説明

画像処理装置および画像消去プログラム

【課題】
ファイルのデータ実体の消去処理中に、この消去処理が中断された場合にも、消去処理中のファイル名を記憶することなく、中断されたデータ実体の消去処理を続行することができるようにした画像処理装置および画像消去プログラムを提供する。
【解決手段】
入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25に記憶された画画像イメージデータが収容されるファイルの消去が指示されると、ファイルシステム100−1〜100−3のそれぞれのトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリ110〜130内へ、消去対象ファイル111〜121のファイル名を書き換えて移動し、データ実体の先頭位置からデータ実体の末尾まで、消去用のデータで上書きすることによりファイルの消去処理を行い、その後、この消去処理がなされたファイルを通常のファイル削除処理により削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像消去プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿に記録された画像を読み取って、この読み取った画像を記録紙に記録して出力する画像出力装置(いわゆるコピー機)や、コンピュータ上で作成した印刷データをプリントする画像出力装置(いわゆるプリンタ、プロッタ)が存在している。
【0003】
これらの画像出力装置では、読み取った画像や印刷データを、装置上の記憶装置に一旦記録して処理を行っている。
【0004】
一方で、記憶装置に格納されたデータは、高速に処理するために、データを削除してもデータ実体へのアクセス情報が削除されるだけで、データ実体は消去されない。
【0005】
従って、画像出力装置に格納されたデータの実体は、出力が完了した後も、記憶装置に残ったままの状態となっている。このため、画像出力装置から記憶装置を取り出して、記録されたデータを調べることによって、出力したコピー画像やプリント画像から秘密が第三者に漏れる恐れがあった。
【0006】
この問題に対して、出力を完了した画像データの実体を消去することで、画像出力装置から記憶装置を取り外して調査しても、出力した画像データを復元できなくする発明が特許文献1および特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2005−182782号公報
【特許文献2】特開2002−178566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ファイルのデータ実体の消去処理中に、この消去処理が中断された場合にも、消去処理中のファイル名を記憶することなく、中断されたデータ実体の消去処理を続行することができるようにした画像処理装置および画像消去プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の画像処理装置は、画像処理に係わる画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された画像データの消去を指示する指示手段と、前記指示手段による前記画像データの消去指示に応答して、前記記憶手段に記憶された前記画像データのファイル名を書き換えるとともに、該ファイル名を書き換えたファイルのアクセス情報を消去対象格納ディレクトリ内へ移動するファイル移動処理を行う移動処理手段と、前記移動処理手段で移動された前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された画像データ実体の消去処理を行う消去処理手段と、前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理完了により前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に対応するファイルの削除処理を行う削除処理手段とを具備する。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理が中断した場合は、再起動時に前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報を検索する検索手段と、前記検索手段による検索により前記消去対象格納ディレクトリ内に前記アクセス情報が存在する場合は、該アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された前記画像データ実体の再消去処理を行う再消去処理手段とを具備する。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記消去処理手段による前記消去処理および前記削除処理手段による前記削除処理は、前記移動処理手段による前記移動処理に続いて該移動処理と同期して実行される。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記消去処理手段による前記消去処理および前記削除処理手段による前記削除処理は、前記移動処理手段による前記移動処理が完了後に該移動処理と非同期で実行される。
【0012】
また、請求項5の発明の画像消去プログラムは、コンピュータを、記憶手段に記憶された画像処理に係わる画像データの消去の指示する指示手段、前記指示手段による前記画像データの消去指示に応答して、前記記憶手段に記憶された前記画像データのファイル名を書き換えるとともに、該ファイル名を書き換えたファイルのアクセス情報を消去対象格納ディレクトリ内へ移動する移動処理を行う移動処理手段、前記移動処理手段で移動された前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された画像データ実体の消去処理を行う消去処理手段、前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理完了により前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に対応するファイルの削除処理を行う削除処理手段として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ファイルのデータ実体の消去処理中に電源断等によりこの完全消去処理が中断された場合にも、消去処理中のファイル名を記憶することなく、中断されたファイルの消去処理を実行することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、再起動時に、中断されたファイルの消去処理を再実行することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ユーザに対してファイルの消去処理の終了を迅速に通知することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ファイルの消去処理を他の処理と並列して行うことで処理効率の低下を抑えることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、ファイルの消去処理中にこの消去処理が中断された場合にも、消去処理中のファイル名を記憶することなく、中断されたファイルの消去処理を続行することができる画像完全消去プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係わる画像処理装置および画像完全消去プログラムの実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用される画像処理装置の一実施例の全体構成を示す図である。
【0020】
図1に示す画像処理装置100は、画像読取部10、画像処理部20、画像形成部30から構成され、画像処理部20は、入力処理部21、入力データ記憶部22、描画処理部23、描画処理用データ記憶部24、画像データ出力部25、出力データ記憶部26を具備している。
【0021】
この画像処理装置100は、画像読取部10で読み取った画像データを画像処理部20で処理して画像形成部30に出力することに複写動作が行われる。
【0022】
また、この画像処理装置100には、ホストコンピュータ200が接続されており、ホストコンピュータ200から転送された画像データを画像処理部20で処理して画像形成部30に出力する画像形成動作が行われる。
【0023】
画像処理部20の入力処理部21は、画像読取部10で読み取った画像データ若しくはホストコンピュータ200から転送された画像データ(画像イメージデータ)を入力する。入力データ記憶部22は、入力処理部21で入力された画像イメージデータを記憶する。
【0024】
描画処理部23は、入力データ記憶部22に記憶された画像イメージデータを変換、加工して描画可能な画像イメージデータを作成する。描画処理用データ記憶部24は、描画処理部23で作成された画像イメージデータを記憶する。
【0025】
画像データ出力部25は、描画処理部23で作成した画像イメージデータを画像生成部30へ出力する。出力データ記憶部26は、画像データ出力部25から出力された画像イメージデータを記憶する。
【0026】
この画像処理装置100による複写動作時には、画像読取部10で読み取った原稿の画像イメージデータを入力処理部21、描画処理部23、画像データ出力部25を経由して画像形成部30に渡して、印刷媒体へ印刷される。このとき、入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25は、必要に応じて、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26を使用して画像イメージデータを記憶し、入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25で不要になった画像イメージデータを削除する。
【0027】
同様に、この画像処理装置100による画像形成動作時には、ホストコンピュータ200から転送された画像イメージデータを入力処理部21、描画処理部23、画像データ出力部25を経由して画像形成部30に渡して、印刷媒体へ印刷される。このとき、入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25は、必要に応じて、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26を使用して画像イメージデータを記憶し、入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25で不要になった画像イメージデータを削除する。
【0028】
さて、この実施例においては、ファイルのデータ実体の消去処理中に電源オフなどで消去処理を強制中断しても、その後の再開時に、消去処理中であったファイルを特定して、消去処理を続行できる。
【0029】
本発明におけるファイルの消去処理においては、入力処理装置21、描画処理部23、画像データ出力部25に記憶された画画像イメージデータが収容されるファイルの消去が指示されると、まず、図2に示すように、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26に記憶された削除対象ファイルをそれぞれ管理するファイルシステム100−1〜100−3のそれぞれのトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリ110〜130内へ、消去対象ファイル111〜121のファイル名を書き換えて移動するファイルの移動処理を実行する。
【0030】
このファイルの移動処理は、アクセスするためのアクセス情報であるパス名(ファイル名)は、消去対象格納ディレクトリ内へと移動するが、データ実体は移動せず、ファイルの管理情報のみが書き換えられる。このため、ファイルの移動処理は瞬時に完了する。
【0031】
なお、図2において、ファイルシステム100−1においては、消去対象ファイルの種別がディレクトリの場合を示し、ファイルシステム100−2、100−3においては、消去対象ファイルの種別が通常ファイルの場合を示している。また、図2において、移動前の削除対象ファイルを点線で示し、移動後の削除対象ファイルを太線で示す。
【0032】
次に、消去対象ファイルのデータ実体の消去処理を行う。このファイルの消去処理は、図3に示すように、データ実体の先頭位置からデータ実体の末尾まで、消去用のデータで上書きすることにより行われる。ここで、消去用のデータは、乱数、ゼロ、定数などを組み合わせて使用し、上記上書き処理は、データの秘匿性によって、任意の消去用データの組み合わせで1回から複数回、繰り返して行う。
【0033】
なお、図3において、網線で示す領域300は、消去用のデータで上書きされた領域を示し、図3(a)は、データ実体が記憶されるファイル使用領域が連続しているファイルAの場合、図3(b)は、ファイル使用領域300がデータ実体が記憶されていない未使用領域310を挟んで飛び飛びに存在するファイルBの場合を示す。
【0034】
データ実体に対する消去用のデータの上書きによりファイルの消去処理が完了したら、この消去処理がなされたファイルを通常のファイル削除処理により削除する。
【0035】
このような構成によると、最初のファイルの移動処理は瞬時に完了する。また、ファイルのデータ実体の消去処理の途中で、電源オフなどにより強制的にこのデータ実体の消去処理が中断された場合でも、各ファイルシステムのトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリ内に残っているファイルがデータ実体の消去処理中に処理が中断されたファイルであり、データ実体の消去処理中であったファイルを容易に特定することができる。
【0036】
そこで、再起動等による処理再開時には、各ファイルシステム100−1〜100−3のトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリを検索し、残っているファイルのデータ実体の消去処理を順次実行することで、消去対象のファイルに対して漏れなくファイルのデータ実体の消去処理を行うことができる。
【0037】
また、本発明では、ファイルの移動処理により、元のファイル名は存在しなくなるため、ファイルアクセスする他の処理からは一瞬で削除が完了したように見える。このため、データ実体の消去に、たとえ長時間かかっても、他のプログラムからはそのことを意識する必要がない。
【0038】
なお、上記処理を、ファイルの移動処理、ファイルの消去処理、ファイルの削除処理と順番に行うことで、データ実体の消去が完了したことをユーザーに伝えるように構成することもでき、また、ファイルの移動処理と、ファイルの消去処理およびファイルの削除処理とを分けて行うことで、ファイルの移動処理と非同期的にファイルの消去処理を行うように構成することもできる。
【実施例1】
【0039】
実施例1は、図1に示した画像処理装置100に適用されるもので、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26に記録した画像イメージデータ削除に際して、通常のファイル削除処理ではなく、データ実体に消去用のデータを上書きするファイル完全消去処理を行う。
【0040】
実施例1においては、ファイル完全消去処理を、ファイルの移動処理、ファイルの消去処理、ファイルの削除処理と順に行うことで、ファイルの移動処理に同期してファイルの消去処理、ファイルの削除処理を行う。
【0041】
ここで、ファイルの移動処理は、図2に示したように、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26の記憶ファイルをそれぞれ管理するファイルシステム100−1〜100−3において、それぞれのトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリ110〜130へ、消去対象ファイル111〜121をファイル名を書き換えて移動することにより行われる。
【0042】
また、ファイルの消去処理は、図3に示したように、データ実体の先頭位置からデータ実体の末尾まで、乱数データ、定数データ、ゼロデータといった消去用のデータで上書きすることにより行われる。この消去用のデータの上書きによるファイルの消去処理は、消去対象データの秘匿性に応じて、任意の消去データの組み合わせで複数回行われる。
【0043】
また、ファイルの削除処理は、システムが提供する通常のファイル削除処理により行われる。
【0044】
次に、実施例1のファイルの完全消去処理の詳細を図4〜図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0045】
図4において、ファイルの完全消去処理が開始されると、まず、消去対象のファイル種別はディレクトリかを調べる(ステップ401)。ここで、消去対象のファイル種別がディレクトリであると(ステップ401でYES)、ステップ403に進む。
【0046】
ステップ401で、消去対象のファイル種別はディレクトリでないと判断されると(ステップ401でNO)、次に、消去対象のファイル種別は通常ファイルかを調べる(ステップ402)。ここで、消去対象のファイル種別が通常ファイルであると判断されると(ステップ402でYES)、ステップ403に進むが、通常ファイルでないと判断された場合は(ステップ402でNO)、後に詳述するステップ600のファイルの削除処理へ進む。
【0047】
ステップ403では、消去対象のファイル(通常ファイルまたはディレクトリ)の移動処理を行うために、同一ファイルシステム内の消去対象格納ディレクトリ内でユニークなファイル名を取得する。そして、この取得したファイル名で消去対象ファイル(通常ファイルまたはディレクトリ)のファイル名を書き換えて、このファイルをファイルシステムの消去対象格納ディレクトリ内へ移動する(ステップ402)。
【0048】
このファイルの移動に際しては、ファイル名が書き換えられた消去対象ファイルのデータ実体は、移動しないが、このデータ実体に対してアクセスするためのパス名(ファイル名)は、消去対象格納ディレクトリ内へと移動する。
【0049】
ステップ402のファイルの移動が完了すると、次にファイルの消去処理が行われる(ステップ500)。
【0050】
図5は、ステップ500のファイルの消去処理の詳細を示すフローチャートである。このファイルの消去処理においては、図4で説明したファイルの移動処理により、図2に示したファイルシステム100−1、100−2、100−3にそれぞれ設けられた消去対象格納ディレクトリ110、120、130に名前を変更して移動されたファイルのファイル名に基づき、消去対象ファイルのデータ実体が消去用のデータで上書きされて完全削除される。
【0051】
図5において、ファイルの消去処理が開始されると、まず、消去対象のファイル種別はディレクトリかを調べる(ステップ501)。ここで、ファイル種別はディレクトリでない、すなわち通常ファイルであると判断されると(ステップ501でNO)、このファイルのファイルサイズは0かを調べ(ステップ502)、0であると(ステップ502でYES)、ステップ600のファイルの削除処理へ進むが、0でないと判断されると(ステップ502でNO)、このファイルのファイル名に基づきこのファイル名のファイルのデータ実体に消去用のデータを上書きする消去処理が行われる。
【0052】
この消去処理においては、まず、予め設定された消去モード、すなわちデータ実体上に上書きする消去用のデータとして乱数データ、定数データ、ゼロデータ等の内のどのデータを用い、またどの消去用のデータをどの順番で上書きするかの消去モードおよびこの消去モードにおける上書き処理の繰り返し回数を取得する(ステップ503)。
【0053】
次に、取得した消去モードおよび繰り返し回数に対応して消去用のデータを取得し(ステップ506)、この取得した消去用のデータによる消去対象ファイルのデータ実体に対する上書処理を行う(ステップ506)。
【0054】
このステップ504の消去用のデータの取得およびステップ506の上書処理は、ステップ504で消去処理終了と判断されるまで繰り返され、ステップ504で消去処理終了と判断されると(ステップ504でYES)、ステップ600のファイルの削除処理へ進む。
【0055】
また、ステップ501で、消去対象のファイル種別はディレクトリであると判断されると(ステップ501でYES)、まず、このディレクトリ内のファイルのファイル名を取得し(ステップ508)、この取得したファイル名に基づきこのディレクトリ内のファイルの消去処理を(ステップ501から)再帰的に実行する(ステップ509)。ディレクトリ内の通常ファイルの消去処理は、ステップ503からステップ506の処理と同様に、消去モードおよび繰り返し回数の取得、消去用のデータの取得、上書処理を順次繰り返すことにより行われる。
【0056】
ステップ508のファイル名の取得およびステップ509の消去処理の再帰的実行は、ステップ507で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されるまで繰り返され、ステップ507で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されると(ステップ507でYES)、ステップ600のファイルの削除処理へ進む。
【0057】
図6は、ステップ600のファイルの削除処理を示したものである。このステップ600で実行されるファイルの削除処理は、システムが提供する通常のファイル削除処理である。
【0058】
すなわち、図6において、このファイルの削除処理が開始されると、消去用のデータによりデータ実体が上書きされたファイルをシステムが提供する通常のファイルの削除処理により削除するファイルの削除処理が行われ(ステップ601)、このファイルの削除処理により、この実施例1の完全消去処理が終了する。
【0059】
図7は、実施例1における画像処理装置100の再起動時の消去処理を示すフローチャートである。
【0060】
この実施例1においては、ファイルの移動処理により、消去対象ファイルが名前を変えてファイルシステム100−1、100−2、100−3の消去対象格納ディレクトリ110、120、130に移動されており、消去対象ファイルの完全消去処理が終了すると、消去対象格納ディレクトリ110、120、130に移動された消去対象ファイルは削除さえるので、画像処理装置100の再起動時に、消去対象格納ディレクトリ110、120、130に消去対象ファイルが残っていれば、このファイルは、ファイルのデータ実体の消去処理中に電源断等により消去処理が中断されたファイルである。
【0061】
この実施例1においては、画像処理装置100の再起動時に、ファイルシステム100−1、100−2、100−3の消去対象格納ディレクトリ110、120、130を検索して、残っているファイルがあるとこのファイルのファイル名に基づき該ファイルのデータ実体の完全消去を再実行する。
【0062】
図7において、再起動時の消去処理が開始されると、ファイルシステムを取得し(ステップ701)、この取得したファイルシステムから消去対象格納ディレクトリを取得する(ステップ703)、この取得した消去対象格納ディレクトリ内のファイルは空かを調べる(ステップ704)。
【0063】
ここで、消去対象格納ディレクトリ内のファイルが空でないと(ステップ704でNO)、消去対象格納ディレクトリ内のファイル名を取得して、この取得したファイル名に基づき該ファイルの消去処理を再帰的に実行する。
【0064】
このファイルの消去処理は、ステップ704で、消去対象格納ディレクトリ内のファイルが空になるまで行われる。
【0065】
ステップ704で、消去対象格納ディレクトリ内のファイルが空であると判断されると(ステップ704でYES)、ステップ701に戻り、次のファイルシステムを取得して、ステップ703〜ステップ705の処理を繰り返す。
【0066】
上記処理によりステップ702で全てのファイルシステムを取得したと判断されると(ステップ702でYES)と、この再起動時の消去処理を終了する。
【0067】
図8は、図7のステップ705のファイルの消去処理の詳細を示すフローチャートである。
【0068】
このファイルの消去処理は、図5に示したファイルの削除処理と同様で、以下のようにして実行される。
【0069】
すなわち、図8において、ファイルの消去処理が開始されると、まず、消去対象のファイル種別はディレクトリかを調べ(ステップ801)、ここで、ファイル種別はディレクトリでない、すなわち通常ファイルであると判断されると(ステップ801でNO)、このファイルのファイルサイズは0かを調べ、0であると(ステップ802でYES)、ステップ810へ進むが、0でないと判断されると(ステップ802でNO)、予め設定された消去モードおよびこの消去モードにおける上書き処理の繰り返し回数を取得する(ステップ803)。
【0070】
次に、取得した消去モードおよび繰り返し回数に対応して消去用のデータを取得し(ステップ806)、この取得した消去用のデータによる消去対象ファイルのデータ実体に対する上書処理を行う(ステップ806)。
【0071】
この消去用のデータの取得および上書処理は、ステップ804で消去処理終了と判断されるまで繰り返され、ステップ804消去処理終了と判断されると(ステップ804でYES)、ステップ810へ進む。
【0072】
また、ステップ801で、消去対象のファイル種別はディレクトリであると判断されると(ステップ801でYES)、まず、このディレクトリ内のファイルのファイル名を取得し(ステップ808)、この取得したファイル名に基づきこのディレクトリ内のファイルの消去処理を再帰的に実行し(ステップ809)、この処理はステップ807で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されるまで繰り返され、ステップ807で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されると(ステップ807でYES)、ステップ810へ進む。
【0073】
ステップ810では、上記消去用のデータの上書きにより消去処理されたファイルをシステムが提供する通常の削除処理により削除するファイルの削除処理が行われ、このファイルの削除処理により、このファイルの消去処理が終了する。
【0074】
実施例1では、ファイルの消去処理をファイルの移動処理と同期的に行うため、ファイルのデータ本体の完全消去が完了したことをユーザーに通知するように構成することができる。
【実施例2】
【0075】
実施例2は、実施例1と同様に、図1に示した画像処理装置100に適用され、入力データ記憶部22、描画処理用データ記憶部24、出力データ記憶部26に記録した画像イメージデータの削除に際して、通常のファイル削除処理ではなく、データ実体に消去用のデータを上書きするファイル完全消去処理を行う。
【0076】
しかし、実施例2では、実施例1が、ファイルの消去処理およびファイルの削除処理をファイルの移動処理と同期して行うのに対して、ファイルの消去処理およびファイルの削除処理をファイルの移動処理と非同期で行う。
【0077】
図9において、実施例2のファイルの移動処理が開始されると、まず、消去対象のファイル種別はディレクトリかを調べる(ステップ901)。ここで、消去対象のファイル種別がディレクトリであると(ステップ901でYES)、ステップ903に進む。
【0078】
ステップ901で、消去対象のファイル種別はディレクトリでないと判断されると(ステップ901でNO)、次に、消去対象のファイル種別は通常ファイルかを調べる(ステップ902)。ここで、消去対象のファイル種別が通常ファイルであると判断されると(ステップ902でYES)、ステップ903に進む。
【0079】
ステップ903では、消去対象のファイル(通常ファイルまたはディレクトリ)の移動処理を行うために、同一ファイルシステム内の消去対象格納ディレクトリ内でユニークなファイル名を取得する。そして、この取得したファイル名で消去対象ファイル(通常ファイルまたはディレクトリ)のファイル名を書き換えて、このファイルをファイルシステムの消去対象格納ディレクトリ内へ移動する(ステップ904)。
【0080】
このファイルの移動に際しては、ファイル名が書き換えられた消去対象ファイルのデータ実体は、移動しないが、このデータ実体に対してアクセスするためのパス名(ファイル名)は、消去対象格納ディレクトリ内へと移動する。
【0081】
ステップ904のファイルの移動が完了すると、このファイルの移動処理は終了する。
【0082】
なお、ステップ902で、ファイル種別が通常ファイルでないと判断された場合は(ステップ902でNO)、このファイルを削除して(ステップ905)、このファイルの移動処理を終了する。
【0083】
図10は、この実施例2におけるファイルの消去、削除処理を示すフローチャートである。
【0084】
このファイルの消去、削除処理は、図9に示したファイルの移動処理が終了した後、図9に示したファイルの移動処理と非同期で実行される。
【0085】
この場合、ファイルの消去、削除処理を行うサービスプログラムは、常にファイルシステムを監視し、これにより、ファイルの消去処理およびファイルの削除処理をファイルの移動処理と非同期で行う。
【0086】
図10において、このファイルの消去、削除処理が開始されると、まず、消去対象のファイル種別はディレクトリかを調べる(ステップ1001)。ここで、ファイル種別はディレクトリでないと判断されると(ステップ1001でNO)、このファイルのファイルサイズは0かを調べ(ステップ1002)、0であると(ステップ1002でYES)、ステップ1010へ進むが、0でないと判断されると(ステップ1002でNO)、このファイルのファイル名に基づきこのファイル名のファイルのデータ実体に消去用のデータを上書きする消去処理が行われる。
【0087】
この消去処理においては、まず、予め設定された消去モードおよびこの消去モードにおける上書き処理の繰り返し回数を取得する(ステップ1003)。
【0088】
次に、取得した消去モードおよび繰り返し回数に対応して消去用のデータを取得し(ステップ1006)、この取得した消去用のデータによる消去対象ファイルのデータ実体に対する上書処理を行う(ステップ1006)。
【0089】
このステップ1004の消去用のデータの取得およびステップ1006の上書処理は、ステップ1004で消去処理終了と判断されるまで繰り返され、ステップ1004で消去処理終了と判断されると(ステップ1004でYES)、ステップ1010へ進む。
【0090】
また、ステップ1001で、消去対象のファイル種別はディレクトリであると判断されると(ステップ1001でYES)、ディレクトリ内の各ファイルのデータ実体に対してそれぞれ消去データを上書する消去処理が行われる。
【0091】
この消去処理においては、まず、このディレクトリ内のファイルのファイル名を取得し(ステップ1008)、この取得したファイル名に基づきこのディレクトリ内のファイルの消去処理を再帰的に実行する(ステップ1009)。
【0092】
ステップ1008のファイル名の取得およびステップ1009の消去処理の再帰的実行は、ステップ1007で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されるまで繰り返され、ステップ1007で、ディレクトリ内のファイルが空と判断されると(ステップ1007でYES)、ステップ1010へ進む。
【0093】
ステップ1010では、消去用のデータによりデータ実体が上書きされたファイルをシステムが提供する通常のファイルの削除処理により削除し、このファイルの削除により、この実施例2のファイルの消去、削除処理が終了する。
【0094】
なお、この実施例2においても、実施例1と同様に、再起動等による処理再開時には、各ファイルシステム100−1〜100−3のトップディレクトリに用意した消去対象格納ディレクトリを検索し、残っているファイルのデータ実体の消去処理を順次実行することで、消去対象のファイルに対して漏れなくファイルのデータ実体の消去処理を行うことができる。この場合の処理は、図7および図8に示したフローチャートの処理と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0095】
この実施例2は、ファイルの消去、削除処理をファイルの移動処理と非同期的に行うため、次に行う処理とファイル実体消去処理を並行処理することができ、パフォーマンスの低下を抑えることができる。
【0096】
なお、実施例2では、ファイルの消去、削除処理を行うサービスプログラムが常にファイルシステムを監視しているように構成したが、このサービスプログラムが常に動作している必要はなく、一定時間毎に動作したり、機器の負荷が少ない条件で動作するようにすることで、全体の処理のパフォーマンスを確保しつつ完全消去処理を行うようにしても良い。
【0097】
また、実施例2に、ファイルの消去処理が完了したことを通知する処理を追加して、実施例1と同様にユーザに消去処理が完了したことを通知できるようにしても良い。
【0098】
また、上記実施例では、ファイル実体のみを消去する場合を記述しているが、ファイル実体だけでなく、ファイル管理領域に格納されているファイル名などの情報も完全消去するなどの拡張も容易に考えられる。
【0099】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記実施例及び図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0100】
また、上記ファイルの消去処理は、記憶装置に記憶された画像消去プログラムに基づき中央演算処理装置で処理することによっても行うことができる。
【0101】
なお、上記画像消去プログラムは、ネットワーク等の通信手段により提供することは勿論、CD−ROM、DVD等の外部記録媒体に記録して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係わる画像処理装置の一実施例の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示した画像処理装置の記憶装置に記憶するファイルを管理するファイルシステム上のファイルの移動処理を説明する図である。
【図3】ファイルの消去処理を説明する図である。
【図4】実施例1の完全消去処理を示すフローチャートである。
【図5】図4に示したファイルの消去処理を示すフローチャートである。
【図6】図4に示したファイルの削除処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例1の再起動時の消去処理を示すフローチャートである。
【図8】図7に示したファイルの消去処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例2のファイルの移動処理を示すフローチャートである。
【図10】図9に示したファイルの消去、削除処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
10 画像読取部
20 画像処理部
21 入力処理部
22 入力データ記憶部
23 描画処理部
24 描画処理用データ記憶部
25 画像データ出力部
26 出力データ記憶部
30 画像形成部
100 画像処理装置
200 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理に係わる画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データの消去を指示する指示手段と、
前記指示手段による前記画像データの消去指示に応答して、前記記憶手段に記憶された前記画像データのファイル名を書き換えるとともに、該ファイル名を書き換えたファイルのアクセス情報を消去対象格納ディレクトリ内へ移動するファイル移動処理を行う移動処理手段と、
前記移動処理手段で移動された前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された画像データ実体の消去処理を行う消去処理手段と、
前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理完了により前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に対応するファイルの削除処理を行う削除処理手段と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理が中断した場合は、再起動時に前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報を検索する検索手段と、
前記検索手段による検索により前記消去対象格納ディレクトリ内に前記アクセス情報が存在する場合は、該アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された前記画像データ実体の再消去処理を行う再消去処理手段と
を具備する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記消去処理手段による前記消去処理および前記削除処理手段による前記削除処理は、
前記移動処理手段による前記移動処理に続いて該移動処理と同期して実行される請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記消去処理手段による前記消去処理および前記削除処理手段による前記削除処理は、
前記移動処理手段による前記移動処理が完了後に該移動処理と非同期で実行される請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータを、
記憶手段に記憶された画像処理に係わる画像データの消去の指示する指示手段、
前記指示手段による前記画像データの消去指示に応答して、前記記憶手段に記憶された前記画像データのファイル名を書き換えるとともに、該ファイル名を書き換えたファイルのアクセス情報を消去対象格納ディレクトリ内へ移動するファイル移動処理を行う移動処理手段、
前記移動処理手段で移動された前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に基づき前記記憶手段に記憶された画像データ実体の消去処理を行う消去処理手段、
前記消去処理手段による前記画像データ実体の消去処理完了により前記消去対象格納ディレクトリ内の前記アクセス情報に対応するファイルの削除処理を行う削除処理手段
として機能させる画像消去プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−61537(P2010−61537A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228506(P2008−228506)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】