説明

画像出力装置、画像出力制御プログラム、画像出力方法

【課題】検版作業を好適に補助できる汎用性の高い出力技術の提供。
【解決手段】印刷装置PRTは、印刷対象となる画像データの入力を受け付ける入力部51と、入力画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成部53と、版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択部54と、少なくとも入力画像データを印刷して、版数識別情報を付加した印刷物を出力する出力部55と、印刷対象となった入力画像データの判定符号を、印刷画像データの印刷物に付加する版数識別情報と対応付けて記憶する符号記憶部62と、印刷対象となる画像データの判定符号と記憶された判定符号とを照合して、版数が異なる画像データの判定符号を特定する符号照合部56とを備え、選択部54は、符号照合部56の照合結果に基づいて、版数が異なる画像データの印刷物に未だ付加されていない版数識別情報を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の画像を表す画像データを出力する出力技術に関し、特に、検版を補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーが印刷物を作成する際には、最終的な印刷物のもととなる原稿データを決定するまでに、原稿データに何度も編集を加え、同時に試し刷りを行う。このとき、旧版の試し刷り印刷物と、新版の試し刷り印刷物とを重ね合わせ、正しく編集がなされているかを確認する作業(以下、検版作業ともいう)を行うのが一般的である。かかる検版作業を補助するために、原稿データを印刷する際に、版の識別を補助するマークを併せて印刷する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、端末が原稿データと共に印刷指示の順番を特定する情報をプリントサーバーに送信し、プリントサーバーが、印刷指示の順番を特定する情報に応じた形状の帯状のマークを合成した原稿データを印刷装置に出力する技術を開示している。これにより、検版作業において、旧版と新版とを容易に識別して、旧版と新版との混同を防止することができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、端末からプリントサーバーに対して印刷指示の順番を表す情報を送信するためには、端末が、この情報を管理する版管理システムを備えている必要があった。また、原稿を作成するアプリケーションによっては、版管理機能を備えているものもあるが、その情報がプリントサーバーで利用できるとは限らなかった。このようなことから、端末の仕様にかかわらず、検版作業の補助を行える、汎用性の高い技術が求められていた。かかる問題は、画像表示装置に編集を加えた画像データを表示させ、表示画面上で検版作業を行う場合にも共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−280001号公報
【特許文献2】特開平10−171619号公報
【特許文献3】特開2004−82341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、検版作業を好適に補助できる汎用性の高い出力技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]所定の画像を表す画像データを出力する画像出力装置であって、
出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力部と、
前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成部と、
版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択部と、
前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した付加画像データを出力する出力部と、
出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する符号記憶部と、
前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記符号記憶部に記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合部と
を備え、
前記選択部は、前記符号照合部の照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する
画像出力装置。
【0008】
かかる構成の画像出力装置は、出力対象となった入力画像データの特徴量を符号化した判定符号を、付加する版数識別情報と対応付けて記憶する。そして、出力対象となる画像データから作成した判定符号と、出力対象となって記憶された判定符号とを照合して、出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの判定符号を特定し、入力画像データを出力する際に、版数が異なる画像データに未だ付加されていない版数識別情報を選択して、付加して出力することができる。したがって、用意された版数識別情報の数までは、種類が異なる版数識別情報を付加した画像データを出力することができる。その結果、ユーザーは、版数識別情報を頼りに、新版と旧版との混同を防止することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、かかる画像出力装置は、入力画像データから作成した判定符号によって、版数が異なる画像データを特定することができるので、版管理システムを備えない外部装置、例えば、端末から画像データを受け付けて出力する場合においても、好適に適用することができ、汎用性に優れる。なお、画像の出力の態様としては、印刷装置への出力や画像表示装置への出力などとすることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1記載の画像出力装置であって、前記符号作成部は、前記入力した画像データを、該画像データが表す画像のページごとに前記判定符号を作成し、前記符号照合部は、前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記符号記憶部に記憶された前記判定符号とが、所定数または所定割合のページで一致する場合に、該記憶された判定符号を、前記版数が異なる画像データの判定符号として特定する画像出力装置。
【0010】
かかる構成の画像出力装置は、ページごとに判定符号を作成し、出力対象となる画像データの判定符号と、符号記憶部に記憶された判定符号とが、所定数または所定割合のページで一致する場合に、記憶された判定符号を、版数が異なる画像データの判定符号として特定する。つまり、判定符号の作成単位と、判定符号の一致を判断する単位との整合が図られるので、効率的な処理を行うことができる。しかも、簡単な処理で版数が異なる画像データを特定することができる。
【0011】
[適用例3]前記判定符号は、所定範囲の前記入力した画像データを所定数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った符号化データを合わせて構成される適用例1または適用例2記載の画像出力装置。
かかる構成の画像出力装置は、範囲の広さと詳細さを併せ持つ判定符号を作成して、版数が異なる画像データの判定符号を効率的かつ精度良く特定することができる。
【0012】
[適用例4]適用例3記載の画像出力装置であって、前記判定符号は、所定範囲の前記入力した画像データを第1の数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った第1の符号化データと、該所定範囲の画像データを前記第1の数よりも多数である第2の数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った第2の符号化データとを含み、前記第1の符号化データは、前記第2の符号化データよりも前に配置された画像出力装置。
【0013】
かかる構成の画像出力装置において、判定符号は、同一の所定範囲を異なる数の分割数でそれぞれ分割され、分割された領域ごとに符号化が行われた符号化データを含み、粗く分割された領域ごとに作成した符号化データが相対的に前に配置される。したがって、照合する判定符号のもととなる画像データ間の内容が大きく異なる場合には、照合処理の早期の段階で、判定符号が不一致であることがわかり、版数が異なる画像データの判定符号ではないことを特定することができ、処理の効率化、高速化に資する。
【0014】
[適用例5]前記特徴量は、前記入力した画像データの所定領域を構成する各々の画素データのうちの、所定範囲の色階調値を有する画素データが占める割合である適用例1ないし適用例4のいずれか記載の画像出力装置。
かかる構成の画像出力装置は、特徴量を容易に算出することができる。しかも、版数が異なる画像データ同士でなければ、所定範囲の色階調値を有する画素データが占める割合は、大きく異なることが多いので、版数が異なる画像データを精度良く特定することが可能な判定符号を作成することができる。
【0015】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか記載の画像出力装置であって、前記複数種類の版数識別情報は、少なくとも色または形状が相互に異なる識別マークを表すマーク画像データであり、前記出力部は、前記入力した画像データと前記マーク画像データとを合成した合成画像データを生成し、該合成画像データを前記付加画像データとして出力する画像出力装置。
【0016】
かかる構成の画像出力装置は、入力した画像データと、版数識別情報としてのマーク画像データとを合成した合成画像データを出力する。したがって、出力装置が当然に備える出力機能によって、画像データに版数識別情報を付加することができ、版数識別情報を付加するための特別な機構等が不要である。例えば、画像出力装置が印刷装置である場合には、印刷装置が当然に備える印刷機能によって、印刷物に版数識別情報を付加することができる。その結果、出力装置の装置構成を簡略化でき、出力装置の小型化、低コスト化に資する。
【0017】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像出力装置であって、更に、前記出力対象となった画像データを、該画像データから作成した前記判定符号と対応付けて記憶する画像データ記憶部と、前記符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データと、前記出力対象となる画像データとを照合して、該画像データ間の同一性を所定の単位ごとに特定する同一性判定部とを備え、前記出力部は、前記同一性判定部の判定結果を識別可能な同一性識別情報を付加した前記付加画像データを出力する画像出力装置。
【0018】
かかる構成の画像出力装置は、出力対象となった画像データを判定符号と対応付けて記憶し、符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データと、出力対象となる画像データとを照合して、画像データ間の同一性を所定の単位ごとに判定し、その判定結果を同一性識別情報として付加した付加画像データを出力する。したがって、ユーザーは、編集を行ったページと、編集が行われなかったページとを容易に識別することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、判定符号に基づいて特定された、版数が異なる画像データのみを対象として、画像データの照合を行うので、判定符号と比較してデータサイズの大きい画像データ同士の照合を極力避けることができ、処理を効率化、高速化することができる。
【0019】
[適用例8]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像出力装置であって、更に、前記出力対象となった画像データを、該画像データから作成した前記判定符号と対応付けて記憶する画像データ記憶部と、前記符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データのページ単位の各々と、前記出力対象となる画像データのページ単位の各々とを照合して、該ページ間の対応関係を判定する対応関係判定部とを備え、前記出力部は、前記対応関係判定部の判定結果を識別可能な情報を付加した前記付加画像データを出力する画像出力装置。
【0020】
かかる構成の画像出力装置は、出力対象となった画像データを判定符号と対応付けて記憶し、符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データのページ単位の各々と、出力対象となる画像データのページ単位の各々とを照合して、ページ間の対応関係を判定し、その判定結果を識別可能な情報を付加した付加画像データを出力する。したがって、ユーザーは、版数が異なる画像データ間のページごとの対応関係を容易に識別することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、判定符号に基づいて特定された、版数が異なる画像データのみを対象として、画像データの照合を行うので、判定符号と比較してデータサイズの大きい画像データ同士の照合を極力避けることができ、処理を効率化、高速化することができる。
【0021】
[適用例9]所定の画像を表す画像データを出力する画像出力装置であって、出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力部と、前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成部と、出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号と、該出力対象となった画像データとを対応付けて記憶する画像データ記憶部と、前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定し、前記出力対象となる画像データと、前記特定した判定符号に対応付けられた画像データとを照合して、該画像データ間の同一性を所定の単位ごとに判定する同一性判定部と、前記入力した画像データに、前記同一性判定部の判定結果を識別可能な同一性識別情報を付加して出力する出力部とを備えた画像出力装置。
【0022】
かかる構成の画像出力装置は、出力対象となった入力画像データの特徴量をページごとに符号化した判定符号を、出力対象となった画像データと対応付けて記憶する。そして、出力対象となる画像データから作成した判定符号と、出力対象となって記憶された判定符号とを照合して、出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの判定符号を特定する。そして、出力対象となる画像データと、特定した判定符号に対応付けられた画像データとを照合して、画像データ間の同一性を所定の単位ごとに判定し、その判定結果を同一性識別情報として付加した画像データを出力する。したがって、ユーザーは、編集を行ったページと、編集が行われなかったページとを容易に識別することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、判定符号に基づいて特定された、版数が異なる画像データのみを対象として、画像データの照合を行うので、判定符号と比較してデータサイズの大きい画像データ同士の照合を極力避けることができ、処理を効率化、高速化することができる。さらに、かかる画像出力装置は、入力画像データから作成した判定符号と、画像データとによって、版数が異なる画像データを特定し、同一性の判定を行うことができるので、版管理システムを備えない外部装置、例えば、端末から画像データを受け付けて出力する場合においても、好適に適用することができ、汎用性に優れる。なお、適用例9の画像出力装置にも、適用例2〜6,8の構成を付加することもできる。
【0023】
また、本発明は、画像出力装置としての構成のほか、適用例10の画像出力制御プログラム、当該プログラムを記憶した記憶媒体、適用例11の画像出力方法などとしても実現することができる。
[適用例10]所定の画像を表す画像データを出力するための画像出力制御プログラムであって、出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力機能と、前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成機能と、版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択機能と、前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した画像データを出力する出力機能と、出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する判定符号記憶機能と、前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合機能とをコンピューターに実現させ、前記選択機能は、前記照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する画像出力制御プログラム。
【0024】
[適用例11]所定の画像を表す画像データを出力するための画像出力方法であって、出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力工程と、前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成工程と、版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択工程と、前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した画像データを出力する出力工程と、出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する判定符号記憶工程と、前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合工程とを備え、前記選択工程は、前記符号照合工程の照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する画像出力方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例としての印刷装置PRTの概略構成を示す説明図である。
【図2】識別情報記憶部61に記憶された版数識別情報の具体例を示す説明図である。
【図3】符号記憶部62に判定符号が記憶されている様子を示す説明図である。
【図4】符号記憶部62の領域A1に判定符号が記憶されている様子を示す説明図である。
【図5】識別情報付加処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】印刷対象となる原稿データの内容の具体例を示す説明図である。
【図7】識別情報付加処理における判定符号の作成方法を示す説明図である。
【図8】識別情報付加処理を経て印刷された印刷物の具体例を示す説明図である。
【図9】識別情報付加処理における判定符号照合処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】判定符号照合処理における原稿間照合処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】原稿間照合処理におけるページ間照合処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】第2実施例としての印刷装置PRTaの概略構成を示す説明図である。
【図13】判定符号と原稿データとが記憶されている様子を示す説明図である。
【図14】第2実施例としての識別情報付加処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】第2実施例としての識別情報付加処理を経て印刷された印刷物の具体例を示す説明である。
【図16】識別情報付加処理におけるマーク形状決定処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】第3実施例としてのマーク形状決定処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】第3実施例としての識別情報付加処理を経て印刷された印刷物の具体例を示す説明である。
【図19】第3実施例としての識別情報付加処理を経て印刷された印刷物の具体例を示す説明である。
【図20】第3実施例としての識別情報付加処理を経て印刷された印刷物の具体例を示す説明である。
【図21】第1実施例の変形例としての画像表示装置DISの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.第1実施例:
本発明の第1実施例について説明する。
A−1.印刷装置PRTの概略構成:
本発明の第1実施例としての印刷装置PRTの概略構成を図1に示す。図示するように、印刷装置PRTは汎用のパーソナルコンピューターPCと接続されている。本実施例では、印刷装置PRTとパーソナルコンピューターPCとは、ローカル接続するものとしたが、ローカルエリアネットワークなどを介して接続されていてもよい。
【0027】
印刷装置PRTは、プリントコントローラー40と、プリントエンジン80とを備えている。プリントコントローラー40は、印刷装置PRTの動作全般を制御する制御ユニットであり、CPU50とメモリー60とを備えている。プリントエンジン80は、プリントコントローラー40からの制御信号を受けて、印刷媒体に印刷を行う印刷機構である。
【0028】
プリントコントローラー40を構成するCPU50は、メモリー60に記憶された所定のプログラムをRAM(図示せず)に展開して実行することで、入力部51、識別情報付加処理部52、画像処理部57として機能する。識別情報付加処理部52は、符号作成部53、選択部54、出力部55、符号照合部56としての機能を有している。
【0029】
入力部51は、パーソナルコンピューターPCから印刷対象となる原稿データの入力を受け付ける。この原稿データは、本実施例では、パーソナルコンピューターPCにおいて、アプリケーション31で作成され、さらに、ラスターライズ処理部32によってRGB形式のラスターデータ(以下、RGBラスターデータともいう)に変換されたものである。ただし、入力を受け付ける原稿データは、RGB形式に限るものではなく、例えば、CMYK形式であってもよい。また、ラスターデータへの変換処理は、印刷装置PRTで行う構成であってもよい。
【0030】
識別情報付加処理部52は、受け付けたRGBラスターデータに対して、識別情報付加処理を行う。識別情報付加処理とは、RGBラスターデータに対して、版数を識別可能な版数識別情報を付加する処理であり、その詳細は後述する。なお、ここでの版数とは、所定の原稿データの編集作業において、何回目の試し刷りに係るものかを示す数である。識別情報付加処理によって、版数識別情報が付加された画像データは、識別情報付加処理部52から画像処理部57を介して、プリントエンジン80に出力される。画像処理部57は、識別情報付加処理部52によって版数識別情報を付加されたRGBラスターデータを、プリントエンジン80で用いるインク色に対応するCMYK形式のラスターデータに変換し、ハーフトーン処理を行う。なお、画像処理部57は、必要に応じて、インターレース処理やスムージングなどの他の画像処理を併せて行ってもよい。
【0031】
プリントコントローラー40を構成するメモリー60は、上述したプログラムを記憶すると共に、識別情報記憶部61と符号記憶部62とが確保された不揮発性の記憶媒体である。識別情報記憶部61は、識別情報付加処理部52が付加する版数識別情報を複数種類記憶する領域である。識別情報記憶部61に記憶された版数識別情報の具体例を図2に示す。本実施例では、版数識別情報は、印刷装置PRTで印刷する印刷物の端部に付する識別マークである(以下、版数識別情報を識別マークともいう)。図示するように、この例では、番号1〜6,Sが付された7つの識別マークが記憶されている。以下では、番号1〜6,Sが付された識別マークを、それぞれ識別マークM1〜M6、Msともいう。各々の識別マークは、少なくとも色または形状が異なっており、その違いを表す階調値情報とパターン情報とを有している。例えば、識別マークM1は、(R,G,B)=(255,0,0)の階調値でベタ塗りされた矩形の識別マークである。後述する識別情報付加処理では、原稿データの版数が変わるたびに異なる番号の識別マークが選択され、付加される。識別マークMsは、識別マークM1〜M6の全てが既に使用された場合に付加するものである。なお、識別情報記憶部61に記憶する識別マークの種類の数は、任意に設定すればよい。この種類の数を多数に設定するほど、多数の版数を識別できることは勿論である。
【0032】
符号記憶部62は、印刷装置PRTで印刷対象となった原稿データを、後述する識別情報付加処理によって符号化して記憶する領域である。この符号化されたデータ(以下、判定符号ともいう)が符号記憶部62に記憶されている様子を概念的に図3に示す。図示するように、本実施例においては、符号記憶部62には、識別マークM1〜M6の各々に対応する領域A1〜A6が確保されている。領域A1には、識別マークM1が付加された原稿データの判定符号が記憶される。同様に、領域A2〜A6には、識別マークM2〜M6が付加された原稿データの判定符号が記憶される。要するに、符号記憶部62では、原稿データの判定符号と、当該原稿データに付加された識別マークとが対応付けられて記憶される。なお、本実施例では、識別マークMsが付加された原稿データの判定符号は、記憶されない。
【0033】
領域A1に記憶された判定符号の具体例を図4に示す。図示するように、この例では、過去に印刷対象となった原稿データ1〜3の判定符号が記憶されている。本実施例では、判定符号は、原稿データをページごとに符号化することで生成され、図4に示すように、原稿データごとに区分され、更に、ページごとに区分されて記憶される。領域A2〜A6についても、同様に、判定符号は、原稿データごと、ページごとに区分されて記憶される。
【0034】
A−2.識別情報付加処理:
A−2−1.処理全体の流れ:
印刷装置PRTにおける識別情報付加処理について説明する。識別情報付加処理とは、原稿データに識別マークを付加する処理である。本実施例においては、識別情報付加処理は、印刷装置PRTのCPU50が、入力部51の処理として、パーソナルコンピューターPCから入力される原稿データ(RGBラスターデータ)を受け付けたときに開始される。本実施例において、入力される原稿データが表す原稿の具体例を図6に示す。図6に示す原稿データは、4ページで構成される。この原稿データは、図4に例示した原稿データ3に対して、第1ページと第3ページに若干の修正を加えたものである。つまり、原稿データ3と入力された原稿データとは、相互に版数が異なる原稿データであり、これらの相対的な関係においては、原稿データ3は、直近の編集よりも前の原稿データ(旧版)であり、入力された原稿データは、直近の編集後の原稿データ(新版)である。
【0035】
識別情報付加処理が開始されると、図5に示すように、CPU50は、まず、選択部54の処理として、識別情報記憶部61に記憶された識別マークM1〜M6のうちで、当該識別情報付加処理において未選択の識別マークの1つを、原稿データに付加する識別マークの候補として選択する(ステップS110)。本実施例においては、前回実行された識別情報付加処理によって原稿データに付加された識別マークの番号に1インクリメントした番号の識別マークを選択するものとした。例えば、前回付加した識別マークの番号が1であれば、番号が2の識別マークM2を選択し、前回付加した識別マークの番号が6であれば、番号が1の識別マークM1を選択する。かかる構成とすれば、旧版の原稿データを印刷装置PRTで印刷した後、次に印刷装置PRTでの印刷対象となるのが新版の原稿データである場合に、直前に印刷された旧版に付加された識別マークを選択することを回避できるので、後述する処理を効率的に実行し、処理を高速化することができる。
【0036】
識別マークの1つを選択すると、CPU50は、符号作成部53の処理として、入力を受け付けたRGBラスターデータの特徴量を符号化して、判定符号を作成する(ステップS120)。この判定符号は、後述する処理において、入力されたRGBラスターデータと版数の異なる原稿データが、過去に印刷装置PRTで印刷されたか否かを判断するために用いられる。ステップS120については、図7を用いて詳しく説明する。本実施例においては、判定符号は、原稿データのページごとに作成する。図7では、原稿データの第1ページの判定符号を作成する様子を示している。本実施例においては、1つの符号列である判定符号は、N個(Nは1以上の整数)のブロックB1〜Bnで構成される。ブロックB1〜Bnの各々には、原稿データの全体を4(n-1)個の領域に分割した場合の各分割領域の特徴量を符号化したデータが格納される。例えば、ブロックB1には、原稿データを40(=1)個の領域に分割した、すなわち、原稿データ全体の特徴量を符号化したデータが格納される。ブロックB2には、原稿データを41(=4)個の領域に分割した各分割領域の特徴量を符号化したデータが、所定の順序で格納される。なお、ブロック数Nを大きくすれば、特徴量が詳細な特徴を表すことができる一方で、処理速度に時間を要することになる。反対に、ブロック数Nを小さくすれば、処理速度を高速化することができる一方で、詳細な特徴を表現できない。したがって、ブロック数Nは、求められる表現精度と処理速度とを考慮して、適宜設定すればよい。所定の精度を確保するためには、最小の分割領域が1mm〜1cm程度となるようにブロック数Nを決定することが望ましい。また、原稿データの分割数は、任意に設定可能である。
【0037】
上述の特徴量は、本実施例では、各分割領域を構成する各々の画素データのうちの、所定範囲の色階調値を有する画素データが占める割合である。ここでは、当該割合を、以下の基準に基づいて、2ビットの情報に符号化することとした。なお、かかる構成では、いずれかの分割領域で「00」または「11」に符号化された場合、当該分割領域の一部で構成され、当該分割領域よりも小さい分割領域においては、符号化結果は、必ず「00」または「11」になるので、符号化のための演算の一部を省略し、処理を高速化することも可能である。
「00」:所定範囲の色階調値の画素数が0%
「01」:所定範囲の色階調値の画素数が0%よりも大きく50%未満
「10」:所定範囲の色階調値の画素数が50%以上100%未満
「11」:所定範囲の色階調値の画素数が100%
【0038】
本実施例においては、特徴量の算出の基礎となる色階調値の所定範囲は(R,G,B)=(255,255,255)、つまり、白色とした。かかる構成では、印刷媒体に占める、色材を用いて着色される(印刷が行われる)領域の面積の割合として特徴量を捉えることもできる。かかる構成とすれば、特徴量は、原稿データが表す画像の大まかなレイアウトを反映したものとすることができる。また、原稿データの編集作業の中で、全てのページに亘って、印刷物の着色箇所の色合いが修正されたとしても、版数の異なる原稿データであるか否かの判断を精度良く行うことができる。ただし、この所定範囲は、印刷装置PRTの印刷対象物の特徴を考慮して適宜設定すればよく、例えば、所定範囲は(R,G,B)=(0,0,0)、すなわち、黒色としてもよいし、R,G,Bの各階調値の各々について100〜150の範囲としてもよい。こうしても、色階調値に基づいて、特徴量を容易に算出することができる。しかも、版数が異なる画像データ同士でなければ、所定範囲の色階調値を有する画素データが占める割合は、大きく異なることが多いので、版数の異なる原稿データであるか否かの判断を精度良く行うことができる。勿論、複数の特徴量を組み合わせてもよい。例えば、所定範囲を(R,G,B)=(255,255,255)とした特徴量を符号化したデータと、所定範囲を(R,G,B)=(0,0,0)とした特徴量を符号化したデータとを組み合わせて、判定符号としてもよい。こうすれば、版数の異なる原稿データであるか否かの判断の精度を、さらに高めることができる。もとより、特徴量は、上述の例に限らず、各分割領域を構成する各々の画素データの平均色階調値や、輝度値などに基づくエッジ量など、種々の構成とすることができる。
【0039】
このようにして符号化された符号化データを格納するブロックB1〜Bnは、図7に示すように、原稿データの分割数が少ない分割領域の符号化データを格納するブロックほど相対的に前に配置される。なお、上述の例では、原稿データの全体を所定数に分割して、符号化を行う構成について示したが、画像データが、印刷物を仕上がりサイズに断裁するための位置決めなどに用いるコーナートンボの画像データを含み、当該コーナートンボが、常に同一位置に配置されるような場合や、印刷物に、常に同一幅の余白部分が設けられるような場合には、原稿データのうちの、コーナートンボよりも外側の領域や、余白領域を除外した領域のみを対象に、領域の分割及び判定符号の作成を行ってもよい。こうすれば、常に印刷を行われない領域を除外することになるので、原稿データに応じて異なるデータ構成となる部分のみを対象に判定符号を作成でき、版数の異なる原稿データであるか否かの判断の精度を、さらに高めることができる。
【0040】
このように判定符号を作成すると、CPU50は、符号照合部56の処理として、判定符号照合処理を行う(ステップS130)。判定符号照合処理とは、上記ステップS120で作成した判定符号と、符号記憶部62の領域A1〜A6のうちの、上記ステップS110で選択した識別マークに対応する領域に原稿データごとに区分されて記憶された判定符号とを照合し、旧版の判定符号を特定することによって、旧版の判定符号が符号記憶部62に登録されているか否かを判定する処理である。この判定符号照会処理の詳細については後述する。
【0041】
判定符号照合処理の結果、旧版の判定符号が登録されていなければ(ステップS140:NO)、上記ステップS110で選択した識別マークは、旧版で未だ使用されていないということである。そこで、CPU50は、上記ステップS120で作成した判定符号を、符号記憶部62のうちの、上記ステップS110で選択した識別マークM1〜M6に対応する領域A1〜A6に登録する(ステップS150)。判定符号を登録すると、CPU50は、出力部55の処理として、入力された原稿データ(RGBラスターデータ)に、上記ステップS110で選択した識別マークM1〜M6の画像データを合成して、合成データを生成する(ステップS160)。
【0042】
一方、旧版の判定符号が登録されていれば(ステップS140:YES)、上記ステップS110で選択した識別マークは、旧版で既に使用されているということである。そこで、CPU50は、更に、上記ステップS110において未選択の識別マークM1〜M6があるか否かを判断する(ステップS170)。
【0043】
その結果、未選択の識別マークM1〜M6があれば(ステップS170:YES)、旧版に使用されていない識別マークM1〜M6が存在する可能性があるということである。そこで、CPU50は、処理を上記ステップS110に戻し、上記ステップS110〜S170の処理を繰り返す。一方、未選択の識別マークM1〜M6がなければ(ステップS170:NO)、旧版に識別マークM1〜M6の全てが使用されているということである。そこで、CPU50は、全ての識別マークM1〜M6が使用されていることを示す識別マークMsを選択し(ステップS180)、入力された原稿データに、識別マークMsの画像データを合成して、合成データを生成する(ステップS160)。
【0044】
本実施例においては、上記ステップS160では、原稿データが表す画像の端部に、識別マークM1〜M6,Msのいずれかを合成するものとした。こうすれば、原稿データがコーナートンボの画像データを含む場合や、余白部分を有する場合には、画像が印刷される予定のない領域に識別マークM1〜M6,Msが配置されることになるので、合成データが印刷された際に、識別マークM1〜M6,Msが印刷画像に影響を与えることがない。その結果、印刷物の編集状態を好適に確認できる。しかも、識別マークM1〜M6,Msの識別性が低下することもない。更に、印刷媒体の端部に識別マークM1〜M6,Msが印刷されるので、複数ページの印刷物を重ねた状態でも、容易に識別マークM1〜M6,Msの色を視認することができる。ただし、必ずしも端部に合成する構成に限定するものではなく、例えば、原稿データが表す画像に重畳する位置に、識別マークM1〜M6,Msを配置しても差し支えない。
【0045】
このようにして、合成データが生成されると、識別情報付加処理は終了となる。かかる識別情報付加処理によって、原稿データに識別マークが付加されると、CPU50は、出力部55の処理として、画像処理部57を介して、原稿データをプリントエンジン80に出力し、識別マークが付加された印刷物をプリントエンジン80に出力させる。識別マークが付加された印刷物の具体例を図8に示す。この例では、印刷物の各ページの上側の端部に、旧版で使用されていない識別マークM2が印刷された様子を示している。このように、原稿データと識別マークのデータとを合成して印刷を行えば、印刷装置PRTが当然に備える印刷機能によって、印刷物に識別マークを付加することができ、識別マークを付加するための特別な機構等が不要である。その結果、印刷装置PRTの装置構成を簡略化でき、印刷装置PRTの小型化、低コスト化に資する。
【0046】
A−2−2.識別情報付加処理の詳細:
上述した識別情報付加処理における判定符号照合処理(ステップS130)の流れを図9に示す。図示するように、判定符号照合処理が開始されると、CPU50は、まず、符号記憶部62に登録された判定符号の原稿データ(以下、登録原稿ともいう)のうちから、1つの原稿データを選択する(ステップS131)。ここで選択された原稿データを選択原稿ともいう。具体的には、CPU50は、符号記憶部62の領域A1〜A6のうちの、上記ステップS110で選択された識別マークM1〜M6に対応する領域に原稿データごとに登録された判定符号のうちから、当該判定符号照合処理において未選択の原稿データに係る判定符号を選択する。
【0047】
判定符号を選択すると、CPU50は、原稿間照合処理を行う(ステップS132)。原稿間照合処理とは、上記ステップS131で選択した選択原稿の判定符号と、上記ステップS120で作成した、入力された原稿データの判定符号とを照合し、選択原稿が旧版のものであるか否かを判定する処理である。この原稿間照合処理の詳細については後述する。原稿間照合処理の結果、選択原稿が旧版のものであれば(ステップS133:YES)、CPU50は、旧版の判定符号は符号記憶部62に登録されていると判定する(ステップS134)。一方、選択原稿が旧版のものでなければ(ステップS133:YES)、CPU50は、上記ステップS131において未選択の登録原稿があるか否かを判断する(ステップS135)。
【0048】
その結果、未選択の登録原稿があれば(ステップS135:YES)、CPU50は、処理を上記ステップS131に戻し、上記ステップS131〜S135の処理を繰り返す。一方、未選択の登録原稿がなければ(ステップS135:NO)、CPU50は、旧版の判定符号は、符号記憶部62に登録されていないと判定する(ステップS136)。こうして、判定符号照合処理は終了となる。
【0049】
かかる判定符号照合処理における原稿間照合処理(上記ステップS132)の流れを図10に示す。図示するように、原稿間照合処理が開始されると、CPU50は、まず、入力した原稿データ(以下、印刷原稿ともいう)の判定符号のうちから、当該原稿間照合処理において未だ未選択のJページ目(Jは1以上、K以下の整数、Kは原稿データの総ページ数を示す整数)の判定符号を選択する(ステップS210)。また、CPU50は、上記ステップS131で選択した選択原稿の判定符号のうちから、ステップS210でJページを選択した際に未だ未選択のLページ目(Lは1以上、M以下の整数、Mは原稿データの総ページ数を示す整数)の判定符号を選択する(ステップS220)。
【0050】
判定符号を選択すると、CPU50は、ページ間照合処理を行う(ステップS230)。ページ間照合処理とは、上記ステップS210,S220で選択したページ間で判定符号を照合し、判定符号が一致するか否かを判定する処理である。このページ間照合処理の詳細については後述する。ページ間照合処理の結果、判定符号が一致すれば(ステップS240:YES)、CPU50は、選択原稿は、印刷原稿の旧版であると判定する(ステップS250)。一方、ページ間照合処理の結果、判定符号が一致しなければ(ステップS240:NO)、CPU50は、選択原稿に上記ステップS220で未選択のページがあるか否かを判断する(ステップS260)。
【0051】
その結果、未選択のページがあれば(ステップS260:YES)、CPU50は、処理を上記ステップS220に戻し、上記ステップS220〜S250の処理を繰り返す。一方、未選択のページがなければ(ステップS260:NO)、CPU50は、印刷原稿に上記ステップS210で未選択のページがあるか否かを判断する(ステップS270)。その結果、未選択のページがあれば(ステップS270:YES)、CPU50は、処理を上記ステップS210に戻し、上記ステップS210〜S270の処理を繰り返す。一方、未選択のページがなければ(ステップS270:NO)、CPU50は、選択原稿は、印刷原稿の旧版ではないと判定する(ステップS280)。こうして、原稿間照合処理は終了となる。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本実施例の判定符号照合処理においては、ページごとに作成された判定符号を、印刷原稿と選択原稿との間で照合し、1ページでも判定符号が一致する選択原稿があれば、選択原稿はをごうをはいてはょりとは 印刷原稿の旧版であり、符号記憶部62に旧版の判定符号が登録されていると判定する構成とした。かかる構成とすることで、旧版の判定符号を簡単に行うことができ、しかも、判定符号照合処理を高速化することができる。ただし、かかる判定の基準は、1よりも多数のページで判定符号が一致することとしてもよい。こうすれば、旧版の判定符号を精度良く、かつ、簡単に特定することができる。また、当該判定の基準は、印刷原稿の全ページに占める、判定符号が一致するページの割合などとしてもよい。こうしても、旧版の判定符号を精度良く特定することができる。
【0053】
かかる原稿間照合処理におけるページ間照合処理(上記ステップS230)の流れを図11に示す。図示するように、ページ間照合処理が開始されると、CPU50は、まず、印刷原稿及び選択原稿の判定符号を構成するブロックB1〜Bnうちから、当該ページ間照合処理において未だ未選択であるP番目(Pは1以上、N以下の整数)のブロックBpをそれぞれ選択する(ステップS231)。ブロックBpを選択すると、CPU50は、印刷原稿及び選択原稿のブロックBpに格納された符号化データを照合する(ステップS232)。
【0054】
符号化データを照合すると、CPU50は、照合した両ブロックの符号化データが一致するか否かを判断する(ステップS233)。その結果、符号化データが一致しなければ(ステップS233:NO)、CPU50は、印刷原稿(Jページ目)及び選択原稿(Lページ目)の判定符号は一致しないと判定する(ステップS234)。一方、符号化データが一致すれば(ステップS233:YES)、CPU50は、上記ステップS231で未選択のブロックBpがあるか否かを判断する(ステップS235)。その結果、未選択のブロックBpがあれば(ステップS235:YES)、CPU50は、処理を上記ステップS231に戻し、上記ステップS231〜S235の処理を繰り返す。一方、未選択のブロックBpがなければ(ステップS235:NO)、CPU50は、印刷原稿(Jページ目)及び選択原稿(Lページ目)の判定符号は一致すると判定する(ステップS236)。こうして、ページ間照合処理は終了となる。
【0055】
A−3.効果:
かかる構成の印刷装置PRTは、過去に印刷対象となった原稿データの特徴量を符号化した判定符号を、付加して出力する版数識別情報と対応付けて符号記憶部62に記憶する。そして、新たに印刷対象となる原稿データから作成した判定符号と、符号記憶部62に記憶された判定符号とを照合して、印刷対象となる原稿データとは版数が異なる旧版の原稿データの判定符号を特定し、旧版に未だ付加されていない版数識別情報を識別情報記憶部61から選択して、原稿データに付加して出力する。したがって、識別情報記憶部61に記憶された版数識別情報の数までは、種類が異なる版数識別情報を付加した印刷物を出力することができる。その結果、ユーザーは、版数識別情報を頼りに、新版と旧版との混同を防止することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、かかる印刷装置PRTは、入力された原稿データから作成した判定符号によって、旧版の原稿データを特定することができるので、版管理システムを備えない外部装置、例えば、原稿データを作成したパーソナルコンピューターなどから原稿データを受け付けて出力する場合においても、好適に適用することができ、汎用性に優れる。
【0056】
また、印刷装置PRTは、原稿データについてページ単位で判定符号を作成し、新たに印刷対象となる原稿データの判定符号と、符号記憶部62に記憶された判定符号とが、所定数または所定割合のページで一致する場合に、符号記憶部62に記憶された判定符号を、旧版の判定符号として特定する。したがって、判定符号の作成単位と、判定符号の一致を判断する単位との整合が図られるので、効率的な処理を行うことができる。しかも、簡単な処理で旧版の原稿データを特定することができる。
【0057】
また、印刷装置PRTは、原稿データを分割領域ごとに符号化を行った符号化データを合わせて判定符号を作成するので、範囲の広さと詳細さを併せ持つ判定符号を作成して、版数が異なる原稿データの判定符号を効率的かつ精度良く特定することができる。また、印刷装置PRTは、原稿データの同一の範囲を異なるN個の分割数でそれぞれ分割して符号化し、判定符号としてブロックB1〜Bnに格納する。ブロックB1〜Bnは、原稿データの分割数が小さい分割領域の符号化データを格納するブロックほど相対的に前に配置される。したがって、照合する判定符号のもととなる原稿データ間の内容が大きく異なる場合には、判定符号が不一致であることがわかり、版数が異なる画像データの判定符号ではないことを特定することができ、処理の効率化、高速化に資する。
【0058】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。
B−1.印刷装置PRTaの概略構成:
第2実施例としての印刷装置PRTaの概略構成を図12に示す。図12において、第1実施例と同様の構成については、図1と同一の符号の末尾に「a」を付して表示している。以下、第1実施例と同様の構成については説明を省略し、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。図示するように、印刷装置PRTaは、識別情報付加処理部352の機能が第1実施例の識別情報付加処理部52と異なる。また、メモリー60aには、第1実施例とは異なる情報が記憶される識別情報記憶部361と符号記憶部362とが確保されている。また、印刷装置PRTaは、ハードディスクドライブ370を備えている。このハードディスクドライブ370には、ラスターデータ記憶部371が確保されている。
【0059】
識別情報付加処理部352は、符号作成部53a、出力部355,同一性判定部356としての機能を有している。この識別情報付加処理部352は、識別情報付加処理を行う。第2実施例としての識別情報付加処理とは、入力されたRGBラスターデータに対して、旧版と新版とが同一であるか否かをページごとに識別可能な同一性識別情報を付加する処理である。
【0060】
メモリー60aに確保された識別情報記憶部361は、識別情報付加処理部352が付加する同一性識別情報を記憶する領域である。本実施例においては、識別情報記憶部361には、第1実施例に示した識別マークM1の幅が相対的に短い形状Aの識別マークと、識別マークM1幅が相対的に長い形状Bの識別マークとが記憶されている。ただし、識別情報記憶部361に記憶された識別マークは、種類が異なるものであればよく、例えば、同一形状であって、色が異なるマークであってもよい。
【0061】
メモリー60aに確保された符号記憶部362は、領域A1〜A6を備えていない点でで、第1実施例の符号記憶部62と異なる。すなわち、符号記憶部362には、印刷装置PRTaで印刷対象となった原稿データの判定符号が、原稿データごとに区分され、更に、ページごとに区分されて記憶されるが、これらは、原稿データに付加された識別マークと対応付けられていない。
【0062】
ハードディスクドライブ370に確保されたラスターデータ記憶部371には、印刷装置PRTaで印刷対象となった原稿データそのもの、すなわち、RGBラスターデータが記憶される。ここで記憶されるRGBラスターデータは、符号記憶部362に原稿データごとに区分して記憶された判定符号と対応付けられている。符号記憶部362及びラスターデータ記憶部371に、判定符号及びRGBラスターデータが記憶された様子を概念的に図13に示す。この例では、原稿データ1〜4の判定符号とRGBラスターデータとが対応付けられて記憶されている様子を示している。本実施例では、判定符号及びRGBラスターデータは、印刷装置PRTaが入力を受け付けた順に、すなわち、印刷対象となった順に記憶されている。図13に示す例では、原稿データ1,2,3,4の順に印刷対象となったことを示している。なお、このような順に配置することに代えて、判定符号及びRGBラスターデータと、RGBラスターデータの出力日時とを対応付けて記憶してもよい。
【0063】
原稿データ3と原稿データ4とは、原稿データ3が旧版、原稿データ4が新版の関係にあり、図示するように、第1ページと第3ページに編集が加えられている。なお、本実施例においては、符号記憶部362とラスターデータ記憶部371とは、異なる記憶媒体に確保されているが、同一の記憶媒体に確保されていてもよい。例えば、判定符号とRGBラスターデータとは、両者共に符号記憶部362に記憶されてもよい。
【0064】
B−2.識別情報付加処理:
B−2−1.処理全体の流れ:
印刷装置PRTaにおける識別情報付加処理について図14を用いて説明する。図14において、第1実施例と同様の処理については、図5と同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。第2実施例としての識別情報付加処理が開始されると、CPU50aは、入力を受け付けたRGBラスターデータの特徴量を符号化して、判定符号を作成する(ステップS120)。この処理は、第1実施例と同様である。
【0065】
判定符号を作成すると、CPU50aは、判定符号照合処理を行う(ステップS130)。この処理は、基本的に第1実施例と同様である。ただし、上記ステップS131においては、符号記憶部362に記憶された登録原稿から、相対的に新しい登録原稿を順に選択する。図13に示した例では、原稿データ4、3,2,1の順に選択することとなる。上述したように、判定符号及びRGBラスターデータは、印刷対象となった順に記憶されているので、このように選択することは容易である。かかる構成とすることで、印刷原稿の最も直近に印刷された旧版を容易に特定することができる。
【0066】
判定符号照合処理の結果、旧版の判定符号が登録されていなければ(ステップS140:NO)、新版と旧版との同一性を判定することはできない。そこで、CPU50aは、上記ステップS120で作成した判定符号を符号記憶部362に記憶するとともに、これと対応付けて、RGBラスターデータをラスターデータ記憶部371に記憶する(ステップS440)。
【0067】
一方、旧版の判定符号が登録されていれば(ステップS140:YES)、CPU50aは、マーク形状決定処理を行う(ステップS410)。マーク形状決定処理とは、新版と旧版との同一性に応じた識別マークの形状を決定する処理である。具体的には、新版と旧版とが同一であることを示す形状Aの識別マークと、新版と旧版とが同一でないことを示す形状Bの識別マークとのうちのいずれを各ページに付加するかを決定する処理である。この処理の詳細については後述する。
【0068】
マーク形状決定処理を行うと、CPU50aは、上記ステップS120で作成した判定符号を符号記憶部362に記憶するとともに、これと対応付けて、RGBラスターデータをラスターデータ記憶部371に記憶する(ステップS420)。この処理は、上記ステップS440と同様の処理である。
【0069】
判定符号及びRGBラスターデータを記憶すると、CPU50aは、出力部55の処理として、入力された原稿データ(RGBラスターデータ)に、上記ステップS410で決定した形状の識別マークの画像データを合成して、合成データを生成する(ステップS430)。
【0070】
このようにして、合成データが生成されると、識別情報付加処理は終了となる。かかる識別情報付加処理によって、原稿データに識別マークが付加されると、CPU50aは、出力部55の処理として、画像処理部57を介して、原稿データをプリントエンジン80に出力し、プリントエンジン80に識別マークが付加された印刷物を出力させる。識別マークが付加された印刷物の具体例を図15に示す。この例は、上述した図13において、符号記憶部362及びラスターデータ記憶部371に、原稿データ1〜3の判定符号及びRGBラスターデータが記憶されている(原稿データ4は記憶されていない)状態で、新たに原稿データ4の印刷を行った際の印刷物を示している。図示するように、印刷物の各ページの上側の端部には、新版(原稿データ4)において、旧版(原稿データ3)から修正のあった第1,3ページでは、形状Bの識別マークが印刷され、旧版から修正のない第2,4ページでは、形状Aの識別マークが印刷されている。
【0071】
B−2−2.識別情報付加処理の詳細:
上述した識別情報付加処理におけるマーク形状決定処理(ステップS410)の流れを図16に示す。図示するように、マーク形状決定処理が開始されると、CPU50aは、まず、新版である印刷原稿のうち、当該マーク形状決定処理において未だ未選択のJページ(Jは1以上、K以下の整数、Kは原稿データの総ページ数を示す整数)を選択する(ステップS411)。本実施例においては、選択するページを1ページから1づつインクリメントしていくものとした。Jページを選択すると、CPU50aは、上記ステップS130で特定した旧版にJページ目があるか否かを判断する(ステップS412)。
【0072】
その結果、Jページ目があれば(ステップS412:YES)、CPU50aは、新版のJページ目と、符号記憶部362に記憶された旧版のJページ目との間で、判定符号を照合する(ステップS413)。照合の結果、判定符号が完全に一致すれば(ステップS414:YES)、Jページ目の新版と旧版とは、内容が完全に同一である可能性がある。そこで、CPU50aは、新版のJページ目と、ラスターデータ記憶部371に記憶された旧版のJページ目との間で、RGBラスターデータを照合する(ステップS415)。照合の結果、RGBラスターデータが完全に一致すれば(ステップS416:YES)、CPU50aは、新版のJページ目の識別マークを、新版と旧版とが同一であることを示す形状Aの識別マークに決定する(ステップS417)。
【0073】
一方、旧版にJページ目がない場合(ステップS412:NO)、判定符号が一致しない場合(ステップS414:NO)、RGBラスターデータが一致しない場合(ステップS416:NO)には、CPU50aは、新版のJページ目の識別マークを、新版と旧版とが同一でないことを示す形状Bの識別マークに決定する(ステップS418)。
【0074】
こうして、新版のJページ目の識別マークの形状を決定すると、CPU50aは、新版の全てのページについて、識別マークの形状を決定するまで、上記ステップS411〜S418の処理を繰り返し(ステップS419)、マーク形状決定処理を終了する。以上の説明からも明らかなように、本実施例においては、新版及び旧版の同一のページ同士を照合して、新版と旧版との同一性を判定している。
【0075】
B−3.効果:
かかる構成の印刷装置PRTは、過去に印刷対象となった原稿データの特徴量を符号化した判定符号を原稿データ(RGBラスターデータ)と対応付けて、判定符号を符号記憶部62に、原稿データをラスターデータ記憶部371記憶する。そして、新たに印刷対象となる原稿データから作成した判定符号と、符号記憶部62に記憶された判定符号とを照合して、印刷対象となる原稿データの旧版の判定符号を判定する。そして、印刷対象となる原稿データと、特定した判定符号に対応付けられた原稿データとを照合して、原稿データ間の同一性を所定の単位(本実施例ではページごと)に判定し、その判定結果を同一性識別情報としての識別マークを付加した印刷物を出力する。したがって、ユーザーは、編集を行ったページと編集を行わなかったページとを容易に識別することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、判定符号に基づいて特定された旧版の原稿データのみを対象として、原稿データの照合を行うので、判定符号と比較してデータサイズの大きい原稿データ同士の照合を極力避けることができ、処理を効率化、高速化することができる。さらに、印刷装置PRTは、原稿データから作成した判定符号と、原稿データとによって、旧版を特定し、同一性の判定を行うことができるので、第1実施例と同様に、汎用性に優れる。
【0076】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例について説明する。第3実施例としての印刷装置PRTbの構成は、第2実施例と同様であり、説明を省略する。ただし、以下の説明において、第3実施例としての構成を説明する場合には、図12に示した各々の構成に付した符号の末尾を「b」に代えて表示する。第3実施例と第2実施例とは、マーク形状決定処理の内容のみが異なる。以下、第2実施例と異なる点についてのみ説明し、第2実施例と共通する点については説明を省略する。第3実施例としてのマーク形状決定処理の流れを図17に示す。第3実施例としてのマーク形状決定処理が開始されると、CPU50bは、新版である印刷原稿のうち、当該マーク形状決定処理において未だ未選択のJページ(Jは1以上、K以下の整数、Kは原稿データの総ページ数を示す整数)を選択する(ステップS511)。Jページを選択すると、CPU50bは、旧版である選択原稿のうち、ステップS511でJページを選択した際に未だ未選択のLページ(Lは1以上、M以下の整数、Mは原稿データの総ページ数を示す整数)を選択する(ステップS512)。ステップS511,S522においては、選択するページを1ページから1づつインクリメントしていくものとした。
【0077】
Lページを選択すると、CPU50bは、上記ステップS511,S512で選択したページ間で判定符号を照合する(ステップS513)。照合の結果、判定符号が完全に一致すれば(ステップS514:YES)、CPU50bは、ラスターデータ記憶部371に記憶されたRGBラスターデータを照合する(ステップS515)。照合の結果、RGBラスターデータが完全に一致すれば(ステップS516:YES)、CPU50bは、新版のJページ目の識別マークを、新版と旧版とが同一であることを示す形状Aの識別マークに決定する(ステップS517)。
【0078】
一方、判定符号が一致しない場合(ステップS514:NO)、RGBラスターデータが一致しない場合(ステップS516:NO)には、CPU50bは、旧版に未選択のページがあるか否かを判断する(ステップS518)。その結果、未選択のページがあれば(ステップS518:YES)、処理を上記ステップS512に戻して、上記ステップS512〜S516の処理を繰り返す。一方、未選択のページがなければ、(ステップS518:NO)、CPU50bは、新版のJページ目の識別マークを、新版と旧版とが同一でないことを示す形状Bの識別マークに決定する(ステップS519)。
【0079】
こうして、新版のJページ目の識別マークの形状を決定すると、CPU50bは、新版の全てのページについて、識別マークの形状を決定するまで、上記ステップS511〜S519の処理を繰り返し(ステップS520)、マーク形状決定処理を終了する。以上の説明からも明らかなように、本実施例においては、新版の各々のページと、旧版の各々のページとをそれぞれ照合して、新版と旧版との同一性を判定している。
【0080】
かかる構成の印刷装置PRTbは、第2実施例と同様の効果を奏する。しかも、新版の各々のページと、旧版の各々のページとをそれぞれ照合して、つまり、総当たりで照合可能であるから、新版と旧版とでページの順番が入れ替わったとしても、各ページの実質的な内容の同一性を判定し、同一性識別情報として付加して出力することができる。したがって、ユーザーの検版作業における利便性が向上する。
【0081】
上述した第3実施例のように、新版の各々のページと、旧版の各々のページとをそれぞれ照合して、新版と旧版との同一性を判定する構成とする場合には、上記ステップS516の判断に基づいて、いずれのページ同士が一致するかを示す情報を記憶しておけば、新版の各々のページと、旧版の各々のページとの対応関係を判定して、その結果を原稿データに付加して、識別可能に出力することも可能である。
【0082】
例えば、RGBラスターデータが各ページで完全に一致する場合には、図18に示すように、新版の各ページに、旧版の対応ページ、つまり、新版の各ページが旧版のいずれのページと一致するのかを示す識別情報を付加することが可能である。図18の例では、A〜Eのページに新版と旧版とが同一であることを示す形状Aの識別マークが付され、更に、識別マークと併せて旧版の対応ページが表示された状態を示している。例えば、新版の第2ページには、当該ページが旧版の第3ページに対応する旨の識別マークが付加されている。
【0083】
あるいは、旧版に対して新版に新たなページが追加され、当該追加されたページ以外のページでは、新版と旧版とが完全に一致する場合には、図19に示すように、新たに追加されたページに、その旨を示す情報を付加することが可能である。図19の例では、ページEが新規に追加された旨の識別マークが付加されている。あるいは、旧版に対して新版の所定のページが削除され、当該削除されたページ以外のページでは、新版と旧版とが完全に一致する場合には、図20に示すように、削除されたページの両端に配置されるページに、その間のページが削除された旨を示す情報を付加することが可能である。図20の例では、ページC,Eの識別マークの脇に、削除されたページの始点または終点を示すマークを更に付加することで、ページDが削除された旨を識別可能にしている。
【0084】
これらの構成とすれば、ユーザーは、新版と旧版とのページごとの対応関係を容易に識別することができ、検版作業の利便性が向上する。しかも、判定符号に基づいて特定された旧版のみを対象として原稿データの照合を行うので、判定符号と比較してデータサイズが大きい原稿データとの照合を極力避けることができ、処理を効率化、高速化することができる。
【0085】
かかる図18〜図20に示した態様は、新版と旧版との対応ページが完全に一致する場合に限られるものではない。例えば、RGBラスターデータが完全に一致したページのみに対して、上述したような識別マークを付加してもよい。あるいは、ページ間でのRGBラスターデータを構成する各画素データの一致率を算出し、当該一致率が所定値以上である場合に、対応関係があると判定する構成としてもよい。
【0086】
D.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
D−1.変形例1:
上述の実施形態においては、原稿データの符号化は、ページ単位で行う構成としたが、符号化を行う単位は、任意に設定すればよい。例えば、2ページを単位として符号化を行ってもよいし、1/2ページを単位として符号化を行ってもよい。また、上述の実施形態においては、判定符号は、所定範囲(上述の例では、1ページ)の原稿データを所定数の領域に分割して、分割領域ごとに符号化を行ったデータで構成したが、判定符号の対象領域全体を一体的に符号化してもよい。
【0087】
D−2.変形例2:
上述した第1実施例としての印刷装置PRTの構成と、第2実施例としての印刷装置PRTaの構成とは、組み合わせることも可能である。かかる構成は、例えば、以下のようにして実現可能である。まず、符号記憶部62に、判定符号と識別マークと印刷日時などの時間情報とを対応付けて記憶しておく。次に、符号記憶部62に記憶された全ての原稿データに対して照合を行って、第1実施例としての識別情報付加処理を実行する。次に、第1実施例として示した識別情報付加処理において、旧版と判断された全ての原稿データのうちで、時間情報が最新の原稿データに対して、第2実施例としてのマーク形状決定処理を行う。かかる構成とすれば、第1実施例及び第2実施例の効果を同時に奏することができ、検版作業の利便性が大幅に向上する。なお、同様に、第1実施例としての印刷装置PRTの構成と、第3実施例としての印刷装置PRTbとの構成を組み合わせることも可能である。
【0088】
D−3.変形例3:
上述の第3実施例においては、同一性識別情報と、新版と旧版との対応関係を示す情報とを一体的に形成した識別マークを付加する構成について示したが、複数の情報を表す場合には、それぞれの情報を表す識別マークが分離した配置で付加してもよい。上述の変形例2に対しても同様である。
【0089】
D−4.変形例4:
上述の実施形態においては、原稿データと識別マークの画像データとを合成した合成データを印刷することによって、原稿データの印刷物に識別マークを付加する構成について示したが、識別マークは、印刷以外の方法で付加されてもよい。例えば、印刷装置がパンチ穴を形成する機構を備えている場合には、位置、大きさ、形状、数などを変化させてパンチ穴を形成することで、識別マークとして機能させてもよい。あるいは、印刷装置が裁断等の機能を備えている場合には、同様に、印刷媒体をカットする位置、大きさ、形状、数などを変化させてもよい。かかる場合、CPU50は、RGBラスターデータと共に、パンチ穴の形成位置などを表す情報を、識別情報としてRGBラスターデータと共に出力する構成としてもよい。
【0090】
D−5.変形例5:
上述の実施形態において記憶媒体に記憶する判定符号や原稿データは、圧縮して記憶してもよい。あるいは、複数の判定符号間や、複数の原稿データ間で、データが完全に一致するものがある場合には、一方のみを記憶して、他方が必要な処理においては、当該一方を流用してもよい。これらの構成とすれば、記憶媒体の記憶容量を有効利用することができる。逆に言えば、記憶媒体の容量を小さくすることができる。
【0091】
D−6.変形例6:
上述した実施形態においては、本発明を印刷装置として実現する例について示したが、本発明は、プリントサーバーと印刷装置とを備えた広義の印刷装置としても実現することができる。この場合、上述の実施形態で説明した印刷装置の機能(プリントエンジン80を除く)の一部または全部をプリントサーバーが備える構成としてもよい。これらの機能の全てをプリンターサーバーが備える場合、当該プリントサーバーは、版数識別情報や同一性識別情報などの各種識別情報を原稿データに付加して出力する印刷制御装置としても捉えることができる。
【0092】
D−7.変形例7:
上述の実施形態においては、本発明の画像出力装置の態様の1つとして印刷機構に画像データを出力する印刷装置の構成について示したが、本発明の画像出力装置は、種々の形態で実現することができる。例えば、製版装置に画像データを出力する画像出力装置とすることもできる。あるいは、画像表示装置に画像データを出力する画像出力装置とすることもできる。
【0093】
画像表示装置としての概略構成の例を図21に示す。図21において、第1実施例と同様の構成については、図1と同一の符号の末尾に「b」を付して表示している。以下、第1実施例と同様の構成については説明を省略し、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。図示するように、画像表示装置DISは、ビデオコントローラー640と、ディスプレイ680とを備えている。ビデオコントローラー640は、画像表示装置DISの動作全般を制御する制御ユニットである。ディスプレイ680は、本実施例では、液晶式のディスプレイであり、ディスプレイ駆動回路を備えている。ビデオコントローラー640を構成するCPU650は、第1実施例として示した識別情報付加処理を実行するほか、画像処理部657として機能する。識別情報付加処理によって、版数識別情報が付加された画像データは、識別情報付加処理部52bから画像処理部657を介して、ディスプレイ680に出力される。画像処理部657は、識別情報付加処理部52によって版数識別情報を付加されたRGBラスターデータを、ディスプレイ680の色規格に適したRGB形式のラスターデータに色変換する。
【0094】
かかる画像表示装置DISは、種類が異なる版数識別情報を付加した画像データを表示することができるので、第1実施例と同様の効果を奏する。しかも、ディスプレイ上で検版作業を行うことができるので、印刷出力する場合と比較して印刷媒体が不要となり、省資源に資する。なお、画像表示装置DISは、第2実施例として示した識別情報付加処理を実行してもよいことは勿論である。また、CPU650の機能は、サーバが備える構成とし、当該サーバに接続されたディスプレイに画像データを出力する構成とすることもできる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、印刷装置や画像表示装置などの種々の画像出力装置としての構成の他、画像出力制御装置、画像出力制御プログラム、印刷制御プログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、画像出力方法、印刷方法、印刷制御方法等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0096】
31…アプリケーション
32…ラスターライズ処理部
40…プリントコントローラー
50…CPU
51…入力部
52…識別情報付加処理部
53…符号作成部
54…選択部
55…出力部
56…符号照合部
57…画像処理部
60…メモリー
61…識別情報記憶部
62…符号記憶部
80…プリントエンジン
352…識別情報付加処理部
355…出力部
356…同一性判定部
361…識別情報記憶部
362…符号記憶部
370…ハードディスクドライブ
371…ラスターデータ記憶部
640…ビデオコントローラー
650…CPU
657…画像処理部
680…ディスプレイ
PRT…印刷装置
PC…パーソナルコンピューター
DIS…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像を表す画像データを出力する画像出力装置であって、
出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力部と、
前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成部と、
版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択部と、
前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した付加画像データを出力する出力部と、
出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する符号記憶部と、
前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記符号記憶部に記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合部と
を備え、
前記選択部は、前記符号照合部の照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する
画像出力装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像出力装置であって、
前記符号作成部は、前記入力した画像データを、該画像データが表す画像のページごとに前記判定符号を作成し、
前記符号照合部は、前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記符号記憶部に記憶された前記判定符号とが、所定数または所定割合のページで一致する場合に、該記憶された判定符号を、前記版数が異なる画像データの判定符号として特定する
画像出力装置。
【請求項3】
前記判定符号は、所定範囲の前記入力した画像データを所定数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った符号化データを合わせて構成される請求項1または請求項2記載の画像出力装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像出力装置であって、
前記判定符号は、所定範囲の前記入力した画像データを第1の数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った第1の符号化データと、該所定範囲の画像データを前記第1の数よりも多数である第2の数の領域に分割し、該分割した領域ごとに前記符号化を行った第2の符号化データとを含み、
前記第1の符号化データは、前記第2の符号化データよりも前に配置された
画像出力装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記入力した画像データの所定領域を構成する各々の画素データのうちの、所定範囲の色階調値を有する画素データが占める割合である請求項1ないし請求項4のいずれか記載の画像出力装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか記載の画像出力装置であって、
前記複数種類の版数識別情報は、少なくとも色または形状が相互に異なる識別マークを表すマーク画像データであり、
前記出力部は、前記入力した画像データと前記マーク画像データとを合成した合成画像データを生成し、該合成画像データを前記付加画像データとして出力する
画像出力装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の画像出力装置であって、
更に、前記出力対象となった画像データを、該画像データから作成した前記判定符号と対応付けて記憶する画像データ記憶部と、
前記符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データと、前記出力対象となる画像データとを照合して、該画像データ間の同一性を所定の単位ごとに特定する同一性判定部と
を備え、
前記出力部は、前記同一性判定部の判定結果を識別可能な同一性識別情報を付加した前記付加画像データを出力する
画像出力装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の画像出力装置であって、
更に、前記出力対象となった画像データを、該画像データから作成した前記判定符号と対応付けて記憶する画像データ記憶部と、
前記符号照合部が特定した判定符号と対応付けられて記憶された画像データのページ単位の各々と、前記出力対象となる画像データのページ単位の各々とを照合して、該ページ間の対応関係を判定する対応関係判定部と
を備え、
前記出力部は、前記対応関係判定部の判定結果を識別可能な情報を付加した前記付加画像データを出力する
画像出力装置。
【請求項9】
所定の画像を表す画像データを出力する画像出力装置であって、
出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力部と、
前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成部と、
出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号と、該出力対象となった画像データとを対応付けて記憶する画像データ記憶部と、
前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定し、前記出力対象となる画像データと、前記特定した判定符号に対応付けられた画像データとを照合して、該画像データ間の同一性を所定の単位ごとに判定する同一性判定部と、
前記入力した画像データに、前記同一性判定部の判定結果を識別可能な同一性識別情報を付加して出力する出力部と
を備えた画像出力装置。
【請求項10】
所定の画像を表す画像データを出力するための画像出力制御プログラムであって、
出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力機能と、
前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成機能と、
版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択機能と、
前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した画像データを出力する出力機能と、
出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する判定符号記憶機能と、
前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合機能と
をコンピューターに実現させ、
前記選択機能は、前記照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する
画像出力制御プログラム。
【請求項11】
所定の画像を表す画像データを出力するための画像出力方法であって、
出力対象となる前記画像データの入力を受け付ける入力工程と、
前記入力した画像データの特徴量を符号化した判定符号を作成する符号作成工程と、
版数の違いを表す版数識別情報として記憶された複数種類の版数識別情報のうちから1つを選択する選択工程と、
前記入力した画像データに前記選択した版数識別情報を付加した画像データを出力する出力工程と、
出力対象となった前記入力した画像データについての前記判定符号を、該画像データに付加する版数識別情報と対応付けて記憶する判定符号記憶工程と、
前記出力対象となる画像データの前記判定符号と、前記記憶された前記判定符号とを照合して、該出力対象となる画像データとは版数が異なる画像データの前記判定符号を特定する符号照合工程と
を備え、
前記選択工程は、前記符号照合工程の照合の結果に基づいて、前記版数が異なる画像データに未だ付加されていない前記版数識別情報を選択する
画像出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−205193(P2011−205193A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67914(P2010−67914)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】