説明

画像処理装置及びX線診断装置

【課題】心筋組織の虚血・梗塞領域に対する正確な診断及び治療を支援する。
【解決手段】一実施形態における画像処理装置は、記憶部と、画像生成部と、表示制御部とを備える。記憶部は、造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を記憶する。画像生成部は、記憶部に記憶された第1のX線透過画像及び第2のX線透過画像を合成した画像を生成する。表示制御部は、画像生成部により生成された画像を表示部に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置及びX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の再生医療の進歩により、心筋の虚血・梗塞部位に幹細胞(Stem Cell)や細胞増殖因子を直接投与し、細胞増殖もしくは細胞活性化を図ることで心筋の運動を回復する治療法(Cell therapy)が確立されつつある。
【0003】
この種の治療において幹細胞等を虚血・梗塞部位に投与する手法としては、外科的に行う手法、経カテーテルにより幹細胞等を冠状動脈に注入する手法、及び、心室内腔側から経カテーテルにて幹細胞等を注射する手法等が提案されている。
【0004】
これらいずれの手法においても、予め虚血・梗塞部位を明確化するとともに、そこに幹細胞等を注入できるようにカテーテルを動かしてその先端を位置決めする必要がある。
【0005】
上記虚血・梗塞部位は、例えばX線診断装置によって撮影される心筋灌流画像に基づいて把握される。心筋灌流画像は、心臓の冠状動脈にカテーテルを挿入し、このカテーテルから造影剤を注入して撮影されるX線透過画像である。この心筋灌流画像には、造影剤によって染影された心筋組織が描出されるので、正常に灌流されている心筋領域を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−213863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
心筋灌流画像においては、造影剤が到達できる領域、すなわち血液により酸素が供給されている領域は可視化されるものの、虚血・梗塞領域には造影剤が流れ込まないため、同領域の分布を正確に把握することができない。すなわち、心筋灌流画像にて染影されていない領域は、心筋組織ではないのか、あるいは心筋組織であるが灌流されていないのかを、直接的に区別することができない。したがって、現状においては、X線透過画像に基づいて正確な虚血・梗塞領域を把握すること、乃至は虚血・梗塞部位に対し適確に幹細胞等を投与することが困難である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、心筋組織の虚血・梗塞領域に対する正確な診断及び治療を支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態における画像処理装置は、記憶部と、画像生成部と、表示制御部とを備える。記憶部は、造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を記憶する。画像生成部は、記憶部に記憶された第1のX線透過画像及び第2のX線透過画像を合成した画像を生成する。表示制御部は、画像生成部により生成された画像を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるX線診断装置のブロック構成図である。
【図2】図2は、同実施形態における画像処理部の機能ブロック図である。
【図3】図3は、同実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【図4】図4は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、同実施形態におけるX線透過画像群の抽出手法を説明するための図である。
【図6】図6は、第2の実施形態における画像処理部の機能ブロック図である。
【図7】図7は、同実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【図8】図8は、同実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【図9】図9は、同実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【図10】図10は、同実施形態における染影領域の特定手順を説明するための図である。
【図11】図11は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、第3の実施形態における画像処理部の機能ブロック図である。
【図14】図14は、同実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【図15】図15は、同実施形態における虚血領域の特定手法を説明するための図である。
【図16】図16は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、各実施形態においては、画像処理装置がX線診断装置に組み込まれている場合を例示する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
[X線診断装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1のブロック構成図である。
この図に示すように、本実施形態に係るX線診断装置1は、高電圧発生器2、X線管3、X線絞り装置4、天板5、Cアーム6、X線検出器7、Cアーム回転・移動機構8、天板移動機構9、Cアーム・天板機構制御部10、絞り制御部11、システム制御部12、入力部13、表示部14、データ変換部15、画像記憶部16、及び、画像処理部17等を備えている。
【0013】
また、本実施形態に係るX線診断装置1には、心電計20及びインジェクタ30が接続されている。
心電計20は、被検体Pの心電波形を取得し、取得した心電波形を時間情報とともに画像記憶部16等に出力する。
インジェクタ30は、被検体Pに挿入されたカテーテルから造影剤を注入するための装置である。インジェクタ30からの造影剤注入は、例えばシステム制御部12からの指示に応じて実行されてもよいし、操作者が直接インジェクタ30を操作して入力した指示に従って実行されてもよい。
【0014】
高電圧発生器2は、X線管3に供給するための高電圧を発生する。X線管3は、高電圧発生器2から供給される高電圧に基づき、X線を発生する。
【0015】
X線絞り装置4は、X線管3から発生されるX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込むための装置である。例えばX線絞り装置4は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることでX線を絞り込む。
【0016】
天板5は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0017】
X線検出器7は、被検体Pを透過したX線を検出する複数のX線検出素子を有する。これら各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積する。
【0018】
Cアーム6は、X線管3及びX線絞り装置4と、X線検出器7とを、被検体Pを挟んで対向させた状態で保持する。
【0019】
Cアーム回転・移動機構8は、Cアーム6を回転及び移動させるための装置である。天板移動機構9は、天板5を移動させるための装置である。Cアーム・天板機構制御部10は、Cアーム回転・移動機構8及び天板移動機構9を制御し、Cアーム6の回転量、移動量、及び天板5の移動量を調整する。
【0020】
絞り制御部11は、X線絞り装置4が有する絞り羽根の開度を調整して、X線の照射範囲を制御する。
【0021】
データ変換部15は、X線のパルス照射に同期してX線検出器7に蓄積された電荷を読み出すとともに、読み出した電気信号をデジタルデータに変換してX線透過画像を生成し、生成したX線透過画像を画像記憶部16に出力する。
【0022】
画像記憶部16は、データ変換部15から出力されたX線透過画像に撮影時間を対応付けて記憶する。また、画像記憶部16は、心電計20から出力される心電波形に時間情報を対応付けた位相情報を記憶する。この位相情報及びX線透過画像に対応付けられた撮影時間を参照することで、画像記憶部16に記憶された各X線透過画像に対応する心位相が特定可能となる。さらに、画像記憶部16は、インジェクタ30による造影剤注入開始時間を記憶する。この造影剤注入開始時間は、例えばインジェクタ30によって造影剤の注入が開始されたときに、システム制御部12を介して画像記憶部16に通知される。
【0023】
画像処理部17は、画像記憶部16に記憶された各X線透過画像に対して各種の画像処理を施す。画像処理部17の機能の詳細については後述する。
【0024】
入力部13は、X線診断装置1を操作する医師や技師等の操作者が各種コマンドや情報を入力するために用いるマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、及び、ジョイスティック等を有し、これらのデバイスにて入力されたコマンドや情報をシステム制御部12に出力する。
【0025】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタを有し、入力部13を介して操作者からの入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像記憶部16が記憶するX線透過画像及び画像処理部17により画像処理されたX線透過画像等を表示する。
【0026】
システム制御部12は、X線診断装置1全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部12は、入力部13を介して入力される操作者からのコマンド等に基づいて、高電圧発生器2、Cアーム・天板機構制御部10、及び絞り制御部11等を制御することで、被検体Pに照射するX線量の調整及びX線照射のON/OFF制御や、Cアーム6の回転・移動の調整、天板5の移動調整等を行う。
【0027】
また、システム制御部12は、入力部13を介して入力される操作者からのコマンド等に基づいて、データ変換部15及び画像処理部17を制御する。さらに、システム制御部12は、表示部14に上記GUIや画像記憶部16が記憶するX線透過画像及び画像処理部17により画像処理されたX線透過画像等を表示させるための制御を行う。
【0028】
かかる構成のX線診断装置1を用いれば、被検体Pの心筋灌流画像、及び、心内腔造影画像(本実施形態においては左心室造影画像)のX線透過画像を得ることができる。
【0029】
具体的には、心筋灌流画像は、被検体Pの心臓の冠状動脈にカテーテルを挿入した状態で当該心臓を関心領域に含むX線透過画像を連続して撮影しつつ、インジェクタ30にカテーテルから造影剤を注入させることで得られる。左心室造影画像は、被検体Pの心臓の左心室にカテーテルを挿入した状態で当該心臓を関心領域に含むX線透過画像を連続して撮影しつつ、インジェクタ30にカテーテルから造影剤を注入させることで得られる。
【0030】
本実施形態においては、被検体Pに対するX線の照射範囲や方向を変えず、さらに天板5を移動させたりCアーム6を移動又は回転させたりせずに、上記のような撮影を複数心拍に亘って行った結果得られる多数の心筋灌流画像及び左心室造影画像が、その撮影時間とともに画像記憶部16に予め記憶されているものとする。
【0031】
[画像処理部]
次に、画像処理部17によって実現される機能について説明する。図2は、画像処理部17の機能を説明するためのブロック図である。また、図3は、本実施形態における画像処理の流れを示す概略図である。
【0032】
本実施形態における画像処理部17は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって画像処理部17が有するメモリ等に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、画像抽出部100、補正部101、及び画像生成部102としての機能を実現する。
【0033】
画像抽出部100は、画像記憶部16に記憶された複数の心筋灌流画像(以下、心筋灌流画像群A)、及び、画像記憶部16に記憶された複数の左心室造影画像(以下、左心室造影画像群B)から、後述の合成等に用いる画像をそれぞれ抽出する。
【0034】
なお、本実施形態における心筋灌流画像は、造影剤投与前のフレームから造影剤投与後のフレームを差分して骨等の背景を除去する背景差分処理を施したものであり、図3(A)に示すように造影剤によって染影された心筋組織が他の部分に比べて高輝度で描画されている。一方、本実施形態における左心室造影画像は、上記背景差分処理を施していないものであり、図3(B)に示すように造影剤によって染影された左心室や胸部大動脈が他の部分に比べて低輝度で描画されている。
【0035】
補正部101は、画像抽出部によって抽出された心筋灌流画像及び左心室造影画像に対し各種の補正を行うとともに、各画像の位置合わせを行う。
【0036】
画像生成部102は、補正部101によって補正された後の心筋灌流画像及び左心室造影画像を合成し、図3(C)に示すような合成画像を生成する。この合成画像を用いれば、心筋灌流画像に描出された心臓像から左心室に相当する部分を除外した形状、すなわち心筋組織の形状を明確に把握できる。このように把握される心筋組織の形状のうち、例えば図3(C)の符号Xを付した部分のように造影が薄い領域が、虚血領域(梗塞領域を含む)となる。
【0037】
画像生成部102によって生成された合成画像は、システム制御部12の制御の下で表示部14に表示される。
【0038】
[動作]
続いて、画像処理部17にて実現される各部100〜102及びシステム制御部12の具体的な動作につき、図4のフローチャートに沿って説明する。なお、既述の通り、画像記憶部16には上記心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bが既に記憶されているものとする。
【0039】
図4のフローチャートに示すように、先ずシステム制御部12が操作者からの画像処理要求を受け付ける(ステップS1)。画像処理要求は、例えば入力部13を操作することにより、入力される。画像処理要求を受け付けたならば(ステップS1のYes)、システム制御部12は、画像処理部17に対して処理の開始を指令する。
【0040】
このようにシステム制御部12から処理の開始を指令されたとき、画像抽出部100が心筋灌流画像群Aから被検体Pの心筋組織がよく染影された1心拍分の画像群を抽出する(ステップS2)。さらに、画像抽出部100は、左心室造影画像群Bから被検体Pの左心室がよく染影された1心拍分の画像群を抽出する(ステップS3)。換言すれば、ステップS2,S3において画像抽出部100は、同一の心位相に対応する心筋灌流画像及び左心室造影画像を、1心拍に亘って抽出する。以下の説明においては、ステップS2にて抽出される心筋灌流画像群を第1のX線透過画像群と称し、ステップS3にて抽出される左心室造影画像群を第2のX線透過画像群と称す。
【0041】
ステップS2において心筋組織がよく染影された第1のX線透過画像群を抽出する手法につき、図5を用いて説明する。心筋灌流画像の撮影時において冠状動脈に注入された造影剤は、心臓内の血管に流入した後、心筋組織の細胞間質に流入する。このとき、冠状動脈造影後のX線透過画像における心筋組織の染影度は、造影剤注入後に除々に上昇してピークに達し、その後低下する。
【0042】
本実施形態において、画像抽出部100は、上記ピークを挟んで1心拍分の範囲にある複数の画像を、第1のX線透過画像群として心筋灌流画像群Aから抽出する。この処理を実現すべく、例えば造影剤注入時から心筋組織の染影度がピークに達するまでの予測時間T1と、被検体Pの心臓の1心拍に相当する時間幅aとを予め設定しておく。そして、心筋灌流画像群Aのうち、画像記憶部16に記憶された冠状動脈造影における造影剤注入開始時間から予測時間T1が経過した時点を挟んで時間幅aの範囲内にて撮影された複数の画像を、第1のX線透過画像群として抽出する。
【0043】
また、左心室造影画像においても、造影剤注入後に左心室の染影度が徐々に上昇してピークに達し、その後低下する。そこで、ステップS3での第2のX線透過画像群の抽出においても、図5を用いて説明した第1のX線透過画像群の場合と同様に、造影剤注入時から左心室の染影度がピークに達するまでの予測時間T2と、被検体Pの心臓の1心拍に相当する時間幅aとを予め設定しておき、左心室造影画像群Bのうち、画像記憶部16に記憶された左心室造影における造影剤注入開始時間から予測時間T2が経過した時点を挟んで時間幅aの範囲内にて撮影された複数の画像を、第2のX線透過画像群として抽出する。
【0044】
なお、ここで説明した手法の他にも、心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bに含まれる各画像の画素値の変化に基づき、心筋組織の染影度がピークとなる時間や、左心室の染影度がピークとなる時間を画像抽出部100が自動的に特定するようにしてもよい。また、画像記憶部16に記憶された位相情報に含まれる心電波形に基づき、画像抽出部100が上記時間幅aを自動的に設定するようにしてもよい。
【0045】
さらには、心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bから操作者が手動で第1,第2のX線透過画像を抽出するようにしてもよい。この場合、例えば表示部14に心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bを一覧表示させ、この状態で入力部13の操作による複数の心筋灌流画像及び左心室造影画像の選択を受け付け、選択された複数の心筋灌流画像を第1のX線透過画像群として抽出し、選択された複数の左心室造影画像を第2のX線透過画像として抽出すればよい。
【0046】
ステップS2,S3のように第1,第2のX線透過画像群を抽出した後、補正部101がこれら第1,第2のX線透過画像群に含まれる各画像に対し、各種の補正を施す(ステップS4)。ここでの補正には、例えば第1のX線透過画像群に含まれる各画像の輝度値と、第2のX線透過画像群に含まれる各画像の輝度値とを、後述のステップS5における合成に適した値に調整する処理や、第1,第2のX線透過画像群に含まれる各画像の位置合わせ(位置、拡大率、画像角度の調整)等が含まれる。各画像の位置合わせは、例えば各画像に描出された骨等のX線透過率が低い部位の形状等が、各画像において一致するように行えばよい。あるいは、操作者が手動で上記輝度値の調整や位置合わせを行うようにしてもよい。
【0047】
ステップS4における補正の後、画像生成部102が補正後の第1のX線透過画像群に含まれる各画像と、補正後の第2のX線透過画像群に含まれる各画像とを合成し、図3(C)に示したような合成画像を生成する(ステップS5)。具体的には、画像生成部102は、第1,第2のX線透過画像群に含まれる各画像に対応付けられた位相情報を参照し、同一の心位相にて撮影されたもの同士を合成し、被検体Pの心臓の1心拍分に相当する複数の合成画像を生成する。この合成は、例えば合成対象の2つの画像について、同じ位置にある画素値を足し合わせることで行う。あるいは、合成対象の2つの画像について、同じ位置にある画素値の平均をとってもよい。
【0048】
ステップS5の後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させ(ステップS6)、一連の処理が終了する。ステップS6においては、画像生成部102によって生成された1心拍分の合成画像の全てあるいは一部を表示部14に静止画として表示させてもよいし、これら1心拍分の合成画像を所定のフレームレートにて動画として表示させてもよい。また、このような表示態様の操作者による選択を入力部13によって受け付け、その選択に従って合成画像を表示するようにしてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るX線診断装置1は、心筋灌流画像と左心室造影画像とを合成して図3(C)に示すような合成画像を生成し、表示部14に表示する。この合成画像を参照すれば、被検体Pの心筋組織の虚血領域を明確に把握できる。
【0050】
また、このような合成画像は、被検体Pの同一の心位相に対応する心筋灌流画像及び左心室造影画像を用いて生成されるので、虚血領域を高精度で把握することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態における合成画像の生成には、X線診断装置が撮影した心筋灌流画像と左心室造影画像が用いられる。X線診断装置にてこれらの画像を撮影する場合、被検体の透過画像を撮影しながら同被検体に造影剤を投与できるので、造影剤が広がる過程を捉え易い。虚血領域には、造影剤が投与された当初は他の正常な領域に比べて造影剤による染影が見られないものの、その後除々に造影剤による染影が現れるものもある(遅延造影)。本実施形態のようにX線診断装置が撮影した心筋灌流画像と左心室造影画像を用いる場合には、このような遅延造影が生じる組織も梗塞等のリスクがある組織として区別し易い。なお、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)にて心筋灌流画像や左心室造影画像を得る場合等には、被検体への造影剤の投与から撮影までに時間を要するため、撮影時には上記のリスクがある組織も染影されている可能性がある。したがって、このような組織を医師等が見落とすことになりかねない。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
本実施形態においては、画像抽出部100によって抽出された第1のX線透過画像群及び第2のX透過画像群に含まれる各画像をそのまま合成するのではなく、第1のX線透過画像群に含まれる各画像に描出された心筋組織のトレース像と、第2のX線透過画像群に含まれる各画像に描出された左心室のトレース像とを合成する点で、第1の実施形態と異なる。
【0053】
また、本実施形態においては、上記合成されたトレース像を用いて、幹細胞や細胞増殖因子を心筋組織の虚血領域に注入する再生医療に有用な画像を医師等に提供するための構成を新たに加える。
【0054】
特に本実施形態においては、被検体Pの体内にインジェクタ30に接続されたカテーテルを挿入するとともに、X線診断装置1に被検体Pの心臓のX線透過画像を撮影させてライブ表示させ、これを見ながら医師がカテーテルを虚血領域に送り込み、カテーテルの先端が虚血領域付近に達したならば同カテーテルの先端から幹細胞等を投与する場合を想定する。
【0055】
さらに、カテーテルから投与される幹細胞等には造影剤が混ぜられており、幹細胞等の投与時には上記ライブ表示される画像中にこの造影剤によって染影された領域が描出されるものとする。
【0056】
第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0057】
[画像処理部]
本実施形態に係るX線診断装置1の全体構成は、図1に示したものと同様である。但し、画像処理部17は、図2に示した画像抽出部100、補正部101、及び画像生成部102に加え、図6に示すようにトレース部103、取得部104、及び染影領域特定部105としての機能を実現する。これら各部103〜105に関しても、プロセッサによって画像処理部17が有するメモリ等に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0058】
また、本実施形態においては、図7〜図9に示す流れで画像処理が行われる。
【0059】
トレース部103は、画像抽出部100によって抽出されて補正部101による補正を経た心筋灌流画像に描出された心筋の形状をトレースし、図7(C)に示すようなトレース像を生成する。以下、このトレース像を第1のトレース像と称す。
【0060】
また、トレース部103は、画像抽出部100によって抽出されて補正部101による補正を経た左心室造影画像に描出された左心室の形状をトレースし、図7(D)に示すようなトレース像を生成する。以下、このトレース像を第2のトレース像と称す。
【0061】
取得部104は、画像記憶部16に順次記憶されるリアルタイム画像Cを取得する。リアルタイム画像Cは、心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bに含まれる各画像の撮影時から被検体Pに対するX線の照射範囲や方向を変えず、さらに天板5を移動させたりCアーム6を移動又は回転させたりせずに連続して撮影されるリアルタイムのX線透過画像である。このリアルタイム画像Cは、被検体Pに幹細胞等を投与するにあたって撮影される。被検体Pの心臓付近にカテーテルが挿入されているとき、リアルタイム画像Cには図8(F)に示すように当該カテーテルが描出される。
【0062】
染影領域特定部105は、図9(H),(I)に示すように、取得部104によって順次取得されるリアルタイム画像Cから幹細胞等に混ぜられた造影剤によって染影された領域(以下、染影領域)を特定する。
【0063】
なお、本実施形態における画像生成部102は、図7(E)に示すように、上記第1のトレース像及び第2のトレース像を合成した合成トレース像を生成する。
【0064】
また、取得部104によってリアルタイム画像Cが取得されている間、画像生成部102は、図8(E)(G)に示すように、上記第1のトレース像及び第2のトレース像の合成トレース像を取得部104によって取得されるリアルタイム画像C上に配置した画像を順次生成する。
【0065】
さらに、被検体Pに対して造影剤が注入されたとき、画像生成部102は、図9(G),(J)に示すように、上記合成トレース像をリアルタイム画像C上に配置した画像を生成するとともに染影領域特定部105によって特定された領域をセグメントした画像を順次生成する。
【0066】
なお、図8(G),図9(G)(J)は、合成トレース像に含まれる第1,第2のトレース像の輪郭を表す線分のみを、リアルタイム画像C上に配置する場合を例示している。しかしながら、上記線分の内部を所定の色で着色してもよい。また、上記線分を用いずに、合成トレース像に含まれる第1,第2のトレース像をそれぞれ所定の色で着色し、リアルタイム画像C上に配置してもよい。さらに、第1,第2のトレース像を着色する際には所定の透過率で背景(リアルタイム画像C)を透過させてもよい。
【0067】
ここで、染影領域特定部105が上記染影領域を特定する手順につき、図10を用いて説明する。幹細胞等の投与時において、リアルタイム画像Cに描出される上記染影領域は、図示したように時間経過とともに広がってピークに達し、その後徐々に消滅する。
【0068】
本実施形態に係る染影領域特定部105は、先ず、幹細胞等の投与開始時点に撮影されたリアルタイム画像C1と、上記ピークの時点で撮影されたリアルタイム画像C2との差分画像Cdを生成する。この差分により、リアルタイム画像C2に描出されたカテーテルや骨等が消去される。そして、染影領域特定部105は、差分画像Cdに描出された高輝度領域を上記染影領域とみなす。
【0069】
なお、リアルタイム画像C1としては、例えばインジェクタ30に対して幹細胞等の注入開始が指示された時点で撮影されたリアルタイム画像Cを用いればよい。また、リアルタイム画像C2としては、例えば幹細胞等の投与開始時点から染影領域の広がりがピークに達するまでの予測時間T3を予め設定しておき、インジェクタ30に対して幹細胞等の注入開始が指示された時点からこの予測時間T3が経過した時点で撮影されたリアルタイム画像Cを用いればよい。あるいは、染影領域特定部105がリアルタイム画像Cに対する画像処理によって自動的にリアルタイム画像C1,C2を設定するようにしてもよい。
【0070】
続いて、画像処理部17にて実現される各部100〜105及びシステム制御部12の具体的な動作について説明する。なお、第1の実施形態と同様に、画像記憶部16には上記心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bが既に記憶されているものとする。
【0071】
[幹細胞等投与前における動作]
本実施形態においては、図4のフローチャートに示した処理に代え、図11のフローチャートに示す処理が実行される。
図11のフローチャートに示すステップS1〜S4の処理は、第1の実施形態にて説明したものと同様の処理である。すなわち、先ずシステム制御部12が操作者からの画像処理要求を受け付け(ステップS1)、画像処理要求を受け付けたならば(ステップS1のYes)、画像抽出部100が心筋灌流画像群Aから第1のX線透過画像群を抽出し(ステップS2)、さらに、左心室造影画像群Bから第2のX線透過画像群を抽出する(ステップS3)。そして、補正部101がこれら第1,第2のX線透過画像群に含まれる各画像に対し、各種の補正を施す(ステップS4)。
【0072】
ステップS4の後、本実施形態においてはトレース部103による処理が行われる。すなわち、トレース部103は、上記補正後の第1のX線透過画像群に含まれる各画像について、それらの画像に描出された心筋組織の形状をトレースした第1のトレース像を生成する(ステップS11)。この処理においては、例えば処理対象の心筋灌流画像に描出された高輝度領域を抽出してその形状をトレースすることで、図7(C)に示すような第1のトレース像を生成すればよい。
【0073】
さらに、トレース部103は、上記補正後の第2のX線透過画像群に含まれる各画像について、それらの画像に描出された左心室の形状をトレースした第2のトレース像を生成する(ステップS12)。この処理においては、例えば処理対象の左心室造影画像の中心付近に描出された低輝度領域を抽出し、抽出した低輝度領域から胸部大動脈や大動脈弁に相当する部分を除外して残った形状をトレースすることで、図7(D)に示すような第2のトレース像を生成すればよい。
【0074】
なお、ステップS11,S12においては、操作者が手動で第1のX線透過画像群に含まれる各画像に描画された心筋組織をトレースして第1のトレース像を生成し、第2のX線透過画像群に含まれる各画像に描画された左心室をトレースして第2のトレース像を生成するようにしてもよい。
【0075】
ステップS11,S12におけるトレースが第1,第2のX線透過画像群に含まれる全ての画像について完了すると、画像生成部102が各第1のトレース像と各第2のトレース像とを合成するとともに、合成後のトレース像を配置した画像を生成する(ステップS13)。具体的には、画像生成部102は、ステップS11,S12にて生成された各第1のトレース像及び各第2のトレース像のうち、心位相が対応するもの同士を合成し、図7(E)に示すような合成トレース像が配置された画像を1心拍に亘り生成する。なお、各トレース像の心位相は、各トレース像の生成元となったX線透過画像に対応付けられた位相情報を参照することで特定できる。
【0076】
ステップS13の後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された画像を表示部14に表示させ(ステップS14)、一連の処理が終了する。ステップS14においては、画像生成部102によって生成された1心拍分の画像の全てあるいは一部を表示部14に静止画として表示させてもよいし、これら1心拍分の画像を所定のフレームレートにて動画として表示させてもよい。また、このような表示態様の操作者による選択を入力部13によって受け付け、その選択に従って画像を表示するようにしてもよい。
【0077】
このように表示される画像において、第1のトレース像と第2のトレース像とに囲われた領域(図7における領域Y)は、心筋組織であるが血液が供給されていない領域、すなわち心筋組織が虚血(梗塞を含む)している領域であると推定できる。
【0078】
[幹細胞等投与時における動作]
さて、被検体Pの心筋組織に幹細胞等を投与すべく、医師がカテーテルを被検体Pの体内に挿入するとともにX線診断装置1に上記したリアルタイム画像Cの撮影を開始させると、画像処理部17の各部やシステム制御部12は、図12のフローチャートに示す処理を実行する。なお、この処理と並行して、染影領域特定部105が既述した染影領域を特定するための処理を実行し、リアルタイム画像Cに描出される染影領域を特定する。
【0079】
図12に示すフローチャートにおいては、先ず取得部104が画像記憶部16に記憶された最新のリアルタイム画像Cを取得する(ステップS21)。被検体Pにカテーテルが挿入されているとき、リアルタイム画像Cには、図8(F)に示すようにカテーテルが描画される。
【0080】
続いて、画像生成部102がカテーテルから幹細胞等を投与し終えた領域が有るか否かを判定する(ステップS22)。この判定は、当該フローチャートに示す処理が開始された後に、染影領域特定部105によって特定された染影領域が有るか否かに基づいてなされる。
【0081】
カテーテルから幹細胞等を未投与の段階では、染影領域特定部105によって特定された染影領域が無いことになる(ステップS22のNo)。この場合、画像生成部102は、図8(G)に示すように、ステップS13にて生成した合成トレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置した画像を生成する(ステップS23)。なお、この処理においては、例えばステップS13にて生成した1心拍分の合成トレース像から任意の1つを選定し、選定した合成トレース像をリアルタイム画像Cとの合成に用いればよい。選定される合成トレース像は、例えば医師等が当該フローチャートに示す処理を開始する前に予め指定しておく。あるいは、1心拍分の合成トレース像から特定の心位相に対応するものが画像生成部102によって自動的に選定されるようにしてもよい。
【0082】
ステップS23の後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。その後、ステップS21に戻り、次に撮影されて画像記憶部16に記憶されるリアルタイム画像Cを対象とし、ステップS21〜24の処理が実行される。
【0083】
このようにステップS21〜S24の処理が繰り返されると、図8(G)に示すような画像が表示部14にライブ表示される。医師は、この映像を参照しながらカテーテルを動かし、その先端を心筋組織の虚血領域、すなわち第1,第2のトレース像に囲われた領域に同カテーテルの先端を位置決めすればよい。
【0084】
やがて、カテーテルの先端が虚血領域に到達したならば、医師は、同カテーテルにより被検体Pの体内に幹細胞等を投与する。このとき、既述の如く当該幹細胞等に混ぜられた造影剤による染影領域が染影領域特定部105によって特定される。
【0085】
染影領域が特定された後においては、ステップS22にて幹細胞等を投与し終えた領域が有ると判定される(ステップS22のYes)。この場合、画像生成部102は、図9(J)に示すように、ステップS13にて生成した合成トレース像を直前のステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置するとともに染影領域特定部105によって特定された染影領域をセグメントした画像を生成する(ステップS25)。なお、ここで用いる合成トレース像は、ステップS23の場合と同様の手法で選定すればよい。
【0086】
染影領域は、例えばリアルタイム画像Cに含まれる他の領域と彩色やパターンを異ならせることでセグメントする。あるいは、染影領域は、同領域の形状を示す線分をリアルタイム画像C上に配置する等してセグメントされてもよい。
【0087】
ステップS25の後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。
【0088】
一旦肝細胞等が投与された後には、ステップS21、S22、S25、S24の順で、これらの処理が繰り返し実行される。その結果、図9(J)に示すような画像が表示部14にライブ表示される。医師は、この映像を参照することで幹細胞等が未投与の虚血領域を把握できる。
【0089】
なお、当該フローチャートに示す処理が開始された後、複数回に亘って幹細胞等が注入されたならば、各回の注入に対応する染影領域が染影領域特定部105によって特定される。この場合のステップS25において、画像生成部102は、各回の染影領域をセグメントした画像を生成する。
【0090】
ここで、ステップS23,S25にてリアルタイム画像Cとの合成に用いる合成トレース像は、ステップS23,S25の処理が実行される度に異ならせてもよい。例えば、合成に用いるリアルタイム画像Cの撮影時における被検体Pの心臓の心位相と、合成トレース像の生成元である心筋灌流画像及び左心室造影画像に対応する心位相とが一致するように、当該リアルタイム画像Cとの合成に用いる合成トレース像を選定する。このようにすれば、表示部14にライブ表示される画像中の合成トレース像が、実際の被検体Pの心位相に応じて脈動することになる。また、この場合において、表示部14に表示させる画像のフレームレートを下げ、特定の心位相に対応する合成画像のみを順次表示させるようにしてもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係るX線診断装置1は、心筋組織をトレースした第1のトレース像と、左心室をトレースした第2のトレース像とを合成し、合成後のトレース像を表示部14に表示する。このように表示される合成トレース像を参照すれば、心筋組織の虚血領域を正確かつ容易に把握できる。
【0092】
また、本実施形態に係るX線診断装置1は、リアルタイム画像C上に上記合成トレース像を配置した画像を生成し、生成した画像を表示部14にライブ表示する。このように表示される画像を見れば、被検体Pの体内に挿入されたカテーテルの先端位置や、同先端を到達させるべき位置、すなわち心筋組織の虚血領域を明確に把握できる。
【0093】
また、本実施形態に係るX線診断装置1は、リアルタイム画像C上で幹細胞等を投与し終えた領域をセグメントした画像を生成し、生成した画像を表示部14にライブ表示する。このように表示される画像を見れば、幹細胞等を投与し終えた領域を容易に把握できる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
本実施形態においては、第2の実施形態にて説明した合成トレース像に基づいて心筋組織の虚血領域を特定し、特定した虚血領域をリアルタイム画像C上でセグメントする点、及び、このようにセグメントされた領域から幹細胞等の投与が完了した部分を消去していく点で、第1,第2の実施形態と異なる。
【0095】
第1,第2の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0096】
[画像処理部]
本実施形態に係るX線診断装置1の全体構成は、図1に示したものと同様である。但し、画像処理部17は、図6に示した画像抽出部100、補正部101、画像生成部102、トレース部103、取得部104、及び染影領域特定部105に加え、図13に示すように虚血領域特定部106としての機能を実現する。これら虚血領域特定部106に関しても、プロセッサによって画像処理部17が有するメモリ等に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0097】
また、本実施形態においては、図14に示す流れで画像処理が行われる。
【0098】
虚血領域特定部106は、画像記憶部16に記憶された心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bに基づき、被検体Pの心筋組織の虚血領域を特定する。具体的には、虚血領域特定部106は、図15に示すように第2の実施形態にて説明した手順で画像生成部102により生成される合成トレース像において、心筋組織の形状を表す第1のトレース像と左心室の形状を表す第2のトレース像とで囲まれた領域(図中の斜線部分)を、心筋組織の虚血領域とみなす。
【0099】
なお、本実施形態における画像生成部102は、図15に示すように第1のトレース像及び第2のトレース像の合成トレース像を配置するとともに、虚血領域特定部106によって特定された虚血領域をセグメントした画像を生成する。
【0100】
また、取得部104によってリアルタイム画像Cが取得されている間、画像生成部102は、図14(G)に示すように、合成トレース像を取得部104によって取得されるリアルタイム画像C上に配置するとともに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域をセグメントした画像を順次生成する。
【0101】
さらに、被検体Pに対して造影剤が注入されたとき、画像生成部102は、図14(J)に示すように、合成トレース像を取得部104によって取得されるリアルタイム画像C上に配置するとともに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域のうち染影領域特定部105によって特定された染影領域との非重複部分をセグメントした画像を順次生成する。
【0102】
[幹細胞等投与前における動作]
本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、図11のフローチャートに示す処理が実行される。
【0103】
但し、ステップS13にて画像生成部102が第1のトレース像及び第2のトレース像の合成トレース像を1心拍に亘って生成すると、虚血領域特定部106は、これら合成トレース像のそれぞれについて、既述の手法にて虚血領域を特定する。さらに、画像生成部102は、合成トレース像を配置するとともに当該合成トレース像に基づいて特定された虚血領域をセグメントした画像を、1心拍に亘る合成トレース像のそれぞれについて生成する。虚血領域は、例えばリアルタイム画像Cに含まれる他の領域と彩色やパターンを異ならせることでセグメントすればよい。
【0104】
ステップS13の後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された画像を表示部14に表示させ(ステップS14)、一連の処理が終了する。ステップS14においては、画像生成部102によって生成された1心拍分の画像の全てあるいは一部を表示部14に静止画として表示させてもよいし、これら1心拍分の画像を所定のフレームレートにて動画として表示させてもよい。また、このような表示態様の操作者による選択を入力部13によって受け付け、その選択に従って画像を表示するようにしてもよい。このように表示される画像を参照すれば、心筋組織の虚血領域を容易に把握できる。
【0105】
[幹細胞等投与時における動作]
本実施形態においては、リアルタイム画像Cの撮影が開始されたとき、画像処理部17の各部やシステム制御部12は、図16のフローチャートに示す処理を実行する。なお、この処理と並行して、染影領域特定部105が第2の実施形態にて説明した染影領域を特定するための処理を実行し、リアルタイム画像Cに描出される染影領域を特定する。
【0106】
図16に示すフローチャートにおいては、先ず第2の実施形態にて説明したように取得部104が画像記憶部16に記憶された最新のリアルタイム画像Cを取得し(ステップS21)、画像生成部102がカテーテルから幹細胞等を投与し終えた領域が有るか否かを判定する(ステップS22)。
【0107】
カテーテルから幹細胞等を未投与の段階では、染影領域特定部105によって特定された染影領域が無いことになる(ステップS22のNo)。この場合、画像生成部102は、図14(G)に示すように、ステップS13にて生成した所定の合成トレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域をセグメントした画像を生成する(ステップS23a)。なお、この処理においては、ステップS13にて生成した1心拍分の合成トレース像から任意の1つを選定し、選定した合成トレース像をリアルタイム画像C上に配置するとともに、当該合成トレース像を元に特定された虚血領域をセグメントすればよい。選定される合成トレース像は、例えば医師等が当該フローチャートに示す処理を開始する前に予め指定しておく。あるいは、1心拍分の合成トレース像から特定の心位相に対応するものが画像生成部102によって自動的に選定されるようにしてもよい。また、虚血領域は、例えばリアルタイム画像Cに含まれる他の領域と彩色やパターンを異ならせることでセグメントする。あるいは、虚血領域は、同領域の形状を示す線分をリアルタイム画像C上に配置する等してセグメントされてもよい。
【0108】
ステップS23aの後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。その後、ステップS21に戻り、次に撮影されて画像記憶部16に記憶されるリアルタイム画像Cを対象とし、ステップS21,S22,S23a,S24の処理が実行される。
【0109】
このようにステップS21,S22,S23a,S24の処理が繰り返されると、図14(G)に示すような画像が表示部14にライブ表示される。
【0110】
やがて、カテーテルにより被検体Pの体内に幹細胞等が投与されると、既述の如く当該幹細胞等に混ぜられた造影剤による染影領域が染影領域特定部105によって特定される。
【0111】
染影領域が特定された後においては、ステップS22にて幹細胞等を注入し終えた領域が有ると判定される(ステップS22のYes)。この場合、画像生成部102は、図14(J)に示すように、ステップS13にて生成した合成トレース像を直前のステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域のうち染影領域特定部105によって特定された染影領域と重複しない部分をセグメントした画像を生成する(ステップS25a)。なお、ここで用いる合成トレース像は、ステップS23aの場合と同様の手法で選定すればよい。また、虚血領域と染影領域との非重複部分は、例えばリアルタイム画像Cに含まれる他の領域と彩色やパターンを異ならせることでセグメントする。あるいは、当該非重複部分は、同領域の形状を示す線分をリアルタイム画像C上に配置する等してセグメントされてもよい。
【0112】
図14(J)から分かるように、ステップS25aを経ると、幹細胞等を投与する前にセグメントされていた領域から染影領域すなわち幹細胞等を投与済みの領域が消去される形となる。
【0113】
ステップS25aの後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。
【0114】
一旦肝細胞等が投与された後には、ステップS21、S22、S25a、S24の順で、これらの処理が繰り返し実行される。その結果、図14(J)に示すような画像が表示部14にライブ表示される。
【0115】
なお、当該フローチャートに示す処理が開始された後、複数回に亘って幹細胞等が注入されたならば、各回の注入に対応する染影領域が染影領域特定部105によって特定される。この場合のステップS25aにおいて、画像生成部102は、虚血領域のうち各回の染影領域のいずれとも重複しない部分をセグメントした画像を生成する。
【0116】
ここで、ステップS23a,S25aにてリアルタイム画像Cとの合成に用いる合成トレース像は、ステップS23a,S25aの処理が実行される度に異ならせてもよい。例えば、合成に用いるリアルタイム画像Cの撮影時における被検体Pの心臓の心位相と、合成トレース像の生成元である心筋灌流画像及び左心室造影画像に対応する心位相とが一致するように、当該リアルタイム画像Cとの合成に用いる合成トレース像を選定する。このようにすれば、表示部14にライブ表示される画像中の合成トレース像及び虚血領域が、実際の被検体Pの心位相に応じて脈動することになる。また、この場合において、表示部14に表示させる画像のフレームレートを下げ、特定の心位相に対応する合成画像のみを順次表示させるようにしてもよい。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係るX線診断装置1は、第1のトレース像及び第2のトレース像の合成トレース像が配置された画像やリアルタイム画像C上で、被検体Pの心筋組織の虚血領域をセグメントした画像を生成し、生成した画像を表示部14に表示する。この画像を参照すれば、上記虚血領域を容易に把握することができる。
【0118】
また、本実施形態に係るX線診断装置1は、被検体Pの体内に挿入されたカテーテルから幹細胞等が投与された際、上記虚血領域であって幹細胞等が投与された領域との非重複部分をセグメントした画像を生成し、表示部14に表示する。この画像を参照すれば、虚血領域であって幹細胞等が未投与の部分を容易に把握することができる。
【0119】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態においては、X線診断装置1にて撮影された心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bが画像記憶部16に記憶されているとした。
【0120】
しかしながら、心筋組織の虚血・梗塞領域を特定するにあたっては、必ずしもX線診断装置1にて撮影された心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bを用いる必要はない。
【0121】
第1〜第3の実施形態の構成において、心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bに代えてX線診断装置以外のモダリティ、例えばX線CT(Computed Tomography)装置、SPECT装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等にて撮影された画像を用いてもよい。
【0122】
例えば第1〜第3の実施形態にて開示した構成においてこれらX線診断装置以外のモダリティにて撮影された画像を用いる場合には、X線診断装置1にて撮影されるとした心筋灌流画像群A及び左心室造影画像群Bに代えて、これらのモダリティにて撮影された心筋灌流画像群A´(第1の画像)及び左心室造影画像群B´(第2の画像)を画像記憶部16に記憶しておく。
【0123】
そしてステップS2において、画像抽出部100は、心筋灌流画像群A´から被検体Pの心筋組織がよく染影された1心拍分の画像群を抽出する。また、ステップS3において、画像抽出部100は、左心室造影画像群B´から被検体Pの左心室がよく染影された1心拍分の画像群を抽出する。本実施形態においては、ステップS2にて抽出される心筋灌流画像群を第1の画像群と称し、ステップS3にて抽出される左心室造影画像群を第2の画像群と称す。
【0124】
これら第1の画像群及び第2の画像群を用いる処理の流れは、第1〜第3の実施形態にて説明した処理の流れと同じである。
【0125】
すなわち、第1の実施形態においては、補正部101がこれら第1,第2の画像群に含まれる各画像に対して各種の補正を施し(ステップS4)、画像生成部102が補正後の第1の画像群に含まれる各画像と、補正後の第2の画像群に含まれる各画像とを合成し、図3(C)に示したような合成画像を生成する(ステップS5)。その後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS6)。
【0126】
また、第2の実施形態においては、補正部101がこれら第1,第2の画像群に含まれる各画像に対して各種の補正を施し(ステップS4)、トレース部103が上記補正後の第1の画像群に含まれる各画像について、それらの画像に描出された心筋組織の形状をトレースした第1のトレース像を生成する(ステップS11)。さらに、トレース部103が上記補正後の第2の画像群に含まれる各画像について、それらの画像に描出された左心室の形状をトレースした第2のトレース像を生成する(ステップS12)。ステップS11,S12におけるトレースが第1,第2の画像群に含まれる全ての画像について完了すると、画像生成部102が各第1のトレース像と各第2のトレース像とを合成するとともに、合成後のトレース像を配置した画像を生成する(ステップS13)。その後、システム制御部12が画像生成部102によって生成された画像を表示部14に表示させる(ステップS14)。
【0127】
さらに、幹細胞等投与時においては、取得部104が画像記憶部16に記憶された最新のリアルタイム画像Cを取得し(ステップS21)、画像生成部102がカテーテルから幹細胞等を投与し終えた領域が有るか否かを判定する(ステップS22)。幹細胞等を投与し終えた領域が無いならば(ステップS22のNo)、画像生成部102が、ステップS13にて生成した合成トレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置した画像を生成し(ステップS23)、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。一方、幹細胞等を投与し終えた領域が有るならば(ステップS22のYes)、画像生成部102は、ステップS13にて生成した合成トレース像を直前のステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置するとともに染影領域特定部105によって特定された染影領域をセグメントした画像を生成し(ステップS25)、システム制御部12が画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。
【0128】
また第3の実施形態においては、幹細胞等投与時において画像生成部102がカテーテルから幹細胞等を投与し終えた領域が無いと判定した場合に(ステップS22のNo)、画像生成部102が、ステップS13にて生成した所定の合成トレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域をセグメントした画像を生成する(ステップS23a)。システム制御部12は、このように画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。一方、幹細胞等を投与し終えた領域が有るならば(ステップS22のYes)、画像生成部102は、ステップS13にて生成した合成トレース像を直前のステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域のうち染影領域特定部105によって特定された染影領域と重複しない部分をセグメントした画像を生成する(ステップS25a)。システム制御部12は、このように画像生成部102によって生成された合成画像を表示部14に表示させる(ステップS24)。
【0129】
なお、第2,第3の実施形態に関する上述の各変形例において、次のような構成を採用することも可能である。
【0130】
すなわち、トレース部103が第1の画像群及び第2の画像群に基づいて各心位相における虚血領域をトレースした第3のトレース像を生成する。第3のトレース像は、例えば第1のトレース像と第2のトレース像で囲まれる領域を虚血領域とみなしてトレースすることにより生成すればよい。また、第3のトレース像は、第1の画像群及び第2の画像群に含まれる心位相が同一の画像同士を第1の実施形態のように合成した画像から特定される虚血領域をトレースすることにより生成してもよい。
【0131】
そして第2の実施形態の場合には、ステップS23において、画像生成部102が第3のトレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置した画像を生成する。また、ステップS25において、画像生成部102が第3のトレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置するとともに染影領域特定部105によって特定された染影領域をセグメントした画像を生成する。
【0132】
第3の実施形態の場合には、ステップS23aにおいて、画像生成部102が第3のトレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域をセグメントした画像を生成する。また、ステップS25aにおいて、画像生成部102が第3のトレース像をステップS21にて取得したリアルタイム画像C上に配置し、さらに虚血領域特定部106によって特定された虚血領域のうち染影領域特定部105によって特定された染影領域と重複しない部分をセグメントした画像を生成する。
【0133】
以上説明したようにX線診断装置以外のモダリティにて撮影された心筋灌流画像群A´及び左心室造影画像群B´を用いる場合であっても、第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0134】
(変形例)
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0135】
(1)上記各実施形態では、画像処理部17や画像記憶部16等の画像処理に関わる構成要素がX線診断装置1に組み込まれている場合を例示した。しかしながら、各実施形態にて説明した画像処理は、X線診断装置1とは別途の画像処理装置にて実現されてもよい。
【0136】
(2)上記各実施形態で画像処理に用いる心筋灌流画像は、背景差分により心筋組織ではない部分を除去したものであってもよい。この場合、例えば冠状動脈に造影剤を注入する直前に撮影されたX線透過画像と、その後に順次撮影される染影領域が描出されたX線透過画像との差分画像を生成し、これら差分画像にて心筋灌流画像群を構成すればよい。また、心筋灌流画像群に含まれる各画像は、左冠状動脈から造影剤を注入して得た画像と、右冠状動脈から造影剤を注入して得た画像とを組み合わせたものであってもよい。
【0137】
(3)上記各実施形態においては左心室造影画像を画像処理に用いるとした。しかしながら、左心室造影画像に加え、左心房、右心室、右心房をそれぞれ造影して得られる画像を組み合わせて画像処理に用いてもよい。この場合、例えば第1の実施形態においてはこれら4種の心内腔造影画像と心筋灌流画像との合成画像を生成すればよい。また、第2の実施形態においてはこれら4種の心内腔造影画像に基づき左心室、左心房、右心室、右心房のトレース像を生成し、これらと心筋組織のトレース像とを合成すればよい。また、第3の実施形態においては左心室、左心房、右心室、右心房のトレース像と、心筋組織のトレース像とで囲まれる領域を虚血領域とみなせばよい。
【0138】
(4)上記各実施形態では、画像抽出部100が心筋灌流画像群及び左心室造影画像群から1心拍分の画像を抽出するとした。しかしながら、各画像群から1枚ずつ第1のX線透過画像及び第2のX線透過画像(あるいは第1の画像及び第2の画像)を抽出してもよい。この場合、これら1枚ずつの第1のX線透過画像及び第2のX線透過画像(あるいは第1の画像及び第2の画像)を用いて合成画像やトレース像の生成を行えばよい。
【0139】
(5)上記各実施形態では、単一の方向から撮影した心筋灌流画像及び左心室造影画像を用いて画像処理を行う場合を例示した。しかしながら、バイプレーンシステム等の多方向からの画像収集が可能な構成をX線診断装置が備える場合には、それぞれの方向から撮影された心筋灌流画像及び左心室造影画像を用いて上記各実施形態にて説明した画像処理を行えばよい。
【0140】
(6)第2〜第4の実施形態では、被検体Pの体内にカテーテルを挿入し、このカテーテルを虚血領域に送り込み、その先端から幹細胞等を投与する場合を想定した。しかしながら、これら実施形態にて開示した構成は、他の手法にて虚血領域に幹細胞等を投与する場合においても有用である。他の手法としては、例えば血管を経由させるのではなく、被検体Pの体表に小さな穴を開け、この穴に管を挿し、この管を通じて被検体Pの心臓表面から幹細胞等を送り込む手法等がある。
【0141】
(7)上記各実施形態では、画像処理部17のプロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、各部100〜106等の機能を実現するとした。しかしながら、これに限らず上記コンピュータプログラムを所定のネットワークからX線診断装置1にダウンロードしてもよいし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをX線診断装置1にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROMやUSBメモリ等を利用でき、かつX線診断装置1に内蔵あるいは接続されたデバイスが読み取り可能な記録媒体であれば、その形態はどのようなものであってもよい。また、このように予めインストールやダウンロードにより得る機能は、X線診断装置1内部のOS(Operating System)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
A…心筋灌流画像群、B…左心室造影画像群、C…リアルタイム画像、1…X線診断装置、14…表示部、16…画像記憶部、17…画像処理部、100…画像抽出部、101…補正部、102…画像生成部、103…トレース部、104…取得部、105…染影領域特定部、106…虚血領域特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により前記被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を記憶した記憶部と、
この記憶部に記憶された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を合成した画像を生成する画像生成部と、
この画像生成部により生成された画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記記憶部には、時系列で撮影された複数の前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像が記憶され、
前記記憶部に記憶された各画像から同一の心位相に対応する前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を抽出する画像抽出部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記画像抽出部により抽出された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を合成した画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により前記被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を記憶した記憶部と、
この記憶部に記憶された前記第1のX線透過画像に描出された心筋組織の形状をトレースした第1のトレース像、及び、前記記憶部に記憶された前記第2のX線透過画像に描出された前記心臓内腔の形状をトレースした第2のトレース像を生成するトレース部と、
このトレース部により生成された前記第1のトレース像及び前記第2のトレース像を合成した画像を生成する画像生成部と、
この画像生成部により生成された画像を所定の表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記記憶部には、時系列で撮影された複数の前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像が記憶され、
前記記憶部に記憶された各画像から同一の心位相に対応する前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を抽出する画像抽出部をさらに備え、
前記トレース部は、前記画像抽出部により抽出された前記第1のX線透過画像に描出された心筋組織の形状をトレースして前記第1のトレース像を生成し、前記画像抽出部により抽出された前記第2のX線透過画像に描出された前記心臓内腔の形状をトレースして前記第2のトレース像を生成することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
X線透過画像を撮影するX線診断装置により撮影される前記被検体のリアルタイムのX線透過画像を順次取得する取得部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記トレース部により生成された前記第1のトレース像及び前記第2のトレース像を合成するとともに、合成後のトレース像を前記取得部により順次取得されるX線透過画像上に配置した画像を順次生成することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記取得部により取得されるX線透過画像に描出される造影剤によって染影された領域を特定する染影領域特定部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記トレース部により生成された前記第1のトレース像及び前記第2のトレース像を合成し、合成後のトレース像を前記取得部により順次取得されるX線透過画像上に配置するとともに、前記染影領域特定部により特定された領域をセグメントした画像を順次生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により前記被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像に基づき前記心筋組織の虚血領域を特定する虚血領域特定部と、
前記被検体の心臓に関する所定の画像上で、前記虚血領域特定部により特定された虚血領域をセグメントした画像を生成する画像生成部と、
この画像生成部により生成された画像を所定の表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記記憶部に記憶された前記第1のX線透過画像に描出された心筋組織の形状をトレースした第1のトレース像、及び、前記記憶部に記憶された前記第2のX線透過画像に描出された前記心臓内腔の形状をトレースした第2のトレース像を生成するトレース部をさらに備え、
前記虚血領域特定部は、前記トレース部により生成された前記第1のトレース像及び前記第2のトレース像を合成した際に、これら各トレース像によって囲まれる領域を前記虚血領域として特定することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記記憶部には、時系列で撮影された複数の前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像が記憶され、
前記記憶部に記憶された各画像から同一の心位相に対応する前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を抽出する画像抽出部をさらに備え、
前記トレース部は、前記画像抽出部により抽出された前記第1のX線透過画像に描出された心筋組織の形状をトレースして前記第1のトレース像を生成し、前記画像抽出部により抽出された前記第2のX線透過画像に描出された前記心臓内腔の形状をトレースして前記第2のトレース像を生成することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像生成部は、前記トレース部により生成された前記第1のトレース像及び前記第2のトレース像を合成して配置するとともに、前記虚血領域特定部により特定された虚血領域をセグメントした画像を生成することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
X線透過画像を撮影するX線診断装置により撮影される前記被検体のリアルタイムのX線透過画像を順次取得する取得部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記取得部により順次取得されるX線透過画像上で、前記虚血領域特定部により特定された虚血領域をセグメントした画像を順次生成することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記取得部により取得されるX線透過画像に描出される造影剤によって染影された領域を特定する染影領域特定部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記取得部により順次取得されるX線透過画像上で、前記虚血領域特定部により特定された虚血領域であって前記染影領域特定部により特定された領域との非重複部分をセグメントした画像を順次生成することを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
X線診断装置により撮影される被検体のリアルタイムのX線透過画像を順次取得する取得部と、
造影剤により前記被検体の心筋組織が染影された第1の画像に描出された心筋組織の形状をトレースした第1のトレース像及び造影剤により前記被検体の心臓内腔が染影された第2の画像に描出された前記心臓内腔の形状をトレースした第2のトレース像の合成像、又は、前記第1の画像及び前記第2の画像の合成像から特定される虚血領域をトレースした第3のトレース像を、前記取得部により順次取得されるX線透過画像上に配置した画像を順次生成する画像生成部と、
この画像生成部により生成された画像を所定の表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
造影剤により被検体の心筋組織が染影された第1のX線透過画像、及び、造影剤により前記被検体の心臓内腔が染影された第2のX線透過画像を撮影するX線撮影部と、
このX線撮影部により撮影された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を記憶する記憶部と、
この記憶部に記憶された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を合成した画像を生成する画像生成部と、
この画像生成部により生成された画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とするX線診断装置。
【請求項15】
前記記憶部には、時系列で撮影された複数の前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像が記憶され、
前記記憶部に記憶された各画像から同一の心位相に対応する前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を抽出する画像抽出部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記画像抽出部により抽出された前記第1のX線透過画像及び前記第2のX線透過画像を合成した画像を生成することを特徴とする請求項14に記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−27696(P2013−27696A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139815(P2012−139815)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】