説明

画像処理装置、画像処理プログラム

【課題】
画像データの特性に適した色変換を行う画像処理装置および画像処理プログラムを提供することにある。
【解決手段】
印刷出力された原稿を読み取ることで得られる画像データに所定の色変換を行う画像処理装置であって、前記原稿の印刷出力における出力条件を示す原稿特性情報が付与された前記原稿から、原稿画像を読み取って前記原稿画像の画像データを生成する画像読み取り手段と、前記原稿画像を読み取った原稿の原稿特性情報を取得する原稿特性取得手段と、前記画像データに、前記取得した原稿特性情報が示す条件に対応した色変換を行う色変換手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像、または入力画像データの特性に基づいて画像データの階調変換処理を行う画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複合機等に搭載されるスキャナーやプリンター等の入出力デバイスは、それぞれ固有の特性を有しており、入力デバイスにおける読み取り特性、及び、出力デバイスにおける印刷特性は、製品毎の特性や使用環境及び、経年劣化の度合い等によって異なる。
【0003】
そのため、例えば、カメラやスキャナー等の複数の入力デバイスによって同じ原稿画像を読み込んでも、各入力デバイスが識別する色(階調値)は互いに異なる。同様にして、同じ原稿画像データを異なるプリンターから印刷した場合も、印刷された原稿画像を測色機によって測色すると、その色の値は互いに異なる。そこで、各入力デバイスの読み取り特性、出力デバイスの印刷特性を補正するために入出力プロファイルが用いられる。
【0004】
スキャナー等の入力デバイスでは、原稿画像を読み込んで生成した原稿画像データに入力プロファイルを適用して、原稿画像データの各色の値(階調値)を、元の原稿画像に忠実な値(階調値)に変換している。入力プロファイルは、色空間上の複数の色からなるパッチ画像の各測色値と当該パッチ画像を入力デバイスが読み取って生成したパッチ画像データの各色の値との対応関係とは、例えば逆特性をもつ色変換特性を有する。入力デバイスは、原稿画像データに対してこの色変換特性による色変換を行うことで、元の原稿画像に忠実な色の階調値を得ることができる。
【0005】
一方、プリンター等の出力デバイスでは、印刷対象の原稿画像データに出力プロファイルを適用して、原稿画像データの各色の値を、当該プリンターによって印刷される画像の各色が原稿画像データに忠実な色になるような値に変換している。出力プロファイルは、パッチ画像データにおける各色の値と当該パッチ画像データをプリンターが印刷した画像の各測色値との対応関係とは、例えば逆特性をもつ色変換特性を有する。出力デバイスは、原稿画像データに対してこの色変換特性による色変換を行うことで、元の原稿画像データに忠実な色の階調値の画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005―197831号公報
【特許文献2】特開2004−336807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、入力プロファイルには下記の課題がある。
【0008】
入力プロファイルは、入力デバイスがパッチ画像を読み込んで認識した各色の値をパッチ画像の測色値に変換するため、入力プロファイルの作成に用いたパッチ画像の色域に含まれない色については適切な色に変換することができない。即ち、原稿画像データにパッチ画像の色域に含まれない色が含まれている場合、入力デバイスは、入力プロファイルによって当該色域に含まれない色を元の原稿画像に忠実な色に変換することができない。
【0009】
また、入力プロファイルの作成に用いたパッチ画像の紙と原稿画像の紙の種類が異なる場合も、入力デバイスは、入力プロファイルによって原稿画像データの各色を元の原稿画像に忠実な色に変換することができないことがある。
【0010】
具体的には、次の通りである。同じ画像が異なる種類の紙に印刷されている場合、紙の種類毎に反射率の差異、及び入力デバイスと測色機で使用する光源の特性の差異に起因して、それぞれの原稿画像の測色値は同じような値であっても、当該原稿画像を入力デバイスが読み込んで認識する色の値は異なることがある。つまり、画像が印刷された紙の種類によって、画像上の各測色値と入力デバイスが当該画像を読み取って生成した画像データにおける各色との対応関係に基づく色変換特性が異なることがある。
【0011】
そのため、入力プロファイルの作成に用いたパッチ画像と異なる紙に印刷された原稿画像を読み込んで、原稿画像データに入力プロファイルを適用しても、原稿画像データの各色を適切な色に変換することができない。
【0012】
上記のとおり、入力プロファイルの作成に用いたパッチ画像の特性(色域特性、紙の特性等)と異なる特性の原稿画像を読み取る場合、原稿画像データに入力プロファイルを適用しても元の原稿画像に忠実な色を再現できず、画像が劣化してしまう。
【0013】
一方、出力プロファイルは、原稿画像データの各色を、当該プリンターによって印刷された時に原稿画像データに忠実な色になるような値に変換する色変換特性を有するが、さらに次のような所定の調整が行われることがある。
【0014】
一般的に、原稿画像を複写する場合、当該原稿画像を印刷したプリンターと当該原稿画像を複写しようとする複合機のプリンターとは異なることが多く、また、プリンター毎に印刷可能な色域は異なっている。例えば、原稿画像を印刷したプリンター1と、当該原稿画像を複写する複合機のプリンター2があるとする。そのようなプリンター1、2から、黒色を表すRGB値(0,0,0)の画像データを印刷した場合、プリンター1の印刷画像の測色値はL*a*b*値1(13,5,7)、プリンター2の印刷画像の測色値はL*a*b*値2(8,3,5)のように異なる。L*a*b*の「L」は明度を表し、上記のL*a*b*値1とL*a*b*値2とでは、L*a*b*値2の方がより暗い色を示す。
【0015】
そして、RGB値(0,0,0)の画像データに対応するプリンター1の印刷画像(L*a*b*値1)をプリンター2で複写する場合、プリンター2は、複写画像として複写元の原稿画像(L*a*b*値1)を印刷する。しかし、プリンター2は、RGB値(0,0,0)の画像データに対応して、L*a*b*値1より暗い色L*a*b*値2を印刷可能であるため、プリンター2では色L*a*b*値2の画像として印刷したいという要望がある。
【0016】
そこで、プリンター1の印刷画像をプリンター2で複写する場合、RGB値(0,0,0)の画像データに対応するプリンター1のL*a*b*値1の画像を、プリンター2でL*a*b*値2の画像として印刷するために、プリンター2において黒強調等を行うことがある。具体的には、プリンター2の出力プロファイルにおいて、L*a*b*値1近辺の色をより暗いL*a*b*値2の色に変換するような調整を行う。
【0017】
しかしながら、このような黒強調等の調整の度合いはプリンター毎に異なるため、プリンター2に基づいて黒強調された出力プロファイルをプリンター2以外のプリンターの印刷画像に適用すると、黒強調の度合いが足りず、若しくは、黒強調の度合いが強すぎて黒近辺の色が全て最も濃い色に変換される等して、その印刷画像は元の画像から劣化してしまう。
【0018】
この画像の劣化は、出力プロファイルに対して、上記のような黒強調を行う場合に限られず、濃度抑制等の調整を行う場合等にも該当する。
【0019】
上述した画像の特性に適合していない入出力プロファイルを適用することによる画像の劣化は、1回の適用ではその度合いが小さいが、複写処理を繰り返すことにより徐々に大きくなってしまう。特許文献1、2では、複写処理を繰り返すことによって劣化した画像の印刷を回避するために、次のような技術が開示されている。
【0020】
特許文献1では、元の原稿画像から何世代複写された原稿画像であるのかを示す世代番号を原稿画像に設けられたICチップに付加し、複写時にICチップから世代番号を読み取り、読み取った世代番号が所定の値に達している場合に複写を中止する等の技術が開示されている。
【0021】
特許文献2では、原稿画像が作成された装置識別情報や世代情報等からなる付加情報を原稿画像埋め込み、当該原稿画像の読み取り時に付加情報を抽出して原稿画像の複製履歴を認識する等の技術が開示されている。
【0022】
本発明では、画像データの特性に適した色変換を行う画像処理装置および画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、印刷出力された原稿を読み取ることで得られる画像データに所定の色変換を行う画像処理装置であって、前記原稿の印刷出力における出力条件を示す原稿特性情報が付与された前記原稿から、原稿画像を読み取って前記原稿画像の画像データを生成する画像読み取り手段と、前記原稿画像を読み取った原稿の原稿特性情報を取得する原稿特性取得手段と、前記画像データに、前記取得した原稿特性情報が示す条件に対応した色変換を行う色変換手段と、を有する。
【0024】
これにより、画像データの原稿特性に対応した色変換処理が可能となり、画像の劣化を防ぐことができる。
【0025】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、さらに、前記色変換手段の色変換特性は、前記画像読み取り手段が基準画像を読み取る場合の基準画像と読み取った画像データとの読み取り特性に基づく第1の色変換特性を有し、前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像の前記第1の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換する。
【0026】
この態様によれば、画像データの原稿特性に対応した色変換処理が可能となり、画像読み取り手段が生成した画像データを読み取り元の原稿に忠実な色に変換することができる。
【0027】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、さらに、前記色変換された前記画像データを印刷する印刷手段を有し、前記色変換手段の色変換特性は、前記第1の色変換特性に加えて、前記印刷手段が基準画像データを印刷する場合の前記基準画像データと印刷画像との印刷特性に基づく第2の色変換特性を有し、前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像の前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とに基づいて、前記画像データを色変換する。
【0028】
この態様によれば、画像データの原稿特性に対応した色変換処理が可能となり、画像読み取り手段が生成した画像データを読み取り元の原稿に忠実な色に変換しながら、印刷手段によって印刷された時に当該画像データに忠実な画像になるように、画像データを色変換できる。
【0029】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性は、同一のまたは別々の変換テーブルに定義される。
【0030】
この態様によれば、色変換手段は、画像データの原稿特性に対応する色変換特性が定義された入力プロファイル、または、ルックアップテーブルによって色変換することができる。
【0031】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記色変換手段は、基準とする前記第1の色変換特性を前記取得した原稿特性情報に対応して補正し、当該補正した第1の色変換特性に基づいて前記画像データを色変換する。
【0032】
この態様によれば、基準の色変換特性に対して取得した原稿特性に対応した補正を行い、当該補正した色変換特性に基づいて画像データを色変換することにより、使用メモリの容量を小さくできる。
【0033】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記原稿特性情報は、前記原稿画像を印刷した印刷装置識別名、及び前記原稿画像が印刷された紙種別のいずれかまたは両方である。
【0034】
この態様によれば、原稿特性情報は、原稿画像の印刷元プリンターの機種やプリンター識別情報、または、原稿画像が印刷された紙の種別のいずれかまたは両方である。
【0035】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、さらに、前記色変換された前記画像データを印刷する印刷手段を有し、前記色変換手段の色変換特性は、前記印刷手段が基準画像データを印刷する場合の基準画像データと印刷した画像との印刷特性に基づく色変換特性に所定の調整を加えた第3の色変換特性を有し、前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像データの前記第3の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換する。
【0036】
この態様によれば、原稿特性に対応する画像データに基づいて所定の調整を行った色変換特性によって色変換処理が可能となり、所定の調整が最適に行われた画像が印刷されるように画像データを色変換できる。
【0037】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記所定の調整とは、前記原稿特性情報に対応する画像データの色域を、前記印刷手段の色域に適合するように拡張または縮小させる調整である。
【0038】
この態様によれば、所定の調整とは、画像の色域を拡張する例えば黒強調、または、画像の色域を縮小する例えば濃度抑制である。
【0039】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、さらに、前記色変換手段の色変換特性は、前記第3の色変換特性に加えて、前記画像読み取り手段が基準画像を読み取る場合の基準画像と読み取った画像データとの読み取り特性に基づく第1の色変換特性を有し、前記色変換手段は、前記第1の色変換特性と、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像データの前記第3の色変換特性とに基づいて、前記画像データを色変換する。
【0040】
この態様によれば、画像読み取り手段が生成した画像データを読み取り元の原稿に忠実な色に変換しながら、さらに、原稿特性に対応する画像データに基づいて所定の調整を行った色変換特性によって色変換処理が可能となり、所定の調整が最適に行われた画像が印刷されるように画像データを色変換できる。
【0041】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記第1の色変換特性と前記第3の色変換特性は、同一のまたは別々の変換テーブルに定義される。
【0042】
この態様によれば、色変換手段は、画像データの原稿特性に対応する色変換特性が定義された出力プロファイル、または、ルックアップテーブルによって色変換することができる。
【0043】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記色変換手段は、基準とする前記第3の色変換特性を前記取得した原稿特性情報に対応して補正し、当該補正した第3の色変換特性に基づいて前記画像データを色変換する。
【0044】
この態様によれば、基準の色変換特性に対して取得した原稿特性に対応した補正を行い、当該補正した色変換特性に基づいて画像データを色変換することにより、使用メモリの容量を小さくできる。
【0045】
上記の第1の側面において好ましい態様によれば、前記原稿特性情報は、前記原稿画像を印刷した印刷装置識別名である。
【0046】
この態様によれば、原稿特性情報は、原稿画像の印刷元プリンターの機種やプリンター識別情報等である。
【0047】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の側面によれば、印刷出力された原稿を読み取ることで得られる画像データに所定の色変換を行う処理をコンピューターに実行させるコンピューター読み取り可能な画像処理プログラムにおいて、前記画像データは、画像読み取り手段によって、前記原稿の印刷出力における出力条件を示す原稿特性情報が付与された前記原稿から原稿画像が読み取られて生成された画像データであって、前記色変換処理は、前記原稿画像が読み取られた原稿の原稿特性情報を取得する原稿特性取得工程と、前記画像データに、前記取得した原稿特性情報が示す条件に対応した色変換を行う色変換工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施の形態例の構成図である。
【図2】色変換処理を表す図である。
【図3】プリンター毎の画像の色域とその読み取り値を表す図である。
【図4】原稿画像データに原稿特性に対応しない入力プロファイルを適用する例図である。
【図5】色変換特性が定義されていない色の第1の色変換方法を表す図である。
【図6】色変換特性が定義されていない色の第2の色変換方法を表す図である。
【図7】原稿画像データに原稿特性に対応する入力プロファイルを適用する例図である。
【図8】印刷紙毎の画像の色域とその読み取り値を表す図である。
【図9】原稿画像データに原稿特性に対応しない入力プロファイルを適用する例図である。
【図10】原稿画像データに原稿特性に対応する入力プロファイルを適用する例図である。
【図11】第1の実施の形態例のフローチャート図である。
【図12】色変換テーブルの形態を表す図である。
【図13】各プリンターの印刷画像の色域を表す図である。
【図14】原稿画像データに黒強調の色変換処理を行う例図である。
【図15】原稿画像データに原稿特性に対応した黒強調の色変換処理を行う例図である。
【図16】各プリンターの黒強調の出力プロファイルを表す例図である。
【図17】スキャナー手段の読み取り特性と入力プロファイルを表す例図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0050】
[第1の実施の形態例]
第1の実施の形態例に係る画像処理装置では、読み取り対象の原稿画像を読み取って原稿画像データを生成すると共に、当該原稿画像データの原稿特性情報を取得し、当該原稿特性に対応したパッチ画像に基づいて生成された色変換特性により原稿画像データを色変換することによって、原稿画像データの各色を元の原稿画像に忠実な色の値に変換するものである。
【0051】
図1は、第1の実施の形態例にかかる複合機X10の機能を表す図である。複合機X10は、入力デバイスであるスキャナー手段11、入出力デバイスによって付加された固有の特性を補正する色変換を行う色変換手段12、出力デバイスである印刷手段13、とを有する。
【0052】
複合機X10は、次のような流れで原稿画像21を複写する。まず、スキャナー手段11が原稿画像21を読み取って原稿画像データを生成し、色変換手段12に出力する。色変換手段12は、スキャナー手段11から入力された原稿画像データに対して所定の色変換処理を行い、印刷手段13に出力し、印刷手段13は、色変換手段12から入力された原稿画像データに所定の画像処理を行って印刷する。各手段について以下に具体的に述べる。
【0053】
スキャナー手段11は、原稿台、CCDなどのイメージセンサ等(図示せず)を備え、原稿台に置かれた原稿画像21を光学的に読み取りRGB値の各色の階調データで表される原稿画像データを生成する。また、スキャナー手段11は、当該手段に固有の読み取り特性、すなわち原稿画像21とこれをスキャナー手段11で読み取った原稿画像データとの色の対応関係で表される特性を有している。なお、本実施の形態例の画像処理装置では、入力デバイスとしてスキャナー手段を挙げているが、入力デバイスはデジタルカメラ等であってもよい。
【0054】
印刷手段13は、画像処理手段31と印刷エンジン32とを備える。画像処理手段31は、色変換手段12から入力されたRGB値の原稿画像データをCMYK値へ変換し、ハーフトーン処理等を行う。そして、印刷エンジン32は、ハーフトーン処理等が行われた原稿画像データに基づいて紙媒体等に印刷を行う。印刷手段13もスキャナー手段11と同様に、当該手段に固有の印刷特性、すなわち原稿画像データとこれを印刷手段13で印刷した印刷画像22との色の対応関係で表される特性を有している。
【0055】
色変換手段12は、入力デバイスの読み取り特性及び出力デバイスの印刷特性の、例えば逆特性の色変換特性に基づいて原稿画像データの色変換処理を行う。入力デバイスに対応する色変換特性は入力プロファイル(スキャナープロファイル)22に、出力デバイスに対応する色変換特性は出力プロファイル(プリンタープロファイル)23に定義される。
【0056】
図2は、色変換処理を表す図である。色変換手段12は、原稿画像データRGB1にスキャナープロファイル22を適用することによって、スキャナー手段11の読み取り特性に基づいて読み取られた原稿画像データの各色(RGB値)を元の原稿画像に忠実な各色(L*a*b*値)に変換する。本実施の形態例の画像処理装置は、原稿画像21の原稿特性に対応したスキャナープロファイル22に基づいて色変換することに特徴がある。その処理の流れ、及び原稿特性については後述する。
【0057】
そして、色変換手段12は、スキャナープロファイル22に定義された色変換特性に基づいて変換された原稿画像データL*a*b*にプリンタープロファイル23を適用して、原稿画像データRGB2に変換する。これにより、印刷対象の原稿画像データの各色(L*a*b*値)は、印刷手段13の印刷特性に従って印刷された場合に原稿画像データに忠実な色になるような各色(RGB値)に変換される。
【0058】
なお、図2の色変換手段12は、原稿画像データを、RGB値とデバイス非依存の色空間のL*a*b*値を相互に変換しているが、L*a*b*ではなく、L*u*v*、XYZ等の色空間値に相互変換してもよい。L*a*b*はデバイス非依存の色空間であり、L*値は明度、a*b*値は色相、彩度を表す。a*b*値がともに0の場合には無彩色であり、a*がプラス値で大きい値であるほど赤が強く、マイナス値で小さい値であるほど緑が強い。また、b*がプラス値で大きい値であるほど黄が強く、マイナス値で小さい値であるほど青が強い。
【0059】
また、図2の色変換手段12は、原稿画像データRGB1に対して、スキャナープロファイル22とプリンタープロファイル23とをそれぞれ適用しているが、予めスキャナープロファイル22とプリンタープロファイル23とを合成したルックアップテーブル21を用意しておき、原稿画像データRGB1に当該ルックアップテーブル21を適用することによって原稿画像データRGB2に色変換してもよい。
【0060】
さらに、図2の色変換手段12では、スキャナープロファイル22、プリンタープロファイル23、ルックアップテーブル21等の変換テーブルに基づいて色変換を行っているが、変換テーブルではなく、色変換特性に基づいて設定された演算処理等によって色変換処理を行ってもよい。
【0061】
複合機X10は、ハードウェアとして、図示しないが、CPU、RAM、ROM等のメモリ、操作パネル、入出力インタフェース等を備える。ROMには、複合機X10全体を制御する制御プログラム等の基本のプログラム、及び、入出力プロファイル等の変換テーブルが格納されている。色変換手段12は、ROMに格納されるプログラムと、その処理を実行するCPU等で構成される。
【0062】
複合機X10は、上記のような機能およびハードウェア構成を有することによって、入力した原稿画像21の各色を忠実に再現した印刷画像22を複写画像として印刷する。
【0063】
次に原稿特性について説明する。本実施の形態例における原稿特性とは、当該画像を印刷したプリンターの装置識別名、及び、当該画像が印刷された紙の種別等の印刷時における条件を示す。具体的に、プリンターの装置識別名とは、例えば「プリンターA」、「プリンターB」等のプリンターの名称、または「Z110」等のプリンター機種名等であり、紙の種別とは、例えば「光沢紙」や「再生紙」等の種別である。原稿特性情報は、例えば、CMYKのうちいずれかの色のプレーンについて原稿特性情報を示す所定のパターンを原稿画像に付加して印刷する手法や地紋印刷の手法等の電子透かしの技術によって原稿画像データに埋め込まれていてもよいし、ICタグ等によって原稿用紙に付加されてもよい。
【0064】
本実施の形態例では、原稿特性が原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名である例と、原稿特性が原稿画像が印刷された紙の種別である例について説明する。以下に、まず、原稿特性が当該原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名であって、原稿画像データと同じ原稿特性を有するパッチ画像(基準画像)に基づいて作成されるスキャナープロファイル22を用いて原稿画像データの色変換処理を行う例について説明する。
【0065】
図3は、各プリンターのパッチ画像の色域特性(a)と、スキャナー手段11によるパッチ画像の各色の読み取り値(b)を示す図である。図3(a)はプリンターA、Bが印刷したパッチ画像(以下、パッチ画像A、B)の色域31、32を表す図であり、図3(b)はパッチ画像A、Bを複合機X10のスキャナー手段11により読み取ったRGB値の分布33、34を表す図である。
【0066】
図3(a)で表されている通り、パッチ画像A、Bの色域31、32はそれぞれ異なる。プリンターによって印刷した画像の色域が異なる理由は、プリンター毎に使用する色材やその印刷エンジンの性能、経年劣化の度合い、使用環境等が異なることに因る。
【0067】
例えば、プリンターの印刷エンジンが高性能である場合、当該プリンターでは多様な色が印刷可能となり印刷画像の色域は広くなる。一方、印刷エンジンの性能が低い場合、当該プリンターでは多様な色を印刷できず印刷画像の色域は狭くなる傾向がある。また、例えば、経年劣化によってプリンターの印刷エンジンが高濃度領域の色を印刷できなくなった場合、劣化以前の印刷エンジンによる印刷画像の色域と比べて、高濃度領域の色域は狭くなる。
【0068】
図3(a)において、パッチ画像Bの色域32は、パッチ画像Aの色域31に、一部、包括されない部分を有している。F2:L*a*b*(15,10,8)はその部分に含まれる色であって、パッチ画像Bのみが有する色である。一方、F1:L*a*b*(20,5,10)は、パッチ画像A、B共に有する色である。また、図3の右向きの直線矢印C10は、画像上のある色の測色値(左側)と、スキャナー手段11による当該色の読み取り値(右側)との対応関係を表している。従って、色F1、F2のスキャナー手段11の読み取り値は、それぞれF1´:RGB(22,14,19)、F2´:RGB(20,15,18)である。色F2と同様にして、F2´はパッチ画像Bのスキャナー読み取り値にのみ存在する色である。
【0069】
上記のようなパッチ画像Aに基づいて生成したスキャナープロファイル(以下、スキャナープロファイルA)は、パッチ画像Aの色F1(L*a*b*値)のスキャナー手段11による読み取り値F1´(RGB値)を元の色F1に変換する色変換特性を有する。即ち、図中のF1からF1´の矢印C11とは逆の色変換特性である。
【0070】
図4は、プリンターA、Bによって印刷された各原稿画像(以下、原稿画像A41、B42)を複合機X10のスキャナー手段11によって読み取り、生成した原稿画像データ(以下、原稿画像データA、B)にスキャナープロファイルA43を適用する場合の色の変移を表す図である。前提として、原稿画像A41は色F1を、原稿画像B42は色F2を有する。
【0071】
まず、原稿画像データA(F1´)と原稿特性が同じ、即ち原稿画像データA(F1´)を印刷したプリンターAによるパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルA43を、プリンターAに対応する原稿画像データA(F1´)に適用する場合について説明する。
【0072】
複合機X10のスキャナー手段11は、色F1:L*a*b*(20,5,10)を有する原稿画像A41を読み取って、色F1´の原稿画像データAを生成する。そして、色変換手段12は、当該原稿画像データA(F1´)に対してスキャナープロファイルA43を適用する。スキャナープロファイルA43は、前述したとおり、色F1´をF1に変換する色変換特性を有するため、色変換手段12によって原稿画像データAの色F1´はF1に変換される。従って、原稿画像データAの色F1´は、読み取り元の原稿画像A41の色F1と同じ色:L*a*b*(20,5,10)となる。
【0073】
次に、原稿画像データB(F2´)と原稿特性が異なる、即ち原稿画像データB(F2´)を印刷したプリンターBとは異なるプリンターAによるパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルA43を、プリンターBに対応する原稿画像データB(F2´)に適用する場合について説明する。
【0074】
複合機X10のスキャナー手段11は、色F2を有する原稿画像B42を読み取って色F2´の原稿画像データB(F2´)を生成する。そして、色変換手段12は、原稿画像データB(F2´)に対してスキャナープロファイルA43を適用するが、スキャナープロファイルA43には、色F2´の色変換特性が定義されていない。そこで、色変換手段12は、スキャナープロファイルA43に色変換特性が定義されていないF2´のような色について、次のように色変換を行う。以下に、2つの色変換方法を例示する。
【0075】
図5は、色変換特性が定義されていない色の第1の色変換方法を表す図である。図5(a)はパッチ画像A、Bの色域31、32を表す図であり、図5(b)はパッチ画像A、Bを複合機X10のスキャナー手段11により読み取ったRGB値の分布33、34を表す図である。また、右向きの直線矢印C11は、画像上のある色の測色値(左側)とスキャナー手段11による当該色の読み取り値(右側)との対応関係を表し、左向きの実線の曲線矢印A43は、スキャナー手段11による読み取り値(右側)とスキャナープロファイルAによる当該読み取り値の変換値(左側)との対応関係を表す。
【0076】
図5(b)の色F2´は、スキャナープロファイルA43に色変換特性が定義されていない。そこで、まず、第1の方法では、色変換特性が定義されていない色F2´を、パッチ画像Aの読み取り値の分布に含まれる最も近い色F1´の色変換特性A43(F1´)に基づいて色変換する。従って、色変換手段12は、色F2´をF1´の色変換特性F43(F1´)に基づいてF1に変換する。
【0077】
図6は、色変換特性が定義されていない色の第2の色変換方法を表す図である。図の内容と、矢印の意味は、図5と同様である。第2の方法では、色変換特性が定義されていない色であって、図6(b)における色F5´のようなパッチ画像Aの読み取り値分布の外郭から最も離れた色を、パッチ画像Aの読み取り値分布の外郭の色F1´になるように色域圧縮し、当該色域圧縮した色F1´の色変換特性A43(F1´)に基づいて変換する。具体的には、色F5´をF1´の色変換特性A43(F1´)に基づいて、色F2´をF3´の色変換特性A43(F3´)に基づいて色変換する。これにより、色F5´はF1に、色F2´はF3に変換される。
【0078】
上記の色変換方法は、次のような問題がある。第1の方法では、パッチ画像Aの読み取り値領域外の色が、当該色に最も近いパッチ画像Aの読み取り値領域の外郭の色の色変換特性によって色変換される。そのため、パッチ画像Aの読み取り値領域外の異なる色が同じ色に変換されることがあり、当該領域外の異なる色の階調性が失われてしまう。
【0079】
それに対して、第2の方法では、パッチ画像Aの読み取り値領域外の最も外側の色を、パッチ画像Aの読み取り値領域の外郭の色に色圧縮し該当する色の色変換特性に基づいて色変換するため、当該領域外の異なる色が同じ色に変換されることはなく、当該領域外の各色の階調性は保たれる。しかしながら、第2の方法では、当該領域内の色についても色圧縮し該当する色の色変換特性に基づいて色変換するため、当該領域内の色でも変換前と変換後とで色が異なってしまうことがある。図4の色変換手段12は、第1の方法によって色変換するものとする。なお、本実施の形態例における画像処理装置は、上記の問題を解決するものである。
【0080】
図4に戻り、色変換手段12は、第1の方法によって、原稿画像データBの色F2´をF1´の色変換特性A43(F1´)に基づいてF1に変換する。この結果、原稿画像データBの色F2´は、色変換手段12によって、読み取り元の原稿画像B42の色F2とは異なる色F1に変換されてしまう。このように、原稿画像データに対して、当該原稿画像データと印刷元のプリンターが異なるパッチ画像に基づくスキャナープロファイルを適用すると、原稿画像データは元の画像に忠実な色に変換されない。
【0081】
そこで、本実施の形態例の色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性を取得し、原稿画像データと原稿特性が同じパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルによって原稿画像データの色変換を行う。即ち、色変換手段12は、原稿画像データB(F2´)がプリンターBによって印刷されたことを表す原稿特性情報を取得し、プリンターBによるパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイル(以下、スキャナープロファイルB44)を適用して原稿画像データB(F2´)の色変換処理を行う。
【0082】
本実施の形態例では、原稿画像データに電子透かしによって原稿特性情報が埋め込まれているものとする。色変換手段12は、原稿画像データB(F2´)の特定色のプレーンに埋め込まれた原稿特性情報「印刷装置:プリンターB」を取得し、原稿画像データB(F2´)にスキャナープロファイルB44を適用して色変換処理を行う。
【0083】
図7は、原稿画像データB(F2´)にスキャナープロファイルB44を適用する場合の色の変移を表す図である。図3によると、パッチ画像Bの色F2のスキャナー手段11による読み取り値がF2´であることから、スキャナープロファイルB44は、色F2´をF2に変換する色変換特性を有する。具体的には、図5中に示した破線の色変換特性B44(F2´)である。従って、色F2´を有する原稿画像データBに対してスキャナープロファイルB44が適用されると、原稿画像データBのF2´はF2に変換される。この結果、原稿画像データBの色F2は、読み取り元の原稿画像B42のF2と同じ色L*a*b*(15,10,8)となる。
【0084】
そして、色変換手段12は、原稿画像データA(F1´)については、原稿画像データA(F1´)から原稿特性情報「印刷装置:プリンターA」を取得し、プリンターAによるパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルA43を適用して、元の画像データF1に忠実な原稿画像データに色変換する。
【0085】
図17は、スキャナープロファイルの色変換特性(a)と、スキャナー手段11の読み取り特性(b)を表す図である。スキャナープロファイルの色変換特性(a)の縦軸はスキャナープロファイルへの入力値(RGB)を、横軸は入力値に対する出力値(L*a*b*)の明度(L)を表す。色データ(L*a*b*、RGB)は共に3次元座標値であるが、図17では簡易的にLの横軸とRGBを1次元で表した縦軸とで示している。図17(a)において、実線で表されている特性がスキャナープロファイルA43であり、破線で表されている特性がスキャナープロファイルB44である。
【0086】
また、図17のスキャナー手段11の読み取り特性(b)の横軸は読み取り対象の画像の測色値(L*a*b*)の明度(L)を、縦軸はスキャナー手段11による画像の読み取り値(RGB)を表す。同図のスキャナー手段11の読み取り特性171に基づくと、色F1、F2の読み取り値は、それぞれF1´、F2´であることがわかる。
【0087】
前述したとおり、図17(a)の実線のスキャナープロファイルA43の色変換特性に基づくと、色F1´は色F1に変換されるが、色F2´についてはスキャナープロファイルA43に色変換特性が定義されていないため、色F2´に最も近い色F1´の色変換特性A43(F1´)に基づいてF1に変換される。一方、破線のスキャナープロファイルB44には、色F2´の色変換特性B44(F2´)が定義されているため、スキャナープロファイルB44の色変換特性B44(F2´)に基づいて、色F2´はF2に変換される。
【0088】
従って、色変換手段12は、原稿画像データB(F2´)を、その原稿特性(プリンターB)に対応するパッチ画像Bに基づいたスキャナープロファイルB44によって色変換することにより、原稿画像データを元の原稿画像B42に忠実な色の値に変換することができる。
【0089】
このように、本実施の形態例の画像処理装置は、読み取り対象の原稿画像を読み取って原稿画像データを生成すると共に、当該原稿画像データの原稿特性情報(印刷元のプリンターの装置識別名)を取得し、当該装置識別名のプリンターで形成したパッチ画像に基づいて生成される色変換特性を定義したスキャナープロファイルによって原稿画像データを色変換することによって、原稿画像データの各色を元の原稿画像に忠実な色の値に変換することができる。
【0090】
次に、原稿特性が当該原稿画像に印刷された紙の種別であって、原稿画像と同じ原稿特性を有するパッチ画像に基づいて生成されるスキャナープロファイル22を用いて原稿画像データの色変換処理を行う例について説明する。
【0091】
図8は、紙種別毎のパッチ画像の色域特性(a)と、スキャナー手段11によるパッチ画像の各色の読み取り値(b)を示す図である。図8(a)は再生紙、光沢紙に印刷されたパッチ画像(以下、パッチ画像/再生紙、パッチ画像/光沢紙)の色域81、82を表す図であり、図8(b)はパッチ画像/再生紙、パッチ画像/光沢紙を複合機X10のスキャナー手段11により読み取ったRGB値の分布83、84を表す図である。
【0092】
図8の右向きの直線矢印C12は、パッチ画像/再生紙上のある色の測色値(左側:F11、F12)と、スキャナー手段11による当該色の読み取り値(右側:F11´、F12´)との対応関係を示しており、右向きの破線の直線矢印C13は、パッチ画像/光沢紙上のある色の測色値(左側:F13)と、スキャナー手段11による当該色の読み取り値(右側:F13´)との対応関係を表している。
【0093】
従って、パッチ画像/再生紙上の色F11:L*a*b*(28,8,6)、F12:L*a*b*(20,5,8)の各色は、スキャナー手段11によってそれぞれ色F11´:RGB(20,15,18)、F12´:RGB(15,8,10)として読み取られる。一方、パッチ画像/光沢紙上の色F13:L*a*b*(20,8,10)はスキャナー手段11によって、色F13´:RGB(21,13,17)として読み取られる。
【0094】
図8(a)におけるF12とF13とは色差の少ない色味の近い色である。しかし、F12が再生紙に、F13が光沢紙に印刷されている場合、スキャナー手段11による各色の読み取り値F12´、F13´の色差は図8(b)のように大きくなってしまう。また、色F13´は寧ろF11´と色味が近い。このような現象は、前述したとおり、紙の反射率の違いや、スキャナー手段11と測色機との使用する光源の特性の違いによって発生する。
【0095】
上記のようなパッチ画像/再生紙に基づいて生成されたスキャナープロファイル(以下、スキャナープロファイル/再生紙)93は、パッチ画像/再生紙の色(F11、F12)のスキャナー手段11による読み取り値(F11´、F12´)を元の色(F11、F12)に変換する色変換特性A93を有する。図8における左向きの曲線矢印A93は、スキャナー手段11による読み取り値(右側:F11´、F12´、F13´)と、当該読み取り値のスキャナープロファイル/再生紙93による変換値(左側:F11、F12、F14)との対応関係を表している。一方、パッチ画像/光沢紙に基づくスキャナープロファイル/光沢紙94は、F13´を元の色F13に変換する色変換特性を有する。
【0096】
まず、原稿画像データ/再生紙(F11´、F12´)と原稿特性が同じ、即ち再生紙に印刷されたパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイル/再生紙93を、原稿画像データ/再生紙(F11´、F12´)に適用する場合について説明する。
【0097】
図9は、原稿画像/再生紙91、原稿画像/光沢紙92を複合機X10のスキャナー手段11によって読み取り、スキャナープロファイル/再生紙93を適用する場合の色の変移を表す図である。前提として、原稿画像/再生紙91は色F11:L*a*b*(28,8,6)、F12:L*a*b*(20,5,8)を有し、原稿画像/光沢紙92は色F13:L*a*b*(20,8,10)を有する。
【0098】
複合機X10のスキャナー手段11は、原稿画像/再生紙91を読み取って、色F11´、F12´の原稿画像データ/再生紙を生成する。そして、色変換手段12が原稿画像データ/再生紙(F11´、F12´)に対してスキャナープロファイル/再生紙93を適用すると、スキャナープロファイル/再生紙93はF11´をF11に、F12´をF12に変換する色変換特性A93(F11´、F12´)を有しているため、原稿画像データ/再生紙の色F11´はF11に、色F12´はF12に変換される。従って、原稿画像データ/再生紙の色F11´、12´は、読み取り元の原稿画像/再生紙91の色F11、12と同じ色L*a*b*(28,8,6)、L*a*b*(20,5,8)となる。
【0099】
次に、原稿画像データ/光沢紙(F13´)と原稿特性が異なる、即ち光沢紙ではなく再生紙に印刷されたパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイル/再生紙93を、原稿画像データ/光沢紙(F13´)に適用する場合について説明する。
【0100】
複合機X10のスキャナー手段11は、原稿画像/光沢紙92を読み取り、色F13´の原稿画像データ/光沢紙(F13´)を生成する。そして、色変換手段12は、原稿画像データ/光沢紙(F13´)に対してスキャナープロファイル/再生紙93を適用する。しかし、色F13´はF11´に色味が近い色であるため、色F13´はスキャナープロファイル/再生紙93の色変換特性A93(F13´)に基づいて、色F11に近い色F14に変換されてしまう。従って、原稿画像データ/光沢紙の色F13´は、読み取り元の原稿画像/光沢紙92の色F13とは異なる色F14に変換されてしまう。このように、原稿画像データに、原稿画像データと印刷された紙種別が異なるパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルを適用すると、原稿画像データは元の原稿画像に忠実な色に変換されない。
【0101】
そこで、本実施の形態例の色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性を取得し、原稿画像データと原稿特性が同じパッチ画像に基づいて生成されるスキャナープロファイルによって色変換を行う。即ち、色変換手段12は、原稿画像データ/光沢紙(F13´)が光沢紙に印刷されたことを表す原稿特性情報「印刷紙:光沢紙」を取得し、光沢紙に印刷されたパッチ画像/光沢紙に基づいて生成されたスキャナープロファイル/光沢紙94を適用して原稿画像データ/光沢紙(F13´)の色変換処理を行う。
【0102】
図10は、原稿画像データ/光沢紙(F13´)にスキャナープロファイル/光沢紙94を適用する場合の色の変移を表す図である。複合機X10のスキャナー手段11は、色F13:L*a*b*(20,8,10)を有する原稿画像/光沢紙92を読み取って、色F13´の原稿画像データ/光沢紙を生成する。スキャナープロファイル光沢紙94は、色F13´をF13に変換する色変換特性を有するため、原稿画像データ/光沢紙(F13´)に対してスキャナープロファイル/光沢紙94が適用されると、原稿画像データ/光沢紙の色F13´はF13に変換される。従って、原稿画像データ/光沢紙の色F13´は、読み取り元の原稿画像/光沢紙92の色F13と同じ色L*a*b*(20,8,10)となる。
【0103】
一方、原稿画像データ/再生紙(F11´、F12´)は、スキャナープロファイル/再生紙93が適用されると、読み取り元の原稿画像/再生紙91の色F11、F12と同じ色に変換される。
【0104】
従って、色変換手段12は、原稿画像データ/再生紙(F11´、F12´)については、その原稿特性(再生紙)に対応するパッチ画像/再生紙に基づいたスキャナープロファイル/再生紙93によって色変換し、原稿画像データ/光沢紙(F13´)については、その原稿特性(光沢紙)に対応するパッチ画像/光沢紙に基づいたスキャナープロファイル/光沢紙94によって色変換することにより、それぞれの原稿画像データを元の原稿画像に忠実な色の値に変換することができる。
【0105】
このように、本実施の形態例の画像処理装置は、読み取り対象の原稿画像を読み取って原稿画像データを生成すると共に、当該原稿画像データの原稿特性情報(原稿画像が印刷された紙の種別)を取得し、同種別の紙に印刷されたパッチ画像に基づいて生成される色変換特性を定義したスキャナープロファイルによって原稿画像データを色変換することによって、原稿画像データの各色を元の原稿画像に忠実な色の値に変換することができる。
【0106】
また、本実施の形態例の画像処理装置は、変換対象の全ての色についてその色変換特性を有する。そのため、色変換手段12は、図5、6のように、変換対象の色と色味が近い、もしくは、変換対象の色を色域圧縮した色の色変換特性に基づいて色変換処理を行う必要がない。従って、本実施の形態例の画像処理装置は、色変換処理によって色の階調性が失われることや、色変換処理の前と後とで色が異なってしまうことによる画像の劣化を防ぐことができる。
【0107】
図11は、原稿画像の原稿特性に対応した色変換特性によって色変換処理を行う処理のフローチャート図である。まず、複合機X10のスキャナー手段11は、原稿画像21を読み取り、原稿画像データを生成する(S10)。続いて、色変換手段12は、電子透かし技術等によって原稿画像データに付加された原稿特性情報を取得する(S11)。
【0108】
原稿画像データに原稿特性情報が付加されている場合(S12のYES)、色変換手段12は、取得した原稿特性に対応した色変換特性に基づいて、原稿画像データの色変換を行う。具体的には、色変換手段12は、原稿特性に対応するパッチ画像に基づいて生成される色変換特性を定義したルックアップテーブル21に基づいて、原稿画像データの色変換処理を行う(S13)。一方、原稿画像データに原稿特性情報が付加されていない場合(S12のNO)、色変換手段12は、デフォルトの色変換特性を定義したルックアップテーブル21に基づいて、原稿画像データの色変換処理を行う(S14)。
【0109】
続いて、複合機X10は原稿画像データに、印刷される画像が複合機X10によって印刷されたことを示す原稿特性情報を、電子透かし等の技術によって原稿画像データに付加する(S15)。そして、印刷手段13は、原稿特性が付加された原稿画像データを印刷する(S16)。印刷画像には複合機X10の印刷手段13で印刷されたことを表す原稿特性が付加されているため、次回、当該印刷画像を読み取って色変換する場合、色変換手段12は、複合機X10の印刷手段13で印刷されたパッチ画像に基づいて生成された色変換特性によって原稿画像データを色変換することができる。
【0110】
また、上記のように、本実施の形態例の画像処理装置は、原稿特性情報が付加された原稿画像データについては原稿特性に特化した色変換処理を行い、原稿特性情報が付加されていない原稿画像データについては通常の色変換処理を行う。これにより、原稿特性情報が付加されていない原稿画像データについてはそれに特化した色変換処理が行われず、画像の劣化を抑えることができる。
【0111】
図12は、色変換手段12の変換テーブルの形態を表す図である。本実施の形態例の色変換手段12は、図12(a)のように、各原稿特性に対応した複数の色変換特性のスキャナープロファイル22を用意しておき、原稿画像データに、その原稿特性に対応したスキャナープロファイル22とプリンタープロファイル23とをそれぞれ適用して色変換してもよい。また、色変換手段12は、図12(b)のように、プリンタープロファイルと原稿特性に対応したスキャナープロファイルとに基づいた複数のルックアップテーブル21を原稿特性毎に用意しておき、原稿画像データにその原稿特性に対応したルックアップテーブル21を適用して色変換してもよい。
【0112】
また、図示していないが、色変換手段12は、基準とする原稿特性の色変換特性に基づいたスキャナープロファイル22またはルックアップテーブル21等の色変換テーブルを保持し、原稿画像データの原稿特性に対応して当該基準の色変換テーブルを補正し、補正した色変換テーブルに基づいて画像データの色変換を行ってもよい。これによると、色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性毎に色変換テーブルを保持しておく必要がなく、使用メモリの容量を少なくできる。
【0113】
なお、上記の実施の形態例では、原稿特性が当該原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名である例と、当該原稿画像が印刷された紙の種別である例に分けて説明した。しかし、原稿特性は、当該原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名と当該原稿画像が印刷された紙の種別との組み合わせであってもよい。例えば、原稿画像データに、プリンターBによって再生紙に印刷されたことを表す原稿特性情報が付加されている場合、色変換手段12は、当該原稿画像データを、プリンターBによって再生紙に印刷されたパッチ画像に基づいて生成されたスキャナープロファイルによって色変換する。
【0114】
また、原稿特性は、原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名、原稿画像が印刷された紙の種別に限られるものではなく、原稿画像の複写時に設定された写真/文字モード、所定の色調整等のモードや複写濃度の設定等の条件であってもよい。また、原稿画像を印刷したプリンターの装置識別名は、「レーザープリンター」「インクジェットプリンター」等のプリンターの種別であっても良いし、「特性A」「特性B」のように所定の特性を表す識別情報であってもよい。色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性が示す条件に対応したパッチ画像に基づいて生成された色変換テーブルを適用して当該原稿画像データの色変換処理を行う。
【0115】
[第2の実施の形態例]
第2の実施の形態例の画像処理装置では、原稿画像データの原稿特性を取得し、当該原稿特性に対応した基準画像データに基づいて色変換特性に所定の調整を加えた色変換特性により原稿画像データを色変換することによって、原稿画像データにとって最適な色変換処理を行うものである。
【0116】
第2の実施の形態例の画像処理装置は、第1の実施の形態例と同様である。第2の実施の形態例における色変換特性とは、印刷手段13がパッチ画像データを印刷した場合の、パッチ画像データと印刷画像との印刷特性に基づいて生成される色変換特性であり、当該色変換特性には所定の調整が加えられることがある。所定の調整とは、例えば、画像データを印刷手段13によって濃い目に印刷する黒強調等である。
【0117】
本実施の形態例の画像処理装置は、原稿特性毎に、その原稿特性に対応する画像データ(基準画像データ)に基づいて色変換特性に所定の調整を加えたプリンタープロファイル23を有する。従って、第1の実施の形態例の画像処理装置が図1のスキャナープロファイル22に係る色変換処理に特徴を有していたのに対し、第2の実施の形態例の画像処理装置は、プリンタープロファイル23に係る色変換処理に特徴を有する。以下、まず、プリンタープロファイル23に黒強調を加える例について説明する。
【0118】
図13は、プリンターA、B、複合機X10の印刷手段13のパッチ画像による色域特性131、132、133を表す図である。色域特性は実際には3次元座標値で示されるが、簡易的に2次元座標で示している。図13のように、各プリンター及び印刷手段の色域特性131、132、133は、必ずしも全く同一ではない。
【0119】
図13において、F21:L*a*b*(13,5,7)は、黒色を示すRGB:(0,0,0)の画像データに対応するプリンターAの印刷画像の測色値である。同様にして、F31:L*a*b*(10,8,3)は、RGB:(0,0,0)の画像データに対応するプリンターBの印刷画像の測色値であり、F41:L*a*b*(8,3,5)は、複合機X10の印刷手段13の印刷画像の測色値である。色F21、31、41のうち、F41が最も暗く、F21が最も明るい色である。即ち、複合機X10の印刷手段13はRGB:(0,0,0)の画像データに対して、プリンターA、Bに比べてより暗い色を印刷できるものとする。
【0120】
図14は、プリンターAが印刷した原稿画像データA(F21)に、黒強調を加えたプリンタープロファイルを適用する場合の色の変移を表す図である。原稿画像A141は、黒色を示すRGBa:(0,0,0)の画像データをプリンターAにより印刷した画像であり、色F21を有する。また、色F21をスキャナー手段11で読み取った値は、F21´:RGB(8,5,8)であるものとする。従って、スキャナープロファイルA43は、F21´をF21に変換する色変換特性を有する。
【0121】
一方、複合機X10の印刷手段13は、図13に示すとおり、黒色を表すRGB:(0,0,0)画像データに対して色F41の画像を印刷する印刷特性を有する。従って、通常の、複合機X10の印刷手段13に対応するプリンタープロファイル142は、F41をRGB:(0,0,0)に変換する色変換特性を有する。それに伴って、色F41より明るい色も同様の比率でRGB値に変換される。
【0122】
まず、通常のプリンタープロファイル142(黒強調なし)を適用して色変換する処理について説明する。図14において、複合機X10のスキャナー手段11は、原稿画像A141(F21)を読み取り、色F21´を有する原稿画像データAを生成する。そして、色変換手段12は、原稿画像データA(F21´)に対してスキャナープロファイルA43を適用し、原稿画像データAの色をF21´からF21に変換する。続いて、色変換手段12は、色F21´を有する原稿画像データAに対して、プリンタープロファイル142を適用する。
【0123】
上述したとおり、プリンタープロファイル142は、複合機X10の印刷手段13に対応する色変換特性を有しており、図13中の色F41をRGB(0,0,0)に変換し、他の色も同じ比率で変換する色変換特性を有する。そのため、原稿画像データA(F21)に対してプリンタープロファイル142が適用されると、原稿画像データAの色F21:L*a*b*(13,5,7)は、F21x´:RGB(4,5,2)のようにRGB(0,0,0)より明るめの色に変換される。そのような原稿画像データA(F21x´)を複合機X10の印刷手段13で印刷した印刷画像145の色はF21x:L*a*b*(13,5,7)、即ち、複合機X10の印刷手段13の印刷可能な最も暗い色F41: L*a*b*(8,3,5)よりも明るめの色となってしまう。
【0124】
そこで、RGB(0,0,0)の画像データに対応する原稿画像データAの色F21:L*a*b*(13,5,7)を、複合機X10の印刷手段13においても最も暗い色F41:L*a*b*(8,3,5)として印刷するために、プリンタープロファイルは黒強調を行う。原稿画像データA(F21)に基づいて黒強調を行う場合、プリンタープロファイルには、RGB(0,0,0)の画像データに対応する原稿画像データAの色F21:L*a*b*(13,5,7)を、RGB(0,0,0)に変換するような調整が加えられる。これが、黒強調である。
【0125】
即ち、原稿画像データA(F21)に基づいて黒強調されたプリンタープロファイル(以下、プリンタープロファイル黒強調A143)は、F21より暗い色を全てRGB(0,0,0)に変換する色変換特性を有する。
【0126】
原稿画像データA(F21)にプリンタープロファイル黒強調A143が適用されると、原稿画像データAのF21はRGB(0,0,0)に変換され、プリンターXの印刷手段13が印刷可能な最も暗い色F41として印刷される。これにより、RGB(0,0,0)の画像データに対応する原稿画像A141のF21は、複合機X10の印刷手段13によって当該印刷手段13が印刷可能な最も暗い色F41として複写される。
【0127】
以上が、プリンタープロファイル23が黒強調を行う例である。しかし、プリンタープロファイル黒強調A143は、プリンターAによる原稿画像データA(F21)の色域に基づいて黒強調を行うプリンタープロファイルであるため、当該プリンタープロファイル黒強調A143を、原稿画像データAと原稿特性が異なるプリンターBによる原稿画像データBに適用すると適切な黒強調が行われない。
【0128】
即ち、図13に示されるとおり、プリンタープロファイル黒強調A143によれば、プリンターAによる色F21はRGB(0,0,0)に変換されるが、プリンターBによる色F31からF21の間の色は全てRGB(0,0,0)に変換されてしまい、プリンターBによる色F21がRGB(0,0,0)より明るいRGB値に変換されない。そこで、本実施の形態例の色変換手段12は、原稿画像データと原稿特性が同じ画像データに基づく色変換特性に黒強調を加えたプリンタープロファイルによって、原稿画像データの色変換を行う。以下、説明する。
【0129】
図15は、原稿画像データA(F21)に基づいて黒強調を行ったプリンタープロファイル黒強調A143を、プリンターBから印刷された原稿画像データB(F31、F32)に適用する場合の色の変移を表す図である。
【0130】
前提として、原稿画像B151は、黒色を示すRGBa:(0,0,0)の画像データを印刷した色F31:L*a*b*(10,8,3)と、暗いグレーを示すRGBb:(10,10,10)の画像データを印刷した色F32:L*a*b*(13,0,0)とを有し、色F31、32のスキャナー手段11による読み取り値は、それぞれF31´:RGB(8,6,3)、F32´:RGB(15,15,15)であるものとする。従って、第1の実施の形態例に基づいて、スキャナープロファイルB44は、F31´をF31に、F32´をF32に変換する色変換特性を有する。
【0131】
複合機X10のスキャナー手段11は、原稿画像B151を読み取り、色F31´、F32´の原稿画像データBを生成する。そして、色変換手段12は、原稿画像データB(F31´、F32´)に対してスキャナープロファイルB44を適用し、原稿画像データBの色をF31´からF31に、F32´からF32に変換する。
【0132】
前述したとおり、プリンタープロファイル黒強調A143は、図13に示されるようにF21より暗い色を全てRGB(0,0,0)に変換する色変換特性を有している。色F31、F32は、F21:L*a*b*(13,5,7)よりも暗い色であるため、原稿画像データB(F31、F32)にプリンタープロファイル黒強調A143が適用されると、原稿画像データBの色F31、F32は共に、RGB(0,0,0)に変換されてしまう。つまり、F31、F32は異なる色であったにも関わらず同じ色として印刷され、画像が劣化してしまう。
【0133】
図16は、複合機X10の印刷手段13の印刷特性(a)と、画像データA、Bに基づいて黒強調を行うプリンタープロファイルの色変換特性(b)を表す図である。複合機X10の印刷手段13の印刷特性(a)の縦軸は印刷手段13への入力値(RGB)を、横軸は入力値に対応する印刷画像の値(L*a*b*)の明度(L)を表す。色データ(L*a*b*、RGB)は共に3次元座標値であるが、簡易的にLの横軸とRGBを1次元で表した縦軸とで示している。図16(a)によると、複合機X10の印刷手段13によってRGB(0,0,0)の画像データを印刷すると、色F41の画像が印刷されることがわかる。
【0134】
また、図16のプリンタープロファイルの色変換特性(b)の横軸はプリンタープロファイルへの入力値(L*a*b*)の明度(L)を、縦軸は入力値に対する出力値(RGB)を表す。同図において、破線で表されている特性がプリンタープロファイル黒強調A143であり、実線で表されている特性が、プリンターBによる画像データに基づいて黒強調を行うプリンタープロファイル(プリンタープロファイル黒強調B152)である。図16(b)の破線のプリンタープロファイル黒強調A143の色変換特性に基づくと、前述したとおり、色F31、F32は共にRGB(0,0,0)に変換される。
【0135】
図15に戻り、本実施の形態例の色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性を取得し、原稿画像データと原稿特性(装置識別名)が同じ画像データに基づいて黒強調を行ったプリンタープロファイルよって原稿画像データの色変換を行う。即ち、色変換手段12は、原稿画像データB(F31、F32)がプリンターBによって印刷されたことを表す原稿特性情報「印刷装置:プリンターB」を取得し、プリンターBによる画像データに基づいて色変換特性に黒強調を行ったプリンタープロファイル黒強調B152を適用して、原稿画像データB(F31、F32)の色変換処理を行う。
【0136】
図13に示される通り、RGB(0,0,0)の画像データに対応するプリンターBの印刷画像の色はF31である。そのため、プリンターBによる画像データに基づいて色変換特性に黒強調を行う場合、プリンタープロファイル黒強調B152には、色F31をRGB(0,0,0)に変換するような黒強調が行われる。即ち、プリンタープロファイル黒強調B152は、色F31より暗い色を全てRGB(0,0,0)に変換し、色F31からF21の間の色はRGB(0,0,0)より明るいRGB値に変換する色変換特性を有する。
【0137】
図16に戻り、プリンタープロファイル黒強調B152の色変換特性は、図16(b)の実線のような特性で表される。同図によると、プリンタープロファイル黒強調A143が色F21より暗い色(F31を含む)をRGB(0,0,0)に変換するのに対して、プリンタープロファイル黒強調B152は色F31より暗い色をRGB(0,0,0)に変換する。つまり、プリンタープロファイル黒強調B152は、プリンタープロファイル黒強調A143よりも黒強調の度合いが小さい。
【0138】
図16(b)のプリンタープロファイル黒強調B152によると、色F31はF31b´:RGB(0,0,0)に、色F32はRGB(0,0,0)より少し明るいF32b´:RGB(6,6,6)に変換される。従って、原稿画像データBのF31、F32が同じ色に変換されてしまうことはない。図16(a)の複合機X10の印刷手段13の印刷特性161によると、変換されたRGBの色F31b´、32b´は、複合機X10の印刷手段13によって、それぞれF31b(F41):L*a*b*(8,3,5)、F32b:L*a*b*(11,0,0)という異なった色として印刷される。
【0139】
従って、色変換手段12は、原稿画像データA(F21)については、その原稿特性(プリンターA)に対応する画像データに基づいて黒強調を行ったプリンタープロファイルA黒強調143よって色変換し、また、原稿画像データB(F31、F32)については、その原稿特性(プリンターB)に対応する画像データに基づいて黒強調を行ったプリンタープロファイルB黒強調152によって色変換することにより、それぞれの原稿画像データを、印刷時に最適な黒強調が行われる原稿画像データに色変換することができる。
【0140】
このように、本実施の形態例の画像処理装置は、原稿画像データの原稿特性情報を取得し、当該原稿特性に対応した基準画像データに基づいて色変換特性に所定の調整を加えた色変換特性(プリンタープロファイル23、ルックアップテーブル21)を適用して原稿画像データを色変換することによって、元の原稿画像データに最適な色変換処理が行われる。これにより、本実施の形態例の画像処理装置は、色変換処理によって印刷画像を劣化させることを防ぐことができる。
【0141】
第2の実施の形態例における色変換処理のフローチャート図は、第1の実施の形態例の図11と同様である。色変換手段12は原稿特性情報を取得し、原稿画像データに原稿特性情報が付加されている場合(S12のYES)、原稿特性に対応する画像データに基づいて所定の調整が加えられたルックアップテーブルによって、原稿画像データの色変換処理を行う(S13)。一方、原稿画像データに原稿特性情報が付加されていない場合(S12のNO)、色変換手段12はデフォルトの色変換特性を定義したルックアップテーブルによって、原稿画像データの色変換処理を行う(S14)。
【0142】
続いて、複合機X10は原稿画像データに、印刷される画像が複合機X10によって印刷されたことを示す原稿特性情報を原稿画像データに付加し(S15)、印刷手段13によって印刷する(S16)。印刷画像には複合機X10の印刷手段13によって印刷されたことを表す原稿特性情報が付加されているため、次回、当該印刷画像が別の複合機で複写される場合、別の複合機の色変換手段12は、複合機X10の印刷手段13で印刷された画像データに基づいて所定の調整が加えられた色変換特性に基づいて原稿画像データを色変換することができる。
【0143】
なお、上記の例では、プリンタープロファイル23に対して、複写するプリンターの印刷画像の色域に適合するように原稿画像データの色域を拡大する調整(黒強調)を行う例について説明してきたが、プリンタープロファイル23に対する調整は黒強調に限定されない。例えば、原稿画像を印刷したプリンターの印刷色域よりも、当該原稿画像を複写するプリンターの印刷色域が狭い場合、プリンタープロファイル23に対して、複写するプリンターの印刷画像の色域に適合するように原稿画像データの色域を縮小する調整(濃度抑制)が行われることがある。本実施の形態例の色変換処理は、このような濃度抑制を行うものにも用いられる。
【0144】
また、第1の実施の形態例と同様に、色変換手段12は、基準とする原稿特性の色変換特性に基づいたプリンタープロファイル23またはルックアップテーブル21等の色変換テーブルを保持し、原稿画像データの原稿特性に対応して当該基準の色変換テーブルを補正し、補正した色変換テーブルに基づいて画像データの色変換を行ってもよい。これによると、色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性毎に色変換テーブルを保持しておく必要がなく、使用メモリの容量を少なくできる。
【0145】
また、第1の実施の形態例と第2の実施の形態例に分けて説明してきたが、第1の実施の形態例と第2の実施の形態例を組み合わせて実施してもよい。即ち、色変換手段12は、原稿画像データの原稿特性に対応したパッチ画像に基づいて生成される色変換特性(スキャナープロファイル)と、さらに、当該原稿特性に対応する画像データに基づいて色変換特性に所定の調整を加えた色変換特性(プリンタープロファイル)とに基づいて原稿画像データを色変換する。これにより、色変換手段12は、原稿画像データを原稿画像に忠実な色に変換した上で、さらに、当該原稿画像データを印刷時に最適な調整が行われる原稿画像データに色変換することができる。
【0146】
以上、上記の実施の形態例は、複合機X10の色変換手段12の処理として説明してきたが、色変換手段12の処理は、コンピューター読み取り可能な記録媒体にプログラムとして記憶されて、当該プログラムをコンピューターが読み出して実行することによって行われてもよい。
【符号の説明】
【0147】
10:複合機X、11:スキャナー手段(画像読み取り手段)、12:色変換手段、13:印刷手段、21:ルックアップテーブル、22:スキャナープロファイル、23:プリンタープロファイル、31:印刷処理、32:印刷エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷出力された原稿を読み取ることで得られる画像データに所定の色変換を行う画像処理装置であって、
前記原稿の印刷出力における出力条件を示す原稿特性情報が付与された前記原稿から、原稿画像を読み取って前記原稿画像の画像データを生成する画像読み取り手段と、
前記原稿画像を読み取った原稿の原稿特性情報を取得する原稿特性取得手段と、
前記画像データに、前記取得した原稿特性情報が示す条件に対応した色変換を行う色変換手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記色変換手段の色変換特性は、前記画像読み取り手段が基準画像を読み取る場合の基準画像と読み取った画像データとの読み取り特性に基づく第1の色変換特性を有し、
前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像の前記第1の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2において、さらに、
前記色変換された前記画像データを印刷する印刷手段を有し、
前記色変換手段の色変換特性は、前記第1の色変換特性に加えて、前記印刷手段が基準画像データを印刷する場合の前記基準画像データと印刷画像との印刷特性に基づく第2の色変換特性を有し、
前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像の前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とに基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性は、同一のまたは別々の変換テーブルに定義されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記色変換手段は、基準とする前記第1の色変換特性を前記取得した原稿特性情報に対応して補正し、当該補正した第1の色変換特性に基づいて前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記原稿特性情報は、前記原稿画像を印刷した印刷装置識別名、及び前記原稿画像が印刷された紙種別のいずれかまたは両方であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1または2において、さらに、
前記色変換された前記画像データを印刷する印刷手段を有し、
前記色変換手段の色変換特性は、前記印刷手段が基準画像データを印刷する場合の基準画像データと印刷した画像との印刷特性に基づく色変換特性に所定の調整を加えた第3の色変換特性を有し、
前記色変換手段は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像データの前記第3の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記所定の調整とは、前記原稿特性情報に対応する画像データの色域を、前記印刷手段の色域に適合するように拡張または縮小させる調整であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記色変換手段の色変換特性は、前記第3の色変換特性に加えて、前記画像読み取り手段が基準画像を読み取る場合の基準画像と読み取った画像データとの読み取り特性に基づく第1の色変換特性を有し、
前記色変換手段は、前記第1の色変換特性と、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像データの前記第3の色変換特性とに基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1の色変換特性と前記第3の色変換特性は、同一のまたは別々の変換テーブルに定義されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項7において、
前記色変換手段は、基準とする前記第3の色変換特性を前記取得した原稿特性情報に対応して補正し、当該補正した第3の色変換特性に基づいて前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかにおいて、
前記原稿特性情報は、前記原稿画像を印刷した印刷装置識別名であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
印刷出力された原稿を読み取ることで得られる画像データに所定の色変換を行う処理をコンピューターに実行させるコンピューター読み取り可能な画像処理プログラムにおいて、
前記画像データは、画像読み取り手段によって、前記原稿の印刷出力における出力条件を示す原稿特性情報が付与された前記原稿から原稿画像が読み取られて生成された画像データであって、
前記色変換処理は、
前記原稿画像が読み取られた原稿の原稿特性情報を取得する原稿特性取得工程と、
前記画像データに、前記取得した原稿特性情報が示す条件に対応した色変換を行う色変換工程と、を有することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項14】
請求項13において、
前記色変換工程の色変換特性は、前記画像読み取り手段が基準画像を読み取る場合の基準画像と読み取った画像データとの読み取り特性に基づく第1の色変換特性を有し、
前記色変換工程は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像の前記第1の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
請求項13または14において、
前記色変換された前記画像データは印刷手段によって印刷され、
前記色変換工程の色変換特性は、前記印刷手段が基準画像データを印刷する場合の基準画像データと印刷した画像との印刷特性に基づく色変換特性に所定の調整を加えた第3の色変換特性を有し、
前記色変換工程は、前記取得した原稿特性情報に対応する前記基準画像データの前記第3の色変換特性に基づいて、前記画像データを色変換することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項16】
請求項15において、
前記所定の調整とは、前記原稿特性情報に対応する画像データの色域を、前記印刷手段の色域に適合するように拡張または縮小させる調整であることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−151486(P2011−151486A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9312(P2010−9312)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】