説明

画像処理装置

【課題】装置内の温度に応じて複数種類の制御形態を切り替え、適切な制御形態にてジョブを実行すること。
【解決手段】測定部により装置内温度Tを測定しその測定結果が第1規定温度T0より高い場合(S101:YES)、第1CPUのみが動作する「通常モード」から、第1CPU及び第2CPUの動作する「負荷分散モード」、又は第2CPUのみが動作する「省電力モード」に動作モードが切り替える(S103、S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特にジョブを実行する際の制御形態を切り替えることが可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャン、コピー、PCプリント、FAX送受信など、画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置において、制御部の制御形態を切り替える機能を備えたものが知られている。例えば、特許文献1の画像処理装置は、高速のCPUを有するメイン制御部と、低速のCPUを有するサブ制御部とを備えており、通常時は、メイン制御部が印刷部等を制御し、サブ制御部が外部機器とのインターフェイスを制御する。そして、省電力モード中はメイン制御部を停止してサブ制御部のみ動作させることで消費電力の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、画像処理装置内の温度が上がることで、装置内に備えられている制御部が正常に動作しない可能性もある。しかしながら、従来では、その様な状況に応じて必ずしも効率の良い制御が行われていなかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、装置内の温度に応じて効率的な制御を行うことが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置であって、前記画像処理装置の装置内の温度を測定する測定部と、前記画像データに対する処理を行う処理部と、前記処理部を制御して前記ジョブを実行すると共に、複数種類の制御形態を切り替え可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定部によって測定した温度に応じて、前記制御形態を切り替える。
【0007】
上記の構成を採用すれば、装置内の温度に応じて複数種類の制御形態を切り替えるため、適切な制御形態にてジョブを実行することが可能である。
【0008】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記制御部は、複数の演算処理素子を有し、前記複数の演算処理素子のうち少なくとも一つの起動状態を変更することにより制御形態を切り替えても良い。
【0009】
上記構成を採用すれば、制御部は、複数の演算素子のうち少なくとも一つの起動状態を変更することにより制御形態を切り替える。例えば、演算素子の起動状態をオフとすることで、消費電力を抑制することが出来る。
【0010】
さらに、本発明の画像形成装置は前記制御部は、互いに発熱量の異なる複数種類の制御形態を切り替え可能であって、前記装置内の温度が高いほど、発熱量の小さい制御形態に切り替えても良い。
【0011】
上記の構成を採用すれば、装置内の温度が高いほど発熱量の小さい制御部に切り替えるので、装置内の温度が高いほど、制御部自身の発熱による温度上昇を抑制することが出来る。
【0012】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記制御部は、互いに発熱量の異なる複数の演算処理素子を有し、前記装置内の温度が高いほど、発熱量の大きい演算処理素子を停止し発熱量の小さい演算処理素子を起動することで前記制御形態を切り替えても良い。
【0013】
上記構成を採用すれば、装置内の温度が高いほど発熱量の大きい演算処理素子は停止され、発熱量の小さい演算処理素子は起動されるため、演算処理素子自身の発熱による温度上昇を抑制することが出来る。
【0014】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記制御部は、前記装置内の温度が高いほど、起動する演算処理素子の数を増やすことで前記制御形態を切り替えても良い。
【0015】
上記構成を採用すれば、装置内の温度が高いほど起動する演算処理素子の数を増やすことで、装置内の温度が高いほど多くの演算処理素子に処理を割り当てることが可能である。従って、各演算処理素子の仕事量が減り、各演算処理素子の自身の発熱を抑制することが可能である。
【0016】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記制御部は、互いに動作可能な耐熱温度の異なる複数の演算処理素子を有し、前記装置内の温度が高いほど、耐熱温度から発熱量を差し引いた許容温度の小さい演算処理素子を停止し当該許容温度の大きい演算処理素子を起動することで前記制御形態を切り替えても良い。
【0017】
上記構成を採用すれば、装置内の温度が高いほど許容温度の小さい演算処理素子を停止して許容温度の大きい演算処理素子で画像処理装置が制御されるため、演算処理素子を安全に動作させることが可能である。
【0018】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記ジョブを受け付ける受付部と、前記装置内の温度が定められている規定温度に達したか否かを判断する判断部と、を備え、前記規定温度は、前記処理部によって処理されるジョブの処理負荷が大きいほど低い温度に定められ、前記制御部は、前記受付部によって受け付けられたジョブを実行する際、前記判断部により装置内の温度が規定温度を超えたと判断したことに応じて、前記制御形態を発熱量の小さい制御形態に切り替えても良い。
【0019】
上記構成を採用すれば、制御部を切り替えるタイミングは規定温度によって定められ、その規定温度はジョブの処理負荷が大きいほど低い温度に定められる。従って、処理負荷が大きい処理が実行される際にはなるべく発熱量の小さい制御形態に切り替えることで、制御部の温度上昇を抑制することが可能である。
【0020】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記処理部は、現像剤を使用してシートに画像データを形成する画像形成部と、画像データを形成したシートに対して熱定着をする熱定着部と、を有し、画像形成部と熱定着部とによりシートに画像を印刷する印刷処理を可能であり、前記制御部は、前記印刷処理が実行される際に、熱定着部によって機内の温度上昇が大きくなる場合は、前記制御形態を発熱量の小さい制御形態に切り替えても良い。
【0021】
上記構成を採用すれば、例えば厚紙シートを印刷する場合や、特定の枚数のシートに対して連続印刷をする場合は、熱定着部による画像処理装置内の温度上昇が大きくなる可能
性が高いので、その様な場合は制御形態を発熱量の小さい制御形態に切り替えることで、制御部の温度上昇を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置内の温度に応じて複数種類の制御形態を切り替えるため、適切な制御形態にてジョブを実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、画像処理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1CPUと第2CPUのスペックを示す図である。
【図3】図3は、プリンタの内部構成を示した概略図である。
【図4】図4は、モード切替処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、機能実行処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図を参照して説明する。
【0025】
1.画像処理システムの電気的構成
図1は、画像処理システム1の電気的構成を示すブロック図である。画像処理システム1は、端末装置10(例えばパーソナルコンピュータ)とプリンタ30(画像処理装置の一例)とを備える。
【0026】
(1)端末装置
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、HDD(ハードディスクドライブ)14、キーボードやポインティングデバイス等を有する操作部15、液晶ディスプレイ等を有する表示部16、通信回線20に接続されるネットワークインターフェイス17等を備えている。HDD14には、OSや、印刷用の画像データを作成可能なアプリケーションソフト、プリンタ30を制御するためのプリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM13に記憶させながら、端末装置10の動作を制御する。
【0027】
(2)プリンタ
プリンタ30は、例えばプリント機能、コピー機能、スキャナ機能など複数の機能を実行可能な複合機であり、第1CPU31A及び第2CPU31B(複数の演算処理素子、判断部の一例)、ROM32、RAM33を備える。尚、第1CPU31A、第2CPU31B、ROM32、RAM33にて、本発明の制御部を構成している。
【0028】
ROM32には、プリンタ30の動作を制御するための各種プログラム等が記録されており、各CPU31A,31Bは、ROM32から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM33に記憶させながら、プリンタ30の動作を制御する。
【0029】
ここで図2を参照して第1CPU31A及び第2CPU31Bの関係を説明する。第1CPU31Aは、第2CPU31Bよりも、CPUの最大の処理速度を表す最大クロックが高く且つ動作時に消費される消費電力が大きい。更に第1CPU31Aは、第2CPU31Bよりも、動作時の発熱量が大きく、CPUが正常に動作する温度である耐熱温度も高い。
【0030】
具体的には、第1CPU31Aの最大クロックは1[GHz]、消費電力は50[W]、発熱量である最大クロック時の温度は80[℃]、耐熱温度は150[℃]である。一方、第2CPU31Bの最大クロックは300[MHz]、消費電力は20[W]、発熱量
である最大クロック時の温度は30[℃]、耐熱温度は140[℃]である。さらにCPUが正常に動作するためのプリンタ30内の温度を示す許容温度は、第1CPU31Aが70[℃]、第2CPU31Bが110[℃]である。
【0031】
本実施携帯の場合、第1CPU31Aは第2CPU31Bに対して発熱量が大きいため、第1CPU31Aは第2CPU31Bよりも、より高温になりやすいCPUである。
【0032】
また、プリンタ30は、更にネットワークインターフェイス21(受付部の一例)、NVRAM(Non−Volatile RAM)34、操作部35(受付部の一例)を備えており、更に、スキャナ部36、ファクシミリ部37、画像処理部38、印刷部39など、各種のデバイス(処理部の一例)を備えている。
【0033】
ネットワークインターフェイス21は、通信回線20を介して端末装置10等の外部機器に接続されており、相互にデータ通信が可能となっている。操作部35は、複数のボタンを有し、ユーザによって各機能の実行指示などの各種の入力操作が可能である。更に操作部35は、表示部(例えば液晶ディスプレイ)やランプ等を有し、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。
【0034】
スキャナ部36は、図示しない原稿の画像を読み取って読取データとしての画像データを生成する。ファクシミリ部37は、図示しない外部のファクシミリ装置との間でファクシミリデータとしての画像データを送受信する。
【0035】
画像処理部38は、スキャナ部36からの読取データやネットワークインターフェイス21で受信した印刷データなど、各種の画像データに対する画像処理(例えば印刷処理可能なデータに変換する処理など)を実行する。画像処理の具体的な例として、端末装置10から受信した印刷データを印刷部39で印刷処理可能なビットマップデータに変換する処理や、スキャナ部36で読み取った読取データをファクシミリ部37で外部のファクシミリ装置に送信可能なファクシミリデータに変換する処理等がある。印刷部39は、後述する電子写真方式により、上記画像データに基づく画像をシートW(例えば用紙、OHPシート)に印刷する。
【0036】
また、上記デバイスは単独又は協働して以下の機能を実行する。
【0037】
「プリント機能」は、ネットワークインターフェイス21が端末装置10から印刷データを受信し、画像処理部38がその印刷データに所定の画像処理(例えばビットマップデータへの展開処理)をし、印刷部39が印刷対象画像をシートに印刷する。
【0038】
「コピー機能」は、操作部35がユーザによるコピー指示を受け付け、スキャナ部36が原稿の読取データを生成し、画像処理部38がその読取データに所定の画像処理をし、印刷部39が読取画像をシートに印刷する。
【0039】
「ファクシミリ印刷機能」は、操作部35がユーザによるファクシミリ印刷指示を受け付け、印刷部39が、既に受信したファクシミリデータに基づく画像をシートに印刷する。
【0040】
「スキャン機能」は、操作部35がユーザによるスキャン指示を受け付け、スキャナ部36が原稿の読取データを生成する。
【0041】
「ファクシミリ通信機能」は、操作部35がユーザによるファクシミリ通信指示を受け付け、ファクシミリ部37が外部のファクシミリ装置との間でファクシミリデータのやり
取りを行う。
【0042】
尚、上記した機能が実行される際の一つ一つの画像データ等を、単にジョブという。
【0043】
また、プリンタ30は、測定部40を備えており、プリンタ30内の温度を測定することが可能となっている。この測定部40によって測定した温度に応じて、後述にて説明する動作モードが切り替わる。
【0044】
2.動作モード
2つのCPU31A,31Bは、制御能力が互いに異なる「通常モード」、「負荷分散モード」、「省電力モード」の3つの動作モード(制御形態の一例)にてプリンタ30を制御し、機能を実行することが出来る。
【0045】
「通常モード」は、第1CPU31Aだけが起動状態になっており、第2CPU31Bがスリープ状態になっている動作モードである。「起動状態」とはデバイスを制御可能な状態をいい、「スリープ状態」とは、例えばNVRAM34へのアクセスが不能であり、起動状態のCPUや外部機器10等からの信号(例えば起動割り込み信号)のみ検知可能な状態をいう。尚、本実施形態では、通常プリンタ30はこの「通常モード」にて動作している。
【0046】
「負荷分散モード」は、第1CPU31A及び第2CPU31Bが起動状態になっている動作モードである。この動作モードでは、上述した各機能を実行する際に処理負荷が各CPUに分散するので、一つのCPUにて各機能を実行する場合に比べて各CPUの発熱量を抑制することが可能である。
【0047】
「省電力モード」は、第2CPU31Bだけが起動状態になっており、第1CPU31Aはスリープ状態になっている動作モードである。この動作モードでは、プリンタ30が第2CPU31Bのみで動作するため、「通常モード」に比べて消費電力、発熱量を抑制することが可能である。
【0048】
尚、これら3つの動作モードは、それぞれの動作モードにおいて上述した全ての機能を実行可能である。尚、各動作モードにおいて、各CPU31A,31Bは必ず最大クロックで動作しているわけではなく、機能に基づく処理負荷に応じてクロックを切り替えながら各デバイスを制御している。例えば、プリント機能に対してコピー機能は動作デバイス数が多いため、処理負荷が大きい。従って、各CPU31A,31Bは、コピー機能を制御するときは最大のクロックで制御するが、プリント機能を制御するときは中程度のクロックで制御する。
【0049】
3.プリンタの内部構成
図3はプリンタ30の内部構成を示した概略図である。以下の説明では、各構成要素について、色毎に区別する場合は各部の符号にY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),B(ブラック)の添え字を付し、区別しない場合は添え字を省略する。
【0050】
プリンタ30は、供給トレイ41、上述の印刷部39、及び、排出トレイ42等を備えている。供給トレイ41は、プリンタ30の底部に設けられており、複数枚のシートWが収納可能とされている。
【0051】
印刷部39は、画像形成部44、および、熱定着部45等を有し、また、搬送機構として、ピックアップローラ46、レジストレーションローラ47,47、シート搬送用のベルト48等が備えられている。ピックアップローラ46は、供給トレイ41に収納された
シートWを1枚ずつ取り出してレジストレーションローラ47,47へと搬送する。レジストレーションローラ47,47は、搬送されてきたシートWの姿勢を整えて、所定のタイミングでベルト48上に送り出す。
【0052】
画像形成部44は、複数色(例えば4色)のトナー各々に対応する複数(例えば4個)のプロセスカートリッジ51Y,51M,51C,51B、及び、複数(例えば4個)の露光装置52を有する。各プロセスカートリッジ51は、感光体53、帯電器54、及び、トナー収容部55等を有する。なお、画像形成部44の直下であるベルト48上の位置を、以下、印刷位置という。
【0053】
帯電器54は、いわゆるスコロトロン型の帯電器であり、感光体53の表面を一様に帯電させる。露光装置52は、例えば、感光体53の回転軸方向に沿って一列状に並んだ複数の発光素子(例えばLED)を有し、これらの複数の発光素子を、各色ごとの画像データに基づき発光制御することにより、感光体53の表面に静電潜像を形成する。
【0054】
トナー収容部55は、各色のトナー(本実施形態では、例えば正帯電性の非磁性1成分トナー)を収納するとともに、現像ローラ56を有する。現像ローラ56が、トナーを「+」(正極性)に帯電させ、均一な薄層として感光体53上へ供給することにより上記静電潜像を現像してトナー像(モノクロ像、またはカラー像)を形成する。
【0055】
各転写ローラ57は、上記各感光体53との間でベルト48を挟む位置に配置されている。各転写ローラ57は、感光体53との間にトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加されて、感光体53上に形成された上記トナー像をシートWに転写する。
【0056】
その後、当該シートWは、搬送機構38により熱定着部45へと搬送され、この熱定着部45にてトナー像が熱定着され、排出ローラ60を介して排出トレイ42に向けて搬送される。
【0057】
尚、印刷部39によってシートWに画像を形成する動作を印刷処理という。
【0058】
4.モード切替処理
図4は、プリンタ30の動作モードに基づいて起動状態であるいずれかのCPU31A,31Bが実行するモード切替処理を示すフローチャートである。例えばプリンタ30が起動後、定期的に当該処理を実行する。尚、本実施形態では、各CPU31A,32Bの発熱量の大きさを指標にして動作モードを切り替える。
【0059】
モード切替処理では、S101で測定部40にて測定するプリンタ30内の温度T(装置内温度T)が第1規定温度T0より高いか否かを判断する。尚、この第1規定温度T0は予め定められた温度であり、本実施形態の場合は例えば110[℃]に設定され、プリンタ30のNVRAM34に記憶されている。
【0060】
また、この第1規定温度T0は、第1CPU31Aが例えばユーザが操作部35を操作する際の操作部35の制御等、低負荷の処理をした際に熱暴走等の異常な動作をする可能性のある温度に対して低く設定した値である。この様に第1規定温度T0の設定値が設定されている理由は、第1CPU31Aが壊れる可能性の高い状態まで動作を継続させるよりも、それより低い値で動作モードを切り替えた方が第1CPU31Aの壊れる可能性が下がるためである。
【0061】
ここで、装置内温度Tがこの第1規定温度T0より高い場合(S101:YES)、S102で予め省電力優先設定がNVRAM34に記憶されているか否かが判断される。尚
、省電力優先設定とは動作モードを切り替える際に、「負荷分散モード」又は「省電力モード」のいずれか一方を選択するための設定である。即ち、ユーザは予めプリンタ30の操作部35や端末装置10の操作部15等を介して省電力優先設定を設定することが可能である。
【0062】
ここでNVRAM34を参照することで省電力優先設定が設定されている場合(S102:YES)、S103で動作モードを「省電力モード」に切り替える。また、省電力優先設定が設定されていない場合(S102:NO)、S104で動作モードを「負荷分散モード」に切り替える。尚、S103及びS104にて既に動作モードが切り替わっている場合は、S103及びS104の処理を省略する。
【0063】
一方、S101で装置内温度Tが第1規定温度T0よりも低い場合(S101:NO)、S105で操作部35、又は端末装置10によりネットワークI/F21にて、機能の実行指示がされたか否かを判断する。ここで実行指示がされた場合は(105:YES)、S106にて後述する機能実行処理実行される。
【0064】
次に、S103、S104、又はS106の処理が終了後、又はS105で実行指示がされていない場合(S105:NO)、S107で測定部40にて測定するプリンタ30の装置内温度Tが第1規定温度T0より低いか否か判断する。ここで装置内温度Tが第1規定温度T0より低い場合(S107:YES)、S108で動作モードを通常モードに切り替え、当該モード切替処理を終了する。尚、S108にて既に動作モードが切り替わっている場合は、S108の処理を省略する。
【0065】
一方、S107で装置内温度Tが第1規定温度T0より高い場合(S107:NO)、そのまま当該モード切替処理を終了する。
【0066】
次にS106の機能実行処理を説明する。また、図5は、プリンタ30の動作モードに基づいて起動状態であるいずれかのCPU31A,31Bが実行する機能実行処理を示すフローチャートである。尚、図4のモード切替処理と同様の処理を実行する場合は、同じ符号を付け説明を省略する。
【0067】
モード切替処理にて機能の実行指示がされた場合(図4のS105:YES)、S201で測定部40にて測定するプリンタ30の装置内温度Tが第2規定温度T1より高いか否かを判断する。尚、この第2規定温度T1は予め定められた温度であり、本実施形態の場合は例えば90[℃]に設定され、プリンタ30のNVRAM34に記憶されている。
【0068】
また、この第2規定温度T1は、第1CPU31Aが例えばプリント機能にて画像処理部38や印刷部39の動作を制御する等、中程度の負荷の処理をした際に熱暴走等の異常な動作をする可能性のある温度に対して低く設定した値である。この様に第2規定温度T1の設定値が設定されている理由は、第1CPU31Aが壊れる可能性の高い状態まで動作を継続させるよりも、それより低い値で動作モードを切り替えた方が第1CPU31Aの壊れる可能性が下がるためである。
【0069】
ここで、装置内温度Tがこの第2規定温度T1より低い場合(S201:NO)、S202で実行指示がプリント機能又はコピー機能の実行指示であり、更に印刷するシートとして厚紙が選択されたか否かを、ユーザによる実行指示の際にユーザが設定した設定値を参照して判断する。
【0070】
尚、厚紙印刷を実行する場合は、一般的に熱定着器45の温度を通常の温度より上昇させて、熱定着を確実に行う。即ち、厚紙印刷を実行する場合は急激に装置内温度Tが高く
なる可能性が高いため、S202にて判断処理を行う。
【0071】
このとき、厚紙に対する印刷である厚紙印刷が選択されていなかった場合(S202:NO)、S203で実行指示がプリント機能又はコピー機能の実行指示であり、更に連続的に印刷される枚数である連続印刷枚数が予め定められている規定枚数より多いか否かを同様に設定値から判断する。
【0072】
尚、連続印刷枚数が規定枚数より多い場合は、一般的に熱定着器45を印刷用の温度で長く動作させて熱定着を行う。即ち、連続印刷枚数が規定枚数より多い場合は急激に装置内温度Tが高くなる可能性が高いため、S203にて判断処理を行う。
【0073】
このとき、連続印刷枚数が規定枚数より少ない場合(S203:NO)、S204で実行指示がコピー指示であるか否かを同様に設定値から判断する。ここでコピー指示であった場合(S204:YES)、S205で測定部40にて測定するプリンタ30の装置内温度Tが第3規定温度T2より高いか否かを判断する。尚、この第3規定温度T2は予め定められた温度であり、本実施形態の場合は例えば60[℃]に設定され、プリンタ30のNVRAM34に記憶されている。
【0074】
また、この第3規定温度T2は、第1CPU31Aが例えばコピー機能にてスキャナ部36、画像処理部38、印刷部39の動作を制御する等、高負荷の処理をした際に熱暴走等の異常な動作をする可能性のある温度に対して低く設定した値である。この様に第3規定温度T2の設定値が設定されている理由は、第1CPU31Aが壊れる可能性の高い状態まで動作を継続させるよりも、それより低い値で動作モードを切り替えた方が第1CPU31Aの壊れる可能性が下がるためである。
【0075】
次に、S201で装置内温度Tが第2規定温度T1より高い場合(S201:YES)、S202で厚紙印刷指示が選択されてた場合(S202:YES)、S203で連続印刷枚数が規定枚数より多い場合(S203:YES)、又はS205で装置内温度が第3規定温度T2より高い場合(S205:YES)は、S102で省電力優先設定がなされているか否かを判断して、S103及びS104にて動作モードを切り替える。
【0076】
一方、S204で実行指示がコピー指示でない場合(S204:NO)、又はS205で装置内温度Tが第3規定温度T3より低い場合(S205:NO)は、S102からS104の処理を実行せず、動作モードが切り替わらない。
【0077】
そして、S103、S104の処理が終了、又はS204で実行指示がコピー指示でない場合(S204:NO)、又はS205で装置内温度Tが第3規定温度T3より低い場合(S205:NO)と判断されると、S206でS105にて実行指示された機能の実行がなされ、当該機能実行処理が終了する。
【0078】
以上のように、本実施形態では、装置内温度Tの状況によって動作モードを切り替えることで、各CPU31A,31Bを安全に動作させることが可能である。
【0079】
尚、第1又は第2CPU31A,31Bにて実行される、S101、S201、S205の処理は本発明の判断処理に相当する。
【0080】
6.本実施形態の効果
本実施形態によれば、上記機能実行処理により、第1及び第2CPU31A,31Bにて構成する動作モードを、装置内温度Tに応じて切り替えることが可能である。従って、動作モードが装置内温度Tとは無関係に決定される従来の構成に比べて、利便性を向上さ
せることができる。
【0081】
また、装置内温度Tが高いほど発熱量の小さい動作モードに切り替えるので、装置内温度Tが高いほど、第1及び第2CPU31A,31Bの発熱による温度上昇を抑制することが出来る。
【0082】
更に、例えば「通常モード」から「省電力モード」に動作モードを切り替える場合、発熱量の大きい第1CPU31Aは停止され、発熱量の小さい第2CPU31Bが起動されるため、各CPUの発熱による温度上昇を抑制することが出来ると共に、動作モードを切り替えることでCPUによる総合的な消費電力を抑制することが出来る。
【0083】
また、例えば「通常モード」から「負荷分散モード」に動作モードを切り替える場合、動作するCPUの数を増やすことで処理負荷を複数のCPUに分散させることが可能であり、それによって各CPUそれぞれに割り当てられる仕事量が減り、各CPUの発熱による温度上昇を抑制することが出来る。
【0084】
また、本実施形態では、処理負荷の大きい機能を実行する場合に規定温度の値が低く設定され、その規定温度に応じて動作モードが切り替わるため、処理負荷が大きい機能を実行する際にCPUが高クロックで動作したとしても、発熱量の小さい動作モードで処理を実行することが可能である。
【0085】
さらに、装置内温度Tが上がりやすい状況である、厚紙シートを印刷する場合や、規定枚数のシートに対して連続印刷をする場合には、発熱量の小さい動作モードにて処理を実行することが可能である。
【0086】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
(1)上記実施形態では、複合機であるプリンタ30を例に挙げたが、本発明の「画像処理装置」はこれに限れない。例えばスキャナ機能やファクシミリ機能を有しないプリンタや、ファクシミリ装置単体、画像読取装置単体であってもよい。要するに、画像データに対する機能を実行可能な画像処理装置であればよい。
【0088】
(2)上記実施形態では、コピー機能、スキャン機能、ファクシミリ通信機能などを例に挙げたが、本発明はこれに限られない。例えば画像データをHDD34に蓄積する画像蓄積機能、スキャンデータなどから特定画像を抽出する特定画像抽出機能、メール機能や、端末装置10から画像データを受信し、その受信した画像データに基づくファクシミリデータを外部のファクシミリ装置に送信する、PCファックス機能などでもよい。要するに、画像データに対する機能であればよい。
【0089】
(3)上記実施形態では、印刷部39が電子写真方式による印刷を実行可能に構成されているが、本発明はこれに限られず、例えばインクジェット方式による印刷を実行可能な印刷部として構成されていてもよい。
【0090】
(4)上記実施形態では、2つのCPU31A,31Bを備えるプリンタ30を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、3つ以上のCPUを備える画像処理装置でもよい。また、CPUの数に伴い4つ以上の動作モードを備えてもよい。
【0091】
(5)上記実施形態では、3つの動作モードを異ならせる方法として、それぞれの動作
モードで起動状態とする第1及び第2CPU31A,31Bのスペック、および、起動状態とする第1及び第2CPU31A,31Bの数を異ならせたが、本発明はこれに限られない。例えば、複数のCPUの性能を同等し、各動作モードで起動状態とするCPUの数を異ならせる方法でもよい。
【0092】
複数のCPUが起動状態の場合には、それら複数のCPUが協働してデバイスを制御して機能を実行する。協働の形態としては、例えば複数のCPUが共通のデバイス(例えば画像処理部38)を分担して制御する形態がある。また、一機能を複数のデバイスで実行する場合には、各CPUがそれぞれ個別のデバイス(例えば画像処理部38と印刷部39)を制御する形態がある。また、複数のCPUの性能を異ならせて、各制御形態では互いに異なる制御部を起動状態とする方法でもよい。
【0093】
(6)上記実施形態では、省電力設定や規定温度等を、プリンタ30に備えられたNVRAM34に登録したが、本発明はこれに限られない。例えば端末装置10が備えるHDD14など、プリンタ30に対して外部を記憶装置に登録してもよいし、プリンタ30にHDDやフラッシュROM等の記憶素子を備えてもよい。
【0094】
(7)上記実施形態では、装置内温度T等の状況に従って択一的に動作モードを切り替えたが、動作モードが多段的に切り替わってもよい。例えば規定温度が複数設定されており、装置内温度Tが変化していくことに応じて、動作モードが「通常モード」、「負荷分散モード」、「省電力モード」といった様に切り替わってもよい。
【0095】
(8)上記実施形態では、発熱量の大きさを指標にしてモード切替処理を実行したが、本発明はそれに限られない。例えば、図2に示した許容温度、耐熱温度等を指標にしてモード切替処理を実行しても良い。
【0096】
許容温度を指標にしてモード切替処理を実行するのであれば、図4及び図5においてS102の処理が無くなり、直接S103の処理を実行する。即ち、許容温度を指標にする場合は、許容温度の低いCPUである第1CPU31Aを動作させずに、許容温度の高いCPUである第2CPU31Bのみを動作させるため、各CPUを安全に動作させることが可能である。尚、この場合は省電力設定を設定することも不要である。
【符号の説明】
【0097】
1 画像処理システム
10 端末装置
11 CPU
15 操作部
20 通信回線
21 ネットワークインターフェイス
30 プリンタ
31A 第1CPU
31B 第2CPU
33 RAM
34 ROM
35 操作部
36 スキャナ部
38 画像処理部
39 印刷部
40 測定部
44 画像形成部
45 熱定着部
W シート
T 装置内温度
T0 第1規定温度
T1 第2規定温度
T2 第3規定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置であって、
前記画像処理装置の装置内の温度を測定する測定部と、
前記画像データに対する処理を行う処理部と、
前記処理部を制御して前記ジョブを実行すると共に、複数種類の制御形態を切り替え可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測定部によって測定した温度に応じて、前記制御形態を切り替えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の演算処理素子を有し、前記複数の演算処理素子のうち少なくとも一つの起動状態を変更することにより制御形態を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、互いに発熱量の異なる複数種類の制御形態を切り替え可能であって、前記装置内の温度が高いほど、発熱量の小さい制御形態に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、互いに発熱量の異なる複数の演算処理素子を有し、前記装置内の温度が高いほど、発熱量の大きい演算処理素子を停止し発熱量の小さい演算処理素子を起動することで前記制御形態を切り替えることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記装置内の温度が高いほど、起動する演算処理素子の数を増やすことで前記制御形態を切り替えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、互いに動作可能な耐熱温度の異なる複数の演算処理素子を有し、前記装置内の温度が高いほど、耐熱温度から発熱量を差し引いた許容温度の小さい演算処理素子を停止し当該許容温度の大きい演算処理素子を起動することで前記制御形態を切り替えることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ジョブを受け付ける受付部と、
前記装置内の温度が定められている規定温度に達したか否かを判断する判断部と、
を備え、
前記規定温度は、前記処理部によって処理されるジョブの処理負荷が大きいほど低い温度に定められ、
前記制御部は、前記受付部によって受け付けられたジョブを実行する際、前記判断部により装置内の温度が規定温度を超えたと判断したことに応じて、前記制御形態を発熱量の小さい制御形態に切り替えることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、現像剤を使用してシートに画像データを形成する画像形成部と、画像データを形成したシートに対して熱定着をする熱定着部と、を有し、画像形成部と熱定着部とによりシートに画像を印刷する印刷処理を実行可能であり、
前記制御部は、前記印刷処理が実行される際に、熱定着部によって機内の温度上昇が大きくなる場合は、前記制御形態を発熱量の小さい制御形態に切り替えることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131472(P2011−131472A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292284(P2009−292284)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】