説明

画像処理装置、画像処理方法、および、プログラム

【課題】印刷対象の画像データから、ノイズデータを従来よりも精度良く除去する技術を提供する。
【解決手段】読み取られた所定バンド数分の画像データについて、主走査方向の位置ごとに所定の輝度値以下の画素数をカウントするカウント手段と、所定の輝度値以下の画素がない回数をカウントする非累積カウント手段と、非累積カウント手段でカウントされた回数を格納する非累積回数格納手段と、カウント手段でカウントされた画素数を、主走査方向の位置ごとに、累積する累積値算出手段と、その累積値が所定の閾値を超える位置に基づいて、印字開始位置を決定する印字範囲決定手段と、を備え、累積値算出手段は、所定の輝度値以下の画素がある場合には、その時点の累積値に、カウント手段によってカウントされた画素数を加えるとともに、非累積回数格納手段に格納されている回数に応じた値を減算し、その結果値を累積値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット複合機には、印字範囲を決定(変更)することによって、その印字範囲以外の領域にあるノイズを除去できるものがある(例えば、特許文献1)。これにより、印字範囲の外側にあるノイズデータを印字するための余分な動作を省き、印字処理の高速化を図ることもできる。
【0003】
このような従来のインクジェット複合機では、原稿から読み取った画像データに対して、バンド単位で印字画素数の累積ヒストグラムを作成する。そして、上下のバンドの累積ヒストグラムと合わせた3バンド分のヒストグラムを用いて、バンド一端から印字画素数の累積値が特定閾値に達するまでの位置を調査し、その位置を基に印字範囲の境界を決定(変更)する。
【0004】
ところで、除去したいノイズデータは、印字すべき印字データと比較すると、画素数が十分少ない。また、印字すべき印字データ付近のノイズデータは、それが印字すべき印字データなのか、ノイズデータなのか、判断が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−188936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、従来では、除去できるノイズデータは、画素数が十分少なく、印字すべき印字データから孤立している場合に限定される。その結果、従来の技術では、一部に集中して存在するようなノイズデータについては除去することができず、印字処理において余分な動作が発生する。
【0007】
本発明は、印刷対象の画像データから、ノイズデータを従来よりも精度良く除去する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願発明は、画像処理装置であって、画像データを読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた所定バンド数分の画像データについて、主走査方向の位置ごとに所定の輝度値以下の画素数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によるカウントにおいて、所定の輝度値以下の画素がない回数をカウントする非累積カウント手段と、前記非累積カウント手段でカウントされた回数を格納する非累積回数格納手段と、前記カウント手段でカウントされた画素数を、主走査方向の位置ごとに、累積する累積値算出手段と、前記累積値算出手段で累積された累積値を格納する累積値格納手段と、前記累積値が所定の閾値を超える位置に基づいて、印字開始位置を決定する印字範囲決定手段と、を備え、前記累積値算出手段は、所定の輝度値以下の画素がない場合には、累積値を変更せず、所定の輝度値以下の画素がある場合には、その時点の累積値に、前記カウント手段によってカウントされた画素数を加えるとともに、前記非累積回数格納手段に格納されている回数に応じた値を減算し、その結果値を累積値とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の概略構成図である。
【図2】画像処理装置の機能構成図である。
【図3】画像データの解析範囲を示す図である。
【図4】第1の実施形態におけるノイズ除去処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態で作成されるヒストグラムの一例を示す図である。
【図6】印字動作を説明するための概要図である。
【図7】第2の実施形態におけるノイズ除去処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】第2の実施形態で作成されるヒストグラムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態が適用された画像処理装置100の概略構成図を示す。
【0012】
画像処理装置100は、例えば、複合機や複写機である。画像処理装置100は、図示するように、イメージセンサー110と、A/D変換装置120と、コントローラー130と、印刷エンジン140と、を有する。
【0013】
イメージセンサー110は、原稿などの読取信号(RGB各色の輝度値を示すアナログデータ)を、A/D変換装置120に出力する。具体的には、イメージセンサー110は、原稿などに反射した光を受光し、受光量に応じて蓄積された電荷を電圧として読み出し、A/D変換装置120に出力する。
【0014】
A/D変換装置120は、イメージセンサー110から出力されたアナログデータ(読取信号)を、デジタルデータに変換(量子化)し、コントローラー130に出力する。
【0015】
コントローラー130は、画像処理装置130の主要機能を搭載したチップ(SoC)などで構成され、画像処理装置130全体を制御する。例えば、コントローラー130は、A/D変換装置120から出力された画像データ(デジタルデータ)を、バンド単位で取得する。また、コントローラー130は、取得した画像データについて、バンド単位でヒストグラムを生成し、解析を行う。そして、コントローラー130は、その解析結果に基づいて、印字範囲を決定する。また、コントローラー130は、取得した画像データを印刷可能な印刷データに変換し、印刷エンジン130に出力する。これとともに、コントローラー130は、決定した印字範囲内を効率良く印字するように、印字ヘッド(不図示)を制御する。
【0016】
以上のような処理を実現するために、コントローラー130は、図示するように、CPU(Central Processing Unit)131と、RAM(Random Access Memory)132と、ROM(Read Only Memory)133と、を備える。なお、コントローラー130は、上記処理を専用に行うように設計されたASICで構成されていてもよい。
【0017】
CPU131は、各種プログラムを実行する。また、RAM132は、イメージセンサー110を用いて読み取られた画像データなどを含む各種データおよびプログラム等を一時的に記憶する。ROM133には、画像処理装置100を制御するための各種データ、各種プログラム等があらかじめ不揮発的に記憶されている。
【0018】
印刷エンジン140は、コントローラー130からの指示(制御信号)に基づいて、コントローラー130から出力された印刷データの印刷(印字処理など)を行う。
【0019】
図2は、画像処理装置100の機能構成図である。図示するように、画像処理装置100は、画像読取部201と、フィルタ処理部202と、ノイズ処理部203と、画像圧縮部204と、印刷データ生成部205と、印刷実行部206と、を有する。
【0020】
画像読取部201は、画像データの読み取りを行う。例えば、画像読取部201は、キャリッジ(不図示)を駆動するモーターの回転量や回転速度を制御することにより、キャリッジの移動量や移動速度を制御する。また、画像読取部201は、イメージセンサー110に対して、イメージセンサー110の動作のためのシフトパルスの供給を行い、イメージセンサー(光電変換素子)110に蓄積された電荷量に応じた読取信号(アナログデータ)を所定のタイミングでA/D変換装置120に出力させる。さらに、画像読取部201は、A/D変換装置120で読取信号(アナログデータ)からデジタルデータに変換された画像データをバンド単位で取得し、メモリ(例えば、RAM132)に格納する。
【0021】
フィルタ処理部202は、画像読取部201によって取得された画像データに対して、画素補正、ガンマ補正、色空間変換や色抑圧などの処理を行う。
【0022】
ノイズ処理部203は、フィルタ処理部202で処理された画像データから、ノイズを除去するための処理を行う。
【0023】
具体的には、ノイズ処理部203は、所定バンド数(例えば、3バンド)分の画像データを用いて、印字画素数の累積ヒストグラムを作成する。
【0024】
図3は、画像データの解析範囲(累積ヒストグラムの作成に用いる範囲)を示す図である。図示するように、本実施形態の例では、3バンド分の画像データを解析範囲とする。すなわち、解析対象の1バンド(以下では「対象バンド」とよぶ)の画像データについて累積ヒストグラムを作成する場合には、対象バンド自体と、対象バンドの上にある1バンド(以下では「上バンド」とよぶ)と、対象バンドの下にある1バンド(以下では「下バンド」とよぶ)と、の3バンド分の画像データを解析範囲とする。
【0025】
そして、ノイズ処理部203は、作成した累積ヒストグラムを用いて、バンド一端(左端、右端)から印字画素数の累積値が特定閾値に達する位置を特定し、その位置を基に印字範囲の境界を決定する。これにより、印字範囲外(図3に示す斜線部分)のデータ(ノイズデータ)については印字されなくなる。なお、ノイズ処理部203が行う詳細な処理(解析処理)については、後述する。
【0026】
画像圧縮部204は、ノイズを除去するための処理が行われた画像データを圧縮して、イメージバッファ等の記憶媒体に記憶する。圧縮方式としては、例えば、JPEG等でよい。
【0027】
印刷データ生成部205は、画像圧縮部204によって圧縮された画像データを記憶媒体から読み出して伸張し、印刷エンジン140で印刷可能な印刷データを生成する。そして、印刷データ生成部205は、印刷エンジン140を制御するための印刷コマンドと、生成した印刷データと、を印刷エンジン140に送信して印刷させる。
【0028】
印刷実行部206は、コントローラー130から出力された印刷データを印刷する。具体的には、印刷実行部206は、印刷データとともに印刷コマンドを受信すると、受信した印刷コマンドに従って印刷エンジン140や印字ヘッド(不図示)を制御し、印字処理を実行する。
【0029】
本実施形態が適用された画像処理装置100は、以上のような構成からなる。ただし、画像処理装置100の構成はこれに限定されない。例えば、画像処理装置100は、さらにファクシミリ機能などを有する複合機であってもよい。
【0030】
また、上記した各構成要素は、画像処理装置100の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。画像処理装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0031】
次に、上記構成からなる画像処理装置100の特徴的な動作について説明する。図4は、本実施形態におけるノイズ除去処理を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ノイズ処理部203は、例えば、画像読取部201で読み取られた画像データに対して、フィルタ処理部202による処理が終了すると、本フローを開始する。
【0033】
本フローを開始すると、ノイズ処理部203は、初期設定を行う(ステップS101)。具体的には、ノイズ処理部203は、対象バンド、上バンド、下バンドの画像データをメモリ(例えば、RAM132)から読み出す。そして、ノイズ処理部203は、印字画素(輝度値が所定値以下の画素)をカウント(累積)する対象の画素位置を初期位置(x=0)とし、累積印字画素数を初期値(Y=0)にする。
【0034】
次に、ノイズ処理部203は、累積対象の画素位置xを主走査方向(例えば、主走査方向の正方向)に1つずらす(ステップS102)。具体的には、ノイズ処理部203は、累積対象の画素位置をインクリメントする。これにより、本フローを開始してから初めてステップS102に処理が移行する場合には、累積対象の画素位置xは、バンド左端にある画素(印刷媒体の左端に印字予定の画素)の位置(x=1)となる。
【0035】
そして、ノイズ処理部203は、3バンド(対象バンド、上バンド、下バンド)分の画像データついて、画素位置xに存在する印字画素数Nを算出する(ステップS103)。具体的には、ノイズ処理部203は、ステップS102で決定された累積対象の画素位置xに存在し、輝度値が所定値以下である画素の数をカウントする。
【0036】
その後、ノイズ処理部203は、ステップS103で算出された印字画素数Nが0より大きいか否か判別する(ステップS104)。
【0037】
ステップS104において、ステップS103で算出された印字画素数Nが0より大きいと判定された場合には(ステップS104;Yes)、ノイズ処理部203は、処理をステップS105に移行する。
【0038】
そして、処理がステップS105に移行すると、ノイズ処理部203は、その時点での累積印字画素数(画素位置が1からx−1までの累積値)YX−1に、ステップS103で算出された印字画素数Nを加算した値を、画素位置xまでの累積印字画素数Yとする(ステップS105)。すなわち、ノイズ処理部203は、「Y=YX−1+N」の演算を行う。
【0039】
その後、ノイズ処理部203は、バンド左端から画素位置xまでの累積印字画素数Yについて閾値判定を行う(ステップS106)。具体的には、ノイズ処理部203は、ステップS105で算出された累積印字画素数Yが所定の閾値を超えているか否か判別する。
【0040】
ここで、ノイズ処理部203は、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えていない場合には(ステップS106;No)、処理をステップS102に戻し、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えるまで、ステップS102からステップS106、ステップS108の処理を繰り返し実行する。
【0041】
一方、ステップS104において、ステップS103で算出された印字画素数Nがない(N=0)と判定された場合には(ステップS104;No)、ノイズ処理部203は、処理をステップS108に移行する。
【0042】
そして、処理がステップS108に移行すると、ノイズ処理部203は、その時点での累積印字画素数(画素位置が1からx−1までの累積値)YX−1から、所定値αを減算した値を、画素位置xまでの累積印字画素数Yとする(ステップS108)。すなわち、ノイズ処理部203は、「Y=YX−1−α」の演算を行う。
【0043】
その後、ノイズ処理部203は、処理をステップS102に戻し、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えるまで、ステップS102からステップS106、ステップS108の処理を繰り返し実行する。
【0044】
そして、以上のステップS102からステップS106、ステップS108の処理を繰り返し、画素位置xごとの累積印字画素数Yを算出することにより、上述した累積ヒストグラムを作成することができる。
【0045】
図5は、本実施形態のノイズ処理部203によって作成される累積ヒストグラムの一例を示す図である。図示する累積ヒストグラムでは、横軸が画素位置xであり、縦軸が累積印字画素数Y(累積値)である。図示する例からもわかるように、画素位置xが増加するにつれて、累積印字画素数Yが一方的に増加することはなく(右肩上がりのグラフにならない)、累積印字画素数Yは増減を繰り返す。これは、画素位置xの印字画素数Nがない場合には、ステップS108において累積印字画素数Yを減少させている(Y=YX−1−α)ためである。こうすることにより、印字画素が位置的に連続して存在しない場合には、ノイズデータとみなし、印字画素として累積しないようにすることができる。
【0046】
ところで、ノイズ処理部203は、ステップS106において、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えていると判定した場合には(ステップS106;Yes)、処理をステップS107に移行する。
【0047】
ここで、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えたということは、画素位置xが、図3に示す「何らかの文字列」のような印字すべきデータ(印字データ)の端である確率が高いことを意味する。
【0048】
従って、ノイズ処理部203は、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えてステップS107に処理が移行すると、ステップS102で決定された画素位置xに基づいて、印字開始位置(印字範囲の境界位置)を決定する(ステップS107)。具体的には、ノイズ処理部203は、図5に示すように、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えた画素位置xから、所定のマージン(例えば、10画素)だけ、主走査方向の逆方向にずらした位置を、印字開始位置として決定する。
【0049】
そして、ノイズ処理部203は、ステップS107で決定した印字開始位置を、メモリ(例えば、RAM132)に格納し、本フローを終了する。
【0050】
なお、上記の処理は、印字範囲の左端を決定する場合の処理として説明しているが、ノイズ処理部203は、同様の処理により、印字範囲の右端を決定する。その場合、ノイズ処理部203は、バンド右端にある画素(印刷媒体の右端に印字予定の画素)の位置(x=1)から、累積対象の画素位置xを主走査方向の逆方向にずらしていき、画素位置xごとに累積印字画素数Yを算出する。そうして、累積印字画素数Yが所定の閾値を超える位置に基づいて、右側の印字開始位置(印字範囲の境界位置)を決定する。
【0051】
以上の処理により、本実施形態のノイズ処理部203は、印字範囲の境界位置(左端、右端ともに)について、決定(変更)することができる。また、画素位置xにおいて印字画素数Nがない場合には、累積印字画素数Yを減少させるため(Y=YX−1−α)、一部に集中して存在するようなノイズデータについても印字しない可能性が高まる。そのため、従来と比較して、精度良くノイズを除去できる。
【0052】
図6は、上記の処理によってノイズが除去された画像データを印刷するときの印字動作を説明するための概要図である。本実施形態のノイズ処理部203は、図示するような一部に集中して存在するようなノイズデータ(点線で囲まれた黒点)については印字を行わない。そのため、印字ヘッドは、印字範囲(黒塗りの部分)だけを印刷するように走査する。従って、本実施形態の画像処理装置100は、従来と比較して、印字ヘッドの動作を効率化でき、その結果、高速に印刷することができる。
【0053】
なお、上記したフローの各処理単位は、画像処理装置100を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。画像処理装置100が行う処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、上記第1の実施形態とは別の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0055】
本実施形態の画像処理装置100は、上記第1の実施形態と同様のハードウェア構成、機能構成を有している。
【0056】
本実施形態において、上記第1の実施形態と異なる点は、累積ヒストグラムの作成方法(累積印字画素数Yの算出方法)である。
【0057】
図7は、本実施形態におけるノイズ除去処理を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ノイズ処理部203は、第1の実施形態と同様に、例えば、画像読取部201で読み取られた画像データに対して、フィルタ処理部202による処理が終了すると、本フローを開始する。
【0059】
本フローを開始すると、ノイズ処理部203は、初期設定を行う(ステップS201)。具体的には、ノイズ処理部203は、対象バンド、上バンド、下バンドの画像データをメモリ(例えば、RAM132)から読み出す。そして、ノイズ処理部203は、印字画素(輝度値が所定値以下の画素)をカウント(累積)する対象の画素位置を初期位置(x=0)とし、累積印字画素数を初期値(Y=0)にする。また、ノイズ処理部203は、印字画素が1つもない画素位置xが連続する回数をカウントするための値(以下では「非累積回数カウント値」とよぶ)を初期値(C=0)にする。
【0060】
次に、ノイズ処理部203は、累積対象の画素位置xを主走査方向(例えば、主走査方向の正方向)に1つずらす(ステップS202)。具体的には、ノイズ処理部203は、第1の実施形態のステップS102と同様の処理を行う。
【0061】
そして、ノイズ処理部203は、3バンド(対象バンド、上バンド、下バンド)分の画像データついて、画素位置xに存在する印字画素数Nを算出する(ステップS203)。具体的には、ノイズ処理部203は、第1の実施形態のステップS103と同様の処理を行う。
【0062】
その後、ノイズ処理部203は、ステップS203で算出された印字画素数Nが0より大きいか否か判別する(ステップS204)。
【0063】
ステップS204において、ステップS203で算出された印字画素数Nが0より大きいと判定された場合には(ステップS204;Yes)、ノイズ処理部203は、処理をステップS205に移行する。
【0064】
そして、処理がステップS205に移行すると、ノイズ処理部203は、その時点での累積印字画素数(画素位置が1からx−1までの累積値)YX−1に、ステップS203で算出された印字画素数Nを加算する。さらに、ノイズ処理部203は、加算後の値から、その時点での非累積回数カウント値Cに所定の係数Kを乗算した値を減算し、その結果値を、画素位置xまでの累積印字画素数Yとする(ステップS205)。すなわち、ノイズ処理部203は、「Y=YX−1+N−K・C」の演算を行う。
【0065】
その後、ノイズ処理部203は、非累積回数カウント値Cを初期値(C=0)にする(ステップS206)。これは、ステップS204で画素位置xにおいて印字画素があると判定されており、印字画素が1つもない画素位置x(領域)が途切れた(連続しなくなった)ためである。
【0066】
そして、ノイズ処理部203は、バンド左端から画素位置xまでの累積印字画素数Yについて閾値判定を行う(ステップS207)。具体的には、ノイズ処理部203は、ステップS205で算出された累積印字画素数Yが所定の閾値を超えているか否か判別する。
【0067】
ここで、ノイズ処理部203は、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えていない場合には(ステップS207;No)、処理をステップS202に戻し、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えるまで、ステップS202からステップS207、ステップS209、ステップS210の処理を繰り返し実行する。
【0068】
一方、ステップS204において、ステップS203で算出された印字画素数Nがない(N=0)と判定された場合には(ステップS204;No)、ノイズ処理部203は、処理をステップS209に移行する。
【0069】
そして、処理がステップS209に移行すると、ノイズ処理部203は、その時点での累積印字画素数(画素位置が1からx−1までの累積値)YX−1を、そのまま画素位置xまでの累積印字画素数Yとする(ステップS209)。すなわち、ノイズ処理部203は、「Y=YX−1」の演算を行う。
【0070】
続いて、ノイズ処理部203は、非累積回数カウント値Cをインクリメントする(ステップS210)。これにより、印字画素が1つもない画素位置xが連続する回数をカウントすることができる。
【0071】
その後、ノイズ処理部203は、処理をステップS202に戻し、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えるまで、ステップS202からステップS207、ステップS209、ステップS210の処理を繰り返し実行する。
【0072】
そして、以上のステップS202からステップS207、ステップS209、ステップS210の処理を繰り返し、画素位置xごとの累積印字画素数Yを算出することにより、上述した累積ヒストグラムを作成することができる。
【0073】
図8は、本実施形態のノイズ処理部203によって作成される累積ヒストグラムの一例を示す図である。図示する累積ヒストグラムでは、横軸が画素位置xであり、縦軸が累積印字画素数Y(累積値)である。図示する例からもわかるように、画素位置xが増加するにつれて、累積印字画素数Yが一方的に増加することはなく(右肩上がりのグラフにならない)、累積印字画素数Yは増減を繰り返す。これは、ステップS205において、累積印字画素数Yから、印字画素が1つもない画素位置xが連続する回数に比例する値を減算している(Y=YX−1+N−K・C)ためである。こうすることにより、印字画素が1つもない画素位置xが連続すればするほど、その領域付近の印字データをノイズデータとみなし、印字画素として累積しないようにすることができる。
【0074】
ところで、ノイズ処理部203は、ステップS207において、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えていると判定した場合には(ステップS207;Yes)、処理をステップS208に移行する。
【0075】
ここで、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えたということは、画素位置xが、図3に示す「何らかの文字列」のような印字データの端である確率が高いことを意味する。
【0076】
従って、ノイズ処理部203は、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えてステップS208に処理が移行すると、ステップS202で決定された画素位置xに基づいて、印字開始位置(印字範囲の境界位置)を決定する(ステップS208)。具体的には、ノイズ処理部203は、図8に示すように、累積印字画素数Yが所定の閾値を超えた画素位置xから、所定のマージン(例えば、10画素)だけ、主走査方向の逆方向にずらした位置を、印字開始位置として決定する。
【0077】
そして、ノイズ処理部203は、ステップS208で決定した印字開始位置を、メモリ(例えば、RAM132)に格納し、本フローを終了する。
【0078】
なお、上記の処理は、印字範囲の左端を決定する場合の処理として説明しているが、ノイズ処理部203は、同様の処理により、印字範囲の右端を決定する。その場合、ノイズ処理部203は、バンド右端にある画素(印刷媒体の右端に印字予定の画素)の位置(x=1)から、累積対象の画素位置xを主走査方向の逆方向にずらしていき、画素位置xごとに累積印字画素数Yを算出する。そうして、累積印字画素数Yが所定の閾値を超える位置に基づいて、右側の印字開始位置(印字範囲の境界位置)を決定する。
【0079】
以上の処理により、本実施形態のノイズ処理部203は、印字範囲の境界位置(左端、右端ともに)について、決定(変更)することができる。また、画素位置xにおいて印字画素数Nがある場合に、印字画素が1つもない画素位置xが連続する回数に比例する値を減算している(Y=YXー1+N−K・C)ため、一部に集中して存在するようなノイズデータについても印字しない可能性が高まる。そのため、従来と比較して、精度良くノイズを除去できる。
【0080】
なお、上記したフローの各処理単位は、画像処理装置100を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。画像処理装置100が行う処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。
【0081】
また、本発明は、上記各実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。
【0082】
例えば、上記の各実施形態では、3バンドの画像データを用いて、ノイズを除去する処理を行っている。しかし、本発明はこれに限定されない。ノイズ処理部203は、3バンドよりも少ないバンド数(例えば、1バンド)や、3バンドより多いバンド数(例えば、5バンド)の画像データを用いて、ノイズを除去する処理を行ってもよい。
【0083】
また、上記の第1の実施形態では、ノイズ処理部203は、画素位置xの印字画素数Nがない場合には、ステップS108において累積印字画素数Yから所定値αを減算している(Y=YX−1−α)。この変形例として、本発明は、画素位置xが所定値を超える場合には、印字データをテキストデータであるとみなして、ステップS108において累積印字画素数Yから減算する値αを大きくしてもよい。すなわち、バンド端(印刷媒体の端)の位置から印字開始位置までの範囲が所定範囲を超える場合には、ステップS108において累積印字画素数Yから減算する値αを大きくすることになる。
【0084】
また、本発明は、画素位置xが所定値を超えてない場合には、印字データを写真のような全面印刷データとみなして、ステップS108において累積印字画素数Yから減算する値αを小さくしてもよい。すなわち、バンド端(印刷媒体の端)の位置から印字開始位置までの範囲が所定範囲に満たない場合には、ステップS108において累積印字画素数Yから減算する値αを小さくすることになる。
【0085】
また、上記の第2の実施形態では、ノイズ処理部203は、ステップS205において、累積印字画素数Yから、印字画素が1つもない画素位置xが連続する回数に比例する値を減算している(Y=YX−1+N−K・C)。この変形例として、本発明は、画素位置xが所定値を超える場合には、印字データをテキストデータとみなして、ステップS205において累積印字画素数Yから減算する値K・Cの係数Kを大きくしてもよい。すなわち、バンド端(印刷媒体の端)の位置から印字開始位置までの範囲が所定範囲を超える場合には、ステップS205において累積印字画素数Yから減算する値K・Cの係数Kを大きくすることになる。
【0086】
また、本発明は、画素位置xが所定値を超えてない場合には、印字データを写真のような全面印刷データとみなして、ステップS205において累積印字画素数Yから減算する値K・Cの係数Kを小さくしてもよい。すなわち、バンド端(印刷媒体の端)の位置から印字開始位置までの範囲が所定範囲に満たない場合には、ステップS205において累積印字画素数Yから減算する値K・Cの係数Kを小さくすることになる。
【符号の説明】
【0087】
100・・・画像処理装置、110・・・イメージセンサー、120・・・A/D変換装置、130・・・コントローラー、131・・・CPU、132・・・RAM、133・・・ROM、140・・・印刷エンジン、201・・・画像読取部、202・・・フィルタ処理部、203・・・ノイズ処理部、204・・・画像圧縮部、205・・・印刷データ生成部、206・・・印刷実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
画像データを読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られた所定バンド数分の画像データについて、主走査方向の位置ごとに所定の輝度値以下の画素数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によるカウントにおいて、所定の輝度値以下の画素がない回数をカウントする非累積カウント手段と、
前記非累積カウント手段でカウントされた回数を格納する非累積回数格納手段と、
前記カウント手段でカウントされた画素数を、主走査方向の位置ごとに、累積する累積値算出手段と、
前記累積値算出手段で累積された累積値を格納する累積値格納手段と、
前記累積値が所定の閾値を超える位置に基づいて、印字開始位置を決定する印字範囲決定手段と、を備え、
前記累積値算出手段は、
所定の輝度値以下の画素がない場合には、累積値を変更せず、
所定の輝度値以下の画素がある場合には、その時点の累積値に、前記カウント手段によってカウントされた画素数を加えるとともに、前記非累積回数格納手段に格納されている回数に応じた値を減算し、その結果値を累積値とする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記非累積回数格納手段に格納されている回数に応じた値は、当該回数に所定の係数を乗じた値である、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記累積値算出手段は、
印字媒体の端から、前記印字範囲決定手段によって決定された印字開始位置までの範囲が、所定範囲を超える場合には、前記所定の係数を大きくする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記累積値算出手段は、
印字媒体の端から、前記印字範囲決定手段によって決定された印字開始位置までの範囲が、所定範囲に満たない場合には、前記所定の係数を小さくする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
画像処理装置における画像処理方法であって、
画像データを読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取られた所定バンド数分の画像データについて、主走査方向の位置ごとに所定の輝度値以下の画素数をカウントするカウントステップと、
前記カウントステップでのカウントにおいて、所定の輝度値以下の画素がない回数をカウントする非累積カウントステップと、
前記非累積カウントステップでカウントされた回数を格納する非累積回数格納ステップと、
前記カウントステップでカウントされた画素数を、主走査方向の位置ごとに、累積する累積値算出ステップと、
前記累積値算出ステップで累積された累積値を格納する累積値格納ステップと、
前記累積値が所定の閾値を超える位置に基づいて、印字開始位置を決定する印字範囲決定ステップと、を行い、
前記累積値算出ステップでは、
所定の輝度値以下の画素がない場合には、累積値を変更せず、
所定の輝度値以下の画素がある場合には、その時点の累積値に、前記カウントステップでカウントされた画素数を加えるとともに、前記非累積回数格納ステップに格納されている回数に応じた値を減算し、その結果値を累積値とする、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
コンピューターに、
画像データを読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取られた所定バンド数分の画像データについて、主走査方向の位置ごとに所定の輝度値以下の画素数をカウントするカウントステップと、
前記カウントステップでのカウントにおいて、所定の輝度値以下の画素がない回数をカウントする非累積カウントステップと、
前記非累積カウントステップでカウントされた回数を格納する非累積回数格納ステップと、
前記カウントステップでカウントされた画素数を、主走査方向の位置ごとに、累積する累積値算出ステップと、
前記累積値算出ステップで累積された累積値を格納する累積値格納ステップと、
前記累積値が所定の閾値を超える位置に基づいて、印字開始位置を決定する印字範囲決定ステップと、を実行させ、
前記累積値算出ステップでは、
所定の輝度値以下の画素がない場合には、累積値を変更せず、
所定の輝度値以下の画素がある場合には、その時点の累積値に、前記カウントステップでカウントされた画素数を加えるとともに、前記非累積回数格納ステップに格納されている回数に応じた値を減算し、その結果値を累積値とする、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−55284(P2011−55284A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202841(P2009−202841)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】