説明

画像処理機能付き撮像装置及び検査システム

【課題】カメラ側と電子部品実装機等の生産装置の制御コンピュータ側との間のデータの通信処理に要する時間を大幅に短縮して、高速処理化の要求を満たす。
【解決手段】撮像装置11のCPUは、電子部品実装機の稼働前に、基準治具を水平方向からカメラ15で撮像して、基準治具の計測基準位置(最下点の高さ位置)を検出してそのデータをRAM等に記憶し、電子部品実装機の稼働中に、被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)を水平方向からカメラ15で撮像して当該被撮像物の計測対象位置(最下点の高さ位置)を検出して、この計測対象位置と計測基準位置との差分データを算出して電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。そして、電子部品実装機の制御コンピュータは、受信した差分データに基づいて吸着部品20の吸着状態の良否や吸着部品20の有無を検査したり、吸着部品20の厚みを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理後のデータを出力する機能を備えた画像処理機能付き撮像装置及び検査システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品実装機においては、電子部品実装機の吸着ノズルに吸着された電子部品(以下「吸着部品」という)をその下方からカメラで撮像し、このカメラから出力される画像データを電子部品実装機の制御コンピュータに転送し、この制御コンピュータで画像処理して吸着部品の吸着状態の良否を検査するようにしたものがある。
【0003】
また、特許文献1(特開2002−232193号公報)に記載されているように、吸着ノズルの下端部を水平方向からカメラで撮像して吸着ノズルの下端位置を検出し、この吸着ノズルの下端位置が予め設定した所定値以内であるか否かで吸着ノズルの良否を検査するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2002−232193号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したカメラを用いた検査システムでは、カメラから出力される画像データを電子部品実装機の制御コンピュータに転送し、この制御コンピュータで画像処理して吸着部品の吸着状態の良否や吸着ノズルの良否を検査するようにしているが、カメラから出力される画像データは、データ容量が大きいため、電子部品実装機の制御コンピュータに画像データを転送する処理にかなりの時間がかかってしまう。このため、画像データの転送時間(通信処理時間)が電子部品実装機の高速化を妨げる要因となっていた。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、カメラ側(撮像装置側)と電子部品実装機等の生産装置の制御コンピュータ側との間のデータの通信処理に要する時間を大幅に短縮することができ、高速処理化の要求を満たすことができる画像処理機能付き撮像装置及び検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、電子部品実装機等の生産装置に取り付けて使用する画像処理機能付き撮像装置であって、被撮像物を撮像するカメラと、基準画像の計測基準位置のデータを記憶する記憶手段と、前記カメラの撮像動作を制御すると共に前記カメラから出力される前記被撮像物の画像データを取り込んで前記被撮像物の計測対象位置と前記基準画像の計測基準位置との差分データを出力する画像処理手段とを備えた構成となっている。
【0007】
この構成では、画像処理機能付き撮像装置から生産装置の制御コンピュータに送信するデータは、大容量の画像データではなく、画像処理手段で処理された少数の差分データであるため、撮像装置側と生産装置の制御コンピュータ側との間のデータの通信処理に要する時間を大幅に短縮することができ、高速処理化の要求を満たすことができる。しかも、撮像装置側や生産装置の制御コンピュータ側に高価な高速通信機能を搭載する必要がなく、通信機能を低コスト化できるという利点もある。
【0008】
この場合、請求項2のように、被撮像物の計測対象位置は、当該被撮像物の最下点の高さ位置とすると良い。例えば、被撮像物が吸着ノズルの場合は、吸着ノズルの最下点の高さ位置が計測対象位置となる。
【0009】
また、請求項3のように、カメラは、走査方向が被撮像物の長手方向となるように設置すると良い。例えば、被撮像物が吸着ノズルの場合は、被撮像物の長手方向が上下方向となるため、カメラは、走査方向が上下方向となるように設置すれば良い。このようにすれば、吸着ノズル等の縦長の被撮像物に対しては、カメラの撮像エリア全体を走査しなくても、被撮像物が存在する一部のエリアのみに限定して走査するだけで被撮像物の計測に必要な画像データを得ることができ、撮像装置側の画像処理時間を短くすることができる。
【0010】
また、請求項4のように、基準治具をカメラで撮像して取り込んだ画像を基準画像として用いるようにすると良い。このようにすれば、被撮像物の種類に応じて基準治具を取り替えることで、実際の被撮像物に合った基準画像を用いて計測基準位置のデータを記憶手段に記憶させることができる。
【0011】
また、請求項5のように、本発明の画像処理機能付き撮像装置を電子部品実装機に取り付け、この電子部品実装機の吸着ノズルに吸着された電子部品(以下「吸着部品」という)を被撮像物とし、前記吸着部品を水平方向からカメラで撮像し、前記画像処理機能付き撮像装置から出力される差分データを前記電子部品実装機の制御コンピュータに取り込み、この制御コンピュータで前記差分データに基づいて前記吸着部品の吸着状態の良否又は吸着部品の有無を検査し若しくは吸着部品の厚みを検出するようにしても良い。このようにすれば、撮像装置側と電子部品実装機の制御コンピュータ側との間のデータの通信処理に要する時間を大幅に短縮することができ、電子部品実装機の高速化の要求を満たすことができる。
【0012】
更に、請求項6のように、電子部品実装機の吸着ノズルを被撮像物とし、前記吸着ノズルを水平方向から前記カメラで撮像し、前記撮像装置から出力される差分データを前記電子部品実装機の制御コンピュータに取り込み、この制御コンピュータで前記差分データに基づいて前記吸着ノズルの良否を検査するようにしても良い。この場合も、上記請求項5と同様の効果を得ることができる。
【0013】
この場合、請求項7のように、撮像装置の画像処理手段は、吸着ノズルを吸着保持する吸着ホルダに、当該吸着ノズルに代えて基準治具を吸着した状態で、当該基準治具を水平方向からカメラで撮像して取り込んだ画像を基準画像として記憶手段に記憶するようにすれば良い。このようにすれば、吸着ノズルに吸着した電子部品を撮像する場合と同じ条件で基準治具を撮像して基準画像を取り込むことができ、実際の吸着ノズルに合った基準画像を記憶手段に記憶させることができる。
【0014】
また、請求項8のように、基準治具の最下点の高さ位置を計測基準位置として記憶手段に記憶し、撮像装置の画像処理手段は、カメラで撮像した吸着ノズルの最下点の高さ位置と基準治具の計測基準位置との高低差を差分データとして出力し、電子部品実装機の制御コンピュータは、吸着ホルダに基準治具を吸着した状態で該基準治具を基板実装面に当接させるまでの下降量を基準ストロークとして検出し、この基準ストロークを前記差分データで補正して実装作業時の吸着ノズルのストロークを決定するようにしても良い。このようにすれば、撮像装置から出力される差分データを利用して実装作業時の吸着ノズルのストロークを算出することができ、実装作業開始前の吸着ノズルのストロークの確認作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
本実施例では、電子部品実装機に画像処理機能付き撮像装置11を取り付けて使用する例を説明するが、本発明の画像処理機能付き撮像装置11は、電子部品実装機以外の様々な生産装置に取り付けて使用可能である。
【0016】
電子部品実装機は、図1に示すように、レボルバー型(ロータリ型)の装着ヘッド12を備え、この装着ヘッド12の下面側に複数本の吸着ノズル13が円周方向に所定間隔で配列されている。各吸着ノズル13は、装着ヘッド12に昇降可能に設けられた吸着ホルダ14に下向きに吸着保持され、各吸着ホルダ14には、後述する基準治具41(図3、図4参照)を吸着ノズル13と取り替えて吸着保持できるようになっている。尚、装着ヘッド12は、図示はしないが、XYスライド機構のうちのY方向に移動するYスライドに支持され、Yスライドは、X方向に移動するXスライド上に搭載されている。
【0017】
一方、画像処理機能付き撮像装置11は、Yスライドに着脱可能に支持された装着ヘッド12に取り付けられ、装着ヘッド12と一体的に移動するようになっている。この画像処理機能付き撮像装置11は、CCDカメラ等のカメラ15、液晶表示器(LCD)等の表示器16、被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)を照明するLED等の照明光源17、これらの動作を制御するメインコントロール基板18、カメラ15の光軸を被撮像物に合わせるプリズム19を備えている。本実施例では、照明光源17は、UV光を照射するUV照明用LEDであり、装着ヘッド12の中心部下方には、照明光源17からのUV光により蛍光を発生して被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)を裏側から照明する円筒型の蛍光反射板21が設けられている。
【0018】
図2に示すように、メインコントロール基板18には、CPU22(画像処理手段)、ROM23、RAM24(記憶手段)、制御用ネットワークIC25、照明光源17(UV照明用LED)を駆動するLEDドライバ26、カメラ15から出力される画像データを二値化する二値化回路27、表示器16(LCD)を駆動するLCDドライバ28等が搭載されている。
【0019】
表示器16(LCD)は、中継基板29とフレキシブルフラットケーブル(FFC)等のケーブル30を介してメインコントロール基板18に接続されている。中継基板29には、操作用の押し釦スイッチ31,32が設けられ、この押し釦スイッチ31,32を操作することで、表示器16の表示モードを切り替えるようになっている。その他、表示器16の表示モードは、電子部品実装機の制御コンピュータ(図示せず)から送信されてくる表示モード切替信号によっても切り換えられるようになっている。また、カメラ15と照明光源17(UV照明用LED)も、それぞれフレキシブルフラットケーブル(FFC)等のケーブル33,34を介してメインコントロール基板18に接続されている。
【0020】
このメインコントロール基板18は、ハーネス35を介して電子部品実装機の制御コンピュータ(図示せず)に接続され、メインコントロール基板18と電子部品実装機の制御コンピュータとの間で信号を送受信すると共に、電子部品実装機の制御コンピュータから撮像装置11に直流電源が供給されるようになっている。
【0021】
次に、上記構成の画像処理機能付き撮像装置11の動作を説明する。
画像処理機能付き撮像装置11のCPU22は、電子部品実装機の制御コンピュータから送信されてくる閾値データ、各種パラメータ、動作コマンド(撮像トリガ)等の情報を受信する。そして、動作コマンド(撮像トリガ)を受信した時点で、カメラ15の撮像動作を開始し、カメラ15から出力される被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)の画像データを取り込んで画像処理を行い、その処理結果である差分データを電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。
【0022】
この際、撮像装置11のCPU22は、次のようにして画像処理を実行する。
電子部品実装機の稼働前に、吸着ノズル13を吸着保持する吸着ホルダ14に、当該吸着ノズル13に代えて基準治具41[図3(a)、図4(a)参照]を吸着した状態で、当該基準治具41を水平方向からカメラ15で撮像して取り込んだ画像を基準画像とし、その基準画像の計測基準位置のデータをRAM24に記憶する。
【0023】
本実施例のように、装着ヘッド12に複数本の吸着ノズル13を吸着させる場合は、各吸着ホルダ14を吸着保持する各吸着ホルダ14にそれぞれ基準治具41を吸着させてカメラ15で撮像して、吸着ノズル13の本数と同じ数の基準画像の計測基準位置のデータをRAM24に記憶する。この基準画像に表される基準治具41の最下点の高さ位置(Z座標データ)が計測基準位置となる[図3(a)、図4(a)参照]。
【0024】
尚、撮像装置11の電源オフ中でも基準画像の計測基準位置のデータを記憶保持するために、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリに基準画像の計測基準位置のデータを記憶するようにしても良い。或は、電子部品実装機の制御コンピュータからのコマンドによって、基準画像の計測基準位置のデータを記憶するメモリをRAM24と不揮発性メモリとの間で切り換えるようにしても良い。また、撮像装置11を製造するメーカー側で作成した標準的な基準画像の計測基準位置のデータをROM23等の不揮発性メモリに記憶しておくようにしても良い。
【0025】
電子部品実装機の稼働中に、吸着ノズル13の良否を検査する場合、撮像装置11のCPU22は、装着ヘッド12の吸着ホルダ14に吸着ノズル13を吸着した状態(吸着部品無し)で当該吸着ノズル13を水平方向からカメラ15で撮像して吸着ノズル13の撮像画像[図3(b)参照]を取り込む。そして、この撮像画像に表される吸着ノズル13の最下点の高さ位置(Z座標データ)が計測対象位置となる。そして、この計測対象位置(吸着ノズル13の最下点の高さ位置)と基準画像の計測基準位置(基準治具41の最下点の高さ位置)との高低差(Z座標データ)を算出して、これを差分データとして電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。
【0026】
電子部品実装機の制御コンピュータは、受信した差分データに基づいて吸着ノズル13の良否を検査する。例えば、差分データが予め製造公差を考慮して設定した許容誤差範囲内にあるか否かで吸着ノズル13の良否を検査すれば良い。
【0027】
また、この差分データを用いて電子部品実装機の吸着ノズル13のストローク(昇降量)を決定する場合、電子部品実装機の稼働前に、電子部品実装機の制御コンピュータは、装着ヘッド12の吸着ホルダ14に基準治具41を吸着した状態で、該基準治具41を基板実装面との相対高さが予め規定されたタッチセンサ(図示せず)に当接させるまで下降させることで、基準治具41を基板実装面に当接させるまでの下降量を基準ストロークとして検出する。そして、検出した基準ストロークを上記差分データで補正して実装作業時の吸着ノズル13のストロークを決定する。例えば、計測対象位置(吸着ノズル13の最下点の高さ位置)が基準画像の計測基準位置(基準治具41の最下点の高さ位置)よりも下方に位置する場合は、基準ストロークを差分データ分だけ減算した値を実装作業時の吸着ノズル13のストロークと決定する。このようにすれば、撮像装置11から出力される差分データを利用して実装作業時の吸着ノズル13のストロークを算出することができ、実装作業開始前の吸着ノズル13のストロークの確認作業が容易となる。
【0028】
一方、電子部品実装機の稼働中に、吸着部品20の吸着状態の良否や吸着部品20の有無を検査したり、吸着部品20の厚みを検出する場合、撮像装置11のCPU22は、吸着ノズル13に電子部品20を吸着した状態で、当該吸着ノズル13と吸着部品20を水平方向からカメラ15で撮像して吸着ノズル13と吸着部品20の撮像画像[図4(b),(c)参照]を取り込む。そして、この撮像画像に表される吸着部品20の最下点の高さ位置(Z座標データ)が計測対象位置となる。そして、この計測対象位置(吸着部品20の最下点の高さ位置)と基準画像の計測基準位置(基準治具41の最下点の高さ位置)との高低差を算出して、これを差分データ(Z座標データ)として電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。
【0029】
電子部品実装機の制御コンピュータは、受信した差分データに基づいて吸着部品20の吸着状態の良否や吸着部品20の有無を検査したり、吸着部品20の厚みを検出する。例えば、差分データが予め製造公差を考慮して設定した許容誤差範囲内にあるか否かで吸着部品20の吸着状態の良否を判定すれば良い。この際、差分データが標準値(中央値)よりも最大許容誤差以上大きければ、斜め吸着[図4(c)参照]と判定するようにしても良い。
【0030】
また、受信した差分データが吸着部品無しの吸着ノズル13のみの差分データ[図3(b)参照]とほぼ同じであるか否かで、吸着部品無し/有りを判定するようにしても良い。
【0031】
或は、吸着部品有りの差分データ[図4(b)参照]と吸着部品無しの差分データ[図3(b)参照]との差分を算出して、この差分を吸着部品20の厚みとして検出するようにしても良い。
【0032】
本実施例では、カメラ15の画像サイズは、例えば640×480(VGA)であり、被撮像物(吸着ノズル13)が上下方向に長い形状で、且つ、計測対象位置が最下点の高さ位置であることを考慮して、カメラ15を90°反時計回りに回転させて走査方向が被撮像物の長手方向(上下方向)となるように設置している。更に、カメラ15には、パーシャル機能(撮像エリアの任意の一部分の画像データのみを出力する機能)が搭載され、図5に示すように、撮像エリアのうちの吸着ノズル13の下端部や吸着部品20が存在する部分のみをパーシャル機能で走査範囲として設定して、下方から上方に走査して画像データをメインコントロール基板18の二値化回路27に順次出力する。そして、二値化回路27は、入力された画像データをパイプライン処理で所定の閾値で二値化処理して、二値化処理後のデータをRAM24に記憶する。このように、パーシャル機能で走査範囲を限定することで、画像処理時間を短縮することができる。上記各差分データは、RAM24に記憶された二値化処理後のデータを用いて算出される。なお、カメラ15を90°回転させて搭載することで、画像データの読み出し方向と吸着ノズル13(吸着部品20)の最下点の走査方向(下から上方向)が一致させられているので、二値化処理時に同時に吸着ノズル13(吸着部品20)の最下点の探索処理も行うようにすれば、さらに画像処理時間を短縮することができる。
【0033】
また、本実施例では、撮像装置11のCPU22は、次のようにしてカメラ15の分解能を測定する分解能測定機能を実現する。電子部品実装機の吸着ホルダ14に、吸着ノズル13に代えて、所定寸法X[mm]×Z[mm]の分解能測定治具42(図6参照)を吸着した状態で、当該分解能測定治具42を水平方向からカメラ15で撮像して取り込む。そして、この撮像画像に表される分解能測定治具42のX座標方向の幅の画素数NxとZ座標方向の幅の画素数Nzをカウントして、X座標方向とZ座標方向の分解能をそれぞれ次式により算出する。
【0034】
X座標方向の分解能=X/Nx
Z座標方向の分解能=Z/Nz
この分解能のデータは、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリに記憶され、撮像装置11の電源オフ中でもその記憶データが保持される。
【0035】
また、本実施例では、撮像装置11のCPU22は、次のようにして、吸着ノズル13に付着したごみ等の異物の有無又は吸着ノズル13の変形等を検査する形状比較機能を実現する。電子部品実装機の稼働前に、装着ヘッド12の吸着ホルダ14に、通常使用する吸着ノズル13と同一の形状で且つ異物の付着していない基準ノズル43[図7(a)参照]を吸着した状態で、当該基準ノズル43を水平方向からカメラ15で撮像して取り込んだ画像を基準ノズル画像とし、この基準ノズル画像を二値化処理した後、基準ノズル画像のZ座標毎のX座標方向の画素数をカウントして、それを形状基準データ[図7(b)参照]としてRAM24(又は書き換え可能な不揮発性メモリ)に記憶する。
【0036】
そして、電子部品実装機の稼働中に、撮像装置11のCPU22は、装着ヘッド12の吸着ホルダ14に吸着ノズル13を吸着した状態(吸着部品無し)で当該吸着ノズル13を水平方向からカメラ15で撮像して吸着ノズル13の撮像画像[図8(a)参照]を取り込み、この吸着ノズル13の撮像画像を二値化処理した後、この吸着ノズル13の撮像画像のZ座標毎のX座標方向の画素数をカウントして、それを形状計測データ[図8(b)参照]としてRAM24に記憶する。そして、吸着ノズル13の形状計測データと形状基準データとをZ座標毎に比較して、Z座標毎に両者の画素数の差(又はその絶対値)を算出し、両者の画素数の差(又はその絶対値)が所定の閾値以上であるか否かで、吸着ノズル13に付着する異物の有無又は吸着ノズル13の変形の有無を検査する。この際、両者の画素数の差(又はその絶対値)が閾値以上となるZ座標の数が所定数以上であるか否かで、異物付着の有無又は吸着ノズル13の変形の有無を検査するようにしても良い。
【0037】
ところで、基準ノズル画像の面積と吸着ノズル13の撮像画像の面積とを比較して異物付着の有無又は吸着ノズル13の変形の有無を検査する面積比較法を採用することが考えられるが、吸着ノズル13の画像の面積に対して異物付着や吸着ノズル13の変形による面積変化の割合が非常に小さいため、面積比較法では、小さな異物の付着や吸着ノズル13の小さな変形を検出することは困難である。
【0038】
これに対して、本実施例のように、Z座標毎にX座標方向の画素数を比較する形状比較法では、小さな異物の付着や吸着ノズル13の小さな変形でも、X座標方向の画素数の差が大きくなるZ座標が存在するため、小さな異物の付着や吸着ノズル13の小さな変形を容易に検出することができ、異物付着の有無や吸着ノズル13の変形の有無を精度良く検査することができる。
【0039】
以上説明した画像処理を行うために、撮像装置11のCPU22は、ROM23に記憶された図9、図10の各プログラム等を実行する。以下、図9、図10の各プログラムの処理内容を説明する。
【0040】
図9の分解能測定プログラムが起動されると、まずステップ101で、前述したように所定寸法X[mm]×Z[mm]の分解能測定治具42をカメラ15で撮像して、そのX座標方向の幅の画素数NxとZ座標方向の幅の画素数Nzをカウントして、X座標方向とZ座標方向の分解能をそれぞれ次式により算出する。
X座標方向の分解能=X/Nx
Z座標方向の分解能=Z/Nz
【0041】
この後、ステップ102に進み、X座標方向とZ座標方向の分解能が正常範囲内であるか否かを判定し、正常範囲内でなければ、上記ステップ101に戻り、再度、X座標方向とZ座標方向の分解能を算出して、分解能が正常範囲内であるか否かを判定する処理を繰り返す。
【0042】
そして、このステップ102で、分解能が正常範囲内であると判定されれば、ステップ103に進み、分解能のデータをEEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリに書き込んで本プログラムを終了する。
【0043】
一方、図10の差分計測プログラムが起動されると、まずステップ201で、電子部品実装機の制御コンピュータから送信されてくる基準画像撮像指示を受信したか否かを判定し、基準画像撮像指示を受信するまで待機する。その後、基準画像撮像指示を受信した時点で、ステップ202に進み、基準画像撮像回数カウンタiを初期値“1”にセットする。
【0044】
この後、ステップ203に進み、装着ヘッド12のi番目のノズル位置に吸着された基準治具41(以下「i番目の基準治具41」という)をカメラ15で撮像した後、ステップ204に進み、i番目の基準治具41の最下点の高さ位置(計測基準位置)をRAM24又は書き換え可能な不揮発性メモリに記憶し、次のステップ205で、i番目の基準治具41の最下点の高さ位置(計測基準位置)のデータを電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。
【0045】
この後、ステップ206に進み、基準画像撮像回数カウンタiを1つインクリメントして、次のステップ207で、基準画像撮像回数カウンタiのカウント値(基準画像の撮像回数)が装着ヘッド12のノズル吸着本数nを越えたか否かを判定し、基準画像撮像回数カウンタiのカウント値がノズル吸着本数n以下であれば、上述したステップ203〜206の処理を繰り返して、次のノズル位置に吸着された基準治具41の最下点の高さ位置を記憶し且つ送信する。
【0046】
そして、全てのノズル位置の基準治具41について、最下点の高さ位置の記憶・送信を終了すると、ステップ207で「Yes」と判定されてステップ208に進み、電子部品実装機の制御コンピュータから送信されてくる差分計測指示を受信したか否かを判定し、差分計測指示を受信するまで待機する。その後、差分計測指示を受信した時点で、ステップ209に進み、被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)をカメラ15で撮像して、被撮像物の最下点の高さ位置(計測対象位置)を検出する。
【0047】
そして、次のステップ210で、当該被撮像物と同じノズル位置の基準治具41の最下点の高さ位置(計測基準位置)と当該被撮像物の最下点の高さ位置(計測対象位置)との差分データ(高低差)を算出した後、ステップ211に進み、差分データを電子部品実装機の制御コンピュータに送信する。
【0048】
以上説明した本実施例によれば、撮像装置11のCPU22は、電子部品実装機の稼働前に、基準治具41を水平方向からカメラ15で撮像して、基準治具41の計測基準位置(最下点の高さ位置)を検出してそのデータをRAM24等に記憶し、電子部品実装機の稼働中に、被撮像物(吸着ノズル13や吸着部品20)を水平方向からカメラ15で撮像して当該被撮像物の計測対象位置(最下点の高さ位置)を検出して、この計測対象位置と計測基準位置との差分データを算出して電子部品実装機の制御コンピュータに送信し、この電子部品実装機の制御コンピュータにて、受信した差分データに基づいて吸着部品20の吸着状態の良否や吸着部品20の有無を検査したり、吸着部品20の厚みを検出するようにしたので、画像処理機能付き撮像装置11から電子部品実装機の制御コンピュータに送信するデータは、大容量の画像データではなく、撮像装置11側で画像処理された少数の差分データとなる。このため、撮像装置11側と電子部品実装機の制御コンピュータ側との間のデータの通信処理に要する時間を大幅に短縮することができ、高速処理化の要求を満たすことができる。しかも、撮像装置11側や電子部品実装機の制御コンピュータ側に高価な高速通信機能を搭載する必要がなく、通信機能を低コスト化できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例おける画像処理機能付き撮像装置と電子部品実装機の装着ヘッド部分の構成を概略的に説明する図である。
【図2】画像処理機能付き撮像装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】(a)はカメラで撮像した基準治具の画像を示す図であり、(b)はカメラで撮像した吸着ノズルの画像を示す図である。
【図4】(a)はカメラで撮像した基準治具の画像を示す図であり、(b)はカメラで撮像した吸着ノズルの正常吸着時の画像を示す図であり、(c)はカメラで撮像した吸着ノズルの斜め吸着時の画像を示す図である。
【図5】(a)は吸着ノズルの全画面撮像データを示す図であり、(b)はカメラの撮像エリアのうちの走査範囲を限定するパーシャル機能を説明する図であり、(c)は操作方向を説明する図であり、(d)は二値化処理後のイメージ図である。
【図6】カメラで撮像した分解能測定治具の画像を示す図である。
【図7】(a)は二値化処理後の基準ノズルの画像を示す図であり、(b)は形状基準データを説明する図である。
【図8】(a)は二値化処理後の吸着ノズルの画像を示す図であり、(b)は形状計測データを説明する図である。
【図9】分解能測定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】差分計測プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
11…画像処理機能付き撮像装置、12…装着ヘッド、13…吸着ノズル、14…吸着ホルダ、15…カメラ、16…表示器、17…照明光源、18…メインコントロール基板、19…プリズム、20…吸着部品、21…蛍光反射板、22…CPU(画像処理手段)、23…ROM、24…RAM24(記憶手段)、25…制御用ネットワークIC、41…基準治具、42…分解能測定治具、43…基準ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産装置に取り付けて使用する画像処理機能付き撮像装置であって、
被撮像物を撮像するカメラと、
基準画像の計測基準位置のデータを記憶する記憶手段と、
前記カメラの撮像動作を制御すると共に前記カメラから出力される前記被撮像物の画像データを取り込んで前記被撮像物の計測対象位置と前記基準画像の計測基準位置との差分データを出力する画像処理手段と
を備えていることを特徴とする画像処理機能付き撮像装置。
【請求項2】
前記被撮像物の計測対象位置は、当該被撮像物の最下点の高さ位置であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理機能付き撮像装置。
【請求項3】
前記カメラは、走査方向が前記被撮像物の長手方向となるように設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理機能付き撮像装置。
【請求項4】
前記基準画像は、基準治具を前記カメラで撮像して取り込んだ画像であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理機能付き撮像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理機能付き撮像装置を電子部品実装機に取り付け、この電子部品実装機の吸着ノズルに吸着された電子部品(以下「吸着部品」という)を前記被撮像物とし、前記吸着部品を水平方向から前記カメラで撮像し、前記画像処理機能付き撮像装置から出力される前記差分データを前記電子部品実装機の制御コンピュータに取り込み、この制御コンピュータで前記差分データに基づいて吸着部品の吸着状態の良否又は吸着部品の有無を検査し若しくは吸着部品の厚みを検出することを特徴とする検査システム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理機能付き撮像装置を電子部品実装機に取り付け、この電子部品実装機の吸着ノズルを前記被撮像物とし、前記吸着ノズルを水平方向から前記カメラで撮像し、前記撮像装置から出力される前記差分データを前記電子部品実装機の制御コンピュータに取り込み、この制御コンピュータで前記差分データに基づいて前記吸着ノズルの良否を検査することを特徴とする検査システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の検査システムにおいて、
前記撮像装置の画像処理手段は、前記吸着ノズルを吸着保持する吸着ホルダに、当該吸着ノズルに代えて前記基準治具を吸着した状態で、当該基準治具を水平方向から前記カメラで撮像して取り込んだ画像を前記基準画像として用いることを特徴とする検査システム。
【請求項8】
請求項7に記載の検査システムにおいて、
前記記憶手段は、前記基準治具の最下点の高さ位置を前記計測基準位置として記憶し、 前記撮像装置の画像処理手段は、前記カメラで撮像した前記吸着ノズルの最下点の高さ位置と前記基準治具の計測基準位置との高低差を差分データとして出力し、
前記電子部品実装機の制御コンピュータは、前記吸着ホルダに前記基準治具を吸着した状態で該基準治具を基板実装面に当接させるまでの下降量を基準ストロークとして検出し、この基準ストロークを前記差分データで補正して実装作業時の前記吸着ノズルのストロークを決定することを特徴とする検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−124293(P2008−124293A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307507(P2006−307507)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】