説明

画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】疑似中間調の画像データに含まれるオブジェクトのエッジを高精度で抽出して、画像データに対して好適なトラッピング処理を施すことができる画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】疑似中間調処理を施したラスタ形式の画像データの画素値を2値化し、その結果に基づいて、注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、色成分毎に検出する。注目画素から検出したエッジまでの距離が最短となる方向を色成分毎に検出する。この検出した方向が、色成分毎のエッジに垂直な方向となる。さらに、色成分毎に検出した方向から、全色成分のなかで最短となる方向を特定し、その方向に対して、トラッピング処理を実行するか否かを判定する。判定結果に従って、トラッピング処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切なトラッピング処理を行うことができる画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機又はプリンタ等の画像形成装置が紙媒体に形成する画像の画質劣化を防止するために、版ずれ時の白抜けを防止するトラッピング処理の技術が提案されている。トラッピング処理は、描画オブジェクトの輪郭形状を認識して輪郭形状を変更する(広げる)処理である。この処理を行う方法としては、例えば、アプリケーションソフトでオブジェクトの輪郭を変更し、変更された輪郭に基づいてRIP(Raster Image Processor)ソフトウェアがレンダリングを行う、又はRIPソフトウェアでレンダリングする際にオブジェクトの輪郭を変更するというように、オブジェクトレベルで形状又は色を認識して処理を行う方法が主流となっている。
【0003】
また、オブジェクトの輪郭(形状)情報をもたないラスタデータに対して、フィルタ処理などを適用してオブジェクトの輪郭を抽出してトラッピング処理を行う技法も提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3887538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、連続階調画像のラスタ形式の画像データを前提としている。このため、ディザ処理又は誤差拡散処理により疑似中間調処理が施されたハーフトーンラスタデータに対して、特許文献1に記載の方法でトラッピング処理を行う場合、オブジェクトの輪郭形状を正しく認識できないおそれがある。この結果、トラッピング処理を適切に行うことができない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、疑似中間調の画像データに含まれるオブジェクトのエッジを高精度で抽出して、画像データに対して好適なトラッピング処理を施すことができる画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行う画像処理装置において、前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化する二値化手段と、前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化手段による二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出するエッジ検出手段と、該エッジ検出手段が検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出する特徴量検出手段と、前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、前記特徴量検出手段が検出した特徴量に基づいて、前記色成分毎に検出する単色最短方向検出手段と、該単色最短方向検出手段が色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定する総合最短方向特定手段と、該総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重合処理を実行するか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、前記エッジ検出手段は、注目画素から前記複数の方向それぞれに沿って配列する画素の画素値が、前記注目画素に最も近くで反転する位置をエッジとして検出し、前記特徴量検出手段は、前記注目画素から、前記エッジ検出手段が検出した位置までにある画素の数を前記距離として検出し、前記単色最短方向検出手段は、前記特徴量検出手段が検出した距離を比較して、前記距離が最短であるエッジが検出された方向を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、前記特徴量検出手段は、注目画素を含み、前記複数の方向に沿って直線状に配列する画素の画素値に基づいて、前記画素の配列パターンを前記方向毎及び色成分毎に検出し、前記判定手段は、前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する色成分毎の配列パターンが所定の組み合せとなる場合、前記組み合せに対応した色成分を用いて前記重合処理を実行すると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、前記判定手段は、前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する前記距離が所定値以下の場合に、前記重合処理を実行すると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る画像処理装置は、前記二値化手段は、注目画素に隣接する周辺画素の二値化後の画素値に基づいて、前記注目画素の画素値を変更するようにしてあり、前記特徴量検出手段は、前記二値化手段による変更後の画素値に基づいて、特徴量を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、前記特徴量検出手段は、前記配列パターンに基づいて、注目画素から、該注目画素と同じ画素値の画素が連続する画素数を、前記複数の方向それぞれについて色成分毎に検出し、所定値以下の画素数を検出した場合には該色成分におけるエッジが存在しないと判定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る画像処理装置は、前記判定手段は、前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する前記画素数及び前記距離を用いた算出結果に基づいて、前記重合処理を実行するか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像処理装置は、前記二値化手段は、前記画像データの画素値を、該画素値が所定値以上の場合は1、前記所定値未満場合は0に変換するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像処理装置と、該画像処理装置により処理が施された画像データに基づく画像を形成する形成手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る画像処理方法は、カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行う画像処理方法において、前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化し、前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出し、検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出し、前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、検出した前記特徴量に基づいて、色成分毎に検出し、色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定し、特定した前記方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重ね合せる処理を実行するか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行わせるコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化する二値化手段、前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化手段による二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出するエッジ検出手段、該エッジ検出手段が検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出する特徴量検出手段、前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、前記特徴量検出手段が検出した特徴量に基づいて、前記色成分毎に検出する単色最短方向検出手段、該単色最短方向検出手段が色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定する総合最短方向特定手段、及び、該総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重合処理を実行するか否かを判定する判定手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る記録媒体は、本発明に係るコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータでの読取り可能な記録媒体。
【0019】
本発明においては、疑似中間調処理を施したラスタ形式の画像データの画素値を二値化し、その結果に基づいて、注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、色成分毎に検出し、注目画素から検出したエッジまでの距離が最短となる方向を色成分毎に検出する。この検出した方向が、色成分毎のエッジに垂直な方向となる。さらに、色成分毎に検出した方向から、全色成分のなかで最短となる方向を特定し、その方向に対して、重合処理を実行するか否かを判定する。
【0020】
連続階調画像データの場合、濃度比較によってエッジを正確に検出できるが、疑似中間調の画像データでは網点を含むため、オブジェクトのエッジと網点パターンのエッジとの区別が困難となる。このため、色成分毎に検出したエッジまでの距離に基づいて、重合処理の実行判定を行うことで、疑似中間調の画像データであっても、オブジェクトのエッジを高精度で検出することができ、その結果、好適な重合処理を行うことができる。
【0021】
本発明においては、二値の画素値は0と1とで表されるため、例えば、注目画素の画素値が「1」の場合、注目画素に最も近い画素値が「0」の画素の位置をエッジとし、「1」の画素値が連続する画素数を注目画素からエッジまでの距離(以下、エッジ距離と言う)とする。エッジ距離それぞれを比較して、最短のエッジ距離となる方向を色成分毎に検出する。そして、色成分毎の最短のエッジ距離から、全色成分の最短のエッジ距離が特定される。このように、複数の方向全てについて、全色成分のエッジ距離を比較することで、データに含まれる網点により、正確な画像データの特徴量が検出できないおそれを低減できる。その結果、オブジェクト輪郭のエッジ方向を高精度で推測することができる。
【0022】
本発明においては、各方向における配列パターンを色成分毎に検出し、検出した配列パターンが、所定の組み合せを構成する場合に、組み合せに対応した色成分を用いた重合処理を実行すると判定する。これにより、重合処理が有効に機能する色を検出することができる。
【0023】
本発明においては、注目画素からエッジまでの最小の画素数、即ち、最短のエッジ距離に応じて、重合処理を実行するか否かを変更できる。例えば、所定値を小さくすることで、エッジ距離が短い領域には、複数の色成分の画素を重ね合せしないようにできる。これにより、偽色によりオブジェクト形状が崩れるなどのおそれを低減できる。
【0024】
本発明においては、注目画素に隣接する周辺画素の二値化後の画素値に基づいて、注目画素の画素値を変更する。これにより、二値化後の画像データに含まれる網点に起因する微細点を除去することができ、エッジ検出の精度を上げることができる。
【0025】
本発明においては、色成分毎に抽出した配列パターンのパターン長が、所定値以下となる場合には、該色成分に対応するエッジが存在しないと判定する。これにより、二値化等により除去できなかった網点による、擬似エッジを除去し、エッジの検出精度を上げることができる。
【0026】
本発明においては、重合処理を行う領域を、エッジ距離に対する比率で制限することができる。その結果、小さい文字又は細線が、重ね合せにより偽色に変わることを防ぐことができる。
【0027】
本発明においては、入力画像データのビット数に拘わらず、エッジの検出などの処理を同一の処理で行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、色成分毎に検出したエッジまでの距離に基づいて、重合処理の実行判定を行うことで、擬似中間調の画像データであっても、オブジェクトのエッジを高精度で検出することができ、その結果、好適な重合処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る画像処理装置を備えるプリンタとしての画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る画像処理装置を備えるプリンタとしての画像形成装置の別の構成を示すブロック図である。
【図3】トラッピング処理部に入力されるハーフトーンラスタデータの一部を模式的に示す図である。
【図4】トラッピング処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】2値化処理及び微細点除去処理を行った場合の注目画素の画素値の変化を示す図である。
【図6】全方向エッジ情報検出部がエッジ情報を抽出する方向を示す図である。
【図7】エッジ情報の各パラメータを説明するための図である。
【図8】各方向についてのエッジ情報の抽出例を示す模式図である。
【図9】図8についてノイズ除去後判定を行った結果を示す図である。
【図10】色ペア判定を行う際の判定基準を示す図である。
【図11】エッジ距離判定を説明するための模式図である。
【図12】パターン長判定を説明するための模式図である。
【図13】トラッピング処理を実行した際のラスタデータを模式的に示す図である。
【図14】2値化処理を示すフローチャートである。
【図15】全方向エッジ情報抽出処理を示すフローチャートである。
【図16】単色最短エッジ方向検出処理を示すフローチャートである。
【図17】総合最短エッジ方向検出処理を示すフローチャートである。
【図18】トラッピング判定処理を示すフローチャートである。
【図19】トラッピング処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る画像処理装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る画像処理装置を備えるプリンタとしての画像形成装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、プリンタ2は、ネットワーク等でコンピュータ1と接続されており、コンピュータ1上で画像編集ソフトなどのアプリケーションソフトウェア11を用いて作成された画像データは、プリンタドライバ12にてページ記述言語データに変換され、プリンタ2へ伝送される。
【0032】
画像形成装置としてのプリンタ2は、画像処理装置21、印字エンジン部22などを備えている。コンピュータ1から伝送されたページ記述言語データは、画像処理装置21にてエンジン出力用データに変換され、印字エンジン部22で紙媒体などに対して印字(画像形成)が行われる。画像処理装置21は、ページ記述言語翻訳部211、レンダリング処理部212、中間調処理部213及びトラッピング処理部214などを備えている。
【0033】
ページ記述言語翻訳部211は、コンピュータ1から伝送されたページ記述言語データを解析し、オブジェクトデータを生成する。
【0034】
レンダリング処理部212は、オブジェクトデータを印字領域上のコントーン(連続階調)ラスタデータに変換する。より具体的には、レンダリング処理部212は、各描画オブジェクトの属性情報、位置、形状、色、オブジェクトを埋める画像パターン又は偏倍率などに基づいて、オブジェクトデータをラスタデータ化し、色変換及びオブジェクトの重ね合せ処理などの一連の処理を実施する。
【0035】
中間調処理部213は、疑似中間調処理を施し、コントーンラスタデータをハーフトーン(疑似中間調)ラスタデータに変換する。なお、コントーンラスタデータの各画素は、CMYKの4つの色成分から構成されており、中間調処理部213は、色成分毎に疑似中間調生成を行う。以下の説明では1つの色成分に対する処理について説明し、他の色成分に対する処理については異なる点だけを説明する。
【0036】
トラッピング処理部214は、ハーフトーンラスタデータに対して、所定条件の場合にトラッピング処理を実行し、さらに印字エンジン部22への出力形式に合せたエンジン出力用データに変換する。トラッピング処理部214については後に詳述する。
【0037】
ページ記述言語翻訳部211及びレンダリング処理部212で行われるページ記述言語データの解析及びラスタデータの生成は、複雑な演算処理を伴うため汎用のCPU(Central Processing Unit)で所定の処理手順を定めたプログラムコードを実行する構成とするのが一般的であり、ページ記述言語データの複雑さによって処理時間が大きく変動する。更に出力するラスタデータの解像度の二乗に比例して処理時間が長くなる傾向があるため、複雑なページ記述言語データから解像度の高いラスタデータを生成する場合には、実用的でない程度の長い処理時間を要することがある。
【0038】
一方、ラスタデータ生成後の処理は、複雑ではあるが定型的な処理であるため、DSP(Digital Signal Processor)又は並列プロセッサの使用、あるいは、ハードウェア化によって所要の短時間内で処理を行うことが可能である。このため、中間調処理部214などではDSP又は並列プロセッサ、あるいはハードウェア化によって処理時間を短くし、画像処理装置21全体の処理時間を大幅に短くすることができる。
【0039】
なお、ページ記述言語翻訳部211、レンダリング処理部212及び中間調処理部213等が行う各処理は、コンピュータ1のプリンタドライバ12において実行されてもよい。図2は、本発明に係る画像処理装置を備えるプリンタとしての画像形成装置の別の構成を示すブロック図である。図2に示す場合、プリンタ2が備える画像処理装置21は、トラッピング処理部214のみを備える。そして、トラッピング処理部214は、コンピュータ1のプリンタドライバ12で生成されたハーフトーンラスタデータに対してトラッピング処理を行う。
【0040】
次に、トラッピング処理部214について詳述する。トラッピング処理部214は、入力されたハーフトーンラスタデータを、所定領域ごとにトラッピング処理を実行するか否かを判定し、判定結果に応じてトラッピング処理を行う。
【0041】
図3は、トラッピング処理部214に入力されるハーフトーンラスタデータの一部を模式的に示す図であり、11×11画素のデータを示している。本実施形態では、トラッピング処理部214は、注目画素P(図中斜線部分)を中心として、図中の実線で示す7×7画素の領域(以下、トラップ判定領域と言う)毎にトラッピング処理を実行するか否かを判定するものとして説明する。
【0042】
図4は、トラッピング処理部214の構成を示すブロック図である。トラッピング処理部214は、2値化処理部(二値化手段)41、全方向エッジ情報検出部(エッジ検出手段、特徴量検出手段)42、単色最短エッジ方向検出部(単色最短方向検出手段)43、総合最短エッジ方向特定部(総合最短方向特定手段)44、トラッピング判定部(判定手段)45及びトラッピング実行部46などを備えている。
【0043】
2値化処理部41は、トラッピング処理部214に入力されたハーフトーンラスタデータの2値化処理を行う。2値化処理は、色成分毎に各画素の画素値を閾値と比較して、閾値以上となる画素の画素値を「1」とし、閾値未満となる画素の画素値を「0」とする処理である。閾値は、例えば画像データの濃度の50%の値とする。この場合、画素値が濃度50%未満の画素は、画素値が「0」に決定されるため、2値化処理を施すことで低濃度の画素を除去することができる。なお、本実施形態では、7×7画素のトラップ判定領域に対してトラッピング処理を実行するか否かを判定するため、2値化処理部41は、9×9画素の領域(図3の破線部)に対して2値化処理を行う。また、2値化処理の方法、トラップ判定領域、閾値の具体的数値及び決定方法などは適宜変更可能である。
【0044】
さらに、2値化処理部41は、2値化処理により得られたラスタデータ(以下、2値化データと言う)に対して微細点除去処理を行う。微細点除去処理は、2値化データから低濃度の網点を除去する、又は高濃度の網点により穴埋めすることで、一様な色にする処理である。2値化処理部41は、2値化処理を行った9×9画素の領域に対して、3×3画素の領域毎に微細点除去処理を行う。
【0045】
図5は、2値化処理及び微細点除去処理を行った場合の注目画素の画素値の変化を示す図である。上述のように、ハーフトーンラスタデータの各画素は、色成分毎に疑似中間調生成が行われているが、図5では1つの色成分に対して2値化処理を行った結果を示しており、斜線部分の画素は画素値「1」、白抜部分の画素は画素値「0」を表している。2値化処理部41は、3×3画素の中央の画素を注目画素Qとし、注目画素Qの周囲8画素の画素値に応じて、注目画素Qの画素値を「0」又は「1」に決定する。例えば、注目画素Qの周囲に画素値「1」の画素が6以上ある場合、注目画素Qの画素値を「1」に決定する(図5(a))。このとき、注目画素Qは画素値が「0」であっても、画素値「1」に置き換えられる。また、画素値「1」の画素が2以下である場合、2値化処理部41は、注目画素Qの画素値を「0」に決定する(図5(b))。画素値「1」の画素が3以上5以下である場合、2値化処理部41は、注目画素Qの画素値を変更しない(図5(c)及び図5(d))。このように、2値化処理部41は、9×9画素の領域に対して微細点除去処理を行うことで、7×7画素のラスタデータを一様な色にしている。
【0046】
全方向エッジ情報検出部42は、7×7画素の2値化データにおける複数方向それぞれについてエッジ情報を検出する。エッジ情報のパラメータとしては、後述するエッジ距離、反転回数、パターン長及びエッジパターン(配列パターン)などがある。図6は、全方向エッジ情報検出部42がエッジ情報を抽出する方向を示す図である。図6に示すように、全方向エッジ情報検出部42は、7×7画素の2値化データの中央の注目画素Pを基準として、縦横斜めの全8方向に対してエッジ情報を検出する。全方向エッジ情報検出部42は、CMYKの4つの色成分それぞれについてエッジ情報を検出する。
【0047】
図7は、エッジ情報の各パラメータを説明するための図である。図7(a)は、図6の7の方向に沿った画素を例として示しており、斜線部分の画素は画素値「1」、白抜部分の画素は画素値「0」を示している。全方向エッジ情報検出部42は、7×7画素の2値化データの注目画素Pから8方向それぞれにあるエッジを検出する。エッジは色の境界であり、エッジ付近では、画像中の濃淡又は色の変化が生じているため、2値の一方から他方へと画素値が反転する。従って、全方向エッジ情報検出部42は、注目画素から各方向に沿って走査し、画素値が最初に反転する画素を検出する。全方向エッジ情報検出部42は、検出した画素の位置をその方向におけるエッジとする。
【0048】
例えば図7(a)では、注目画素Pの画素値は「1」である。全方向エッジ情報検出部42は、注目画素Pから7の方向に沿って、画素値が「0」に反転する画素を検出する。そして、全方向エッジ情報検出部42は、検出した画素の位置(図中三角マークの箇所)をエッジとする。このとき、画素値の反転を検出しなかった場合、例えば全ての画素の画素値が「1」の場合、「エッジなし」となる。
【0049】
また、全方向エッジ情報検出部42は、注目画素Pと同じ画素値の画素が連続する画素の数を、注目画素Pから計数し、計数結果を、注目画素Pからエッジまでのエッジ距離として抽出する。図7(a)では、画素値「1」の画素が2つ連続しているためエッジ距離は「2」となる。
【0050】
さらに、全方向エッジ情報検出部42は、エッジを検出した方向(以下、正方向と言う)と反対の方向(以下、負方向と言う)についても同様に、注目画素Pと同じ画素値の画素が連続する画素の数を、注目画素Pから計数する。全方向エッジ情報検出部42は、正負方向に検出した画素数の合計をパターン長として抽出する。換言すれば、パターン長は、検出したエッジから注目画素P方向に、同じ画素値の画素が連続する数となる。例えば図7(a)の場合、検出したエッジから、画素値「1」の画素が4つ連続しているため、パターン長は「4」となる。
【0051】
全方向エッジ情報検出部42は、トラッピング処理を行う際に、注目画素に他の画素の色をコピーするか、注目画素の色を他の画素にコピーするかの判定(以下、エッジパターン判定と言う)を行う。まず、全方向エッジ情報検出部42は、注目画素Pから各方向に沿った画素の画素値が反転する回数(以下、反転回数と言う)を検出する。図7(a)の場合、注目画素Pから7の方向に沿った画素の画素値は、順に「1」、「1」、「0」、「1」であるため、反転回数は2となる。
【0052】
次に、全方向エッジ情報検出部42は、注目画素Pの画素値、反転回数及び図7(b)のテーブルに従って、エッジパターンを判定する。図7(b)は、各方向についてのエッジパターンを判定する際に、判定基準として用いられるテーブルの模式図を示している。反転回数が「0」又は「2以上」の場合、注目画素Pの画素値に関係なく「無効」となる。反転回数が「1」の場合、注目画素Pの画素値が「1」のときエッジパターンは「ターゲット」となり、注目画素Pの画素値が「0」のときエッジパターンは「リファレンス」となる。
【0053】
「ターゲット」のエッジパターンとなった方向では、注目画素Pは、トラッピング対象画素となる。即ち、注目画素Pに対象方向にある他の画素の色をコピーする。「リファレンス」のエッジパターンとなった方向では、注目画素Pは、コピー色の参照画素となる。即ち、注目画素Pの色を、対象方向にある他の画素にコピーする。この場合、対象方向における注目画素Pからエッジまでの領域(エッジ距離)は、広がるようになる。「無効」の場合、対象方向は、トラッピング処理の対象とならない。以下、コピーする色をトラップ色、コピーされる色を被トラップ色と言う。
【0054】
図8は、各方向についてのエッジ情報の抽出例を示す模式図である。図8(a)は、エッジ情報を抽出する7×7画素のラスタデータの一例を示しており、斜線部分の画素はマゼンダの純色、白抜部分の画素はシアンの純色を表している。マゼンダについて上述の2値化処理及び微細点除去処理を行った場合、図8(a)の斜線部分の画素の画素値は「1」、白抜部分の画素の画素値は「0」となる。一方、シアンの場合、図8(a)の白抜部分の画素の画素値は「1」、斜線部分の画素の画素値は「0」となる。
【0055】
図8(b)は、図8(a)のラスタデータについてエッジ情報の抽出を行った結果を示している。図8(b)に示すように、マゼンダについてエッジ情報を抽出した場合、注目画素Pの画素値は「1」となり、シアンの場合、注目画素Pの画素値は「0」となる。図8(b)では、画素値「1」の画素を斜線で示しているため、マゼンダとシアンとでは、斜線及び白抜が逆となっている。また、図8(b)は、図7(b)のテーブルを用いて、各方向のエッジパターン判定を行った結果、エッジ距離及びパターン長を示している。例えば、3の方向では、マゼンダのエッジパターンの判定結果は「ターゲット」となり、シアンの場合は「リファレンス」となる。さらに、エッジ距離は「2」、パターン長は「2」となる。
【0056】
また、全方向エッジ情報検出部42は、検出したエッジ情報に基づいてノイズエッジ除去処理を行う。ノイズエッジ除去処理は、微細点除去処理で除去できなかった低濃度の網点を除去する処理である。全方向エッジ情報検出部42は、ノイズエッジ除去処理を行った結果、トラッピング処理を行うか否かを判定(以下、ノイズ除去後判定と言う)する。具体的には、全方向エッジ情報検出部42は、7×7画素のラスタデータの色領域幅が指定された画素数(以下、ノイズレベルと言う)以下である場合、トラッピング処理を行わないようにする。色領域幅は、網点の線の太さであり、上述のパターン長となる。そして、網点の線の太さ(パターン長)が指定された幅より細い場合は、トラッピング処理の対象から除外する。
【0057】
図9は、図8(a)についてノイズ除去後判定を行った結果を示す図である。図9では、マゼンダについての結果を示し、ノイズレベルを「2」とする。ノイズレベルは、除去したい網点の線の太さに応じて適宜変更可能である。ノイズ除去後判定では、エッジパターンが「ターゲット」で、パターン長がノイズレベル以下である方向に関しては、「無効」、即ちトラッピング処理の対象から除外する。そして、「無効」となった方向が1つでもある場合、全方向に関して「無効」とし、トラッピング処理の対象から除外する。
【0058】
単色最短エッジ方向検出部43は、全方向エッジ情報検出部42が抽出したエッジ情報に係るエッジパターンが「ターゲット」である方向の中から、エッジ距離が最短な方向(以下、単色最短エッジ方向と言う)を検出する。検出された単色最短エッジ方向は、エッジに垂直な方向となる。より具体的には、図6に示す注目画素Pから、縦横4方向(1,3,5,7の方向)におけるエッジ距離の最短を検出する。図8(a)の場合、エッジパターンが「ターゲット」である方向の中では、3の方向のエッジ距離が「2」であり最短となる。次に、斜め4方向(2,4,6,8の方向)に対し、縦横4方向で検出した距離よりも短いエッジ距離の方向を検出する。このとき、最短のエッジ距離が同じである場合、最初に検出した方向を採用するようにしてもよいし、予め決定した規則に従って方向を決定してもよい。このエッジに垂直な方向の検出は、CMYKの4つの色成分それぞれについて行われる。従って、エッジに垂直な方向が色成分毎に検出される。
【0059】
総合最短エッジ方向特定部44は、単色最短エッジ方向検出部43がCMYKそれぞれについて検出した単色最短エッジ方向のなかから、全色成分におけるエッジ距離が最短の方向(以下、総合最短エッジ方向と言う)を特定する。例えば、CMYKの順に、単色最短エッジ方向とその方向のエッジ距離とが「無効」、「7の方向、1」、「6の方向、2」、「無効」である場合、総合最短エッジ方向検出部44は、マゼンダ(M)の7の方向におけるエッジ距離「1」を総合最短エッジ方向とする。なお、「無効」とは、エッジパターンが「無効」と判定されたことを意味する。
【0060】
トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向について、トラッピング色のペア判定(以下、色ペア判定と言う)を行う。色ペア判定では、コピーする色(トラップ色)と、コピーされる色(被トラップ色)との組み合せが有効であるかを、CMYKそれぞれについて判定する。そして、有効となった色の組み合せでのみトラッピング処理を行う。例えば、トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向において、シアンに対してマゼンダをコピーすることを有効にするかを判定する。
【0061】
図10は、色ペア判定を行う際の判定基準を示す図である。図10に示す表では、濃度が強い色に対して、濃度が弱い色をコピーするようになっている。このため、総合最短エッジ方向について、トラップ色が被トラップ色より色濃度が強い場合、トラッピング処理は行わないようになっている。なお、CMYKでは、ブラック(K),マゼンダ(M),シアン(C),イエロー(Y)の順に色濃度が強くなっている。
【0062】
図10に示す表の下側には、表から抽出した判定基準の一部を式で示している。例えば、一行目の判定式は、トラップ色がマゼンダ(M)、被トラップ色がブラック(K)である場合、換言すれば、ブラック(K)にマゼンダ(M)をコピーする場合の条件を示している。この場合、総合最短エッジ方向におけるブラック(K)についてのエッジパターンが「ターゲット(T)」で、かつ、マゼンダ(M)についてのエッジパターンが「リファレンス(R)」となるとき、マゼンダ(M)とブラック(K)との組み合せが有効となる。有効となった場合、トラッピング判定部45は、トラッピング処理を実施すると判定する。
【0063】
また、トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向におけるエッジ距離と、予め設定されたトラッピング処理を行う幅(以下、トラップ幅と言う)とに基づいて、トラッピング処理を実施するか否かを判定(以下、エッジ距離判定と言う)する。トラッピング処理は、白抜けを防止するために色を重ね合せる処理であって、トラップ幅は、この白抜けを防止する際の度合いによって調整できる。例えば、トラップ幅は、機械の性能によって調整する。
【0064】
図11は、エッジ距離判定を説明するための模式図である。図11(a)に示すように、トラップ幅が「1」に設定されている場合、判定結果は、エッジ距離が「1」の場合のみ「True」となる。トラップ幅が「3」に設定されている場合、判定結果は、エッジ距離が「1」、「2」、「3」の場合に「True」となる。判定結果が「True」の場合に、トラッピング処理が実行され、「False」の場合は実行されない。このように、トラップ幅を小さくすることで、トラッピング処理により生じる偽色の幅を最小限とすることができる。図11(b)に示す画像データに対してエッジ距離判定に基づいてトラッピング処理を行った結果が、図11(c)(トラップ幅「1」の場合)、及び、図11(d)(トラップ幅「3」の場合)となる。
【0065】
また、トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向におけるパターン長及びエッジ距離、並びに、非トラップ比に基づいてトラッピング処理を行うか否かを判定(以下、パターン長判定と言う)する。パターン長判定では、画像データ内の小文字又は細線等の再現性を向上させることができる。
【0066】
図12は、パターン長判定を説明するための模式図である。図12では、トラップ幅を3とした場合を示す。非トラップ比は、トラップ幅に対してトラッピング処理しない距離(幅)の比である。従って、非トラップ比が「0」の場合は、本判定は常にトラッピング処理を実行すると判定する。非トラップ比は、装置又は仕様によって予め決定されていてもよいし、画像データの種類によって決定されるようにしてもよい。例えばテキストデータの場合には「1」とし、グラフィクスデータの場合は「0」としてもよい。
【0067】
トラッピング判定部45は、エッジ距離が、パターン長/(非トラップ比+2)の値(具体的には、1)以下である場合、トラッピング処理を実行すると判定する。図12(a)に示すように、例えばパターン長が3の場合、エッジ距離が1、非トラップ比が0のとき、判定結果は「True」、即ちトラッピング処理を実行すると判定する。また、エッジ距離が3、非トラップ比が1のとき、判定結果は「False」となる。図12(b)に示す画像データに対してエッジ距離判定に基づいてトラッピング処理を行った結果が、図12(c)(非トラップ比「0」の場合)、及び、図12(d)(非トラップ比「1」の場合)となる。
【0068】
トラッピング実行部46は、上述の各処理の結果に基づいて、トラッピング処理を実行する。図13は、トラッピング処理を実行した際のラスタデータを模式的に示す図である。トラッピング実行部46は、トラッピング判定部45による色ペア判定で、有効となる組み合せがあり、かつ、エッジ距離判定及びパターン長判定で「True」と判定された場合に、トラッピング処理を実行する。図13では、斜線部分がマゼンダ、ドット部分がシアンの画素を示し、7の方向において、エッジパターン判定が「ターゲット」となった場合を示す。エッジパターン判定が「ターゲット」の場合、中央の画素(マゼンダ)に7の方向にある画素(シアン)がコピーされる。
【0069】
次に、上述の各部の動作を説明することで、画像処理装置の動作について説明する。
【0070】
図14は、2値化処理を示すフローチャートである。図14に示す処理は、ハーフトーンラスタデータの画素の画素値を2値化する処理であって、2値化処理部41により実行される。
【0071】
2値化処理部41は、まず、トラップ判定領域Mの設定を行う(S101)。トラップ判定領域は、本実施形態では、図3で説明したように7×7画素の領域である。次に、2値化処理部41は、2値化の閾値Tを設定する(S102)。本実施形態では、閾値Tは、画像データの濃度の50%の値である。2値化処理部41は、画像処理装置21に予め設定されたトラップ判定領域M及び閾値Tを取得してもよいし、画像データから適切な値を算出等して設定してもよい。
【0072】
2値化処理部41は、S101で設定したトラップ判定領域を1画素分外側に拡張した閾値判定領域に含まれる画素の画素値が閾値T以上であるか否かを判定する(S103)。本実施形態では閾値判定領域は図3の破線で示す9×9画素の領域である。閾値T以上である場合(S103:YES)、2値化処理部41は、対象画素の画素値を「1」に設定する(S104)。閾値T以上でない場合(S103:NO)、2値化処理部41は、対象画素の画素値を「0」に設定する(S105)。そして、2値化処理部41は、閾値判定領域内の全ての画素に対しての処理が終了したか否かを判定し(S106)、全ての画素について処理が終了していなければ(S106:NO)、S103以降の処理を続ける。これにより、閾値判定領域について全ての画素を、「0」又は「1」の2値化データとすることができる。
【0073】
全ての画素について処理が終了した場合(S106:YES)、2値化処理部41は、トラップ判定領域Mに含まれる画素に対して微細点を除去する処理を行う。2値化処理部41は処理対象となる注目画素の周囲の画素の画素値を取得する(S107)。例えば、2値化処理部41は、S104及びS105で2値化した2値化データから3×3画素を抽出し、領域の中央の画素を注目画素とする。そして、2値化処理部41は、注目画素の周囲の8画素の画素値を取得する(図5参照)。2値化処理部41は、取得した画素値「1」の画素の数を計数する(S108)。2値化処理部41は、計数結果が6以上であるか否かを判定する(S109)。
【0074】
計数結果が6以上である場合(S109:YES)、2値化処理部41は、図5(a)で説明したように、注目画素の画素値を「1」に設定する(S110)。このとき、2値化処理部41は、注目画素の画素値が「0」であっても、画素値を「1」にする。計数結果が6以上でない場合(S109:NO)、2値化処理部41は、計数結果が2以下であるか否かを判定する(S111)。2以下の場合(S111:YES)、2値化処理部41は、図5(b)で説明したように、注目画素の画素値を「0」に設定する(S112)。このとき、2値化処理部41は、注目画素の画素値が「1」であっても、画素値を「0」にする。2以下でない場合(S111:NO)、図5(c)及び図5(d)で説明したように、注目画素の画素値を変更せず、S113に処理を移す。
【0075】
2値化処理部41は、トラップ判定領域M内の全画素について、上述の処理が終了したか否かを判定する(S113)。全画素についての処理が終了していない場合(S113:NO)、2値化処理部41は、S107以降の処理を続ける。これにより、トラップ判定領域M内のすべての画素について微細点除去の処理を行うことができる。全画素についての処理が終了した場合(S113:YES)、2値化処理部41は、S114に処理を移す。
【0076】
すべての画素について処理が終了した場合、2値化処理部41は、CMYKの全色成分について、上述の処理を行ったか否かを判定する(S114)。CMYKの全色成分について終了していない場合(S114:NO)、2値化処理部41は、S103以降の処理を続け、他の色成分についても同様の処理を実行する。CMYKの全色成分について終了した場合(S114:YES)、2値化処理部41は、本処理を終了する。
【0077】
図14に示す処理を実行することで、入力画像データのビット数に拘わらず、以下に説明する処理を同一の内容で実行することができる。また、注目画素に隣接する周辺画素の2値化後の画素値に基づいて、注目画素の画素値を変更することで、2値化データに含まれる網点に起因する微細点を除去することができる。これにより、以降のエッジを検出する処理等の精度を上げることができる。
【0078】
図15は、全方向エッジ情報抽出処理を示すフローチャートである。全方向エッジ情報抽出処理は、2値化データのトラップ判定領域Mに対して、注目画素から複数方向それぞれについてのエッジ情報を抽出する処理であり、全方向エッジ情報検出部42により実行される。
【0079】
全方向エッジ情報検出部42は、ノイズレベルNを設定する(S201)。ノイズレベルNは、ラスタデータ内から除去する網点の太さに応じて決定される。ノイズレベルNは、予め設定されていてもよいし、全方向エッジ情報検出部42がラスタデータの種類に応じて適切な値に設定してもよい。全方向エッジ情報検出部42は、ラスタデータのトラップ判定領域M内において、注目画素から8方向のラインデータを抽出する(S202)。トラップ判定領域Mは、図14の2値化処理で設定された値である。例えば図6の場合、7×7画素の中央の画素を注目画素とし、注目画素を含む直線上にある7画素を、8方向全てについて抽出する。
【0080】
全方向エッジ情報検出部42は、抽出した一の方向におけるラインデータについて、エッジを検出し(S203)、さらにエッジ距離を検出する(S204)。具体的に、図7で説明したように、全方向エッジ情報検出部42は、一の方向に沿って、画素値が反転する位置をエッジとして検出し、注目画素と同じ画素値の画素が連続する数をエッジ距離として検出する。
【0081】
次に、全方向エッジ情報検出部42は、エッジを検出した方向の画素値の反転回数を計数する(S205)。さらに、全方向エッジ情報検出部42は、パターン長を検出する(S206)。上述のように、全方向エッジ情報検出部42は、検出したエッジから注目画素方向に、同じ画素値の画素が連続する数をパターン長として検出する。
【0082】
全方向エッジ情報検出部42は、S205での計数結果から、反転回数が1であるか否かを判定する(S207)。反転回数が1でない場合(S207:NO)、即ち、反転回数が0、又は2以上である場合には、図7(b)で説明したように、全方向エッジ情報検出部42は、エッジパターンを「無効」に決定する(S212)。
【0083】
反転回数が1の場合(S207:YES)、全方向エッジ情報検出部42は、注目画素の画素値が「1」であるか否かを判定する(S208)。注目画素の画素値が「1」でない場合(S208:NO)、図7(b)で説明したように、全方向エッジ情報検出部42は、エッジパターンを「リファレンス」に決定する(S210)。注目画素の画素値が「1」である場合(S208:YES)、全方向エッジ情報検出部42は、エッジパターンを「ターゲット」に決定する(S209)。
【0084】
その後、全方向エッジ情報検出部42は、全8方向について、S203以降の処理が終了したか否かを判定する(S211)。全8方向について終了していない場合(S211:NO)、全方向エッジ情報検出部42は、未処理の方向について、S203以降の処理を行う。全8方向について終了した場合(S211:YES)、全方向エッジ情報検出部42は、S206で検出したパターン長がS201で設定したノイズレベルN以下であるか否かを判定する(S213)。各方向に対してエッジパターン及びパターン長による判定を行い、エッジパターンが「リファレンス」又は「ターゲット」であり、かつパターン長がノイズレベルN以下の方向が存在する場合(S213:YES)、全方向エッジ情報検出部42は、全方向のエッジパターンを「無効」とし(S214)、トラッピング対象から外す。全方向のエッジパターンを「無効」とした後、又はパターン長がノイズレベルN以下の方向が存在しない場合(S213:NO)、全方向エッジ情報検出部42は、CMYKの全色成分について、上述の処理を行ったか否かを判定する(S215)。CMYKの全色成分について終了していない場合(S215:NO)、全方向エッジ情報検出部42は、S203以降の処理を続け、他の色成分についても同様の処理を実行する。CMYKの全色成分について終了した場合(S215:YES)、全方向エッジ情報検出部42は、本処理を終了する。
【0085】
図15の処理により、適切なノイズパターンNを設定し、網点の線の太さであるパターン長がノイズパターンNより小さい場合に、トラッピング処理の対象外とすることで、2値化処理部41で排除しきれなかった網点などの微細パターンを処理対象外とし、エッジ抽出の精度を高め、トラッピング処理の精度を向上させることができる。
【0086】
図16は、単色最短エッジ方向検出処理を示すフローチャートである。単色最短エッジ方向検出処理は、CMYKの色成分毎に最短のエッジ距離の方向を検出する処理であり、単色最短エッジ方向検出部43により実行される。
【0087】
単色最短エッジ方向検出部43は、i(初期値1)の方向のエッジパターンが「ターゲット」であるか否かを判定する(S301)。iの値は2ずつ増加していき、1,3,5,7の方向に対して以下の処理を行う。iの方向のエッジパターンが「ターゲット」である場合(S301:YES)、iの方向のエッジ距離が最短であるか否かを判定する(S302)。このとき、単色最短エッジ方向検出部43は、以降のS303で単色最短エッジ方向とされる方向に対応するエッジ距離と比較する。
【0088】
エッジ距離が最短である場合(S302:YES)、単色最短エッジ方向検出部43は、処理中の方向を単色最短エッジ方向とする(S303)。S301においてiの方向のエッジパターンが「ターゲット」でない場合(S301:NO)、又はS302において、iの方向のエッジ距離が最短でない場合(S302:NO)、iに2を加算し(S304)、iの値が7より大きいか否かを判定する(S305)。7より大きくない場合(S305:NO)、単色最短エッジ方向検出部43は、S301以降の処理を続行する。これにより、単色最短エッジ方向検出部43は、1,3,5,7の方向の中から、単色最短エッジ方向を検出することができる。
【0089】
iの値が7より大きい場合(S305:YES)、単色最短エッジ方向検出部43は、j(初期値2)の方向のエッジパターンが「ターゲット」であるか否かを判定する(S306)。jの値は2ずつ増加していき、2,4,6,8の方向に対して以下の処理を行う。jの方向のエッジパターンが「ターゲット」である場合(S306:YES)、jの方向のエッジ距離が最短であるか否かを判定する(S307)。単色最短エッジ方向検出部43は、S306及びS307を最初に実行する場合は、1,3,5,7の方向の何れかが単色最短エッジ方向である場合、その方向のエッジ距離と対比し、以降、決定された単色最短エッジ方向のエッジ距離と対比する。
【0090】
jの方向のエッジ距離が最短である場合(S307:YES)、単色最短エッジ方向検出部43は、処理中の方向を単色最短エッジ方向とする(S308)。S306においてjの方向のエッジパターンが「ターゲット」でない場合(S306:NO)、又はS307において、jの方向のエッジ距離が単色最短エッジ方向のエッジ距離より小さくない場合(S307:NO)、jに2を加算し(S309)、jの値が8より大きいか否かを判定する(S310)。8より大きくない場合(S310:NO)、単色最短エッジ方向検出部43は、S306以降の処理を続行する。これにより、単色最短エッジ方向検出部43は、全8方向から単色最短エッジ方向を検出することができる。
【0091】
jの値が8より大きい場合(S310:YES)、単色最短エッジ方向検出部43は、全色成分に関して、単色最短エッジ方向の検出を終了したか否かを判定する(S311)。全色成分に関して終了していない場合(S311:NO)、単色最短エッジ方向検出部43は、他の色成分に関してS301以降の処理を実行する。全色成分に関して終了した場合(S311:YES)、単色最短エッジ方向検出部43は、本処理を終了する。
【0092】
図16の処理により、網点を含む疑似中間調の画像データであっても色成分毎にエッジを検出することで、オブジェクトのエッジを高精度で検出することができる。
【0093】
図17は、総合最短エッジ方向検出処理を示すフローチャートである。総合最短エッジ方向検出処理は、CMYKの色成分毎に検出した単色最短エッジ方向のエッジ距離から、全色成分の総合最短エッジ方向を抽出する処理であり、総合最短エッジ方向特定部44により実行される。
【0094】
総合最短エッジ方向特定部44は、図16で単色総合最短エッジ方向を検出したか否かを判定する(S401)。単色総合最短エッジ方向を検出した場合(S401:YES)、総合最短エッジ方向特定部44は、CMYKそれぞれの単色最短エッジ方向から、最短のエッジ距離を特定し(S402)、対応する方向を総合最短エッジ方向とする(S403)。図16で単色総合最短エッジ方向を検出していない場合(S401:NO)、総合最短エッジ方向特定部44は、総合最短エッジ方向はないと判定して本処理を終了する。
【0095】
図17の処理により、複数の方向全てについて、全色成分のエッジ距離を比較することで、画像データに含まれる網点により、正確なエッジ情報が抽出できないおそれを低減できる。その結果、オブジェクト輪郭のエッジ方向を高精度で推測することができる。
【0096】
図18は、トラッピング判定処理を示すフローチャートである。トラッピング判定処理は、トラッピング処理を実施するか否かの判定を行う処理であり、トラッピング判定部45により実行される。
【0097】
トラッピング判定部45は、トラップ幅W及び非トラップ比Rを設定する(S501)。トラップ幅W及び非トラップ比Rは、装置又は使用によって予め決定されていてもよいし、画像データの種類によって決定されるようにしてもよい。トラッピング判定部45は、図17で総合最短エッジ方向を検出したか否かを判定する(S502)。総合最短エッジ方向を検出した場合(S502:YES)、色ペア判定を行う(S503)。総合最短エッジ方向を検出しない場合(S502:NO)、トラッピング判定部45は、処理を509に移す。
【0098】
色ペア判定は、総合最短エッジ方向に対してトラッピング処理を行う際のトラップ色及び被トラップ色の有効な組み合せを判定する。例えば、トラッピング判定部45は、図10で説明したように、総合最短エッジ方向において、ブラックにマゼンダをコピーすることが有効であるか否かを判定する。トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向におけるブラックについてのエッジパターンが「ターゲット(T)」で、かつ、マゼンダについてのエッジパターンが「リファレンス」となるとき、斯かる組み合せを有効とする。
【0099】
トラッピング判定部45は、S503の色ペア判定が有効であるか否かを判定する(S504)。色ペア判定が有効でない場合(S504:NO)、トラッピング判定部45は、処理を509に移す。色ペア判定が有効である場合(S504:YES)、トラッピング判定部45は、トラップ色及び被トラップ色を設定する(S505)。上述の例では、トラップ色がマゼンダ、被トラップ色がブラックとなる。
【0100】
トラッピング判定部45は、総合最短エッジ方向のエッジ距離が、トラップ幅W以下であるか否かを判定する(S506)。トラップ幅W以下でない場合(S506:NO)、トラッピング判定部45は、処理を509に移す。最短のエッジ距離がトラップ幅W以上の場合、トラッピング処理を行わないように判定することで、トラッピング処理により生じる偽色の大きさを最小限に抑えることができる。総合最短エッジ方向のエッジ距離がトラップ幅W以下である場合(S506:YES)、トラッピング判定部45は、S505で設定した被トラップ色のパターン長が総合最短エッジ方向のエッジ距離*(2+非トラップ比R)の値以上であるか否かを判定する(S507)。値以上でない場合(S507:NO)、トラッピング判定部45は、処理を509に移す。値以上である場合(S507:YES)、トラッピング判定部45は、トラッピング処理を実行すると判定する(S508)。
【0101】
トラッピング判定部45は、トラップ色がCMY成分となる全ての組み合せについての色ペア判定が終了したか否かを判定する(S509)。CMY成分全て終了していない場合(S509:NO)、トラッピング判定部45は、処理をS502に戻す。CMY成分全て終了した場合(S509:YES)、トラッピング判定部45は、本処理を終了する。なお、トラップ色がブラック(K)となる場合、被トラップ色より色濃度が強いため、本処理は行わないようになっている。
【0102】
図18に示すように、抽出した色成分毎のエッジパターンが、所定の組み合せを構成する場合に、トラッピング処理を実行すると判定する。これにより、トラッピング処理が有効に機能する色の組み合せを判定することができる。
【0103】
図19は、トラッピング処理を示すフローチャートである。図19に示す処理は、上述の処理の結果に基づいて、トラッピング処理を行う処理であり、トラッピング実行部46により実行される。
【0104】
トラッピング実行部46は、図18のS508でトラッピング処理を実行すると判定したか否かを判定する(S601)。トラッピング処理を実行すると判定しなかった場合(S601:NO)、トラッピング実行部46は、ハーフトーンラスタデータに対して処理することなく、本処理を終了する。トラッピング処理を実行すると判定した場合(S601:YES)、トラッピング実行部46は、図13で説明したように、設定したトラップ色を被トラップ色にコピーする(S602)。
【0105】
そして、トラッピング実行部46は、トラップ色がCMY成分となる場合について、上述の処理を終了したか否かを判定する(S603)。終了していない場合(S603:NO)、トラッピング実行部46は、トラップ色が他の色成分の場合についても同様のS601以降の処理を実行する。終了した場合(S603:YES)、トラッピング実行部46は、本処理を終了する。
【0106】
以上のように、連続階調画像データの場合、濃度比較によってエッジを正確に抽出できるが、疑似中間調の画像データでは網点を含むため、オブジェクトのエッジと網点パターンのエッジとの区別が困難となる。このため、本実施形態で説明したように、色成分毎に検出したエッジまでの距離に基づいて、トラッピング処理の実行判定を行うことで、疑似中間調の画像データであっても、オブジェクトのエッジを高精度で抽出することができ、その結果、好適なトラッピング処理を行うことができる。
【0107】
上述の実施形態では、本発明に係る画像処理装置を、プリンタなどのカラー画像形成装置に備えた場合について説明したが、カラー複合機に備えるようにしてもよい。カラー複合機とした場合、カラー複合機は、モデム又はネットワークカードなどを備えている。ファクシミリの送信を行うときは、モデムにて、相手先との送信手続きを行い送信可能な状態が確保された後、所定の形式で圧縮された画像データ(スキャナで読み込まれた画像データ)をメモリから読み出し、圧縮形式の変更など必要な処理を施して、相手先に通信回線を介して順次送信する。
【0108】
ファクシミリを受信する場合、通信手続きを行いながら相手先から送信されてくる画像データを受信し、受信した画像データを、伸張処理を施す。伸張された画像データは、必要に応じて、回転処理や解像度変換処理が行なわれ、出力階調補正及び階調再現処理が施され、印字媒体上にカラー画像が形成される。
【0109】
また、ネットワークカード、LANケーブルを介して、ネットワークに接続されたコンピュータや他のデジタル複合機とデータ通信を行なう。なお、デジタルカラー複合機について説明したが、モノクロの複合機であっても構わない。
【0110】
さらに、本発明はコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、前記したラッピング処理・スムージング処理を行う方法を記録するものとすることもできる。この結果、前記処理を行うプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)を記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
【0111】
なお、上述の実施形態では、この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行われるために図示していないメモリ、例えばROMのようなものそのものがプログラムメディアであってもよい。また、図示していない外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
【0112】
いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であっても良いし、あるいは、いずれの場合もプログラムコードを読み出し、読み出されたプログラムコードは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であってもよい。このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0113】
ここで、前記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。
【0114】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからプログラムコードをダウンロードするように流動的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであっても良い。なお、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0115】
前記記録媒体は、デジタルカラー画像形成装置やコンピュータシステムに備えられるプログラム読み取り装置により読み取られることで上述した画像処理方法が実行される。
【0116】
以上、本発明の好適な一実施形態について、具体的に説明したが、各構成及び動作等は適宜変更可能であって、上述の実施の形態に限定されることはない。
【符号の説明】
【0117】
41 2値化処理部
42 全方向エッジ情報検出部
43 単色最短エッジ方向検出部
44 総合最短エッジ方向特定部
45 トラッピング判定部
46 トラッピング実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行う画像処理装置において、
前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化する二値化手段と、
前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化手段による二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出するエッジ検出手段と、
該エッジ検出手段が検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出する特徴量検出手段と、
前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、前記特徴量検出手段が検出した特徴量に基づいて、前記色成分毎に検出する単色最短方向検出手段と、
該単色最短方向検出手段が色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定する総合最短方向特定手段と、
該総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重合処理を実行するか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジ検出手段は、
注目画素から前記複数の方向それぞれに沿って配列する画素の画素値が、前記注目画素に最も近くで反転する位置をエッジとして検出し、
前記特徴量検出手段は、
前記注目画素から、前記エッジ検出手段が検出した位置までにある画素の数を前記距離として検出し、
前記単色最短方向検出手段は、
前記特徴量検出手段が検出した距離を比較して、前記距離が最短であるエッジが検出された方向を検出するようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特徴量検出手段は、
注目画素を含み、前記複数の方向に沿って直線状に配列する画素の画素値に基づいて、前記画素の配列パターンを前記方向毎及び色成分毎に検出し、
前記判定手段は、
前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する色成分毎の配列パターンが所定の組み合せとなる場合、前記組み合せに対応した色成分を用いて前記重合処理を実行すると判定するようにしてある
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する前記距離が所定値以下の場合に、前記重合処理を実行すると判定するようにしてある
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記二値化手段は、
注目画素に隣接する周辺画素の二値化後の画素値に基づいて、前記注目画素の画素値を変更するようにしてあり、
前記特徴量検出手段は、
前記二値化手段による変更後の画素値に基づいて、特徴量を検出するようにしてある
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特徴量検出手段は、
前記配列パターンに基づいて、注目画素から、該注目画素と同じ画素値の画素が連続する画素数を、前記複数の方向それぞれについて色成分毎に検出し、所定値以下の画素数を検出した場合には該色成分におけるエッジが存在しないと判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記判定手段は、
前記総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する前記画素数及び前記距離を用いた算出結果に基づいて、前記重合処理を実行するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記二値化手段は、
前記画像データの画素値を、該画素値が所定値以上の場合は1、前記所定値未満場合は0に変換するようにしてある
ことを特徴とする請求項1から7の何れか一つに記載の画像処理装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一つに記載の画像処理装置と、
該画像処理装置により処理が施された画像データに基づく画像を形成する形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行う画像処理方法において、
前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化し、
前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出し、
検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出し、
前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、検出した前記特徴量に基づいて、色成分毎に検出し、
色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定し、
特定した前記方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重ね合せる処理を実行するか否かを判定する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、カラー画像データに疑似中間調処理が施されて生成されたラスタ形式の画像データに基づいて抽出したオブジェクトに対して、複数の色成分の画素を重ね合せる重合処理を実行するための処理を行わせるコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記ラスタ形式の画像データの色成分毎の画素値を二値化する二値化手段、
前記画像データに基づく画像中の注目画素から複数の方向それぞれにあるエッジを、前記二値化手段による二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出するエッジ検出手段、
該エッジ検出手段が検出したエッジの方向に対する前記画像データの特徴量を、前記二値化後の画素値に基づいて、色成分毎に検出する特徴量検出手段、
前記注目画素との距離が最短であるエッジが検出された方向を、前記特徴量検出手段が検出した特徴量に基づいて、前記色成分毎に検出する単色最短方向検出手段、
該単色最短方向検出手段が色成分毎に検出した方向から、前記距離が最短であるエッジがある方向を特定する総合最短方向特定手段、及び、
該総合最短方向特定手段が特定した方向に対応する特徴量に基づいて、前記方向に対して前記重合処理を実行するか否かを判定する判定手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータでの読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−245965(P2010−245965A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94207(P2009−94207)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】