説明

画像処理装置および方法

【課題】より多様な効果を画像に付与することができるようにする。
【解決手段】画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、美化処理部313は、強調されるディティール成分に対して、その強調処理の前に美化処理を行う。ディティール強調部323は、美化処理部317によって美化処理されたHDR圧縮画像のディティールを、美化処理部313によって美化処理された後に強調されたディティール成分を用いて強調する。また、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合、美化処理部313は、ディティール成分に対して美化処理を行わない。美化処理部317によって美化処理されたHDR圧縮画像が、処理結果として出力される。本技術は、例えば、画像処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置および方法に関し、特に、より多様な効果を画像に付与することができるようにした画像処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイナミックレンジの広い画像の階調の範囲を圧縮し、適正化するHDR(High Dynamic Range)圧縮処理が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1においては、露出の異なる複数の画像からダイナミックレンジの広い画像を作り、つぎに平滑化フィルタを使って画像を低周波成分と高周波成分(ディティール成分)に分解し、低周波成分の階調の範囲を圧縮し、その圧縮量に対応する分だけディティール成分を強調して、最後に処理後の両成分を合成して、通常レンジの画像を得る方法が記載されている。
【0004】
また、ダイナミックレンジの広い画像の合成を経由せずに、複数の画像から通常レンジの画像を作る方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-104010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては、単に階調の範囲を圧縮するだけでなく、HDR圧縮処理された画像に他の効果を付与することが求められている。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画像の階調を処理するとともに、その画像に対して他の視覚的効果を付与する処理も行うことにより、より多様な効果を画像に付与することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行う第1の画像処理部と、前記第1の画像処理部により高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成するディティール成分生成部と、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する強調部とを備える画像処理装置である。
【0009】
前記画像処理は、不要な高周波成分を低減させる処理であるようにすることができる。
【0010】
前記画像処理は、所望の領域の前記不要な高周波成分を低減させる美化処理であるようにすることができる。
【0011】
前記美化処理は、肌領域の前記不要な高周波成分を低減させる美肌処理であるようにすることができる。
【0012】
前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、前記第1の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部とをさらに備え、前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行うように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御することができる。
【0013】
互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部をさらに備え、前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記合成部により生成された前記画像のディティールを強調することができる。
【0014】
前記露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行うことができる。
【0015】
前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部をさらに備え、前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記第2の画像処理部により前記画像処理が行われた前記画像のディティールを強調することができる。
【0016】
前記第1の画像処理部により前記画像処理が施された前記成分を含む、互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部と、前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部と、前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、前記第1の画像処理部および前記第2の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部とをさらに備え、前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御することができる。
【0017】
前記互いに露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行うことができる。
【0018】
本開示の一側面は、また、画像処理装置の画像処理方法であって、前記画像処理装置の第1の画像処理部が、画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行い、前記画像処理装置のディティール成分生成部が、高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成し、前記画像処理装置の強調部が、生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する画像処理方法である。
【0019】
本開示の一側面においては、画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理が行われ、高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された成分を用いて、強調されたディティール成分が生成され、生成された、強調されたディティール成分を前記画像に合成することにより、画像のディティールが強調される。
【発明の効果】
【0020】
本技術によれば、画像を処理することができる。特に、より多様な効果を画像に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像の階調を処理する画像処理装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図3】画像処理装置の、さらに他の構成例を示すブロック図である。
【図4】ディティール生成部の主な構成例を示すブロック図である。
【図5】画像処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図6】美化処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図7】HDR圧縮処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図8】ディティール強調処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図9】メモリの使用量の推移の例を説明する図である。
【図10】画像処理装置の、さらに他の構成例を示すブロック図である。
【図11】画像処理の流れの、他の例を説明するフローチャートである。
【図12】メモリの使用量の推移の他の例を説明する図である。
【図13】撮像装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図14】パーソナルコンピュータの主な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本技術を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(画像処理装置)
2.第2の実施の形態(画像処理装置)
3.第3の実施の形態(画像処理装置)
4.第4の実施の形態(画像処理装置)
5.第5の実施の形態(撮像装置)
6.第6の実施の形態(パーソナルコンピュータ)
【0023】
<1.第1の実施の形態>
[画像処理装置]
図1は、画像処理装置の一実施の形態の構成を表している。
【0024】
図1に示される画像処理装置100は、入力される露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するHDR処理を行うとともに、特定の領域で平滑化処理等を行い、視覚的に画質を向上させる美化処理を行う。
【0025】
例えば、画角内の輝度レンジが広いシーンでは、自動露出処理(AE処理)の精度が悪化し、画角内の主な被写体が露出オーバーになって白飛びしたり、露出アンダーになってノイズに埋もれたり黒つぶれしたりする可能性が高くなる。そこで、このようなシーンにおいても適切な露光条件で撮像された画像を得るための撮像手法として、露光条件を変化させて複数回連続して露光し、それぞれの複数の画像信号を得る「ブラケット撮像」という手法が知られている。
【0026】
この、ブラケット撮像を応用して、撮像素子の出力よりも広いダイナミックレンジを持つ画像(広ダイナミックレンジ画像)を得ることを可能とした撮像手法が考えられている。広ダイナミックレンジ画像の撮像では、ブラケット撮像により露出量を大きくした撮像画像と、露出量を抑えた撮像画像とを取得し、それらを合成することで広ダイナミックレンジの画像を生成する。すなわち、露出量を抑えて高輝度側の階調が得られた画像成分と、露出量を高めて低輝度側の階調が得られた画像成分とを合成することで、1回の露光では得ることができない広い輝度レンジの階調情報を、合成後の画像に取り入れることが可能となる。
【0027】
画像処理装置100には、例えばこのような撮像により得られた、互いに露出条件の異なる複数の画像(露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像)が入力される(矢印141乃至矢印143)。
【0028】
画像処理装置300は、輝度成分抽出部111、照明分離フィルタ112、HDR圧縮処理部113、および美化処理部114を有する。
【0029】
HDR圧縮処理部113は、変換テーブル121および合成部122を有する。美化処理部114は、領域検出部131および美化フィルタ132を有する。
【0030】
上述したように、画像処理装置100には、適正値よりも意図的に露出を抑えて生成した露出アンダー画像、露出を適正値で生成した適正露出画像、適正値よりも意図的に露出を大きくして生成した露出オーバー画像が入力される。各画像は、HDR圧縮処理部113に供給される(矢印141乃至矢印143)。
【0031】
また、適正露出画像は、輝度成分抽出部111にも供給される(矢印142)。輝度成分抽出部111は、入力された適正露出画像から輝度成分を抽出し、それを照明分離フィルタ112に供給する(矢印144)。
【0032】
照明分離フィルタ112は、エッジ保存平滑化フィルタ等によって、入力された輝度成分から照明成分を抽出する。照明分離フィルタ112は、抽出した照明成分をHDR圧縮処理部113に供給する(矢印145)。この照明成分は、変換テーブル121に供給される。
【0033】
HDR圧縮処理部113は、入力される露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するHDR処理を行う処理部である。
【0034】
変換テーブル121は、照明分離フィルタ315から供給される照明成分を、所定の変換テーブルを用いて合成係数に変換する。合成係数はそれぞれの画素における、露出アンダー画像の重みと、適正露出画像の重みと、露出オーバー画像の重みからなる係数である。変換テーブル121は、その合成係数を合成部122に供給する(矢印146)。
【0035】
合成部122は、供給された合成係数を用いて、入力された露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像を合成する。より具体的には、合成部122は、各画像を合成係数でそれぞれ重み付けして互いに加算する。合成部122は、このようにして、露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像から、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成された、適切な階調レンジの画像(HDR圧縮画像)を生成する。合成部122は、生成したHDR圧縮画像を美化処理部に供給する(矢印147)。このHDR圧縮画像は、領域検出部131および美化フィルタ132に供給される。
【0036】
美化処理部114は、入力される画像の所定の領域に対して、平滑化処理等の所定の画像処理を施し、例えば視覚的に画質を向上させる等の視覚的効果を付与する処理部である。例えば、美化処理部114は、画像内の人物の肌の部分(肌領域)を検出し、その肌領域に対して平滑化処理等を行い、シミや皺等を目立たなくする処理(この場合、美肌処理とも称する)を行う。
【0037】
領域検出部131は、合成部122から供給されるHDR圧縮画像から、美化処理の対象とする所望の領域(例えば、美肌処理の場合、肌領域)を処理対象領域として検出する。領域検出部131は、その検出結果を美化フィルタ132に供給する(矢印148)。
【0038】
美化フィルタ132は、合成部122から供給されるHDR圧縮画像の、領域検出部131により検出された処理対象領域に対して、美化フィルタ演算(例えば平滑化処理等)を行う。美化フィルタ132は、フィルタ処理結果を最終出力画像として画像処理装置100の外部に出力する(矢印149)。
【0039】
なお、美化フィルタ132は、最終出力画像を、画像処理装置100が有する記憶部(図示せず)に記憶するようにしてもよい。
【0040】
このようにすることにより、画像処理装置100は、入力される画像に対して、HDR処理を行うだけでなく、美化処理も行うことができる。つまり、画像処理装置100は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0041】
この画像処理装置100において、さらに、HDR処理とともに、画像のディティールを過度に強調することにより、絵画調の視覚的効果を付与することを考える。その場合、例えば、画像処理装置100において、絵画調処理により、HDR圧縮処理部113から出力されるHDR圧縮画像のディティール成分を過度に強調して絵画調のHDR圧縮画像を生成し、その絵画調のHDR圧縮画像を美化処理部114により美化処理する方法が考えられる。
【0042】
例えば美化処理(美肌処理)では、皺を抑えつつ睫毛を際立たせるために、検出されたディティールが皺であるか否かを高周波成分の振幅で判別して、皺にあたるディティールだけを抑制する処理がなされる。しかしながら、絵画調HDR圧縮処理の出力を処理した場合、ディティールの振幅が強調されているため、皺か否かの判別性能が低下し、結果として美肌処理の効果が得られなくなる可能性がある。
【0043】
また、絵画調HDR圧縮処理で強調されるディティールには、そもそも強調したくない信号が含まれている。たとえば、肌のシミや皺、空のノイズなどがあげられる。こういった信号を強調すると、質感はあるが、好ましくない印象を与える画像となってしまう可能性がある。
【0044】
<2.第2の実施の形態>
[画像処理装置]
そこで、例えば、図2に示されるように、美化処理をHDR処理の前において行う方法を考える。図2は、画像処理装置の他の構成例を示すブロック図である。
【0045】
図2に示される画像処理装置200は、基本的に画像処理装置100と同様の装置であり、入力される露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するHDR処理を行うとともに、特定の領域で平滑化処理等を行い、視覚的に画質を向上させる美化処理を行う。
【0046】
ただし、画像処理装置200は、美化処理を行ってからHDR処理を行う。図2に示されるように画像処理装置200は、美化処理部114−1乃至美化処理部114−3、輝度成分抽出部111、照明分離フィルタ112、およびHDR圧縮処理部113を有する。
【0047】
美化処理部114−1乃至美化処理部114−3は、それぞれ、図1の美化処理部114と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、美化処理部114−1は、露出アンダー画像に対して美化処理を行い、その処理結果をHDR圧縮処理部113に供給する(矢印241)。また、美化処理部114−2は、適正露出画像に対して美化処理を行い、その処理結果をHDR圧縮処理部113および輝度成分抽出部244に供給する(矢印242)。さらに、美化処理部114−3は、露出オーバー画像に対して美化処理を行い、その処理結果をHDR圧縮処理部113に供給する(矢印243)。
【0048】
輝度成分抽出部111は、美化処理された適正露出画像から輝度成分を抽出し、それを照明分離フィルタ112に供給する(矢印244)。照明分離フィルタ112は、美化処理された適正露出画像の輝度成分から照明成分を抽出し、それをHDR圧縮処理部113に供給する(矢印245)。
【0049】
HDR圧縮処理部113は、照明成分から合成係数を求め、その合成係数を用いて美化処理された露出アンダー画像、美化処理された適正露出画像、および美化処理された露出オーバー画像を重み付けして合成し、HDR圧縮画像として出力する(矢印247)。
【0050】
このようにすることにより、画像処理装置200は、入力される画像に対して、HDR処理を行うだけでなく、美化処理も行うことができる。つまり、画像処理装置200は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0051】
ただし、この方法の場合、画像処理装置200に入力される全ての画像(露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像)に対して、それぞれ美化処理を行うことになり、その分、処理の負荷(処理量や処理時間)が増大する可能性がある。
【0052】
<3.第3の実施の形態>
[画像処理装置]
図3は、画像処理装置の、さらに他の構成例を示すブロック図である。
【0053】
図3に示される画像処理装置300は、画像処理装置100や画像処理装置200と同様のHDR処理および美化処理を行うとともに、さらに、画像に対して絵画調の視覚的効果を付与する絵画調処理も行う。
【0054】
図3に示される画像処理装置300は、制御部311、選択部312、美化処理部313、輝度成分抽出部314、照明分離フィルタ315、HDR圧縮処理部316、美化処理部317、絵画調処理部318、および記憶部319を有する。
【0055】
また、絵画調処理部318は、制御部321、ディティール生成部322、およびディティール強調部323を有する。
【0056】
画像処理装置300に入力された露出アンダー画像は、HDR圧縮処理部316に供給される(矢印341)。画像処理装置300に入力された適正露出画像は、HDR圧縮処理部316および選択部312に供給される(矢印343)。画像処理装置300に入力された露出オーバー画像は、HDR圧縮処理部316に供給される(矢印343)。
【0057】
制御部311は、選択部312の動作を制御することにより、絵画調処理を行うか否かによって、美化処理部313において美化処理を行うか否かを制御する(矢印344)。絵画調処理を行うか否かは、例えばユーザや他の装置等の外部より指示される。若しくは、制御部311が予め記憶している設定情報に基づいて絵画調処理を行うか否かを決定するようにしてもよい。
【0058】
選択部312は、制御部311の制御に従って、供給された適正露出画像を、美化処理部313若しくは輝度成分抽出部314のいずれか一方に供給する。例えば、美化処理を行う場合、選択部312は、適正露出画像を美化処理部313に供給する(矢印346)。また、美化処理を行わない場合、選択部312は、適正露出画像を輝度成分抽出部314に供給する(矢印348)。
【0059】
美化処理部313は、図1の美化処理部114と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、美化処理部313は、領域検出部131および美化フィルタ132を有し、供給された適正露出画像から処理対象領域を検出し、その処理対象領域に対して美化フィルタ演算する美化処理を行う。美化処理部313は、美化処理された適正露出画像を輝度成分抽出部314に供給する(矢印347)。
【0060】
輝度成分抽出部314は、図1の輝度成分抽出部111と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、輝度成分抽出部314は、供給された適正露出画像(美化処理部313から供給される美化処理された適正露出画像、若しくは、選択部312から供給される美化処理されていない適正露出画像(すなわち、選択部312により選択された方))から輝度成分を抽出する。輝度成分抽出部314は、抽出した輝度成分を照明分離フィルタ315およびディティール生成部322に供給する(矢印349)。なお、選択部312を省略し、美化処理部313が、例えば制御部311の制御に従って、美化処理を実行したり、実行しなかったり(美化処理を省略したり)することができるようにしてもよい。
【0061】
照明分離フィルタ315は、図1の照明分離フィルタ112と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、照明分離フィルタ315は、エッジ保存平滑化フィルタ等によって、入力された輝度成分から照明成分(低周波成分とも称する)を抽出する。照明分離フィルタ315は、抽出した照明成分をHDR圧縮処理部316およびディティール生成部322に供給する(矢印350)。
【0062】
HDR圧縮処理部316は、図1のHDR圧縮処理部113と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、HDR圧縮処理部316は、変換テーブル121および合成部122を有し、照明分離フィルタ315から供給される照明成分を、所定の変換テーブルを用いて合成係数に変換し、その合成係数を用いて、入力された露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像を合成係数で重み付けして互いに加算する。HDR圧縮処理部316は、このようにして、露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像から、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように、輝度信号の階調範囲が圧縮されて合成された、適切な階調レンジの画像(HDR圧縮画像)を生成する。HDR圧縮処理部316は、生成したHDR圧縮画像(輝度信号の階調範囲が圧縮された画像)を美化処理部317に供給する(矢印351)。
【0063】
美化処理部317は、図1の美化処理部114と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、美化処理部317は、美化処理部313は、領域検出部131および美化フィルタ132を有し、供給されたHDR圧縮画像から処理対象領域を検出し、その処理対象領域に対して美化フィルタ演算する美化処理を行う。美化処理部317は、美化処理されたHDR圧縮画像をディティール強調部323に供給する(矢印352)。
【0064】
制御部321は、絵画調の視覚的効果を与えるためのHDR圧縮画像の反射率成分の強調量であるディティール強調量を設定する。つまり、このディティール強調量は、美化処理されたHDR圧縮画像のディティール成分を過度に強調するゲインである。制御部321は、そのディティール強調量をディティール生成部322に供給する(矢印345)。
【0065】
例えば、制御部321は、記憶部を有し、予め設定されたディティール強調量を記憶し、それをディティール生成部322に供給する。また、例えば、制御部321は、入力部を有し、外部より入力されるディティール強調量をディティール生成部322に供給するようにしてもよい。さらに例えば、制御部321は、ユーザの指示を受け付ける受付部を有し、ユーザにより設定されるディティール強調量をディティール生成部322に供給するようにしてもよい。また、制御部321は、演算部を有し、外部やユーザ等より入力される情報に基づいてディティール強調量を算出し、それをディティール生成部322に供給するようにしてもよい。
【0066】
例えば、制御部321は、美化処理されたHDR圧縮画像に対して絵画調の視覚的効果を付与する場合、ディティール強調量として大きな値(例えば、1より十分に大きな値)を設定する。また、美化処理されたHDR圧縮画像に対して絵画調の視覚的効果を付与しない場合、制御部321は、ディティール強調量として小さな値(例えば、1に近い値)を設定する。
【0067】
ディティール生成部322は、輝度成分抽出部314から供給される適正露出画像の輝度成分と、照明分離フィルタ315から供給される適正露出画像の輝度成分の照明成分とを用いて、適正露出画像の輝度成分の反射率成分(ディティール成分、高周波成分とも称する)を抽出する。
【0068】
さらに、ディティール生成部322は、抽出した反射率成分を、制御部321から供給されるディティール強調量で強調し、強調されたディティール成分を生成する。ディティール生成部322は、その強調されたディティール成分をディティール強調部323に供給する(矢印353)。
【0069】
ディティール強調部323は、美化処理部317から供給される美化処理されたHDR圧縮画像に対して、ディティール生成部322から供給される強調されたディティール成分を合成(乗算または加算)する。ディティール成分を強調するディティール強調量が大きい場合、ディティール強調部323は、このような合成処理により、美化処理部317から供給される美化処理されたHDR圧縮画像のディティールを過度に強調し、絵画調の視覚的効果を付与することができる。なお、ディティール成分を強調するディティール強調量が小さい場合、ディティール強調部323は、美化処理部317から供給される美化処理されたHDR圧縮画像を、ディティールを過度に強調せずに出力することができる。
【0070】
ディティール強調部323は、このような合成処理が行われた(絵画調の)HDR圧縮画像を出力する(矢印354)。
【0071】
ディティール強調部323から出力される(絵画調)HDR画像データは、さらに、ビット数を圧縮する等してもよい。
【0072】
なお、記憶部319は、各処理部間で授受される各種画像データを記憶する。つまり、上述した各処理部は、記憶部319を介して、露出アンダー画像、適正露出画像、露出オーバー画像、照明成分、ディティール成分、美化処理された美化処理画像、HDR圧縮画像、絵画調処理が行われた絵画調HDR圧縮画像等の授受を行う。
【0073】
以上のように、画像処理装置300は、容易に、露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するとともに、画像に対して、美化処理を行い、所望の領域の視覚的な画質を向上させたり、絵画風の視覚的効果を付与したりすることができる。つまり、画像処理装置300は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0074】
なお、画像処理装置300において、ディティール成分を過度に強調しない(絵画調の視覚的効果を付与しない)場合、例えば選択部312の選択によって、美化処理部313による美化処理が省略され、美化処理部317による美化処理のみが行われる。この場合、画像処理装置100と同様の処理結果となる。
【0075】
また、画像処理装置300において、ディティール成分を過度に強調する(絵画調の視覚的効果を付与する)場合、例えば選択部312の選択によって、美化処理部313による美化処理と美化処理部317による美化処理の両方が行われる。
【0076】
この場合、ディティール生成部322が生成するディティール成分は、美化処理部313により美化処理された画像を用いて生成される。つまり、美化処理部313は、強調させるディティール成分を、その強調の前に美化処理する。つまり、美化処理により抑制すべきディティールは、強調される前に抑制される。
【0077】
したがって、画像処理装置300は、例えば肌のシミや皺、空のノイズ等の強調したくない成分を強調せずに、必要なディティール成分見えのみを実物よりも強調させて質感を豊富にすることができる。つまり、画像処理装置300は、画質の低減を抑制しながら、画像に絵画調の視覚的効果を与えることができる。
【0078】
また、この場合、美化処理をディティール強調より前に行うことにより、ディティールが強調されることによる美化処理の効果の低減を抑制することができる。
【0079】
なお、この場合、HDR圧縮処理部316に供給される照明成分も美化処理が施されていることになるが、照明成分は低域成分であるので美化処理の影響は少なく、また、合成係数の算出に用いられるのみであるので、美化処理の有無は、処理結果に影響しないものとする事ができる。換言するに、例えば、別途、美化処理されていない適正露出画像から輝度成分の照明成分を抽出し、それをHDR圧縮処理部316に供給するようにして、HDR圧縮処理部316に供給される照明成分に対して美化処理が施されないようにすることもできる。また、以上においては、照明成分やディティール成分を適正露出画像から算出するように説明したが、これに限らず、例えば、露出アンダー画像や露出オーバー画像から照明成分やディティール成分を算出するようにしてもよい。例えば、露出アンダー画像から照明成分やディティール成分を算出する場合、選択部312の入力は、矢印341となる。また、例えば、露出オーバー画像から照明成分やディティール成分を算出する場合、選択部312の入力は、矢印343となる。
【0080】
なお、ディティール強調量の値は任意であるが、例えば、2倍、4倍、8倍のように、一般的に、ディティール強調量を大きくするほど、ディティールがより強く強調され、画像に与える絵画風の視覚的効果を強くすることができる。
【0081】
制御部321は、画像に対してより強い絵画風の視覚的効果を与える場合、このディティール強調量を大きな値に設定する。また、画像に対して絵画風の視覚的効果を強く与えたくない場合、制御部321は、ディティール強調量を小さな値(例えば1)に設定する。つまり、制御部321は、このディティール強調量の大きさを制御することにより、HDR圧縮処理を、被写体に忠実に行うのか、それとも絵画調の視覚的効果を付与するように行うのかを制御することができる。
【0082】
また、線形の平滑化フィルタ処理を用いて照明成分と反射率成分とを分離するようにすると、輪郭にHALO(輪郭部分に発生する後光状のアーチファクト)と呼ばれる現象が現れて、好ましくない画質になる(視覚的に画質が劣化する)可能性がある。そこで、照明分離フィルタ315にはエッジ保存平滑化フィルタを用いるのが望ましい。エッジ保存平滑化フィルタとしては、例えばバイラテラルフィルタや、国際公開WO2009/072537に記載の方法等がある。
【0083】
なお、制御部321は、ディティール強調量を大きな値にするか小さな値にするかの切り替えだけでなく、強調量の大きさを任意に制御することができるようにしてもよい。
【0084】
例えば、制御部321が、ディティール強調量の大きさを、輝度や位置に応じて制御することができるようにしてもよい。
【0085】
例えば、ディティール強調部323は、画像の全ての領域についてディティール成分を強調するようにしてもよいし、画像内の一部の領域についてのみ、ディティール成分を強調するようにしてもよい。例えばピクチャインピクチャのように、複数の画像が含まれる場合、そのうち一部の画像(すなわち、一部の領域)についてのみ絵画調の視覚的効果を付与するようにすることもできる。その場合、制御部321が、ユーザ指示、外部からの指示、若しくは画像の解析結果等任意の情報に基づいて強調する領域を設定し、ディティール生成部322が、その設定された領域のディティール成分についてのみ、強調するようにする。なお、この領域は予め定められていても良い。
【0086】
当然、美化処理についても同様であり、美化処理部313が、処理対象の輝度や大きさや位置に応じて、美化フィルタの強度を制御することができるようにしてもよい。
【0087】
なお、以上においては、美化処理を例に説明したが、美化処理部313および美化処理部317において行う処理は美化処理以外であっても、高周波成分に影響を及ぼす処理であればどのような処理であってもよい。例えば、高周波成分のうち不要な成分を低減させる処理であってもよい。例えば、高周波成分の中から所望の部分を特定し、その部分についてのみ行う処理であってもよい。例えば、被写体の検出結果を使って特定の領域で平滑化処理を行うアルゴリズム一般に応用可能である。より具体的には、例えば、遠距離の被写体をぼかす処理や、空の領域のノイズ削減する処理などであってもよい。
【0088】
[ディティール生成部]
図4は、ディティール生成部322の主な構成例を示すブロック図である。図4に示されるように、ディティール生成部322は、除算部361、減算部362、乗算部363、および加算部364を有する。
【0089】
除算部361は、輝度成分抽出部314から供給される輝度成分(矢印349)を、照明分離フィルタ315から供給される照明成分(矢印350)で除算することにより、ディティール成分を抽出する。除算部361は、抽出したディティール成分を乗算部363に供給する(矢印371)。
【0090】
減算部362は、標準となるディティールゲインが自動でかかる分を補正するために、制御部321から供給されるディティール強調量から値「1」を減算する。減算部362は、値「1」を減算したディティール強調量を乗算部363に供給する(矢印372)。
【0091】
乗算部363は、除算部361から供給されるディティール成分と、減算部362から供給されるディティール強調量とを乗算し、その乗算結果を加算部364に供給する(矢印373)。
【0092】
加算部364は、乗算部363から供給される、ディティール成分と値「1」が減算されたディティール強調量との乗算結果に、制御部321から供給されるディティール強調量(矢印345)を加算する。加算部364は、その加算結果、すなわち、過度に強調されたディティール成分をディティール強調部323に供給する(矢印353)。
【0093】
なお、メモリ削減などの理由で、平滑化フィルタ処理の出力時に信号精度の丸め処理がある場合、丸め処理の前の信号(輝度成分および照明成分)から、ディティール成分が抽出されるようにするのが望ましい。これは、ディティール成分の計算では演算精度が重要なためである。
【0094】
[画像処理の流れ]
図5のフローチャートを参照して、画像処理の流れの例を説明する。
【0095】
ステップS301において、画像処理装置300は、露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像を取得し、記憶部319に記憶させる。
【0096】
ステップS302において、制御部311および制御部321は、HDR圧縮処理を行う画像に対して絵画調効果を与えるか否かを判定する。絵画調効果を与えると判定した場合、制御部311および制御部321は、処理をステップS303に進める。ステップS303において、制御部321は、ディティール成分を過度に増幅するように、ディティール強調量に大きな値(1より十分に大きな値)を設定する。ステップS304において、制御部311は、美化処理を実行させるように選択部312を制御する。美化処理部313は、その制御に従って、記憶部319から適正露出画像を読み出し、その適正露出画像に対して美化処理を行う。美化処理が終了すると、美化処理部313は、処理をステップS306に進める。
【0097】
また、ステップS302において、画像に絵画調効果を与えないと判定した場合、制御部311および制御部321は、処理をステップS305に進める。ステップS305において、制御部321は、ディティール強調量に小さな値(1に近い値)を設定する。また、制御部311は、美化処理を実行させないように選択部312を制御する。ステップS305の処理が終了すると、制御部321は、処理をステップS306に進める。
【0098】
ステップS306において、輝度成分抽出部314は、記憶部319から適正露出画像を読み出し、読み出した適正露出画像から輝度成分を抽出する。記憶部319は、抽出された輝度成分を記憶する。なお、輝度成分は、適正露出画像の1コンポーネントとすることもできるので、ここでの輝度成分の記憶は省略することもできる。ステップS307において、照明分離フィルタ315は、記憶部319から輝度成分を読み出し、読み出した輝度成分から照明成分を抽出する。記憶部319は、抽出された照明成分を記憶する。
【0099】
ステップS308において、HDR圧縮処理部316は、記憶部319から、露出アンダー画像、適正露出画像、露出オーバー画像、および照明成分を読み出し、それらを用いてHDR圧縮画像を生成する。
【0100】
ステップS309において、美化処理部317は、ステップS308の処理により生成されたHDR圧縮画像を記憶部319から読み出し、そのHDR圧縮画像に対して美化処理を行う。
【0101】
ステップS310において、絵画調処理部318は、ステップS309において生成された美化処理画像(美化処理結果)、適正露出画像の輝度成分、および、その輝度成分の照明成分を記憶部319から読み出し、それらを用いて美化処理画像のディティールを強調する。このようにディティールが強調されたHDR画像は、画像処理装置300の外部に出力するようにしてもよいし、画像処理装置300が有する記憶部319に記憶するようにしてもよい。
【0102】
[美化処理]
次に、図5のステップS304において実行される美化処理の流れの例を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
美化処理が開始されると、ステップS321において、美化処理部313の領域検出部131は、記憶部319から読み出した適正露出画像の処理対象領域を検出する。ステップS322において、美化処理部313の美化フィルタ132は、記憶部319から読み出した適正露出画像の未処理の画素を取得する。
【0104】
ステップS323において、美化フィルタ132は、ステップS321において行われた処理対象領域検出結果に基づいて、ステップS322において取得した画素が、処理対象領域の画素であるか否かを判定する。処理対象領域の画素であると判定された場合、美化フィルタ132は、処理をステップS324に進め、取得した画素に対して美化フィルタ演算(フィルタ処理)を行う。美化フィルタ演算を行うと、美化フィルタ132は、処理をステップS325に進める。
【0105】
また、ステップS323において、取得した画素が処理対象領域の画素で無いと判定された場合、美化フィルタ132は、ステップS324の処理を省略し、ステップS325に処理を進める。
【0106】
ステップS325において、美化フィルタ132は、適正露出画像の全ての画素を処理したか否かを判定し、未処理の画素が存在すると判定した場合、処理をステップS322に戻し、それ以降の処理を繰り返す。
【0107】
また、ステップS325において、適正露出画像の全ての画素を処理したと判定した場合、美化フィルタ132は、処理をステップS326に進める。
【0108】
ステップS326において、記憶部319は、美化フィルタ演算が適宜施された美化処理結果である美化処理画像を記憶する。ステップS326の処理が終了すると、処理は、図5に戻される。
【0109】
なお、図5のステップS309において行われる美化処理も、処理対象とする画像が異なること以外は、ステップS304の場合と同様に実行される。つまり、ステップS309において行われる美化処理も、図6のフローチャートを参照して説明することができるので、その説明は省略する。
【0110】
[HDR圧縮処理]
次に、図5のステップS308において実行されるHDR圧縮処理の流れの例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0111】
ステップS331において、HDR圧縮処理部316の変換テーブル121は、予め用意された変換テーブルを用いて、記憶部319から読み出した照明成分の処理対象の画素の画素値を合成係数に変換する。
【0112】
ステップS332において、HDR圧縮処理部316の合成部122は、記憶部319から読み出した露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像の、記憶部319から読み出した照明成分の画素位置に対応する画素値を取得する。
【0113】
ステップS333において、合成部122は、ステップS332において取得された各画像の画素値を、それぞれ、ステップS331において求められた合成係数で重み付けし、互いに加算する。この加算結果が、各画像の合成結果となる。つまり、全ての画素についてこのような処理を行うことにより、各画像が合成されたHDR圧縮画像が生成される。
【0114】
ステップS334において、合成部122は、全ての画素を処理したか否かを判定し、未処理の画素が存在する場合、処理をステップS331に戻し、それ以降の処理を繰り返す。
【0115】
また、ステップS334において、全ての画素を処理したと判定された場合、合成部122は、処理をステップS335に進める。
【0116】
ステップS335において、記憶部319は、以上のようにして生成されたHDR圧縮画像を記憶する。ステップS335の処理が終了すると、処理は、図5に戻される。
【0117】
[ディティール強調処理]
次に、図5のステップS310において実行されるディティール強調処理の流れの例を図8のフローチャートを参照して説明する。
【0118】
ステップS341において、ディティール生成部322は、記憶部319から読み出した輝度成分と照明成分とを用いて、ディティール成分を生成する。記憶部319は、そのディティール成分を記憶する。
【0119】
ステップS342において、ディティール生成部322は、未処理の画素について、ディティール成分を、記憶部319から読み出し、取得する。ステップS343において、ディティール生成部322は、制御部321により設定されたディティール強調量に応じて、そのディティール成分を強調する。
【0120】
ステップS344において、ディティール強調部323は、記憶部319から美化処理結果である美化処理画像の、対応する画素の画素値を読み出し、その画素値に、ステップS343の処理により強調したディティール成分を合成(乗算または加算)する。この合成結果が、ディティール強調結果となる。つまり、全ての画素について、このような合成を行うことにより、美化処理画像のディティール成分が強調され、美化処理された絵画調のHDR圧縮画像が生成される。
【0121】
ステップS345において、ディティール生成部322は、輝度成分若しくは照明成分の全ての画素を処理したか否かを判定し、未処理の画素が存在すると判定した場合、処理をステップS342に戻し、それ以降の処理を繰り返す。
【0122】
そして、ステップS345において、全ての画素を処理したと判定された場合、ディティール生成部322は、処理をステップS346に進める。
【0123】
ステップS346において、記憶部319は、ディティール強調結果、すなわち、美化処理された絵画調のHDR圧縮画像を記憶する。また、ディティール強調部323は、その美化処理された絵画調のHDR圧縮画像を画像処理装置300の外部に出力する。
【0124】
ステップS346の処理が終了すると、処理は、図5に戻される。
【0125】
以上のように各処理を行うことにより、画像処理装置300は、容易に、露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するとともに、画像に対して、美化処理を行い、所望の領域の視覚的な画質を向上させたり、絵画風の視覚的効果を付与したりすることができる。つまり、画像処理装置300は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0126】
この場合の、記憶部319の使用状況の推移について、図9を参照して説明する。図9において、横軸は、処理の流れを示し、縦軸は、使用される記憶領域の大きさ(容量)を示す。各四角は記憶部319に記憶される画像データを模式的に示したものである。
【0127】
図9Aは、図3の画像処理装置300において、ディティールを過度に強調し、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合の、記憶部319の使用状況の推移の例を示している。また、図9Bは、図3の画像処理装置300において、ディティールを強調せず、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合の、記憶部319の使用状況の推移の例を示している。
【0128】
つまり、図9Aに示されるように、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、4.5画面分の記憶領域を必要とする。また、図9Bに示されるように、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合、3.5画面分の記憶領域を必要とする。
【0129】
<4.第4の実施の形態>
[画像処理装置]
以上に説明した画像処理装置300においては、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、美化処理が2度行われることになる。したがって、その分処理量や処理時間が増大する可能性がある。また、図9Aに示されるように、記憶部319の使用量も増大する可能性がある。
【0130】
そこで、このような美化処理の負荷を低減させるために、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合も、美化処理が1度で済むようにしてもよい。
【0131】
図10は、その場合の画像処理装置の主な構成例を示すブロック図である。
【0132】
図10に示される画像処理装置400は、基本的に画像処理装置300と同様の装置である。つまり、画像処理装置400は、画像に対して、HDR処理、美化処理、および絵画調処理を行う。
【0133】
図10に示される画像処理装置400は、制御部411、選択部412、美化処理部413、輝度成分抽出部414、照明分離フィルタ415、HDR圧縮処理部416、選択部417、美化処理部418、絵画調処理部419、および記憶部420を有する。
【0134】
また、絵画調処理部419は、制御部421、ディティール生成部422、およびディティール強調部423を有する。
【0135】
制御部411は、制御部311と同様に、選択部412を制御し、美化処理部413において美化処理を行うか否かを制御する。制御部411は、さらに、選択部417も制御し、美化処理部418において美化処理を行うか否かを制御する。
【0136】
例えば、制御部411は、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、美化処理部413において美化処理が行われ、美化処理部418において美化処理が行われないように制御する。また、例えば、制御部411は、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合、美化処理部418において美化処理が行われ、美化処理部413において美化処理が行われないように制御する。
【0137】
選択部412は、選択部312と同様に、制御部411の制御に従って、適正露出画像の供給先を選択する。ただし、選択部412は、適正露出画像の供給先を、美化処理部413、または、輝度成分抽出部414およびHDR圧縮処理部416のいずれかから選択する。
【0138】
美化処理部413は、美化処理部313と同様の構成を有し、同様の処理を行う。ただし、美化処理部413は、選択部412から供給される適正露出画像に対して美化処理を施して得られる美化処理画像を、輝度成分抽出部414およびHDR圧縮処理部416に供給する。
【0139】
つまり、画像処理装置400の場合、ディティール成分を生成するために用いられる適正露出画像だけでなく、HDR圧縮画像を生成するために用いられる適正露出画像に対しても美化処理が行われる。
【0140】
輝度成分抽出部414は、輝度成分抽出部314と同様の構成を有し、同様の処理を行う。照明分離フィルタ415は、照明分離フィルタ315と同様の構成を有し、同様の処理を行う。
【0141】
HDR圧縮処理部416は、HDR圧縮処理部316と同様の構成を有し、同様の処理を行う。ただし、HDR圧縮処理部416が、画像処理装置400に入力された露出アンダー画像および露出オーバー画像に合成する適正露出画像は、美化処理部413により美化処理された適正露出画像、若しくは、選択部412から供給される、美化処理部413において美化処理されていない適正露出画像である。つまり、画像に対して絵画調の視覚的効果が付与される場合、合成される適正露出画像として、美化処理された適正露出画像(美化処理画像)が採用される。
【0142】
HDR圧縮処理部416は、照明成分に基づいて、露出アンダー画像、露出オーバー画像、および適正露出画像を合成して得られるHDR圧縮画像を、選択部417に供給する。
【0143】
選択部417は、制御部411の制御に従って、このHDR圧縮画像の供給先を、美化処理部418およびディティール強調部423のいずれか一方から選択する。
【0144】
美化処理部418は、美化処理部317と同様の構成を有し、同様の処理を行う。つまり、美化処理部418は、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合のみ、HDR圧縮画像に対して美化処理を施し、その美化処理結果である美化処理画像をディティール強調部423に供給する。
【0145】
制御部421は、制御部321と同様の構成を有し、同様の処理を行う。ディティール生成部422は、ディティール生成部322と同様の構成を有し、同様の処理を行う。ディティール強調部423は、ディティール強調部323と同様の構成を有し、同様の処理を行う。
【0146】
記憶部420は、記憶部319と同様に、各処理部間で授受される各種の画像データを記憶する。つまり、露出アンダー画像、適正露出画像、露出オーバー画像、美化処理画像、照明成分、ディティール成分、HDR圧縮画像、および絵画調HDR圧縮画像等は、この記憶部420を介して授受される。
【0147】
以上のように、画像処理装置400は、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、美化処理部413においてのみ美化処理を行い、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合、美化処理部418においてのみ美化処理を行う。したがって、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合もしない場合も美化処理を1度にすることができ、その分、負荷(処理量や処理時間)を抑制することができる。また、記憶部420の使用量も低減させることができる。
【0148】
なお、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合、美化処理部418においてのみ美化処理が行われるので、画像処理装置300のときと同様の処理となる。ただし、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合、美化処理部413においてのみ美化処理が行われるので、画像処理装置300のときと処理が異なる。
【0149】
つまり、画像処理装置400の場合、HDR圧縮画像は、その生成に用いられた適正露出画像についてのみ美化処理が施されており、露出アンダー画像や露出オーバー画像については美化処理が施されていない。したがって、厳密には、HDR圧縮画像生成後に美化処理が行われる画像処理装置300の場合と、処理結果が異なる。
【0150】
しかしながら、ディティール成分が過度に強調される絵画調の視覚的効果が付与された画像において、強調されたディティール成分が視覚的に最も目立つ(支配的である)。したがって、強調されるディティール成分において、同様に美化処理が施されていれば、視覚的な影響は極めて小さい。
【0151】
つまり、画像処理装置400が生成する絵画調HDR圧縮画像と、画像処理装置300が生成する絵画調HDR圧縮画像とは、視覚的には略同様となる。
【0152】
以上のように、画像処理装置400は、容易に、露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するとともに、画像に対して、美化処理を行い、所望の領域の視覚的な画質を向上させたり、絵画風の視覚的効果を付与したりすることができる。つまり、画像処理装置400は、より多様な効果を画像に付与することができる。この場合も、照明成分やディティール成分の算出、並びに、美化処理部413の美化処理は、適正露出画像からだけでなく、露出アンダー画像や露出オーバー画像から行うようにすることもできる。つまり、選択部412の入力を矢印441や矢印443とすることもできる。その場合、適正露出画像(矢印442)は、HDR圧縮処理部416に入力される。
【0153】
[画像処理の流れ]
図11のフローチャートを参照して、この場合の画像処理の流れの例を説明する。
【0154】
ステップS401において、画像処理装置400は、露出アンダー画像、適正露出画像、および露出オーバー画像を取得し、記憶部420に記憶させる。
【0155】
ステップS402において、制御部421は、HDR圧縮処理を行う画像に対して絵画調効果を与えるか否かを判定する。絵画調効果を与えると判定した場合、制御部421は、処理をステップS403に進める。ステップS403において、制御部421は、ディティール成分を過度に増幅するように、ディティール強調量に大きな値(1より十分に大きな値)を設定する。
【0156】
また、ステップS402において、画像に絵画調効果を与えないと判定した場合、制御部421は、処理をステップS404に進める。ステップS404において、制御部421は、ディティール強調量に小さな値(1に近い値)を設定する。ステップS403若しくはステップS404の処理が終了すると、制御部421は、処理をステップS405に進める。
【0157】
ステップS405において、制御部411は、HDR圧縮処理を行う画像に対して絵画調効果を与えるか否かを判定する。絵画調効果を与えると判定した場合、制御部411は、選択部412を制御して、適正露出画像を美化処理部413に供給するようにし、処理をステップS406に進める。ステップS406において、美化処理部413は、適正露出画像に対して、図6のフローチャートを参照して説明したように美化処理を行い、美化処理結果である美化処理画像を生成し、記憶部420に記憶させる。美化処理画像を記憶させると、美化処理部413は、処理をステップS407に進める。
【0158】
また、ステップS405において、画像に絵画調効果を与えないと判定した場合、制御部411は、選択部412を制御して、適正露出画像を美化処理部413に供給しないようにし、処理をステップS407に進める。
【0159】
ステップS407において、輝度成分抽出部414は、記憶部420から適正露出画像を読み出し、読み出した適正露出画像から輝度成分を抽出する。記憶部420は、抽出された輝度成分を記憶する。なお、輝度成分は、適正露出画像の1コンポーネントとすることもできるので、ここでの輝度成分の記憶は省略することもできる。ステップS408において、照明分離フィルタ415は、記憶部420から輝度成分を読み出し、読み出した輝度成分から照明成分を抽出する。記憶部420は、抽出された照明成分を記憶する。
【0160】
ステップS409において、HDR圧縮処理部416は、図7のフローチャートを参照して説明したようにHDR圧縮処理を行い、記憶部420から、露出アンダー画像、適正露出画像、露出オーバー画像、および照明成分を読み出し、それらを用いてHDR圧縮画像を生成する。
【0161】
ステップS410において、制御部411は、HDR圧縮処理を行う画像に対して絵画調効果を与えるか否かを判定する。絵画調効果を与えないと判定した場合、制御部411は、選択部417を制御して、HDR圧縮画像を美化処理部418に供給するようにし、処理をステップS411に進める。ステップS411において、美化処理部418は、HDR圧縮画像に対して、図6のフローチャートを参照して説明したように美化処理を行い、美化処理結果である美化処理画像を生成し、記憶部420に記憶させる。美化処理画像を記憶させると、美化処理部418は、処理をステップS412に進める。
【0162】
また、ステップS412において、画像に絵画調効果を与えると判定した場合、制御部411は、選択部417を制御して、HDR圧縮画像を美化処理部418に供給しないようにし、処理をステップS412に進める。
【0163】
ステップS412において、絵画調処理部419は、ステップS411において生成された美化処理画像(美化処理結果)、適正露出画像の輝度成分、および、その輝度成分の照明成分を記憶部420から読み出し、それらを用いて美化処理画像のディティールを強調する。このようにディティールが強調されたHDR画像は、画像処理装置400の外部に出力するようにしてもよいし、画像処理装置400が有する記憶部420に記憶するようにしてもよい。
【0164】
以上のように各処理を行うことにより、画像処理装置400は、容易に、露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するとともに、画像に対して、美化処理を行い、所望の領域の視覚的な画質を向上させたり、絵画風の視覚的効果を付与したりすることができる。つまり、画像処理装置400は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0165】
この場合の、記憶部420の使用状況の推移について、図12を参照して説明する。図12において、横軸は、処理の流れを示し、縦軸は、使用される記憶領域の大きさ(容量)を示す。各四角は記憶部420に記憶される画像データを模式的に示したものである。
【0166】
図12Aは、図10の画像処理装置400において、ディティールを過度に強調し、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合の、記憶部420の使用状況の推移の例を示している。また、図12Bは、図10の画像処理装置400において、ディティールを強調せず、画像に絵画調の視覚的効果を付与しない場合の、記憶部420の使用状況の推移の例を示している。
【0167】
つまり、図12に示されるように、画像に絵画調の視覚的効果を付与する場合もしない場合も、3.5画面分の記憶領域で済む。つまり、図9の場合と比べて必要なメモリ量を低減させることができる。
【0168】
<5.第5の実施の形態>
[撮像装置]
以上に説明した画像処理装置は、画像処理部として他の装置の一部として構成されるようにしてもよい。例えば、被写体を撮像し、その撮像画像の画像データを生成する撮像装置として構成されるようにしてもよい。
【0169】
図13は、撮像装置の主な構成例を示すブロック図である。図13に示される撮像装置500は、被写体を撮像し、その被写体の画像をデータ化して出力する装置である。この撮像装置500は、図1に示される画像処理装置100、図2に示される画像処理装置200、図3に示される画像処理装置300、若しくは、図10に示される画像処理装置400を、画像処理部として有する。
【0170】
光学ブロック511は、被写体からの光を撮像素子512に集光するためのレンズ、レンズを移動させてフォーカス合わせやズーミングを行うための駆動機構(いずれも図示せず)、絞り511a、シャッタ511bなどを有している。光学ブロック511内のこれらの駆動機構は、マイクロコンピュータ520からの制御信号に応じて駆動される。撮像素子512は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)型などの撮像素子であり、被写体からの入射光を電気信号に変換する。
【0171】
A/D変換部(A/D)513は、撮像素子512から出力された画像信号をデジタルデータに変換する。ISO(International Organization for Standardization)ゲイン調整部514は、マイクロコンピュータ520からのゲイン制御値に応じて、A/D変換部513からの画像データのRGB(Red,Green,Blue)各成分に対して一様のゲインをかける。なお、ISOゲインの調整は、A/D変換部513に入力される前のアナログ画像信号の段階で行われるようにしてもよい。
【0172】
バッファメモリ515は、互いに異なる露出で撮像を複数回行うブラケット撮像により得られた複数枚の画像のデータを一時的に記憶する。合成処理部516は、ブラケット撮像時に適用した露出補正値をマイクロコンピュータ520から受け、この露出補正値に基づいて、バッファメモリ515内の複数枚の画像を1枚の画像に合成する。
【0173】
現像処理部517は、主に、合成処理部516から出力されるRAW(生)画像データを、可視画像のデータに変換する、いわゆるRAW現像処理を実行するブロックである。この現像処理部517は、RAW画像データに対して、データ補間(デモザイク)処理、各種色調整・変換処理(ホワイトバランス調整処理、高輝度ニー圧縮処理、ガンマ補正処理、アパーチャ補正処理、クリッピング処理など)、所定の符号化方式(ここでは、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式を適用する)に従った画像圧縮符号化処理などを実行する。
【0174】
なお、以下の各実施の形態では、A/D変換部513から出力されるRAW画像データのビット数を12ビットとし、現像処理部517は、この12ビットデータを処理できる仕様となっている。また、現像処理部517は、現像処理の過程において、例えば高輝度ニー圧縮処理(あるいは下位ビットの切り捨てなどでもよい)によって、12ビットデータを8ビットデータにビット圧縮し、この8ビットデータに対して圧縮符号化処理を施す。また、この8ビットデータを表示部519に対して出力する。
【0175】
記録部518は、撮像により得られた画像データをデータファイルとして保存するための装置であり、例えば、可搬型のフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などとして実現される。なお、記録部518は、現像処理部517によって符号化されたJPEGデータ531の他に、合成処理部516から出力されるRAW画像データ532をデータファイルとして記録することができる。また、記録部518に記録されたRAW画像データを読み出して、現像処理部517で処理し、記録部518にJPEGデータファイルとして新たに記録することができるようにしてもよい。
【0176】
表示部519は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などからなるモニタを備えている。表示部519は、現像処理部517において処理された非圧縮状態の画像データを基に、モニタ表示用の画像信号を生成してモニタに供給する。撮像画像の記録前のプレビュー状態では、撮像素子512からは連続的に撮像画像信号が出力され、デジタル変換された後、そのデジタル画像データがISOゲイン調整部514および合成処理部516を介して現像処理部517に供給されて、現像処理(ただし、符号化処理を除く)が施される。表示部519は、このとき現像処理部517から順次出力される画像(プレビュー画像)をモニタに表示し、ユーザはこのプレビュー画像を視認して画角を確認することができる。
【0177】
マイクロコンピュータ520は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを備え、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、この撮像装置500全体を統括的に制御する。例えば、本実施の形態では、検波部522からの検波結果を基に露出補正値を計算し、その値に応じた制御信号を出力して絞り511aやシャッタ511bを制御することで、AE(自動露出)制御を実現する。また、後述する広ダイナミックレンジ撮像を行う際には、算出した露出補正値を合成処理部516に通知する。
【0178】
LPF(Low-Pass Filter)521は、ISOゲイン調整部514から出力された画像データに対して、必要に応じてローパスフィルタ処理を施す。検波部522は、ISOゲイン調整部514からLPF521を通じて供給された画像データを基に各種の検波を行うブロックであり、本実施の形態では、例えば、画像を所定の測光領域に分割し、測光領域ごとに輝度値を検出する。
【0179】
以上のような撮像装置500において、合成処理部516と現像処理部517の一部または全部として、図1の画像処理装置100、図2の画像処理装置200、図3の画像処理装置300、若しくは図10の画像処理装置400と同様の構成を有し、同様の処理を行う画像処理部が設けられるようにしてもよい。
【0180】
このようにすることにより、合成処理部516および現像処理部517は、容易に、露出条件が互いに異なる複数の画像を、白飛びや黒つぶれ等の画質劣化が生じないように合成し、適切な階調レンジの画像を生成するとともに、画像に対して、絵画風の視覚的効果を付与することができる。
【0181】
つまり、撮像装置500は、容易に、ブラケット撮像により得られた複数の画像が合成され、さらに、絵画風の視覚的効果が付与された画像を得ることが出来、その画像を、表示部519に表示したり、JPEGデータ531として記録部518に記録したりすることができる。つまり、撮像装置500は、より多様な効果を画像に付与することができる。
【0182】
なお、記録部518が記録する画像データの符号化方式は任意である。記録部518が、JPEG以外の符号化方式で符号化された画像データを記憶するようにしてもよい。
【0183】
<6.第6の実施の形態>
[パーソナルコンピュータ]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図14に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0184】
図14において、パーソナルコンピュータ600のCPU(Central Processing Unit)601は、ROM(Read Only Memory)602に記憶されているプログラム、または記憶部613からRAM(Random Access Memory)603にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM603にはまた、CPU601が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0185】
CPU601、ROM602、およびRAM603は、バス604を介して相互に接続されている。このバス604にはまた、入出力インタフェース610も接続されている。
【0186】
入出力インタフェース610には、キーボード、マウスなどよりなる入力部611、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部612、ハードディスクなどより構成される記憶部613、モデムなどより構成される通信部614が接続されている。通信部614は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0187】
入出力インタフェース610にはまた、必要に応じてドライブ615が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア621が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部613にインストールされる。
【0188】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0189】
この記録媒体は、例えば、図14に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、若しくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア621により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM602や、記憶部613に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0190】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0191】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0192】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0193】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0194】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1) 画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行う第1の画像処理部と、
前記第1の画像処理部により高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成するディティール成分生成部と、
前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する強調部と
を備える画像処理装置。
(2) 前記画像処理は、不要な高周波成分を低減させる処理である
前記(1)に記載の画像処理装置。
(3) 前記画像処理は、所望の領域の前記不要な高周波成分を低減させる美化処理である
前記(2)に記載の画像処理装置。
(4) 前記美化処理は、肌領域の前記不要な高周波成分を低減させる美肌処理である
前記(3)に記載の画像処理装置。
(5) 前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、
前記第1の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部と
をさらに備え、
前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行うように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御する
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像処理装置。
(6) 互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部をさらに備え、
前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記合成部により生成された前記画像のディティールを強調する
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の画像処理装置。
(7) 前記露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、
前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行う
前記(6)に記載の画像処理装置。
(8) 前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部をさらに備え、
前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記第2の画像処理部により前記画像処理が行われた前記画像のディティールを強調する
前記(6)または(7)に記載の画像処理装置。
(9) 前記第1の画像処理部により前記画像処理が施された前記成分を含む、互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部と、
前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部と、
前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、
前記第1の画像処理部および前記第2の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部と
をさらに備え、
前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御する
前記(1)に記載の画像処理装置。
(10) 前記互いに露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、
前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行う
前記(9)に記載の画像処理装置。
(11) 画像処理装置の画像処理方法であって、
前記画像処理装置の第1の画像処理部が、画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行い、
前記画像処理装置のディティール成分生成部が、高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成し、
前記画像処理装置の強調部が、生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する
画像処理方法。
【符号の説明】
【0195】
100 画像処理装置, 114 美化処理部, 200 画像処理装置, 300 画像処理装置, 311 制御部, 312 選択部, 313 美化処理部, 314 輝度成分抽出部, 315 照明分離フィルタ, 316 HDR圧縮処理部, 317 美化処理部, 318 絵画調処理部, 319 記憶部, 321 制御部, 322 ディティール生成部, 323 ディティール強調部, 361 除算部, 362 減算部, 363 乗算部, 364 加算部, 400 画像処理装置, 411 制御部, 412 選択部, 413 美化処理部, 414 輝度成分抽出部, 415 照明分離フィルタ, 416 HDR圧縮処理部, 417 選択部, 418 美化処理部, 419 絵画調処理部, 420 記憶部, 421 制御部, 422 ディティール生成部, 423 ディティール強調部, 500 撮像装置, 516 合成処理部, 517 現像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行う第1の画像処理部と、
前記第1の画像処理部により高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成するディティール成分生成部と、
前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する強調部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理は、不要な高周波成分を低減させる処理である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理は、所望の領域の前記不要な高周波成分を低減させる美化処理である
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記美化処理は、肌領域の前記不要な高周波成分を低減させる美肌処理である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、
前記第1の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部と
をさらに備え、
前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行うように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部をさらに備え、
前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記合成部により生成された前記画像のディティールを強調する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、
前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行う
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部をさらに備え、
前記強調部は、前記ディティール成分生成部により生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記第2の画像処理部により前記画像処理が行われた前記画像のディティールを強調する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の画像処理部により前記画像処理が施された前記成分を含む、互いに露出条件が異なる複数の画像を合成することで、輝度信号の階調範囲が圧縮された画像を生成する合成部と、
前記合成部により合成されて得られた前記画像に対して前記画像処理を行う第2の画像処理部と、
前記ディティール成分生成部が生成する前記ディティール成分の強調量を制御する強調量制御部と、
前記第1の画像処理部および前記第2の画像処理部により前記画像処理を行うか否かを制御する処理制御部と
をさらに備え、
前記処理制御部は、前記強調量制御部が前記強調量を大きな値に設定する場合、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御し、前記強調量制御部が前記強調量を小さな値に設定する場合、前記第2の画像処理部が前記画像処理を行い、前記第1の画像処理部が前記画像処理を行わないように制御する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記互いに露出条件が異なる複数の画像は、露出が適正値より抑制された露出アンダー画像、露出が適正値の適正露出画像、並びに、露出が適正値より増大された露出オーバー画像であり、
前記第1の画像処理部は、前記適正露出画像に対して前記画像処理を行う
請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
画像処理装置の画像処理方法であって、
前記画像処理装置の第1の画像処理部が、画像のディティール成分を生成するために用いられる高周波成分に影響を及ぼす画像処理を行い、
前記画像処理装置のディティール成分生成部が、高周波成分に影響を及ぼす画像処理が施された前記成分を用いて、強調された前記ディティール成分を生成し、
前記画像処理装置の強調部が、生成された、強調された前記ディティール成分を前記画像に合成することにより、前記画像のディティールを強調する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−247874(P2012−247874A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117468(P2011−117468)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】