説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】広角カメラ特有のカメラ特性を考慮した、高画質及び高効率の画像圧縮を行うこと。
【解決手段】画像処理装置100は、カメラ部11によって得られた撮像画像を複数の領域に分割する領域分割部101と、領域分割部101によって分割された各領域画像を、撮像画像の所定の点から各領域画像までの距離l及びカメラ部11から各領域に含まれるターゲットまでの距離dに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部105とを有する。例えば、画像圧縮部105が光軸からの角度が大きな領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮することにより、低品質の領域のデータ量が大幅に減らされ、高品質の領域の品質を維持した圧縮が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関し、全方位カメラ等の広角カメラにより得られた画像を圧縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
全方位カメラは、1台のカメラで広い視野範囲の画像を得ることができるため、種々の分野で広く用いられている。全方位カメラは、例えば監視システム等に用いられている。全方位カメラは、全方位レンズ光学系や全方位ミラー光学系を用いることで、全方位画像を得ることができるようになっている。
【0003】
ところで、全方位画像を高解像度で取得した場合は、情報量が多くなるので、画像を圧縮してから、伝送路に送出したり、記録媒体に記録することが多い。
【0004】
全方位画像のデータ量を削減する技術が、特許文献1、2で開示されている。特許文献1、2には、全方位カメラにより得られた円形画像を含む四角形の画像のうち、円形画像以外の画像の色数を減らしたり、圧縮率を高くすることで、全方位画像のデータ量を削減する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、撮影場所や撮影対象に応じて圧縮率を変えることで、画像データ量を削減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−318596号公報
【特許文献2】特開2007−318597号公報
【特許文献3】特許第3573653号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"A Versatile Camera Calibration Technique for High-Accuracy 3D Machine Vision Metrology Using Off-the-Shelf TV Cameras and Lenses", Roger Y,Tsaim IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol. RA-3,No.4, August 1987,pp327 式(5a)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来提案されている画像データの圧縮方法は、広角カメラの特性を十分に考慮してデータ圧縮を行っているとは言えない。その結果、広角カメラのカメラ特性を考慮した、高画質及び高効率の画像圧縮を行う点で未だ不十分であった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、広角カメラ特有のカメラ特性を考慮した、高画質及び高効率の画像圧縮を行うことができる画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置の一つの態様は、撮像手段によって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割部と、前記領域分割部によって分割された各領域画像を、前記撮像手段が前記撮像画像を取得する際の歪の程度に応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部と、を具備する。
【0011】
本発明の画像処理装置の一つの態様は、カメラによって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割部と、前記領域分割部によって分割された各領域画像を、前記撮像画像の所定の点から各領域画像までの長さに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部と、を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、全方位カメラ等の広角カメラ特有のカメラ特性を利用した圧縮処理を行うので、画質と圧縮率とを両立させた画像圧縮を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全方位カメラによってターゲットを撮像している様子を示す図
【図2】全方位カメラによって撮像された全方位画像を示す図
【図3】光軸からの角度と撮像画像との関係を示す図であり、図3Aは実空間上で角度θに存在する物体が光学系を介して撮像面上のどの位置で撮像されるかを示す図、図3Bは撮像画像を示す図
【図4】ターゲットまでの距離に応じて撮像画像のサイズが異なることを示す図
【図5】3次元空間上の圧縮率の等高線を示す図
【図6】3次元空間上の圧縮率の等高線を示す図
【図7】3次元空間上の圧縮率の等高線を示す図
【図8】3次元空間上の圧縮率の等高線を示す図
【図9】圧縮率の計算に用いるα値の一例を示す図
【図10】圧縮率の具体例を示す図
【図11】実施の形態1の構成を示すブロック図
【図12】距離dに応じた領域分割の例を示す図
【図13】実施の形態2の構成を示すブロック図
【図14】フレーム間差分処理によって動物体を検出する様子を示す図
【図15】背景差分処理によって動物体を検出する様子を示す図
【図16】撮像画像から人物、車を分類して検出した様子を示す図
【図17】特定物体を種類に応じて分類して検出するための処理例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1]原理
先ず、本発明の実施の形態を説明する前に、実施の形態の原理について説明する。
【0015】
本発明の発明者らは、全方位カメラ等の広角カメラによって得られた画像においては、画像領域に応じて画像の品質が大きく異なることに着目した。特に、全方位カメラによって得られた全方位画像は、画像領域に応じて画像の品質が顕著に異なる。
【0016】
先ず、発明者らは、全方位カメラのカメラ特性に起因して、撮像画像に次の特性が現れることに着目した。
【0017】
・カメラの光軸方向付近の撮像画像は、歪みが小さく、収差が小さく、解像度が高い。逆の表現をすると、カメラの光軸方向から離れた方向ほど、撮像画像は、歪みが大きく、収差が大きく、解像度が低くなる。
・カメラから距離の離れた対象ほど、撮像画像の解像度が低くなる。
【0018】
ここで、全方位カメラの光軸方向とは、全方位カメラの正面方向又は中心方向といってもよい。
【0019】
なお、上記「カメラの光軸方向付近の撮像画像は、歪みが小さく、収差が小さく、解像度が高い」といった特性は、全方位(広角)カメラ以外の狭角のカメラ(以下、このようなカメラを通常のカメラと呼ぶ)にも現れる特性であるが、特に全方位カメラのような超広角カメラにおいて顕著に現れる特性である。また、上記「カメラから距離の離れた対象ほど、撮像画像の解像度が低くなる」といった特性も、通常のカメラにも現れる特性であるが、通常のカメラよりも全方位カメラのような超広角カメラにおいて顕著に現れる特性である。
【0020】
本発明では、上記全方位(広角)カメラの特性を利用して、撮像画像をカメラの光軸からの角度に応じて複数の領域に分割し、分割したされた各領域画像を、光軸からの各領域画像までの角度に応じて圧縮率を変化させて圧縮する。この処理は、撮像画像のみに着目した場合、カメラによって得られた撮像画像を複数の領域に分割し、分割された各領域画像を、撮像画像の所定の点から各領域画像までの長さに応じて圧縮率を変化させて圧縮する、と言うことができる。また、本発明では、カメラから各領域画像に含まれるターゲットまでの距離に応じて、圧縮率を変化させる。
【0021】
本発明では、上記角度・距離に応じた圧縮率の変化のさせ方として、
第1の圧縮方法:「低品質の領域のデータ量を大幅に減らし、高品質の領域の品質を維持する」方法
第2の圧縮方法:「全領域で平均的な解像度の画像を得る」方法
の2つの圧縮方法を提示する。
【0022】
以下、第1及び第2の圧縮方法について、個別に説明する。
【0023】
[1−2]第1の圧縮方法:「低品質の領域のデータ量を大幅に減らし、高品質の領域の品質を維持する」方法
この圧縮方法は、次の(i)〜(iii)の規則に従って圧縮率を変化させる。
【0024】
(i)光軸からの角度が大きな角度で得られた領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮する。
(ii)カメラから距離の離れた対象の画像ほど大きな圧縮率で圧縮する。
(iii)光軸付近で得られた画像は大きな圧縮率で圧縮する。
【0025】
(i)の処理を行うことにより、そもそも歪み等のためにあまり画像品質が良くなく、情報を削減しても表示時に画質劣化が目立たない、カメラ光軸から離れた角度で得られた画像ほど、圧縮率を大きくするので、実質的な画質劣化を抑制しつつ、画像データを大幅に削減できる。また、光軸からの角度といった単純なパラメータによって圧縮率を変えるので、複雑な画像処理を行うことなしに、圧縮率を変えることができる。
【0026】
同様に、(ii)の処理を行うことにより、そもそも低解像度等のためにあまり画像品質が良くなく、情報を削減しても表示時に画質劣化が目立たない又は人物識別等に利用できない、カメラから遠いターゲットほど、圧縮率を大きくするので、実質的な有意領域の画質劣化を抑制しつつ、画像データを大幅に削減できる。
【0027】
ここで、(iii)の処理を行う理由について説明する。全方位カメラは、天井や柱に、地表方向に向けて設置されることが多く、このような場合、カメラの光軸方向に存在する人物の撮像画像は、頭部のみが写ったものとなっている可能性が高い。発明者らは、頭部のみが写った画像は有意性が低いので、その領域の画像は圧縮率を大きくして画質が劣化してもよいと考えた。発明者らは、このような検討から、(iii)の処理を行えば、有意領域でない画像の符号量を大きく削減でき、全体としての符号量を削減できると考えた。
【0028】
ところで、有意画像ほど圧縮率を小さくする技術としては、従来、ROI(Region of Interest)符号化がある。ROI符号化は、画像の注目領域(つまり、ROI)を他の領域とは異なる画質で符号化する技術である。具体的には、注目領域ほど圧縮率を小さくすることで、注目領域の画質劣化を抑制する。但し、ROI符号化では、どの領域を注目領域とするかによって有意画像の劣化の程度が異なるので、どの領域を注目領域に設定するかが重要となる。的確な注目領域の設定するためには、一般に、パターン認識等の画像処理が必要になるので、演算量が増大する。
【0029】
これに対して、(iii)では、全方位(広角)画像の特徴を有効に利用して有意性を決めているので、大きな演算量の増加を伴わずに、的確に全方位画像の有意領域を設定できる。この結果、比較的小さな演算規模で、高品質及び高圧縮率の圧縮画像データを得ることができる。
【0030】
ここで、上記(i)〜(iii)の処理は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、上記(i)〜(iii)の処理を全て用いてもよく、上記(ii)、(iii)の処理を行わずに上記(i)の処理のみを行ってもよい。また、上記(iii)の処理を行わずに、上記(i)、(ii)の処理を行ってもよい。また、上記(ii)の処理を行わずに、上記(i)、(iii)の処理を行ってもよい。
【0031】
なお、上記(i)と(iii)の処理を組み合わせて行う場合には、例えば、光軸からの角度が5°未満の角度で得られた画像は大きな圧縮率で圧縮し((iii)の処理を行う)、光軸からの角度が5°以上の角度で得られた画像は光軸からの角度が大きくなるほど大きな圧縮率で圧縮すればよい((i)の処理を行う)。
【0032】
[1−3]第2の圧縮方法:「全領域で平均的な解像度の画像を得る」方法
この圧縮方法は、次の(iv)、(v)の規則に従って圧縮率を変化させる。
(iv)光軸からの角度が大きな角度で得られた領域画像ほど小さな圧縮率で圧縮する。
(v)カメラから距離の離れた対象の画像ほど小さな圧縮率で圧縮する。
【0033】
(iv)の処理を行うことにより、そもそも歪み等のためにあまり画像品質が良くない画像ほど、圧縮によるさらなる劣化を抑制でき、結果として、全領域で均一(平均的)な品質の画像を得ることができる。また、光軸からの角度といった単純なパラメータによって圧縮率を変えるので、複雑な画像処理を行うことなしに、圧縮率を変えることができる。
【0034】
同様に、(v)の処理を行うことにより、そもそも低解像度等のためにあまり画像品質が良くない画像ほど、圧縮によるさらなる劣化を抑制でき、結果として、全領域で均一(平均的)な品質の画像を得ることができる。
【0035】
ここで、上記(iv)、(v)の処理は、組み合わせて用いてもよいし、(v)の処理を行わずに上記(iv)の処理のみを行ってもよい。
【0036】
[1−4]処理イメージ
次に、図1〜図10を用いて、本発明の処理イメージを説明する。
【0037】
図1は、全方位カメラ10がターゲットT1〜T6を撮像している様子を示すものである。なお、図の例の場合、ターゲットは人物であるが、ターゲットは人物に限らない。図1の例では、全方位カメラ10は、天井や柱に、地表方向に向けて設置されている。図中、C0は全方位カメラの光軸である。図1は、全方位カメラ10による撮像の様子を、地表と平行な方向から見たものである。
【0038】
図2は、全方位カメラ10によって撮像された全方位画像1を示すものである。
【0039】
図1及び図2において、ターゲットT1、T2は光軸C0から角度θ1の位置に存在し、ターゲットT3、T4は角度θ2の位置に存在し、ターゲットT5、T6は角度θ3の位置に存在する。ここで、θ1、θ2、θ3は、θ1>θ2>θ3の関係にある。また、ターゲットT1、T3、T5は全方位カメラ10から距離d1の位置に存在し、ターゲットT2、T4、T6は全方位カメラ10から距離d2の位置に存在する。ここで、d1、d2は、d1<d2の関係にある。
【0040】
図3は、光軸C0からの角度θと、撮像画像との関係を示す図である。図3Aは、実空間上で角度θに存在する物体が光学系2を介して撮像面上のどの位置で撮像されるかを示す図である。ここで、撮像面上における光軸C0に対応する点をP0とすると、物体Tに対応する撮像面上の点は点P0から距離lの点となる。なお、点P0は、全方位画像においては、撮像画像の中心の点となる。
【0041】
点P0から、物体T1と光学系2の光学中心とを結ぶ直線の延長線と、撮像面との交点までの距離は、f×tanθで表される。fはカメラの焦点距離を示す。距離lと、f×tanθとの関係は、レンズの歪を表す係数κ、κなどを用いて、次式により表される。
f×tanθ = l+l×(κ×l2+κ×l+、、、)
= l×(l+ κ×l2+κ×l+、、、) ………(1)
【0042】
上記式(1)については、例えば非特許文献1に記載されている。
【0043】
このように、焦点距離fと係数κ、κ等を用いて、角度θと距離lとの関係は一意に定まる。よって、角度θに応じた圧縮率を設定すれば、その圧縮率から距離lに応じた圧縮率は容易に求めることができる。つまり、図3Bに示すように、全方位画像1上において、光軸C0に対応する点P0から距離lの物体Tの圧縮率は、距離lの値に応じて設定すればよくなる。但し、実空間上でのカメラから各ターゲットT1〜T6までの距離dは全方位画像1から求めることは困難なので、距離計測手段を用いて求める。距離dの求め方は、後述する。
【0044】
図4は、ターゲットまでの距離dに応じて同じ物体を撮影したときの撮像画像のサイズ(解像度といってもよい)が異なることを示すものである。カメラの撮像面からターゲットまでの距離dが大きいほど撮像画像サイズは小さくなる。例えば、ターゲットT3までの距離d1が5[m]、ターゲットT4までの距離d2が10[m]の場合には、ターゲットT3は10ピクセルの画像となり、ターゲットT4は5ピクセルの画像となるので、ターゲットT3の解像度はターゲットT4の解像度の2倍となる。
【0045】
[1−4−1]第1の圧縮方法(「低品質の領域のデータ量を大幅に減らし、高品質の領域の品質を維持する」方法)を用いる場合の処理イメージ
【0046】
図2において、ターゲットT1、T2を含む分割領域A1、A2は光軸C0からの角度θ1が大きく歪みが大きいので高圧縮率で圧縮される。ターゲットT3、T4を含む分割領域A3、A4は、光軸C0からの角度θ2が角度θ1よりも小さく、歪みが小さいので、ターゲットT1、T2よりも低圧縮率で圧縮される。ターゲットT5、T6は光軸C0付近に存在し頭のみしか写らないので、高圧縮率で圧縮される。
【0047】
また、T1、T3、T5の全方位カメラ10からの距離d1は、T2、T4、T6の全方位カメラ10からの距離d2よりも小さい(d1<d2)ので、T1、T3、T5はT2、T4、T6よりも低圧縮率で圧縮される。
【0048】
なおここでは、説明を簡単化するために、図2のように、全方位画像1を、ターゲットT1〜T6を含む分割領域A1〜A6に分割して、この分割領域A1〜A6の圧縮率を角度θ(撮像画像においては点P0から分割領域A1〜A6までの長さl)及び距離dに応じた変化させる場合について説明したが、ターゲットに着目して画像を分割する場合に限らない。すなわち、全方位画像1を、角度θ(撮像画像においては点P1から分割領域A1〜A6までの長さ)に応じて複数の領域に分割し、分割された各領域画像を、角度θ(撮像画像においては点P1から分割領域A1〜A6までの長さ)に応じて圧縮率を変化させて圧縮すればよい。
【0049】
図5は、第1の圧縮方法のうち、上記規則(i)光軸からの角度が大きな角度で得られた領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、及び、上記規則(ii)カメラから距離の離れた対象の画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、を組み合わせて用いた場合の、3次元空間上の圧縮率の等高線を示したものである。図5において、等高線L1〜L3は、等高線L1が示す圧縮率 < 等高線L2が示す圧縮率 < 等高線L3が示す圧縮率、の関係にある。
【0050】
図6は、第1の圧縮方法のうち、上記規則(i)光軸からの角度が大きな角度で得られた領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、及び、上記規則(ii)カメラから距離の離れた対象の画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、及び、上記規則(iii)光軸付近(0≦θ<TH;THは予め決められた閾値)の画像は大きな圧縮率で圧縮する、を組み合わせて用いた場合の、3次元空間上の圧縮率の等高線を示したものである。図6において、等高線L1〜L5は、等高線L1が示す圧縮率 < 等高線L2が示す圧縮率 < 等高線L3が示す圧縮率 < 等高線L4が示す圧縮率 < 等高線L5が示す圧縮率、の関係にある。なお、図6では、光軸付近(0≦θ<TH)の画像を固定の圧縮率L5で圧縮する場合を示したが、図7に示すように、光軸付近(0≦θ<TH)の画像の圧縮率は、他の領域の画像の圧縮率よりも相対的に大きくしつつ、角度θ(撮像画像においては点P1からの長さ)及び距離dに応じて変化させてもよい。
【0051】
[1−4−2]第2の圧縮方法(「全領域で平均的な解像度の画像を得る」方法)を用いる場合の処理イメージ
【0052】
図2において、ターゲットT1、T2を含む分割領域A1、A2は光軸C0からの角度θ1が大きく歪みが大きいので低圧縮率で圧縮される。ターゲットT3、T4を含む分割領域A3、A4は、光軸C0からの角度θ2が角度θ1よりも小さく、歪みが小さいので、ターゲットT1、T2よりも高圧縮率で圧縮される。
【0053】
また、T1、T3、T5の全方位カメラ10からの距離d1は、T2、T4、T6の全方位カメラ10からの距離d2よりも小さい(d1<d2)ので、T1、T3、T5はT2、T4、T6よりも高圧縮率で圧縮される。
【0054】
図8は、第2の圧縮方法の上記規則(iv)光軸からの角度が大きな角度で得られた領域画像ほど小さな圧縮率で圧縮する、及び、上記規則(v)カメラから距離の離れた対象の画像ほど小さな圧縮率で圧縮する、を組み合わせて用いた場合の、3次元空間上の圧縮率の等高線を示したものである。図8において、等高線L1〜L3は、等高線L1が示す圧縮率 > 等高線L2が示す圧縮率 > 等高線L3が示す圧縮率、の関係にある。
【0055】
[1−5]圧縮率の設定
次に、具体的な圧縮率の設定について説明する。
【0056】
上記第1の圧縮方法を採用する場合の圧縮率は、式(2)又は式(3)により求めることができる。
【0057】
圧縮率 = (θ×α)×(d×β) ……… (2)
圧縮率 = (θ×α)+(d×β) ……… (3)
但し、0≦θ<THの領域では、圧縮率は、他の領域よりも相対的に大きな固定値に設定する。
【0058】
なお、角度θに乗ずる係数αは、例えば、カメラパラメータに含まれる、レンズ特性に依存する歪係数、収差、解像度等に応じて設定すればよい。また、距離dに乗ずる係数βは、例えば、カメラパラメータに含まれる焦点距離等に応じて設定すればよい。
【0059】
上記第2の圧縮方法を採用する場合の圧縮率は、式(4)又は式(5)により求めることができる。
【0060】
圧縮率 = (1/θ×α)×(1/d×β) ……… (4)
圧縮率 = (1/θ×α)+(1/d×β) ……… (5)
【0061】
図9に、α値の一例を示す。図9は、中心解像度(つまりθ=0の解像度)が190[LP/mm]、レンズ端解像度(つまりθ=90°の解像度)が100[LP/mm]のカメラを用い、上記第2の圧縮方法を採用する場合における、α値の設定の一例を示すものである。
【0062】
図10に、圧縮率の具体例を示す。
【0063】
[2]実施の形態1
図11に、本発明の実施の形態1に係る構成を示す。図11の広角カメラ装置110は、カメラ部11と、距離計測部12と、画像処理装置100とを有する。
【0064】
カメラ部11は、例えば全方位カメラである。なお、カメラ部11は、全方位カメラに限らず、光軸からの角度θが大きくなるほど歪み等により撮像画質が悪くなるカメラであればよい。但し、カメラ部11が全方位カメラの場合に、本発明の効果が顕著となるので、以下の説明では、カメラ部11が全方位カメラである場合について説明する。カメラ部11により得られた全方位画像は、画像処理装置100の領域分割部101に出力される。
【0065】
距離計測部12は、カメラ部11に付随して配置され、又は、カメラ部11に内蔵されている。距離計測部12は、撮像領域内に存在するターゲットとカメラ部11との距離dを計測する。距離計測部12としては、超音波センサ、赤外センサ等の測距センサを用いることができる。また、距離計測部12は、ターゲットに付帯された無線タグからの信号を受信し、受信した無線信号に基づいて無線タグの位置座標を求め、この位置座標とカメラ部11の位置座標とから距離dを求める構成でもよい。さらに、カメラ部11がステレオ画像を取得できる構成となっている場合には、距離計測部12は、ステレオ画像を用いてターゲットまでの距離を求めてもよい。距離計測部12は、撮像空間内でターゲットを測位できるものであればどのような構成でもよい。距離計測部12により得られた距離dの情報は、領域分割部101及び圧縮率設定部104に出力される。
【0066】
領域分割部101は、全方位画像を複数の領域に分割する。このとき、領域分割部101は、図2に示したように、全方位画像1の中のターゲットT1〜T6を基準にして各ターゲットT1〜T6を含む分割領域A1〜A6に分割してもよく、ターゲットT1〜T6とは無関係に単純に複数の領域に分割してもよい。なお、距離dが異なる画像は異なる領域に分割する。
【0067】
図12に、距離dに応じた領域分割の例を示す。図12では、カメラからの距離が5[m]未満の領域と、5[m]以上の領域とで、領域分割する例が示されている。つまり、角度θを無視した場合、ターゲットT11、T12を含む画像は、ターゲットT21、T22を含む画像とは異なる領域の画像に分割される。なお、ステレオ画像を用いて距離を計測する場合には、画素毎に距離を計測できるので、画素毎の距離情報に基づいて、近接するほぼ同一の距離の画素を集めて領域分割することができる。複数領域に分割された全方位画像は、距離算出部102に出力される。
【0068】
距離算出部102は、撮像画像において、光軸C0に対応する点P0から各領域画像までの距離lを算出する。
【0069】
圧縮率設定部104は、撮像画像上での上記距離lとカメラ部11からターゲットまでの距離dとから、各領域画像の圧縮率を設定する。実際上、圧縮率設定部104は、距離lと距離dとに対応した圧縮率が格納されたテーブルを有し、距離lと距離dを読み出しアドレスとして、距離l及び距離dに対応した圧縮率を出力する。なお、上述したように角度θに対応する圧縮率は、式(2)〜式(5)のいずれかを用い求めることができる。また、式(1)により角度θと距離lとの関係は一意に決っているので、角度θに対応する圧縮率から距離lに対応する圧縮率を求めることができる。圧縮率設定部104のテーブルには、その距離lに対応する圧縮率が格納されている。なお、式(2)〜式(5)における係数α、βは、上述したように、カメラパラメータ格納部103に格納された歪係数、収差、解像度、焦点距離等に応じて設定すればよい。また、上述したように、第1の圧縮方法を用いる場合には、0≦θ<THの領域の圧縮率は、他の領域よりも相対的に大きな値に設定するとよい。
【0070】
画像圧縮部105は、領域分割部101によって分割された各領域画像を、圧縮率設定部104によって設定された圧縮率で圧縮符号化することで、圧縮符号化データを得る。
【0071】
画像出力部106は、圧縮符号化データを、伝送路や記録媒体等に出力する。伝送路を介して相手側装置に伝送された圧縮符号化データは、相手側装置によって復号されて表示される。また、記録媒体に記録された圧縮符号化データは、再生装置によって再生復号されて表示される。
【0072】
以上の構成によれば、カメラ部11によって得られた撮像画像を複数の領域に分割する領域分割部101と、領域分割部101によって分割された各領域画像を、撮像画像の所定の点(光軸C0に対応する点であり、全方位画像1においては撮像画像の中心点)から各領域画像までの距離l及びカメラ部11から各領域に含まれるターゲットT1〜T4までの距離dに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部105とを設けたことにより、広角カメラのカメラ特性を考慮した、高画質及び高効率の画像圧縮を実現できる。
【0073】
[3]実施の形態2
図11との対応部分に同一符号を付して示す図13に、実施の形態2の広角カメラ装置の構成を示す。広角カメラ装置210の画像処理装置200は、物体検出部201を有する。
【0074】
物体検出部201は、全方位画像から注目物体(すなわちターゲット)を検出する。物体検出部201は、ターゲットとして、例えば動いている物体を検出する。また、物体検出部201は、特定の物体を種類に応じて分類して検出してもよい。画像中に含まれる動物体の検出及び物体の分類処理は、既知の技術によって容易に実現できるが、以下簡単に説明する。
【0075】
図14は、フレーム間差分処理によって動物体を検出する様子を示す。図では、tフレームとt+1フレームとの差分をとることにより、動物体である人物が検出される様子が示されている。
【0076】
図15は、背景差分処理によって動物体を検出する様子を示す。図では、複数フレーム(t−2フレームとt−1フレームとtフレーム)の画像から背景画像を得、この背景画像とt+1フレームの画像の差分をとることにより、動物体である人物が検出される様子が示されている。
【0077】
図16は、撮像画像から人物、車を分類して検出した様子を示す。
【0078】
図17は、特定物体を種類に応じて分類して検出するための処理例を示す。図17Aに示すように、物体検出部201は、学習により、人物、車、2輪車等の形状を学習パターンとして保持している。そして、物体検出部201は、入力画像と学習パターンとのパターンマッチング処理を行うことで、入力画像に含まれる特手物体を検出する。
【0079】
物体検出部201は、動物体等の特定物体の検出結果を領域分割部202に出力する。領域分割部202は、例えば図2に示すように、全方位画像を、特定物体(図2の場合には人物)を含む領域毎に分割する。
【0080】
後段の距離算出部102、圧縮率設定部104、画像圧縮部105では、全画像ではなく、特定物体を含む所定画像領域に対してのみ、実施の形態1と同様の処理を行う。これにより、特定物体を含む重要領域のみが実施の形態1で示したような、広角カメラのカメラ特性を考慮した圧縮率で圧縮される。なお、特定物体を含む重要領域以外の領域は、重要領域よりも大きな圧縮率で圧縮する。
【0081】
これにより、実施の形態1の効果に加えて、重要領域以外の圧縮率を高くするので、圧縮符号化データのデータ量を一段と削減できるようになる。
【0082】
[4]他の実施の形態
上述の実施の形態の処理に加えて、復号側で超解像度処理を行うことを考慮した圧縮処理を行ってもよい。ここで、超解像度処理を行うためには、撮像された画像の折り返し歪み成分が必要となる。画像の高周波成分を削除してしまうような圧縮を行うと、折り返し歪み成分も失われてしまうので、超解像度処理が困難になる。これを考慮して、高周波成分は、例えばその他の成分よりも1割小さい圧縮率で圧縮符号化することにより、高周波成分が圧縮によりできるだけ失われないようにすると好ましい。
【0083】
上述の実施の形態の画像処理装置100、200は、メモリ・CPUを含むパソコン等のコンピュータによって構成することができる。そして、画像処理装置100、200を構成する各構成要素の機能は、メモリ上に記憶されたコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行処理することで実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば全方位カメラ等の広角カメラにより撮像された画像を圧縮するのに用いて好適である。
【符号の説明】
【0085】
1 全方位画像
10 全方位カメラ
11 カメラ部
12 距離計測部
100 画像処理装置
101、202 領域分割部
102 距離算出部
103 カメラパラメータ格納部
104 圧縮率設定部
105 画像圧縮部
106 画像出力部
110、210 広角カメラ装置
201 物体検出部
T1〜T6 ターゲット
θ1〜θ3 角度
d1、d2 距離
C0 光軸
A1〜A6 分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段によって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割部と、
前記領域分割部によって分割された各領域画像を、前記撮像手段が前記撮像画像を取得する際の歪の程度に応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
撮像手段によって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割部と、
前記領域分割部によって分割された各領域画像を、前記撮像画像の所定の点から各領域画像までの長さに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項3】
前記画像圧縮部は、さらに、前記撮像手段から前記各領域画像に含まれるターゲットまでの距離に応じて、前記圧縮率を変化させる、
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記圧縮部は、前記所定の点からの長さが大きな領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記圧縮部は、前記所定の点からの長さが大きな領域画像ほど小さな圧縮率で圧縮する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記圧縮部は、前記撮像手段からの距離が大きいターゲットを含む領域画像ほど大きな圧縮率で圧縮する、
請求項3又は請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記圧縮部は、前記撮像手段からの距離が大きいターゲットを含む領域画像ほど小さな圧縮率で圧縮する、
請求項3又は請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記所定の点は、前記撮像手段の光軸に対応する点である、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記撮像画像は、全方位画像であり、
前記所定の点は、撮像画像のほぼ中心の点である、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記圧縮部は、前記所定の点からの長さが予め決められた閾値以下の領域画像は、前記所定の点からの長さが前記閾値より大きい領域画像よりも、大きな圧縮率で圧縮する、
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
撮像手段によって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割ステップと、
分割した各領域画像を、前記撮像画像の所定の点から各領域画像までの長さに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮ステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
撮像手段によって得られた撮像画像を、複数の領域に分割する領域分割ステップと、
分割した各領域画像を、前記撮像画像の所定の点から各領域画像までの長さに応じて圧縮率を変化させて圧縮する画像圧縮ステップと、
を実行させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−55366(P2011−55366A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204038(P2009−204038)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】