説明

画像処理装置、それを備えたデジタルカメラ及び画像処理プログラム

【課題】 動画等の時系列的に前後する画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行える画像処理装置、それを備えたデジタルカメラ及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】 画像処理装置(16,20)は、時系列的に前後する画像1と画像2との間の変化量を検出する為、手段A(20)が、入力の位置ずれ量をパラメータにして画像1での画素群αに幾何変換を実施し、変換後の画像1における画素群αの画素と、該画素群αの画素と同一座標にある画像2中の画素との輝度差に基づきゲインを算出する。また手段B(20)が、入力のゲインを画像2に乗算し、画像1から画素群βを抽出し、画像1とゲイン乗算後の画像2との間における画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量を算出する。そして検出手段(20)が、手段Aに手段B算出の位置ずれ量を入力し、手段Bに手段A算出のゲインを入力して、手段Aと手段Bとを少なくとも1回以上実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、それを備えたデジタルカメラ及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラによって撮影された動画などの時系列的に前後する画像の位置合わせを行うために、画像間の位置ずれ量(画像間における被写体等の変化量)を検出する手法が従来から知られている。
【0003】
ところで、位置ずれ量を検出する場合、検出の対象となる画像間で露出条件が異なると、検出精度が低下してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、その問題を解決する従来技術の一例として、例えば、特許文献1には、動画撮影中、自動露出制御動作により露出条件(シャッター速度やゲインなど)が変化した場合に、順次取得される画像の輝度値を変化した露出条件の情報を用いて正規化することで画像間の露光の状態を一致させて、画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行えるようにするという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−135838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来技術は、露出条件が既知である場合に、その情報を用いて画像間の露光状態を一致させるというものであるため、画像の露出条件が不明な場合には適用することができず、結局、画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行うことはできなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためのものである。本発明の目的は、動画などの時系列的に前後する画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行うことができる画像処理装置、それを備えたデジタルカメラ及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の画像処理装置は、時系列的に前後する第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する画像処理装置であって、ゲイン算出手段と、位置ずれ量算出手段と、検出手段とを備える。ゲイン算出手段は、入力された位置ずれ量を幾何変換パラメータとして、第一の画像から抽出した特定画素群αに対して幾何変換を実施し、その幾何変換実施後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲイン値を算出する。また、位置ずれ量算出手段は、入力されたゲイン値を第二の画像に対して乗算し、第一の画像から特定画素群βを抽出し、第一の画像とゲイン値が乗算された第二の画像との間における特定画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量を算出する。そして、検出手段は、ゲイン算出手段に対しては、位置ずれ量算出手段により算出される位置ずれ量を入力とし、位置ずれ量算出手段に対しては、ゲイン算出手段により算出されるゲイン値を入力として、ゲイン算出手段と位置ずれ量算出手段とを少なくとも1回以上実行することにより、第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、特定画素群αは、第一の画像中の中間階調値を有する画素の集合である。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、特定画素群αは、中間階調値を有する画素が所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。
【0011】
第4の発明は、第1ないし第3の発明の何れか一の発明において、特定画素群βは、第一の画像中の画素のうち隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素の集合である。
【0012】
第5の発明は、第1ないし第3の発明の何れか一の発明において、特定画素群βは、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素が、所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。
【0013】
第6の発明のデジタルカメラは、時系列的に前後する複数枚の画像を撮像する撮像手段と、その撮像手段により撮像された複数枚の画像を画像処理の対象として扱う第1ないし第5の発明の何れか一の発明の画像処理装置とを備える。
【0014】
第7の発明の画像処理プログラムは、時系列的に前後する第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する画像処理プログラムであって、ゲイン算出ステップと、位置ずれ量算出ステップと、検出ステップとをコンピュータに実行させる。ゲイン算出ステップでは、入力された位置ずれ量を幾何変換パラメータとして、第一の画像から抽出した特定画素群αに対して幾何変換を実施し、その幾何変換実施後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲイン値を算出する。また、位置ずれ量算出ステップでは、入力されたゲイン値を第二の画像に対して乗算し、第一の画像から特定画素群βを抽出し、第一の画像とゲイン値が乗算された第二の画像との間における特定画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量を算出する。そして、検出ステップでは、ゲイン算出ステップに対しては、位置ずれ量算出ステップにより算出される位置ずれ量を入力とし、位置ずれ量算出ステップに対しては、ゲイン算出ステップにより算出されるゲイン値を入力として、ゲイン算出ステップと位置ずれ量算出ステップとを少なくとも1回以上実行することにより、第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する。
【0015】
第8の発明は、第7の発明において、特定画素群αは、第一の画像中の中間階調値を有する画素の集合である。
【0016】
第9の発明は、第7の発明において、特定画素群αは、中間階調値を有する画素が所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。
【0017】
第10の発明は、第7ないし第9の発明の何れか一の発明において、特定画素群βは、第一の画像中の画素のうち隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素の集合である。
【0018】
第11の発明は、第7ないし第9の発明の何れか一の発明において、特定画素群βは、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素が、所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。
【発明の効果】
【0019】
本発明を利用すれば、動画などの時系列的に前後する画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用したデジタルカメラの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】デジタルカメラが行う位置ずれ検出に係る動作を示す流れ図である。
【図3】ゲイン算出処理(サブルーチン1)の流れ図である。
【図4】特定画素群αの抽出の例について説明する図である。
【図5】位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、デジタルカメラの実施形態である。
【0022】
図1は、本実施形態のデジタルカメラのブロック図である。
【0023】
デジタルカメラは、撮像レンズ11およびレンズ駆動部12と、撮像素子13と、アナログ信号処理部14と、タイミングジェネレータ(TG)15と、バッファメモリ16と、画像処理部17と、表示制御部18と、表示部19と、制御部20と、圧縮/復号部21と、記録インターフェース(記録I/F)22と、記録媒体23と、操作部24と、バス25とを有している。ここで、バッファメモリ16、画像処理部17、表示制御部18、制御部20、圧縮/復号部21、記録I/F22は、バス25を介して接続されている。また、レンズ駆動部12、アナログ信号処理部14、TG15、操作部24は、それぞれ制御部20に接続されている。
【0024】
撮像レンズ11は、フォーカスレンズやズームレンズを含む複数のレンズ群で構成されている。なお、簡単のため、図1では撮像レンズ11を1枚のレンズとして図示している。
【0025】
レンズ駆動部12は、制御部20の指示に応じてレンズ駆動信号を発生し、撮像レンズ11を光軸方向に移動させてフォーカス調整やズーム調整を行うと共に、撮像レンズ11を通過した光束による被写体像を撮像素子13の受光面に形成する。
【0026】
撮像素子13は、動画の撮影が可能な撮像素子であり、例えば、CCD型撮像素子、あるいはCMOS型撮像素子などによって構成される。なお、撮像素子13は、勿論、1フレーム毎の静止画の撮影も可能である。
【0027】
撮像素子13は、撮像レンズ11の像空間側に配置され、その受光面に形成された被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。この撮像素子13の出力はアナログ信号処理部14に接続されている。
【0028】
アナログ信号処理部14は、制御部20の指示に応じて、撮像素子13から出力されたアナログ画像信号に対し、CDS(相関二重サンプリング)、ゲイン調整、A/D変換などのアナログ信号処理を施すと共に、その処理後の画像信号を出力する。なお、アナログ信号処理部14の出力はバッファメモリ16に接続されている。
【0029】
また、アナログ信号処理部14は、制御部20の指示に基づいてゲイン調整の調整量を設定し、それによってISO感度に相当する撮影感度の調整を行う。
【0030】
TG15は、制御部20の指示に基づき撮像素子13およびアナログ信号処理部14に対してタイミングパルスを供給する。撮像素子13およびアナログ信号処理部14の駆動タイミングはそのタイミングパルスによって制御される。
【0031】
バッファメモリ16は、アナログ信号処理部14から出力される画像信号を画像データとして一時的に記憶する。また、バッファメモリ16は、制御部20により記録媒体23から読み出された画像データや、制御部20による処理の過程で作成された画像データを一時的に記憶する。
【0032】
画像処理部17は、制御部20の指示に応じて、バッファメモリ16の画像データに対し、ホワイトバランス調整、補間、輪郭強調、ガンマ補正、解像度変換(画素数変換)などの画像処理を施す。なお、解像度変換(画素数変換)は、画像データのサムネイルを作成する場合や、表示部19に画像データを表示させる場合などに必要な処理である。画像処理部17は、ASICなどとして構成される。
【0033】
表示制御部18は、制御部20の指示に応じて、画像処理後の画像データに所定の信号処理(例えば、NTSC方式の複合映像信号に変換するための信号処理)を施して表示部19へ出力する。この出力により、画像データが表示部19に表示される。なお、表示部19は、デジタルカメラ筐体の背面などに設けられたLCDモニタや、接眼部を備えた電子ファインダなどである。
【0034】
圧縮/復号部21は、制御部20の指示に応じて、バッファメモリ16の画像データに圧縮処理又は復号処理を施す。なお、圧縮処理及び復号処理は、静止画撮影時には、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)形式などによって行われ、動画撮影時には、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)形式などによって行われる。
【0035】
また、圧縮/復号部21は、可逆圧縮(いわゆるロスレス符号化)を行うことも可能な構成となっている。
【0036】
記録I/F22には、記録媒体23を接続するためのコネクタが形成されている。記録I/F22は、そのコネクタに接続された記録媒体23にアクセスして、各種データの書き込みや読み出しを行う。制御部20は、撮影時には、この記録I/F22を介して、バッファメモリ16の圧縮処理後の画像データを記録媒体23へ記録する。但し、デジタルカメラが非圧縮記録モードに設定された場合には、制御部20は、バッファメモリ16の画像処理後の画像データを、圧縮処理を施さずに非圧縮のまま記録媒体23へ記録する。また、制御部20は、画像再生時には、記録I/F22を介して、その記録された画像データを記録媒体23から読み出してバッファメモリ16へ記録する。なお、記録媒体23は、半導体メモリを内蔵したメモリカードや、小型のハードディスクなどである。
【0037】
操作部24は、モード設定ボタン、レリーズボタン、動画撮影ボタン等の各種の操作部材を含み、撮影者などのユーザーによる部材操作の内容に応じた操作信号を制御部20に送る。
【0038】
制御部20は、ユーザーによる操作部材の操作内容に応じてデジタルカメラの各部を統括制御する。
【0039】
例えば、撮影モードで動作中に動画撮影ボタンが押下されると、制御部20は、レンズ駆動部12、アナログ信号処理部14およびTG15を駆動して動画の撮影を開始する。このとき、撮像素子13は、所定の画素数の画像が所定のフレームレートで取得されるように駆動され、動画の各フレームに対応する画像データがアナログ信号処理部14を介してバッファメモリ16へ順次記録される。この後、制御部20は、画像処理部17を駆動して、バッファメモリ16に記録された各フレームの画像データに対し画像処理を施す。また、制御部20は、表示制御部18を駆動して、その画像処理後の画像データを表示部19に表示させる。そして、制御部20は、圧縮/復号部21を駆動して、その画像処理後の画像データに対しMPEG形式などによる圧縮処理を施すと共に、その圧縮されたデータ(動画データ)を記録I/F22を介して記録媒体23へ記録する。
【0040】
また、動画撮影中に、もう一度、動画撮影ボタンが押下されると、制御部20は動画の撮影を停止する。
【0041】
以下、本実施形態のデジタルカメラが行う位置ずれ検出に係る動作を、図2の流れ図を参照して説明する。
【0042】
なお、位置ずれ検出は、動画などの時系列的に前後するフレーム画像間において着目した被写体等の変化(移動、回転、変形、拡大/縮小など)の量(位置ずれ量)を検出する処理であり、例えば、動画撮影時のMPEG(特に、MPEG−4)圧縮符号化の際に行われる動き補償での動き検出処理として実行されるものである。
【0043】
図2に示す位置ずれ検出の処理では、入力された2つの画像、つまり、バッファメモリ16に記録された動画のフレームから検出の対象として選択された時系列的に前後する2つのフレーム、例えば、n−1番目のフレームとn番目のフレームの画像について位置ずれ検出を行い、位置ずれ量を出力する。
【0044】
ステップS101:制御部20は、入力された画像を基に輝度成分のみを抽出した画像を作成する。具体的には、制御部20は、時系列的に前となるフレーム(n−1番目)の画像を基に輝度成分のみを抽出した第一の画像と、時系列的に後となるフレーム(n番目)の画像を基に輝度成分のみを抽出した第二の画像との2つの画像を作成する。なお、選択したフレームの画像にガンマ補正(ガンマ変換)が施されている場合は、輝度成分をリニア特性の状態に戻すため、そのフレームの画像に対し、一旦、逆ガンマ補正(逆ガンマ変換)を施した後で、輝度成分のみを抽出した画像を作成するようにする。
【0045】
そして、制御部20は、作成した第一の画像と第二の画像とに対して、以下のステップに示す位置ずれ検出の処理行う。
【0046】
ステップS102:制御部20は、第一の画像および第二の画像と、後述の位置ずれ量算出処理によって算出される幾何変換パラメータとを入力として、図3に示すゲイン算出処理(サブルーチン1)を呼び出す。
【0047】
(ゲイン算出処理)
ステップS102−1(図3):制御部20は、入力された第一の画像から特定画素群αの抽出を行う。なお、ゲインの算出は、その特定画素群αに基づいて行うので、そこに含まれる画素が白とび又は黒つぶれしていては正しい結果が得られない。そのため、ここでは、第一の画像中の中間階調値を有する画素(の集合)を特定画素群αとして抽出する。具体的には、例えば、図4に示すように、第一の画像に含まれる画素の輝度平均値を算出し、その輝度平均値近傍の輝度値(階調値)を有する画素(輝度平均値を有する画素も含む)を第一の画像中から特定して、それらの画素を特定画素群αとして抽出するようにする。或いは、中間階調値を有する画素に代えて、白とび又は黒つぶれのないAF(オートフォーカス)ポイント近傍の画素を特定画素群αとして抽出するようにしてもよい。
【0048】
なお、特定画素群αは、上記のように画素を単位とした括り(集合)であってもよく、中間階調値を有する画素が多く含まれる(例えば、所定の数以上含まれる)画像中の矩形領域というように領域を単位とした括り(集合)であってもよい。
【0049】
ステップS102−2(図3):制御部20は、抽出した特定画素群αの画素(x,y)に対して幾何変換を行う。本実施形態のデジタルカメラにおいては、下記の(式1)に示す幾何変換モデルを用いることとする。そして、そのパラメータp(p0 〜p5 )に入力された幾何変換パラメータを指定して、特定画素群αの画素(x,y)に対して幾何変換を行う。但し、本サブルーチン1の初回の実行時には、幾何変換パラメータp(p0 〜p5 )が未だ算出されておらず入力されないため、幾何変換を行わずにステップS102−3へ移行する。
【0050】
【数1】

【0051】
ステップS102−3(図3):制御部20は、幾何変換された第一の画像における特定画素群αの画素と、それと同一の座標位置にある第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲインの算出を行う。但し、本サブルーチン1の初回の実行時には、上記のとおり幾何変換が行われないので、単純に、第一の画像における特定画素群αの画素と、それと同一の座標位置にある第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲインの算出を行うようにする。
【0052】
ここで、第一の画像における特定画素群αの画素をAα、そのAαと同一の座標位置にある第二の画像中の画素(の集合)をBα、そして、算出されるゲインをrとすると、AαとBαとの画素間の差分の二乗和Sは、下記の(式2)によって表される。なお、(式2)中のnは、特定画素群αに含まれる画素の数とする。
【0053】
【数2】

【0054】
そのため、上記(式2)のSが最も小さくなるr(ゲイン)を最小二乗法で求めると、rは下記の(式3)によって表すことができる。
【0055】
【数3】

【0056】
制御部20は、上記(式3)により求まるr(ゲイン)を本サブルーチン1の出力のゲイン値として算出した後、図2のフローチャートの処理へ復帰してステップS103へ移行する。
【0057】
ステップS103:制御部20は、第一の画像および第二の画像と、上記のゲイン算出処理(サブルーチン1)によって算出されたゲイン値とを入力として、図5に示す位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)を呼び出す。
【0058】
なお、ここでの入力として使用される第一の画像および第二の画像は、上記ステップS101の処理が行われた時点で作成されたオリジナルの画像である。
【0059】
(位置ずれ量算出処理)
ステップS103−1(図5):制御部20は、入力された第二の画像の画像信号に対して、入力されたゲイン値、即ち、上記(式3)によって求まったrを乗算する。これにより位置ずれ検出を行いたい2つの画像、即ち、入力された第一の画像と第二の画像との露光の状態を一致させるようにする。
【0060】
ステップS103−2(図5):制御部20は、入力された第一の画像から特定画素群βの抽出を行う。なお、ここでは、位置ずれ量の算出に適した画素群を抽出する必要がある。そのため上記のゲイン算出処理(サブルーチン1)で特定画素群αを抽出したのとは異なる条件で抽出を行う。具体的には、例えば、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素というような条件で特定画素群βを抽出するようにする。
【0061】
なお、特定画素群βについても、画素を単位とした括り(集合)、あるいは矩形などの領域を単位とした括り(集合)であってよい。
【0062】
ステップS103−3(図5):制御部20は、第一の画像と第二の画像との位置ずれ量を算出する。
【0063】
具体的には、上記(式1)を用いて幾何変換した場合の第一の画像における特定画素群βの画素をAβ、そのAβと同一の座標位置にある第二の画像中の画素(の集合)をBβとしたときに、下記の(式4)を満たす評価値ΔEが最も小さくなる幾何変換パラメータp(p0 〜p5 )を位置ずれ量として算出する。
【0064】
【数4】

【0065】
なお、幾何変換を上記(式1)以外の手法(例えば、アフィン変換など)を用いて行う場合には、上記ステップS103−2では、その幾何変換に用いる手法に適した条件で特定画素群βを抽出するようにすることが好ましい。
【0066】
制御部20は、幾何変換パラメータp(p0 〜p5 )を本サブルーチン2の出力の位置ずれ量として算出した後、図2のフローチャートの処理へ復帰してステップS104へ移行する。
【0067】
ステップS104:制御部20は、位置ずれ検出の処理を終了させるか否かを判定する。
【0068】
具体的には、ゲイン算出処理(サブルーチン1)および位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)を所定回数実行した場合、又は、今回算出された位置ずれ量(幾何変換パラメータp)と前回算出された位置ずれ量との差が小さい(例えば、所定の閾値を下回る)場合には、制御部20は、位置ずれ検出の処理を終了させるためステップS105へ移行する。
【0069】
一方、ゲイン算出処理および位置ずれ量算出処理を所定回数実行していない場合、又は、今回算出された位置ずれ量と前回算出された位置ずれ量との差が、例えば、所定の閾値以上である場合には、制御部20は、上記の処理を繰り返すためステップS102へ移行する。なお、この場合に、移行後のステップS102においてゲイン算出処理(サブルーチン1)の呼び出しで入力として使用される第一の画像および第二の画像は、上記ステップS101の処理が行われた時点で作成されたオリジナルの画像である。また、その際、ゲイン算出処理(サブルーチン1)のもう一つの入力の幾何変換パラメータには、上記の位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)によって出力された位置ずれ量(つまり、幾何変換パラメータp(p0 〜p5 ))が指定される。
【0070】
ステップS105:制御部20は、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)で算出された幾何変換パラメータp(p0 〜p5 )を、入力された2つの画像間(例えば、n−1番目のフレームとn番目のフレームの画像間)の位置ずれ量として出力して、本フローチャート(図2)の処理を終了する。
【0071】
(実施形態の補足事項)
なお、上記(式1)の幾何変換モデルでは、幾何変換パラメータpをp0 〜p5 の6つとしたが、パラメータの数は6つよりも多くしてよい。パラメータが多いほど、より詳細な位置ずれ検出が可能となる。
【0072】
また、上記の特定画素群αと特定画素群βの抽出においては、上記のゲイン算出処理(サブルーチン1)と位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)の繰り返し実行回数に応じて、抽出の条件(又は基準)を厳しくする、若しくは特定画素群として抽出した画素をその数が少なくなるように更に絞り込むようにしてもよい。そうすれば、位置ずれ検出における演算の高速化を図ることが可能となる。
【0073】
また、上記では、ゲイン算出処理(サブルーチン1)を実行した後に、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)を実行するように説明したが、それらの実行順序は逆であってもよい。その場合、先に実行する位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)においては、初回の実行時には、未だゲイン値(上記(式3)によって求まるr)が算出されていないので、ゲイン値を第二の画像の画像信号に乗算するステップS103−1の処理を省略して、そのままステップS103−2へ移行するようにする。
【0074】
また、それらの実行順序を逆にした場合は、上記ステップS104での位置ずれ検出の処理を終了させるか否かの判定に、前回算出されたゲイン値と今回算出されたゲイン値との差が小さいか否かの判定を加えるようにしてもよい。
【0075】
なお、判定を加えた場合、ステップS104では、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)およびゲイン算出処理(サブルーチン1)を所定回数実行した場合、又は、前回算出された位置ずれ量(幾何変換パラメータp)と今回算出された位置ずれ量との差が小さい(例えば、所定の閾値を下回る)場合、又は、前回算出されたゲイン値(上記(式3)によって求まるr)と今回算出されたゲイン値との差が小さい(例えば、所定の閾値を下回る)場合には、制御部20は、位置ずれ検出の処理を終了させるためステップS105へ移行するようにする。
【0076】
一方、位置ずれ量算出処理およびゲイン算出処理を所定回数実行していない場合、又は、今回算出された位置ずれ量と前回算出された位置ずれ量との差が、例えば、所定の閾値以上である場合、又は、前回算出されたゲイン値と今回算出されたゲイン値との差が、例えば、所定の閾値以上である場合には、制御部20は、位置ずれ検出の処理を繰り返すためステップS102へ移行するようにする。
【0077】
(実施形態の作用効果)
以上、本実施形態のデジタルカメラでは、時系列的に前後する第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出するための画像処理として、以下の演算が実行される。
【0078】
ゲイン算出処理(サブルーチン1)において、第一の画像から特定画素群αが抽出されると共に、その特定画素群αに対して幾何変換が実施される。なお、この幾何変換においては、入力された位置ずれ量が幾何変換パラメータとして指定される。この位置ずれ量は、後述の位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)によって算出されるものである。そして、幾何変換実施後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある第二の画像中の画素との輝度差に基づいてゲイン値が算出される。
【0079】
また、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)において、第二の画像に対して入力のゲイン値が乗算される。なお、このゲイン値は、上記のゲイン算出処理(サブルーチン1)によって算出されるものである。そして、第一の画像から特定画素群βが抽出されると共に、第一の画像とゲイン値が乗算された第二の画像との間における特定画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量が算出される。具体的には、(式1)を用いて幾何変換した場合の第一の画像における特定画素群βの画素をAβ、そのAβと同一の座標位置にある第二の画像中の画素(の集合)をBβとしたときに、(式4)を満たす評価値ΔEが最も小さくなる幾何変換パラメータp(p0 〜p5 )が位置ずれ量として算出される。
【0080】
そして、これらゲイン算出処理(サブルーチン1)と位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)とが少なくとも1回以上実行されることにより、第一の画像と第二の画像との間の変化量が検出される。
【0081】
すなわち、ゲイン算出処理(サブルーチン1)において算出されるゲイン値は、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)により算出された位置ずれ量(幾何変換パラメータ)を用いて幾何変換を実施した後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある第二の画像中の画素との輝度差に基づいて算出されるものである。なお、特定画素群αは、第一の画像中の中間階調値を有する画素の集合、又は、中間階調値を有する画素が所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。従って、このように算出されるゲイン値は、第一の画像と第二の画像との露光の状態を一致させるための好適な値となる。
【0082】
また、位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)において算出される位置ずれ量は、ゲイン算出処理(サブルーチン1)により算出されたゲイン値を用いて露光の状態を一致させた第一の画像と第二の画像との間における特定画素群βの位置の変化量を推定することにより算出されるものである。なお、特定画素群βは、第一の画像中の画素のうち隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素の集合、又は、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素が、所定の数以上含まれる第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである。従って、このように算出される位置ずれ量(幾何変換パラメータ)は、第一の画像と第二の画像と間の変化量を高精度に表したものとなる。
【0083】
そして、これらゲイン算出処理(サブルーチン1)と位置ずれ量算出処理(サブルーチン2)とが少なくとも1回以上実行される。従って、算出されるゲイン値と位置ずれ量(幾何変換パラメータ)との値は、より精度の高いものとなる。
【0084】
よって、本実施形態のデジタルカメラによれば、動画などの時系列的に前後する画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行うことができる。特に、検出の対象となる画像間で露出条件が異なり、かつ、その露出条件が不明な場合であっても、本実施形態のデジタルカメラによれば、画像間の位置ずれ量の検出を高精度に行うことができる。
【0085】
(その他)
なお、上述したデジタルカメラの動作に係るプログラムは、その一部または全部をコンピュータなどの外部処理装置に実行させてもよい。その場合、必要なプログラムがCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体やインターネット等の通信網などを介して外部処理装置へインストールされる。
【0086】
また、上記ではデジタルカメラの実施例を説明したが、本発明は、動画などの時系列的に前後する画像を撮影することが可能な他の機器、例えば、デジタルビデオカメラや携帯電話などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
11…撮像レンズ,12…レンズ駆動部,13…撮像素子,14…アナログ信号処理部,15…タイミングジェネレータ(TG),16…バッファメモリ,17…画像処理部,18…表示制御部,19…表示部,20…制御部,21…圧縮/復号部,22…記録インターフェース(記録I/F),23…記録媒体,24…操作部,25…バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列的に前後する第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する画像処理装置であって、
入力された位置ずれ量を幾何変換パラメータとして、前記第一の画像から抽出した特定画素群αに対して幾何変換を実施し、前記幾何変換の実施後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある前記第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲイン値を算出するゲイン算出手段と、
入力されたゲイン値を前記第二の画像に対して乗算し、前記第一の画像から特定画素群βを抽出し、前記第一の画像と前記ゲイン値が乗算された第二の画像との間における前記特定画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出手段と、
前記ゲイン算出手段に対しては、前記位置ずれ量算出手段により算出される前記位置ずれ量を入力とし、前記位置ずれ量算出手段に対しては、前記ゲイン算出手段により算出される前記ゲイン値を入力として、前記ゲイン算出手段と前記位置ずれ量算出手段とを少なくとも1回以上実行することにより、前記変化量を検出する検出手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
特定画素群αは、前記第一の画像中の中間階調値を有する画素の集合である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
特定画素群αは、中間階調値を有する画素が所定の数以上含まれる前記第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置において、
特定画素群βは、前記第一の画像中の画素のうち隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素の集合である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置において、
特定画素群βは、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素が、所定の数以上含まれる前記第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
時系列的に前後する複数枚の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記複数枚の画像を画像処理の対象として扱う請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の画像処理装置と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項7】
時系列的に前後する第一の画像と第二の画像との間の変化量を検出する画像処理プログラムであって、
入力された位置ずれ量を幾何変換パラメータとして、前記第一の画像から抽出した特定画素群αに対して幾何変換を実施し、前記幾何変換の実施後の第一の画像における特定画素群αの画素と、その特定画素群αの画素と同一座標にある前記第二の画像中の画素との輝度差に基づきゲイン値を算出するゲイン算出ステップと、
入力されたゲイン値を前記第二の画像に対して乗算し、前記第一の画像から特定画素群βを抽出し、前記第一の画像と前記ゲイン値が乗算された第二の画像との間における前記特定画素群βの位置の変化量を推定して位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出ステップと、
前記ゲイン算出ステップに対しては、前記位置ずれ量算出ステップにより算出される前記位置ずれ量を入力とし、前記位置ずれ量算出ステップに対しては、前記ゲイン算出ステップにより算出される前記ゲイン値を入力として、前記ゲイン算出ステップと前記位置ずれ量算出ステップとを少なくとも1回以上実行することにより、前記変化量を検出する検出ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理プログラムにおいて、
特定画素群αは、前記第一の画像中の中間階調値を有する画素の集合である
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項9】
請求項7に記載の画像処理プログラムにおいて、
特定画素群αは、中間階調値を有する画素が所定の数以上含まれる前記第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9の何れか一項に記載の画像処理プログラムにおいて、
特定画素群βは、前記第一の画像中の画素のうち隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素の集合である
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項11】
請求項7ないし請求項9の何れか一項に記載の画像処理プログラムにおいて、
特定画素群βは、隣接画素との輝度差が所定の閾値以上である画素が、所定の数以上含まれる前記第一の画像中の矩形の領域内に存在する画素の全てである
ことを特徴とする画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245658(P2010−245658A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89785(P2009−89785)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】