画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム
【課題】時系列に撮影した複数画像を用いて画像の合成をすること。
【解決手段】各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子101から複数の画像を取得する画像取得手段(フレームメモリ)102と、複数の画像から合成画像を生成する合成処理部106とを備え、合成処理部106は、色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする。また、合成処理部106は、複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、基準画像と複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、或いは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算部を有し、相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、基準画像以外の画像の合成比率を小さくする。
【解決手段】各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子101から複数の画像を取得する画像取得手段(フレームメモリ)102と、複数の画像から合成画像を生成する合成処理部106とを備え、合成処理部106は、色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする。また、合成処理部106は、複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、基準画像と複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、或いは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算部を有し、相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、基準画像以外の画像の合成比率を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置において静止画を撮影する際に、ノイズの少ない画像を得るためには、十分な露光量を確保することが有効である。しかしながら、露光量を確保するために露光時間を長くすると、手ぶれによるカメラの動きや、被写体の動きにより画像にぶれが生じ不鮮明になるという問題があるため、このようなぶれに対処する方式として、電子ぶれ補正方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−261526号公報
【特許文献2】特開2006−157568号公報
【特許文献3】特開2005−286678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記特許文献1には、ぶれの少ない短い露光時間での撮影を連続して複数回実施し、得られた複数枚の画像間の動きがキャンセルされるように位置合わせ処理をした後、合成処理をすることにより、ぶれの無い良好な画像を得る方式が開示されている。また、上記特許文献2には、デジタルカメラ等で広く採用されているベイヤー配列を有する撮像素子を用いて撮像された画像に対して、低演算量で効率的に電子ブレ補正を適用する方式が開示されている。通常、撮像されたベイヤー配列の画像は、現像処理により3板のRGB形式の画像、あるいは、YCbCr形式の画像等に変換される。上記特許文献2で開示された方式は、画像の合成を3板の画像でではなくベイヤー配列の画像で直接行い、処理対象とする画素数を減らすことで、低演算量での合成を可能としている。
【0005】
一方、ノイズ低減方式においては、輝度信号についてはノイズ低減性能よりも解像度の保存が重視され、色信号については解像度の保存よりもノイズ低減性能が重視される要請がある。このような要請に対応するため、例えば、上記特許文献3には、画像を輝度信号と色信号とに分離し、それぞれに対してパラメータを変化させる、或いは、別々のノイズ低減方式を適用する等で、異なる強度のノイズ低減性能を実現する技術が開示されている。電子ブレ補正方式においても、YCbCr形式の画像に対して合成を適用する場合には、Y画像に対する合成枚数とCbCr画像に対する合成枚数を異なる枚数に設定することで、輝度信号と色信号に対するノイズ低減性能を変化させることが可能である。
【0006】
しかしながら、ベイヤー配列の画像に対して電子ブレ補正を直接適用する場合、輝度信号と色信号が分離されていないため、これらに対してノイズ低減性能を変化させることができないという問題があった。また、ベイヤー配列の画像から、例えば、YCbCr信号を作成し、異なる合成方式を適用すれば上記問題は解決可能となる。しかし、この場合には、ベイヤー配列を3板化する演算や、YCbCr形式に変換する演算が必要となり、ベイヤー配列の画像で直接、電子ブレ補正を適用することで得られていた演算量削減の効果を減殺するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、演算量を削減しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減性能を異ならせた画像の補正を行うことが可能な画像処理装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する画像取得手段と、前記複数の画像から合成画像を生成する合成処理手段とを備え、前記合成処理手段は、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする画像処理装置である。
【0010】
このような構成によれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。これにより、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果を高めることが可能となる。
【0011】
上記本発明の第1の態様においては、前記合成処理手段は、前記複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、前記基準画像と、前記複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、あるいは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算手段を有し、前記相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、前記基準画像以外の画像の合成比率を小さくすることとしてもよい。
【0012】
上記本発明の第1の態様においては、前記合成処理手段は、前記複数の画像のうち少なくとも1つの画像において、画素毎、または複数の画素を含む所定の領域毎のノイズレベルを推定するノイズレベル推定手段を備え、前記ノイズレベル推定手段により推定されたノイズレベルに基づいて前記閾値を算出することとしてもよい。
【0013】
上記本発明の第1の態様においては、前記基準画像と前記対象画像との動き情報を取得する動き情報取得手段と、前記動き情報に基づく画素のシフト量が偶数画素以外である場合に、前記対象画像の画素の補間を行い、補間後の対象画像を前記シフト量に応じてシフトさせて補正する画像補正手段とを備え、前記合成処理手段は、前記画像補正手段により補正された前記複数の画像を合成することとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得し、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する画像処理方法である。
【0015】
本発明の第3の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する第1処理と、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する第2処理とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、演算量を削減しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減性能を異ならせた画像の補正を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示したブロック図である。
【図2】ベイヤー配列の画素を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の動作フローを示した図である。
【図5】複数枚の画像から1枚の画像を合成する手法を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図7】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(Gr、Gb画素)。
【図8】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(R、B画素)。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図10】撮像素子が出力する画素値とノイズ量の典型的関係を説明するための図である。
【図11】ノイズレベル推定部の構成例を示した図である。
【図12】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(Gr、Gb画素)。
【図13】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(R、B画素)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の概略構成を示したブロック図である。本実施形態に係る画像処理装置1は、例えば、デジタルカメラである。
図1に示されるように、画像処理装置1は、光学系100、撮像素子101、フレームメモリ(画像取得手段)102、画像処理部103、動き情報取得部(動き情報取得手段)104、画像補正部(画像補正手段)105、および合成処理部(合成処理手段)106を備えている。本実施形態においては、基準画像と対象画像との2枚の画像を処理の対象とするものとして説明する。
【0020】
フレームメモリ102は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子101から複数の画像を取得する。取得した複数の画像は、動き情報取得部104及び画像補正部105に出力される。
【0021】
動き情報取得部104は、フレームメモリ102に格納された基準画像と対象画像との間の動きである動き情報を取得する。動き情報は、例えば、基準画像と対象画像との画像間の動きを1個の動きベクトル情報(水平方向移動量と垂直方向移動量)として示される。
【0022】
なお、動き情報は1個の画像につき1個の動きベクトル情報とする他にも、画像を複数の領域に分割し、それぞれの領域で動きベクトルを計算する方法でも良い。また、動きベクトルを水平方向移動量と垂直方向移動量とからなるものとするのではなく、回転や拡大縮小による変化を表現できる形式にすることも可能である。さらに、装置に備えたジャイロ等のセンサを用いて動き情報を取得する方法でも良い。
【0023】
画像補正部105は、動き情報取得部104で取得された動き情報に基づいて、フレームメモリ102に格納された対象画像を補正する。具体的には、水平方向移動量と垂直方向移動量とからなる動きベクトル情報に基づいて、対象画像の位置をシフトすることにより、基準画像との位置を合わせる。例えば、対象画像の位置をシフトする際に、偶数画素分のシフトの場合は、基準画像とシフト後の対象画像のベイヤー配列(詳細は後述する)における各色(R、Gr、Gb、B)との対応関係が一致するので、画像補正部105は対象画像をシフトするのみでよい。
【0024】
これに対し、奇数画素分のシフトが含まれる場合や、小数画素分のシフトが含まれる場合、換言すると、シフト量が偶数画素以外の場合には、その分シフトさせてしまうと、基準画像における色の配列とシフト後の対象画像の色の配列とが一致しなくなってしまうので、シフト後の両画像の色の対応関係を一致させるべく、画像補正部105において補間処理とシフト処理とを行う。
【0025】
より具体的に、図2を用いて、奇数画素分(例えば、1画素分)のシフトが含まれる場合の画像補正部105の処理について説明する。
図2(a)はベイヤー配列の画素を示した図である。ベイヤー配列は、G(緑色)のフィルタが市松状に配置されており、R(赤色)フィルタとB(青色)フィルタがラインごとに交互に配置される構成である。したがって、撮像素子101から出力される画像信号は、1画素につきR(赤色)成分、G(緑色)成分、B(青色)成分のいずれか1色の画素値を持った信号となる。そして、このような画像信号が、例えば、G,R,G,R…或いはB,G,B,Gといった色の順でフレームメモリ102に入力される。
【0026】
このようなベイヤー配列の画素において、対象画像の各画素を水平方向に1画素ずらす(シフトさせる)と、図2(b)´のようになり、図2(a)で示されていたベイヤー配列とは配列が異なる。従って、この状態では基本画像と合成することができないため、1画素シフトさせると基本画像と同じ色の配列が得られる画像、すなわち、この場合には、図2(b)に示すような配列の画像を、補間処理を行うことにより作成する。
1画素シフトの場合、図2(a)から図2(b)の画像を得るためには、例えば、画素G33(緑色)の位置にR(赤色)の画素を作成しなければならない。
【0027】
この場合、G33の周辺に存在するR(赤色)の画素、例えば、水平方向の両隣に配置されているR(赤色)成分、つまりR32とR34とを用いて補間処理を行い、G33の位置にR(赤色)の画素を作成する。この場合、G33に作成されるR(赤色)の画素は、R32とR34との画素値の平均値とする。そして、同様の補間処理を他の全ての画素において行うことにより、図2(a)に示されている色配列から図2(b)に示される色配列の画像を作成する。
【0028】
そして、図2(b)に示した色配列の画像を作成した後は、この画像を水平方向に1画素分シフトすることで、図2(c)に示される画像を得る。これにより、シフト後の画像の色配列を基本画像と同様の色配列に一致させることができる。
このように、奇数画素分のシフトが含まれる場合には、予め補間処理を行って、シフト後の色配列が基本画素と同じ配列となるような画像を作成する。これにより、基準画像におけるベイヤー配列とシフト後の対象画像のベイヤー配列とを一致させることができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、1画素(整数画素)ずつ水平方向にシフトさせる場合について説明したが、偶数画素以外のシフトを行う場合は同様の手法によって対応することができる。
例えば、シフト量が小数点を含んでいる場合には、補間処理において加重平均処理を行うことにより、対応することができる。この場合、シフトはあくまでも1画素単位でしかできないので、補間の方法を工夫することにより、小数点以下のシフトまでも可能とするような色配列の画像を作成する。
【0030】
例えば、図2の紙面において左方向に0.1画素シフトさせなければならない場合には、R34の画素に0.1の重みづけ、及びR32の画素に0.9の重みづけをしたものの平均値を算出し、算出された平均値をG33の画素に対するR成分とする。そして、同様の加重平均処理を残りの画素に対して行うことで、まずは、図2(a)に記載の画像を紙面右側に向けて0.9画素シフトさせた画像を作成する。そして、この画像を、紙面左側に向けて1画素シフトさせることにより、最終的には、図2の紙面に向けて左方向に0.1画素シフトさせた画像を得ることができる。なお、上記説明では、両隣の画素を使用して補間処理を行っていたが、この例に限られない。例えば、注目画素を中心とした所定画素からなる領域の中から同色の画素を用い、更に、これらの各画素にシフト量に応じた重み付け値を与えることにより、注目画素の画素値を算出することとしても良い。
【0031】
例えば、画素G33を囲むR12、R14、R32、R34、R52、およびR54の6画素を用い、これらの画素にシフト量に応じた重み付けを与えることで、G33にR成分の画素を作成することとしてもよい。
【0032】
これにより、基準画像と対象画像のベイヤー配列における各色(R、Gr、Gb、B)の対応関係が一致するようにする。
なお、例えば、動き情報に回転や拡大縮小に関する情報が含まれる構成の場合は、画像補正部105において回転や拡大縮小に相当する補正処理を行い、基準画像と対象画像との位置合わせを行うこととなる。
【0033】
合成処理部106は、画像補正部105で位置合わせ処理がなされた対象画像と基準画像とから合成画像を出力する。具体的には、合成処理部106は、加重平均化処理部200と合成比率決定部201とを備えている。図3は、合成処理部106の構成例を示したブロック図である。
【0034】
合成比率決定部201は、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。合成比率は、基準画像を1.0とした場合の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。合成比率決定部201は、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づき、事前に設定された合成比率を加重平均化処理部200に出力する。処理対象画素がGr、Gbの場合、G成分は輝度信号に対する寄与率がR、B成分よりも大きいことから、ノイズ低減性能よりも解像度の保存を重視し、合成比率は低めとする。
【0035】
処理対象画素がR、Bの場合、R、B成分は色信号に対する寄与率がG成分よりも大きいことから、ノイズ低減性能を解像度の保存よりも優先し、合成比率を高めとする。以上のように決定された各色成分に応じた合成比率を、事前に合成比率決定部201に設定し、合成比率決定部201は色識別情報に応じて合成比率を加重平均化処理部200に出力する。
【0036】
加重平均化処理部200は、合成比率決定部201が出力する合成比率に応じて、基準画像と対象画像との画素の加重平均処理を行い、合成画像の画素とする。画像処理部103は、合成処理が完了したベイヤー配列の合成画像に対して、3板化処理、色処理、および階調変換処理等の画像処理を施し、出力画像とする。
【0037】
次に、上記構成を備える画像処理装置の作用について図4を用いて説明する。画像処理装置1は、レンズ等からなる光学系100を通して撮像素子101にて画像が撮像され、複数の撮像画像(例えば、フレーム1およびフレーム2)がフレームメモリ102に格納される(ステップSA1)。撮像素子101は、例えば、ベイヤー配列を有しており、フレームメモリ102にはベイヤー配列の画像が格納される。このような撮像処理を所定枚数分繰り返すことにより、フレームメモリ102には、複数枚のベイヤー配列の画像が格納される。
【0038】
動き情報取得部104において、フレーム1が基準画像、フレーム2が対象画像とされ、このフレーム1(基準画像)とフレーム2(対象画像)とに基づいて、動きベクトル情報が取得(検出)される(ステップSA2)。画像補正部105において、動き情報取得部104から取得された動きベクトル情報に基づいて、フレーム2(対象画像)が補正される(ステップSA3)。合成比率決定部201において、色識別情報に基づいて合成比率が決定される(ステップSA4)。加重平均化処理部200において、合成比率に基づいてフレーム1(基準画像)とフレーム2(対象画像)とに加重平均処理が施され、合成画像が生成される(ステップSA5)。こうして生成された合成画像は、フレームメモリ102に出力される(ステップSA6)。ステップSA4、ステップSA5の処理は、撮像素子101によって撮像された全ての画像に対して繰り返し施される。
【0039】
より具体的に、4枚の画像から1枚の画像を合成する例を示す。4枚の画像をフレーム1からフレーム4とし、2枚の画像を合成して1枚の合成画像を得るという基本処理を3回行うことで、最終的に4枚の画像から1枚の合成画像を得る場合について図5を用いて説明する。
図5に示されるように、フレーム1とフレーム2とを合成し合成画像1を生成する。合成の際には一方を基準画像、他方を対象画像と定義するものとする。続いて、フレーム3を基準画像、フレーム4を対象画像としてフレーム3とフレーム4とを合成し、合成画像2を生成する。さらに、合成画像1を基準画像、合成画像2を対象画像とし、合成画像1と合成画像2とを合成し、合成画像3を生成する。
【0040】
なお、複数枚の合成手法はこれに限られることはなく、例えば図5における合成画像1とフレーム3とを合成し、この合成結果とフレーム4を合成する方式でもよい。また、合成の基本処理を基準画像と対象画像1枚の計2枚の合成処理とするのではなく、基準画像と対象画像3枚の計4枚とすることも、動き情報取得部104、画像補正部105、合成処理部106を拡張することにより容易に可能である。
【0041】
また、基準画像の定め方については、先に撮像した画像とする他にも、後に撮像された画像とする方法や、基本処理のたびに先後を変えることで、中間的な時刻に撮像された画像を基準にすることも可能である。
【0042】
なお、上述した実施形態では、画像処理装置としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、各センサからの出力信号に基づいて別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、画像処理装置は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理装置と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0043】
以上説明してきたように、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減の効果を制御することができる。これにより、合成の失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑制し、かつ、色信号におけるノイズ低減の効果を向上させることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0で設定する構成としていたが、これに限定されない。例えば、合成比率を0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成としてもよい。これにより、例えば、Gr、Gb画素については2枚の画像の合成処理、R、B画素については8枚の画像の合成処理を行う構成とすることが可能となり、上述の効果を得ることができる。
【0045】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置について図6を参照して説明する。
図6に示されるように、第2の実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態における合成処理部106の構成に変更が加えられ、相関計算部(相関計算手段)300を更に備えた構成である。図6に示されるように、第2の実施形態における合成処理部106´に入力されるのは、ベイヤー配列の基準画像と対象画像とである。これら画像は相関計算部300において相関が算出される。
以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0046】
相関計算部300は、画像間の相関値として差分絶対値を画素毎に算出する。一般に、位置合わせが成功している場合には差分絶対値は小さくなり、位置合わせが失敗している場合には差分絶対値は大きくなるので、この結果を合成比率決定部301での合成比率の制御に利用して、位置合わせ失敗に起因するぼけや2重像等のアーティファクトを抑える。
【0047】
なお、相関値として本実施形態では画素間の差分絶対値を用いているが、この他にもより安定した相関値を算出するために、注目画素の周辺画素からなるブロックについて、ブロック間の差分絶対値和(SAD)を相関値としても良い。また、演算量を削減するために、画素毎に相関値を算出するのではなく、複数の画素からなる領域につき1つの相関値を算出する構成にしても良い。また例えば、R画素における画素間の相関値の代わりに、近傍のGrあるいはGb画素の相関値を用いる構成にしても良い。
【0048】
合成比率決定部301は、相関計算部300で算出される差分絶対値と、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づいて、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。合成比率は、基準画像を1.0とした際の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。画素の差分絶対値の大小で合成比率を制御する。差分絶対値が小さい場合には、位置合わせが成功している可能性が高いので合成比率は大きくする。
【0049】
差分絶対値が大きい場合には、位置合わせが失敗している可能性が高いのでアーティファクトを抑制するため合成比率を小さくする。さらに色識別情報を用いて、Gr、Gb画素についてはノイズ低減性能よりも解像度の維持を優先し、R、B画素についてはノイズ低減性能を解像度の維持よりも優先するように合成比率を制御する。
【0050】
図7は、Gr、Gb画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示した図であり、図8は、R、B画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示した図である。図7の例では、差分絶対値が閾値1より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値2より大きい場合には合成比率を0.0にし、閾値1から閾値2へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値1および閾値2は小さめの値とし、差分絶対値が大きい場合には迅速に合成比率を小さくして合成失敗によるアーティファクトを抑制する設定としている。
【0051】
図8の例では、差分絶対値が閾値3より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値4より大きい場合には合成比率を0.5にし、閾値3から閾値4へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値3および閾値4は大きめの値とし、差分絶対値がある程度大きい場合でも合成比率が小さくなりすぎないようにしてノイズ低減能力を維持することを優先する設定としている。
【0052】
以上説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。さらに、画像間の相関値と合成比率の関係を、色成分に応じて設定することにより、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果をより高めることが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0の間で連続的に変化させる構成としているが、これを0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成も可能である。
【0054】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置は、第2の実施形態における合成処理部106の構成に変更が加えられた構成である。図9に第3の実施形態における合成処理部106´´の構成図を示す。第3の実施形態は、第2の実施形態における合成処理部106´にノイズレベル推定部(ノイズレベル推定手段)400が更に備えられ、合成比率決定部401における合成比率をノイズレベル、画像間の相関により決定することにより、ぼけや2重像等のアーティファクトをより精度良く確実に抑え、加えて色識別情報を用いて合成比率を制御することにより、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御する形態である。
以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0055】
合成処理部106´´に入力されるのは、ベイヤー配列の基準画像と対象画像である。まず、基準画像と対象画像から相関計算部300で画像間の相関値が算出される。詳細は第2の実施形態と同様である。また、基準画像と対象画像から、処理対象画素に含まれるノイズの強度(ノイズレベル)をノイズレベル推定部400で推定する。
【0056】
一般に、撮像素子が出力する画素に含まれるノイズ量と画素値との間には一定の関係があり、画素値からノイズ量が推定できることが知られている。図10に撮像素子が出力する画素値とノイズ量の典型的関係を示す。図10における横軸は撮像素子が出力する画素の画素値、縦軸はその画素に含まれるノイズ量(ノイズの標準偏差等)である。典型的には、撮像素子が出力する画素値が大きくなるにつれて、含まれるノイズ量は増える傾向にある。
【0057】
ノイズレベル推定部400では、上述のようなノイズ量と画素値との関連を用いて、処理対象画素に含まれるノイズの強度(ノイズレベル)を推定する。図11にノイズレベル推定部400の構成図を示す。ノイズレベル計算部500、501は、図10に示すような画素値とノイズ量の関係を事前に折れ線近似、あるいは、テーブル化等の手法により用意しておき、基準画像の画素、あるいは、対象画像の画素のノイズレベルをそれぞれ算出する。
【0058】
なお、ノイズレベル推定部400が推定するノイズレベルは、撮像素子が出力するノイズ量と完全に一致する必要はなく、後に行なわれる階調変換処理等の画像処理により増幅されるノイズも考慮して設定してもよい。典型的には、階調変換処理により暗部のノイズが増幅されるため、暗部において撮像素子が出力するノイズ量よりも大きい値をノイズレベルとして設定することも可能である。
【0059】
基準画像と対象画像の位置合わせが成功している画素においては、基準画像の画素値と対象画像の画素値に大きな差はなく、算出されるノイズレベルにも大きな違いは生じない。しかし、位置合わせが失敗している画素においてはこれらに違いが生ずる可能性が高く、当該画素のノイズレベルとしては最大値計算部502にて最大値を選択することで、これをノイズレベルとする。
【0060】
なお、本実施形態においては、最大値計算部502にて最大値を算出し、これをノイズレベルとしたが、この他にも、基準画像のノイズレベルと対象画像のノイズレベルの加重平均値とし、例えば基準画像の画素に重みをつけてノイズレベルを推定することも可能である。またノイズレベル計算部500、501を複数動作させるのが演算量の観点から望ましくない場合には、ノイズレベル計算部500のみを動作させ、この出力をノイズレベルとしても良い。
【0061】
次に、合成比率決定部401の動作について説明する。
合成比率決定部401は、ノイズレベル推定部400で算出されるノイズレベルと、相関計算部300で算出される差分絶対値と、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づいて、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。
【0062】
第2の実施形態と同様に、合成比率は、基準画像を1.0とした際の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。画素の差分絶対値の大小で合成比率を制御する。差分絶対値が小さい場合には、位置合わせが成功している可能性が高いので合成比率は大きくする。差分絶対値が大きい場合には、位置合わせが失敗している可能性が高いのでアーティファクトを抑えるため合成比率を小さくする。さらに色識別情報を用いて、Gr、Gb画素についてはノイズ低減性能よりも解像度の保存を重視し、R、B画素についてはノイズ低減性能を解像度の保存よりも優先するように合成比率を制御する。
【0063】
図12にGr、Gb画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を、図13にR、B画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示す。図12の例では、第2の実施形態と同様に、差分絶対値が閾値1より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値2より大きい場合には合成比率を0.0にし、閾値1から閾値2へは直線的に合成比率を遷移させている。これに加えてノイズレベルに応じて閾値1と閾値2を制御することにより、ノイズレベルに応じた合成比率の制御を行う。
【0064】
ノイズレベルが大きい画素においては、合成によるノイズ低減の必要性が高いことから、合成比率を大きくするために、閾値1と閾値2を大きくする。具体的には、ノイズレベルに所定の定数を乗算した値を、閾値1と閾値2にそれぞれ加算する等とすればよい。ノイズレベルが小さい画素においては、合成によるノイズ低減の必要性が低いので、合成比率を低くするために、閾値1と閾値2を小さくする。具体的には、ノイズレベルに所定の定数を乗算した値を、閾値1と閾値2からそれぞれ減算する等とすればよい。合成比率決定部503は、このような関係をテーブル化等の手法で用意しておいてもよいし、数式計算で算出するようにしてもよい。
【0065】
図13の例では、差分絶対値が閾値3より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値4より大きい場合には合成比率を0.5にし、閾値3から閾値4へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値3および閾値4は大きめの値とし、差分絶対値がある程度大きい場合でも合成比率が小さくなりすぎないようにしてノイズ低減能力を維持することを優先する設定としている。Gr、Gb画素の場合と同様に、ノイズレベルに応じて閾値3と閾値4を制御することにより、ノイズレベルに応じた合成比率の制御を行う。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。さらに、画像間の相関値と合成比率の関係を色成分に応じて設定し、且つこれらを、処理対象画素のノイズレベルに応じて制御することで、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを精度良く抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果をより高めることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0の間で連続的に変化させる構成としていたが、これを0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成も可能である。
【符号の説明】
【0068】
104 動き情報取得部
105 画像補正部
106 合成処理部
200 加重平均化処理部
201、301、401 合成比率決定部
300 相関計算部
400 ノイズレベル推定部
500、501 ノイズレベル計算部
502 最大値計算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置において静止画を撮影する際に、ノイズの少ない画像を得るためには、十分な露光量を確保することが有効である。しかしながら、露光量を確保するために露光時間を長くすると、手ぶれによるカメラの動きや、被写体の動きにより画像にぶれが生じ不鮮明になるという問題があるため、このようなぶれに対処する方式として、電子ぶれ補正方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−261526号公報
【特許文献2】特開2006−157568号公報
【特許文献3】特開2005−286678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記特許文献1には、ぶれの少ない短い露光時間での撮影を連続して複数回実施し、得られた複数枚の画像間の動きがキャンセルされるように位置合わせ処理をした後、合成処理をすることにより、ぶれの無い良好な画像を得る方式が開示されている。また、上記特許文献2には、デジタルカメラ等で広く採用されているベイヤー配列を有する撮像素子を用いて撮像された画像に対して、低演算量で効率的に電子ブレ補正を適用する方式が開示されている。通常、撮像されたベイヤー配列の画像は、現像処理により3板のRGB形式の画像、あるいは、YCbCr形式の画像等に変換される。上記特許文献2で開示された方式は、画像の合成を3板の画像でではなくベイヤー配列の画像で直接行い、処理対象とする画素数を減らすことで、低演算量での合成を可能としている。
【0005】
一方、ノイズ低減方式においては、輝度信号についてはノイズ低減性能よりも解像度の保存が重視され、色信号については解像度の保存よりもノイズ低減性能が重視される要請がある。このような要請に対応するため、例えば、上記特許文献3には、画像を輝度信号と色信号とに分離し、それぞれに対してパラメータを変化させる、或いは、別々のノイズ低減方式を適用する等で、異なる強度のノイズ低減性能を実現する技術が開示されている。電子ブレ補正方式においても、YCbCr形式の画像に対して合成を適用する場合には、Y画像に対する合成枚数とCbCr画像に対する合成枚数を異なる枚数に設定することで、輝度信号と色信号に対するノイズ低減性能を変化させることが可能である。
【0006】
しかしながら、ベイヤー配列の画像に対して電子ブレ補正を直接適用する場合、輝度信号と色信号が分離されていないため、これらに対してノイズ低減性能を変化させることができないという問題があった。また、ベイヤー配列の画像から、例えば、YCbCr信号を作成し、異なる合成方式を適用すれば上記問題は解決可能となる。しかし、この場合には、ベイヤー配列を3板化する演算や、YCbCr形式に変換する演算が必要となり、ベイヤー配列の画像で直接、電子ブレ補正を適用することで得られていた演算量削減の効果を減殺するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、演算量を削減しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減性能を異ならせた画像の補正を行うことが可能な画像処理装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する画像取得手段と、前記複数の画像から合成画像を生成する合成処理手段とを備え、前記合成処理手段は、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする画像処理装置である。
【0010】
このような構成によれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。これにより、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果を高めることが可能となる。
【0011】
上記本発明の第1の態様においては、前記合成処理手段は、前記複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、前記基準画像と、前記複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、あるいは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算手段を有し、前記相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、前記基準画像以外の画像の合成比率を小さくすることとしてもよい。
【0012】
上記本発明の第1の態様においては、前記合成処理手段は、前記複数の画像のうち少なくとも1つの画像において、画素毎、または複数の画素を含む所定の領域毎のノイズレベルを推定するノイズレベル推定手段を備え、前記ノイズレベル推定手段により推定されたノイズレベルに基づいて前記閾値を算出することとしてもよい。
【0013】
上記本発明の第1の態様においては、前記基準画像と前記対象画像との動き情報を取得する動き情報取得手段と、前記動き情報に基づく画素のシフト量が偶数画素以外である場合に、前記対象画像の画素の補間を行い、補間後の対象画像を前記シフト量に応じてシフトさせて補正する画像補正手段とを備え、前記合成処理手段は、前記画像補正手段により補正された前記複数の画像を合成することとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得し、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する画像処理方法である。
【0015】
本発明の第3の態様は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する第1処理と、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する第2処理とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、演算量を削減しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減性能を異ならせた画像の補正を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示したブロック図である。
【図2】ベイヤー配列の画素を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の動作フローを示した図である。
【図5】複数枚の画像から1枚の画像を合成する手法を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図7】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(Gr、Gb画素)。
【図8】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(R、B画素)。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る合成処理部の構成例を示した図である。
【図10】撮像素子が出力する画素値とノイズ量の典型的関係を説明するための図である。
【図11】ノイズレベル推定部の構成例を示した図である。
【図12】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(Gr、Gb画素)。
【図13】合成比率決定部における合成比率の決定方式を説明するための図である(R、B画素)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の概略構成を示したブロック図である。本実施形態に係る画像処理装置1は、例えば、デジタルカメラである。
図1に示されるように、画像処理装置1は、光学系100、撮像素子101、フレームメモリ(画像取得手段)102、画像処理部103、動き情報取得部(動き情報取得手段)104、画像補正部(画像補正手段)105、および合成処理部(合成処理手段)106を備えている。本実施形態においては、基準画像と対象画像との2枚の画像を処理の対象とするものとして説明する。
【0020】
フレームメモリ102は、各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子101から複数の画像を取得する。取得した複数の画像は、動き情報取得部104及び画像補正部105に出力される。
【0021】
動き情報取得部104は、フレームメモリ102に格納された基準画像と対象画像との間の動きである動き情報を取得する。動き情報は、例えば、基準画像と対象画像との画像間の動きを1個の動きベクトル情報(水平方向移動量と垂直方向移動量)として示される。
【0022】
なお、動き情報は1個の画像につき1個の動きベクトル情報とする他にも、画像を複数の領域に分割し、それぞれの領域で動きベクトルを計算する方法でも良い。また、動きベクトルを水平方向移動量と垂直方向移動量とからなるものとするのではなく、回転や拡大縮小による変化を表現できる形式にすることも可能である。さらに、装置に備えたジャイロ等のセンサを用いて動き情報を取得する方法でも良い。
【0023】
画像補正部105は、動き情報取得部104で取得された動き情報に基づいて、フレームメモリ102に格納された対象画像を補正する。具体的には、水平方向移動量と垂直方向移動量とからなる動きベクトル情報に基づいて、対象画像の位置をシフトすることにより、基準画像との位置を合わせる。例えば、対象画像の位置をシフトする際に、偶数画素分のシフトの場合は、基準画像とシフト後の対象画像のベイヤー配列(詳細は後述する)における各色(R、Gr、Gb、B)との対応関係が一致するので、画像補正部105は対象画像をシフトするのみでよい。
【0024】
これに対し、奇数画素分のシフトが含まれる場合や、小数画素分のシフトが含まれる場合、換言すると、シフト量が偶数画素以外の場合には、その分シフトさせてしまうと、基準画像における色の配列とシフト後の対象画像の色の配列とが一致しなくなってしまうので、シフト後の両画像の色の対応関係を一致させるべく、画像補正部105において補間処理とシフト処理とを行う。
【0025】
より具体的に、図2を用いて、奇数画素分(例えば、1画素分)のシフトが含まれる場合の画像補正部105の処理について説明する。
図2(a)はベイヤー配列の画素を示した図である。ベイヤー配列は、G(緑色)のフィルタが市松状に配置されており、R(赤色)フィルタとB(青色)フィルタがラインごとに交互に配置される構成である。したがって、撮像素子101から出力される画像信号は、1画素につきR(赤色)成分、G(緑色)成分、B(青色)成分のいずれか1色の画素値を持った信号となる。そして、このような画像信号が、例えば、G,R,G,R…或いはB,G,B,Gといった色の順でフレームメモリ102に入力される。
【0026】
このようなベイヤー配列の画素において、対象画像の各画素を水平方向に1画素ずらす(シフトさせる)と、図2(b)´のようになり、図2(a)で示されていたベイヤー配列とは配列が異なる。従って、この状態では基本画像と合成することができないため、1画素シフトさせると基本画像と同じ色の配列が得られる画像、すなわち、この場合には、図2(b)に示すような配列の画像を、補間処理を行うことにより作成する。
1画素シフトの場合、図2(a)から図2(b)の画像を得るためには、例えば、画素G33(緑色)の位置にR(赤色)の画素を作成しなければならない。
【0027】
この場合、G33の周辺に存在するR(赤色)の画素、例えば、水平方向の両隣に配置されているR(赤色)成分、つまりR32とR34とを用いて補間処理を行い、G33の位置にR(赤色)の画素を作成する。この場合、G33に作成されるR(赤色)の画素は、R32とR34との画素値の平均値とする。そして、同様の補間処理を他の全ての画素において行うことにより、図2(a)に示されている色配列から図2(b)に示される色配列の画像を作成する。
【0028】
そして、図2(b)に示した色配列の画像を作成した後は、この画像を水平方向に1画素分シフトすることで、図2(c)に示される画像を得る。これにより、シフト後の画像の色配列を基本画像と同様の色配列に一致させることができる。
このように、奇数画素分のシフトが含まれる場合には、予め補間処理を行って、シフト後の色配列が基本画素と同じ配列となるような画像を作成する。これにより、基準画像におけるベイヤー配列とシフト後の対象画像のベイヤー配列とを一致させることができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、1画素(整数画素)ずつ水平方向にシフトさせる場合について説明したが、偶数画素以外のシフトを行う場合は同様の手法によって対応することができる。
例えば、シフト量が小数点を含んでいる場合には、補間処理において加重平均処理を行うことにより、対応することができる。この場合、シフトはあくまでも1画素単位でしかできないので、補間の方法を工夫することにより、小数点以下のシフトまでも可能とするような色配列の画像を作成する。
【0030】
例えば、図2の紙面において左方向に0.1画素シフトさせなければならない場合には、R34の画素に0.1の重みづけ、及びR32の画素に0.9の重みづけをしたものの平均値を算出し、算出された平均値をG33の画素に対するR成分とする。そして、同様の加重平均処理を残りの画素に対して行うことで、まずは、図2(a)に記載の画像を紙面右側に向けて0.9画素シフトさせた画像を作成する。そして、この画像を、紙面左側に向けて1画素シフトさせることにより、最終的には、図2の紙面に向けて左方向に0.1画素シフトさせた画像を得ることができる。なお、上記説明では、両隣の画素を使用して補間処理を行っていたが、この例に限られない。例えば、注目画素を中心とした所定画素からなる領域の中から同色の画素を用い、更に、これらの各画素にシフト量に応じた重み付け値を与えることにより、注目画素の画素値を算出することとしても良い。
【0031】
例えば、画素G33を囲むR12、R14、R32、R34、R52、およびR54の6画素を用い、これらの画素にシフト量に応じた重み付けを与えることで、G33にR成分の画素を作成することとしてもよい。
【0032】
これにより、基準画像と対象画像のベイヤー配列における各色(R、Gr、Gb、B)の対応関係が一致するようにする。
なお、例えば、動き情報に回転や拡大縮小に関する情報が含まれる構成の場合は、画像補正部105において回転や拡大縮小に相当する補正処理を行い、基準画像と対象画像との位置合わせを行うこととなる。
【0033】
合成処理部106は、画像補正部105で位置合わせ処理がなされた対象画像と基準画像とから合成画像を出力する。具体的には、合成処理部106は、加重平均化処理部200と合成比率決定部201とを備えている。図3は、合成処理部106の構成例を示したブロック図である。
【0034】
合成比率決定部201は、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。合成比率は、基準画像を1.0とした場合の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。合成比率決定部201は、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づき、事前に設定された合成比率を加重平均化処理部200に出力する。処理対象画素がGr、Gbの場合、G成分は輝度信号に対する寄与率がR、B成分よりも大きいことから、ノイズ低減性能よりも解像度の保存を重視し、合成比率は低めとする。
【0035】
処理対象画素がR、Bの場合、R、B成分は色信号に対する寄与率がG成分よりも大きいことから、ノイズ低減性能を解像度の保存よりも優先し、合成比率を高めとする。以上のように決定された各色成分に応じた合成比率を、事前に合成比率決定部201に設定し、合成比率決定部201は色識別情報に応じて合成比率を加重平均化処理部200に出力する。
【0036】
加重平均化処理部200は、合成比率決定部201が出力する合成比率に応じて、基準画像と対象画像との画素の加重平均処理を行い、合成画像の画素とする。画像処理部103は、合成処理が完了したベイヤー配列の合成画像に対して、3板化処理、色処理、および階調変換処理等の画像処理を施し、出力画像とする。
【0037】
次に、上記構成を備える画像処理装置の作用について図4を用いて説明する。画像処理装置1は、レンズ等からなる光学系100を通して撮像素子101にて画像が撮像され、複数の撮像画像(例えば、フレーム1およびフレーム2)がフレームメモリ102に格納される(ステップSA1)。撮像素子101は、例えば、ベイヤー配列を有しており、フレームメモリ102にはベイヤー配列の画像が格納される。このような撮像処理を所定枚数分繰り返すことにより、フレームメモリ102には、複数枚のベイヤー配列の画像が格納される。
【0038】
動き情報取得部104において、フレーム1が基準画像、フレーム2が対象画像とされ、このフレーム1(基準画像)とフレーム2(対象画像)とに基づいて、動きベクトル情報が取得(検出)される(ステップSA2)。画像補正部105において、動き情報取得部104から取得された動きベクトル情報に基づいて、フレーム2(対象画像)が補正される(ステップSA3)。合成比率決定部201において、色識別情報に基づいて合成比率が決定される(ステップSA4)。加重平均化処理部200において、合成比率に基づいてフレーム1(基準画像)とフレーム2(対象画像)とに加重平均処理が施され、合成画像が生成される(ステップSA5)。こうして生成された合成画像は、フレームメモリ102に出力される(ステップSA6)。ステップSA4、ステップSA5の処理は、撮像素子101によって撮像された全ての画像に対して繰り返し施される。
【0039】
より具体的に、4枚の画像から1枚の画像を合成する例を示す。4枚の画像をフレーム1からフレーム4とし、2枚の画像を合成して1枚の合成画像を得るという基本処理を3回行うことで、最終的に4枚の画像から1枚の合成画像を得る場合について図5を用いて説明する。
図5に示されるように、フレーム1とフレーム2とを合成し合成画像1を生成する。合成の際には一方を基準画像、他方を対象画像と定義するものとする。続いて、フレーム3を基準画像、フレーム4を対象画像としてフレーム3とフレーム4とを合成し、合成画像2を生成する。さらに、合成画像1を基準画像、合成画像2を対象画像とし、合成画像1と合成画像2とを合成し、合成画像3を生成する。
【0040】
なお、複数枚の合成手法はこれに限られることはなく、例えば図5における合成画像1とフレーム3とを合成し、この合成結果とフレーム4を合成する方式でもよい。また、合成の基本処理を基準画像と対象画像1枚の計2枚の合成処理とするのではなく、基準画像と対象画像3枚の計4枚とすることも、動き情報取得部104、画像補正部105、合成処理部106を拡張することにより容易に可能である。
【0041】
また、基準画像の定め方については、先に撮像した画像とする他にも、後に撮像された画像とする方法や、基本処理のたびに先後を変えることで、中間的な時刻に撮像された画像を基準にすることも可能である。
【0042】
なお、上述した実施形態では、画像処理装置としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、各センサからの出力信号に基づいて別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、画像処理装置は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理装置と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0043】
以上説明してきたように、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号とに対するノイズ低減の効果を制御することができる。これにより、合成の失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑制し、かつ、色信号におけるノイズ低減の効果を向上させることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0で設定する構成としていたが、これに限定されない。例えば、合成比率を0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成としてもよい。これにより、例えば、Gr、Gb画素については2枚の画像の合成処理、R、B画素については8枚の画像の合成処理を行う構成とすることが可能となり、上述の効果を得ることができる。
【0045】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置について図6を参照して説明する。
図6に示されるように、第2の実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態における合成処理部106の構成に変更が加えられ、相関計算部(相関計算手段)300を更に備えた構成である。図6に示されるように、第2の実施形態における合成処理部106´に入力されるのは、ベイヤー配列の基準画像と対象画像とである。これら画像は相関計算部300において相関が算出される。
以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0046】
相関計算部300は、画像間の相関値として差分絶対値を画素毎に算出する。一般に、位置合わせが成功している場合には差分絶対値は小さくなり、位置合わせが失敗している場合には差分絶対値は大きくなるので、この結果を合成比率決定部301での合成比率の制御に利用して、位置合わせ失敗に起因するぼけや2重像等のアーティファクトを抑える。
【0047】
なお、相関値として本実施形態では画素間の差分絶対値を用いているが、この他にもより安定した相関値を算出するために、注目画素の周辺画素からなるブロックについて、ブロック間の差分絶対値和(SAD)を相関値としても良い。また、演算量を削減するために、画素毎に相関値を算出するのではなく、複数の画素からなる領域につき1つの相関値を算出する構成にしても良い。また例えば、R画素における画素間の相関値の代わりに、近傍のGrあるいはGb画素の相関値を用いる構成にしても良い。
【0048】
合成比率決定部301は、相関計算部300で算出される差分絶対値と、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づいて、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。合成比率は、基準画像を1.0とした際の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。画素の差分絶対値の大小で合成比率を制御する。差分絶対値が小さい場合には、位置合わせが成功している可能性が高いので合成比率は大きくする。
【0049】
差分絶対値が大きい場合には、位置合わせが失敗している可能性が高いのでアーティファクトを抑制するため合成比率を小さくする。さらに色識別情報を用いて、Gr、Gb画素についてはノイズ低減性能よりも解像度の維持を優先し、R、B画素についてはノイズ低減性能を解像度の維持よりも優先するように合成比率を制御する。
【0050】
図7は、Gr、Gb画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示した図であり、図8は、R、B画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示した図である。図7の例では、差分絶対値が閾値1より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値2より大きい場合には合成比率を0.0にし、閾値1から閾値2へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値1および閾値2は小さめの値とし、差分絶対値が大きい場合には迅速に合成比率を小さくして合成失敗によるアーティファクトを抑制する設定としている。
【0051】
図8の例では、差分絶対値が閾値3より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値4より大きい場合には合成比率を0.5にし、閾値3から閾値4へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値3および閾値4は大きめの値とし、差分絶対値がある程度大きい場合でも合成比率が小さくなりすぎないようにしてノイズ低減能力を維持することを優先する設定としている。
【0052】
以上説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。さらに、画像間の相関値と合成比率の関係を、色成分に応じて設定することにより、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果をより高めることが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0の間で連続的に変化させる構成としているが、これを0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成も可能である。
【0054】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置は、第2の実施形態における合成処理部106の構成に変更が加えられた構成である。図9に第3の実施形態における合成処理部106´´の構成図を示す。第3の実施形態は、第2の実施形態における合成処理部106´にノイズレベル推定部(ノイズレベル推定手段)400が更に備えられ、合成比率決定部401における合成比率をノイズレベル、画像間の相関により決定することにより、ぼけや2重像等のアーティファクトをより精度良く確実に抑え、加えて色識別情報を用いて合成比率を制御することにより、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御する形態である。
以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0055】
合成処理部106´´に入力されるのは、ベイヤー配列の基準画像と対象画像である。まず、基準画像と対象画像から相関計算部300で画像間の相関値が算出される。詳細は第2の実施形態と同様である。また、基準画像と対象画像から、処理対象画素に含まれるノイズの強度(ノイズレベル)をノイズレベル推定部400で推定する。
【0056】
一般に、撮像素子が出力する画素に含まれるノイズ量と画素値との間には一定の関係があり、画素値からノイズ量が推定できることが知られている。図10に撮像素子が出力する画素値とノイズ量の典型的関係を示す。図10における横軸は撮像素子が出力する画素の画素値、縦軸はその画素に含まれるノイズ量(ノイズの標準偏差等)である。典型的には、撮像素子が出力する画素値が大きくなるにつれて、含まれるノイズ量は増える傾向にある。
【0057】
ノイズレベル推定部400では、上述のようなノイズ量と画素値との関連を用いて、処理対象画素に含まれるノイズの強度(ノイズレベル)を推定する。図11にノイズレベル推定部400の構成図を示す。ノイズレベル計算部500、501は、図10に示すような画素値とノイズ量の関係を事前に折れ線近似、あるいは、テーブル化等の手法により用意しておき、基準画像の画素、あるいは、対象画像の画素のノイズレベルをそれぞれ算出する。
【0058】
なお、ノイズレベル推定部400が推定するノイズレベルは、撮像素子が出力するノイズ量と完全に一致する必要はなく、後に行なわれる階調変換処理等の画像処理により増幅されるノイズも考慮して設定してもよい。典型的には、階調変換処理により暗部のノイズが増幅されるため、暗部において撮像素子が出力するノイズ量よりも大きい値をノイズレベルとして設定することも可能である。
【0059】
基準画像と対象画像の位置合わせが成功している画素においては、基準画像の画素値と対象画像の画素値に大きな差はなく、算出されるノイズレベルにも大きな違いは生じない。しかし、位置合わせが失敗している画素においてはこれらに違いが生ずる可能性が高く、当該画素のノイズレベルとしては最大値計算部502にて最大値を選択することで、これをノイズレベルとする。
【0060】
なお、本実施形態においては、最大値計算部502にて最大値を算出し、これをノイズレベルとしたが、この他にも、基準画像のノイズレベルと対象画像のノイズレベルの加重平均値とし、例えば基準画像の画素に重みをつけてノイズレベルを推定することも可能である。またノイズレベル計算部500、501を複数動作させるのが演算量の観点から望ましくない場合には、ノイズレベル計算部500のみを動作させ、この出力をノイズレベルとしても良い。
【0061】
次に、合成比率決定部401の動作について説明する。
合成比率決定部401は、ノイズレベル推定部400で算出されるノイズレベルと、相関計算部300で算出される差分絶対値と、処理対象画素がR、Gr、Gb、Bのいずれであるかを識別する色識別情報に基づいて、基準画像と対象画像の合成比率を決定する。
【0062】
第2の実施形態と同様に、合成比率は、基準画像を1.0とした際の対象画像の合成割合を0.0から1.0で表すものとする。画素の差分絶対値の大小で合成比率を制御する。差分絶対値が小さい場合には、位置合わせが成功している可能性が高いので合成比率は大きくする。差分絶対値が大きい場合には、位置合わせが失敗している可能性が高いのでアーティファクトを抑えるため合成比率を小さくする。さらに色識別情報を用いて、Gr、Gb画素についてはノイズ低減性能よりも解像度の保存を重視し、R、B画素についてはノイズ低減性能を解像度の保存よりも優先するように合成比率を制御する。
【0063】
図12にGr、Gb画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を、図13にR、B画素における画素の差分絶対値と合成比率の関係例を示す。図12の例では、第2の実施形態と同様に、差分絶対値が閾値1より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値2より大きい場合には合成比率を0.0にし、閾値1から閾値2へは直線的に合成比率を遷移させている。これに加えてノイズレベルに応じて閾値1と閾値2を制御することにより、ノイズレベルに応じた合成比率の制御を行う。
【0064】
ノイズレベルが大きい画素においては、合成によるノイズ低減の必要性が高いことから、合成比率を大きくするために、閾値1と閾値2を大きくする。具体的には、ノイズレベルに所定の定数を乗算した値を、閾値1と閾値2にそれぞれ加算する等とすればよい。ノイズレベルが小さい画素においては、合成によるノイズ低減の必要性が低いので、合成比率を低くするために、閾値1と閾値2を小さくする。具体的には、ノイズレベルに所定の定数を乗算した値を、閾値1と閾値2からそれぞれ減算する等とすればよい。合成比率決定部503は、このような関係をテーブル化等の手法で用意しておいてもよいし、数式計算で算出するようにしてもよい。
【0065】
図13の例では、差分絶対値が閾値3より小さい場合には合成比率を1.0に、差分絶対値が閾値4より大きい場合には合成比率を0.5にし、閾値3から閾値4へは直線的に合成比率を遷移させている。閾値3および閾値4は大きめの値とし、差分絶対値がある程度大きい場合でも合成比率が小さくなりすぎないようにしてノイズ低減能力を維持することを優先する設定としている。Gr、Gb画素の場合と同様に、ノイズレベルに応じて閾値3と閾値4を制御することにより、ノイズレベルに応じた合成比率の制御を行う。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムによれば、ベイヤー配列の複数枚の画像を、色成分に応じて決定される合成比率に基づいて合成することにより、ベイヤー配列を保ったまま合成することによる演算量低減の効果を維持しつつ、輝度信号と色信号に対するノイズ低減の効果を制御することが可能となる。さらに、画像間の相関値と合成比率の関係を色成分に応じて設定し、且つこれらを、処理対象画素のノイズレベルに応じて制御することで、合成失敗による輝度信号におけるアーティファクトを精度良く抑えつつ、色信号におけるノイズ低減の効果をより高めることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態においては合成比率を0.0から1.0の間で連続的に変化させる構成としていたが、これを0.0と1.0の2値とし、加重平均化処理部200を単純な平均化処理に置き換えることで、演算量を削減する構成も可能である。
【符号の説明】
【0068】
104 動き情報取得部
105 画像補正部
106 合成処理部
200 加重平均化処理部
201、301、401 合成比率決定部
300 相関計算部
400 ノイズレベル推定部
500、501 ノイズレベル計算部
502 最大値計算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の画像から合成画像を生成する合成処理手段とを備え、
前記合成処理手段は、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記合成処理手段は、
前記複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、前記基準画像と、前記複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、あるいは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算手段を有し、
前記相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、前記基準画像以外の画像の合成比率を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成処理手段は、
前記複数の画像のうち少なくとも1つの画像において、画素毎、または複数の画素を含む所定の領域毎のノイズレベルを推定するノイズレベル推定手段を備え、
前記ノイズレベル推定手段により推定されたノイズレベルに基づいて前記閾値を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記基準画像と前記対象画像との動き情報を取得する動き情報取得手段と、
前記動き情報に基づく画素のシフト量が偶数画素以外である場合に、前記対象画像の画素の補間を行い、補間後の対象画像を前記シフト量に応じてシフトさせて補正する画像補正手段と
を備え、
前記合成処理手段は、
前記画像補正手段により補正された前記複数の画像を合成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得し、
前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する画像処理方法。
【請求項6】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する第1処理と、
前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する第2処理と
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項1】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の画像から合成画像を生成する合成処理手段とを備え、
前記合成処理手段は、前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて画像を合成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記合成処理手段は、
前記複数枚の画像から1枚の画像を基準画像と定め、前記基準画像と、前記複数枚の画像のうち基準画像以外の画像との間の画素間の相関量、あるいは、複数画素からなる所定の領域間の相関量を算出する相関計算手段を有し、
前記相関量が合成対象画素の色成分に応じて決定される閾値以下である場合に、その相関量が小さくなるにつれて、前記基準画像以外の画像の合成比率を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成処理手段は、
前記複数の画像のうち少なくとも1つの画像において、画素毎、または複数の画素を含む所定の領域毎のノイズレベルを推定するノイズレベル推定手段を備え、
前記ノイズレベル推定手段により推定されたノイズレベルに基づいて前記閾値を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記基準画像と前記対象画像との動き情報を取得する動き情報取得手段と、
前記動き情報に基づく画素のシフト量が偶数画素以外である場合に、前記対象画像の画素の補間を行い、補間後の対象画像を前記シフト量に応じてシフトさせて補正する画像補正手段と
を備え、
前記合成処理手段は、
前記画像補正手段により補正された前記複数の画像を合成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得し、
前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する画像処理方法。
【請求項6】
各色成分に対応する光電変換素子が所定のパターンで配置された撮像素子から複数の画像を取得する第1処理と、
前記色成分に応じて決定される画像の合成比率に基づいて前記複数の画像を合成して合成画像を生成する第2処理と
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−199786(P2011−199786A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67017(P2010−67017)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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