説明

画像形成装置、制御方法、およびプログラム

【課題】画像形成装置のログデータ管理が画像形成装置の印刷ジョブに与えるオーバーヘッドを軽減する、画像形成装置、制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の画像形成装置10は、画像形成装置10のジョブ履歴をログデータとして管理するログ管理手段20と、ログデータを格納するハードディスク装置32および不揮発性メモリ34とを備え、ログ管理手段20のハードディスク装置32の占有権を、ログ管理手段20を除く他機能手段よりも下位に制御し、バス占有権を保有する機能手段を登録するバス占有権登録手段38を含む優先順位管理手段を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ処理技術に関し、より詳細には画像形成装置のログデータ管理が画像処理装置の印刷ジョブに与えるオーバーヘッドを軽減する、画像形成装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の管理およびジョブ履歴を管理するため、画像形成装置にログを記録することが行われるようになってきている。ログの書込は、中央処理装置(以下、単にCPUとして参照する。)の処理時間占有し、さらに通常ではログデータは、ハードディスク装置(以下単にHDDとして参照する。)に書込まれる。HDDは、IDE、SCSI、PCI、ATA、ATAPI、UltraATAなどのインタフェース規格を使用して書込まれるものの、バス転送速度の点からみればデータ転送レートは頻繁にログ書込を行う場合、EEPROM、EPROM、フラッシュ・メモリなどの固体メモリに比較して、必ずしも効率的であるとはいえない。
【0003】
このため、ログデータの書込み処理を実行している結果、画像形成装置の省エネモードへの移行時間の増大や、ログ書込中に印刷ジョブを受信した場合に印刷パフォーマンスが低下することが考えられる。また、HDDにログデータを格納している期間中に省エネモードへの遷移が指令される場合もある。従来では、その時点でHDDの占有権を有している機能手段が占有権を放棄するまで、省エネモードへの遷移が延長されてしまうという不都合もあった。
【0004】
このような問題は、画像形成装置で、セキュリティについての要求が高まるにつれて、認証処理を実行する画像形成装置には、認証処理のオーバーヘッドが発生する。例えば、ユーザのログイン認証や、初期設定画面やサービス画面で認証関連の機器設定を行った場合、認証処理動作を検知した画像形成装置は、ログデータの書込みを実行する。画像形成装置は、その都度HDDにアクセスしデータ転送を実行することになるので、印刷ジョブを含む画像形成装置の本来のジョブを効率的に処理する必要がますます高まっていた。
【0005】
画像形成装置の印刷ジョブを効率的に実行する技術は種々知られている。例えば、特開平8−248841号公報(特許文献1)は、複数ジョブを効率的に実行する目的で、新規ジョブの実行完了予測時間、および既存ジョブの実行完了予測時間を算出し、全ジョブを効率よく実行完了させるために既存ジョブを他の記録装置へ移動する構成が開示されている。
【特許文献1】特開平8−248841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、ログデータの書込み処理では、HDDへのログの書込み中に印刷イベント(画像読取り、もしくは画像出力)が発生した場合、HDDに格納へのログ書込みが終了するまで印刷動作が待機されるという不都合があった。さらに、画像形成装置は、その後、ADF(Auto
Document Feeder)などによる画像読取り動作も待たされてしまうという不都合があった。
【0007】
またログデータの格納処理中に、印刷ジョブに関連する大容量の画像データをRAMなどの一時記憶装置に記憶することでログデータの格納と、画像データの格納とを調整することができる。しかしながら、印刷ジョブがログデータの記録によりサスペンドされてしまうことや、画像データの蓄積によりメモリ・オーバーフローなどは発生することも想定でき、ログデータの格納と画像データの処理とを効率的に調停する技術が要求されていた。
【0008】
さらに、ログデータの書込み処理中に印刷イベントが発生した場合に、印刷イベントを待機させることなく、実行し、ログデータ処理が画像処理装置の本来のジョブ効率に与える影響を最低限とする、画像形成装置、画像データ処理方法、およびプログラムを提供することが必要とされていた。
【0009】
また、ログデータのHDDへの書込中に省エネモードへの遷移が発生した場合にでも、省エネモードへの移行時間を短縮し、さらにログデータをHDDにリカバリすることが必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、画像形成装置は、印刷要求を受付けると、ログデータの書込みを管理しているログ管理手段に対し、HDD装置の占有権の譲渡要求がなされたか否かを検出させる。譲渡要求が検出された場合、HDDが排他的に使用されているか、または使用が禁止されているデータをエントリするHDD占有権テーブルの譲渡要求を行った他機能手段のフィールドを更新する。画像形成装置は、ログデータのHDDへの格納を開始する場合、またはログデータをすでにHDDに登録している間、譲渡要求に対応して更新されるHDD占有権テーブルを参照し、ログデータの保存パスを切換え、ログ管理手段のHDD占有準位を他機能手段よりも下位に設定する。
【0011】
ログ管理手段自体は、他機能手段に対して譲渡要求を登録または発行しないので、ログ管理手段は、HDDバス占有権についていえば他機能手段に占有管理権を委ねることになる。このため、本発明では、ログデータの書込みを開始する時点またはHDDの書込を実行しているいずれの場合にでも、HDDバスの占有権を他機能手段に譲渡することが可能となる。この場合、ログ管理手段は、ログデータの保存パスをHDDからHDD以外のNVRAMなどの不揮発性メモリへ変更する。本発明の画像形成装置は、印刷ジョブ要求があった場合に印刷ジョブを遅延させることなく直ちに画像データの処理を実行可能とし、ログデータ書込イベントを無駄にすることなくログデータおよび画像データの処理をすることが可能となる。
【0012】
ログ管理手段は、印刷ジョブ完了にともなうHDD開放を検出すると、他機能手段による譲渡要求がなされるまで先取り的にHDDバス占有権を取得し、不揮発性記メモリに書込まれたログデータを読出して、ログデータをリカバリする。
【0013】
本発明によれば、ログ管理手段は、画像形成装置の印刷ジョブに関連する機能手段がHDDへのバス占有権を確保していない場合に、HDDに格納に対してログデータを記録する。この結果、画像形成装置のログデータ記録の頻度が増加することによる画像形成装置の印刷ジョブ実行効率に対して最小のオーバーヘッドで、ログデータを並列記録することが可能となる。
【0014】
すなわち、本発明によれば、
画像形成装置のジョブ履歴をログデータとして管理するログ管理手段と、
前記ログデータを格納するハードディスク装置および不揮発性メモリと、
前記ログ管理手段の前記ハードディスク装置の占有権を、前記ログ管理手段を除く他機能手段よりも下位に制御し、バス占有権を保有する機能手段を登録するバス占有権登録手段を含む優先順位管理手段と
を含む、画像形成装置が提供される。
【0015】
本発明の前記画像形成装置は、前記ログ管理手段を除く他機能手段の譲渡要求を検出する検出手段を備え、前記ログデータを前記ハードディスク装置に格納している間、前記譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記バス占有権登録手段に登録することにより他機能手段に譲渡し、前記ログデータの残り部分を前記不揮発性メモリに退避させることができる。本発明の前記画像形成装置は、前記ログデータの書込イベント発生に応答して前記バス占有権登録手段を参照し、前記バス占有権登録手段の登録内容に応じて前記ログデータの保存パスを、前記ハードディスク装置または前記不揮発性メモリから選択する、保存パス選択手段を備えることができる。本発明の前記画像形成装置は、前記ログデータの圧縮手段を含むことができる。本発明の前記画像形成装置は、前記バス占有権登録手段を参照して、前記退避させたログデータを前記ハードディスク装置にリカバリする、リカバリ手段を含むことができる。本発明の前記他機能手段は、前記画像形成装置が印刷ジョブを行う場合の対象画像データを管理する画像管理手段および前記画像形成装置の電力供給状態を管理するパワーマネージメント手段を含むことができる。
【0016】
本発明によれば、
画像形成装置のジョブ履歴をログデータとして保存するログデータ書込イベントを検出するステップと、
前記ログデータ書込イベントが発生した時点で、ハードディスク装置のバス占有権を登録するバス占有権登録手段を検索するステップと、
前記バス占有権登録手段の検索に応答して前記ログデータ書込イベントの優先順位を前記画像形成装置の他機能手段の処理よりも下位に設定するステップと、
を画像形成装置に実行させる制御方法が提供できる。
【0017】
本発明では、前記検索の結果、前記バス占有権登録手段にログデータの保存より優先される前記他機能手段の譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記他機能手段に譲渡し、前記ログデータを前記不揮発性メモリに退避させるステップを前記画像形成装置に実行させることができる。本発明では、前記検索の結果、前記バス占有権登録手段にログデータの保存より優先される他機能手段が検出されなかった場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を取得して前記ハードディスク装置に前記ログデータを格納するステップと、前記ログデータの格納が終了するまでの間、前記他機能手段による譲渡要求を検出するステップと、前記譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記他機能手段に譲渡し、前記ログデータの残り部分を前記不揮発性メモリに退避させるステップとを実行させることができる。本発明の前記前記他機能手段は、前記画像形成装置が印刷ジョブを行う場合の対象画像データを管理する画像管理手段および前記画像形成装置の電力供給状態を管理するパワーマネージメント手段を含むことができる。
【0018】
本発明では、さらに上記いずれかに記載の機能手段を画像形成装置に実現するための装置実行可能なプログラムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示した実施形態をもって説明するが、本発明が図面に示した実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の画像形成装置10の実施形態を示す。画像形成装置10は、タッチパネルといった操作パネルからのユーザ指令に応答して、画像形成装置10に対してコピー、ファクシミリ、モノクロコピー、フルカラーコピーなどの機能をユーザに提供している。また、画像形成装置10は、また、外部コンピュータからの入力に応答してプリンタやファクシミリとしても機能する。
【0021】
図1に示した画像形成装置10は、上述した機能を提供し、ユーザに対して各種設定を可能とするフロント。アプリケーション群からなるフロント・アプリケーション層12を備えている。フロント・アプリケーションとしては、プリンタ機能を提供するためのプリンタ・アプリケーションPA、コピー機能を提供するコピー・アプリケーションCA、ファクシミリ機能を提供するファクシミリ・アプリケーションFA、ネットワーク通信を制御するNSA、外部アプリケーションとの変換を実行するCSA、外部アプリケーションを制御するEAC、仮想マシンとして動作を実行するアプリケーション機能を提供するVAS、ウェブ・サービスを提供するWSAなどを実装する。
【0022】
フロント・アプリケーション層12からの指令は、API(Application
Program Interface)28を介してミドルウェア層14に通知される。ミドルウェア層14を構成するアプリケーションは、画像形成装置10固有の処理を実行し、OS層16に指令して物理的な各デバイスを実行させる処理を行う。ミドルウェア層14は、例えば、エンジン制御サービスECS、メモリ制御サービスMCS、オペレーション制御サービスOCS、ファクシミリ制御サービスFCS、ネットワーク制御サービスNCS、配信制御サービスDCS、ユーザ情報制御サービスUCS、認証制御サービスCCS、機器情報通知サービス、MIRSの他、これらのサービス・アプリケーションを統合的に制御する、サービス制御サービスSCSなどを含んで構成することができる。なお、これの各サービス機能手段は、特定の用途、機種に対応して追加・削除することができる。
【0023】
本実施形態では、ミドルウェア層14は、さらに、ログ管理手段20と、パワーマネージメント手段22と、システム資源管理手段24と、画像管理手段26とを備えている。ログ管理手段20は、画像形成装置10の各種動作の履歴を記録し、要求に応じてログデータを取得してユーザによるログ管理を可能とする。また、パワーマネージメント手段22は、画像形成装置10の動作モードを管理しており、ユーザ指令またはタイマ手段により通常モードから省エネモードへの状態遷移、また省エネモードから通常モードへの状態遷移を管理する。また、本実施形態では、パワーマネージメント手段22は、停電など、画像形成装置10への電力供給切断時のエマージェンシ対応を行うことができる。
【0024】
システム資源管理手段24は、HDD32やEEPROM、EPROM、フラッシュ・メモリなどの随時書換可能な不揮発性メモリ(以下、単にNVRAMとして参照する。)34などの記憶資源のメモリ・アロケーション管理や、各種サービス・アプリケーションの実行シーケンス管理などを行っている。また、画像管理手段26は、各種フロント・アプリケーションにより取得された画像データの記憶および画像形成エンジンへの出力処理を管理している。
【0025】
また、画像形成装置10は、ファイル・システム、メモリ制御システム、プロセス制御システム、プロトコル・スタックなどの機能を備えるOS層16を備えており、ミドルウェア層14のサービス・アプリケーションからの指令を処理し、デバイス・ドライバおよびAPI30を介してエンジン・システム18へと画像形成指令および画像データを渡し、フロント・アプリケーションが発行した指令に対応した画像形成処理を可能としている。
【0026】
図2は、本実施形態の画像形成装置10がログデータまたは画像データをHDD32に格納する場合の詳細な機能ブロックを示す。図2に示すように、画像管理手段26は、フロント・アプリケーション層12からの指令を受けて、ADF(Auto Document Feeder)などから画像データを取得し、以後の画像処理のためにHDD32の画像展開領域32bに画像データを格納する。
【0027】
また、ログ管理手段20は、フロント・アプリケーション群12から、各種設定やログの入出力指令を受付けるか、またはタイマ手段を使用して定期的にログデータ保存を実行する。さらに、ログ管理手段20は、NVRAM34の記憶領域を、ログデータの一時退避のために確保している。一方、画像形成装置10は、HDDバスの排他制御を行うため、排他制御手段36を含んでいる。排他制御手段36は、HDDバスの占有権を、セマフォや排他フラグなどを使用して制御し、HDDバスが同時に複数のバスマスタにより占有されないようにしている。
【0028】
上述したように、ログ管理手段20は、画像形成装置10の印刷ジョブ状態やモード状態とは独立してログ管理を実行する。このため、ログ管理手段20がログデータを保存しようとする場合や、ログ管理手段がログデータを保存している間に印刷ジョブ要求またはパワーマネージメント手段22からの省エネモードへの状態遷移通知が発行される場合がある。
【0029】
本実施形態では、ログ管理手段20以外の機能手段からの印刷ジョブ要求や省エネモードへの状態遷移通知を受付けると、ログ管理手段20は、HDDバスの占有権を取得できず、またHDDバスの占有権をすでに保有している場合には、当該占有権を開放する処理を実行する。以下、本発明では、他機能手段からの印刷ジョブ要求または省エネモードへの状態遷移通知を、HDD譲渡要求として参照する。
【0030】
さらに、ログ管理手段20は、ログ管理手段20よりもHDD32の利用優先度の高い機能手段のHDD譲渡要求をモニタしている。HDD譲渡要求は、他機能手段からのプロセス通信による通知されても良いし、グローバル変数として設定されるHDD要求識別値にHDD要求フラグなどを、要求元機能手段の識別値またはプロセスIDなどと対応して設定する処理を用いることもできる。なお、HDD譲渡要求をグローバル変数の値を使用して判断する場合、ログ管理手段20は、ログデータを保存する処理を実行している場合にでも、グローバル変数を読出すことが可能とされているだけで、書込みできない構成とされている。このため、ログ管理手段20は、他機能手段だけに当該グローバル変数の更新を許可することとなり、他機能手段にHDDバス占有権を優先するHDDバス制御が可能となる。
【0031】
なお、HDD譲渡要求を検出し、当該検出結果を使用してHDDバス占有権テーブル38に反映させる手段は、本発明の優先順位管理手段を構成し、ログ管理手段20は、優先順位管理手段を管理して、自己のHDD占有権の開放および取得処理を実行している。他の実施形態では、優先権管理手段は、ログ管理手段20により管理されず、画像形成装置10に優先権管理処理を実行する分離した機能手段として、ミドルウェア層14などに構成することもできるし、当該機能を提供する最適な機能手段、例えばシステム資源管理手段24などのサブモジュールとして実装することができる。
【0032】
また、他機能手段によるHDD占有が終了した場合、ログ管理手段20は、明示的なHDD開放通知を受領するか、グローバル変数として登録された値を判断し、HDDが占有される状態にないことを判断して、HDD開放と判断する。
【0033】
ログ管理手段20は、また説明している実施形態では、画像データをHDD32に展開する処理を優先させるためのHDD占有権登録手段を管理しており、当該HDD占有権登録手段は、本実施形態では、HDDバス占有テーブル38として実装することができる。なお、画像形成装置10がデータベースなどを実装する場合には、データベースにHDD占有権登録手段を構成することもできる。
【0034】
本実施形態のHDDバス占有権テーブル38は、HDDバスの優先レベルを、ログ管理手段20を最下位として管理する。ログ管理手段20は、他機能手段がHDDバスを占有している期間中にログデータ書込イベントが発生した場合や、ログデータをHDD32に保存している期間中に、他機能手段がHDDを占有するイベントが発生した場合に、ログデータの保存パスを切換える処理を実行する。ログ管理手段20は、HDD譲渡要求がなされた場合およびHDD開放を判断した場合、自己の管理するHDDバス占有権テーブル38の対応する機能手段のフィールドのエントリ値を更新する。
【0035】
図3は、HDDバス占有権テーブル38の実施形態を示す。図3(a)〜図3(c)は、ログ管理手段20がHDDバスを占有するか、または占有権を譲渡する場合の実施形態を示す。図3(a)は、ログ管理手段20がHDDバスを占有していて、ログデータをHDD32のログデータ保存領域に格納している場合のHDDバス占有権テーブル38の実施形態である。ログ管理手段20は、ログデータ書込イベントが発生した場合、まず、HDDバス占有権テーブル38をルックアップする。
【0036】
ルックアップの結果、図3(c)に示すように、占有状態をエントリするレコードのフィールドが全部nullまたは明示的に占有されていない値であるか否かを確認する。HDD占有権がまだ設定されていない場合、ログ管理手段20がHDDバスを占有しても良いと判断し、ログ管理手段20は、自己の占有状態をエントリするフィールド38cに「占有」を示すフラグまたは識別値を設定する。
【0037】
一方、図3(a)で示す状態にあるときにHDD譲渡要求がなされたと判断された場合、ログ管理手段20は、図3(b)に示すように、自己の占有権をエントリするフィールド38cのフラグまたは識別値を削除する。同時に、ログ管理手段20は、説明している実施形態では、画像管理手段26の占有権をエントリするフィールド38bにフラグまたは識別値を設定し、画像管理手段26によるHDDバスの占有が終了したと判断するまで、画像管理手段26の占有権をエントリしたフィールドの値を保持する。
【0038】
また、ログデータの書込を開始しようとしたとき、またはログデータの書込処理を実行している間にHDD譲渡要求がなされた場合、ログ管理手段20は、ログデータの転送処理を停止し、ログ管理手段20がHDDバスを排他利用するために設定した、例えばセマフォなどのバス排他制御手段36に対して排他権を開放する指令を発行する。さらに、ログ管理手段20は、HDDバス占有権テーブル38を、図3(b)の状態に設定する。その後、ログ管理手段20は、ログデータ保存オブジェクトの保存パスをNVRAM34に設定するか、または退避用オブジェクトを呼び出して、以後のログデータ記録処理におけるログデータ保存パスを、HDD32からNVRAM34へと切換える。ログ管理手段20は、当該保存パスを、HDDバス占有権テーブル38のフィールド38bの値を参照し、フィールド38bにエントリされた値がnullとなるか、または明示的に開放したことを示す識別値が登録されるまで、ログデータの保存パスを維持する。
【0039】
また、図3(d)には、パワーマネージメント手段22が画像形成装置10の状態を省エネモードに遷移させる処理を開始させたことを示すフィールド38dに、占有フラグが設定されているのが示されている。この実施形態の場合、画像形成装置10は、省エネモードへと状態遷移するための処理を開始しており、設定したプロトコルにしたがって、省エネモードの設定が行われる。省エネモードへの状態遷移では、HDDヘッドの退避およびHDD32のスピンドル・モータへの電力供給も停止される。ログ管理手段20は、パワーマネージメント手段22が省エネモード遷移指令を発行したと判断すると、HDD譲渡要求と同様に処理を実行し、フィールド38dに値を設定し、HDDバス占有権テーブル38を、図3(d)の状態とする。
【0040】
ログ管理装置20は、また当該省エネモード遷移指令がなされたと判断したときに、ログデータ保存中である場合には、直ちにHDD32の占有権を放棄し、ログデータの保存パスを「¥NVRAM¥logdata_4」などとする処理を実行し、高速アクセスが可能な記録媒体にログデータを保存する処理を実行する。他の実施形態では、図3(d)の状態となった場合には、ログ管理手段20は、NVRAM34にHDDバス占有権テーブル38自体も格納し、通常モードへの復帰以後、ログデータのリカバリを継続させることができる。
【0041】
ログ管理手段20は、図3に示したHDDバス占有権テーブル38にエントリされた値を使用して、ログデータ保存パスを制御することにより、画像管理手段26を含む他機能手段にHDD32の優先使用権を提供している。なお、本実施形態では、画像形成装置10の印刷ジョブに関連し、ログ管理手段20よりも優先的にHDDバスを使用させるためいかなる機能手段についても優先設定を行うことができる。このため、HDDバス占有権テーブル38には、優先処理しなければならない他機能手段ごとにフィールドを設けて管理することができる。
【0042】
図4は、ログ管理装置20がHDD32に対してログデータを記録する場合の実施形態を示した図である。ログ管理手段20は、HDD32のログデータ保存領域32bにログデータを保存している。ログデータ1〜ログデータ3までは、ログデータの保存が中断されずに連続するアドレスに格納されたことを示す。また図4に示した実施形態では、ログデータ4の格納中に画像データ転送のために画像管理手段26にHDD32の占有権を譲渡し、ログデータの記録か中断されている。
【0043】
ログ管理手段20は、HDD譲渡要求があったと判断すると、ログデータのデータ転送を停止させ、HDDバス占有権テーブル38およびセマフォなどの排他制御手段36に対する処理を実行する。その段階で、記録しなければならないログデータのうち、記録したログデータの最後尾アドレスxxxxxを取得し、RAMなどの適切な記憶装置に格納する。その後、ログ管理手段20は、ログデータの残り部分を、保存パスを例えば「¥NVRAM」に設定してNVRAM34のシステム設定値32に保存する。
【0044】
ログ管理手段20がHDD開放を判断すると、NVRAM34に格納した残り部分を読込み、格納しておいた最後尾アドレスxxxxxを取得し、適切な最小オフセット値を加算して現在アドレス値を計算する。ログ管理手段20は、さらにその後、当該アドレス値をログデータ転送開始の際の開始位置としてデータ転送を再開する。本実施形態では、ログ管理手段20は、格納したログデータと当該ログデータのアドレス範囲とを対応させるアドレス・マップ40を作成し、分断されたログデータについてもリカバリし、以後のログデータ管理のために読出すことを可能としている。
【0045】
以上説明した本実施形態では、ログデータの保存処理自体は、他機能手段の処理と並列処理で実行されるので、画像データ展開処理や省エネモード遷移処理に対してログデータの格納処理によるHDDバス占有が悪影響を与えることなく、効率的な処理を提供することができる。
【0046】
図5は、本実施形態でログ管理手段20が管理する、アドレス・マップ40の実施形態を示す。図5に示すようにログ管理手段20が管理するアドレス・マップ40は、HDD32に記録したログデータごとに対応するアドレス範がエントリされている。ログ管理手段20は、フロント・アプリケーションからの指令によりログデータの読込みを実行する場合、指定されたログデータについてアドレス範囲を取得して、HDD32から対応するデータを取得し、例えばプリント、データ伝送、電子メール伝送などの処理に提供することができる。
【0047】
図5に示した実施形態では、ログデータ4は、登録アドレス範囲が2つに分断されているものの、同一のログデータ識別値で参照されて読込みできるので、ログデータをファイル名やタイムスタンプを使用して検索せずに、必要なログデータを取得することができる。
【0048】
さらに他の実施形態では、ログ管理手段20は、HDD譲渡要求があったと判断した段階でログデータの格納処理を実行している場合、I/OExceptionErrorとして、その時点で記録するべきログデータ全体をHDD32に格納せず、ログデータ全部をNVRAM34に登録することができる。この実施形態の場合、ログ管理手段20は、HDD開放イベントが発生した後、NVRAM34に格納されているログデータを読込み、HDD32に記録してリカバリ処理を実行する。
【0049】
さらに他の実施形態では、ログ管理手段20がHDD譲渡要求があったと判断した時点で、ログデータの格納処理を終了させることもできる。本実施形態では、ログデータのHDD登録再開時、ファイルネームを、「ログデータ4_2」などとしてサフィックスを付して登録し、ログデータ4の読み込み時、「ログデータ4_*」などワイルドカードを使用して一括して読出し、読出し後ログ管理手段20が複数のログデータをマージすることもできる。
【0050】
図6は、本実施形態の画像形成装置10が実行する処理のフローチャートを示す。図6に示した実施形態では、ステップS100でログデータ書込イベントが発生するまで待機する。ログデータ書込イベントが発生すると(yes)、ステップS101で他機能手段の占有権が設定されているか否かを、HDDバス占有権テーブル38のエントリを検査して判断する。ステップS101で他機能手段によりHDDが占有されていると判断した場合(yes)、処理をステップS105へと分岐させ、NVRAM34にデータ保存パスを切換えてログデータの保存を実行する。
【0051】
なお、ログデータの保存処理は、非圧縮形式で実行することもできるし、LZH、ZIPなどの周知の圧縮技術を使用して登録することができる。この場合、セキュリティ上の要請から、パスワードで暗号化したZIPなどを使用して圧縮ファイルとして登録することができる。
【0052】
一方、ステップS101で他機能手段によりHDD開放通知を待機が占有されていないと判断した場合(no)、処理をステップS102へと分岐させて、ログ管理手段20に対しHDDバス占有権テーブル38にログ管理手段20の占有権を登録し、排他制御手段36にログ管理手段20の占有を登録し、HDDへのログデータの転送を開始する。ステップS103で、ログデータの書込中でも画像形成装置10は、継続して他機能手段によるHDD占有開始をモニタしている。ログデータ転送中に他の機能手段からのHDD譲渡要求を検出しない場合(no)、ステップS108で継続してログデータの転送を実行する。
【0053】
一方、ステップS103で他機能手段からのHDD譲渡要求を検出した場合(yes)、画像形成装置10は、ステップS104でログデータの転送を中止し、HDDバスの占有権を放棄し、さらにHDDバス占有権テーブル38のエントリを更新してログ管理手段20の占有権を放棄すると同時に他機能手段、説明している実施形態では画像管理手段の占有権を対応するエントリに登録する。その後、画像形成装置10は、ステップS105でログデータの保存パスをNVRAM34に切替え、NVRAM34にログデータの残り部分をデータエンドになるまで転送する。
【0054】
その後、画像形成装置10は、ステップS106で他機能手段がHDD開放したか否かを判断し、HDDが開放されている場合(yes)には、ステップS107でNVRAM34に格納したログデータをリカバリする。一方、ステップS106でHDD開放が検出されない場合(no)、HDDが開放されるまで、待機し、他機能手段によるHDD占有が開放された時点で、ステップS107のログデータのリカバリ処理を開始する。
【0055】
なお、図6に示した画像形成装置10の処理は、デーモンまたはバックグラウンド・サービスとして、画像形成装置10が通常モードとされている間、継続される。
【0056】
図7は、本実施形態の画像形成装置10が実行する他の実施形態における処理のフローチャートを示す。図7に示した実施形態では、ステップS200〜ステップS202までおよびステップS208の処理は、図6で説明した実施形態と同様なので説明の便宜上省略する。図7に示した実施形態では、ステップS203で、省エネモード遷移の通知をモニタする。なお、省エネモード遷移は、パワーマネージメント手段22によるHDD停止処理を含み、HDDへのアクセスを制限する点で、HDD占有識別値を使用して判断することもできるし、またパワーマネージメント手段22からの明示的な通知を受領して検出される。
【0057】
一方、ステップS203で省エネモード遷移を検出した場合(yes)、画像形成装置10は、ステップS204でログデータの転送を中止し、HDDバスの占有権を放棄し、さらにHDDバス占有権テーブル38のエントリを更新してログ管理手段20の占有権を放棄する。さらに画像形成装置10は、パワーマネージメント手段22が占有権を取得したことを示す値を、HDDバス占有権テーブル38の該当するエントリに登録する。その後、ステップS205で画像形成装置10は、ログデータの保存パスを高速アクセス可能なNVRAM34に切替え、NVRAM34にログデータの残り部分をデータエンドになるまで転送する。
【0058】
この実施形態の場合、省エネモードでRAMなどのバックアップ電源が設定されていない場合には、HDDバス占有権テーブル38をNVRAM34に登録する処理を実行する。ない、この処理は、画像形成装置10が省エネモードにおいてRAMの内容を保存する処理を含む場合には、特に必要とされるものではない。
【0059】
その後、画像形成装置10は、ステップS206で通常モードに復帰するまで待機し、通常モードに復帰した場合(yes)、ステップS207で、HDDバス占有権テーブル38を参照し、前回のログデータの登録が省エネモードからの退避であったことを識別し、NVRAM34に格納したログデータをリカバリする。なお、本実施形態は、画像形成装置10がログデータ保存中に停電などの電源供給機能障害イベントが発生したことを検出し、当該イベントをログデータ保存パスの切替え処理の契機として登録することにより、停電時などのシャットダウン処理にも適用することができる。
【0060】
上述した処理を使用することにより、画像形成処理上優先しなければならない他機能手段の画像データ転送の遅延を最小限とし、省エネモードへの退避を高速化することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0061】
本発明の上記機能は、C、C++、Java(登録商標)、Java(登録商標)Beans、Java(登録商標)Applet、Java(登録商標)Script、Perl、Rubyなどのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向ブログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、装置可読な記録媒体に格納して頒布することができる。
【0062】
これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】画像形成装置の実施形態を示した図。
【図2】本実施形態の画像形成装置がログデータまたは画像データをHDDに格納する場合の詳細な機能ブロックを示した図。
【図3】HDDバス占有権テーブルの実施形態を示した図。
【図4】ログ管理装置がHDDに対してログデータを記録する場合の実施形態を示した図。
【図5】アドレス・マップの実施形態を示した図。
【図6】画像形成装置が実行する処理シーケンスの実施形態を示した図。
【図7】画像形成装置が実行する処理シーケンスの実施形態を示した図。
【符号の説明】
【0064】
10…画像処理装置、12…フロント・アプリケーション層、14…ミドルウェア層、16…OS層、18…エンジン・システム、20…ログ管理手段、22…パワーマネージメント手段、24…システム資源管理手段、26…画像管理手段、28…API、30…API、32…HDD、34…不揮発性メモリ(NVRAM)、36…排他制御手段、38…HDDバス占有権テーブル、40…アドレス・マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置のジョブ履歴をログデータとして管理するログ管理手段と、
前記ログデータを格納するハードディスク装置および不揮発性メモリと、
前記ログ管理手段の前記ハードディスク装置の占有権を、前記ログ管理手段を除く他機能手段よりも下位に制御し、バス占有権を保有する機能手段を登録するバス占有権登録手段を含む優先順位管理手段と
を含む、画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、前記ログ管理手段を除く他機能手段の譲渡要求を検出する検出手段を備え、前記ログデータを前記ハードディスク装置に格納している間、前記譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記バス占有権登録手段に登録することにより他機能手段に譲渡し、前記ログデータの残り部分を前記不揮発性メモリに退避させる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記ログデータの書込イベント発生に応答して前記バス占有権登録手段を参照し、前記バス占有権登録手段の登録内容に応じて前記ログデータの保存パスを、前記ハードディスク装置または前記不揮発性メモリから選択する、保存パス選択手段を備える、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、前記ログデータの圧縮手段を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置は、前記バス占有権登録手段を参照して、前記退避させたログデータを前記ハードディスク装置にリカバリする、リカバリ手段を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記他機能手段は、前記画像形成装置が印刷ジョブを行う場合の対象画像データを管理する画像管理手段および前記画像形成装置の電力供給状態を管理するパワーマネージメント手段を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置のジョブ履歴をログデータとして保存するログデータ書込イベントを検出するステップと、
前記ログデータ書込イベントが発生した時点で、ハードディスク装置のバス占有権を登録するバス占有権登録手段を検索するステップと、
前記バス占有権登録手段の検索に応答して前記ログデータ書込イベントの優先順位を前記画像形成装置の他機能手段の処理よりも下位に設定するステップと、
を画像形成装置に実行させる制御方法。
【請求項8】
前記検索の結果、前記バス占有権登録手段にログデータの保存より優先される前記他機能手段の譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記他機能手段に譲渡し、前記ログデータを前記不揮発性メモリに退避させるステップを前記画像形成装置に実行させる、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記検索の結果、前記バス占有権登録手段にログデータの保存より優先される他機能手段が検出されなかった場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を取得して前記ハードディスク装置に前記ログデータを格納するステップと、
前記ログデータの格納が終了するまでの間、前記他機能手段による譲渡要求を検出するステップと、
前記譲渡要求を検出した場合、前記ハードディスク装置のバス占有権を前記他機能手段に譲渡し、前記ログデータの残り部分を前記不揮発性メモリに退避させるステップと
を実行させる、請求項7または8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記他機能手段は、前記画像形成装置が印刷ジョブを行う場合の対象画像データを管理する画像管理手段および前記画像形成装置の電力供給状態を管理するパワーマネージメント手段を含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能手段を画像形成装置に実現するための装置実行可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−166899(P2008−166899A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350987(P2006−350987)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】