説明

画像処理装置及び画像処理方法

【構成】 ユーザが指定した基準線と交わるようにパターン画像を配置し、基準線を境として前記パターン画像を削除した画像を、表示用に発生させる。パターン画像を記憶し、ユーザによる基準線の配置の編集を受け付け、基準線の配置が編集されると、配置が編集された基準線と交わるように、記憶したパターン画像を再配置すると共に、再配置したパターン画像を基準線を境として削除した画像を表示用に再発生させる。
【効果】 削除したエリア側に基準線が移動しても、パターン画像に空白が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像処理に関し、特に基準線を境として削除したパターン画像の復活に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが指定した基準線に沿って、ユーザが選択した基本パターンを、所定のピッチで配置する画像処理装置が知られている(特許文献1:JPH09-143866A,特許文献2:USP6310622B)。ここで発明者は、基本パターンの画像を基準線と交わるように配置し、かつ基準線のいずれか一方の側で基本パターンの画像を削除することを検討した。例えばアパレル製品のデザインの場合、製品あるいはパーツの外形線を基準線として基本パターンの画像を配置し、基準線からはみ出す部分を削除すると、基本パターンをアパレル製品の輪郭付近に配置したデザインが容易になる。しかしながら発明者は、基準線の一方の側で基本パターンの画像を削除した後に、基準線の配置を編集すると、データの無い不自然なエリアが生じることに着目した。例えば基準線を、基本パターンの画像を削除した側へ移動させると、移動前の基準線との間に基本パターンの画像がないエリアが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JPH09-143866A
【特許文献2】USP6310622B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、基準線を境として画像の一方を一旦削除した後に、削除した側に基準線を移動させても、表示画像のないエリアが生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、ユーザが指定した基準線を境として、パターン画像を削除する画像処理装置において、
パターン画像を記憶するための記憶手段と、
指定された基準線と交わるように前記パターン画像を配置するための配置手段と、
基準線を境として、前記パターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に発生させるための削除手段と、
基準線の配置を編集するための編集手段と、
基準線の配置が編集されると、配置が編集された基準線と交わるように、記憶したパターン画像を再配置するための再配置手段とを設けて、
前記削除手段により、基準線を境として再配置したパターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に再発生させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
この発明はまた、ユーザが指定した基準線を境として、パターン画像を削除する画像処理方法において、
パターン画像を記憶するためのステップと、
指定された基準線と交わるようにパターン画像を配置するステップと、
基準線を境として、前記パターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に発生させるステップと、
ユーザによる基準線の配置の編集を受け付けるステップと、
基準線の配置が編集されると、配置が編集された基準線と交わるように、記憶したパターン画像を再配置するステップと、
基準線を境として再配置したパターン画像の一方の部分を削除した画像を表示用に再発生させるステップ、とを設けたことを特徴とする。
【0007】
この明細書において、画像処理装置に関する記載はそのまま画像処理方法にも当てはまり、逆に画像処理方法に関する記載はそのまま画像処理装置にも当てはまる。
この発明では、パターン画像を表示用の画像とは別に記憶し、基準線の配置が編集されると、記憶したパターン画像を再配置し、基準線を境としてパターン画像の一方の部分を削除して、表示用の画像を再発生させる。なお基準線を境として、パターン画像の一方の部分を削除することを、トリミングという。このためパターン画像を削除した側へ基準線が移動しても、表示用の画像がないエリアが生じない。従ってユーザは、最適な画像が得られるように、トリミング結果を見ながら、基準線を繰り返して編集できる。
【0008】
好ましくは、前記基準線はアパレル製品の輪郭線あるいはアパレル製品のパーツの輪郭線で、前記パターン画像はアパレル製品の模様である。この発明は、画像形成などの画像処理一般に適用できるが、衣類、手袋、帽子などのアパレル製品のデザインに応用すると、特に便利である。この場合、基準線を境として一方のパターン画像を削除することにより、アパレル製品あるいはパーツの輪郭の範囲内でのみ、パターン画像から成る模様を有効にできる。そしてデザインの変更、グレーディング等で、輪郭を変更すると、自動的に模様も新しい輪郭にフィットするように再配置される。そこで輪郭線を編集する時に、模様を気にせずに、デザインできる。
【0009】
また好ましくは、前記再配置手段では、パターン画像を変形せずに再配置するモードと、編集後の基準線の配置に応じてパターン画像を変形させて再配置するモード、とを選択自在にする。パターン画像には、基準線に応じて変形させることが望ましいものと、基準線はパターン画像の位置とトリミングするエリアとを決定するだけで、パターン画像自体は変形させないことが望ましいものとがある。そこで上記の2つのモードを設けると、これらの何れにも対応できる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の画像処理装置のブロック図
【図2】実施例の画像処理方法を示すフローチャート
【図3】実施例での基準線に対する基本図形の配置と、基準線の変形、トリミングと、基準線の移動による再トリミングとを、模式的に示す図
【図4】基準線と切断線とを別個にした変形例を模式的に示す図
【図5】基準線の移動による基本図形中の表示部分の変化を模式的に示す図
【図6】衣類の型紙のデザインへの応用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
【実施例】
【0012】
図1〜図6に、実施例の画像処理装置2を示す。画像処理装置2は、バスにCPU、メモリと入出力機器とを接続したコンピュータで実現され、かつ画像処理プログラムを記憶して動作する。なお画像処理プログラムは、適宜の記憶媒体あるいは搬送波により供給する。図1において、4はバス、6はマニュアル入力で、キーボードやマウス、ジョイスティック、スタイラスなどであり、基準線の最初の配置を入力し、入力済みの基準線の配置を編集し、基本パターンをメモリから呼び出すために選択し、あるいは基本パターンを描画などにより入力するために用いる。またマニュアル入力6から、基本パターンの変形及び再配置、削除に関するデータを入力する。8は補助メモリで、USBやハードディスクなどであり、10は通信部で、LANあるいはインターネットなどと通信する。
【0013】
12は画像処理部で、画像の合成や変形、編集、ベクトルデータとラスターデータとの間の変換、及び表示画像の発生などの、一般的な画像処理を行う。14は基本パターンメモリで、ユーザがマニュアル入力6から入力した、あるいは補助メモリ8、通信部10などから取得した基本パターンの画像を記憶し、基本パターンの画像は例えばベクトルデータである。基準線メモリ16は、ユーザがマニュアル入力6などから入力及び編集した基準線の配置を記憶し、基準線は曲線でも直線でもよく、例えばベツィエ曲線あるいはβスプライン曲線などの自由曲線である。そして基準線内の相対的な位置は、0以上1以下などのパラメータで規定される。
【0014】
18は画像メモリで、例えば基準線と交わるように基本パターンを配置すると共に、適宜の他の画像と合成した画像を記憶する。20は表示画像メモリで、カラーモニタ22に表示し、あるいはカラープリンタ24などで出力する画像のメモリである。表示画像は、画像メモリ18の画像を、表示用に画像処理部12で処理した画像で、表示画像では、基本パターンの基準線の一方側が削除されている。実施例では、画像メモリ18では基準線の一方での画像のトリミングは行わず、表示画像の発生時にトリミングするが、画像メモリ18にトリミング済みの画像を記憶しても良い。
【0015】
図2に実施例でのデータ処理を示し、ステップ1では、基本パターンをユーザがマニュアル入力6から描画し、あるいは補助メモリ8,通信部10などから入力し、例えばベクトルデータとして基本パターンメモリ14に記憶させるが、ラスターデータとして記憶しても良い。ユーザはマニュアル入力6などを用いて基準線を指定し、基準線は例えば自由曲線である(ステップ2)。そして基準線が指定されると自動的に、もしくはユーザの入力により、基本パターンを基準線に対して配置する(ステップ3)。基準線に対しユーザが基本パターンを1個分所定の位置に配置し、基本パターンを配置するピッチあるいは基本パターンの配置個数などをユーザが入力すると、それに従って基準線に対し基本パターンが繰り返して配置される(ステップ3)。
【0016】
ユーザはマニュアル入力6などを用いて、基準線の配置、即ち基準線の位置と形状とを編集できる。基準線は自由曲線なので、編集前の基準線内の相対位置と、編集後の基準線内の相対位置とは1:1に対応し、ステップ3で配置した基本パターンは、基準線での相対位置を保つように再配置される(ステップ4)。再配置とは、トリミングされていない基本パターンを配置することである。再配置された基本パターンには、トリミングにより削除された部分も含まれている。そしてステップ5で、表示画像から基本パターン中のトリミングされたエリアを削除する。即ち基準線の一方でユーザが指定した側の基本パターンを削除する。このようにして基準線に対して基本パターンを配置し、ユーザの指定に応じて基準線の一方にある基本パターンを削除した画像を、表示画像メモリ20に形成する。またステップ4とステップ5とは繰り返して行うことができ、最初にステップ3で基本パターンを基準線に対して配置した直後にも、ステップ5を実行する。さらに基準線の左右あるいは上下いずれの側を削除するかは、ユーザがマニュアル入力6などから指定する。
【0017】
基準線の再配置には、
・ 基準線を移動させ、基本パターンは移動も変形もせずに、トリミングを再実行する、
・ 基準線を移動させ、基本パターンは移動しないが、移動後の基準線に従って変形させた後に、トリミングを再実行する、
・ 基準線に従って基本パターンを移動させ、移動後の基本パターンを再度トリミングする、この場合、基本パターンの中心位置が移動し、基準線を例えば直線から曲線に変える場合、基本パターンを変形させるか否かはユーザが指定する、
等のモードがある。
【0018】
図3〜図5に、基本パターンの再配置とトリミングの例を示す。図3の30は幾何学模様の基本パターンで、基準線35に対し、図3の最上段のように配置されたとする。ここでは、基本パターン30の長辺内の位置と基準線35内の相対位置とが対応付けられ、基準線35の配置を、図3の第2段の基準線36のように、編集すると、基本パターン30は表示パターン31のように変形される。この変形では、パターン30,31の各点での、基準線35,36からの距離が共通で、かつ基本パターン30の長辺が基準線36に応じて曲げられるようにする。従ってパターン31の各点から基準線36へ下ろした垂線の足の相対位置は、基本パターン30での対応する点から基準線35へ下ろした垂線の足の相対位置と共通である。
【0019】
図3の第2段から、基準線36の下側をトリミングすると入力すると、3段目の表示パターン32が生成される。この処理は、画像処理部12で、基準線36を境として、指定された側の画像を削除することにより、実行される。さらに基準線37のように基準線をやや下側に移動させて、配置を変更すると、基本パターン30が変更後の基準線37に対して再配置されて、表示パターン33が得られ、基準線37の上側に表示パターンの無いエリアが生じない。ここでは、表示パターンを移動させずに、基準線の配置を編集することが、マニュアル入力6から入力されているものとする。図3では、3段目の画像でトリミングを実行したが、トリミングは任意の段階で指定できる。そしてトリミングが行われると、基準線を境としてユーザが指定した側のパターン画像が削除される。
【0020】
図3では基準線36を境としてトリミングしたが、トリミングには他の切断線を指定してもよい。このような例を図4に示し、基準線36に対し表示パターン31が表示され、ここから切断線40を入力し、例えばその上側をトリミングすることを入力すると、図4の下側の表示パターン41が得られる。これらの処理は、メモリ14に記憶した表示パターンのデータ自身を操作せずに、基準線に対して表示パターンを配置し、ユーザが指定した側を削除する処理なので、繰り返し何回でも行える。
【0021】
図5は、基準線が編集されても、基本パターンは変形されず、トリミングするエリアのみが変更される例を示す。なお基準線を編集した際に、図5のように基本パターンを変形しないか、図3の第2段のように基本パターンを変形するかは、ユーザがマニュアル入力6から入力する。図5において、50は基本パターンで、55は基準線である。そして例えば基準線55の下側をトリミングすると、表示パターン51が得られる。ここからユーザが基準線を編集し、基準線56のように曲げたとする。すると基本パターン50を再度基準線上に配置してトリミングするので、トリミングされるエリアが小さくなり、パターン51よりも広い表示パターン52となる。このように基準線の再配置により、トリミングされないエリアが拡大された場合でも、画像のない領域が生じない。
【0022】
図6は衣類や手袋、靴下などのアパレル製品への応用を示し、60は衣類のパターンで、61〜65はパターンの輪郭となる基準線である。そして基本パターン68が例えば基準線61,62に対し、図のように配置されている。この場合、基準線61,62の外側はアパレル製品あるいはそのパーツの輪郭外に有るので、基準線61,62の外側で基本パターン68が削除され、表示画像には表れない。ここから基本パターンを移動させずに、基準線61を例えば基準線66のように変形させたとする。すると変形後の基準線66の内側に対して基本パターン68が表示されるように、トリミングされていない基本パターン68を表示画像に再配置し、トリミングを再度実行する。この結果、デザインの変更やグレーディングなどで、基準線61〜65が修正されると、それに応じた形で基本パターン68のトリミングが自動的に行われる。これにより、トリミング後の最適な画像を見ながら、基準線の編集を繰り返し行うことができる。

【符号の説明】
【0023】
2 画像処理装置
4 バス
6 マニュアル入力
8 補助メモリ
10 通信部
12 画像処理部
14 基本パターンメモリ
16 基準線メモリ
18 画像メモリ
20 表示画像メモリ
22 カラーモニタ
24 カラープリンタ
30 基本パターン
31〜33 表示パターン
35〜37 基準線
40 切断線
41 表示パターン
50 基本パターン
51,52 表示パターン
55,56 基準線
60 パターン
61〜66 基準線
68 基本パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが指定した基準線を境として、パターン画像を削除する画像処理装置において、
パターン画像を記憶するための記憶手段と、
指定された基準線と交わるように前記パターン画像を配置するための配置手段と、
基準線を境として、前記パターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に発生させるための削除手段と、
基準線の配置を編集するための編集手段と、
基準線の配置が編集されると、配置が編集された基準線に交わるように、記憶したパターン画像を再配置するための再配置手段とを設けて、
前記削除手段により、基準線を境として再配置したパターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に再発生させるようにしたことを特徴とする、画像処理装置。
【請求項2】
前記基準線はアパレル製品の輪郭線あるいはアパレル製品のパーツの輪郭線で、前記パターン画像はアパレル製品の模様であることを特徴とする、請求項1の画像処理装置。
【請求項3】
前記再配置手段では、パターン画像を変形せずに再配置するモードと、編集後の基準線の配置に応じてパターン画像を変形させて再配置するモード、とを選択自在にしたことを特徴とする、請求項1または2の画像処理装置。
【請求項4】
ユーザが指定した基準線を境として、パターン画像を削除する画像処理方法において、
パターン画像を記憶するためのステップと、
指定された基準線と交わるようにパターン画像を配置するステップと、
基準線を境として、前記パターン画像の一方の部分を削除した画像を、表示用に発生させるステップと、
ユーザによる基準線の配置の編集を受け付けるステップと、
基準線の配置が編集されると、配置が編集された基準線と交わるように、記憶したパターン画像を再配置するステップと、
基準線を境として再配置したパターン画像の一方の部分を削除した画像を表示用に再発生させるステップ、とを設けたことを特徴とする、画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−200248(P2010−200248A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45758(P2009−45758)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】