説明

画像形成装置、および画像形成装置の印刷制御方法

【課題】電子ソートの印刷に要する印刷時間を短縮することができる画像形成装置、および画像形成装置の印刷制御方法を提供すること。
【解決手段】プリンタ1は、縦方向印刷、および横方向印刷を切り替えて実行可能であり、印刷方向の切替に応じてエンジンの内部処理により、コントローラ20の制御とは独立して定着器の冷却処理を実行する印刷エンジン30と、印刷エンジン30を制御するコントローラ20と、複数のスタッカ60とを備える。コントローラ20は、縦方向印刷または横方向印刷のいずれかにより、複数のスタッカ60のそれぞれに、印刷された用紙を1部ずつ順次排紙する印刷制御と、縦方向印刷と横方向印刷との印刷方向の切替制御とを印刷エンジン30に対して交互に行う。これにより、印刷エンジン30内部で定着器の冷却処理が自動的に行われる頻度を低めて、部数印刷に要する印刷時間を短縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷した用紙を縦横交互に排紙することにより、印刷後の用紙を仕分ける機能を有する画像形成装置、および画像形成装置の印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦方向印刷と横方向印刷とを交互に切り替えて、印刷した用紙を1部ずつ縦横交互に排紙することにより、印刷した用紙を仕分ける電子ソート機能を有した画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここで、電子写真方式の画像形成装置では、用紙を縦向きに搬送して印刷する縦方向印刷を続けて行うと、定着ローラにおいて用紙と接しない範囲では熱が溜まり易くなる。このため、定着器の定着ローラが部分的に過熱状態となって、定着ローラの温度分布に偏りを生じることがある。この温度分布の偏りは、縦方向印刷後に続けて行う、横方向印刷において定着不良を生じ易くさせる。そこで、特許文献3には、縦方向印刷を行った後、横方向印刷に先立ち、定着器の冷却処理を行うことによって、定着不良の発生を防ぐ技術が開示されている。
【0004】
また、定着器を含む印刷エンジンおよびコントローラを備えた画像形成装置には、上述した定着不良の発生をより確実に防ぐため、コントローラの制御から独立した印刷エンジンの内部処理によって、定着器の冷却処理を印刷方向の切替に応じて自動的に実行するように、印刷エンジンを構成したものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−278723号公報
【特許文献2】特開2003−114598号公報
【特許文献3】特開2003−43865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、印刷エンジンの内部処理によって、定着器の冷却処理が自動的に実行される画像形成装置においては、縦方向印刷と横方向印刷とを交互に切り替えて印刷する場合、印刷方向を縦から横に切り替える度に、定着器の冷却処理が実行されることになる。このため、定着器の冷却処理に要する処理時間の分、横方向印刷を開始するタイミングが遅れて、印刷時間が長くなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]用紙を縦向きに印刷して排紙する縦方向印刷および用紙を横向きに印刷して排紙する横方向印刷を実行可能であり、印刷方向の切替に応じて定着器の冷却処理を実行する印刷部と、印刷後の用紙の排紙先である複数の排紙部と、前記複数の排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷した用紙を順次排紙させる印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行う制御部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【0009】
この構成によれば、単一の排紙部に対して、1印刷単位ごとに縦横交互に印刷された用紙を排紙する場合に比べると、印刷方向を切り替える頻度が低くなるので、定着器の冷却処理が実行される頻度も低下する。したがって、定着器の冷却処理に要する時間が少なくなる分、複数の印刷単位を印刷するために要する印刷時間を短縮することができる。なお、印刷単位とは、複数の部数を印刷する場合の部単位や、複数の印刷ジョブを印刷する場合の印刷ジョブ単位を含む概念である。
【0010】
[適用例2]上記画像形成装置において、前記複数の排紙部のうち、排紙先として用いる排紙部を指示する入力を受ける指示入力部をさらに備え、前記制御部は、前記指示された排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷された用紙を順次排紙する印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行うことを特徴とする画像形成装置。
【0011】
この構成によれば、複数の排紙部のうち所望の排紙部に、印刷された用紙を縦横交互に排紙することができる。
【0012】
[適用例3]用紙を縦向きに印刷して排紙する縦方向印刷および用紙を横向きに印刷して排紙する横方向印刷を実行可能であり、印刷方向の切替に応じて定着器の冷却処理を実行する印刷部と、印刷後の用紙の排紙先である複数の排紙部とを備える画像形成装置の印刷制御方法であって、前記複数の排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷した用紙を順次排紙させる印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行うことにより、複数の印刷単位についての印刷を実行させることを特徴とする画像形成装置の印刷制御方法。
【0013】
このようにすれば、定着器の冷却処理が実行される頻度が低下するので、定着器の冷却処理に要する時間が少なくなる分、複数の印刷単位を印刷するために要する印刷時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づいて説明する。
【0015】
本実施例では、画像形成装置の一例として、電子写真方式のプリンタについて説明する。また、本プリンタは、部数印刷において、用紙を排紙する向きを1部ごとに縦横交互に切り替えることにより、印刷された用紙を1部ずつ仕分ける電子ソート機能を有する。以下、用紙を長辺方向に沿って縦向きに搬送して画像を形成することにより印刷し、印刷した用紙を縦向きに排紙する一連の動作を「縦方向印刷」という。用紙を短辺方向に沿って横向きに搬送して画像を形成することにより印刷し、印刷した用紙を横向きに排紙する一連の動作を「横方向印刷」という。
【0016】
図1は、本実施例に係るプリンタの構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、コントローラ(制御部)20と、印刷エンジン(印刷部)30とを備えている。また、プリンタ1の側面外側には、排紙口54から排紙された用紙を積載するための複数のスタッカ(排紙部)60が設けられている。本実施例では、例として3つのスタッカ60a,60b,60cがあるものとして説明する。
【0017】
コントローラ20は、印刷エンジン30を含むプリンタ1の動作を制御する部分である。コントローラ20は、通信I/F(指示入力部)21と、CPU22と、ROM23と、RAM24と、エンジンI/F25とを備える。
【0018】
通信I/F21は、ホストコンピュータ2に接続されたインターフェイス部である。ホストコンピュータ2は、プリンタ1に対して印刷要求を行うホスト装置であり、ディスプレイなどの表示装置、およびキーボードやマウスなどの入力装置(図示なし)が接続された汎用のパーソナルコンピュータなどである。パーソナルコンピュータに所定のドライバプログラムを適用することにより、パーソナルコンピュータが、プリンタドライバ10を有するプリンタ1のホストコンピュータ2として機能している。このプリンタドライバ10は、アプリケーションなどから印刷対象とするデータを受け取って、入力装置へのユーザー操作などに基づいて、プリンタ1に対する印刷要求のコマンド、印刷条件を指定するコマンド、および印刷対象とする画像データなどを含む印刷ジョブデータを生成する処理を行う。なお、印刷条件には、例えば、部数印刷における部数や用紙種類などがあり、表示装置に表示されるドライバ画面に従う入力装置へのユーザー操作によって印刷条件は任意に設定される。そして、ホストコンピュータ2は、印刷条件を指定した印刷ジョブデータをプリンタ1に送信することによって、プリンタ1に対して印刷要求を行う。プリンタ1の通信I/F21は、この印刷ジョブデータをホストコンピュータ2から受信する。
【0019】
コントローラ20のROM23には、プリンタ1を制御するための各種プログラムが予め記憶されている。RAM24は、受信バッファなどの各種バッファや作業領域などとして用いられる汎用のメモリである。CPU22は、主にROM23に記憶されたプログラムを実行することにより、受信した印刷ジョブデータに含まれる画像データを受信バッファに格納する処理、印刷ジョブデータに含まれるコマンドを解釈して、印刷を指示するコマンドを印刷エンジン30に送信する処理などを行う。
【0020】
エンジンI/F25は、印刷エンジン30に対するインターフェイス部である。印刷を実行する際、エンジンI/F25は、所定のタイミングでRAM24に格納されている画像データを読み出し、画像データに所定の処理を施した後に印刷エンジン30に出力する処理を行う。このエンジンI/F25は、解凍部およびスクリーン処理部を備え、RAM24から読み出した画像データに対して、圧縮されたデータの解凍、ドットのデータへ変換するスクリーン処理などを行う。これらの機能を有するエンジンI/F25は、具体的には、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されている。
【0021】
次に、印刷エンジン30の構成について説明する。印刷エンジン30は、エンジンコントローラ40と、機構部50とを備える。
【0022】
エンジンコントローラ40は、印刷エンジン30内部で行われる処理を制御する部分であり、コントローラ20からのコマンドを解釈して、コマンドの指示に従って機構部50の動作を制御する。このエンジンコントローラ40は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、外部I/F44と、内部I/F45とを有する。外部I/F44はコントローラ20に対するインターフェイス部、内部I/F45は機構部50に対するインターフェイス部である。CPU41は、ROM42に記憶されたプログラムを実行することにより、コントローラ20からの指示に従って、後述する定着器の冷却処理や用紙の搬送制御などの機構部50が行う様々な動作を制御する。
【0023】
印刷エンジン30に備わる機構部50は、給紙装置51と、印刷機構52と、用紙搬送機構53とを有する。
【0024】
給紙装置51は、印刷機構52に用紙を給紙する部分であり、第1給紙装置51aおよび第2給紙装置51bを含む。第1給紙装置51aには、給紙方向に用紙の長辺方向が合わさった縦方向印刷用の用紙を収容する給紙カートリッジが着脱可能に装着されている。第2給紙装置51bには、給紙方向に用紙の短辺方向が合わさった横方向印刷用の用紙を収容する給紙カートリッジが着脱可能に装着されている。したがって、給紙装置51としては、縦方向印刷用の用紙の給紙、および横方向印刷用の用紙の給紙が可能に構成されている。
【0025】
印刷機構52は、帯電装置、露光装置、感光体、現像装置、転写装置、定着器、トナーカートリッジ等の構成を有している。感光体は、円筒状の導電性基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸に対して回転可能なドラムである。感光体は帯電装置により帯電されて、その後、露光装置による潜像の形成、現像装置によるトナーを用いた潜像の現像が行われる。現像されたトナー像は、転写装置によって用紙などの印刷媒体に転写される。定着装置は、ローラ表面がゴムなどの弾性体で覆われた定着ローラ、定着ローラを回転させる駆動モータ、定着ローラを加熱するヒーターなどを備えており、定着ローラが、トナー像を用紙に熱定着することによって用紙に画像が形成される。すなわち、本実施例の印刷機構52は、電子写真方式の画像形成によって印刷する。
【0026】
用紙搬送機構53は、印刷機構52によって印刷された用紙Sを搬送し、排紙口54を通してスタッカ60に用紙Sを排紙する。そして、排紙された用紙Sはスタッカ60に積載される。
【0027】
また、上述したプリンタ1において、電子ソート機能による部数印刷を行う場合、給紙装置51は、第1給紙装置51aに収容された縦向きの用紙Sと、第2給紙装置51bに収容された横向きの用紙Sとを1部ずつ交互に給紙する。そして、印刷機構52は、順次給紙される用紙Sに画像を順次形成し、用紙搬送機構53は、画像形成後の縦向きの用紙Sと画像形成後の横向きの用紙Sを1部ずつ交互にスタッカ60に排紙する。こうして、縦方向印刷、横方向印刷を交互に行う縦横交互印刷によって、印刷後の用紙Sは、用紙向きを縦横交互にして1部ずつ仕分けられた状態でスタッカ60に積載される。
【0028】
ここで、縦方向印刷と横方向印刷とでは、定着器の定着ローラに生じさせる温度分布が異なる。図2に例として示すように、縦方向印刷時には、定着器の定着ローラは、用紙Sの短辺方向長さに対応する範囲Raにおいて用紙Sと接する。この範囲Ra内では、定着器を通る用紙自体が定着ローラの熱を奪い取るために、ヒーターによる温度上昇が抑制されて、定着に好適な状態が維持される。一方、定着ローラと用紙Sが接する範囲Raより外側の範囲Rcでは、用紙自体による排熱が行われないので熱が溜まり易い。このため、特に、縦方向印刷を複数のページについて連続して行った場合、定着ローラの一部が過熱した状態となってしまうことがある。
【0029】
また、横方向印刷時には、定着器の定着ローラは、用紙Sの長辺方向長さに対応する範囲Rbにおいて用紙Sと接し、この範囲Rbには、縦方向印刷時に用紙と接する範囲Ra、および縦方向印刷で過熱状態となった領域Rcの一部が含まれる。このため、縦方向印刷を連続して行った後に行う横方向印刷において、定着ローラと用紙Sが接する範囲Rb内で温度分布の偏りを生じさせてしまう。この温度分布の偏りは、横方向印刷における定着不良を招き、印刷画質を劣化させてしまう可能性がある。
【0030】
そこで、本プリンタ1の印刷エンジン30は、縦方向印刷から横方向印刷に切り替えるタイミングで、定着器の冷却処理を実行するように構成されている。定着器の冷却処理では、ヒーター温度を低下させる温度制御を行うとともに、定着ローラの温度が充分に低下するまで次の印刷開始を待機させることによって、定着ローラを冷却する。エンジンコントローラ40は、この定着器の冷却処理を行うことによって、定着ローラに生じた温度分布の偏りを低減し、定着に好適な状態に制御する。
【0031】
より詳しくは、印刷エンジン30のエンジンコントローラ40は、印刷方向の切替を監視しており、印刷方向が縦から横に切り替わることを検知すると、横方向印刷の開始前に、印刷機構52に対して定着器の冷却処理を実行させる。すなわち、本プリンタ1の印刷エンジン30は、コントローラ20の制御から独立したエンジン内部の処理によって、定着器の冷却処理を自動的に行う構成となっている。このため、通常、コントローラ20からは、定着器の冷却処理を実行させるタイミングを直接制御することができない。
【0032】
しかしながら、印刷エンジン30の内部処理によれば、縦方向印刷から横方向印刷に切り替わる度に定着器の冷却処理が行われるため、電子ソート機能による部数印刷を行う場合、印刷時間が長くなってしまうという課題があった。
【0033】
図3は、電子ソート機能による部数印刷の印刷タイミングを示す図である。例えば、横方向印刷から始めて、縦方向印刷と横方向印刷を1部ずつ交互に切り替えることによって部数印刷を行う場合、図3に示すように、横方向印刷による1部目の印刷を終えた後、定着器の冷却処理を行うことなく、2部目について縦方向印刷が開始される(時刻T1)。しかし、2部目の縦方向印刷後(時刻T2)、横方向印刷による3部目の印刷を開始する前には、2部目の印刷において定着ローラの温度分布に偏りを生じさせている可能性があるため、印刷エンジンの内部処理によって定着器の冷却処理が自動的に実行される(時刻T2〜T3)。このように、3部目の印刷前に定着器の冷却処理が行われるため、2部目の印刷後に、ただちに3部目の印刷を開始することができず、定着器の冷却処理が終了するまで次の印刷開始を待機する分、3部目の印刷を開始するタイミングが遅れることになる。特に、部数印刷において1部を構成するページ数が少ない場合、定着器の冷却処理が頻繁に行われることになるので、印刷スループットが低下する度合いは大きい。
【0034】
上述の課題は、例えば、プリンタ1の製造者が、印刷エンジン30のOEM(Original Equipment Manufacturing)供給を受けている場合などに顕在化する。しかし、プリンタ1の製造者にとっては、印刷エンジン30の内部処理の仕様を任意に設計変更することによって、上述の課題を解決することが困難であった。
【0035】
そこで、本実施例のプリンタ1では、複数部数の部数印刷を行う際、縦方向印刷または横方向印刷のいずれかにより、複数のスタッカ60のそれぞれに、印刷された用紙を1部ずつ順次排紙する印刷制御と、縦方向印刷と横方向印刷との印刷方向の切替とを交互に行うことにより、印刷された用紙を、縦横の用紙向きに加えて、さらに、スタッカ別に仕分ける。こうして、縦方向印刷から横方向印刷に切り替える頻度を低めて、印刷エンジン30の内部処理で定着器の冷却処理が自動的に実行される頻度を低めることにより、電子ソート機能を用いた部数印刷に要する印刷時間の短縮化を図る。
【0036】
次に、以上に説明したプリンタ1の動作について、図5,6のフローチャートに従って説明する。なお、図5,6に示す処理は、ROM23に記憶されたプログラムをCPU22が実行することにより、CPU22を中心として行われるコントローラ20側の処理である。
【0037】
プリンタ1を用いて印刷しようとする場合、ユーザーは、ホストコンピュータ2の表示装置に表示されるドライバ画面に従う入力機器へのユーザー操作により、部数印刷の有効/無効の指定、部数の指定などの印刷条件を入力する。また、部数印刷を有効に指定した場合、排紙先の設定は図4に例として示す排紙設定画面SGから行うことができる。排紙設定画面SGには、スタッカ60a〜60cのそれぞれに対応する複数の選択肢100が含まれる。ユーザーは入力機器を操作して、任意の選択肢100を選択することにより、プリンタ1に備わる3つのスタッカ60a〜60cのうち所望のスタッカ60を選択することができる。プリンタドライバ10は、選択されたスタッカ60を排紙先とする部数印刷の印刷ジョブデータを生成する。そして、生成した印刷ジョブデータをプリンタ1に送信することによって、プリンタ1に対して印刷を要求する。
【0038】
もっとも、排紙先のスタッカ60などを指定する手段としては、ホストコンピュータ2のプリンタドライバ10ではなく、プリンタ1に備わる操作パネルから排紙先のスタッカ60を指定する構成としてもよい。
【0039】
そして、プリンタ1が、部数印刷の印刷ジョブデータをホストコンピュータ2から受信すると、図5の処理が開始される。処理を開始すると、まず、プリンタ1のコントローラ20は、印刷ジョブデータに含まれる画像データから、縦方向印刷用画像データと横方向印刷用画像データを生成する(ステップS10)。ここでは、印刷ジョブデータに含まれる画像データのコードを解釈して描画処理を施すことにより、縦方向印刷用画像データの画像と、縦向きの画像を90°回転させた横方向印刷用画像データを生成する。生成した縦方向印刷用画像データと横方向印刷用画像データはRAM24に格納する。
【0040】
次に、コントローラ20は、部数印刷を縦方向印刷から開始するため、初期の印刷方向を横に設定する(ステップS20)。ここで、初期の印刷方向を横とするのは、部数印刷をより効率的に行うためである。上述したように、定着器の冷却処理は、縦方向印刷から横方向印刷に切り替わる際に実行されるため、例えば、初期の印刷方向を縦とした場合、1度目の印刷方向の切り替えで、定着器の冷却処理が実行される。初期の印刷方向を横とすることにより、少なくとも1度目の印刷方向の切り替えでは、定着器の冷却処理が実行されないため、定着器の冷却処理が実行される頻度をさらに低めることができる。
【0041】
次に、印刷ジョブに指定されたスタッカ60が単一であるか否かを判断する(ステップS30)。指定されたスタッカ60が単一であれば(ステップS30:Yes)、ステップS40に進んで、単一のスタッカ60を使用した部数印刷の処理を行う。複数のスタッカ60が指定されており、指定されたスタッカ60が単一でなければ(ステップS30:No)、ステップS120に進み、指定された複数のスタッカ60を使用した部数印刷の処理を行う。
【0042】
単一のスタッカ60を使用した部数印刷の処理について説明する。ステップS40に処理が進むと、コントローラ20は、印刷方向に応じた給紙装置の選択を行う(ステップS40)。すなわち、縦方向印刷を行う場合、縦向きの用紙Sを収容した第1給紙装置51aが給紙先に選択されて、横方向印刷を行う場合は、横向きの用紙Sを収容した第2給紙装置51bが給紙先に選択される。
【0043】
次に、コントローラ20は、印刷ジョブに指定された単一のスタッカ60を排紙口として選択し(ステップS50)、ステップS20にて選択した給紙装置51に対して給紙を指示する(ステップS60)。そして、RAM24に格納された縦方向印刷用画像データと横方向印刷用画像データとのうち、印刷しようとする向きに対応する印刷用画像データを、エンジンI/F25を介して印刷エンジン30に送信する(ステップS70)。このとき、エンジンI/F25は、印刷用画像データを、ドットに対応する画像データに変換して印刷エンジン30に送信し、印刷エンジン30が画像データに従う画像を形成することによって、印刷が実行される。
【0044】
印刷を実行した後、コントローラ20は、印刷された用紙を、指定のスタッカ60に排紙すると(ステップS80)、印刷中の1部を構成する全ページについて印刷を終えたか否かを判断する(ステップS90)。1部を構成する全ページについて印刷を終えていない場合(ステップS90:No)、ステップS40に戻って、同じ部内の次のページについて、同一のスタッカ60および給紙装置51を指定して印刷を行う。こうして、ステップS40〜S90を繰り返すことにより、1部を構成する各ページが順次印刷されて同一のスタッカ60に排紙される。
【0045】
そして、1部を構成する全ページが印刷されると、印刷中の1部を構成する全ページについて印刷を終えたと判断されて(ステップS90:Yes)、次に、全部数の印刷が終了したか否かを判断する(ステップS100)。印刷ジョブに指定された全部数について印刷が終了していなければ(ステップS100:No)、縦横の印刷方向を切り替えてから(ステップS110)、ステップS40に戻って、印刷方向に応じた給紙装置51を指定して、次の部について印刷を行う。ここで、上述したように、縦から横に印刷方向を切り替える場合は、印刷エンジン30内部で定着器の冷却処理が自動的に行われて、定着器の冷却処理を終えるまで次の横方向印刷の開始を待機する。
【0046】
ステップS40〜S100を繰り返すことにより、縦方向印刷、縦方向印刷が1部ずつ交互に行われて、印刷後の用紙Sは単一のスタッカ60に排紙される。そして、部数印刷に指定された全部数について印刷が行われると、全部数の印刷が終了したと判断して(ステップS100:Yes)、図5の処理を終了する。
【0047】
したがって、単一のスタッカ60を使用した部数印刷では、印刷された全ての用紙Sは、1部ずつ縦横交互にして単一のスタッカ60に排紙されることで、用紙が仕分けられる。
【0048】
続けて、複数のスタッカ60を使用した部数印刷の処理について説明する。ステップS30の処理において、複数のスタッカ60が指定されていると判断されて(ステップS30:No)、ステップS120に処理が進むと、まず、コントローラ20は、排紙口IDの初期化を行う。この排紙口IDとは、複数のスタッカ60の各排紙口54に対して付与される固有の識別情報である。本実施例では、スタッカ60aへの排紙口54が「排紙口ID=0」、スタッカ60bへの排紙口54が「排紙口ID=1」、スタッカ60cへの排紙口54が「排紙口ID=2」に対応するものとする。この場合、排紙口IDを「0」に設定することにより排紙口IDが初期化される。
【0049】
次に、コントローラ20は、給紙方向に応じた給紙装置を選択してから(ステップS130)、設定された排紙IDに対応する排紙口を選択する(ステップS140)。そして、ステップS130にて選択した給紙装置51による給紙を指示して(ステップS150)、印刷方向に対応する印刷用画像データを、エンジンI/F25を介して印刷エンジン30に送信することにより、印刷を実行させる(ステップS160)。
【0050】
印刷を実行した後、印刷された用紙が指定のスタッカ60に排紙すると(ステップS170)、コントローラ20は、印刷中の1部を構成する全ページについて印刷を終えたか否かを判断する(ステップS180)。全ページについて印刷を終えていない場合(ステップS180:No)、ステップS130に戻って、次のページについても同じスタッカ60および給紙装置51を指定して印刷を行う。こうして、ステップS130〜S180の処理を繰り返すことにより、印刷中の1部を構成する各ページが順次印刷されて同一のスタッカ60に排紙される。
【0051】
そして、1部の全ページを印刷すると、印刷中の1部を構成する全ページについて印刷を終えたと判断されて(ステップS180:Yes)、全部数の印刷が終了したか否かを判断する(ステップS190)。プリンタドライバ10により指定された印刷ジョブに指定された全部数について印刷を終了していなければ(ステップS190:No)、次の部についての印刷を行うため、ステップS200に進む。
【0052】
ステップS200に進むと、未使用のスタッカ60があるか否かを判断する(ステップS200)。この判断は、設定された排紙口IDの値に基づいて行う。すなわち、設定された排紙口IDが「0」であれば、スタッカ60aが使用済であり、スタッカ60b,60cが未使用と判断する。排紙口IDが「1」であれば、スタッカ60a,60bが使用済であり、スタッカ60cが未使用と判断する。排紙口IDが「2」であれば、スタッカ60a,60b,60cが使用済であり、未使用のスタッカ60は残っていないと判断する。この判断により、未使用のスタッカ60が残っていると判断すると(ステップS200:Yes)、排紙口IDを1つ加算して更新することにより、未使用のスタッカ60を新たに選択してから(ステップS210)、ステップS130に戻る。こうして、ステップS130〜S210の処理を繰り返すことにより、部単位の印刷後に未使用のスタッカが残っていれば、未使用のスタッカを新たに選択して、1部について印刷した用紙を排紙するようにして、各スタッカ60a〜60cに対して用紙が順次排紙される。
【0053】
例えば、全スタッカ60a〜60cを使用する場合であれば、図7(a)に示すように、横方向印刷から印刷を開始すると、横方向印刷により1〜3部目の印刷が順次行われて、1部目の印刷結果の用紙はスタッカ60a、2部目の印刷結果の用紙はスタッカ60b、3部目の印刷結果の用紙はスタッカ60cに排紙されることになる。このように、1〜3部目の印刷が行われた用紙については、スタッカ別に排紙されることによって、仕分けされる。
【0054】
なお、プリンタドライバ10の排紙設定画面SGにおいて、排紙先のスタッカを選択して指定されている場合には、指定されたスタッカ60に仕分けされる。例えば、図4に示すように排紙設定画面SGにおいて、「スタッカ1」および「スタッカ2」が排紙先に指定されている場合、図7(b)に示すように、横方向印刷により1,2部目の印刷が順次行われる。そして、1部目の印刷結果の用紙は「スタッカ1」に対応するスタッカ60aに排紙され、2部目の印刷結果の用紙は「スタッカ2」に対応するスタッカ60bに排紙される。
【0055】
こうして、同じ給紙方向の印刷により印刷された用紙を、指定されたスタッカ60に順次排紙するようにして、指定された全スタッカ60を排紙に使用した場合、ステップS200の判断において未使用のスタッカが残っていないと判断されて(ステップS200:No)、印刷方向を切り替えて(ステップS220)、ステップS120に戻る。ステップS120では、排紙口IDを初期化することにより、給紙方向を切り替えた後の印刷について、各排紙口54を再び未使用のものと扱う。そして、ステップS120〜S220の処理を繰り返すことにより、印刷された用紙は、1部ごとに異なるスタッカ60に仕分けて排紙される。これにより、図7(a)の例であれば、横方向印刷によって1〜3部目を印刷した後、縦方向印刷によって4〜6部目の印刷結果の用紙が部ごとにスタッカ60a〜60cに仕分けられる。同様に、排紙先をスタッカ60a,bに指定した、図7(b)の例であれば、横方向印刷によって1,2部目を印刷した後、縦方向印刷によって3,4部目の印刷結果の用紙が1部ずつスタッカ60に仕分けられる。
【0056】
そして、部数印刷に指定された全部数について印刷が行われると、全部数の印刷が終了したと判断して(ステップS190:Yes)、図5,6の処理を終了する。
【0057】
したがって、複数のスタッカ60を使用した部数印刷では、印刷された全用紙Sは、複数のスタッカ60に分散して排紙されるとともに、各スタッカ60には1部ずつ縦横交互に排紙されることで、用紙が仕分けられる。
【0058】
以上に述べたように、本実施例のプリンタ1では、複数のスタッカ60の各スタッカ60には、縦方向印刷によって印刷された用紙と横方向印刷によって印刷された用紙とが1部ずつ交互に排紙される。図8は、本実施例における印刷タイミングの例を示している。図8に示すように、横方向印刷によって1〜3部目を印刷してから(時刻T1〜T3)、さらに縦方向印刷によって4〜6部目を印刷した後(時刻T3〜T6)、横方向印刷による7〜9部目の印刷を行う前に、印刷エンジンの内部処理によって定着器の冷却処理が実行される(時刻T6〜T7)。そして、定着器の冷却処理終了後、横方向印刷による7〜9部目の印刷が実行される(時刻T7〜T9)。図3にて説明したように、縦方向印刷から横方向印刷に切り替えるときに定着器の冷却処理を実行されるので、例えば、単一のスタッカ60を使用した部数印刷で9部を印刷する場合、定着器の冷却処理が実行される回数は4回(2部目の印刷後、4部目の印刷後、6部目の印刷後、8部目の印刷後)である。一方、複数のスタッカ60a〜60cを使用した部数印刷で9部を印刷する場合、定着器の冷却処理が実行される回数は1回(6部目の印刷後)である。このように、定着器の冷却処理が実行される頻度が低下する分、定着器の冷却処理にかかる合計時間は大幅に短縮する。したがって、部数印刷に要する印刷時間を大幅に短縮することができ、印刷スループットを著しく向上することができる。
【0059】
以上、実施の形態の一実施例について説明したが、これに限られることなくその趣旨に逸脱しない様々な形態としてもよい。以下、変形例について説明する。
【0060】
(変形例1)上記実施例では、部数印刷において縦方向印刷と横方向印刷を交互に切り替える場合を例に説明したが、印刷単位としては、これに限られることなく、印刷ジョブや所定のページ数であってもよい。例えば、印刷ジョブごとにスタッカ60に仕分けてから縦方向印刷と横方向印刷を交互に切り替えるようにすれば、上記実施例と同様に、定着器の冷却処理が実行される頻度を低下させ、短い印刷時間でジョブセパレート印刷を実現することができる。
【0061】
(変形例2)上記実施例では、縦方向印刷から横方向印刷に切り替わるタイミングで、定着器の冷却処理を実行する場合を例に説明したが、横方向印刷から縦方向印刷に切り替わるタイミングについても定着器の冷却処理を行う構成としてもよい。
【0062】
(変形例3)上記実施例では、排紙口IDを用いて、未使用のスタッカ60を判断するようにしているが、未使用のスタッカ60を判断する手法としてはこれに限られない。例えば、各スタッカ60に設定したフラグを用いて未使用のスタッカ60を判断するようにしてもよい。
【0063】
(変形例4)上記実施例では画像形成装置の一例としてのプリンタについて説明したが、画像形成装置としてはこれに限られることなく、定着器の冷却処理を行う電子写真方式の画像形成装置であれば、複写機、複合機、またはファクシミリなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施例に係るプリンタの構成図。
【図2】定着ローラに生じる過熱状態を説明するための図。
【図3】電子ソート機能による部数印刷の印刷タイミングを説明するための図。
【図4】部数印刷の設定画面を示す図。
【図5】プリンタにおける処理の流れを示すフローチャート。
【図6】プリンタにおける処理の流れを示すフローチャート。
【図7】部数印刷された用紙の仕分けを説明するための図。
【図8】本実施例の印刷タイミングを説明するための図。
【符号の説明】
【0065】
1…画像形成装置としてのプリンタ、2…ホストコンピュータ、10…プリンタドライバ、20…指示入力部としてのコントローラ、21…指示入力部としての通信I/F、22…CPU、23…ROM、24…RAM、25…エンジンI/F、30…印刷部としての印刷エンジン、40…エンジンコントローラ、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…外部I/F、45…内部I/F、50…機構部、51…給紙装置、51a…第1給紙装置、51b…第2給紙装置、52…印刷機構、53…用紙搬送機構、54…排紙口、60…排紙部としてのスタッカ、S…用紙、SG…排紙設定画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を縦向きに印刷して排紙する縦方向印刷および用紙を横向きに印刷して排紙する横方向印刷を実行可能であり、印刷方向の切替に応じて定着器の冷却処理を実行する印刷部と、
印刷後の用紙の排紙先である複数の排紙部と、
前記複数の排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷した用紙を順次排紙させる印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行う制御部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記複数の排紙部のうち、排紙先として用いる排紙部を指示する入力を受ける指示入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記指示された排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷された用紙を順次排紙する印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
用紙を縦向きに印刷して排紙する縦方向印刷および用紙を横向きに印刷して排紙する横方向印刷を実行可能であり、印刷方向の切替に応じて定着器の冷却処理を実行する印刷部と、
印刷後の用紙の排紙先である複数の排紙部とを備える画像形成装置の印刷制御方法であって、
前記複数の排紙部のそれぞれに、1印刷単位分の印刷した用紙を順次排紙させる印刷制御と、印刷方向を切り替えさせる制御とを前記印刷部に対して交互に行うことにより、複数の印刷単位についての印刷を実行させることを特徴とする画像形成装置の印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−83061(P2010−83061A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256086(P2008−256086)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】