説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 副走査方向への有彩色連続性判定能力を向上した、原稿のカラー/モノクロ自動原稿識別を行う画像処理機能を実現する。
【解決手段】 読み取った原稿を主走査方向へ複数の領域に分割し、分割されたそれぞれの領域毎に副走査方向への有彩色連続性を識別し、カラー/モノクロ自動原稿識別を行うことで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関し、詳しくは入力画像がカラー画像なのかモノクロ画像なのかを識別する機能を有する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像形成装置には、カラー複写機や、カラースキャナ、コンピュータ、カラープリンタを組み合わせて実現されるカラー複写装置などがある。こうしたカラー画像形成装置において、画像形成部はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色で複写を行う。カラー原稿に対しては4色で複写を行う必要があるが、モノクロ原稿に対して4色全てを用いて複写を行うことは冗長である。画像形成に掛かる処理時間、動作させるドラムの寿命、およびカートリッジの消費量などを考慮すると、モノクロ原稿に対してはブラック単色で画像形成を行うことが望ましい。これはカラーインクジェットプリンタを用いたカラー複写機、複写装置においても処理時間およびインクの消費量を考えると同様である。
【0003】
このため、カラー複写機には、原稿画像がカラー原稿なのかモノクロ原稿なのかを自動で識別する機能が搭載されており、自動原稿種別判定:ACS(Auto Color Select)を用いて判別を行っている。原稿種別判定を行うための手段として、画素毎に有彩色/無彩色の判定を行いその判定結果を用いる方法が一般的である。
【0004】
しかしながら、原稿入力装置において読み込んだ原稿画像の画素毎の色成分(本発明の場合には、R、G、Bの輝度信号)に基づいて色画素の判定を行う際、様々な理由により原稿上では本来存在しないはずの画素を色画素と判定されてしまう場合がある。例えば、同一の位置で色成分の読み取りを行うべき読み取り素子が、完全に同じ画素位置を読み取れない場合がある。微少距離だけずれて読み取りを行った場合に、例えば黒線のエッジ部などは色画素と判定されてしまう。以後この状態を色ずれと呼ぶ。特に、昨今、画像入力装置として用いられるイメージスキャナの読み取り解像度は高くなる傾向にあり、往々にして上記のような問題がクローズアップされている。
【0005】
また、読み取り位置の精度は十分だったとしても、レンズによる波長毎のMTF特性のばらつきによっては、例えば黒線のエッジ部付近で、読み取り位置精度が不十分な場合と同様の疑似色成分(偽色)が発生してしまう。
【0006】
以上のような現象により発生する色ずれや偽色によって、本来無彩色であるはずの画素が“有彩色”と判定されてしまうことは、原稿種別判定の精度を落とす原因となっており、その問題を解決するため様々な手法が考案されている。
【0007】
従来の原稿種別判定技術には、画素毎に有彩色/無彩色の判定を行い、その判定結果を主走査方向および副走査方向へ有彩色画素を計数することで、原稿の種別を判断しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、画素毎に判定した有彩色/無彩色の結果を用いて、副走査方向への1次元ブロック単位で有彩色が連続して存在しているかどうかを判定し、原稿の種別を判断しているものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
何れの技術も、色ずれや偽色の起こる画素はそれほど連続して繋がっていないという考えに基づき、有彩色画素の連続性を考慮して原稿種別判定の精度を上げる工夫を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−199239号公報
【特許文献2】特開2007−081874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、有彩色画素が本当に副走査方向へ連続した繋がりがあるかどうかを考慮した判定を行っていない。主走査方向のライン単位で有彩色が存在するかどうかをまず判定し、その判定された有彩色ラインが副走査方向へ所定数以上連続している箇所を計数することで、副走査方向への連続性を判定している。つまり、ある有彩色ライン上で存在する有彩色画素と、連続する上下の有彩色ライン上で存在する有彩色画素とが、直接繋がりがあるかどうかは全く考慮されていない。
【0011】
例えば、小フォントの黒文字が並んだ文書原稿などにおいては、色ずれや偽色が至る箇所で発生している。局所的に見れば色ずれや偽色により判定される有彩色画素は小さく孤立している場合が多いが、ライン単位でまとめてから判定を行うと、有彩色画素どうしの関連がないにもかかわらず、連続して有彩色ラインと判定されてしまう場合が少なからず存在する。そのような場合、特許文献1に記載の技術では、モノクロ原稿にも関わらずカラー原稿と誤って判別してしまうことになり、正しい結果を得ることが出来ない。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術は、有彩色画素であると判定された画素の副走査方向への連続性を判定する有彩原稿判定部を設けており、副走査方向に規定される副走査1次元ブロックを規定し、そのブロック内での連続性を検査している。しかしこの方法では、縦方向のカラー直線は連続性を検知出来たとしても、斜め方向のカラー線は連続性を検知することが出来ないという問題がある。仮に原稿の上では縦方向への直線が描かれていたとしても、読取装置上に置かれた原稿自体が例えば若干斜めに傾いて設置されてしまうなど読み取り方向に対して垂直に直線が存在しない場合が多い。そのような場合、特許文献2に記載の技術では、カラー原稿にも関わらずモノクロ原稿と誤って判別してしまうことになり、正しい結果を得ることが出来ない。
【0013】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、有彩色画素の副走査方向への連続性判定を精度良く行うことで、誤判定の少ないACS判定を実現する画像処理装置及びその画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様としての画像処理装置は、以下のようなものである。画像を主走査方向に分割する分割手段と、前記分割手段で得られた夫々の分割画像における各主走査ラインにおいて、有彩の画素が連続して存在するか判定する第1の判定手段と、前記第1の判定手段で有彩の画素が連続して存在すると判定された主走査ラインが、前記分割手段で得られた夫々の分割画像において、副走査方向に連続しているか判定する第2の判定手段と、前記第2の判定手段での判定結果に基づいて前記分割画像の夫々が有彩であるか否かを判定し、当該分割画像の夫々における判定結果に基づいて前記画像が有彩であるか否か判定する第3の判定手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、副走査方向へ判定領域を分割し、判定領域毎に、副走査方向への有彩色群の連続性を検知することで、副走査方向の連続性の判定精度を高め、それにより、誤判定の少ない精度の良いACS判定を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図
【図2】ACS判定部の構成を示すブロック図
【図3】ACS判定部の色判定信号生成部の構成を示すブロック図
【図4】ACS判定部の原稿種別判定部の構成を示すブロック図
【図5】原稿領域制限部により、制限された原稿読み取り領域の例を示す図
【図6】有彩色ライン判定部及び有彩色領域判定部の処理を示すフローチャート
【図7】第1の実施形態に係る、副走査判定領域の例を示す図
【図8】副走査カウント部の処理を示すフローチャート
【図9】第2の実施形態に係る、副走査判定領域の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置のシステム構成の一例を示す図である。図1において、101はスキャナなどの画像読取部であり、原稿画像を逐次的に読み取る。102は画像処理部であり、101で読み取った原稿画像に対して画像処理を行い、出力可能な形式へ変換する。また、出力された時に品質が良くなるような画像処理を施す。103はスキャナ画像処理部であり、図示しないシェーディング補正処理、フィルタ処理、および入力色補正処理など読み取り原稿画像に対して画像処理を施す。106−1は記憶部であり、スキャナ画像処理後の原稿画像1ページ分のコントーン画像情報を保持する。104はACS判定部であり、スキャナ画像処理部103において処理された画像情報を基に、読み取り原稿がカラーかモノクロかを判定する。105はプリンタ画像処理部であり、図示しない下地除去処理、出力色補正処理、および中間調処理などの画像処理を施す。ここでは、ACS判定部104にて判定された結果を基に、最適な画像処理を行う。例えば、出力部がCMYK4色からなるプリンタの場合、ACS判定部104でカラーと判定されると、CMYK4色での出力を想定したプリンタ画像処理を行い、モノクロと判定されると、K単色での出力を想定したプリンタ画像処理を行う。106−2は記憶部であり、プリンタ画像処理後の原稿画像1ページ分のハーフトーン画像情報を保持する。107はプリンタなどの画像出力部であり、102で画像処理され記憶部106−2に保持された画像情報を出力する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るACS判定部104のシステム構成を示す図である。ACS判定は、大きく2つの処理部から構成される。本システムへの入力は、注目画素におけるRGBから成る信号値であり、例えば、スキャナ画像処理部103にて行われる図示しない入力色補正処理後の信号値である。
【0020】
201は色判定信号生成部であり、入力された注目画素のRGB信号値より、注目画素が有彩色であるか無彩色であるかを判定する。判定された結果は1bitの判定信号として出力される。202は原稿種別判定部であり、色判定信号生成部201より逐次的に入力されてくる画素の有彩色/無彩色情報を入力とし、原稿画像がカラーかモノクロかを判定する。原稿画像1ページ分の画像データを処理し終えると、判定された結果をプリンタ画像処理部105へ通知する。以下、夫々の処理部について詳細に説明する。
【0021】
図3は、本実施形態に係る色判定信号生成部201のシステム構成を示す図である。スキャナ画像処理部103より入力されるR,G,Bの信号値は、まず色空間変換部301において、明るさを表す明度信号L、及び色味を表す色度信号(Ca,Cb)に変換される。ここで、明度信号Lと色度信号(Ca,Cb)は、測色的にCIE1976(L*a*b*)色空間の3変数L*,a*,b*や、CIE1976(L*u*v*)色空間の3変数L*,u*,v*でも良いし、さらに簡易的に決められた任意の色空間の変数でも良い。本実施形態においては、R,G,B信号からの簡易的な変換が可能であることから、L,Ca,Cbを用いている。
【0022】
次式(1)は、R,G,B信号をL,Ca,Cb信号へ簡易的に変換する変換式の一例を示す。
【0023】
【数1】

【0024】
302は彩度量抽出部であり、色空間変換部301にて変換された明度信号L及び色度信号(Ca,Cb)を用いて彩度量を抽出する。彩度信号Sは、色の鮮やかさを表す信号であり、例えば以下の式(2)により決められる。
【0025】
【数2】

【0026】
更に、簡易的には、彩度信号Sは以下の式(3)によって決められても良い。
S=MAX(C,C) 式(3)
ここで、関数MAX(A,B)は、変数A,Bの絶対値の大きな方の値を出力するものである。
【0027】
303は有彩色/無彩色判定部であり、彩度量抽出部302より入力される彩度信号Sに応じて、注目画素が有彩色であるか無彩色であるかを判定し、1bitの判定信号KCを出力する。今、彩度信号Sが小さいときはその画素が白黒(無彩色)であり、彩度信号Sが大きいときはその画素がカラー(有彩色)であるとする。よって、簡易的には、判定信号KCは、予め決められた閾値ρを用いて式(4)によって決められる。
(S<ρのとき)KC=無彩色
(S≧ρのとき)KC=有彩色 式(4)
また、閾値ρは色空間変換部301で生成される明度信号Lに応じて変更しても良い。例えば、明度が一定以上高い(明るい)場合には色ずれや偽色の発生確率が高いため、閾値ρを大きくして無彩色と判定される範囲を増やすようにする方法などが考えられる。
【0028】
なお、画素単位で有彩色/無彩色を判定する方法には他にも様々な手法が提案されている。上記で説明したのは一例であり、どのような手法を用いても良い。
【0029】
図4は、本実施形態に係る原稿種別判定部202のシステム構成を示す図である。本実施形態に係る原稿種別判定は、主走査方向と副走査方向それぞれ独立にカラー判定を行い、その後両方の結果を基に最終的な原稿種別判定を行う。以下、順を追って説明する。
【0030】
まず、色判定信号生成部201より順次に送られてくる無彩色/有彩色判定信号KCは、原稿種別判定を実施する有効領域か否かを原稿領域制限部401にて制限する。原稿領域制限部401は、図5に示すように、原稿全読み取り領域501に対して、主走査、副走査方向にて以後の判定処理に制限を与える領域を指定する。
【0031】
502は、主走査方向に制限を与えるもので、図では、網点で覆った領域に示す部分(領域)で主走査方向に制限を加える。本実施例では1つの領域で説明しているが、制限を加える領域はこの数および特定の広さに限定されるものではない。例えば、領域制限係数記憶部410等に備わる図示しないレジスタ設定によってこれを設定することができる。レジスタ設定値は、メモリ上に予めセットしておいても良いし、図示しない操作部より入力することで設定しても構わない。
【0032】
同様に、副走査方向に沿う503に示す、網点で覆った領域に示す部分(領域)で制限を加える。制限の方法は前述した主走査方向の制限と変わらず、複数の領域に設定でき、主走査方向の場合と同様、その領域でKC信号を無彩色信号に固定、有彩色信号に固定、もしくは、主走査、副走査信号独立に有彩色/無彩色に強制的に信号を変換できる。そして、主走査方向の判定用としてACS_MAIN信号(1bit)、副走査方向の判定用としてACS_SUB信号(1bit)をそれぞれ出力する。
【0033】
続いて、主走査方向のカラー判定について説明する。主走査方向のカラー判定は、図4における402〜404の各処理部にて行われる。
【0034】
原稿領域制限部401にて制限されたACS_MAIN信号を入力とし、第1主走査色群認識部402は、主走査方向に連続した有彩色画素の固まり(色群)の個数を計数する。まず主走査方向に有彩色と判定された画素が所定数連続しているか(言い換えると、所定数以上連続しているか)の判定を行う。さらに、判定された有彩色画素の固まりを色の固まり(色群)として認識し、その数を計数する。
【0035】
図6は、第1主走査色群認識部402の処理を表すフロー図である。本フローは、注目画素の存在するラインの左端から始まり右端の画素を終わりとして、逐次的に処理される。また、有彩色画素の連続性をカウントする連続度カウンタ、および色の固まりをカウントする色群カウンタを使用する。
【0036】
まず、処理に必要なカウンタを初期化のためにゼロクリアしておく(S601)。次に、注目画素におけるACS_MAIN信号が入力されると、その値が有彩色かどうか判定する(S602)。もしACS_MAIN信号が有彩色であれば(S602でYES)、連続度カウンタをインクリメントする(S603)。ここで、図示しないが、連続度カウンタは有限のビット数で構成されているので、最大値を超える値とならないようオーバーフローを回避する必要があることは言うまでもない。また、ACS_MAIN信号が無彩色であれば(S602でNO)、連続度カウンタをゼロクリアする(S606)。続いて、連続度カウンタが、所定数MCPと等しいかどうか判定する(S604)。MCPは有彩色画素の連続度を決定する閾値であり、例えばレジスタ設定等により事前に設定しておく。もし連続度カウンタが所定数MCPと等しければ(S604でYES)、色の固まりであると認識し、色群カウンタをインクリメントする(S605)。ここで、色群カウンタにおいても、図示しないが連続度カウンタと同様にオーバーフローを回避する必要があることは言うまでもない。次に、色群カウンタをインクリメント後、連続度カウンタをゼロクリアする(S606)。また、連続度カウンタが所定数MCPと等しくなければ(S604でNO)、色群カウンタのインクリメントも連続度カウンタのゼロクリアも行わず次の処理へ移る。
【0037】
注目画素において以上の処理を行うと、注目画素が該当ライン上最後の画素かどうか判定し(S607)、そうであれば(S607でYES)本フローを終了、そうでなければ(S607でNO)注目画素を次の画素へ移動し(S608)、処理S602へ戻る。主走査方向1ライン分の処理が終わると、第1主走査色群認識部402は、それまでカウントしていた色群カウンタの値をMCP_UC信号として出力する。なお、主走査方向1ラインのことを主走査方向に伸びたライン、主走査ラインと称することもある。また、主走査ラインに関連する判定を主走査ライン上での判定と称することもある。
【0038】
なお、第1主走査色群認識部402において、主走査に有彩色画素の連続性を観測する理由を以下に説明する。スキャナなどの画像読取部101にて読み取った原稿画像には、一般的に、読み取り素子の感度差、レンズのMTF差、収差、あるいはミラー台の振動など様々な要因によって、色ずれや偽色の現象が発生しうる。それらは色判定信号生成部201において有彩色画素として判定されており、ノイズとして存在している。そのため、有彩色画素を全てカウントに使用すると、ノイズの影響を受けやすく原稿種別判定に悪影響を及ぼし、安定した原稿種別判定を行うことが難しい。そこで、所定数MCPより連続度が小さい有彩色画素の集まりは、色の固まりでなくノイズであると判断しカウントしないようにするため、主走査の連続性を認識する処理を組み込んでいる。
【0039】
続いて、図4における有彩色ライン判定部403の処理について説明する。有彩色ライン判定部403は、第1主走査色群認識部402の出力であるMCP_UC信号値を入力とし、該当ラインが有彩色ラインであるかどうかを判定する。ここでは、入力値が所定値ML(≧0)以上であれば、該当ラインを有彩色と判定し、1bitの判定結果ML_COL信号としてライン単位で出力される。
【0040】
続いて、主走査カウント部404は、有彩色ライン判定部403よりライン単位で入力されるML_COL信号値を計数する。原稿読み取り範囲内全てのラインまで処理が終了すると、計数されたカウント値を後述する認識部410へMAIN_UC信号として出力する。
【0041】
続いて、副走査方向のカラー判定について説明する。副走査方向のカラー判定は、図4における405で囲まれた406〜408の各処理部にて行われる。
【0042】
405で囲まれた処理群は、副走査判定領域単位で処理されるモジュールを表す。ここで、副走査判定領域は、主走査方向へ向かって所定数N(≧1)に分割されている領域のことであり、例えば副走査判定領域記憶部411において予め指定されている。本実施形態における判定領域指定の一例を図7に示す。ここに示した判定領域毎に406〜408の各処理部が実行される。判定領域の数及び主走査幅は、使用するスキャナの特性およびシステム環境に応じて適当に設定すれば良い。例えば、色ずれや偽色が多く発生してしまうスキャナを使用する場合は、副走査判定領域の数を増やし主走査幅を狭めることで、誤判定の発生する可能性を低減出来る。また、領域毎の主走査幅は全て一定である必要はなく、可変にしても良い。
【0043】
次に、判定領域毎に行われる406〜408の各処理部について説明する。
【0044】
第2主走査色群認識部406は、原稿領域制限部401にて制限されたACS_SUB信号を入力とし、判定領域内にて主走査方向に連続した有彩色画素の固まり(色群)の個数を計数する。さらに、有彩色領域判定部407において、判定領域内にて該当ラインが有彩色ラインであるかどうかを判定する。ここで、第2主走査色群認識部406は第1主走査色群認識部402と、また、有彩色領域判定部407は有彩色ライン判定部403と、それぞれ基本的に同じシステム構成を有する。
【0045】
第2主走査色群認識部406における処理フローは、第1主走査色群認識部402の主走査方向のカラー判定で説明した図6の通りである。また、有彩色領域判定部407は、有彩色ライン判定部403で説明した処理と同じである。但し、それぞれプリセットされる閾値が異なり、S604にて連続度カウンタと比較する所定数がMCPからSCPへ、色群カウント値と比較する所定値がMLからSLへ、異なる値を設定することが出来る。
【0046】
有彩色領域判定部407の出力は、1bitの判定結果SL_COL信号として判定領域内のライン単位で出力される。
【0047】
ここで、主走査方向と副走査方向で別々に所定値を設定する理由は、主走査方向と副走査方向に対しそれぞれ別々の判定精度を持たせるためである。誤判定の原因となる色ずれは、主走査方向と副走査方向で発生具合が異なる場合が多いため、それぞれの方向に合わせた独立の所定値を設定することで、判定精度を向上させる。例えば、副走査方向への色ずれが激しい場合、色判定生成部201において生成される色ずれが起因によってカラーと誤判定される画素は主走査方向へ伸びていることになる。そのため、第1主走査色群認識部402において、連続度カウンタと比較する所定数MCPを大きくし、色群として判定されにくくすることで、色ずれによる誤判定を軽減し、主走査方向のカラー判定精度を向上させることが出来る。
【0048】
続いて、副走査カウント部408における処理について説明する。副走査カウント部408は、有彩色領域判定部407より出力されるSL_COL信号値を入力とし、判定領域内にて、有彩色領域と判定されたラインが副走査方向へ所定数SCL(≧0)連続している箇所を色群としてカウントする。図8は、本実施形態における副走査カウント部408の処理を表すフロー図である。処理の構成は、第1主走査色群認識部402、および第2主走査色群認識部406の処理と基本的に同じであり、主走査方向で色群をカウントする手段を副走査方向へも適用している。ここでは、有彩色ラインの連続性をカウントする連続度カウント、および色の固まりをカウントする色群カウンタを使用する。
【0049】
まず、処理に必要なカウンタを初期化のためにゼロクリアしておく(S801)。次に、注目ラインにおけるSL_COL信号が入力されると、その値が有彩色かどうか判定する(S802)。もしSL_COL信号が有彩色であれば(S802でYES)、連続度カウンタをインクリメントする(S803)。また、SL_COL信号が無彩色であれば(S802でNO)、連続度カウンタをゼロクリアする(S806)。続いて、連続度カウンタが、所定数SCLと等しいかどうか判定する(S804)。SCLは有彩色ラインの連続度を決定する閾値であり、例えばレジスタ設定等により事前に設定しておく。もし連続度カウンタが所定数SCLと等しければ(S804でYES)、色の固まりであると認識し、色群カウンタをインクリメントする(S805)。次に、色群カウンタをインクリメント後、連続度カウンタをゼロクリアする(S806)。また、連続度カウンタが所定数SCLと等しくなければ(S804でNO)、色群カウンタのインクリメントも連続度カウンタのゼロクリアも行わず次の処理へ移る。
【0050】
注目画素において以上の処理を行うと、注目画素が原稿の最終ラインに達したかどうか判定し(S807)、そうであれば(S807でYES)本フローを終了、そうでなければ(S807でNO)注目ラインを次のラインへ移動し(S808)、処理S802へ戻る。
【0051】
原稿の最終ラインまでの処理が終わると、副走査カウント部408は、それまでカウントしていた色群カウンタの値をSUB_UC信号として出力する。なお、判定領域の数だけSUB_UC信号は出力される。
【0052】
識別部409は、原稿1ページ分の処理が終了したタイミングで、主走査カウント部404のカウント値MAIN_UC信号、及び判定領域単位で生成される副走査カウント部408の各カウント値MAIN_UC信号から以下の処理を行う。即ち、所定の判定条件に従って原稿がモノクロかカラーかを判定し、その結果をACS判定部104の出力としてプリンタ画像処理部105へ通知する処理を行う。
【0053】
判定条件は任意に設定可能であるが、例えば、主走査方向のカウント結果、もしくは副走査方向のカウント結果群のいずれかの値が1以上になっていれば、原稿中に色が存在しているとして、読み取り原稿がカラー原稿であると識別する。あるいは、主走査方向のカウント結果が1以上で、かつ副走査方向のカウント結果群のいずれかの値が3以上の場合、読み取り原稿がカラー原稿であると識別しても良い。あるいは、副走査方向への色ずれが激しいときには、主走査方向のカウント結果を無視し、副走査方向のカウント結果群のうちいずれか2箇所以上の値が3以上である場合、カラー原稿であると識別しても良い。
【0054】
ACS判定部104の結果に応じて、プリンタ画像処理部105にて最適なプリンタ画像処理が施され、画像出力部107より出力される。ACS判定部104において原稿がカラーと識別されれば、プリンタ画像処理部105において、カラートナーを用いる等のカラー出力に最適な画像処理を行う。また、原稿がモノクロと識別されれば、プリンタ画像処理部105において、K単色トナーを用いる等のモノクロ出力に最適な画像処理を行う。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、副走査カラー判定を行う判定領域を図7のように指定しているが、判定領域の指定を工夫することで、副走査方向へのカラー誤判定を減らし、より精度の高い処理を実現することが出来る。具体的には、隣同士の分割画像(分割された領域の夫々に存在する画像のことを本明細書では分割画像と称する)に重複領域を持たせるように工夫する。
【0056】
第1の実施形態では、主走査方向へ判定領域を分割しており、それぞれの判定領域毎に第2主走査色群認識部406において主走査方向の色群をカウントしている。色判定信号生成部201において有彩色と判定された画素が、判定領域内に収まっていれば問題ないが、もし判定領域を超えて存在している場合は、有彩色画素の連続性が途切れてしまう。第2主走査色群認識部406内における連続性カウントが途切れることで、本当は有彩色領域と判定されるだけの連続性をもつ箇所が存在しているにもかかわらず、無彩色として誤判定されてしまうことになる。
【0057】
そこで、第2の実施形態においては、副走査カラー判定を行う判定領域を重畳させて選択する。本実施形態における判定領域の設定例を図9に示す。判定領域を重畳させて、406〜408の副走査カラー判定用の各処理を行う。
【0058】
本実施形態によれば、判定領域を重畳させて副走査方向のカラー判定を行うことで、領域の境界に跨る有彩色画素群の誤判定をなくし、より精度の高いACS判定処理を実現する。
【0059】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を主走査方向に分割する分割手段と、
前記分割手段で得られた夫々の分割画像における各主走査ラインにおいて、有彩の画素が連続して存在するか判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段で有彩の画素が連続して存在すると判定された主走査ラインが、前記分割手段で得られた夫々の分割画像において、副走査方向に連続しているか判定する第2の判定手段と、
前記第2の判定手段での判定結果に基づいて前記分割画像の夫々が有彩であるか否かを判定し、当該分割画像の夫々における判定結果に基づいて前記画像が有彩であるか否か判定する第3の判定手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記分割手段は、隣同士の分割画像において重複領域が生じるように前記画像を分割することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の判定手段での判定結果は、次の主走査ラインの判定が終わるまで、当該画像処理装置の記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
画像を入力し、
所定の領域において画素ごとに有彩色か無彩色かの色判定を行い、
前記判定された画素ごとの色の判定結果に基づいて入力画像がカラーかモノクロかを識別する画像処理装置であって、
副走査方向へ判定領域を分割する分割手段と、
前記分割した判定領域の夫々における主走査ライン上で、有彩色画素が所定数以上連続している箇所が存在するか判定し、
当該箇所の存在すると判定されたラインが副走査方向へ所定数以上に連続している箇所を検知し、その個数を計数する計数手段と、
前記判定領域毎に計数された結果に基づいて、入力される画像がカラーかモノクロかを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記分割手段は、判定領域を重畳させて分割することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像を主走査方向に分割する分割工程と、
前記分割工程で得られた夫々の分割画像における各主走査ラインにおいて、有彩の画素が連続して存在するか判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程で有彩の画素が連続して存在すると判定された主走査ラインが、前記分割工程で得られた夫々の分割画像において、副走査方向に連続しているか判定する第2の判定工程と、
前記第2の判定工程での判定結果に基づいて前記分割画像の夫々が有彩であるか否かを判定し、当該分割画像の夫々における判定結果に基づいて前記画像が有彩であるか否か判定する第3の判定工程を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−288146(P2010−288146A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141384(P2009−141384)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】