説明

画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラム

【課題】観察対象の動きの容易かつ非侵襲に観察することができるようにする。
【解決手段】観察対象である培養心筋細胞の動画像から、その培養心筋細胞の動きを、観察領域を複数に分割した部分領域毎に検出し、検出された部分領域毎の動きについて、その動き量の絶対値を算出し、算出された、部分領域毎の動き量絶対値およびその位置を表すマップを作成する。本開示は画像処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラムに関し、特に、拍動の伝搬を容易かつ非侵襲に観察することができるようにした画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療の分野においては、細胞を培養して製造した培養細胞を利用し、事故や病気などにより失われた体の細胞、組織、器官などの再生、また機能の回復を図るということが行われている。このような培養細胞として製造できる細胞組織は多岐にわたるが、その中の1つに心筋細胞があり、心臓の治療に用いられる。この培養心筋細胞はそれ自体が拍動に相当する動きをする。そこで、培養心筋細胞の製造段階においては、例えば上記の動きが良好かどうかについての品質評価を行うことが必要になってくる。
【0003】
このような培養心筋細胞の品質評価を行うにあたり、例えば現状においては、目視による観察が行われている。また、培養心筋細胞に電極を刺して電位を測定するということも行われている。しかし、目視による観察では、観察者の主観によるところが大きく、客観的で的確な評価結果を得ることが難しい。また、電位を測定する場合においては培養心筋細胞に電極が接触するために非侵襲ではないという問題がある。また、この電位による測定に基づいて定量化できる情報は例えば拍動時間程度に限られる。さらに、測定対象が電極上に制限される。
【0004】
そこで、従来技術として、心筋細胞を撮影して得られる撮像画面中に測定点を設定し、この測定点の輝度を自動計測して、その計測値から心筋細胞の変形周期を測定しようとする構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、培養心筋細胞の位相差観察動画の解析によって求めた様々な領域の拍動は、培養日数依存的に協同的な拍動を示すが、様々な薬剤の投与によって変動を示す。このような変動を何らかの方法によって検出することで、創薬の際の薬剤毒性や効果等を事前に評価することが可能となり、近年注目されている。
【0006】
従来では、例えば、培養皿の底に配置した電極によって細胞の外場電位を検出し細胞の膜電位変化によって細胞の拍動挙動を捉える方法があった。また、細胞内にカルシウムに結合して発光する蛍光色素を入れ込み、細胞の興奮(活動電位)によって変動するカルシウム濃度を検出することで、細胞の拍動リズムを検出し、また、細胞の情報伝搬パターンを評価する方法もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−233392号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、培養皿に電極を配置し、電位変化を検出する方法の場合、特定の培養皿が必要であった。また、拍動の伝搬検出は培養皿上に設置する電極の密度に依存するので、既存の装置の密度では複雑な伝搬パターンの検出が困難であった。また、蛍光色素を入れ込む方法の場合、蛍光色素が高価であり、蛍光色素を入れ込む作業が煩雑で時間を要し、さらに退色の恐れもあった。さらに、これらの手法では、観察対象に対して電圧を印加したり、蛍光色素を入れ込んだりするので、観察対象に対して影響を及ぼす可能性があった。すなわち、これらの手法では、拍動の伝搬の観察を容易かつ非侵襲に行うことができない恐れがあった。
【0009】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、拍動の伝搬を容易かつ非侵襲でに観察することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部と、前記動き検出部により検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部と、前記動き量算出部により算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部とを備える画像処理装置である。
【0011】
前記動き検出部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記動きを検出し、前記マップ作成部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記マップを作成することができる。
【0012】
前記マップ作成部により作成された各マップ間の動き動き量の分布を評価する動き評価部をさらに備えることができる。
【0013】
前記観察対象は心筋細胞であるようにすることができる。
【0014】
前記動き評価部は、前記拍動伝搬の方向、速度、回転、停止、およびそれらの経時変化の内、少なくともいずれか1つを評価することができる。
【0015】
前記動き評価部は、投薬後の前記拍動伝搬の様子を評価することができる。
【0016】
前記動き評価部は、拍動しない領域を評価することができる。
【0017】
前記動き評価部は、拍動伝搬速度の変化を評価することができる。
【0018】
前記動き評価部は、前記マップ毎の動き量の重心の軌跡を評価することができる。
【0019】
前記動き評価部は、前記拍動伝搬の速度および方向をヒストグラムにより評価することができる。
【0020】
前記動き評価部による評価の結果を表示する表示部をさらに備えることができる。
【0021】
前記動き評価部による評価の結果を出力する出力部をさらに備えることができる。
【0022】
前記マップの画像を表示する表示部をさらに備えることができる。
【0023】
前記マップのデータを出力する出力部をさらに備えることができる。
【0024】
本開示の一側面は、また、画像処理装置の画像処理方法であって、動き検出部が、観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出し、動き量算出部が、検出された各動きの動き量を算出し、マップ作成部が、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成する画像処理方法である。
【0025】
本開示の一側面は、さらに、コンピュータを、観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0026】
本開示の一側面は、また、コンピュータを、観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部として機能させるためのプログラムである。
【0027】
本開示の一側面においては、観察対象の動きが観察領域の部分領域毎に検出され、検出された各動きの動き量が算出され、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップが作成される。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、画像を処理することができる。特に、拍動の伝搬を容易かつ非侵襲に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】動きの協同性を説明する図である。
【図2】動きの協同性を説明する図である。
【図3】薬剤評価装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図4】薬剤投与による拍動の伝搬への影響の様子の例を画像化した図である。
【図5】薬剤投与による拍動の伝搬への影響の様子の他の例を画像化した図である。
【図6】薬剤投与による拍動の伝搬への影響の様子の、さらに他の例を画像化した図である。
【図7】評価指標データ生成部の主な構成例を示すブロック図である。
【図8】評価対象画像データの構成例を説明する図である。
【図9】動き検出部の主な構成例を示すブロック図である。
【図10】フレーム画像データのブロック分割の例を説明する図である。
【図11】動き検出データの構成例を説明する図である。
【図12】評価部の主な構成例を示すブロック図である。
【図13】動き評価部の主な構成例を示すブロック図である。
【図14】動き量重心評価の様子の例を説明する図である。
【図15】相関ヒストグラム評価の様子の例を説明する図である。
【図16】相関ヒストグラム評価の様子の例を説明する、図15に続く図である。
【図17】相関ヒストグラム評価の様子の例を説明する、図16に続く図である。
【図18】評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図19】評価指標データ生成処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図20】影響評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図21】動き評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図22】パーソナルコンピュータの主な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(薬剤評価装置)
2.第2の実施の形態(パーソナルコンピュータ)
【0031】
<1.第1の実施の形態>
[培養心筋細胞]
例えば再生医療においては、生体より採取された細胞を培養して製造される細胞組織である培養細胞を利用して各種の人体の組織、器官などを治療することが行われる。図1Aに示される培養細胞1は、心筋細胞を培養し、成育させたものである。心筋細胞を培養した培養細胞である培養心筋細胞は、例えば、心臓の治療等に利用される可能性がある。また、創薬における心臓への毒性評価にも利用される。
【0032】
生体内において、心筋細胞は、常時収縮と弛緩を繰り返しながら拍動する。したがって、培養心筋細胞である培養細胞1も、その全体が収縮と弛緩を繰り返すように、例えば図1Bに示される動きベクトル2のように、各部分の細胞が所定の方向に運動する。実際には、心筋細胞は、自律的に拍動する部分と、周囲の拍動に依存して拍動する部分とが存在する。つまり、部位によっては、培養細胞1が自律的に拍動しない場合も考えられる。このような場合、培養細胞1に対して電極を用いて外部から電圧を周期的に印加することにより、培養細胞1を拍動させることができる。このように外部からの電圧印加によってペースメークされた培養細胞1の拍動は、自律的に拍動する場合と基本的に同様である。つまり、培養細胞1が自律的に拍動する場合も、電圧印加により拍動する場合も、本技術を用いて同様に観察することができる。
【0033】
図1Cは、培養細胞1の観察領域を複数の部分領域(ブロック)に分割し、ブロック毎に動き量(動きベクトル)を検出し、その時間的推移を観察したものである。例えば、図1Cのグラフ4−1は、ブロック3−1の動き量の時間的推移を示すものであり、グラフ4−2は、ブロック3−2の動き量の時間的推移を示すものである。
【0034】
図2Aのグラフ5−1乃至グラフ5―3は、グラフ4−1に示されるブロック3−1の細胞の動き量と、グラフ4−2に示されるブロック3−2の細胞の動き量との関係の時間的推移を示すものである。
【0035】
生体から採取された当初、ブロック3−1に存在する細胞の動き量と、ブロック3−2に存在する細胞の動き量は、グラフ5−1に示されるように、互いの相関性は低いものである。しかしながら、時間が経過し、培養が進むと、グラフ5−2に示されるように徐々に両者の相関性が強くなり、さらに時間が経過すると、グラフ5―3に示されるように、両者の相関性がとても強くなる。
【0036】
つまり、図2Bに示されるグラフのように、成育した培養細胞1の複数の位置の間の動き量の相関係数は、大きな値に安定する。つまり、各領域の細胞の動きの協同性が強くなる。理想的には、各細胞の動作が互いに関連するようになり、培養細胞1全体が1つの生体組織として拍動するようになる。
【0037】
成育した培養細胞1は、複数の細胞により構成されるが、その細胞間ではギャップジャンクションを介して信号の伝達が行われる。これにより細胞間で動きに相関性が生じ、培養細胞1全体が1つの生体組織として拍動するようになる。このように生育した培養細胞1においては、拍動が細胞間を伝播するようになる。
【0038】
このように高い相関性(協同性)を有し、拍動が伝搬する培養細胞1jは、薬剤の評価に利用することができる。例えば、この培養細胞1に薬剤を投与し、その前後の動きを観察することにより、培養細胞1の動きの変化から薬剤の効果や毒性等を評価することができる。
【0039】
[薬剤評価装置]
図3は、薬剤評価装置の主な構成例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示される薬剤評価装置100は、培養心筋細胞110の動きを観察することによりその培養心筋細胞110に投与された薬剤の評価を行う装置である。図3に示されるように、薬剤評価装置100は、撮像部101、評価対象画像データ生成記録部102、評価指標データ生成部103、および評価部104を有する。
【0041】
撮像部101は、観察対象である培養心筋細胞110を撮像する。撮像部101は、培養心筋細胞110を直接(他の部材を介さずに)撮像してもよいし、例えば顕微鏡等のような他の部材を介して培養心筋細胞110を撮像してもよい。
【0042】
また、培養心筋細胞110は、撮像部101に対して固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。薬剤評価装置100は、動き(位置の時間的変化)を検出するため、一般的には、培養心筋細胞110が撮像部101に対して固定されている方が望ましい。
【0043】
撮像部101は、所定の期間培養心筋細胞110を撮像する。つまり、撮像部101は、培養心筋細胞110を被写体とする動画像を得る。撮像部101は、薬剤投与前と後で培養心筋細胞110を撮像する。なお、撮像部101が、例えば、所定時間経過毎等、所定の条件にしたがって、薬剤投与後に複数回培養心筋細胞110を撮像するようにしてもよい。
【0044】
撮像部101は、撮像により得られた培養心筋細胞110の画像の画像信号111(動画像)を評価対象画像データ生成記録部102に供給する。
【0045】
評価対象画像データ生成記録部102は、撮像部101から供給される画像信号を基にして評価対象画像データを生成し、生成した評価対象画像データを例えば内部の記録媒体に記録して保存する。ここで生成される評価対象画像データは、例えば培養心筋細胞110を撮像した画像信号から生成される動画像データとなる。
【0046】
例えば、評価対象画像データ生成記録部102が、撮像部101から供給される複数のフレーム画像の中から一部の期間のフレーム画像のみを抽出し、それを評価対象画像データとするようにしてもよい。また、例えば、評価対象画像データ生成記録部102が、撮像部101から供給される各フレーム画像の一部の領域を小フレーム画像として抽出し、その小フレーム画像からなる動画像を評価対象画像データとするようにしてもよい。
【0047】
さらに、例えば、評価対象画像データ生成記録部102が、撮像部101から供給される各フレーム画像に対して任意の画像処理を施し、その画像処理結果を評価対象画像データとするようにしてもよい。画像処理としては、例えば、画像の拡大、縮小、回転、変形、輝度や色度の補正、シャープネス、ノイズ除去、中間フレーム画像生成等が考えられる。もちろん、これら以外のどのような画像処理であってもよい。
【0048】
評価対象画像データ生成記録部102は、記憶している評価対象画像データ112を、所定のタイミングにおいて、若しくは、評価指標データ生成部103の要求に基づいて、評価指標データ生成部103に供給する。
【0049】
評価指標データ生成部103は、供給された評価対象画像データ112の各フレーム画像間において、観察対象(培養心筋細胞110)の画像の全領域を複数に分割した部分領域であるブロック毎に、観察対象(培養心筋細胞110)の動き検出を行う。
【0050】
評価指標データ生成部103は、その検出した各ブロックの動きを動きベクトルとして表し、その動きベクトルの大きさ(動き量)を求める。なお、この動き量は、絶対値であるので、以下において、この動き量のことを動き量絶対値とも称する。
【0051】
評価指標データ生成部103は、その動き量絶対値を、評価指標データ113として評価部104に供給する。
【0052】
評価部104は、評価指標データ113として供給された動き量絶対値を、2次元カラーマップにマッピングし、拍動の伝搬の様子を表現したり、さらに、その様子を定量的に評価したりすることにより、薬剤の評価を行う。評価部104は、その2次元カラーマップや定量的な評価結果を評価値114として出力する。
【0053】
2次元カラーマップは、平面上の各位置のパラメータの大きさを色で表すものである。この場合、平面は培養心筋細胞110の観察領域を表し、色は動き量絶対値(値の大きさ)を表す。つまり、動き量絶対値の位置が平面上の位置で表され、値の大きさが色で表される。つまり、観察領域内の動き量絶対値の分布が、平面上の色の変化で示される。
【0054】
このような2次元カラーマップの例を図4乃至図6に示す。図4に示される8枚のカラーマップは、それぞれ、観察領域内の動き量絶対値の分布を示しており、このカラーマップ上の位置は観察領域内の位置を示し、色濃度が濃い部分ほど動き量絶対値が大きいことを示している。つまり、色濃度が濃い部分は、激しく拍動中(収縮中若しくは弛緩中)であることを示している。なお、カラーマップ上の矢印は、説明のために描画したものであり、実際のカラーマップ上に描かれたものではない。
【0055】
8枚のカラーマップの内、左側の4枚のカラーマップは、有機溶媒(control)の投与後の拍動の伝搬の様子を示す例である。有機溶媒は、基本的に培養心筋細胞110の拍動に影響を及ぼさない。有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide))等がある。この4枚のカラーマップのそれぞれは、上から順に、投与直後(0ms)、投与から40ms経過後、投与から80ms経過後、投与から120ms経過後の拍動の様子を示している。
【0056】
また、右側の4枚のカラーマップは、1−ヘプタノール(1-Heptanol)の投与後の拍動の伝搬の様子を示す例である。1−ヘプタノールは、細胞間のシグナル伝達を中継するギャップジャンクションの機能を阻害することが知られている。この4枚のカラーマップのそれぞれは、上から順に、投与直後(0ms)、投与から80ms経過後、投与から160ms経過後、投与から240ms経過後の拍動の様子を示している。
【0057】
図4の左側の場合(有機溶媒のみを投与した例の場合)、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、時間の経過とともにその範囲を広げながらも、おおよそ右上から左下の方向に、最初の位置から遠ざかるように直線的に伝搬している。これは、キャップジャンクションが正常に機能し、伝搬がスムーズに進行している様子を示している。
【0058】
これに対して、図4の右側の場合(1−ヘプタノールを投与した例の場合)、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、時間の経過とともに回転するように向きを変えながら曲線的に伝搬している。すなわち、時に最初の位置に戻る方向にも進む(逆行する)。その上、左側に比べて拍動の伝搬に長時間を要する(伝搬の速度が遅い)。これは、ギャップジャンクションの機能が阻害され、伝搬がスムーズに進行していない様子を示している。
【0059】
図5のカラーマップは、有機溶媒(control)の投与後と18−β−グリチルレチン酸(18-β-Glycyrrhetinic acid)の投与後とで、拍動の伝搬の様子を比較するものである。18−β−グリチルレチン酸は、1−ヘプタノールと同様に、ギャップジャンクションを阻害することが知られている。図5の右側の5枚のカラーマップのそれぞれは、上から順に、投与直後(0ms)、投与から80ms経過後、投与から120ms経過後、投与から160ms経過後、投与から240ms経過後の拍動の様子を示している。
【0060】
図5の左側の場合(有機溶媒のみを投与した例の場合)、図4の左側の場合と同様に、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、時間の経過とともに、おおよそ上から下の方向に、最初の位置から遠ざかるように略直線的に伝搬している。これは、キャップジャンクションが正常に機能し、伝搬がスムーズに進行している様子を示している。
【0061】
これに対して、図5の右側の場合(18−β−グリチルレチン酸を投与した例の場合)、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、右から左、下から上、左から右等、様々な方向に伝搬する。また、途中、拍動の伝搬が一時的に停止する(観察対象領域において拍動の伝搬が生じない)場合がある。その上、左側に比べて拍動の伝搬に長時間を要する(伝搬の速度が遅い)。これは、ギャップジャンクションの機能が阻害され、伝搬がスムーズに進行していない様子を示している。
【0062】
図6のカラーマップは、有機溶媒(control)の投与後とDL−ソタロール(dl-sotalol)の投与後とで、拍動の伝搬の様子を比較するものである。DL−ソタロールは、カリウムチャネルを阻害することが知られている。図6の右側の6枚のカラーマップのそれぞれは、上から順に、投与直後(0ms)、投与から40ms経過後、投与から80ms経過後、投与から120ms経過後、投与から160ms経過後、投与から200ms経過後の拍動の様子を示している。
【0063】
図6の左側の場合(有機溶媒のみを投与した例の場合)、図4や図5の左側の場合と同様に、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、時間の経過とともに、おおよそ左上から右下の方向に、最初の位置から遠ざかるように略直線的に伝搬している。これは、各細胞の拍動が安定しており、伝搬がスムーズに進行している様子を示している。
【0064】
これに対して、図6の右側の場合(DL−ソタロールを投与した例の場合)、矢印に示されるように、拍動(色濃度の濃い部分)は、左上から右下に伝搬するが観察領域内において、その伝搬が停止する。また、その後、左下から右上に向かう拍動の伝搬が始まる。なお、観察期間中、観察領域の右側の一部の領域においては、拍動が生じない。つまり、拍動は、この右側の一部の領域には伝播されない。さらに、左側に比べて拍動の伝搬の速度が遅い。
【0065】
DL−ソタロールを投与すると弛緩過程で働くカリウムチャネル機能の変化によって弛緩過程が変化する。これにより、各細胞の拍動の波形がばらつきが生じ、図4乃至図6の左側の例のように、拍動が滑らかに伝搬しなくなる。
【0066】
評価部104は、各ブロックの動き量絶対値をこのような2次元カラーマップで表現する。評価部104は、図4乃至図6に示されるように、所定のフレーム間隔(毎フレームでもよいし、複数フレームおきでもよい)でこのような2次元カラーマップを生成する。つまり、評価部104は、この2次元カラーマップの時間的変化により、拍動の伝搬を表現する。
【0067】
評価部104は、この2次元カラーマップを画像としてユーザに提示することができる。つまり、薬剤評価装置100は、拍動の伝搬の様子を、容易かつ非侵襲に観察し、その観察結果を提示することができる。ユーザは、提示されたこの2次元カラーマップの画像における拍動の伝搬の様子から、投与した薬剤による影響(効果や毒性等)を、容易かつ非侵襲に評価することができる。
【0068】
なお、評価部104は、この2次元カラーマップを用いて、拍動が伝搬する様子を定量的に評価することもできる。図4の例の場合、右のマップに示される薬剤投与後における拍動の伝搬の様子(直線的に伝搬する様子)は、左のマップに示される薬剤投与前における拍動の伝搬の様子(観察領域内を回転するように伝搬する様子)とは異なる。評価部104は、例えば、このような薬剤投与前後での拍動の伝搬の様子を比較し、その差分値の大きさに基づいて薬剤投与後の拍動の伝搬の様子が正常であるか否かを判定することができる。
【0069】
また、評価部104は、伝搬の向きの変化や方向(例えば逆向き等)を検出することにより、薬剤投与後の拍動の伝搬の様子が正常であるか否かを判定することもできる。さらに、評価部104は、伝搬速度が十分に速いか否かを判定することにより、薬剤投与後の拍動の伝搬の様子が正常であるか否かを判定することもできる。
【0070】
評価部104は、このような評価結果を評価値114として出力することができる。すなわち、薬剤評価装置100は、拍動の伝搬の様子を、容易かつ非侵襲に観察し、評価対象(投与した薬剤による影響)を、容易かつ非侵襲に評価することができる。
【0071】
なお、薬剤評価装置100は、観察対象として培養心筋細胞110以外のものを用いるようにしてもよい。例えば、心筋細胞以外の細胞を観察対象としてもよいし、細胞以外を観察対象としてもよい。ただし、観察対象は、自身が動き、その動きの評価によって、その観察対象に投与した薬剤を評価可能なものであることが望ましい。なお、この動きは、自律的(自発的)なものであってもよいし、外部から供給される電気信号等によるものであってもよい。
【0072】
[評価指標データ生成部]
図7は、図1の評価指標データ生成部103の主な構成例を示すブロック図である。図7に示されるように、評価指標データ生成部103は、動き検出部121、動き量絶対値算出部122、および動き量絶対値格納部123を有する。
【0073】
動き検出部121は、評価対象画像データ生成記録部102から記録された評価対象画像データ112を入力してブロック毎に動き検出を行い、その検出結果(動きベクトル)を動き検出データとして、動き量絶対値算出部122に供給する。
【0074】
動き量絶対値算出部122は、供給された各動き検出データ(動きベクトル)の大きさである動き量絶対値を算出する。動き量絶対値算出部122は、算出した動き量絶対値を動き量絶対値格納部123に供給し、格納させる。
【0075】
動き量絶対値格納部123は、所定のタイミングにおいて若しくは評価部104からの要求に基づいて、格納している動き量絶対値を評価指標データ113として評価部104に供給する。
【0076】
なお、動き検出部121乃至動き量絶対値格納部123は、評価対象画像データの各フレーム画像についてこの処理を行う。
【0077】
[評価対象画像データの構造]
図8は、評価指標データ生成部103に供給される評価対象画像データ112の構造例を示している。撮像は、所定の長さの評価区間(例えばT+1フレーム(Tは任意の自然数))行われる。つまり、評価指標データ生成部103に供給される評価対象画像データ112は、例えばその評価区間に対応する1番目から(T+1)番目までのフレーム画像データ132−1乃至132−(T+1)から成る。
【0078】
[動き検出部の構成例]
図9は、動き検出部121の主な構成例を示すブロック図である。図9に示されるように、動き検出部121は、フレームメモリ141および動きベクトル算出部142を有する。フレームメモリ141は、評価対象画像データ112として1フレーム期間ごとに順次入力されてくるフレーム画像データ132を保持する。
【0079】
動きベクトル算出部142は、現時刻の評価対象画像データ112として入力されるフレーム画像データと、フレームメモリ141に保持されている1つ先の(時間的に前の)時刻のフレーム画像データとを入力する。そして、これらの2つフレーム画像データ間の動きを示す動きベクトルを、ブロック毎に算出する。算出された動きベクトルは、動き検出データ151として動き量絶対値算出部122に供給される。
【0080】
図9の動き検出部121が実行する処理についてより詳細に説明する。動きベクトル算出部142は、現時刻のフレーム画像データ132と1つ先の(時間的に前の)時刻のフレーム画像データ132を入力する。動きベクトル算出部142は、これらの入力したフレーム画像データ132を、図10に示されるように、M×N個(M、Nは任意の自然数)のブロック161に分割し、各ブロック161について、例えばフレーム画像間のブロックマッチングなどの手法により動き検出を行い、動きベクトルを生成する。ブロック161の各々は、例えば(16×16)による画素から成る。
【0081】
動きベクトル算出部142は、この動き検出処理を1番目から(T+1)番目までのフレーム画像データ132を順次利用して実行していく。つまり、動きベクトル算出部142は、(T+1)個のフレーム画像を用いて、(M×N×T)個の動き検出データ(動きベクトル)を生成する。動きベクトル算出部142は、このように算出した動きベクトルを動き検出データとして、動き量絶対値算出部122に供給される。
【0082】
T番目と(T+1)番目のフレーム画像データ132を利用した最後の動き検出処理が完了すると、動き量絶対値算出部122には、図11に示されるように、T個のフレーム単位動き検出データ171−1乃至171−Tから成る動き検出データが供給される。
【0083】
フレーム単位動き検出データ171−1乃至171−Tのそれぞれは、フレーム期間ごとに得られる現時刻のフレーム画像データ132と1つ先の(時間的に前の)フレーム画像データ132とを対象に動き検出処理を行って得られたものとなる。
【0084】
例えば、3番目のフレーム単位動き検出データ171−3は、4番目のフレーム画像データ132−4と3番目のフレーム画像データ132−3を、それぞれ現時刻と1つ先の時刻のフレーム画像データとして入力して動き検出を行うことで得られる。
【0085】
また、フレーム単位動き検出データ171−1乃至171−Tの各々は、(M×N)個のブロック単位動き検出データ181により形成される。ブロック単位動き検出データ181は、それぞれが1つのブロック161に対応し、対応するブロック161について検出された動きベクトルを示すデータとなる。
【0086】
このように、本実施の形態の動き検出データ151は、フレーム単位動き検出データ171ごとに(M×N)個のブロック単位動き検出データ181を有する構造となっている。
【0087】
[評価部]
図12は、評価部104の主な構成例を示すブロック図である。図12に示されるように、評価部104は、動き量絶対値取得部201、マッピング部202、経時変化解析部203、動き評価部204、表示部205、および出力部206を有する。
【0088】
動き量絶対値取得部201は、評価指標データ生成部103の動き量絶対値格納部123から、所望の(例えば、ユーザに観察対象として指定された)評価対象画像データ112の動き量絶対値を評価指標データ113として取得する。動き量絶対値取得部201は、取得した動き量絶対値をマッピング部202に供給する。
【0089】
マッピング部202は、供給された動き量絶対値を、そのブロックの座標に応じて平面上にマッピングし、図4に示されるような2次元カラーマップを生成する。マッピング部202は、複数フレーム(評価対象画像データ112の全部または一部のフレーム)について、上述した2次元カラーマップを生成する。
【0090】
マッピング部202は、生成した2次元カラーマップを、表示部205に供給してその画像を表示させたり、出力部206に供給してデータを薬剤評価装置100の外部(他の装置等)に出力させたりする。また、マッピング部202は、生成した2次元カラーマップを経時変化解析部203にも供給する。
【0091】
なお、マッピング部202は、動き量絶対値の分布を示すことができる情報を生成すれば良く、生成する情報は、2次元カラーマップに限らない。例えば、3次元以上のカラーマップであってもよい。また、カラーマップでなくグレースケールのマップであってもよい。さらに、マッピング部202が、動き量絶対値を曲面上にマッピングするようにしてもよい。
【0092】
経時変化解析部203は、供給された各2次元カラーマップ(動き量絶対値の分布)の時間的変化(経時変化)の様子を解析する。例えば、経時変化解析部203は、2次元カラーマップ内の所定の特徴を有する領域(若しくは点)を注目領域(若しくは注目点)として設定し、その経時変化を求める。経時変化解析部203は、各2次元カラーマップと、この経時変化解析結果(例えば、注目領域の大きさ、形、位置等の経時変化)とを動き評価部204に供給する。
【0093】
動き評価部204は、供給された情報に基づいて動き量分布を評価する。例えば、動き評価部204は、注目領域の動き等についての評価を行う。例えば、動き評価部204は、薬剤投与前後で注目領域の経路に変化があるか否かを判定したり、注目領域の進行方向の極端な変化があるか否かを判定したり、注目領域の進行速度が変化するか否かを判定したりする。動き評価部204は、これらのような評価結果のデータを表示部205に供給して表示させたり、出力部206に供給して薬剤評価装置100の外部(他の装置等)に出力させたりする。
【0094】
表示部205は、任意の表示デバイスを有し、マッピング部202から供給される2次元カラーマップを画像化し、その表示デバイスに表示させる。また、表示部205は、動き評価部204から供給される評価結果を画像化し、その表示デバイスに表示させる。
【0095】
出力部206は、任意の出力インタフェースを有し、マッピング部202から供給される2次元カラーマップのデータを、その出力インタフェースを介して薬剤評価装置100の外部の装置やネットワーク等に出力する。また、出力部206は、動き評価部204から供給される評価結果のデータを、その出力インタフェースを介して薬剤評価装置100の外部の装置やネットワーク等に出力する。
【0096】
[動き評価部]
図13は、図12の動き評価部204の主な構成例を示すブロック図である。図13に示されるように、動き評価部204は、不動領域評価部211、拍動伝搬速度評価部212、動き量重心評価部213、および相関ヒストグラム評価部を有する。
【0097】
不動領域評価部211は、拍動が伝搬しない領域(すなわち、拍動しない領域)の数、面積、またはそれらの時間的変化を評価する。
【0098】
投薬後、観察領域内に、明らかに動かない(拍動しない)領域(不動領域)が存在する場合がある。例えば、図6の場合、DL−ソタロールを投与後、観察領域の右側の部分に拍動が伝搬しない。つまり、拍動が停止している。
【0099】
DL−ソタロールはカリウムチャネルを阻害する。培養心筋細胞にDL−ソタロールを投与すると弛緩過程で働くカリウムチャネル機能の変化によって弛緩過程が変化し、拍動時間(例えば活動電位維持時間)が延長する場合がある。また、場合によっては、拍動そのものが停止する場合も考えられる。このように薬剤の毒性により細胞の運動が停止する場合がある。
【0100】
このような不動領域の数や面積(若しくはそれらの時間的変化)は、投与した薬剤の毒性と関連性がある場合がある。例えば、投薬後、不動領域の数が多いほど、若しくは、不動領域の面積が広いほど、薬剤の毒性が強いと評価することができる場合もある。また、投与直後から不動領域が増大するまでの時間や、その後、不動領域が低減するまでの時間等によっても薬剤の毒性の強さを評価することができる場合もある。
【0101】
そこで、不動領域評価部211は、例えば、不動領域を注目領域とし、投薬前と投薬後とで2次元カラーマップ内の注目領域を比較し、その差分の大きさ(変化量)によって不動領域の数、大きさ、位置、形状等を評価する。もちろん、不動領域評価部211は、投薬後の複数時刻における2次元カラーマップ内の注目領域を比較することもできる。不動領域評価部211は、このような不動領域の評価により、投与した薬剤の毒性や効果を評価する。
【0102】
拍動伝搬速度評価部212は、観察領域内における拍動の伝搬速度、または、その時間的変化を評価する。
【0103】
投与した薬剤の毒性により拍動の伝搬が阻害されれば、拍動の伝搬速度にも影響を及ぼす場合がある。例えば、各細胞の拍動時間が延長すると、拍動伝搬速度が変化する場合がある。つまり、拍動の伝搬速度の変化は、投与した薬剤の毒性と関連性がある場合がある。例えば、投薬後、拍動の伝搬速度の低減幅が大きいほど、薬剤の毒性が強いと評価することができる場合もある。また、投与直後から伝搬速度が低減するまでの時間や、その後、伝搬速度が回復するまでの時間等によっても薬剤の毒性の強さを評価することができる場合もある。
【0104】
そこで、拍動伝搬速度評価部212は、例えば、大きく拍動する部分を注目領域とし、投薬前と投薬後とで2次元カラーマップ内の注目領域の動き(速さ)を比較し、その注目領域の動きの速さ(所定時間内の移動量)の差によって拍動の伝搬速度の変化を評価する。もちろん、拍動伝搬速度評価部212は、投薬後の複数時刻における2次元カラーマップ内の注目領域の動きを比較することもできる。拍動伝搬速度評価部212は、このような拍動の伝搬速度の評価により、投与した薬剤の毒性や効果を評価する。
【0105】
動き量重心評価部213は、観察領域内における動き量の重心の位置や軌跡を評価する。
【0106】
一般的に、拍動が伝搬すると、観察領域内の各部分の動きも変化するので、観察領域内の動き量の重心の位置も変化する。つまり、拍動の伝搬は、この動き量の重心の位置の軌跡により表すことができる。換言するに、投与した薬剤の毒性により拍動伝搬の様子(経路や速度等)が変化すると、動き量の重心の位置の変化の仕方にも影響を及ぼす。
【0107】
例えば、図4乃至図6を参照して説明したように、投薬前は1方向に直線的に伝搬していた拍動が、投薬後、回転するように伝搬したり、複数方向に伝搬したりする場合がある。例えば、投薬により不動領域が発生すると、拍動の伝搬が、その不動領域の周囲を回り込む(回転する)場合がある。また、不動領域にまでならなくても、領域間で各細胞の拍動周期に偏りが生じると、その偏りに応じて伝搬方向が変化する(回転する)場合がある。
【0108】
さらに、不動領域等において拍動伝搬が複数方向に分割される場合がある。また、心筋細胞では、一部の細胞がペースメークの役割を担い、その細胞の拍動を基準として他の細胞への拍動の伝搬が行われる。薬剤投与の影響により、このペースメークを行う細胞が他の細胞に代わることもある。場合によっては、そのペースメークを行う細胞の数が増減する場合もある。その場合、拍動伝搬経路が大幅に変化する。
【0109】
また、伝搬が途中で止まる場合もある。例えば、不動領域において拍動伝搬が途絶える場合もある。さらに、伝搬の速度が変化する場合もある。例えば、各細胞の拍動時間が延長することにより伝搬速度が変化する場合がある。
【0110】
これらのような伝搬の様子の変化により、同一領域に複数方向から互いに異なるタイミングで拍動が伝搬される場合がある。その場合、各細胞の拍動に乱れが生じ、局部的にリエントリが発生する場合がある(不整脈の要因となる場合がある)。
【0111】
これらのような拍動伝搬の変化により、動き量の重心の軌跡も変化する。そこで、動き量重心評価部213は、図14Aに示されるように、2次元カラーマップの全領域を、縦方向にN個横方向にM個の小領域に分割し、その小領域(m,n)毎に動き量v(m,n)を求める。動き量重心評価部213は、以下の式(1)および式(2)のように動きの重心の座標(Gx,Gy)を算出する。
【0112】
【数1】

・・・(1)
【数2】

・・・(2)
【0113】
各2次元カラーマップについて、このように動き量の重心の座標を求めると、動き量重心評価部213は、図14Bに示されるように、各2次元カラーマップ(各時刻)の重心の位置を2次元マップ上にプロットし、その変化(軌跡)を描く。動き量重心評価部213は、このような重心の軌跡を、投薬前後で比較し、その軌跡の変化を評価する。もちろん、動き量重心評価部213は、投薬後の複数時刻における重心の軌跡を比較することもできる。動き量重心評価部213は、このような動き量の重心の軌跡の評価により、投与した薬剤の毒性や効果を評価する。
【0114】
なお、軌跡を評価する重心は複数であっても良い。また、重心の動き量(拍動の大きさ)も併せて評価するようにしてもよい。例えば、動き量重心評価部213が、動き量の重心を、XY座標で位置を表し、Z座標で動き量を表す3次元マップ上にプロットするようにしてもよい。重心の動き量の算出方法は任意である。例えば、求められた重心の位置の動き量を重心の動き量としてもよいし、その重心の近傍の動き量の平均値を重心の動き量としてもよい。また、観察領域全体の動き量を用いて重心の動き量が算出されるようにしてもよい。
【0115】
相関ヒストグラム評価部214は、観察領域内の動きの分布(速度や方向等)を評価する。
【0116】
投薬前、正常な状態において、心筋細胞は、所定のリズムで拍動を繰り返す。したがって、観察領域内の動きの分布(速度や方向等)は略一定となる。投薬後、投与した薬剤の毒性により、上述したように拍動の伝搬の様子が変化すると、この動きの分布も変化することになる。そこで、相関ヒストグラム評価部214は、投薬前後で、この動きの速度や方向について分布(ヒストグラム)を求め、その分布の変化を評価することにより、投与した薬剤の毒性や効果を評価する。
【0117】
より具体的な例について説明する。例えば、相関ヒストグラム評価部214は、図15に示されるように、隣接する小領域間の拍動の相関係数dを求める。この相関係数dは、図15の中央に示されるように、拍動のタイミングのズレを示すパラメータであり、図15の右側に示されるように、そのズレが大きいほど、値が大きくなる。つまり、相関係数dは、両少領域の拍動タイミングが半周期分ズレた状態が最も大きい。両少領域の拍動タイミングが一致する場合、相関係数dの値は0となる。
【0118】
相関ヒストグラム評価部214は、このような相関係数dを、図16Aに示されるように、処理対象の小領域の上下左右に隣接する小領域についてそれぞれ算出する(d0乃至d3)。相関ヒストグラム評価部214は、その相関係数d(d0乃至d3)を用いて、以下の式(3)および式(4)のように、水平方向の動き量vxと垂直方向の動き量vyとを算出する。
【0119】
【数3】

・・・(3)
【数4】

・・・(4)
【0120】
相関ヒストグラム評価部214は、それらの動き量vxと動き量vyとから、図16Bに示されるように、処理対象の小領域(m,n)の動き量v(m,n)と、その方向θ(m,n)を求める。相関ヒストグラム評価部214は、各小領域について、このように動き量およびその方向を求め、図17に示されるような、動き量(速度)と方向のヒストグラム(度数分布)をそれぞれ生成する。
【0121】
図17Aは、薬剤投与前の、動きの速度と方向のヒストグラムを示し、図17Bは、薬剤投与後の、動きの速度と方向のヒストグラムを示す。図17Aと図17Bに示されるように、投薬前後で、これらの分布が異なる場合、薬剤投与による影響があると判定することができる。つまり、相関ヒストグラム評価部214は、投薬前と後とで、この動きの速度や方向について分布(ヒストグラム)を求め、その分布の変化を評価することにより、投与した薬剤の毒性や効果を評価する。
【0122】
不動領域評価部211乃至相関ヒストグラム評価部214は、それぞれ、得られた評価結果を評価結果データ生成部215に供給する。評価結果データ生成部215は、各評価結果を適宜まとめ、評価結果データとして、表示部205や出力部206(図12)に供給する。
【0123】
なお、以上に説明した動き評価部204の構成は、一例である。動き評価部204は、任意の構成を有することができ、観察対象の動きに関するものであれば、任意の指標の評価を行うことができる。
【0124】
以上のように、薬剤評価装置100は、培養心筋細胞110の拍動の伝搬の様子を、容易かつ非侵襲に観察し、評価対象(投与した薬剤による影響)を、容易かつ非侵襲に評価することができる。
【0125】
[評価処理の流れ]
次に、図18のフローチャートを参照して、薬剤評価装置100により実行される評価処理の流れの例を説明する。
【0126】
評価処理が開始されると、薬剤評価装置100の撮像部101は、ステップS101において、観察対象である培養心筋細胞110を撮像する。ステップS102において、評価対象画像データ生成記録部102は、ステップS101の撮像により得られた画像信号111から評価対象画像データ112を生成する。
【0127】
ステップS103において、評価指標データ生成部103は、ステップS102において生成された評価対象画像データ112を用いて動き検出を行い、動き量絶対値を算出し、評価指標データ113を生成する。ステップS104において、評価部104は、ステップS103において生成された評価指標データ113を用いて2次元カラーマップを生成し、評価値114を算出する。
【0128】
ステップS105において、評価部104は、ステップS104において算出された評価値114を出力し、評価処理を終了する。
【0129】
[評価指標データ生成処理の流れ]
次に、図18のステップS103において実行される評価指標データ生成処理の流れの例を、図19のフローチャートを参照して説明する。
【0130】
評価指標データ生成処理が開始されると、評価指標データ生成部103の動き検出部121は、ステップS121において、評価対象の動きをブロック毎に検出し、動きベクトルを生成する。ステップS122において、動き量絶対値算出部122は、ステップS121において生成された各ブロックの動きベクトルの動き量絶対値を算出する。
【0131】
ステップS123において、動き量絶対値格納部123は、ステップS122において算出された動き量絶対値を記憶する。
【0132】
ステップS124において、動き検出部121は、予め定められた所定の期間(評価区間)分のデータを処理したか否かを判定する。所定の評価区間において、動き検出を行っていないフレーム画像が存在すると判定された場合、動き検出部121は、処理をステップS121に戻し、新たな処理対象フレーム画像に対して動き検出を繰り返す。
【0133】
また、ステップS124において、所定の評価区間において処理対象とする全てのフレーム画像において動き検出を行ったと判定された場合、評価指標データ生成処理を終了し、処理を図18に戻し、ステップS104に処理を進める。
【0134】
[相関評価処理の流れ]
次に、図20のフローチャートを参照して、図18のステップS104において実行される影響評価処理の流れの例を説明する。
【0135】
影響評価処理が開始されると、動き量絶対値取得部201は、ステップS141において、動き量絶対値格納部123から動き量絶対値を取得する。
【0136】
ステップS142において、マッピング部202は、ステップS141において取得された動き量絶対値を平面上にマッピングし、2次元カラーマップを作成する。
【0137】
ステップS143において、経時変化解析部203は、ステップS142において作成された動き量絶対値の各2次元カラーマップにおいて、2次元カラーマップの経時変化を解析する。
【0138】
ステップS144において、動き評価部204は、ステップS143において解析された2次元カラーマップの時間的変化(各2次元カラーマップ間での動き)を評価する。つまり、動き評価部204は、薬剤投与の影響を評価する。動き評価部204は、その評価値114を表示部205に表示させたり、出力部206を介して薬剤評価装置100の外部に出力したりする。
【0139】
ステップS144の処理が終了すると、動き評価部204は、影響評価処理を終了し、処理を図18に戻す。
【0140】
[動き評価処理の流れ]
次に、図21のフローチャートを参照して、図20のステップS144において実行される動き評価処理の流れの例を説明する。
【0141】
動き評価処理が開始されると、ステップS161において、不動領域評価部211は、不動領域を評価する。ステップS162において、拍動伝搬速度評価部212は、拍動伝搬速度を評価する。ステップS163において、動き量重心評価部213は、動き量の重心を評価する。ステップS164において、相関ヒストグラム評価部214は、拍動伝搬の速度や方向をヒストグラムで評価する。ステップS165において、評価結果データ生成部215は、出力または表示用の評価結果データを生成する。
【0142】
ステップS165の処理を終了すると、評価結果データ生成部215は、動き評価処理を終了し、処理を図20に戻す。
【0143】
以上のように、各種処理を行うことにより、薬剤評価装置100は、観察対象を容易かつ非侵襲に観察することができ、薬剤投与の培養心筋細胞110への影響を、より容易かつ非侵襲に評価することができる。
【0144】
つまり、本技術の場合、特殊な培養皿や蛍光試薬が不要であるため、簡便、非侵襲、安価に細胞拍動挙動の変化を捉えることができ、薬剤毒性等を容易かつ正確に評価することができる。また自動化にも好適である。
【0145】
なお、薬剤の毒性には、一般的に、大別して、投薬後、数秒から数分程度の短期間で影響が表れる短期毒性と、投薬後、数時間から数日程度の長期間経過後に影響が表れる長期毒性とがある。蛍光試薬や電極を用いる場合、観察対象に影響を及ぼすことから長期毒性の観察には不向きな場合がある。これに対して、本技術の場合、観察対象を非侵襲に観察することができる。また、本技術の場合、長期毒性の観察を、短期毒性を観察する場合と同様の方法で容易に行うことができる。したがって、本技術は、短期毒性の観察だけでなく、長期毒性の観察にも好適である。
【0146】
また、本技術は、短期毒性の観察と長期毒性の観察とを互いに同様の方法で行うことができるので、投薬直後から例えば数日間等、長期間の観察を行うことができる。つまり、本技術は、毒性の経時変化の観察や評価を行うことも可能である。
【0147】
なお、観察対象である培養細胞が成長して密になると、蛍光試薬による染色が一般的に困難になるが、本技術の場合、観察対象を非侵襲に観察することができるので、培養細胞の成長度合いに関わらず、安定的に観察や評価を行うことができる。
【0148】
ところで、心筋細胞の拍動は、収縮と弛緩により構成される。一般に心筋の弛緩は、心電図でいうところのT波に対応しており、心筋細胞膜の再分極に対応している。このT波の延長はQ波とT波間時間の延長として一般にQT延長と呼ばれ、この症状が出る場合、不整脈の可能性が指摘される。例えば、培養心筋細胞に投与された薬剤によりカリウムチャネルへのイオンの出し入れが阻害されると、このようなQT延長が発生する。例えば、DL−ソタロールは、カリウムチャネルを阻害することが知られている。つまり、培養心筋細胞にDL−ソタロールを投与すると弛緩過程で働くカリウムチャネル機能の変化によって弛緩過程が変化する。
【0149】
しかしながら、実際には、QT延長が発生する場合であっても、例えば心筋細胞全体で略一様なQT延長が生じるときは、細胞間で拍動の大きなズレが生じないので、不整脈とならない場合も有り得る。また、逆に、上述したようにギャップジャンクションが阻害されるなどすると、QT延長が生じなくても不整脈が生じる恐れもある。本技術の場合、容易かつ非侵襲に拍動の伝搬を観察することができるので、このようなQT延長の発生の有無に関わらず、不整脈の発生を検出することができる。
【0150】
また、本技術の場合、観察領域は、例えば0.6mm平方程度と比較的狭い範囲でよく、少ない細胞数と少ない試薬で試験が可能である。また、一般的に市販されている高密度の培養プレート(1536穴プレート(1.7mm直径/1well)や384穴プレート(3.6mm直径/1well)によっても十分に評価可能であり、創薬における最初のスクリーニングにも好適である。なお、本技術の場合、観察範囲の広さに関わらず、同様の方法で観察が可能である。したがって観察範囲の変更にも容易に対応することができる。
【0151】
さらに、薬剤の毒性の評価方法は、現在も研究が進められており、今後新たな評価の仕方や評価基準が提案される可能性がある。本技術の場合、非侵襲に、観察対象の状態を観察することができるので、より多様な評価方法や評価基準への適用が容易である。
【0152】
本技術は、さらに、培養心筋細胞110を観察することにより評価可能なものであればどのようなものを評価する場合にも適用することができる。例えば、気体であってもよいし、液体であってもよいし、固体であってもよい。また、観察時の環境条件(例えば、温度、湿度、気圧、明度、振動、磁場等)であってもよい。
【0153】
なお、本技術は、拍動の伝搬を容易に観察することができるので、蛍光色素を入れ込み、細胞の興奮(活動電位)によって変動するカルシウム濃度を検出することで細胞の拍動リズムを検出し、細胞の情報伝搬パターンを評価する方法にも適用することができる。
【0154】
<2.第2の実施の形態>
[パーソナルコンピュータ]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図22に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0155】
図22において、パーソナルコンピュータ300のCPU(Central Processing Unit)301は、ROM(Read Only Memory)302に記憶されているプログラム、または記憶部313からRAM(Random Access Memory)303にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM303にはまた、CPU301が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0156】
CPU301、ROM302、およびRAM303は、バス304を介して相互に接続されている。このバス304にはまた、入出力インタフェース310も接続されている。
【0157】
入出力インタフェース310には、キーボード、マウスなどよりなる入力部311、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部312、ハードディスクなどより構成される記憶部313、モデムなどより構成される通信部314が接続されている。通信部314は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0158】
入出力インタフェース310にはまた、必要に応じてドライブ315が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア321が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部313にインストールされる。
【0159】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0160】
この記録媒体は、例えば、図22に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、若しくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア321により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM302や、記憶部313に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0161】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0162】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0163】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0164】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本技術は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0165】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1) 観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部と、
前記動き検出部により検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部と、
前記動き量算出部により算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部と
を備える画像処理装置。
(2) 前記動き検出部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記動きを検出し、
前記マップ作成部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記マップを作成する
前記(1)に記載の画像処理装置。
(3) 前記マップ作成部により作成された各マップ間の動き量の分布を評価する動き評価部
をさらに備える前記(2)に記載の画像処理装置。
(4) 前記観察対象は心筋細胞である
前記(3)に記載の画像処理装置。
(5) 前記動き評価部は、前記拍動伝搬の方向、速度、回転、停止、およびそれらの経時変化の内、少なくともいずれか1つを評価する
前記(4)に記載の画像処理装置。
(6) 前記動き評価部は、投薬後の前記拍動伝搬の様子を評価する
前記(5)に記載の画像処理装置。
(7) 前記動き評価部は、拍動しない領域を評価する
前記(4)乃至(6)のいずれかに記載の画像処理装置。
(8) 前記動き評価部は、拍動伝搬速度の変化を評価する
前記(4)乃至(7)のいずれかに記載の画像処理装置。
(9) 前記動き評価部は、前記マップ毎の動き量の重心の軌跡を評価する
前記(4)乃至(8)のいずれかに記載の画像処理装置。
(10) 前記動き評価部は、前記拍動伝搬の速度および方向をヒストグラムにより評価する
前記(4)乃至(9)のいずれかに記載の画像処理装置。
(11) 前記動き評価部による評価の結果を表示する表示部をさらに備える
前記(3)乃至(10)のいずれかに記載の画像処理装置。
(12) 前記動き評価部による評価の結果を出力する出力部をさらに備える
前記(3)乃至(11)のいずれかに記載の画像処理装置。
(13) 前記マップの画像を表示する表示部をさらに備える
前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の画像処理装置。
(14) 前記マップのデータを出力する出力部をさらに備える
前記(1)乃至(13)のいずれかに記載の画像処理装置。
(15) 画像処理装置の画像処理方法であって、
動き検出部が、観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出し、
動き量算出部が、検出された各動きの動き量を算出し、
マップ作成部が、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成する
画像処理方法。
(16) コンピュータを、
観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、
検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、
算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部
として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(17) コンピュータを、
観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、
検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、
算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0166】
100 薬剤評価装置, 101 撮像部, 102 評価対象画像データ生成記録部, 103 評価指標データ生成部, 104 評価部, 121 動き算出部, 122 動き量絶対値算出部, 123 動き量絶対値格納部,141 フレームメモリ, 142 動きベクトル算出部, 201 動き量絶対値取得部, 202 マッピング部, 203 経時変化解析部, 204 動き評価部, 205 表示部, 206 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部と、
前記動き検出部により検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部と、
前記動き量算出部により算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記動き検出部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記動きを検出し、
前記マップ作成部は、前記観察対象の動画像の各フレームについて前記マップを作成する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記マップ作成部により作成された各マップ間の動き量の分布を評価する動き評価部
をさらに備える請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記観察対象は心筋細胞である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記動き評価部は、前記拍動伝搬の方向、速度、回転、停止、およびそれらの経時変化の内、少なくともいずれか1つを評価する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記動き評価部は、投薬後の前記拍動伝搬の様子を評価する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記動き評価部は、拍動しない領域を評価する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記動き評価部は、拍動伝搬速度の変化を評価する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記動き評価部は、前記マップ毎の動き量の重心の軌跡を評価する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記動き評価部は、前記拍動伝搬の速度および方向をヒストグラムにより評価する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記動き評価部による評価の結果を表示する表示部をさらに備える
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記動き評価部による評価の結果を出力する出力部をさらに備える
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記マップの画像を表示する表示部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記マップのデータを出力する出力部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
画像処理装置の画像処理方法であって、
動き検出部が、観察対象の動きを観察領域の部分領域毎に検出し、
動き量算出部が、検出された各動きの動き量を算出し、
マップ作成部が、算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成する
画像処理方法。
【請求項16】
コンピュータを、
観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、
検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、
算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部
として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項17】
コンピュータを、
観察対象の動きを、観察領域の部分領域毎に検出する動き検出部、
検出された各動きの動き量を算出する動き量算出部、
算出された各動き量の位置および大きさを表すマップを作成するマップ作成部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−194168(P2012−194168A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162640(P2011−162640)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】