説明

画像形成装置、印刷指示装置、及び画像形成方法

【課題】 セキュリティを付与するための不可視トナーが不足した場合や不可視トナーが使用できない場合であってもセキュリティを付与できるようにする。
【解決手段】 文書画像とコード画像とを取り出し(S301)、不可視トナーの供給手段が装着されているか(S302)、供給手段のトナー残量がどの程度かを判定する(S303)。その結果、供給手段のトナー残量が十分あれば、そのまま文書画像とコード画像を合成する(S308)。一方、供給手段は装着されているがトナー量が不足する場合は、出力条件の選択を促し(S304)、選択された出力条件に応じてコード画像の削減を行った(S305)後、供給手段が装着されていない場合やトナー量がゼロである場合は、出力条件の選択を促し(S306)、選択された出力条件に応じた処理を行った(S307)後、文書画像とコード画像を合成する(S308)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機のような画像形成装置等に関し、より詳しくは、フルカラーの画像形成を可能とする画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙文書へのセキュリティ付与のニーズが急速に高まってきている。そして、このようなセキュリティ付与のために、紙文書の偽造を防止又は抑止したりその原本性の保証をしたりするための情報を紙文書に埋め込むことが広く行われている。また、個人情報保護法が施行される等、社会全体として個人情報の取り扱いに敏感になっている今日、紙文書の複写による情報漏洩を抑止するためにも、このようなセキュリティの付与は重要視されている。特に、情報漏洩は組織内の行為に起因する場合が多いため、紙文書へのセキュリティ付与をユーザが個別に行うのではなく、全ての紙文書に対して行う必要がある。こういったことから、セキュリティを、目に見える可視情報としてではなく、特殊なトナーを用いて目に見えにくい不可視情報として付与することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、このように特殊なトナーを用いてセキュリティを付与する場合、その特殊なトナーが不足すると、紙文書にセキュリティを付与することができなくなってしまう。ここで、一般的なトナーの残量不足に対しては、残量不足をユーザに警告すると共に記録濃度を低くして突然印字できなくなることを防止する方法(例えば、特許文献2参照)や、黒トナーの残量不足に対しカラートナーを用いて擬似的に黒色印字を行う方法(例えば、特許文献3参照)等が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−12880号公報(第6−8頁、第1−3図)
【特許文献2】特開平10−207319号公報(第4、5頁、第1図)
【特許文献3】特開2004−237657号公報(第6頁、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1のような特殊なトナーを用いたセキュリティ付与が可能な画像形成装置においては、そのセキュリティ付与用のトナーが不足してくると、紙文書にセキュリティを付与することができなくなるという問題点があった。
かかる問題点に対し、特許文献2、3の技術は、何ら有効な解決策を提供するものではない。即ち、一般的なトナー不足の際の対応方法を開示しているだけであり、セキュリティを付与するための不可視トナーが不足した際に効果的な対応方法を開示していない。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的は、セキュリティを付与するための不可視トナーが不足した場合であってもセキュリティを付与できるようにすることにある。
また、本発明の他の目的は、セキュリティを付与するための不可視トナーを使用できない状況においてもセキュリティを付与できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明では、不可視トナーの供給手段が装着されていない場合や、供給手段におけるトナー量が不足している場合等、不可視トナーの供給に不具合がある場合に、代替の画像形成方法により媒体にセキュリティを付与するようにした。即ち、本発明の画像形成装置は、文書画像を可視トナーにより形成し、機械読取り可能なコード画像を不可視トナーにより形成することの可能な画像形成手段と、不可視トナーの供給の不具合を検出する検出手段とを備え、画像形成手段は、検出手段により検出された不可視トナーの供給の不具合に応じて、コード画像の機械読取り可能な状態を維持しつつその形成方法を変更する、というものである。
【0008】
ここで、不可視トナーの供給手段におけるトナー量が所定の量よりも少ないが印刷可能な程度の量である場合には、コード画像の形成方法を、不可視トナーの使用量が削減されるような方法に変更することが好ましい。また、不可視トナーの供給手段が装着されていない場合又はその供給手段におけるトナー量が印刷可能な程度の量よりも少ない場合には、コード画像の形成方法を、不可視トナーを用いない方法に変更することが好ましい。
【0009】
また、本発明は、画像形成装置に対し印刷指示を行う印刷指示装置として捉えることもできる。その場合、本発明の印刷指示装置は、不可視トナーによりコード画像を印刷することの可能な少なくとも1つの画像形成装置を含む複数の画像形成装置について、不可視トナーの使用可否に関する情報を記憶する記憶手段と、複数の画像形成装置のうちの特定の画像形成装置に対する印刷指示を受け付ける受付手段と、その特定の画像形成装置について、不可視トナーの使用ができない旨の情報が記憶されている場合に、不可視トナーの使用ができる旨の情報が記憶されている他の画像形成装置に対し、印刷指示を送信する送信手段とを備えている。
【0010】
一方、本発明は、不可視トナーの供給に不具合がある場合に代替手段により媒体にセキュリティを付与する方法として捉えることもできる。その場合、本発明の画像形成方法は、文書画像を可視トナーにより形成し、機械読取り可能なコード画像を不可視トナーにより形成することの可能な画像形成装置における画像形成方法であって、不可視トナーの供給の不具合を検出するステップと、検出された不可視トナーの供給の不具合に応じた方法で、コード画像を、その機械読取り可能な状態を維持しつつ形成するステップとを含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セキュリティを付与するための不可視トナーが不足した場合であってもセキュリティを付与できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という)について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用されるシステムの構成の一例を示したものである。このシステムは、少なくとも、電子文書の印刷を指示する端末装置100と、電子文書を蓄積する文書リポジトリ200と、電子文書の画像にコード画像を重畳して印刷する画像形成装置300とがネットワーク900に接続されることにより構成されている。また、このシステムは、画像形成装置300にて出力される印刷物500と、印刷物500に文字又は図形を記録し、その文字又は図形の軌跡を読み取るペンデバイス600とを含む。更に、ネットワーク900には、ペンデバイス600から受信した軌跡と、文書リポジトリ200から取得した電子文書とを重ね合わせて表示する端末装置700も接続されている。
【0013】
以下、本システムの動作の概略を説明する。
まず、端末装置100は、文書リポジトリ200から印刷対象の電子文書を取得する(A)。そして、画像形成装置300に対し、この電子文書の印刷を指示する(B)。このとき、端末装置100は、印刷に関するパラメータである印刷属性を指定する。この印刷属性には、通常の印刷と同様、用紙サイズ、向き、縮小/拡大、両面印刷、N−up(用紙の1ページ内に電子文書のNページを割り付ける印刷)等が含まれる。また、コード画像に関し、コード画像を印刷すべき領域の指定等が含まれてもよい。
この電子文書の印刷指示を受けると、画像形成装置300は、電子文書の画像にコード画像を重畳した画像を紙等の媒体に印刷し、印刷物500を出力する。この場合、コード画像は、識別情報に対応する識別コードと、位置情報に対応する位置コードとを画像化したものである。或いは、その他の情報である付加情報を含めて画像化したものであってもよい。
【0014】
ここで、識別情報としては、個々の媒体を一意に識別する情報を採用することができる。例えば、画像形成装置300の識別番号と画像形成装置300における媒体の印刷の一連番号又は印刷の日時とを組み合わせて得られる情報であってもよいし、所定のサーバにて重複がないように一元管理されている情報であってもよい。或いは、個々の媒体を一意に識別する情報ではなく、媒体に印刷された電子文書を一意に識別する情報を、識別情報として採用してもよい。
また、位置情報とは、個々の媒体上の座標位置(X座標、Y座標)を特定するための情報である。例えば、媒体の左上点を原点とし、媒体の右方向にX軸をとり、下方向にY軸をとることにより設定した座標系で、座標を表すことが考えられる。或いは、1つの媒体上には、1つの座標系ではなく、領域ごとに座標系を設ける等、複数の座標系を設定してもよい。
更に、付加情報としては、印刷指示を行ったユーザの識別情報や、コピー禁止であるかどうかの情報等がある。
【0015】
また、画像形成装置300は、コード画像を、赤外光の吸収率が一定の基準以上である不可視のトナーを用いて不可視画像として形成する。一方、電子文書の文書画像は、赤外光の吸収率が一定の基準以下である可視のトナーを用いて可視画像として形成することが好ましい。尚、コード画像の形成に用いるトナーと文書画像の形成に用いるトナーとで、赤外光の吸収率に差を設けたのは、赤外光を照射してコード画像を読み取る際の読取り精度を確保するためである。尚、本明細書では、赤外光照射によるコード画像の読取りを前提として説明するが、紫外光によりコード画像を読み取るものであってもよい。
【0016】
その後、ユーザが、ペンデバイス600を用いて印刷物500に文字又は図形を筆記したとする(D)。これにより、ペンデバイス600は、印刷物500に対し赤外光を照射し、その反射光を検出することでコード画像を入力する。そして、コード画像から情報を取得又は生成し、有線通信又は無線通信を介して、その情報を端末装置700に送信する(E)。尚、ここで送信される情報には、例えば、印刷物500の識別情報や、印刷物500に対して筆記された文字又は図形の位置情報がある。或いは、位置情報は、一定の時間における文字又は図形の位置情報を連結させた軌跡情報として送信するようにしてもよい。
その後、端末装置700は、ペンデバイス600から受信した識別情報に基づいて、印刷物500に印刷された文書画像の元となる電子文書を文書リポジトリ200から取得する(F)。そして、文書リポジトリ200から取得した電子文書と、ペンデバイス600から取得した情報とを重ね合わせて表示する。
【0017】
ところで、ペンデバイス600から受信した識別情報が、個々の媒体を一意に識別する情報である場合、この識別情報に基づいて電子文書を取得できるようにするためには、識別情報と電子文書との対応関係を管理しておく必要がある。図1では、この対応関係をどこで管理するかについては明示しなかったが、端末装置700からアクセス可能であれば、どこで管理するようにしてもよい。例えば、文書リポジトリ200であってもよいし、画像形成装置300であってもよい。尚、ペンデバイス600から受信した識別情報が、媒体に印刷された電子文書を一意に識別する情報である場合は、このような対応関係を参照することなく、電子文書を取得することができる。
また、ペンデバイス600から軌跡情報を受信した場合、この軌跡情報は、印刷物500上での筆記位置に対応する電子文書上の位置に重ね合わせて表示される。これは、ペンデバイス600で読み取ったコード画像に筆記位置の情報が含まれるので、その情報から電子文書の表示イメージにおける対応する位置が特定できるからである。
【0018】
以上、本実施の形態が適用されるシステムについて述べてきたが、このような構成はあくまで一例に過ぎない。例えば、画像形成装置300における文書画像とコード画像とを重畳する画像処理部(後述)の機能を、端末装置100、文書リポジトリ200、又はその他の装置で実現するようにしてもよい。また、文書リポジトリ200は、端末装置100内にあってもよい。更に、端末装置100と端末装置700とは、同一の端末装置であってもよい。
尚、本明細書では、「電子文書」の文言を用いるが、これは、テキストを含む「文書」を電子化したデータのみを意味するものではない。例えば、絵、写真、図形等の画像データ(ラスタデータかベクターデータかによらない)、その他の印刷可能な電子データも含めて「電子文書」としている。
【0019】
図2は、画像形成装置300の機能構成を示した図である。尚、ここでは、コード画像は、識別コード及び位置コードを画像化したものであるとする。
画像形成装置300は、指示入力部31と、文書画像生成部33と、文書画像バッファ34と、情報取得部35と、コード画像生成部36と、コード画像バッファ37と、画像合成部38と、画像形成部400と、検出部45とを備えている。
また、コード画像生成部36は、位置情報符号化部36aと、位置コード生成部36bと、識別情報符号化部36cと、識別コード生成部36dと、コード配置部36gと、パターン格納部36hと、コード画像化部36iとを備えている。
【0020】
指示入力部31は、印刷対象の電子文書及び印刷属性を含む印刷指示を端末装置100から入力する。ここで、印刷指示は、PostScript等に代表されるPDL(Page Description Language)として入力される。
文書画像生成部33は、電子文書の画像形成に必要な情報を印刷指示から抽出して、電子文書を画像化し、文書画像バッファ34へ格納する。
情報取得部35は、識別情報及び位置情報を取得する。ここで、識別情報は、画像形成装置300の識別番号と、画像形成装置300における媒体の印刷の一連番号又は印刷の日時とを組み合わせることにより、取得することができる。また、識別情報を管理するサーバに対し、印刷部数分の識別情報の発行を要求することで取得してもよい。或いは、電子文書の識別情報を採用するのであれば、電子文書と共に送られる属性情報の中から識別情報を抽出すればよい。一方、位置情報は、印刷属性に含まれる用紙サイズや向きに応じて適宜取得することができる。
【0021】
コード画像生成部36は、情報取得部35にて取得された情報に基づいてコード画像を生成し、コード画像バッファ37へ格納する。
画像合成部38は、文書画像バッファ34に格納されている文書画像と、コード画像バッファ37に格納されているコード画像とを合成し、合成画像を画像形成部400へ送信する。
画像形成部400は、受信した合成画像を印刷出力する。尚、画像形成部400は、コード画像を、人間の目に容易に識別できない(不可視の)色材を使用して形成し、文書画像を、人間の目に識別可能な(可視の)色材を使用して形成する。また、不可視の色材は、赤外領域における特定の波長を多く吸収する特性を有しており、可視の色材は、その特定の波長をあまり吸収しない特性を有している。
検出部45は、画像形成部400のトナーの供給状況を検出し、画像合成部38へ通知する。
【0022】
位置情報符号化部36aは、位置情報が入力されると、位置情報を所定の符号化方式により符号化する。この符号化には、例えば、既知の誤り訂正符号であるRS(リードソロモン)符号やBCH符号を用いることができる。また、誤り検出符号として、位置情報のCRC(Cyclic Redundancy Check)やチェックサム値を計算し、それを冗長ビットとして位置情報に付加することもできる。また、疑似雑音系列の一種であるM系列符号を位置情報として利用することもできる。即ち、P次のM系列(系列長2P−1)の場合、M系列から長さPの部分系列を取り出したときにその部分系列に現われるビットパターンがM系列中に一度しか現われない性質を、位置の符号化に利用することができる。
位置コード生成部36bは、符号化された位置情報を、コード情報として埋め込む形式に変換し、位置コードを生成する。例えば、第三者による解読が困難になるように、符号化された位置情報における各ビットの配置を、疑似乱数等により入れ替えたり暗号化したりすることができる。また、位置コードが2次元配置される場合は、ビット値をコードの配置と同様に2次元配置しておく。
【0023】
識別情報符号化部36cは、識別情報が入力されると、識別情報を所定の符号化方式により符号化する。この符号化には、位置情報の符号化に使用したのと同様の方式を使用することができる。
識別コード生成部36dは、符号化された識別情報を、コード情報として埋め込む形式に変換し、識別コードを生成する。例えば、第三者による解読が困難になるように、符号化された識別情報における各ビットの配置を、疑似乱数等により入れ替えたり暗号化したりすることができる。また、識別コードが2次元配置される場合は、ビット値をコードの配置と同様に2次元配置しておく。
【0024】
コード配置部36gは、2次元配置された位置コードと識別コードとを合成して2次元コードを生成し、この2次元コードを出力画像サイズに相当する数だけ配置して2次元コード配列を生成する。このとき、位置コードとしては、配置位置により異なる位置情報を符号化したものを使用し、識別コードとしては、配置位置によらず同じ識別情報を符号化したものを使用する。
コード画像化部36iは、2次元コード配列における配列要素のビット値を確認し、各ビット値に対応するパターン画像をパターン格納部36hより取得し、2次元コード配列を画像化して得られるコード画像を出力する。
【0025】
尚、これらの機能部分は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、画像形成装置300の図示しないCPUが、指示入力部31、文書画像生成部33、情報取得部35、コード画像生成部36、画像合成部38の各機能を実現するプログラムを外部記憶装置から主記憶装置に読み込んで処理を行う。
【0026】
図3(a)〜(c)は、上述したコード画像生成部36にて生成されるコード画像を説明するための図である。図3(a)は、不可視画像として形成される2次元コード配列を模式的に示している。また、図3(b)は、図3(a)における2次元コード配列の1単位である2次元コードを拡大して示した図である。更に、図3(c)は、バックスラッシュ「\」とスラッシュ「/」のパターン画像を説明するための図である。
【0027】
本実施の形態において、図3(a)〜(c)に示すコード画像は、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が例えば7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が例えば30%以上の不可視トナーによって形成される。また、この不可視トナーは、画像の機械読取りのために必要な近赤外光吸収能力を高めるために、平均分散径は100nm〜600nmの範囲のものが採用される。ここで、「可視」及び「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。印刷された媒体に形成された画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。
【0028】
また、このコード画像は、赤外光照射による機械読取りと復号化処理とが長期に亘って安定して可能で、かつ、情報が高密度に記録できる不可視画像で形成される。更に、画像を出力する媒体表面の可視画像が設けられた領域とは関係なく、任意の領域に設けることが可能な不可視画像であることが好ましい。更に、例えば、目視した際に光沢差によって認識できる不可視画像であることが更に好ましい。また、例えば、印刷される媒体の大きさに合わせて媒体面(紙面)の全面に不可視画像が形成される。但し、「全面」とは、用紙の四隅を全て含む意味ではない。電子写真方式等の装置では、通常、紙面の周囲は印刷できない範囲である場合が多いことから、かかる範囲には不可視画像を印刷する必要はない。
【0029】
図3(b)に示す2次元コードは、媒体上の座標位置を示す位置コードが格納される領域と、媒体等を一意に特定するための識別コードが格納される領域とを含んでいる。また、同期コードが格納される領域も含んでいる。そして、図3(a)に示すように、この2次元コードが媒体面に複数、格子状に配置される。即ち、媒体面に、図3(b)に示すような2次元コードが複数個、配置され、その各々が、位置コード、識別コード、及び同期コードを備えている。そして、複数の位置コードの領域には、それぞれ配置される場所により異なる位置情報が格納されている。一方、複数の識別コードの領域には、配置される場所によらず同じ識別情報が格納されている。
【0030】
図3(b)において、位置コードは、6ビット×6ビットの矩形領域内に配置されている。各ビット値は、回転角度が異なる複数の微小ラインビットマップで形成され、図3(c)に示されるパターン画像(パターン0とパターン1)で、ビット値0とビット値1を表現している。より具体的には、相互に異なる傾きを有するバックスラッシュ「\」及びスラッシュ「/」を用いてビット0とビット1とを表現している。パターン画像は600dpiで8×8画素の大きさで構成されており、左上がりの斜線のパターン画像(パターン0)がビット値0を、右上がりの斜線のパターン画像(パターン1)がビット値1を表現する。従って、1つのパターン画像で1ビットの情報(0又は1)を表現できる。このような2種類の傾きからなる微小ラインビットマップを用いることで、可視画像に与えるノイズが極めて小さく、かつ大量の情報を高密度にデジタル化して埋め込むことが可能な2次元コードを提供することが可能となる。
【0031】
即ち、図3(b)に示した位置コード領域には合計36ビットの位置情報が格納されている。この36ビットのうち、18ビットをX座標の符号化に、18ビットをY座標の符号化に使用することができる。各18ビットを全て位置の符号化に使用すると、218通り(約26万通り)の位置を符号化できる。各パターン画像が図3(c)に示したように8画素×8画素(600dpi)で構成されている場合には、600dpiの1ドットは0.0423mmであることから、図3(b)の2次元コード(同期コードを含む)の大きさは、縦横共に3mm程度(8画素×9ビット×0.0423mm)となる。3mm間隔で26万通りの位置を符号化した場合、約786mの長さを符号化できる。このように18ビット全てを位置の符号化に使用してもよいし、或いは、パターン画像の検出誤りが発生するような場合には、誤り検出や誤り訂正のための冗長ビットを含めてもよい。
また、識別コードは、2ビット×8ビット及び6ビット×2ビットの矩形領域に配置されており、合計28ビットの識別情報を格納できる。識別情報として28ビットを使用した場合は、228通り(約2億7千万通り)の識別情報を表現できる。識別コードも位置コードと同様に、28ビットの中に誤り検出や誤り訂正のための冗長ビットを含めることができる。
【0032】
尚、図3(c)に示す例では、2つのパターン画像は互いに角度が90度異なるが、角度差を45度とすれば4種類のパターン画像を構成できる。このように構成した場合は、1つのパターン画像で2ビットの情報(0〜3)を表現できる。即ち、パターン画像の角度種類を増やすことで、表現できるビット数を増加することができる。
また、図3(c)に示す例では、パターン画像を使用してビット値の符号化を説明しているが、パターン画像以外を採用してもよい。例えば、ドットのON/OFFや、ドットの位置を基準位置からずらす方向により符号化することも可能である。
【0033】
図4は、図2の画像形成部400の構成を示した図であり、所謂タンデム型の機構を示している。この画像形成部400は、各色の階調データに対応して画像形成を行う画像プロセス系410、記録用紙(シート、媒体)を搬送するシート搬送系430、画像形成部400全体を制御する制御部440、例えばパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)やスキャナユニット445等に接続され、受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理系であるIPS(Image Processing System)450を備えている。尚、図4は、画像形成部400をユーザが操作する側(手前側)から見た図である。
【0034】
画像プロセス系410は、水平方向に一定の間隔を置いて並列的に配置される、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、不可視(I)、黒(K)の5つの画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411K、この画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの感光体ドラム412に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト421上に多重転写させる転写ユニット420を備えている。また、転写ユニット420によって二次転写された記録用紙上の画像を、熱及び圧力を用いて記録用紙に定着させる定着器429を備えている。更に、画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kに対して各色のトナーを供給するためのトナーカートリッジ419Y,419M,419C,419I,419Kが設けられている。
【0035】
本実施の形態において、各画像形成ユニット411(411Y,411M,411C,411I,411K)は、矢印A方向に回転する感光体ドラム412の周囲に、これらの感光体ドラム412を帯電させる帯電器413、感光体ドラム412上に静電潜像を書き込むレーザ露光器414、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム412上の静電潜像をトナーにより現像する現像器415、感光体ドラム412上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト421に転写する一次転写ロール416、感光体ドラム412上の残留トナーを除去するドラムクリーナ417等の電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット411は、中間転写ベルト421の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、不可視(I)、黒(K)の順に配置されている。
【0036】
転写ユニット420は、中間転写ベルト421を駆動するドライブロール422、中間転写ベルト421に一定のテンションを付与するテンションロール423、重畳された各色のトナー像を記録用紙に二次転写するためのバックアップロール424、中間転写ベルト421上に存在する残留トナー等を除去するベルトクリーナ425を備えている。中間転写ベルト421は、このドライブロール422とテンションロール423及びバックアップロール424との間に一定のテンションで掛け回されており、定速性に優れた専用の駆動モータ(図示せず)によって回転駆動されるドライブロール422により、矢印B方向に所定の速度で循環駆動される。この中間転写ベルト421は、例えば、チャージアップを起こさないベルト素材(ゴム又は樹脂)にて抵抗調整されたものが使用されている。
【0037】
シート搬送系430は、画像が記録される記録用紙(シート、媒体)を積載して供給する給紙トレイ431、給紙トレイ431から記録用紙を取り上げて供給するナジャーロール432、ナジャーロール432から供給された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送するフィードロール433、フィードロール433により1枚ずつに分離された記録用紙を画像転写部に向けて搬送する搬送路434を備えている。また、搬送路434を介して搬送された記録用紙に対し、二次転写位置に向けてタイミングを合わせて搬送するレジストロール435、二次転写位置に設けられバックアップロール424に圧接して記録用紙上に画像を二次転写する二次転写ロール436、定着器429によってトナー画像が定着された記録用紙を機外に排出する排出ロール437、排出ロール437によって排出された記録紙を積載する排出トレイ438を備えている。
【0038】
また、スキャナユニット445は、図示しないCCDイメージセンサ等によってプラテンガラスに載置された原稿の画像、又は、プラテンガラス上を搬送される原稿の画像を読み取る。ここで、本実施の形態における画像形成部400では、その上部側にスキャナユニット445を配設することにより、省スペース化を図っている。尚、排出トレイ438とスキャナユニット445との間には所定の隙間が形成されており、排出トレイ438に排出された画像形成後の記録用紙を容易に取り出せるようになっている。
【0039】
次に、この画像形成部400の作像プロセスについて説明する。
まず、図2の画像合成部38で生成された画像データが、IPS450に入力される。IPS450は、入力された画像データに対し、所定の画像処理を施す。画像処理が施された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、不可視(I)、黒(K)の5色の色材階調データに変換され、各画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kのレーザ露光器414に出力される。
【0040】
各画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kでは、感光体ドラム412が帯電器413によって所定の電位に帯電される。また、各画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kのレーザ露光器414では、IPS450より入力された色材階調データに応じて、画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの感光体ドラム412にレーザ光を照射している。画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの感光体ドラム412では、帯電された表面が露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの現像器415にて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、不可視(I)、黒(K)の各色のトナー像として現像される。
【0041】
画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの各感光体ドラム412上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト421上に多重転写される。このとき、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像を形成する画像形成ユニット411Y,411M,411Cは、中間転写ベルト421の移動方向の最上流側に設けられているため、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像を中間転写ベルト421に対して最初に一次転写する。また、不可視のトナー像を形成する画像形成ユニット411Iは、中間転写ベルト421の移動方向の2番目に下流に設けられているため、不可視のトナー像を中間転写ベルト421に対して最後から2番目に一次転写する。更に、黒のトナー像を形成する画像形成ユニット411Kは、中間転写ベルト421の移動方向の最下流側に設けられているため、黒のトナー像を中間転写ベルト421に対して最後に一次転写する。そして、転写後の画像形成ユニット411Y,411M,411C,411I,411Kの感光体ドラム412は、ドラムクリーナ417によってクリーニングされる。
【0042】
一方、シート搬送系430では、画像形成のタイミングに合わせてナジャーロール432が回転し、給紙トレイ431から所定サイズの記録用紙が供給される。フィードロール433により1枚ずつ分離された記録用紙は、搬送路434を経てレジストロール435に搬送され、一旦、停止される。その後、トナー像が形成された中間転写ベルト421の移動タイミングに合わせてレジストロール435が回転し、記録用紙は、バックアップロール424及び二次転写ロール436によって形成される二次転写位置に搬送される。二次転写位置にて下方から上方に向けて搬送される記録用紙には、圧接力及び所定の電界を用いて、5色が多重されているトナー像が副走査方向に順次、転写される。そして、各色のトナー像が転写された記録用紙は、定着器429によって熱及び圧力で定着処理を受けた後、排出ロール437によって上部に設けられた排出トレイ438に排出される。一方、二次転写後の中間転写ベルト421は、ベルトクリーナ425によってクリーニングされ、次のプロセスに備える。
【0043】
次に、本実施の形態における不可視トナーの供給状況に応じた画像形成について説明する。
図2に示したように、本実施の形態では、画像形成部400におけるトナーの供給状況を監視し、供給の不具合を検出する検出部45を設けている。この検出部45は、例えば、トナーの供給手段の装着状態や、供給手段におけるトナー残量を検知する。
ところで、検出部45は、各色トナーの供給手段の装着状態や、各供給手段におけるトナー残量を検知することが可能であるが、以下では、特に、不可視トナーの供給手段の装着状態や、その供給手段におけるトナー残量の検知に着目して説明することにする。また、トナーの供給手段としては、トナーカートリッジ、現像器等、様々なものが考えられるが、ここでは、トナーカートリッジを例示する。
【0044】
例えば、図4に示した画像形成部400のように、各色のトナーカートリッジの装着位置が決まっている場合を考える。この場合は、不可視トナーのカートリッジの装着位置にトナーカートリッジが装着されていることを検出することにより、不可視トナーのカートリッジの装着を検知することができる。一方、例えば、4個のトナーカートリッジの装着位置に対し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、不可視(I)、黒(K)の5つトナーカートリッジから任意に選択した4個までのトナーカートリッジを装着するような画像形成装置の場合は、トナーカートリッジをロックするロック機構の凹凸パターンを色ごとに異ならせておき、その凹凸パターンを認識することで、不可視トナーのカートリッジが装着されているかどうかを検知することができる。
また、トナーカートリッジにおけるトナー残量の検知は、例えば、トナーカートリッジの近傍に光学センサを設けることにより行ってもよいし、トナーの供給指示に対するトナー濃度の変化を監視することにより行ってもよい。
そして、検出部45が、この検出結果の信号を、画像合成部38に伝える。
これにより、画像合成部38は、次のような動作を行う。
【0045】
図5は、画像合成部38のメインの動作を示したフローチャートである。
まず、画像合成部38は、文書画像生成部33によって文書画像バッファ34に格納された文書画像と、コード画像生成部36によってコード画像バッファ37に格納されたコード画像とを取り出す(ステップ301)。尚、ここでの文書画像とコード画像の取出しにおいては、同じ媒体に印刷すべき文書画像とコード画像とが取り出されるよう同期がとられているものとする。
ここで、画像合成部38は、検出部45から送られた検出信号に基づいて、不可視トナーの供給手段が装着されているかどうかを判定する(ステップ302)。
【0046】
その結果、不可視トナーが装着されていると判定されれば、同様に検出部45からの検出信号に基づき、不可視トナーの供給手段におけるトナー残量がどの程度かを調べる(ステップ303)。
ここで、トナー残量が十分あると判定されれば、媒体の全面にコード画像を重畳して印字することが可能なので、画像合成部38は、文書画像とコード画像を合成する(ステップ308)。
また、ステップ303で、トナー残量が所定の量よりも少ないがまだ印刷可能な程度残っていると判定されれば、画像合成部38は、ユーザにその旨を伝えると共に、出力条件の選択を促す表示を行う(ステップ304)。尚、この表示は、画像形成装置300のUI画面に対して行ってもよいし、プリンタドライバを介してユーザのPCの画面に対して行ってもよい。
【0047】
以下、出力条件の選択肢の例を記す。
(1−ア) コード画像のピッチを粗くして印字することにより、不可視トナーの消費量を低減する。例えば、コード画像に含まれるデコード可能な最小単位は変えずに、隣接する最小単位のコード間のピッチを拡大する。
(1−イ) コード化する情報を少なくすることにより、不可視トナーの消費量を低減する。例えば、位置情報はコード化せず、識別情報のみをコード化する等である。尚、この場合も、結果的にコード間のピッチは広くなる。
(1−ウ) コード情報を媒体全面ではなく、特定の箇所のみに印字することにより、不可視トナーの消費量を低減する。例えば、コード情報を媒体の左上にのみ印字する等である。
【0048】
或いは、ステップ304の処理は行わずに、これらの選択肢のいずれかを予め設定しておいてもよい。
そして、出力条件が決定されると、画像合成部38は、この出力条件に応じて、コード画像の削減処理を行う(ステップ305)。尚、このコード画像の削減処理については、後で詳しく述べる。
【0049】
一方、ステップ302で不可視トナーの供給手段が装着されていないと判定された場合、又は、不可視トナーの供給手段におけるトナー残量が印刷可能な程度の量に満たない(殆どゼロ)であると判定された場合は、もはや不可視トナーを用いた画像形成は行えない。従って、画像合成部38は、ユーザにその旨を伝えると共に、出力条件の選択を促す表示を行う(ステップ306)。尚、この表示は、画像形成装置300のUI画面に対して行ってもよいし、プリンタドライバを介してユーザのPCの画面に対して行ってもよい。
【0050】
以下、出力条件の選択肢の例を記す。
(2−ア) 不可視トナーで印字すべきコード画像を可視トナーで印字する。この場合は、画像が劣化してしまうが、不可視トナーで印字した場合と同様のコード情報を保つことができる。
(2−イ) 可視トナーでコード画像のピッチを粗くして印字する。これにより、セキュリティを確保しつつ、画像の劣化を低減することができる。
(2−ウ) コード情報を媒体全面ではなく、特定の箇所のみに可視トナーで印字する。例えば、コード情報を媒体の左上にのみ印字する等である。これにより、最低限のセキュリティを確保しつつ、画像の劣化を低減することができる。
(2−エ) カラーモードの印刷指示であっても、文書画像を黒トナーで印字し、コード画像をカラートナーで印字する。
(2−オ) カラーモードの印刷指示であっても、文書画像を特定のカラー可視トナーで印字し、コード画像を黒トナーで印字する。黒トナーが赤外吸収特性を持っていれば、不可視トナーで印字した場合と同じようにデコードすることができる。
(2−カ) コード画像を印字しない。
(2−キ) 同様にコード画像を印字しないが、文書画像に対しセキュリティを付与する必要がなくなったことを条件とする。例えば、文書画像に予め機密情報領域を設定しておく。機密情報領域とは、例えば、氏名と属性を含む個人情報に係る文書画像であれば、氏名が記載された領域等である。このような設定の下で、機密情報領域内の情報を印字しないようにしたり判読できないよう塗りつぶしたりすることを条件に、コード画像を印字しないようにするものである。
【0051】
或いは、ステップ306の処理は行わずに、これらの選択肢のいずれかを予め設定しておいてもよい。
そして、出力条件が決定されると、画像合成部38は、この出力条件に応じた処理、即ち、コード画像及び文書画像の色属性の変更処理等を行なう(ステップ307)。例えば、(2−ア)〜(2−オ)であれば、コード画像の色属性を可視に変更する。特に、(2−エ)ではカラーに、(2−オ)では黒に変更する。また、(2−エ)では文書画像の色属性を黒に、(2−オ)では文書画像の色属性を特定のカラーに変更する。ここで、(2−エ)、(2−オ)では、色を特定して説明したが、コード画像の色と文書画像の色とが識別可能であれば、いかなる色であってもよい。
【0052】
次に、図5のステップ305におけるコード画像の削減処理について説明する。
図6に、コード画像の削減処理のイメージを示す。
このうち、図6(a)は、印刷物500上にコード画像が通常にプリントされた状態を示している。即ち、印刷物500の周辺部にある程度の余白領域を設け、その内側の領域にコード画像を印刷している。図では、コード画像を網掛けで示している。ここで、コード画像を印刷した領域を構成する個々のセル(最小の矩形)は、図3(b)に示した2次元コードに相当するコード画像の単位を示している。
本実施の形態では、このようなコード画像を、図6(b)〜(d)に示すようなものへ変換することで削減する。
【0053】
まず、図6(b)は、上述した(1−ア)による変換の例である。ここでは、コード画像のピッチを粗くするための単純な方法として、奇数行目かつ奇数列目のセル、及び、偶数行目かつ偶数列目のセルは、コード画像を印刷し、奇数行目かつ偶数列目のセル、及び、偶数行目かつ奇数列目のセルは、コード画像を印刷しないようにしている。
また、図6(c)は、上述した(1−イ)による変換の例である。ここでは、図3(b)のように配置された同期コード、識別コード、位置コードのうち、位置コードをコード画像として印刷しないようにしている。尚、コード化する情報を少なくする方法としては、このように識別情報と位置情報とで印刷するかどうかを切り分けるだけでなく、例えば、同じ識別情報の中で印刷する情報の種類を決めることも考えられる。例えば、識別情報がプリンタIDと出力日時とからなる場合に、プリンタIDは印刷するが、出力日時は印刷しない等である。
更に、図6(d)は、上述した(1−ウ)による変換の例である。ここでは、右上部のみにコード画像を印刷している。任意の位置に対する手書きを電子化するための媒体であれば、位置コードは全面に印刷する必要があるため、むしろ識別コードがこのようなコード画像の局所化に相応しいと言える。
【0054】
次いで、図6に示したコード画像の削減処理のうち、図6(b),(c)の変換を行うアルゴリズムの例を述べる。
尚、ここでは、印刷物500上に印刷されたコード画像上で、図3(c)のパターン画像の縦方向(Y方向)の順番(行数)をカウントするための変数を「i」とし、横方向(X方向)の順番(列数)をカウントするための変数を「j」とする。また、1つのセルに対応する2次元コードに含まれるパターン画像の数を縦方向も横方向も「k」であるとする(図3では、k=9)。更に、印刷物500に印刷されたパターン画像の縦方向の総数を「n」とし、横方向の総数を「m」とする。更にまた、i行目かつj列目の位置にあるパターン画像をP(i,j)と表記することとする。
【0055】
図7は、図6(b)の削減処理の動作を示したフローチャートである。画像合成部38が図5のステップ301で取り出したコード画像に対しこの処理を行う。
まず、画像合成部38は、iの初期値を1とし(ステップ311)、iを1ずつ増やしながらnになるまでステップ312〜328の処理を行う。
即ち、まず、(i−1)をkで割った商であるint((i−1)/k)が偶数であるかどうかを判定する(ステップ312)。つまり、着目する行を含む2次元コードが、2次元コードの行数として偶数行目であるかどうかを判定する(先頭行を0行目とする)。
【0056】
その結果、偶数行目であれば、jの初期値を1とし(ステップ313)、jを1ずつ増やしながらmになるまでステップ314〜316の処理を行う。
即ち、まず、(j−1)をkで割った商であるint((j−1)/k)が偶数であるかどうかを判定する(ステップ314)。つまり、着目する列を含む2次元コードが、2次元コードの列数として偶数列目であるかどうかを判定する(先頭列を0列目とする)。ここで、画像合成部38は、結果が偶数列目であればP(i,j)を残し(ステップ315)、結果が奇数列目であればP(i,j)を消す(ステップ316)。つまり、メモリに展開されたコード画像のうち、偶数行目かつ偶数列目の2次元コードに対応する画像はそのままにしておき、偶数行目かつ奇数列目の2次元コードに対応する画像は削除する。
そして、jに1を加算し(ステップ317)、jがmを超えたかどうかを判定する(ステップ318)。ここで、jがmを超えていないと判定されれば、ステップ314に戻り、jがmを超えたと判定されれば、ステップ329に進む。
【0057】
一方、ステップ312での判定結果が奇数行目であれば、jの初期値を1とし(ステップ323)、jを1ずつ増やしながらmになるまでステップ324〜326の処理を行う。
即ち、まず、(j−1)をkで割った商であるint((j−1)/k)が偶数であるかどうかを判定する(ステップ324)。つまり、着目する列を含む2次元コードが、2次元コードの列数として偶数列目であるかどうかを判定する(先頭列を0列目とする)。ここで、画像合成部38は、結果が偶数列目であればP(i,j)を消し(ステップ325)、結果が奇数列目であればP(i,j)を残す。つまり、メモリに展開されたコード画像のうち、奇数行目かつ偶数列目の2次元コードに対応する画像は削除し、奇数行目かつ奇数列目の2次元コードに対応する画像はそのままにしておく。
そして、jに1を加算し(ステップ327)、jがmを超えたかどうかを判定する(ステップ328)。ここで、jがmを超えていないと判定されれば、ステップ324に戻り、jがmを超えたと判定されれば、ステップ329に進む。
【0058】
その後、画像合成部38は、iに1を加算し(ステップ329)、iがnを超えたかどうかを判定する(ステップ330)。ここで、iがnを超えていないと判定されれば、ステップ312に戻り、iがnを超えたと判定されれば、処理を終了する。
このように、セルの行数及び列数が共に偶数である場合、及び、共に奇数である場合に、コード画像を残し、セルの行数と列数のいずれかが偶数でいずれかが奇数の場合に、コード画像を消すような画像処理を行うことで、図6(b)に示したようなコード画像の削減を実現している。
【0059】
また、図8は、図6(c)の削減処理の動作を示したフローチャートである。画像合成部38が図5のステップ301で取り出したコード画像に対しこの処理を行う。
まず、画像合成部38は、iの初期値を1とし(ステップ331)、iを1ずつ増やしながらnになるまでステップ332〜340の処理を繰り返す。
即ち、まず、iをkで割った余りであるmod(i/k)が1であるかどうかを判定する(ステップ332)。つまり、着目する行が、2次元コードにおける1行目であるかどうかを判定する。
【0060】
その結果、1でなければ、その行は、同期コード以外の識別コード及び位置コードに対応するコード画像を含む可能性がある。そこで、jの初期値を1とし(ステップ333)、jを1ずつ増やしながらmになるまでステップ334〜338の処理を行う。
即ち、まず、jをkで割った余りであるmod(j/k)が1であるかどうかを判定する(ステップ334)。つまり、着目する列が、2次元コードにおける1列目であるかどうかを判定する。
ここで、結果が1でなければ、P(i,j)は、識別コードに対応するコード画像、又は、位置コードに対応するコード画像のいずれかである。従って、画像合成部38は、識別コードであるかどうかを判定する(ステップ335)。尚、識別コード及び位置コードがどのように配置されているかはメモリに記憶されているものとする。ここで、識別コードでなければ、位置コードであるので、P(i,j)を消す(ステップ336)。
【0061】
また、ステップ332での判定結果が1であれば、その行におけるコード画像は全て同期コードを表しているので、j=1,2,…,mとおき(ステップ337)、これら全てのjについて、P(i,j)を残す(ステップ338)。更に、ステップ334で1であると判定された場合や、ステップ335で識別コードであると判定された場合も、P(i,j)を残す(ステップ338)。
【0062】
その後、画像合成部38は、iに1を加算し(ステップ340)、iがnを超えたかどうかを判定する(ステップ341)。ここで、iがnを超えていないと判定されれば、ステップ332に戻り、iがnを超えたと判定されれば、処理を終了する。
このように、同期コードと識別コードに対応するコード画像は残し、位置コードは消すような画像処理を行うことで、図6(c)に示したようなコード画像の削減を実現している。
【0063】
尚、本実施の形態では、画像合成部38が文書画像とコード画像とを重ね合わせるタイミングで、不可視トナーを用いずに又は少ない量の不可視トナーでセキュリティを付与するための画像処理を行うようにした。しかしながら、このような画像処理は、どのタイミングで行ってもよい。例えば、指示入力部31が印刷指示を受け付け、文書画像及びコード画像の生成をそれぞれコード画像生成部36及び文書画像生成部33に指示するタイミングで、同様の結果を得るための処理を指示するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、不可視トナーを用いずに又は少ない量の不可視トナーでセキュリティを付与するための処理を画像処理として行ったが、画像形成装置300の印字機構により、同様の処理を行うようにしてもよい。
【0064】
更に、本実施の形態では、画像形成装置300にて、不可視トナーを用いずに又は少ない量の不可視トナーでセキュリティを付与するための処理を行ったが、印刷を指示する端末装置700や印刷指示を中継する装置にてかかる処理を行ってもよい。その場合は、図5のステップ302で不可視トナーの供給手段が装着されていない場合や、ステップ303でその供給手段におけるトナー残量がゼロに近い場合の選択肢として、不可視トナーを使用可能な別の画像形成装置に対し印刷指示を行う、というものも考えられる。
【0065】
具体的には、このような印刷指示を行う印刷指示装置では、まず、メモリ等の記憶手段が、不可視トナーによる印字が可能な画像形成装置を少なくとも1台含む複数の画像形成装置から不可視トナーの使用可否の情報を取得して記憶しておく。そして、受付手段が、ある画像形成装置に対する印刷指示を受け付けると、判定手段が、このメモリ中の使用可否の情報を参照し、その画像形成装置にて不可視トナーが使用可能であるかどうかを判定する。その結果、不可視トナーが使用可能であれば、送信手段は、そのままその画像形成装置に印刷指示を送出し、不可視トナーが使用不可能であれば、送信手段は、不可視トナーが使用可能な他の画像形成装置に印刷指示を送出する。
【0066】
以上述べたように、本実施の形態では、不可視トナーの供給手段が装着されていない場合や、供給手段におけるトナー量が不足している場合等、不可視トナーの供給に不具合がある場合に、代替の画像形成方法により媒体にセキュリティを付与するようにした。これにより、セキュリティを付与するための不可視トナーが不足した場合や、不可視トナーを使用できない場合であっても、セキュリティを付与することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態が適用されるシステムの全体構成を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像形成装置の機能構成の例を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態において媒体上に印刷されるコード画像を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態における画像形成装置の印刷機構の構成例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態における画像合成部の動作例を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態におけるコード画像の削減処理の概要を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるコード画像の削減処理の具体例に沿った動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態におけるコード画像の削減処理の具体例に沿った動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
100,700…端末装置、200…文書リポジトリ、300…画像形成装置、400…画像形成部、500…印刷物、600…ペンデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書画像を可視トナーにより形成し、機械読取り可能なコード画像を不可視トナーにより形成することの可能な画像形成手段と、
前記不可視トナーの供給の不具合を検出する検出手段と
を備え、
前記画像形成手段は、前記検出手段により検出された前記不可視トナーの供給の不具合に応じて、前記コード画像の機械読取り可能な状態を維持しつつその形成方法を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段は、前記コード画像の形成方法を、前記不可視トナーの供給の不具合に応じて提示された複数の方法の中から選択された方法、又は、前記不可視トナーの供給の不具合に応じて予め定められた方法に変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、前記不可視トナーの供給手段におけるトナー量が所定の量よりも少ないが印刷可能な程度の量である場合、前記コード画像の形成方法を、当該不可視トナーの使用量が削減されるような方法に変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記不可視トナーの使用量が削減されるような方法への変更は、前記コード画像を構成する単位画像の間隔を広くする変更であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記不可視トナーの使用量が削減されるような方法への変更は、前記コード画像に含まれる情報の種類を限定する変更であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記不可視トナーの使用量が削減されるような方法への変更は、前記コード画像が印刷される領域の面積を小さくする変更であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成手段は、前記不可視トナーの供給手段が装着されていない場合又は当該供給手段におけるトナー量が印刷可能な程度の量よりも少ない場合、前記コード画像の形成方法を、当該不可視トナーを用いない方法に変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記不可視トナーを用いない方法は、特定の可視トナーにより前記コード画像を形成する方法であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記不可視トナーを用いない方法は、前記特定の可視トナーの色と識別可能な色の他の可視トナーにより前記文書画像を更に形成する方法であることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
不可視トナーによりコード画像を印刷することの可能な少なくとも1つの画像形成装置を含む複数の画像形成装置について、当該不可視トナーの使用可否に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記複数の画像形成装置のうちの特定の画像形成装置に対する印刷指示を受け付ける受付手段と、
前記特定の画像形成装置について、前記不可視トナーの使用ができない旨の情報が記憶されている場合に、当該不可視トナーの使用ができる旨の情報が記憶されている他の画像形成装置に対し、前記印刷指示を送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする印刷指示装置。
【請求項11】
文書画像を可視トナーにより形成し、機械読取り可能なコード画像を不可視トナーにより形成することの可能な画像形成装置における画像形成方法であって、
前記不可視トナーの供給の不具合を検出するステップと、
検出された前記不可視トナーの供給の不具合に応じた方法で、前記コード画像を、その機械読取り可能な状態を維持しつつ形成するステップと
を含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−78981(P2007−78981A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265416(P2005−265416)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】