変換する。この変換の後、各画素のCb成分及びCr成分に対して所定係数を乗算、又は乗算した後補正値を加算する。そして、Y成分、Cb成分及びCr成分で示されるカラー画像データを、再度、R成分、G成分、B成分で示されるカラー画像データに変換する。この色階調変換部17による処理は、例えば実際にデジタルカメラ内で施される色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理となる。
【0028】
この色階調変換部17における処理が施された画像データは、ノイズ除去部18によりノイズ成分の除去処理(ノイズ除去処理)された後、輪郭強調部19によりコントラストが強調される処理(輪郭強調処理)が施される。その後、上述した現像処理が施された画像データPIは、任意の形式の画像データとして記録される。このように、上述した画像処理プログラム10を用いることにより、現像処理された画像データPIは、デジタルカメラ内で処理された画像データと、実質的に等しい階調と色成分を有していることになる。
【0029】
次に、上述した画像処理プログラム10において、RAW画像データRI以外の画像データに対する機能を、図2を用いて説明する。なお、図2においては、図1に示す機能を省略して示してある。以下では、画像データPI1を、色階調変換処理前の画像データに戻すために実行される色階調変換処理を逆色階調変換処理と称し、後述するホワイトバランス調整処理が施された画像データに施される色階調変換処理を、逆逆色階調変換処理と称する。
【0030】
画像処理プログラム10は、現像処理済みの画像データPI1が入力されたときに、サンプル色群生成部21、サンプル色階調変換部22、逆色階調変換LUT生成部23、逆色階調変換部24、ホワイトバランス調整部25及び逆逆色階調変換部26の機能を実行することが可能となる。
【0031】
サンプル色群生成部21は、色階調変換前サンプル色群30を作成する。この色階調変換前サンプル色群30は、図1に示す色階調変換部17における処理が施される直前の画像データに対応するサンプル色をまとめたものである。サンプル色は、R成分、G成分、B成分の値で示されるものであり、この色階調変換前サンプル色群30は、R成分、G成分、B成分の値が取り得る範囲の中に満遍なく分布されるように作成される。例えば12ビットの画像データの場合には、各画素におけるR、G、B成分の値が取り得る範囲は、0〜4095の範囲となる。例えばR成分の値をi、G成分の値をj、B成分の値をkで示した場合、これらi,j,kを0〜255で変化させ、(i+j×256+k×256×256)個目のサンプルのRGB値を(i×16,j×16,k×16)とすることで、256×256×256個の色階調変換前サンプル色群30を作成する。
【0032】
サンプル色階調変換部22は、図1に示す色階調変換部17を利用して、色階調変換前サンプル色群30の階調及び色を変換する。まず、サンプル色階調変換部22は、色階調変換前サンプル色群30の各サンプル色の色成分を各画素の色成分とするサンプル画像(変換前サンプル画像)を作成する。次に、画像データに付帯される付帯情報33からカメラ機種、階調モード、及び色モードの情報を読み出し、これら情報に合わせて色階調変換処理が実行されるように、図1に示す色階調変換部17を設定する。この設定の後、変換前サンプル画像に対して、色階調変換部17による色階調変換処理を実行する。この色階調変換処理により得られるサンプル画像(変換後サンプル画像)の各画素の色成分を用いることで、色階調変換後サンプル色群34が生成される。
【0033】
逆色階調変換LUT生成部23は、逆色階調変換ルックアップテーブル(LUT)35を生成する。まず、色階調変換後サンプル色群34の各サンプル色のRGB値を引数として3次元配列要素を指定し、そのサンプル色の生成元の色階調変換前サンプル色群30のRGB値を、指定された配列要素に代入していく。複数の色階調変換処理後のサンプル色が同じ配列要素に対応している場合には、それらの生成元の色階調変換前サンプル色の平均値を配列要素に代入する。この処理を全てのサンプル色に対して行った後、3次元配列の配列要素のうち、一度も値を代入されなかった要素に対しては、周囲の配列要素の値を代入する。
【0034】
この周囲の配列要素の値を代入する方法としては、公知の三次元補間方法が挙げられる。この三次元補間方法としては、例えば、値を代入されない配列要素(対象配列要素)に隣接する配列要素(第一隣接配列要素)の平均値を対象配列要素に代入する。また、第一隣接配列要素がない場合には、第一隣接要素に隣接する配列要素を用いて、その平均値を対象配列要素に代入していく。この用にして、全ての配列要素に対して処理を行うことで得られた三次元配列を逆色階調変換LUT35として出力する。なお、色階調変換部17によって12ビットのRGB画像データを色変換して、8ビットのRGB画像データに変換することから、この逆色階調変換LUTにおいて、配列要素を指定する引数(r1、g1、b1)が取り得る範囲は、それぞれ0〜255であり、各配列要素となる(r2、g2、b2)の取り得る範囲は、それぞれ0〜4095となる。
【0035】
逆色階調変換部24は、入力された画像データPI1に対して、逆色階調変換LUT35を用いた逆色階調変換処理を実行する。この逆色階調変換処理は、画像データの各画素のRGB値を引数として逆色階調変換LUT35の配列要素を指定し、その配列要素に代入されているRGB値を、該当する画素のRGB値とすることで、入力された画像データの各画素のRGB値を変換していく。
【0036】
ホワイトバランス調整部25は、逆色階調変換処理が施された画像データに対してホワイトバランス調整を行う。このWB調整としては、ホワイトバランス調整係数(Kr、Kg、Kb)36を、画像データの各画素のRGB値にそれぞれ乗算していく。なお、このホワイトバランス調整係数(Kr、Kg、Kb)36は、入力された画像データをモニタ等に表示し、ユーザがモニタに表示される画像を見ながら設定することが挙げられる。例えば画像が赤っぽく見える場合には、Krを1より小さくし、Kbを1より大きくする。また、Krを1より小さく設定すると、画像が青っぽくなることから、このような場合には、Krを1にし、Kg、Kbの値を1より大きくすればよい。
【0037】
逆逆色階調変換部26は、WB調整された画像データに対して色階調変換処理を実行する。なお、逆逆色階調変換部26における色階調変換処理は、図1に示す色階調変換部17を利用することで実行される。これにより、調整済みの画像データPI1’が取得される。
【0038】
次に、本実施形態におけるWB調整の流れについて、図3のフローチャートを用いて説明する。ステップS101は、入力された画像データを読み込む処理である。また、ステップS102は、入力された画像データがRAW画像データRIであるか否かを判定する処理である。この判定で、入力された画像データがRAW画像データRIである場合(ステップS102の判定がYesとなる場合)には、ステップS103に進む。一方、入力された画像データがRAW画像データRIでない場合(ステップS102の判定がNoとなる場合)には、ステップS111に進む。
【0039】
ステップS103は、RAW現像処理である。このRAW現像処理の内容としては、上述したホワイトバランス補正処理、Bayer補間処理、色階調変換処理、ノイズ除去処理及び輪郭強調処理である。ここでは、その詳細は省略する。このRAW現像処理を実行することで得られる画像データPIは、所定形式の画像データとして記録される。なお、記録される画像データの形式としては、周知のJpeg形式やbitmap形式などが挙げられる。
【0040】
ステップS111は、入力された画像データがRAW画像データRI以外の画像データPI1となる場合に実行される処理である。このステップS111は、サンプル色群生成部21において色階調変換前サンプル色群30を作成する処理である。サンプル色群生成部21は、生成された色階調変換前サンプル色群30を、サンプル色階調変換部22、及び逆色階調変換LUT生成部23に出力する。
【0041】
ステップS112は、色階調変換後サンプル色群34を作成する処理である。このステップS112の処理は、サンプル色階調変換部22において実行される。色階調変換前サンプル色群30が入力されると、サンプル色階調変換部22は、画像データPIの付帯情報33を参照して、カメラ機種、階調モード、色モード等の情報を読み出す。読み出したカメラ機種、階調モード及び色モードの情報を用いた色階調変換処理が実行されるように、色階調変換部17の設定を行う。
【0042】
これと同時に、サンプル色階調変換部22は、上述した変換前サンプル画像を作成する。そして、作成された変換前サンプル画像に対して色階調変換部17における色階調変換処理を施すことで、変換後サンプル画像を生成する。サンプル色階調変換部22は、生成された変換後サンプル画像を用いて、該変換後サンプル画像における各画素の色成分を、各サンプル色の色成分とする色階調変換後サンプル色群34を生成する。なお、生成された色階調変換後サンプル色群34は、逆色階調変換LUT生成部23に出力される。
【0043】
ステップS113は、逆色階調変換LUT35を生成する処理である。この処理は、逆色階調変換LUT生成部23にて実行される。上述したように、この逆色階調変換LUT生成部23には、色階調変換前サンプル色群30、色階調変換後サンプル色群34がそれぞれ入力されることから、これらサンプル色群を用いて、逆色階調変換LUT35を作成する。この逆色階調変換LUT35は、逆色階調変換部24に出力される。
【0044】
ステップS114は、逆色階調変換処理である。この処理は、逆色階調変換部24にて実行される。逆色階調変換処理部24は、逆色階調変換LUT35を用いて、画像データPI1の各画素の色成分を変換し、例えば、色階調変換処理前の画像データに実質的に等しい画像データを生成する。なお、このステップS114の処理が実行された画像データは、ホワイトバランス調整部25に出力される。
【0045】
ステップS115は、ホワイトバランス調整処理である。この処理は、ホワイトバランス調整部25にて実行される。ホワイトバランス調整部25は、画像データの各画素のRGB値に対して、ホワイトバランス調整係数Kr、Kg、Kbをそれぞれ乗算することで、ホワイトバランス調整処理が実行される。
【0046】
ステップS116は、逆逆色階調変換処理である。この処理は、逆逆色階調変換部26にて実行される。なお、WB調整が施された画像データが逆逆色階調変換部26に入力されると、逆逆色階調変換部26は、色階調変換部17を利用した色階調変換処理を実行する。なお、色階調変換前サンプル色群30から色階調変換後サンプル色群34を生成する際の設定をそのままにしておけば、このステップS116の処理を実行する際に、色階調変換処理の設定を再度実行する手間を省くことができる。これにより、入力された画像データPI1は、ホワイトバランス調整が施された画像データPI1’となる。
【0047】
例えば撮像等により、取得された画像データPI1のホワイトバランスを適切に調整するためには、その画像に対してカメラ内で実行された色階調変換処理の効果を元に戻した上で調整を行う必要がある。また、画像処理プログラム10においては、対象とする機種のカメラにおいて実行される色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を実行することが可能である。本発明においては、画像処理プログラム10において実行される色階調変換処理を利用し、色階調変換前サンプル色群30と色階調変換後サンプル色群34との対応関係に基づいて逆色階調変換LUT35を生成している。ここで利用される色階調変換処理は、カメラ内で実行される色階調変換処理と実質的に等しいことから、生成された逆色階調変換LUT35を用いれば、カメラ内で実行された色階調変換処理の効果を元に戻すことができる。この状態でホワイトバランス調整を行うことで、自然な色の調整を行うことが可能となる。
【0048】
また、この第1実施形態においては、色階調変換処理の具体的なアルゴリズムがわからなくとも実施することが可能であることから、色階調変換処理において使用されるアルゴリズムが複雑である場合や、機種毎に違う場合であっても、容易に実施することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
本発明における第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の画像処理プログラムにおいては、逆階調変換LUTを生成する機能の代わりに、逆階調変換LUT及び逆色変換LUTを作成する機能を備えている。以下では、第1の実施形態と同一の機能については、第1の実施形態と同一の符号を付して説明する。
【0050】
図4は、画像処理プログラム40の機能のうち、RAW画像データRI以外の画像データに対して実行される機能について説明する機能ブロック図である。なお、RAW画像データRIに対して実行される機能は、図1に示す機能と同一であることから、以下では、その機能については省略する。
【0051】
画像処理プログラム40は、サンプル色群生成部21、サンプル色階調変換部22、階調情報生成部41、色変換情報生成部42、逆色変換部43、逆階調変換部44、ホワイトバランス調整部25及び逆逆色階調変換部26としての機能を有している。なお、サンプル色群生成部21、サンプル色階調変換部22、ホワイトバランス調整部25、逆逆色階調変換部26は、第1の実施形態と同一であることから、ここでは、これらに対する説明は省略する。
【0052】
階調変換情報生成部41は、サンプル色群生成部21により生成された色階調変換前サンプル色群30と、サンプル色階調変換部22にて生成された色階調変換後サンプル色群34とを用いて、逆階調変換LUT45を生成する。まず、色階調変換前サンプル色群30から無彩色となるサンプル色を抽出し、色階調変換後サンプル色群34から無彩色となるサンプル色に由来するサンプル色を抽出する。これら抽出されたサンプル色の対応関係に基づいて逆階調変換LUT45を生成する。なお、この逆階調変換LUT45は、一次元配列のLUTであり、配列要素を指定する1つの引数が取り得る範囲はそれぞれ0〜255である。一方、各配列要素には、0〜4095の範囲で1つの数値が保持される。
【0053】
詳細には、色階調変換後サンプル色群34の各サンプル色のRGBの何れかの値を引数として配列要素を指定し、サンプル色のRGBの生成元となる色階調変換前サンプル色群30におけるサンプル色のいずれかの値を、指定された配列要素に代入する。なお、複数の色階調変換後サンプル色群34のサンプル色が同じ配列要素に対応する場合は、それら生成元の色階調変換前サンプル色群30のサンプル色の平均値を配列要素に代入すればよい。
【0054】
この処理を全てのサンプル色に対して行い、1次元配列の配列要素のうち、値を代入されなかった要素に対しては、周囲の配列要素の値を代入する。この方法としては、公知の一次元補間方法を用いることができる。この一次元補間方法の一例としては、対象配列要素の第一隣接配列要素の中に値を代入された配列要素が例えば16個以ある場合には、それらの平均値を対象配列要素に代入し、それ以外の場合には第二隣接配列要素までの範囲に対して同様の処理を実行し、値を代入された配列要素が16個以上見つかるまで、範囲を拡大する。そして全ての配列要素に対して処理を行うことで得られる一次元配列が逆階調変換LUT45として生成される。
【0055】
また、この階調変換情報生成部41は、逆階調変換LUT45の他に、階調変換LUT46を生成する。この階調変換LUT46の生成方法としては、逆階調変換LUT45を生成する処理で、色階調変換前サンプル色群30と、色階調変換後サンプル色群34とを逆にした処理を行えばよい。階調変換情報生成部41は、色階調変換前サンプル色群30に対して階調変換LUT46を用いた階調変換を施すことで、階調変換後サンプル色群47を生成する。
【0056】
色変換情報生成部42は、階調変換後サンプル色群47と、色階調変換後サンプル色群34とを用いて逆色変換LUT48を生成する。なお、この色逆変換LUT48の生成方法は、第1の実施形態における逆色階調変換LUT35の生成方法と同じであるので、ここでは、その詳細は省略する。
【0057】
逆色変換部43は、逆色変換LUT48を用いて、入力された画像データPI2に対して逆色変換処理を実行する。逆階調変換部44は、逆階調変換LUT45を用いた逆階調変換処理を、逆色変換処理が施された画像データに対して施す。なお、ここで示す逆色変換処理は、RAW現像処理の際に行われる色座標系の変換処理(色変換処理)とは、逆となる色変換処理を示している。
【0058】
次に、第2の実施形態におけるホワイトバランス調整の手順について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートにおいては、入力された画像データがRAW画像データRIとなる場合については、省略してある。
【0059】
ステップS201は、入力された画像データPI2を読み込む処理である。
【0060】
ステップS202は、色階調変換前サンプル色群30を生成する処理である。このステップS202の処理は、第1の実施形態におけるステップS111の処理と同一の処理内容であることから、ここでは、その詳細は省略する。なお、このステップS202の処理によって生成された色階調変換前サンプル色群30は、階調変換情報生成部41に出力される。
【0061】
ステップS203は、色階調変換後サンプル色群34を生成する処理である。なお、このステップS203の処理は、第1の実施形態におけるステップS112の処理と同一の処理内容であることから、ここでは、その詳細は省略する。なお、このステップS202の処理によって生成された色階調変換後サンプル色群34は、階調変換情報生成部41及び色変換情報生成部42に出力される。
【0062】
ステップS204は、逆階調変換LUT45及び階調変換LUT46を生成する処理である。このステップS204の処理は、階調変換情報生成部41で実行される。上述したように、色階調変換前サンプル色群30、色階調変換後サンプル色群34は、それぞれ階調変換情報生成部41に入力されることから、これらサンプル色群を用いて逆階調変換LUT45、及び階調変換LUT46を生成する。なお、生成された逆階調変換LUT45は、逆階調変換部44に出力される。
【0063】
ステップS205は、階調変換後サンプル色群47を生成する処理である。このステップS205の処理も、階調変換情報生成部41にて実行される。ステップS204の処理において、階調変換LUT46が生成されているので、階調変換情報生成部41は、色階調変換前サンプル色群30に対して階調変換LUT46を用いた階調変換処理を実行し、階調変換後サンプル色群47を生成する。この階調変換後サンプル色群47は、色変換情報生成部42に出力される。
【0064】
ステップS206は、逆色変換LUT48を生成する処理である。上述したように、色変換情報生成部42には、色階調変換後サンプル色群34、階調変換後サンプル色群47がそれぞれ入力されることから、色変換情報生成部42は、これらサンプル色群を用いて逆色変換LUT48を生成する。生成された逆色変換LUT48は、逆色変換部43に出力される。
【0065】
ステップS207は、逆色変換処理である。このステップS208の処理は、逆色変換部43にて実行される。この逆色変換部43には、逆色変換LUT48が入力されることから、画像データに対して逆色変換LUT48を用いた逆色変換処理を実行する。
【0066】
ステップS208は、逆階調変換処理である。このステップS208の処理は、逆階調変換部44にて実行される。逆階調変換部44には逆階調変換LUT45が入力されることから、逆階調変換部44は、逆色変換処理が施された画像データに対して逆階調変換LUT45を用いた逆階調変換処理を実行する。
【0067】
ステップS209は、ホワイトバランス調整を行う処理である。なお、このステップS209の処理は、第1の実施形態におけるステップS115の処理と同一の処理内容であることから、ここでは、その詳細を省略する。
【0068】
ステップS210は、逆逆色階調変換を行う処理である。なお、このステップS210の処理は、第1の実施形態におけるステップS116の処理と同一の処理内容であることから、ここでは、その詳細を省略する。また、このステップS210の処理においては、RAW現像処理における色階調変換処理(図1の色階調変換部17における処理)を利用した色階調変換処理が実行される。これにより、ホワイトバランス調整された画像データPI2’が取得される。
【0069】
この第2の実施形態の場合、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この他に、逆色変換処理と逆色階調変換処理とを分離することによって、逆色変換LUTは、色階調変換前の画像データを生成するLUTとなる。つまり、この逆色変換LUTを用いた変換前後の階調特性が等しくなることから、LUTの各要素の値の起伏を第1の実施形態に比べて緩やかにすることができる。例えば3次元LUTを生成する際には、欠落した箇所を周囲の値で平均した値としており、周囲の値の起伏が小さい場合には、これら周囲の値を平均した値における誤差が小さくなり、より精度の高い逆色変換を行うことができる。
【0070】
[第3の実施形態]
以下、図6を用いて、第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態、第2の実施形態と同一の機能を有する箇所については、同一の符号を付して説明する。この第3の実施形態においては、LUTなどのテーブルデータを用いて逆色変換処理を行わずに、行列を用いて逆色変換処理を実行する点で異なる。また、ホワイトバランス調整後の画像データに対して、階調変換情報生成部41にて生成された階調変換LUT46を用いた階調変換処理を階調変換部57にて実行した後、逆色変換処理で使用する行列の逆行列を用いた逆逆色変換処理を逆逆色変換部58にて実行する点についても異なる。
【0071】
以下では、第3の実施形態の画像処理プログラム50における色変換情報生成部52の機能について説明する。まず、色変換情報生成部52において逆色変換近似行列を生成する方法について説明する。例えば階調変換後サンプル色群47のi個目のサンプル色をSi=(RSi,GSi,BSi)、色階調変換後サンプル色群34のi個目のサンプル色をUi=(RUi,GUi,BUi)とする。ここで、Tは転置記号であり、Si及びUiをそれぞれ横1×縦3の行列として定義している。そして、Mk1+Mk2+Mk3=1(k=1,2,3)の制約条件の下に、(1)式におけるEを最小化する3行3列の色変換行列Mを算出する。なお、Mk1+Mk2+Mk3=1(k=1,2,3)の制約条件は、無彩色を色変換した場合に、は必ず無彩色になるという制約である。この制約条件は、通常の色階調変換処理や彩度強調処理を満たすべき条件なので、その逆色変換を生成する場合にも、その制約条件が守られることが望ましい。
【0072】
【数1】


数式1に示すMUiは、色階調変換後サンプル色群34のi番目のサンプル色を色変換行列Mで色変換した値である。そして、Eは、行列Mによって色階調変換後のサンプル色を色変換した結果が階調変換後のサンプルに対してどれだけ誤差を持つかを表し、Eが小さいほど良い近似をしていることになる。
【0073】
このEを最小化する3行3列の色変換行列Mの算出は、周知のラグランジェの未定乗数法を用いることで算出される。この算出された色変換行列Mを、逆色変換近似行列59とする。この逆色変換近似行列59を求めた後、この行列Mの逆行列M−1を算出し、逆逆色変換近似行列60とする。なお、生成される逆逆色変換近似行列60は、逆逆色変換部58にて用いられる。
【0074】
以下、第3の実施形態における処理の流れについて、図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップS301〜ステップS305における処理は、第2の実施形態におけるステップS201〜S205の処理と同一であるので、ここでは、その詳細については省略する。
【0075】
ステップS306は、逆色変換近似行列59、及び逆逆色変換近似行列60を生成する処理である。このステップS306における処理は、色変換情報生成部42にて実行される。色変換情報生成部42には、階調変換後サンプル色群47及び色階調変換後サンプル色群34が入力されている。色変換情報生成部42は、階調変換後サンプル色群47のi個目のサンプル色をSi=(RSi,GSi,BSi)T、色階調変換後サンプル色群34のi個目のサンプル色をUi=(RUi,GUi,BUi)Tとして抽出し、これら抽出されたサンプル色が、上述した数式1を満足するような行列Mを逆色変換近似行列59として求める。また、逆色変換近似行列59を求めた後、この行列の逆数行列を逆逆色変換近似行列60として算出する。
【0076】
ステップS307は、逆色変換処理である。このステップS306の処理は、逆色変換部43にて実行される。この逆色変換部43には、逆色変換近似行列59が入力されるので、逆色変換部43は、逆色変換近似行列59を用いて、入力された画像データに対する逆色変換処理を実行する。なお、ステップS308、ステップS309の処理は、第2の実施形態におけるステップS208、ステップS209と同一の処理であるので、ここではその詳細については省略する。
【0077】
ステップS310は、階調変換処理である。このステップS310の処理は、階調変換部57にて実行される。階調変換部57には、階調変換情報生成部41によって生成された階調変換LUT46が入力されるので、階調変換部57は、階調変換LUT46を用いて、入力された画像データに対する階調変換処理を実行する。
【0078】
ステップS311は、逆逆色変換処理である。このステップS311の処理は、逆逆色変換部58において実行される。逆逆色変換部58には逆逆色変換近似行列60が入力されることから、逆逆色変換部58は、逆逆色変換近似行列60を用いて、逆逆色階調変換処理が実行された画像データに対して逆逆色変換処理を実行する。これにより、画像データPI3に対してホワイトバランス調整が施された画像データPI3’が取得される。
【0079】
第3の実施形態においては、第1の実施形態と同様の効果を有している。また、第3の実施形態においては、三次元LUTの使用を避け、逆色変換近似行列59と逆階調変換LUT45のみによって逆色階調変換処理を実行していることから、三次元LUTを用いる場合のメモリ容量を削減できる他に、三次元LUTを作成する処理時間を削減することができる。また、逆色階調変換処理が近似的に行われているので、ホワイトバランス調整後に色階調変換の状態を元に戻す処理において、RAW画像データRIを処理するのに使用される色階調変換部を利用することを避け、近似的な逆色階調変換処理に対して厳密に逆の色階調変換処理を行っている。そのため、ホワイトバランス調整時の調整係数を1にした場合には入力画像と補整後画像の色が異なるということはない。
【0080】
本発明の第1〜第3の実施形態においては、色階調変換前サンプル色群、色階調変換後サンプル色群のそれぞれを生成する実施形態としているが、これらサンプル色群のいずれか一方は、予め生成されているものであってもよい。この場合、カメラの機種、階調モード、色モードに合わせて複数のサンプル色群を予め生成しておく必要がある。
【0081】
本発明の他の実施形態としては、色階調変換前サンプル色群の生成の際に、画素値の間隔を等間隔で生成しているが、それを階調変換処理や色階調変換処理を行った場合、サンプルの分布が高輝度部に偏ることになる。これを解消するために、例えばsRGBガンマなどの適当なガンマの逆ガンマを予め指定しておき、画素値の間隔を等間隔で生成したサンプル色群に対して逆階調変換を施したものを、色階調変換前サンプル色群として生成するようにしてもよい。
【0082】
また、第3の実施形態においては、サンプル色群生成部が生成するサンプル色群の個数については、言及していないが、生成する色変換の自由度が限定的であることから、サンプル数を多くしてもあまり効果が得られない。階調変換LUTを生成する際の無彩色のサンプル色は、多いことが望ましいが、有彩色のサンプル色の個数は、少なくても良く、例えば、256個の1/512ぐらいの個数で間引くことも可能である。
【0083】
本実施形態では、RAW画像データを現像処理する機能の他に、色階調変換処理などの画像処理が施された後の画像データに対するホワイトバランス調整を行う機能を有する画像処理プログラムについて説明しているが、これに限定する必要はなく、RAW画像データを現像処理する機能を有している必要はない。
【0084】
本発明では、色階調変換処理などの画像処理が施された後の画像データに対するホワイトバランス調整を行う画像処理プログラム、及び画像処理方法について説明しているが、本発明の画像処理プログラムや画像処理方法は、パーソナルコンピュータ(PC)、カメラ、或いは現像処理装置で実行させることも可能である。つまり、この画像処理プログラムをPC、カメラ、或いは現像装置にて実行させることで、これら機器を画像処理装置として使用することができる。なお、この場合、画像処理プログラムは、予め上述した機器に設けられたメモリやストレージに記憶させておく、または、PCや現像処理装置にて読み取ることができるCDなどの光学ディスクに記憶させておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】RAW現像処理を行う際の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】第1の実施形態において、画像データに対してホワイトバランス調整を行う場合の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態において、ホワイトバランス調整を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態において、画像データに対してホワイトバランス調整を行う場合の機能ブロック図である。
【図5】第2の実施形態において、ホワイトバランス調整を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第3の実施形態において、画像データに対してホワイトバランス調整を行う場合の機能ブロック図である。
【図7】第3の実施形態において、ホワイトバランス調整を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
10…画像処理プログラム、17…色階調変換部、21…サンプル色群生成部、22…サンプル色階調変換部、23…逆色階調変換LUT生成部、24…逆色階調変換部、25…ホワイトバランス調整部、26…逆逆色階調変換部、30…色階調変換前サンプル色群、34…色階調変換後サンプル色群、35…逆色階調変換LUT、41…階調変換情報生成部、42,52…色変換情報生成部、43…逆色変換部、44…逆階調変換部、45…逆階調変換LUT、46…階調変換LUT、47…階調変換後サンプル色群、48…逆色変換LUT、57…階調変換部、58…逆逆色変換部、59…逆色変換近似行列、60…逆逆色変換近似行列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像データに現像処理を施した画像データに対して、前記現像処理用の色階調変換処理と逆の変換処理である第1色階調変換処理を施す第1色階調変換工程と、
色階調変換前サンプル色群と、該色階調変換前サンプル群に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を施した色階調変換後サンプル色群とから、前記第1色階調変換工程で用いる第1色階調変換情報を生成する変換情報生成工程と、
前記第1色階調変換工程後の画像データに、前記現像処理時のホワイトバランス補正を調整するホワイトバランス調整工程と、
前記ホワイトバランス調整工程後の画像データに、前記第1色階調変換処理とは逆の変換処理である第2色階調変換処理を施す第2色階調変換工程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記第2色階調変換処理は、前記現像処理用の色階調変換処理を用いることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像処理方法において、
前記第1色階調変換情報は、前記第1色階調変換処理が行われた画像データと前記現像処理用の色階調変換処理前の画像データとがほぼ等しい画像データとなるように、前記第1色階調変換処理を特定する情報からなり、
前記変換情報生成工程は、前記第1色階調変換情報を生成する他に、前記第2色階調変換処理を特定する第2色階調変換情報を生成し、
前記第2色階調変換工程は、前記第2色階調変換情報を用いて前記第2色階調変換処理を実行することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群と前記色階調変換後サンプル色群との対応関係から、前記第1色階調変換処理で用いる色階調変換用のテーブルデータを前記第1色階調変換情報として生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群から得られる無彩色のサンプル色群と、前記色階調変換後サンプル色群のうち、前記無彩色のサンプル色群に由来するサンプル色群との対応関係から階調変換情報を生成する階調変換情報生成工程を備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、
前記階調変換情報を用いた階調変換処理を前記色階調変換前サンプル色群に対して行うことで、階調変換後サンプル色群を生成する階調変換サンプル生成工程と、
前記階調変換後サンプル色群と前記色階調変換後サンプル色群との対応関係に基づいた色変換情報を生成する色変換情報生成工程と、
前記階調変換情報から、前記階調変換処理と逆の変換処理となる逆階調変換処理で用いる逆階調変換情報を生成する逆階調変換情報生成工程と、をさらに備え、
前記変換情報生成工程は、前記逆階調変換情報と前記色変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、
前記階調変換情報を用いた階調変換処理を前記色階調変換前サンプル色群に対して行うことで、階調変換後サンプル色群を生成する階調変換サンプル生成工程と、
前記階調変換処理とは逆の変換処理となる逆階調変換処理に用いる逆階調変換情報を、前記階調変換情報に基づいて生成する逆階調変換情報生成工程と、
前記階調変換後サンプル色群と前記色階調変換後サンプル群との対応関係から、色変換処理とは逆の変換処理となる逆色変換処理で用いる色変換用のテーブルデータを生成するテーブルデータ生成工程と、をさらに備え、
前記変換情報生成処理は、前記色変換用のテーブルデータと前記逆階調変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、
前記色階調変換前サンプル色群に対して、前記階調変換情報により階調変換処理を施す階調変換工程と、
前記階調変換処理を行うことにより得られる階調変換後サンプル色群の各色成分を、前記色階調変換後サンプル色群の各色成分の線形和によって近似する逆色変換行列を生成する行列生成工程と、
前記階調変換処理とは逆の変換処理となる逆階調変換処理を特定する逆階調変換情報を生成する逆階調変換情報生成工程と、をさらに備え、
前記変換情報生成工程は、前記逆色変換行列と前記逆階調変換情報とを組み合わせることで、前記第1色階調変換情報を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記逆色変換行列の逆行列を生成する逆行列生成工程を、さらに備え、
前記変換情報生成工程は、前記階調変換情報と前記逆色変換行列の逆行列とを第2色階調変換情報として生成することを特徴とする画像処置方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群を生成する変換前サンプル生成工程を備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記色階調変換後サンプル色群を生成する変換後サンプル生成工程を備えており、
前記変換後サンプル生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を施すことで前記色階調変換後サンプル色群を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項1〜10いずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記変換情報生成工程は、前記色階調変換前サンプル色群の色成分を、各画素の色成分として有する色階調変換前サンプル色画像を生成した後、該色階調変換前サンプル色画像に対して前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理を行うことで色階調変換後サンプル色画像を生成し、
前記色階調変換後サンプル色画像の各画素の色成分を前記色階調変換後サンプル色群の各色成分として抽出することで、前記色階調変換後サンプル色群を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項1記載の画像処理方法を実施する機能を備えた画像処理装置において、
撮像により取得された原画像データに、少なくともホワイトバランス補正処理と色階調変換処理とを含む現像処理を施すことにより鑑賞用の画像を生成する機能をさらに備え、
前記現像処理に含まれる色階調変換処理を、請求項1に記載の前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理として用いることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
請求項1記載の画像処理方法を実施する機能を備えた画像処理プログラムにおいて、
撮像により取得された原画像データに対して、少なくともホワイトバランス補正処理と色階調変換処理とを含む現像処理を施すことにより鑑賞用の画像を生成する機能をさらに備え、
前記現像処理に含まれる色階調変換処理を、請求項1に記載の前記現像処理用の色階調変換処理と実質的に等しい色階調変換処理として用いることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201027(P2009−201027A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43040(P2008−43040)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】