説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】被検体にかかる負担を低減したうえで、心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成すること。
【解決手段】実施形態のX線診断装置は、差分画像生成部26bと、システム制御部21とを備える。差分画像生成部26bは、冠状動脈に注入された造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像から、被検体の心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成する。システム制御部21は、差分画像生成部26bにより生成された差分画像を表示部23に表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、循環器内科領域における心機能検査では、X線診断装置や、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置により撮影された医用画像を用いた画像診断が行なわれている。
【0003】
心機能検査における画像診断を支援する方法としては、医用画像診断装置により所定の時間間隔で収集された画像データに含まれる心臓に複数の点を設定し、設定した複数の点を追跡することで、心臓の運動機能が描出された画像を表示する方法が知られている。また、かかる方法としては、心筋の輝度値が心臓内腔の輝度値より高くなる撮影法により撮影されたMRI画像と、心臓内腔の輝度値が心筋の輝度値より高くなる造影剤を用いた撮影法により撮影されたMRI画像とから心筋の内膜および外膜を抽出して心臓の運動機能を解析する方法も知られている。
【0004】
一方、X線診断装置により撮影されたX線透過画像を用いた心機能検査では、一般的に、左心室造影(LVG:Left Ventriculography)が行なわれている。左心室造影は、心臓の左心室に挿入された左心室造影用のカテーテル(Pig Tail Catheter)から造影剤を注入することで、左心室が染影されたX線透過画像を撮影する方法である。左心室造影によりX線透過画像を連続撮影することで、医師は、心室の動く様相が描出された画像を参照して、心臓の運動機能低下などの診断を行なうことができる。また、左心室造影により撮影されたX線透過画像を用いて左心室の駆出率(EF:Ejection Fraction)を算出することで、医師は、心臓の運動機能を定量的に解析することができる。
【0005】
なお、通常、X線診断装置を用いた心機能検査では、最初に冠状動脈造影(Coronary Angiography)によりX線透過画像を撮影することで血管狭窄などの診断が行なわれた後に、左心室造影による診断が行なわれる。
【0006】
ところで、上記した左心室造影では、左心室内をまんべんなく造影する必要があるため、1回の左心室造影撮影において、例えば、30mlの造影剤が注入される。これに対して、冠状動脈造影で必要とされる造影剤の量は、6ml〜15mlである。このように、左心室造影を行うためには、多量の造影剤を注入する必要がある。また、1回の検査で被検体に注入される造影剤の量には、腎機能に負担がかかることを回避するために上限値が設けられており、多量の造影剤を注入する必要がある左心室造影は、繰り返して複数回数行なうことが困難である。
【0007】
また、冠状動脈造影の撮影時間は、約5秒間程度であるのに対し、左心室造影の撮影時間は、約10〜20秒間と長く、左心室造影では、X線被曝量が増大する。また、左心室造影は、上述したように専用のカテーテルを用いる必要がある。このため、冠状動脈造影後に左心室造影を行なう場合、冠状動脈造影用のカテーテルを抜いた後に、左心室造影用のカテーテルを被検体に挿入する必要があり、検査に要する時間は増大する。
【0008】
このように、左心室造影により撮影されたX線透過画像を用いて心臓の運動機能を解析するためには、被検体に負担がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−289799号公報
【特許文献2】特開2009−273815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、被検体にかかる負担を低減したうえで、心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成することが可能となる画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の画像処理装置は、差分画像生成部と、表示制御部とを備える。差分画像生成部は、冠状動脈に注入された造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像から、前記被検体の心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成する。表示制御部は、前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を所定の表示部に表示するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、実施例1に係る画像処理部の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、画像選択部の選択対象となるX線透過画像を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、画像選択部を説明するための図(1)である。
【図4B】図4Bは、画像選択部を説明するための図(2)である。
【図4C】図4Cは、画像選択部を説明するための図(3)である。
【図5A】図5Aは、差分画像生成部を説明するための図(1)である。
【図5B】図5Bは、差分画像生成部を説明するための図(2)である。
【図6】図6は、実施例1に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図8A】図8Aは、トレース部を説明するための図(1)である。
【図8B】図8Bは、トレース部を説明するための図(2)である。
【図9】図9は、実施例2に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、実施例3に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、面積比算出部を説明するための図(1)である。
【図12】図12は、面積比算出部を説明するための図(2)である。
【図13】図13は、実施例3に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、実施例4に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図15】図15は、距離算出部を説明するための図(1)である。
【図16A】図16Aは、距離算出部を説明するための図(2)である。
【図16B】図16Bは、距離算出部を説明するための図(3)である。
【図16C】図16Cは、距離算出部を説明するための図(4)である。
【図17】図17は、実施例4に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】図18は、実施例5に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【図19】図19は、X線灌流画像生成部を説明するための図である。
【図20】図20は、補正部を説明するための図である。
【図21】図21は、実施例5に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像処理装置および画像処理方法の実施例を詳細に説明する。以下では、本発明に係る画像処理方法を実行する画像処理装置がX線診断装置に組み込まれている場合を実施例として説明する。なお、以下に示す実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1に係るX線診断装置の構成について説明する。図1は、実施例1に係るX線診断装置の構成を説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、実施例1に係るにX線診断装置は、高電圧発生器11と、X線管12と、X線絞り装置13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16と、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御部19と、絞り制御部20と、システム制御部21と、入力部22と、表示部23と、画像生成部24と、画像記憶部25と、画像処理部26とを有する。さらに、図1に示すように、実施例1に係るにX線診断装置では、被検体Pに装着された心電計30が画像処理部26と接続される。
【0016】
心電計30は、被検体Pの心電波形を取得し、取得した心電波形を、時間情報とともに、後述する画像処理部26に送信する。
【0017】
高電圧発生器11は、高電圧を発生する装置であり、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給された高電圧によりX線を発生する。
【0018】
X線絞り装置13は、X線管12が発生したX線を被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込むための装置である。例えば、X線絞り装置13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせる。これにより、X線管12が発生したX線は、例えば、被検体Pの心臓を含む関心領域に選択的に照射される。
【0019】
天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0020】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出するための複数のX線検出素子が配列された装置であり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像生成部24に送信する。
【0021】
Cアーム15は、X線管12、X線絞り装置13およびX線検出器16を保持するアームである。Cアーム15により、「X線管12およびX線絞り装置13」とX線検出器16とは、被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0022】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転および移動させるための装置であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための装置である。
【0023】
Cアーム・天板機構制御部19は、Cアーム回転・移動機構17および天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転調整および移動調整と、天板14の移動調整とを行なう。
【0024】
絞り制御部20は、X線絞り装置13が有する絞り羽根の開度を調整することで、X線の照射範囲を制御する。
【0025】
画像生成部24は、X線検出器16により被検体Pを透過したX線から変換された電気信号を用いてX線透過画像を生成し、生成したX線透過画像を画像記憶部25に格納する。
【0026】
画像記憶部25は、画像生成部24により生成されたX線透過画像を記憶する。具体的には、画像記憶部25は、画像生成部24により生成されたX線透過画像を撮影時間に対応付けて記憶する。
【0027】
画像処理部26は、画像記憶部25が記憶するX線透過画像に対して各種画像処理を実行する処理部である。なお、画像処理部26が実行する画像処理については、後に詳述する。
【0028】
入力部22は、X線診断装置を操作する医師や技師などの操作者が各種コマンドを入力するために用いるマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有する。そして、入力部22は、操作者から受け付けたコマンドを、後述するシステム制御部21に転送する。
【0029】
表示部23は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイなどのモニタを有する。表示部23は、入力部22を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、画像記憶部25が記憶するX線透過画像や画像処理部26により画像処理されたX線透過画像などを表示したりする。
【0030】
システム制御部21は、X線診断装置全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部21は、入力部22から転送された操作者からのコマンドに基づいて、高電圧発生器11、Cアーム・天板機構制御部19、絞り制御部20を制御することで、X線量の調整およびX線照射のON/OFF制御、Cアーム15の回転・移動の調整、天板14の移動調整などを行なう。
【0031】
また、システム制御部21は、操作者からのコマンドに基づいて、画像生成部24および画像処理部26の制御を行なう。さらに、システム制御部21は、操作者からコマンドを受け付けるためのGUIや、画像記憶部25が記憶するX線透過画像および画像処理部26により画像処理された画像を表示部23のモニタに表示するように制御する。
【0032】
以上、実施例1に係るX線診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、実施例1に係るX線診断装置は、被検体Pの心臓を撮影したX線透過画像を生成する。具体的には、実施例1に係るX線診断装置は、冠状動脈に造影剤が注入された被検体Pの心臓に対してX線を照射してX線透過画像を生成する。そして、実施例1に係るX線診断装置は、以下に説明する画像処理部26の画像処理により、被検体Pにかかる負担を低減したうえで、心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成する。具体的には、実施例1に係る画像処理部26は、冠状動脈造影により心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成する。図2は、実施例1に係る画像処理部の構成を説明するための図である。
【0033】
図2に示すように、実施例1に係る画像処理部26は、画像選択部26aおよび差分画像生成部26bを有する。
【0034】
画像選択部26aは、画像記憶部25に格納されているX線透過画像から、差分画像生成部26bの処理対象となるX線透過画像を選択する。例えば、冠状動脈造影によるX線透過画像の撮影が終了した後に、操作者が入力部22を介して画像処理要求を入力すると、システム制御部21は、画像選択部26aが処理を開始するように制御する。
【0035】
図3は、画像選択部の選択対象となるX線透過画像を説明するための図である。図3に示すように、画像記憶部25は、冠状動脈造影により造影剤が冠状動脈に注入された被検体Pの心臓を時系列に沿って撮影した複数のX線透過画像を記憶している。なお、図3には示さないが、画像記憶部25は、冠状動脈造影前に被検体Pの心臓を撮影した複数のX線透過画像も記憶している。
【0036】
画像選択部26aは、図3に示す冠状動脈造影後に時系列に沿って生成された複数のX線透過画像から、被検体Pの心筋組織が染影された第1のX線透過画像を選択する。具体的には、画像選択部26aは、画像内の低周波成分に基づいて、第1のX線透過画像を選択する。図4A、図4Bおよび図4Cは、画像選択部を説明するための図である。
【0037】
冠状動脈に注入された造影剤は、心臓内の血管に流入した後、心筋組織の細胞間質に流入する。したがって、冠状動脈造影後のX線透過画像における血管の染影度は、図4Aに示すように、造影剤注入前の時点(図中の「時間:A」を参照)から時系列に沿って急激に上昇してピークに達し(図中の「時間:B」を参照)、その後、低下する。そして、冠状動脈造影後のX線透過画像における心筋組織の染影度は、図4Aに示すように、血管の染影度に遅れて緩やかに上昇してピークに達し(図中の「時間:C」を参照)、その後、低下する。ここで、血管の染影度のピーク値は、図4Aに示すように、心筋組織の染影度のピーク値と比較して高い。
【0038】
そこで、画像選択部26aは、冠状動脈造影後の時系列に沿った複数のX線透過画像に対してLPF(Low Pass Filter)処理を行なうことで、画像内の低周波成分を抽出する。そして、画像選択部26aは、抽出した低周波成分が所定の閾値以上となるX線透過画像を選択することで、被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像を選択する。
【0039】
ここで、画像選択部26aは、X線透過画像の撮影時間と、心電計30から時間情報とともに取得した被検体Pの心電波形とに基づいて、被検体Pの心臓の1心拍分における複数の第1のX線透過画像(第1のX線透過画像群)を選択する。すなわち、画像選択部26aは、図4Aに示すように、収縮期と拡張期とを含む1心拍分の第1のX線透過画像群を選択する。
【0040】
また、画像選択部26aは、図4Aに示すように、造影剤注入直前に生成されたX線透過画像を、被検体Pの心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像として選択する。なお、画像選択部26aは、冠状動脈造影後のX線透過画像において、心筋の細胞間質から造影剤が静脈内に流出された後のX線透過画像を第2のX線透過画像として選択する場合であってもよい。
【0041】
図2に戻って、差分画像生成部26bは、第1のX線透過画像から、第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成する。すなわち、差分画像生成部26bは、第2のX線透過画像を背景画像とし、第1のX線透過画像から第2のX線透過画像を差分することで、心筋組織の染影が強調された差分画像を生成する。図5Aおよび図5Bは、差分画像生成部を説明するための図である。
【0042】
具体的には、差分画像生成部26bは、図5Aに示すように、1心拍分の第1のX線透過画像群それぞれから第2のX線透過画像を差分することで、複数の差分画像を生成する。
【0043】
そして、図1および図2に示すシステム制御部21は、差分画像生成部26bにより生成された差分画像を表示部23にて表示するように制御する。具体的には、システム制御部21は、差分画像生成部26bにより生成された複数の差分画像(差分画像群)を表示部23にて動画表示するように制御する。血管が略描出されずに心筋組織の染影が強調された差分画像群が動画表示されることで、医師は、心筋組織が動く様相を詳細に観察することができる。あるいは、システム制御部21は、操作者の設定により、複数の差分画像を表示部23にて並列表示するように制御する。
【0044】
なお、上記では、画像選択部26aが画像内の低周波成分に基づいて、第1のX線透過画像を選択する場合について説明した。しかし、本実施例1は、画像選択部26aが、造影剤投与時からの経過時間に基づいて、第1のX線透過画像を選択する場合であってもよい。具体的には、画像選択部26aは、操作者により予め設定された経過時間を含む所定の時間内に生成された複数のX線透過画像を第1のX線透過画像群として選択する。例えば、操作者は、心筋組織の染影度がピークとなることが推定される経過時間(図4Aに示す「時間:C」)および所定の時間「a」を設定する。かかる場合、画像選択部26aは、造影剤投与時からの経過時間「C−a」から経過時間「C+a」の間に生成された複数のX線透過画像を第1のX線透過画像群として選択する。ここで、操作者が時間「2×a」を被検体Pの平均RR間隔に設定することで、画像選択部26aは、1心拍分の複数のX線透過画像を第1のX線透過画像群として選択することができる。
【0045】
また、上記で説明した低周波成分に基づく画像選択は、以下に説明する方法により行なわれる場合であってもよい。すなわち、画像選択部26aは、冠状動脈造影の時系列に沿った複数のX線透過画像それぞれの血管成分が低減された画像に基づいて、第1のX線画像を選択する。具体的には、画像選択部26aは、図4Bに示すように、冠状動脈造影によるX線透過画像群それぞれから、背景差分により骨などの成分を除去する。そして、画像選択部26aは、図4Bに示すように、冠状動脈造影によるX線透過画像群それぞれに対して、HPF(High Pass Filter)処理を行なうことで、血管成分が主に描出されたHPF画像を生成する。また、画像選択部26aは、図4Bに示すように、冠状動脈造影によるX線透過画像群それぞれに対して、LPF処理を行なうことで、血管成分以外が主に描出されたLPF画像を生成する。すなわち、LPF画像は、血管成分が低減された画像となる。
【0046】
そして、画像選択部26aは、各HPF画像全体の平均輝度値や、各HPF画像内に設定された関心領域の平均輝度値を算出し、算出した平均輝度値を時間軸に沿ってプロットすることで、図4Bに示すように、血管の造影剤濃度変化に対応する時間変化曲線を生成する。同様に、画像選択部26aは、各LPF画像全体の平均輝度値や、各LPF画像内に設定された関心領域の平均輝度値を算出し、算出した平均輝度値を時間軸に沿ってプロットすることで、図4Bに示すように、心筋組織の造影剤濃度変化に対応する時間変化曲線を生成する。LPF画像内に関心領域を設定する場合、例えば、画像選択部26aは、LPF画像内の各画素の輝度値から重心の位置を決定する。そして、画像選択部26aは、例えば、決定した重心を中心とし、画像サイズの半分の長さを直径とする円を関心領域として設定する。
【0047】
そして、画像選択部26aは、図4Bに示すように、心筋組織の時間変化曲線と血管の時間変化曲線とが交わる時点から1心拍後の時点までのX線透過画像群を、第1のX線透過画像群として選択する。あるいは、画像選択部26aは、図4Bに示すように、心筋組織の時間変化曲線にて輝度値がピークとなる時点を挟んで1心拍分の範囲にあるX線透過画像群を、第1のX線透過画像群として選択する。なお、心筋組織の時間変化曲線のみを用いて第1のX線透過画像群を選択する場合は、LPF画像のみを生成して画像選択処理を行なってもよい。
【0048】
このように、血管を染影することを目的として行なわれる冠状動脈造影により撮影されたX線透過画像群から心筋組織の染影が強調された差分画像を生成するためには、血管成分を低減したLPF画像を用いて第1のX線透過画像群を選択することが望ましい。
【0049】
また、本実施例1は、画像選択部26aが、画像全体の平均輝度値に基づいて、第1のX線透過画像を選択する場合であってもよい。すなわち、画像選択部26aは、図4Cに示すように、冠状動脈造影によるX線透過画像群それぞれから、背景差分により骨などの成分を除去する。そして、画像選択部26aは、背景差分が行なわれた画像それぞれにおいて、画像全体の平均輝度値を算出する。そして、画像選択部26aは、図4Cに示すように、画像全体の平均輝度値を時間軸に沿ってプロットした時間変化曲線を生成する。ここで、心臓において、血管が占める体積と、心筋組織が占める体積とでは、心筋組織が占める体積の方が大きい。従って、画像全体の平均輝度値がピークとなる時点のX線透過画像では、心筋組織が主に染影されていることが推定される。そこで、画像選択部26aは、例えば、図4Cに示すように、画像全体の平均輝度値がピークとなる時点を挟んで1心拍分の範囲にあるX線透過画像群を選択する。そして、画像選択部26aは、図4Cに示すように、画像全体の平均輝度値から選択したX線透過画像群それぞれから血管成分を除去したLPF画像群を生成し、生成したLPF画像群を第1のX線透過画像群とする。
【0050】
なお、画像選択部26aは、画像全体の平均輝度値がピークとなる時点を挟んで1心拍分の範囲にあるX線透過画像群を、第1のX線透過画像群として選択してもよい。
【0051】
また、図5Aに示す差分画像群は、2回の冠状動脈造影により生成される場合であってもよい。冠状動脈は、左冠状動脈と右冠状動脈とに大別され、心筋組織は、左冠状動脈により栄養される心筋組織と、右冠状動脈により栄養される心筋組織とに大別される。従って、心筋組織全体の染影が強調された差分画像を確実に生成するためには、図5Bに示すように、左冠状動脈造影と右冠状動脈造影とを2回にわたり行なうことが望ましい場合がある。
【0052】
かかる場合、画像選択部26aは、図5Bに示すように、左冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から左冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を「左冠状動脈造影による第1のX線透過画像」として選択する。具体的には、画像選択部26aは、1心拍分の「左冠状動脈造影による第1のX線透過画像群」を選択する。また、画像選択部26aは、図5Bに示すように、右冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から右冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を「右冠状動脈造影による第1のX線透過画像」として選択する。具体的には、画像選択部26aは、1心拍分の「右冠状動脈造影による第1のX線透過画像群」を選択する。なお、「左冠状動脈造影による第1のX線透過画像」および「右冠状動脈造影による第1のX線透過画像」の選択方法は、上述した方法から指定された方法により実行される。
【0053】
そして、差分画像生成部26bは、左冠状動脈造影による第1のX線透過画像および右冠状動脈造影による第1のX線透過画像それぞれから第2のX線透過画像を差分することで、図5Bに示すように、左冠状動脈造影による差分画像および右冠状動脈造影による差分画像を生成する。そして、差分画像生成部26bは、生成した2つの差分画像を合成することで、差分画像を生成する。具体的には、同一の心位相における左冠状動脈造影による差分画像および右冠状動脈造影による差分画像を合成することで差分画像を生成する。
【0054】
また、上記では、画像選択部26aが1心拍分の第1のX線透過画像を選択する場合について説明した。しかし、本実施例1は、画像選択部26aが2心拍以上の第1のX線透過画像を選択する場合であってよい。さらに、本実施例1は、画像選択部26aが被検体Pの心位相に関わらず、被検体Pの心筋組織が染影された複数の第1のX線透過画像を選択する場合であってもよい。かかる場合でも、差分画像生成部26bは、複数の第1のX線透過画像それぞれから第2のX線透過画像を差分した複数の差分画像を生成し、システム制御部21は、複数の差分画像を表示部23にて動画表示または並列表示するように制御する。
【0055】
また、上記では、画像選択部26aが複数の第1のX線透過画像を選択する場合について説明した。しかし、本実施例1は、画像選択部26aが一つの第1のX線透過画像を選択する場合であってもよい。かかる場合、差分画像生成部26bは、一つの第1のX線透過画像から第2のX線透過画像を差分した一つの差分画像を生成し、システム制御部21は、一つの差分画像を表示部23にて表示するように制御する。
【0056】
また、上記では、画像選択部26aが第2のX線透過画像を選択する場合について説明した。しかし、本実施例1は、操作者が第2のX線透過画像を選択する場合であってもよい。また、上記では、画像選択部26aが第1のX線透過画像を選択する場合について説明した。しかし、本実施例1は、操作者が第1のX線透過画像を選択する場合であってもよい。
【0057】
操作者が差分画像生成部26bの処理に用いるX線透過画像を選択する場合、システム制御部21は、操作者からの要求に応じて、画像記憶部25に格納されている複数のX線透過画像を読み出して表示部23に表示させる。そして、操作者は、入力部22のマウスなど用いて、表示部23に表示された複数のX線透過画像から、心筋組織が染影されているX線透過画像を第1のX線透過画像として選択し、心筋組織が染影されていないX線透過画像を第2のX線透過画像として選択する。そして、システム制御部21は、操作者が第1のX線透過画像として選択したX線透過画像と、操作者が第2のX線透過画像として選択したX線透過画像とを差分画像生成部26bに転送する。そして、システム制御部21は、差分画像生成部26bが生成した差分画像を表示部23に表示させる。
【0058】
次に、図6を用いて、実施例1に係るX線診断装置の処理について説明する。図6は、実施例1に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図6では、冠状動脈造影によりX線透過画像の撮影が行なわれて、複数のX線透過画像が画像記憶部25に格納された後の処理について説明する。
【0059】
図6に示すように、実施例1に係るX線診断装置は、操作者から入力部22を介して画像処理要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、画像処理要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、X線診断装置は待機状態となる。一方、画像処理要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、画像選択部26aは、被検体Pの心筋組織が染影された第1のX線透過画像群および被検体Pの心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を選択する(ステップS102)。具体的には、画像選択部26aは、画像記憶部25に格納されているX線透過画像から、画像内の低周波成分に基づいて、被検体Pの心筋組織が染影された複数の第1のX線透過画像を選択する。より具体的には、画像選択部26aは、X線透過画像の撮影時間と、心電計30から時間情報とともに取得した被検体Pの心電波形とに基づいて、被検体Pの心臓の1心拍分における複数の第1のX線透過画像を選択する。
【0060】
そして、差分画像生成部26bは、第1のX線透過画像群それぞれから第2のX線透過画像を差分して差分画像群を生成する(ステップS103)。その後、システム制御部21は、差分画像群を表示部23に表示するように制御し(ステップS104)、処理を終了する。
【0061】
上述してきたように、実施例1では、差分画像生成部26bは、冠状動脈に注入された造影剤により被検体Pの心筋組織が染影された第1のX線透過画像から、被検体Pの心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成する。そして、システム制御部21は、差分画像生成部26bにより生成された差分画像を表示部23に表示するように制御する。
【0062】
すなわち、実施例1では、心筋組織の染影が強調された差分画像を生成して表示するので、医師は、心筋組織が描出された差分画像を参照することで、心臓の運動機能を診断することができる。また、実施例1では、左心室造影を行なうことなく、冠状動脈造影のみで差分画像を生成するので、多量の造影剤を注入することを回避することができ、さらに、X線の被曝量を低減することができる。また、実施例1では、冠状動脈造影を行なうだけなので、冠状動脈造影用のカテーテルを抜いた後に、心室造影用のカテーテルを被検体に挿入する必要がなく、検査時間を短縮することができる。また、実施例1では、冠状動脈造影のみで、血管狭窄の診断も、心臓の運動機能の解析と同時に行なうことができる。したがって、実施例1によれば、被検体Pにかかる負担を低減したうえで、心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成することが可能となる。
【0063】
また、実施例1では、差分画像生成部26bは、複数の第1のX線透過画像それぞれから複数の差分画像を生成し、システム制御部21は、差分画像生成部26bにより生成された複数の差分画像を表示部23に動画表示、または並列表示するように制御する。したがって、実施例1によれば、医師は、拍動にともなう心筋組織の運動の状態を解析することが可能となる。特に、血管が略描出されずに心筋組織の染影が強調された複数の差分画像が動画表示されることで、医師は、心筋組織が動く様相を詳細に観察することができる。
【0064】
また、実施例1では、画像選択部26aは、冠状動脈造影により時系列に沿って撮影された複数のX線透過画像から、画像内の低周波成分に基づいて、第1のX線透過画像を選択する。そして、差分画像生成部26bは、画像選択部26aにより選択された第1のX線透過画像から差分画像を生成する。したがって、実施例1では、第1のX線透過画像の選択処理を自動的に行なうことができ、医師にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0065】
また、実施例1では、画像選択部26aは、被検体Pの心臓の少なくとも1心拍分における複数の第1のX線透過画像を選択する。したがって、実施例1では、1心拍分の差分画像群が動画表示、または並列表示されるので、医師は、拍動にともなう心筋組織の運動の状態を詳細に解析することが可能となる。特に、血管が略描出されずに心筋組織の染影が強調された1心拍分の差分画像群が動画表示されることで、医師は、心筋組織が動く様相を1心拍に渡ってより詳細に観察することができる。
【0066】
なお、上述した差分画像は、例えば、カテーテルアブレーション (catheter ablation)による不整脈治療においても有用である。カテーテルアブレーションとは、血管を通して心臓に挿入したカテーテルを不整脈の要因となる心筋に当てた状態で、カテーテル先端から高周波電流を流して当該心筋を焼灼して不整脈を根治する治療方法である。しかし、カテーテルアブレーション実行時にリアルタイムで表示されているX線透過画像を参照しても、不整脈の要因となる心筋にカテーテルが当たっているか否かを判断することが困難な場合がある。そこで、カテーテルアブレーション実行時にリアルタイムで表示されているX線透過画像に、生成済みの差分画像を合成して表示することで、医師は、確実に不整脈の要因となる心筋にカテーテルを当てることができる。すなわち、差分画像を用いることで、不整脈治療の精度を向上させることが可能となる。
【0067】
また、上述した差分画像は、再生医療においても有用である。近年の再生医療技術の進歩により、心筋に幹細胞や細胞増殖因子を直接投与することで、心筋の梗塞部位を再生することが可能となっている。幹細胞や細胞増殖因子の投与方法の一つとして、カテーテルなどの管状デバイスを用いて体外から送り込む方法が提案されている。かかる場合、管状デバイスの先端は、正確に心筋の梗塞部位に当てることが必要となる。そこで、上記したカテーテルアブレーションの場合と同様に、X線透過画像に差分画像を合成して表示することで、医師は、確実に心筋の梗塞部位に管状デバイスを当てることができる。
【0068】
具体的には、差分画像を作成し、差分画像において、正常領域、壁運動低下や虚血がみられる領域、境界領域、を判断する。そしてカテーテルを心室に入れ、カテーテルの先端から細胞を注入する際に、この差分画像を参照し、境界領域および虚血領域に安全に細胞を導入する。
【実施例2】
【0069】
実施例2では、差分画像に描出されている心筋組織の形状を強調して表示する場合について、図7および8を用いて説明する。なお、図7は、実施例2に係るX線診断装置の構成を説明するための図であり、図8Aおよび図8Bは、トレース部を説明するための図である。
【0070】
まず、図7に示すように、実施例2に係る画像処理部26は、図2を用いて説明した実施例1に係る画像処理部26と比較して、トレース部26cをさらに有する点が異なる。以下、これを中心にして説明する。なお、図7に示す画像選択部26aおよび差分画像生成部26bの処理は、実施例1で説明した処理と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
トレース部26cは、差分画像生成部26bにより生成された差分画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成する。例えば、トレース部26cは、画素値が所定の値以上となる画素により囲まれる領域を高輝度領域として抽出することで、図8Aに示すように、高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成する。ここで、複数の差分画像が生成されている場合、トレース部26cは、各差分画像において高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成する。
【0072】
すなわち、トレース部26cは、造影剤で染影された心筋組織の形状をトレースした曲線を生成する。なお、図5Bで説明したように、左冠状動脈造影と右冠状動脈造影とが2回にわたり行なわれた場合、トレース部26cは、以下に説明する処理により、造影剤で染影された心筋組織全体の形状をトレースした曲線を生成する。すなわち、トレース部26cは、左冠状動脈造影による差分画像および右冠状動脈造影による差分画像を合成することで生成された差分画像から、造影剤で染影された心筋組織全体の形状をトレースした曲線を生成する。あるいは、トレース部26cは、左冠状動脈造影による差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線と、前記右冠状動脈造影による差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線とをそれぞれ生成し、当該生成した2つの曲線を合成することで、造影剤で染影された心筋組織全体の形状をトレースした曲線を生成する。
【0073】
ここで、トレース部26cによるトレース処理では、図8Aに示すように、大動脈弁が位置する領域近傍がトレースされにくい場合がある。かかる場合、トレース部26cは、血管が染影された画像を差分画像と合成したうえで、曲線を生成する。すなわち、トレース部26cは、図8Bに示すように、心筋組織が強調された差分画像と、通常の冠状動脈造影により撮影されるX線透視画像(血管が見えやすい画像)とを合成することで、合成画像を生成する。そして、トレース部26cは、図8Bに示すように、合成画像を用いてトレースを行なう。これにより、トレース部26cは、図8Bに示すように、左心室の終端に位置する大動脈弁の位置が容易に把握できる曲線を生成することができる。すなわち、トレース部26cは、血管が染影された画像を用いることで、心筋組織の全体の形状をトレースした曲線を確実に生成することができる。
【0074】
そして、システム制御部21は、差分画像とともに、トレース部26cにより生成された曲線をさらに表示部23に表示するように制御する。すなわち、システム制御部21は、高輝度領域の輪郭をトレースした曲線が描出された差分画像を表示させる。具体的には、システム制御部21は、高輝度領域の輪郭をトレースした曲線が描出された複数の差分画像を動画表示させる。あるいは、システム制御部21は、高輝度領域の輪郭をトレースした曲線が描出された複数の差分画像を並列表示させる。
【0075】
なお、上記では、トレース部26cによりトレース処理を自動的に行なう場合について説明した。しかし、本実施例2は、画像処理部26が有する描画機能を用いて、操作者が差分画像にて高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を設定する場合であってもよい。
【0076】
次に、図9を用いて、実施例2に係るX線診断装置の処理について説明する。図9は、実施例2に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図9では、冠状動脈造影によりX線透過画像の撮影が行なわれて、複数のX線透過画像が画像記憶部25に格納された後の処理について説明する。
【0077】
図9に示すように、実施例2に係るX線診断装置は、操作者から入力部22を介して画像処理要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、画像処理要求を受け付けない場合(ステップS201否定)、X線診断装置は待機状態となる。一方、画像処理要求を受け付けた場合(ステップS201肯定)、画像選択部26aは、被検体Pの心筋組織が染影された第1のX線透過画像群および被検体Pの心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を選択する(ステップS202)。
【0078】
そして、差分画像生成部26bは、第1のX線透過画像群それぞれから第2のX線透過画像を差分して差分画像群を生成する(ステップS203)。その後、トレース部26cは、差分画像群それぞれにおいて高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成する(ステップS204)。
【0079】
そして、システム制御部21は、トレース結果が描出された差分画像群を表示部23に表示するように制御し(ステップS205)、処理を終了する。
【0080】
上述してきたように、実施例2では、トレース部26cは、差分画像生成部26bにより生成された差分画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成する。そして、システム制御部21は、差分画像とともに、トレース部26cにより生成された曲線をさらに表示部23に表示するように制御する。
【0081】
すなわち、実施例2によれば、差分画像内の高輝度領域をトレースした結果をさらに表示するので、医師は、造影剤で染影された心筋組織の形状を明確に観察することが可能となる。また、実施例2によれば、トレース処理を自動的に行なうことができるので、医師にかかる負担を軽減することが可能となる。
【実施例3】
【0082】
実施例3では、差分画像を用いて心臓の運動機能を定量的に解析できる指標値を算出する場合について、図10〜12を用いて説明する。なお、図10は、実施例3に係るX線診断装置の構成を説明するための図であり、図11および12は、面積比算出部を説明するための図である。
【0083】
まず、図10に示すように、実施例3に係る画像処理部26は、図7を用いて説明した実施例2に係る画像処理部26と比較して、面積比算出部26dをさらに有する点が異なる。以下、これを中心にして説明する。なお、図10に示す画像選択部26aおよび差分画像生成部26bの処理は、実施例1で説明した処理と同様であり、図10に示すトレース部26cの処理は、実施例2で説明した処理と同様であるので、説明を省略する。
【0084】
面積比算出部26dは、差分画像に対するトレース部26cの処理結果から駆出率(EF:Ejection Fraction)に対応する指標値(面積比)を算出する。具体的には、面積比算出部26dは、1心拍分の第1のX線透過画像群から生成された1心拍分の差分画像群のうち、収縮期の差分画像および拡張期の差分画像それぞれに対してトレース部26cが生成した曲線を用いて面積比の算出処理を行なう。なお、面積比の算出処理は、収縮末期の差分画像および拡張末期の差分画像を用いて行なわれることが望ましい。
【0085】
より具体的には、面積比算出部26dは、収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積(面積1)を算出する。さらに、面積比算出部26dは、拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の内側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積(面積2)を算出する。そして、面積比算出部26dは、面積1と面積2との面積比「100×(面積2−面積1)/面積2」を算出する。ここで、収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側をトレースした曲線は、収縮期の心壁内側に略対応する曲線となり、拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側をトレースした曲線は、拡張期の心壁内側に略対応する曲線となる。したがって、面積1と面積2との面積比は、従来、左心室造影により撮影されたX線透過画像から算出されていた駆出率に対応する指標値となる。
【0086】
また、面積比算出部26dは、収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の外側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積(面積3)を算出する。さらに、面積比算出部26dは、拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の外側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積(面積4)を算出する。そして、面積比算出部26dは、面積3と面積4との面積比「100×(面積4−面積3)/面積4」を算出する。ここで、収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の外側をトレースした曲線は、収縮期の心壁外側に略対応する曲線となり、拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の外側をトレースした曲線は、拡張期の心壁外側に略対応する曲線となる。したがって、面積3と面積4との面積比は、心壁外側の拍動にともなう運動の状態を示す新規の指標値となる。このように、面積比算出部26dは、心臓の拍動にともなう運動の状態を解析するための指標値として、心壁内側の駆出率および心壁外側の駆出率に対応する2つの面積比を算出する。
【0087】
例えば、面積比算出部26dは、図11に示すように、収縮期の差分画像のトレース結果から面積1を算出し、拡張期の差分画像のトレース結果から面積2を算出する。そして、面積比算出部26dは、図11に示すように、「100×(面積2−面積1)/面積2=74.7%」を算出する。
【0088】
また、面積比算出部26dは、図12に示すように、収縮期の差分画像のトレース結果から面積3を算出し、拡張期の差分画像のトレース結果から面積4を算出する。そして、面積比算出部26dは、図12に示すように、「100×(面積4−面積3)/面積4=8.4%」を算出する。
【0089】
そして、システム制御部21は、面積比算出部26dが算出した2つの面積比を表示部23に表示するように制御する。これにより、医師は、例えば、面積1と面積2との面積比が「74.7%」であり、心壁の内側が拍動にともない正常に収縮していることから、心臓が正常な運動状態であることを確認できる。また、医師は、面積3と面積4との面積比が「8.4%」であり、心壁の外側が拍動によりわずかしか動いていないことから、心臓が正常な運動状態であることを確認できる。
【0090】
なお、面積比算出部26dは、面積比を算出するために算出した面積から、新たな指標値を算出する場合であってもよい。具体的には、面積比算出部26dは、差分画像に描出される高輝度領域の輪郭により囲まれる領域の面積を新たな指標値として算出する。より具体的には、面積比算出部26dは、面積2から面積1を差分した面積を心壁の内側の収縮状態を示す指標値として算出する。また、面積比算出部26dは、面積4から面積3を差分した面積を心壁の外側の収縮状態を示す指標値として算出する。あるいは、面積比算出部26dは、面積4から面積2を差分した面積を拡張期における心筋組織の大きさを示す指標値として算出する。また、面積比算出部26dは、面積3から面積1を差分した面積を収縮期における心筋組織の大きさを示す指標値として算出する。なお、心壁の収縮を示す面積や心筋組織の大きさを示す面積は、例えば、1心拍分の複数の差分画像から複数算出される場合であってもよい。また、面積比算出部26dは、算出した面積を体積に変換することで、心壁の収縮や心筋組織の大きさを示す指標値を算出する場合であってもよい。
【0091】
次に、図13を用いて、実施例3に係るX線診断装置の処理について説明する。図13は、実施例3に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図13では、トレース部26cが1心拍分の差分画像群それぞれに対して高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成した後の処理について説明する。
【0092】
図13に示すように、実施例3に係るX線診断装置は、収縮期および拡張期のそれぞれの差分画像に対するトレース結果が出力されたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、トレース結果が出力されていない場合(ステップS301否定)、X線診断装置は待機状態となる。一方、トレース結果が出力された場合(ステップS301肯定)、面積比算出部26dは、トレース結果から2つの面積比を算出する(ステップS302)。すなわち、面積比算出部26dは、「100×(面積2−面積1)/面積2」および「100×(面積4−面積3)/面積4」を算出する。
【0093】
そして、システム制御部21は、面積比算出部26dの算出結果を表示部23に表示するように制御し(ステップS303)、処理を終了する。
【0094】
上述してきたように、実施例3では、面積比算出部26dは、1心拍分の第1のX線透過画像群から生成された1心拍分の差分画像群のうち、収縮期の差分画像および拡張期の差分画像それぞれに対してトレース部26cが生成した曲線を用いて面積比の算出処理を行なう。すなわち、面積比算出部26dは、収縮期の差分画像および拡張期の差分画像それぞれのトレース結果から、心臓の拍動にともなう運動の状態を解析するための指標値として、心壁内側の駆出率および心壁外側の駆出率に対応する2つの面積比を算出する。したがって、実施例3では、心臓の運動機能を客観的に評価できる値を、冠状動脈造影のみで医師に提示することが可能となる。
【0095】
なお、面積比算出部26dは、高輝度領域の輪郭の内側をトレースした曲線を用いた面積比算出処理のみを行なう場合であってもよい。また、面積比算出部26dは、上述したように、トレース部26cのトレース結果を用いて面積比の算出処理を行なう場合であってもよいし、操作者が差分画像にて高輝度領域の輪郭をトレースした結果を用いて面積比の算出処理を行なう場合であってもよい。
【0096】
また、心壁内側の駆出率に対応する面積比は、拡張末期の差分画像における面積2と、1心拍分の差分画像群それぞれにおける輪郭の内側の曲線により囲まれる面積とを用いることで、各心位相において複数算出される場合であってもよい。同様に、心壁外側の駆出率に対応する面積比は、拡張末期の差分画像における面積4と、1心拍分の差分画像群それぞれにおける輪郭の外側の曲線により囲まれる面積とを用いることで、各心位相において複数算出される場合であってもよい。
【0097】
また、上記では、面積比の算出処理が高輝度領域をトレースした結果を用いて実行される場合について説明した。しかし、本実施例3は、以下に説明するように、複数の点を追跡する方法により面積比の算出処理を行なう場合であってもよい。かかる方法では、例えば、一つの差分画像における高輝度領域の輪郭の内側および外側を囲むように、手動または自動で複数の点が設定される。そして、面積比算出部26dは、例えば、画像間の局所的類似度に基づいて、設定された複数の点に対応する各点を他の差分画像において抽出する。そして、面積比算出部26dは、各差分画像にて抽出した複数の点により囲まれる面積を算出することで、駆出率に対応する面積比を算出する。
【実施例4】
【0098】
実施例4では、差分画像を用いて実施例3とは異なる指標値を算出する場合について、図14〜16を用いて説明する。なお、図14は、実施例4に係るX線診断装置の構成を説明するための図であり、図15と図16A、BおよびCとは、距離算出部を説明するための図である。
【0099】
まず、図14に示すように、実施例4に係る画像処理部26は、図7を用いて説明した実施例2に係る画像処理部26と比較して、距離算出部26eをさらに有する点が異なる。以下、これを中心にして説明する。なお、図14に示す画像選択部26aおよび差分画像生成部26bの処理は、実施例1で説明した処理と同様であり、図14に示すトレース部26cの処理は、実施例2で説明した処理と同様であるので、説明を省略する。なお、実施例4に係る画像処理部26は、実施例3で説明した面積比算出部26dを有する場合であってもよい。
【0100】
距離算出部26eは、差分画像に対するトレース部26cの処理結果から心筋組織の厚みに対応する指標値(距離)を算出する。具体的には、距離算出部26eは、差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側の曲線と、当該高輝度領域の輪郭の外側の曲線との距離を、心筋組織の厚みに対応する指標値として算出する。
【0101】
具体的には、距離算出部26eは、図15に示すように、トレース部26cのトレース処理後の1心拍分の差分画像群それぞれにおいて、高輝度領域の内側の曲線と外側の曲線との距離を算出する。そして、距離算出部26eは、図16Aに示すように、1心拍分の差分画像群それぞれから算出した距離を、被検体Pの平均RR間隔を100%とした場合の心位相に対応付けてプロットしたグラフを生成する。
【0102】
そして、システム制御部21は、距離算出部26eの算出結果として、例えば、図16Aに示すグラフを表示部23に表示するように制御する。
【0103】
なお、距離算出部26eは、高輝度領域の複数箇所で距離算出処理を行なう場合であってもよい。例えば、距離算出部26eは、図16Bに示すように、心臓前壁に相当する箇所「A」、心臓後壁に相当する箇所「B」および心尖部に相当する箇所「C」において、距離を算出する。そして、距離算出部26eは、図16Cに示すように、1心拍分の差分画像群それぞれから算出した「A,BおよびC」の三箇所の距離それぞれを、被検体Pの平均RR間隔を100%とした場合の心位相に対応付けてプロットしたグラフを生成する。そして、システム制御部21は、距離算出部26eの算出結果として、図16Cに示すグラフを表示部23に表示するように制御する。かかるグラフにおいて、「A,BおよびC」すべてのプロットで大きな振幅があれば、医師は、心臓が正常に拍動していると確認できる。一方、図16Cに示すグラフでは、「A」の振幅が小さいことから、医師は、心臓前壁の運動能が低下していると診断することができる。
【0104】
次に、図17を用いて、実施例4に係るX線診断装置の処理について説明する。図17は、実施例4に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図17では、トレース部26cが1心拍分の差分画像群それぞれに対して高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成した後の処理について説明する。
【0105】
図17に示すように、実施例4に係るX線診断装置は、1心拍分の差分画像群に対するトレース結果が出力されたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、トレース結果が出力されていない場合(ステップS401否定)、X線診断装置は待機状態となる。一方、トレース結果が出力された場合(ステップS401肯定)、距離算出部26eは、トレース結果から、1心拍分の差分画像群それぞれから、心筋組織の厚みに対応する距離を算出する(ステップS402)。すなわち、距離算出部26eは、各差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側の曲線と、当該高輝度領域の輪郭の外側の曲線との距離を、心筋組織の厚みに対応する指標値として算出する。そして、距離算出部26eは、1心拍分の差分画像群それぞれから算出した距離を、被検体Pの平均RR間隔を100%とした場合の心位相に対応付けてプロットしたグラフを生成する。
【0106】
そして、システム制御部21は、距離算出部26eの算出結果(例えば、図16AやCに示すグラフ)を表示部23に表示するように制御し(ステップS403)、処理を終了する。
【0107】
上述してきたように、実施例4では、距離算出部26eは、1心拍分の差分画像群それぞれに対してトレース部26cが生成した曲線を用いて距離算出処理を行なう。すなわち、距離算出部26eは、1心拍分の差分画像群それぞれのトレース結果から、心筋組織の厚みに対応する指標値として、差分画像において、高輝度領域の輪郭の内側の曲線と、当該高輝度領域の輪郭の外側の曲線との距離を算出する。したがって、実施例4では、心位相ごとの心筋組織の厚みを客観的に評価できる値を、冠状動脈造影のみで医師に提示することが可能となる。
【0108】
なお、距離算出部26eは、上述したように、トレース部26cのトレース結果を用いて距離の算出処理を行なう場合であってもよいし、操作者が差分画像にて高輝度領域の輪郭をトレースした結果を用いて距離の算出処理を行なう場合であってもよい。
【0109】
また、上記では、距離の算出処理が高輝度領域をトレースした結果を用いて実行される場合について説明した。しかし、本実施例4は、以下に説明するように、複数の点を追跡する方法により距離の算出処理を行なう場合であってもよい。かかる方法では、例えば、一つの差分画像における高輝度領域の内側および外側で対向する2つの点が、手動または自動で設定される。そして、距離算出部26eは、例えば、画像間の局所的類似度に基づいて、設定された2つの点に対応する各点を他の差分画像において抽出する。そして、距離算出部26eは、各差分画像にて抽出した2の点の距離を、心筋組織の厚みを示す値として算出する。
【実施例5】
【0110】
実施例5では、実施例4で説明した心筋組織の厚みを示す距離を用いてX線灌流画像の補正を行なう場合について、図18〜図20を用いて説明する。なお、図18は、実施例5に係るX線診断装置の構成を説明するための図であり、図19は、X線灌流画像生成部を説明するための図であり、図20は、補正部を説明するための図である。
【0111】
まず、図18に示すように、実施例5に係る画像処理部26は、図14を用いて説明した実施例4に係る画像処理部26と比較して、補正部26fおよびX線灌流画像生成部26gをさらに有する点が異なる。以下、これらを中心にして説明する。なお、図18に示す画像選択部26aおよび差分画像生成部26bの処理は、実施例1で説明した処理と同様であり、図18に示すトレース部26cの処理は、実施例2で説明した処理と同様であり、図18に示す距離算出部26eの処理は、実施例4で説明した処理と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
X線灌流画像生成部26gは、例えば、ヨード系造影剤が投与された被検体Pの心臓にX線を照射することで時系列に沿って撮影された複数のX線透過画像から、被検体Pの心臓における血流動態を表すX線灌流画像を生成する。具体的には、実施例5において、X線管12は、ヨード系造影剤が注入された被検体Pの心臓に対してX線を照射し、X線検出器16の各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線から変換した電気信号を画像生成部24に送信する。これにより、画像生成部24は、時系列に沿った複数のX線透過画像を生成して、生成した複数のX線透過画像を画像記憶部25に格納する。
【0113】
そして、X線灌流画像生成部26gは、画像記憶部25から読み出した複数のX線透過画像それぞれの各画素において、血流動態を示す指標値に関する時間濃度曲線を生成し、生成した時間濃度曲線を解析することで血流動態を表す指標値を算出する。そして、X線灌流画像生成部26gは、各画素の指標値に応じて画素値を設定することにより、X線灌流画像を生成する。
【0114】
ここで、X線灌流画像を生成するために用いられる指標値としては、例えば、造影剤濃度の最大値や最小値、造影剤濃度の最大値の90%の値などといった値がある。また、かかる指標値としては、時間濃度曲線の傾きや、所定濃度に達するまでの経過時間がある。また、かかる指標値としては、血液の平均通過時間(MTT:Mean Transit Time)、血流量(BF:Blood Flow)、血液量(BV:Blood Volume)、所定領域に関する血液の流入状態または流出状態を表す値などがある。このように、血流動態を表す指標値は、複数の種類があり、X線灌流画像生成部26gは、各指標値によって全く異なる種類のX線灌流画像を生成する。例えば、X線灌流画像生成部26gは、図19に示すように、BFに基づくX線灌流画像を生成する。
【0115】
ところで、X線診断装置によって撮影されるX線透過画像は、被検体Pを通過したフォトンをX線検出器16で検出することによって得られる。そのため、心臓を撮影した場合には、心筋組織を通過したフォトンの吸収量の積算値が画像化されることになる。このことから、X線透過画像から生成されたX線灌流画像には、X線の照射方向における心筋組織の厚み成分が含まれることになる。
【0116】
具体的には、照射方向に沿って心筋組織が厚くなっている部分におけるX線灌流画像の画素の値は、大きくなる。一方、照射方向に沿って心筋組織が薄くなっている部分におけるX線灌流画像の画素の値は、小さくなる。したがって、X線灌流画像を用いて被検体Pの心臓を観察する場合には、心筋組織の厚み成分を考慮する必要がある。
【0117】
そこで、補正部26fは、距離算出部26eにより算出された心筋組織の厚みに対応する距離に基づいて、X線灌流画像生成部26gにより生成されたX線灌流画像を補正する。具体的には、実施例5に係るX線診断装置は、冠状動脈造影を行なう際に、X線灌流画像の生成に用いられるX線透過画像の撮影時におけるX線照射方向に直交する断面に対してX線管12からX線検出器16に向かってX線を照射する(図20に示す点線を参照)。そして、補正部26fは、第1のX線透過画像から生成された差分画像から距離算出部26eが算出した距離を用いて補正処理を行なう。
【0118】
例えば、図20に示すように、心筋組織Mを通過するX線の経路として、X線管12からX線検出器16の検出素子Dに達する経路Xがあったとする。また、検出素子Dによって検出されたフォトンの積算量がFであったとする。
【0119】
ここで、補正部26fは、距離算出部26eにより算出された距離の情報から、心筋組織Mにおいて経路Xが通過する部分の厚みを取得する。その結果、補正部26fは、例えば、図20に示すように、経路Xの中で、X線管12側で経路Xが通過する部分の厚みがd1であり、X線検出器16側で経路Xが通過する部分の厚みがd2であることを取得する。
【0120】
かかる場合、補正部26fは、例えば、検出素子Dに対応する画素の画素値にF/(d1+d2)を乗じることで、心筋組織の厚み成分を補正したX線灌流画像を生成する。
【0121】
そして、システム制御部21は、補正部26fにより補正されたX線灌流画像を表示部23に表示するように制御する。
【0122】
なお、上記では、X線灌流画像生成部26gが画像処理部26に組み込まれている場合について説明した。しかし、本実施例5は、X線灌流画像の生成が画像生成部24にて行なわれる場合であってもよい。
【0123】
次に、図21を用いて、実施例5に係るX線診断装置の処理について説明する。図21は、実施例5に係るX線診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図21では、冠状動脈造影時に、X線灌流画像の生成に用いられるX線透過画像の撮影時のX線照射方向に直交する断面に対してX線が照射されることで生成された差分画像から距離算出部26eが距離算出処理を行なった後の処理について説明する。
【0124】
図21に示すように、実施例5に係るX線診断装置は、X線灌流画像生成部26gによりX線灌流画像が生成されたか否かを判定する(ステップS501)。ここで、X線灌流画像が生成されていない場合(ステップS501否定)、X線診断装置は、待機状態となる。一方、X線灌流画像が生成された場合(ステップS501肯定)、補正部26fは、X線灌流画像のX線照射方向と直交する断面に対するX線照射方向の差分画像から距離算出部26eにより算出された距離(心筋組織の厚み)を取得する(ステップS502)。
【0125】
そして、補正部26fは、取得した距離に基づいて、X線灌流画像を補正し(ステップS503)、システム制御部21は、補正部26fにより補正されたX線灌流画像を表示部23に表示するように制御し(ステップS504)、処理を終了する。
【0126】
上述してきたように、実施例5では、補正部26fは、距離算出部26eにより算出された心筋組織の厚みに対応する距離に基づいて、X線灌流画像生成部26gにより生成されたX線灌流画像を補正する。したがって、実施例5では、被検体ごとに異なる心筋組織の厚みを考慮してX線灌流画像を補正することができるので、医師は、X線灌流画像を用いた心機能診断を精度よく行なうことが可能となる。
【0127】
なお、上記の実施例1〜5では、画像処理部26がX線診断装置に組み込まれている場合について説明した。しかし、上記の実施例1〜5にて説明した画像処理は、画像処理部26と同様の機能を有する画像処理装置により実行される場合であってもよい。
【0128】
上述したように、実施例1〜5によれば、被検体にかかる負担を低減したうえで、心臓の運動機能解析を行なうことができるX線透過画像を生成することが可能となる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0130】
11 高電圧発生器
12 X線管
13 X線絞り装置
14 天板
15 Cアーム
16 X線検出器
17 Cアーム回転・移動機構
18 天板移動機構
19 Cアーム・天板機構制御部
20 絞り制御部
21 システム制御部
22 入力部
23 表示部
24 画像生成部
25 画像記憶部
26 画像処理部
26a 画像選択部
26b 差分画像生成部
30 心電計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈に注入された造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像から、前記被検体の心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記差分画像生成部は、複数の前記第1のX線透過画像それぞれから複数の差分画像を生成し、
前記表示制御部は、前記差分画像生成部により生成された前記複数の差分画像を前記所定の表示部にて動画表示、または並列表示するように制御する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記造影剤が投与された被検体の心臓にX線を照射することで時系列に沿って撮影された複数のX線透過画像それぞれの血管成分が低減された画像に基づいて、前記第1のX線透過画像を選択する画像選択部をさらに備え、
前記差分画像生成部は、前記画像選択部により選択された前記第1のX線透過画像から前記差分画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記造影剤が投与された被検体の心臓にX線を照射することで時系列に沿って撮影された複数のX線透過画像から、前記造影剤投与時からの経過時間、または、画像内の低周波成分、または、画像全体の平均輝度値、または、画像にて設定された関心領域の平均輝度値に基づいて、前記第1のX線透過画像を選択する画像選択部をさらに備え、
前記差分画像生成部は、前記画像選択部により選択された前記第1のX線透過画像から前記差分画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
左冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から左冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を選択し、右冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から右冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を選択することで、前記第1のX線透過画像として、左冠状動脈造影による第1のX線透過画像および右冠状動脈造影による第1のX線透過画像を選択する画像選択部をさらに備え、
前記差分画像生成部は、左冠状動脈造影による第1のX線透過画像および右冠状動脈造影による第1のX線透過画像それぞれから前記第2のX線透過画像を差分することで左冠状動脈造影による差分画像および右冠状動脈造影による差分画像を生成し、当該生成した2つの差分画像を合成することで、前記差分画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像選択部は、前記被検体の心臓の少なくとも1心拍分における複数の前記第1のX線透過画像を選択し、
前記差分画像生成部は、前記画像選択部により選択された前記少なくとも1心拍分における複数の第1のX線透過画像から複数の差分画像を生成し、
前記表示制御部は、前記差分画像生成部により生成された前記複数の差分画像を前記所定の表示部にて動画表示、または並列表示するように制御する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像選択部は、前記被検体の心臓の少なくとも1心拍分における複数の前記第1のX線透過画像を選択し、
前記差分画像生成部は、前記画像選択部により選択された前記少なくとも1心拍分における複数の第1のX線透過画像から複数の差分画像を生成し、
前記表示制御部は、前記差分画像生成部により生成された前記複数の差分画像を前記所定の表示部にて動画表示、または並列表示するように制御する、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像選択部は、前記被検体の心臓の少なくとも1心拍分における複数の前記第1のX線透過画像を選択し、
前記差分画像生成部は、前記画像選択部により選択された前記少なくとも1心拍分における複数の第1のX線透過画像から複数の差分画像を生成し、
前記表示制御部は、前記差分画像生成部により生成された前記複数の差分画像を前記所定の表示部にて動画表示、または並列表示するように制御する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線をさらに前記所定の表示部に表示するように制御する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成するトレース部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記トレース部により生成された前記曲線をさらに前記所定の表示部に表示するように制御する、請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記トレース部は、血管が染影された画像を前記差分画像と合成したうえで、前記曲線を生成する、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
左冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から左冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を選択し、右冠状動脈造影により撮影された複数のX線透過画像から右冠状動脈により栄養される心筋組織が染影されたX線透過画像を選択することで、前記第1のX線透過画像として、左冠状動脈造影による第1のX線透過画像および右冠状動脈造影による第1のX線透過画像を選択する画像選択部をさらに備え、
前記差分画像生成部は、左冠状動脈造影による第1のX線透過画像および右冠状動脈造影による第1のX線透過画像それぞれから前記第2のX線透過画像を差分することで左冠状動脈造影による差分画像および右冠状動脈造影による差分画像を生成し、当該生成した2つの差分画像を合成することで、前記差分画像を生成し、
前記トレース部は、前記左冠状動脈造影による差分画像および前記右冠状動脈造影による差分画像を合成することで生成された差分画像から前記曲線を生成する、または、前記左冠状動脈造影による差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線と、前記右冠状動脈造影による差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線とをそれぞれ生成し、当該生成した2つの曲線を合成することで前記曲線を生成する、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記差分画像生成部は、収縮期における前記第1のX線透過画像および拡張期における前記第1のX線透過画像それぞれから収縮期の差分画像および拡張期の差分画像を生成し、
前記収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積と、前記拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の内側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積との面積比を算出する面積比算出部をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記面積比算出部は、さらに、前記収縮期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の外側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積と、前記拡張期の差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の外側をトレースした曲線により囲まれる領域の面積との面積比を算出する、請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像に描出される高輝度領域の輪郭により囲まれる領域の面積を算出する面積算出部をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成するトレース部をさらに備え、
前記面積比算出部は、前記トレース部により生成された前記曲線により面積比算出処理を行なう、請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像に描出される高輝度領域の輪郭の内側の曲線と、当該高輝度領域の輪郭の外側の曲線との距離を算出する距離算出部をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該差分画像に描出される高輝度領域の輪郭をトレースした曲線を生成するトレース部をさらに備え、
前記距離算出部は、前記トレース部により生成された前記曲線により距離算出処理を行なう、請求項17に記載の画像処理装置。
【請求項19】
造影剤が投与された被検体の心臓にX線を照射することで時系列に沿って撮影された複数のX線透過画像から生成された前記被検体の心臓における血流動態を表すX線灌流画像を、前記距離算出部により算出された前記距離に基づいて補正する補正部を、をさらに備える請求項17に記載の画像処理装置。
【請求項20】
差分画像生成部が、冠状動脈に注入された造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像から、前記被検体の心筋組織が染影されていない第2のX線透過画像を差分することで差分画像を生成し、
表示制御部が、前記差分画像生成部により生成された前記差分画像を所定の表示部に表示するように制御する、
ことを含む画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−130648(P2012−130648A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91438(P2011−91438)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(301059640)ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【Fターム(参考)】