説明

画像処理装置並びに視界支援装置及び方法

【課題】共通領域を持つ2つの鳥瞰図画像を合成する際、立体物を二重像とすることなく立体物の消失の問題を回避する。
【解決手段】車両の前部及び左側に設置された前カメラ及び横カメラからの撮像画像の夫々を鳥瞰図画像に変換し、各鳥瞰図画像を合成した合成鳥瞰図画像を表示する。両鳥瞰図画像が重なり合う共通領域に関し、前カメラの画像112と横カメラの画像111の差分画像113を生成して、両鳥瞰図画像において立体物が描画されている差分領域123を検出する。両鳥瞰図画像を合成する際、差分領域123に関しては、一方の鳥瞰図画像内の画像のみを用いるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視界支援装置及び視界支援方法に関する。本発明は、特に、車両に設置された複数のカメラの撮像画像から鳥瞰図画像を生成し、各鳥瞰図画像を合成する技術に関する。また本発明は、視界支援装置に用いられる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの運転者にとって、バックするときには死角が生じるため後方確認が難しくなる。そこで、運転者の死角となりやすい車両の後方を監視する車載カメラを装備し、その撮像画像をカーナビゲーション等の画面に表示するシステムが既に開発されている。
【0003】
また、カメラの映像を単に表示するのではなく、画像処理技術を利用して、より人間に優しい映像を見せる研究がなされている。その1つに、撮影した画像を座標変換することにより、地面の上方から眺めたような鳥瞰図画像を生成して表示するものがある。この鳥瞰図画像を表示することによって、運転者は車両後方の状況を把握し易くなる。
【0004】
更に、複数のカメラから得た画像を幾何変換によって全周鳥瞰図画像に変換し、これを表示部に表示させる視界支援装置が開発されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。この視界支援装置では、車両全周の状況を上空から見た映像として運転者に提示することができるため、車両の周辺を360度死角なくカバーできるという長所がある。
【0005】
この種の視界支援装置の従来例について説明する。図17は、車両100へのカメラの設置状況を表す、車両100を上方から見た平面図である。図18は、車両100を左斜め前方から見た図である。図18では、各カメラの視野(撮像領域)が模式的に表されている。車両100は、運転室と運転室より高さのある荷室とから形成されるトラックである。
【0006】
図17に示す如く、車両100の前部、後部、左側部及び右側部に、夫々、カメラ(撮像装置)1F、1B、1L及び1Rが取り付けられている。カメラ1F、1B、1L及び1Rは、夫々、前カメラ、後カメラ、左横カメラ及び右横カメラに対応する。
【0007】
視界支援装置では、各カメラより得た撮像画像から鳥瞰図画像を生成し、各鳥瞰図画像を合成することにより、図19に示すような全周鳥瞰図画像を表示装置に表示する。表示装置の表示画面上において、車両が中央に表示され、その車両の前方、後方、左側及び右側に、夫々、カメラ1F、1B、1L及び1Rから得た鳥瞰図画像が表示される。
【0008】
ところで、各カメラの視野(撮像領域)には、図18に示すように重なり合う部分が存在する。例えば、車両100の左斜め前方の所定領域にて、カメラ1Fの視野とカメラ1Lの視野は重なり合う。この重なり合う部分は、図19の符号101が付された領域に対応する。通常、領域101には、カメラ1Fの撮像画像に基づく映像若しくはカメラ1Lの撮像画像に基づく映像又はそれらの平均化映像などが表示される。
【0009】
この種の視界支援装置では、地表面で画像が連続性を持つように合成処理を行うため、地表面に描かれた駐車区画の線、標識、文字などは特に問題なく表示される。これは、図19の領域101でも同様である。しかし、地表面に置かれた立体物は、カメラの視点によって見え方が異なるため、それを全周鳥瞰図画像で正確且つ連続的に描写することは、原理的に困難である。
【0010】
例えば、図20に示す如く、カメラ1Fの視野とカメラ1Lの視野が重なり合う部分(空間)に立体物102としての人物が存在していた場合を考える。この場合、カメラ1Fにて立体物102を撮像した画像から鳥瞰図画像を生成した場合、図21に示す如く、この鳥瞰図画像上で立体物102は左方向に倒れた画像となって表れる。一方、カメラ1Lにて立体物102を撮像した画像から鳥瞰図画像を生成した場合、図22に示す如く、この鳥瞰図画像上で立体物102は前方に倒れた画像となって表れる。
【0011】
カメラ1Fから得た鳥瞰図画像とカメラ1Lから得た鳥瞰図画像を合成する際、図21及び図22に示すような合成境界103を定めて、両鳥瞰図画像を合成境界103にて単純に貼り合わせた場合、その合成によって得られる全周鳥瞰図画像において、立体物102が消失してしまうという問題がある。
【0012】
この問題を解決するために、カメラ1Fから得た鳥瞰図画像とカメラ1Lから得た鳥瞰図画像とが重なる共通領域の画像を、両鳥瞰図画像を平均化することによって生成する、という手法が考えられる。しかしながら、このような平均化を採用すると、全周鳥瞰図画像において立体物が二重像として現れてしまう。また、二重像の各像は背景画像と平均化されるため、立体物と背景の色によっては、立体物が非常に見えにくくなってしまう。
【0013】
また、下記特許文献1に記載の方法では、共通領域の画像としてカメラ1Fから得られた鳥瞰図画像のみを採用した全周鳥瞰図画像と、共通領域の画像としてカメラ1Lから得られた鳥瞰図画像のみを採用した全周鳥瞰図画像と、を別個に生成し、これら2種類の全周鳥瞰図画像を左右に並べて同時に表示する。この場合の表示画像は、図23の表示画像200のようになる。しかしながら、この方法では、運転者が確認すべき画像が複数枚、同時に表示されるため、混乱が生じて逆に安全性が損なわれる可能性もある。
【0014】
また、共通領域の画像としてカメラ1Fから得られた鳥瞰図画像を採用するか或いはカメラ1Lから得られた鳥瞰図画像を採用するかを、手動によって或いは運転操作によって切替えるという方法も考えられる。この場合、図24に示す、表示画像201と表示画像202が切替えて表示されることになる。しかしながら、手動による切り替えは煩雑であり、また、運転操作のみに基づいて生成した映像が立体物を把握しやすい映像になるとは限らない。更に、手動や運転操作に基づく切り替えは、合成境界を共通領域の端に移動させることと等価であるため、境界の付近で立体物の表示が消失してしまう可能性が残る。つまり、単純な切り替えで、立体物の消失の問題を回避することは困難である。
【特許文献1】特開2002−125224号公報
【特許文献2】特開2004−235986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明は、上記のような立体物の消失及び二重像の表示の各問題を解決する視界支援装置及び視界支援方法を提供することを目的とする。また、本発明は、それらに用いられる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係る画像処理装置は、n台の撮像装置(nは2以上の整数)によって撮像された画像の夫々を仮想視点から見た鳥瞰図画像に変換する視点変換手段と、得られた各鳥瞰図画像を合成して合成鳥瞰図画像を生成する画像合成手段と、を備え、前記合成鳥瞰図画像を表示装置に表示させるための映像信号を生成する画像処理装置において、前記画像合成手段は、複数の撮像装置によって共通して撮像されている共通視野内に高さのある立体物が存在している場合、前記複数の撮像装置から得られる複数の鳥瞰図画像において前記立体物が描画されている各領域の、合成領域に相当する立体物反映領域を検出し、前記合成鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像として、前記複数の鳥瞰図画像の内の、1つの鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像を採用することを特徴とする。
【0017】
前記複数の鳥瞰図画像が第1の鳥瞰図画像と第2の鳥瞰図画像から構成される場合、第1の鳥瞰図画像において前記立体物が描画されている領域と、第2の鳥瞰図画像において前記立体物が描画されている領域とを合成した領域を立体物反映領域として検出する。
【0018】
立体物の描画されている領域を検出して、その領域の画像を合成鳥瞰図画像に適用することにより、合成鳥瞰図画像における立体物の消失の問題は回避されうる。また、前記合成鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像として、「前記複数の鳥瞰図画像の内の、1つの鳥瞰図画像」内の前記立体物反映領域の画像を採用することにより、立体物が二重像として表示されるといった問題も回避されうる。
【0019】
具体的には例えば、前記画像合成手段は、合成の際に前記複数の鳥瞰図画像が重なり合う共通領域の画像を前記複数の鳥瞰図画像間で比較することによって、前記立体物反映領域を検出する。
【0020】
より具体的には例えば、前記画像合成手段は、合成の際に前記複数の鳥瞰図画像が重なり合う共通領域の画像を前記複数の鳥瞰図画像間で比較することによって、前記共通領域における、前記複数の鳥瞰図画像間の差分領域を特定し、該差分領域を前記立体物反映領域として検出する。
【0021】
そして、上記画像処理装置と、前記n台の撮像装置、及び、前記表示装置の内の少なくとも一方と、を備えた視界支援装置を構成するとよい。
【0022】
また、上記目的を達成するために本発明に係る視界支援方法は、n台の撮像装置(nは2以上の整数)によって撮像された画像の夫々を仮想視点から見た鳥瞰図画像に変換し、得られた各鳥瞰図画像を合成した合成鳥瞰図画像を表示装置に表示させる視界支援方法において、複数の撮像装置によって共通して撮像されている共通視野内に高さのある立体物が存在している場合、前記複数の撮像装置から得られる複数の鳥瞰図画像において前記立体物が描画されている各領域の、合成領域に相当する立体物反映領域を検出し、前記合成鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像として、前記複数の鳥瞰図画像の内の、1つの鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像を採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の鳥瞰図画像を合成して表示する際の、立体物の消失及び二重像の表示の各問題を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】1台のカメラが設置された車両を横から見た平面図であり、1台のカメラによって撮像された撮像画像から鳥瞰図画像を生成する方法を説明するための図である。
【図2】カメラ座標系XYZと、カメラの撮像面の座標系Xbubuと、2次元地面座標系Xw w を含む世界座標系Xw w w と、の関係を表す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る、車両を左斜め前方から見た図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、車両を左斜め前方から見た図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、各鳥瞰図画像を表す図である。
【図6】図5に示す各鳥瞰図画像を全周鳥瞰図画像の座標上に変換した図である。
【図7】図3に示す前カメラと横カメラの撮像画像から生成される各鳥瞰図画像と、それらの共通領域を明示する図である
【図8】本発明の実施形態に係る、視界支援装置の全体構成図である。
【図9】図8の視界支援装置の処理手順を表すフローチャート図である。
【図10】図7の共通領域における差分画像及び差分領域を表す図である。
【図11】各カメラから得た画像にとっての差分領域を表す図である。
【図12】図8の画像処理部によって生成される全周鳥瞰図画像の例を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る優先カメラの選択手法を説明するための図であり、図7の共通領域を3つの領域に分割した状態を表す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る優先カメラの選択手法を説明するための図であり、図7の共通領域に関する、前カメラ用の重み値と左横カメラの用の重み値を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る優先カメラの選択手法を説明するための図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る優先カメラの選択手法を説明するための図であり、図13の各領域に属する画素数を例示する図である。
【図17】複数のカメラを車両に設置した状況を表す平面図である。
【図18】図17の車両を左斜め前方から見た図である。
【図19】図17の各カメラより得た撮像画像から生成される全周鳥瞰図画像を示す図である。
【図20】図17の車両を左斜め前方から見た図である。
【図21】図19の全周鳥瞰図画像を生成する際の従来手法を説明するための図である。
【図22】図19の全周鳥瞰図画像を生成する際の従来手法を説明するための図である。
【図23】従来手法を用いた場合の表示画像の例を表す図である。
【図24】従来手法を用いた場合の表示画像の他の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態について説明する。
[鳥瞰図画像の生成方法]
まず、1台のカメラによって撮像された撮像画像から鳥瞰図画像を生成する方法について説明する。尚、以下の説明において、地面は水平面上にあるものとし、「高さ」は、地面を基準とした高さを表すものとする。
【0026】
図1に示すように、車両100の後部に後方斜め下向きにカメラ1が配置されている場合を考える。車両100は、例えばトラックである。水平面とカメラ1の光軸とのなす角は、図1にθで表される角度と、θ2で表される角度との2種類がある。角度θ2は、一般的には、見下ろし角または俯角と呼ばれている。今、角度θを、水平面に対するカメラ1の傾き角度として捉える。90°<θ<180°、が成立する。
【0027】
図2は、カメラ座標系XYZと、カメラ1の撮像面Sの座標系Xbubuと、2次元地面座標系Xw w を含む世界座標系Xw w w との関係を示している。カメラ座標系XYZは、X軸、Y軸及びZ軸を座標軸とする三次元の座標系である。座標系Xbubuは、Xbu軸及びYbu軸を座標軸とする二次元の座標系である。2次元地面座標系Xw wは、Xw軸及びZw軸を座標軸とする二次元の座標系である。世界座標系Xw wwは、Xw軸、Yw軸及びZw軸を座標軸とする三次元の座標系である。
【0028】
カメラ座標系XYZでは、カメラ1の光学中心を原点Oとして、光軸方向にZ軸が、Z軸に直交しかつ地面に平行な方向にX軸が、Z軸およびX軸に直交する方向にY軸がとられている。撮像面Sの座標系Xbubuでは、撮像面Sの中心に原点をとり、撮像面Sの横方向にXbu軸が、撮像面Sの縦方向にYbu軸がとられている。
【0029】
世界座標系Xw w w では、カメラ座標系XYZの原点Oを通る鉛直線と地面との交点を原点Ow とし、地面と垂直な方向にYw 軸が、カメラ座標系XYZのX軸と平行な方向にXw 軸が、Xw 軸およびYw 軸に直交する方向にZw 軸がとられている。
【0030】
w 軸とX軸との間の平行移動量はhであり、その平行移動の方向は鉛直線方向である。そして、Zw 軸とZ軸との成す鈍角の角度は、傾き角度θと一致する。
【0031】
カメラ座標系XYZにおける座標を(x,y,z)と表記する。x、y及びzは、夫々、カメラ座標系XYZにおける、X軸成分、Y軸成分及びZ軸成分である。
【0032】
世界座標系系Xw w wにおける座標を(xw ,yw ,zw )と表記する。xw 、yw
及びzwは、夫々、世界座標系系Xw w wにおける、Xw軸成分、Yw軸成分及びZw軸成分である。
【0033】
二次元地面座標系Xw w における座標を(xw ,zw )と表記する。xw及びzwは、夫々、二次元地面座標系Xw wにおける、XW軸成分及びZW軸成分であり、それらは世界座標系系Xw w wにおけるXW軸成分及びZW軸成分と一致する。
【0034】
撮像面Sの座標系Xbubuにおける座標を(xbu,ybu)と表記する。xbu及びybuは、夫々、撮像面Sの座標系Xbubuにおける、Xbu軸成分及びYbu軸成分である。
【0035】
カメラ座標系XYZの座標(x,y,z)と世界座標系Xw w w の座標(xw ,yw ,zw )との間の変換式は、次式(1)で表される。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、カメラ1の焦点距離をfとする。そうすると、撮像面Sの座標系Xbubuの座標(xbu,ybu)と、カメラ座標系XYZの座標(x,y,z)との間の変換式は、次式(2)で表される。
【0038】
【数2】

【0039】
上記式(1)及び(2)から、撮像面Sの座標系Xbubuの座標(xbu,ybu)と二次元地面座標系Xw w の座標(xw ,zw )との間の変換式(3)が得られる。
【0040】
【数3】

【0041】
また、図2には示されていないが、鳥瞰図画像についての座標系である鳥瞰図座標系Xauauを定義する。鳥瞰図座標系Xauauは、Xau軸及びYau軸を座標軸とする二次元の座標系である。鳥瞰図座標系Xauauにおける座標を(xau,yau)と表記する。鳥瞰図画像は、二次元配列された複数の画素の画素信号によって表され、鳥瞰図画像上における各画素の位置は座標(xau,yau)によって表される。xau及びyauは、それぞれ鳥瞰図座標系XauauにおけるXau軸成分及びYau軸成分である。
【0042】
鳥瞰図画像は、実際のカメラの撮像画像を仮想カメラの視点(以下、仮想視点という)から見た画像に変換したものである。より具体的には、鳥瞰図画像は、実際のカメラの撮像画像を、地上面を鉛直方向に見下ろした画像に変換したものである。撮像画像から鳥瞰図画像を生成する際の視点の変換は、一般に、視点変換と呼ばれる。
【0043】
二次元地面座標系Xw w から仮想カメラの鳥瞰図座標系Xauauへの投影は、平行投影によって行われる。仮想カメラの高さ(即ち、仮想視点の高さ)をHとすると、二次元地面座標系Xw w の座標(xw ,zw )と鳥瞰図座標系Xauauの座標(xau,yau)との間の変換式は、次式(4)で表される。仮想カメラの高さHは予め設定されている。更に、式(4)を変形することにより、下式(5)が得られる。
【0044】
【数4】

【0045】
【数5】

【0046】
得られた式(5)を上記式(3)に代入すると、次式(6)が得られる。
【0047】
【数6】

【0048】
上記式(6)から、撮像面Sの座標系Xbubuの座標(xbu,ybu)を、鳥瞰図座標系Xauauの座標(xau,yau)に変換するための次式(7)が得られる。
【0049】
【数7】

【0050】
撮像面Sの座標系Xbubuの座標(xbu,ybu)は、カメラ1の撮像画像における座標を表すため、上記式(7)を用いることによってカメラ1の撮像画像は鳥瞰図画像に変換される。実際には、カメラ1の撮像画像に対して、適宜、レンズ歪み補正などの画像処理を施し、その画像処理後の撮像画像を上記式(7)を用いて鳥瞰図画像に変換する。
【0051】
[全周鳥瞰図画像の生成方法の基本的な考え方]
本実施形態において、車両100へのカメラの設置状況を表す平面図は上述の図17と同じであるので、重複する図示を割愛する。図3及び図4は、車両100を左斜め前方から見た図である。
【0052】
図17に示す如く、車両100の前部、後部、左側部及び右側部に、夫々、カメラ(撮像装置)1F、1B、1L及び1Rが取り付けられている。以下の説明において、カメラ1F、1B、1L及び1Rを、夫々、前カメラ1F、後カメラ1B、左横カメラ1L及び右横カメラ1Rと呼ぶこともある。
【0053】
また、図3及び図4に示す如く、カメラ1Fは、例えば車両100のフロントミラー上部に設置され、カメラ1Lは、例えば車両100の左側面の最上部に設置される。図3及び図4には示されていないが、カメラ1Bは、例えば車両100の後部の最上部に設置され、カメラ1Rは、例えば車両100の右側面の最上部に設置される。
【0054】
カメラ1Fの光軸が車両100の前方斜め下向きになるように、且つ、カメラ1Bの光軸が車両100の後方斜め下向きになるように、且つ、カメラ1Lの光軸が車両100の左方斜め下向きになるように、且つ、カメラ1Rの光軸が車両100の右方斜め下向きになるように、カメラ1F、1B、1L及び1Rは車両100に設置される。
【0055】
カメラ1L及び1Rの高さは、カメラ1Fの高さよりも高いものとする。また、車両100は、地面上に位置するものとする。
【0056】
図3及び図4には、各カメラの視野、即ち、各カメラの撮像領域が示されている。各カメラは、自身の視野内の被写体を撮像した撮像画像を生成する。カメラ1F、1B、1L及び1Rの視野を、夫々、12F、12B、12L及び12Rにて表す。尚、視野12R及び12Bに関しては、図3及び図4において一部しか示されていない。
【0057】
カメラ1Fの視野12Fには、カメラ1Fの設置位置を基準とした、車両100の前方の所定範囲内に位置する立体物及び車両100の前方の地面が含まれる。
【0058】
カメラ1Bの視野12Bには、カメラ1Bの設置位置を基準とした、車両100の後方の所定範囲内に位置する立体物及び車両100の後方の地面が含まれる。
【0059】
カメラ1Lの視野12Lには、カメラ1Lの設置位置を基準とした、車両100の左方の所定範囲内に位置する立体物及び車両100の左方の地面が含まれる。
【0060】
カメラ1Rの視野12Rには、カメラ1Lの設置位置を基準とした、車両100の右方の所定範囲内に位置する立体物及び車両100の右方の地面が含まれる。
【0061】
このように、各カメラの視点は異なり、各カメラの視野(画角)内に収まる被写体は異なる。また、立体物とは、人物などの高さのある物体である。地面を形成する路面などは、高さがないため立体物ではない。
【0062】
カメラ1Fと1Lは、車両100の左斜め前方の所定領域を共通して撮像する。つまり、車両100の左斜め前方の所定領域にて視野12F及び12Lは重なり合う。この重なり合う部分を、共通視野(共通撮像空間)と呼ぶこととする。
【0063】
同様に、車両100の右斜め前方の所定領域にて視野12Fと12Rは重なり合ってそれらの共通視野が形成され、車両100の左斜め後方の所定領域にて視野12Bと12Lは重なり合ってそれらの共通視野が形成され、車両100の右斜め後方の所定領域にて視野12Bと12Rは重なり合ってそれらの共通視野が形成される。
【0064】
視野12Fと12Lとの間の共通視野を特に共通視野13と呼び、この共通視野13に着目して以下の説明を行うものとする。共通視野13以外の共通視野に関しても同様の処理が行われる。
【0065】
図4には、共通視野13が太線を用いて示されている。共通視野13は、車両100の左斜め前方の地面を底面とする円錐に類似した空間となっている。図4に示す如く、この共通視野13内に立体物14が存在するものとする。
【0066】
本実施形態では、図5に示す如く、カメラ1F、1B、1L及び1Rから得られる撮像画像から、夫々、上記式(7)を用いて鳥瞰図画像10F、10B、10L及び10Rを生成する。次に、カメラ1Bに対応する鳥瞰図画像10Bを基準として、他の3つの鳥瞰図画像10F、10L及び10Rを回転及び/又は平行移動することにより、それら(10F、10L及び10R)を鳥瞰図画像10Bにおける座標に変換する。これにより、各鳥瞰図画像の座標が、全周鳥瞰図画像における座標に変換される。以下、全周鳥瞰図画像における座標を、「全周鳥瞰図座標」とよぶ。
【0067】
図6に、全周鳥瞰図座標上に表された鳥瞰図画像10F、10B、10L及び10Rを示す。全周鳥瞰図座標で考えた場合、図6に示す如く、2つの鳥瞰図画像が重なり合う部分が存在する。
【0068】
図6において、CFLの符号が付された斜線領域が、全周鳥瞰図座標上において鳥瞰図画像10Fと10Lが重なり合う部分であり、これを共通領域CFLと呼ぶ。鳥瞰図画像10Fにおいて、共通領域CFLにはカメラ1Fから見た共通視野13(図4参照)内の被写体の画像が現れ、鳥瞰図画像10Lおいて、共通領域CFLにはカメラ1Lから見た共通視野13内の被写体の画像が現れる。尚、共通領域は、複数の鳥瞰図画像が重複する重複領域と呼ぶこともできる。
【0069】
共通領域CFL以外に、鳥瞰図画像10Fと10Rが重なり合う共通領域CFRと、鳥瞰図画像10Bと10Lが重なり合う共通領域CBLと、鳥瞰図画像10Bと10Rが重なり合う共通領域CBRとがあるが、特に、共通視野13に対応する共通領域CFLに着目して本実施形態の説明を行うこととする。
【0070】
尚、図5及び図6において、XF軸及びYF軸は、鳥瞰図画像10Fの座標系の座標軸であり、それらは、Xau軸及びYau軸に対応する。同様に、XR軸及びYR軸は、鳥瞰図画像10Rの座標系の座標軸であり、それらは、Xau軸及びYau軸に対応する。同様に、XL軸及びYL軸は、鳥瞰図画像10Lの座標系の座標軸であり、それらは、Xau軸及びYau軸に対応する。同様に、XB軸及びYB軸は、鳥瞰図画像10Bの座標系の座標軸であり、それらは、Xau軸及びYau軸に対応する。
【0071】
また、図6では、図示の簡略化上、共通領域CFLを矩形としているが、実際には共通領域CFLは矩形とはならない。また、各鳥瞰図画像も矩形になるとは限らない。図7に、各鳥瞰図画像が現れる領域及び共通領域CFLを、より具体的に示す。図7(a)及び(b)は、夫々、全周鳥瞰図座標における鳥瞰図画像10L及び10Fを表し、図7(c)では、それらの共通領域CFLが斜線領域にて示されている。但し、図7(a)及び(c)において、車両の後部よりの画像の図示を省略している。この共通領域CFLにおいて、2つの鳥瞰図画像を如何に合成するかが本実施形態の特徴である。
【0072】
[全周鳥瞰図画像の具体的な生成方法]
図8に、本実施形態に係る視界支援装置(車両周辺視界支援装置)の全体構成図を示す。本実施形態に係る視界支援装置は、上述の如く車両100に取り付けられるカメラ1F、1B、1L及び1Rと、それらの各カメラにて得られる撮像画像から全周鳥瞰図画像を生成する画像処理部2と、画像処理部2によって生成された全周鳥瞰図画像を表示する表示部3と、を備える。全周鳥瞰図画像は、基本的には、図19に示すものと同様である。但し、本実施形態では、上述の共通領域における合成手法に特徴がある。
【0073】
カメラ1F、1B、1L及び1Rとして、例えばCCD(Charge Coupled Devices)を用いたカメラや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセン
サを用いたカメラが用いられる。画像処理部2は、例えば集積回路から形成される。表示部3は、液晶ディスプレイパネル等から形成される。カーナビゲーションシステムなどに含まれる表示装置を、視界支援装置における表示部3として流用しても良い。
【0074】
図9に、図8の視界支援装置の処理手順を表すフローチャートを示す。図9に示すステップS2〜S5の処理は画像処理部2によって実施され、ステップS1の処理は各カメラと画像処理部2によって実施され、ステップS6の処理は画像処理部2と表示部3によって実施される。
【0075】
まず、画像処理部2は、各カメラ1F、1B、1L、1Rの撮像画像を読み込む(ステップS1)。次に、各撮像画像を、変換テーブルデータなどを用いて鳥瞰図画像に変換する(ステップS2)。これによって、上述の鳥瞰図画像10F、10B、10L及び10Rが生成される。変換テーブルデータは、上記式(7)に従って予め設定される。尚、この際、各撮像画像にレンズ歪み補正などの必要な画像処理を施してから、鳥瞰図画像に変換するようにしてもよい。
【0076】
続いて、ステップS3において、2つの鳥瞰図画像間の共通領域での差分画像を生成し、該差分画像を基に、2つの鳥瞰図画像間の共通領域における差分領域を検出する。図6を参照して説明したように共通領域は4つ存在するが、共通領域CFLに特に着目して説明を行うものとする。他の共通領域についても同様の処理が施される。
【0077】
共通領域CFLに関する差分画像及び差分領域について説明する。上述したように、共通領域CFLに対応する共通視野13に、立体物14が存在するものとする(図4参照)。
【0078】
図10を参照する。図10において、符号111は、左横カメラ1Lに対応する鳥瞰図画像10L内の共通領域CFLの画像を表し、符号112は、前カメラ1Fに対応する鳥瞰図画像10F内の共通領域CFLの画像を表す。画像111内の斜線が付された領域121は、画像111における立体物14の描画領域であり、画像112内の斜線が付された領域122は、画像112における立体物14の描画領域である。今、説明の簡略化上、画像111において、領域121以外は一様な地面(路面など)が描画されているものとし、画像112において、領域122以外は一様な地面(路面など)が描画されているものとする。
【0079】
ステップS3において、画像処理部2は、画像111と画像112の差分をとることにより、差分画像113を生成する。例えば、画像111及び112を濃淡画像として捉え、画像111と画像112の差分画像113を濃淡画像として生成する。差分画像113の各画素の画素値(画素信号の値)は、画像111の各画素の画素値と画像112の各画素の画素値の差(或いは差の絶対値)にて表される。そして、差分画像113から差分領域123を特定する。図10において、差分領域123は、差分画像113内の、斜線が付された領域である。例えば、差分画像113において、差分画像113を形成する画素の画素信号の値が所定の閾値以上となっている領域を差分領域123とする。画素信号とは、画素の輝度を表す輝度信号、または、画素の色を表す色信号(色差信号など)である。
【0080】
差分領域123は、画像111において立体物14が描画されている領域121と、画像112において立体物14が描画されている領域122と、の合成領域(立体物反映領域)となる。鳥瞰図画像への変換の際、各鳥瞰図画像が地表面において連続性を有するように所定の変換が行われるため、差分画像113では、立体物の存在に関与する領域にのみ或る程度の大きさを有する差分値が得られる。このため、上述の処理によって差分領域123を検出することが可能である。また、差分画像113において、エッジ検出を行って差分領域123を囲む輪郭を検出し、検出された輪郭の内側を差分領域123として特定するようにしても良い。また、画像111の画像112の夫々において個別にエッジ検出を行って、画像111と画像112の間におけるエッジ検出結果(エッジの有無)の相違を抽出し、相違のある画像部分から差分領域123を検出するようにしてもよい。
【0081】
鳥瞰図画像10L及び10Fの夫々における、差分領域123について考察する。図11(a)に示す如く、左横カメラ1Lに対応する鳥瞰図画像10Lにとって、差分領域123は、左横カメラ1Lの撮像による立体物14の描画領域(即ち、領域121)と、前カメラ1Fから見た場合に立体物14によって遮蔽される遮蔽領域121aと、から形成される。鳥瞰図画像10Lにおいて、この遮蔽領域121aには地面が現れる。一方、図11(b)に示す如く、前カメラ1Fに対応する鳥瞰図画像10Fにとって、差分領域123は、前カメラ1Fの撮像による立体物14の描画領域(即ち、領域122)と、左横カメラ1Lから見た場合に立体物14によって遮蔽される遮蔽領域122aと、から形成される。鳥瞰図画像10Fにおいて、この遮蔽領域122aには地面が現れる。
【0082】
これらの特性を考慮し、鳥瞰図画像10Lと10Fを合成する際、差分領域123に関しては、鳥瞰図画像10Lと10Fの何れか一方における画像を採用するようにする(処理の具体例は後述)。これにより、立体物14を消失させることなく適切に表示すること
が可能となる。
【0083】
ステップS3に続くステップS4では、差分領域(差分領域123など)の画像として採用されるべき画像を含む鳥瞰図画像を提供する優先カメラが選択される。差分領域123に関しては、前カメラ1Fと左横カメラ1Lの何れか一方が優先カメラとして選択される。例えば、差分領域123に関し、より設置位置の高い左横カメラ1Lを優先カメラとして選択する。より設置位置の高い左横カメラ1Lの方がより高い視点から立体物を見ているため、立体物の全体像を比較的捉えやすいからである。他の差分領域に関しても同様にして優先カメラが選択される。設置位置の高さに基づいて優先カメラを選択する場合、何れのカメラが優先カメラとして選択されるかは、各カメラの高さに応じて事前に定められる。他にも、様々な優先カメラの選択手法が考えられるが、他の選択手法については後に第2実施形態として説明する。
【0084】
ステップS4に続くステップS5において、画像処理部2は、ステップS3とS4の処理結果を参照しつつ、全周鳥瞰図画像を生成する。つまり、図5及び図6等を参照して説明したように各鳥瞰図画像から全周鳥瞰図画像を合成するのであるが、共通領域内の差分領域に関しては、優先カメラの撮像画像に基づく差分領域の画像を採用する。例えば、共通領域CFLに関し、ステップS3において差分領域123が検出され且つステップS4において左横カメラ1Lが優先カメラとして選択された場合は、全周鳥瞰図画像内の差分領域123の画像として、鳥瞰図画像10L内の差分領域123の画像(即ち、図11(a)の領域121と121aとを併せた領域の画像)を採用する。
【0085】
共通領域CFL内の、差分領域123を除く領域に関しては、鳥瞰図画像10Fと10Lにおける各画素信号を平均化することによって、全周鳥瞰図画像における該領域(共通領域CFL内の、差分領域123を除く領域)の画像を生成する。この平均化により、連続的な画像を合成することができる。しかし、差分領域123でない領域には立体物が描画されていないため(換言すれば、両鳥瞰図画像間で差がないため)、鳥瞰図画像10Fと10Lの何れか一方のみを用いて合成処理を行うようにしてもよい。つまり、共通領域CFL内の、差分領域123を除く領域に関しては、鳥瞰図画像10Fと10Lの何れか一方の画像を、そのまま、全周鳥瞰図画像における該領域(共通領域CFL内の、差分領域123を除く領域)の画像として採用するようにしてもよい。共通領域CFLに着目してステップS5の処理を説明したが、他の共通領域についても同様に処理される。
【0086】
図12に、得られた全周鳥瞰図画像の例を示す。今の例の場合、差分領域123に関して左横カメラ1Lが優先カメラとなっているので、全周鳥瞰図画像には立体物の全体像が現れている。全周鳥瞰図画像内の共通領域以外の画像に関しては、図6に示すように鳥瞰図画像10F、10B、10L及び10Rが配置される。即ち、全周鳥瞰図画像上において、車両の描画領域の前方、後方、左方及び右方に、夫々、鳥瞰図画像10F、10B、10L及び10Rに基づく画像が描画される。
【0087】
ステップS5に続くステップS6において、画像処理部2は、ステップS5で生成した全周鳥瞰図画像が表示部3に表示されるように必要な映像信号を生成して表示部3に出力する。これにより、図12に示されるような全周鳥瞰図画像が表示部3に表示される。ステップS6を終えるとステップS1に戻り、全周鳥瞰図画像を周期的に最新の画像に更新するべくステップS1〜S6の処理が繰り返される。
【0088】
本実施例の如く合成処理を行えば立体物が表示画面から消失してしまうといった問題が回避されると共に、立体物を二重像とならずに表すことが可能である。また、立体物が表示される領域以外に関しても、連続的な画像が合成され、車両周辺の状況把握に適した映像を表示することが可能となる。
<<第2実施形態>>
図9のステップS4にて実施される優先カメラの選択手法の他の例を、第2実施形態として説明する。第2実施形態は、優先カメラの選択手法が第1実施形態のそれと異なるだけで、他の点については第1実施形態と同じである。
【0089】
優先カメラの選択手法の他の例として、第1、第2、第3選択手法を例示する。共通領域CFL内の差分領域123に着目して、第1〜第3選択手法の説明を行うものとする。勿論、他の差分領域に関しても同様に優先カメラが選択される。第1〜第3選択手法は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
[第1選択手法]
第1選択手法について説明する。第1選択手法では、立体物14と各カメラとの距離が参照される。画像上における差分領域123の位置が分かれば、実空間における、立体物14と前カメラ1Fとの距離及び立体物14と左横カメラ1Lとの距離を特定できる。両距離を比較し、距離が短い方のカメラを優先カメラとして選択する。他の条件が同じであれば、距離が短い方のカメラの方が立体物14をより的確に捉えることができる、と考えられるからである。
[第2選択手法]
第2選択手法について説明する。第2選択手法では、車両100の進行方向が参照される。進行方向に関する情報は、該情報を検出するための部位(該部位は、例えば車両100に備えられる)から画像処理部2に与えられる。
【0090】
例えば、差分領域123に関し、車両100が左折している時には左横カメラ1Lを優先カメラとして選択し、車両100が前進している時には前カメラ1Fを優先カメラとして選択する。左折時には、車両100の左側の映像の必要性は比較的大きい一方で車両100の前方の映像の必要性は比較的小さい。前進時には、車両100の左側の映像の必要性は比較的小さい一方で車両100の前方の映像の必要性は比較的大きい。これを考慮して、上述のように優先カメラを選択する。これにより、車両100の進行方向をも考慮した適切な映像を表示することが可能となる。
【0091】
尚、左折と前進に関して例示したが、右折や後退などの運転状態に応じても同様の考え方で優先カメラは選択される。
[第3選択手法]
第3選択手法について説明する。第3選択手法では、共通領域CFL内における差分領域123の位置に基づいて、優先カメラが選択される。
【0092】
第3選択手法では、カメラごとに設定された重み値テーブルデータが参照される。共通領域CFLに関しては、前カメラ1Fに対応する重み値テーブルデータと、左横カメラ1Lに対応する重み値テーブルデータが、予め設定されている。
【0093】
各重み値テーブルデータには、共通領域CFLの画像の各画素位置に対応する重み値が定義されている。例えば、共通領域CFLを、図13に示す如く、3つの領域AR1、AR2及びAR3に分割する。そして、領域AR1に属する画素の重み値と、領域AR2に属する画素の重み値と、領域AR3に属する画素の重み値と、が各重み値テーブルデータに格納される。
【0094】
共通領域CFLの画像の画素位置との関係で定まる重み値は、異なる重み値テーブルデータ間で異なるように設定されている。図14に、前カメラ1Fに対応する重み値及び左横カメラ1Lに対応する重み値の設定例を示す。例えば、前カメラ1Fに対応する重み値テーブルデータにおいて、領域AR1に属する画素の重み値WF1は1とされ、領域AR2に属する画素の重み値WF2は2とされ、領域AR3に属する画素の重み値WF3は3とされる。一方、左横カメラ1Lに対応する重み値テーブルデータにおいて、領域AR1に属する画素の重み値WL1は2とされ、領域AR2に属する画素の重み値WL2は3とされ、領域AR3に属する画素の重み値WL3は2とされる。
【0095】
そして、カメラごと(換言すれば、鳥瞰図画像ごと)に、差分領域123に属する画素に対応する重み値を合算し、その合算値を重み評価値とする。説明の便宜上、図15に示す如く、差分領域123を、領域121(図10参照)に対応する一部差分領域123aと領域122に対応する一部差分領域123bとに分解して考える。
【0096】
図16に、各領域AR1〜AR3に属する、一部差分領域123a内の画素数及び一部差分領域123b内の画素数を示す。今、領域AR1、AR2及びAR3に属する、一部差分領域123a内の画素数が、夫々15、18及び2であるとし、領域AR1、AR2及びAR3に属する、一部差分領域123b内の画素数が、夫々12、5及び0であるとする。
【0097】
この場合、前カメラ1Fに関する重み評価値は、
「WF1×(15+12)+WF2×(18+5)+WF3×(2+0)」にて表され、
上述の如く“WF1=1、WF2=2、WF3=3”とした場合、「1×(15+12)+2×(18+5)+3×(2+0)=79」となる。
【0098】
一方、左横カメラ1Lに関する重み評価値は、
「WL1×(15+12)+WL2×(18+5)+WL3×(2+0)」にて表され、
上述の如く“WL1=2、WL2=3、WL3=2”とした場合、「2×(15+12)+3×(18+5)+2×(2+0)=127」となる。
【0099】
そして、算出された両重み評価値の内、大きい方の重み評価値に対応するカメラを優先カメラとして選択する。今の例の場合、79<127であるため、左横カメラ1Lを優先カメラとして選択する。
【0100】
前カメラ1Fは、自身に近い位置の立体物を的確に捉えることができる一方で設置位置が低いことに起因して自身から離れた位置の立体物の全体像を捉えにくい。他方、左横カメラ1Lは、立体物をより高い位置から見ることにより立体物の全体像を捉えやすいものの、立体物が前カメラ1Fに近い位置にある場合は、その立体物の全体像を捉え難くなる。
【0101】
これらを考慮し、前カメラ1Fに比較的近い位置に立体物が存在する場合に前カメラ1Fが優先カメラとして選択されやすいように、図14に示す如く、前カメラ1Fに近い領域において、前カメラ1F用の重み値を比較的大きく設定する。一方、前カメラ1Fから離れた位置に立体物が存在する場合に左横カメラ1Lが優先カメラとして選択されやすいように、前カメラ1Fから離れた領域において、左横カメラ1L用の重み値を比較的大きく設定する。
【0102】
このように、重み値を各カメラの設置位置などに応じて設定することにより、立体物の全体像が表示されやすくなる。第3選択手法を採用した場合、共通領域内における差分領域の位置及び形状が異なれば、選択される優先カメラは異なりうる。また、差分領域の形状が同じであっても、共通領域内における差分領域の位置が異なれば、選択される優先カメラは異なりうる。つまり、第3選択手法では、共通領域内における差分領域の位置に応じて(換言すれば、車両100との関係における立体物の位置に応じて)、優先カメラを選択する。この選択手法を採用することの利点は上述の説明から理解される。
【0103】
上述の視界支援装置は、本発明の実施形態の例に過ぎず、本発明は、様々な変形例(又は実施例)を含む。以下に、本発明に関する変形例(又は実施例)として、変形例1〜変形例4を例示する。各変形例に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
[変形例1]
上述した説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
[変形例2]
また、図8の画像処理部2は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現可能である。画像処理部2にて実現される機能の全部または一部を、プログラムとして記述し、該プログラムをコンピュータ上で実行することによって、その機能の全部または一部を実現するようにしてもよい。
[変形例3]
画像処理部2は、各カメラの撮像画像の夫々を、視点変換によって鳥瞰図画像に変換する視点変換手段と、その変換によって得られた各鳥瞰図画像を合成することにより合成鳥瞰図画像を生成する画像合成手段と、を備えている。合成鳥瞰図画像として、上述の実施形態では全周鳥瞰図画像を例示している。
[変形例4]
上述の実施形態では、車両100としてトラックを例示しているが、本発明は、車両の種類を問わず、普通乗用車などに対しても適用可能である。
【0104】
更に、複数のカメラ(例えば、上述のカメラ1F、1B、1L及び1R)を車両以外に設置することも可能である。つまり、本発明は、建物などに設置される監視システムに対しても、適用可能である。この種の監視システムにおいても、上述の実施形態と同様、複数のカメラ間に共通視野が存在して、異なる鳥瞰図画像間で共通領域(CFLなど)が存在するものとする。各鳥瞰図画像を合成して合成鳥瞰図画像を形成するに際、上述の各実施形態と同様の手法にて共通領域の画像を合成するようにするとよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1F、1B、1L、1R カメラ
2 画像処理部
3 表示部
10F、10B、10L、10R 鳥瞰図画像
12F、12B、12L、12R 視野
13 共通視野
14 立体物
FL 共通領域
100 車両
113 差分画像
123 差分領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
n台の撮像装置(nは2以上の整数)によって撮像された画像の夫々を仮想視点から見た鳥瞰図画像に変換する視点変換手段と、
得られた各鳥瞰図画像を合成して合成鳥瞰図画像を生成する画像合成手段と、を備え、
前記合成鳥瞰図画像を表示装置に表示させるための映像信号を生成する画像処理装置において、
前記画像合成手段は、複数の撮像装置によって共通して撮像されている共通視野内に高さのある立体物が存在している場合、
前記複数の撮像装置から得られる各鳥瞰図画像の共通領域において前記立体物が描画されている領域を合成した立体物反映領域を検出し、
前記複数の画像が重なり合う共通領域を検出し、
前記合成鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像を、前記共通領域と前記立体物反映領域の位置に基づいて選択された撮像装置によって撮像された鳥瞰図画像内の前記立体物反映領域の画像とすることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−153156(P2009−153156A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11158(P2009−11158)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【分割の表示】特願2006−224002(P2006−224002)の分割
【原出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】