説明

画像処理装置、製本システムおよびプログラム

【課題】製本物の背幅に応じて、適切な表紙印刷出力データを生成する画像処理装置、製本システムおよびプログラムを提供すること。
【解決手段】印刷物の表紙を印刷するための出力データを、画像形成手段に伝送する画像処理装置10であって、印刷物の背幅を取得し、取得した背幅に応じて背表紙印刷領域208を画定し、背表紙に印刷するための背表紙データを前記背表紙印刷領域に割付けて、前記出力データを生成する割付処理手段60を備え、前記割付処理手段は、前記背表紙データを割付けた場合に画定される割付領域が前記背表紙印刷領域208に収まることを条件として与えられる割付属性を使用して、割付処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関し、より詳細には、製本物の背幅に応じて、適切な表紙印刷出力データを生成する画像処理装置、製本システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製本後の仕上がり品質を重視する傾向がますます強くなり、製本物の表紙をどの様な仕上がりにするかについても極めて重要な事項になっている。特に表紙を構成するオモテ表紙、ウラ表紙や背表紙の印刷位置、それぞれの領域に印刷されるフォントやサイズや印字色などの印字属性および画像の大きさや解像度や画色などの画像属性を適切に決定し、オンデマンドに良質の製本物の表紙を作成することが強く要求されている。
【0003】
中身となる印刷物を表紙となる一枚の用紙で包む、くるみ製本では、中身となる印刷物の用紙数が多くなるにつれて背表紙の背幅が大きくなる。このため、最終的な製本物の厚みや体裁を予測した上で、オモテ表紙、ウラ表紙や背表紙の印刷領域の印刷位置、さらに印字属性や画像属性を決定して、割付する必要があり、ユーザの経験や試行錯誤に依るところが大きかった。また、実際に製本して、文字や画像の大きさや位置についてそのバランスを確認する必要性があり、製本物の仕上がり確認のための余計な時間と経費がかかるという問題があった。
【0004】
上述の一部の問題点を解決する目的で、例えば、特開2006−172306号公報(特許文献1)は、印刷が両面印刷又は片面印刷モードのいずれで行われるかについてと、設定されたページ数と、設定された紙タイプに対応する紙の厚みとから背表紙幅を算出し、表紙となる用紙に、適切なオモテ表紙、背表紙、及びウラ表紙の領域を割付ける情報処理装置を開示している。
【0005】
また、製本の際に印刷物の厚みの変化に対応することを目的とした技術として、例えば特開2004−94002号公報(特許文献2)や、特開2006−85638号公報(特許文献3)などがある。
【特許文献1】特開2006−172306号公報
【特許文献2】特開2004−94002号公報
【特許文献3】特開2006−85638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献では、製本物のオモテ表紙やウラ表紙に印刷される画像の印刷位置への対応、印刷物の厚みには対応できるものの、実際の製本工程では、特に表紙印刷の際、表紙への印字位置が適切に設定されていたにもかかわらず表紙の体裁が悪くなってしまう場合がある。そのため、オペレータは、当初の期待に反した製本物を得ることになってしまい、無駄な印刷工程を踏むことを要してしまっていた。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、製品物に応じた表紙を印刷することを可能とする画像処理装置、製本システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、背表紙データ(印字データや画像データを含む)を割付けた場合に画定される割付領域(文字や画像に対して割当てられる領域)が、印刷物の背幅(用紙束厚)に応じて画定される背表紙印刷領域(背表紙が印刷される領域)に収まることを第1の制約条件として、背表紙データを割付けるための割付属性を決定して、出力データを生成する割付処理手段(表紙印刷最適化処理部)を備えた画像処理装置との構成を採用する。
【0009】
上記の割付処理手段は、例えば、背表紙印刷領域と、仮想的な割付属性を与えて求めた割付領域とを比較して、背表紙印刷領域に収まるか否かを検証して、または、背表紙印刷領域から割付属性の許容範囲を導出して、使用する割付属性を決定する。画像処理装置は、決定された割付属性を使用して割付処理部が生成した、表紙印刷のための出力データを、自身の画像形成処理手段、または外部の画像形成装置に伝送し、印刷処理を実行させる。印刷された表紙は、製本手段に搬送されて製本処理に使用される。このとき、本発明では、背表紙に印刷されるべき文字および画像が、表紙中の背表紙部分に適切割付けられて印刷された形態の製本物を得ることを可能とし、製本物の品質低下を好適に防止する。
【0010】
すなわち本発明によれば、印刷物の表紙を印刷するための出力データを、画像形成手段に伝送する画像処理装置であって、前記画像処理装置は、
前記印刷物の背幅を取得し、前記取得した背幅に応じて背表紙印刷領域を画定し、背表紙に印刷するための背表紙データを前記背表紙印刷領域に割付けて、前記出力データを生成する割付処理手段を含み、
前記割付処理手段は、前記背表紙データを割付けた場合に画定される割付領域が前記背表紙印刷領域に収まることを条件として与えられる割付属性を使用して割付処理を行う、画像処理装置が提供される。
【0011】
また、前記画像処理装置は、使用する前記割付属性を決定するための判断条件を格納する記憶手段を含み、前記割付処理手段は、前記背表紙印刷領域と、前記背表紙データとから、前記判断条件を参照して、使用する前記割付属性を決定することができる。さらに、前記割付処理手段は、最大の前記割付領域を与えることを条件として、使用する前記割付属性を決定することができる。前記画像処理装置は、また、前記割付属性の指定値を入力するインタフェース提供手段を含み、前記割付処理手段は、前記指定値を使用して、使用する前記割付属性を決定することができる。
【0012】
また、前記割付属性は、印字フォントサイズ、印字文字ピッチ、印字行数、印字行間ピッチ、画像変倍率、画像縦横比、解像度の少なくとも1つを含む、ことができる。
【0013】
前記割付処理手段は、前記印刷物の背幅を検知する手段を含む製本手段と通信し、前記製本手段から、前記背表紙印刷領域を画定するための前記背幅を取得することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、印刷物を製本するための製本システムであって、前記製本システムは、画像処理装置と、
前記画像処理装置によって伝送される、表紙を印刷するための出力データを取得して、前記表紙を印刷出力する画像形成手段と、
前記印刷出力された表紙を使用して、前記印刷物の製本処理を実行する製本手段と
を含む、製本システムが提供される。
【0015】
さらに本発明によれば、表紙印刷に使用される出力データを画像形成手段に伝送する装置実行可能なプログラムであって、前記プログラムは、画像処理装置に対し、
前記印刷物の背幅を取得して記憶装置に格納する背幅取得手段と、
前記背幅に応じて背表紙印刷領域を画定する画定手段と、
背表紙に印刷するための背表紙データを割付けた場合に画定される割付領域が前記背表紙印刷領域に収まることを条件として、割付属性を決定する決定手段と、
前記割付属性を使用して、前記背表紙データを前記背表紙印刷領域に割付けて、前記出力データを生成する生成手段と
を実現する、装置実行可能なプログラムが提供される。
【0016】
前記プログラムは、前記決定手段に対し、前記背表紙印刷領域と、前記背表紙データとから、使用する前記割付属性を決定するための判断条件を格納した記憶手段を参照し、使用する前記割付属性の決定を実行させることができる。また前記プログラムは、さらに前記決定手段に対し、最大の前記割付領域を与えることを条件として、使用する前記割付属性を決定させることができる。さらに、前記プログラムは、前記割付属性の指定値を入力するためのインタフェースを提供するインタフェース提供手段をさらに前記画像処理装置に実現し、前記決定手段に対し、前記インタフェースから取得した前記指定値を使用して、使用する前記割付属性を決定することができる。
【0017】
また、前記プログラムは、前記印刷物の背幅を検知する製本手段と通信する通信手段を前記画像処理装置に実現し、前記背幅取得手段は、前記通信手段から、前記製本手段が検知した前記印刷物の背幅を取得することができる。
【0018】
前記プログラムは、プリンタ・ドライバとすることができる。前記プログラムは、画像形成装置のプリンタ・アプリケーションを構成することができる。
【0019】
本発明の画像処理装置、製本システムおよびプログラムを提供することにより、中身となる印刷物の厚みによって変化する背表紙の背幅に対応して、背表紙の割付属性を適切に設定した表紙の出力データを生成することができる。
【0020】
また、背表紙印刷領域の背幅以上のサイズが設定されているため背表紙印刷領域をはみ出して印刷される、背表紙印刷領域に比して過少なサイズが設定されバランスが悪く印刷される、所定のフォントサイズで印字された文字列の長さが、製本物小口方向長に比して長くなり、結果として背表紙印刷領域からはみ出して印刷されるなどの不具合を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、画像処理装置10と製本装置12とから構成される製本システム100の実施形態を示した概略図である。図1に示した画像処理装置10は、MFP(Multi-Functional Printer)などの複数の機能を有する画像形成装置としての実施形態に対応し、複数の機能を提供するための各種アプリケーションからなるアプリケーション・モジュール層50と、その下位のサービス・モジュール層48と、各種ハードウェア・リソースを含むハードウェア・リソース層46とを含み構成されている。
【0023】
図1に示した実施形態では、アプリケーション・モジュール層50は、プリンタ、コピーなどの画像形成処理のためのユーザ・サービスに固有の処理を行うソフトウェア群を含み、図1に示した実施形態では、コピー機能を提供するコピー・アプリケーション40と、プリンタ機能を提供するプリンタ・アプリケーション42とを含み構成されている。なお、アプリケーション・モジュール層50に含まれる各種アプリケーションとしては、種々の組み合わせにより構成することができ、特に限定されるものではない。他の実施形態では、例えば、ファクシミリ機能を提供するファックス・アプリケーション、スキャナ機能を提供するスキャナ・アプリケーションやネットワークファイル機能を提供するネットファイル・アプリケーションなどを含む構成とすることもできる。
【0024】
サービス・モジュール層48は、CPU24などのハードウェア・リソースと、アプリケーション・モジュール層50との間に介在し、汎用オペレーティング・システム(OS)30とともに、各種アプリケーションからの処理要求を解釈して、ハードウェア等の各種リソースの獲得要求を発行するソフトウェア群を含み、各種制御部32〜38を含み構成されている。汎用OSとしては例えば、UNIX(登録商標)を採用することができるが、MacOS(商標)、Windows(登録商標)、LINUX(登録商標)、VxWorks(登録商標)またはそれ以外の適切なOSを挙げることができる。各種制御部としては、図1に示した実施形態では、エンジン制御部32と、出力画像生成部34と、オペレーション制御部36と、ネットワーク制御部38とを含み構成されている。
【0025】
エンジン制御部32は、HDD22やエンジン26などのハードウェア・リソースを制御し、画像読み込みや印刷動作などを実行する。出力画像生成部34は、HDD22に蓄積されている画像、エンジン26が読み取った画像やネットワークを介して外部装置から受取った画像を、上位のアプリケーションなどの指示に従い加工(合成、縮小、拡大、回転など)を行う。オペレーション制御部36は、オペレータと本体制御との間のインタフェースとなる操作パネルなどのユーザ・インタフェースの制御を行い、ユーザ・インタフェースからの各種処理の要求を受付けている。
【0026】
ネットワーク制御部38は、イーサネット(登録商標)などのネットワーク・インタフェース(I/F)28の制御を実行し、各アプリケーションに対して共通に利用可能なサービスを提供する。ネットワーク制御部38は、ネットワーク側から各通信プロトコルによって受信したデータを、各アプリケーションに振り分け、各アプリケーションからのデータをネットワーク側に送信する際の仲介を行い、ネットワークを介して、印刷ジョブや各種設定・管理要求を処理している。なお、上述のサービス・モジュール層48に含まれる各種制御部の構成も、特に限定されるものではなく、例えば、アプリケーション・モジュール層50の仕様に応じた構成とすることができる。
【0027】
アプリケーション・モジュール層50とサービス・モジュール層48との間には、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)44が設けられていて、サービス・モジュール層48の各制御部は、API44に含まれる予め定義された関数によりアプリケーション・モジュール層50の各アプリケーションからの処理要求を受信している。
【0028】
画像処理装置10のハードウェア・リソース層46は、各種演算を行うCPU24と、各種制御プログラムを記憶する図示しないROMと、CPU24の作業メモリ領域を提供するメモリ20とを含み構成され、上述のソフトウェア構成、および後述の表紙印刷最適化処理手段は、ROMやHDD22などの記憶装置に格納されたプログラム(図示せず)をメモリ20のメモリ領域にロードすることにより実現される。
【0029】
なお、画像処理装置10が使用するCPUとしては、具体的にはPENTIUM(登録商標)〜PENTIUM(登録商標)IV、Celelon(登録商標)など、PENTIUM(登録商標)互換CPUなどのCISCアーキテクチャに基づくCPU、またはPOWER PC(登録商標)、MIPSなどのRISCアーキテクチャに基づくCPUを挙げることができる。
【0030】
また、図1に示した実施形態では、画像処理装置10は、各アプリケーションやコントロール・サービスにおける共通部分を抽出して、画像形成機能を備える画像処理装置をプラットフォーム化した構成として参照したが、ハードウェアおよびソフトフェアの構成は、特に限定されるものではない。また他の実施形態では、画像処理装置10は、例えば、パーソナル・コンピュータやサーバなど、画像形成機能を備えない情報処理装置として構成することもできる。この場合は、CPU24、メモリ20、HDD22、ネットワーク・インタフェース28やその他、入出力制御装置などのハードウェアと、汎用OS30などのソフトウェアとを含み構成することができる。
【0031】
製本システム100を構成する製本装置12は、用紙束厚検出部52と、くるみ製本処理部54とを含み構成されている。用紙束厚検出部52は、画像処理装置10から搬送された用紙をそろえ、その用紙束の厚み計測し検知する。くるみ製本処理部54は、画像処理装置10から搬送された中身となる用紙束を整えて、中身用紙束の背部分を糊付け処理し、画像処理装置10から搬送された表紙用紙を用いて中身用紙束を包み、プレスして、印刷物の端部の裁断処理などを行い、製本処理を実行する。
【0032】
画像処理装置10は、例えばシリアル接続により、製本装置12と接続されている。画像処理装置10は、例えば、ユーザからのくるみ製本処理指示を、アプリケーションを介して受け、画像処理装置10の各制御部から、エンジン制御部32を経由して、製本装置12のくるみ製本処理部54へ製本処理指令が発行され、画像処理装置10と製本装置12とが連動することによって、製本動作が実行される。また、画像処理装置10は、製本装置12の用紙束厚検出部52によって検出された用紙束厚を取得することができ、取得した用紙束厚に応じて、背表紙を印刷する領域を画定し、表紙データの背表紙割付属性を最適化し、背表紙印刷領域に割付け、表紙印刷を実行する。なお、取得した用紙束厚の値を背表紙印刷領域の背幅として使用することができる。また、図1は、画像処理装置10と製本装置12とが個別装置として構成された場合の実施形態を示すが、他の実施形態では、画像形成および製本を実行する単一の装置として構成することもできる。
【0033】
図2は、画像処理装置10と製本装置12とを含み構成される製本システム100の実施形態を示した機能構成図である。図2(A)は、画像形成機能を有する画像処理装置10と製本装置12とを含み構成された製本システム100の実施形態を示す。他方、図2(B)は、PCなどの情報処理装置としての画像処理装置10と、印刷を実行する画像形成装置14と、製本装置12とを含み構成される、他の実施形態としての製本システム100の構成を示す。
【0034】
図2(A)に示された製本システム100では、画像処理装置10は、表紙印刷最適化処理部60と画像形成部62とを含み構成されている。表紙印刷最適化処理部60は、製本装置12の用紙束厚検出部52から用紙束の厚さを取得し、製本動作中の表紙印刷処理にかかる、中身となる用紙束の厚さに対応した表紙出力データを生成するための最適化処理を実行する。そして、画像処理装置10の画像形成部62は、最適化処理された表紙出力データを受取り、表紙印刷を実行し、製本装置12へ印刷した表紙を搬送し、製本装置12は、搬送された表紙を用いてくるみ製本処理を実行する。このように、図2(A)に示された製本システム100では、表紙出力データを最適化する処理は、画像形成機能を有する画像処理装置10において実行され、画像処理装置10と製本装置12とが連動して製本動作が実行される。
【0035】
上述では、表紙印刷最適化処理部60は、製本装置12により計測された用紙束厚を取得する制御として説明したが、用紙束厚の取得方法は、特に限定されるものではない。例えば特開2004−94002号公報(特許文献2)が開示するような印刷枚数の計数手段を含む自動原稿送り装置(ADF)を備えた画像処理装置10として構成し、表紙印刷最適化処理部60は、計数手段によりカウントされた印刷枚数と、予め登録された一枚あたりの厚みとを乗算して算出された用紙束厚の計算値を取得する制御としてもよい。
【0036】
他方、図2(B)に示された製本システム100では、画像処理装置10は、表紙印刷最適化処理部60を含み、画像形成装置14が画像形成部62を含み構成されている。画像処理装置10は、画像形成装置14とネットワーク、USBや双方向パラレルインタフェースにより通信し、最適化処理済みの表紙出力データを、印刷ジョブとして画像形成装置14に送信し、画像形成装置14が表紙印刷処理を実行する。この場合、画像処理装置10は、印刷物の中身および表紙データを作成するためのアプリケーション64と、アプリケーション64からの、例えばDDIを介した描画命令を含む印刷要求に応答して、例えばPJLなどの印刷制御命令に変換して、印刷ジョブとして生成した表紙出力データを画像形成装置14に送信するための出力ドライバ66を含み構成されている。また、出力ドライバ66は、ユーザ・インタフェース(UI)を提供するためのUI提供部68を含むことができる。
【0037】
また、出力ドライバ66は、表紙印刷最適化処理部60を含み構成され、表紙印刷最適化処理部60は、画像形成装置14を介して、製本装置12の用紙束厚検出部52から用紙束の厚さを取得し、製本動作中の表紙印刷にかかる、中身用紙束の厚さに対応した表紙出力データを生成するための最適化処理を実行する。そして、画像処理装置10は、最適化処理された表紙出力データを画像形成装置14に印刷ジョブとして送信し、画像形成装置14の画像形成部62は、最適化処理された表紙出力データを受取り、表紙印刷を実行し、製本装置12へ印刷した表紙を搬送する。製本装置12は、搬送された表紙を用いて、くるみ製本処理を実行する。このように、図2(B)に示された製本システム100では、表紙出力データを生成するための最適化処理は、画像形成機能を有さない画像処理装置10の出力ドライバ66によって実行され、画像処理装置10と、画像形成装置14と、製本装置12とが連動して製本動作が実行される。
【0038】
上述の図2(B)に示した実施形態の説明で、表紙印刷最適化処理部60は、製本装置12により計測された用紙束厚を取得する制御としたが、特に限定されるものではない。表紙印刷最適化処理部60を出力ドライバ66に含まれる機能手段として構成する場合には、例えば特開2006−172306号公報(特許文献1)が開示するような、出力ドライバ66から中身用紙の印刷枚数を取得し、予め用意してある一枚あたりの厚みと印刷枚数から印刷用紙束厚を算出する制御としてもよい。
【0039】
上述のように、表紙出力データを最適化する処理を実行する手段は、画像形成機能を有する画像処理装置10により実現されてもよく、画像形成機能を有さないが画像処理装置10が備える出力ドライバ66として実現されても良く、特に限定されるものではない。なお、上述の画像形成部62は、図1に示した実施形態における、印刷処理を実行するための各種アプリケーション40、42や制御部32〜38を含む機能手段として参照している。
【0040】
図3は、製本システム100により印刷・製本される製本物の実施形態を示す概略図である。図3(A)は、オモテ表紙が開いた状態にある裁断前の製本物200の様態を示す。製本物200は、内容が印刷された複数の中紙用紙204からなる用紙束と、用紙束にくるみ製本された表紙用紙202とを含んでいる。図3(B)は、オモテ表紙を閉じた状態にある裁断前の製本物200の様態を示し、表紙用紙202上に裁断位置を示す裁断線206が示されている。図3(C)は、裁断後の製本物200の様態を示している。
【0041】
図3(D)は、裁断前の表紙用紙202の様態を示し、表紙用紙202には、オモテ表紙およびウラ表紙に対応する印刷領域に各々の表紙データが割付けられ、それぞれオモテ表紙画像Fおよびウラ表紙画像Bが印刷されている。また、表紙用紙202には、裁断線206が示されている。表紙用紙202は、さらに、製本後に背表紙となる背表紙印刷領域208が画定され、図3(D)には、「タイトル」という表題が印刷されている様子が示されている。なお、背表紙印刷領域208は、背幅d(用紙束厚d)と、製本物小口方向の長さである製本物小口方向長eとにより特徴付けられる。なお、印刷される文字のフォントの種類や印字色などは任意とすることができる。
【0042】
図3(E)は、背表紙印刷領域208の印刷様態を示す。背表紙印刷領域208には、文字が割付けられ、表題としての印字文字列が割付けられている。図3(E)に示されるように、印字される文字には、1文字あたりが占める縦横幅aで特徴付けられる単位割付領域210が割当てられ、単位割付領域210内の文字印刷領域212に、実際のフォントサイズbの文字が印字されている。また、印字文字列の文字数n個の単位割付領域210が、製本物小口方向に整列して並べられ、印字文字列長cで特徴づけられる文字列割付領域が画定されている。なお、上述では、単位割付領域210は、一辺が縦横幅aの正方形として参照しているが、他の実施形態では、長方形の単位割付領域210とし、異なった文字ピッチまたは行間ピッチを採用することもできる。
【0043】
画像処理装置10の表紙印刷最適化処理部60は、図3(E)に示される背表紙に印字される文字列(印字データ)について、背表紙印刷領域208の背幅d、製本物小口方向長e、文字数nに応じて、フォントサイズbや縦横幅aや行数rなどの印字属性を決定して割付け、表紙出力データの最適化処理を実行する。また表紙印刷最適化処理部60は、背表紙印刷領域208に印刷される画像データについて、背表紙印刷領域208の背幅d、製本物小口方向長e、画像サイズLに応じて、画像の変倍率sまたは解像度などの画像属性を決定し、表紙出力データの最適化処理を実行する。この際には、変倍率sが適用された画像が占める領域が割付領域となる。以下、画像処理装置10の表紙印刷最適化処理部60が行う処理について説明する。
【0044】
図4は、画像処理装置10が実行する表紙データの最適化処理の一実施形態を示すフローチャートである。図4に示した制御は、ステップS100で、例えば、製本物200の中身となる中紙用紙204の印刷が完了したことを受けて開始される。ステップS101では、表紙印刷最適化処理部60は、背表紙印刷のための印字データや画像データを含む表紙データを取得する。そして、ステップS102で、表紙印刷最適化処理部60は、例えば、製本装置12の用紙束厚検出部52から用紙束厚(背幅dに対応)を取得する。
【0045】
表紙データと背幅dとを取得した表紙印刷最適化処理部60は、ステップS103で、用紙束dに応じて、オモテ表紙と、背表紙と、ウラ表紙との印刷領域の位置および割当領域を画定し、ステップS104で、オモテ表紙とウラ表紙の印刷領域それぞれに、対応する表紙データを割付ける。ステップS105では、表紙印刷最適化処理部60は、背幅dが、所与の閾値以上にあるかの判断を行い、ステップS105の判断で所与の閾値以上であると判断された場合(yes)は、ステップS106へ分岐させる。
【0046】
ステップS106では、背表紙の割付属性の最適化を行うための処理ルーチンが呼出され、処理ルーチンにより、印字データに関しては印字属性の最適化処理が行われ、画像データに関しては画像属性の最適化処理が行われ、背表紙印刷領域208に背表紙データが割付けされる。処理ルーチンの結果を受けた表紙印刷最適化処理部60は、ステップS107で、最適化済の表紙出力データとして、画像形成部62に印刷指令を発行する。
【0047】
一方、ステップS105の判断で所定の閾値以上でないと判断された場合(no)は、表紙印刷最適化処理部60は、ステップS108へ処理を分岐し、ステップS108で背表紙の印刷が解除され、ステップS107で、背表紙印刷領域へ背表紙データを割付けないまま、最適化済の表紙出力データとして、画像形成部62に印刷指令を発行する。
【0048】
なお、図4に示した処理では、ステップS101とステップS102の処理の前後は問われず、ステップS104の処理は、ステップS103の処理以降、任意のタイミングで実行させる制御とすることもできる。
【0049】
背幅dが所与の閾値未満の場合に、割付属性の最適化処理を実行せずに背表紙印刷を解除する処理によって、背表紙印刷が行われると好ましくない場合の余分な処理が省かれ、また背表紙印刷領域をはみ出して印刷されたり、視認性の低い過小なフォントサイズの文字や画像サイズの画像が印刷されたりすることによる表紙の品質の低下を好適に防止することを可能とする。なお、ステップS105で使用される所与の閾値は、オペレータまたはベンダにより、予め設定されたものを使用することができ、割付属性を決定するための判断条件として使用される。
【0050】
なお、背表紙に印刷される文字列や画像を含む背表紙データは、例えば、図2(A)に示した実施形態では、画像処理装置10が備える操作パネルなどのユーザ・インタフェースによる、オペレータによる入力または、予め登録された選択肢からの選択を受けて、生成されたものとすることができるが、特に限定されるものではない。例えば、図2(B)に示した実施形態では、画像処理装置10が備える、ドキュメント作成ソフトウェアなどのアプリケーション64によって生成されてもよい。また、画像データは、出力ドライバ66により提供されるユーザ・インタフェースを介した、オペレータからの指示を受けて生成された、スタンプ等の印刷命令であってもよい。また、製本物小口方向長eは、例えば、表紙データの印刷設定データとして与えられることができる。
【0051】
以下、図4に示した実施形態における、ステップS106の処理で呼出される処理ルーチンについて説明する。図5は、背表紙印刷領域208に印刷するための印字データを対象とした、印字属性の最適化処理の一実施形態を示すフローチャートを示す。図5に示した制御は、ステップS200で処理を開始し、ステップS201で、例えば、予め用意された、背幅とデフォルト値としてのフォントサイズとを対応づけるテーブルなどをルックアップして、フォントサイズのデフォルト値を取得し、一時変数b_tmpとする。
【0052】
ステップS202では、印字データに含まれる文字数nを取得し、ステップS203では、フォントサイズb_tmpに対応する縦横幅a_tmpを、例えば、フォントサイズと縦横幅とを対応づけるテーブルをルックアップして取得し、縦横幅a_tmpと文字数nとを乗算することによって、印字文字列長cを算出する。
【0053】
ステップS204では、算出した印字文字列長cが、製本物小口方向長e未満であるか否かを判断し、印字文字列長cが製本物小口方向長e以上である場合(no)には、処理をステップS207へ分岐させ、ステップS207でフォントサイズb_tmpを一段階小さくし、再びステップS203へループさせる。
【0054】
一方、ステップS204の判断で、印字文字列長cが製本物小口方向長e未満であると判断された場合(yes)は、処理をステップS205へ分岐させ、ステップS205で、b_tmpの値をフォントサイズとし、背表紙印刷領域へ印字データを割付け、ステップS206で処理ルーチンを終了させ、元の処理に戻される。
【0055】
なお、上述のステップS203、ステップS204、ステップS207の処理の代わりに、例えば、製本物小口長cを文字数nで除算した値を最大縦横幅値として求めた上で、取得したフォントサイズb_tmpに対応する縦横幅a_tmpが、最大縦横幅値未満であるか否かを判断し、縦横幅a_tmpが最大縦横幅値以上である場合に、最大縦横幅値未満の縦横幅を有するフォントサイズを、フォントサイズと縦横幅とを対応づけるテーブルから検索する制御としても良い。以下、本処理ルーチンの効果を、わかり易くするために、表紙の印刷様態を図示して説明する。
【0056】
図9は、印字属性の最適化処理によって生成された表紙出力データによる表紙印刷の様態を示す図である。図9(A)は、図5に示した処理ルーチンにより印字属性の最適化処理が施された表紙の様態を示す。図9(A)に示すように、未最適化の表紙用紙202bにおいては、表題の印字文字列長cが長すぎて背表紙印刷領域208bをはみ出して印刷されているが、最適化済の表紙用紙202aにおいては、背表紙印刷領域208aに印字文字列長cが収まるように、フォントサイズおよび縦横幅が調整され、品質の高い表紙が提供される。
【0057】
図5に示した処理ルーチンの背幅dに応じたデフォルトのフォントサイズbを取得する処理により、割付けた際に印字データにより画定される割付領域が、背表紙印刷領域の背幅方向に収まるような割付属性の範囲が与えられ、背表紙の背幅以上のフォントサイズが設定されてしまい、背表紙印刷領域208をはみ出して文字列が印字されたり、印字が欠けたりすることによる表紙の品質低下を、好適に防止することを可能としている。
【0058】
また、与えられたフォントサイズでの印字文字列長cが、製本物小口方向長e以上となるかの判断を行い、印字文字列長cが製本物小口方向長e以上となる場合には、印字文字列長cが製本物小口方向長e未満となるフォントサイズを導出することにより、割付領域が背表紙印刷領域の製本物小口方向に収まる条件に合致した割付属性であるかの検証がなされ、背表紙印刷領域208をはみ出して文字列が背表紙に印字されたり、印字が欠けたりすることによる、表紙の品質低下を好適に防止することを可能としている。
【0059】
図6は、背幅とフォントサイズのデフォルト値とを対応づけるテーブル、およびフォントサイズと縦横幅とを対応付けるテーブルの実施形態を示す。図6(A)は、背幅とフォントサイズのデフォルト値とを対応づけるテーブル220のデータ構造の実施形態を示す。図に示したテーブル220は、背幅の範囲をエントリするフィールド220aと、フォントサイズbをエントリするフィールド220bとを含み構成され、背幅の範囲と、フォントサイズbとを対応づける。テーブル220をルックアップすることのより、背幅dが与えられたとき、背幅dが合致する背幅の範囲をもつエントリが検索され、対応するフォントサイズbを導出することを可能とする。
【0060】
図6(B)は、フォントサイズbと縦横幅aとを対応づけるテーブル222のデータ構造の実施形態を示す。図に示したテーブル222は、項目フィールド222aと、フォントサイズbをエントリするフィールド222bと、縦横幅aをエントリするフィールド222cとを含み構成され、フォントサイズbと、縦横幅aとを対応づける。また、テーブル222は、図5に示す処理におけるステップS207の処理に使用することができ、項目フィールド222aの値を繰り上げることにより、一段階小さなフォントサイズが検索される。
【0061】
なお、図6に示すテーブル220を用いて、取得した背幅dからフォントサイズbをマップすることもできるが、一次関数などの所定の関数を用いて背幅dからフォントサイズbを導出こともできる。同じく、一次関数などの所定の関数を用いて、フォントサイズbから、縦横幅aを導出こともできる。
【0062】
図5に示した印字属性の最適化処理についての説明では、ステップS201の処理は、取得した背幅dからデフォルト値としてのフォントサイズbを導出する処理として参照したが、デフォルト値としてのフォントサイズbは、画像処理装置10の操作パネルなどを介して、オペレータからの指示を反映させたものとすることもできる。
【0063】
図7は、フォントサイズbを指示するための、画像処理装置10の操作パネルなどに表示されるGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)およびGUIの入力値を使用する場合の処理フローの実施形態を示す。図7(A)は、画像処理装置10の操作パネルなどに表示されるGUI300の実施形態を示す。図7(A)に示された実施形態では、GUI300は、フォントサイズを入力するための入力ボックス300aと、入力したフォントサイズの設定を決定するためのボタン300bと、キャンセルするためのボタン300cとを含み構成されている。
【0064】
図7(B)は、図7(A)に示したGUIにおいて、入力したフォントサイズb_inを用いて最適化処理を行う際に、図5の処理フローのステップS201に代替される処理のフローチャートである。ステップS300で処理が開始され、ステップS301で、入力したフォントサイズの値b_inが取得される。ステップS302では、入力フォントサイズb_inに対応する縦横幅a_inが、背幅d未満であるか否かの判断が行われる。
【0065】
ステップS302の判断で、背幅d未満であると判断された場合(yes)は、ステップS303で、入力フォントサイズb_inをフォントサイズb_tmpのデフォルト値として使用し、本処理を終了させ、図5に示した処理ルーチンにおけるステップS202処理に進む。一方、ステップS302の判断で、背幅d以上であると判断された場合(no)は、ステップS305で、入力フォントサイズb_inの値を、一段階小さくし、再びステップS302の判断へループさせる。
【0066】
図7(A)に示したGUIを提供可能とする構成によって、オペレータの意思を反映させた、表紙印刷の最適化処理を実行可能とする。また、図7(B)に示した処理フローにより、オペレータによる入力ミスが有った場合であっても、背幅dに応じた適切なフォントサイズのデフォルト値に修正されて処理が進められるため、表紙印刷の品質低下を好適に防止することが可能となる。
【0067】
図8は、背表紙印刷領域208に印刷される印字データを対象とした、印字属性の最適化処理の他の実施形態を示すフローチャートを示す。図8に示した制御は、ステップS400で処理を開始し、ステップS401で、例えば、予め用意された、背幅とデフォルトのフォントサイズとを対応づけるテーブルなどをルックアップ、またはオペレータによる指示を受け、フォントサイズのデフォルト値を取得し、b_tmpに代入する。
【0068】
ステップS402では、印字データの文字数nを取得し、ステップS403では、フォントサイズb_tmpに対応する縦横幅a_tmpを、例えば、フォントサイズと縦横幅とを対応づけるテーブルをルックアップして取得し、縦横幅a_tmpと文字数nとを乗算した値を印字文字列長cとして取得する。
【0069】
ステップS404では、取得した印字文字列長cが、製本物小口方向長e未満であるか否かを判断し、印字文字列長cが製本物小口方向長e以上である場合(no)には、ステップS407へ分岐させる。ステップS407では、背幅dと、フォントサイズb_tmpとから、例えば、背幅dの、フォントサイズb_tmpに対応する縦横幅a_tmpによる商として求められる可能行数rを導出する。そして、ステップS408では、文字数nが、一行当たりの最大文字数qに可能行数rを乗算した値より小さくなるか否かを判断し、小さくなると判断された場合(yes)には、ステップS409で、可能行数r段への改行処理を実行し、ステップS405で、改行処理済の印字データを用いて、背表紙印刷領域へ印字データを割付け、ステップS406で処理ルーチンを終了させ、元の処理に戻される。
【0070】
一方、ステップS408の判断で、文字数nが、一行当たりの最大文字数qに可能行数rを乗算した値以上となると判断された場合(no)には、ステップS410へ分岐し、印字データの割付処理が解除され、ステップS406で処理ルーチンを終了させ、元の処理に制御が戻され、背表紙印刷領域208へ印字データを割付けないまま、最適化済の表紙出力データとして、画像形成部62に印刷指令が発行されることとなる。
【0071】
また、ステップS404の判断で、印字文字列長cが製本物小口方向長e未満であると判断された場合(yes)は、処理をステップS405へ分岐させ、ステップS405で、取得したb_tmpの値を印字データのフォントサイズとし、改行処理を行わないで背表紙印刷領域208へ印字データを割付け、ステップS406で処理ルーチンを終了させ、元の処理に戻される。
【0072】
なお、上述の一行当たりの最大文字数(一行文字数)qは、例えば、製本物小口方向長eの、フォントサイズb_tmpに応じた縦横幅a_tmpによる商とすることができる。また、ステップS409における改行処理は、一行文字数qの位置で、順次改行させることができるが、特に限定されるものではない。例えば、予め用意しておく辞書データや、禁則処理用の規則データを使用して、一行文字列qを越えない範囲の好ましい位置で改行させることもできる。
【0073】
図9(B)は、図8に示した処理ルーチンにより印字属性の最適化処理が施された表紙の様態を示す。図9(B)に示すように、未最適化の表紙用紙202bにおいては、表題の印字文字列長cが長すぎて背表紙印刷領域208bをはみ出して印字されているが、最適化済の表紙用紙202aにおいては、背表紙印刷領域208aには、改行処理され製本物小口方向長e以内に収まる様に印字され、品質の高い表紙が提供される。
【0074】
図8に示した処理ルーチンにおいて、取得したフォントサイズでの可能行数を算出し、改行処理が可能か否かを判断し可能であれば改行処理を行う制御により、割付領域が背表紙印刷領域の背幅方向に収まる条件に合致した割付属性であるかの検証がなされる。これにより、背表紙印刷領域208をはみ出して文字列が背表紙に印字されたり、文字列が欠けて印字されたりすることによる表紙の品質低下を、好適に防止することを可能としている。またこの際は、割付領域の最大化が計られ、製本小口方向長に収めることを優先してフォントサイズが決定されることにより、過小なフォントサイズが印刷され、視認性の悪化となる表紙の品質低下が好適に防止されることとなる。
【0075】
図10は、背表紙印刷領域208に印刷される印字データを対象とした、印字属性の最適化処理のさらに他の実施形態を示すフローチャートを示す。図10に示した制御は、ステップS500で処理を開始し、ステップS501で、印字データの文字数nを取得する。ステップS502とステップS506ではループ処理を行い、ステップS503からステップS505の処理を、k=1を初期値、増分を1として、自然数Nまでループさせる制御となる。なお、Nは、例えばオペレータにより設定される、許容行数とすればよい。
【0076】
ループ制御中、ステップS503では、それぞれのループ変数kについて、背幅dを、行数としてのループ変数kで除算ことにより、許容される背幅方向の最大縦横幅a_dmax(k)を算出する。ステップS504では、製本物小口方向長eを、文字数nを行数kで略均等に分配した際の一行当たり最大文字数Q(k)で除算することにより、許容される小口方向の最大縦横幅a_emax(k)を算出する。ステップS505では、それぞれのループ変数kについて、背幅方向の最大縦横幅a_dmax(k)と小口方向の最大縦横幅a_emax(k)とを比較して、小さい方の値をa_arr(k)として代入する。
【0077】
ステップS503からステップS505の処理を、をk=Nになるまで繰り返した後、処理はステップS507へ進む。ステップS507では、配列a_arr(k)の値が最大となるkを求め、その値を可能行数rとし、また、その最大となるa_arr(r)の縦横幅に応じたフォントサイズを求め、b_tmpとする。フォントサイズは、例えば、所定の一次関数や、テーブル222からa_arr(r)の値以下であって、最大となる縦横幅に対応するフォントサイズを検索して、求めることができる。
【0078】
ステップS508では、得られたフォントサイズb_tmpと、可能行数rとを用いて、フォントサイズの設定および改行処理を実行して、ステップS509で、背表紙印刷領域へ印字データの割付けを実行して、ステップS510で処理ルーチンを終了させ、元の処理に戻される。
【0079】
ステップS502からステップS506のループ処理により、各ループ変数kについて、行数kとした改行処理を実行した際に許容される最大縦横幅a_arr(k)が算出され、ステップS507で、a_arr(k)が最大となるkを検索することによって、改行数kと縦横幅a_arr(k)の組み合わせの中から、縦横幅が最も大きくなるフォントサイズ、が導出され、割付領域の最大化が計られこととなる。これにより、最も視認性の高くなるように、フォントサイズおよび行数が自動的に設定され、背表紙印刷に割付けられる印字データの印字属性が最適化される。
【0080】
図10に示した処理ルーチンにより、例えば、印字文字列長cを製本小口長e以下とするために、過剰にフォントサイズが小さく設定されることにより印字の視認性が低下することを、好適に防止することができる。
【0081】
以上、印字データに対する、印字属性としてのフォントサイズおよび行数の最適化処理について説明してきた。しかしながら、最適化処理の対象となる印字属性は、それらに限定されるものではない。最適化される他の印字属性として、例えば、文字ピッチ、行間ピッチなどを採用することもできる。半角英数字のようなプロポーショナルされることが好ましいフォントでは、出力ドライバまたは画像形成部62が備えるフォント情報を検索して、印字文字列長cを求めることもできる。これらの場合においても、与えられた印字属性による文字列印刷領域について、背幅方向および製本物小口方向について、背表紙印刷領域208内に収まる否かの判断を行い、収まらないと判断された場合には、印字属性を変更する制御として、印字データの割付属性が最適化される。
【0082】
以下、図4に示した実施形態におけるステップS106の処理で呼出される、画像データを対象として実行される処理ルーチンについて説明する。図11は、背表紙印刷領域208に印刷される画像データを対象とした、画像属性の最適化処理の一実施形態を示すフローチャートを示す。図11に示した制御は、ステップS600で処理を開始し、ステップS601で、例えば、予め用意された、背幅dと画像サイズLとによって画像の変倍率sに対応付ける配列データやルックアップテーブルなどをルックアップして、背幅dに応じた画像の変倍率sを取得する。
【0083】
ステップS602では、取得した変倍率sを使用して、画像データの元画像を拡大・縮小加工し、変倍率sを画像属性として、背表紙印刷領域208へ画像データを割付け、ステップS603で処理ルーチンを終了させ、元の処理に戻される。
【0084】
図12は、背幅dと画像サイズLとを用いて、画像の変倍率sに対応付けるルックアップテーブル230のデータ構造の実施形態を示す。図に示したルックアップテーブル230は、背幅dの範囲がエントリされるカラム230aと、画像サイズLの範囲がエントリされるロウ230bを含み、さらに、カラム230aとロウ230bのエントリにより特定される、複数のセル230cを含み構成されている。
【0085】
ルックアップテーブル230をルックアップすることのより、背幅dと画像サイズLが与えられた場合に、背幅dが合致するエントリおよび画像サイズLが合致するエントリにより特定されるセル230cから、変倍率s(図では%表示)が取得される。
【0086】
なお、図12に示すルックアップテーブル230を用いて、背幅dと画像サイズLとから変倍率sをマップすることもできるが、背幅dと画像サイズLとを変数とした所定の関数を用いて、変倍率sを算出することもできる。以下、画像属性を対象とした処理ルーチンの効果を、わかり易くするために、表紙の印刷様態を図示して説明する。
【0087】
図9(C)は、図12に示した処理ルーチンにより画像属性の最適化処理が施された表紙の様態を示す。図9(C)に示すように、未最適化の表紙202bにおいては、スタンプされた画像のサイズが大きすぎて背表紙印刷領域208bをはみ出して印刷されてしまっているが、最適化済の表紙用紙202aにおいては、背表紙印刷領域208aに収まる様に、変倍率sが調整され、品質の高い表紙が提供される。
【0088】
なお、上述では、画像処理装置10のHDD22などに予め格納されたスタンプ画像のような、所定のフォーマット、例えば、画像サイズがL×Lで規定されたりする場合を想定した実施形態について説明してきたが、画像属性の最適化処理の制御は、特に限定されるものではない。例えば、背幅dと、背幅方向の画像サイズL_dとから許容される背幅方向変倍率s_dを求め、製本物小口方向長eと、小口方向の画像サイズL_eとから許容される小口方向変倍率s_eを求め、背幅方向変倍率s_dと小口方向変倍率s_eとを比較して、小さい方の変倍率を採用して、画像データを拡大または縮小加工させて、背表紙印刷領域へ画像データを割付けて、処理ルーチンを終了させる制御とすることもできる。
【0089】
また、対象となる画像データとしては、ビットマップ形式(ラスタ形式)であっても、ベクタ形式であってもよい。また、レイアウト済の印字データを画像データとして扱うこともできる。さらに、拡大縮小加工は、縦横比を固定したものに限定されず、縦横比非固定の拡大縮小加工としてもよい。また、製本物小口方向を画像サイズの長辺となるように、変倍率sを求める処理前に、回転処理などを行ってもよい。
【0090】
図11に示した処理ルーチンにおいて、背幅dと画像サイズLとに応じた変倍率sを取得する処理により、割付領域が背表紙印刷領域の背幅方向に収まる条件に合致した割付属性であるかの検証がなされ、背表紙の背幅以上の印刷画像サイズが設定されてしまい、背表紙印刷領域208をはみ出して画像印刷されたり、欠けて画像印刷されたりすることによる表紙の品質低下を、好適に防止することを可能としている。
【0091】
以上、説明したように、本発明の実施形態によれば、中身となる印刷物の背幅(用紙束厚)によって変化する背表紙印刷領域の背幅に対応して、印字文字のフォントサイズ、印字文字列の行数、画像のサイズや解像度などの背表紙データの割付属性を最適化し、適切に設定した表紙出力データを生成し、高品質な表紙を提供することを可能とする画像処理装置、製本システムおよびプログラムが提供される。
【0092】
また、本発明の実施形態での上記機能は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)、などのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向ブログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD、SDメモリ、MOなど装置可読な記録媒体に格納して頒布することができる。
【0093】
これまで本発明の実施形態を説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】画像処理装置と製本装置とから構成される製本システムの実施形態を示した概略図。
【図2】画像処理装置と製本装置とを含み構成される製本システムの実施形態を示した機能構成図。
【図3】製本システムにより印刷・製本される製本物の実施形態を示す概略図。
【図4】画像処理装置が実行する表紙データの最適化処理の一実施形態を示すフローチャート。
【図5】背表紙印刷領域に印刷するための印字データを対象とした、印字属性の最適化処理の一実施形態を示すフローチャート。
【図6】背幅とフォントサイズのデフォルト値とを対応づけるテーブル、およびフォントサイズと縦横幅とを対応付けるテーブルの実施形態を示す図。
【図7】フォントサイズを指示するための、画像処理装置が提供するGUIおよびGUIの入力値を使用する場合の処理フローの実施形態を示す。
【図8】背表紙印刷領域に印刷される印字データを対象とした、印字属性の最適化処理の他の実施形態を示すフローチャート。
【図9】印字属性の最適化処理によって生成された表紙出力データによる表紙印刷の様態を示す図。
【図10】背表紙印刷領域に印刷される印字データを対象とした、印字属性の最適化処理のさらに他の実施形態を示すフローチャート。
【図11】背表紙印刷領域に印刷される画像データを対象とした、画像属性の最適化処理の一実施形態を示すフローチャート。
【図12】背幅と画像サイズとを用いて、画像の変倍率に対応付けるルックアップテーブルのデータ構造の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0095】
10…画像処理装置、12…製本装置、14…画像形成装置、20…メモリ、22…HDD、24…CPU、26…エンジン、28…ネットワーク・インタフェース(I/F)、30…汎用オペレーティング・システム(OS)、32…エンジン制御部、32〜38…各種制御部、34…出力画像生成部、36…オペレーション制御部、38…ネットワーク制御部、40…コピー・アプリケーション、42…プリンタ・アプリケーション、44…アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)、46…ハードウェア・リソース層、48…サービス・モジュール層、50…アプリケーション・モジュール層、52…用紙束厚検出部、54…くるみ製本処理部、60…表紙印刷最適化処理部、62…画像形成部、64…アプリケーション、66…出力ドライバ、68…UI提供部、100…製本システム、200…製本物、202…表紙用紙、204…中紙用紙、206…裁断線、208…背表紙印刷領域、210…単位割付領域、212…文字印刷領域、220…テーブル、220a、220b…フィールド、222…テーブル、222a〜222c…フィールド、230…ルックアップテーブル、230a…カラム、230b…ロウ、230c…セル、300…グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の表紙を印刷するための出力データを、画像形成手段に伝送する画像処理装置であって、前記画像処理装置は、
前記印刷物の背幅を取得し、前記取得した背幅に応じて背表紙印刷領域を画定し、背表紙に印刷するための背表紙データを前記背表紙印刷領域に割付けて、前記出力データを生成する割付処理手段を含み、
前記割付処理手段は、前記背表紙データを割付けた場合に画定される割付領域が前記背表紙印刷領域に収まることを条件として与えられる割付属性を使用して割付処理を行う、
画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理装置は、使用する前記割付属性を決定するための判断条件を格納する記憶手段を含み、前記割付処理手段は、前記背表紙印刷領域と、前記背表紙データとから、前記判断条件を参照して、使用する前記割付属性を決定する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記割付処理手段は、最大の前記割付領域を与えることを条件として、使用する前記割付属性を決定する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理装置は、前記割付属性の指定値を入力するインタフェース提供手段を含み、前記割付処理手段は、前記指定値を使用して、使用する前記割付属性を決定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記割付属性は、印字フォントサイズ、印字文字ピッチ、印字行数、印字行間ピッチ、画像変倍率、画像縦横比、解像度の少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記割付処理手段は、前記印刷物の背幅を検知する手段を含む製本手段と通信し、前記製本手段から、前記背表紙印刷領域を画定するための前記背幅を取得する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
印刷物を製本するための製本システムであって、前記製本システムは、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって伝送される、表紙を印刷するための出力データを取得して、前記表紙を印刷出力する画像形成手段と、
前記印刷出力された表紙を使用して、前記印刷物の製本処理を実行する製本手段と
を含む、製本システム。
【請求項8】
表紙印刷に使用される出力データを画像形成手段に伝送する装置実行可能なプログラムであって、前記プログラムは、画像処理装置に対し、
前記印刷物の背幅を取得して記憶装置に格納する背幅取得手段と、
前記背幅に応じて背表紙印刷領域を画定する画定手段と、
背表紙に印刷するための背表紙データを割付けた場合に画定される割付領域が前記背表紙印刷領域に収まることを条件として、割付属性を決定する決定手段と、
前記割付属性を使用して、前記背表紙データを前記背表紙印刷領域に割付けて、前記出力データを生成する生成手段と
を実現する、装置実行可能なプログラム。
【請求項9】
前記プログラムは、前記決定手段に対し、前記背表紙印刷領域と、前記背表紙データとから、使用する前記割付属性を決定するための判断条件を格納した記憶手段を参照し、使用する前記割付属性の決定を実行させる、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記プログラムは、さらに前記決定手段に対し、最大の前記割付領域を与えることを条件として、使用する前記割付属性を決定させる、請求項8または9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記プログラムは、前記割付属性の指定値を入力するためのインタフェースを提供するインタフェース提供手段をさらに前記画像処理装置に実現し、前記決定手段に対し、前記インタフェースから取得した前記指定値を使用して、使用する前記割付属性を決定する、請求項8〜10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記プログラムは、前記印刷物の背幅を検知する製本手段と通信する通信手段を前記画像処理装置に実現し、前記背幅取得手段は、前記通信手段から、前記製本手段が検知した前記印刷物の背幅を取得する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
前記プログラムは、プリンタ・ドライバである、請求項8〜12のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項14】
前記プログラムは、画像形成装置のプリンタ・アプリケーションを構成する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−165288(P2008−165288A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350946(P2006−350946)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】