説明

画像処理装置

【課題】 網点領域においても、複写の際の裏写りを良好に除去できるようにする。
【解決手段】 画像データより主要色域を検出する主要色域検出部103と、主要色域における濃度情報のヒストグラムの最大値を基準濃度に設定する基準濃度設定部と、主要色域の濃度情報に基づき、基準濃度より高い所定範囲値の濃度を基準濃度に近づけるための第1の補正値を導出する第1の補正値導出部104と、主要色域の濃度情報に基づき、基準濃度より低い所定範囲値の濃度を基準濃度に近づけるための第2の補正値を導出する第2の補正値導出部105と、第1の補正値および第2の補正値より、階調補正テーブルを導出する補正テーブル導出部106と、階調補正テーブルに基づき、画像データの濃度を補正する補正部107とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取られた画像データを処理する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置による複写の際に、原稿の裏面の画像が透けて印刷媒体に薄く印刷される、所謂、「裏写り」を防止する技術として、例えば、特許文献1が開示されている。
特許文献1は、両面に画像が印刷された原稿の片面を読み取った際に、もう一方の面の画像が透過して読み取られた裏写りを含む画像データを、文字領域と網点領域と非文字・非網点領域に分類すると共に、非文字・非網点領域における低濃度部のスクリーン線数を高くして印刷濃度を低下させることで、裏写りを抑制、除去するという技術である
【特許文献1】特開2005−80152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1では、網点領域について裏写り除去処理が為されないため、網点領域において裏写りが発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、網点領域においても複写の際の裏写りを良好に除去できる画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、読み取られた画像データを処理する画像処理装置であって、上記画像データより主要色域を検出する主要色域検出部と、上記主要色域における濃度情報のヒストグラムの最大値を基準濃度に設定する基準濃度設定部と、上記主要色域の濃度情報に基づき、上記基準濃度より高い所定範囲値の濃度を上記基準濃度に近づけるための第1の補正値を導出する第1の補正値導出部と、上記主要色域の濃度情報に基づき、上記基準濃度より低い所定範囲値の濃度を上記基準濃度に近づけるための第2の補正値を導出する第2の補正値導出部と、上記第1の補正値および上記第2の補正値より、階調補正テーブルを導出する補正テーブル導出部と、上記階調補正テーブルに基づき、前記画像データの濃度を補正する補正部とを備えることを特徴としている。
【0006】
また、別の発明は、読み取られた画像データを処理する画像処理装置であって、上記画像データより主要色域を検出する主要色域検出部と、上記主要色域を有する画素群が背景領域か非背景領域かを判定する背景判定部と、上記主要色域における濃度情報のヒストグラムの最大値を基準濃度に設定する基準濃度設定部と、上記主要色域の濃度情報と上記背景判定部の判定結果に基づき、上記基準濃度より高い所定範囲値の濃度を上記基準濃度に近づけるための第1の補正値を導出する第1の補正値導出部と、上記主要色域の濃度情報と上記背景判定部の判定結果に基づき、上記基準濃度より低い所定範囲値の濃度を上記基準濃度に近づけるための第2の補正値を導出する第2の補正値導出部と、上記第1の補正値および上記第2の補正値より、階調補正テーブルを導出する補正テーブル導出部と、上記階調補正テーブルに基づき、上記画像データの濃度を補正する補正部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主要色域において、基準濃度より低い所定範囲値の濃度を基準濃度に近づける補正に加え、基準濃度より高い所定範囲値の濃度を基準濃度に近づける補正を行うので、白地領域や濃度階調領域における裏写りは元より、網点領域における裏写りも良好に除去することができる。
【0008】
また別の発明によれば、主要色域が背景であるか否かを判定するようにしたので、背景以外の領域についても、画質を劣化させず階調性を保持した状態で裏写りを除去することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1〜図11に基づいて、本発明による画像形成装置の実施形態を説明する。
図2は、本発明が適用された複合機(カラー複合機)の外観を示す図、図3は、複合機の構成を示すブロック図である。
複合機は、図2に示すように、本発明に係る画像処理装置100と、画像読取部としてのスキャナ200と、画像形成部としてのプリンタ400と、ユーザインターフェースとしてのオペレーションパネル300とで構成されている。
【0010】
スキャナ200は、図示しない原稿台、光源、光電変換素子、信号処理部等を備え、原稿台にセットされた原稿に光源からの光を照射し、その反射光を光電変換素子にて受光して画像データを取得すると共に、信号処理部において、この画像データをA/D変換等の処理を施すと共に、RGB値でなる画像データに変換する。
【0011】
画像処理装置100は、スキャナ200からの画像データを入力し、後述する裏写り除去の処理を行い、処理された画像データをプリンタ400に出力する。
【0012】
プリンタ400は、例えば、電子写真方式のプリンタが用いられ、画像処理装置100より入力された画像データに応じたトナー像を形成して紙面に定着させることで、画像を形成する。
【0013】
オペレーションパネル300は、テンキー、選択キー、読み取り開始ボタン等を備えた操作パネルと、液晶等による表示パネルとで構成され、ユーザーのキー操作により、原稿の読み取り指示、パラメータの設定、画像処理装置100における各種情報の表示等を行う。
【0014】
また、画像処理装置100は、図3に示すように、CPU304と、このCPU304に接続された、スキャナI/F301、プリンタI/F305、RAM302、ROM303等で構成されている。さらに、CPU304には、オペレーションパネル300が接続され、スキャナI/F301には、スキャナ200が接続され、プリンタI/F305には、プリンタ400が接続されている。
【0015】
スキャナI/F301は、スキャナ200との接続用インターフェースであり、スキャナ200から送られる画像データを画像処理装置100内に取り込む。
プリンタI/F305は、プリンタ400との接続用インターフェースであり、画像処理装置100において処理された画像データをプリンタ400へ転送する。
RAM302は、揮発性のメモリで、スキャナ200から取り込んだ画像データや、制御時の演算データ等を一時的に保存する。
ROM303は、読み込み専用のメモリであり、後述する裏写り除去処理のための各種制御プログラムを格納する。ROM303に格納された制御プログラムをCPU304がRAM302上に展開して制御プログラムを実行することにより、画像処理装置100による裏写り除去処理が行われる。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1による画像処理装置100の機能ブロック図である。
本実施例の画像処理装置100は、画像記憶部101、色域別ヒストグラム作成部102、主要色域検出部103、裏写り補正値導出部104、網点領域裏写り補正値導出部105、補正テーブル導出部106、補正部107等を備える。これらは、CPU304がRAM302上に展開された画像処理用の制御プログラムを実行することにより実現される機能部である。
【0017】
画像記憶部101は、スキャナ200よりスキャナI/F301を介して取得したRGB値でなる画像データをRGB色空間からCIEL*a*b*色空間に変換する機能部である。変換された画像データは、RAM302に保存されると共に、色域別ヒストグラム作成部102と補正部107に出力される。このCIEL*a*b*色空間において、Lは明度を表し、aとbは色度を表す。
尚、画像データの変換には、上述のCIEL*a*b*色空間に限らず、YCbCrやHLS等、他の色空間を用いることができる。要は、濃度情報(例えば、明度、輝度、濃度)と色彩情報(例えば、明度、彩度、色相)とが独立して取得できる形式であれば良い。
【0018】
色域別ヒストグラム作成部102は、CIEL*a*b*色空間のa*b*色度を参照して、画像記憶部101より入力された画像データから、各色域における明度ヒストグラムを作成する機能部である。作成された明度ヒストグラムの情報は、主要色域検出部103、裏写り補正値導出部104、網点領域裏写り補正値導出部105に出力される。
【0019】
主要色域検出部103は、色域別ヒストグラム作成部102より入力された色域別ヒストグラムを参照して、画像中で最も多く使用されている色域を主要色域として検出する機能部である。その検出結果(主要色域情報)は、裏写り補正値導出部104と網点領域裏写り補正値導出部105に出力される。
【0020】
裏写り補正値導出部104は、色域別ヒストグラム作成部102より入力された明度ヒストグラムを参照して、主要色域検出部103より入力された主要色域における明度ヒストグラムから、白地領域や濃度階調領域における裏写りを除去するための補正値を導出する機能部である。導出された補正値は、補正テーブル導出部106に出力される。
【0021】
網点領域裏写り補正値導出部105は、色域別ヒストグラム作成部102より入力された明度ヒストグラムを参照して、主要色域検出部103より入力された主要色域における明度ヒストグラムから、網点領域における裏写りを除去するための補正値を導出する機能部である。導出された補正値は、補正テーブル導出部106に出力される。
【0022】
補正テーブル導出部106は、裏写り補正値導出部104より入力された白地領域や濃度階調領域の裏写り補正値と、網点領域裏写り補正値導出部105より入力された網点領域の裏写り補正値とに基づき、裏写り除去のための明度値変換テーブルを作成する機能部である。作成された明度値変換テーブルは、補正部107に出力される。
【0023】
補正部107は、補正テーブル導出部106により入力された明度値変換テーブルに基づいて、画像記憶部101から入力された画像データの明度値を補正すると共に、補正された画像データを、画像形成部(プリンタ400)の色空間(例えば、CMYK色空間)に変換する機能部である。CMYK色空間に変換された画像データは、プリンタI/F305を介してプリンタ400に出力される。
【0024】
次に、上述した各機能部で構成される画像処理装置100の動作を、図6〜図8を用い、図4に基づいて説明する。図4は、実施例1による画像処理装置100の動作を示すフローチャート、図6は、網点領域における画素毎の明度と裏写り除去の例を示す図、図7は、明度ヒストグラムの例と裏写り補正値および網点領域裏写り補正値との関連を示す図、図8は、明度補正関数の一例を示す図である。
【0025】
先ず、図4のS101では、スキャナ200により、カラー原稿の読み取りが行われ、取得した画像データの色情報より、RGB値によるビットマップデータが生成される。
【0026】
次に、S102では、スキャナ200から入力された画像データ(RGB値によるビットマップデータ)がCIEL*a*b*ビットマップデータに変換され、画像記憶部101(RAM302)に保存される。
ここで、CIEL*a*b*色空間では、Lは明るさを0〜100%値で表し、0%を黒、100%を白とする。aは緑とマゼンタの混合比を示し、マイナス値では、緑が強く、プラス値では、マゼンタが強くなる。また、bは青と黄色の混合比を示し、マイナス値では、青が強く、プラス値では、黄色が強くなる。
【0027】
次に、S103では、色域別ヒストグラム作成部102において、画像記憶部101に保存されている画像データ(CIEL*a*b*ビットマップデータ)の明度値に基づき、各色域の明度ヒストグラムが作成される。
ここで、色域とは、図5に示すように、CIEL*a*b*表色系の色度a軸とb軸が直交する平面空間において、a軸とb軸における明度の最小値から最大値を所定数(M)に分割した(M×M)個の各領域を指し、各々が類似色領域となる。
【0028】
次に、S104では、主要色域検出部103において、S103にて作成された色域別明度ヒストグラムを参照し、画像を構成する主要な色域が検出される。
本実施例では、色域毎にヒストグラムの度数(画素数)の総数が計算され、総数が最も多い色域が主要色域として検出される。従って、検出された主要色域は、原稿画像中の広範囲で用いられている色域を表している。
【0029】
次に、S105では、裏写り補正値導出部104において、S104で検出された主要色域より、白地領域や濃度階調領域における裏写りを補正するための裏写り補正値が導出される。補正値の導出に当たり、S103で作成された色域別ヒストグラムが参照される。
この裏写り補正値の導出は、白地部の裏写りを除去するために用いられる手法であり、この手法が、以下のように、裏写りの明度を背景の明度に均すための補正に応用されている。
【0030】
図7(a)は、主要色域における明度ヒストグラムの例を示し、縦軸は画像数を表し、横軸は明度を表している。明度0は黒、明度100は白である。図7(a)に示すように、明度ヒストグラムの最大値をとる明度が主要色域の基準明度Lとされ、当基準明度Lを基準とした所定の閾値THが設定される。(例えば、TH=10)。
裏写りは、原稿読み取りの際に、裏面の画像が透過したものであるため、得られる画像データの明度は、通常、裏写りの無い本来の明度よりも幾分低下している。従って、裏写りは、基準明度LからL−THの間に存在するものとし、裏写り補正値L=L−THが、裏写りを基準明度Lsに均すための明度値として導出される。
尚、本実施例では、閾値THを固定値としたが、ヒストグラムのピーク値とその割合から閾値THを算出しても良く、また、ユーザーが適宜、オペレーションパネル300より閾値THを入力するようにしても良い。
【0031】
次に、S106では、網点領域裏写り補正値導出部105において、S104で検出された主要色域より、網点領域の裏写りを補正する網点領域裏写り補正値が導出される。この補正値の導出に当たり、S103で作成された色域別ヒストグラムが参照される。
【0032】
図6(a)は、原稿の網点領域を読み取った時の各画素の明度を表し、図示のように、明度の低い画素A1、明度の高い画素A3、その中間明度の画素A2が存在している。これは、網点領域の中間調を面積階調で表現するために、網点領域を現像剤(例えばトナー)が多い濃い(明度の低い)部分と、現像剤が少ない(明度は高い)部分とで構成したためである。
図6(b)は、網点領域に、「L」の反転文字が裏写りした画素群を示し、図6(a)と同様に、明度の低い画素A1と、明度の高い画素A3と、その中間明度の画素A2とが存在し、且つ、裏写り部分については、本来、明度の低い画素A1、中間明度の画素A2、明度の高い画素A3となる各画素は、裏写りにより、それぞれ相対的に明度が低下した画素B1、B2、B3となる。
【0033】
ここで、図6(b)の場合、S105のように、裏写り補正値Lに基づいて、基準明度Lsより低い明度を基準明度Lsに均すだけでは、基準明度Lsより明度の高い網点領域の裏写りを除去することはできない。例えば、基準明度Lsを網点の明度の低い画素A1の明度(LA1)とした場合、図6(c)に示すように、画素B1の裏写りは除去されるが、画素B2、B3の裏写りは除去されずに残る。
【0034】
このことを考慮し、S106では、網点領域においては、主要色域の基準明度Lより高い明度をLに均すように補正している。
すなわち、S106では、図7(b)に示すように、基準明度Lを基準とした所定の閾値TH(例えば、TH=8)が設定され、基準明度Lより高い網点の明度を均す明度値L=L+THが網点領域裏写り補正値として導出される。
図6(d)は、網点領域裏写り補正値にて補正された場合の各画素の明度を示し、本図によれば、画素A1、B1、A2、B2は、全て画素A1の明度(LA1)に均され、裏写り部分全体が略一様な明度に補正されている。
【0035】
尚、閾値THの設定によっては、図6(d)のように、明度が高い画素A3の裏写り画素B3が補正されない場合も生じ得るが、上述のように、中間明度である画素A2の明度が画素A1の明度に補正されることで、視認レベルでは、裏写りによる画素B3は目立たなくなり、裏写りが大幅に軽減される。
また、閾値THの値をさらに大きくして裏写り除去のレベルを高める(すなわち、補正対象となる明度範囲を広くする)ことで、裏写り画素B3の明度が補正されるようにしても良い。但し、裏写り除去レベルを高めるに連れて、画像の階調性は失われていくため、裏写りと階調性との兼ね合いで、閾値THが設定されることが望ましい。
尚、本実施例では、閾値THを固定値としたが、ヒストグラムのピーク値とその割合から閾値THを算出しても良く、また、ユーザーが適宜、オペレーションパネル300より閾値THを入力するようにしても良い。
【0036】
次に、S107では、補正テーブル導出部106において、S105で導出された裏写り補正値Lと、S106で導出された網点領域裏写り補正値Lに基づき、画像データに対する明度値補正テーブルが導出される。
【0037】
図8において、横軸は入力明度値を示し、縦軸は出力明度値を示す。各軸の0は黒、100は白である。図示のように、入力明度LinがL≦Lin<Lの時は、出力明度値Loutが一様に基準明度Lに変換され、且つ、この急峻な変換により生じる階調の不連続性(階調飛び)を避けるため、Lout=Linの直線とb点(L,L)が、また、Lout=Linの直線とc点(L,L)が連続的に、且つ滑らかに繋がるような明度補正関数が導出される。
【0038】
すなわち、S107では、0≦Lin<L−THの領域、およびL+TH≦Lin≦100の領域は、Lout=Linの直線とし、L−TH≦Lin<Lの領域は、a点(L−TH,L−TH)とb点(L,L)を通り、且つ、Lout=Linの直線との残差二乗和が最小となる三次曲線とし、L≦Lin<L+THの領域は、c点(L,L)とd点(L+TH,L+TH)を通り、且つ、Lout=Linの直線との残差二乗和が最小となる三次曲線とし、L≦Lin<Lの領域は、Lout=Lの直線とするような明度補正関数が導出される。
そして、導出された明度補正関数の入出力関係に基づき、明度値補正テーブルが作成される。
【0039】
次に、S108では、補正部107において、S107で作成され明度値補正テーブルに基づき、画像記憶部101に保存されている画像データの明度値が補正される。この明度補正により、画像中の主要色域における裏写りが除去された画像データが得られる。
【0040】
次に、S109では、補正部107において、裏写り除去のための明度補正が為された画像データ(RGB値)が、プリンタ400における出力色空間(例えば、CMYK)に変換され、プリンタ400に出力される。
プリンタ400では、この入力画像データの信号に基づき、印刷用紙などの媒体に画像が形成され、プリント出力される。
【0041】
以上、実施例1によれば、主要色域において、基準明度より低い所定範囲値の明度を基準明度に均す補正を行うと共に、基準明度より高い所定範囲値の明度を基準明度に均す補正を行うので、白地領域や濃度階調領域は元より、網点領域の裏写りも良好に除去することができる。
【実施例2】
【0042】
図9は、実施例2による画像処理装置100の機能ブロック図である。
本実施例の画像処理装置100は、画像記憶部501、色域別ヒストグラム作成部502、主要色域検出部503、裏写り補正値導出部504、網点領域裏写り補正値導出部505、補正テーブル導出部506、補正部507、背景判定部508等を備える。これらは、実施例1と同様に、CPU304がRAM302上に展開された画像処理用の制御プログラムを実行することにより実現される機能部である。
尚、上記機能部の内、画像記憶部501、補正テーブル導出部506、補正部507については、実施例1(図1)の画像記憶部101、補正テーブル導出部106、補正部107と同様であるため、説明は省略する。
【0043】
色域別ヒストグラム作成部502は、画像記憶部501より入力された画像データから、CIEL*a*b*色空間のa*b*色度を参照し、各色域における明度ヒストグラムを作成する機能部であり、作成された明度ヒストグラムの情報は、主要色域検出部503、裏写り補正値導出部504、網点領域裏写り補正値導出部505、および背景判定部508に出力される。
【0044】
主要色域検出部503は、色域別ヒストグラム作成部502より入力された色域別ヒストグラムを参照して、画像中で最も多く使用されている色域を主要色域として検出する機能部であり、その検出結果は、裏写り補正値導出部504、網点領域裏写り補正値導出部505、および背景判定部508に出力される
【0045】
背景判定部508は、色域別ヒストグラム作成部502より入力された色域別ヒストグラムを参照して、主要色域検出部503より入力された主要色域の画素が背景領域か非背景領域かを判定する機能部であり、その判定結果は、裏写り補正値導出部504と網点領域裏写り補正値導出部505に出力される。
【0046】
裏写り補正値導出部504は、色域別ヒストグラム作成部502より入力された明度ヒストグラムを参照し、主要色域検出部503より入力された主要色域における明度ヒストグラムより、背景判定部508からの判定結果(背景領域か非背景領域か)に基づいて、白地領域や濃度階調領域における裏写りを除去するための補正値を導出する機能部であり、導出された補正値は、補正テーブル導出部506に出力される。
【0047】
網点領域裏写り補正値導出部505は、色域別ヒストグラム作成部502より入力された明度ヒストグラムを参照し、主要色域検出部503より入力された主要色域における明度ヒストグラムより、背景判定部508からの判定結果に基づいて、網点領域の裏写りを除去するための補正値を導出する機能部であり、導出された補正値は、補正テーブル導出部506に出力される。
【0048】
次に、上述した各機能部で構成される画像処理装置100の動作を、図11を用い、図10に基づいて説明する。図10は、実施例2による画像処理装置100の動作を示すフローチャート、図11は、明度ヒストグラムの例と背景判定のための閾値との関連を示す図である。
【0049】
図10のS201〜S204の処理については、実施例1(図4)に示すS101〜S104の処理と同様であり、詳細説明は省略する。
【0050】
次に、S205では、背景判定部508において、S203で作成された色域別ヒストグラムを参照して、S204で検出された主要色域について、主要色域が背景領域であるか否かの判定が行われる。尚、背景領域とは、画像中に写真や文字等が存在せず、色度や明度が略一様な領域を言う。
【0051】
S205では、図11に示すように、主要色域における明度ヒストグラムの最大値をとる明度を基準明度Lとした所定の閾値THが設定され(例えば、TH=10)、基準明度Lを基準に、高明度側(明度0側)と低明度側(明度100側)に閾値THの範囲内の明度値を持つ画素の数がカウントされる。この画素数の全画素数に対する割合が所定値(例えば、30%)以上であると、背景領域と判定され、所定値未満であると、非背景領域と判定される。
【0052】
次に、S206では、S205での判定結果が参照される。主要色域の画像が背景領域である場合は、処理がS207に移行され、対象画像が非背景領域である場合は、S209に移行される。
【0053】
背景領域の場合、S207では、裏写り補正値導出部504において、裏写り補正値(L)が導出されると共に、次のS208では、網点領域裏写り補正値導出部505の網点領域裏写り補正値(L)が導出される。
裏写り補正値(L)の導出と網点領域裏写り補正値(L)の導出については、実施例1(図4)のS105、S106と同様であり、詳細説明は省略する
【0054】
非背景領域の場合、S209では、裏写り補正値導出部504において、非背景領域の裏写り補正値Lが導出される。
すなわち、ここでは、S207で用いた閾値と等値の閾値THと、所定の重み係数Wを用い、裏写り補正値L=L−W×THが導出される。Lは、明度ヒストグラムにおける主要色域の基準明度である。重み係数Wは、0〜1.0の範囲で設定可能であり、重み係数Wが小さくなるに連れて、白地領域や濃度階調領域における裏写り除去の強度が抑制され、階調性を保持し易くなる。
尚、本実施例では、重み係数Wを固定値の0.3としたが、ヒストグラムのピーク値とその割合から重み係数Wを算出しても良く、また、ユーザーが適宜、オペレーションパネル300より重み係数Wを入力するようにしても良い。
【0055】
次に、S210では、網点領域裏写り補正値導出部505において、非背景領域の網点領域裏写り補正値Lが導出される。
すなわち、ここでは、S208で用いた閾値と等値の閾値THと、所定の重み係数W(0.0〜1.0)を用い、裏写り補正値L=L+W×THが導出される。
重み係数Wが小さくなるに連れて、網点領域における裏写り除去の強度が抑制され、階調性を保持し易くなる。
尚、本実施例では、重み係数Wを固定値の0.3としたが、ヒストグラムのピーク値とその割合から重み係数Wを算出しても良く、また、ユーザーが適宜、オペレーションパネル300より重み係数Wを入力するようにしても良い。
【0056】
S211〜S213の処理については、実施例1(図4)S104〜S109と同様であり、詳細説明は省略する。
【0057】
画像中に背景領域が存在せず、写真等の連続階調領域が大半を占める非背景領域の入力画像に対して、実施例1の裏写り補正が為されると、逆に画質(階調性)を劣化させてしまうことがある。
実施例2では、主要色域が背景領域であるか否かを判定し、主要色域が非背景領域である場合は、補正する明度範囲を縮小して、裏写り除去の強度を抑制するようにしたので、背景領域は元より、非背景領域においても、画質を劣化させず階調性を保持した状態で裏写りを除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本実施形態では、本発明の画像処理装置を、カラー複合機に使用した例を説明したが、FAX、コピー機にも使用可能である。
また、表色系としてCIEL*a*b*を用いたが、L*u*v*、YCbCr、HLS等、各種表色系を用いても良い。
また、濃度情報として明度Lを用いたが、輝度Yや濃度を用いても良い。
また、色域を検出する際、色度a,bを用いたが、YCbCr表色系のCbCr値等、他の色度に関する値や、彩度S、色相H、RGB値の最大最小値の差分値等を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1による画像処理装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明が適用された複合機の外観を示す図である。
【図3】本発明が適用された複合機の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例1による画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】Lab表色系の平面空間における色域とa、b色度の関係を示す図である。
【図6】網点領域における画素毎の明度と裏写り除去の例を示す図である。
【図7】明度ヒストグラムの例と裏写り補正値および網点領域裏写り補正値との関連を示す図である。
【図8】明度補正関数の一例を示す図である。
【図9】実施例2による画像処理装置の機能ブロック図である。
【図10】実施例2による画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】明度ヒストグラムの例と背景判定のための閾値との関連を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
100 画像処理装置
103、503 主要色域検出部
104、504 裏写り補正値導出部(第1の補正値導出部)
105、505 網点領域裏写り補正値導出部(第2の補正値導出部)
106、506 補正テーブル導出部
107、507 補正部
200 スキャナ(画像読取部)
508 背景判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取られた画像データを処理する画像処理装置であって、
前記画像データより主要色域を検出する主要色域検出部と、
前記主要色域における濃度情報のヒストグラムの最大値を基準濃度に設定する基準濃度設定部と、
前記主要色域の濃度情報に基づき、前記基準濃度より高い所定範囲値の濃度を前記基準濃度に近づけるための第1の補正値を導出する第1の補正値導出部と、
前記主要色域の濃度情報に基づき、前記基準濃度より低い所定範囲値の濃度を前記基準濃度に近づけるための第2の補正値を導出する第2の補正値導出部と、
前記第1の補正値および前記第2の補正値より、階調補正テーブルを導出する補正テーブル導出部と、
前記階調補正テーブルに基づき、前記画像データの濃度を補正する補正部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
読み取られた画像データを処理する画像処理装置であって、
前記画像データより主要色域を検出する主要色域検出部と、
前記主要色域を有する画素群が背景領域か非背景領域かを判定する背景判定部と、
前記主要色域における濃度情報のヒストグラムの最大値を基準濃度に設定する基準濃度設定部と、
前記主要色域の濃度情報と前記背景判定部の判定結果に基づき、前記基準濃度より高い所定範囲値の濃度を前記基準濃度に近づけるための第1の補正値を導出する第1の補正値導出部と、
前記主要色域の濃度情報と前記背景判定部の判定結果に基づき、前記基準濃度より低い所定範囲値の濃度を前記基準濃度に近づけるための第2の補正値を導出する第2の補正値導出部と、
前記第1の補正値および前記第2の補正値より、階調補正テーブルを導出する補正テーブル導出部と、
前記階調補正テーブルに基づき、前記画像データの濃度を補正する補正部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
非背景領域における所定範囲値を、背景領域における所定範囲値より小さく設定したことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ヒストグラムの最大値を含む画素数の全画素数に対する割合が所定値以上の場合に、背景領域と判定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記主要色域は、画素の色度に基づいた各色域のヒストグラムの内、最大値を有するヒストグラムの色域であることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記濃度情報は、画素の濃度値、または明度値、または輝度値であることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
原稿を読み取り、画像データに変換する画像読取部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6までの何れかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−93684(P2010−93684A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263703(P2008−263703)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】