説明

画像処理装置、印刷システム、およびプログラム

【課題】ジョブのPDL解析をしなくとも、RIPの並列処理を実行できる画像処理装置、印刷システム、およびプログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、第1の処理速度でバリアブルデータのレコードをラスタライズして画像情報を出力する複数のRIPと、外部IOTにより前記画像情報を記録材に印刷処理する際の印刷処理速度としての第2の処理速度を格納するIOT速度格納手段と、前記バリアブルデータをレコード単位で複数の分割ジョブに分割する分割手段と、複数の前記RIPにおいて複数の前記分割ジョブが並列にラスタライズされた場合に、複数の前記RIPにおいて出力された前記画像情報が、前記IOTの印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に基づいて複数の前記分割ジョブの分割数およびそれぞれのレコード数を決定するレコード分割管理手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、印刷システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷データのPDL(Page Description Language)を解析してジョブをページ単位で分割された印刷データを作成することで複数のRIP(Raster Image Processor)による印刷画像生成の並列処理を行う画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の画像処理装置は、PDLで記述された印刷データを解析することで、印刷データのデータ部分とデータ制御部分を認識し、データ部分をページ単位で分割して、分割されたデータ部分のそれぞれに対応するデータ制御部分をコピーして割り当てることで作成した新たな印刷データのそれぞれを異なるRIPにおいて並列処理するものである。これにより印刷画像の生成処理に要する時間が短縮される。なお、RIPにより印刷画像を生成する処理を、ラスタライズとも言う。
【特許文献1】特開平8−297560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画像生成手段が画像情報を生成する速度および前記画像情報を印刷手段が記録材に印刷処理する速度に基づき可変印刷データを分割する分割数および分割された分割可変印刷データの各レコード数を決定して画像情報の生成を並列処理できる画像処理装置、印刷システム、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の画像処理装置、印刷システム、およびプログラムを提供する。
【0006】
[1]可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用した画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、
印刷手段により前記画像情報を記録材に印刷処理する際の印刷処理速度としての第2の処理速度を格納する印刷速度格納手段と、
前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、
複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷装置の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【0007】
[2]前記決定手段は、複数の前記分割ジョブのレコード数を順次または段階的に増加させて決定することを特徴とする前記[1]に記載の画像処理装置。
【0008】
[3]前記決定手段は、前記可変印刷データから所定のレコード数だけ切り出した前記分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した時間に基づき算出された前記第1の処理速度を、残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする前記[1]に記載の画像処理装置。
【0009】
[4]前記決定手段は、前記可変印刷データから第1のレコード数だけ切り出した第1の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第1の時間と、前記第1の分割可変印刷データが切り出された残りの分割可変印刷データから前記第1のレコード数とは異なる第2のレコード数だけ切り出した第2の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第2の時間の差に基づき算出された前記第1の処理速度を、前記第1および第2の分割可変印刷データが切り出された残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする前記[3]に記載の画像処理装置。
【0010】
[5]前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、両者の差が1であるレコード数を用いることを特徴とする前記[4]に記載の画像処理装置。
【0011】
[6]前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、1と2を用いることを特徴とする前記[5]に記載の画像処理装置。
【0012】
[7]可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用して画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、
第2の処理速度で前記画像情報を記録材に印刷処理する印刷手段と、
前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、
複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷手段の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段とを有することを特徴とする印刷システム。
【0013】
[8]前記決定手段は、複数の前記分割ジョブのレコード数を順次または段階的に増加させることを特徴とする前記[7]に記載の印刷システム。
【0014】
[9]前記決定手段は、前記可変印刷データから所定のレコード数だけ切り出した前記分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した時間に基づき算出された前記第1の処理速度を、残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする前記[7]に記載の印刷システム。
【0015】
[10]前記決定手段は、前記可変印刷データから第1のレコード数だけ切り出された第1の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第1の時間と、前記第1の分割可変印刷データが切り出された残りの分割可変印刷データから前記第1のレコード数とは異なる第2のレコード数だけ切り出された第2の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第2の時間とに基づき算出された前記第1の処理速度を、前記第1および分割可変印刷データが切り出された残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする前記[9]に記載の印刷システム。
【0016】
[11]前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、両者の差が1であるレコード数を用いることを特徴とする前記[10]に記載の画像処理装置。
【0017】
[12]前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、1と2を用いることを特徴とする前記[11]に記載の画像処理装置。
【0018】
[13]コンピュータを、可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用した画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、印刷手段により前記画像情報を記録材に印刷処理する際の印刷処理速度としての第2の処理速度を格納する印刷速度格納手段と、前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷装置の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段として機能させるプログラム。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、7、13に係る発明によれば、画像情報を画像生成手段が生成する速度および前記画像情報を印刷手段が記録材に印刷する処理速度に応じて可変印刷データを分割する分割数および分割された分割可変印刷データの各レコード数を決定して画像情報の生成を並列処理できる。
【0020】
請求項2、8に係る発明によれば、分割可変印刷データに基づき画像情報の生成を並行処理しても、可変印刷データの並び順で後のレコードに対応する画像情報の生成の終了が、前記順番で前のレコードに対応する画像情報の生成の終了よりも先になることがない。
【0021】
請求項3、9に係る発明によれば、実際の可変印刷データを画像生成手段が処理するのに要する時間に基づき可変印刷データを分割する分割数および分割された分割可変印刷データの各レコード数を決定できる。
【0022】
請求項4、10に係る発明によれば、異なるレコード数の処理時間の差に基づき第1の処理速度を求めるため、本構成を有しない場合と比較して、より正確な第1の処理速度を算出することができる。
【0023】
請求項5、11に係る発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、より少ない処理量で第1の処理速度を算出することができる。
【0024】
請求項6、12に係る発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、より短時間に第1の処理速度を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の画像処理装置、印刷システム、およびプログラムの実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。
【0026】
(印刷システムの構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る印刷システムの構成例を示す概略図である。
【0027】
印刷システム1は、可変印刷データ(バリアブルデータ)としてのCSV(Comma Separated Values)ファイル3およびテンプレート4を処理する画像処理装置2と、画像処理装置2がCSVファイル3の各レコードをテンプレート4に適用して生成した画像情報に基づき印刷を行って印刷物5を生成する印刷手段としてのIOT25およびIOT管理手段24とを有する。なお、CSVファイル3およびテンプレート4は、外部から入力されるが、内部に記憶部を設けて格納してもよい。
【0028】
バリアブルデータとしてのCSVファイル3は、テンプレート4に定義されたフィールドに差し込まれる住所、氏名等のように変化する項目データをコンマ等の区切り文字によって区切られたデータである。印刷物5は、CSVファイル3の項目データとテンプレート4に基づいて、IOT25において印刷される出力紙面である。
【0029】
画像処理装置2は、CSVファイル3を印刷ジョブとして受け付けてCSVファイル3のレコード数をカウントするジョブ管理手段10と、ジョブ管理手段10からCSVファイル3を受信してレコード単位で分割する分割手段11と、複数のRIPにより画像処理の生成を並列処理する画像生成手段としての並列RIP13と、並列RIP13を管理するRIP管理手段12と、並列RIP13において生成された画像情報を一時的に記憶するイメージバッファ15と、イメージバッファ15を管理するイメージバッファ管理手段14とを有する。
【0030】
また、画像処理装置2は、ジョブ管理手段10において取得したCSVファイル3についての情報を記憶するジョブ情報管理テーブル17と、分割手段11を管理する決定手段としてのレコード分割管理手段18と、RIP管理手段12において処理するレコードについての情報を記憶する分割ジョブ情報管理テーブル19とを有する。
【0031】
また、画像処理装置2は、並列RIP13において同時に処理可能な限度の処理数を格納する最大RIP数格納手段20と、IOT管理手段24の処理速度(第2の処理速度)を格納する印刷速度格納手段としてのIOT速度格納手段21と、並列RIP13においてラスタライズ中のページ数を算出するRIP中ページ数算出手段22と、イメージバッファ管理手段14においてIOT送信待ちのページ数を算出する印刷待ちページ数算出手段23とを有する。
【0032】
なお、画像処理装置2のジョブ情報管理テーブル17、分割ジョブ情報管理テーブル19、最大RIP数格納手段20、およびIOT速度格納手段21は、画像処理装置2に設けられた一時的に情報を記憶するメモリ(図示せず)上に格納され、イメージバッファ15は、専用のメモリ上に格納される。また、画像処理装置2のその他の手段、および並列RIP13は、画像処理装置2に設けられたCPU(Central Processing Unit)上において処理される。
【0033】
図2(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係るジョブ情報管理テーブル、分割ジョブ情報管理テーブル、およびイメージバッファ管理テーブルの構成例を示す概略図である。
【0034】
ジョブ情報管理テーブル17は、図2(a)に示すように、ジョブ管理手段10が受け付けたCSVファイル3およびテンプレート4に対するジョブの処理を実行する際に設定されるテーブルであり、ジョブに対して付与されるジョブIDと、レコード分割管理手段18が算出する分割ジョブの初期化時間を示すジョブ初期化時間と、レコード分割管理手段18が算出する1レコードあたりのRIPに要する時間を示す1レコードRIP時間と、レコード分割管理手段18が算出する1レコードあたりのページ数を示す1レコードページ数と、ジョブ管理手段10がカウントするCSVファイル3に含まれるレコード数を示す総レコード数と、初期値として総レコード数と同値を与えられて未分割のレコード数を示す未分割レコード数とを有する。
【0035】
分割ジョブ情報管理テーブル19は、RIP管理手段12が受け付けた分割ジョブの処理を実行する際に設定されるテーブルであり、ジョブ管理手段10が受け付けたCSVファイル3およびテンプレート4に対するジョブを実行する際に付与されるジョブ情報管理テーブル17のジョブIDと対応づけられるジョブIDと、分割手段において分割されたジョブに対して付与される分割ジョブIDと、レコード分割管理手段18が算出する分割されたジョブに含まれるレコード数を示す分割レコード数と、レコード分割管理手段18が算出する分割ジョブに含まれるページ数を示す分割レコードページ数と、ジョブ情報管理テーブル17の未分割レコード数が0以下になった場合に付与される最終分割ジョブフラグと、RIP管理手段12が分割ジョブの状態を示して「RIP中」、「IOT送信待ち」、または「IOT送信終了」のいずれかから選択されるステータスと、RIP管理手段12が分割ジョブを並列RIP13に対して送信した時間を示すRIP開始時間と、並列RIP13においてラスタライズが終了した時間を示すRIP終了時間とを有する。
【0036】
イメージバッファ管理テーブル16は、並列RIP13において分割ジョブがラスタライズされてページごとに画像情報が出力される際に設定されるテーブルであり、分割ジョブ情報管理テーブル19から引き継ぐジョブID、および分割ジョブIDと、イメージバッファ15に格納される画像情報に付与されるイメージIDと、イメージバッファ15における画像情報の格納先および格納サイズを示すバッファ属性と、イメージバッファ15に格納される画像情報に設定される用紙サイズ、両/片面設定、および後処理等を示す印刷属性と、イメージバッファ15に格納される画像情報が最終ページである場合に設定される最終ページフラグと、イメージバッファ15に格納される画像情報の状態を示して「RIP中」、「IOT送信待ち」、または「IOT送信終了」のいずれかから選択されるステータスとを有する。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る印刷システムにおいて処理される各データの構成を示す概略図である。
【0038】
テンプレート4は、例えば、4つの第1〜第4のフィールド41a〜41dが定義されている。各フィールド41a〜41dに差し込まれるバリアブルデータとしてのCSVファイル3は、例えば、レコード30a(aa,bbb,ccc,ddd)、レコード30b(aaaaaaaa,b,c,d)、レコード30c(a,bbb,c,d)、レコード30d(aaaaa,bbb,cc,d)、レコード30e(a1,b1,c1,d1)、レコード30f(a2,b2,c2,d2)、レコード30g(a3,b3,c3,d3)、……から構成され、各レコード30は、各フィールド41a〜41dにそれぞれ対応する、例えば、4つの項目データ31a〜31dからなる。
【0039】
なお、フィールド41a〜41dは、枠が印字されないように設定されているが、枠が印字されるように設定されていてもよい
【0040】
画像情報400Aおよび400Bは、例えば、CSVファイル3から2レコード分の抽出データ300が分割ジョブとして分割手段11で抽出されて、並列RIP13においてラスタライズされることによりテンプレート4に差し込まれて作成される。また、印刷物500Aおよび500Bは、画像情報400Aおよび400BがIOT25において印刷処理されることで出力される。なお、テンプレート4が複数ページに渡る場合は、1レコードあたり複数ページの画像情報および印刷物が作成される。
【0041】
(動作)
以下に、本発明の実施の形態における画像処理装置、印刷システム、およびプログラムの動作を各図を参照しつつ説明する。
【0042】
画像処理装置2は、CSVファイル3およびテンプレート4をジョブとして受け付けて、画像処理装置2内に設けられたメモリ(図示せず)に一旦保存する。ジョブ管理手段10は、ジョブ情報管理テーブル17に受け付けたジョブの情報を入力し、ジョブを分割手段11へと入力する。
【0043】
分割手段11は、レコード分割管理手段18にジョブIDを受け渡すことでジョブを分割することで得られる分割ジョブのレコード数を取得する。レコード分割管理手段18は、最大RIP数格納手段20、IOT速度格納手段21、RIP中ページ数算出手段22、および印刷待ちページ数算出手段23を参照して分割ジョブのレコード数を決定する。
【0044】
分割手段11は、分割手段11においてジョブから分割された分割ジョブを並列RIP13に入力するために、RIP管理手段12にRIPが生成可能であるかどうかを問い合わせる。RIP管理手段12は、並列RIP13において起動されているRIP数と最大RIP数格納手段20とを比較して、起動されているRIP数の方が少ない場合にラスタライズ可能と応答し、多い場合にラスタライズ不可能と応答する。
【0045】
ラスタライズ可能である場合、RIP管理手段12は、まず、分割手段から入力された分割ジョブの情報を分割ジョブ情報管理テーブル19に登録する。次に、並列RIP13のRIPを起動し、分割ジョブを入力する。
【0046】
並列RIP13は、分割ジョブをレコードごとにラスタライズし、画像情報をページごとにイメージバッファ管理手段14に入力する。イメージバッファ管理手段14は、まず、入力された画像情報の情報をイメージバッファ管理テーブル16に登録する。次に、画像情報をイメージバッファ15に格納する。
【0047】
IOT管理手段24は、イメージバッファ管理手段14を監視し、イメージバッファ管理テーブル16が「IOT送信待ち」と登録されている画像情報をジョブID、分割ジョブID、イメージIDの優先順でIDの小さいものから取得してIOT25を稼働状態にして入力する。「IOT送信待ち」と登録されている画像情報が一定時間存在しない場合は、IOT25を非稼働状態にする。IOT25は、入力された画像情報を印刷処理し、印刷物5を出力する。
【0048】
なお、以上の動作は、ジョブ情報管理テーブル18、分割ジョブ情報管理テーブル20、およびイメージバッファ管理テーブル14に基づいて実行され、ジョブID、分割ジョブID、イメージIDの順に優先してIDの小さいものから実行されるものとする。
【0049】
図4は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の動作を示す概略図である。
【0050】
ジョブ管理手段に10に受け付けられた後、分割手段11において複数の分割ジョブに分割される。例えば、CSVファイル3がmレコードを有する場合、分割ジョブ300A、300B、…300Cとして分割される。分割ジョブ300A、300B、…300Cに含まれるレコード数は、レコード分割管理手段18によって決定され、分割数および各分割ジョブに含まれるレコード数はそれぞれ任意に設定できる。
【0051】
また、各分割ジョブは、分割数と同じ数の並列RIP13において同時に処理される。つまり、分割数を増やすほどラスタライズが分担されるため、ラスタライズに要する時間は短くなるが並列RIP13の負担が大きくなる。また、分割数を減らすほど並列RIP13の負担は小さくなるが、ラスタライズに要する時間は長くなる。
【0052】
図5(a)および(b)は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの動作を示す概略図である。
【0053】
図5(a)は、分割数を最小に設定した場合の動作であり、CSVファイル3を分割しない場合の並列RIP13およびIOT25の処理時間を示す。並列RIP13は、mレコードからなる分割ジョブをラスタライズするために、RIP初期化時間Tとmレコード処理時間Trmとからなるラスタライズ時間Tを要する。また、ラスタライズ時間Tからラスタライズ速度(第1の処理速度)m/Tが算出される。
【0054】
RIP初期化時間Tiは、並列RIP13の起動に要する時間であり、テンプレート4に設定されるフォントや画像等のリソースの読み込みが行われるために必要な時間である。RIP初期化時間Tは、分割ジョブのレコード数に関わらず一定の時間を要し、テンプレート4によって変化する。
【0055】
1レコード処理時間Tr1は、mレコードからなる分割ジョブを処理するラスタライズ時間Tと、m−1レコードからなる分割ジョブを処理するラスタライズ時間Tm−1との差によって求められる。また、RIP初期化時間Tは、mレコードからなる分割ジョブを処理するラスタライズ時間Tと、1レコード処理時間Tr1をm倍することで求められる時間m×Tr1との差によって求められる。
【0056】
本実施の形態おいては、分割手段11においてジョブを分割する前に、2レコードからなる分割ジョブと1レコードからなる分割ジョブを取り出し、並列RIP13において分割ジョブをラスタライズすることでRIP初期化時間Tおよび1レコード処理時間Tr1を算出する。
【0057】
また、IOT25は、並列RIP13において処理されてページ単位で画像情報に変換されたmレコードからなる分割ジョブを、印刷処理するのに印刷処理時間TAllを要する。一般的に、並列RIP13において1ページ分ラスタライズする時間に比べ、IOT25において1ページ分印刷処理する時間は短く(例えば、1/10程度)、印刷処理時間TAllは、ラスタライズ時間Tが支配的となり、ラスタライズ時間Tよりわずかな時間α(IOT25が数レコードを印刷処理する時間)だけ長いものとなる。また、IOT25の印刷処理速度は、IOT速度格納手段21に格納されている。
【0058】
つまり、図5(a)に示す動作において、IOT25は、分割RIP13から画像情報が断続的に入力されるため、稼働状態と非稼働状態とを繰り返すため、効率的に動作したとはいえない。
【0059】
図5(b)は、分割数を最大に設定した場合の動作であり、CSVファイル3を1レコードずつm個の分割ジョブに分割した場合の並列RIP13およびIOT25の処理時間を示す。並列RIP13はそれぞれ、1レコードからなる分割ジョブをラスタライズするために、RIP初期化時間Tと1レコード処理時間Tr1とからなるラスタライズ時間Tを要する。
【0060】
また、IOT25は、m個の並列RIP13において処理されて画像情報に変換された1レコードからなるm個の分割ジョブを、ページごとに印刷処理するのに印刷処理時間TDevideを要する。mが十分に大きい場合は、m個の並列RIP13において同時に1レコード分ラスタライズする時間に比べ、IOT25においてmレコード分印刷処理する時間が長く、印刷処理時間TDevideは、1レコード処理時間Tよりα(IOT25がm近くのレコードを印刷処理する時間)だけ長いものとなる(α>α)。ただし、mが十分に大きい場合には、Tに比べてTが短くなりTDevideはTAllより短いものとなる(TDevide<TAll)。
【0061】
つまり、図5(b)に示す動作において、IOT25は、分割RIP13から画像情報が連続的に入力されるため、効率的に動作する。しかし、並列RIP13においてmレコードのジョブを分割数mで分割したため、RIP初期化の動作がm回重複することとなり、効率的に動作したとはいえない。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの動作を示す概略図である。
【0063】
レコード分割管理手段18は、まず、分割手段11においてジョブを分割する前に、2レコードからなる分割ジョブと1レコードからなる分割ジョブを取り出し、並列RIP13において分割ジョブをラスタライズすることでRIP初期化時間Tおよび1レコード処理時間Tr1を算出する。
【0064】
次に、レコード分割管理手段18は、分割手段11において、例えば、10レコードからなる分割ジョブを分割する。RIPが10レコードからなる分割ジョブをラスタライズするラスタライズ時間Tk1は、RIP初期化時間Tおよび1レコード処理時間Tr1から、T+10×Tr1、として求められる。
【0065】
RIPにおいて10レコードからなる分割ジョブを処理して、処理した結果出力される画像情報をIOT25が印刷処理するのに要する時間Tk1’は、RIPからページ単位でIOT25に画像情報が入力されるため、Tk1よりわずかな時間αだけ長くなる。
【0066】
RIPは、IOT25がRIPから入力される画像情報を印刷処理し終えるまでにラスタライズを終了させればよいため、RIPにおいてラスタライズに割けるラスタライズ時間Tk2は、Tk1’と同等となる。そのため、レコード分割管理手段18は、Tk1’=T+βr1、を解いてβを求めることで、RIPが取り扱える分割ジョブのレコード数を算出する。
【0067】
同様に、RIPは、IOT25がRIPから入力される画像情報を印刷処理し終えるまでにラスタライズを終了させればよいため、RIPにおいてラスタライズに割けるラスタライズ時間Tk3は、Tk1’+Tk2’、と同等となる。そのため、レコード分割管理手段18は、Tk1’+Tk2’=T+βr1、を解いてβを求めることで、RIPが取り扱える分割ジョブのレコード数を算出する。
【0068】
レコード分割管理手段18は、RIP以降も同様に分割し、ジョブの未分割レコード数が算出したレコード数に満たなくなるまで分割する。レコード数に満たないジョブは、そのまま分割ジョブとして並列RIP13に入力する。
【0069】
以上のようにジョブを分割することで、IOT25を常に稼働状態とする最も少ないジョブの分割数が設定される。
【0070】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、RIPにおいて処理する分割ジョブのレコード数は10レコードに限らず任意のレコード数を設定してもよい。また、RIP初期化時間Tおよび1レコード処理時間Tr1は、レコード分割管理手段18が算出せずにユーザーが入力する設定としてもよい。IOT25の印刷処理の速度は、IOT25の動作から算出してもよいし、IOT25のスペックとしてIOT25から取得してもよい。また、ユーザーが入力してもよい。
【0071】
また、例えば、複数のプリンタを用意する等して、IOT25が複数存在する状況においては、複数のIOT25において印刷処理を並列に行うようにしてもよい。
【0072】
また、テンプレートのPDLがページ独立である場合、本発明における1レコードを1ページと読み替えて適用してもよい。つまり、バリアブルプリントに限らず、通常プリントにも同様に本発明を適用してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態で使用されるジョブ管理手段10、分割手段11、RIP管理手段12、並列RIP13、イメージバッファ管理手段14、レコード分割管理手段18、RIP中ページ数算出手段22、および印刷待ちページ数算出手段23は、CD−ROM等の記憶媒体から装置内の記憶部に読み込んでも良く、インターネット等のネットワークに接続されているサーバー等から装置内の記憶部にダウンロードしてもよい。また、上記実施の形態で使用される手段の一部または全部をASIC等のハードウェアによって実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの構成例を示す概略図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係るジョブ情報管理テーブル、分割ジョブ情報管理テーブル、およびイメージバッファ管理テーブルの構成例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る印刷システムにおいて処理される各データの構成を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の動作を示す概略図である。
【図5】図5(a)および(b)は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの動作を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの動作を示す概略図である。
【符号の説明】
【0075】
1…印刷システム、2…画像処理装置、3…CSVファイル、4…テンプレート、5…印刷物、10…ジョブ管理手段、11…分割手段、12…RIP管理手段、13…並列RIP、14…イメージバッファ管理手段、15…イメージバッファ、16…イメージバッファ管理テーブル、17…ジョブ情報管理テーブル、18…レコード分割管理手段、19…分割ジョブ情報管理テーブル、20…プロセス数格納手段、21…IOT速度格納手段、22…RIP中ページ数算出手段、23…印刷待ちページ数算出手段、24…IOT管理手段、25…IOT、30a-30oレコード、31a-31d…項目データ、41a-41d…フィールド、300…抽出データ、300A〜300C…分割ジョブ、400A…画像情報、400B…画像情報、500A…印刷物、500B…印刷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用した画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、
印刷手段により前記画像情報を記録材に印刷処理する際の印刷処理速度としての第2の処理速度を格納する印刷速度格納手段と、
前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、
複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷装置の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、複数の前記分割ジョブのレコード数を順次または段階的に増加させて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記可変印刷データから所定のレコード数だけ切り出した前記分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した時間に基づき算出された前記第1の処理速度を、残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記可変印刷データから第1のレコード数だけ切り出した第1の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第1の時間と、前記第1の分割可変印刷データが切り出された残りの分割可変印刷データから前記第1のレコード数とは異なる第2のレコード数だけ切り出した第2の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第2の時間の差に基づき算出された前記第1の処理速度を、前記第1および第2の分割可変印刷データが切り出された残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、両者の差が1であるレコード数を用いることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、1と2を用いることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用して画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、
第2の処理速度で前記画像情報を記録材に印刷処理する印刷手段と、
前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、
複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷手段の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段とを有することを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
前記決定手段は、複数の前記分割ジョブのレコード数を順次または段階的に増加させることを特徴とする請求項7に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記決定手段は、前記可変印刷データから所定のレコード数だけ切り出した前記分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した時間に基づき算出された前記第1の処理速度を、残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする請求項7に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記決定手段は、前記可変印刷データから第1のレコード数だけ切り出された第1の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第1の時間と、前記第1の分割可変印刷データが切り出された残りの分割可変印刷データから前記第1のレコード数とは異なる第2のレコード数だけ切り出された第2の分割可変印刷データを処理するのに前記画像生成手段が要した第2の時間とに基づき算出された前記第1の処理速度を、前記第1および分割可変印刷データが切り出された残りの可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数の決定に用いることを特徴とする請求項9に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、両者の差が1であるレコード数を用いることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記決定手段は、前記第1、第2のレコード数として、1と2を用いることを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータを、
可変印刷データの各レコードをテンプレートに適用した画像情報を第1の処理速度で生成する複数の画像生成手段と、
印刷手段により前記画像情報を記録材に印刷処理する際の印刷処理速度としての第2の処理速度を格納する印刷速度格納手段と、
前記可変印刷データをレコード単位で複数の分割可変印刷データに分割する可変印刷データ分割手段と、
複数の前記画像生成手段において複数の前記分割可変印刷データの各々が並列に処理された場合に、複数の前記画像生成手段において生成された前記画像情報が、前記印刷装置の印刷処理を継続させるように、前記第1の処理速度および前記第2の処理速度に応じて求められる最小の前記分割可変印刷データの分割数に基づいて複数の前記分割可変印刷データの分割数およびそれぞれのレコード数を決定する決定手段として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−172913(P2009−172913A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15103(P2008−15103)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】